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中国での解雇 - 浜銀総合研究所

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中国での解雇 - 浜銀総合研究所
浜銀総合研究所 中国ビジネスサテライト「中国コラム」 2013 年 5 月号 http://www.yokohama-ri.co.jp
中国での解雇
チャイナ・インフォメーション 21
筧武雄
中国では「労働契約法」(2008 年施行)にもとづき、パート、アルバイト、派遣労働者等
を除く正規雇用社員と企業は、雇用日から 1 か月以内に文書による労働契約書を直接、個
別に取り交わすことが義務付けられている。これを失念すると、2 倍額の賃金支給等の罰則
等が課せられる(同法実施条例第 7 条)。労働契約の期間については「有期限」と法定退職年
齢(男性 65 歳、女性 60 歳)1まで「無固定期限」の2種類が認められるが、労働契約の最短
期間に関する定めはない。
ただし注意すべき点として、
「労働契約法」第 14 条 1 項で「同一企業で勤続 10 年を超え
た場合」、あるいは「連続 2 回期限労働契約を締結し、かつ労働者が本法第 39 条、第 40 条
第 1 項・第 2 項に規定(下記参照)の状況になく、連続して労働契約を締結する場合」(同条 3
項)は、
「無固定期限労働契約」を締結すべきと定められている。これらの時点で本人が無期
限雇用を希望した場合、それ以後は法に定められた解雇事由に該当しない限り、会社都合
による解雇はできなくなる。
したがって、中国の労務管理上では従業員個人別の労働契約の期限管理と、下記に該当
する行為があった場合の客観的な証拠、証明文書の記録が極めて重要となる。
1. 中国労働契約法が定める合法的な解雇事由
労働契約法には労働契約期間中であっても正社員を会社都合で中途解雇できる事由とし
て下記の予告解雇と即時解雇の 2 種類が定められている。
(1)予告解雇(第 40 条)
①労働者が病気、または業務外の負傷により、規定の医療期間満了後も元の業務に従事
できず、雇用者の手配した他の業務にも従事できない場合
②労働者が業務の任に適応できず、職業訓練を経た後、もしくは職場配置調整をした後
も依然として業務に適応できない場合
1 地域条例または企業等により、定年退職年齢が異なるケースもある。
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③労働契約締結時の根拠となった客観的な状況に重大な変化が発生し、労働契約の履行
ができなくなり、雇用者と労働者が協議を経ても労働契約の変更に合意が達成できな
(太字・下線筆者、以下同様)
い場合
(2)即時解雇(第 39 条)
①試用期間中に採用条件に適さないと確認された場合
②雇用者の規則制度に著しく違反した場合
③重大な職務怠慢、不当行為により雇用者に重大な損害を与えた場合
④労働者が同時に他の雇用者と労働関係を持ち(二重雇用)、業務遂行に深刻な影響を与え、
かつ雇用者が指摘しても是正を拒否した場合
⑤詐欺、脅迫またはその他の手段により相手方の意思に反して労働契約を締結し、もし
くは変更させた場合であって、労働契約締結が無効とみなされる場合
⑥法により刑事責任を追及された場合
※これら会社都合解雇の場合は、労働組合への事前通知が義務2付けられている(第 43 条)。
2. 解雇禁止事由
同時に、労働契約法には解雇を禁止する事由(第 42 条)も定められている。
下記該当者を解雇すると違法行為となるので、上記 1.に加え注意が必要。
①職業病の危険を伴う業務に従事していた労働者が離職前の健康診断をおこなっていな
い、または職業病の疑いのある労働者が診断を受けている期間中、あるいは医学観察期
間内である場合
②当該事業所で職業病にかかり、あるいは業務上の負傷により労働能力を失ったこと、ま
たは一部失ったことが確認された場合
③病気または業務外負傷により規定の治療期間内にある場合
④女性従業員の妊娠、出産、哺乳期間内である場合
⑤当該事業所に連続満 15 年勤務し、かつ法定退職年齢まで 5 年未満である場合
⑥法律規定、行政規定に定めるその他の状況にある場合
3.現実的な対応
現実には、労働契約中途における従業員解雇は中国の社会制度、労働習慣から強い軋轢
を発生させやすく、いったん本人が納得したとしても、後日訴訟に持ち込まれるケースも
後を絶たない。したがって、企業としては解雇の根拠となる客観的な証拠書類をそろえ、
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労組の同意を得る必要はないが、通知を失念すると損害賠償を求められることもあるので注意。
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本人同意の署名を受け、退職後も保管しておく必要がある。3
また、退職時に「競業避止」同意書の提出も認められており(第 23 条)、有効期間は退職
後 2 年間、双方話し合いによる経済的補償の支払が必要とされている4。在職時に知り得た
技術、営業等の企業情報の秘密保持誓約書についても、退職時に必ず提出を受ける。
なお、本人都合による退職は契約期間中であっても、30 日前の申し出により基本的に自
由とされる(第 37 条)が、この場合、生活補償金(退職金)支払は義務付けられていない。
ちなみに、中国労働契約法では定年退職者への退職金支給が不要とされる一方、定年退
職を除く労働契約の満期終了時には「勤続年数×退職前年の平均賃金」かつ上限 12 か月分
(すなわち前年度年俸に相当)の退職金支給が義務付けられている(第 47 条)ので、これを上回
る金額の生活補償金を条件として定年退職前、あるいは契約期限前の本人都合(希望)退職を
募る方法は中国でも合法かつ有効と考えられる5。
以上
本レポートの目的は情報の提供であり、何らかの行動を勧誘するものではありません。本レポートに記載
されている情報は、執筆者個人が信頼できると考える情報源に基づいたものですが、その正確性、完全性
を保証するものではありません。ご利用に際してはお客さまご自身でご判断くださいますようお願いいた
します。
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労働契約法上でも 2 年以上の保管義務がある(第 50 条)。
退職から 3 か月以内に締結し、
退職前年平均給与の 30%毎月支給が目安とされる(2013.1.14
「最高人民法院司法解釈」)。
20 名または 10%以上の人員整理は、30 日前までに労働監督当局への申請が必要(41 条)。
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