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新春セミナー:新たな経済、産業の方向を問う 大橋弘

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新春セミナー:新たな経済、産業の方向を問う 大橋弘
独立行政法人 経済産業研究所(RIETI)
第11回RIETIハイライトセミナー
新春セミナー:新たな経済、産業の方向を問う
プレゼンテーション資料
2015年1月30日
大橋 弘
RIETIプログラムディレクター・ファカルティフェロー
東京大学大学院経済学研究科教授
http://www.rieti.go.jp/jp/index.html
新春セミナー「新たな経済、産業の方向性を問う」
産業構造に関する論点
RIETI ハイライト・セミナー 2015
大橋 弘
東京大学
2015年の展望
• 2012年12月以来、第二次安倍内閣は、「強い
経済・強い日本を取り戻す」ことに向けて、ス
ピード感のある経済政策を打ち出し、政策の
予見性が格段に高まった。
• 人口減少、社会保障費の急速な増加、エネ
ルギー問題など課題は山積するが、戦後70
年の節目になる今年、日本再興に向けての
好機が到来していると言える。
2
問題意識(例えば製造業を念頭に)
デジタル化
ICT, IoT, AI
これまでの競争の姿
innovate
企業
企業
Innovate
懸念される競争の姿
競争
アウトソース
国境
Innovate
Standardize
Standardize
Standardize
企業
Scale Economy
Scale Economy
アウトソースや生産移転などの戦略はあるものの、
同じビジネスモデルをもつ企業のあいだの競争。
企業
競争
Scale Economy
異なるビジネスモデルを持つ企業の登場で、プロセス・イ
ノベーションとプロダクト・イノベーションが対立関係に。
生産と消費の同時性を持つサービス業には、消滅する業
種もありえるのではないか。
情報通信を含む技術の発達とグローバル化の進展により、わが国における企業
組織、競争形態、産業構造に大きな変化の兆しが出てきているのではないか。
産業政策・競争政策はそうした変化に対して万全を期しているか。
3
生産性と過去の研究
産業別就業者数推移
• 産業構造の転換は、以下の
要因で大まかに決まってき
た。
1. 供給要因(主に技術革新)
2. 需要要因(市場規模など)
(3. 社会システム)
• 約7割を占めるサービス業の
生産性も経済成長を促す上
で重要になる。
• 企業経営のガバナンス、市
場競争の強弱、雇用形態の
在り方等が生産性に影響を
与えることが明らかにされて
きた(森川(2014)*等)
総務省国勢調査、総務省統計局e‐Stat 労働力調査より作成
* 森川(2014)「サービス産業の生産性」
4
起業
「経済問題の解決方法は・・・未知への探求しかない」(ハイエク)
わが国におけるIPO
VCの組成金額・件数
日米欧VC投資額(年間)
• 新陳代謝機能を高めることも、生産性向上に不可欠と言われる。
• インターネットの普及で資金・人材の調達が容易になり、色々なビジ
ネスを「実験」するコストが低下。
• IPOもVCも順調に回復しているが、まだ伸び代はある。
• VCは事業(撤退)の見極めができることから、官民ファンドとの連携
の在り方も重要な課題。
• 規制改革や国家戦略特区を含めて、「実験」を行うコストの低下を促
す政策は中長期的な成長に寄与する。政府の重要な役割。
“The solution of the economic problem of society is always a voyage of exploration into the unknown” (Hayek, Individualism and economic order)
5
第3次産業革命
インターネットによって新たな産業構造の変化が引き
起こされつつあるのではないかという予兆。
– On‐demand Economy, shared economyの到来
– 経済学でもこの評価については様々な議論が存在する
(例えば、Robert GordonからBrynjolfsson and McAfeeや
Cowen(2013)まで)
• 消費者への(少なくとも短期的な)メリットは計り
知れない。
• 他方で、我が国の産業構造の行く末を考えると、
楽観視ばかりもできないのではないか。
• 以降ではイノベーションの観点から若干の考察
を試みる。
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プロセス・イノベーションの加速
• 製造業において「匠の技」の再現性が高まる
(Industrial Internet, Industrie 4.0)。
– 立地選択の考慮要因として労働の比重が低下。
– キャッチアップが容易になるなかで、いかに技術力を磨
き続けられるかが課題(例えば技術拠点の確保等)。
• 主として非貿易財と言われたサービス産業では、
インターネットの登場でグローバル化の影響を受け
始める。
– 「生産と消費の同時性」は、On‐demandであるICTと親和
性がある部分がある。
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競争のあり様の変質
• 消費者にとって訴求性のある財・サービスを提供するものが「勝
者」という牧歌的な競争の図式でなくなりつつあるのではないか。
• グローバルな市場を見据えて、競争の土俵(プラットフォーム、ビ
ジネスモデル)をデザインするものが勝者に。
– グローバル化の進展とICTの登場で、設計と製造とが分離(「ファウンド
リ化」が典型)すると共に、プラットフォームをアウトソースした社は、差
別化する手段を失うことも。
• Cf, 他方で、設計・製造一体型で付加価値の向上を図る産業。
• 社会にとって望ましいシステム(競争の土俵、プラットフォーム)は
市場メカニズムによって自生的に確立されるとは限らない(ここに
「神の手」は存在しないこともある)。規制緩和に、社会システム
の再設計(再規制)が伴って初めて「稼ぐ力」に繋がる。勝つため
の競争の土台をいかに作るのか、ルール・メイキングの構想力が
問われる局面を迎えているのではないか。
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【参考】 社会システムの再設計(例)
• ICTを含めて流通取引の構造変化によって、現状
の競争規制がメーカーのイノベーション力の阻害
要因になりかねない懸念
⇒ 再販を含めてメーカーの流通戦略の自由度を確保
する必要性
• 電力システムにおけるスマートコミュニティの普及
と広域連携とのバランスのあり様。
• 医療費の高騰に対して、医療技術の「リバース・
イノベーション」(プロセス・イノベーション)を促す
誘因体系への視点。
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今後の産業政策・競争政策への一考察
• 異分野を含めた「融合」から付加価値が生まれるようになる。
– 提携・結合のメリットが増す。
• 消費者メリットを(価格)競争に見出すような政策アプローチ
が、企業のイノベーションや雇用促進、経済成長の観点と
必ずしも整合しないケースが増えてくる。
– これまでの競争政策は、同種のビジネスモデルを持つ企業間の
競争を(暗黙の)前提としていた。異なるビジネスモデルをもつ
(海外)事業者とのビジネスモデルの競争をどう評価するのか。
• 国内に「イノベーションの芽」を残すことが、我が国経済の中
長期的な成長に欠かせないのではないか。経済のソフト化
が進んだ今、市場の概念もこれまでの「財・サービス市場」
に加えて、「イノベーション(知的)市場」も無視できない。前
者の市場と同様に、後者の市場がうまく機能しないのであ
れば、政策的な対応が必要とされるのではないか。
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