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翁長知事と中谷防衛大臣の会談メモ

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翁長知事と中谷防衛大臣の会談メモ
翁長知事と中谷防衛大臣の会談メモ
平成27年5月9日(土)
沖縄県庁知事応接室
○中谷大臣: 本日は、お忙しいところ面会の機会を作っていただきまして、あ
りがとうございました。また、日頃から、沖縄県内、県外の陸・海・空の自衛
隊の部隊、また、防衛局がお世話になっておりまして、この場をお借りしまし
て御礼を申し上げます。
沖縄におきましては、我が国安全保障上、大変重要な地域でありまして、何
かと御支援なり、また、御協力をいただいておりますが、非常に、戦後長らく、
米軍の施政下にございまして、この沖縄県民にとりまして、県内の米軍の基地、
施設が集中をいたしておりまして、大変大きな負担をしていただいていること
は、非常に重く受け止めております。翁長知事さんから仰っていることや、ま
た、沖縄県民の皆様方が、米軍に対する思いがいかに大きなものであるか、そ
ういったことにつきまして、今日は、こちらに訪問させていただきましたので、
その点、お伺いをさせていただきたいということでございます。
まず、私の方から、沖縄の地理的な重要性につきまして、お話をさせていた
だきたいと思いますけれども、資料を準備いたしましたので、配っていただき
たいと思います。A2ADという言葉がございます。これは、接近を阻止をす
る、また、領域を拒否をする、領域に入ってくることを拒否する言葉でありま
して、沖縄は、周辺国から見てですね、大陸から太平洋にアクセスをする上で
も、また、太平洋から大陸にアクセスを拒否するについても、非常に、周辺国
から、戦略的に目標となる大変重要な場所であります。最近、中国によるです
ね、南西海域での活動が活発化をいたしております。資料を配りましたが、ま
ずですね、年間のスクランブル、緊急発進の回数の推移ですけれども、20年間
のスクランブルの回数は、平成7年度は166回であったのがですね、平成26年度
は943回、6倍近くに急増しております。これは、南西空団の年間のスクランブ
ルなんですけれども、5年前、年間数十回だったのがですね、いまは468回、4
倍以上に増加をいたしております。これは、中国の飛行機のスクランブルの回
数ですが、5年前が96回だったのが、いま464回、5倍近くになって、おおよそ
南西航空団が対応いたしております。
それから、次が防空識別区ですが、平成25年の11月に中国が独自の主張で設
定したのですが、これは、飛行計画の通報義務とかですね、また、中国の武装
力で防御的緊急措置を行う、指示に従わない飛行機に対して、そういうふうな
行動をするということです。最後に、これは中国の公船、尖閣諸島に対する領
海侵犯の回数ですが、国有化される前は合計5回でした。たったの5回。とこ
ろが、国有後はですね117回、毎月10隻が3回のペースで続いていまして、今、
航空自衛隊も海上保安庁もこの対応が大変だというように、状況が変化してお
ります。
一方、先だって2+2で日米の防衛首脳会談を行いましたけれども、アメリ
カもリバランスと言いまして、アジア太平洋方面には力を入れていくというこ
と、それから、尖閣列島におきましても、安全保障の条約におけるコミットを
するということを、しっかりと2+2でも再確認しておりますので、こういっ
た周辺国も日本も米国もいずれも、沖縄というところが戦略的に極めて重要な
位置に存在しているというこということを、まず申し上げたいと思います。
次に、こういった事態に対してどうするかということで、まず自衛隊におき
ましては、特に南西方面におきまして、島嶼の警備等を強化するということで、
自衛隊の体制強化も致しますし、また沖縄における米軍の存在というのは、自
衛隊の持っているその抑止力と対処力、これを補完・強化する存在で、不可欠
なものであると認識を致しております。
しかし、おっしゃるように沖縄における基地負担、これは地元の皆様方のご
負担にかかっているというのは事実でございますので、負担軽減におきまして
は、米国とも協議した上で、実現可能なものから着実に実施をしておりまして、
先日の2+2におきましても、沖縄の基地負担の軽減、これを米側に要請をし、
また米側の方も基地負担軽減に対するコミットメントが示されたわけでござい
ます。このように負担軽減におきましても政府は力を入れておりますが、政府
の仕事と言えば、やはり国民の命を守り、暮らしを守るという安全保障の責務
も負っておりますので、一方ではこの抑止力を維持するという、両方の仕事を
していかなければならないと考えております。
ここで、普天間基地の問題ですが、やはり沖縄における米軍基地の中でも、
特に市街地の真ん中にあり、住宅や学校が密接にある普天間基地の危険性の除
去、これは大変重要な問題でありまして、翁長知事もご承知のように、平成8
年にSACO合意をする際、沖縄県のご要望から普天間の全面移設・閉鎖、こうい
うことも合意・決定を致しましたので、私は、この問題点の原点というのは、
その点にあって、普天間基地を固定化させない、これは日本政府も沖縄も共通
の認識ではないかと思っておりまして、その上で、私も2001年、2002年に防衛
庁長官をさせていただきましたけれども、こういった抑止力の維持とまた普天
間の危険性の除去ということを、地元の皆さんとも話をしまして辺野古の移設
というものを決定したことに関わった人間の一人でございますので、いろいろ
とその後、経緯がありましたけれども、どう考えてもやはり普天間を辺野古に
移設するというのは唯一の解決策であると、私は確信をしておりますし、また
一日も早く普天間基地の返還に向けて、全力をもって安全に留意しつつ移設を
進めていきたいと考えております。
最後に、自衛隊の体制につきまして、今、沖縄における自衛隊といいますと、
警戒監視、災害派遣、不発弾の処理、患者さんの緊急搬送など従事しておりま
すけども、その点におきましては、県の皆さんに大変お世話になっておりまし
て、感謝、御礼申し上げますが、これに加えまして南西の島嶼の体制の強化と
しまして、沿岸監視部隊と警備部隊、これの配置を計画しております。与那国
島に配備する沿岸監視部隊については、今年度の新編に向けて、施設整備を進
めております。それから、先島諸島におきまして、宮古島市から調査をいま着
手しておりまして、この警備部隊の配置に向けて、その具体化の検討を行って
おります。それから、南西地域における防空体制を強化するために、那覇基地
における戦闘機部隊を1個飛行隊から2個飛行隊に増勢をしまして、第9航空
団を新編をし、また、南西地域のレーダーサイト、これの自衛隊の実員の更な
る充実を図っていくということでございます。この他、那覇港湾施設の浦添へ
の移設、また第二滑走路内の自衛隊用地の問題点、また、嘉手納以南の基地の
返還の早期実現など、多くの案件がありまして、これからも県の皆さんとこれ
は話合いをして協議をしていかなければなりませんが、いずれにしましても、
我が国の安全保障と、沖縄県の発展に関わることでございますので、今後とも
よろしく協議をさせていただいて、こうした話合いが実を結ぶように努力をし
て参りたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。私の方
からは以上です。
○翁長知事:中谷元防衛大臣におかれましては、大変お忙しい中、このように
意見交換の場を設けていただきまして感謝を申し上げます。先月、4月には菅
官房長官、それから安倍総理大臣お二人とお会いしまして、いろんなお話合い
をさせていただきました。そのことが本土の方々にも大変注目をしていただき
まして、ほとんどの中央メディアの世論調査におきまして、国民の皆様が平均
して10パーセントほど多く新辺野古基地建設に反対だというですね、世論調査
が出まして、本土と沖縄の理解が深まったことに大変意を強くしております。
中谷大臣とは、私が那覇市長時代、もう2、3年前になります。自民党沖縄県
連内でですね、1時間ほど、普天間の県外移設、それからオスプレイ配備につ
いて議論をさせていただきました。
○中谷大臣:はい、どうもありがとうございました。
○翁長知事:平行線とはいえ、お互いの主張をですね、確認をして、今後の議
論の約束をしたことをよく覚えております。しかしながら、昨年暮れにですね、
中谷さんが防衛大臣に就任をされ、私は沖縄県知事に就任をしました。それぞ
れ国と県の責任者として、またお会いできることを期待しておったのですが、
国会答弁やあるいはまたマスコミ報道等によりますとですね、大臣の方は、「い
ま話し合っても溝が深まるだけだ」と、日本の安全保障をどう考えているのか、
沖縄県のことは考えているんだろうかというような私の方から見ると高飛車な
ですね、発言がですね、聞こえて参りました。とても「沖縄県民に寄り添って
ご理解いただけるよう努力したい」という政府の方針とは、ほど遠く、会えな
かったことが、さらに政府と沖縄の溝を深くしたのではないかなと、このよう
に思っております。
普天間基地の5年以内の運用停止ですけれども、大臣は3月の安全保障委員
会で、「飛行機が飛ばないこと」と答弁されました。しかし、4月24日には、
「幻想を振りまいてはいけない」とあっさりと撤回をいたしまして、仲井眞知
事とは運行停止について「政府がやり取りした言葉であって、これは合意され
た訳ではありません」とも答弁をされております。5年以内の運用停止は、前
知事のですね埋立て承認の大変大きな柱でありまして、前知事は、「官房長官
も、総理もお約束をしたことが最高の担保だ」とおっしゃっております。是非
ともですね、空手形にならないようにしっかりと対応していただきたいなと、
このように思っております。
このようなことのですね、積重ねが、今日の日本国民全体で、日本の安全保
障を考え、対応すべきだという努力を怠って、戦後70年経っても沖縄に負担を
課す、あるいは辺野古が唯一の解決策ということでしか日本の安全保障は語れ
ない、そういった日本の政治の中でですね、沖縄があえぎ、苦しみ、そして自
己決定権を強く主張するゆえんとなっている訳であります。私は2年前、参議
院の予算委員会がですね、超党派メンバーで来県をされまして、基地所在市町
村の首長と意見交換がありました。その席上、普天間基地の県外移設に話が及
びますとですね、自由民主党の議員が大きな声でこうおっしゃったんです。「本
土が嫌だと言っているんだから、沖縄が受けるのが当たり前だろう。不毛な議
論は止めようや」とこう発言された。こういう国会議員と私はどうやって日本
の安全保障をですね、議論できるのかどうかですね、大変絶望感を感じた訳で
あります。これは改めて申し上げますけれども、沖縄は自ら基地を提供したこ
とは1度もないんですね。全部戦後米国に「銃剣とブルドーザー」で強制的に
接収されて今日に至っている訳です。海兵隊も、もともと沖縄にいたわけでは
ございません。本土の方にあったものを、60年、70年代に沖縄に移してきた訳
でございまして、これも私たちからすると大変、この経緯について不信感もご
ざいます。自ら奪っておいて、普天間基地が老朽化したから、世界一危険にな
ったから新辺野古基地に移設をさせる、嫌なら代替案を沖縄が出せという、こ
の考え方のどこに、私から言わせれば、自由と民主主義、人権という価値観を
共有する国々との約束を実現する資格があるのかどうか、私は沖縄の視点から
見ると、大変それを強く感じているところでございます。日米の安保体制、日
米同盟というのは、私はもっと品格のある、世界に冠たる、誇れるものであっ
てほしいと心から願っている訳です。沖縄県は昨年の一連の選挙、名護市長選
挙、そして沖縄県知事選挙、衆議院全選挙区で、新辺野古建設反対の候補者を
当選させました。これが沖縄県の民意でございます。その中で、中谷大臣が具
体的なお願いが2つございます。1つは沖縄県から見ると、どんなに米軍が事
件・事故を起こして、またその都度沖縄県、各市町村長、議会等が防衛局に出
向き、意見や抗議をしても、残念ながら防衛局に当事者能力がございません。
能面のように「この件は米軍に伝えたいと思います」ということがほとんどで
あります。日米地位協定の最前線にいるというのはそういうことでありまして、
沖縄だからこそこれが現実に見えてくる状況でございます。私たちも他の都道
府県の首長さん同様、子どものことやお年寄りのこと、そしてまた、まちづく
りのために全力を尽くしてがんばりたいんですが、いかんせん基地に時間が割
かれ過ぎるんですね。私は知事に就任しまして約5ヶ月ですが、8割9割は基
地です。それ以外にもですね、経済も福祉も教育も触る時間がない。基地問題
だけで私は今日まで知事職をまっとうしているのではないかなと思うぐらいで
ありまして、せめて事件が起きたらですね、私は防衛局長を初め、職員が県や
市町村に出向いて説明をし、私たちの意見を聞いてもらいたい。これは軍転協
の、首長さんがそろったときの席上で多くの方がおっしゃっていたので、ぜひ
ご検討いただきたいと思います。
2つ目はですね、辺野古の岩礁破砕許可の関係で、コンクリート製構造物の
設置状況に関する調査について、外務省北米局に速やかに立ち入り許可が得ら
れるよう、依頼しているところであります。沖縄防衛局においても、適切に対
応していただくようお願いしたいところですが、今日まで、海上保安庁の船や、
防衛局の調査船、工事作業船が出入りができて、沖縄県の調査船が一切入れな
い、こういう状況が続いております。これはまさしく理不尽でありまして、見
えないところで現状が変更されているのではないかという疑義さえ、私たちに
生じさせております。
私は、日米安保体制を理解しております。私の政治の流れもですね、そうい
うものでございました。しかしながら、新辺野古基地が唯一の解決策だという
考え方に、日米両政府が固執をすると、私は日米安保体制に大きな禍根を残す
のではないかなと、このように思っております。ですから、先ほど来、沖縄が
いかに日本の安全保障に重要かという話がございました。しかし、考えてみる
と70年間、冷戦構造時代もですね、それから、本日に至るまでもですね、いつ
も沖縄は重要な要だというようなことで、何ら変化がございません。そしてい
ま強調されたこともですね、冷戦構造時代より本当にそれが(音声不明瞭)脅
威になっているのかどうか、安全保障について重大な危険性を持っているのか
どうか。あるいはグローバルなこれからの安全保障、積極的平和主義というこ
とで、ある意味で中東まで視野に入れての日米安保同盟、日米安保体制だと思
いますが、その中にも沖縄というものが位置づけられるということになります
よね。これは、私は沖縄はいったいいつまで、世界中で、そういったもので用
立てなければ、私たちは進んでいけないのかどうか、この辺のところが、先ほ
どの説明でも、現状はよくわかりますが、過去はどうだったのか、先々はどう
なるのか、70年間は預かってきましたけれども、これから以降もまた70年間預
かれということなのか、この辺のところが明確ではないものですから、私から
すると、先ほどの説明でもなかなか納得をするという訳にはいけません。
ですから、私は、辺野古には基地を建設するのは不可能であって、私どもも、
沖縄県としてですね、これは絶対に反対をしていきたい、このように思ってお
ります。このまま、日本政府が地元の理解を得ることなしに、辺野古の基地建
設が途中で頓挫することが起きることは、そのような事態はすべて政府の責任
であると思っております。防衛大臣のご尽力により、政府の新たな英断を心か
ら期待をしております。頑な固定観念から脱してですね、辺野古への建設工事
等を中止することを決断されまして、そして、私たちと話合いを継続していた
だいきたいと思います。
私もいまおっしゃった、いろんなアジアの中における沖縄のあり方、そして
日本の安全保障は日本国民全体で考えるべき、負担するべき、その努力を本土
の政治家たちは、本当に地元の方々に、自分の命をかけて、みんなで守ろうよ
という話をされたことがあるのかどうか。先ほどの参議院予算委員会のメンバ
ーの一人も、嫌だと言っているのだから本土が、沖縄が受けるのは当たり前だ
よと、そういう中で日本の安全保障を語ったら、私たち沖縄県民は、今後とも
ですね、そういった大きな例外の中で生きていかなきゃならないということで、
大変切ない、寂しい思いがございます。ぜひこの気持ちをご理解頂いて、今後
にいかしていただければありがたいと思います。よろしくお願いします。
(了)
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