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カナダ森林大臣協議会 概況報告書

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カナダ森林大臣協議会 概況報告書
カナダ森林大臣協議会
概況報告書
グリーンビルディングと木の効用
木材は扱いやすく、耐久性があり、安全・快適
で美しいため、常に人気の建築材料です。気候
変動への懸念が高まる中、再生可能資源である
ということや、森林が炭素を吸収して貯留して
くれることを理由として、木材はさらに魅力的
な選択肢となっています
世界人口や資源需要の増加に伴い、
木材などの再生可能資源は消費者に
とって責任ある選択肢となっていま
す。カナダの様々な木材製品はあら
ゆる建築や改築のニーズに対応で
き、また、包括的な法令や、適切に
管理されている森林から調達したも
のであることを証明する第三者認証
によっても後押しされています。
新技術を採用することで木材の効率
性が高まっています。エンジニアー
ドウッド製品は強度が高く、幅広い
用途に使えるため、その利用はより
大型の商業・公共構造物にも広がっ
ています。エンジニアードウッドを
製造する場合、どの生産段階におい
ても廃棄物量が抑えられます。
建築物の建設、改築、運用に使用す
る製品の選択は、環境に大きな影響
を与えます。世界中で実施された数
多くのライフサイクル評価に関する
調査から、木材製品は他の主要な建
材よりも環境フットプリントが少な
いことが示されています。
ライフサイクル評価は国際的に認知
されている手法で、定量的指標を用
います。この評価を意思決定の一環
として用い、さまざまな建築資材や
WWW.SFMCANADA.ORG
建築構法が与える環境影響や、そこ
に存在する間に建物全体が与える環
境影響を比較することもできます。
場合によっては、ライフサイクル評
価が驚くような結論を導き出すこと
もあります。特に元の製品が再生可
能なもので、リサイクルに大量のエ
ネルギーが必要となる場合合には、
リサイクル製品でない原材料のほう
が環境に優しい選択肢となることも
あるのです。現地製品の利用が環境
にとって望ましいといえるのは、そ
うした製品がエネルギー消費や汚染
を低減するものである場合のみで
す。
Athena® EcoCalculator for
Assemblies(アシーナ研究所開発
の工法環境影響評価ソフト)はライ
フサイクル評価の簡易版で、建築家
やエンジニアなどが何百もの建築工
法の環境影響について評価や比較を
行うことができるものです。この
ツールは、新築建造物や改築に一般
的に用いられている設計を評価する
こともでき、ウェブサイト(www.
athenasmi.ca)から無料で入手で
きます。
グリーンビルディング格付ツール
建築業界の専門家が製品や設計の選
択について環境パフォーマンスを評
価できるよう、数多くの総合的な格
付システムがあります。
効果的なシステムは、比較の際に一
貫した科学的根拠を示すことがで
き、持続可能な設計の重要な技術的
側面を評価すると同時に、伝達や実
施がしやすいものです。最良のシス
テムは、慣例に倣うのではなく、イ
ノベーションを促進させ業績を上げ
るものです。
木造枠組工法住宅
北米の典型的な木造枠組工法住宅
には29トンの炭素が含まれてい
ます。これは、乗用車を5年間運
転して発生する温室効果ガスの
排出量を相殺する量(ガソリン約
12,200リットル(3,200米ガロ
ン))に相当します。
木材が良い選択であることを示すライフサイクル評価
木造と比較した影響度
300%
250%
木造
鉄骨
構造断熱パネル(SIP)
コンクリート
コンクリートブロック
断熱コンクリート型枠
(ICF)
200%
150%
100%
50%
0%
各外壁部材の内包環境負荷
エネルギー
気候変動
大気汚染
この図は、5つの選択可能な建築システムと典型的な木造枠組工法外壁とを環境パフォーマンスで比較したものです。木造を基準
値として100%に設定しています。データ統計は、FPInnovationsがカナダのバンクーバーに適したデータセットを用いて行いま
した。他の地域では結果が若干異なる場合もあります。
一般的に使用されている北米のグリ
ーンビルディング格付システムの例
•
Green Globes—評価プロトコ
ル、格付システム、環境に優し
い設計を商業ビルに導入するた
めのガイドを組み込んだウェブ
ベースの管理ツール
•
Leadership in Energy and
Environmental Design (LEED)—
高性能のグリーン建築の設計・
建設・運用の基準を示すグリー
ンビルディング格付システム
•
The ICC 700 NAHB National
Green Building Standard—全米
住宅建設業者協会があらゆる住
宅建設業者およびリフォーム業
者向けに策定した規格で、グリ
ーン住宅の設計・開発・建設施
工を認定・表彰する基準を示す
もの
評価ツールは、カナダの「Built
Green」および「R2000」、イギリ
スの「Building Research
Establishment’s Environmental
Assessment Method (BREEAM)」
、日本の「建築物総合環境性能評価
システム(CASBEE)」など、世界
中の国々にあります。
WWW.SFMCANADA.ORG
木:グリーンビルディングに最適な
選択肢
コンクリートやプラスチック、金
属、その他の材料と比較して、木材
製品を製造する方がエネルギーの消
費量が少なく、大気環境や水質に与
える影響も少ないことが調査結果か
ら明らかになっています。木材は再
生可能であり、成長を続ける森林は
多くの環境価値や社会的価値を支え
ます。
北米で生産されるエネルギーの3分の
1は建物の暖房・冷房・運用に使用さ
れていることから、省エネルギーは
グリーンビルディングの優先事項と
いえます。木には天然の熱効率性が
あり、小さな空洞のある組織構造が
熱の流れを妨げます。
木材の長所は、建物の運用に必要な
エネルギーと内包エネルギーのどち
らにも関連性があります。内包エネ
ルギーとは、直接、間接を問わず、
原料採取から処分に至るまで、製品
が寿命全体を通じて要する総エネル
ギーのことで、その重要性は、運用
エネルギー効率の向上に伴ってます
ます高まっています。
木造、鉄骨、コンクリート造住宅の
環境影響を比較した再生可能産業資
材研究協会(CORRIM)による米国
の調査では、鉄骨とコンクリート造
の住宅を製造する場合、発生する温
室効果ガスは木造住宅よりもそれぞ
れ26%と31%多いことが明らかにな
りました。同じ調査から、木造住宅
に比べて鉄骨およびコンクリート造
の住宅の方が、含まれている内包エ
ネルギーも放出する大気汚染物質も
多いことが示されています。
この最良の建築資材は、構造物の寿
命期間に耐えられる十分な耐久性が
あり、建物の耐用年数終了後は再利
用することができます。汎用性と柔
軟性に富む木材を使用すれば、改築
も容易です。最近の調査では、木材
は解体後に再利用される可能性が最
も高いことも示されています。
北米の建物の大半は、ニーズの変化
のため50~60年で解体されていま
す。したがって、建物の設計は、新
たな用途に簡単に対応できるよう、
あるいは材料の再利用やリサイクル
が可能なように解体できるように行
うのが得策です。
木材利用の奨励
イングランド地方にある9階建木
造集合住宅(Stadthaus)は、
現在世界で最も高層の木造住宅
構造物です。また、大型エンジ
ニアードウッド製品で構成され
る20~30階建の純木造構造物を
実現させる取り組みが設計者ら
によって行われています。大き
なサイズの耐力壁を得られる大
型の木製パネル製品は比較的小
径木から作ることができます。
カナダでは、2009年1月にブリ
ティッシュ・コロンビア州政府
がブリティッシュ・コロンビア
州建築基準法の木造構造物の上
限を4階から6階に引き上げまし
た。ケベック州自治体連合で
は、公共・商業・住宅用建築物
に木材の使用を奨励する決議が
可決されています。
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