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統合報告書 2016

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統合報告書 2016
統合報告書 2016
エーザイはWHOのリンパ系フィラリア症制圧活動を支援しています。
エーザイの価値創造のプロセスとフロー
エーザイでは企業理念の実現を通して、企業価値の向上をはかるために、顧客、株主、地域の皆様など幅
広いステークホルダーズの皆様との信頼関係の構築に努め、
「患者様価値」
「株主価値」
「社員価値」の最大化、
ならびに企業の社会的責任の遂行を経営における重要課題と捉え、企業活動を展開しています。
企業活動により創出された価値は、
「資本」
として蓄積され、ビジネスモデルを通じて増減し、変換されます。本レポートでは、
IIRC
(International Integrated Reporting Council、国際統合報告評議会)が公表したフレームワーク*1に則り、資本を投入
して事業活動を行い、付加価値を創出し、インプットした以上に資本を増加させるプロセスを、
“価値創造のプロセス”
とし
て捉えています。
一方、事業活動によりどのようにして価値が創出されるのかといった
“価値創造のフロー”については、バランスト・スコ
アカード*2の4つの視点に基づき、最終的には財務の視点にフォーカスした形で把握しています*3、4。これは、事業活動の
唯一の目的は、患者様満足の増大という社会価値創造であり、その結果として売上や利益といった経済価値を創出すると
いう、エーザイの企業理念に基づいた考え
(目的と結果の連続順)
とも合致しています。
本報告書では、価値創造のプロセスとフローのモデルとして、IIRCのフレームワークとバランスト・スコアカードを包含
した新しいモデルに基づき、エーザイの持続的な価値創造を表現しています。
図表1 エーザイの価値創造のプロセスとフローのモデル
*
6つの資本
(IIRCのフレームワークをベースに定義)
■知的資本:
パイプラインや知的財産など知識ベースの無形資産
■人的資本:
人財の能力や経験およびイノベーションへの意欲
■製造資本:
製品の生産またはサービス提供に利用される設備
■社会・関係資本:
共通善を目的とし、社会やステークホルダーズと信頼
ストック
関係を築く体制
■自然資本:
知的資本
企業活動を支え、企業活動により影響を受ける環境資
源とプロセス
人的資本
■財務資本:
企業活動を行うために使用できる資金のプール
製造資本
4つの視点
(バランスト・スコアカードをベースに定義)
社会・関係資本
■学習と成長の視点:
企業理念の実現のために、変革と改善を可能にする
社員の能力をいかに持続するか
自然資本
■顧客の視点:
患者様の満足のためにどのように行動すべきか
リスクと
機会
財務資本
■内部ビジネス・プロセスの視点:
患者様と株主の満足のためにビジネスモデルの
どこが秀でるべきか
■財務の視点:
財務的に成功するために株主に対してどのように
行動すべきか
*出典:伊藤和憲、
2014年、
「管理会計の視点から見た統合報告」
『 企業会計』、
2014年5月号
2
*1 IIRC,“The International IR Framework”
, International Integrated Reporting
Council, 2013
*2 Kaplan, Robert S. and Norton, David P.,“Using The Balanced Scorecard as
a Strategic Management System”
, Boston, MA:Harvard Business Review,
January-February, 1996
*3 Jensen, Michael C.,“Value Maximization, Stakeholder Theory, and The
Corporate Objective Function”
. Business Ethics Quarterly 12
(2)
, 2002
*4 Porter, Michael E. and Kramer, Mark R.,“Creating Shared Value”
, Harvard
Business Review, June 2011, page 8-31
図表2 企業理念に基づく目的と結果の連続順
目的
顧客の創造と維持
顧客満足
事業活動
結果
売上、利益・
・
・
*出典:嶋口充輝氏の理論に基づき作成
資本
(ストック)
の増加
IIRCフレームワークに基づく
企業理念
hhc(ヒューマン・ヘルスケア)
価値創造のプロセス
ガバナンス
ストック
ビジネスモデル
知的資本
バランスト・スコアカードに
基づく価値創造のフロー
人的資本
学習と成長の視点
製造資本
顧客の視点
社会・関係資本
内部ビジネス・
プロセスの視点
戦略と
資源配分
財務の視点
実績
自然資本
財務資本
見通し
3
Contents
エーザイとは
特集 医薬品アクセス向上への取り組み
エーザイの価値創造のプロセスとフロー
2
マテリアリティ(重要課題)
5
企業理念 ヒューマン・ヘルスケア
(hhc )企業をめざして
6
エーザイの歴史
8
主要製品
10
トップメッセージ ステークホルダーズの皆様へ
12
中期経営計画「EWAY 2025」
14
社会・関係資本
エーザイのパートナーシップ展開
50
社会的責任への取り組み
52
自然資本
地球環境に配慮した事業活動
「EWAY 2025」
の全体像/
「EWAY 2025」
2020年度連結業績目標
54
財務資本
/
「EWAY 2025」フラッグシップドラッグ
ニューロロジー領域
18
オンコロジー領域
26
知的資本
知的財産戦略
31
研究開発体制
32
連結財務ハイライト 2015 年度の実績
56
財務戦略
58
中長期的なROE経営
60
資本政策
62
株式の状況
63
財務情報に関する詳細は「決算短信」をご参照ください。
▶http://www.eisai.co.jp/ir/financial/reports/
人的資本
グローバルなマーケティング体制
46
価値創造を支える仕組み
34
日本医薬品事業/アメリカス医薬品事業/ EMEA 医薬品事業/
中国医薬品事業/アジア医薬品事業
コーポレートガバナンスの体制
64
社員
40
役員一覧
66
労働安全衛生への取り組み
43
コンプライアンス・リスク管理
70
会社情報
製造資本
エーザイデマンドチェーンシステムズ
44
社会的責任に関する指標
72
会社概要
74
■報告対象期間 2015年度
(2015年4月1日から2016年3月31日)
、一部の活動については、
2016年度の状況も掲載しています。
■報告対象組織 エーザイ株式会社およびその国内外の連結子会社
■注意事項 この統合報告書において提供される資料ならびに情報は、
現在における予想、
目標、
評価、
見通し、
リスクを伴う想定などの不確実性に基づくものを含んでいます。従っ
て、
様々な要因の変化により、
将来予想などが実際の結果と大きく乖離する可能性があります。
また、
報告書中の目標数値はあくまで中期的戦略、
めざす方向性、
ビジョン等を示すも
のであり、
正式な業績予想ではありません。正式な業績予想は東京証券取引所規則に基づく年次決算短信等での開示をご参照ください。将来の見通しに影響を与えうる要素には、
エーザイの事業環境をとりまく経済環境や競争圧力の変化、
法規制の改正、
為替レートの変動、
新薬開発の不確実性、
第三者による知的財産の侵害などがありますが、
これらに限定
されるものではありません。
また、
医薬品
(開発中のものを含む)
に関する情報が含まれていますが、
その内容は宣伝広告、
医学的アドバイスを目的としているものではありません。
■一般名の表記について 一般名については、
塩または水和物を省略しています。
4
マテリアリティ
(重要課題)
図表1
エーザイは、 に示したプロセスにより、マテリアリティ
(重要課題)を特定し、優先順位づけの上、マテリアリティ・マ
図表2
トリックスを作成しました 。これらは、必要に応じてレビューとアップデートをしていきます。本報告書では、マテリ
アリティに関する情報についても説明していますので、各ページをご参照ください。
図表1 マテリアリティの設定プロセス
プロセス 1:課題の特定
プロセス 2:優先順位づけと
マテリアリティ・マトリックスの作成
各種ガイドライン(例:SASB*1の製薬産業の評
価基準、GRI ガイドライン)や、ステークホルダー
ズの皆様とのコミュニケーション、社会的責任
投資の評価項目
(例 : ダウ・ジョーンズ・サスティ
ナビリティ・インデックス)などを参考に課題
を選定
特定した課題の優先順位を考慮し、企業理念や財務への
影響を鑑みた「エーザイの事業へのインパクト」と、財
務報告やイノベーション創出の機会、法規制や業界規範
がもたらす影響といった「長期投資家にとっての関心」
の観点から、それぞれ特に重要度の高いものを優先順位
づけし、マトリックスを作成
プロセス 3:レビューとアップデート
課題への取り組みの進捗や、ビジネス環境の変
化などを踏まえて、必要に応じてレビューと
アップデートを実施
*1 S
ASB:Sustainability Accounting Standards Board(サステナビリティ会計基準審議会)
。合理的な投資家にとってのマテリアリティを業種別に特定し、サステナビリティの開示
基準を開発している米国の非営利民間団体。
強い
長期投資家にとっての関心
非常に強い
図表2 エーザイのマテリアリティ・マトリックス
■CO2排出量削減(低炭素社会形成への
取り組み)
(54ページ)
■廃棄物削減(循環型社会形成への取り
組み)
(55ページ)
■水資源の有効利用(55ページ)
( )内は、本報告書における主たる関連ページを示しています
■医薬品アクセス向上への取り組み
(46-49ページ)
■革新的な製品の創出
(17-33, 37, 48ページ)
■製品の安全性と副作用への対応
(53ページ)
■倫理性と透明性を確保した創薬活動
(33ページ)
■コンプライアンス・リスク管理
(70-71ページ)
■コーポレートガバナンス
(64-65ページ)
■財務戦略(58-59ページ)
■知的財産戦略(31ページ)
■贈収賄・汚職の防止(71ページ)
■情報開示*2
■従業員の採用と能力開発
(41-42ページ)
■従業員の健康と安全衛生管理
(42-43ページ)
■ダイバーシティの推進(40ページ)
■医薬品の提供にとどまらない、地域
医療に対するソリューションの提供
(認知症ソリューション事業の展開)
(36ページ)
■公正かつ倫理的なマーケティング
(35ページ)
■製品の品質保証と安定供給
(44-45ページ)
■偽造医薬品への対応(45, 53ページ)
強い
エーザイの事業へのインパクト
*2 コ
ーポレートガバナンスガイドライン第11条をご参照ください ▶ http://www.eisai.co.jp/company/governance/cgguideline.html
5
非常に強い
企業理念 ヒューマン・ヘルスケア
(hhc )
企業をめざして
エーザイの定款には、企業理念が明記されています
エーザイは、医療の主役が患者様とそのご家族、生活者であることを明確に認識し、そのベネフィット向上を通じてビジネ
スを遂行することを企業理念に掲げています。
理念と呼んでいます。社員一人ひとりが患者様の傍らに寄り
この理念を一言に集約したものをhhc(ヒューマン・ヘルスケア)
添い、患者様の目線でものを考え、言葉にならない想いを感じ取ることが重要であると考え、すべての社員に就業時間の1%
を患者様とともに過ごすことを推奨しています。
エーザイの依って立つ基盤と実現したい姿を株主の皆様と共有し、事業運営にあたるため、2005年6月の株主総会において
定款の一部変更を行い、株主の皆様のご賛同を得て企業理念を条文として設けました。
企業理念
患者様とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する
定款 第 2 条 本会社は、患者様とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのべネフィット向上に貢献することを企業理念と定め、
この企業理念のもとヒューマン・ヘルスケア
(hhc )
企業をめざす。
② 本会社の使命は、患者様満足の増大であり、その結果として売上、利益がもたらされ、この使命と結果の順序を重要と考える。
③ 本会社は、コンプライアンス(法令と倫理の遵守)を日々の活動の根幹に据え、社会的責任の遂行に努める。
④ 本会社の主要なステークホルダーズは、患者様と生活者の皆様、株主の皆様および社員である。
本会社は、以下を旨としてステークホルダーズの価値増大をはかるとともに良好な関係の発展・維持に努める。
1. 未だ満たされていない医療ニーズの充足、高品質製品の安定供給、薬剤の安全性と有効性を含む有用性情報の伝達
2. 経営情報の適時開示、企業価値の向上、積極的な株主還元
3. 安定的な雇用の確保、やりがいのある仕事の提供、能力開発機会の充実
日常業務の中で具現化するhhc
エーザイでは、社員一人ひとりが企業理念を一人の想いだけでなく共通の価値観として認識し、それぞれの日常業務の中で
具現化するために、様々な活動を提案・推進しています。
「hhc イニシアティブ」による「知」の共有
患者様との共体験の場の設定
業務の一環として認知症、がん、てんかん等の患者様とと
エーザイでは、組織やプロジェクト単位でhhc の実現をめ
もに時間を過ごす体験を実践するため、様々な機会を提供し
ざし具体的な行動計画を立て、実行する一連の活動を「hhc
ています。
活動」と呼んでいます。毎年500以上のhhc 活動がグローバ
「現場体験研修」では、医療現場や介護施設に赴いて今日の
ルに展開され、特に患者様に大きく貢献した活動を表彰する
医療・介護の実態を学びます。また、新入社員研修では患者
「hhc イニシアティブ」を毎年開催しています。このイベント
様や障がいを持つ方々とともに社会
には受賞者と各国グループ企業のトップマネジメントが参加
課題の解決策を考えるワークショッ
し、
お互いのベスト・プラクティスを発表します。創造された
「知」
プを実施しています。
を共有することにより、さら
このほかにも、患者様団体を対象
なる患者様貢献をめざしてい
とした工場見学や患者様を招聘した
きます。
講演会などを企画し、社員が患者様
とともに過ごす場を設けています。
6
hhc に依拠したビジネスモデル
エーザイがめざすhhc は、事業活動に必ずしも寄与しない慈善活動を含む社会貢献活動を中心としたCSR(Corporate
Social Responsibility:企業の社会的責任)や、社会価値と経済価値を同時に実現するというCSV(Creating Shared Value)
のようなビジネスモデルとは異なります。
まず、利益創出ではなく、患者様満足の増大という社会価値創造を唯一の目的として掲げ、継続的な組織変革と企業活動を
繰り返しながら、結果として経済価値である売上や利益の創出をめざします。
CSR
Corporate Social Responsibility
CSV
Creating Shared Value
hhc
human health care
価値は
「善行」
価値はコストと比較した
経済的便益と社会的便益
価値は社会貢献という共通善
シチズンシップ、
フィランソロピー、
持続可能性
企業と地域社会が共同で
価値を創出
地域社会ニーズに合わせ
企業が共同で価値を創出
任意、あるいは外圧によって
競争に不可欠
競争にこだわりを持たない
利益の最大化とは別物
利益の最大化に不可欠
利益は目的である共通善の
結果として得られる
テーマは、外部の報告書や
個人の嗜好による
テーマは企業ごとに異なり、
内発的である
テーマは企業ごとに共有される
企業の業績やCSR予算の
制限を受ける
企業の予算全体を再編成する
企業の日常業務予算として
組み込まれている
たとえば、
フェアトレードで
購入する
たとえば、調達方法を変えて
品質・収穫量を向上させる
たとえば、バリューチェーンに
顧客ニーズをインプット
利益創出よりも大義である経営目標を掲げて組織を変革し、経済価値と社会価値を同時追求する経営モデル(CSV)
から、
hhc は社会価値創造を唯一の目的とし、結果として経済価値を創出します。
出典:Michael E. Porter: Creating Shared Value, Harvard Business ReviewなどよりデロイトCSR/CSV作成後, エーザイ修正. 野中郁次郎一橋大学名誉教授監修.
2015年のhhc 活動ハイライト−hhc イニシアティブより
2015年11月、東京の本社でhhc イニシアティブが開
し認知症簡易診断テストを実施したり、必要に応じて医
催され、世界のエーザイグループ企業の代表が一堂に集
療機関を紹介するなどの活動を行いました。また、イン
い、本年度のhhc 活動について発表しました。
ターネット上にキャンペーンサイトを立ち上げ、中国の
ロシアで行ったhhc 活動「Always Together, Always
アルツハイマー協会と共同で製作した認知症の簡易診断
Beside You」
(「いつも一緒に、いつもそばに」)では、現
ゲームや認知症に関連した記事の公開も行いました。
地社員が医師やヨガ講師等とてんかんの子供を対象とし
たヨガ教室を開催しました。ある調査では、ロシアのて
んかんの子供の約2割が一般の学校に通えず、約7割が
「自分がてんかんであることを隠している」と回答してい
ます。ヨガ教室は、てんかんの子供達が体を動かし、仲
間との絆を深め、自信を持つきっかけづくりの場として
開催されました。
また、中国では、「記得我愛你(私があなたを愛してい
ることを覚えていてね)
」
をスローガンに、アルツハイマー
型認知症の啓発活動を実施しました。本活動では、ボラ
ンティア団体の協力のもと、現地社員が高齢者宅を訪問
ロシアで開催されたてんかんの子供達のためのヨガ教室の様子
7
1960
年代
世界中の患者様への貢献をめざして
エーザイの歴史
1970
年代
1980
年代
グローバルなマーケティング体制の構築
●1960年代後半~1970年代前半
東南アジアに現地法人を設立
エーザイは、2016年におかげさまで、創業75
年を迎えることができました。
私たちは、その前身である日本衛材株式会社の
設立以来、幾多の試練と難局を乗り越え、世界
の国々の多くの人々の健康福祉に貢献するとい
う創業精神のもと、患者様と想いをともにする企
業文化や企業風土を育み、革新的な新薬をお届
けできるよう挑戦し続けています。
海外進出を本格的にスタート
1969年 シンガポール、
タイ、
台湾
1970年 インドネシア
1974年 マレーシア、
フィリピン
海外進出を推し進めた活動が認められ、当時の通商産業大臣
から1969年度の「輸出貢献企業」の表彰を受けました。
1941年 日本衛材株式会社設立
1955年 「日本衛材株式会社」
から
グローバルブランドの創出
「エーザイ株式会社」
へ社名変更
●1980年代~1990年代前半
研究開発三極体制の構築
1982年 筑波研究所竣工
(日本)
1989年 ボストン研究所竣工
(米国)
1992年 ロンドン研究所竣工
(英国)
創業者:内藤豊次
(1889年〜1978年)
筑波研究所
国内製薬企業の海外進出戦略が、
自社製品を海外製薬企業に導出する
形態が主流であった当時、エーザイは
源流である研究から生産までを自ら
の手で行うことにこだわりました。
ボストン研究所
いち早く日米欧に研究開発拠点を確
立し、グローバルブランドの創出に取
り組んできました。
ロンドン研究所
1951年に発売したチョコラブランド
第1号『チョコラA』
の広告
1948年に発売した
避妊薬
『サンプーン』
の広告
がん領域への本格的参入
ロゴマークの変遷
●
1987年 筑波研究所にて自社抗がん剤の
研究開発グループが発足
1941年
(創業時)
現在のエーザイの母体となった「日本衛材株
式会社」
のマーク
グローバル企業としての先進的な取り組み
1955年
(社名変更時)
社名を、当時とても珍しかったカタカナ表記
に改称するとともに、マークも赤と青の意匠
を凝らしたデザインに刷新
●1990年代前半
企業理念 hhc
の発動
1988年
1990年
現在
色の意味:
赤い血は動脈から、青い血は静脈から、心臓
を中心に一刻も休まずに活動しつづけていま
す。われわれの仕事はこの動きが滞らないよう
にと、健康を保ち生命を続けさせることです
代表取締役社長に内藤晴夫が就任
「世の中変ります。
あなたは変れますか」
というメッセージで
社員一人ひとりの革新を促す
「エーザイ・イノベーション宣言」
を
発信
1992年
企業理念
“ ”
hhc の制定
海外展開を進めていた当時、
“hhc”
の3文字に込め
られた想いは、海外の社員にも理解され、共感さ
れ、覚えやすい共通のコアバリューとなりました。
8
1990
2000
年代
2010
年代
年代
アリセプト、パリエットの拡大に伴う海外進出の加速
「EWAY 2025」始動
●1990年代
●2000年代~2010年代前半
●2010年代後半~
1995年 米国、
英国、
ドイツ
1996年 フランス、中国
1997年 韓国
2001年 スペイン
2004年 インド
2005年 イタリア、
スイス、
スウェーデン
2006年 オーストラリア、
ポルトガル
2007年 ベルギー
2009年 オーストリア
2010年 カナダ
2011年 ブラジル、
メキシコ
2013年 ロシア
2025年度までの新たな中期経営
計画を策定し、2016年 4 月より
スタートしました。
海外主要国で医薬品販売会社を設立
欧州、新興国で医薬品販売会社の設立を加速
●1990年代後半~2000年代
アリセプト
1997年 米国、欧州(英国)で発売
1998年 アジア(タイ)で発売
1999年 日本で発売
パリエット(米国名:アシフェックス)
1997年 日本で発売
1998年 欧州(英国)
で発売
1999年 米国、アジア
(タイ)
で発売
連結売上収益、主要製品の売上収益の推移*(億円)
ピークセールス
その他の売上収益
グローバルブランド
(
「ハラヴェン」
「レンビマ」
「フィコンパ」
「BELVIQ」
)
売上収益
パリエット/アシフェックス売上収益
アリセプト売上収益
3,025
3,617
4,666
5,002
5,330
ニューロロジー領域、
オンコロジー
領 域の立 地を 活かし、13品の フラッグシップドラッグの創出を
めざします。
*詳細は14-17ページをご覧ください。
●2010年代
アリセプト、
パリエットの拡大
4,317
中期経営計画「EWAY 2025」
6,013
6,741
7,343
新たなグローバルブランドの
時代へ
*詳細は23-24、28-29ページをご覧ください。
2010年 抗がん剤
「ハラヴェン」
米国で発売
2012年 抗てんかん剤
「フィコンパ」
欧州で発売
2013年 肥満症治療剤
「BELVIQ」
アリセプト 3,228億円(2009年度)
米国で発売
パリエット 1,759億円(2007年度)
「レンビマ」
2品合計
4,708億円(2009年度) 2015年 抗がん剤
米国、日本、欧州で発売
7,817 8,032 7,689
6,480
5,737 6,004 5,485
5,479
アリセプトの独占販売期間満了:
2010年 米国
2011年 日本
2012年 欧州
パリエットの独占販売期間満了:
2010年 日本
2012年 欧州
1999年度 2000年度 2001年度 2002年度 2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度 2015年度
2013年 米国
*2013年度までは日本基準、2014年度以降は国際会計基準
(IFRS)
2006年 米国ライガンド社と抗がん剤4品目の戦略的
製品買収に関する契約締結
2007年 米国モルフォテック社の買収に関する
契約締結
2008年 米国 MGIファーマ社の買収手続き完了
●1990年代後半~2000年代
2010年 米国にH3 Biomedicine Inc. 設立
2016年 オンコロジービジネスグループを創設
コンプライアンス推進体制の強化
コーポレートガバナンスの充実
1999年
2000年
● 企業倫理担当役員の任命
● 社外の法律家を中心とする
企業行動憲章・行動指針の制定
*詳細は70-71ページをご覧ください。
社外取締役の選任
●
コーポレートガバナンス委員会の設置
●
取締役会の議長と代表取締役社長を分離
2004年
●
指名委員会等設置会社に移行
●
取締役11名中、
6名が社外取締役
(現在は7名)
●
社外取締役が取締役会の議長に就任
●
企業理念を定款に規定(株主総会で承認)
● コンプライアンス・ハンドブックの発刊
● コンプライアンス・カウンターの設置
執行役員制度の導入
●
2003年
コンプライアンス委員会の設置
2000年 ● ENW
(エーザイ・ネットワーク企業)
●
2005年
*詳細は64-65ページをご覧ください。
9
●2010年代
医薬品アクセス向上への
取り組みの強化
*詳細は46-49ページをご覧ください。
2010年11月 WHOとの合意書に調印
主要製品
医療用医薬品事業
ニューロロジー領域
アリセプト(一般名:ドネぺジル)
メチコバール(一般名:メコバラミン)
アルツハイマー型、レビー小体型認知症治療剤
末梢性神経障害治療剤
自社創製のメコバラミ
ン(生体内補酵素型ビタ
ミンB12)製剤であり、傷
ついた末梢神経を修復す
る作用があります。末梢
性神経障害治療剤として
日本やアジアで広く使わ
れています。
自社創製の認
知症治療剤です。
神経伝達物質ア
セチルコリンの
分解酵素を阻害
し、アルツハイ
マー型認知症の
症状の進行を抑
制します。世界
90カ国以上で承認されています。日本とフィリピンにおいてはレ
ビー小体型認知症の適応も取得しています。
リリカ(一般名:プレガバリン)
疼痛治療剤
フィコンパ(一般名:ペランパネル)
Pfizer Inc.が開発し、
世界100カ国以上で承
認されている疼痛治療
剤です。日本において
は、ファイザー株式会社
とエーザイが共同プロ
モーションを行っており、
本剤に関連する適正使用情報を提供しています。
抗てんかん剤
自社創製のAMPA受容体
拮抗剤であり、てんかんの
部分発作および強直間代発
作に対する併用療法に係る
適応で日本、米国、欧州、
アジアで承認を取得してい
ます。
*詳細は23ページをご覧ください。
ルネスタ(一般名:エスゾピクロン)
BELVIQ(一般名:lorcaserin)
不眠症治療薬
肥満症治療剤
Sunovion Pharmaceuticals Inc. によって創製された、非ベ
ンゾジアゼピン系のGABA A受容体作動薬です。日本では、エー
ザイが同社より独占
的開発・販売権を獲
得して開発を進め、
2012年4月に発売し
ました。
Arena Pharmaceuticals, Inc. 創製の新規
化合物であり、選択的に脳内のセロトニン2C
受容体を刺激することにより摂食を抑制し、
満腹感を促進すると考えられています。米国
では、肥満症治療のための処方薬として13年
ぶりに承認され、2013年6月に発売しました。
*詳細は24ページをご覧ください。
10
オンコロジー領域
消化器領域
(EAファーマ株式会社)
エーザイが60年以上取り組んできた消化器事業を味の素製
ハラヴェン(一般名:エリブリン)
薬株式会社と統合し、研究開発から生産物流、営業までのフ
抗がん剤/微小管ダイナミクス阻害剤
自社創製の抗がん剤です。クロイソカイメン由来のハリコンド
リンBの合成類縁体で、微小管の伸長を阻害し細胞周期を停止さ
せることで抗腫瘍活性を示します。
60カ国以上で乳がんに係る承認を
取得しています。また、2016年
には、悪性軟部腫瘍に係る適応で
日本、米国、欧州で承認を取得し
ました。
*詳細は29ページをご覧ください。
レンビマ(一般名:レンバチニブ)
抗がん剤/分子標的治療薬
自社創製の新規結合型選択的チロシンキナーゼ阻害剤です。甲
状腺がんに係る適応で、45カ国以上で承認を取得しています。ま
た、2016年5月、米国で腎細胞がんに対するエベロリムスとの併
用療法に係る適応で承認を取得しました。
ルバリューチェーンを有した、国内最大の消化器スペシャリ
ティファーマをめざすEAファーマ株式会社が発足しました。
パリエット(一般名:ラベプラゾール)
プロトンポンプ阻害剤
エーザイ創製のプロト
ンポンプ阻害剤です。胃
潰瘍、十二指腸潰瘍、逆
流性食道炎、ヘリコバク
ター・ピロリ除菌などの
適応症で、世界100カ国
以上で承認されています。また、
日本では、「パリエット錠10mg」
を含むヘリコバクター・ピロリ
除菌用3剤併用製剤(パック製剤)
として、一次除菌用パック製剤
「ラベキュアパック400/ラベキュアパック800」および二次除菌用
パック製剤「ラベファインパック」も発売されています。
エレンタール
*詳細は28ページをご覧ください。
成分栄養剤
味の素社が開発した、国
内で初めての成分栄養剤で
あり、ほとんど消化を必要
としない形の5大栄養素を
バランスよく配合した低残
渣性・易吸収性の経腸的高
カロリー栄養剤です。
Aloxi(一般名:パロノセトロン)
ジェネリック医薬品事業
(エルメッド エーザイ株式会社)
制吐剤
ジェネリック医薬品事業は、エーザイの100%子会社であ
急性ならびに遅発性のがん化学療法
に伴う悪心・嘔吐(CINV)予防と、術後
の悪心・嘔吐(PONV)予防の両適応を持
つセロトニン3受容体拮抗剤です。米国
でEisai Inc. が販売しています。
るエルメッド エーザイ株式会社が担っています。患者様に
とって服用しやすい「付加価値型ジェネリック医薬品」を中心
に開発し、エーザイMRとの連携の上、医療関係者の皆様へ
きめ細やかな情報提供活動を行っています。
一般用医薬品等
その他
チョコラBBシリーズ
口内炎・肌あれに効き目のあ
るチョコラBBプラスをはじめ、
第3類医薬品、指定医薬部外品、
栄養機能食品など多数のライン
ナップをそろえています。
ヒュミラ(一般名:アダリムマブ)
ヒト型抗ヒトTNFα モノクローナル抗体製剤
関節リウマチをはじめとする自
己免疫疾患の治療剤です。
日本では、
アッヴィ社が製造販売し、エーザイ
が販売しています。消化器疾患領
域以外の適応症はエーザイとアッ
ヴィ社が、消化器疾患領域の適応症
はEAファーマ株式会社とアッヴィ
社が共同プロモーションを行って
います。
チョコラドットコム▶ www.chocola.com
第3類医薬品
指定医薬部外品
セルベールシリーズ
胃酸などの刺激から胃の粘膜を守
る「胃粘液」を増やし、さらに胃の運
動を活発にして弱った胃の状態を整
えます。
11
胃のサイエンス▶ www.i-no-science.com
第2類医薬品
トップメッセージ
ステークホルダーズの皆様へ
目標をしっかりと見据え、着実に患者様貢献を果た
新たな中期経営計画
「EWAY 2025」
して参ります。
新興国を中心とした中間所得層の拡大やグローバ
ております。3つの戦略意思の根本は、患者様に貢献
ルな高齢化の進展により、がんや生活習慣病、認知
したいという当社の企業理念 hhc(ヒューマン・ヘル
症などの非感染性疾患が増加する中、医療の質や効
スケア)です。患者様とともに時間を過ごし、患者様
率性、持続可能性がますます問われるようになって
の真のニーズを理解することによって生まれる強い
います。当社では、今後10年間のグローバル医薬品
動機づけが当社のイノベーションの源泉です。未だ
産業を取り巻く環境変化を
「患者様中心」
「
、予防、
治癒、
真の患者様ニーズが満たされておらず、かつ当社が
ケア」
、
「地域・在宅医療」
、
「アウトカム
(治療成果)
」
、
フロントランナーとなりうる「立地」を見出し、かか
「ペイヤー
(支払者)
」
、
「アクセス」
、
「デジタル技術」
る「立地」において当社がイノベーションにより中心
という7つの観点から捉えた上で、2025年度までの
的な役割
(センターライン)
を果たすことが、
「EWAY
新たな中期経営計画「EWAY 2025」を策定し、2016
2025」
の中心的なコンセプトです。
「EWAY 2025」は、3つの戦略意思から構成され
年4月よりスタートしました。10年後に辿り着くべき
12
戦略意思1
ことを追究し、そのためのエビデンスの創出により患
そして治りたい」
に応える
プト」の発売以来築いてきた認知症領域における知識
者様アクセスの向上をはかります。さらに、
「アリセ
「病気になりたくない、罹っていれば早く知りたい、
や経験を活かし、認知症ソリューション事業を展開し
患者様満足の最大化に向けて、ニューロロジー、オ
ます。
「多職種連携サービス」
「お出かけ支援ツール」
ンコロジー領域を戦略的重点領域と定め、それぞれ
「服薬支援機器」などのツールを活用し新しいソリュー
の領域においてビジネスグループを創設しました。研
ションを提供し、認知症と共生する社会の実現への貢
究開発から販売までの機能を集約した領域特化のEnd
献をめざします。
to Endの組織のもと、パイプライン優先度、ライフサ
イクルマネジメント採択、コマーシャルミックス変更
戦略意思3
等の重要決定を速やかに行って参ります。
「hhc ニーズに基く立地
(機会)
が見出せ、それを満たす
ニューロロジー領域では、
「1. 低侵襲な早期診断」
、
イノベーションが可能な事業分野」に集中する
「2. 新しい神経伝達経路」
、
「3. タンパク変性」
、
「4. 神
経炎症および免疫ジェネティクス」
、
「5. シナプス微小
事業ポートフォリオについては、我々が立地を
環境」
、
「6. ニューロン再生」という6つの立地、オン
見出し、イノベーションを連打することができる
コロジー領域では、がん微小環境における3つの細胞
「ニューロロジービジネス」
「オンコロジービジネ
(
「1. 間葉系細胞、腫瘍間質」
、
「2. 骨髄系細胞」
、
「3. 血
ス」
「EAファーマ」
「ジェネリック医薬品事業」
「コン
管内皮細胞」
)
、およびがん細胞における
「4. ドライバー
「認知症ソリューション事業」
シューマーhhc 事業」
遺伝子変異、スプライシング異常」
という4つの立地に
の6つの分野に集中していきます。また、グローバ
おいて、イノベーションの創出をめざして参ります。
ルな生産体制においても各工場の強みを活かしたイ
また、リアルワールドデータ、ゲノムデータ等の
ノベーションベースの立地を確立し、世界規模での
様々な社外ビッグデータおよび社内に蓄積されている
デマンドイノベーション活動を展開していきます。
データを集約し、一元管理とワンストップアクセスの
Towards 2025
実現をめざすhhc データクリエーションセンターを新
設しました。これらのデータを、人工知能をはじめと
する高度な解析技術を駆使して解析することによっ
2025年度に向けて飛躍的な成長を遂げるため、
て、新たな創薬ターゲットやバイオマーカーの同定、
ニューロロジー領域、オンコロジー領域における立
患者様個々のニーズに合致したソリューションの提
地を活かし、次世代アルツハイマー型認知症治療剤、
供等を推進します。疾病を治癒に導く薬剤(Curative
がん領域における低分子Precision medicinesを含
Medicine)と先制医 療に資することができる薬 剤
む13品のフラッグシップドラッグの創出をめざしま
す。2025年度に向けて、当社は「Medico Societal
(Preemptive Medicine)
の創出を目指します。
Innovator」として、Preemptive Medicines、
戦略意思2
Curative Medicines、
Solutionsの提供により
「予防、
管理し、予後や老後を安心して過ごしたい」
に応える
を充足するとともに、メディカル、アウトカム、ア
治癒、ケア」に対する患者様とそのご家族のニーズ
「住み慣れた場所、地域やコミュニティで自分の病気を
クセスを基軸とする事業ミックスにより「安心・安全
医療の提供体制における機能分化・連携や在宅医
を届ける地域医療」に貢献して参ります。
療の充実等の動きに対応すべく、メディカル、アウト
引き続き、hhc 理念とコンプライアンスのもと、
カム、アクセス機能を中核とする地域医療にフォーカ
持続的な企業価値向上をめざしステークホルダーズ
スした事業体制へ転換します。特に、日本においては、
各位の負託に応える所存です。今後ともご支援を賜
在宅医療において罹患率の高い認知症、不眠症、骨
りますようお願い申し上げます。
2016年8月
粗鬆症、便秘症等の疾患において、エーザイ製品に
加え、EAファーマ株式会社(消化器領域事業)やエル
メッド エーザイ株式会社(ジェネリック医薬品事業)
の製品を組み合わせてより高いアウトカムをもたらす
13
代表執行役 CEO
「EWAY 2025」
の全体像
「EWAY 2025」は、患者様ニーズの充足に向けた3つの戦略意思と、それを実現するための8つのストラテジーから構成さ
れています。
戦略意思 1 「病気になりたくない、罹っていれば早く知りたい、そして治りたい」
に応える
ストラテジー 1 「領域集中」
ストラテジー 2 「立地とイノベーション」
*詳細は18-19, 26-27ページをご覧ください。
ストラテジー 3 「ICT Driven Innovation」
戦略意思 2 「住み慣れた場所、地域やコミュニティで自分の病気を管理し、予後や老後を安心して過ごしたい」
に応える
ストラテジー 1 「認知症ソリューション事業」 *詳細は36ページをご覧ください。
ストラテジー 2 「地域医療フォーカスの事業MIX」 *詳細は36ページをご覧ください。
ストラテジー 3 「統合プロダクトパッケージ戦略」 *詳細は36ページをご覧ください。
戦略意思 3 「hhc ニーズに基く立地が見出せ、それを満たすイノベーションが可能な事業分野」
に集中する
ストラテジー 1 「事業ポートフォリオの転換」
ストラテジー 2 「生産体制の刷新」
戦略意思 1
ストラテジー1 「領域集中」
アイヴァン・チャン
井池 輝繁
常務執行役
ニューロロジービジネスグループ プレジデント
常務執行役
オンコロジ ービ ジ ネスグ ループ プレジデント
ビジネスグループ
プレジデント
探索研究/開発研究
臨床研究
コマーシャル
戦略/計画
患者様満足の最大化に向けて、ニューロロジー、オンコロジー領域を戦略的重点領域と定め、それぞれの領域において
ビジネスグループを創設しました。2つのビジネスグループは、探索研究/開発研究、臨床研究、コマーシャル、戦略/
計画などの機能を集約したEnd to Endの組織体制であり、製品創出、コマーシャルに加え、損益に関してもその責任を
有します。パイプライン優先度、ライフサイクルマネジメント採択、コマーシャルミックス変更等の重要決定を速やかに
行い、イノベーションの創出をめざします。
14
戦略意思 1
ストラテジー3 「ICT Driven Innovation」
ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)を駆使した新たなイノベーションを創造す
るためのグローバル拠点として、2016年4月1日にhhc データクリエーションセンターを設立しました。hhc データ
クリエーションセンターでは、社内外のビッグデータ、リアルワールドデータの一元管理と、ワンストップアクセス、
スマート検索を可能にするICTインフラの構築をめざします。また、人工知能を含む高度な解析技術を駆使して、ビッ
グデータ、リアルワールドデータの解析を行い、新たな創薬標的やバイオマーカーの同定、患者様個々のニーズに合
致したソリューションの提供、アウトカム評価のためのエビデンス創出等を推進します。
戦略意思 3
ストラテジー1 「事業ポートフォリオの転換」
エーザイは、戦略的重点領域と定めたニューロロジー、オンコロジー領域への資源投入を集中する一方、自社より
も社外の方がイノベーションの創出が可能と判断した以下の事業を他社へ譲渡しました。事業ポートフォリオについ
ては、患者様ニーズに基づく立地を見出し、イノベーションを連打できる「ニューロロジービジネス」
「オンコロジー
「認知症ソリューション事業」の6つの
ビジネス」
「EAファーマ」
「ジェネリック医薬品事業」
「コンシューマーhhc 事業」
分野に集中していきます。
他社に譲渡した事業
「EWAY 2025」集中する6つの分野
製薬用機械事業
ニューロロジービジネス
2012年 エーザイマシナリー株式会社を含む製薬用機械事業
を担う連結子会社4社をボッシュ・グループへ譲渡
オンコロジービジネス
土壌改善事業
EAファーマ
2013年 エーザイ生科研株式会社を株式会社ローソンへ譲渡
診断薬事業
ジェネリック医薬品事業
2015年 エーディア株式会社を積水化学工業株式会社へ譲渡
コンシューマーhhc 事業
食品・化学事業
2016年 エーザイフード・ケミカル株式会社を
三菱化学フーズ株式会社へ譲渡
戦略意思 3
認知症ソリューション事業
ストラテジー2 「生産体制の刷新」
アルツハイマー型認知症治療剤
「アリセプト」とプロトンポンプ阻害剤
「パリエット/アシフェックス」の独占販売期
間の終了に伴い、エーザイは従来の物量ベースの生産モデルからの転換を企図し、以下のトランスフォーメーション
を実施しました。今後は、各工場の強みを活かしたイノベーションベースの立地を確立し、世界規模でのデマンドイ
ノベーション活動を展開していきます。
2013年
台南工場をボラ・コーポレーションへ譲渡
2014年
美里工場を武州製薬株式会社へ譲渡
2015年
米国ノースカロライナ工場をBiogen Inc.へ譲渡
2016年
サ
ンノーバ株式会社をアルフレッサ ホールディングス株式会社へ譲渡
前中期経営計画「はやぶさ」に関するレビュー 前中期経営計画「はやぶさ」
(2011~2015年度)
では、アジアリージョン強化、進出国の拡大、グローバル組織づくり、
オンコロジービジネスの基盤化、製品創出力向上などの質的部分において、一定の成果が得られました。
売上収益や利益といった損益に関する目標は未達に終わりましたが、株主資本の充実、有利子負債の減少をはじめと
したバランスシートの健全化や、配当金の維持、時価総額の増大といった株主価値の向上においては一定の成果が得ら
れました。
売上収益の目標未達の要因は、主力品の独占期間満了による事業環境変化への対応力不足、ならびに製品創出の遅れ
です。
15
「EWAY 2025」2020年度連結業績目標
■営業利益
■売上収益
■2020年度連結業績目標
8,000億円
以上
「EWAY 2025」では、中間点である2020年度の数値目標
として、連結売上収益は8,000億円以上、営業利益と当期利
■当期利益
2倍以上
2倍以上
5,800億円
益は2016年度見通しの2倍以上と設定しています。
537億円
324億円
2016年度 2020年度
目標
見通し
2016年度 2020年度
目標
見通し
2016年度 2020年度
目標
見通し
■グローバルブランドの成長に伴うオンコロジー、ニューロロジー領域の拡大
価値最大化プログラムの進展により、グローバルブランドである「レンビマ」、「ハラヴェン」、「フィコンパ」、「BELVIQ」の
売上収益が大きく成長する見通しです。また、グローバルブランドの成長に伴い、オンコロジー、ニューロロジー領域の売上
構成比は2020年度には約60%に拡大する見通しです。
グローバルブランド 売上収益シミュレーション
疾患領域別売上収益シミュレーション
(億円)
(億円)
4,000
8,000
CAGR
CAGR
*1
オンコロジー
領域
3,000
約17%
6,000
約60%
約64%
2,000
45%
4,000
ニューロロジー
領域
約13%
約16%
1,000
2,000
約56%
その他
約62%
0
2015年度実績
0
2020年度目標
2015年度実績
*数値は概数によるイメージ
*数値は概数によるイメージ
*1 Compound Annual Growth Rate 年平均成長率
2020年度目標
■持続的な企業価値の向上をめざして
2020年度のKey Performance Indicators(KPIs)としては、
KPIs
2020年度ターゲット
ROE
10%以上
により、Value Creatorの地位を確保します。配当について
エクイティ・スプレッド*1
2%以上
は、DOE8%レベル、150円の安定配当維持を想定しており
DOE*2
8%レベル
(150円配当維持)
親会社所有者帰属持分比率
50%以上
Net DER*3
0.3以下
Debt Capacity
2,300億円レベル
ROE10%以上、エクイティ・スプレッド2%以上の達成をめ
ざします。株主資本コストの前提を十分上回るROEの達成
ます。バランスシートについては、親会社所有者帰属持分比
率50%以上、Net DER0.3以下と健全性を維持し、デットキャ
パシティは2,300億円レベルまで拡大する想定です。財務の
健全性に依拠し、成長投資と安定配当を継続いたします。
最終年度の2025年度においては、
「フラッグシップドラッ
グ」
(17ページ参照)の貢献により飛躍的な成長を果たし、
ROE15%レベルの達成をめざします。
2025年度 ROE15%レベルをめざす
* 配当金の決定は取締役会の承認を前提とする
*1 エクイティ・スプレッ
ド=ROE-株主資本コス
ト、株主資本コス
トは8%を仮定
*2 Dividend on Equity=親会社所有者帰属持分配当率
*3 Net DER: Net Debt Equity Ratio=
(有利子負債
(社債および借入金)
-現金および
現金同等物ー3カ月超預金等)
÷親会社の所有者に帰属する持分
16
「EWAY 2025」フラッグシップドラッグ
未だ真の患者様ニーズが満たされておらず、かつエーザイがフロントランナーとなりうる
「立地」を見出し、かかる
「立地」におい
てエーザイがイノベーションにより中心的な役割
(センターライン)を果たすことが、
「EWAY 2025」の中心的なコンセプトです。
2025年度に向けて飛躍的な成長を遂げるため、ニューロロジー領域、オンコロジー領域における
「立地」を活かし、13品のフラッ
グシップドラッグの開発に注力します。
「立地」
の詳細については18-19ページ、
オンコロジー領域の
「立地」
の詳細については26-27ページをご参照ください。
*ニューロロジー領域の
● 作用機序 ● 期待される適応症と開発状況
(2016年7月末現在)
● 発売目標時期
ニューロロジー領域
■ 立地. タンパク変性
E2609*1
● BACE
(βサイト切断酵素)
阻害剤
●早
期アルツハイマー型認知症(フェーズⅡ試験
進行中、2016年度フェーズⅢ試験開始予定)
Aducanumab*2
BAN2401*1
● 抗Aβ抗体
●早
期アルツハイマー型認知症
● 抗Aβプロトフィブリル抗体
●早
期アルツハイマー型認知症
● 2020年度以降の早い時期
(フェーズⅡ試験進行中)
● 2020年度以降の早い時期
*詳細は21ページをご覧ください。
*詳細は21ページをご覧ください。
*1 Biogen Inc.と共同開発
(フェーズⅢ試験進行中)
*詳細は21ページをご覧ください。
*2 Biogen Inc.が開発中
(エーザイはオプション権を保有)
■ 立地. 新しい神経伝達経路
Lemborexant*3
● オレキシン受容体拮抗剤
●不
眠症
(フェーズⅢ試験進行中)
、認知症
における不規則睡眠覚醒リズム障害
(2016年度3QフェーズⅡ試験開始予定)
E2027
● PDE9阻害剤
●認
知症
(フェーズⅠ試験進行中)
● 2020年度以降
次世代AMPA受容体拮抗剤
●複
数の神経領域疾患
(2017年度治験申請
(IND)
予定)
● 2020年度以降
● 2020年度以前
*3 Purdue Pharma L.P. と共同開発
■ 立地. 神経炎症および免疫ジェネティクス
E6011
● 抗フラクタルカイン抗体
● 関節リウマチ
(フェーズⅠ/Ⅱ試験進行中)
、クローン病
(フェーズⅠ/Ⅱ試験進行中)
● 2020年度以降
オンコロジー領域
■ 立地. がん微小環境
間葉系細胞、腫瘍間質
(細胞分化、がん幹細胞性)
■ 立地. がん微小環境
血管内皮細胞
(異常腫瘍血管)
レンビマ
新規抗体薬
● VEGFR/FGFR/RETキナーゼ阻害剤
● 甲状腺がん
(2015年グローバル発売済)
、腎細胞がん*4
(米国:
●モ
ルフォテック社の抗体技術を活用
● 2017年度治験申請
(IND)
予定
● 2020年度以降
2016年5月承認済、欧州:2016年度上期中に承認取得見込
み)
、肝細胞がん
(フェーズⅢ試験進行中、2016年度グローバ
ル申請予定)
など
ハラヴェン
●微
小管ダイナミクス阻害剤
● 乳がん
(発売済)
、悪性軟部腫瘍
(発売済)
がん微小環境モジュレーターとしてさらなる適応拡大をめざす
*詳細は29ページをご覧ください。
*詳細は28ページをご覧ください。
*4「エベロリムス」
との併用療法
■ 立地. がん細胞
ドライバー遺伝子変異 & スプライシング異常
H3B-6527
■ 立地. がん微小環境
骨
髄系細胞
(免疫抑制性骨髄細胞リニエージ)
●F
GFR4阻害剤
● 肝細胞がん
(フェーズⅠ試験進行中)
● 2020年度
E7046
● EP4拮抗剤
● 固形がん
(フェーズⅠ試験進行中)
H3B-8800
● 2020年度
●S
F3B1モジュレーター
● 血液がん
(2016年度上期フェーズⅠ試験開始予定)
● 2020年度以降
17
ニューロロジー領域
立地とイノベーション
ニューロロジー領域においては、認知症分野における予防と治癒の実現をめざして、次世代アルツハイマー型認知
症治療剤
「E2609」と
「BAN2401」の開発プログラムを確実に進展させるとともに、認知症の周辺症状改善剤や早期診
断方法の開発プロジェクトなどを推進しています。さらに、不眠症治療剤
「lemborexant」などの開発を進めるほか、
抗てんかん剤
「フィコンパ」
と肥満症治療剤
「BELVIQ」
の適応拡大・剤形追加に注力していきます。
立地 1 低侵襲な早期診断
認知症の診断では、
PET
(陽電子放射断層撮影)イメージングや脳脊髄液を用いた測定が行われています。PETイメー
ジングは設置施設が限られており、脳脊髄液は腰の脊髄腔に針を刺して採取するため患者様負担が大きいという課題
があります。エーザイは、血中バイオマーカーなどの患者様負担の少ない認知症の早期診断方法の開発のため、様々
なプロジェクトに取り組んでいます。
立地 2
新しい神経伝達経路
エーザイは、「フィコンパ」や「lemborexant」などの開発で培った、ニューロロジー領域における様々な分子標的
に関する創薬基盤技術や包括的な解析手法を保有しています。加えて、化合物と生体の相互作用に関する知見などに
基づき、効率的に化合物を設計して合成する化合物創出力を有しています。
これらの「立地」を活用し、「フィコンパ」の適応拡大や「lemborexant」の不眠症や認知症における不規則睡眠覚醒
リズム障害の分野での開発を推進しています。加えて、認知症における記憶障害や判断力の低下などの中核症状、お
よび焦燥や興奮などの周辺症状の改善をめざした「E2027」などの開発にも取り組んでいます。
立地 3
タンパク変性
エーザイは、30余年にわたる認知症への取り組みで培った、患者様層別化や薬力学的マーカー、高感度の臨床ス
ケールなどに関するノウハウを保有しています。加えて、動物モデルを用いた脳波や行動などの機能測定結果と、
PETイメージングや脳脊髄液中の毒性分子種測定などの病態生理との相関についての非臨床レベルの研究結果を、臨
床へ応用するための知見と技術力も備えています。これらの「立地」を活用し、次世代アルツハイマー型認知症治療剤
「E2609」
や
「BAN2401」
などの開発に取り組んでいます。
立地 4
神経炎症および免疫ジェネティクス
免疫細胞は、異物の侵入や組織の損傷などの異常を監視するために、常に血管を通じて全身を移動しています。免
疫応答は、外敵の排除には必須の機能である反面、自己への過剰な応答を開始すると様々な自己免疫疾患を誘発しま
す。多くの自己免疫疾患では、血管傷害や免疫細胞の浸潤が病巣部で認められます。免疫細胞の血管内皮細胞を経由
する組織浸潤過程は、多くの接着分子と細胞遊走因子によって制御されています。免疫細胞がケモカインなどの細胞
遊走因子を認識すると、免疫細胞は血管内皮細胞に強固に接着し、免疫細胞は内皮細胞間隙に移動して、内皮細胞の
結合を一部破壊し、組織内に浸潤します。フラクタルカインは、細胞接着分子とケモカインの2つの活性を併せ持ち、
活性化血管内皮細胞上に発現する細胞膜結合型ケモカインであり、エーザイは、抗フラクタルカイン抗体「E6011」
を開発しています。
また、エーザイは、科学的なエビデンスに基づき、脳内の免疫機能と認知症に関連する知見を蓄積しています。ま
た、ヒューマンバイオロジーに基づく創薬標的を同定するための大規模ゲノムシークエンスデータの解析結果や、非
臨床試験で利用するための患者様由来iPS細胞から作成した神経細胞などのツールも保有しています。
18
ニューロロジー領 域
立地とイノベーション
立地 5
シナプス微小環境
神経細胞の末端は、シナプスと呼ばれ、こぶ状に膨らんだ形
をしています。シナプスは次の神経細胞と密着しておらず、シ
ナプス間隙と呼ばれるわずかなすき間があり、電気信号を化学
物質の信号に変えて、次の神経細胞に情報を伝達しています。
電気信号が伝わってくると、シナプスにある小胞から神経伝
達物質が、シナプス間隙に分泌され、その神経伝達物質が、次
の神経細胞の細胞膜にある受容体に結合すると、電気信号が生
じて情報が伝達されていきます。認知症ではこのシナプスの脱
落がみられます。エーザイは、シナプス微小環境を改善し、シ
ナプスを回復させ、神経を再活性化するプロジェクトに取り組
んでいます。
立地 6
ニューロン再生
脳は神経細胞とグリア細胞、血管とで構成されています。グリア細胞はヒトの脳細胞の約半数を占め、その中で大
脳皮質でもっとも数が多い細胞がアストロサイトです。アストロサイトは、神経細胞間の接点であるシナプスにおい
て、神経細胞と同様に神経伝達物質を受け取ったり、種々の伝達物質を放出したりすることで、情報伝達効率を調節
し記憶や学習に影響を及ぼすと考えられています。エーザイは、この分野で次世代の治療法を企図したプロジェクト
を進めています。
木村執行役インタビュー
Q:認知症などのニューロロジー領域の製品開発が難しいのは何故ですか?
A:1)認知や情動のような高次機能は人間特有のものであり、動物との種差が大きいこと、2)リバーストラ
ンスレーションで確立された動物モデル
(臨床試験で有効性が証明された化合物が有効となるように設計
された動物モデル)の行動変容を創薬の中心に置いてきたこと、3)血液脳関門の存在等が要因と考えられ
ます。
Q:製品開発が難しいニューロロジー領域において、エーザイの持つ強みは何ですか?
A:近年、成功確率の低さから脳神経領域への研究投資を削減している企業が多く
なってきています。我々はこれを逆によい機会
(立地)
であると捉えています。
「ア
リセプト」を通して実感した認知症の患者様の種々のアンメット・ニーズを充足す
るため、最適の患者様に最適の薬剤を最速でお届けしたいと考えています。これ
を実現するためのエーザイの強みは、1)臨床サンプルを用いたヒューマンエビ
デンスの取得、2)ヒトへの外挿性を考慮した遺伝子変異と中間表現系
(病理、バ
イオマーカー、イメージングマーカー等)をつなぐ動物モデル評価、3)認知症の
研究を継続的に行ってきたことで培った薬理学、およびこれらの融合です。また、
メディシナルケミストリー力は
「アリセプト」
や
「フィコンパ」
のようなファースト・
イン・クラス化合物を創出したことで実証されていますし、
現在開発中の化合物は、
構造生物学を最大に活用して見出されています。
19
木村 禎治
執行役
ニューロロジービジネス
グループ
チーフディスカバリー
オフィサー
新しい認知症治療剤の開発
世界の認知症患者様数の推移
増加の一途をたどる認知症患者様数
2.8倍へ
拡大
■高所得国の認知症患者様数
■低・中所得国の認知症患者様数
2015年における認知症の患者様数は、全世界で
4,678万人と推計されています。 世界の人口高齢
1.6倍へ
拡大
化が進む中、認知症患者様は増加の一途をたどり、
2030年には約1.6倍の7,469万人、2050年には
約2.8倍の1億3,145万人に達すると予測されてい
ます。特に低・中所得国においては、高所得国を上
4,678万人
回るスピードで患者様数が増加する見込みです。認
1,950
知症への取り組みは世界的な課題であり、アンメッ
ト・メディカル・ニーズを充足する治療剤の早期開発
4,218
7,469万人
2,795
8,928
4,674
2,728
0
が期待されています。
1億3,145万人
2015年
2030年
2050年
出典:World Alzheimer Report 2015:The Global Impact of Dementia
認知症とは
認知症とは、いろいろな原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったりしたために様々な障害が起こり、生活す
る上で支障が出ている状態をいいます。症状としては、記憶障害を中心とした症状と、妄想や幻覚、暴力、徘徊、うつといっ
た行動や心理に関する症状(周辺症状)がみられることもあります。そして、進行性の病気であるという特徴もあります。認知
症には様々な種類がありますが、もっとも罹患率が高いのがアルツハイマー型認知症です。
アルツハイマー型認知症では、記憶障害などの症状が現れるよりもはるか前から、ベータアミロイド(Aβ)というタンパク
質が脳内に徐々に蓄積し、神経細胞死が引き起こされると考えられています。このAβこそが、アルツハイマー型認知症の原
因物質ではないかと考えられています。
■アルツハイマー型認知症の発症プロセス
脳内での
ベータアミロイド(Aβ)
の蓄積
脳内での
タウ蛋白の蓄積
脳構造の変化
記憶障害
臨床機能の障害
アルツハイマー型認知症では、発症の15~20
年以上前からAβの蓄積が始まり、臨床的な認
知機能の異常がみられるまでに脳内では様々
な変化が起きています
軽度認知障害
認知症
(軽度→中等度→高度)
次世代アルツハイマー型認知症治療剤
エーザイの「アリセプト」を含む現在のアルツハイマー型認知症治療剤は、認知症の進行を遅らせる薬であり、認知症に対する
アンメット・メディカル・ニーズは依然として高い状況です。エーザイは、認知症の早期段階での治療(先制医療)や治癒をめざ
して、アルツハイマー型認知症の原因物質と言われているAβを標的とする次世代アルツハイマー型認知症治療剤を開発中です。
次世代アルツハイマー型認知症治療剤の開発成功確率向上と開発加速化に向けて、エーザイは、神経変性疾患領域に強みを
持つBiogen Inc.と提携しています。
20
新しい認知症治療剤の開発
Biogen Inc.との提携による4つの次世代アルツハイマー型認知症プロジェクト
4つのプロジェクトの位置づけ
E2609
アミロイド前駆体
タンパク質(APP)
抗タウ抗体*
(BACE阻害剤)
Biogen Inc.
βセクレターゼ(BACE)
APPのN末端側を切る
タウの高度リン酸化と
細胞内への蓄積
aducanumab*
(抗Aβ抗体)
γセクレターゼ
Biogen Inc.
APPのC末端側を切る
モノマー
凝集性が高い
ベータアミロイド
(Aβ)
神経細胞の
機能障害
Aβフィブリル
不溶性凝集体
沈着して老人斑を形成
BAN2401
(抗Aβプロトフィブリル抗体)
老人斑
神経原
線維変化
(神経細胞死を引き起こす可能性)
神経細胞死
Aβプロトフィブリル
認知機能の低下
可溶性重合体
強い神経毒性
(神経変性過程を誘発・促進し神経細胞死を引き起こす)
*エーザイが共同開発・共同販促契約についてオプション権を保有
● 自社創製のBACE阻害剤「E2609」
(Biogen Inc.と共同開発)
筑波研究所が創製した化合物であり、Aβの産生に関わる酵素であるBACEを阻害します。フェーズⅠ試験では、ヒトの血漿中お
よび脳脊髄液中のAβの顕著な減少が確認されています。現在、フェーズⅡ試験が進行中で、2016年度中のフェーズⅢ試験開始
に向けた準備に着手しています。2020年度以降の早い時期での発売をめざしています。
● 抗Aβプロトフィブリル抗体「BAN2401」
(Biogen Inc.と共同開発)
エーザイがBioArctic Neuroscience ABから導入した抗Aβプロトフィブリル抗体です。凝集性があり様々な大きさとなりう
るAβの中でも、毒性が高いと言われているAβプロトフィブリルに対して特異的に結合するユニークな特徴があります。現在
フェーズⅡ試験が進行中です。2020年度以降の早い時期での発売をめざしています。
●B
iogen Inc.が開発中の抗Aβ抗体「aducanumab」
(エーザイが共同開発・共同販促契約についてオプション権を保有)
Biogen Inc.が開発中の抗Aβ抗体です。Biogen Inc.は、
「aducanumab」のフェーズⅠb試験の良好な中間解析結果を踏まえ、
フェーズⅢ試験を進めています。
「aducanumab」に対するエーザイのオプション権行使条件について
エーザイは、「aducanumab」について、以下の1)または2)の時点でオプション権を行使することができます。
1)
Post-Phase II BIIB037 Option:「aducanumab」
のフェーズⅠb試験およびBAN2401のフェーズⅡ試験双方の完了後
2)
Post-Phase III BIIB037 Option:「aducanumab」
のフェーズⅢ試験終了後
エーザイが保有するオプション権の行使条件の詳細については、こちらのリリースをご参照ください▶ http://www.eisai.co.jp/news/news201507.html
●B
iogen Inc.が開発中の抗タウ抗体
(エーザイが共同開発・共同販促契約についてオプション権を保有)
Biogen Inc.は、アルツハイマー型認知症の原因物質の一つと考えられているタウに対する抗体について前臨床試験を進めてい
ます。
21
新しい認知症治療剤の開発
次世代アルツハイマー型認知症治療剤の市場予測
認知症患者様の増加に伴い、次世代アルツハイマー型認知症治療剤の市場は2025年に約1.5兆円、2030年に約3.2兆円へ
拡大すると推定しています。
2025年
2030年
抗体医薬品市場
約5,000億円
約1.2兆円
低分子医薬品市場
約1兆円
約2兆円
次世代アルツハイマー型認知症治療剤計
約1.5兆円
約3.2兆円
出典:Decision Resources (Patient Base)、
Global Data、
The Global Impact of Dementia 2013-2050を利用したエーザイ試算(Given Success)
次世代アルツハイマー型認知症治療剤開発を成功に導くためのエーザイ独自の工夫
エーザイは、1983年に筑波研究所で認知症の研究を始めて以来、30年以上にわたって認知症領域で創薬活動に取り組んで
きました。長年培ってきた知識やノウハウは、認知症領域の創薬研究に活かされています。現在、
「E2609」と
「BAN2401」に
ついては、エーザイ独自の様々な工夫を取り入れた開発が進行中であり、2020年度以降の早い時期での発売をめざしています。
1983年
筑波研究所での認知症治療剤の研究開始
1997年
アルツハイマー型認知症治療剤
「アリセプト」
米国、
欧州
(英国)
で発売
蓄積された認知症関連データのアセット
●
「アリセプト」
のダブルブラインド試験21報
●
「アリセプト」
の市販後臨床データ
●疾患修飾剤の開発経験
次世代アルツハイマー型認知症治療剤の開発
エーザイ独自の工夫
●PET
(陽電子放射断層撮影)の利用による、
Aβの蓄積がみられる患者様の臨床試験への登録
●アルツハイマー型認知症の前段階や軽度の患者様の治療効果を感度よく捉えることが可能な、
エーザイ独自
の評価基準(ADCOMS)
●至適用量の早期決定を企図した臨床試験デザイン
(ベイジアンアダプティブデザイン)
E2609とBAN2401について、2020年度以降の早い時期での発売をめざす
また、エーザイは次世代アルツハイマー型認知症治療剤のほかにも、認知症でみられる行動や心理に関する症状の改善を企
図した薬の開発も行っています。さらに、住み慣れた地域で認知症患者様が安心して暮らせるよう支援する活動も行っていま
す
(詳細は36ページをご参照ください)。
こうした取り組みも併せて、エーザイはさらなる認知症患者様への貢献を進めていきます。
22
ニューロロジー領域 グローバルブランド
抗てんかん剤
フィコンパ
フィコンパとは
「フィコンパ」
(一般名:ぺランパネル)は、既存の抗てんかん剤とは異なる作用機序を持つファースト・
イン・クラスの抗てんかん剤です。グルタミン酸受容体の一種であるAMPA受容体のグルタミン酸によ
る活性化を阻害し、神経の過興奮を抑制する高選択的な非競合AMPA受容体拮抗剤です。
2012年9月欧州で新発売
50カ国以上で承認を取得
新たな剤形と適応症による価値最大化と
次世代製品の開発をめざす
12歳以上のてんかん患者様の部分発作に対する併用
新たな剤形として、2016年6月に米国で経口懸濁
療法の適応で、2012年9月に欧州で、2014年1月に米
液を新発売しました。加えて、適応症の拡大のため部
国でそれぞれ新発売しました。加えて、2015年6月に
分てんかんの小児患者様(12歳未満)を対象に欧米で
は両地域において、全般てんかんの強直間代発作に対
フェーズⅡ試験を実施しています。さらに中期経営計画
する併用療法の承認を取得しました。日本においては
「EWAY 2025」の期間中には単剤療法とレノックス・ガ
2016年5月、「他の抗てんかん薬で十分な効果が認めら
ストー症候群の適応追加をめざして、現在戦略を策定し
れないてんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含
ています。
む)および強直間代発作に対する抗てんかん薬との併用
2020年度までに年平均成長率約56%の達成をめざす
療法」の効能・効果で新発売しました。部分発作に対す
とともに、2020年度以降に発売をめざす次世代AMPA
る併用療法の適応で50カ国以上、全般てんかんの強直
受容体拮抗剤の開発につなげていけるよう、「フィコン
間代発作の併用療法の適応で40カ国以上で承認を取得
パ」の実臨床におけるアウトカムの収集と価値最大化を
しています。
追究していきます。
新たな適応症
全般てんかん 強直間代発作について
■てんかんの種類とその割合
その他
強直間代発作(PGTC)は、全般てんかんにおけるもっ
とも一般的かつ重篤な発作型の一つであり、全般てんか
んの約6割、てんかん全体においても約2割を占めます。
強直間代発作は、多くの患者様でなんら予告症状なしに
意識喪失を生じ、急激な強直性筋収縮による転倒に次い
で、間代性けいれんを経て、筋弛緩し、意識障害に至る
4%
PGTC 以外の
全般てんかん 16%
全般てんかん
強直間代発作
(PGTC)23%
部分てんかん 57%
重篤な経過をたどることから、日常生活上の支障が大き
いことが知られています。
出典:Hauser WA, et al . Epilepsia
23
ニューロロジー領域 グローバルブランド
肥満症治療剤
BELVIQ
BELVIQとは
Arena Pharmaceutical, Inc. が創製し、エーザイが米国で発売している肥満症治療剤です。選択的
に脳内のセロトニン2C受容体を刺激することにより、満腹感を亢進し、食事の摂取量を減らす効果が
あると考えられています。
2013年6月米国で新発売
2016年7月メキシコで承認取得
心血管アウトカム試験による価値最大化
2018年度に試験結果取得予定
米国において、ボディ・マス・インデックス
(BMI)が
米国を含む数カ国にて、12,000例の患者様によ
30kg/m 以上、あるいは少なくとも1つ以上の合併症を
る心疾患アウトカム試験(CVOT:Cardiovascular
患うBMIが27kg/m 以上の成人患者様の体重管理を目
O u t c o m e s T r i a l )が 進 行 中 で す 。 主 要 評 価 項 目
的とした食事療法と運動療法に対する補助療法として、
は、MACE(主要心血管イベント(Major Adverse
2012年6月に承認を取得し、2013年6月に発売しました。
Cardiovascular Event)
:心筋梗塞、脳卒中、心血管死)
、
また、
2016年7月、
米国で新剤形である1日1回製剤
「BELVIQ
2型糖尿病への移行、MACE+
(主要心血管イベント、入
XR」
の承認を取得しました
(2016年秋に発売予定)
。
院を要する不安定狭心症もしくは心不全、または冠血行
2013年11月には、ライセンス対象地域をこれまでの米
再建術)の3つです。試験結果取得は、2018年度を予定
州21カ国から欧州、日本、中国を含む全世界
(韓国、台湾、
しています。
オーストラリア、ニュージーランド、イスラエルを除く)に
本結果をもって、「BELVIQ」のさらなる可能性の追究
拡大することに合意しています。米国以外では、2016年
と価値最大化をはかり、2020年度までに年平均成長率
7月にメキシコで承認を取得しました
(
「VENESPRI」の製品
約62%の達成をめざします。
2
2
名での発売を予定)
。また、ブラジルにおいて申請中です。
心血管アウトカム試験の患者様登録
(12,000名)が完了(2015年11月)
肥満症は世界的に大きな健康問題
米国の成人の3分の2以上は肥満または過体重
2018年度に試験結果取得予定
世界の成人の14億人以上が過体重、うち約5億人が肥
評価項目
満であると言われ、近年、肥満症は世界的に大きな健康
問題の一つとなっています。地域別には、米国で約1.7億
人、欧州では約1.5億人が過体重または肥満と考えられて
います。アジアでは、中国で約1億人、日本では約2,500
万人の人が過体重または肥満と推計されます。
(社内推計)
米国疾病対策予防センターによると、米国の成人の3
分の2以上は肥満または過体重であるとされ、肥満の割
合は、1980年から2010年にかけて2倍以上(約15%か
ら約36%)に増加しています。肥満または過体重は、糖
尿病、脂質異常症、高血圧症といった合併症を引き起こ
す可能性があり、大きな社会問題となっています。
*成人ではボディ・マス・インデックス
(BMI)
25~29.
9を過体重とし、30以上を肥満とし
ています。
24
MACE
主要心血管イベ
ント(心筋梗塞、
脳卒中、心血管
死)
糖尿病
2型糖尿病発症
における抑制効
果の評価
MACE+
主要心血管イベ
ント、入院を要
する不安定狭心
症もしくは心不
全、または冠血
行再建術
ニューロロジー領域 主要開発品の状況
(2016年7月末現在)
製品名/開発品コード
(一般名)
薬効・作用など
自社品/
導入品
剤形
経口剤
アリセプト/E2020
ドネペジル
アルツハイマー型、
レビー小体型認知症治療剤
自社品
貼付剤
対象疾患/効能・効果など
フェーズⅠ フェーズⅡ フェーズⅢ
試験
試験
試験
高度アルツハイマー型認知症
(効能追加) 中国
ダウン症候群の退行様症状
(効能追加)
パッチ製剤
(剤形追加、E2022)
(帝國製薬株式会社と共同開発)
申請
承認
2015年2月
日本
■■■■
日本
■■■■
■■■■
概要:神経伝達物質のアセチルコリンを分解する酵素であるアセチルコリンエステラーゼを阻害することにより、脳内アセチル
コリン濃度を高め、アルツハイマー型認知症の認知症症状の進行を抑制します。日本とフィリピンにおいてはレビー小体型認
知症の適応も取得しています。
部分てんかん
全般てんかん(効能追加)
フィコンパ(Fycompa)/
E2007
ペランパネル
抗てんかん剤/
AMPA受容体拮抗剤
地域
自社品
経口剤
経口懸濁液(剤形追加)
日本
2016年3月
米国
2015年6月
欧州
2015年6月
日本
2016年3月
アジア
(フィリピン)
2015年11月
米国
2016年4月
欧州
部分てんかん小児適応
(効能追加)
米欧
2015年6月
■■■■
■■■■
概要:グルタミン酸受容体の一種であるAMPA受容体のグルタミン酸による活性化を選択的に阻害します。
E2006
lemborexant
不眠症治療剤/
オレキシン受容体拮抗剤
自社品
経口剤
不眠症
(Purdue Pharma L.P. と共同開発)
日米欧
■■■■
■■■■
■■■■
概要:睡眠と覚醒の調整に関与するオレキシンの受容体に拮抗することで、覚醒状態を鎮め、自然な睡眠の誘発・維
持を期待しています。
導入品
アルツハイマー型認知症
(BioArctic
BAN2401
注射剤
日米欧 ■■■■ ■■■■
Neuroscience
(Biogen Inc. と共同開発)
AB)
アルツハイマー型認知症治
療剤/
ヒト化抗Aβプロトフィブリ 概要:ベータアミロイド
(Aβ)
プロトフィブリルに対するヒト化IgG1抗体です。神経毒性を呈することが報告されているAβプロト
ルモノクローナル抗体
フィブリルを除去することで、アルツハイマー型認知症の進行を抑制することを期待しています。
自社品
経口剤
アルツハイマー型認知症
(Biogen Inc. と共同開発)
米国
■■■■ ■■■■
E2609
アルツハイマー型認知症治療剤/
βサイト切断酵素
(BACE)
阻害剤 概要:アミロイド前駆体タンパク質のβサイト切断酵素であるBACEを阻害することで、ベータアミロイドの総量を低下させ、ア
ルツハイマー型認知症の進行を抑制することを期待しています。
導入品
肥満症1日1回製剤
(剤形追加)
(Arena
Pharma- 経口剤
ceuticals,
肥満症
Inc.)
米国
2016年7月
BELVIQ/APD356
日本
■■■■
lorcaserin
肥満症治療剤/
概要:新規作用機序の肥満症治療剤です。選択的に脳内のセロトニン2 C受容体を刺激することにより摂食を抑制し、
セロトニン2C受容体作動剤 満腹感を促進すると考えられています。本剤は、米国において、ボディ・マス・インデックス(BMI)が30kg/m2以上、
あるいは少なくとも1つ以上の体重に関連する合併症を有するBMIが27kg/m2以上の成人患者様の体重管理を目的と
した食事療法と運動療法に対する補助療法として、2012年6月に米国食品医薬品局(FDA)より承認されました。また、
2016年7月にメキシコにおいても承認を取得しました。
関節リウマチ
E6011
抗フラクタルカイン抗体
自社品
E2027
PDE9 阻害剤
自社品
注射剤
クローン病
(EAファーマ株式会社が開発)
経口剤 アルツハイマー型認知症
25
日本
■■■■
■■■■
日本
■■■■
■■■■
米国
■■■■
オンコロジー領域
立地とイノベーション
オンコロジー領域においては、真の患者様ニーズを満たすためにエーザイがフロントランナーとなりうる「立地」を
定め、
「レンビマ」と「ハラヴェン」創出で培った創薬基盤技術や有機合成化学と創薬化学に関する技術力などを適用し、
「治癒」に向けた新薬開発をめざします。また、グローバルブランドである「レンビマ」と「ハラヴェン」の適応拡大を確
実に進行させ、患者様価値の拡大に取り組んでいきます。
立地 1 がん微小環境
がん細胞の周囲は、間質という組織で取り囲まれています。間質には炎
間葉系がん細胞
がん幹細胞
マクロファージ
症や免疫に関連する細胞、血管やリンパ管、コラーゲンなどからなる結合
組織などが存在し、特徴的な構造を形成しており、がん微小環境と呼ばれ 上皮系
がん細胞
ています。
「ハラヴェン」は、細胞分裂の停止作用を有するとともに、乳がん細胞の
上皮細胞化の誘導など、がん微小環境におけるユニークな作用を有するこ
とが報告されています。また、
「レンビマ」は、がん細胞の増殖を抑制する
とともに、がん微小環境下での血管新生を阻害することが知られています。
リンパ球
腫瘍血管
間葉系間質細胞
(繊維芽細胞など)
立地 1-1 間葉系細胞、腫瘍間質
(細胞分化、がん幹細胞性)
エーザイは、
「ハラヴェン」創出で培った非常に複雑な化合物を合成する技術力を活かし、天然物をベースとした多様
な低分子化合物ライブラリーを備えています。また様々な生体反応や特定分子の分布を画像解析するバイオイメージン
グ技術や、患者様由来のがん微小環境を含むと考えられる組織試料を移植したモデルマウスなどの研究ツールもそろ
えています。さらに、がんの再発や転移の原因の一つと考えられているがん幹細胞に対する評価系も確立しています。
これらの「立地」に基づき、ハリコンドリン誘導体、
「ハラヴェン」とPEG化遺伝子組換えヒト型ヒアルロン酸分解
酵素の併用や、
「ハラヴェン」
と抗PD-1抗体
「ペムブロリズマブ」との併用などのプロジェクトを推進しています。
立地 1-2 骨髄系細胞
(免疫抑制性骨髄細胞リニエージ)
プロスタグランジンがその受容体に作用すると、免疫抑制や免疫炎症促進など免疫に関連する生体反応が起きると
考えられています。また、Toll様受容体は、ウイルス・細菌および悪性腫瘍などの生体内の異常を認識し、リンパ球
にシグナルを伝達し、生体内を正常に保つ免疫調節機構を担っていると考えられています。エーザイでは、プロスタ
グランジン受容体やToll様受容体に関する独自の低分子化合物ライブラリーや、その評価系などをそろえています。
これらの「立地」に基づき、腫瘍免疫治療薬候補であるプロスタグランジンE2受容体の1つであるEP4の拮抗剤
「E7046」
などのプロジェクトを推進しています。
立地 1-3 血管内皮細胞
(異常腫瘍血管)
エーザイは、チロシンキナーゼ阻害薬である
「レンビマ」創出で培った、キナーゼを標的とする筑波研究所独自の多
様な低分子化合物ライブラリーや、がん微小環境における異常腫瘍血管や薬剤耐性メカニズムに関与する新規分子標
的同定に活用できる臨床サンプル由来の様々なデータやバイオマーカー候補などを保有しています。
これらの
「立地」
に基づき、
「レンビマ」
と抗PD-1抗体
「ペムブロリズマブ」
との併用、
「レンビマ」
と
「エベロリムス」
の併
用などのプロジェクトを推進しています。
26
オンコロジー領 域
立地とイノベーション
立地 2
がん細胞
ドライバー遺伝子変異&スプライシング異常
2010年に設立した「H3 Biomedicine Inc.」では、がん遺伝情報やスプライシング異常に着目した創薬を推進して
います。がんの発生・進行に直接的な役割を果たす遺伝子(がんドライバー遺伝子)やスプライシング異常を起こして
いる標的遺伝子を同定・評価するための最先端のバイオインフォマティクス(生命情報科学)技術やスプライシングを
調節する低分子化合物のライブラリー、そしてそれを評価する独自のスクリーニング系を有しています。設立5年で、
H3B Biomedicine Inc.が創製したFGFR4阻害剤
「H3B-6527」のフェーズⅠ試験が開始され、SF3B1モジュレーター
「H3B-8800」は2016年度2QにフェーズⅠ試験を開始予定です。ヒューマンバイオロジーに基づいた標的分子の妥
当性を検証する意思決定方法により、短期間での承認取得をめざしています。
真核生物の多くの遺伝子では、タンパク質
スプライシング
をコードする領域がゲノムDNA上に分断
されて存在しています。アミノ酸に対応す
DNA
酸に対応しない部分(イントロン)によって
未成熟な mRNA
エキソン
イントロン
エキソン
イントロン
エキソン
転写
るDNA塩基配列部分(エキソン)がアミノ
分断されています。転写された未成熟の
スプライシング
RNA(mRNA前駆体、一次転写産物)から、
イントロン部分を取り除き、エキソン同士
スプライシング因子と RNA からなる
スプライソソーム
が結合するプロセスをスプライシングと呼
成熟した mRNA
び、これによりmRNA前駆体は成熟mRNA
翻訳
となります。
タンパク質
大和執行役インタビュー
Q:エーザイが得意とする複雑な化合物を合成する技術力とは?
A:エーザイの「ものづくり」は、幾つものケミストリー力によって支えられています。複雑な化合物を最適
なフラグメントに分けて合成する設計力、多数の不斉中心の立体化学を制御しながら効率よく反応を進め
る精密不斉合成力、副生成物や微量不純物を迅速かつ確実に同定する分析力、そして、最終的に商業生産
につなげるプロセス製造力、これらすべてがエーザイの強みであり、複雑な構造を持つ「ハラヴェン*1」の
市場供給をも可能にした技術力になります。
*1「ハラヴェ
ン」
は不斉炭素19個を含むため、理論的に立体異性体の数は2の19乗個
(524,000個)
の可能性があり、
合成制御の難度が非常に高くなります。
Q:H3 Biomedicine Inc.のめざす短期間での臨床開発を支えるものは?
A:H3 Biomedicine Inc.のプロジェクトでは、がんの発生や進行の成因となる
遺伝子変異ならびにスプライシング異常を治療の標的にしています。臨床開
発*2では当然、それらの治療標的を有する患者様だけを選んで候補薬剤の投
与を行うことになります。これを可能にするためには、がんゲノム情報を
正確に読み解くバイオインフォマティクスと、薬剤投与対象者を同定する
遺伝子診断技術が鍵となります。
*2 特
にフェーズⅠ試験で推奨用量設定後、安全性と有効性を見るために症例数を増やした患者群での試験以降
27
大和 隆志
執行役
オンコロジービジネスグループ
チーフメディスン
クリエーションオフィサー
チーフディスカバリーオフィサー
オンコロジー領域 グローバルブランド
抗がん剤/分子標的治療薬
レンビマ
レンビマとは
「レンビマ」
(一般名:レンバチニブ)は、分子標的抗がん剤としてVEGFR、FGFR、RETの3つの分子
の活性を特異的に阻害することにより抗がん作用を発揮する、自社創製の新規結合型チロシンキナーゼ
阻害剤です。
治療が標準ですが、5年生存率が低く、依然としてアンメッ
2015年甲状腺がんの適応で日米欧で新発売
2016年米国で腎細胞がんの適応を取得
ト・メディカル・ニーズの高い疾病です。
甲状腺がんに係る適応で米国(2015年2月)、日本(同
「レンビマ」
の由来:LENVIMA
年5月)
、欧州
(同年6月)
で新発売しました。
また、米国では2016年5月に血管新生阻害薬の前治
一般名:レンバチニブ
生命・活発
Lenvatinib + vim
療歴を有する進行性腎細胞がんに対する「エベロリム
ス」との併用療法の適応を新たに取得しました。同年6
「New Horizon(水平線から昇る太陽)」
をイメージしたロゴにより
「レンビマ」
の有効性を表現
月には、「エベロリムス」を発売するNovartis AG Inc.
(本社:スイス バーゼル市、CEO:Joseph Jimenez)
の米国子会社であるNovartis Pharmaceuticals
Corporationと、米国内での共同販促ならびに医療従
事者に対する科学的エビデンスの提供などのメディカ
ル・アフェアーズ活動における連携に関する契約を締結
肝細胞がんなどの新たながん腫の適応や
抗PD-1抗体との併用療法を開発中
しました。これにより、米国では「レンビマ」と「エベロ
リムス」
の併用療法の利用を両社で推進します。
すでに承認を取得している甲状腺がん、腎細胞がんに
加えて、肝細胞がん(フェーズⅢ試験)や子宮内膜がん
新たな適応症 腎細胞がんについて
(フェーズⅡ試験)、胆道がん(フェーズⅡ試験)など複数
腎がんの罹患者数は、2012年において世界で約338,000
のがんを対象にした臨床試験が進行中です。また、肺が
人、米国では約58,000人、欧州では約115,000人、日本
ん、メラノーマ、頭頸部がん、膀胱がん、腎細胞がん、
では約17,000人と推定されています。腎細胞がんは、腎
子宮内膜がんを対象にした抗PD-1抗体の「ペムブロリズ
臓におけるがんの90%以上を占めており、尿細管の細胞が
マブ」との併用療法の臨床試験が進行中です。
(フェーズ
がん化したものです。罹患率は50歳代後半以降に増加し、
Ⅰb/Ⅱ試験)
また女性より男性に多く発症するとされています。手術が難
これらの取り組みにより、2020年度までに年平均成
しい進行性や転移性の腎細胞がんでは、分子標的薬による
長率約64%の達成をめざします。
■「レンビマ」の開発状況
抗PD-1抗体との併用
フェーズⅠb/Ⅱ試験
胆道がん
(日本)
腎細胞がん
子宮内膜がん
肝細胞がん
フェーズⅡ試験
フェーズⅢ試験
28
甲状腺がん
申請
承認
オンコロジー領域 グローバルブランド
抗がん剤/微小管ダイナミクス阻害剤
ハラヴェン
ハラヴェンとは
「ハラヴェン」
(一般名:エリブリン)は、新規の作用機序を有するハリコンドリン系の微小管ダイナミ
クス阻害剤です。海洋生物クロイソカイメン(Halichondria okadai )から抽出された天然物ハリコンド
リンBの全合成類縁化合物であり、微小管の伸長(重合)を阻害・抑制することで、抗腫瘍活性を示す新規
抗がん剤です。現在は主に乳がん患者様の治療に使用されています。最近の非臨床研究において、腫瘍
の血流循環の改善、乳がん細胞の上皮細胞化の誘導、乳がん細胞の転移能の減少など、ユニークな作用
を有することが知られています。これらの作用から、がん微小環境モジュレーターとしてのポジション
確立をめざしています。
乳がんに係る適応で60カ国以上で承認を取得
「ハラヴェン」の由来:Halaven
2010年11月に米国で転移性乳がんの適応で発売しま
ハリコンドリンB
生きる
Halichondrin B + Live(lave) + n
した。これまでに日本、欧州、米州、アジアなど60カ
国以上で乳がんに係る適応で承認を取得しています。
患者
介護者
医師
また、悪性軟部腫瘍に係る適応については、2016年
1月に米国、同年2月に日本、同年5月に欧州でそれぞれ
有効性
安全性
忍容性
3つのリング
承認を取得し、スイス、オーストラリア、ブラジルなど
では申請中です。本剤は米国および日本において、悪性
軟部腫瘍に対する希少疾病用医薬品(オーファンドラッ
グ)
の指定を受けています。
中国で承認申請中
抗PD-1抗体との併用療法を開発中
新たな適応症 悪性軟部腫瘍について
中国での転移性乳がん患者様を対象としたフェーズ
2016年に新たに承認された適応症である悪性軟部腫
Ⅲ試験において、無増悪生存期間を対照薬と比較して
瘍(軟部肉腫)は、体の様々な軟部組織(脂肪、筋肉、神
統計学的に有意に延長しました。本試験結果に基づ
経、線維組織、血管など)で発生する悪性腫瘍の総称で
き、2016年7月に中国当局へ新薬承認申請を行いま
す。米国では約12,000人が、欧州では約29,000人が、
した。また、転移性トリプルネガティブ乳がん*を対
毎年悪性軟部腫瘍と診断されています。日本では、厚生
象にした抗PD-1抗体の「ペムブロリズマブ」との併用
労働省の患者調査によると患者様数は約4,000人とされ
療法のフェーズⅠb/Ⅱ試験が進行中です。ほかにも、
ています。発生部位の組織が様々であることから多彩な
Halozyme Therapeutics Inc.(本社:米国サンディエ
組織型が存在しますが、比較的頻度の高い組織型として
ゴ)が開発中のPEG化遺伝子組換えヒト型ヒアルロン酸
平滑筋肉腫、脂肪肉腫、悪性線維性組織球腫などが知ら
分解酵素PEGPH20(PEGylated recombinant human
れています。悪性軟部腫瘍の治療は根治的な外科切除術
hyaluronidase)の併用投与による進行性乳がんに対す
が中心で、悪性度が高い場合は、化学療法や放射線療法
るフェーズⅠb/Ⅱ試験のFPI(First Patient In)を2016
を組み合わせた治療がなされます。進行した場合の予後
年7月に達成しました。
は悪く、アンメット・メディカル・ニーズが非常に高い
乳がんおよび軟部肉腫の患者様への貢献により、
疾患の一つです。
2020年度までに年平均成長率約16%の達成をめざしま
す。長期的には、ハリコンドリンの研究から新たな化合
物の開発へとつなげていくことをめざしています。
*トリプルネガティブ乳がん:HER2ならびにエストロゲン受容体およびプロゲステロン受容
体の発現状況がすべて陰性の乳がん
29
オンコロジー領域 主要開発品の状況
(2016年7月末現在)
製品名/開発品コード
(一般名)
薬効・作用など
自社品/
導入品
剤形
対象疾患/効能・効果など
乳がん
悪性軟部腫瘍
(効能追加)
(米国・欧州は脂肪肉腫)
ハラヴェン/E7389
エリブリン
抗がん剤/
微小管ダイナミクス阻害剤
自社品
地域
フェーズⅠ フェーズⅡ フェーズⅢ
試験
試験
試験
申請
2016年7月
中国
米国
日本
欧州
日米欧ア ■■■■■ ■■■■■ ■■■■■
米欧 ■■■■■ ■■■■■
非小細胞肺がん
(効能追加)
膀胱がん
(効能追加)
注射剤 トリプルネガティブ乳がん
(抗PD-1抗体
「ペムブロリズマブ」
との併用)
米国
(Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J.,
U.S.A.と共同開発)
HER2陰性乳がん
(PEGPH20との併用)
米国
(Halozyme Therapeutics Inc. と共同開発)
リポソーム製剤
(剤形追加)
欧州
承認
2016年1月
2016年2月
2016年5月
■■■■■ ■■■■■
■■■■■ ■■■■■
■■■■■
概要:クロイソカイメン由来のハリコンドリンBの合成類縁体で、微小管の伸長を阻害し細胞周期を停止させることで抗腫
瘍活性を示します。
欧州
アジア(韓国)
米国
腎細胞がん
(効能追加)
欧州
日本 ■■■■■
経口剤 肝細胞がん
日米欧中ア ■■■■■
(効能追加)
子宮内膜がん
(効能追加)
米欧 ■■■■■
メラノーマ
(効能追加)
米欧 ■■■■■
非小細胞肺がん(サードライン・単剤)
(効能追加) 米欧 ■■■■■
非小細胞肺がん
(RET転座)
(効能追加) 日米欧ア ■■■■■
胆道がん
(効能追加)
日本 ■■■■■
経口剤 固形がん(抗PD-1抗体ペムブロリズマブとの併用)
米国 ■■■■■
注射剤 (Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.と共同開発)
甲状腺がん
自社品
レンビマ/E7080
レンバチニブ
抗がん剤/分子標的治療薬
2016年1月
2015年5月
2015年10月
2016年5月
■■■■■ ■■■■■ 2016年度予定
■■■■■
■■■■■
■■■■■
■■■■■
■■■■■
■■■■■
概要:血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)や線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)に加え、RETなどの腫瘍血管新生あるいは
腫瘍悪性化に関与する受容体型チロシンキナーゼ(R T K)に対する選択的阻害活性を有する経口投与可能な、自社創出の
新規結合型チロシンキナーゼ阻害剤です。
MORAb-003
ファルレツズマブ
抗がん剤/
ヒト化抗葉酸受容体αモノ
クローナル抗体
自社品
注射剤
プラチナ感受性卵巣がん
非小細胞肺がん
日米欧 ■■■■■ ■■■■■
米欧 ■■■■■ ■■■■■
概要:葉酸受容体α
(FRA)に対するヒト化IgG1抗体です。FRAが過剰発現しているがん腫に対して抗腫瘍効果を期待して
います。
メラノーマ
米欧 ■■■■■ ■■■■■
MORAb-004
自社品 注射剤 大腸がん
米欧 ■■■■■ ■■■■■
抗がん剤/
悪性軟部腫瘍
米欧 ■■■■■ ■■■■■
ヒト化抗エンドシアリンモノ
概要:Tumor endothelial marker 1(TEM-1)/エンドシアリンに対するヒト化IgG1抗体です。エンドシアリンを発現して
クローナル抗体
いるがん腫に対して抗腫瘍効果を期待しています。
MORAb-009
amatuximab
抗がん剤/
キメラ型抗メソセリンモノ
クローナル抗体
E7820
抗がん剤/インテグリン
α2発現抑制剤
E7777
抗がん剤/
インターロイキン2受容体
結合部分とジフテリア毒素
の融合タンパク製剤
自社品
注射剤 中皮腫
米欧
■■■■■ ■■■■■
概要:メソセリンに対するキメラ型I g G 1抗体です。メソセリンを発現しているがん腫に対して抗腫瘍効果を期待していま
す。
自社品
経口剤 大腸がん
米欧
■■■■■ ■■■■■
概要:血管内皮細胞の接着分子であるインテグリンα2の発現抑制作用により血管新生を阻害します。
自社品
注射剤
末梢性T細胞リンパ腫
皮膚T細胞性リンパ腫
日本
■■■■■ ■■■■■
概要:インターロイキン2(IL-2)の受容体結合部分とジフテリア毒素の融合タンパク製剤であり、細胞表面上のIL-2受容体
と特異的に結合し、細胞内に移行したジフテリア毒素がタンパク質合成を阻害します。
多血性腫瘍又は動静脈奇形に対する血
導入品
2015年9月
日本
血管塞栓剤
(Biocompatibles)
管塞栓療法
(効能追加)
ディーシー ビーズ/
E7040
概要:架橋化ポリビニルアルコール高分子からなる親水性の球状微粒子であり、注入用カテーテルを通じて目標とする血
血管塞栓用ビーズ/医療機
管を選択的に塞栓するための血管塞栓用ビーズです。微細で均一な球状の粒子であるため、血管径や腫瘍の大きさ等の
器
対象範囲に合わせた持続的な塞栓効果が期待できます。
E7090
MORAb-066
E7046
EP4拮抗剤
H3B-6527
FGFR4阻害剤
自社品
導入品
経口剤 固形がん
日本
■■■■■
注射剤 固形がん
(Janssen Biotech)
米国
■■■■■
自社品
経口剤 固形がん
米欧
■■■■■
自社品
経口剤 肝細胞がん
米国
■■■■■
30
知的資本 知的財産戦略
知的財産の保護・強化
独自に開発した技術や製品を法的に保護し、有効活用することは、企業が持続的に成長・発展し、患者様へ安定してお薬をお届け
するために欠かすことのできないものです。そのためエーザイでは、
特許取得など、
知的財産に関する諸活動を戦略的に進めています。
1.知的財産活動
知的財産部は、国内外創薬拠点に知的財産担当者を配置し、創薬部門の各グループと緊密に連携しながら、特許、商標、意匠、
著作権等の知的財産に関わる活動をグローバルに展開しています。出願、権利化の過程ならびに先行技術調査等では、現場と密
接に連携して活動しています。さらに、新規技術や有望化合物の導入時には、関連組織と連携し、着実な権利化による保護やコン
プライアンスに則した確認を行っています。
2.創薬活動と知的財産戦略
医療用医薬品候補の化合物などを保護する物質特許に加え、有効成分の用途・製法・製剤・中間体などの成果についても、発売
後の医薬品が適切に保護されるよう創薬部門と連携して戦略的な特許出願と権利化に注力しています。創薬活動におけるスクリー
ニング方法やバイオマーカーの測定方法なども含め、最適なパテントポートフォリオマネジメントをめざしています。
また、エーザイでは他社特許調査についても知的財産戦略の上で重要と位置づけ、第三者の権利の尊重にも十分の配慮を行っ
ています。
3.ライセンス関連活動の事業への貢献
エーザイは、特許権そのもののライセンス料から収益を上げることよりも、事業収益を確保する手段としての特許化に重点をお
いています。
一方、
医薬品アクセスが困難な地域で特異に発生する病気の治療薬については、
積極的にライセンス活動を実施しています。
特に、
顧みられない熱帯病
(NTDs)に関して、特許を外部に開放し、広い範囲のパートナー機関と目標やコミットメントをともにして、
アイデアや技術、そして知を統合することにより、もっとも効率的に創薬研究を進めることにも挑戦しています。
4.特許
エーザイでは、創薬活動により得られた成果を守るために積極的に国内外特
許出願を行っています。一方、リソースを効果的に運用すべく、海外への特許
出願の要否や出願国については、各発明の重要性を充分に評価しながら決定し
ています。
■特許出願件数
2013年度
2014年度
2015年度
88件
87件
65件
5.商標
エーザイは、すべての医薬品について患者様に支持される商品名を開発し、それらを商標権によって保護しています。また、マー
ケティング部門と連携して、ブランド戦略をグローバルに展開しています。
もっと詳しく: 知的財産権と医薬品アクセスに関するエーザイの見解
http://www.eisai.co.jp/company/atm/approach/06.html
“顧みられない熱帯病”薬の研究開発の活性化のため、世界知的所有権機関
(WIPO)国際コンソー
シアムを通じた知的財産のロイヤルティー・フリーでの提供
http://www.eisai.co.jp/company/atm/activities/13.html
31
知的資本 研究開発体制
研究開発
(創薬研究)
の流れ
創薬研究とは文字通り、薬を創り出す研究で、
「探索研究」
「開発研究」
「臨床研究」の3段階からなります。探索研究は、創薬プ
ロセスの上流に位置し、有用性の高い新規化合物の探索・創出をはじめ、最新技術による創薬研究へのアプローチや社外リソー
スを活用した基礎研究も行っています。探索研究により創出された候補化合物は、開発研究のステージへ進みます。ここでは、
世界各国における医薬品申請・承認取得へ向けて、候補化合物の物理化学的・生物学的性質の把握と評価、品質や安全性の保証、
大量合成・製剤化などの工業化研究が行われます。続いて、臨床試験に入るための開発研究をクリアした候補化合物は、臨床研
究へ進み、通常フェーズⅠ試験からフェーズⅢ試験にいたる3段階の臨床試験を経て、国による承認を得たものが新薬として発
売されます。
■創薬プロセスと研究活動
開発研究
探索研究
探索合成
リード化合物最適化
製造販売後
臨床試験
申請
非臨床研究
審査
安全性研究
薬物動態
薬効薬理研究
一般薬理
バイオマーカー
臨床
導入
フェーズⅢ試験
生物学的評価
in vitro / in vivo
薬物動態
物性
一般薬理
安全性
バイオマーカー
新薬
候補
使用成績調査
臨床研究
フェーズⅡ試験
スクリーニング
プロセス研究
製剤化研究
物性分析研究
フェーズⅠ試験
アイデア
ターゲット
*
育薬
(発売後)
原薬供給/治験薬製造
承認
相互作用試験
配合変化試験
安全性
データベース構築
探索研究~承認
適応拡大・新製剤開発研究
*発売後も薬の情報は集められ、
より適正な薬の使用や様々な改良、新薬の開発へと活かしていく育薬研究が行われます。
(
「製品の安全性と副作用への対応」
については53ページ参照)
研究開発体制の刷新
エーザイは、今なお十分な治療法が確立していない疾病が多くあり、エーザイがフロントランナーとなりうる
「立地」を見出し
ている
「ニューロロジー」と
「オンコロジー」を重点領域として研究開発資源を集中的に投入し、これらの領域を中心に有用性の高
い新薬を生み出す努力を続けています。2016年4月に発足したニューロロジービジネスグループ、オンコロジービジネスグルー
プが探索研究および臨床研究に関する全機能を有します
(14-15ページ参照)
。
また、
両ビジネスグループのナレッジデータを集約・
(15ページ参照)
。エーザイグ
融合させ新たな知を創造することを企図して、hhc データクリエーションセンターを新設しました
ループのビッグデータセンターとしての役割を担い、
新たな創薬標的やバイオマーカーの同定等を推進します。加えて、
非臨床
(安
全性、薬物動態)研究、プロセス・製剤・物性分析研究、薬制、臨床開発サポートなどの創薬支援機能を集約したメディスン開発
センターも新設しました。メディスン開発センターは、ニューロロジービジネスグループ、オンコロジービジネスグループにお
ける研究開発を強力かつ効率的に支援していきます。
32
グローバルに展開する創薬研究拠点
エーザイは、グローバルに探索研究、開発研究、臨床研究を展開しています。エーザイは世界の様々な知と想いを交流させ
ることで、革新的新薬創出に向けて邁進しています。
創薬研究拠点
小石川ナレッジセンター
臨床研究
(東京)
欧州ナレッジセンター
探索・臨床研究
(英国)
筑波研究所
探索・開発研究
(茨城)
H3 Biomedicine Inc.
探索研究
(米国)
アンドーバー研究所
探索・開発研究
(米国)
Eisai China Inc.
臨床研究
(中国)
エーザイ
クリニカルリサーチ
シンガポール
臨床研究
(シンガポール)
ナレッジセンターインド
開発研究
(インド)
カン研究所
探索研究
(神戸)
鹿島事業所
開発研究
(茨城)
川島工園
開発研究
(岐阜)
Eisai Inc.
臨床研究
(米国)
モルフォテック
探索・開発・臨床研究
(米国)
倫理性と透明性を確保した創薬活動
エーザイグループでは、ヘルシンキ宣言の精神をはじめ、各国の様々な規制、ICH-GCP
(医薬品の臨床試験の実施の基準)を
はじめとする国際基準のほか、関連するすべての規制、基準、人権を遵守し、企業理念であるhhc に基づく高い倫理観を持って
医薬品の研究開発を行っています。また、社内に研究倫理審査委員会や動物実験委員会を設置し、倫理性や動物生命の尊厳に充
分な配慮を行っています。
特に、臨床研究においては、ICH-GCPを遵守し、患者様の自由意思による同意
(インフォームド・コンセント)を得て、各国の
規制要件、
社内基準および治験実施計画書に従って臨床試験を実施しています。また、
臨床試験に関する様々な業務を委託する
「医
薬品開発業務受託機関
(CRO)
」の選択にあたっては、事前に監査を実施し、エーザイグループの方針と基準に従って、CROの活
動を継続的に評価し、責任を持って管理しています。さらに、2015年度に、
「臨床試験データアクセスと臨床試験情報の開示に
関するポリシー」
を定め、医学・化学の発展を目的とした責任のある臨床試験データの開示をすすめています。
本ページ内容の詳細は以下をご覧ください。
研究倫理審査委員会
動物福祉に配慮した動物実験
臨床試験情報の開示
コンプライアンスハンドブック
http://www.eisai.co.jp/social/genome/index.html
http://www.eisai.co.jp/social/research/index.html
http://www.eisai.co.jp/company/research/clinical/policy.html
http://www.eisai.co.jp/philosophy/compliance.html
新薬創出のパフォーマンス
承認プロジェクト数/研究開発費100億円*
中期経営計画「はやぶさ」期間(2011〜2015年度)において、計画に
対する新薬創出の遅れはあったものの、製品創出力の面では一定の成
果があったと分析しています。
2016年度からの中期経営計画「EWAY 2025」においては、ニューロ
ロジー、オンコロジー領域における領域特化のビジネスグループ体制の
もと重要プロジェクトの確実な進展、
次世代を担う開発品への注力など、
創薬イノベーション分野への積極投資を実現し、さらなる創薬力の強
化をはかっていきます。
33
0.58
0.39
06-10
0.43
07-11
0.47
0.48
08-12
09-13
10-14
0.55
11-15(年度)
*5年間移動平均、
インプロセス研究開発費を除く、適応拡大、
剤形追加等を含む
人的資本
グローバルなマーケティング体制
全世界に広がるエーザイのマーケティング活動
エーザイのマーケティング活動は、日米欧などの先進国だけでなく、新興国・開発途上国にも拡大しています。ニューロロジー、
オンコロジービジネスグループのもと、グローバルブランド戦略と各リージョン
(日本、アメリカス、中国、アジア、EMEA)
のロー
カルマーケティングの相乗効果により、患者様貢献を果たしていきます。
■セグメント売上収益
■セグメント利益
(億円、
%)
(億円、
%)
2015年度実績
実績
2015年度実績
構成比
前期比
実績
日本
2,668
48.7
96
アメリカス
1,222
22.3
102
中国
493
9.0
120
アジア
340
6.2
110
EMEA
413
7.5
107
薬粧事業
(日本)
医薬品事業計
その他事業
連結売上収益
181
3.3
106
5,318
97.1
101
162
2.9
71
5,479
100.0
100
日本
237
13.7
159
中国
129
7.5
122
アジア
83
4.8
112
EMEA
103
6.0
156
27
1.6
205
1,696
98.0
104
35
2.0
44
1,731
100.0
101
その他事業
セグメント利益計
研究開発費および
親会社の本社管理費等
△1,362
子会社株式売却益*
150
連結営業利益
519
96
183
*第3四半期にエーディア株式会社を譲渡、
第4四半期にエーザイフード・ケミカル株式会社を譲渡
■セグメント利益の割合
その他事業
薬粧 - 日本
2.9%
2.0%
1.6%
薬粧 - 日本
EMEA 医薬品事業
3.3%
6.0%
EMEA
医薬品事業
7.5%
中国
医薬品事業
91
アメリカス
医薬品事業計
その他事業
6.2%
前期比
64.5
薬粧事業
(日本)
■セグメント売上収益の割合
アジア
医薬品事業
構成比
1,116
アジア
医薬品事業
日本
医薬品事業
セグメント
売上収益
4.8%
48.7%
セグメント
利益
中国
医薬品事業
7.5%
9.0%
日本
医薬品事業
64.5%
アメリカス
医薬品事業
13.7%
アメリカス
医薬品事業
22.3%
■リージョン体制
■リージョン別売上収益シミュレーションと年平均成長率
(%)
(億円)
9,000
■EMEA
(欧州、
中東、
アフリカ、
ロシア、
オセアニア)
■日本
■中国
■アジア
連結売上収益
約8%
6,000
■アメリカス
(北米、
中南米)
(韓国、
台湾、
インド、ASEANなど)
3,000
0
34
■その他
■EMEA
■アジア
約11%
■中国
約12%
■アメリカス
約15%
■日本
約4%
2015年度実績
約14%
2020年度目標
* 数値は概数によるイメージ *1 薬粧事業の売上収益を含む
*1
適正な価格の実現とコンプライアンスに則ったマーケティング活動
エーザイは、創出した医薬品を多くの患者様にお届けするために、適正な価格の取得をめざしています。
また、コンプライアンスを
「法令と倫理の遵守」と定義して、グローバルにコンプライアンスに則ったマーケティングおよび販売
活動を行っています。
エーザイは、医療機関等および、患者団体に関わる企業活動の透明性を高めることによって、企業活動が高い倫理性のもとに行
われていることを広く社会にご理解いただくことが重要と考えています。その実現のための一つとして、
日本製薬工業協会
(製薬協)
や各国で定める法令・ガイドラインに則り、医療機関等および、患者団体に対する支払いを公開しています。
適正な価格の実践
未だ満たされない医療ニーズに応える新薬をイノベーションによって創出し、世界のより多くの患者様に持続的にお届けするに
は、イノベーションの価値が適正に評価される必要があります。しかし、各国の経済成長の鈍化と高齢化社会の進展による社会保
障費の増加の中で、新薬の価格が医療費を押し上げているとの懸念が世界的に高まりつつあります。このため新薬の価格の適正
性を広範囲に示すエビデンスへの要請が強まっています。
エーザイは、医療経済学・アウトカム研究
(HEOR)
、および医療技術評価
(HTA)
の観点から適正な新薬の価格戦略を遂行するため、
2014年4月にグローバルバリュー&アクセスユニット(GV&A)を設立しました。
GV&Aは、イギリスにユニットプレジデントを置き、
新薬の経済性を評価する米国のユニットと、各リージョンと各国の薬価・医薬品アクセス担当者から構成されるグローバルな組織
です。GV&Aは、臨床試験から得られる有効性・安全性に加え、生活の質(QOL)の改善から得られる経済性の観点から新薬の価
値を取りまとめ、製品価値情報資料(Value Dossier)
を作成し、各国市場で適正な薬価の取得を推進するとともに、患者様の新薬
に対するアクセスを確保することをめざしています。
コンプライアンスに則ったマーケティングおよび販売活動
エーザイでは、全社員に配付される『コンプライアンス・ハンドブック』に、マーケティングおよび販売活動の行動指針を規定し
ています。以下はその抜粋です。
*
「コンプライアンス・ハンドブック」
については70ページもご覧ください。
●私
たちは、現地の規制当局が承認した、正確でバランスの取れた適正使用に関する科学的な情報を提供します。また私たちは、世界各国・各地域の、
さらには国際的な法令、規則やプロモーションコードを遵守します。
●私
たちは、プロモーション活動を、的確にかつ政府による承認およびエーザイのポリシーの範囲内で行わなければなりません。
●適
応外使用を勧めるプロモーション、虚偽のプロモーションや誤解を与えるようなプロモーションは、厳格に禁止されています。承認前の薬剤のプロ
モーションも同様です。
●プ
ロモーション物の内容については、各社の担当部署の承認を受けなければなりません。また、プロモーション活動を行う従業員は、プロモーション
に関する禁止事項に精通していることが求められます。
国際製薬団体連合会(IFPMA)は2012年3月に、マーケティング活動だけではなく、医療関係者、医療機関、患者団体との交流、
および医薬品のプロモーションを対象とした「IFPMAコード・オブ・プラクティス」を発表しました。エーザイが会員会社となって
いる製薬協は、
「IFPMAコード・オブ・プラクティス」の趣旨に則り、会員会社のすべての役員・従業員と、研究者、医療関係者、
患者団体等との交流を対象とした
「製薬協コード・オブ・プラクティス」
を制定、施行しました。エーザイは
「製薬協コード・オブ・
プラクティス」
の趣旨に則った
「エーザイ株式会社コード・オブ・プラクティス」
を制定しました。エーザイの全役員・従業員は、
同コー
ドに則り、常に高い倫理性と透明性を確保し、研究者、医療関係者、患者団体等との交流に対する説明責任を果たし、社会の信頼
に応えていくべく、各々の活動を推進しています。
「透明性ガイドライン」
に基づいた情報公開
エーザイでは、製薬協で定める
「企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン」
、
「企業活動と患者団体の関係の透明性ガ
イドライン」
に基づき、指針を制定しました。
医療機関等との関係の透明性確保のためのエーザイ指針
http://www.eisai.co.jp/pdf/social/disclosure/info201508_01.pdf
企業活動と患者団体の関係の透明性に関する指針
http://www.eisai.co.jp/pdf/social/disclosure/info201304_01.pdf
また、上記のガイドラインに従い、医療機関等と患者団体に対する支払いに関する情報をホームページで公開しています。
医療機関等及び医療関係者に対する支払いの公開
http://www.eisai.co.jp/social/disclosure/disclosure.html
患者団体に対する支払いの公開
http://www.eisai.co.jp/social/disclosure/disclosure02.html
さらに、米国や欧州で求められている同様な情報公開についても、各リージョンで対応しております。
35
日本医薬品事業 多様な環境変化に対応した新たな事業体制の構築
地域医療フォーカスの事業MIX
国内では、今後社会保障費の増大に伴い、医療・介護の一体改革が進められます。その最大の目的は、医療機能の分化・連
携と在宅医療の充実です。その中で注目されるのが、2017年に導入予定の「地域医療連携推進法人制度」です。当制度の導入
により、地域における複数の医療法人が一体的に経営され、
統一的な連携推進方針の決定がされることになります。その中には、
患者様情報や要介護者情報の一元化や薬剤・機器の共同購入などが含まれます。
また、もう一つ注目されるのが、在宅医療の充実によるホームケア(在宅医療)マーケットの拡大です。医療計画により病床
の機能分化が進み、今後在宅医療は拡大し、薬剤選択の方向性にも変化が生じるものと考えます。
エーザイでは、これらの環境変化に備えるべく2016年度より、日本医薬品事業の体制を刷新しました。「アクセス&アウト
カム本部」を創設するなど、メディカル・アウトカム・アクセスを中核とした事業体制への転換をはかりました。「メディカル
本部」との連携のもと、リアルワールドデータに基づいた情報提供(メディカル)を行い、単なる治療効果ではなく、転倒予防
やQOL向上なども含めた治療成果(アウトカム)を追究し、顧客に対し新たな価値提案
(アクセス)
につなげていきます。
認知症ソリューション事業の展開 〜現代社会最大課題
「認知症」
へのソーシャルイノベーション〜
全世界において認知症は取り組むべき最重要疾患と位置づけられており、世界中で様々な認知症施策が進められています。
日本でも、2025年には認知症高齢者数が700万人を超えると予想されています
(厚生労働省推計値)
。
エーザイは、このような環境下に潜在しているニーズに着目し、日本初の
「認知症ソリューション事業」
に取り組みます。「ア
リセプト」を生み出した開発力や分析力、また「まちづくり」活動で築き上げた患者会や医療従事者、自治体とのネットワーク
などエーザイが持つ認知症アセットを活かし、認知症に関するソリューションを提供していきます。
■蓄積された主な認知症アセット
・ネット(e-65.net)を通じた専門医療機関等の情報提供
・認知症関連のお問い合わせに対応
(約13万件)
関連データ
・
「アリセプト」 二重盲検比較試験21報 6,804症例
・
「アリセプト」 市販後臨床データ 約3万症例
疾患啓発
・認知症疾患啓発CMの放映
・患者様団体との協働
まちづくり
・長年にわたる世界中のhhc まちづくり活動実績(国内527事例)
・自治体との認知症連携協定の締結
早期診断
・独自の診断/治療効果スケールの開発
・認知症専門医との連携
情報提供・相談
治療・
・
「アリセプト」 世界初レビー小体型認知症の適応症取得
介護オプション ・服薬支援機器の開発
今後は、まず全国約65カ所の認知症連携協定先において、
地域医療の担い手と連携し、自治体・地域住民へ認知症ソ
リューションを提供し、認知症と共生する社会の実現への貢
■多職種連携サービス 習志野医師会での活用事例
エーザイのコーディネートのもと、
在宅医療を受けられる患者様のために、
多職種連携サービスを活用した課題解決方法等について多職種で話し合う様子。
献をめざします。
医師
具体的には、スマートモバイルを活用した「多職種連携サー
エーザイの
コーディネーター
ビス*」による要介護度の改善、「服薬支援機器」による服薬コ
ンプライアンスの向上、「お出かけ支援ツール*」による安心・
安全に外出できる社会の実現に貢献していきます。
*多職種連携サービスの詳細についてはこちら
▶ http://www.eisai.co.jp/news/news201649.html
介護支援
専門員
訪問看護師
ヘルパー
*お出かけ支援ツールの詳細についてはこちら
▶ http://www.eisai.co.jp/news/news201656.html
統合プロダクトパッケージ戦略 〜地域医療における患者様貢献の最大化の追究〜
日本医薬品事業では、新たな戦略として、高いアウトカム(治療効果と経済性)をもたらす「統合プロダクトパッケージ(複数
の製品の組み合わせ)」の提供をめざしています。在宅医療において罹患率の高い認知症・不眠症・骨粗鬆症・便秘症等の疾患に
対して、エーザイ製品に加え、EAファーマ株式会社(消化器領域事業)、エルメッド エーザイ株式会社(ジェネリック医薬品事
業)の製品を組み合わせた「統合プロダクトパッケージ」
を提供し、地域医療における患者様貢献の最大化をはかります。
36
「EAファーマ株式会社」
を設立 ~国内最大の消化器スペシャリティファーマをめざして~
2015年10月、エーザイの消化器疾患領域に関連する事業の一部を分割し、味の素株式会社の100%子会社である味の素製
薬株式会社に承継する統合契約を締結しました。これにより、エーザイが株式を60%、味の素株式会社が40%を保有するエー
ザイの新しい連結子会社「EAファーマ株式会社」が、2016年4月にスタートしました。
「EAファーマ株式会社」は、研究開発、生産物流、営業・マーケティングのフルバリューチェーンを有する消化器領域のスペ
シャリティファーマです。「パリエット」や「エレンタール」をはじめとした製品ラインナップと、フェーズⅢ試験の段階に5つ
の開発品を有する領域に特化した研究開発により、消化器領域における患者様貢献を果たしていきます。
*詳細はこちらをご参照ください▶ https://www.eapharma.co.jp
■EAファーマ株式会社の主なパイプライン(2016年7月末現在)
製品名/開発品コード
(一般名)
薬効・作用など
パリエット/E3810
(ラベプラゾール)
プロトンポンプ阻害剤
AJG511
(ブデソニド)
潰瘍性大腸炎治療剤/
局所作用型ステロイド
自社品/導入品
剤形
自社品
経口剤
対象疾患/効能・効果など
PPI抵抗性逆流性食道炎に対す
る維持療法
(効能追加)
地域
フェーズⅠ フェーズⅡ フェーズⅢ
試験
試験
試験
日本
■■■■
■■■■
申請
承認
■■■■ 2016年度予定
概要:プロトンポンプ阻害作用に基づき、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、ヘリコバクター・ピロリ除菌、ラベプ
ラゾールを含むヘリコバクター・ピロリ除菌用3剤併用パック製剤などの承認を取得しています。2 0 1 4年1 2月に低用量
アスピリン投与時における胃潰瘍または十二指腸潰瘍の再発抑制に関する効能・効果および5 m g錠の剤形追加の承認
を取得しました。
導入品
(Dr. Falk
注腸剤
Pharma GmbH)
潰瘍性大腸炎
日本
■■■■
■■■■
■■■■ 2016年度予定
概要:日本初のブデソニドを有効成分とする泡状の注腸製剤(注腸フォーム製剤)です。ブデソニドは局所作用型ステロイ
ドであるため全身性の副作用の低減が期待でき、さらに、泡状であることから直腸およびS状結腸の炎症部位に薬剤が
到達し、投与後にも漏れ出しにくい特徴があります。ブデソニド注腸フォーム剤は、欧州においてはすでに発売されてい
ます。
(キッセイ薬品株式会社との共同開発)
導入品
経口剤 慢性便秘症
日本
■■■■ ■■■■ ■■■■
(Albireo AB)
AJG533
(elobixibat)
慢性便秘症治療剤/
胆汁酸トランスポーター阻害剤 概要:新規作用機序を持つ経口便秘薬です。胆汁酸の再吸収に係わる胆汁酸トランスポーターを阻害し、腸管内の胆汁
酸を増加させて自然な排便を促します。
(持田製薬株式会社との共同開発)
AJM300
(カロテグラストメチル)
潰瘍性大腸炎治療剤/
α4インテグリン阻害剤
AJG555
慢性便秘症治療剤/
ポリエチレングリコール製剤
自社
経口剤
潰瘍性大腸炎
日本
■■■■
■■■■
■■■■
概要:α4インテグリンを阻害することにより、リンパ球の接着・浸潤を防ぐ機序を有します。経口α4インテグリン阻害剤
として世界で初めての製品化をめざしています。
(キッセイ薬品株式会社との共同開発)
導入品
(Norgine
Pharmaceuticals
Limited.)
経口剤
慢性便秘症
日本
■■■■
■■■■
■■■■
概要:ポリエチレングリコール製剤により腸管内の浸透圧制御を行うことで排便を促す経口便秘薬です。
E6011
抗フラクタルカイン抗体
自社
注射剤 クローン病
日本
■■■■
E6007
インテグリン活性化阻害
自社
経口剤
日本
■■■■
炎症性腸疾患
■■■■
コンシューマーhhc 事業 ナショナルブランドの価値の最大化
エーザイでは、セルフメディケーション推進のためにドラッグストアで販売される一般用医薬品や、コンビニエンスストア
などでお求めいただける医薬部外品、栄養機能食品などの健康をサポートする製品を、日本国内を中心に展開しています。
創業以来築き上げてきた「チョコラBB」、「ナボリン」
、
「セルベール」
、
「トラベルミン」をはじめとするナショナルブランドの
価値を最大化し、生活者のQOL向上に貢献しつづけていくことをめざしています。
に変更しました。
なお、組織改編に伴い、名称を従来の「薬粧事業部」
から、2016年4月より
「コンシューマーhhc 事業部」
37
アメリカス医薬品事業
(北米、
中南米)
アメリカスでは、オンコロジー領域およびニューロロジー領域にフォーカスした事業を展開しています。米国においてオン
コロジー領域では、「レンビマ」、「ハラヴェン」、「Aloxi」、ニューロロジー領域では、抗てんかん剤「フィコンパ」、肥満症治
療剤「BELVIQ」に注力しています。グローバルブランドである「ハラヴェン」、「レンビマ」、「フィコンパ」、「BELVIQ」の拡大
により、世界最大の医薬品市場である米国で継続的な成長をめざします。また、カナダ、ブラジル、メキシコにおいてもグロー
バルブランドの申請、発売等を通じて事業が拡大しています。
アメリカスの
「レンビマ」
戦略
米国では、世界に先駆けて2015年2月に局所再発又は転移性、進行性、放射性ヨウ素治療抵抗性分化型甲状腺がんの適応で
「レンビマ」を新発売しました。甲状腺がんの多くは治療可能ですが、進行した甲状腺がんの治療選択肢は限られているため、
未だアンメット・メディカル・ニーズが高い疾病の一つです。米国のほかに、カナダ、メキシコでも発売しており、ブラジル
においては申請中です。また、甲状腺がんに加えて、2016年5月には米国で進行性腎細胞がんに対する
「エベロリムス」との併
用療法の適応追加の承認を取得しました。本療法は、根治切除不能または転移性腎細胞がんにおけるセカンドラインの標準療
法と比較して、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長した唯一の併用療法です。本適応は、FDAよりブレイクスルーセラピーと
優先審査品目の指定を受けており、申請から約6カ月で承認を取得しました。
米国の「レンビマ」のマーケティング
米国では、2015年2月に自社創製の抗がん剤「レンビマ」を発
売し、これまで多くの甲状腺がんの患者様に対して貢献してき
ました。2016年5月には、新たに腎細胞がんに対する適応が追
加となりました。「レンビマ」は、進行性腎細胞がんのセカンド
ラインの併用療法試験において、非常に良好な結果を達成しま
した。未だにアンメット・メディカル・ニーズが高い腎細胞が
んの治療において、患者様への新たな治療オプションを提供で
きることを誇りとしてマーケティング活動を推進しています。
ジョン・コリンズ
Eisai Inc.(米国)
オンコロジーマーケティング
ヴァイスプレジデント
ウィリアム・マクリーン
Eisai Inc.(米国)
オンコロジーセールス
ヴァイスプレジデント
デヴィッド・ジード
Eisai Inc.(米国)
レンビママーケティング
ディレクター
EMEA医薬品事業
(欧州、
中東、
アフリカ、
ロシア、
オセアニア)
EMEAは、生産工場、探索研究、臨床研究、マーケティング、そしてリージョナルヘッドクォーター機能を英国ハットフィー
ルドに集約した欧州ナレッジセンターを中心に、管轄地域で広く医療用医薬品の販売を行っています。オンコロジー領域では、
主力製品である「ハラヴェン」に加えて、2015年6月には「レンビマ」を発売しました。ニューロロジー領域では、グローバルブ
ランドの「フィコンパ」をはじめ、「イノベロン」、
「Zebinix」(ロシアでのブランド名「Exalief」)、
「Zonegran」の4つの抗てん
かん剤を発売しています。オンコロジー領域およびてんかん領域を中心に今後も患者様貢献を果たしていきます。
イタリアの「フィコンパ」のマーケティング
2015年5月の発売以来、着実に患者様貢献が進んでいます。イタリアでは、約30万人のてんかん患者様が
いると言われており、約25,000人が毎年てんかんと診断されています。「フィコンパ」
はてんかん領域において、
医師と患者様のニーズを満たす次世代の治療薬です。また、エーザイイタリアのてんかん治療におけるリーディン
グカンパニーとしての成長を支える重要な製品です。
イタリアの医師とともに、熱意を持っててんかん患者様への貢献活動に取り組んでいます。
フランチェスコ・ジウラデイ
Eisai S.r.l.(イタリア)
フィコンパ
ブランドマネージャー
38
中国医薬品事業
20年以上の歴史を有するエーザイの中国事業
世界2位の医薬品市場である中国では、主力製品「メチコバール」、「アリセプト」の売上収益が拡大しており、さらに将来の
コアビジネスを支える「ハラヴェン」、「フィコンパ」の開発も進行しています。沿岸部の大都市を中心とする従来のビジネスモ
デルから転換し、内陸部や地方の中小都市および中小病院(ローティアマーケット)へもエーザイ製品のカバレッジを拡大して
いきます。
エーザイの中国事業は、1991年の合弁会社の設立に始まります。1996年には製造、販売機能を持つ100%子会社の
「衛材(蘇
州)製薬有限公司」
(現「衛材(中国)薬業有限公司」)を設立しました。2014年には、中国統括会社である
「衛材
(中国)投資有限公
司」を設立し、ローカルマネジメントによる迅速な意思決定を可能とするオートノミーモデルを確立しました。
中国のジェネリック医薬品事業へ参入
高い成長が見込まれるローティアマーケットでカバレッジを拡大する上では、ジェネリック医薬品に対する高いニーズを満
たす必要があります。
エーザイは、2015年12月、中国のジェネリック医薬品製造販売会社「遼寧天医生物製薬株式有限
公司
(遼寧省本渓市)
」を買収しました。2016年1月より、新会社
「衛材
(遼寧)製薬有限公司」として事
業を開始しています。同社は、90品目以上の製造承認を取得しており、また様々な剤形に対応可能
な生産ラインや技術を保有しています。エーザイの厳しい品質管理・保証システムのもとで、高品質
で安価なジェネリック医薬品を製造し、中国におけるより広範な医療ニーズを充足していきます。
衛材
(遼寧)
製薬有限公司
中国の「メチコバール」のマーケティング
中国でエーザイがもっとも大きな売上収益を上げている「メチコバール」は、しびれ、痛み、麻痺を改善する
末梢神経障害の治療薬です。1996年の発売以来20年にわたって、末梢神経障害領域の科学的なエビデンス提
供に注力し、多くの中国の患者様に貢献してきました。エーザイの協力により、全国47カ所に設立された末梢
神経障害診断センターでは、2,000名を超える神経内科、整形外科、内分泌科の若い臨床医師を対象に専門的
なトレーニングが実施されました。
私は、「メチコバール」という製品は、エーザイの企業理念であるhhc の精神に即していると思います。この精
神とともに、「メチコバール」を患者様にお届けするチームの一員であることをとても誇りに思っています。
余 世清
衛材
(中国)
薬業有限公司
神経科学領域
マーケティング部
末梢神経障害領域
マーケティングマネージャー
アジア医薬品事業
アジアでは、「ハラヴェン」、「レンビマ」、「フィコンパ」
の3つのグローバルブランドに注力しています。
主要国の韓国では、「ハラヴェン」に続き、「レンビマ」と「フィコンパ」を2015年度に新発売しました。台湾においても、
2015年度に
「フィコンパ」
を発売し、
「レンビマ」
については、2016年度の承認取得と発売をめざしています。
また、新興国であるインド、インドネシア、ベトナム、ミャンマーにおいて、市場カバレッジの拡大をめざしています。各
国の経済状況や保険制度を鑑みて、患者様が購入しやすい価格を設定する「アフォーダブルプライシング」戦略により、医薬品
アクセスの向上も推進しています。
*エーザイのアフォーダブルプライシングへの取り組みについては48ページもご覧ください。
韓国の「レンビマ」のマーケティング
韓国では、2016年2月に「レンビマ」を発売しました。保険償還が開始されるまでは、LET(Lenvima,
Encouraging Treats)という患者様支援プログラムを通じて甲状腺がんの患者様に「レンビマ」をお届けしてい
ます。LETでは、「レンビマ」で治療される患者様が3サイクル目を終えると最後の1サイクル分の費用を払い戻
すことで、患者様負担を軽減するとともに、いち早く「レンビマ」をお届けするこ
とができます。「レンビマ」はエーザイ韓国のオンコロジーチームにとって鍵とな
る製品です。保険償還の開始後は早期に一人でも多くの患者様に貢献できるよう、
河 是瑛
「レンビマ」の高い治療効果を訴求していきます。
患者様支援プログラム
「LET」のロゴ
39
Eisai Korea Inc. レンビマ
プロダクトマネージャー
人的資 本
社員
エーザイでは、定款において社員を主要なステークホ
ルダーと位置づけ、安定的な雇用の確保、やりがいの
ある仕事の提供、能力開発機会の充実に努めています。
企業理念であるhhc を実現する上で、当社では社員を
大切な財産と考えており、人材を「人財」と表現してい
ます。社員一人ひとりが持てる力を最大限発揮できる
環境の整備をしています。
国際法に基づく人権尊重
エーザイは、国連人権法、世界人権宣言、市民的および政治的権利に関する国際規約、経済的、社会的、文化的権利に関する
国際規約などを尊重し、グローバルな社内規範となる「エーザイ・ネットワーク企業(ENW)行動憲章」およびその行動指針をとり
まとめた
『コンプライアンス・ハンドブック』
を作成しています。その中では、従業員一人ひとりの人権と人格を尊重し、性別・国籍・
人種・宗教・性的指向に基づく違法な差別、ハラスメントその他の不公正な扱いを受けることのない職場環境およびビジネス環境
を提供することを規定しています。また、社員の採用や研修、昇進においても、上記の差別を禁じ、すべての社員が公正に評価さ
れることを定めています。
ダイバーシティの推進
エーザイでは「エーザイ・ダイバーシティ宣言」を掲げ、啓発冊子や社内ウェブサイトを活用してダイバーシティの考えを浸透さ
せるとともに、国内外で活躍する社員を紹介することで、多様な価値観を活かす組織風土の醸成に取り組んでいます。世界で約1
万人の社員のうち、米国、欧州、中国ではいずれも管理職の40%以上を女性が占めており、日本のエーザイ株式会社でも2016年
6月時点では5.2%となり年々上昇しています。また、約10カ
国の外国籍社員が所属するほか、執行役28名のうち、4名は
■女性管理職比率推移グラフ(エーザイ株式会社)
女性、7名は日本以外の出身者となっています。
10
(%)
日本においては、
2016年4月の女性活躍推進法の施行に伴い、
「2020年度までに女性管理職の数を倍増、かつ管理職に占め
る女性比率10%を達成する」という目標を掲げました。具体的
な行動計画のもと、企業理念実現への強い意志とリーダーシッ
プを備えた女性社員の管理職への登用を積極的に進め、女性
2.9
3.0
3.7
4.1
4.6
4.7
5.2
リーダーの育成をより一層強化することにより、企業価値の継
続的向上に努めるとともに、さらなる患者様貢献につなげてい
きます。
2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
2020年度 ・女性執行役 4 名
目標
・女性社外取締役 1 名
(年度)
(2016年6月現在)
40
意識の醸成、リーダー
シップ開発、人的ネッ
トワーク形 成 等を行
うキャリア研修等を通
して、 女 性リー ダ ー
の輩出に積極的に取
り組んでいます。
グローバルリーダーの育成
世界の患者様に貢献していくためには、
国境を越えてグローバルにビジネスを牽引するリーダーを育成していくことが不可欠です。
エーザイでは、世界中から将来のグローバルリーダー候補を選抜し、企業内起業家やリーダーシップをテーマとした研修プログラ
ムを実施しています。
また、海外派遣・長期海外出張等での労働条件について、海外勤務に関する各国共通の制度を整備し、より多くの社員に国境
を越えて活躍あるいは能力を開発する機会(グローバルモビリティ)を積極的に提供しています。加えて、MBA・ロースクール留
学制度等を整備し、社員の能力開発を積極的に行っています。
さらに、エーザイでは、全社員が自立し、変革しつづけるプロフェッショナルになることをめざし、社員に対する様々な研修・成
長機会の提供を行っています。
事例紹介:日本医薬品事業におけるグローバルリーダー輩出プログラム
将来グローバルな活躍を希望する社員を公募選抜し、自己成長を支援するグローバルリーダープログラムを2015年
に開始しました。プログラムは、異文化コミュニケーション、交渉、プレゼンテーション等のビジネススキルの習得と、
海外のエーザイ拠点における研修から構成されます。2015年は23名が参加しました。参加者は、通常の業務を行い
ながら、グローバルビジネスパーソンとしての自己研鑽に励み、海外から日本を訪問する社内外のメンバーと積極的
に関わり交流を深めています。
日本医薬品事業におけるプログラム概念
派遣プログラム
ビジネス
英語力
グローバル
人財:
2年次
ビジネススキル研修
1年次
異文化コミュニケーション力研修
公募
選抜
文化が異なる
人から
一緒に働きたいと
評価される人財
実習期間:通算2年間
基礎
英語力
対象:入社5年目以降40歳まで
INTERVIEW
インドにおけるビジネスの場での異文化に直接触れる感動
本プログラムの一環としてインドの現地法人にて研
修する機会に恵まれました。各部門の責任者からイン
ドの医薬品市場や「ハラヴェン」のティアードプライシン
グ(所得別段階的価格設定:48ページ参照)等の実業
を学び、さらに
「DEC錠」
(47ページ参照)
を無償提供し
て薬剤の集団投薬を実施した村を訪問し、村民の歓迎
を受けるなど、ビジネスの場で異文化に直接触れると
いう感動を体験できました。今回の経験を活かし、私
どもの製品でさらに患者様に貢献できるように、また
グローバル人財となれるように自己研鑽していきます。
41
織田 芳正
EJ地域連携
東海北陸本部 先進メディカル部
従業員の採用と能力開発
エーザイでは、企業理念であるhhc のもとに患者様との共同化を行い、それを画期的な薬剤の発見や新たなアイデアを得る
原動力としています。研究開発職を含む新入社員の採用については、
入社前に患者様を囲み、
闘病経験や想いを伺う機会を設け、
エーザイの企業文化理解の促進をはかるとともに、入社後の活躍を具体的に思い描いていただいています。また研究開発にお
ける成功確率や生産性の向上に向け、1年間のグローバル研修プログラムを通して、変革しつづけながら先を見通す力を育成
するほか、部門横断のリーダー育成研修や、イノベーションの創出に報いる独自のインセンティブ制度を通して、患者様に貢
献する新薬を生み出す工夫をしています。働く個人が持つ能力を最大限活用するためのキャリア開発研修や、多面観察フィー
ドバック研修を全社員を対象に展開しています。
働きやすい職場づくり
エーザイは、社員一人ひとりが企業理念であるhhc の実現にやりがいを持って邁進できる職場づくりをめざしています。エー
ザイ株式会社においては、全社員が仕事と生活を両立できるようにフレックスタイム制や裁量労働制など職種に合わせた柔軟な
勤務制度を整備しています。また、育児・介護・看護といった社員のライフイベントを支えるため、法定休暇を上回る休暇・休
職制度や短時間勤務制度などを充実させるとともに、社員の社会貢献を支援するボランティア休暇やドナー休暇、メンタルヘル
スケアや産業医による保健指導など、社員一人ひとりがいきいきと働ける職場づくりに取り組んでいます。
■エーザイ株式会社におけるライフイベントを支える制度例
つわり休暇
育児休職制度
介護休暇・休職制度
育児・介護短時間勤務制度
看護休暇
つわりのために就業が困難な場合、1回の妊娠につき3回、合計15日間の休暇を取得することが可能。
産前産後休暇の後、子供が3歳になるまで休業可能。
家族の介護が必要な場合に、有給休暇を年間5日まで、休業を1年まで取得可能。
育児・介護のため1日最大2時間まで勤務時間を短縮可能。育児短時間勤務制度は子供が9歳に達した後の
3月末まで利用可能。制度利用中もフレックスタイム適用可で、月内で勤務時間を調整できる。
小学校就学前の子供の看護が必要な場合、または予防接種や健康診断を受けさせるため休暇が必要な場合、
年間5日間まで利用できる有給休暇。
上記は、諸条件を満たせば男女問わず適用可
(つわり休暇除く)
。
労働組合との関係
エーザイは、創業以来、社員をもっとも大切な資産と位置づけ、お互いの理解と信頼に基づく健全で公正な労使関係のもと、
社員が安心して社業に打ち込むことができるよう、よき就労環境の整備に邁進してきました。
社が長期的に発展・成長し、併せて社員が安心して働きつづけるためには、今後も労使の健全な信頼関係のもと、相互の立
場を尊重しながら難局に対して果敢に挑みつづける必要があります。そのため、エーザイ株式会社とエーザイ労働組合は、こ
れまでのよき労使関係をさらに継続・向上させ、労使一体となって会社の発展と社員の幸せづくりを実現させることを共通の
目的として活動しています。
人権尊重の定着に向けた啓発活動
エーザイは、国内外の人権問題を理解し、企業として人権啓発を推進する目的で、「東京人権啓発企業連絡会」に加盟し、グ
ローバルな動向、問題点、トピックスなどを議論する会議*1、講演*2、イベント*3などに積極的に参画しています。また、チー
フタレントオフィサーを委員長とする人権啓発推進委員会を設置し、立案した人権啓発推進方針に基づき、人権啓発研修、eラーニング、人権標語などの啓発活動を実施しています。人権の尊重が企業文化として定着し、企業の社会的責任を果たすこ
とをめざしています。
*1「反差別国際運動日本委員会総会」
、
「世界人権宣言記念東京集会」
、*2「ヒューマンライツセミナー」
、*3「ヒューマンライツ・フェスタ東京」
42
人的資本
労働安全衛生への取り組み
エーザイでは、
「安全・衛生・健康を最優先とし、人間尊重の企業活動を推進する」という基本理念のもとに「エーザイ・ネッ
トワーク企業
(ENW)
安全衛生方針」
を制定しています。7項目の行動指針を定めており、この指針に基づき年度ごとの
「安全衛生
管理計画」を策定しています。全社員が安全衛生基本理念を共有し、
「安全・衛生・健康」を確保する活動を展開する中で、
「誰一
人ケガをさせない」
、
「誰一人病気にしない」
職場の実現をめざしています。
日本国内における従業員50名以上の事業所では、安全衛生法に基づき、安全衛生委員会を設置し、会社と労働組合の代表に
よる定期的な労働安全衛生に関する話し合いを行っています。また、全社環境安全委員会を設置し、全社レベルでの労働災害撲
滅のためのさらなる質の向上に向けて年間計画の策定を行うとともに、半期ごとに取り組みの成果と課題についてモニタリング
をしています。労働災害については、報告書の提出を義務づけており、すべての事業所で共有し類似労働災害の再発防止を推進
しています。
国内外の研究・生産拠点では、労働災害撲滅のためのさらなる質の向上に向けて独自の労働安全衛生管理システム構築による
活動を推進しています。本管理システムを的確に運用し、PDCA*サイクルを自主的・継続的に展開することにより、労働安全
衛生水準の向上をはかっています。また、新たな設備や建造物等に対するリスクアセスメントを着実に実施しており、2016年6
月に施行された労働安全衛生法にも対応し、化学物質を取り扱う業種におけるリスクアセスメントも実施しています。
* Plan
(計画)
、Do
(実行)
、Check
(評価)
、Act
(改善)
のサイクルを繰り返すことで管理業務を継続的に改善する方法。
2015年度の重点実施事項
エーザイおよび国内グループでの労働災害発生件数は、2013年度、2014年度と減少傾向にありますが、個々の従業員の安
全衛生に対する意識が必ずしも高くない状況も見られたため、2015年度は、1)従業員全員参加型による安全衛生活動の質的
向上、2)改正労働安全衛生法の着実な履行を目的として、以下の重点実施事項に取り組みました。
●安全衛生に関する情報の共有化や意見交換を行い、相互にフォローアップし、活動の質的向上を推進
●ノウハウや失敗事例とその対策をもとに安全衛生教育・訓練を充実
●類似の潜在リスク排除による事故再発防止とキャンペーンを通じた注意喚起を実施、一人ひとりの意識づけによる事故防止
●産業医との連携のもとでの従業員の心身の健康保持・増進
●法令の遵守とリスクアセスメントに基づく化学物質管理の強化
エーザイ・ネットワーク企業
(ENW)
安全衛生方針
安全衛生基本理念
ENWは、安全・衛生・健康を最優先とし、人間尊重の企業活動を推進します。
安全衛生行動指針
1. 全ての業務において安全・衛生・健康を最優先し、
継続的に無事故・無災害を追求します。
2. 製品の研究・開発から製造、
流通、
販売、
使用、
廃棄に至る全ての段階において、
安全・衛生・健康の確保を最優先します。
3. 安全・衛生・健康管理について体制を整備し、
活動を推進します。
4. 安全・衛生・健康に関する法令、
規則を遵守することはもとより、
さらに厳しい自主基準を定めて活動します。
5. 科学技術の進歩を積極的に採り入れ、
最先端の安全技術を確保します。
6. 全従業員が安全衛生基本理念を共有するとともに、
各職場で求められる専門性強化をはかる教育訓練を計画的かつ継続的に実施します。
7. 安全・衛生・健康に関する方針、
目標、
プログラムおよび実績などの情報を積極的に開示します。
43
製造資本
エーザイデマンドチェーンシステムズ
患者様満足の増大をめざした生産活動
エーザイの品質方針
「我々の造る一錠、一カプセル、一管が患者様の命とつながっている」
これはエーザイが掲げる品質方針であり、
私たちが製造する製品一つひとつが患者様の生命に直結しているという認識を社員一人ひとりが持ち、
生産活動に取り組んでいることを示しています。
世界各地で医薬品を待つ人がいる限り、高品質な医薬品を安定供給しつづける使命と責任があり、
その目的を達成するために、エーザイは、製剤研究から生産、流通までのすべてのプロセスにおいて
万全の体制で品質確保に努めています。
グローバルな品質保証活動
エーザイは、医薬品の品質保証の範囲は、医薬品がそれを必要とする患者様・生活者の皆様のもとに届けられ実際に
使用されるところにまで及んでいると認識しています。エーザイでは、グローバルに統一された独自のGMP(製造管理
および品質管理に関する基準)による製造段階での品質管理を行うと同時に、流通段階での品質確保にも注力しています。
グローバルな品質保証体制のもと、世界のいかなる国と地域においても、安心してご使用いただける医薬品の供給を可
能とする品質保証活動を展開しています。
エーザイの品質保証部門では、患者様・生活者の皆様の顕在化した要望のみならず、潜在的な欲求を満たす品質を追
究することで顧客歓喜につながる製品の供給に努めています。
■ 医薬品品質システム強化に向けた取り組み
エーザイでは、
「ICH Q10 医薬品品質システムに関するガイドライン」に基づき、予め安全性および有効性が確認された
規格に適合した製品を安定的、かつ継続的に生産・供給すべく、患者様のニーズにお応えする医薬品品質システムの強化に
取り組んでいます。
安定供給に対する取り組み
エーザイでは、自然災害、事故、テロなど、いかなるリスクが発生した場合においても確実な安定供給を確保すべく
事業継続計画書(BCP)を定めています。万一、大規模地震が発生した場合においても、緊急・重要性の高い製品だけで
なく、その他の製品についても常に適切な製品在庫を確保することで、その間に工場の再稼働をはかり、製品の安定供
給を継続します。
44
偽造医薬品対応に対する取り組み
高品質な医薬品を適切に管理されたルートを経て、患者様まで確実に届けるため、エーザイでは、「エーザイ グロー
バル・プロダクト・セキュリティポリシー」を定めています。そのポリシーに則り、規制当局や他の製薬企業との偽造医
薬品対策での連携に積極的に参加しています(53ページ参照)。同時に、生産・物流においても具体的な対策を講じるこ
とで、安全な医療環境の実現に向けた取り組みを進めています。
■「DEC錠」
の偽造医薬品への対策
インドのバイザッグ工場で製造するリンパ系フィラリア症治療薬「DEC錠」においては、個装ボトルに表示するシリア
ル番号に加え、錠剤表面の特定の位置に割線を入れることで、偽造医薬品との識別性をさらに高めています。
偽造医薬品対応に関する2015年度の取り組み
・シリアル番号表示による製品追跡管理機能の強化を目的に、
英国のハットフィールド工場にシリアル番号の統合管理システムを導入
グローバルな生産体制
(イノベーションベース)
各工場の強みを活かして“立地”を確立し、世界規模でのデマンドイノベーション活動を展開し、顧客歓喜につながる
剤形や包装を有する高品質製品の提供やアフォーダブルプライシング(患者様が購入しやすい価格設定。48ページ参照)
による安定供給を実現します。
生産体制の刷新(物量ベースからイノベーションベースへ)
物量ベース 物量ベースでの工場稼働率やロジスティクスの最適化を企図
転換
イノベーションベース
各工場の強みを活かして“立地”を確立し、
世界規模でのデマンドイノベーション活動を展開
ハットフィールド(英国)
欧州市場における多言語・ 少量包装
対応の経験に基づきグローバル展開
を実現する
●厳格 化する規制に先駆け、世界最高
レベルの偽薬対 策であるシリアル番
号の統合管理システムを稼働
●
蘇州・本渓
(中国)
エクストン研究所(米国)
(パイロットプラント)
蘇 州 工場 の高品
質 製 剤 技 術と新
たに獲 得した 本
渓 工場の 後 発 医
薬品ラインナップ
を 融 合 し、多 様
な 所 得層に高 質
な エー ザイ 製 品
を供給
モルフォテック抗体の治験薬生
産で培った抗体製剤技術を活用
し、将来の自社抗体医薬品の商
業生産へつなげる
ボルチモア(米国)
脳 内 に 留 置 するユ ニー クな
「ウェハー製剤」を独自の技術
を駆使して世界に供給
Unitの新設
デマンドイノベーションに
さらに
「+」
の想いと価値を加える集団
各サイトの共同化を通じて発掘し
た hhc True Needsを充足すべく
最先端技術(ICチップ製剤、
ウェア
ラブル端末等)
を活用
バイザッグ
(インド)
後発医薬品中心に築かれた強力かつ
広汎な製薬インフラの活用
後発医薬品用の原薬
(API)
と製剤を開
発・供給
●リンパ系フィラリア症治療薬
「DEC錠」
を22億錠製造し(~2020年)、無償供
給
●配合剤の開発・供給
●長 期収載品をグ
ローバ ルに安 定
供給
●
鹿島
「エリブリン(一般名)
」の商業生産に代表さ
れるワールドクラスの商業生産合成技術を低
分子医薬品の原薬商業生産に活用
●独自の部位特異的コンジュゲーション技術を
立ち上げ、抗体製剤の自社製造をめざす
●
川島
認知症治療薬製造の拠点であり、年間数万人
が来館する内藤記念くすり博物館を有する川
島工園で認知症カフェ等を創設し hhc の真の
ニーズを発掘する“場”とすることをめざす
●従来のバッチ方式とは異なる革新的な連続生産技術により開発から商
業化へのスケールアップのステップが必要なく、物量に左右されない柔
軟な生産体制の構築をめざす
●
ボゴール
(インドネシア)
約90%の国民がイスラム教徒であるインド
ネシア市場の特性を活かし、
ハラル認証取得
によりハラル対応のニーズのある国への医薬
品供給をめざす
●ハラル対応製品のマレーシア等への輸出を視野
●
※
(デマンドイノベーションプラス)
:患者様へ提供する製品や解決策の付加価値を最大化することを目的としたアスピレーションを示すシンボル
45
特集
医薬品アクセス向上への
取り組み
必要な医薬品を必要とする人々に。
エーザイは、開発途上国・新興国の人々に貢献するため、
医薬品アクセスの改善に取り組んでいます。
リンパ系フィラリア症治療薬の供給国数と供給量
(2016年6月時点)
23 6.6
カ国
億錠
開発途上国・新興国の
「将来」
に投資する
医薬品へのアクセスは、国籍や経済格差、社会地位を
将来の成長に導く長期的な投資であるとエーザイは考え
問わず、生きるために不可欠なものです。世界には、疾
ています。この考えに基づき、エーザイは、低コストの
ことができない人々が約20億人*いると言われ、その多
駆使し、独自のビジネスモデルによる様々な取り組みを
患に関する十分な知識もなく、必要な医薬品を入手する
製品供給や官民パートナーシップなどのあらゆる方法を
くは開発途上国・新興国の貧困層の方々です。
継続的に行っています。
そこに住む人々の健康を支え、結果としてその国全体を
*出典:Access to Medicine Indexホームページ
▶ www.accesstomedicineindex.org
開発途上国・新興国における医薬品アクセスの改善は、
46
特集 医薬品アクセス向上への取り組み
リンパ系フィラリア症制圧に向けた取り組み
リンパ系フィラリア症(LF)は蚊を媒介して感染する
(2016年6月時点)
熱帯病です。開発途上国を中心に世界で約12億人が感
またエーザイは、MDAの円滑な実施を支援するため、
染のリスクにさらされていると言われています。
蔓延地域での疾患啓発活動にも協力しています。2015
世界保健機関(WHO)はLFの制圧に向け、蔓延国に
年にはインドネシア初となった国家的LF啓発キャン
おいてMDA(治療薬の集団投与)を行っています。しか
しながら、MDAに用いられる3種類のLF治療薬のうち、
ペーンを後援しました。
「DEC錠」
(ジエチルカルバマジン)は、高品質な製品の
安定供給が世界的に困難な状況にありました。
2010年、エーザイはWHOと、2020年までにエー
ザイが「DEC錠」合計22億錠をWHOに無償で提供する
ことに合意しました。本剤は2013年にWHOの事前認
定(prequalification)を取得し、インド・バイザッグ工
場より製造供給を開始しています。すでにWHOを通じ
蔓延国23カ国に6.6億錠の「DEC錠」が供給されました。
■2020年までの「DEC錠」
供給予定国 ●:既出荷国
WHO 東南アジア地域
●インド ●インドネシア ●ミャンマー ●スリランカ ●東ティモール バングラデシュ ネパール
「DEC錠」
ジエチルカルバマジン
WHO アメリカ地域
●ドミニカ共和国
●ガイアナ
●ハイチ
ブラジル
WHO 東地中海地域
エジプト
連携
エーザイ本社
インド
バイザッグ工場
WHO アフリカ地域
●エリトリア ●ケニア ●マダガスカル
●ザンビア ●ジンバブエ コモロ
サントメ・プリンシペ
ガンビア
WHO 西太平洋地域
●フィジー ●フランス領ポリネシア ●キリバス
●ラオス ●マレーシア
●パプアニューギニア
●フィリピン
●サモア
●ミクロネシア
●ツバル
(2016年6月現在の供給予定)
■医薬品アクセス向上をめざすビジネスモデル
インプット
知的資本
●新薬としての高品質な製品提供
製造資本
●インドのバイザッグ工場
●インド立地のメリットを活かした
低コスト生産体制
社会・関係資本
●WHO との提携
●官民パートナーシップへの参画
財務資本
●原価・販売管理費等の投入
●開発途上国・新興国への長期投資
事業活動(アウトプット)
●リンパ系フィラリア症治療薬
「DEC錠」の無償提供
●患者 様 が 購入しやすい価 格 設 定
(アフォーダブルプライシング)や、
所得別段階的価格設定(ティアー
ドプライシング)による製品提供
(例:インドにおける
「ハラヴェン」
の
提供)
●GHIT Fundや国際的非営利団体
(D N D i、セービ ンワクチン研 究
所)、ブラジルの国立機関などとの
パートナーシップ
(51ページ参照)
アウトカム
知的資本
●エーザイブランドの拡大
●顧みられない熱帯病やマラリアに対する新薬開発
社会・関係資本
●開発途上国・新興国への本格進出
●開発途上国・新興国での健康福祉や
医薬品アクセスの向上
●経済成長や中間所得者層の拡大
自然資本
●医療システムや貧困の改善による
経済活動の効率化
財務資本
●ローマージン・ハイボリューム型での
長期的な利益創出
●疾患啓発活動
●バイザッグ工場の稼働率向上での
原価低減
47
特集 医薬品アクセス向上への取り組み
地球規模の健康問題に挑む研究開発
エーザイは、WHOが定義する顧みられない熱帯病
マ)
、マラリア、結核の新薬創出をめざして様々なプロジェ
(NTDs)
や三大感染症
(マラリア、結核、HIV/AIDS)
の治
クトが進行中です。これらの研究開発活動では、その疾
療薬の研究開発にも積極的に取り組んでいます。
患研究のためのツール・技術や、疾患が蔓延している地
これらの疾患は開発途上国などの貧困層で広く蔓延
域での臨床試験の経験、治験施設とのネットワークなど
していますが、疾患による労働力の低下がまた貧困をも
が必要です。そのため、すべてのNTDs・三大感染症の
たらすという悪循環を引き起こし、国際的な保健課題と
プロジェクトにおいて国際研究機関等とパートナーシッ
エーザイでは、現在、NTDs・三大感染症のうち、シャー
かる国際的なコンソーシアムにも参画するなど、積極的
なっています。
プを構築するとともに、化合物ライブラリーの共有をは
ガス病、
フィラリア症、
リーシュマニア症、
菌腫
(マイセトー
な取り組みを展開しています。
■NTDs・三大感染症新薬開発プロジェクトの状況
初期研究段階
シャーガス病
顧みられない
熱帯病
(NTDs)
フィラリア症
リーシュマニア症
非臨床試験段階
新規治療薬
新規ワクチン
(E6020による免疫活性化) (最適化段階)
NTD治療薬の
創薬コンソーシアム
E1224 シャーガス病
(フェーズⅡ試験)
新規ワクチン
(E6020による免疫活性化)
フィラリア成虫駆虫薬の
開発コンソーシアム
ボルバキア菌阻害剤
NTD治療薬の
創薬コンソーシアム
E1224 真菌性菌腫
(フェーズⅡ試験)
菌腫(マイセトーマ)
マラリア
臨床試験段階
新規治療薬
(スクリーニング段階)
新規タンパク質
合成阻害剤
新規ワクチン
(E6020による免疫活性化)
マラリアGWT-1
阻害剤
三大感染症
SJ733-マラリア原虫
ATP4阻害剤
新規TLR9阻害剤
新規治療薬
(抗アルテミシニン耐性)
結核
結核治療薬の
開発コンソーシアム
2016年6月時点。プロジェクトの詳細はこちらをご参照ください。▶ http://www.eisai.co.jp/company/atm/approach/02.html
アフォーダビリティ
(購入しやすさ)
を追究する価格戦略
エーザイでは、開発途上国・新興国において購入しやす
ん剤
「ハラヴェン」についてティアードプライシング
(所得
様々な方法で実践しています。たとえば、
「アリセプト」
を
シア、タイで導入しており、患者様の所得レベルや保険
い価格で製品を提供するアフォーダブルプライシングを
別段階的価格設定)をフィリピン、香港、インド、マレー
インドやインドネシアなどで各国の生活水準に最適化し
加入状況などに応じて薬剤費用の負担が段階的に軽減さ
た価格で提供するなど、開発途上国・新興国の医療経済
れ、条件によっては全額無償になるシステムを採用して
状況を考慮した価格戦略を推進しています。また、抗が
います。
48
特集 医薬品アクセス向上への取り組み
2015年度の活動ハイライト
1.LF制圧活動の鍵を握る、診断キットの改善に貢献
WHOのLF制圧活動では、
治療薬のMDA
(47ページ参照)
が行われます。LF診断キットは、
MDAの進捗状況
(治療成果)
を把握し今後の計画を定めるために極めて重要ですが、蔓延国では、検査環境の整った先進国の診断キットの使用は現
実的ではなく、より現地の事情に合ったキットの開発が求められていました。
そこでWHOは、製薬企業およびビル&メリンダ・ゲイツ財団とパートナーを組み、新しいキットの開発と蔓延国で
の無償提供を推進するプロジェクトを開始しました。
エーザイは本プロジェクトで、当社事業により培ったノウハウを提供しており、今後は本診断キットをWHOが蔓延
国において無償提供するための経済支援も行っていきます。
2.NTDs蔓延国のキャパシティビルディング
エーザイは、NTDs蔓延国において医療基盤を整備することを目的に、キャ
パシティビルディング
(人材開発)
を支援しています。
2015年には、国際学生インターンシップを支援するNPO・AIESECと連携し、
インドネシアの医学生の研修受け入れを行いました。
研修では、医学生を日本の本社部門、生産施設、探索研究所などに案内し、エー
ザイの医薬品アクセス改善に向けた取り組みや、創薬研究開発のプロセス、途
上国におけるアフォーダブルプライシングの取り組みなどを紹介しました。
3.真菌性菌腫の治療薬開発に向け、DNDiと共同開発契約を締結
真菌性菌腫は、アフリカを中心に蔓延するもっとも顧みられない病気の一つです。皮膚から真菌が体内に侵入し、進
行すると手足に大きな腫瘍を発する病気で、重度の場合は切断手術が必要になることもあります。発症経路は解明され
ておらず、治療薬も高価な上、安全性や有効性の面で問題があり、新しい治療薬が求められています。
エーザイは、国際非営利団体・Drugs for Neglected Diseases initiative (DNDi )と、当社創製の抗真菌剤「ホスラ
ブコナゾール」について共同開発契約を締結しました。本剤は、DNDi の非臨床研究において真菌性菌腫に対する強い抗
真菌作用を示すことが確認されています。
4.マラリアの新規治療薬開発を目的とした2つの共同研究契約を締結
2015年、エーザイと英国のリバプール熱帯医学校(Liverpool School of Tropical Medicine)ならびにリバプール
大学(University of Liverpool)は、リバプール熱帯医学校とリバプール大学とが共同で創製した新規抗マラリア薬の候
補化合物であるE209の前臨床試験を実施する共同研究契約を締結しました。E209は、速効性に優れ、耐性が問題となっ
ているアルテミシニン系の抗マラリア薬で効果がみられない患者様に対しても有効性を示すことが期待されています。
一方、非営利官民パートナーシップであるMedicines for Malaria Venture(MMV)とエーザイは、抗マラリア薬の
候補化合物の特定を行う共同研究を開始しました。本研究は、既存薬に耐性を持つマラリア原虫に対する効果とともに、
再発防止および蚊への伝播防止を目的とした新しい作用機序を持つ治療薬の創出をめざしています。
INTERVIEW
WHOのLF診断キット開発プロジェクトに関わって
日本の臨床検査ではよく低温保存の試薬を使いますが、LFの蔓延地域での低温輸送は
難しく、当初、WHOは診断薬会社と温度管理が不要な試験紙を使った診断キットの開発
を進めていました。しかし現地で試作品を試した結果、
「小型化で検査情報を書き込むス
ペースが減った」
、
「野外での検査で試験紙が風に飛ばされる」
等の問題が見つかりました。
そこで、当時の部署の仲間と提案したのが、軽量・安価な紙製の被験者情報シールと
検体管理トレーです。被験者名や検査結果等を直接書き込めるシールは、試験紙
(検体)
と
一緒にトレーに貼りつけられ、特別な容器を使わず簡単に検体を管理できます。
より現場に即した診断キットの開発は、MDAの進捗状況を正しく把握する上で大変重要
高橋 健太郎
です。我々の提案が採用されたのは大きな喜びで、多くの患者様への貢献につながってほ hhcデータクリエーションセンター
データサイエンスラボ 東京室
しいと思います。
❷
❶
エーザイが WHO に提案した LF 診断キット。シー
ル (①)に被験者の名前と検査結果を書き込み、試
験紙 (検体)と一緒にトレー(②)に貼りつけられる。
試験紙
49
社会・関係資本
エーザイのパートナーシップ展開
パートナーシップの有効活用による効率性・生産性の向上
エーザイでは、パートナーシップはビジネ
スの効率性・生産性を向上する上で極めて有
テクノロジーベスト
パートナーシップ
リージョナルベスト
パートナーシップ
効な手段と考えています。エーザイが展開して
いるパートナーシップモデルは多岐にわたり
ますが、最先端のサイエンスや技術を最大限
リージョン
マーケティング
強化
新薬創出
に活用することを目的とした「テクノロジーベ
スト パートナーシップ」と、各リージョンでの
リソースの効率的活用と製品価値最大化を目
的とした「リージョナルベスト パートナーシッ
プ」の2つに大別されます。エーザイは、今後
もパートナーシップを有効に活用し、グローバ
医薬品
アクセス
拡大
ルに患者様満足の増大を追究していきます。
(※下記契約内容は2016年5月末時点の情報)
主なテクノロジーベスト パートナーシップ
新薬創出に向けたパートナーシップ
ニューロロジー領域
オンコロジー領域
Biogen Inc.
(米国)
Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A. (米国)
1.BACE阻害剤「E2609」、および抗ベータアミロイド(Aβ)プロトフィ
ブリル抗体
「BAN2401」に関する共同開発・共同販促契約
抗がん剤
「レンビマ」
(一般名: レンバチニブ)
および
「ハラヴェン」
(一般名:
エリブリン)と、Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A. の抗PD-1
抗体
「ペムブロリズマブ」
との併用療法に関する研究提携契約
2.Biogen Inc.開発のアルツハイマー型認知症治療剤抗Aβ抗体
「aducanumab(BIIB037)」および抗タウ抗体の共同開発・共同販促に
関するオプション権の取得
BioArctic Neuroscience AB(スウェーデン)
抗Aβプロトフィブリル抗体「BAN2401」の全世界におけるアルツハイマー
型認知症を対象とした研究・開発・製造・販売に関する独占的ライセンス契約
Halozyme Therapeutics Inc.(米国)
「ハラヴェン」とHalozyme Therapeutics Inc.のPEG化遺伝子組換えヒ
ト型ヒアルロン酸分解酵素「PEGPH20」との併用による臨床試験提携契
約(進行性HER2 陰性乳がんに対するファーストライン治療の臨床試験)
Purdue Pharma L.P.
(米国)
HUYA Bioscience International, LLC
(米国)
オレキシン受容体拮抗剤「lemborexant」
(「E2006」)に関するグローバ
ルな共同開発・共同販促契約
ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤
「HBI-8000」
に関する、
日本、
韓国、
タイ、
マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナムおよびシンガポール
における独占的な開発、販売に関する契約
JCR ファーマ株式会社(日本)
Epizyme, Inc.
(米国)
血液脳関門通過に関する技術「J-Brain Cargo」の治療薬創製をめざした
フィージビリティー試験に関する契約
エピジェネティック酵素EZH2をターゲットとする遺伝的起因によるリ
ンパ腫やその他のがん治療に関する研究、開発、販売に関するグローバ
ルな戦略的提携
シスメックス株式会社(日本)
認知症領域に関する新たな診断薬創出に向けた非独占的包括契約
PRISM BioLab
(日本)
CBP/カテニン阻害剤と類縁化合物に関する共同研究開発契約
50
主なリージョナルベスト パートナーシップ
リージョンマーケティング強化のためのパートナーシップ
BIAL-Portela & Ca, S.A.
(ポルトガル)
味の素株式会社
(日本)
神経領域
その他 日本
エーザイの消化器疾患領域事業と味の素製薬株式会社の統合(吸収分割)
に関する統合契約
(EAファーマ株式会社の設立)
Orion Corporation
(フィンランド)
Arena Pharmaceuticals, Inc.
(スイス)
神経領域
欧州
抗てんかん剤「Zebinix」
(一般名:エスリカルバゼピン)の欧州における販
売ライセンスおよび共同販促契約
がん領域
グローバル
神経領域
中国
乳がん治療剤「Fareston」
(一般名:トレミフェン)とパーキンソン病治療剤
肥満症治療剤
「BELVIQ」
(一般名:lorcaserin)
の韓国、
台湾、
オーストラリア、
「Eldepryl」
(一般名:セレギリン)の中国における包括的販売提携
ニュージーランド、イスラエルを除く全世界における独占的販売供給契約
AbbVie Deutschland GmbH & Co. KG
(ドイツ)
医薬品アクセス拡大に向けたパートナーシップ
その他 日本、台湾、韓国
世界保健機関(WHO)
(スイス)
ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体注射剤
「ヒュミラ」
(一般名:アダリム
マブ)
の日本、台湾および韓国における開発、販売、および共同販促契約
リンパ系フィラリア症治療薬「DEC錠」
(ジエチルカルバマジン)の無償提
供に関する契約、およびリンパ系フィラリア症診断キットの無償提供に
関するパートナーシップへの参画
Novartis AG
(スイス)
神経領域
がん領域
世界知的所有権機関(WIPO)
(スイス)
グローバル
1.抗てんかん剤
「イノベロン/Banzel」
(一般名:ルフィナミド)の全世界に
おける開発および製造・販売に関するライセンス契約
2.米国内での「レンビマ」と「エベロリムス」の進行性腎細胞がんに対する
併用療法に関するNovartis Pharmaceuticals Corporation(米国)と
の共同販促契約
同機関が主催する、熱帯病などの新薬開発促進をめざしたコンソーシア
ムへの参画
グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)
(日本、公益社団法人)
開発途上国特有の感染症の新薬創出における日本の貢献を支援する官民
パートナーシップへの参画
大日本住友製薬株式会社
(日本)
神経領域
Drugs for Neglected Diseases initiative(DNDi (
)スイス、非営利研究機関)
欧州、アジア
1.シャーガス病および真菌性菌腫の新薬開発に関する提携およびライセ
ンス契約
2.リーシュマニア症とシャーガス病の新薬開発をめざしたコンソーシア
ム「顧みられない熱帯病に対する創薬ブースター」への参画
抗てんかん剤「Zonegran」
(一般名:ゾニサミド)の欧州、アジアにおけ
る製造・販売に関するライセンス契約
Pfizer Inc.(米国)
神経領域
日本
Medicines for Malaria Venture(MMV)
(スイス、非営利官民パートナーシップ)
疼痛治療剤
「リリカ」
(一般名:プレガバリン)
の日本における共同販促契約
新規抗マラリア薬開発に向けた共同研究契約
Sunovion Pharmaceuticals Inc.
(米国)
神経領域
リバプール熱帯医学校(英国)、リバプール大学(英国)
日本
1.ボルバキア菌阻害剤
(新規フィラリア駆虫薬)
創出に向けた共同研究契約
2.新規抗マラリア薬開発に向けた共同研究契約
不眠症治療薬「ルネスタ」
(一般名:エスゾピクロン)の日本における独占
的な開発および販売に関するライセンス契約
St. Jude Children's Research Hospital
(米国)
株式会社ミノファーゲン製薬
(日本)
Medicines for Malaria Venture(MMV)
(スイス、非営利官民パートナーシップ)
その他 アジア
新規抗マラリア薬開発をめざす共同研究契約
肝臓疾患用剤・アレルギー用薬「強力ネオミノファーゲンシー」
(グリチル
リチン酸、
配合剤)
および「グリチロン」
(グリチルリチン酸、配合錠)のユー
ロアジア地域の未発売国における独占的な開発・販売権ならびに中国を
含むユーロアジア地域の既販売国における独占的な販売権の優先交渉権
取得のライセンス契約
Broad Institute
(米国)
シャーガス病およびマラリアに対する新規治療薬開発をめざす共同研究契約
セービンワクチン研究所
(米国)
シャーガス病に対する新規ワクチン開発をめざした共同研究契約
Helsinn Healthcare S.A.
(スイス)
がん領域
オズワルドクルス財団
(ブラジル、国立研究機関)
米国、カナダ
エーザイ創製化合物についての、マラリアおよび顧みられない熱帯病の
制吐剤
「Aloxi」
(一般名:パロノセトロン)の米国・カナダにおけるライセン
ス契約
(2008年1月28日付MGIファーマ社買収に伴う承継)
新薬開発をめざした共同研究開発契約
Tuberculosis Drug Accelerator(TBDA)
(国際的パートナーシップ)
シンバイオ製薬株式会社
(日本)
がん領域
結核に対する革新的な創薬をめざす国際的パートナーシップへの参画
日本、シンガポール、韓国
Macrofilaricide Drug Accelerator (国際的パートナーシップ)
1.抗がん剤
「トレアキシン/Symbenda」
(一般名:ベンダムスチン)の日本
における共同開発および販売に係る独占的ライセンス契約
2.シンガポールおよび韓国の2カ国を対象とした開発・販売に係る独占的ラ
イセンス契約
フィラリア症(特に河川盲目症)の治療薬開発をめざしたパートナーシッ
プへの参画
51
社会・関係資本
社会的責任への取り組み
社会貢献活動
エーザイは、
製品を通した患者様への貢献はもちろんのこと、
よき企業市民として広く社会の皆様の信頼獲得に努めています。
医学の発展に寄与する活動や地域社会との交流など、事業活動を超えて企業理念であるhhc に基づいた様々な社会貢献活動に
積極的に取り組んでいます。
内藤記念くすり博物館
医療科学研究所
1971年に創業者の内藤豊次によって創設された内藤記念
医療および医薬品に関する経済学的調査・研究、研究開発
くすり博物館(岐阜県)は、日本初の医薬に関する総合的な博
や生産・流通などについての調査・研究を行い、学際的な研
物館として、収蔵資料65,000点、収蔵図書約62,000点の
究・調査を推進することで、わが国の医療と福祉の発展に寄
うち約2,000点を無料で公開しています。併設する薬用植物
与することを目的とし、エーザイ創業50周年記念事業の一
園では、700種類の薬草・薬木の育成に加え、生物多様性の
環として、1990年に設立されました。研究成果を機関誌『医
保存に向け、絶滅危惧種の薬草50種類も栽培し、一般公開
療と社会』に発表するほか、研究会やシンポジウムを開催し、
しています。2015年度は延べ36,325人の方々が来館され
専門家によるディスカッションの場を提供しています。
ました。
▶ http://www.iken.org/
エーザイhhc ホットライン
患者様・生活者そして医療関係者の皆様方へ、365日年中
無休・フリーダイヤルでお問い合わせ対応しています。エー
ザイ製品の有効性、安全性などをご説明するとともに、貴重
なお問い合わせ情報を社内で共有し、患者様、医療関係者の
皆様の潜在的な想いにお応えするために、様々な取り組みを
行っています。
▶ http://www.eisai.co.jp/inquiry/product/hotline.html
▶ http://www.eisai.co.jp/museum/
「くすり博物館オレンジカフェ」
新規オープン
内藤記念科学振興財団
認知症の患者様やそのご家族、地域の皆様が集う「くすり
創業者の内藤豊次とエーザイの寄付をもとに1969年に設
博物館オレンジカフェ」
を、2016年7月21日に内藤記念くす
立されました。疾病の予防と治療に関する自然科学の基礎的
り博物館内にオープンしました。コンセプトは“認知症を通
研究を奨励し、学術の振興および人類の福祉に寄与すること
じて集まった方々誰もが笑顔であふれ、元気で心豊かになれ
を目的に、毎年第一線で活躍する研究者に対し助成金などを
る場所”
です。
贈呈しています。2015年度は、科学振興賞と科学奨励金な
どなたでも無料でご利用いただけるカフェで、毎月21日
ど総件数262件、総額5億4,710万円の褒賞および助成金が
に開催し、おいしいコーヒーを飲みながら話をし、やすらげ
贈呈されました。
る憩いの場をめざしています。脳のトレーニング体操や音楽
▶ https://www.naito-f.or.jp/jp/index.php
会、映画上映などのイベントも行います。
10月からは、エーザイ社員もカフェに参加し、多様な参
加者との対話を通じ、認知症の患者様とそのご家族のベネ
フィット向上に貢献いたします。
52
製品の安全性と副作用への対応
医薬品の安全性と副作用情報
医薬品は、リスクとベネフィットを正しく理解した上で適正に使用されることにより、その価値を最大限に発揮することが
できます。ファーマコビジランス(医薬品安全性監視)は、世界保健機関
(WHO)により
「医薬品の有害な作用または医薬品に関
連する諸問題の検出、評価、理解および予防に関する科学と行動」と定義され、医薬品のリスクとベネフィットのバランスを
正しく評価するために欠かせません。
エーザイでは、医薬品の開発早期段階から市販後までを通して、製品の安全性情報を世界中で絶えず収集・評価し、製品情
報をタイムリーにアップデートして、医療関係者や患者様などに提供することにより、世界各国におけるエーザイ製品の適正
な使用に努めています。
グローバルでの安全情報管理体制
エーザイでは製品ごとの安全性医学評価の責任者および主要地域の安全管理責任者等で編成するGlobal Safety Boardを中
心に、製品のグローバルなファーマコビジランス体制を確立しています。世界各国の医療・薬等の最新規制を考慮した医薬品
安全性に関する課題の議論を通して、グローバルで統一した製品安全性プロファイルを定め、製品の適正使用の徹底に向け、
対応しています。
日本での医薬品リスク管理計画
(J-RMP)
「医薬品リスク管理計画」
(Risk Management Plan:以下、RMP)は、個々の医薬品について安全性上の検討事項を特定し、
使用成績調査や市販直後調査等による安全性監視活動、また医療関係者の皆様への追加の情報提供などを通しての医薬品のリ
スクを低減するための取り組みを、医薬品ごとに文書化したものです。当社では、2013年よりJ-RMPを作成し、医薬品の適
正使用を推進しています。
偽造医薬品への対応
医薬品の開発ならびに流通のグローバル化が著しく加速する中、偽造医薬品のリスクが開発途上国や新興国にとどまらず、
先進国においても高まっていることが報告されています。エーザイでは、通常の品質保証活動に加えて医薬品が安全かつ確実
に患者様のお手元に渡るよう、グローバルなプロダクトセキュリティー活動を推進しています。規制当局、業界他社および業
界団体と連携して偽造医薬品・違法流通の監視や発生防止対策に積極的に取り組み、具体的な事例が検知された場合にはプロ
ダクトセキュリティー執行委員会を中心に、調査、法的措置、安定供給の確保など、迅速な対応をはかります。
また、偽造医薬品や違法な流通を経た医薬品が医療現場に提供されることを防止するためには、医薬品流通の実態をより的
確に把握し、医薬品の適正かつ安全な供給と使用をはかる必要があります。そのため、医薬品流通のトレーサビリティー(履
歴管理)を確保する取り組みが世界各地で展開され、一部の国/地域ではすでに規制化されています。エーザイではこうした規
制当局、製薬企業、医療現場による取り組みに積極的に参加すると同時に、中国やインド等の規制にはいち早く対応しています。
また今後、社会基盤としてのトレーサビリティーシステム導入が予定されている欧米では、各地域で社内プロジェクトを立ち
上げ、遅滞なく対応できるように準備を進めています。
社会的評価
エーザイは以下の世界的な「社会的責任投資(SRI)インデックス」
に選定されています。
(2016年7月現在)
Dow Jones
Sustainability Asia Pacific Index
●
●
FTSE4Good
●
53
モーニングスター社会的責任投資株価指数
(MS-SRI)
自然資本
地球環境に配慮した事業活動
エーザイでは、地球環境との調和をめざした事業活動を展開しています。
「エーザイ・ネットワーク企業
(ENW)
環境方針」に
基づき、全社員が環境保全の重要性を認識し、環境面からも社会的課題の解決に努めています。 今日、環境問題の多くは、社会の存続に大きな影響を及ぼすグローバルな課題として捉えられています。世界各国への事業
活動拡大を推進する中、ビジネスの各段階において環境負荷低減に努め、社会的責任を果たしていきます。
環境マネジメント
エーザイでは、全社環境安全委員会を設置し、環境保全に関連した重要事項の審議・決定を行っています。これまで国内を
対象とした議論が中心になっていましたが、海外からの議題を含めグローバルな活動を推進しています。また、国内グループ
企業の環境保全活動を推進する協議機関として国内ENW環境安全協議会を設け、情報の共有や活動に関する議論を進めてい
ます。
また、2015年度における会社法の改正に基づき、国内外における環境面からのリスク把握やその低減対策の確立に向けた
活動を強化しています。監査専門組織による環境関連の内部監査も定期的に行っており、課題の発見・解決に努めています。
低炭素社会形成への取り組み
エーザイでは、気候変動問題解決に向け低炭素社会形成の取り組みを進めています。エーザイ株式会社として日本製薬団体
連合会の低炭素社会実行計画に参画しており、国内グループとしても中期的なCO2排出量削減計画を定めて取り組んでいます。
近年、事業活動の再編に伴い国内外におけるCO2排出量は低下傾向にあります。今後、グローバルな事業活動が進展した場
合にも、海外主要生産拠点における省エネルギーや自然エネルギーの利用などによるCO2排出量削減に努め、低炭素社会形成
に貢献していきます。
■国内グループのCO2排出量*1
■エーザイのCO2排出量*3
(CO2/t)
(CO2/t)
120,000
100,000
80,000
180,000
国内グループ企業
エーザイ株式会社
160,000
100,530
91,742 92,641
91,558
81,096 79,410 82,026
140,000
120,000
*2
75,942
73,446
146,433
123,099
155,658
161,918 164,031
139,596
131,263
123,443
100,000
60,000
80,000
60,000
40,000
40,000
20,000
0
海外グループ
国内グループ
20,000
0
2005 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015
(年度)
*1 業務用車両由来の排出を除く
*2 2014年度のCO2排出量は排出係数の確定により再算出しています。
2008
2009
2010
2011
2012
2013
*3 海外オフィスの活動および業務用車両由来の排出を除く
54
2014
2015
(年度)
6,785
7,412
6,558
6,288
6,000
5,140
0.5
3,000
循環型社会形成への取り組み
0
2009
2010
2012
2011
1.0
2013
自然 資 本
0.0
(年度)
2015年度、国内グループでは、廃棄物発生量に対する最終埋立量の比率を1%以下とするゼロエミッションを8期連続で
達成しました。同時に「廃棄物発生量削減、リサイクル率向上、最終埋立量の削減」を目標に掲げ廃棄物処理を進めており、分
別廃棄の徹底やより優良な処理委託業者の選定も適宜行っています。また、有価売却を伴うリサイクル処理に取り組んでおり、
処理コストの削減をはかっています。今後も、循環型社会形成に向け廃棄物削減の取り組みに注力していきます。
■廃棄物発生量と最終埋立率の推移
(t)
10,000
9,000
(t)
(%)
廃棄物発生量
2.5
最終埋立率(最終埋立量/廃棄物発生量)
リサイクル量
(有価物を含む)
6,000
2.0
7,410
6,555
5,000
4,783
43.3
6,280
4,917
2,000
0.79
0.77
*
0.35
2010
2,518
1.0
3,481
0.50* 0.50
2012
2013
3,371
32.0
2,973
2,255
3,121
29.0
30
27.3
20
2,000
0.28
2011
40
35.9
1,575
1,000
0
50
3,000 2,841
4,001
0.45
50.6
48.3
4,826
34.0
*
4,000
リサイクル率 57.7
4,076
1.5
3,000
50.3
4,000
6,000
5,000
49.7
(%)
60
リサイクル量
リサイクル率
(有価物を含む)
56.3
8,000
7,000
■有価物を含むリサイクル量の推移
2014
0.5
0.0
2015
1,104
1,000
0
2010
(年度)
2011
2012
2013
2014
1,011
10
0
2015
(年度)
*再集計によりデータを見直しました。
水資源の有効利用
近年、気候変動等の環境変化により
深刻な水不足に陥る地域が世界中で増
加しており、水資源を有効に活用する
ことの重要性が年々高まっています。
水資源の十分な確保は、高品質な医薬
品の生産にとって必要不可欠であり、
■エーザイの水使用量と排水量の推移
(千m3)
4,500
4,000
3,500
エーザイでは、工場・研究所から排出
される水の品質確保に努めると同時に、
使用量削減の取り組みも進めています。
節水意識を持ち、工業用水の使用量削
減や排水の再利用などを行っています。
また、
国内グループの工場・研究所では、
水質汚濁防止法に対応し、地下水汚染
防止の仕組みを整備しています。
水使用量
排水量
3,820
3,786
3,562
3,225
2,948
3,000
3,125
3,388
3,314
2,684
2,716
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
2011
2012
2013
2014
2015
環境活動のより詳細な情報は、『環境報告2016』
をご参照ください。▶ http://www.eisai.co.jp/social/esreport/index.html
55
(年度)
財務資本
連結財務ハイライト 2015年度の実績 億円
財務指標
(IFRS)
2015年度 2014年度 2013年度
<損益計算書項目>
(参考資料)
億円
財務指標
(日本基準)
2013年度 2012年度 2011年度 2010年度 2009年度 2008年度 2007年度 2006年度
<損益計算書項目>
売上収益
5,479
5,485
5,995
売上高
6,004
5,737
6,480
7,689
8,032
7,817
7,343
6,741
売上原価
1,945
1,936
1,947
売上原価
1,882
1,741
1,734
1,678
1,607
1,525
1,188
1,093
売上総利益
3,535
3,549
4,048
売上総利益
4,122
3,996
4,746
6,011
6,424
6,293
6,155
5,648
研究開発費
1,223
1,319
1,363
研究開発費
1,305
1,204
1,251
1,450
1,791
1,561
2,254
1,083
販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費
2,105
2,087
2,537
3,430
3,769
3,814
3,723
3,512
営業利益
711
705
957
1,131
864
918
177
1,053
経常利益
649
656
900
1,052
797
826
189
1,105
当期純利益
(△損失)
330
483
585
674
403
477
△170
706
1,928
1,945
2,033
その他の収益
177
10
41
その他の費用
41
11
28
519
283
664
営業利益
当期利益
550
435
385
当期包括利益
165
1,142
845
<キャッシュ・フロー 計算書項目>
営業活動による
キャッシュ・フロー
投資活動による
キャッシュ・フロー
財務活動による
キャッシュ・フロー
フリー・
キャッシュ・フロー*1
<キャッシュ・フロー 計算書項目>
760
913
営業活動による
キャッシュ・フロー
857
732
906
1,232
1,079
1,050
732
812
△67 △△188
209
投資活動による
キャッシュ・フロー
262
217
△26
△588
△698
△550 △4,764
△552
△597 △1,151
財務活動による
キャッシュ・フロー
△1,148
△818
△780
△680
△492
△310
3,754
△406
664
545
714
1,003
529
593 △4,159
286
956
△729
811
604
794
フリー・
キャッシュ・フロー*1
*1 フリー・キャッシュ・フロー=
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
−
(資本的支出等
(キャッシュベース)
)
<貸借対照表>
<財政状態計算書>
資産
9,740 10,538
9,738
総資産
9,455
9,902 10,047 10,463 11,019 11,482 11,239
7,921
親会社の所有者に
帰属する持分
5,737
5,263
自己資本
5,068
4,694
5,525
5,987
56
4,168
4,042
4,159
4,280
4,489
財務資本
連結財務ハイライト 2015年度の実績 (参考資料)
経営指標
(IFRS)
研究開発費比率(%)
2015年度 2014年度 2013年度
22.3
24.1
22.7
ROE(親会社所有者帰属持分
当期利益率/%)
9.4
7.7
7.6
ROA(総資産
当期利益率/%)
5.4
4.3
3.9
親会社所有者
帰属持分比率
(%)
58.9
56.8
54.0
*1
負債比率
(Net DER/倍)
0.01
0.06
7.3
経営指標
(日本基準)
研究開発費比率
(%)
2013年度 2012年度 2011年度 2010年度 2009年度 2008年度 2007年度 2006年度
21.7
21.0
19.3
18.9
22.3
20.0
30.7
16.1
ROE(自己資本利益率/%)
6.8
10.9
14.3
16.4
9.6
10.9
△3.4
13.2
ROA(総資産利益率/%)
3.4
4.8
5.7
6.3
3.6
4.2
△1.8
9.2
自己資本比率
(%)
53.6
47.4
41.5
38.6
37.7
37.3
39.9
69.7
0.14
負債比率
(Net DER/倍)
0.14
0.27
0.38
0.49
0.62
0.63
0.64
-
7.6
8.5
DOE
(純資産配当率/%)
8.8
9.6
10.4
10.4
10.1
9.1
7.4
6.4
78.0
99.0
111.8
DPR(配当性向/%)
129.8
88.6
73.1
63.4
105.9
83.7
-
48.4
基本的EPS
(1株当たり
当期利益/円)
192.2
151.6
134.1
EPS(1株当たり
当期純利益/円)
115.6
169.4
205.3
236.5
141.6
167.3 △59.8
247.8
DPS(1株当たり
配当金/円)
150.0
150.0
150.0
DPS(1株当たり
配当金/円)
150.0
150.0
150.0
150.0
150.0
140.0
120.0
DOE(親会社所有者帰属
*2
持分配当率/%)
DPR(配当性向/%)
130.0
*1 負債比率
(Net DER)
=
(有利子負債
(社債及び借入金)
−現金及び現金同等物−3カ月超預金等)
÷親会社の所有者に帰属する持分
*2 DOE
(親会社所有者帰属持分配当率)
=DPR
(配当性向)
×ROE
(親会社所有者帰属持分当期利益率)
損益計算書
2015年度の売上収益は、抗がん剤「ハラヴェン」、「レンビマ」および抗てんかん剤「フィコンパ」が拡大するとともに、中国、アジ
ア医薬品事業が高い成長を継続した一方、日本医薬品事業における長期収載品がジェネリック医薬品との競合等により減少し、全
体では5,479億22百万円(前期比0.1%減)となりました。
領域別には、オンコロジー領域製品で「ハラヴェン」が伸長したほか、米国、欧州、日本およびアジアで新発売した「レンビマ」が
順調な立ち上がりを示し、オンコロジー領域全体では、1,185億1百万円(同20.1%増)となりました。てんかん領域製品では、
「フィ
コンパ」が米国、欧州、アジアで伸長し、てんかん領域全体では376億94百万円(同19.0%増)となりました。
セグメント別には、中国医薬品事業が前期から20.2%増加して高い成長を維持したほか、アジア医薬品事業においても、韓国や
台湾などの主要国で伸長するなど、すべての海外セグメントで増収を果たしました。
営業利益は、グローバルブランドや中国、アジア医薬品事業などの高い成長による医薬品事業の売上収益・利益の拡大に加え、費
用効率化、子会社株式や固定資産の譲渡による売却益、および開発品に関する共同開発・共同販促契約に伴う契約一時金受領により、
519億35百万円(前期比83.3%増)となりました。当期利益は、営業利益の増加に加え、米国における子会社株式譲渡等に伴う税金
費用の減少により、550億45百万円(同26.7%増)となりました。
財政状態計算書
2015年度末の資産合計は、米国の工場譲渡や減価償却に伴う有形固定資産の減少、販売権の償却による無形資産の減少等により、
9,739億87百万円(前期末より798億31百万円減)となりました。
負債合計は、社債の償還や営業債務およびその他の債務の減少により、3,971億59百万円(前期末より545億98百万円減)となり
ました。
資本合計は、前期末からの為替換算差額の減少に伴い、5,768億28百万円(前期末より252億33百万円減)、親会社所有者帰属持
分比率は58.9%(同2.1ポイント増)となりました。また、負債比率(Net DER)は0.01倍(同0.05ポイント減)となりました。
57
財務資本
財務戦略
財務戦略マップ
■持続的な株主価値最大化のための財務戦略マップ* 1
インベスター・リレーションズ
財務戦略
ROE マネジメント
配当方針
・シグナリング効果
・ケータリング効果*3
・B/Sマネジメント
*2
最適資本構成に基づく
配当方針
KPI=8% DOE model
・マージン:FAM*4/M&A/
BDパートナー / 税務ポリシー
・レバレッジ
・ターンオーバー:CCC*5/GCMS*6
投資採択基準:VCIC
・NPV & IRR
・リスク調整後ハードルレート
(RAHR)
資本コスト
最適資本構成
トレード・オフ理論
格付け A 格レベル
ネット DER≦0.3
*7
IR 活動による
資本コストの低減
ペッキング・オーダー理論
資本コスト 8%
エクイティ・スプレッド
PBR=PER×ROE
株主価値の最大化
*1『企業価値を高めるための財務会計リテラシー』日本経済新聞出版社
(2016)
*2シグナリング効果:配当政策により経営者の将来収益予測に対する考え方が株価に影響をもたらすこと
*3ケータリング効果:配当を選好する株主の期待に応えることで株価に影響をもたらすこと *4 FAM:Fixed Asset Monetization(固定資産の現金化)
*5CCC:Cash Conversion Cycle
(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)
*6 GCMS:Global Cash Management System
(グローバル・キャッシュ・マネジメント・システム)
*7トレード・オフ理論:負債調達による限界的な便益と企業の倒産リスクが均衡する最適資本構成を求める理論
エーザイでは、持続的に株主価値を最大化するための財務戦略マップを策定しています。この戦略は、
「ROEマネジメント」
「投
資採択基準:VCIC」
「配当方針」
の3つの柱で構成されています。
「ROEマネジメント」
では、売上収益利益率
(マージン)
、財務レバレッジ、総資産回転率
(ターンオーバー)
を改善することによ
り、中長期的にグローバル水準のROEおよびエクイティ・スプレッドをめざしています。また、持続的に企業価値を最大化する
ために戦略投資を実行しますが、その際にはリスク調整後ハードルレートを用いた正味現在価値(NPV)と内部利益率(IRR)スプ
レッドに基づく
「投資採択基準:Value-Creative Investment Criteria
(VCIC)
」
により価値創造を担保していきます。
原則として、
リスク調整後ハードルレートを用いて評価した成功確率調整後の正味現在価値がポジティブである投資のみを採択します。
リスク調整後ハードルレートの設定方法
リスク調整後ハードルレート=リスクフリーレート+β×リスクプレミアム(+流動性プレミアム)
- リスクフリーレート:各国別10年国債の過去5年平均利回り
- β(ベータ):投資カテゴリーに応じて設定(リスク特性)
また、
「配当方針」では、2016年度も大多数の株主様のご要望でもある150円配当を維持し、株主価値を堅守することを予
定しています。中長期的な成長への経営陣の自信を示すアナウンスメント効果、つまり
「シグナリング効果」
も勘案しています。
エーザイの資金調達方針は、ペッキング・オーダー理論に基づいております。ペッキング・オーダー理論とは、企業が資金
を調達する際の調達手段の優先順位として「内部留保の再投資を主とする内部資金調達」
、次に
「負債による資金調達
(デット)」、
最後に「株式の新規発行による資金調達(エクイティ)
」の順にするという理論です。当社では、グローバル・キャッシュ・マネ
ジメント・システムを導入しており、グループ企業間での資金の有効活用に努めています。また、負債による資金調達におい
ては、デットキャパシティとして2,000億円を確保しています。よって、資金調達の手段としては、原則として内部資金調達
および負債が優先であり、エクイティによる資金調達は最終手段として考えています。
58
財務資本
財務戦略
Strong Balance Sheet
エーザイでは、
「戦略投資」
と
「安定配当」
を支えるための健全な財務状況、すなわち
「Strong Balance Sheet」
を維持しています。
2015年度末において、Net DERは0.01倍まで改善しました。また、親会社所有者帰属持分比率は約59%となっています。デット
キャパシティ
(負債調達能力)は約2,000億円であり、戦略投資を十分に賄える水準となっています。配当政策については、短期的
な業績による配当性向よりも長期的なバランスシートマネジメントによる
「最適資本構成に基づく最適配当政策」
を基本にしており、
その観点から配当のKPI*はDOEを採択し、DOE8%レベルで150円の安定配当は可能です。
エーザイでは、こうした
「Strong Balance Sheet」
によって戦略投資と安定配当を両立し、グローバルIR戦略としてタイムリーか
つフェアに情報を開示して投資家の皆様への説明責任を果たし、持続的な株主価値の向上に努めていきます。
*Key Performance Indicators:主要業績評価指標
■Strong Balance Sheet
(億円)
6,000
5,000
4,000
5,192
5,525
4,596
69%
5,987
4,489
69%
70%
0.64
4,841
4,280
0.63
4,159
0.62
4,042
39%
2,000
40%
1,000
0
2,889
37%
38%
2,696
41%
0.38
1,982
2,564
5,263
1,571
48%
57%
54%
2005
年度末
2006
年度末
2007
年度末
2008
年度末
2009
年度末
2010
年度末
2011
年度末
59%
50
0.26
1,259
0.14
0.06
719
2004
年度末
(%)
100
4,168
0.49
3,000
5,737
2012
年度末
2013
年度末
342 0.01
2014
年度末
49
2015
年度末
0
*2
■親会社所有者帰属持分
(左軸)
■ネット有利子負債*1
(左軸)
■親会社所有者帰属持分比率
(右軸)
■負債比率
(Net DER)
(倍)
*2011年度までの実績は日本基準
(J-GAAP)
、2012年度以降の実績は国際会計基準
(IFRS)
*1 ネット有利子負債=有利子負債
(社債及び借入金)
-現金及び現金同等物-3カ月超預金等
*2 負債比率
(Net DER)
: Net Debt Equity Ratio=
(有利子負債
(社債及び借入金)
-現金及び現金同等物-3カ月超預金等)
÷親会社の所有者に帰属する持分
グローバル税務ポリシー
グローバル適正納税の徹底
エーザイでは、グローバル適正納税の徹底を基本第一に、各国における現行の税制へのコンプライアンスを徹底しています。
さらに、OECD・G20諸国の間で国際的な租税回避行為防止のためのフレームワークとなるBEPS行動計画(Base Erosion &
Profit Shifting Action Plan)に対し、先行して対応しています。これらにより、税務ペナルティーや二重課税による企業価値
の毀損リスクを防止しています。
適正納税の推進とガバナンス
エーザイでは全役員および全社員へのコンプライアンスの徹底および監査体制の充実をはかることにより、適正な納税を遵
守しています。具体的には、エーザイ・ネットワーク企業(ENW)各社全従業員に配布する『コンプライアンス・ハンドブック』
に以下の内容を記載し、ENW各社の全役員および全従業員がその内容の遵守を誓約しています。
「ENW各社は、現地の税法に従って正しく納税しなければなりません。記録についての正確性を証明し裏付けるために
足る資料を保管すること、適正な判断基準を定めることが重要となります。虚偽情報の提出、払い戻しまたは精算のため
の帳票の偽造、税務調査の際の虚偽の受け答えや関連する事実の隠蔽は、適正な納税を妨げる行為であり、絶対に行って
はなりません。」
また、エーザイでは社外取締役を委員長とする監査委員会(5名:社外3名、社内2名)を配置しており、取締役および執行
役の職務の執行の監督をはじめ、事業報告およびその付属明細書の監査、計算関係書類の監査を行っています。
税務プランニング
エーザイでは、グローバル適正納税を徹底した上で潜在的な二重課税の排除等に取り組み、総合的に企業価値向上に資する
ことを狙いとした税務プランニングを策定しています。
59
財務資本
中長期的なROE経営
中長期的なROE経営
日本経済の中長期的な成長の観点から機関投資家、企業双方が果たすべき責務の諸原則として、「「責任ある機関投資家」の
諸原則」
(日本版スチュワードシップ・コード)
(2014年2月)
、
「コーポレートガバナンス・コード」
(2015年6月)が策定されま
した。また、経済産業省より持続的な価値創造をめざす「伊藤レポート」
(2014年8月)が公表されました。当レポートでは両原
則に共通する指標としてROEが示され、中長期的なROE経営こそが企業価値創造において重要であることが示唆されています。
これらの影響により、2015年度は日本国内の多くの企業がROE経営を意識し、ROEの改善に取り組んだ年度となりました。
■ROEの分解要素
マージン
ROE
効率的な
オペレーション
による
利益率の改善
=
エクイティ
・スプレッドとは
レバレッジ
財務健全性のため
中期目標
Net DER0.3以下に
コントロールしつつ
財務レバレッジを活用
×
ターンオーバー
×
運転資本管理や
固定資産の
現金化による
資産効率の向上
エクイティ
・スプレッド=ROE−株主資本コスト
(CoE)
※残余利益モデルに基づく株主価値創造の重要指標*1
過去5年:平均ROE10.1%−CoE8%=エクイティ・スプレッド2.1%
過去10年:平均ROE11.4%−CoE8%=エクイティ・スプレッド3.
4%
* 株主資本コストを8%と仮定しています
(リスクフリーレート2%+リスクプレミアム6%)
*1『ROE革命の財務戦略』中央経済社
(2015)
エーザイの「中長期的なROE経営」では、売上収益利益率(マージン)
、財務レバレッジ、総資産回転率(ターンオーバー)を改
善することにより、中長期的にグローバル水準のROEおよびエクイティ・スプレッドをめざしています。
マージンの向上については、引き続きグローバルブランド「レンビマ」
「ハラヴェン」
「フィコンパ」
「BELVIQ」の拡大をめざし
ます。また、効率的なオペレーションを実現し、利益率の改善をはかります。
財務レバレッジの利用については、財務の健全性を確保しつつ最適資本構成を追究します。一方、ターンオーバーの改善と
しては、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)
管理による運転資本のコントロールに加えて、有価証券などの資産売却、
棚卸資産の圧縮などの資産の効率化を積極的に行います。
2016年度は、売上収益および営業利益は前年対比で増収増益となる一方、当期利益は減益と見通していることから、ROE
は低下する見込みです。しかし、中長期的にはニューロロジー領域とオンコロジー領域での地位を確立することによりROEを
向上し、持続的な株主価値の向上を実現したいと考えています。
■ROEの年次別推移[2005年度〜2015年度]
(%)
20
15
*1
16.4
13.0 13.2
10
10.9
14.3
11.4
9.6
5
0
過去 10 年のエクイティ・スプレッド:
過去 10 年の平均 ROE11.4%−株主資本コスト8%=3.4%
過去10年の平均ROE (11.4%)
株主資本コスト(8%)
2005
2006
2008
2009
2010
2011
2012
7.6
2013
9.4
7.7
2014
* 2007年度の実績は、
特殊要因
(MGIファーマ社買収)
の影
響があり、
参考数値として適切な数値ではないため削除
* 2011年度実績までは日本基準
(J-GAAP)
、
2012〜
2015年度実績は国際会計基準
(IFRS)
*1 2007 年度の実績は含まれておりません。
2015(年度)
日本の標準レベルを大きく上回るPBR
株主価値の評価指標の一つとして、PBR
(株価純資産倍率)が挙げられます。PBRは、株価を株主資本簿価に対する付加価値か
ら評価する指標であり、PER
(株価収益倍率)
とROEの積に分解できます。
エーザイでは、成長の訴求とともに2000年代初頭から
「ROE経営」に取り組んでいるため、日本の標準レベルである1倍を安定
的に上回っています。
つまり、会計上の純資産
(簿価)
を上回る市場評価
(時価総額)
となっており、その差額である市場付加価値を中長期的に創出して
います。
■PBRの分解要素
PBR
■PBRの年次別推移(2005年度末〜2015年度末)
=
PER
IR活動により資本コスト低減
と成長ストーリー浸透を
めざす
×
ROE
(倍)
5
マージンの向上
レバレッジの活用
ターンオーバーの改善
知的資本
4
人的資本
3
製造資本
社会・関係資本
2
1
60
0
2005年度末
市場付加価値
自然資本
純資産
(会計上の簿価)
財務資本
2015年度末
財務資本
『資本効率』
と
『非財務資本』
の価値関連性の追究により企業価値の向上をめざす
エーザイでは、資本効率(ROEおよびエクイティ・スプレッド)
と持続可能性
(非財務資本の重要性)
に鑑み、IIRC
(国際統合報告評
議会)
のフレームワーク公表前から、企業理念に基づく
『財務資本』
と
『非財務資本』の価値関連性についてのモデルを提唱しており、
その関連性を追究して企業価値向上をめざしています。
■非財務資本とエクイティ・スプレッドの価値関連性モデル*1
②エーザイの PBR モデル
①Intrinsic Value モデル*2
知的資本
非財務資本
人の価値
マージンの
改善
顧客の価値
資本コスト
の低減
サステナビリティ価値
(ESG/CSR の価値)
株主価値
市場付加価値
(MVA)
株主資本簿価
(BV)
人的資本
製造資本
社会・関係資本
組織の価値
自然資本
財務資本
③残余利益モデル
(RIM)
株主価値 = BV +
エクイティ・スプレッドの現在価値の総和
(MVA)
∑
(
∞
t =1
当期利益 t - CoE × BVt-1
t
(1+CoE)
)
(IIRC のフレームワーク)
残余利益
エクイティ・スプレッド × BV
( ROE - CoE )× BV
(親会社所有者帰属持分
当期利益率)
(株主資本コスト)
*1『ROE革命の財務戦略』
中央経済社
(2015)
*2『企業価値最大化の財務戦略』
同友館
(2009)
「顧客の価値 」
「人の価
①Intrinsic Valueモデルでは、市場付加価値(MVA)=「ESG*1/CSR*2の価値(資本コスト低減効果)」
値」
「組織の価値 」と定義しています。
一方、②エーザイのPBRモデルでは、株主価値=長期的な時価総額=
「株主資本簿価(BV)」
+
「市場付加価値(MVA)」
の前提で、
株主資本簿価(BV)は『財務資本』、そして市場付加価値
(MVA)
は
「知的資本」
「人的資本」
「製造資本」
「社会・関係資本」
「自然資本」
といった『非財務資本』と関連づけてIIRC(国際統合報告評議会)
の6つの資本の価値関連性を説明しています。
また、③残余利益モデル
(RIM)は、
市場付加価値
(MVA)
はエクイティ・スプレッドの現在価値の総和に収斂するとしています。
エクイティ・スプレッドによる価値創造は、ESG*1をはじめとする『非財務資本』の価値と市場付加価値(MVA)創造を経由して
長期的には整合的で相互に矛盾しません。
非財務資本とエクイティ・スプレッドの価値関連性モデルは、『非財務資本』を市場付加価値(MVA)と関連づけたIntrinsic
Valueモデル、エーザイのPBRモデル、そして市場付加価値(MVA)とエクイティ・スプレッドの関連性を示唆する残余利益モ
デル(RIM)の3者が市場付加価値(MVA)創出を介してつながっていて相互補完的であることを示しています。
*1 ESG: Environment(環境)、Society(社会)、Governance(企業統治)
*2 CSR: Corporate Social Responsibility
(企業の社会的責任)
持続的な株主価値向上に向けて
エーザイでは「ROE経営」への取り組みだけでなく、PERの向上にも取り組んでおり、明確な資本政策の提示による株主資本
コストの低減およびタイムリーかつフェアなIR活動に努めています。この点について、2014年6月19日付のSMBC日興証券
の中沢安弘アナリストのレポートにて、「エーザイのPERは業界平均を10%以上上回る。その理由は、明確な資本政策や巧み
なIR活動が投資家に高く評価されているからであり、これをIRプレミアムと呼ぶ」
と報告されています。
引き続き、財務資本の健全性を高めながら、非財務資本の市場付加価値を高め、投資家の皆様から高い評価をいただける、
ひいては持続的な株主価値向上につなげることができるIR活動をめざしていきます。
61
財務資本
資本政策
資本政策の基本的な方針
日常の運営における資本政策は、株主価値向上に資する
「中長期的なROE経営」
、
「持続的・安定的な株主還元」
、
「成長のための
投資採択基準」
を軸に展開しています。
❶ 中長期的なROE経営
当社は、ROE*1を持続的な株主価値の創造に関わる重要な指標と捉えています。「中長期的なROE経営」では、売上
収益利益率(マージン)、財務レバレッジ、総資産回転率(ターンオーバー)を常に改善し、中長期的に資本コストを上
をめざしていきます。
回るROE(正のエクイティ・スプレッド*2の創出)
❷ 株主還元
当社取締役会は、定款の定めに従い、健全なバランスシートのもと、連結業績、DOE*3およびフリー・キャッシュ・
フローを総合的に勘案し、シグナリング効果も考慮して、株主の皆様へ継続的・安定的に実施します。DOEは、連結
純資産に対する配当の比率を示すことから、バランスシートマネジメント、ひいては資本政策を反映する指標の一つ
として位置づけています。自己株式の取得については、市場環境、資本効率等に鑑み適宜実施する可能性があります。
なお、健全なバランスシートの尺度として、親会社所有者帰属持分比率、負債比率
(Net DER)
を指標に採用しています。
❸ 投資採択基準:Value-Creative Investment Criteria(VCIC)
当社は、成長投資による価値創造を担保するために、戦略投資に対する投資採択基準を採用し、リスク調整後ハー
ドルレートを用いた正味現在価値と内部収益率スプレッドにハードルを設定し、投資を厳選しています。
*1 ROE
(親会社所有者帰属持分当期利益率)
=親会社の所有者に帰属する当期利益÷親会社の所有者に帰属する持分
*2 エクイティ・スプレッド=ROE−株主資本コスト
*3 DOE
(親会社所有者帰属持分配当率)
=DPR
(配当性向)
×ROE
(親会社所有者帰属持分当期利益率)
配当金
2015年度の期末配当金は、株主の皆様への継続的・安定的な配当をめざす上記の基本方針に基づき、1株当たり80円とさせて
いただきます。1株当たり中間配当金70円とあわせ、年間配当金は1株当たり150円
(前期と同額)
となります。
株主総会
株主総会において充分な説明を行うことを旨とし、議長自らが事業報告や経営方針について説明を行います。また、株主の皆様
からの活発なご発言を頂戴し、質疑応答に努めています。すべての株主の皆様が適切に議決権を行使できる環境を整備するため、
株主名簿管理人の議決権行使サイトや議決権電子行使プラットフォームを採用するとともに、内容を充実させた招集ご通知を、日
本語版、英語版ともにエーザイのコーポレートサイトに掲載しています。
詳しくはこちら▶ http://www.eisai.co.jp/ir/stock/meeting.html
IRに関する活動状況
IR担当執行役のもとにIR部を設置し、IR専任担当者を配置しています。四半期決算を実施しており、それに合わせてアナリスト・
機関投資家向けの決算説明会を年4回実施しています。さらに、決算説明会とは別に毎年1回インフォメーション・ミーティングを
開催し、エーザイの戦略について説明しています。また、投資家の皆様との対話の機会も積極的に設け、国内だけでなく、海外の
投資家にも定期的に個別訪問しています。そのほか、個人投資家の皆様を対象とした説明会も適宜実施しています。
エーザイのコーポレートサイトには株主・投資家の皆様向けのコンテンツを設けています。定款をはじめ決算短信・参考資料、
アナリスト・機関投資家向け説明会資料を掲載するとともに、説明会の動画も日本語および英語にて発表後すみやかに配信してい
ます。また、業績や研究開発の概況をとりまとめた業績ハイライト、研究開発状況、統合報告書、年間IRスケジュール、株式諸手
続き・株価状況、決算公告・電子公告なども掲載しています。
詳しくはこちら▶ http://www.eisai.co.jp/ir/index.html
62
財務資本
株式の状況(2016年3月31日現在)
発行可能株式総数
(普通株式) 1,100,000,000株
発行済株式の総数
296,566,949株
(うち自己株式数10,555,842株)
株主数
59,996名
■大株主の状況
株主名
持株数
(千株)
日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口)
31,633
(注)1 発行済株式
(自己株式を除く)
の総数に対してその有する株式の数
総議決権数に
の割合が高い上位10株主を示しています。
対する保有割合
(%)
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)
22,858
8.00
JP MORGAN CHASE BANK 385147
12,938
4.53
日本生命保険相互会社
12,281
4.30
株式会社埼玉りそな銀行
7,500
2.62
みずほ信託銀行株式会社 退職給付信託 みずほ銀行口
再信託受託者 資産管理サービス信託銀行株式会社
5,437
1.90
公益財団法人内藤記念科学振興財団
4,207
1.47
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY
4,015
1.40
STATE STREET BANK WEST CLIENT - TREATY 505234
3,919
1.37
THE BANK OF NEW YORK MELLON SA/NV 10
3,487
1.22
108,279
37.91
合計
2 自己株式10,555千株
(3.56%)は、議決権がないため表中に記
載していません。
3 当事業年度末までに以下の大量保有報告書
(変更報告書)が提
出されていますが、
当事業年度末の株主名簿で確認できない場合、
または保有株式数が上位10株主に該当しない場合は、表中に
記載していません。なお、
( )内の保有割合は、自己株式を含
んだ発行済株式の総数に対する割合です。
①ブラックロック・ジャパン株式会社他、全7社の共同保有として、
15,262千株
(5.15%)
を2014年11月28日現在で保有
(2014年
12月4日付大量保有報告書)
②株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ他、全4社の共同保
有として、16,113千株
(5.43%)
を2015年7月13日現在で保有
(2015年7月21日付変更報告書)
③ウエリントン・マネージメント・カンパニー・エルエルピー他、全2社
の共同保有として、27,087千株
(9.13%)
を2015年7月31日現
在で保有
(2015年8月7日付変更報告書)
④株式会社みずほ銀行他、全3社の共同保有として、13,222千株
(4.46%)
を2016年1月29日現在で保有(2016年2月5日付変
更報告書)
11.07
■株式数の所有者別構成比の推移
0
20
40
38.9
2014年度
(%)
100
80
16.6
42.6
2015年度
60
30.9
14.7
7.2
28.9
7.1
3.7 2.6
3.6 3.1
■金融機関
(銀行等)
■個人・その他 ■外国法人等 ■その他法人 ■自己株式 ■証券会社
■株価の推移
(%)
350
ー 当社株価 ー TOPIX 300
250
200
150
100
50
0
2011年度
2012年度
2013年度
2015年度
2014年度
最高値
3,385円
最高値
4,405円
最高値
4,675円
最高値
9,756円
最高値
9,024円
最安値
2,832円
最安値
3,070円
最安値
3,600円
最安値
3,800円
最安値
6,633円
TSR 15.5%
*
TSR 32.6%
*
TSR -0.7%
*
TSR 117.8%
*
TSR -19.0%
(注)
折れ線グラフで示した当社株価、TOPIXは、2011年4月1日終値をそれぞれ100として示しています。
*Total Shareholders Return 株主総利回り
株式に関する詳細については
「第104回定時株主総会招集ご通知」
をご参照ください。▶ http://www.eisai.co.jp/ir/stock/meeting.html
63
*
価値創造を支える仕組み
コーポレートガバナンスの体制
10年以上前から社外取締役が過半数を占める取締役会により、
経営を監督しています
企業理念であるhhc を実現していくためには、長期的な視野のもと企業施策を実行することが重要です。そのような企業施
策の実行は、株主の皆様の信頼があって初めて可能となります。エーザイは経営の質を高め、株主、顧客、社員などのステー
クホルダーズのベネフィット向上に資する最良のコーポレートガバナンスを追究し、その充実に継続的に取り組んでいます。
エーザイでは、2000年6月に実施した社外取締役選任を皮切りに、コーポレートガバナンスを強化してきました。2004年
6月には、株主総会において定款を変更して指名委員会等設置会社に移行し、取締役の過半数を社外取締役として、経営の公
正性と透明性をはかるとともに、経営の監督機能を強化しました。
エーザイのコーポレートガバナンスの行動指針として、取締役会が定めた「コーポレートガバナンスガイドライン」に記載さ
れている基本的な考え方と仕組みを、 図表1 と
図表2
に示しました。
図表1 エーザイのコーポレートガバナンスの基本的な考え方
(「コーポレートガバナンスガイドライン」より抜粋)
❶ 株主の皆様との関係
3. 取締役会の過半数は、独立性・中立性のある社外取締役とする。
1. 株主の皆様の権利を尊重する。
4. 執行役を兼任する取締役は、代表執行役 CEO1 名のみとする。
2. 株主の皆様の平等性を確保する。
5. 経営の監督機能を明確にするため、取締役会の議長と代表執行役
3. 株主の皆様を含む当社のステークホルダーズとの良好・円滑な関係
CEO とを分離する。
を構築する。
6. 指名委員会および報酬委員会の委員は、全員を社外取締役とし、
4. 会社情報を適切に開示し、透明性を確保する。
監査委員会の委員は、その過半数を社外取締役とする。
❷ コーポレートガバナンスの体制
7. 指名委員会、監査委員会および報酬委員会の各委員長は社外取締役
2. 取締役会は、法令の許す範囲で業務執行の意思決定を執行役に
8. 財務報告の信頼性確保をはじめとした内部統制の体制を充実する。
1. 当社は指名委員会等設置会社とする。
とする。
大幅に委任し、経営の監督機能を発揮する。
図表2 エーザイのコーポレートガバナンスの仕組み
株主総会
取締役会11名(社外7名、
社内4名) 議長:社外取締役
適切な報告・提案
業務執行の意思
決定の大幅委任
監査委員会監査
経営の監督
監査委員会監査
監査委員会
(5名:社外3名、社内2名、
委員長:社外)
指名委員会
(3名:全員社外)
報酬委員会
(3名:全員社外)
取締役会事務局
経営監査部
会計監査人
執行部門
代表執行役CEO
会計監査
執行役会
内部統制担当執行役
コーポレートIA*部
執行役
内部監査
*IA:Internal Audit(内部監査)
各部門・国内外子会社
内部統制システムの整備・運用
2015年度における取締役会と各委員会の活動状況については、「第104回定時株主総会招集ご通知」
をご参照ください。
▶ http://www.eisai.co.jp/ir/stock/meeting.html
取締役会の実効性評価について
エーザイは、従来より実施していた取締役会の職務の執行の自己レビューに加え、取締役会および各委員会の実効性
のさらなる向上をはかるため、2015年度より、すべての取締役一人ひとりの評価に基づく取締役会評価を社外取締役
ミーティングがとりまとめ、取締役会で決議することとしました。すべての取締役の評価を、独立性のある社外取締役
のみで審議することにより、取締役会評価の結果の客観性が確保できるものと考えています。また、外部の第三者によ
る評価の活用についても、今後の課題として継続検討していきます。
取締役会評価の詳細については、コーポレートガバナンス報告書をご参照ください。
http://www.eisai.co.jp/company/governance/cgregulations.html
64
コーポレートガバナンスの体制
エーザイのコーポレートガバナンスの特徴
❶経営の監督と業務執行の明確な分離
エーザイのコーポレートガバナンスシステムの機軸は、指名委員会等設置会社であることを最大限に活用した経営の監督機
能と業務執行機能の明確な分離にあり、取締役会の議長を社外取締役とし、執行役を兼任する取締役は代表執行役CEOのみと
しています。
取締役会は、執行役に業務執行の意思決定権限を大幅に委任することで、経営の監督に専念しています。これにより執行役
は、業務執行の機動性と柔軟性を高めることができ、内部統制の構築による自律性の確保と併せ、経営の活力を増大すること
ができます。取締役会は、執行役より四半期ごとに「業務執行報告」
を受けており、労務管理や労働安全、環境保全への取り組み、
汚職行為・贈収賄の防止などのコンプライアンス遵守への取り組み状況を含め、様々な業務執行状況について監督を行ってい
ます。このような体制のもと、取締役会では、株主の皆様や社会の視点で、執行役の業務執行状況を確認し、業務執行や意思
決定のプロセスなど内部統制の状況の妥当性を点検しています。
❷社外取締役の独立性・中立性の確保
エーザイのコーポレートガバナンス体制を実効的に支えるのは、取締役会の過半数を占める独立性・中立性のある7名の社
外取締役の存在です。指名委員会は社外取締役のみで構成され、指名委員会は自ら定めた
「社外取締役の独立性・中立性の要件」
を厳格に運用して、社外取締役候補者の選任を行っています。なお、指名委員会は、取締役会が、株主の皆様をはじめとする
幅広いステークホルダーズの視点から経営の効率性、
妥当性等を監督することで、
当社企業価値の向上に貢献することを期待し、
取締役会が専門知識や経験等のバックグラウンドの異なる多様な取締役で構成されることを重視しています。
❸継続的なコーポレートガバナンス充実への取り組み
ⅰ)取締役会の職務執行の自己レビュー
取締役会等の職務の執行が、取締役会が定めた行動指針である「コーポレートガバナンスガイドライン」に沿って整備・運
用されているかについて、毎年、取締役会で自己レビューを行うことでコーポレートガバナンスの実効性を高めています。
併せて、必要に応じてガイドラインの見直しも行っています。
ⅱ)
「コーポレートガバナンスガイドライン」の改正
エーザイは、2015年6月に東京証券取引所の「コーポレートガバナンス・コード」の73原則のすべてを実施
(フルコンプラ
イ)していることを確認しています。また、開示が求められている11原則については、「コーポレートガバナンス報告書」に
詳述し、東京証券取引所に提出しています。取締役会は、改正会社法の施行および「コーポレートガバナンス・コード」の適
用を機に、取締役会の自己レビューの一環として、エーザイのめざす最良のコーポレートガバナンスに関する議論を行い、
2016年3月31日開催の取締役会において「コーポレートガバナンスガイドライン」
を改正しました。
ⅲ)社外取締役ミーティング
エーザイでは、社外取締役相互のコミュニケーションを深め、取締役会等における議論を活発化させ、実りの多いものと
するために、定期的に社外取締役のみで構成する社外取締役ミーティングを開催しています。社外取締役ミーティングでは、
コーポレートガバナンスやビジネスに関する事項が自由に議論され、必要に応じて社外取締役ミーティングの座長である取
締役議長より、執行役および取締役会事務局に課題の提案や情報提供等の要請がなされています。
取締役および執行役の報酬等の業績連動性について
取締役および執行役の報酬等については、社外取締役のみで構成される報酬委員会で客観的な視点と透明性を重視して決
定しています。取締役は、業務執行から独立した立場にあり、その職務である経営の監督機能を十分に発揮できるのに相応し
い内容とするため、取締役の報酬等は、業績連動型報酬を組み込まずに定額としています。
一方、執行役の報酬等は、基本報酬、賞与および株式報酬の割合を6:3:1とし、総報酬における業績連動型報酬比率は
40%となっています。2013年度に導入した株式報酬制度は、信託を通じ、全社業績目標達成度に応じて執行役に株式報酬を
毎年給付する中長期インセンティブプランです。執行役が株主の皆様と同じ視点で利益意識を共有し、中長期的な視野で業
績や株価を意識した業務執行を動機づける内容としています。
業績連動型報酬の決定プロセス
報酬委員会は、執行役の業績評価および業績連動型報酬
(賞与、株式報酬)
の個人別の支給額・交付株数を審議し、決定します。
執行役の賞与および株式報酬は、全社業績目標および各執行役の業績目標の達成度に応じて、それぞれ以下の計算式により
算出されます。
賞与
=
役位別の賞与基礎額
支給率:0〜225%
株式報酬
× 全社業績目標達成度* × 個人別業績目標達成度
評価:0〜150%
評価:0〜150%
= 役位別の基本交付株数 × 全社業績目標達成度
*
支給率:0〜150%
評価:0〜150%
*連結売上収益、連結営業利益、連結当期利益、連結ROE
エーザイの「コーポレートガバナンスガイドライン」
、「取締役会規則」
、「指名委員会規則」
、「監査委員会規則」
、「報酬委員会規則」
、「コーポレートガバナ
ンス報告書」および「企業価値・株主共同の利益の確保に関する対応方針」は、ホームページに掲載しています。「コーポレートガバナンス報告書」では、監
査体制、役員報酬
(報酬の算定方法の決定方針など)
、内部統制システム、社外取締役の独立性・中立性の要件についても開示しています。
▶ http://www.eisai.co.jp/company/governance/cgregulations.html
65
取締役(2016年6月30日現在)
価値創造を支える仕組み
内藤 晴夫 代表執行役CEO
在任年数 33年
所有する当社株式数 621,420株
1975年10月
1983年 4月
1983年 6月
1985年 4月
1985年 6月
1986年 6月
1987年 6月
1988年 4月
2003年 6月
2004年 6月
2006年 1月
入社
研開推進部長
取締役
研究開発本部長
常務取締役
代表取締役専務
代表取締役副社長
代表取締役社長
代表取締役社長兼CEO
取締役兼代表執行役社長
(CEO)
財団法人内藤記念科学振興財団
(現公益財団法人内藤記念科学振興財団)
理事長
(現任)
2014年 6月 取締役兼代表執行役CEO
(現任)
役員一覧
2015年度の取締役会、委員会での活動状況
取締役会において、代表執行役CEOとして、関連する決議議案の提出にあたり
*社外取締役の選任理由および独立性・中立性については、
コーポレートガバナンス報告書をご参照ください。
▶ http://www.eisai.co.jp/company/governance/cgregulations.html
議案の詳細内容の説明を行い、報告事項の議案においても充分な説明を行ってい
ます。また、取締役会における質疑等に対し、丁寧かつ明快に適宜自らの意見を
添えるなどして、回答しています。
*各取締役の所有する当社株式数は2016年3月末時点のものです。
*各取締役の取締役会・各委員会への出席状況は2015年度のものです。
出席率 取締役会100%
(11/11回)
出口 宣夫 グレアム・フライ
報酬委員会委員長
指名委員会委員
社外取締役独立委員会委員
在任年数 4年
在任年数 4年
所有する当社株式数 21,460株
所有する当社株式数 195株
1970年 3月
1999年10月
2001年 6月
2004年 6月
2005年 6月
2007年 6月
2008年 6月
1972年 8月
1993年 5月
1995年12月
1998年 9月
2001年10月
2004年 7月
2008年 9月
2012年 6月
2010年 6月
2010年11月
2011年 6月
2012年 6月
入社
企業倫理推進部長
執行役員、企業倫理・広報・法務担当
執行役、企業倫理・法務・IP・環境担当
常務執行役、企業倫理・法務・IP・環境担当
専務執行役、内部統制・コンプライアンス・知的財産担当
代表執行役専務、
内部統制・コンプライアンス・総務・知的財産担当
代表執行役副社長、社長補佐、
チーフコンプライアンスオフィサー兼人事労務担当
エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社
代表取締役社長
エーザイ企業年金基金理事長
取締役(現任)
2014年 6月
英国外務省 入省
同 極東/太平洋部長
同 北アジア/太平洋局長
同 駐マレーシア英国大使
同 経済審議官
同 駐日英国大使
ロンドン大学東洋アフリカ学院理事
当社取締役
(現任)
、指名委員会委員
(現任)
、
社外取締役独立委員会委員
(現任)
、報酬委員会委員
当社報酬委員会委員長
(現任)
2015年度の取締役会、委員会での活動状況
取締役会において、英国外交官としての豊富な経験・知識ならびに経営に関する
2015年度の取締役会、委員会での活動状況
高い見識と監督能力に基づき、説明を求め、意見等を適宜述べています。また、
取締役会において、社内での豊富な経験ならびにコーポレートガバナンスに関
する高い見識と監督能力に基づき、説明を求め、意見等を適宜述べています。
また、コーポレートガバナンスに関する事項、取締役会の運営等に関して、提
報酬委員会委員長として事務局を指揮し、
報酬委員会の事前準備、
議事運営を行い、
その結果を取締役会へ報告し、取締役会で質疑等に回答しています。また、指名
委員として、指名委員会で各種の提案をし、他の委員の質疑に回答し、また他の
案や意見具申等を行っています。
委員の意見等に対し、説明を求め、意見等を適宜述べています。
出席率 取締役会100%
(11/11回)
出席率 取締役会100%(11/11回)
指名委員会 100%(7/7回)
報酬委員会 100%(7/7回)
社外取締役独立委員会 100%(4/4回)
66
取締役(2016年6月30日現在)
山下 徹 直江 登
取締役議長
監査委員会委員
在任年数 2年
在任年数 2年
社外取締役独立委員会委員
所有する当社株式数 333株
所有する当社株式数 15,617株
4月 日本電信電話公社入社
6月 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ取締役
6月 同社常務取締役
6月 同社代表取締役副社長執行役員
6月 同社代表取締役社長
6月 同社取締役相談役
4月 (内閣府)公益認定等委員会委員長(現任)
6月 三井不動産株式会社社外取締役(現任)
6月 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ相談役(現任)
、
6月 当社取締役(現任)、社外取締役独立委員会委員(現任)
指名委員会委員、報酬委員会委員
2015年 6月 当社指名委員会委員長
2015年 7月 住友生命保険相互会社社外取締役(現任)
2016年 6月 当社取締役議長(現任)
1978年 4月
2005年 4月
2005年 6月
2005年 6月
2007年 4月
2008年 4月
2010年 6月
2011年 4月
2011年 6月
2013年 4月
2013年 4月
2013年10月
1971年
1999年
2003年
2005年
2007年
2012年
2013年
2013年
2014年
2014年
2014年 6月
2015年度の取締役会、委員会での活動状況
入社
医薬事業部副事業部長
執行役
医薬事業部長
日本事業本部副担当
日本事業本部医薬統括部長
上席執行役員
エーザイ・ジャパン プレジデント
常務執行役
執行役
エーザイ・ジャパン アライアンス担当
エーザイ・ジャパン オンコロジーhhc ユニット
デピュティプレジデント兼戦略企画推進部長
取締役
(現任)
、監査委員会委員
(現任)
2015年度の取締役会、委員会での活動状況
取締役会において、企業経営者としての豊富な経験・知識ならびに経営に関する高
取締役会において、社内での豊富な経験ならびに経営に関する高い見識と監督能
い見識と監督能力に基づき、説明を求め、意見等を適宜述べています。また、指名
力に基づき、説明を求め、意見等を適宜述べています。また、監査委員として、
委員会委員長として事務局を指揮し、指名委員会の事前準備、議事運営を行い、そ
日常から経営監査部を指揮し、監査活動の質を高め、監査委員会において、実施
の結果を取締役会へ報告し、取締役会で質疑等に回答しています。また、報酬委員
した監査活動の説明を行うとともに、自らの意見を適宜述べています。
として、報酬委員会で各種の提案をし、他の委員の質疑に回答し、また他の委員の
出席率 取締役会 100%(11/11回)
監査委員会 100%(11/11回)
意見等に対し、説明を求め、意見等を適宜述べています。
出席率 取締役会 100%(11/11回)
指名委員会 100%(7/7回)
報酬委員会 100%(7/7回)
社外取締役独立委員会 100%(4/4回)
西川 郁生
数原 英一郎
監査委員会委員長
社外取締役独立委員会委員
指名委員会委員長
報酬委員会委員
社外取締役独立委員会委員
在任年数 2年
在任年数 1年
所有する当社株式数 266株
所有する当社株式数 228株
1990年
1993年
1995年
2001年
2007年
2012年
2014年
2014年
9月
1月
7月
8月
4月
4月
6月
6月
1974年
1980年
1982年
1985年
1987年
2015年
2014年
2016年
2016年
2016年
6月
6月
6月
6月
センチュリー監査法人(現新日本有限責任監査法人)代表社員
国際会計基準委員会(IASC)日本代表
日本公認会計士協会常務理事
企業会計基準委員会(ASBJ)副委員長
企業会計基準委員会(ASBJ)委員長
慶應義塾大学商学部教授(現任)
日本電産株式会社社外監査役
当社取締役(現任)、監査委員会委員長(現任)、
社外取締役独立委員会委員(現任)
雪印メグミルク株式会社社外監査役
三菱商事株式会社社外監査役(現任)
大和証券グループ本社社外取締役(現任)
雪印メグミルク株式会社社外取締役(監査等委員)
(現任)
8月
3月
3月
3月
3月
6月
2015年 6月
2016年 6月
三菱鉛筆株式会社入社
同社取締役
同社常務取締役
同社取締役副社長
同社代表取締役社長
(現任)
当社取締役
(現任)
、報酬委員会委員
(現任)
、
社外取締役独立委員会委員
(現任)
、指名委員会委員
横浜振興株式会社社外取締役
(現任)
当社指名委員会委員長
(現任)
2015年度の取締役会、委員会での活動状況
取締役会において、企業経営者としての豊富な経験・知識ならびに経営に関する
高い見識と監督能力にもとづき、説明を求め、意見等を適宜述べています。また、
2015年度の取締役会、委員会での活動状況
指名委員および報酬委員として、両委員会で各種の提案をし、他の委員の質疑に
取締役会において、公認会計士としての財務、会計、国際会計基準における専門知
回答し、また他の委員の意見等に対し、説明を求め、意見等を適宜述べています。
識ならびに経営に関する高い見識と監督能力に基づき、説明を求め、意見等を適宜述
べています。また、監査委員会委員長として事務局を指揮し、監査委員会の事前準備、
議事運営を行い、その結果を取締役会へ報告し、取締役会で質疑等に回答しています。
さらに、会計監査人の独立性・適正性の監査等に立ち会っています。
出席率 取締役会100%
(9/9回)
指名委員会100%
(6/6回)
報酬委員会100%
(5/5回)
社外取締役独立委員会100%
(4/4回)
*数
原英一郎は、2015年6月19日開催の第103回定時株主総会において、新
たに取締役に選任され、就任しましたので、2015年6月19日以降に開催し
た取締役会および各委員会への出席状況を記載しています。
出席率 取締役会 100%(11/11回)
監査委員会 100%(11/11回)
社外取締役独立委員会 100%(4/4回)
67
取締役(2016年6月30日現在)
加藤 泰彦
柿﨑 環 指名委員会委員
監査委員会委員
報酬委員会委員
社外取締役独立委員会委員
社外取締役独立委員会委員
在任年数 0年
在任年数 0年
所有する当社株式数 0株
所有する当社株式数 0株
1973年 4月
2004年 4月
2004年 6月
2002年
2008年
2012年
2014年
2016年
2006年12月
2007年 6月
2013年 6月
2016年 6月
三井造船株式会社入社
Mitsui Babcock Energy Limited CEO
三井造船株式会社取締役 Mitsui Babcock Energy Limited 担当
(在英国)
同社取締役特命事項担当
同社代表取締役社長
同社代表取締役取締役会長(現任)
当社取締役(現任)、指名委員会委員(現任)、
報酬委員会委員(現任)、社外取締役独立委員会委員(現任)
4月
4月
4月
4月
6月
2016年 6月
*加藤泰彦は、2016年度の新任取締役です。
跡見学園女子大学マネジメント学部准教授
東洋大学法科大学院教授
横浜国立大学国際社会科学研究院教授
明治大学法学部教授
(現任)
当社取締役
(現任)
、監査委員会委員
(現任)
、
社外取締役独立委員会委員
(現任)
三菱食品株式会社社外取締役
(現任)
*柿﨑環は、2016年度の新任取締役です。
金井 広一 角田 大憲 監査委員会委員
監査委員会委員
社外取締役独立委員会委員長
在任年数 0年
在任年数 0年
所有する当社株式数 4,300株
所有する当社株式数 0株
1983年
2003年
2006年
2007年
2010年
2011年
2011年
2012年
2016年
1994年 4月
4月
4月
6月
4月
6月
6月
6月
6月
6月
入社
経理部長
理事職
財務経理部長
財務・経理本部 経理部長
執行役員
経理部長
株式会社サンプラネット非常勤監査役
取締役(現任)、監査委員会委員(現任)
2001年 1月
2003年 3月
2004年 6月
2004年 9月
2005年 6月
2007年 7月
2008年 4月
2008年 4月
2010年 4月
2012年
2014年
2015年
2016年
*金井広一は、2016年度の新任取締役です。
3月
4月
3月
6月
東京弁護士会登録
森綜合法律事務所
(現 森・濱田松本法律事務所)
所属
同事務所パートナー
中村・角田法律事務所
(現 中村・角田・松本法律事務所)
参画、
パートナー
(現任)
株式会社アトラス社外監査役
ポラリス・プリンシパル・ファイナンス株式会社(現ポラリス・
キャピタル・グループ株式会社)
社外取締役
株式会社アイネス社外監査役
株式会社シーリージャパン(現 株式会社スリープセレクト)社
外監査役
(現任)
三井住友海上グループホールディングス株式会社
(現MS&ADイ
ンシュアランスグループホールディングス株式会社)
社外監査役
日本株主データサービス株式会社社外監査役
MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社
社外取締役
(現任)
ビルコム株式会社社外監査役
カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社社外取締役(現任)
ビルコム株式会社社外監査役
(現任)
当社取締役
(現任)
、監査委員会委員
(現任)
、
社外取締役独立委員会委員長
(現任)
*角田大憲は、2016年度の新任取締役です。
68
執行役(2016年6月30日現在)
執行役
オンコロジービジネスグループ チーフストラテジーオフィサー
(兼)
レンビマグローバルリード
(兼)
ストラテジー部長
代表執行役CEO
内藤 晴夫
甲斐 康信
代表執行役 日本事業担当兼CIO
日本事業担当
(兼)
認知症ソリューション本部担当
(兼)
チーフインフォメーションオフィサー
(CEOオフィス)
執行役
ニューロロジービジネスグループ チーフクリニカルオフィサー
(兼)
チーフメディカルオフィサー
林 秀樹
代表執行役 医療政策担当兼中国事業担当
医療政策担当
(兼)
グローバル緊急対応担当
(兼)
グローバルバリュー &
アクセス担当
(兼)
総括製造販売責任者
(兼)
中国事業担当
(兼)
hhc データ
クリエーション担当
(兼)
日本・アジアメディカル担当
(CEOオフィス)
リン・クレイマー
執行役
コーポレートアフェアーズ担当
佐々木 小夜子
土屋 裕
代表執行役 アジア・リージョン プレジデント
アジア・リージョン プレジデント
(兼)
CEO特命担当
執行役
チーフコンプライアンスオフィサー
(兼)
内部統制担当
専務執行役
エーザイデマンドチェーンシステムズ プレジデント
執行役
Eisai Inc. President & COO
朝谷 純一
本多 英司
浅野 隆文
サジ・プロシダ
専務執行役
チーフタレントオフィサー
(兼)
人財開発本部長
(兼)
総務・環境安全担当
執行役
ニューロロジービジネスグループ チーフディスカバリーオフィサー
(兼)
メディスンクリエーション ディスカバリー ニューロロジー筑波研究部長
岡田 安史
木村 禎治
常務執行役
ゼネラル カウンセル
(兼)
知的財産担当
執行役
エーザイ・ジャパン 地域連携首都圏本部長
高橋 健太
安田 覚
常務執行役
チーフメディカルオフィサー
(兼)
コーポレートメディカルアフェアーズ本部長
(兼)
グローバルセーフティボード委員長
執行役
エーザイ・ジャパン アクセス & アウトカム本部長
籔根 英典
エドワード・スチュワート・ギリー
常務執行役
デピュティチーフタレントオフィサー
執行役
メディスン開発センター センター長
常務執行役
オンコロジービジネスグループ チーフコマーシャルオフィサー
(兼)
EMEAリージョン プレジデント
(兼)
Eisai Europe Ltd. Chairman & CEO
執行役
ニューロロジービジネスグループ チーフストラテジーオフィサー
(兼)
ストラテジー部長
加藤 弘之
松江 裕二
ガリー・ヘンドラー
アレキサンダー・スコット
常務執行役
オンコロジービジネスグループ プレジデント
(CEOオフィス)
執行役
エーザイ・ジャパン プレジデント
常務執行役
チーフフィナンシャルオフィサー
(兼)
チーフIRオフィサー
執行役
コーポレートプランニング & ストラテジー担当
(兼)
コーポレートプランニング & ストラテジー部長
(CEOオフィス)
宮島 正行
井池 輝繁
柳 良平
安野 達之
常務執行役
ニューロロジービジネスグループ プレジデント
(兼)
アメリカス リージョン
プレジデント
(兼)
Eisai Inc. Chairman & CEO
(CEOオフィス)
執行役
衛材
(中国)
投資有限公司 総経理
(兼)
衛材
(中国)
薬業有限公司 総経理
ヤンホイ・フェン
アイヴァン・チャン
執行役
コーポレートBD部長
執行役
オンコロジービジネスグループ チーフメディスンクリエーションオフィサー
(兼)
チーフディスカバリーオフィサー
鈴木 蘭美
大和 隆志
69
価値創造を支える仕組み
コンプライアンス・リスク管理
エーザイでは、チーフコンプライアンスオフィサー兼内部統制担当執行役がコンプライアンス・リスク管理推進部を指揮し、
コンプライアンスとリスク管理を推進しています。
コンプライアンスを「法令と倫理の遵守」と定義して経営の根幹に据え、トップ・マネジメントのメッセージ発信、コンプライ
アンス推進体制の整備、行動規範やルールの整備、啓発活動および相談・連絡窓口の整備等からなるコンプライアンス・プログ
ラムを実践しています。
リスク管理については、リスクを「企業や組織の目的の達成を阻害する脅威または可能性」と定義し、リスクを許容範囲に収め
るため、内部統制の構築・整備、運用および内部監査等を実践しています。
1.コンプライアンスの推進体制
コンプライアンス・リスク管理推進部が、各リージョンのコンプライアンス推進担当部署および推進担当者と連携し、グロー
バルにコンプライアンスの推進活動を行っています。
このコンプライアンス推進活動は、国内外の弁護士やコンサルタント等社外専門家で組織されたコンプライアンス委員会に
よる客観的なレビューを定期的に受けています。また、コンプライアンス委員会はチーフコンプライアンスオフィサーに対し
ても、助言および勧告を行っています。
❶ 行動規範やルールの整備およびコンプライアンス意識の醸成のための啓発活動
エーザイでは、役員および従業員一人ひとりが、常にコンプライアンスに則った企業活動
を行っていくことを確たるものとする上で、すべての役員および従業員へのコンプライアン
ス意識の醸成が不可欠であると考えています。
このため、エーザイ・ネットワーク企業(ENW)行動憲章、行動指針をとりまとめた「コン
プライアンス・ハンドブック」をすべての役員および従業員向けに作成し、18カ国語で発行し
ています。また、コンプライアンス・カウンターの連絡先等を記載した携帯用「コンプライア
ンス・カード」を作成し、グループすべての役員および従業員で共有しています。
コンプライアンス役員研修会をはじめとする研修会の開催、e-ラーニングなど、様々な媒
体を駆使した教育研修を継続して実施し、コンプライアンス意識の醸成に取り組んでいます。
コンプライアンス・ハンドブック
❷ コンプライアンス・カウンターの活用
コンプライアンス・カウンターはENWにおける内部通報制度としての相談・連絡窓口で、日本、欧州、米国、中国、
アジアに設置されています。法律の解釈などコンプライアンスに関して判断に迷った場合や、自分自身の行動や上司、同
僚の行動がコンプライアンスに則っているか疑問を感じた場合など、すべての役員および従業員の身近な相談・連絡窓口
として運用されています。ハラスメント、個人情報保護、著作権、公務員倫理規程、業界の自主規制など様々な分野の相
談・連絡に活用されています。
また、日本では、社外弁護士による社外カウンターや社外相談員が運営する社外相談窓口も設置し、コンプライアンス
をさらに推進するための環境を整備しています。
❸ コンプライアンス意識調査
2015年度は、すべてのENWでコンプライアンス意識調査を実施しました。この意識調査では、社員一人ひとりのコ
ンプライアンスに関する意識や活動状況をモニタリングするとともに、コンプライアンス・プログラムのさらなる充実に
活用します。
70
❹ 贈収賄・汚職の防止
エーザイは、誠実なビジネス活動を行うことに対する強い想いに基づき、
「ENW贈収賄・汚職の防止に関するポリシー」
を定めています。これは、世界のすべてのENWに共通の、社外関係者と対応する際のルールであり、すべてのENWに
おいて贈収賄・汚職のないビジネス活動を推進しています。
具体的な取り組みの一つに、新規に取引を予定している企業へ、Webシステムを活用して事前にグローバル共通の質
問書への回答を得るABAC デューディリジェンスシステムを導入しており、新規取引に伴うリスクの低減に一定の成果
を得ています。本システムは、リスクアプローチの考えのもと、これまでにメキシコ、ブラジル、カナダを含むアメリ
カ地域、ロシアや東欧を含む欧州地域に加え、中国において優先して稼働させ、インドやアジア諸国への展開も順次進
めています。
また、会計・財務データをモニタリングすることで、不正の兆候を発見するシステムをENWの海外子会社において先
行して導入することに取り組んでいます。
2.リスク管理の推進
エーザイでは、会社法に基づき、取締役会が「執行役の職務の執行の適正を確保するために必要な体制の整備に関する規則」
を制定し、すべての執行役が担当職務のリスクを識別し、内部統制を構築・整備、運用することを定めています。これを受け、
内部統制担当執行役が「ENW内部統制ポリシー」を定め、ENW全体で内部統制の構築・整備、運用を推進し、リスクを許容範
囲に管理すべく取り組んでいます。
❶ 迅速かつ効率的なリスク対応の推進
執行役と組織長が識別したすべてのリスクは、コンプライアンス・リスク管理推進部が一元管理しています。識別し
たリスクは、発生可能性、影響度で重要性を評価し、リスク対応の優先度を定めて効率的にリスク管理に取り組んでい
ます。さらに、社外の企業不祥事等を常時監視することで自社の潜在的なリスクを早期に感知し、リスクの顕在化を防
止するリスク管理プロジェクトも実施しており、迅速なリスク対応を行っています。
❷ CSA
(Control Self-Assessment:統制自己評価)
リスク管理の仕組みの一つは、CSAです。CSAでは、すべての執行役
クを把握し、執行役によるリスク対応のフォローを行うことでリスク管
理の実効性を高めています。
また、ENWのすべての組織長を対象にしたCSAでは、アンケートや
統
へのインタビューならびに執行役からの報告書により全社的な重要リス
制
環
境 目標設定
リスク
モニタリング
ワークショップを通じて、リスクマネジメントサイクル(目標設定、リ
スクの識別、評価、対応、モニタリング)の活性化によるリスクの低減
を進めるとともに、内部統制の構築・整備、運用状況を定期的に確認し
ています。
リスク識別
情報と伝達
リスク評価
リスク対応
リスクマネジメントサイクル
❸ 国際基準に基づいた内部監査活動
内部監査は、監査委員会の監査や会計監査とは異なる任意の監査です。当社は、内部統制担当執行役のもとに設置し
たコーポレートIA部が各リージョンに配置した内部監査部門と協力しながら、日本、欧州、米国、中国、アジアにて内
部監査を実施しています。この内部監査では、各執行役の業務執行が適正かつ効率的に実施されていることを、独立的
かつ客観的に評価し、その結果を執行役会および監査委員会へ報告しています。
なお、内部監査部門はグローバルスタンダードに対応した高品質な監査を確保するため、毎年、社外有識者で構成さ
れた外部評価委員会により、IIA(The Institute of Internal Auditors:米国に本部を置く内部監査人協会)の国際基準に
沿った評価を受けています。
71
会 社 情報
社会的責任に関する指標
公正で透明な経営をめざして
エーザイでは、企業活動をトータルかつ客観的にとらえるため、社会的責任に関する指標を開示しています。これらの指標
は報告書の構成に合わせて分類し、年度ごとに取り組みの検証を行っています。
データの対象範囲:■エーザイグループ(エーザイ株式会社および国内外のグループ企業) ■エーザイ株式会社 ■国内グループ(エーザイ株式会社および国内グループ企業)
(譲渡した子会社・事業についても、譲渡完了日までのデータを含めています)
■患者様との関わり
指標
期間
申請中の医療用医薬品数
承認取得した医療用医薬品数
2013年度
2014年度
2015年度
国内
年度末時点
3品目
1品目
0品目
海外
年度末時点
1品目
2品目
4品目
国内
年度末時点
4品目
4品目
3品目
海外
年度末時点
1品目
4品目
4品目
特許件数
(特許出願件数)
年度
88件
87件
65件
年度
99,471件
91,286件
97,444件
うちウェブサイトのフォームによるお問い合わせ数
年度
797件
739件
719件
うちクレーム件数
(製品の品質に関するクレーム)
年度
368件
336件
314件
年度
12回
12回
12回
「hhc ホットライン」
お問い合わせ数
PCC
(製品クレーム委員会)
実施回数
お取引先
病院
年度末時点
5,743軒
5,739軒
5,732軒
診療所
年度末時点
94,750軒
81,723軒
79,232軒
調剤薬局
年度末時点
10,198軒
11,103軒
10,794軒
薬局など
年度末時点
93,177軒
96,683軒
95,582軒
代理店
年度末時点
79社
78社
88社
ベンダー
年度末時点
244社
232社
224社
−*1
−*2
*1 適応および剤形の追加を含みます。 *2 食品などのお取引先を含みます。
■コーポレートガバナンス/コンプライアンス
指標
期間
2013年度
2014年度
11名
2015年度
取締役数
年度末時点
11名
11名
うち社外取締役数
年度末時点
7名
7名
7名
社外取締役比率
(社外取締役数/取締役数)
年度末時点
63.6%
63.6%
63.6%
執行役数
年度末時点
23名
22名
25名
執行役の平均年齢
年度末時点
53.0歳
53.1歳
53.6歳
報酬額
(基本報酬、
賞与、退職慰労金など)
コンプライアンス研修
人権研修
取締役
(社内)
年度末時点
11,631万円
11,374万円
11,311万円
取締役
(社外)
年度末時点
8,215万円
7,566万円
7,400万円
執行役
年度末時点
105,519万円
97,604万円
131,040万円
開催回数
年度
65回
56回
47回
うち役員対象研修
年度
2回
2回
2回
延べ参加人数
年度
約5,800名
約5,000名
約4,600名
開催回数
年度
23回
28回
30回
参加人数
年度
2,452名
2,405名
5,001名
■環境との関わり
指標
期間
2013年度
2014年度
CO₂排出量
年度
100,530t
2015年度
75,942t*1
73,446t
*2
3,481t
廃棄物発生量
年度
4,917t
化学物質
(PRTR法対象物質)
取扱量
年度
469t
4,001t
493t
476t
廃棄物のリサイクル率
年度
48.3%
50.6%
57.7%
*1 2014年度のCO₂排出量は排出係数の確定により再算出しています。 *2 再集計によりデータを見直しました。 *3 廃棄物について有価売却分を含めて再算出しています。
72
−*3
■社会との関わり
指標
工場所在地の地区懇談会
期間
実施回数
年度
出席人数
2013年度
2014年度
2回
2015年度
1回
1回
年度
22名
11名
11名
寄付金額
年度
2,377百万円
2,073百万円
2,602百万円
納税金額
年度
29,381百万円
4,628百万円
5,764百万円
くすり博物館来館者数
年度
34,111名
35,705名
36,325名
工場見学者数
年度
4,044名
3,178名
2,443名
■株主との関わり
指標
期間
2013年度
2014年度
2015年度
株主数
年度末時点
106,981名
66,190名
59,996名
発行済株式総数
年度末時点
296,566千株
296,566千株
296,566千株
外国法人等の所有株式数比率
年度末時点
23.0%
30.9%
28.9%
年度末時点
「個人・そのほか」
株主比率
親会社所有者帰属持分当期利益率
(ROE)
98.3%
97.4%
97.1%
年度
7.6%
7.7%
9.4%
配当性向
(DPR)
年度
111.8%
99.0%
78.0%
親会社所有者帰属持分配当率
(DOE)
年度
8.5%
7.6%
7.3%
配当金総額
年度
42,799百万円
42,836百万円
42,889百万円
1株あたり配当額
年度
150円
150円
150円
■社員との関わり
指標
期間
従業員数
地域別従業員数
2013年度
2014年度
2015年度
年度末時点
10,419名
10,183名
日本
年度末時点
5,200名
4,712名
9,877名
4,523名
アメリカス
(北米、中南米)
年度末時点
1,768名
1,745名
1,316名
EMEA
(欧州、中東、
アフリカ、オセアニア)
年度末時点
811名
893名
913名
中国
年度末時点
1,559名
1,607名
1,875名
アジア
(日本・中国除く)
年度末時点
1,081名
1,226名
1,250名
合計
年度末時点
4,130名
3,583名
3,577名
男性
年度末時点
3,202名
2,845名
2,838名
女性
年度末時点
926名
738名
739名
管理職
年度末時点
1,455名
1,359名
1,370名
派遣社員数
年度末時点
222名
215名
136名
女性管理職比率
(女性管理職数/管理職数)
年度末時点
4.1%
4.6%
4.7%
平均年齢
年度末時点
42.5歳
43.7歳
44.1歳
平均勤続年数
年度末時点
社員数
20.0年
19.4年
19.9年
離職率
年度
1.6%
1.4%
2.6%
介護休暇・介護休職・介護短時間勤務制度利用者数
年度
28名/3名/2名
17名/0名/1名
看護休暇制度利用者数
年度
136名
132名
合計
年度
78名
90名
95名
男性/女性
年度
1名/77名
1名/89名
2名/93名
育児休職制度利用者数
20名/2名/0名 −*1
150名
育児短時間勤務制度利用者数
年度
86名
73名
93名
平均年間給与
(有価証券報告書より)
年度
10,401千円
10,403千円
10,939千円
啓発費
(社員1人あたり)
年度
177,300円
175,800円
障がい者雇用率
年度
2.39%
2.56%
2.53%
年度内入社人数
年度
84名
14名
105名
所定労働時間
(年間1人あたり)
年度
1,888時間
1,895時間
1,887時間
労働災害発生件数
年度
17件
10件
18件
年度
0.12件/0件
0件/0件
0.29件/0件
4日以上の労働損失を伴う労働災害の
発生頻度(100万延べ実労働時間あたり)
(従業員/受託業者)
198,400円 −*1,2
死亡に至った労働災害発生件数
(従業員/受託業者)
年度
0件/0件
0件/0件
0件/0件
業務上疾病発生件数
(従業員/受託業者)
年度
0件/0件
0件/0件
0件/0件
健康診断の受診率
有給休暇の平均取得日数
(組合員1人あたり)
−*1
−*1
社員
年度
99.83%
99.75%
99.86%
家族
年度
76.57%
74.45%
71.16% −*3
年度
12.3日
12.1日
12.1日
*1 エーザイ株式会社の正社員の人数をベースとしたものです。*2 研修、留学派遣、学会参加等を含む啓発費です。*3 扶養する配偶者および40歳以上の被扶養者を対象としています。
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会 社 情報
設立
1941年
(昭和16年)
12月6日
商号
エーザイ株式会社
(英文名:Eisai Co., Ltd.)
本社所在地
〒112-8088 東京都文京区小石川4-6-10
定時株主総会
6月
上場証券取引所
東京
証券コード
4523
監査法人
有限責任監査法人トーマツ
資本金
44,986百万円
会社概要
従業員数
2016年3月31日現在
3,504名
(単体)
、9,877名
(連結)
発行済株式総数
エーザイの国内外ネットワークについては
こちらをご参照ください。
296,566,949株
株主数
海外・国内 子会社・関連会社のURL
▶http://www.eisai.co.jp/company/profile/group.html
59,996名
国内事業所のURL
株主名簿管理人
▶http://www.eisai.co.jp/company/office.html
三菱UFJ信託銀行株式会社
米国預託証券保管・代理人
JP Morgan Chase Bank, N.A.
公告方法
電子公告
http://www.eisai.co.jp/fr/index.html
ただし、
やむを得ない事由が生じた場合は、
日本経済新聞に掲載する。
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お問い合わせ先
hhc(human health care )のマークは、ナイチンゲールの直筆
サインをもとにデザインされたものです。治療する側の発想だけで
なく、ベッドの上にいらっしゃる人びとの視線で医療を見つめること
〒112-8088 東京都文京区小石川4-6-10 エーザイ株式会社 IR部
TEL : 03-3817-3016 FAX : 03-3811-6032
http://www.eisai.co.jp
の大切さ。みずから志し傷ついた人の看護に身を捧げた彼女の行動
ホームページには会社案内、
ニュースリリース、IR情報、患者様向け情報など
を掲載しています。
のあり方に、エーザイの想いが込められています。
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