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中世②〔15世紀〕(想像図) イラスト解説 教科書P.64∼65

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中世②〔15世紀〕(想像図) イラスト解説 教科書P.64∼65
読み解き解説→別 P.12,
他のタイムスリップとの比較→別 P.12
授業へのつなぎ方→ 別 P.13
(想像図)
中世②〔15世紀〕
イラスト解説 教科書P.64∼65
このページを使った授業展開例→ 別 P.14
ぶ
板葺き屋根(→ 教 P.77図③)
朝鮮船
中世の町屋は板葺き屋根が主
朝鮮の船は,帆は中国
流で,石や太い木を重しに置い
船と似ていたが,船体構
ているものが多かったと推定さ
造は独自の発達を遂げて
れている。
(
『洛中洛外図屛風』
いた。
など参照)
お が
大鋸(→ 教 P.65図⑦)
室町時代に登場したと推定さ
れる縦引き鋸。建築の発達にも
軍船(帆も帆柱も
大きく貢献した。
たたんだ状態)
(歴史民俗博物館復元模型参照)
図中①∼⑬の解説→ 別 P.13
追い払われる
陶磁器の店(→ 教 P.80 情報1)
乞食僧
室町時代には,中国から青磁
武器を積み込む海賊
なども,もたらされた。
あるいは倭寇の一団
立ち並ぶ見世棚(→ 教 P.65図⑤)
(→ 教 P.68図①参照)
木戸(→ 教 P.58図③)
中世には,往来の人に見せて
警備用につくられ,夜間や非
商品を販売するために軒端に棚
常時に閉鎖された。都市の要所
を設けて商品を並べた。ここで 店先で桶を修理する桶
に設けられた。
は,左から,刀剣,米,曲げ物, 職人(→ 教 P.74図②参
酒,織物の見世棚が並んでいる。 照)
港の市を見回る領主の一
行とそれを迎える商人た
ち
大型商船(帆をたたんだ状態)
(→ 教 P.93図⑤)和船は鎌倉時
代までは大きな船でも木をくり
ぬいた丸木船をベースにして上
部構造を載せていたが,室町時
代になると板などを組み合わせ
て船体をつくる技術が生まれた。
(
『真如堂縁起絵巻』など参照)
中国
(明)船(→ 教 P.70図
②)中国では,古くから
「ジャンク」と呼ばれる
構造船が使われていた。
(
『唐船図巻』など参照)
①
●
長い袖の服を着た明の商
人
②
●
領主の到着を知らせ大道
芸などをやめさせようと
する武士
⑧
●
⑥
●
⑤
●
③
●
④
●
中国へ旅だつ僧とそれを
見送る人々
さるひき
猿曳(猿回し)
猿に種々の芸をさせ
て,馬の疫病除けの祈禱
や新春をことほぐ祝福芸
などを行った。
(『石山寺縁起』など参照)
上陸する朝鮮商人
琵琶法師(→ 教 P.63図⑥)
琵琶を弾きながら語り
物を語る盲目の芸能者。
中世になると『平家物語』
を語る放浪芸人の平曲琵
琶法師も現れた。(『慕帰
絵詞』など参照)
ハンセン病を患った人た
ち(→ 教 P.58図③)
彼らは「業病」を受け
た存在として差別された
が,物乞いをするために,
人が集まるところで見か
けられるのが一般的であ
った。
(『清水寺参詣曼荼羅』な
ど参照)
⑬
●
⑦
●
⑨
●
⑪
●
かめ
⑩
●
え
ぼ
し
烏帽子をかぶる人
古代以来,男性は烏帽子など
のかぶり物をつける風習が続い
たが,応仁の乱前後から頭に何
もつけない姿(露頭)も一般的
となった。頭の蒸れに悩み,そ
り上げてしまう者も登場し,の
ちの月代につながった。
路上の物売り
商品を売る方法は見世棚
だけではなく,こうした物
売りもさかんであった。
瓶を運ぶ子ども
室町時代には備前焼な
どの大瓶も普及し,貯蔵
用に使われていた。
放し飼いに
なっている犬
ろ とう
馬借(→ 教 P.75図④)
商品などの運搬を専門とする
人々で,中世の商業の発達にと
もなって登場した。
(『石山寺縁起』など参照)
町屋の裏庭
中世の都市では街路に
面して町屋が立ち並び,
その内側に中庭状の空間
が生まれた。ここにはよ
く共同井戸が設けられ,
その町屋の公共の空間と
なった。また菜園などに
も利用された。
(
『洛中洛
外図屛風』など参照)
⑫
●
貨幣で売り買いする人(→ 教
P.68)中世にはしだいに貨幣
経済が発達し,宋銭・元銭・
明銭が普及した。
舗装された道路(→ 教 P.65図⑥)
博多のメインストリートは,瓦
などで舗装され,板で土止めした
側溝も設けられていた。
(福岡市埋蔵文化財センター資料参照)
燕の巣
乞食
商品経済が発達するにつれて,
人々の集うところには乞食たちも
集まり,道行く人々から物品や銭
を乞うて生活した。
(
『一遍聖絵』など参照)
こ
ま
独楽で遊ぶ子ども
独楽回しは,鎌倉時代以前か
ら子どもの遊びであった。
(
『慕帰絵詞』など参照)
中世②〔15世紀〕
(想像図)
教科書P.64∼65
ば しゃく
中世後期の博多は,明や朝鮮・琉球・東南ア
の馬借たちと粗末な木鞍をつけた馬もいます。
ジアとの貿易によって栄え,戦国期には自治都
通りの中央には二人連れの琵琶法師や猿回しも
市になりました。この絵には,15世紀頃の博多
います。猿回しの芸を楽しんでいる人垣の背後
の光景が描かれています。その細部に注目する
には,それをどけようと武士が近づいてきます。
と,中世都市とそこでの人々の姿や活動を際限
また,画面手前,両側の町屋の壁のところに簡
なく読みとることができます。燕の巣が描かれ
単な小屋がけがなされていて,右側の小屋には
ていますから,季節は初夏です。
2人の乞食,左側の小屋にも乞食の親子と覆面
表通りから絵を読みはじめると,画面左側の
をした「癩者」すなわちハンセン病患者が,2
斜め上方に伸びる表通りの道は,瓦の破片を敷
人で物乞いをしています。中世の都市には,こ
きつめた舗装道路になっており,側溝もありま
のように,けがれた存在として差別された人々
した。町の境には木戸があり,周囲は柵(釘
も生活していたのです。
貫)で囲まれています。自治都市にふさわしい
日本人たちにまじって,道の真中には,長い
木戸と柵です。町屋は板葺の屋根が主流で,上
袖の服を着た明の商人たちがいますし,画面上
には石や太い木が置かれていました。よく見る
方右側の港には4人の朝鮮人がいます。国際貿
と,それ以外に草葺や柿葺(木羽板葺)の屋根
易都市にふさわしい外国人たちの姿といえるで
もあります。中世の町屋は,近世と比べるとま
しょう。海に浮かぶ大型船も,一番右側が明船
くぎ
ぬき
こけらぶき
らいじゃ
だ小さく,そして粗末なことがわかるでしょう。 (ジャンク船)であり,次の少し小さく描かれ
表通りの右側にある店のうち,一番手前にあ
ている船は朝鮮の船です。三番目のは日本の貿
るのが織物を売っている店で,売手も買い手も
易船であり,四番目の大型船は軍船です。港の
女たちです。中世では性別による分業がはっき
軍勢は,この軍船を迎えているところなのでし
りしていました。次は酒屋で,男たちがたむろ
た。
しています。その隣りの曲げ物を売っている店
町屋の裏は生活空間でした。井戸や菜園があ
ゆいおけ し
の脇には,結桶師(桶屋)が地面に座り込んで, り,女性が洗濯や立ち話を,子供は桶で水運び
たが
桶に箍をはめています。室町時代になって日本
をしています。牛車には酒の瓶がのせられてい
に登場した結桶はとても頑丈で,肥や水などの
ます。牛車の横の建物は土蔵です。また,乞食
液体を大量運搬するのに適していました。この
小屋の後ろでは,2人の子供が独楽回しで遊ん
時期にはまだ酒を瓶で造っていましたが,やが
でいます。
て大きな桶で大量の酒を醸造するようになるの
ところで,16世紀ころの日本は中世から近世
です。その隣りは米屋で,桝で量り売りをして
への巨大な過渡期でした。男性は,烏帽子など
います。次は刀剣を商っている刀屋です。一つ
をかぶった人々と露頭
(かぶりものをつけない)
道をはさんで向こう側の店は,陶磁器を商って
の人々が混在しています。中世では,男は必ず
います。
烏帽子などをかぶっていたものです。ただし,
かめ
こ
ま
え ぼ
し
ろ とう
まげ
通りを行き交う人々も様々です。画面手前の
男の髷はまだ近世のものではありません。働く
女性は,市女笠をかぶっているのが女主人で,
女性も,褶と呼ばれる布を腰に巻いていたので
頭上に包みをのせているのは侍女です。上の方
すが,この頃から前垂れ(エプロン)に変わり
には,頭上に薪をのせて売り歩いている女もい
はじめました。つまり,博多の人々の姿は,二
ます。この時代には,頭上運搬がごく普通に行
つの時代のものが混じり合っていたのです。
いち め がさ
しびら
なわれていたのです。画面手前には,交通業者
─3─
(立正大学教授 黒田日出男)
■「中世②」と他のページとの関連・比較■
古代との比較 教科書(P.34∼35)
●成長する民衆
古代のイラストは,東国の地方の国分寺建設の
様子を描いている。そこにあらわれる民衆と,こ
の中世②イラストに出てくる民衆の姿を比較して
みたい。
まず,
このイラストに出てくる民衆の様々
な職業の多様さに気づかされるはずである。古代
の図では,職能民はほとんど登場しない。そこで
よほろ
は民衆は「丁」と呼ばれる労役を提供する無人格
の存在であった。自分の才覚と技量で世の中を生
きていく自覚的な表情は見てとれない。中世の図
ではどうだろうか。人々の様々な表情に注目して
ほしい。
●服装と持ち物の違い
古代の民衆は着ているものが「あらたえ」と呼
ばれる「麻」や「からむし」であった。色は灰色
で,ごわごわした肌触りである。中世②はどうだ
ろうか。職能に応じた様々な衣服が,様々な色合
いとともに見てとれる。木綿の登場が時代を大き
く変えていたのである。
また,帽子(かぶり物)や刀など,その人の地
位や身分を表すものが登場している。古代の民衆
はどうだったであろう。
●都市の立地∼自然と人間の関係の変化∼
古代の都市は人為的な都市であった。直交する
道路,大規模な建築,それと対照的な民衆の竪穴
住居。中世②はどうだろう。律令制という未熟な
国家体制が解体した後,無理なく自然に成長して
きた都市の姿が見てとることができる。このイラ
おき はま
ストのモデルとなった博多は,「息浜」という自
然の砂州から発展した港湾都市であった。中世①
の地割りと古代条里制との違いにも注目してみた
い。
中世①とのつながり 教科書(P.52∼53)
●二つのイメージ・・・都市と農村
中世①は鎌倉時代の東国の農村をイメージして
いる。在地領主が地域の民衆を密接に結びついて
いる風景の中に,古代律令制とは違った多様な民
衆の姿が見てとることができる。
この中世②では,
そのような古代国家の解体と地方農村の発展を背
景にした商業や手工業の集中する都市の姿を描い
てる。従って,中世の多様な時代像は中世①と②
の二つのイラストで,はじめて全体的にイメージ
できると考えてもらいたい。
●ものと人の流通
この時代は,生産力が発展し,民衆が住んでい
る地域を離れて広く地域社会どうしが結びつきは
じめた時代である。中世①でみた「年貢」と,こ
の港町で売られている物産とのつながりに注目し
てほしい。また,港町の大通りにも,中世①の農
村にも共に遍歴し漂泊する人々が描かれている。
これらの人々が地域をどう結びつけていたか,想
像してほしい。このネットワークをどう支配する
かが,領主としての才覚だったのだろう。
「下剋上」
の背景はここにある。
近世①との比較
教科書(P.86∼87)
近世②との比較 教科書(P.112∼113)
●「公儀権力」の登場
近世①は検地と城下町建設が描かれている。検
地の様子は中世①とも比較してほしい。
中世①は,
在地領主の支配は単に年貢を納めさせるのではな
く,村の民衆一人ひとりの顔を見知った人格支配,
対面した支配であった。しかし,近世①ではその
ような個別の主従関係を超越した「公儀権力」が
登場している。そこでは,領地の年貢生産高を図
面で数量的に正確に掌握し,全国規模で統計をと
れる新しい権力機構ができあがる様子を読みとる
ことができる。
●自由な交易の終焉 このような近世①の公儀権力にとって,中世②
に登場するような自由な交易をする東アジアの
人々の存在は許されなかった。秀吉の海賊停止令
は,辺境の民の自由な交易を許さないものであっ
た。中国・朝鮮・日本の各地域の安定した権力が
登場し,東アジア全体の「海禁体制」が成立する
中で,この中世②の博多のような自由で無秩序な
交易のあり方は姿を消していくこととなった。
●秩序の中での国内交易
近世②は,江戸・大阪間の内航海運の様子を描
いている。中世②の勘合船のような外航船と比べ
小型だが大変効率のよい弁財船が,新しい時代の
国内交易をになっていた。無駄を排除し,合理的
な設計がされている近世の船は,近世の合理主義
の登場を象徴している。
─4─
中世②〔15世紀〕
(想像図)を使ってこんなことができる
別 P.11で紹介する使い方の他に,図の各部分から通史の授業でこのように活用できます。
また,イラストの①∼⑬は 別 P.11の中で位置を示しています。
教科書P.68∼69 倭寇と東アジアの貿易体制
①港の貿易船
▲
導入として,イラストの船と倭寇に注目させ,「義満
はなぜ貿易をはじめたのだろう」という疑問を持たせる。
貿易船がアジア全体で使われていたジャンクであるこ
と,遣明船は船そのものがはじめは明から支給されてい
たことを補説する。
②倭寇の一団
民衆の活発な私貿易として倭寇を取り上げ, 教 P.68図
①に描かれた中国側の資料と比較させる。
ここから,中国側から倭寇の取り締まりを要求された
足利将軍家が,朝貢貿易を行うことでどのような利点が
あったのかを考えさせるきっかけとする。
教科書P.70∼71 琉球とアイヌがになう東アジアの交易
③朝鮮商人
▲
導入として,
「イラストの商人がどこの国の人か」
,
「陶
磁器はどこからもたらされたか」を考えさせ,
「当時の交
易はどれくらい広がっていたか」
という課題をもたせる。
東アジアのネットワークの広がりに気づかせ,当時の
アイヌ・琉球を中心とする交易の様子を認識させる。
また,現在の博多・沖縄には韓国・台湾からの観光客
も多いことと結びつけ,交易は過去のできごとでないこ
とも実感させる。
④陶磁器
⑤守護の一行
教科書P.72∼73 全国が分裂した戦国時代
▲
まとめとして,守護大名の地方支配の様子を読みとら
せ,室町幕府の全国支配のしくみを実感させる。
この時限の授業の要は,室町・戦国期の政治権力の不
安定なあり方の理由を生徒に認識させることである。
鎌倉末期から民衆の成長と共に,従来の幕府や荘園領
主などの既成権力に従わない様々な新興勢力が登場し
た。その代表的な者が陸の悪党,海の倭寇である。室町
幕府は彼らを抑さえるために鎌倉幕府のような直接の主
従関係ではなく,各地の守護にその地域の武士を被官化
⑥
守護配下の武装兵
させるという間接支配をとらざるを得なかった。そして
地域を抑さえる力のない守護は没落し,実力で勝ち残っ
た者が戦国大名として成長してくる。室町時代を通して
常に中央の権力が弱かったのは,このような背景がある
からである。
上述の内容をこの時間のまとめとして説明したあと,
このイラストから守護大名(大内氏を想定)と博多の支
配の様子を読みとらせる。単なる説明よりあざやかな時
代像を生徒たちはつかむことができる。
─5─
⑦
教科書P.74∼75
猿曳き(猿回し)
生産のくふうとさまざまな専門家の登場
▲
展開として,イラスト図の商業の様子でこの時代に発
したと考えられる職能・商品・技術を探させる。
まとめとして,民衆の成長の具体例を探させる。
様々な職能民の登場こそ,この時代の特色である。生
産力の発展は,自力救済・下剋上というこの時代の特色
を生み出した究極的な原因であり,具体的には様々な職
業を身につけて生きる人々が誕生したことがその表れで
ある。この人々の姿を発見することは,現在における生
徒個人の生活とその自立につながる。教科書で言葉の知
識として「民衆の成長」を暗記するのでなく,このよう
にイラストに描かれる様々な職能を現在の生活におきか
えさせることが,この時代の理解につながるだろう。
コンビニのアルバイトをしたい,大工になりたい,ス
トリートミュージシャンになりたいなどという,生徒た
ちの思いと当時の時代がつなげられると面白い。
▲
⑧大鋸
⑨反物屋
教科書P.76∼77 自分の身は自分で守る世の中
▲
導入として,人々の表情・動きに着目させ,どんな会
話があるか想像させ,
「自力救済」を紹介する。
人相の悪い男たちとそのうしろで警戒する男の表情を
読みとらせ,セリフを考えさせることから授業をスター
トする。生徒たちは自由な発想で語り合うだろう。中世
の物語に見られる盗賊の横行を実感させたい。当時は人
身売買や誘拐が横行していた時代でもある。教室に雑然
とした雰囲気をつくり出せば,それこそこの時代の雰囲
気であることになる。そういう世の中を人々はどう生き
ようとするかを考えさせると,集団による協力と連帯=
一揆の必然性が見えてくる。
展開として,土一揆を扱い,馬借の果たした役割をこの
⑪
イラストを使って説明し,民衆の結合の様子を実感させる。 馬借たちのやりとり
一揆が広範囲に広がった背景に,
情報網の発達がある。
展開部で土一揆の広がりを紹介する際,この馬借のイラ
ストに戻り,
その役割を紹介する。現在の発展途上国で,
タクシーやトラック運転手のストライキが政情不安につ
ながる事例を紹介するとよい。
⑩
人相の悪い男たち
▲
⑬おけ職人
教科書P.78∼79 庶民生活の大変化
展開として,当時の文化の具体例として紹介する。
室町時代の生産力向上が,それ以後現在まで続く「日
本文化」のルーツになっている。この時間の授業ではこ
の基本認識を,言葉ではなくできるだけ具体的に実感さ
せたい。ふつうは現在の「日本的な文化」の代表である
茶道・華道・和式住宅などの事例をとりあげるが,この
イラストの「器」からは,当時急速に発達し,用途に応
じて変化した様々な器が見いだせる。近年高度成長によ
ってプラスチック容器がこれらを駆逐するまで,こうし
た器は私たちの身近にあった。柳田国男の「木綿以前の
こと」にふれながら,実物を用意して説明したいところ
である。
▲
⑫様々な器
陶磁器・瓶・
曲げ物・おけ
─6─
中世②〔15 世紀〕
(想像図)
を使った授業案
本時の
ねらい
と
留意点
・中世①の農村に続き,港町(博多をイメージ)の想像図から,この時代の大きな社会変動の背
景を,視覚から想像力を働かせ,音・触感などの五感でつかませる。
・古代と比べて民衆の生活が豊かになり,生産や交易が大変活発になっていたこと,海をこえた
人々のつながりがあったこと,身分に固定されない自由な生き方があったことなどを感じとら
せ,それらが教科書各節本文につながっていることを紹介し,次時以降の学習の切り口にする。
教科書のねらいと活用の仕方
生徒の学習活動
教師の指導・支援
導入 ・中世②の想像図をながめ,気がついた
・ワークシートを配布して,中世①の想像図が農村が舞台
ことをワークシートの白図に書き込む。
だったのに対し,この想像図が西日本の港町をイメージ
(朝鮮語や中国語が飛び交う市場の雑踏の音
したものであることを補説,気がついたことをどんどん
声を聞かせる)
書き込ませる。
・ワークシートに書き込んだことを周囲生徒と
・想像図中の会話の声が聞こえるよう,準備できれば朝鮮
比較し合い,気がついたことをお互いに増や
(韓国)語や中国語が入り交じる福岡空港のロビーなど
していく。
の音声を流すとよい。
(空港の効果音CDでOK)
・生徒が周囲の生徒と自由に話し合える雰囲気をつくる。
展開 ・気がついたことを自由に発表し,ワー
・視覚・聴覚・味覚・触覚・嗅覚の五感で感じることを想
クシート下段のイメージ整理図に学級でまと
像力を使って引き出す。確定できないことは「?」符号
めていく。
で記録する。
ひつ
・曲げ物の櫃,陶器の瓶,永楽銭,扇子,織物の生地など
用意できる範囲で実物を用意する。生徒に触らせ,実感
させる。
まとめ・イメージ整理図を見て,この風景の
・古代と比べ,民衆の生産・交易が活発になっていること,
様子から考えられる,この時代のイメージを
海を越えたネットワーク,自由でたくましい生き方がわ
言葉にまとめる。
き上がっていたこと,中世①の農村の風景とそれがつな
がっていたことを言語知識として補説する。
次時へのつながり ・想像図中の各場面が教
科書本文のどこにつながっているかを知り,
教P.69の日明貿易につながることなど,今後の
・勘合船は□
授業展開につながる様々な事象をあげて生徒に関心・意
欲を持たせる。
さらに調べはじめる。
この時間の評価規準の具体例
関心・意欲・態度
A基準
古代と比べ,中世の多
思考・判断
技能・表現
古代と比べ中世の民衆
想像図から,この時代
知識・理解
古代の想像図と中世の
様で自由な時代の雰囲気 の 様 々 な 活 動 が 活 発 に の特色を自分の言葉で説 想像図を見比べ,古代に
に興味をもち,具体的な なってきていたことに気 明することができる。
は無かったものを識別す
事象について自分で調べ づき,その理由を考えて
ることができる。
はじめている。
B基準
古代と比べ,中世の多
いる。
古代と比べ中世の民衆
想像図から,気がつい
古代の想像図と中世の
様で自由な時代の雰囲気 の 様 々 な 活 動 が 活 発 に たことを抜き出すことが 想像図を見比べ,「この
に興味をもち,さらに調 なってきていたことに気 できる。
事物はだいたい中世のも
べてみようという意欲を づくことができる。
のである」ということが
もつことができる。
分かる。
─7─
年 組 名前
中世②〔15 世紀〕
(想像図)
のワークシート(教科書 P.64∼65)
1.想像図の世界にはいってみよう
はじめに,あなたが立っているところをかき入れてみよう。周りに何が見えますか。どんなにおいや音がしま
すか。さあ,さわったり,話しかけたりしてみましょう。
次に,そこから歩いて移動してみましょう。気がついたことをチェックしてみましょう。
2.みんなが気がついたことを一つにまとめてみよう(イメージ整理図)
考えたこと
気がついたこと
見える
聞こえる
味がする
手ざわり
におい
Fly UP