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平成26年度 学内共同利用施設としての動物実験施設の評価報告書

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平成26年度 学内共同利用施設としての動物実験施設の評価報告書
学内共同利用施設等の組織
に係る評価結果
医学研究科附属動物実験施設
平成27年3月
目
次
Ⅰ.対象施設等の目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
Ⅱ.組織編成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
Ⅲ.評価結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
Ⅳ.意見の申立て及びその対応 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
《付Ⅰ》 対象施設等が実施した自己点検・評価 ・・・・・・・・・・・・・・7
《付Ⅱ》 書面調査及び訪問調査に係る確認事項 ・・・・・・・・・・・・・・17
《付Ⅲ》 対象施設等の将来構想 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21
《付Ⅳ》 外部評価結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25
医学研究科附属動物実験施設
Ⅰ.対象施設等の目的(自己点検・評価書から転載)
【設置目的】
本施設は,
「科学的かつ動物福祉に配慮した動物実験を実施するため,整備された環境の下,実
験動物を集中管理するとともに,実験動物及び動物実験に関する医学教育・研究を実施すること」
を目的とする。
(添付資料-1)
【神戸大学大学院医学研究科附属動物実験施設規則 第 2 条抜粋】
【基本方針】
本施設は,動物実験及び実験動物に関する法令及び学内規則等に基づいて実験動物を適正に飼
育管理し,動物実験が適正に実施されるよう動物実験に関与する者に対して法令遵守及び動物福
祉等について情報提供するとともに活発な研究活動実現のための研究支援を行うことに加え,新
たな実験動物の開発と特性解明に関する固有の研究を実施することを基本方針とする。
(1)医学部及び医学研究科においてより適正な動物実験が実施できる体制の確立
動物実験が生命科学・医学の進歩に果す役割は極めて大きく,動物実験を適正に実施する体制
を確立・発展させることは,医学部及び医学研究科における生命科学・医学研究及び教育の推進
に極めて重要であり,これを通じて社会に大きく貢献できる。したがって,医学部及び医学研究
科で実施される動物実験及び実験動物の飼育管理体制が科学的,倫理的により適正となるよう施
設,設備,教員・技術職員等のスタッフ,予算面を含めた体制の整備を目指すことが重要である。
さらに,情報開示請求への対応等を通して,動物実験の必要性や実験動物に対する医学部及び医
学研究科における倫理的な配慮についての社会の理解をより深める努力が必要である。これらの
目標を達成するためには,動物実験にかかわる全ての研究者及び技術者等に対する苦痛管理を含
めた動物福祉教育の充実が必要である。また,労働安全衛生法に適合した動物実験施設あるいは
実験動物飼育室であるように体制を整える必要がある。
(2)医学部及び医学研究科における研究支援体制の充実
本施設は医学部及び医学研究科における研究支援組織としての役割を果してきた。医学部及び
医学研究科においては,遺伝子組換え動物を用いた研究が増加し,施設内の改修,飼育設備や解
析装置等の導入を通して,それらの要望に対応してきた。今後も,遺伝子組換え動物をはじめと
する病態モデル動物の開発及び研究利用を推進するため,遺伝子組換え動物の系統樹立及び維
持・保存体制の確立等を通して本施設の研究支援体制をさらに充実させる必要がある。
(3)WHHL/WHHLMI ウサギに関する世界的な研究支援センターとしての役割
本学の研究成果の一つであるヒト家族性高コレステロール血症のモデル動物(遺伝性高脂血症
ウサギ,WHHL ウサギ)を本施設は開発,改良,維持しており,国内外の研究機関の要望に対応し
て分与してきた。その後 WHHL ウサギは心筋梗塞を自然発症する系統に改良(WHHLMI ウサギ)さ
れ,脂質代謝,動脈硬化,冠疾患のみならず心筋梗塞を含めた循環器疾患全般に関するモデル動
物として研究に利用されている。また本施設では,国際誌に掲載された WHHL/WHHLMI ウサギを用
い た 研 究 論 文 に 関 す る デ ー タ ベ ー ス を 構 築 し , 本 施 設 の ホ ー ム ペ ー ジ ( http://www.
med.kobe-u.ac.jp/iea/WHHL-home.html)で公開しており,多くの研究者に利用されている。WHHL
/WHHLMI ウサギに関する研究の推進,情報の収集,及び WHHLMI ウサギの供給を通して,本施設
は WHHL/WHHLMI ウサギを用いた研究を支援する国際的な研究支援センターとしての役割を目指
す。
-1-
医学研究科附属動物実験施設
[想定する関係者とその期待]
(1)動物実験従事者
遺伝子組換えマウスをはじめとする実験用動物の導入,衛生的かつ動物福祉に適った適正な飼
育管理の構築
(2)動物実験委員会
動物実験,動物福祉,動物実験に関する法規制,動物実験/実験動物を所轄する文部科学省及
び環境省の動物実験実施体制に関する方針,動物実験に関係する社会の動向,動物実験反対運動
の理念と動向等に関する情報及び専門的な知識の提供
(3)WHHL/WHHLMI ウサギを研究に用いる国内外の研究者
心筋梗塞を自然発症する WHHLMI ウサギの系統維持,特性の解明,供給体制の確立,及び
WHHL/WHHLMI ウサギに関する情報の収集と収集した情報の発信
-2-
医学研究科附属動物実験施設
Ⅱ.組織編成(自己点検・評価書から転載)
本施設は医学部及び医学研究科の共同利用施設であり,医学研究科内の教育研究分野等とは独
立した位置付けである。現在のスタッフは,併任施設長1人,准教授1人,助教1人,特命助教
1 人,技術職員4人,研究支援推進員2人,飼育管理外注技術者6~15人(休日を含めた飼育
管理体制であるため,曜日によって飼育担当者の人数は異なる)である。また,本施設は,動物
実験施設ユーザー委員会及び動物実験施設運営委員会で承認された事項に基づいて運営されてい
る。動物実験施設ユーザー委員会は,本施設を利用又は利用予定の教育研究分野等の長によって
構成され,実験動物の飼育スペース割り当て及び大型機器/設備の維持管理費に関する事項を審
議する。動物実験施設運営委員会は,医学研究科の各教育研究分野等,医学研究科以外で本施設
を利用する教育研究分野等から選出された教員をもって組織し,本施設の管理・運営に関する重
要事項を審議している。
-3-
医学研究科附属動物実験施設
Ⅲ.評価結果
1
判断結果
期待される水準を上回る。
2
判断理由
医学部における共同利用施設として、実験動物を集中管理し、動物実験に関与するものに対
して情報提供や研究支援を行うことに加え、実験動物の開発と特性解明に関する研究実施など
を基本方針とする活動を行っている。
研究支援活動については、動物実験に関する情報提供や講習会の実施、大幅な利用者増、講
習会参加者数、講習会の英語版資料の作成・配布、動物実験計画に関する審査件数、ならびに、
施設の動物を用いた英文研究論文数の増加などから研究支援活動の役割を十分に果たしてい
ることが確認できる。また実験動物の飼育・管理体制が適切であることは、耐震改修された建
物への移転や、病原微生物検査の定期的な実施実績などから確認できる。さらに、
WHHL/WHHLMI ウサギのバイオリソースセンターとしての活動も重要であり、研究成果の
データベース化および実験動物の提供による研究支援の役割は大きいことから、限られたスペ
ース・スタッフの中で、
「期待される水準を上回る」と判断する。
研究活動については、論文や研究成果の発表件数、国内外の共同研究の実績から活発に行わ
れていることが確認され、期待される水準にあると判断する。
教育活動については、大学院・学部における講義を担当するとともに、多数の参加者を対象
とした動物実験講習会を開催し、適正な動物実験や動物福祉について教育・指導を行っており、
期待される水準にあると判断する。
社会的活動・国際交流活動については、学外における講習会や研修での講師、委員会外部委
員、WHHLMI ウサギのバイオリソースとしての国内外への提供並びに系統維持の指導実績な
どから、期待される水準にある。
以上の状況を総合的に勘案すると、
「期待される水準を上回る」活動内容であると判断する。
3
優れた点及び改善を要する点等
【優れた点】
実験動物を集中管理することで、飼育環境の改善を図ると共に、遺伝子組み換え動物の適
○
正な管理や、病原微生物検査の定期的実施が可能となっており、4年間に利用者数が約2万
5千人から3万人弱に増加している点は優れている。
動物実験に関する最新情報の提供、動物実験計画書の審査、動物実験講習会の実施を通じ
○
て、動物実験の適正な実施に大きく貢献している点は優れている。
○
WHHL/WHHLMI ウサギに関する研究支援センターとして、実験動物の提供とともに、
研究成果の蓄積と情報公開の役割を担っている点は非常に優れている。
○
多くの学術研究の成果を公表するとともに、国内外の研究機関との共同研究も活発に実施
している点は優れている。
○
大学院・学部における講義を担当するとともに、毎年 300 名以上の参加者を集める動物実
験講習会を開催し、適正な動物実験や動物福祉について広く教育・指導を行っている点は優
れている。
○
兵庫県、研究機関等等において講習会や研修での講師、委員会外部委員を勤めることで、
-4-
医学研究科附属動物実験施設
知見を社会に還元する活動も行っている点は優れている。
○
WHHLMI ウサギのバイオリソースとしての学外提供を行っており、海外への提供によっ
て国際交流にも貢献している点は優れている。
【改善を要する点】
○
施設が飽和状態であり、かつ少数の教員スタッフの現状では、今後の新たな要望に対応が
難しい。特に、近年開発された簡便なゲノム編集技術の急速な普及によって、施設利用の需
要増が見込まれるので、大きく改善を要する。
-5-
医学研究科附属動物実験施設
Ⅳ.意見の申立て及びその対応
本委員会は、評価結果を確定するに当たり、あらかじめ当該施設等に対して評価結果(案)を
示し、その内容が既に提出されている自己点検・評価書及び根拠資料並びに訪問調査における意
見の範囲内で、意見がある場合に申立てを行うように求めた。
本委員会では、意見の申立てがあったものに対し、その対応について審議を行い、必要に応じ
て修正の上、最終的な評価結果を確定した。
ここでは、当該施設等からの申立ての内容とそれへの対応を示している。
申立ての内容
申立てへの対応
当該施設等からの申立てなし
【参考】
本委員会では、意見の申立てと併せて、評価結果(案)及び自己点検・評価書に関して誤字・
脱字等による字句の修正の有無について確認し、連絡があった場合には、評価結果及び自己点
検・評価書を修正した。
《評価結果に関する字句の修正》
掲載箇所
連絡事項
理
由
理
由
当該施設等からの連絡なし
《自己点検・評価書に関する字句の修正》
掲載箇所
連絡事項
当該施設等からの連絡なし
-6-
医学研究科附属動物実験施設
《付Ⅰ》
対象施設等が実施した自己点検・評価
-7-
医学研究科附属動物実験施設
【平成 20 年度以降の推移】
平成 20 年 11 月: ・耐震改修した研究棟 D に移転
平成 21 年 4 月: ・医学部附属施設から医学研究科附属施設に改組
平成 22 年 10 月: ・国立大学法人動物実験施設協議会教職員高度技術研修「ウサギを用いた橋
渡し研究に関わる知識と技術の習得:基礎から応用まで」を開催
平成 24 年 4 月: ・専任准教授が医科学専攻 生理学・細胞生物学講座 疾患モデル動物病態生
理学分野 戦略的准教授(分野長)を兼任。
・文部科学省 特別経費「ウサギ疾患モデル動物の開発・供給・研究センター
の樹立-心筋梗塞,冠動脈病変,メタボリックシンドロームを発症する
WHHLMI ウサギのバイオリソース-」採択(平成24~26年度)
(1) 目的達成に資する諸活動や成果等の状況
① 研究支援活動
本施設による研究支援活動には,医学部/医学研究科等が実施する実験動物を用いた研究
の支援及び動物実験委員会活動を通した支援がある。
1.医学部/医学研究科等が実施する実験動物を用いた研究の支援
本施設では遺伝子組換え動物をはじめとする実験動物を集中管理している。本施設は平
成 20 年度に耐震改修・増築した研究棟 D に移転し,移転に際し医学研究科の要望に即し,
遺伝子組換えマウス飼育エリアを拡充し,他の動物種の飼育スペースの削減及びサル等の
飼育を廃止した。その結果,マウス(そのほとんどが遺伝子組換え動物)の年間延べ飼育
ケージ数は,平成 22 年度の 1,519,265 ケージから平成 25 年度の 2,033,952 ケージに大幅
に増加し(添付資料-2)
,現在,本施設の稼働率は 90%以上となった。動物を用いた研究
論文(英文)の掲載数は,平成 22 年度の 62 編から平成 25 年度の 102 編に増加した(添
付資料-3)
。年間延べ施設利用者数は平成 22 年度の 25,356 人から,平成 25 年度の 29,574
人に増加した(添付資料-4)
。なお,本施設では,医学研究科のみならず保健学研究科 4
分野及び農学研究科 1 分野からの要望に対応して実験動物を受け入れ,研究を支援してき
た。
学外からの導入動物数は,マウスは平成 22 年度が 8,525 匹で平成 25 年度が 7,491 匹,
ラットは平成 22 年度が 1,192 匹で平成 25 年度が 1,469 匹であった(添付資料-5)
。マウ
スの導入数に増加が認められない理由としては,導入した遺伝子組換えマウスを本施設内
で繁殖して系統維持を行い実験に使用しているためと考えられる。病原微生物に感染して
いる危険性を否定できない特殊な系統動物(遺伝子組換え動物を含む)の導入については,
4~8 週の特殊検疫を実施し,平成 22 年度から平成 25 年度の間に病原微生物に汚染してい
る動物を 1 件確認し,汚染動物の搬入を未然に防止した(添付資料-6)
。飼育動物の病原
微生物検査は,医学研究科(すべて本施設で飼育)のみならず保健学研究科及び六甲台地
区で飼育されている動物を含めて年 4 回実施した(添付資料-7)。当該期間に本施設内飼
育動物で実施した病原微生物検査において抗体陽性動物が確認されたが,いずれも限局性
で拡大することなく収束した。感染経路の特定にはいたっていないが,発生が限局性で拡
大していないことから飼育管理体制には問題ないと考えている。実験動物の感染症対策と
して,使用頻度が低いイヌ/大動物飼育エリアの一部を改修してマウス・ラットの隔離室
を設置した。また,施設利用者に麻酔ビンや体重計,飼育室のドアノブ,共用機器等の使
-9-
医学研究科附属動物実験施設
用前後の清掃/消毒,指定された着衣等の着用等の徹底を周知し,再発防止に努めている。
一方,現在,本施設の飼育スペースは飽和状態であり,現在の医学研究科内の飼育希望
への対応が困難になりつつあり,飼育スペースの拡充が重要な課題である。また,本施設
では,動物福祉に配慮し,元日を含む 365 日の飼育管理(動物の健康状態の観察,ケージ
交換,飼育器材の洗浄・滅菌等を含む)を実施しており,飼育管理を外注しているため,
本施設の利用経費が高額になっている。遺伝子組換え動物の飼育及び系統維持の重要性が
顕著に増大しており,今後は受精卵/胚等の凍結保存,あるいは学外から導入する遺伝子
組換えマウスの SPF 化,遺伝子組換えマウスの系統樹立の支援の必要性が増大することが
予想できる。これらを実施するためには教職員の増員が望まれる。
実験動物の飼育管理は定められた SOP に従って実施されている。元日を含めて毎日全
ての飼育動物の健康状態を観察記録し,健康状態に異常が認められた動物については速や
かに実験者に連絡,あるいは治療を行っている。また,飼育環境のエンリッチメントの重
要性が欧米で浸透しており,本施設においてもイヌとウサギに関しては欧米に匹敵する飼
育設備を設置している。しかし,マウスやラットではエンリッチメント器具の配置は少数
にとどまっている。今後エンリッチメント器具の配置を進めていく必要がある。さらに,
労働安全衛生および災害等に関する危機管理についてもマニュアルを作成し,ホームペー
ジに掲載している。
本施設利用者への情報提供としてホームページを開設し,法令等,学内規則,施設利用
規則,動物福祉への配慮に関する情報を掲載し,必要に応じて掲載内容を更新している。
2.動物実験委員会活動の支援
本施設の教員は「神戸大学動物実験委員会」及び「神戸大学楠地区及び名谷地区動物実
験委員会」の委員として,動物実験に関する国内外の最新の情報,とくに動物実験を所轄
する文部科学省及び環境省の方針ならびに国立大学法人動物実験施設協議会,日本実験動
物学会等からの情報の提供などを通じて学内で動物実験が適正に実施されるよう尽力した。
また,医学部/医学研究科/保健学研究科が実施する動物実験計画書の審査,動物飼育室
及び動物実験室の立ち入り調査を実施し,動物実験委員会が主催する動物実験講習会の講
師を務め,動物実験が適正に実施されるよう協力した(添付資料-8)
。
なお,保健学研究科で飼育されている実験動物の病原微生物検査について,動物実験委
員会の要請に応じて協力している。また,農学研究科等が所属する六甲台キャンパス等で
飼育されている実験動物の病原微生物検査については,六甲台地区動物実験委員会の検査
体制が整う平成 24 年度まで協力した。
② 研究活動
本施設の固有の研究活動は,本施設で開発され,1985 年のノーベル賞(生理学医学部門)
受賞研究及び全世界で 4,000 万人以上に処方されていると推計されているスタチンの開発
(ノーベル賞の候補の一つ)に貢献した WHHL ウサギを重度の冠動脈病変と心筋梗塞が自
然発症するようさらに改良した WHHLMI ウサギ用いた研究活動と WHHLMI ウサギのバイ
オリソースセンターとしての活動に大別できる。
1.WHHLMI ウサギを用いた研究活動
教員スタッフが2人で,平成 24 年度まで大学院生が配属されていなかったにもかかわらず,
平成 22 年度から平成 25 年度までの 4 年間に 19 編の英文原著論文,2 編の英文総説,1 編の
- 10 -
医学研究科附属動物実験施設
英文書籍(分担執筆)を発表し,国際学会で 14 編を発表した(添付資料-9)。これらの研究
のうち,国内外との共同研究は 17 編であった。当該期間に,研究費として厚生労働省科学研
究費補助金(代表及び分担),文部科学省科学研究費補助金(代表及び分担),文部科学省特
別経費(プロジェクト)「大学の特性を生かした多様な学術研究機能の充実」,及び奨学寄附
金を獲得した(添付資料-10)
。また,山梨大学との共同研究の成果を特許出願した(添付資
料-9)
。本施設の代表的な研究活動について以下に示す。
1) 重度の冠動脈粥状硬化病変及び心筋梗塞を自然発症する WHHLMI ウサギに冠スパズム
を誘発し,冠動脈病変の破綻による急性冠症候群を発症させることに成功した。この研
究の結果,冠動脈病変の破綻には冠動脈病変の不安定化に加えて破綻を誘発する物理的
な刺激が必要であることを実験的に証明した。 (Arterioscler Thromb Vasc Biol, 2013;
33(11): 2518-2523)
2) WHHLMI ウサギに冠スパズムを誘発することによって,左心室の運動度が低下し,血清
心筋虚血マーカーが上昇することから,不安定狭心症/非致死性心筋梗塞を発症したと
考えられ,WHHLMI ウサギは急性冠症候群のモデル動物として有用であることを報告し
た。(78th European Atherosclerosis Society Congress, 2010;第 43 回日本動脈硬化学
会学術集会,2011; 5th Congress of Asian Federation of Laboratory Animal Science,
2012; 投稿準備中)
3) WHHLMI ウサギでは心電図の計測において四肢誘導及び胸部誘導でヒトの心電図に対応
した心電図変化を観察でき(マウス,ラットの心電図はヒトと異なる),WHHLMI ウサ
ギは心臓電気生理学的な研究に有用であることを確認した。(Comp Med , 2012; 62
(5):409-418)
4) 空腹時に高インスリン血漿を示す WHHLMI ウサギでは,内臓脂肪が蓄積し,インスリン
抵抗性を示し,内臓脂肪の蓄積量と大動脈の動脈硬化との間に相関が認められ,メタボ
リックシンドロームのモデル動物として有用であることが示唆された。
(Pathobiology,
2012;79(6):329-338)
5) マクロファージにおける VLDL 受容体の発現は,マウスの動脈硬化病変では認められな
いが,WHHLMI ウサギではヒトと同じく発現が認められ,動脈硬化の発生における種差
があることを確認した。
(Biochem Biophys Res Commun, 2011; 407(4):656-662)
6) WHHLMI ウサギで過活動膀胱の症状が認められ,頻尿のモデル動物になる可能性が示唆
された。(Neurorol Urodyn, 2010; 29 (7):1350-1354)
2.WHHLMI ウサギバイオリソースセンターとしての活動
WHHLMI ウサギは毎年実施している病原微生物検査において全項目陰性であり,SPF とし
て維持している。現在なお,WHHLMI ウサギの提供依頼が国内外から多数あり,MTA に基づ
いて平成 22 年度から 25 年度の間に海外 6 カ国,6 機関に 67 匹,国内 13 機関に 527 匹,合
計 594 匹を提供した(添付資料-11)
。WHHLMI ウサギの海外への提供に当たっては,農林
水産大臣から輸出動物の検査場所として指定を受けている。さらに,WHHL/WHHLMI ウサギ
を用いた英文論文を収集してデータベースを作成し,本施設のホームページ
(http://www.med.kobe-u.ac.jp/iea/WHHL-home.html)に掲載(654 編)し,WHHL/WHHLMI
ウサギ利用者に情報提供している。本データベースでは,サブジェクトインデックスから関
連する論文を検索できる。ウサギは近親交配が困難であり,WHHLMI ウサギの形質発現には
複数の遺伝子が関与しており,また研究需要が高いため,精子/胚の凍結保存による系統維
持は現実的ではなく,生体による系統維持を行う必要がある。したがって,系統維持に多額
- 11 -
医学研究科附属動物実験施設
の経費を必要とする。WHHLMI ウサギの系統維持は奨学寄附金等で実施しており,系統維持
及び提供を安定的に継続するためには,WHHLMI ウサギの系統維持を目的とした予算の獲得
が極めて重要である。
③ 教育活動
本施設では,次のとおり学部学生,大学院生,研究者,実験者への教育及び大学院修士課
程学生の研究指導を実施している。
1.講義
いずれの講義においても動物実験が関連する研究成果等の最新の新聞記事を紹介,解説
し,最新の研究動向について学生に関心を持たせ,テキストには記載されていない最新の
考え方を含めて解説している。とくに,実験データの精度を向上させるためには動物福祉
に配慮することが重要であることを具体的に説明している。
・ 医学研究科大学院生を対象とした教育:修士課程バイオメディカルサイエンス B 講義(3
コマ)を担当(平成 19 年度から)。
講義においては,動物実験と動物福祉の関係,動物を用いた実験結果をヒトに外挿す
るためには比較生物学的な検討が必要であること等について解説。
・ 学部学生 1 年次を対象とした講義「現代医療と生命倫理」(1 コマ)
動物実験の歴史,医学研究・医療の発展への貢献,実験動物の福祉,適切な動物実験
等について解説。
・ 学部学生 3 年次を対象とした講義「基礎医学研究」
(1 コマ)
リポ蛋白代謝及び心血管疾患に関する研究で WHHL/WHHLMI ウサギが貢献した研究
を例に取り,動物実験の結果をヒトに外挿するためには疾病の発生機序あるいは代謝過
程や酵素等がヒトと実験に使用する動物で類似している必要があり,遺伝子組換え操作
が万能ではないことを解説。
・ 研究者,実験者等への教育: 「神戸大学楠地区及び名谷地区動物実験委員会」主催の「動
物実験講習会」
(90 分)の講師を毎年務める(平成5年度から)
。
動物実験に関する法令等,文部科学省及び環境省の動物実験に関する方針,動物福祉,
動物実験に批判的な人々の主張等に関し,欧米の事例を交えて解説し,実験動物の適切
な飼育及び動物実験を適正に実施することの必要性を解説。動物実験講習会の受講者は
毎年 353~416 人である(添付資料-8)。しかし,時間が限られており,十分な説明が
困難な状況にある。
2.大学院生(修士課程)の研究指導
平成24年度から本施設の准教授が医科学専攻 生理学・細胞生物学講座 疾患モデル動
物病態生理学分野の分野長を兼任することになり,平成25年度から医学研究科大学院修
士課程バイオメディカルサイエンスの大学院生 1 人の研究指導を開始した。
④ 社会的活動
本施設では,以下の活動を通じて社会に貢献している。
1. 「兵庫県実験動物飼養(保管)施設管理責任者講習会」の講師(平成 22 年,25 年)
。
2. 財団法人 高輝度光科学研究センターの動物実験委員会外部委員(平成 18 年 12 月 4 日
~): 動物実験計画書の審査,動物福祉のあり方及び考え方について情報提供。
3. 神戸医療機器開発センター(MEDDEC)の運営について審議する「医療機器開発センター
運営委員会」委員(平成 25 年): MEDDEC で計画されている動物実験について動物実
- 12 -
医学研究科附属動物実験施設
験の専門家として指導を行った。
4. 国立大学法人動物実験施設協議会教職員高度技術研修「ウサギを用いた橋渡し研究に関
わる知識と技術の習得:基礎から応用まで」を開催(平成 22 年度)
。
5. 製薬会社等で,動物実験における動物福祉,動物実験における危機管理等に関する講演
(平成 24 年度,23 年度)
。
6. 社団法人 日本実験動物協会 実験動物技術指導員(平成 20 年~)
。
7. 日本実験動物学会評議員。
8. 日本実験動物学会教育研修委員会委員(平成 24 年度~)
。
9. 日本実験動物学会誌 Experimental Animals 編集委員(平成 24 年度~)。
10. 日本動脈硬化学会評議員。
11. 関西実験動物研究会幹事。
12. ウサギバイオサイエンス研究会幹事。
13. 学術雑誌 9 誌の査読。
14. ホームページを介した動物実験の必要性,動物福祉,危機管理等に関する情報提供。
⑤ 国際交流
本施設では WHHLMI ウサギを MTA に基づいて海外の研究機関に提供(平成22年度から平成
25年度の間に 6 カ国,6 機関に 67 匹を提供)するとともに,WHHLMI ウサギの系統維持方法
について,指導を行っている(添付資料-11)
。また,4カ国 15 機関と共同研究を実施した。
(2) 水準
期待される水準を大きく上回る。
(3) 水準の判断理由
① 研究支援活動
◆実験動物の飼育管理
以下の理由に示すとおり,本施設は有効に活用されており医学研究科の研究推進に貢献
している。
・遺伝子組換え動物の飼育希望に対応して,マウスの年間延べ飼育ケージ数が平成 22 年度
の 1,519,265 ケージから平成 25 年度の 2,033,952 ケージに大幅に増加した
(添付資料-2)
。
・本施設利用分野等の動物を用いた研究論文(英文論文)が平成 22 年度 62 編から平成 25
年度 102 編に増加した(添付資料-3)
。
・病原微生物に感染している危険性を否定できない特殊な系統動物(遺伝子組換え動物を含
む)について 4-8 週の特殊検疫を実施し,
安全性を確認した上で導入した(添付資料-6)。
・動物間の感染症に適切に対応し,感染拡大を防止した。
・ウサギとイヌの飼育においては欧米と同水準の飼育設備を配置している。
◆動物実験委員会活動(添付資料-8)
・
「動物の愛護及び管理に関する法律」の改正に伴う,動物実験/実験動物に関する国の基
- 13 -
医学研究科附属動物実験施設
準,指針等の改正に関し,いち早く正確な情報を委員会に報告した。
・
「研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針」
(文部科学省)に基づいて各研
究機関が動物実験を機関管理/自主管理し,文部科学省の基本方針への適合性に関する自
己点検評価を実施し,その結果について外部評価/相互評価を受検し,情報開示するとい
う文部科学省の方針を動物実験委員会に報告した。
・感染実験あるいは環境汚染物質を用いる動物実験に関して,本施設では学内規定より厳格
な当該実験室の使用規則を定め,バイオハザード及びケミカルハザードに配慮した。
・楠地区及び名谷地区(医学研究科及び保健学研究科)におけるすべての動物実験計画書,
動物飼育室申請書,動物実験室申請書を審査した。
・医学研究科及び保健学研究科で開催される動物実験講習会で講師を行った。
② 研究活動
・平成 24 年度まで大学院生等の指導ができず,教員スタッフが2人であったにもかかわらず,
平成 22 年度から平成 25 年度までの4年間に 19 編の英文論文を発表し,国際学会で 14 編
を発表した(添付資料-9)
。
・国内外の研究機関と共同研究を実施した。
・特許を 1 件申請した(添付資料-9)
。
・科学研究費補助金等の研究費を毎年獲得(添付資料-10)
。
・国内外の研究機関に WHHLMI ウサギを 594 匹提供した(添付資料-11)
。
③ 教育活動
・大学院修士課程,学部学生を対象とした講義を実施。
・動物実験従事者を対象とした講習会の講師を担当(添付資料-8)
。
・平成 24 年度から大学院修士課程学生の研究指導。
④ 社会的活動
・兵庫県,研究機関等から講師,動物実験委員会委員等を委嘱され,関係機関で動物実験を
適正に実施するための考え方の普及等に関して貢献した。
・学会等において各種委員等を委嘱され,学会活動に貢献した。
・複数の学術雑誌の編集委員,査読者として投稿論文の審査を行った。
⑤ 国際交流
・MTA に基づいて WHHLMI ウサギを提供し,脂質代謝,動脈硬化に関する研究に貢献した。
・海外の複数の研究機関と共同研究を実施した。
以上の理由から,
「期待される水準を大きく上回る」と判断した。
(4) 優れた点及び改善を要する点
■優れた点
① 研究支援活動
◆実験動物の飼育管理
- 14 -
医学研究科附属動物実験施設
・本施設の稼働率が 90%以上であり,本施設を用いた研究論文数が増加している点が優れて
いる。
・元日を含めて毎日実験動物の福祉に配慮した飼育管理を実施している点が優れている。
◆動物実験委員会活動
・動物実験に関する最新の情報を動物実験委員会及び実験者に提供し,研究支援活動を実施
している点が優れている。
② 研究活動
・ 冠スパズムが急性冠症候群のトリガーになることを WHHLMI ウサギを用いて実験的に証
明した点が優れている。
・ リポ蛋白代謝に関する種差をまとめて総説して発表した。
・ WHHLMI ウサギを毎年継続的に 100 匹以上提供している点が優れている。
③ 教育活動
・講義に関連する研究成果等の最新の新聞記事を学生に紹介,解説し,最新の研究動向につ
いて学生に関心を持たせている点が優れている。
・ 国内外の動物実験に関する法規制,制度,動向等の関連情報を毎回更新して紹介した。
・実験動物の福祉と愛玩動物の福祉が異なることを説明し,実験データの精度を向上させる
ためには動物福祉に配慮することが重要であることを具体に説明している点が優れている。
④ 社会的活動
・自治体が主催する「兵庫県実験動物飼養(保管)施設管理責任者講習会」の講師を務める
など,学外においても動物実験/実験動物の専門家として適正な動物実験の普及に貢献し
ている点が優れている。
・学会等の幹事,評議員,各種委員等を担当した。
・学術雑誌 9 誌の投稿論文の審査を担当した。
⑤ 国際交流
・WHHLMI ウサギを毎年継続的に提供している点が優れている。
・海外の複数の研究機関と共同研究を実施した。
■改善を要する点
① 研究支援活動
◆実験動物の飼育管理
・現在,本施設のマウス飼育スペースは飽和状態であり,飼育スペースの拡充が必要である。
・動物間の感染症対策を徹底する必要があり,そのためには残されているマウス飼育用オー
プンラックをラミナフローラック,個別換気ラック等に更新する必要がある。
・実験動物の飼育においては飼育環境のエンリッチメントが求められている。ウサギに関し
ては欧米に匹敵する飼育設備を使用しているが,マウスやラットに関してはエンリッチメ
ント器具の導入を推進することが求められる。
・常勤の飼育管理スタッフが不足(現在,飼育管理を担当する常勤職員 2 人)しており,飼
育管理を外注(6~15 人,曜日によって異なる)しているため,本施設の利用料が高額に
なっている。常勤の飼育管理スタッフの増員が望まれる。
- 15 -
医学研究科附属動物実験施設
・遺伝子組換え動物の飼育及び系統維持の重要性が顕著に増大しており,今後は受精卵/胚
等の凍結保存,あるいは学外から導入する遺伝子組換えマウスの SPF 化,遺伝子組換えマ
ウスの系統樹立等の支援の必要性が増大することが予想できる。しかし,現員ではこれら
に対応することが困難であるため,これらを実施できる教職員の採用が望まれる。
◆動物実験委員会活動
・本施設の専任教員が「教授」でないことから,新しい情報に基づく提言を行った場合に十
分に尊重されないことが想定され,研究機関として適切な動物実験委員会活動を遂行する
ためには,本施設に実験動物及び動物実験に関して見識を有する専任の教授を配置するこ
とが望ましい。
② 研究活動
・研究スタッフの不足により,研究の進行が遅れており,研究スタッフの増員が望まれる。
③ 教育活動
・講義時間が不足している。
④ 社会的活動
・限られた時間の中で,本活動を実施するためには,スタッフの増員(現在教員 2 人)が望
まれ,さらに,対外的には専任の教授を配置することが望ましい。
⑤ 国際交流
・WHHLMI ウサギの提供をとおして国際交流に貢献しているが,海外の研究機関と対等に交流
するためには本施設に専任の教授を配置することが望ましい。
- 16 -
医学研究科附属動物実験施設
《付Ⅱ》
書面調査及び訪問調査に係る確認事項
- 17 -
医学研究科附属動物実験施設
書面による確認事項
自己点検・評価書の分析を行った結果、確認を要する事項があったことから、平成 26 年 11 月
17 日(月)に対象施設等へ書面照会を行った。確認事項及び対象施設等の回答は以下のとおり。
(原文転載)
書
面
調
査
に
係
確認事項
る
確
認
事
項
回
答
①研究支援活動
⑤国際交流
・
施設を利用する留学生や外国人研究者に対 動物実験施設の教員が、同一日に連続して開催
して、英語により動物実験に関する講習や情 される動物実験委員会の「動物実験に関する講
報提供を行っている場合には、その資料を確 習会」
(関連法規等、文部科学省の方針、学内規
認したい。
則、動物福祉、欧米の動向、人獣共通感染症、
緊急時の対応等について)と動物実験施設の「動
物実験施設利用者講習会」
(動物実験施設の利用
規則および注意事項)について講習会の講師を
担当している。いずれの講習会についても、ス
ライドは日本語と英語の両方を併記している
(資料-1、2)。「動物実験施設利用者講習会
テキスト」については、日本語版と英語版(資
料-3)を作成して配付している。動物実験委
員会と施設教員が協力して作成した動物実験講
習会テキストについては、そのエッセンスにつ
いて英語版(資料-4、5、6)を作成してい
る。留学生を対象とした英語による講習会につ
いて動物実験委員会に提案中である。
①研究支援活動
・
遺伝子組み換え動物を取り扱う施設である 動物実験施設の教員は動物実験委員会の委員を
ことから、遺伝子組み換え実験安全委員会と 委嘱されており、医学研究科及び保健学研究科
協力関係・連絡体制を構築していることが望 の動物実験室の立入り調査に同行し、逸走防止
ましい。協力・連絡体制の状況について把握 対策、遺伝子組換え動物に関する飼育ケージや
できる資料があれば確認したい。
実験室の表示等について確認、指導している。
また、遺伝子組換え動物を用いた動物実験計画
書の審査に当たっては、実験従事者の登録状況、
実験に使用する遺伝子組換え動物、実験室、不
活化処置等に関し、動物実験計画書と遺伝子組
換え実験計画書の整合性および適切性について
確認し、指導している。
- 19 -
医学研究科附属動物実験施設
訪問による確認事項(訪問調査)
書面調査の結果、訪問による調査の必要はないと判断した。
- 20 -
医学研究科附属動物実験施設
《付Ⅲ》
対象施設等の将来構想
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医学研究科附属動物実験施設
将来構想
(1)研究支援活動について
本施設は,平成 20 年度に改修・増築された現施設への移転に際し遺伝子組換えマウス飼育
エリア,行動実験エリア,P2A に対応した感染動物実験エリアを充実させたが,平成 25 年
度にはマウスの飼育ケージ数が日平均 5,000 ケージを超え,本施設はすでに飽和状態となっ
ている。施設移転後,医学研究科の支援のもとにマウス飼育設備の補充・更新,高圧蒸気滅
菌装置の増設,X 線 CT 装置,小動物イメージング装置等の解析装置の導入等,実験環境の
整備に努めてきた。しかし,未だにマウス飼育用オープンラック 32 台を使用しており,飼育
動物の感染症予防対策として,これらのオープンラックをラミナフローラックあるいは個別
換気ラックに更新する必要がある。更新に当たって現在より多くのケージを収容できる飼育
ラックを導入することによって,より多くのマウスの飼育が可能になる。イヌ及び大動物の
飼育数が激減していることから,このエリアを改修してウサギ用飼育室の一部をこのエリア
に移転し,移動したウサギエリアをマウス・ラット飼育室に改修することによって,マウス
の飼育スペース 524 ケージ相当を確保したい。また,飼育環境のエンリッチメントは世界的
な流れであり,本施設においてもマウス・ラット飼育ケージへのエンリッチメント器具の配
置を推進したい。遺伝子組換えマウスを用いた実験の支援については,遺伝子組換え動物の
作製・系統樹立を支援し,研究推進に貢献することが今後の重要な課題である。そのために
は,専任の教職員の配置が必要である。
文部科学省は,各研究機関が実施する動物実験について文部科学省が定めた「研究機関等
における動物実験等の実施に関する基本指針」への適合を強く求めており,研究機関の責任
において機関内で動物実験を適切に自主管理することを指導している。医学研究科のみなら
ず学内で動物実験がより適正に実施されるよう,今後とも動物実験委員会に動物実験に関す
る最新の情報を提供し,また,
「動物実験講習会」を通して動物実験従事者への情報提供に努
め,本学における動物実験実施体制がより適切になるよう努めたい。そのためには,動物実験
及び実験動物に精通した専任の教授を動物実験施設に配置することが望ましい。
(2)研究活動について
近年の研究によって本施設は WHHLMI ウサギに冠スパズムを誘発することにより冠動脈
病変に破綻が生じ,急性冠症候群を誘発することを実験的に証明した。しかし,冠動脈病変
の破綻の頻度が極めて低いことから,発生頻度を向上させることによって急性冠症候群のモ
デル動物を開発することが当面の研究上の課題である。さらに,WHHLMI ウサギでは,血清
コレステロール値が冠動脈病変の重症化や心筋梗塞の発症と相関しておらず,血清コレステ
ロール値以外の因子がこれらの二次疾患の発症に関係していることが強く示唆されている。
この因子を特定することによってヒトの虚血性心疾患の発生予防に大きく貢献できることが
期待でき,また,WHHLMI ウサギの系統維持の指標としても活用できる。この分野の研究の
推進も重要である。さらに,スタチンの開発によって心疾患の発生率を 30~40%低減できる
ことが大規模臨床試験によって示されているが,この結果は 60~70%の患者の虚血性心疾患
の発症を抑制できていないことを示している。したがって,WHHLMI ウサギを用いた新たな
治療薬を開発することも今後の重要な課題である。
WHHLMI ウサギのバイオリソースセンターとしての活動においては,系統維持/提供を安
定的に継続するための経費の獲得が重要な課題である。WHHLMI ウサギを用いた研究論文の
収集,ホームページを用いた WHHLMI ウサギを用いた研究論文に関するデータベースの公開
- 23 -
医学研究科附属動物実験施設
を今後とも継続していくことによって,WHHLMI ウサギに関する研究の推進,情報の収集,
及び WHHLMI ウサギの供給を通して,WHHLMI ウサギを用いた研究を支援する国際的な研
究支援センターとしての役割を果たしたい。そのためには教員スタッフの増員が望まれる。
(3)教育活動について
医学史を紐解くと,医学,生物学等の生命科学の発展に動物実験が果した功績は極めて大
きい。さらに,今後の医学・生命科学の進展においても動物実験が果す役割はきわめて大きい
と考えられる。しかし,社会の一部に動物実験無用論あるいは動物実験廃止論があることもま
た事実である。将来動物実験に関与する学生が動物実験について正しい知識を持ち,動物実
験を適正に実施できるよう,動物福祉,動物実験にかかわる法規制,動物実験における科学
的背景等を理解させることは重要であり,実験動物学に関する講義の充実が望まれる。さらに,
学部学生,留学生を対象とした動物実験講習会の開催が望まれる。
(4)社会貢献等について
一般市民との対話や情報開示請求への対応を通して,動物実験の必要性,動物実験におけ
る動物福祉の考え方及び動物実験における苦痛軽減の努力に関する知識の普及に努め,学術
雑誌への総説の発表により,動物実験関係者の意識改革に努めることを目指す。さらに,講習
会を通して,広く動物実験に関与する飼育管理技術者を含め,適切な動物の取扱や動物福祉,
動物実験の必要性に関する技術と知識の提供に努めたい。
(5)国際交流について
神戸大学で開発され,1985 年のノーベル賞受賞研究に貢献し,ノーベル賞候補となってい
るスタチンの開発に貢献した WHHL ウサギをさらに改良した WHHLMI ウサギは神戸大学医
学研究科でのみ系統維持されており,現在なお,国内外から提供依頼が多数ある。当施設で
は,WHHL および WHHLMI ウサギの研究成果を収集し,ホームページで情報提供しており,
WHHLMI ウサギの海外への提供を継続していることから,今後とも WHHLMI ウサギ研究支
援センターとしての役割を果たしていきたい。また,海外の研究機関との共同研究も今後と
も推進していきたい。海外の研究機関と対等に交渉するためには,WHHLMI ウサギに精通し
た専任教授を配置することが望まれる。
(以上)
- 24 -
医学研究科附属動物実験施設
《付Ⅳ》
外部評価結果
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医学研究科附属動物実験施設
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医学研究科附属動物実験施設
- 28 -
医学研究科附属動物実験施設
- 29 -
医学研究科附属動物実験施設
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