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 ART
14 2014.10.14 渚の風 2号
■保育士・ダンサー
ジェネシスオブエンターテイメント
池尾美佳さん(27)
少し背中を押せたら
「今、苦しいと感じている人に私が代わってあげることはできない。けれど、少し
背中を押したりすることはできるのでは、と思うのです」。中学生で始めた車いすダ
ンス。池尾美佳さん(27)は、高校・大学に進学し、夢だった保育士として働き始
めてからも車いすダンスを続け、もう 13 年、踊っている。
(文 松田真弓)
Text by Mayumi MATSUDA
池尾さんが所属する「ジェネシスオブ
入試は、個性をアピールできる AO 入
エンターテイメント」は、車いすダンス
試を選択。ジェネシスのメンバーで、車
教室や講習会などを行っている。
いすダンスのアジアチャンピオンでもあ
車いすダンスは、車いすダンサー同士
でペアを組むこともあれば、車いすダン
る鈴木剛さんと一緒に、車いすダンスを
踊った。
サーと健常者(立位)がペアを組んで踊っ
「責任重大やん、俺!」とアジア王者
たりもする。
池尾さんは、
立って踊る方だ。
もプレッシャーを感じる中、試験官を前
自然体で居られる場所
に堂々と踊り、無事に合格を果たした。
中学 1 年のとき、友人と一緒にワー
クショップの体験講座に参加したのが、
車いすダンスとの出会いだった。
両立めざして
い。ダンサーとしてだけではなく、ショー
純粋にダンサーたちが楽しそうで
の映像制作、照明コーディネーターなど、
「やってみたい」と思い、習い始めた。
彼女はスタッフとしても活躍中。でも、
学校にダンスにと充実した毎日だった
やはりダンスは続けたい。職場を何度か
が、順風満帆にはいかなかった。
かわりながら、両立できるベストな働き
高校 2 年のとき、クラス替えがきっ
かけで女の子の友人たちとうまくいかな
くなったのだ。
方を模索し続けている。
「保育士として学んだことをダンスで
も活かしています。相互にプラスになっ
「ちゃんとやらないと…」
ていますね」
そう思い、それがうまく出来なくて落
躍 動
車いすダンスと保育士の両立は忙し
小中学校でのダンス講演でも、この経
激しい動きが多い車いすダンス。笑顔は忘れない。左が池尾
美佳さん
写真提供:ジェネシスオブエンターテイメント
車いすダンス 約 60 年前にイギリスで誕生。はじめは車いすの使用者同
士で踊るデュオスタイルが中心だったが、後に車いす使用者と立位のパート
ナーが一緒に踊るコンビスタイルが考案され、世界中に普及した。
拝啓 日本の企業家のみなさま
私が活動しているジェネシスは、
今年で設立 18 年目を迎えます。
私は中学1年生から参加していま
ち込み、余計に溝が出来る。出口の見え
験を発揮。子どもを静かにさせるコツ、
ない迷路は、不登校に繋がっていった。
集中させるコツ。保育士ならではの知識
すが、27 歳になった今、仕事をし
と技量が、おおいに役立つ。
ち、子どもたちに仕事としてダンス
を披露したり、お話をする中でいろ
んな気づきを届けていきたいと思っ
ています。
ながらジェネシスのスタッフとして
よく国からの補助があるんで
参加者は 10 代から 70 代までと幅広かっ
「ダンスの講演で学校に行っても、大
学校へ行き、障害のある人とない人
しょ?と言われますが、実際には私
たが、ダンスという共通点もあり、気負
体は一度きりの出会い。もっと長期間、
という「違いがある人が共に生きる」
たちの活動に対する国からの補助
わずに自然体で居られた。
子どもたちと関わりたい。特別支援学校
ことについて、子どもたちにお話さ
は、皆無に近いのが現状です。
にも行きたいし、不登校の子にもダンス
せていただいています。
ジェネシスには、優しい友人がいた。
「責任重大やん、俺!」
保育士を目指したのも、ダンスと出
を見てほしい。言葉では伝わらないこと
を、伝えたいのです」
昨年には、障害者の法定雇用率が
日本の企業家のみなさま、どうか
私たちの活動を応援してください。
必ず、1人でも多くの子どもたち
引き上げられるなど障害のある人の
に笑顔を届けることを約束します。
会ったのと同じ頃。ボランティア体験で
ダンスを通して、誰かの背中を少し押
労働環境は変化しています。そんな
自分が卒園した園に行き、子どものお世
すことができるかもしれない。ヒントに
社会の動きの中で私は、車いすダン
話をしたときに、将来の夢が定まった。
なるかもしれない。そんな思いが、池尾
スを通じて障害のある人だけでなく
敬具
さんの原動力になっている。
障害のない人も共にプロ意識を持
池尾美佳
保育士になるため進学を決め、短大の
出会い
優しさを秘めた照明
ハートスさんありがとう
忘れられないことがあります。車い
惜しまず、照明機器の機能や使い方、
が、日々の活動から感じる自分の生き
ターテイメントの
演出の心構えなどの「いろは」を丁寧
方とこれからの社会との関係を提案す
組み合わせ。ダン
に教えてくださったのです。
る「講演会への講師派遣」も行ってい
スエンターテイメ
織りなす光の色合いが優しさを演出
ます。同じ時を生きる人たちへ、言葉
ン ト は も ち ろ ん、
言ってもいいくらい、大切なものです。
するだけなのではなく、その光を創る
と表現で「福祉文化」を伝えているの
出会えた人たち
2010(平成 22)年の秋。大阪市内
人々の心が優しくなければ、本当の優
です。
が、障害のある人
すダンスにとって、舞台照明は命と
「人にとっての娯楽とは?」をテー
とない人の生きが
マに、スポーツ・文化活動を通じて、
い創りの主体にな
さて、ジェネシスを紹介します。
障害のある人の生活空間の拡充を図る
る、という願いも含めています。
1997(平成9)年から、障害のあ
ことで、障害の有無に関係なく、「共
の中学校。はじめて車いすダンスが芸
しさは生まれない。社員さんの対応に、
術鑑賞講演として認定されて開催でき
心からそう思ったものでした。
ることになり、照明装置をお借りして
舞台をつくることになりました。
坪田建一代表
専従スタッフは 4 人、運営メンバー
その時、お世話になったのが株式会
る人とない人が、様々なジャンルのダ
通の生きがい」を創造していくこと。
は 10 人、会員数は 80 人。うち障害
社「ハートス」(本社・大阪市)の社
ンスを踊る「車いすダンス」を主軸に
それが、私たちの活動の目的です。
者は 25 人、健常者は 55 人です。
員さんでした。
活動している市民団体です。
私たちがまだ手探りの時代。時間を
障害のあるメンバーとないメンバー
名前の由来は、「起源」を意味する
ジェネシスオブエンターテイメント
ジェネシスと「娯楽」を意味するエン
代表 坪田建一
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