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時系列と階層性の親密な関係研究 浅野良輔 (印刷中). 時系列と階層性
時系列と階層性の親密な関係研究 浅野良輔 (印刷中). 時系列と階層性の視座に基づく親密な関係研究:発達心理学と社会心 理学による統合的アプローチ 発達心理学研究 (Asano, R. (in press). The integration of developmental and social psychological perspectives on research on close relationships. Japanese Journal of Developmental Psychology.) 時系列と階層性の親密な関係研究 論文題 (日本語): 時系列と階層性の視座に基づく親密な関係研究:発達心理学と社会心理学による統合的ア プローチ 論文題 (英語): The Integration of Developmental and Social Psychological Perspectives on Research on Close Relationships 時系列と階層性の親密な関係研究 日本語要約 個人の成長や発達,心理的適応に対して大きな役割を果たす親密な関係は,重要な研究テ ーマである。本論文では,親密な関係が人々の行動傾向や心理プロセスに与える影響をよ り包括的に理解することを目指し,発達心理学でみられる個人の発達に関する時系列的視 点と,社会心理学における個人と二者関係 (ダイアド) の階層的視点を統合した新たなア プローチを提案する。まず,成人の愛着理論に基づいた研究を通じて,親密な関係にまつ わる発達心理学的研究と社会心理学的研究の相違を指摘する。つぎに,年齢差や発達軌跡 に注目して愛着スタイルの発達過程を明らかにする時系列的視点,ならびに相互作用構造 や共有された関係効力性など,個人レベルの影響プロセスとダイアドレベルの影響プロセ スに注目する階層的視点の観点から,これまでの親密な関係研究を改めて概観した上で, 発達心理学と社会心理学による統合的アプローチの可能性を探る。そして,時系列的視点 と階層的視点の両面から親密な関係について検討するアプローチを実証研究の俎上に載せ るため,データ収集の段階で直面しうる問題,交差遅延モデルや潜在成長曲線モデルとい った縦断データに対する分析法,ペアワイズ相関分析や共通運命モデル,マルチレベル構 造方程式モデリングといったダイアドデータに対する分析法について議論する。結語とし て,発達心理学と社会心理学が結びついた親密な関係研究の方向性を展望する。 【キーワード】親密な関係,成人の愛着理論,個人―関係のダイナミックス,縦断研究, ダイアドデータ 時系列と階層性の親密な関係研究 はじめに 現代社会の問題の 1 つとして,青年・成人における恋愛関係や夫婦関係といった親密な 関係の減少が挙げられる。国立社会保障・人口問題研究所 (2010) によれば,恋人や友人 として現在交際している異性がいない 18~34 歳の男女の割合は年々上昇しており,最新の データでは男性で約 60%,女性で約 50%に上る (Figure 1)。また,上記の回答者のうち, Figure 1 挿入 男性の約 30%, ならびに女性の約 20%が,異性との交際をとくに望んでいないとしている。 1,532 名の大学生を対象とした調査 (髙坂, 2013) でも,やはり約 20%の回答者が,現在恋 人はいないが欲しいとも思わないと答えている。 しかし,個人の成長や発達,心理的適応にとって,親密な関係はサポートや安心感の源 として大きな役割を果たす。発達心理学では,親密な関係の形成は成人期初期の発達課題 として位置づけられている (Erikson,1959)。また,自己や相手のアイデンティティが確立 しているほど,親密な関係は個人の生活面や心理面にポジティブな変化をもたらすとされ ている (髙坂, 2010)。社会心理学においても,親密な関係は,所属欲求の充足 (Baumeister & Leary, 1995; Leary & Baumeister, 2000),もしくは安全な避難所や安全基地の確保を意味す るため (Feeney, 2004; 金政, 2012),個人の健康や幸福度をうながすとされている。したが って,親密な関係について研究することは,学術的意義の高さのみならず,知見の社会的 還元という意味でも重要だろう。 本論文の目的は,親密な関係が人々の行動傾向や心理プロセスに与える影響をより包括 的に解明することを目指し,発達心理学と社会心理学を有機的に結びつけた新たなアプロ ーチを提案することである。具体的には,Figure 2 に示すように,生涯発達という観点か ら個人の時系列を水平的にとらえる発達心理学の枠組みのなかに,個人レベルと二者関係 レベル (ダイアドレベル) の階層性という垂直的な視座をもつ社会心理学のアプローチの 統合を試みたい。これは,従来の研究にはなかった新たなモデルであり,親密な関係に関 してこれまで以上に興味深い知見を提供する可能性を秘めている。 本論文は以下の構成からなる。まず,成人の愛着研究を取り上げ,発達心理学と社会心 理学における親密な関係研究の現状と問題を整理する。つぎに,2 つの研究分野に架け橋 を提供するため,親密な関係研究を時系列的視点と階層的視点からとらえ直し,それらの 統合に向けた議論を行う。さらに,時系列的視点と階層的視点の両方を組み合わせたアプ ローチを実証研究の俎上に載せるための方法論にも言及する。最後に,発達心理学と社会 心理学における親密な関係研究の今後の方向性について展望する。 -1- Figure 2 挿入 時系列と階層性の親密な関係研究 これまでの親密な関係研究:成人の愛着理論に基づいて 本節では,心理学における親密な関係研究のメインストリームとして,成人の愛着理論 (adult attachment theory) に焦点を当てる。成人の愛着理論は,親密な関係と個人の心理的 適応をめぐってさまざまな分野に共通の枠組みを提供し,長きにわたって大きな影響力を もち続けている。しかしその一方で,成人の愛着研究には,親密な関係をめぐる発達心理 学と社会心理学の立場の違いを鮮明に浮かび上がらせているという側面もある。 愛着とは,特定の他者,すなわち愛着対象との強い情緒的な絆を形成・維持する傾向を 指し,こうした行動は, “ゆりかごから墓場まで”個人の一生涯を通じてみられる (Bowlby, 1977)。愛着対象との関係には,(a) 近接性の探索,(b) 分離苦悩,(c) 安全な避難所,(d) 安 全基地という主に 4 つの特徴がある。近接性の探索は,愛着対象に接近しようとすること を表し,分離苦悩は,愛着対象との別離に激しく抵抗することを意味している。また,安 全な避難所は,ストレスフル状況において愛着対象からのいやしを求めることであり,安 全基地は,愛着対象を探索行動や新たな活動への原動力にすることである。上述した 4 つ の特徴は,母親をはじめとした乳幼児期における養育者との関係だけでなく,青年・成人 期における親密な関係にもみられる。そのため,セクシャリティと互恵性の有無という点 で違いはあるものの,これら 2 つの関係性は同じ愛着関係としてとらえることができる (Bowlby, 1988; Shaver & Hazan, 1988)。成人の愛着理論は,このような乳幼児期の養育者と の関係と,青年・成人期の親密な関係との共通性を根拠にしている。 養育者との関係と親密な関係の間に上述した 4 つの共通点がみられる理由は,乳幼児期 に形成された内的作業モデル (internal working model) や,そうした内的作業モデルを基盤 とした愛着スタイル (attachment style) が,生涯を通じたプロトタイプとして一定の継続性 を示すことにある。内的作業モデルとは,乳幼児が養育者との相互作用経験に基づいて形 成する期待や信念であり,その後の発達段階においても個人の行動傾向や心理プロセスに 影響を与える。内的作業モデルは, “自分には愛される価値があるのか”という自己に対す る期待や信念を意味する自己モデルと, “他者は自分を愛してくれるのか”という他者に対 する期待や信念を意味する他者モデルに分けられる。Bartholomew & Horowitz (1991) は, 自己モデルと他者モデルの 2 軸が直交することで,成人期の愛着スタイルを (a) 安定型, (b) とらわれ型,(c) 回避型,(d) 恐れ型の 4 つに分類できると主張している。さらに,ネ ガティブな自己モデルであるとらわれ型と恐れ型は,関係不安 (attachment-anxiety) として -2- 時系列と階層性の親密な関係研究 統合される一方で,ネガティブな他者モデルである回避型と恐れ型は,親密性回避 (attachment-avoidance) として統合される (Brennan, Clark, & Shaver, 1998)。アメリカ人の大 学生サンプルに基づくメタ分析の結果 (Konrath, Chopik, Hsing, & O'Brien, 2014) によれば, 1988 年から 2011 年にかけて,安定型に分類される個人の割合が減少していた一方で (1988 年:49.0%→2011 年:41.6%),不安定型,とりわけ回避型に分類される個人の割合は増加 していた (11.9%→18.6%)。著者たちは,この結果と,近年報告されている自尊心,自己愛, 個人主義の上昇を踏まえ,アメリカの青年は,他者とのつながりを避けて自らの目標達成 を重視する傾向を強めている可能性があると指摘している。こうした愛着スタイルが,親 密な関係の良好さや個人の精神的・身体的健康を規定することについて,これまでさまざ まな知見が積み重ねられている (Mikulincer & Shaver, 2003; Simpson & Rholes, 2015)。 成人の愛着研究は,社会・パーソナリティ心理学分野で盛んになされている。とくに近 年では,乳幼児期の養育者との関係が青年期の親密な関係に影響を与えるという,愛着理 論の基本的前提 (Bowlby, 1988; Shaver & Hazan, 1988) を直接検証しようとする試みが増え てきている。たとえば,Simpson とその共同研究者たち (Simpson, Collins, & Salvatore, 2011) は,アメリカのミネソタ州で生まれた乳児を 20 年以上にわたり追跡した,長期縦断データ に基づく一連の研究を行っている。その結果,乳児期の親子関係における安定型の愛着ス タイルは,児童期の友人関係におけるコンピテンスを高めて青年期の友人関係における愛 着スタイルを安定させることで,成人期の恋愛関係におけるネガティブ感情を低減させて いた (Figure 3; Simpson, Collins, Tran, & Haydon, 2007)。また,乳児期の親子関係における愛 Figure 3 挿入 着スタイルが不安定であっても,成人期の恋愛関係においてパートナーがネガティブな話 題をうまく変えるスキルをもっていれば,パートナーとの関係をその後も継続させられる ことが示されている (Salvatore, Sally, Kuo, Steele, Simpson, & Collins, 2011)。これらの知見は, 乳児期における愛着スタイルが,青年期における親密な関係の質を直接的,ならびに間接 的に規定することの実証的根拠といえる。 これに対して国内では,愛着スタイルの関係不安が,青年・成人期における母子,恋愛, 夫婦,同性友人との関係の質に与える影響について検討されている (金政, 2009, 2010, 2013)。その知見は,以下の 3 点にまとめることができる (Figure 4)。第 1 に,関係不安が 高い個人は,自分自身のネガティブ感情を高めることで,自分自身の関係に対する評価を 低下させる。第 2 に,関係不安が高い個人は,相手のネガティブ感情を高めることで,相 手の関係に対する評価を低下させる。第 3 に,上述の 2 つのプロセスは,相手との排他性 -3- Figure 4 挿入 時系列と階層性の親密な関係研究 を特徴とする母子関係,恋愛関係,夫婦関係では一貫して認められたのに対して,代替可 能性の高い同性友人関係ではみられなかった。これらの結果は,相手から拒絶されたり関 係が崩壊したりするかもしれないという不安が,むしろ関係を危機にさらすことで,結果 的にそうした不安や恐怖を現実化させるという,関係不安による予言の自己成就傾向 (Simpson & Rholes, 2004/2008) を示唆している。 このように,社会心理学では,成人の愛着理論に基づいた親密な関係に関する検討がさ まざまに行われている。その一方で,発達心理学においては,成人の愛着理論に立脚した 実証研究が十分になされているとはいえない。さらに,たとえ発達心理学者が成人の愛着 研究を行うとしても,社会・パーソナリティ心理学の成果を引用することはほとんどない (e.g., Holland & Roisman, 2010)。親密な関係という共通の事象に関心をもっているにもかか わらず,両分野の間には大きな隔たりがみられるのである。 Shaver & Mikulincer (2004/2008) は,発達・臨床心理学と社会・パーソナリティ心理学に おける成人の愛着研究の差異として,(a) 対象とする関係性,(b) 測定法,(c) 分析のレベ ルの 3 つを挙げている。発達心理学では,乳幼児期の親子関係を対象に,成人愛着面接 (Adult Attachment Interview; George, Kaplan, & Main, 1985) といった観察法や面接法により, 幼少期までの親子関係に関する語りの一貫性が検討される。それに対して,社会心理学で は , 青 年 期 以 降 の 親 密 な 関 係 や 友 人 関 係 を 対 象 に , 対 人 関 係 尺 度 (Relationship Questionnaire; Bartholomew & Horowitz, 1991) や 親 密 な 関 係 体 験 尺 度 (Experiences in Relationship Questionnaire; Brennan et al., 1998) などの自己報告尺度を用いた調査法により, 親密な他者や友人に対する行動傾向や心理プロセスが検討される。とくに,観察や面接に よる愛着スタイルの測定を重視する発達心理学者は,自己報告尺度の構成概念妥当性があ る程度確かめられている今もなお, 社会心理学の知見に対して疑念を抱きやすい。 同様に, 発達心理学における貴重な研究知見に関心を寄せ,それらを自らの研究に生かそうとする 社会心理学者もそれほど多くはない。 発達心理学と社会心理学の架け橋 前節では,成人の愛着研究を通して,親密な関係にまつわる発達心理学的研究と社会心 理学的研究の隔たりを指摘した。2 つの学問分野がそれぞれに理論や方法論を洗練させて 知見を積み重ねていくことは,科学の営みとして不可欠である。しかし同時に,他分野の 成果にも目を向けなければ,心理学,あるいは社会科学全体の発展に遅れを来したり,研 -4- 時系列と階層性の親密な関係研究 究資源の浪費につながったりするかもしれない。その結果として,われわれは,親密な関 係についてより大切なことを見落としている可能性がある。したがって,親密な関係とい う共通テーマをきっかけにして,発達心理学者と社会心理学者が互いの垣根を越えて協力 し合うことは重要だろう。 それでは,どうすれば発達心理学と社会心理学を結びつけることができるのだろうか。 発達心理学は,生涯発達という個人の時系列に注目する一方で,社会心理学は,個人とダ イアドの階層性に関心をもっている。こうした発達心理学における時系列的視点と,社会 心理学における階層的視点を組み合わせることで,両分野を 1 つの枠組みのなかに統合で きると考えられる。それぞれの分野の人間観を横軸と縦軸に布置し,個人が一生涯を通じ て他者との関係性のなかで生きていることをモデル化するのである。本節では,時系列と 階層性というそれぞれの観点から,これまでの親密な関係研究を改めて吟味し直した上で, 発達心理学と社会心理学による統合的アプローチの可能性を探る。 時系列からみた親密な関係 まず,時系列的視点をもった親密な関係研究として,愛着スタイルの発達過程が検討さ れている。こうした研究は,大きく 2 つの文脈に分けることができる。第 1 に,発達段階 の異なる集団を対象とした横断デザインによって,愛着スタイルの年齢差を検討した研究 がある。Chopik, Edelstein, & Fraley (2013) は,アメリカ,イギリス,カナダの 3 ヶ国に住 む 18~70 歳の回答者 (N = 86,555) に対してインターネット調査を行い,改訂版親密な関 係体験尺度を測定した。その結果,関係不安の得点は,青年期で最も高く老年期で最も低 かった。これに対して,親密性回避の得点は,関係不安ほどの顕著な差ではないものの, 青年期で最も低く老年期で最も高かった。彼らはその後,日本を含む 81 ヶ国にサンプルを 拡張することで, 上述した傾向の頑健さを確かめている (Chopik & Edelstein, 2014; Figure 5)。 Figure 5 挿入 これらの知見は,拒絶・回避型の割合が加齢とともに高まっていくという指摘 (遠藤, 2010) と整合している。 第 2 に,より直接的な方法として,同一の個人を継時的に追跡する縦断デザインに基づ き,愛着スタイルの継続性や発達軌跡を検討した研究がある。Fraley (2002) は,ストレン ジ・シチュエーション法 (Ainsworth, Blehar, Waters, & Wall, 1978) を用いて測定された生後 12 ヶ月の愛着スタイルが,その後 (range = 13 ヶ月~21 歳) も安定しているかどうかを, 27 の縦断データに対するメタ分析によって検討した。その結果,分析対象となったデータ セットを通じて,2 時点の愛着スタイルの間には中程度の関連 ( = .39) が認められた。ま -5- 時系列と階層性の親密な関係研究 た,青年・成人に対して改訂版親密な関係体験尺度を 30 日間にわたって毎日 1 回測定した データ (N = 203),ならびに 45 週間にわたって週 1 回測定したデータ (N = 382) でも,パ ーソナリティ特性の影響を統制してもなお,愛着スタイルは時点間で中程度に関連してい た (Fraley, Vicary, Brumbaugh, & Roisman, 2011)。これらは,愛着スタイルが,一定の変化 を示しつつも,その後の発達段階を通じてある程度安定するという愛着理論の基本的前提 (Bowlby, 1977) を支持する知見といえる。 上述した研究はすべて,愛着スタイルの発達過程を明らかにしようとする試みであり, 愛着スタイルをパーソナリティ特性としてだけでなく,関係特性としてとらえるならば, これらは,時系列的視点に基づいた親密な関係研究として位置づけることができる。むろ ん,縦断デザインによってとらえられる加齢変化が,横断デザインによってとらえられる 年齢差と同じである保証はないため,結果の解釈は慎重に行わなければならない (岡林, 2006)。また,本稿で取り上げた知見のなかには,自己報告尺度を用いた社会・パーソナリ ティ心理学的研究も含まれており,面接法や観察法による発達心理学的検討をさらに行う 必要がある。しかし,個人の成長や発達に注目している点で,これらのアプローチは,時 系列的視点をもつ発達心理学研究との親和性が高いといえるだろう。 階層性からみた親密な関係 つぎに,階層的視点をもった親密な関係研究として,二者間の相互作用を基盤とするダ イアドレベルの現象を,従来の心理学で検討されてきた個人レベルの現象から区別した検 討がある。社会心理学では元来,個人と二者関係,ないしは集団との間に階層構造を仮定 し,両者のダイナミックスに注目してきた (レビューとして,Oishi, Kesebir, & Snyder, 2009)。 Lewin (1947) によれば,個人と個人の相互作用は二者関係に特有の性質を創発させ,さら にそのようにして創発された性質が,個人の行動傾向や心理プロセスに影響を与える。 Berscheid (1999) も,多くの研究でなされている態度やパーソナリティ特性といった個人の “こころ”や“あたま”に依拠した説明だけでは,二者関係の本質は理解できないとして いる。こうした論考は,近年の二者関係研究や対人コミュニケーション研究で増えつつあ り,心理的一致 (Acitelli, Duck, & West, 2000),間主観性 (Ickes, Hutchison, & Mashek, 2004), 二者間プロセス (Campbell & Rubin, 2012) といったダイアドレベルの現象への関心は高ま っている。したがって,親密な関係について理解する上で,社会心理学にみられる個人レ ベルとダイアドレベルの階層的視点を取り入れることは重要だろう。 こうしたなか,親密な関係におけるダイアドレベルの影響プロセスと個人レベルの影響 -6- 時系列と階層性の親密な関係研究 プロセスを分けてとらえた検討が行われている。第 1 に,親密な関係にある二者間の社会 的交換に焦点を当てた研究がある。清水・大坊 (2007) は,頻度 (frequency),多様性 (diversity),強度 (strength) という社会的交換の 3 要素を相互作用構造と定義し,関係良好 性との関連をダイアドレベルと個人レベルで検討した。恋愛カップルを対象とした質問紙 調査 (N = 59 組) の結果,ダイアドレベルでは,相互作用構造の多様性や強度が高いほど, 関係良好性も高いことが示された。その一方で,個人レベルでは,相互作用構造の強度が 高いほど,関係良好性も高いことが示された。この結果は別の恋愛カップルを対象とした 調査 (N = 194 組) でも再現され,さらに,関係良好性に対する相互作用構造の説明率は, 個人レベルよりもダイアドレベルで高かった (清水・大坊, 2008)。これらの知見は,恋愛 関係を良好にするためには,個々人の行動パターンよりも,二者全体の社会的交換パター ンに注目する必要がある ことを示唆している。 第 2 に,親密な関係における共有された関係効力性 (shared relational efficacy) に関する 研究がある。共有された関係効力性とは,効力期待が集団レベルで共有されるのと同様に (Bandura, 1997),良好な関係を形成・維持するために必要な行動を二者が協力して計画, および遂行できるかどうかについて,二者間で共有された効力期待と定義される (浅野, 2011; 浅野・吉田, 2011)。また,共有された関係効力性は,従来検討されてきた一人ひと りの個人が認知している知覚された関係効力性 (perceived relational efficacy) とは区別さ れる概念である。浅野 (2011) は,共有された関係効力性が二者双方の感情体験を予測す るダイアドレベルの影響プロセスと,知覚された関係効力性が本人の感情体験を規定する 個人レベルの影響プロセスをそれぞれ検討した。恋愛カップルに対して質問紙調査を行っ た結果 (N = 107 組),ダイアドレベルにおいて,共有された関係効力性が二者双方のポジ ティブ感情を高め,個人レベルでは,知覚された関係効力性は本人のポジティブ感情を高 めることが示された。また,浅野 (印刷中) は,別の恋愛カップルを対象とした質問紙調 査の結果 (N = 97 組),ダイアドレベルにおいては,共有された関係効力性が二者双方のか けがえのなさと二者双方の主観的幸福感を高め,個人レベルでは,知覚された関係効力性 は本人の主観的幸福感のみを高めることを報告した (Figure 6)。これらの知見は,親密な 他者との間で共有された関係効力性が,関係の良好さのみならず,個人の心理的適応の基 盤にもなることを示唆している。 このように,階層的視点に基づいた親密な関係研究は,ダイアドレベルの影響プロセス と個人レベルの影響プロセスの共通項や差異を明らかする。これは,個人の“こころ”や -7- Figure 6 挿入 時系列と階層性の親密な関係研究 “あたま”のみに還元して説明する従来のアプローチでは不可能であった。発達心理学理 論に立脚して個人の時系列に注目するとともに,社会心理学的観点から個人とダイアドの 階層性にも目を向けることで,親密な関係についてこれまでよりも精緻に知ることができ る。したがって今後は,親密な関係が個人の行動傾向や心理プロセスに与える影響につい て,時系列的視点と階層的視点の両面から実証的に検討する必要があるだろう。 新しい親密な関係研究のための方法論 前節より,発達心理学と社会心理学のアプローチを統合し,親密な関係を時系列と階層 性の 2 つの視座から検討することの重要性が示唆された。親密な関係をこうした 2 つの視 点からとらえた実証研究を行うためには,複数の発達段階にある集団に対して横断的にダ イアドデータを収集するか,同一のサンプルに対して縦断的にダイアドデータを収集する 必要がある。とくに,縦断デザインによるダイアドデータは,データ収集の段階でさまざ まな困難に直面しうる上に,データ解析の時点でも,時点―個人―ダイアドという 3 レベ ルからなる入れ子構造を考慮しなければならない (Figure 7)。そこで本節では,まず縦断 的なダイアドデータの収集をめぐる問題について簡単に述べる。その上で,縦断データと ダイアドデータそれぞれの解析法について概観し,両者を組み合わせた分析モデルについ て議論する。 縦断デザインによるダイアドデータ いうまでもなく,縦断デザインによってダイアドデータを収集するためには,時間的, 金銭的,人的に膨大なコストが伴う。一般的に,縦断研究ではサンプルの脱落 (attrition) が 起こるため,十分な標本サイズを確保するのは横断研究よりもはるかに難しくなる (縦断 研究における欠損値のメカニズムとその対処法については,荘島・清水 (2004) を参照)。 しかもダイアドデータの場合,一人の個人だけでなく,もう一人の個人からも同意を得な ければならないという問題もある。Developmental Psychology 誌や Journal of Personality and Social Psychology 誌といった主要雑誌に掲載され,親密な関係研究をリードしている北米 の研究でさえ,縦断的なダイアドデータの標本サイズは多くても 100~200 組ほどである (e.g., Feeney, 2004; Holland & Roisman, 2010; Simpson et al., 2007)。ただし,これらの研究は いずれも,一般集団を対象としており,データの質や知見の一般化可能性という点では優 れている。これに対して,日本では,親密な関係という極めてプライベートな事柄の研究 に対する人々の理解がまだまだ低く (松井, 2010),たとえ大学生を対象にしたとしても, -8- Figure 7 挿入 時系列と階層性の親密な関係研究 縦断デザインによるダイアドデータの収集は北米よりも困難と考えられる。こうした現状 を乗り越えるためには,個々の研究者の努力だけでは限界があり,学会を挙げての組織的 な取り組みが重要になってくる。その際に,単一の学会だけではなく,複数の学会が連携 し,より大規模かつ長期的な資金提供システムを構築することが求められる。 縦断データの解析 縦断データの分析法としては,交差遅延モデル (cross-lagged model) と潜在成長曲線モデ ル (latent growth curve model) がよく知られている (Hoyle, 2012; 岡林, 2006)。交差遅延モ デルは,パネルデータを用いて,ある時点に測定された変数が,別の時点で測定された他 の変数に影響するかどうかを推定することで,説明変数と結果変数との間の因果関係を検 討する方法である (Figure 8a)。たとえば,愛着スタイルの関係不安がその後の関係に対す る評価を低くするという説明と,関係に対する評価がその後の関係不安を高くするという 説明は,どちらも理論的に成立しうるものであり,横断データに基づく知見にはこうした 問題が常につきまとう。交差遅延モデルを用いることにより,どちらの説明がより妥当な のかを実証的に確かめることができる。 一方で,潜在成長曲線モデルは,3 時点以上の縦断データに用いられ,各時点の測定値 である観測変数に基づき,平均値 (切片) と変化量 (傾き) を潜在変数として推定すること で,ある変数の時系列変化のパターン (軌跡) を検討する方法である (Figure 8b)。潜在成 長曲線モデルを用いることで,サンプル全体の切片や傾きの推定値だけでなく,それらの 推定値に個人差があるかどうかについても知ることができる (狩野・三浦, 2002; 豊田, 2000)。潜在成長曲線モデルにより,たとえば青年期,成人期,壮年期,老年期にかけて, (a) 愛着スタイルの関係不安は低下するのか,(b) もしも関係不安が低くなるとしたら,そ の軌跡は一定なのか,それとも U 字型や逆 U 字型を描くのか,(c) 関係不安のそうした軌 跡はいかなる要因によって生じているのか,などを明らかにすることができる。 さらに,こうした時系列変化のパターンが,下位集団によって異なると考えられる場合 もある。その際には,性別や発達段階のように,分類したい下位集団の基準が既知であれ ば,潜在成長曲線モデルの枠組みで多母集団同時分析 (multiple group analysis) を行うこと になり,愛着スタイルの測定値の発達軌跡のように,下位集団の基準が未知であれば,成 長混合モデル (growth mixture model) や潜在クラス成長モデル (latent class growth model) による分析を行えばよい。 ダイアドデータの解析 -9- Figure 8 挿入 時系列と階層性の親密な関係研究 つぎに,ダイアドレベルの影響プロセスと,個人レベルの影響プロセスを別々に検討す るためのダイアドデータの分析法としては,ペアワイズ相関分析 (pairwise correlation analysis) や共通運命モデル (common fate model) がある。ペアワイズ相関分析は,二者の Figure 9 挿入 測定値 (観測変数) に基づき,ダイアドレベルを表す二者間で共有された効果 (shared effect) と,個人レベルを表す個人独自の効果 (unique effect) を潜在変数として分解し,そ れぞれのレベルにおいて変数間の相関関係を検討する方法である (Figure 9a; Gonzalez & Griffin, 1999; Griffin & Gonzalez, 1995)。また,共通運命モデルも,二者間で共有された効果 と個人独自の効果を分解した上で,変数間の因果関係や相関関係を検討する方法である (Figure 9b; Kenny, Kashy, & Cook, 2006)。ペアワイズ相関分析を適用した研究として,先述 したように清水・大坊 (2007) は,相互作用構造と関係良好性との関連パターンが,ダイ アドレベルと個人レベルで異なることを報告している。また,共通運命モデルを用いた分 析により,ダイアドレベルで,家事の分担や習慣の不一致など関係内で生じたストレスフ ル・イベントが,直接的,ならびに夫婦間のコミュニケーションの抑制を介して間接的に, 夫 婦 関 係 の 質 を 低 下 さ せ る こ と が 示 さ れ て い る (Ledermann, Bodenmann, Rudaz, & Bradbury, 2010)。 一方で,近年の社会情勢を鑑みると,海外だけでなく日本でも,同性愛カップルに関す る研究が増えていく可能性は大いに考えられる。こうした識別不可能な (indistinguishable) データに対してペアワイズ相関分析や共通運命モデルを用いる場合,データセットのペア ワイズ配列化,そして推定後の自由度や適合度の調整といったやや煩雑な処理が必要にな る (Kenny et al., 2006; 清水, 2014)。さらに,これらは,ダイアドデータに特化した手法で あるため,夫婦と子どもといった三者以上からなる集団を対象とした研究との比較や,そ うした研究への一般化がしにくいという問題もある。 同性のダイアドデータや集団データにも適用しやすい,より汎用性の高い方法として, マルチレベル構造方程式モデリング (multilevel structural equation modeling) による分析が ある (Figure 10)。マルチレベル構造方程式モデリングはもともと,クラス・学校,組織, Figure 10 挿入 地域などを単位としてサンプリングされた階層データを扱うために提案された手法であり, 階層データ全体の分散共分散行列を,クラスタ間 (二者関係や集団) の分散共分散行列で ある Between と,クラスタ内 (個人) の分散共分散行列である Within に分解し,それぞれ を独立のモデルとして推定する手法である (狩野・三浦, 2002; Muthén, 1997; 清水, 2014; 豊田, 2000)。数理的には,マルチレベル構造方程式モデリングにおける Between と Within - 10 - 時系列と階層性の親密な関係研究 への分解は,ペアワイズ相関分析,ならびに共通運命モデルにおける二者間で共有された 効果と個人独自の効果への分解と等しい。そのため,マルチレベル構造方程式モデリング は,ペアワイズ相関分析や共通運命モデルをより一般化した方法といえよう。ダイアドデ ータに対してマルチレベル構造方程式モデリングによる分析を行った場合,クラスタ間の 成分からなる Between は,ダイアドレベルの影響プロセスとして解釈できるのに対して, クラスタ内の成分からなる Within は,個人レベルの影響プロセスとして解釈できる。親密 な関係を個人レベルとダイアドレベルの観点からとらえた研究では,マルチレベル構造方 程式モデリングが適用され始めている。その結果,上述したように,個人レベルとダイア ドレベルでそれぞれ異なる影響プロセスがみられたり (清水・大坊, 2008),共有された関 係効力性というダイアドレベルの構成概念が実証的に扱えるようになったりするなど (浅 野, 2011, 印刷中; 浅野・吉田, 2011),親密な関係研究に階層的視座を取り入れようとする 本論文の主張を支持する知見が得られている。 縦断データの分析法とダイアドデータの分析法を組み合わせることで,発達心理学に代 表される時系列的視点,および社会心理学にみられる階層的視点の両方を取り入れた親密 な関係研究を実証的に行うことが可能になる。本節で取り上げた解析法はすべて,構造方 程式モデリングの下位モデルとして位置づけられる。ペアワイズ相関分析や共通運命モデ ル,マルチレベル構造方程式モデリングの枠組みで,交差遅延モデルや潜在成長曲線モデ ルによる分析を行うためには,Mplus (Muthén & Muthén, 1998-2013) が便利である。Mplus は,有償ではあるものの,構造方程式モデリングを実行するためのソフトウェアとしては 現在最も優れており,複雑なモデルも簡単なコードを入力するだけで推定できる。Mplus そのものは日本語に対応していないが,日本語による解説書がすでに出版されているので (小杉・清水, 2014),それほど敷居は高くないはずである。したがって,研究者による理論 ないしは仮説と,それらを検証するためのデータさえあれば,発達心理学と社会心理学の アプローチを統合した親密な関係研究は,すぐにでも行える状況にあるといえよう。 おわりに 本論文では,親密な関係研究の新たなアプローチとして,発達心理学でみられる時系列 的視点と,社会心理学における階層的視点の統合に向けた議論を行ってきた。これまで, 発達心理学と社会心理学における親密な関係研究の間には,大きなミッシング・リンク (分 断) があった。どちらの分野も,親密な関係が人々の行動傾向や心理プロセスに与える影 - 11 - 時系列と階層性の親密な関係研究 響を明らかにするという問題意識を共有しているにもかかわらず,それぞれが依拠する理 論や方法論の違いを批判するに終始してきた感が強い。しかし,他分野との違いにとらわ れ,交流を断つのはあまり生産的ではない。発達心理学における時系列的視点と,社会心 理学における階層的視点を組み合わせることは,親密な関係をより包括的に理解するため の手がかりとなりうる。また,親密な関係研究でこのアプローチが成功すれば,児童期・ 青年期における仲間集団や,成人期・壮年期・老年期における組織集団の研究にも示唆を 与えられるだろう。今後は,発達心理学者と社会心理学者が互いに手を携え,親密な関係 について学際的に検討していくことが求められる。 - 12 - 時系列と階層性の親密な関係研究 文 献 Acitelli, L. 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(2000). 共分散構造分析 [応用編]:構造方程式モデリング. 東京:朝倉書店. - 17 - 時系列と階層性の親密な関係研究 交 際 相 手 の い な い 未 婚 者 の 割 合 男性 65 61.4 女性 60 55 50 49.5 48.6 45 40 39.5 (%) 35 1987 1992 1997 2002 2005 Figure 1 交際相手のいない未婚者の割合の推移 (国立社会保障・人口問題研究所 (2010) より著者が作成) 2010 年 時系列と階層性の親密な関係研究 ダイアド レベル ダイアド レベル ダイアド レベル ダイアド レベル ダイアド レベル ダイアド レベル ダイアド レベル 個人 個人 レベル レベル 個人 個人 レベル レベル 個人 個人 レベル レベル 個人 個人 レベル レベル 個人 個人 レベル レベル 個人 個人 レベル レベル 個人 個人 レベル レベル 乳児期 幼児期 児童期 青年期 成人期 壮年期 老年期 階 層 性 時系列 Figure 2 時系列と階層性からみた親密な関係 時系列と階層性の親密な関係研究 + 友人関係における コンピテンス (6-8歳) + 友人関係における 安定型愛着スタイル (16歳) 親子関係における 安定型愛着スタイル (1歳) - 恋愛関係における ネガティブ感情 (20-23歳) Figure 3 乳児期の親子関係における愛着スタイルが青年期の恋愛関係におけるネガティ ブ感情に与える影響 (太いパスは有意な影響がみられ,細いパスは有意な影響がみられなかったこと を意味している。Simpson et al. (2007) より著者が作成) 時系列と階層性の親密な関係研究 + 本人の ネガティブ感情 本人の 関係への評価 関係不安 + 関係不安 - 相手の ネガティブ感情 - 相手の 関係への評価 Figure 4 愛着スタイルの関係不安による予言の自己成就 (太いパスは有意な影響がみられ,細いパスは有意な影響がみられなかったこと を意味している。金政 (2009, 2010, 2013) より著者が作成) 時系列と階層性の親密な関係研究 関係不安 親密性回避 Figure 5 愛着スタイルの年齢差 (Chopik & Edelstein (2014, Figure 1) を著者が改変) 時系列と階層性の親密な関係研究 ダイアドレベルの 影響プロセス + 二者双方の かけがえのなさ + 二者双方の 主観的幸福感 共有された 関係効力性 個人レベルの 影響プロセス 本人の かけがえのなさ 知覚された 関係効力性 + 本人の 主観的幸福感 Figure 6 共有された関係効力性と知覚された関係効力性がかけがえのなさや主観的幸福 感に与える影響 (太いパスは有意な影響がみられ,細いパスは有意な影響がみられなかったこと を意味している。浅野 (印刷中) より著者が改変) 時系列と階層性の親密な関係研究 恋愛カップル カップル1 カップルX カップル2 ・・・・・・ 女性1 男性1 女性2 男性2 時点1 時点2 時点3 時点1 時点2 時点3 時点1 時点2 時点3 時点1 時点2 時点3 Figure 7 時点―個人―ダイアドからなるデータの階層構造 女性X 男性X 時点1 時点2 時点3 時点1 時点2 時点3 時系列と階層性の親密な関係研究 a: 交差遅延モデル X時点1 b: 潜在成長曲線モデル X時点2 切片 傾き 1 1 Y時点1 Y時点2 Figure 8 交差遅延モデルと潜在成長曲線モデル (X = 説明変数,Y = 結果変数) 0 1 2 1 1 Y時点1 Y時点2 Y時点3 3 Y時点4 時系列と階層性の親密な関係研究 a: ペアワイズ相関分析 b: 共通運命モデル 個人レベル相関 eXA eXB XA XB 個人レベル相関 個人レベル相関 eYA eYB eXA eXB YA YB XA XB Y X ダイアドレベル相関 個人レベル相関 eYA eYB YA YB X Y ダイアドレベル効果 Figure 9 ペアワイズ相関分析と共通運命モデル (X = 説明変数,Y = 結果変数,A = 個人A,B = 個人B) 時系列と階層性の親密な関係研究 Between (クラスタ間の成分) XBetween YBetween X Y XWithin YWithin Within (クラスタ内の成分) Figure 10 マルチレベル構造方程式モデリング (X = 説明変数,Y = 結果変数) 時系列と階層性の親密な関係研究 英語要約 It is important to examine close relationships because they play a pivotal role in individuals’ growth, development, and well-being. This article presents a novel approach that incorporates individual-dyad hierarchical perspectives from social psychology with the temporal perspectives of developmental psychology. Research on adult attachment shows that there are missing links between developmental and social psychological studies of close relationships. This review explores the possibility of an integrative approach, based on temporal perspectives that investigate the developmental course of attachment style, and hierarchical perspectives which examine the processes involved in dyadic relationships at both individual and dyad levels including structure of interaction and shared relational efficacy. Longitudinal data analyses (cross-lagged model and latent growth curve model) and dyadic data analyses (pairwise correlation analysis, common fate model, and multilevel structural equation modeling) are reviewed to illuminate empirical research methods and data correction issues. Future studies on close relationships require consideration of both developmental and social psychological perspectives. 【Keywords】Close relationships, Adult attachment theory, Individual-dyad dynamics, Longitudinal study, Dyadic data