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自動車産業におけるトレーサビリティー

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自動車産業におけるトレーサビリティー
自動車産業におけるトレーサビリティー
はじめに
部品トレーサビリティープログラム実施の目的
世界の自動車産業は、常に変化し続けています。経済のグローバル
製造から廃棄までのデータをすぐに把握できる可視性は、部品の製
化、
厳しい競争、
新興成長市場などがすべて要因となり、
生産目標、
サ
造、
保管、
そしてサプライチェーンを通して配送を行うものにとって、
とて
プライヤ、
長期戦略の継続的な見直しが迫られています。
も重要です。
それらのデータが、生産量の算出、在庫の管理、売上の
品質の向上、
コストの削減、
工程の最適化、
最終的にはサプライチェー
予測、保証、修理、
サービス/サポートのほか、各種事業の運営に利用
ン全体でTTC(Time-To-Customer)
を改善することに重点を置き、
されるからです。
また、
スループットの向上と生産コストの削減も極めて
強力なトレーサビリティー構想を確立させることが、企業全体の成功に
重要です。
とって重要な要素となります。
自動車産業におけるトレーサビリティーとは、特定の車種またはラインア
ップに関連する部品とサブアセンブリの系統を記録するプロセスです。
追跡される情報の種類はアプリケーションによって異なりますが、一般
的に収集される情報としては、
次のものがあります。
工程管理
リアルタイムの追跡システムは、
ゾーンからゾーンへと作業場の移動に必要
な情報を提供することで、
リードタイムの短縮とサプライチェーンの最適化に
役立ちます。
これは仕掛品(Work In Process: WIP)確認に基づく追跡シ
ステムであり、
データを注文管理システムおよびほかの制御システムと関連付
けます。
ボトルネックまたは問題を発見した場合には、
その問題の内容や、工
• 製造元
• 部品番号
• 製造工場または組立工場
• モデル番号
• 原産地
• シリアル番号
エラー防止手法の導入
• 製造時刻と日付
• アセンブリで使用されている部品
ポカヨケ
(無駄のない生産工程のために使用されるエラー防止策)
によって、
• ロット番号
• 有効期限など
正しい部品に対して適切な処理が正しい順序で実行されていることが保証
これらのデータのすべてを蓄積し組み合わせてバーコードを作成し、
部品に印字することができます。
バーコードリーダは、部品のライフサイ
クルを通してデータをデコードし、情報を確実にERP(エンタープライズ
リソースプランニング)
ソフトウェアシステムに転送することによって、完
成車両の各部品のトレーサビリティーを保証します。
「自動車には1万~2万点もの部品が使われているのに、
そのすべて
にバーコードを付ける価値はあるのですか」
という疑問が出てくるかも
しれませんが、 実際に価値があります。
詳細については、
このエキスパ
ートガイドで説明します。
程内での発生場所を知ることができます。
されれば、部品の品質が向上します。
コード読み取りによって、部品番号を
手動で入力する必要がなくなるため、
エラーをなくすことができます。
また、
安
全、責任、保証上の問題に対応できるようになります。
さらに、盗難や偽造の
対象となる重要な部品の恒久的な識別に関する規制上の要件を満たすこ
とができます。
不良品とリコールの防止
General Motors社の生産技術部門のグローバルマネージャLarry Graham
氏は、
次のように述べています。
「この業界で“スピル:流出”と呼ばれる不良部品をサプライヤの工場で処理
すると、
その費用は25,000~500,000ドルになる可能性があります 1」。
これは、
問題を見つけ出して解決、
さらにその問題の影響を受ける部品をすべて見
つけ出して修正するためにかかる費用です。
この部品がさらに下流の組立
工場にまで影響を及ぼす場合は、
それを修正するための費用は飛躍的に増
加し
(最大で100万ドル)、
さらに自動車メーカーにおけるサプライヤとしての
評価も下がることになります。消費者が自動車を運転しているときに問題が
発生するようであれば、
リコールにかかる費用の総額はその10倍になる可能
1. Autonews.com
(2003年12月15日)
『INFORMATION TECHNOLOGY : Tracking parts problems : It’s all in the details.』
2011年9月15日取得
性があります。確かなトレーサビリティープログラムを実施すれば、修正やリコ
ールの費用を最小限に抑えられ、
生産中断のリスクも最小化できます。
完全な自動車部品トレーサビリティー
生産工程のすべての段階で部品およびサブアセンブリにマーキングを実行することで、完全なトレーサビリティーを確保できます。
あらゆるアプリケーションと予算に対応するコグネックスの画像ベースのIDリーダにより
コード読み取りの選択に関する制限はなくなります。
部品レベル
シリアル番号と、数量、
日付、原産地、
サプラ
サブアセンブリ
イヤなどの情報は、
バーコードに変換し、部
れたデータを、
ERPシステムに統合することに
品に直接マーキングしたりラベルに印刷す
よって、製造履歴を自動的に生成することが
ることができます。
できます。
また、
バーコードには、倉庫保管に関する指
製造エラーを防止するために、
ほとんどの自
示を含めることもできます。例えば、
自動化さ
れた大規模な製造環境では、
ロボットがパレ
ットから部品やカートンを取り出すことがあり
ます。
ロボットが取り出した物を固定型リー
ダの近くまで移動すると、
バーコードがスキャ
ンされて、
データが管理システムに送られま
す。管理システムは、
エンジンおよび部品の
バーコードとパレットのコードを照合して、す
べての部品が適切な場所に適切なタイミン
グで配置されていることを確認します。
DPM
(ダイレクトパーツマーク)
トレーサビリテ
ィーによって、工場の運用に関する可視性
動車メーカーでは、
バーコードが記載された
WIP追跡
組立表を作業者に渡して、
サブアセンブリを
各工程の環境は、DPMコードのマー
組み立てる時に常にスキャンさせるようにして
キングと読み取りに影響します。たと
います。
この手法は、多くの類似部品を使用
えば、原材料の時点からクロームメッ
する作業において作業者のミスを防止する
キ塗装工程を経て部品が仕上がるま
のに非常に役立ちます。
その結果、生産性と
での製造工程を通して、
その部品上
品質が向上すると同時に、廃棄品とリワーク
のマークをIDリーダが確実に読み取り
が削減されます。
できることが重要です。
コグネックスの
また、組立工程をモニタリングすることで、各
DataMan® IDリーダは、製造工程の
作業が完了したこと、
すべての部品がシステ
すべての段階で、
あらゆる加工面のあ
ムに取り付けられたことを確認しています。
ダ
らゆる種類のDPMマークに対して高
イバータ(振り分け装置)を作動させて、
サブア
い読み取り率を達成できます。
も大幅に向上します。
最終組立と出荷
コードのマーキングと読み取りによって収集さ
センブリを後続の各製造段階に送ることがで
作業者が指示書を参照して最終組立部品
リーダの導入
確認カードまたは他の文書には横長
の一次元コードが印刷されますが、部
品には小さなDPMコードがマーキング
されます。一つの工程で小さなコード
と横長のコードの両方を読み取る必
要がある場合、従来は2台のリーダを
使用していたため、
スループットの低
下の原因となっていました。
コグネック
スのDataMan 8000シリーズでは、
このようなアプリケーションに一台の
リーダで対応することができます。こ
のハンドヘルド型リーダは、可変フォ
きます。
さらに、サブアセンブリを構成する各
ーカステクノロジを搭載し、作業効率
部品の履歴を完全に記録できるので、問題
の向上、費用の削減、
システムの複
が発生した場合に迅速な対応が可能です。
雑さの低減を実現しています。
を選択し、各アセンブリを個別にスキャンし
て、
取り付けられる主アセンブリとサブアセン
ブリを正しく識別すれば、
ほとんどのエラーを
主アセンブリ
なくすことができます。
また、
この手法では、
継
続的な工程改善のために膨大な量のデータ
が生成されるので、
最終組立段階での資産
追跡が強化されます。
最終製品の出荷先は、
マーキングとスキャン
で追跡します。データには、各部品番号に
対応する出荷数量、顧客名、
出荷先などが
含まれています。総合的なトレーサビリティー
は、
製品のライフサイクルで生じる修理、
サー
DPM識別を広く採用しているのは、
シックスシグマ品質
管理手法や法規制(米国のTREAD Actなど)
に準拠
し、
ハイリスク部品に対応することが必要な企業です。
た
部品の追跡
日々のスループット目標を達成できる
ように生産ラインを維持するには、信
頼性の高いID読み取りが必要です。
読み取りの失敗によって生産性が下
とえば、
パワートレイン部品の鋳造業者と製造業者や、
ア
クセル、
ブレーキ、
ステアリングギアといった重要保安部品
の製造業者などです。
さらに、
これらの企業以外でも数多
く採用されています。
がるようなことがあってはいけません。
不正な部品が組み込まれた完成品が最終的な品質管
コグネックスのDataMan 500固定
理(QC)
の段階で発見されると、
リワークが必要となり、
大
ビス、
サポートの問題を後で追跡するために
型リーダは、優れたコード読み取り能
幅な生産性低下の原因となります。
力を備えているため、部品が最適な位
不可欠であり、最終的なロケーションにおい
時刻、
日付、場所、作業者名などのアセンブリのすべての
置に固定されていなくても高い読み取
て部品が純正品であることを保証します。
り率を達成できます。
詳細情報を含む履歴データを追跡すれば、法規制順守
を達成すること、
また顧客の要求に簡単に対応すること
ができます。最も重要なのは情報です。情報は収集して
おかなければなりません。問題が起きた後になって情報
を取得することはできないのです。
Cognex Expert Guide
完全な部品トレーサビリティー
Traceability for the Automotive Industry
二次元DPMコードの採用
ライフサイクル全体のトレーサビリティーに対応するために、
自動車メー
カーとサプライヤは、二次元(2D)
コードを使用して部品に恒久的なマ
ーキングを実施しています。
ダイレクトパーツマーキング
(DPM)
は低コス
トな手法として実績があり、
個々の部品、
サブアセンブリ、
完成品に固有
のコードをマーキングし、
製品が耐用年数に達するまで識別することが
可能です。二次元コードがDPMアプリケーションに使用される理由は、
一次元のリニアバーコードよりも小さなサイズでより多くのデータを格納
することができ、
エラー訂正機能も備えているからです。
また、
DPMコー
ドは複製が難しいため、
偽造防止にも役立ちます。
自動車産業でのトレーサビリティーの事例
1 インテークマニホールドに、
組立日時、
生産ライン、
サプライヤの
データを含むバーコードのラベルが貼り付けられます。
2 スキャナはコードを読み取り、
吸気システムの組立工程を開始
します。
3 製造工程の各段階で、
吸気システムの記録
(各ボルトに加えら
れたトルクの量など)
がデータに追加されます。
4 スキャナは、
燃料レール、
エアボックス、
センサ、
スロットルアセン
ブリなどの部品にマーキングされている一次元コードと二次元
コードも読み取り、
データをマスタレコードに追加します。
5 そのデータは次にERPシステムによって自動的に検証され、
組
立順序が正しいことが確認されます。
6 最後に、
エンジン工場に向けて出荷するための梱包を行う際
二次元コードを直接マーキングする方法は、材料の組成、部品の用
途、
環境条件によって異なります。厳しい自動車製造環境にも耐えられ
る一般的な方法としては、
ドットピーン、
レーザマーキング、
インクジェット、
電気化学エッチングがあります。
レーザスキャナは一次元バーコードしか読み取れないので、
二次元コー
ドの読み取りには画像処理テクノロジが使用されます。
コグネックスは低
コストの画像ベースのIDリーダ製品を豊富に揃えており、
あらゆる一次
に、部品にバーコードが追加され、
サブアセンブリ全体がファイ
ルにリンクされます。
これで、
サブアセンブリは完全に追跡され、問題が発生しても簡
単に修正できる状態となりました。バーコードを1回スキャンするだ
けで、
サブアセンブリの完全な履歴を取得して、
すべての部品を
関連付けることができるので、
トラブルシューティングが容易になり
ます。
元および二次元バーコードアプリケーションに対応することができます。
接続と通信
従来のシリアル通信が利用されるのは、読み取りデータを作業セ
ル内で処理する場合、
またはネットワーク通信に既に対応している
PC、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)、
マシンコントローラなど
に接続する場合です。
Ethernetネットワーク経由でコンピュータシステムが作業現場のデータ
トコルに対応したIDリーダ製品を選択することをお勧めします。
• EtherNet/IP with Rockwell
Add On Profile
(AOP)
• PROFINET with Siemens GSD
• MCプロトコル
• Modbus/TCP
• TCP/IPとFTP
にアクセスできるようになれば、
ビジョンシステムおよびIDリーダなどのイ
また、Ethernetの使用によって、
スケーラビリティも強化されました。作
ンテリジェントデバイスは、在庫管理、部品追跡、
自動生産ラインの切り
業現場におけるIDリーダの設置台数が大幅に増加した場合でも、
IDリ
換えといった作業の情報を共有することが可能になります。
ーダを中央からマネジメントできるので、
管理コストは大幅に低下します。
現在では、画像ベースのバーコードリーダは固定型およびハンドヘルド
型のどちらでもEthernet接続を利用できるため、
作業現場に特別な転
コグネックスが提供するトレーサビリティーソリューションおよび画像ベースの工業
送デバイスを設置しなくても、
スキャンしたバーコードデータをネットワー
用IDリーダDataManの詳細については、次のWebサイトを参照してください。
ク経由でPC、
データベース、
PLCに直接送信できます。
次の工業用プロ
www.cognex.com / id
本書の内容は、
予告なしに変更することがあります。
コグネックスおよびDataManは、
Cognex Corporationの登録商標です。
その他記載されている名称は、
各社の登録商標です。
©Copyright 2014, Cognex Corporation
06/14 PDF (G)
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