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詳細 - 日本心理学会
日心第71回大会 (2007)
指の長さの比(2D:4D)は集団間バイアスを予測するか
○大江朋子・金ジユン・繁桝算男
(東京大学大学院総合文化研究科)
Key words: 集団間バイアス、指の長さの比(2D:4D)、感情温度計
韓国人)とで比較する多変量検定を行うと、指の長さの比(F
(1, 144) = 11.10, p < .01)、指の長さの比×性別(F (1, 144) =
5.69, p < .05)、共感指数(F (1, 144) = 20.57, p < .001)の効果
に日本人と他の集団との違いがみられた。そのうち、指の長
さの比、及び、指の長さの比×性別の効果は、日本人に対す
る評定には影響せず、他の集団に対する評定に影響していた。
交互作用効果の内容を調べると、男性参加者よりも女性参加
者において指の長さの比の効果が強く現れていた。共感指数
の効果は、日本人に対しても、他の集団に対しても有意であ
ったが、日本人に対する評定よりも他の集団に対する評定へ
の効果が大きかった。
多重共線性の問題を考慮し、同様の分析を多変量共分散分
析でも行った。このとき、指の長さの比は低中高の 3 群に分
割した。結果は多変量重回帰分析と同様であった(Figure 1)。
指の長さの比は集団間バイアスに影響し、その効果は共感
指数とは独立のものであった。参加者と同じモンゴロイドで
ある韓国人に対する評定値にも、指の長さの比の効果がみら
れた。3 大人種のような区分ではなく、対象集団との関係性
や外集団としての知覚が感情温度計の評定値に影響している
ことを示唆する結果である。
Table 1
Multivariate multiple regression of feeling thermometers
Multivariate Tests
2digit/4digit ratio
sex
2digit/4digit x sex
EQ(empathy quotient)
Notes)
All target groups
Japanese vs. others
Wilks' λ
Wilks' λ
.948
.999
.975
.845
F
7.96 **
.11
3.72 +
26.48 ***
.928
.982
.962
.875
F
11.10 **
2.67
5.69 *
20.57 ***
+ p < .10, * p < .05, ** p < .01, *** p < .001,
70
Feeling Thermometer
外集団よりも内集団に肯定的な感情をもつ傾向とその原因
については、これまで主に社会心理学的な検討がなされてき
た(e.g., Mullen et al., 1992)。本研究では、このような集団間
バイアスに関係すると考えられる生物学的要因、胎児期に受
けたテストステロンの影響を検討する。その指標の一つは人
差指と薬指の長さの比(2D:4D)であり、この比が小さい(人
差指に対し薬指が長い)ほど、胎児期にテストステロンの影
響を強く受けたとされる(Manning et al., 2003)。この比は様々
な人格特性に関係し、特に攻撃性及び共感性との関係が検討
されている。攻撃性に関しては、指の長さの比が小さいほど、
戦争のシミュレーションゲームで相手より先に攻撃しようと
する傾向があり(McIntyre et al., 2007)、身体的攻撃の尺度得
点が高い(Bailey & Hurd, 2005)といった報告がある。共感性
に関しては結果が一貫せず、指の長さの比が大きいほど協調
的である(Luxen & Buunk, 2005)、指の長さの比と共感性尺度
とは相関しない(Voracek & Dressler, 2006)という報告がある。
集団間バイアスは外集団に対する間接的な攻撃とみなすこ
ともでき、指の長さの比が小さいほど外集団に否定的な感情
をもつと予測できる。一方、共感性は集団間バイアスと負の
関係にあり(Oe et al., 2007)、共感性が高いほど外集団に対す
る否定的感情が抑制される。本研究では、指の長さの比と共
感性が、集団間バイアスとどのような関係にあるかを調べた。
方 法
参加者と手続き 関東圏内の 1 大学の学生 157 名(男性 102
名、女性 55 名)が、社会心理学の講義の時間帯に質問紙調査
に参加した。後日、彼らの指の長さを個別に測定した。講義
を欠席し、質問紙に回答しなかった者を除き、149 名(男性
96 名、女性 53 名)を分析対象とした。
質問紙 質問紙には、共感性、及び、特定の集団に対する
感情を測定する尺度が含まれていた。共感性の尺度には、40
項目からなる共感指数(EQ; 若林他, 2006)を用い、参加者
に 5 件法で回答させた(あてはまらない(1)~あてはまる(5))。
集団に対する感情の測定には感情温度計を用い、日本人、白
人、黒人、韓国人のそれぞれに対する温度を評定させた(冷
たい/好ましくない(0)~あたたかい/好ましい(100))。共感指数
は、参加者ごとに 40 項目の平均値を算出した。
指の長さ 2 名の測定者が、各参加者の両手の人差指と薬
指の長さを、電子ノギスを用いて 0.01mm 単位で測定した。
各参加者の各指に対して測定者間の平均を算出した後(測定
者間の r (628) = .954)、各参加者の指の長さの比を右手と左手
のそれぞれで算出し(右手と左手の r (157) = .638)、最後に両
手の比の平均値を算出した。
結果と考察
指の長さの比と共感指数には相関がなく、これらの値に有
意な性差はみられなかったため、感情温度計の評定値を目的
変数とする多変量重回帰分析を行った(Table 1)。説明変数は、
指の長さの比、性別、指の長さの比×性別の交互作用、共感
指数である。全集団に対する分析の結果、指の長さの比(F (1,
144) = 7.96, p < .01)と共感指数(F (1, 144) = 26.48, p < .001)
の効果が有意であり、いずれも値が大きいほど各集団を肯定
的に評定していた。性別の効果、及び、指の長さの比×性別
の交互作用効果は有意水準に達しなかった。
各説明変数の効果を日本人と他の対象集団(白人、黒人、
60
50
40
Japanese
White
30
Black
Korean
20
Low
Middle
High
Finger Digit Ratio (2D:4D)
Figure 1
MANCOVA of feeling thermometers
(OE Tomoko, KIM Jiyoon, SHIGEMASU Kazuo)
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