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業務に新たな価値を提供 垂直統合型プラットフォームの新

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業務に新たな価値を提供 垂直統合型プラットフォームの新
特 集
垂直統合に
シフトする
次世代IT
プラットフォーム
の真実
Part1
モダナイゼーションを推進し、
業務に新たな価値を提供
垂直統合型プラットフォームの新潮流
世界の主要な ITベンダーは、サーバやストレージなどのハードウェアから仮想化ハイパーバイザー、データベースやアプリケーションサー
バなどのミドルウェア、システム管理ソフトウェアまで自社のベスト・オブ・ブリードで構成した、垂直統合型のプラットフォーム製品を一斉に
投入し始めた。これは、かつてのメインフレーム時代に見られた、ベンダーによる囲い込み戦略の再来なのだろうか。それとも、ITシステ
ムに新たな価値をもたらすイノベーションなのだろうか。垂直統合型プラットフォームの“真実”を読み解いていく。
2
小山健治
Hitachi Storage Magazine Vol.9
Part1
ベンダーロックインからオープンシステムへ
かつてメインフレーム(大型汎用コンピュータ)によって
モダナイゼーションを推進し、
業務に新たな価値を提供
垂直統合型プラットフォームの新潮流
急速に浮上してきた
仮想環境の複雑化の問題
企業や社会の情報化が進められていた時代、各ベンダーは
だが、一気呵成に進んできたはずのオープンシステム化
ハードウェアから OS 、ミドルウェア、アプリケーションまで
への流れが、ここにきて大きく変化し始めている。世界の
一貫して提供する、いわゆる垂直統合モデルの下でビジネ
主要な IT ベンダーは、サーバやストレージなどのハードウェ
スを展開しており、IT 業界は上位数社がシェアを分けあう
ア から仮 想 化 ハ イパ ー バ イザ ー 、デ ータベ ース やアプリ
寡占状態にあった。
ケーションサーバなどのミドルウェア、システム管理ソフト
そうした中でユーザー企業は、いずれかのベンダーの独
ウェアまで自社のベスト・オブ・ブリードで構成した、垂直統
自技術、独自アーキテクチャーに依存するしかなかった。価
合型のプラットフォーム製品を一斉に投入し始めたのであ
格決定の主導権はベンダー側にあり、システム構築や運用
る。
のコストはどうしても高止まりしてしまう。より低コストで導
エンジニアードシステム、リファレンス・プラットフォー
入できる魅力的なソリューションが見つかったとしても、あ
ム、仮想化統合アプライアンスなど、さまざまな呼び方がさ
る程度の資産が社内に蓄積されてしまうと、おいそれと他
れているが、感覚的にはメインフレームに近い。3 年くらい
社のアーキテクチャーに乗り換えるわけにもいかない。出
前であれば、ベンダーロックインへの強い警戒心によって、
来上がった IT システムの正確な仕様は、システムを開発・
恐らく誰にも見向きもされなかっただろうこうした垂直統合
構築したベンダーにしかわからないからだ。そして、どんど
型プラットフォームを、多くの企業が前向きに評価し、積極
ん「ベンダーロックイン(囲い込み)」された状態に陥ってい
的な導入への意欲を見せているのである。
く。
風向きの変化の背景にあるのが、仮想化された IT インフ
こうした“しがらみ”を断ち切っていく契機となったのが、
ラの運用管理の複雑化である。
1990 年代から 2000 年代初頭にかけて巻き起こったオープ
仮想化はハードウェアとソフトウェアの分離性を高めるこ
ンシステム化への潮流である。業界標準技術をベースとし
とで、リソースの効率的な利用を促す。社内に乱立してい
た汎用的なコンポーネントを、特定のベンダーにこだわるこ
た物理サーバを集約・統合することで、ハードウェアの導入
となく広い市場から調達し、自由に組み合わせることで IT シ
コストや保守コストを大きく削減することができる。また、1
ステムを構築するのである。
台の物理サーバに相乗りさせていた複数のシステムを、そ
一方でベンダー側は、さまざまな製品カテゴリにおいて
れ ぞれ 個 別の仮 想サーバ に切り分けて運 用 することによ
熾烈な競争を繰り広げることになる。この競争こそが、IT の
り、サービスレベルのコントロールも容易になる。物理サー
イノベーションを加速させ、急速なコストダウンを推し進め
バ上に発生したトラブルや負荷増加に対しても、仮想マシ
る原 動 力となったことは言うまでもない 。結 果 、x86 系の
ンを丸ごと別の物理サーバにライブマイグレーションするこ
サー バ に W i n d o w s S e r v e r や L i n u x を搭 載したプラット
とによって稼働を継続できる。このように仮想化を導入す
フォームがメインフレームをどんどんリプレースしていき、
れば、IT インフラが抱えていた運用管理の問題はほとんど
昨今では企業活動の中枢である基幹業務システムにまで浸
解消されるはずだった。
透している。
ところが、現実はその通りにはならなかった。
®
仮想化技術を導入することにより、業務に必要なリソー
スやプラットフォームをサービスとして利用者に提供するこ
●仮想化によるIT運用の複雑化
経営者の期待
●仮想化技術による高性能高
信頼な機器の高効率な活用
とが可能となるが、それはあくまでも見かけ上のもの
●投資効果の最大化
●事業価値創造への重点投資
である。運用管理に携わる者にとっては、隠蔽された
IT インフラに内在するハードウェアやミドルウェアの
複雑な構成から目をそむけることはできない。
アプリケーションに何らかのトラブルが起こった際
現実
●仮想サーバ数の急増
●さまざまなIT機器、管理ソフ
トウェアの組み合わせの増加
●データセンター運用環境の複雑化
●システム設計と検証の複雑化
に、その仮想マシンがどの物理サーバ で稼働してお
り、どのネットワークを介して 、どのストレージ のリ
ソースにつながっているのかといった関係を紐づける
Hitachi Storage Magazine Vol.9
3
特 集
垂直統合にシフトする
次世代ITプラットフォームの真実
のは非常に困難だ。物理環境と仮想化環境をそれぞれ別々
タの相互運用性や可搬性を確保することができる。すなわ
のツールで管理する必要がある。仮想化レイヤーが加わる
ち、既存のサービスの運用に問題や不都合が生じてきた場
ことによって、インフラの運用管理はむしろ以前よりも複雑
化してしまったのである。
垂直統合型プラットフォームは、こうした課題を抜本的に
合には、他社の垂直統合型プラットフォーム、あるいは IaaS
( Infrastructure as a Ser vice )や PaaS( Pla tform as a
Service )などのパブリッククラウドのサービスへ、最小限の
解決する。ハードウェアからソフトウェアまで一体化し、あ
手間で移行することも可能なのである。
らかじめ最適化された状態でインテグレートされているた
そもそも経営者にとっての目的は、IT インフラの構築や
め、これまで多大な工数を費やしていたシステム設計や動
運用にあるわけではない。IT システムを高効率で活用して
作検証、チューニングといった導入時の負担も低減される。
投資効果を最大化し、ビジネスの効率化や変革につなげる
シングルベンダーによる垂直統合モデルならではの、完全
ことができてこそ価値がある。
なワンストップ のサポートを受けられるのも大きなメリット
ビジネス環境の急激な変化に柔軟に企業が対応し、高い
だ。
競争力を維持していくためには、差別化の源泉となるコア
業務への積極的な経営資源の再分配を行い、継続的なイノ
経営者の期待に応える
今後のプラットフォームの要件
ベーションを実践していかなければならない。必須となるの
は、ビジネスの変化に合わせてシステムを変化させ続けら
れることである。そうした中から明確になってきた今後のプ
もっとも、各ベンダーがメインフレーム時代と同様に独自
ラットフォームに対する要件をまとめると、表 1 の 4 つのポ
アーキテクチャーによる囲い込みを狙っていたなら、決して
イントになる。
受け入れられることはないだろう。現在の垂直統合型プラッ
これらの 期 待に応えて いくのが、現 在 の 垂 直 統 合 型プ
トフォームが旧来のメインフレームと決定的に違っているの
ラットフォームなのである。ユーザー企業はその詳細な中身
は、x86 系プロセッサーや VMware ® ESX Server などの仮想
まで意識する必要はなく、ビジネスを効率的にドライブする
化ハイパーバイザ―、Windows Server ®、Linux といった業
ことに集中できるようになる。
界標準技術をベースに基本アーキテクチャーを構成してい
る点にある。
その意味で現在の垂直統合型プラットフォームは、ベン
ダーごとのベスト・オブ・ブリードで組み上げられた独自性
レガシー化した既存のITインフラに
モダナイゼーションを推進
の強いシステムでありながら、同時にオープン
実際問題として、企業がグローバル競争において優位を
システムとしての本質も兼ね備えている。
発揮し、収益を上げて成長し続けていくためには、これま
このため、企業は仮想化レイヤーを境界線と
で以上に高度で戦略的な情報活用が不可欠となっている。
して、その上位にあるアプリケーションやデー
「ビッグデータ」のキーワードに象徴される新たなアナリティ
●表1:今後のプラットフォームに求められる要件
4
Hitachi Storage Magazine Vol.9
ITリソースの
効率活用
仮想化運用とITリソースのオンデマンド利用によ
り投資効率を向上する。
また、ユーザーに意識させ
ないシステムの追加・変更が可能である。
変化への
即応性
システム構築にかかる時間を大幅に短縮し、迅速
にサービスインできる。
また、ITリソースを容易に
オンデマンド拡張できる。
運用容易性
システム運用の自動化、
自律化により省力化と安定
稼働を実現する。
サービスレベル
確保
システムの運用状態を
“見える化”
し、運用ポリシー
とサービスレベルの維持を支援する。
さらに、障害
発生時においてもシステムの稼働を継続するとと
もに、
オンラインでの保守を可能とする。
Part1
クスへの取り組みは、その最たるものと言えるだろう。た
だ、そうした新たなチャレンジに踏み出したくても、なかな
か身動きが取れないのが実情だった。
先に述 べた仮 想 化インフラ の 複 雑 化により、I T 部 門 の
モダナイゼーションを推進し、
業務に新たな価値を提供
垂直統合型プラットフォームの新潮流
●垂直統合型プラットフォーム選定のポイント
●運用管理を簡素化するための仕組みを備えているか
●業界標準に準拠したアーキテクチャーで構成されているか
80%近い工数がシステムの運用管理やメンテナンスに割か
れ、予算も、人材も足りないという壁に直面している。この
●ベンダーが業務に関する十分な知識、
ノウハウを持っているか
ままでは、情報を戦略的に活用する企業との格差は、ます
ます開いていくばかりである。
例えば、これまで多くの企業における情報活用は、デー
シー化した既存の IT インフラをモダナイゼーションしていく
タウェアハウスなどに蓄積されたデータ、すなわち過去の
ためのソリューションと見ることもできる。変化を捉え、シ
データを分析することで行われてきた。しかし、それでは
ステムをシンプ ル 化し、つ ねに最 適な状 態を維 持 すると
現在のビジネスのスピードに対応することはできなくなりつ
いったメリットを通じて、業務に新たな価値を提供していく
つある。
ことが可能となるのである。
現在のビッグデータ処理では、ソーシャル・メディア上で
交わされるツイート(つぶやき)やブログ、スマートフォンか
ら得られる位置データなど「ヒト」の活動から発生するデー
タ、さまざまな施設や設備などの「モノ」に埋め込まれたセ
ンサーやメーターが発信する M2M( Machine to Machine )
プラットフォーム選択の
重要ポイント
だからこそ、垂直統合型プラットフォームの選択は慎重
データなども取り込みながら、複合的な分析が行われてい
であるべきとも言える。各ベンダーのベスト・オブ・ブリード
る。
を組み上げた垂直統合型プラットフォームは、IT システムに
将来を予測してビジネスの先手を打つ、あるいは状況が
対して持つ思想を色濃く反映しており、それぞれ特長は大
変化した際に素早く舵取りを行うため、こうしたビッグデー
きく異なる。明確な方針を持たずに選択・導入した場合、自
タを迅速かつ高精度に処理し、戦略的に活用していこうと
社の業務ニーズにまったくマッチしないものになってしまう
いう動きが先進企業の間で活発化しているのである。
恐れがある。
なかでも注目が高まっているのが、時々刻々と発生する
まず、十分に考慮しておく必要があるのが、運用管理を
データ(ストリームデータ)を、その時点、その場で処理する
簡素化するための仕組みである。繰り返し述べているよう
「 CEP( Complex Event Processing:複合イベント処理)」と
に、現在の IT インフラの運用負荷を増大させている最大の
呼ばれる技術である。データに対する処理条件(イベント)
要因は仮想化環境の複雑さにある。この問題を解決するた
や分析シナリオ(パターン)をあらかじめ CEP エンジンに設
めには、仮想マシンと物理リソースの関係を“見える化”
し
定しておき、データがその条件に合致すると、即座に決め
て一元的に管理するとともに、運用をできる限り自動化・自
られたアクションを実行する仕組みだ。
律化していくことができる仕組みが求められる。加えて、既
クレジットカードの決済情報をリアルタイムに監視した不
存の運 用 管 理 体 制との親 和 性につ いても留 意しておきた
正利用の素早い検出、あらかじめ設定しておいた KPI のパ
い。
ターンが出現した瞬間に自動で注文を出す株式証券のアル
また、詳細な仕組みを意識する必要のない垂直統合型プ
ゴリズム取引などが代表的だ。世界各地に出荷した建設機
ラットフォームであったとしても、その存在がまったくのブ
械の稼働データを集約し、リアルタイムに「健康診断」を行
ラックボックスであって良いわけではない 。目的のアプリ
うことで予防保守のほか、燃費の向上や作業改善のアドバ
ケーションやサービスをその上に実装し、効率的に運用し
イスなどに役立てている建設機械メーカーの例もある。
ていくためには、さまざまな調整やカスタマイズが必要とな
内部構造の複雑化ゆえに硬直化してしまった既存の仮想
るケースも出てくるからだ。
化環境の上に、こうした CEP のような最新技術を実装しよう
こうしたニーズにどこまできめ細かい対応が可能なのか。
としても無理がある。一部サーバ のリプレースといった小
業務に関する知識や経験、ノウハウを有し、信頼のおける
手先の手直しだけで問題を解決することはできないからだ。
ビジネスパートナーとなりうるベンダーの製 品を選ぶこと
その意味で現在の垂直統合型プラットフォームは、レガ
が、最重要のポイントとなる。
Hitachi Storage Magazine Vol.9
5
特 集
垂直統合にシフトする
次世代ITプラットフォームの真実
Part2
プライベートクラウドの構築と運用管理を簡素化する
日立の統合プラットフォーム
ユ ニ フ ァ イ ド
主要な ITベンダーから相次いで垂直統合型プラットフォームが登場する中、日立が満を持して市場投入したのが「Hitachi U nified
コ ン ピ ュ ー ト
プラットフォーム
(以下、UCP)である。変化し続けるビジネス環境において迅速な業務構築・改変と、自動化・自律化による運用コ
Compute Platform」
ストの削減を両立させることがそのコンセプト。
「IaaS基盤モデル」と「PaaS基盤モデル」の 2種類のプラットフォームにより、用途に応じ
たクラウド環境を提供し、効率的なITインフラ運用をサポートする。
仮想化環境の管理ギャップを解消し、
すぐに使える統合プラットフォーム
を提供するものです。
──日立からも垂直統合型プラットフォームとして UCP が発
を 1つに統合する組織改編を行っていますね。UCPはこの取
売されましたが、どんな狙いで開発されたものなのでしょう
り組みの最初の成果と言えるのでしょうか。
── 日 立 はこれに先 立 ち 、もともと独 立して 活 動してきた
サーバ、ストレージ、ネットワーク、ソフトウェアの各事業部門
か。
青 島 おっしゃるとおりで す 。2 0 1 2 年
4 月 に I T プラット
本間 経営者は仮想化技術によって高性能・高信頼な機器
フォーム事業本部が発足し、これまでのような製品カテゴリ
を高効率で活用し、ROI を最大化することで、新たな事業
ごとの部分最適ではなく、プラットフォームとして全体最適
価値創造のために投資を振り分けたいと考えています。と
の価値を高めていくことをめざしています。1 つの組織とし
ころが現実はどうかというと、仮想サーバ数の急増によっ
てまとまったことで、時代の流れに合わせた製品を開発す
てデータセンターの運用環境は複雑化しています。また、
る体制が整いました。その結果、UCP の製品化が実現した
さまざまなベンダーの機 器 、複 数の管 理ソフトウェアによ
のです。
り、システム設計や検証作業も複雑化しています。
一言でいえば UCP は、こうした仮想化の管理ギャップを解
消するものです。サーバ、ストレージ、ネットワーク、管理
ソフトウェア をセットにして 、すぐに 使える統 合プラット
フォームとして提案しています。コンセプトは、「変化し続
──とはいえ、違った“文化”を持った事業部門が 1 つになる
中では、さまざまな衝突もあったのではないかと思うのです
が……。
青島 もちろん、まったく衝突がないわけではありません。
けるビジネス環境において迅速な業務構築および改変と、
例えば、ソフトウェアとハードウェアでは、開発プロセスや
自動化・自律化による運用コストの削減を両立し、攻めの IT
販売の進め方、原価の管理、投資の回収など、本質的にビ
戦略を可能とするプラットフォーム」です。
ジネスモデル そのものが違っているのですから、考え方の
── U C P に は 、
「IaaS 基盤モデル」
(UCP Pro for
VMware vSphere ® )と「PaaS 基盤モデル」
(UCP with
OpenMiddleware)の 2つのモデルが用意されていますが、
それぞれの特長を教えてください。
違いが浮き彫りになる場面も少なくありません。
しかし、サーバ、ストレージ、ネットワーク、ソフトウェアと
いった専門分野に関係なく、メンバーが膝を突き合わせて
開発に取り組む中で、お互いの価値観を認め合いながら切
磋琢磨していこうという空気が自ずと醸成されています。
本間 IaaS 基盤モデルは、プラットフォームを効率的に運用
また、それぞれの専門分野は企業買収によって 1 つになっ
したい お客さま向けに高 信 頼の仮 想 化 環 境を提 供 するも
たわけではなく、もともとオール日立としてやってきた仲間
の。一方の PaaS 基盤モデルは、プライベートクラウド環境
同士であり、高い信頼性に対する強い“こだわり”は共通し
を構築されるお客さま向けにミドルウェアを含めた実行環境
ています。
6
Hitachi Storage Magazine Vol.9
日立製作所 情報・通信システム社
ITプラットフォーム事業本部 事業統括本部
PFビジネス本部 担当本部長
日立製作所 情報・通信システム社
ITプラットフォーム事業本部 開発統括本部
統合PF開発本部 担当本部長
本間 久雄
青島 達人
こうした和の精神を持ってモノづくりに臨んでいく姿は、国
「 VMware ® vCenter ™ 」
(以下、vCenter )のプラグインとなる
産ベンダーならではの特長であり、強みになると考えてい
もので、仮想マシンとそれに対応したハードウェアを紐づ
ます。
け 、相 関 関 係を“ 見える化 ”し、一 元 的な管 理を実 現しま
す 。例えば 、仮 想 マシンを新しく立 ち上げ る際に 必 要な
ブレードサーバ、仮想化対応ストレージに
強化された管理ソフトウェアを実装
データストアの作成や割り当てなども、vCenter から呼び出
されるソフトウェアによりシームレスなオペレーションが可
能となります。これにより、業務側で仮想化環境を運用し
ている担当者は、IT 部門の管理者にその都度作業を依頼す
──UCPの具体的な構成要素について教えてください。
る必要はなくなります。
本間 まず IaaS 基盤モデルでは、高信頼のブレードサーバ
── PaaS基盤モデルの JP1は、どのような役割を担ってい
「 BladeSymphony BS500 」ならびに仮想化に対応したスト
るのでしょうか。
レージ「 Hitachi Virtual Storage Platform 」でハードウェアを
青島 最大の特長は、IT 運用を自動化する JP1/Automatic
構成し、新しく開発した「統合プラットフォームオーケスト
レーション機能」を組み込んでいます。
PaaS 基盤モデルのほうは、ブレードサー
バは IaaS 基盤モデルと共通ですが、スト
レージ には「 H i t a c h i U n i f i e d S t o r a g e
130 」を採用しています。また、運用管理
ソフトウェアとして「 JP1 」を、実行系ソフ
●VM管理画面からのシームレスなハードウェア管理
従来の管理形態
UCPでの管理形態
ITリソース管理者
vCenter画面
ITリソース管理者
トウェアとしてクラウドサービスプラット
フォームの「 Cosminexus 」ならびにリレー
統合プラットフォームオーケストレーション機能
ショナルデータベースの「 HiRDB 」を組み
サーバ
管理
込んでいます。
ストレージ
管理
ネットワーク
管理
──統合プラットフォームオーケストレー
ション機 能とは、どんな機能なのでしょう
か。
青島 仮想マシンと物理サーバの統合管
理 を 行 うも の で す 。具 体 的 に は 、
V M w a r e の 管 理 ソ フト ウ ェ ア で あ る
サーバ
管理
ストレージ
管理
ネットワーク
管理
ストレージ
LAN
SAN
サーバ
サーバ
ストレージ
ネットワーク
分断された個別管理
Hitachi Unified Compute Platform
一元管理
Hitachi Storage Magazine Vol.9
7
特 集
垂直統合にシフトする
次世代ITプラットフォームの真実
Operation( 以下、JP1/AO) の搭載です。JP1/AO は、仮想マ
オーケストレーション機能」を活用することで、仮想マシン
シン運用、サーバ設定など、運用手順書に従い手動で操作
のデプロイ時間を 15 日から 15 分程度*1 に短縮できます。ま
していた煩雑な IT 運用を自動化する製品です。日立が大規
た、PaaS 基盤モデルではテンプレート活用により仮想マシ
模データセンターの運用を通じて培ってきた運用手順の豊
ンの設計作業時間を 40 人日から 13 人日*1 へ削減することが
富なノウハウを自動化コンテンツとしてテンプレート化し、
可能です。こうしたサービスイン時間の短縮は、ビジネス
すぐに使えるコンテンツとしてご用意してます。これまでは
の環境変化に即応したいという経営者の要求に応えていき
運用手順書に沿って手動で実行していた複数のハードウェ
ます。
アやソフトウェアにまたがる複雑なオペレーションを、コン
*1 適用効果はお客さま環境により異なります。
テンツに記されたフローに基 づ いて自動 実 行 するわけで
す。仮想マシンが次々に立ち上がり、管理対象が増えて複
雑化してしまった仮想化環境においても、運用管理の負担
を大幅に低減することができます。
その他にも JP1 には、稼働監視ツールによる障害対処プロ
セスの迅速化、省力化など、自動運用支援のためのさまざ
まな機能が用意されています。これにより、IT 運用の容易
ソリューション提供のコアとして
カスタマイズ要件にも対応
── UCPに対してどんな企業から引き合いがあるのでしょう
か。
性を高めるとともに、重要業務で求められる高度なサービ
本間 現在のところ、業種としては金融系、産業・製造系、
スレベルを確保します。
公 共 系といった大 手 の お 客さまからの 引き合 い が中 心と
── UCPを導入することで、企業はどんなメリットを得ること
ができるのでしょうか。
本間 UCP の構成要素はすべて事前検証済みで、最適化さ
れた状態でインテグレートされているため、導入そのもの
なっています。日立がこれまで提供してきたプラットフォー
ムの信頼性を高く評価し、関心を持っていただいています。
──導入となった場合、どの程度までカスタマイズ対応は可
能ですか。
を非常に容易に行えます。同等のプラットフォームを個別の
本間 あまりにも根幹的な部分でのカスタマイズとなると、
コンポーネントから構築した場合と比べ、導入工数を 50 %
統合プラットフォームとしての本来の意義を失ってしまいま
削減 できます。
す。
“さじ加減”が難しいところですが、日立は UCP を「ソ
また、先 ほど青 島 が申し上げ た「 統 合プラットフォーム
リューションを提 供して いくためのコア」と位 置 付けてお
※1
り、可能な限りお客さまのご要望に応えていきたいと考え
●JP1/AOを活用したIT運用自動化の有効活用範囲
分類
適用例
●VM削除、
追加、
変更
臨時運用
●VM電源操作
●ネットワーク設定変更
●監視設定変更
導入効果
複雑な仮想環境の運用
や設定変更などの繰り
返し作業を自動化する
ています。
──その意味では、今後さまざまな業種・業務向けにサブメ
ニューやオプションを用 意し、U C P の I a a S 基 盤 モデ ル や
PaaS 基盤モデルを活用した商材としての幅を広げていくと
いった可能性もあるのでしょうか。
ことで 作 業ミスの 削 減
本間 はい。その方向に UCP を発展させていこうと考えて
や工数の削減。
います。例えば、現在の PaaS 基盤モデルに搭載している実
行系のソフトウェアは Cosminexus および HiRDB となってい
定常運用
●バックアップ
●レポート作成
定期的な作業工数の削減。
ますが、当然のことながら他のアプリケーションサーバ や
データベースを利用したい、あるいはオープンソース系のミ
ドルウェアを利 用したいと考えるお客さまも多くおられま
障害運用
●障害の暫定対処
●ログ採取
障害の一次切り分けの
す。そうしたニーズもしっかり受け止め、お応えしていかな
自動化で障害復旧時間
ければなりません。
を短縮。
IaaS 基盤モデルをベースに、お客さまの求めるソリューショ
ンを個別対応でインテグレートしていくというケースも十分
8
Hitachi Storage Magazine Vol.9
Part2
にありえると思います。
──そうした他社製のミドルウェアと組み合わせた場合でも、
日立の強みは活かされるのでしょうか。
本間 もちろんです。日立はさまざまな業務システムから社
プライベートクラウドの構築と
運用管理を簡素化する
日立の統合プラットフォーム
●日立統合プラットフォームの強化の方向性
「One Platform for All Data」
の事業ビジョンのもと、
ビジネス・アジリティ、
フレキシビリティ、
スケーラビリティの追求で
社会イノベーションとビジネス創生を支えるプラットフォームへ
会イノベーションを支えるインフラシステムまで豊富なシス
テム構築の経験を有しており、プラットフォームとともにそ
のノウハウをお客さまに提供します。
例えば、日立は SAP AGとの間で十数年にわたるアライアン
スを結んでおり、日立自身がユーザーとして SAP ®システム
今後
を利用し、お客さまに対してコンサルティングから構築、運
●仮想化されたITリソースの効
率活用で、あらゆる業務に対
応する柔軟性の強化
用まで一貫してサポートするワンストップソリューションを
提供しています。
●アプリケーションからプラット
フォーム までを含むリソース
統合管理の強化
また、次々に湧き出すように発生するビッグデータをリアル
タイムに活用し、競争力の強化や収益の向上を実現したい
というニーズの高まりを受け、メモリ上で高速なデータ処理
を実現する SAP AG のインメモリソフトウェア「 SAP HANA ® 」
をブレードサーバのハイエンドモデルである「 BS2000 」に実
装した「日立インメモリ DB アプライアンス for SAP HANA ™ 」
今回
●スケーラビリティとデータセン
ター間連携の強化
●構築迅速化
●運用容易化
●高信頼性
と呼ばれるシステムも手がけています。こうした実績から
も、日立が提供できる付加価値は多方面にわたります。
を行い、万一トラブルが起こった場合にも自動的に修復が
行われる――究極的にはこんな姿を思い描き、そこに一歩
さらなる進化をめざし、
ビッグデータ対応や自動化機能を強化
でも近づくべく、日立では JP1 をはじめとする運用管理ソフ
トウェアの進化に向けた開発に日々取り組んでいます。
──それはすごいですね。まさに運用管理の理想像と思われ
──ビッグデータというお話しがありましたが、今後の UCP
の展開を見据えたとき、やはりビッグデータ利活用への適用
は大きなテーマになりそうですね。
ます。
青島 もっとも、人間がまったく関与しないというのは極端
すぎる話ですが。普段はユーザーに意識させることなく運
本間 当然、そうなります。ビッグデータに関しては、先ほ
用を続け、故障やトラブルの予兆を捉えた場合など、人間
ど申し上げたようなストリームデータのリアルタイム処理の
による判 断が必 要になった時だけ管 理 者とコンタクトをと
ほか、Hadoop を利用した大規模な非構造化データの分析
り、アクションを促すといったレベルの自動化・自律化をめ
などに対するニーズも高く、UCP としてどういった形で対応
ざしたいと考えています。
していくのかは非常に重要なテーマです。さらに将来的に
日 立 は 効 率 的 な ストレ ー ジ 運 用 管 理 を 行 う「 H i t a c h i
は、多様なアナリティクスに関するアルゴリズムや手法、日
Command Suite 」をはじめ、よりハードウェアに密着したレ
立自身が蓄積してきた知見やノウハウをシナリオ化し、業
イヤーから監視や運用管理を支援するツール群も有してお
務に応じたテンプレートとして UCP に組み込んでいくといっ
り、これらの技術と JP1 の連携を深めていくことで、かなり
たことも考えていきたいと思います。
のレベルに到達できるのではないかと思います。また、日
── UCPのもう1つの特長である、運用管理の自動化もさら
に進化していくことになるのでしょうか。
立がお客さまのシステムを 24 時間 365 日体制でしっかり見
守り、安定稼働を支える「 JP1 システム監視サービス」の機
能強化や、JP1/AO のコンテンツをさらに拡充させるといっ
青島 プラットフォームの運用管理に関する作業負荷はゼ
た側面からも、お客さまにおける運用管理の省力化に貢献
ロが良い。システムが自律的に最適な状態にチューニング
していきます。
Hitachi Storage Magazine Vol.9
9
Technology Focus
「Hitachi Capacity Optimization 」
に見る重複排除技術の進化
バックアップ用途向けファイルストレージ「Hitachi Capacity Optimization」
(以下、HCO)に拡充が
図られた。今回の拡充では、従来から提供してきたポストプロセスモードに加え、新たにインラインモードを
追加、さらに両者を組み合わせたハイブリッドモードを業界で初めて提供。3種類の重複排除モードから業
務要件に適した方式を選択可能とすることで、より効率的なバックアップを可能とした。同時に、従来から
の HCOの特長機能である、データ構造に適した重複排除方式(ファイル単位、固定長チャンキング、可変
長チャンキング)
を自動選択する「Multi-layered Content-Aware」方式を継承、さらに性能と機能を強
化し、顧客のTCO削減を図る。
多様な重複排除方式を
どう選択すべきか
たのちに非同期で排除を行うポストプロ
スタンス化を行う。より細かい単位で処
セス方式の2方式がある。
理を 行うの が 固 定 長 チャン キング で 、
インライン方式では、データ転送終了
個々のファイル の中身を数 KB 程度のブ
企業内で扱うデータ量の増大とともに
とともに排 除も終 了するメリットがある
ロックに分割して重複排除を行う。さら
顕在化してくるのが、それらのデータの
が、転送速度を低下させてしまう。ポス
に、可変長チャンキングでは、データパ
バックアップ/アーカイブの問題だ。蓄
トプロセス方式は、データの書き込み自
ターンに応じてブロックを切り分けて重
積されるデータの中には、まったく同じ
体にはまったく影響を与えないため、短
複 排 除を行う。ファイル 単 位 や 固 定 長
内容のものも多数含まれており、そのま
時間でバックアップを完了できるのがメ
チャンキングは、処理負荷が軽いため高
まの状態で残していくのでは、どれだけ
リットだ。ただし、重 複 排 除 前のデータ
い書き込み性能が得られやすいが、デー
ストレージ容量を拡張してもキリがない。
をいったんストレージに保管する必要が
タに変更が行われると、変更点以降で切
そこで注目されるのが、重複排除技術
あるため、常に余裕を持たせた容量を確
り出されるブロックに“ズレ”が生じるた
で ある。これ は 複 数 存 在して いる同じ
保しておかなければならない。
め、容量削減の効果が低下する。
データを検出・削除するもので、データ
また、重複排除を行う単位に着目する
これに対して可変長チャンキングによ
の 内 容を損なうことなく保 管 容 量 の 無
と、大きく「ファイル単位」
「固定長チャ
る重複排除は、パターンに基づいてデー
駄、管理コストの増大を抑えることがで
ンキング(固定長ブロック単位)」
「可変
タを区切って重複を判断するため、変更
きる。
長チャンキング(可変長ブロック単位)」
後のファイルに対しても有効に機能する
ただ、一口に重複排除技術といっても
の 3 つの方式がある。
が、固定長チャンキングに比べて処理負
さまざまな方式がある。重複排除を行う
最もシンプルなのがファイル単位の重
荷は重くなる。
タイミングでは、データ転送中に排除を
複排除で、ストレージ内に同じファイル
難しいのは、それぞれ一長一短がある
行うインライン方式と、データを転送し
が 2 つ以上存在する場合にシングルイン
これらの方式をどう使い分けるかだ。
●重複排除動作モードの比較
インライン
モード
重複排除
ハイブリッド
重複排除
(書き込み時)
ポストプロセス
インライン処理と
ポストプロセス処理を
最適バランスで
組み合わせて実行
今 回 、H C O で はインライン
重複排除
重複排除
(バックグラウンド)
方 式を新たに追 加 すると同 時
に、両者のメリットを併せ持つ
「ハイブリッドモード」という動
作 モ ードを提 供 す る。この 重
書き込み性能
1次ディスク
使用量
10
Hitachi Storage Magazine Vol.9
低
中
無・小
高
大 複排除のコア技術を開発する
日立コンピュータ機 器 に お い
て、技術本部の技師長を務め
る尾形幹人は、次のように説明する。
「『インラインモード』は、ストレージへ
のデータ書き込みと同 時に重 複 排 除 処
理を行うものです。ポストプロセスモー
ドに比べるとバックアップ処理に時間が
かかりますが、書き込み終了時点で排除
も終了するため、バックアップと同時に
ディザスタリカバリ環境を簡素化できる
メリットがあります。一方、
『 ポストプロ
セスモード』では、すべてのデータをスト
日立製作所 情報・通信システム社
ITプラットフォーム事業本部 開発統括本部
ストレージ開発本部 システム第4設計部 部長
日立コンピュータ機器 技術本部
技師長
尾形幹人
里山元章
レージに書き込んだ後で重 複 排 除 処 理
を行うため、大量データの重複排除を夜
間 バッチ などで 一 括 処 理した い 企 業 、
除方式がある。日立のファイルストレー
てしまう」というリスクが 伴うの だ が 、
バックアップ性能を重視する企業などに
ジ全体の開発取りまとめである日立製作
HCO ではこれに対しても徹底した対策を
適して います 。今 回 、新 規 に 開 発した
所 ストレージ開発本部 システム第 4 設
施しており、重複排除データの信頼性を
『ハイブリッドモード』は、データのバック
計 部の部 長を務める里 山 元 章は、その
高めている。
アップ時に求められる処理性能や重複排
概要を次のように説明する。
「データが重複しているかどうかの判
除効率を分析し、その特性に合わせてイ
「 MCA は、バックアップデータのファイ
定はハッシュ関数を使った比較によって
ンライン処理とポストプロセス処理を最
ル形式を解析して管理部とデータ部に分
行うのですが、HCO では業界標準のハッ
適に組み合わせて重複排除を行います。
割し、切り出されたデータ部について、
シュ関数の倍長の計算でチェックを行う
性 能とコストの バ ラン ス のよ い バック
それぞれの形式や内容に適した重複排
強力なハッシュ方式を採用しています。
アップを提供します」
除方式(ファイル単位、固定長チャンキ
これにより、違うデータを同じデータと
なお、ハイブリッドモードにおいて、ポ
ング、可変長チャンキング)を自動選択し
見なしてしまう確率を大幅に低減しまし
ストプロセス処 理とインライン処 理をど
ます。MCA によって HCO におけるデータ
た。さらに、HCO では重複していると判
のように使い分けているのかであるが、
の削減効率は、従来方式の約 1.4 倍に高
定されたデータをバイナリ比較して検証
「 I/O 性能を低下させない範囲でインライ
まりました」
することも可能であり、重複排除データ
ン処理を行うというのが基本的な考え方
具 体 的には MCA は、圧 縮 、アーカイ
の誤判定はまず起こりません」
(里山)
で、圧縮率の高いデータにはインライン
ブ、Microsoft ® Office 、PDF 、DB といっ
こうした高い信頼性のもとできめ細か
処理を適用し、圧縮率の低いデータには
た主要なファイルタイプをカバーしてお
な重複排除を実現する MCA に加え、新
ポストプロセス処理を適用するというコン
り、それ ぞれの拡 張 子に基 づ いて適 用
方 式 ハイブリッドモードの採 用により重
トロールを行っています」
(尾形)
という。
すべき最適な重複排除方式を判断する。
複排除効果をさらに高めた HCO は、日々
上記の 3 種類の重複排除モードを要件
なお、重複排除を行う際には、「違っ
増加するお客さまデータの効率的なバッ
に合わせて選択することで、ストレージ
たデータを同じものと誤判断して削除し
クアップ運用を支援していく。
への書き込み I/O や重複排除対象となる
データ量自体を削減することが可能とな
る。HCO のベースとなっているユニファ
イドストレージ「 Hitachi Unified Storage
●Multi-layered Content-Aware方式による重複排除
複数のファイルをまとめたアーカイブファイルで、管理情報部のみ変更があった場合
100 シリーズ」の性能向上と併せ、当社
可変長チャンキング方式
システムによる実測では、バックアップ
排除
排除
管理
可変長チャンキング方式は、管理情報と
データをまとめてチャンキングするため、
管理情報が含まれるブロックはデータに
変更が無くても排除できない
ファイルA
管理
排除
管理
排除
ファイルB
管理
( 以 下 、MCA )と呼ばれる独自の重 複 排
(新規バックアップ)
ファイルA
管理
日立が HCO に搭載している特長機能と
して、「 Multi-layered Content-Aware 」
変更後データ
(バックアップ済み)
管理
データ形式や内容にあった
重複排除方式を自動適用
変更前データ
管理
40%削減した。
管理
に要 する時 間を従 来 モデ ル 比 で 最 大
Multi-layered Content-Aware方式
ファイルB
排除
排除
Multi-layered Content-Aware方 式 は、
管理情報とデータを区別してチャンキン
グするため、変更が無いデータを高効率
で排除できる
Hitachi Storage Magazine Vol.9
11
New Solution 1
大規模データの高速処理を実現する
新たなフラッシュストレージ戦略
HDDと比較し、圧倒的な高速性能を発揮する記憶装置としてフラッシュストレージが注目されている。そこに向けて日立が満を持して投入
したのが、
「Flash acceleration」と「Hitachi Accelerated Flash」
(以下、HAF)の 2つのソリューションである。高性能に加え、
高信頼性と高エネルギー性能を実現するこれらのソリューションは、ストレージの世界をどう変えていくのか。ここでは、日立のフラッシュス
トレージが生み出す新たな価値と、その進化の先にあるビジョンについて探っていく。
1モジュールあたり1.6TBの
大容量を実装可能
──今後の日立のフラッシュストレージ戦略
また、データ書き込み処理を効率化する
技術を適用することで、一般的な SSD に
比 べてデータ転 送 速 度の大 幅な向上を
図っており、ランダム読み出しで約 3 倍、
を牽 引していくソリューションとして、
ランダム書き込みで約 5 倍の高性能を実
2012 年8月に「Flash acceleration」
現しています。
を、同年 11 月に HAFを発表されまし
サーバ仮想化やデスクトップ仮想化、
た。そ れぞ れの 特 長をご紹 介くださ
あるいはビッグデータ解析などの領域で
い。
は、ストレージのパフォーマンスがシステ
ム全体のボトルネックとなりやすく、より
Flash acceleration は日立の高信頼、高
高い I/O 性能が求められています。HAF の
性 能 な エ ン タ ー プ ラ イ ズ ストレ ー ジ
高い性能は、こうした要望に応えるもの
( 以下、
「 Hitachi Virtual Storage Platform」
です。
VSP )の RAIDコントローラを、フラッシュド
ライブを活用するのに適した形に強化す
るソフトウェアです。
一方の HAF は、VSP 向けの高速なデー
タ処理を可能とするフラッシュモジュール
です。日立が独自開発したフラッシュメモ
コントローラとメディアの連携で
データの高度な信頼性を実現
── HAF が提供する価値とは、具体的に
はどのようなものですか。
リコントローラを搭載し、VSP がこれまで
サポートしてきた 400GB SSDと比べ、容
日立製作所 情報・通信システム社
ITプラットフォーム事業本部
開発統括本部
次世代ストレージ開発プロジェクト 部長
石川 篤
データを読み出し、安全な領域に移動さ
せます。さらに、VSP の RAIDコントローラ
と連携することで、データチェック結果を
定期的に通知し、HAF では回復できない
もちろん圧倒的な性能が最大の特長で
場合は VSP のコントローラのレベルでコレ
量あたりの導 入コストを半 減 するととも
すが、それを高い信頼性のもとで実現し
クションしてデータ回復を図ります。
に、1 モジュールあたり 4 倍となる 1.6TB
ていることも重 要で す 。N A ND 型フラッ
こうした 3 段がまえでデータの信頼性
もの大容量を実現しています。VSPトータ
シュメモリで用いられている MLC( Multi
向上が実現されています。
ルでは 192 モジュールを実装することが
Level Cell )という記録方式では、データ
でき、最大 307TB までスケーラブルにフ
を保持するために裏側でさまざまな処理
──汎用的な SSDモジュールを使ったス
ラッシュ領域を拡張することが可能です。
を必要とします。HAF は、モジュール内部
トレージ では、同 等 の 信 頼 性を実 現
で定期的にデータを読み返しチェックし、
することは困難なのでしょうか。
●Hitachi Accelerated Flash
フラッシュメモリ上のビット故障率を測定
することで、故障が進展する前にデータ
もちろん、一般に流通している SSD モ
を安全な領域に移動させます。また、ECC
ジュールの中にもデータ保全のためのさ
( Error Check and Correct memory )
回路
12
Hitachi Storage Magazine Vol.9
まざまな仕組みが実装されていますが、
による訂正範囲を超えるビット故障が発生
機 能 的には HDD をエミュレートしたもの
した場合、フラッシュメモリのパラメータ
で、それを利用するストレージメーカーと
を調整して読み直すリトライリード機能で
してできることは、RAIDコントローラによ
る対策のみとなってしまいます。
●RAIDコントローラとフラッシュメモリコントローラの連携による3段階のデータ回復
──すなわち、RAIDコントローラと HAF
を一 体 の ものとして 開 発したからこ
そ 、卓 越した信 頼 性を保 証 できると
いうわけですね。
Hitachi
Virtual Storage Platform
そのとおりです。そこがまさに日立の
レベル3
VSP連携での
データ回復
“こだわり”
と言える部分です。先にご紹
介した 3 段がまえのデータ保全の仕組み
は、これまで日立がミッションクリティカ
Hitachi Accelerated Flash
ルなエンタープライズシステムにおいて
重 要 な デ ータを 扱う中 で 培ってきた 、
レベル2
レベル1
フラッシュメモリ
リトライリード機能での
リフレッシュ
定期診断&リフレッシュ
データチェックやデータ回復に関する技
術や知見を投入することで実現したもの
です。日立ならではのモノづくりのノウハ
ウによって、お客さまに最大限の安心を
提供することができます。
Flash accelerationと
HAFの組み合わせで
高速なデータ処理を実現
MLCフラッシュメモリ
ラッシュストレージを導入したいと考
活かすという意味で、まずはエンタープ
えているのでしょうか。
ライズクラスの VSP への適用を優先しま
したが、同様のニーズはミッドレンジ以下
── Flash accelerationとHAFの 2つ
最も多く耳にするのが、データ処理の
のストレージにもあります。VSP で培った
のソリューションは、セットで利 用す
さらなる高 速 化と、データセンター内で
ノウハウをカスタマイズしながら、裾野の
ることが前提になるのでしょうか。
増 大し続け て いる I T インフラ の 設 置ス
広いストレージシステムに展開していく
ペースと消費電力の問題を、フラッシュス
可能性は、十分にありえると思います。
そのように考えていただいてかまいま
トレージを導入することで同時に解決し
せん。Flash acceleration と HAF をセット
たいという要望です。
で利用することで、100 万 IOPS*1 以上の
仮に 100 万 IOPS 以上の性能を HDD の
──今後に向けた日立のフラッシュストレー
ジの
“狙いどころ”
を教えてください。
デ ータ読 み 込 み 速 度を 実 現 できます 。
みで実現しようとすると、3,000 台以上の
データ処理やデータ解析などのさらなる
ドライブを実装して並列処理を行う必要
近年、クラウドコンピューティングの普
迅速化に貢献できると考えています。
が あ り ま す 。こ れ に 対 し て F l a s h
及やモバイル、センサー技術の進展など
accelerationと HAFを組み合わせたフラッ
により、企業や社会活動で発生するデー
シュストレージであれば、わずか 8U サイ
タは 爆 発 的 に 増 加して おり、そ れらの
ズの 1 ボックスで済みます。こうした圧倒
データを分析することで、有益な知見や
さらなる業務の迅速化
データのリアルタイム活用に貢献
的なスペース性能比と、もともと低電力
洞察(気づき)を生み出そうというビッグ
で動 作するフラッシュメモリの特 性との
デ ータへ の 取り組 みが 活 発 化して いま
相乗効果によって、大幅な省スペースと
す。また、日立としても次世代の社会イン
──どのようなユーザーがターゲットにな
省電力を実現できるのです。
*1 IOPS
(Input Output Per Second)
:1秒間に可能なI/O
(デー
タ入出力処理)
の回数
──現在、Flash accelerationと HAF
大手金融機関やデータセンター事業者
フラづくりやスマートシティの実現をめざ
した社会イノベーション事業を本格化さ
るのでしょう。
せています。
が 対 応して いるの は V S P の み で す
そうした中、大規模なデータ処理に高
など、大規模なシステムを運用しているお
が、将来的にはミッドレンジ以下のス
速なフラッシュストレージを適用すること
客さまを中心に引き合いが増えています。
トレージにも対応していくのですか。
で、さらなる業務の迅速化やデータのリ
アルタイム活用による高い付加価値の創
── そ れらの 企 業 は、どん な目 的 からフ
高性能と高信頼性という特長をフルに
造に貢献できると考えています。
Hitachi Storage Magazine Vol.9
13
New Solution 2
ミッドレンジクラスのコストパフォーマンスと
エンタープライズクラスの拡張性・信頼性を両立した
ユニファイドストレージ「Hitachi Unified Storage VM 」
日立はエンタープライズストレージで培ってきた高度な機能や高信頼性を、より容易に導入することができるハイエンドミッドレンジストレー
ジとして「Hitachi Unified Storage VM」を2012年 9月にリリースした。ビッグデータ利活用に向けた取り組みが加速する一方、シ
ステム投資や運用にかかるコストの削減との両立が強く求められる中で、HUS VMは最適なソリューションを提供していく。
ハイエンドミッドレンジ
ストレージの新展開
価格
日 立 は こ れ まで「 H i t a c h i V i r t u a l
●Hitachi Unified Storage VMの位置づけと対応する仮想化機能
ストレージ階層の仮想化・ボリューム容量の仮想化
ストレージデバイスの仮想化
エンタープライズストレージ市場
Storage Platform 」といったエンタープラ
イズ ストレ ー ジ と「 H i t a c h i U n i f i e d
Storage 100 シリーズ」といったミッドレン
Hitachi
Virtual Storage Platform
ジストレージの製品カテゴリのもとでスト
レージを展開してきた。しかし、データは
ますます大容量化し、活用形態も多様化
しており、さまざまなユーザーの要 件を
既存の製品カテゴリのみでカバーするこ
ハイエンドミッドレンジストレージ市場
Hitachi Unified Storage VM
とが次第に難しくなりつつあった。
こ の 課 題 に 対 応 す る た め 、日 立 が
Hitachi
Unified Storage 100シリーズ
2 0 1 2 年 9 月 に 販 売 を 開 始し た の が
(以下、
「 Hitachi Unified Storage VM 」
HUS VM )である。HUS VM は、エンタープ
ミッドレンジストレージ市場
スケーラビリティ・性能・機能
ライズストレージとミッドレンジストレージ
の間の「ハイエンドミッドレンジ」といえる
ストレージであり、ミッドレンジストレージ
高 密 度ドライブボックスのサポートと併
なるストレージ装置のボリュームを 1 台の
の「最適コスト」のメリットに加え、柔軟・
せ、優れた省スペース性の高密度実装を
迅 速な拡 張 性と容 易な一 元 管 理による
実現している。
HUS VM のボリュームとして論理的に束
ね、最大 64PB までの容量拡張性を提供
「即応性」や、エンタープライズクラスに
また、新たに開発された専用LSIを搭載
するとともにストレージリソースの一元管
迫る安全・安心なデータ保管とシステム
したデュアルコントローラ構成により、負
理を行うことが可能となった。
継続性を担保する「信頼性」を提供する。
荷集中を防いでプロセッサの利用効率を
そ の 他 に も 、リ モ ートコピ ー 機 能
平準化し、ストレージシステム全体として
「 Hitachi Universal Replicator 」の搭載に
エンタープライズストレージの
仮想化機能を搭載
のスループットを高める。万一の障害発
よる高信頼なデータ保護やディザスタリ
生時も、片方のプロセッサブレードで処
カバリへの対応、ブロックデータとファイ
理を行い、サービスを継続できるのも大
ルデータを 1 システムにまとめて格納す
HUS VM で特に注目すべき点がスケー
きなメリットである。
ることができるユニファイドストレージと
ラビリティの高さで、ドライブ数をクラス
さらに、これまでエンタープライズスト
しての運用など、日立の最新のストレー
最大級の 1,152 台まで拡張することが可
レージ のみで提供されてきたストレージ
ジ技術が余すことなく投入されている。
能だ。キャッシュ容量も最大 256GB まで
デバイス仮想化機能「 Hitachi Universal
ビッグデータ利活用時代に向けて HUS
搭載することができ、3.5 型ドライブを最
Volume Manager 」が HUS VM にも搭載さ
VM は、ストレージインフラの強化に大き
大 48 台まで搭載することが可能な 4U の
れることになった。これにより、機種の異
く貢献していくのである。
14
Hitachi Storage Magazine Vol.9
T
O
ソリューション
P
I
C
S
「Hitachi Storage Adapter for Symantec NetBackup™
OpenStorage」を販売開始
ストレージ機能を活用したバックアップ運用の一元管理を実現
日 立 は 、シ マン テックによる技 術 支
デ ー タ 保 護 ソフトウェア「 S y m a n t e c
プ作業とは別に、ストレージ管理者がス
援、検証協力のもと、バックアップデー
(以下、NetBackup) と日
NetBackup ™ 」
立 の ユ ニファイドストレ ージ「 H i t a c h i
(以下、
Unified Storage 100 シリーズ」
HUS 100 シリーズ)を連携させる製品。
トレージ管理画面を通じて、リモートレプ
タの作成から、ストレージを利用した遠
隔 地 へのデータ保 管 、復 旧までの一 元
管理を可能とするソフトウェア「 Hitachi
リケーション機能に関する設定や操作を
行う必要があった。
本ソフトウェアにより、ストレージ側で
Storage Adapter for Symantec
NetBackup™ OpenStorage 」を製品化し、
2012 年 10 月 10 日から販売を開始した。
従来、ストレージ間のデータ転送機能を
の作業が不要になることで、バックアッ
使って遠隔地へのバックアップを行うに
プデータの作成からデータの遠隔地への
は 、バックアップシ ステ ム の 管 理 者 が
保 管 、復 旧まで の 作 業 が 一 元 化され 、
このソフトウェア は、シマンテックの
NetBackup の管理画面で行うバックアッ
バックアップ運用の負担が軽減される。
アワード
「Storage Vendor of the Year at 2012 UK CRN Awards」
を
日立データシステムズが受賞
日立データシステムズ( HDS )が 2012
ジ企業として表彰された。
年 11 月 15 日、
「 Storage Vendor of the
今回の受賞では、HDS のチャネル戦略
Year at 2012 UK CRN Awards 」を受賞し
への重点的な投資がパートナーの成長に
た。UK CRN Awards は、ソリューション・
寄与してきたこと、英国のパートナーを介
プロバイダーや販売代理店向けの情報メ
したビジネスの拡大により、英国のビジネ
ディア、CRN の英国サイトが、IT のカテゴ
ス社会に大きく貢献したことが評価され
リごとにその年の最優秀ベンダー、ディス
たと考えられ、HDS では、これまで推進し
トリビューター、リセラーを表彰するもの
てきたチャネルプログラムが認められた
で、HDS は 2012 年の年間最優秀ストレー
ものだと喜こんでいる。
イベントレポート
「Hitachi Platform Solutions World 2012」で
統合プラットフォームと最新ストレージを紹介
日立は 2012 年 11 月 9 日、日立の最新
今後求められる IT プラットフォームの要
ション」と題した講演が行われた。ビッグ
ソリュ ー シ ョン を 紹 介 す る イ ベ ント
「変化
件として「 ITリソースの効率活用」
データ時代を迎える中、その利活用を見
「Hitachi Platform Solutions World
への即応性」
「運用容易性」
「サービスレ
据えたクラウド構築についてストレージ
2012 」を開催した。
ベル確保」の 4 つを挙げ 、これらを高次
の観点から解説。荒川は「増加し続ける
このイベントで登壇した日立製作所 IT
元で実現する新しいプラットフォーム製
多 様なデ ータ処 理に対 応して いけるよ
プラットフォーム事業本部 統合 PF 企画
品としてサーバ、ストレージ、ネットワー
う、プラットフォームの基本性能を高め
部 主任技師の荒木 成典は、「クラウド
ク、ソフトウェアを統合した UCP の優位
るとともに、仮想化技術で容易に効率よ
の迅速かつ容易な構 築 、運 用を実 現 す
性を強調した(関連記事:2 ページ)。
く活用できるようにしていく」と日立のス
る日 立 統 合 プ ラットフォー ム H i t a c h i
一方、日立製作所 IT プラットフォーム
トレージプラットフォーム戦略を説明し、
Unified Compute Platform( UCP )」と題
した講演で、2012 年 10 月 22 日に発表さ
れた統 合プラットフォーム UCP を紹 介 。
事業本部 ストレージ企画部 主任技師の
同社が掲げる「ユニファイドストレージ」
荒川 敬 史からは「データ爆 発 時 代の情
のコンセプトにもとづいた製品群、およ
報システムを支えるストレージソリュー
びその導入事例を紹介した。
Hitachi Storage Magazine Vol.9
15
先
進
事
例
東建コーポレーション株式会社
http://www.token.co.jp/
「Hitachi Virtual File Platform」の導入で
ストレージ統合とクラウドサービスを活用したBCP対策を実現
多くの企業では、ますます大容量化・多様化する企業内データの効率的な運用と災害対策が、IT戦略における重要な課題となっている。そ
こで名古屋市に本拠を構える総合建設企業 東建コーポレーション株式会社(以下、東建コーポレーション)は、ファイルストレージの更改に
あたり日立の仮想ファイルプラットフォーム「Hitachi Virtual File Platform」
(以下、VFP)を導入。同モデルの「Cloud on-Ramp」
機能によって社内データを遠隔地の日立データセンターへ自動的にアーカイブ /バックアップする体制を整備することで、シンプルな運用と
BCP 対策を両立させ、将来のSAN/NAS ストレージ統合を実現する基盤づくりにも成功した。
*1
*2
*1 Business Continuity Plan
*2 Storage Area Network/Network Attached Storage
本格的なBCP対策も
実現できる大きな
付加価値を提案
用事業をサポートしている。
品開発元である日立製作所さんとも協調
同社は 2011 年、ファイルストレージの
したトータルなサポート体制を準備してい
老 朽 化にともない 、新 機 種 の 導 入プロ
ただける点にも信頼が置けました。そこ
ジェクトを発足。将来に向け、ファイルス
で当社にとって基幹系のシステム品とし
1974 年に創業した東建コーポレーショ
トレ ー ジ( N A S )とブ ロックストレ ー ジ
ては 初 め て の お つきあ いとなる日立グ
ンは、リース建 築を通じた“ 土 地の有 効
( SAN )の統合環境を構築した上で、既存
ループさんでしたが、システム導入をお
活用と活性化”
を提唱し、アパート・賃貸
のファイルストレージでの冗長構成をさら
願いすることにしたのです」とその経緯
マンション・マンスリー・貸 店 舗の企 画・
に整備し、増え続けるデータのバックアッ
を説明する。
設計・施工から仲介・管理・経営代行まで
プもスピーディかつ高信頼に行えること
行う総合建設企業として数多くの実績を
を大きな目標に据えた。
積み重ねてきた。IT を事業戦略の重要な
そして複数ベンダーによるプロポーザ
基盤と位置づける同社は、営業・設計積
ル の中から選ばれたのが、株式会社 日
算・建築・仲介といった複数の業務をシス
立システムズ(以下、日立システムズ)が
日立が開発した VFP は、ファイルシステ
テマチックに連動させた「東建 IT マネジメ
提 案した V F P とミッドレンジ ストレージ
ま
ム容量を業界最大の 1PB(ペタバイト)
ント・システム」を構築。常に業界の先端
「 Hitachi Adaptable Modular Storage 」
で拡張でき、多数の NAS やファイルサー
を走る IT 化の実現で、オーナーの土地活
(以下、AMS )の連携ソリューションだった
バを統合できる次世代ファイルストレー
のだ。東建コーポレーション 情報システ
ジ だ。独自機 能である Cloud on-Ramp
東建コーポレーション株式会社
情報システム部
技術インフラ課 主任
小島 誠氏
16
Hitachi Storage Magazine Vol.9
バックアップ負担をなくし
東西2拠点でデータを保持
ム部 技術インフラ課 主任の小島 誠氏は
は、VFP を
“クラウドへの入り口”
と位置づ
「日立システムズさんのプランは、われわ
け、あらかじめ設定したポリシーに基づ
れの要求をすべて満たしていただけでな
いて、企業内で増え続けるデータをデー
く、VFP の機能である Cloud on-Ramp を
タセンター 側 の ストレ ージ へ 自 動 的 に
使った日立データセンターへの自動アー
アーカイブ / バックアップすることが可能
カイブと、東西のデータセンター 2 拠点を
で ある。ロ ー カ ル ディスクに 置 か れ た
結んだ遠隔レプリケーションなどの新提
データはもちろん、クラウド側にあるデー
案が盛り込まれていました。つまり単純
タに対しても、いつでも透過的にアクセ
なバックアップ だけでなく、本 社 側スト
スできるため、ユーザーはその格納位置
レージ容量の最適化を図りながら、本格
を意識したり、バックアップに手間をかけ
的な BCP 対策も実現できる大きな付加価
たりする必要がなくなる。また日立では東
値があったのです。クラウド時代にふさわ
日本・西日本 双 方 の 高 信 頼 デ ータセン
しい画期的なソリューションに加え、専任
ター間でレプリケーションを行う二重化
を配置し、製
の CE( Customer Engineer )
サービスを提供しているため、東日本大
●東建コーポレーションに導入されたシステムの概要
Cloud on-Ramp
VFPノード
AMS
クラウドサービス
ファイル用の
領域
Cloud on-Ramp
ファイル用の
バックアップ領域
DBサーバ
ブロック用の
領域
AMS
ブロック用の
バックアップ領域
バックアップ
バックアップ
クラウドサービス
東建コーポレーション社内
震災以降、多くの企業から注目を集める
と VFP を仮想的にシステム連携すること
BCP の観点からも非常に有効なソリュー
で、移行用サーバを設置することなく短
ションとなっている。
時 間 で デ ータを移 行 できるオンライン
Windows ®クライアントとの親和性が高い
Windows ® Storage Server が使われてい
た。このため日立の独自 OSとなる VFP の
「 従 来からバックアップテープ の遠隔
データ移行機能を備えている。これにより
導 入には「 若 干の不 安があった」と語る
保 管という災 害 対 策 は 行って いました
「何のトラブルもなく予想以上に短時間で
のは、アイネット クラウドシステム事業
が、テープは消耗品ですので、本当に災
移行できました。非常に満足しています」
「し
部 第 2 システム部の市古 圭司氏だ。
害があった際にリストアできるか不安要
と糟谷氏は語る。
かしそれも杞憂に終わりました。テスト段
素がありました。またフルバックアップす
2012 年 7 月から全面稼働を開始した新
階 でも実 運 用 でもファイルシ ステム に
るにも丸 2 日の時 間を要していたため、
システムは、本社用ファイルサーバ、仲
まったく問題はありません。また日立さん
今回提案されたスピーディかつ高信頼な
介 物 件 用 画 像ファイル サ ー バ を 2 台 の
の場合、少しでも不安要素があるとすぐ
ソリューションは、災害対策だけでなく業
VFPノードが冗長化構成で担い、ストレー
に対応にあたってくださるため、安心し
務効率の向上やコスト低減にも役立つと
ジ本体には AMS2300 、そのバックアップ
てシステムを運用できます」と笑顔を見
考えました」と小島氏は語る。
データ移行の容易性も
高く評価
用ストレージとして AMS2010 が導入され
せる。
ている。AMS2300 のディスク領域は VFP
今 後 は A M S 2 3 0 0 に 、基 幹 系 デ ータ
領域とブロックストレージ領域に仮想分
ベースや業務サーバのブロックデータも
割されており、今後は FC*3 や iSCSI*4 で接
順次格納していくことが計画されている
続される基 幹サーバ や業務サーバ の統
ほか、ファイルストレージと同様、基幹系
また「データ移行の容易性も VFP を選
合ストレージ環境が実現できるようになっ
データのリモートバックアップも日立のク
んだポイントの 1 つ 」と語るのは 、東 建
ている。
ラウドサービスを利用して行うことが検
コーポレーションの IT 戦略を長らくサポー
本社用ファイルサーバは現在 5TB 、仲
討されている。
トしている株式会社 アイネット クラウドシ
介物件用画像ファイルサーバは将来的に
「今回のファイルストレージ導入におけ
ステム事業部 第 2 システム部 課長代理
は1億ファイル前後までの増加を見込ん
る成功事例をベースに、さらなるコスト低
の糟谷 良成氏だ。
でいるが、Cloud on-Ramp によって今後
減につながるストレージ統合や、ステー
「既設ファイルストレージにはオフィス
も容量不足の心配はない。
クホルダーの皆さまの安心につながる事
データやメールデータ、画 像・図面など
*3 Fibre Channel
業継続性の向上に向けた取り組みを一段
4TB 以上もの膨大なデータが格納されて
*4 Internet Small Computer System Interface
いました。これを業務停止を最小限に抑
えながら新環境にどう移行するのかも大
きな課題となっていたのです」と糟谷氏
は続ける。
これに対し VFP では、既設のストレージ
と加速させていきます」と力を込める小
島氏。
今後は基幹系データも
統合運用
従 来 の フ ァ イ ル ストレ ー ジ に は
その期待に応えるため、今後も日立グ
ループは高信頼のクラウドサービスと連
携したストレージソリューションの強 化・
拡充を継続的に展開していく。
Hitachi Storage Magazine Vol.9
17
先
進
事
例
アスぺックシステムズ( Aspöck Systems )
http://www.aspoeck.at/
Hitachi Unified Storage 110を使用して
運用コストを削減、データストアの増大をサポート
オーストリアのオーバーエスターライヒ州を拠点とするアスペックシステムズは、自動車照明システムを専門とする会社だ。この会社は、世
界中の顧客向けに、計画から開発、製造に至るまで、競争力のあるオーダーメイドのソリューションを提供している。このようなソリューショ
ン提供には柔軟性が要求され、またヨーロッパの子会社全体で著しく増加しているデジタルデータをサポートできるように、IT環境をアッ
プグレードする必要があった。その同社が選択したのが、
「Hitachi Unified Storage 110」
(以下、HUS 110)である。効率的でセ
キュアなインテリジェントストレージソリューションにより、増加の一途をたどるデータを管理し、運用コストを抑えている。
事業ネットワークの拡大に伴う
データフローの増大が課題に
のは、それぞれの顧客に合わせてカスタ
マイズされ、ちょうど良いレベル の柔軟
性を保ちながら革新的な製品を提供する
ブロック、ファイル、および
オブジェクトデータを管理
1977 年に農業用車両向けの照明の製
完全なソリューションのおかげである。創
アスペックシステムズは、増え続けるビ
造から事業を開始したアスペックシステ
業以来、常に成長し続けてきた同社は、
ジネス要件に対処するために「 HUS 110 」
ムズは、現在ではあらゆる種類のトレー
現 在では最 高レベ ル に組 織 化された販
を選択した。このストレージソリューショ
ラーの総 合 的な照 明システムで欧 州の
売およびサービスネットワークをヨーロッ
ンは、ブロック、ファイル、オブジェクト
大手メーカの 1 つに成長した。加えて同
パ全土で展開しており、加えてブラジル
デ ータを 一 元 的 な ストレ ー ジ プ ラット
社では、照明ユニットやケーブル 配 線、
にも子会社を展開している。
フォーム上でバックアップ および管理す
プラグ連結部、および配電器を作ってお
会社が成長し、ネットワークが拡大した
る 。こ の ソリュー ション は 少 なくとも
り、それは独自の自動車機器、トラックけ
結果、同社が扱うデータフローは増加の
99.999 %のデータ可用性を持つ稼働の
ん引ユニット、オートバイ、農業用車両や
一途をたどっている。そのため、データ
信頼性、データ増加の最適な管理、ハイ
バイクラック向けのものである。
を包括的に体系化する需要も増大してい
レベルなコスト効率、および最適化され
アスペックシステムズが成功している
た。
た管理を実現する。
弊社では、かなりの数の守るべき規格があ
ります。私たちはデータ管理のプロセスを著
しく簡単かつ効果的にするための、安定的で効率
的な技術を求めていましたが、単一の包括的なス
トレージシステム上に既存のサーバからすべての
データを移行することは、実に困難であることがわ
かりました。Hitachi Unified Storage 110
は、弊社のすべての要件を満たしており、最高のコ
ストパフォーマンスを実現する最適なソリュー
ションを提供してくれています
アスペックシステムズ ITマネージャー
トーマス・ホフィンガー氏
18
Hitachi Storage Magazine Vol.9
このソリューションは、アスペックシス
能 のファイルストレージ「 H i t a c h i N A S
それと同時にコストの最適化も実現でき
テムズにおける予測不能なデータの増大
Platform 」の能力を統合したものだ。HUS
ました」
に対応できる最大限の拡張性を提供し、
100 シリーズは今や、最高の機能を統合
構造化データと非構造化データのいずれ
し、以 前 は 異 なる分 野 に 属して い たブ
を管 理 する場 合も等しく効 果を発 揮 す
ロックデータとファイルデータを結合する
る。つまり、日立が提供するソリューショ
のである。
ンの柔軟なアプローチにより、製造業者
さらに HUS 100 シリーズは、著しく高性
優れた効率:
最小限のエネルギー、
空調、管理要件
のストレージに関するさまざまな要 件が
能かつ大容量であり、使いやすく、コスト
このストレージ区分に属する他のシス
満たされるのである。
を最適化でき、データ非依存のアーカイ
テムと比較して、HUS 110 は、ストレージ
生産データにも、別のデータプールに
ブを備えている。
設置スペースあたりの容量を著しく増大
よってい つでもアクセスできる。グロー
「目的に合ったストレージソリューション
させる一方で、電源の要件は低いままに
バル化され、相互に接続されたビジネス
を探していましたが、日立データシステ
保てる。その効率的な設計は、傑出した
の世界では、保存されたデータにいつで
ムズが提供する HUS 110 という、真に期
性 能と最 高の 容 量を実 現 するだけでな
もアクセスできることが重要であるため、
待のできる結論にたどり着きました。この
く、エネルギー、空調、管理の要件を必
このようなデータの可用性が必要不可欠
ような革新的なソリューション、さらには、
要最小限に抑制することが可能だ。アス
なのである。
最初から専門的なアドバイスとサポート
ペックシステムズは、特にエネルギー価
を提供してくださったパートナーを高く信
格の上昇の観点から見た場合に、その投
頼しています」とアスペックシステムズの
資から持続可能性と性能という成果を得
Hitachi Unified Storage
100シリーズによる
ミッドレンジおよびNASの統合
IT マネージャーを務めるトーマス・ホフィ
ている。
ンガー氏は語る。
アスペックシステムズが提起する、経
同氏は次のように続ける。
「日立データ
済性とエネルギー効率が持つ重要性は、
Hitachi Unified Storage 100 シリーズ
シ ス テ ム ズ が 実 施し た 迅 速 か つ プ ロ
業界のリーダーである同社が提供してい
(以下、HUS 100 シリーズ)は、HUS 110 、
フェッショナルな実装プロセスは、称賛に
る製品の領域からも明らかである。新し
HUS 130 、および HUS 150 の 3 モデルか
値 するものでした。今 では H U S 110 に
い LED 技術により、同社は自動車業界に
ら構成されている。このシリーズは、ミッ
よって、あらゆる種 類のデータの提 供 、
おけるコスト効率の向上に貢献している。
ドレンジ のブロックストレージ「 H i t a c h i
管理、アーカイブが柔軟に行えるように
その同社がコスト効率の高い HUS 110 を
Adaptable Modular Storage 2000 シリー
なっています。容量が増大しても、安定
選択したのは、必然だったとも言えるだ
ズ」の後継であり、その機能に加え高性
した技術がもたらすメリットを享受でき、
ろう。
Hitachi Storage Magazine Vol.9
19
!
よくわかる
ストレージ
仮想化
に適した
仮想化環境下
カバリーの
ディザスタリ
仕組みとは?
プリ
ティカ ル な ア
ッションクリ
従 来 より、ミ
シス
、
で
する目 的
障 害 から保 護
ケ ーションを
く用
クラスタが広
する高可用性
及
テムを二重化
想化環境の普
た。しかし、仮
し
ま
き
て
れ
ら
害
い
えて大規模災
の複雑化、加
、
に伴うシステム
し
対
に
り
ま
ズ の高
う新たなニー
っ
への対応とい
な
に
難
対応が困
ーション で は
旧 来 のソリュ
下に
、仮 想 化 環 境
は
こでここで
構
ています。そ
リー)サイトの
ィザスタリカバ
おける DR(デ
説明します。
成についてご
DRサイトはなぜ必要?
護サイトがダウンしたら、DR サイトが業務
を引き継ぐ
(フェイルオーバーする)
ように
BCP/DR(事業継続計画 / 災害復旧)への
します。
取り組みは以前から大企業を中心に進め
なお、日立のエンタープライズストレー
られていましたが、そのニーズが急速に
ジとミッドレンジストレージは、サーバを
高まったのは、2011 年 3 月 11 日の東日本
介さずにストレージ間でデータをコピーす
大震災の発生以降のことです。地震や津
るレプリケーション機能を備えています。
波による直接的な被害に加え、その後に
発生した電力不安も、多くの企業に BCP/
DR 対策を真剣に考え直させるきっかけと
なりました。
だれが復旧させる? DRの落とし穴
従来から、ミッションクリティカルなシ
DR サイトの基本的な考え方は上記のと
ステムは、IT 機器やネットワーク、電源な
おりですが、だれがどの段階でフェイル
どを二重化して保護する対策がよく採ら
オーバーを実行するかという点が問題と
れてきましたが、単一サイト内で行える対
なります。もちろん、その答えは必要に応
策は、大規模な自然災害や広域停電への
じて自動的にフェイルオーバーが実行さ
備えとしては不十分です。
れるようにすることです。
では、どのような対策が必要になるの
もしも、復旧手続きを手作業で行う必
でしょうか。もしも、数時間のシステムダ
要があるとしたら、復旧までに余計な時
ウンが事業の存続にかかわるような損害
間がかかってしまいますし、オペレーショ
につながることが予想される場合は、サイ
ンミスや稼働確認の見落としなどで DR サ
トがダウンしても業務を継続できる仕組み
イトがうまく機能しない恐れがあります。
が必要です。その仕組みが、データの遠
また、災害時は交通機関のマヒや道路の
隔コピーを活用した DR サイトなのです。
渋滞などで、運用担当者がオペレーショ
DR サイトの基本的な考え方は、次のと
ンできない状態になるかもしれません。
おりです。まず、保護サイトと同じ構成の
そのため、稼働状況の監視から障害発
DR サイトを遠隔地に用意します。次に、
保護サイトのデータが自動的に DR サイト
生箇所に応じた復旧手続きの実行、稼働
にコピーされるようにします。そして、保
くの DR サイトが絵に描いた餅になってし
確認までを自動化しておかないと、せっか
●DRサイトの基本的な考え方
保護サイトが
ダウンしたら
処理を引き継ぐよ
DRサイト
同期
普段は
こっちで
処理するよ
保護サイト
20
Hitachi Storage Magazine Vol.9
いては、サイト全体の可用性を監視して、
●復旧手続きを自動化しておかないと……
サイト間でフェイルオーバーする別な仕
組みも必要になります。
すなわち、仮想化環境下で DR サイトを
構築するには、アプリケーション、仮想マ
シン/物理サーバ、サイトの各監視対象
に対応したツールを組み合わせる必要が
オフィスにいかないと
DRサイトに
切り替えられない!
!
あるのです。しかも、それぞれのツール
が独立した状態で存在していては、DR サ
イトの構築や運用が困難になります。お
互いに連携する仕組みを持ち、管理の一
元化が可能なソリューションが求められて
いるのです。
日立、シマンテック、
CTCの3社で
業務自動復旧を検証
まいかねないのです。
仮想化で可用性確保の
要件が変化
の稼働状況を監視して、必要に応じて仮
こうした仮想化環境下の DR ニーズに
想マシンを再起動したり、物理サーバが
対応するために、日立、株式会社シマン
故障した場合は別な物理サーバで仮想マ
テック、伊藤忠テクノソリューションズ株
シンを起動させるツールが用意されてい
式会社( CTC )の 3 社は、業務自動復旧を
ます 。しかし、そうしたツー ル はアプリ
実現する DR ソリューションの検証を共同
冒頭で、障害に対処するための二重化
ケ ーション の 稼 働 状 況 監 視 や 、リカバ
で行っています。
システムに触れましたが、こうしたシステ
リー 機 能をサポートしておらず 、アプリ
3 社が検証したソリューションは、仮想
ムでは「クラスタウェア」と呼ばれるソフト
ケーションを最初から立ち上げ直さざるを
化環境として VMware vSphere ®を利用す
ウェアがフェイルオーバーを担っていま
得ないため、保存されていないデータは
るシ ス テ ム に 対 応 す るもの で 、アプリ
す。クラスタウェアは、アプリケーション
再入力しなければなりません。
ケ ー ション の 保 護 を シ マ ン テック の
とサーバの稼働状況を監視し、必要に応
これらに加えて、DR サイトの構築にお
(以下、
「 Symantec ™ A pplica tionHA 」
じてアプリケーションやサーバを再起動
し、サーバ自体に障害が発生している場
合は 待 機して いるサー バを立ち上げま
●仮想化技術とDR対応により要件が複雑化
す。
リモート
サイト間の
フェイルオーバー
しかし、仮想化環境が普及して複雑化
した現在のシステムでは、クラスタウェア
物理サーバ
だけで可用性を確保することが難しくなっ
ています。ひと口に仮想化環境と言って
物理サーバ間の
フェイルオーバー
いますが、ハイパーバイザ―ひとつ取っ
ても、VMware vSphere ® や Hyper-V ®、Xen
Server、KVMなどの種類があり、仮想マシ
ンはそれぞれのハイパーバイザ―の制御
DRサイト
AP
OS
OS
アプリ
ケーション
の監視
ストレージ
物理サーバ
の監視
ればなりません。
管理製品には、仮想マシンと物理サーバ
AP
ハイパーバイザー
ウェアとハイパーバイザ―が連携しなけ
また、各ハイパーバイザ―に対応した
仮想マシン
仮想
マシン の監視
レプリ
ケーション
下にあります。そのため、仮想マシンを
フェイルオーバーさせるには、クラスタ
物理サーバ
保護サイト
Hitachi Storage Magazine Vol.9
21
!
よくわかる
ストレージ
仮想化
● ApplicationHA、VMware HA、VMware SRM、日立ストレージの連携で仮
想化環境下のアプリケーションを保護
ApplicationHA )で、仮想マシ
ン/物理サーバ の保護を
(以下、
「VMware High Availability」
VMware HA)で、サイトの保護を「VMware
(以下、
vCenter Site Recovery Manager 」
VMware SRM )と日立ストレージのリモー
アプリケーション・
レベル
ApplicationHA
アプリ
ケーション
トレプリケーション機能で分担する構成に
なっています(表1)。
ApplicationHA
SRM
Component
仮想マシン/
物理サーバ・レベル
これらのツールは、以下のように連携
VMware HA
します。
まず 、アプリケ ーション を 監 視 す る
サーバ
VMware SRM
ApplicationHA は、仮想マシン上で動作
し、アプリケーションに障害が発生した場
サイト・レベル
合 は 、そ の 再 起 動を 試 みます 。また 、
ApplicationHA はアプリケーションの稼働
状況を VMware HA に通知しており、通知
が一定期間とだえると VMware HA が仮想
Hitachi SRA
ストレージ
日立リモートレプリケーション機能
マシンの復旧を図ります。
VMware HA は、仮想マシンと物理サー
SRM には重要なプラグインがもう 1 つあり
リケーションの復旧が確認されました。
を監視し、仮想マシ
バ( ESX/ESXi サーバ)
ます 。日立 ストレージ のリモ ートレプリ
さらに、構築・運用が容易な点もこのソ
ン上の OS が停止している場合は仮想マ
ケ ー ション 機 能 を 制 御 す る「 H i t a c h i
リューションの特 筆すべき点です。例え
シンの再起動を、物理サーバに障害が発
Storage Replication Adapter 」がそれで
ば、ApplicationHA は、仮想マシンごとに
生している場合は影響を受ける仮想マシ
す 。こ の プ ラ グ イ ン の 働 き に よ り 、
インストールする必要がありますが、イン
ンを別の物理サーバで起動します。
VMware SRM で設定した仮想マシンのリ
ストール作業は VMware 環境の管理コン
そして、DR サイト構築でかなめとなる
カバリー計画に基づいて、サイト間コピー
ソールである「 VMware vSphere Client 」か
のが VMware SRM で、このツールはサイ
が自動的に実施されます。
ら一括して行えます。また、ApplicationHA
ト間の仮想マシンのリカバリー計画、テス
以 上 のように 、各レベ ル を担 当 する
によって監視されるアプリケーションの稼
ト、実 行を担 います 。V M w a r e S R M と
ツールが密に連携することで、どのレベ
働状況の確認、制御も VMware vSphere
A p p l i c a t i o n H A は 、プ ラ グ イン の
ル で 障 害 が 発 生した 場 合 でも、アプリ
Client の画面で一元管理することが可能
「 ApplicationHA SRM Component 」によっ
ケーションの可用性が保たれます。実際、
です。
て連 携されており、サイト間のフェイル
「仮想マシン上
3 社による動作検証では、
業務の継 続性を高い次 元で担 保しつ
オーバー実行後は、このプラグインを通
のアプリケーション障害」、
「仮想マシン
つ 、運 用・管 理を 簡 素 化 す る今 回 のソ
じて ApplicationHA によるアプリケーショ
の障害」、
「物理サーバの障害」、
「サイト
リューションは、安心して導入できる真の
ン監視が再開されます。また、VMware
障害」のすべてのケースにおいて、アプ
DRソリューションと言えるでしょう。
●表1 仮想化環境向けDRソリューションの主要なコンポーネント
提供企業
シマンテック
ヴイエムウェア
日立
製品
Symantec™ ApplicationHA
VMware 環境で仮想マシン上のアプリケーション可用性を担保
ApplicationHA SRM Component
保 護 サ イ ト で DR サ イ ト の ApplicationHA Console と 仮 想 マ シ ン の 通
信 を 可 能 に す る VMware SRM の プ ラ グ イ ン。DR サ イ ト 切 り 替 え 後 に
ApplicationHA によるアプリケーション監視を再開
VMware High Availability(VMware HA)
高可用性機能。仮想マシンや物理サーバに障害が発生した場合に、仮想マシンの
再起動や別の物理サーバでの仮想マシンの起動を実行
VMware vCenter Site Recovery Manager
(VMware SRM)
災害対策機能。保護サイトと DR サイトで仮想マシンのリカバリーの計画、
テスト、
実行が可能
Hitachi Storage Replication Adapter
(Hitachi SRA)
VMware SRM のプラグイン。VMware SRM と連携し、日立リモートレプリ
ケーション機能の制御を実施
日立リモートレプリケーション機能
22
概要
Hitachi Storage Magazine Vol.9
サイト間コピー機能。サーバを介せずにストレージ間のデータ・コピーを実現
V o l . 9
DATA DRIVES OUR WORLD
AND INFORMATION IS THE NEW CURRENCY
〜データは世界を動かす
そして、情報は新しい価値を生み出す〜
データは世界を動かす力を持っています。データに息吹を吹き込むことで、情
報に生まれ変わります。そして、情報は通貨のように世界中で交換され、格納
され、使われることで新しい価値を生み出します。
データと情報は、企業にとって最も重要な資産といえるのです。
DATA DRIVES OUR WORLD
AND INFORMATION IS THE NEW CURRENCY
このビジョンの下、日立ストレージソリューションは、企業が膨大なデータから
価値ある情報を生み出すことを支援していきます。
編集後記
最適解をどうやって見つけるか
[発 行]
エンタープライズ ITにおけるストレージの
ションをご紹介しました
(12 ページ)
。フラッ
要件が、ますます複雑化・高度化していま
シュストレージは容量単価はディスクストレー
す。ビッグデータ利活用や仮想化環境へ
ジよりも高価になりますが、条件によっては
の大規模集約といった利用形態の拡大に
コストが逆転する可能性があることは興味
伴い、より一層の高速化が求められる一方
深いところです。
で、データ保護やコンプライアンス対策の
詳しくは当該記事をご覧いただきたいの
ために企業の保有データ量は爆発的な増
ですが、これまで大量のディスク台数を投入
加を続けており、
さらなる大容量化も求めら
して実現していたトップクラスの高速性能
れています。
を、フラッシュストレージならより少ない台数
株式会社 日立製作所
情報・通信システム社 ITプラットフォーム事業本部
〒140-8573 東京都品川区南大井六丁目26番2号
大森ベルポートB館
すべての用途を1つのストレージに集約
で発揮できます。台数、消費電力、設置ス
Microsoft、Windows Server Hyper-Vは、米国Microsoft Corporationの米国及び
その他の国における登録商標または商標です。
SAP、SAP HANA、SAP NetWeaver は、SAP AGのドイツおよびその他世界各国
における登録商標または商標です。
Symantec、ApplicationHAは、Symantec Corporation または関連会社の米国およ
びその他の国における商標または登録商標およびサービスマークです。
VMware、VMware vSphere、VMware vCenterは、米国およびその他の国におけ
るVMware, Inc.の登録商標または商標です。
本誌に記載している会社名・製品などは、それぞれの会社の商標または登録商標です。
本誌記載の内容について社外からの寄稿や発言は、必ずしも当社の見解を示している
わけではありません。画面表示をはじめ、製品仕様は改良のため変更することがあります。
できれば運用は容易になるのでしょうが、技
ペース、管理工数の削減が、TCO削減へ
術的には可能でも経済的な条件をクリアで
とつながるわけです。
きるとは限りません。どの部分を集約してど
では、高速性能に加えて、大容量も必
の部分を分離するか、そしてそれぞれのデー
要になるケースはどうでしょう。フラッシュだけ
タストアにどのようなソリューションを適用す
で構成するか、フラッシュとディスクを組み合
るか。企業は、性能、容量、コスト、機能な
わせた階層ストレージとすべきか。顧客企
ど、諸々の条件を勘案して最適なソリュー
業だけで最適なソリューションを選ぶのは困
ションを選択する必要があります。
難です。結 局のところ、信 頼できるパート
例えば、今号では圧倒的な高速性能を
ナーを選ぶことが最善の策となるのではな
実現する日立のフラッシュストレージ・ソリュー
いでしょうか。
Hitachi Storage Magazine Vol.9
23
Fly UP