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2007 年 9 月

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2007 年 9 月
「月刊 国際税務」
国際税務」2007 年 9 月号収録
Worldwide Tax Summary
Worldwide Tax Summary
税理士法人プライスウォーターハウスクーパース編
税理士法人プライスウォーターハウスクーパース常任顧問
プライスウォーターハウスクーパースマネジメント会長
岡田 至康 監修
2008 年度税制改正
年度税制改正案
改正案の採択(
採択(ドイツ)
ドイツ)
2007 年 7 月 6 日、ドイツ連邦審議会(State Council)は最終投票で 2008 年度税制改正案を承認した。
この法律は、税率の引き下げ、利子費用損金算入限度を巡る新たな措置、支配権の変更に関する規則
の修正、新移転価格税制などの制度を含んでいる。ドイツで事業を行う企業に関連する項目は次の通り
である。
1)税率の引き下げ:法人税率を 25%から 15%に引き下げる。5.5%の連帯付加税(solidarity
surcharge)は相変らず法人税額に課される。営業税(trade tax)算定のための営業税基準税率(trade
tax base rate)は従来の 5%でなく新税率の 3.5%を乗じて算定される。地方税率は各市町村により異な
るが、平均的実効営業税率は 14%から 15.2%の範囲となる。
この結果、ドイツ企業にかかる総合的な平均実効税率は 29.83%から 31%の範囲に下がることになる。
2)利子費用損金算入限度規則の導入:新しい利子損金算入限度規則が現行の借入金プッシュダウン対
策(anti-debt push down)を含むドイツ過少資本規則に取って代わる。
利子費用損金算入限度規則により損金算入可能な利子費用は、利子費用純額、税、償却費及び減価償
却費控除前の課税所得の 30%を超えない額に制限される。これにより損金算入できない利子費用は
(30%ルールに制限されるが)無期限に繰越しできる。
この利子費用損金算入限度規則は、以下の 3 つの例外のいずれかを満たす場合には適用されない。
・利子費用純額が 100 万ユーロ未満であること、
・ドイツ企業が会社の連結グループ企業に属していないこと、あるいは
・ドイツ企業が連結グループ企業に属するものの当該ドイツ企業の自己資本比率 equity ratio(修正資本
の修正総資産に対する比率)が連結グループ企業の自己資本比率より低くないこと(自己資本比率テ
スト(‘equity test’))。自己資本比率算定のための適切な会計基準としては一般的には国際会計基準
(IFRS)を用いるが、IFRS に準拠した会計基準がない場合は代替的にEU加盟国の会計基準或いは
米国会計基準を使用する。
3)支配権の変更にかかわる規定(change of control rule)の修正
ドイツの支配変更規定は厳格化される。2007 年12 月31 日より後の繰越欠損金の移転に対する制限は
会社の直接または間接の支配権変更により異なる。
5 年の期間内に会社の 25%超50%以下の株式あるいは議決権を 1取得者あるいは当該取得者に関係
する者あるいは共通の利害を有する取得者グループへ直接または間接的に移転すれば、按分比例で
繰越欠損金を喪失させることになる。50%超の株式あるいは議決権の移転で繰越欠損金は全額喪失す
る。
この規則が利子費用否認額の繰越についても同様に適用される。
ドイツ連邦審議会は懸念を表明し、ドイツ政府がこの規則を修正するべく別の税法案を提出するよう求
めた。特に革新的な創業間もない企業は、新規投資家に 50%超の株式を移転すると初期の欠損金
(start-up losses)をすべて失うことになるという懸念である。
4)営業税の変更:現行税制と異なり営業税はもはや損金算入ができない費用となる。すでに利子費用
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「月刊 国際税務」
国際税務」2007 年 9 月号収録
Worldwide Tax Summary
損金算入限度規則で否認されていない限り、(事業に関連する短期及び長期の負債の利子など)一定の
金融費用の 25%も営業税算定上損金算入ができなくなる。
5)移転価格税制:新しい移転価格税制には移転価格の決定方法に関する規則が含まれている。当法律
によると移転価格は主として独立価格比準法(comparable uncontrolled price method)、再販売価格基
準法(resale price method)、原価基準法(cost plus method)を使用して決定されるものとされている。さ
らに機能の移転に関する規則も導入された。機能(機会とリスクも含む)の移転については全ての「移転
パッケージ(transfer package)」の潜在的利益獲得力に基づいて評価する必要がある。
重要な取引に関わる移転価格文書については、ドイツ税務当局から提出要請を受けた場合は、30 日
(現行法の下では 60 日)以内に提出しなければならない。
6)配当に対する源泉税:原則として 2009 年 1 月 1 日から配当に対する源泉税率が 20%から 25%に引
き上げられる。その上に 5.5%の連帯付加税も課される。しかしながら、非居住会社としてドイツの税金
を課される会社は源泉税の 40%の還付を受けられる(すなわち、25%の 40%イコール 10%の還付で、
実効源泉税率は 15%になる)。この源泉税率は各租税条約あるいは EU 親子会社指令(EU Parent
Subsidiary Directive)に基づきさらに軽減ないし免除される。
これらの規則は原則的に 2008 年に終了する会計年度から初めて適用される。支配権変更規定は 2007
年 12 月 31 日より後の支配権の移転に適用される。利子費用損金算入限度規則は 2007 年 5 月 25日
(国会の最終投票日)より後に開始する会計年度から初めて適用される(ただし、会計年度が 2008 年 1
月 1 日より前に終了しない場合)。
Source:PwC Germany Newsalert
EU株主
EU株主への
する源泉税を
フランス)
株主への配当
への配当に
配当に対する源泉税
源泉税を巡る動き(フランス)
フランス政府は、フランス以外のEU加盟国の株主が 5%以上所有しているフランス国内の子会社からこ
れら親会社への配当に対する源泉税を免税扱いとする制度を導入した。この源泉税免税は 2007 年 1
月 1 日より後に支払われる配当に対して適用される。
現行のフランス源泉税制度:フランス税法の下では、フランス子会社から 5%以上の株式及び議決権を
所有しているフランス親会社への配当支払いは、資本参加免税制度の扱いが受けられる。これにより所
得の 95%が除外(すなわち、実効税率は 1.7%)され、あるいは、ⅰ)フランスの税務上の連結グループ
のケースか、ⅱ)フランス親会社が経費を全く計上しないケースであれば、全額免税扱いとなる。
他方、フランス子会社から非居住親会社への配当支払いに対しては原則として 25%の源泉税が課され
る。もし、親会社がEU加盟国法人でフランス子会社の株式を 15%以上保有していれば源泉税は免税さ
れる。結果的にEU加盟国親会社の保有割合が 5%から 15%のフランス子会社からの配当は、フランス
親会社がⅰ)配当所得について資本参加免税制度を受けられるか ⅱ)税務上の欠損金を計上している
場合と比べて不利になる。
欧州司法裁判所(European Court of Justice)の Denkavit ケースを巡る 判決:フランス法人2 社が 1987
年から 1989 年にかけてオランダ親会社へ配当を支払った事案である。当該親会社は、これらフランス
子会社 1 社の株式の 99%を保有し、もう 1 社は 100%を保有していた。源泉税は、フランスとオランダ
の租税条約第 10 条(2)(a)により 25%から 5%に軽減された。しかし、オランダ株主は、オランダの法人
税債務から 5%の源泉税を税額控除できなかった。オランダ税法では資本参加免税制度により受取配
当は免税となっているからである。
これらフランスとオランダの会社は、フランス裁判所にEU親会社がフランス親会社に比べて不利な扱い
を受けるべきでないと設立地選択の自由(freedom of establishment)の立場から配当の分配に対して
課された源泉税の還付を求めて提訴した。フランス最高裁は、当該ケースを欧州司法裁判所に差し回し
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「月刊 国際税務」
国際税務」2007 年 9 月号収録
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た。
欧州司法裁判所判決:2006 年 12 月 14 日、欧州司法裁判所は、以下の判断を下した。
・ 非居住親会社に対して払われた配当には税を課すが居住親会社に対してはその種の税をほぼ
全額免税にするという 1 国内の立法措置は設立地選択の自由に対する差別的制限に該当する。
・ 居住子会社から非居住親会社に対して払われる配当にのみ源泉税を課すという1国内の立法措
置は設立地選択の自由に対する差別的制限に該当する。たとえ当該源泉税が、租税条約で認め
られるものであるとしても、もしこの親会社でない会社の側でその所在 EU 加盟国において当該
条約で規定されているような方法で当該税額を相殺できない場合には依然として差別となる。
すなわち、欧州司法裁判所は国外への配当支払いに対して課されるフランスの源泉税は、EC条
約(EC Treaty)第 43 条及び第 48 条に掲げられている設立の自由に適合していないと判決した。
新フランス税務指針(tax guideline)(2007 年 5 月 10 日付け 4 C-7-07):Denkavit 判決に従い、フラ
ンス政府はフランス子会社からの一定の非居住親会社に対する配当の分配に関して税務上の取扱いを
修正することとした。この修正は、非居住会社の本店が EU 加盟国またはヨーロッパ経済地域
(European Economic Area-EEA)の国でかつフランスと情報交換条項をもつ租税条約を締結している
国にある場合に適用される。
配当の分配は次の場合においてフランス源泉税課税の対象とはならない
・人為的スキーム(artificial sheme)が存在せず、かつ
・EU/EEA 法人が 5%以上の株式を保有しているフランス配当支払法人からのフランス源泉の配当に
ついて、当該居住地国の免税規則が適用される結果、負担した源泉税が救済されない場合。この
源泉税免税は、EU/EEA にある法人が税務上欠損を計上しているためにフランス源泉税を相殺で
きない場合にも適用されることとなろう。
実施時期と源泉税の還付申請:フランス税務当局によるとこの源泉税免税は 2007 年 1 月 1 日から適用
される。しかしながら、われわれの見解では前述の諸要件を満たせば 2007 年 1 月 1 日より前の配当に
関わる源泉税還付申請も可能であろう。
Source:PwC France Newsalert
シンガポールとの
シンガポールとの新租税条約
との新租税条約(中国
新租税条約 中国)
中国)
2007 年 7 月 11 日、中国国家税務総局(“SAT”)とシンガポール内国歳入庁(“IRAS”)は新租税条約を締
結した。これは 1986 年 12 月 12 日に施行されその後の修正も加えられた現行の中国・シンガポール租
税条約に代わる条約となる。この新租税条約は、両国議会の批准を経て施行される。
受動所得に対する源泉税
中国から配当、利子、使用料を受け取るシンガポール居住者は、以下の率を享受できる。
配当
利子
使用料
10%
10%
中国との租税条約非締結国
0 %(注 1)/10%
10%
現行中国・シンガポール租税条約 7%/12%(注 2)
0%/7%/10%(注 3)
新中国・シンガポール租税条約
5%/10%(注 2)
0%/7%/10%(注 3)
6%/10%(注 4)
注
1)(2007 年の中国税制改正前の中国国内法):免税―シンガポールの投資家が発行済資本の 25%以
上を保有している中国外国投資企業(FIE)からの配当、10%-その他
2)7%/5%―中国会社からの配当受領者がシンガポール居住会社でかつ当該中国会社の 25%以上の
資本を保有している場合、12%/10%―その他。
3) 0%―シンガポールの特定政府機関が受領する利子、7%―中国会社がシンガポールの銀行また
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は金融機関へ支払う利子、10%-その他。
4) 6%―中国の会社によるシンガポール居住者への工業用、商業用,科学研究用設備の支払賃料、
10%-その他。
キャピタルゲイン:新中国・シンガポール租税条約のキャピタルゲインに関する条項では、シンガポール
投資家が計上する中国会社の株式処分によるキャピタルゲインに関して、1)シンガポール投資家の株
式保有割合が株式処分前の 12 ヶ月間にわたり 25%未満である場合、および 2)処分された株式評価額
の 50%超が中国国内の不動産から直接または間接的に生じていない場合に、全額免税扱いを認めて
いる。
従業員の人的役務提供(Dependent personal service):新中国・シンガポール租税条約では頻繁に中
国を訪れるシンガポール従業員の滞在日数算定期間を暦年ベースから任意の 12 ヶ月間に変更されて
いる。この変更で中国の個人所得税の対象となるシンガポール従業員が増加することが予想される。
所見:新中国・シンガポール租税条約のもとで、5%と7%になった配当と利子にそれぞれ適用される源
泉税率は現行の中国・香港租税条約の対応する源泉税率と競合できるものとなっている。これによって
香港とシンガポールは、ともに多国籍企業グループによる中国への投資拠点として当地域における競
争力を維持し続けることになろう。
Source:PwC China Newsalert
ミシガン州法人税
ミシガン州法人税の
州法人税の抜本的な
抜本的な改正 (米国)
米国)
2007 年 7 月 12 日ミシガン州知事の署名によりミシガン州事業税及び資産税の改正(以下「改正法」)が
成立した。改正内容は、現在の Single Business Tax ("SBT") から、売上ベースおよび法人所得ベース
の2本立ての事業税への変更と、資産税率の引下げが主体であり、当州で事業を行っている日系企業
にも大きな影響があると考えられる。改正法の主なポイントは次の通りである。
1)売上ベースおよび法人所得ベースの2本立ての課税:改正法では、売上ベースおよび法人所得ベー
スの2本立てで、事業税が課税される。売上ベースの事業税は、調整後総収入(Modified Gross
Receipts)に対し 0.8%の税率で課税される。調整後総収入とは、総売上から外部仕入原価等を控
除した金額となる。法人所得ベースの事業税は、州課税所得に対し4.95%の税率で課税される。州
内売上高が 35 万ドル未満の小規模事業者については納税申告義務が免除される。
2)申告方法の変更-ユニタリー合算申告:これまでミシガン州は法人ごとに申告する単体申告州であっ
たが、改正により水際方式のユニタリー合算申告が義務付けられた。合算申告を行うユニタリー・
グループには、原則として、50%以上の同一支配関係にあるグループ・メンバー全てが含まれる。
事業の 80%以上が米国外で行われている法人、資産と給与の 80%以上が米国外となる法人(海外
関連会社など)はユニタリー・グループから除外される。
3)納税申告義務-「エコノミック・ネクサス」基準の導入:改正法では、課税年度中、2日以上州内で活動し
た場合、あるいは積極的な販売勧誘活動を行った場合にネクサス(申告義務)があるとされる。積極
的な販売勧誘活動を行った場合は、たとえ州内での滞在日数がゼロであっても、ネクサスの判定基
準を満たす。これにより課税権を発生させることなく州内で行える事業活動は、限定されたものにな
った。
4)州間所得配賦率(Apportionment):改正前の課税所得のミシガン州への配賦比率は、当州における
売上・資産・賃金のそれぞれが全体の売上・資産・賃金に占める割合の平均値で計算されていたが、
改正により、売上のみの単体比率となる。ユニタリー・グループは、配賦率計算をグループ全体で
行う。なお、ユニタリー・グループのミシガン州内売上は、当州にネクサスを有するメンバーの州内
売上の合計額となる。
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適用年度
改正法は 2008 年 1 月 1 日以降適用される。例えば 3 月決算の納税者の場合には、2007 年 4 月 1 日
から 2007 年 12 月 31 日までの 9 ヶ月間については現行法に基づき申告を行い、2008 年 1 月から 3
月までの 3 ヶ月については改正法に基づき申告を行う必要がある。
留意点
・ 課税標準のひとつが売上ベースとなる為、企業の所得にかかわらず納税額が生じる。特にサー
ビス業の場合調整後総収入が大きくなる傾向にあり不利な税制と言える。
・ 当州に事業を有する関連会社がある場合は、ユニタリー・グループ・メンバーの判定を適切に行
い合算ベースで納税額を計算する必要がある。
・ ネクサスの有無を判定する基準が厳しくなったため、納税義務の有無をより的確に判断する必要
がある。
・ 日米租税条約は考慮されず、当州で事業を行う日本の法人は、原則として納税義務が生ずる。
Source:PwC 米国日本企業部 http://www.japan-bus.pwc.com/
本ニュースは、各国の税制改正の動向をお知らせする目的で、各国のプライスウォーターハウスク
ーパースが作成する速報ニュースや各国省庁等のホームページ掲載の情報等を抜粋してお伝えし
ています。制改正案の段階の情報が多いため、最終的な法制度につきましては、専門家にご確認く
ださるようお願いいたします。
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