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Title 視空間知覚における認知的過程の研究( Abstract_要旨 )

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Title 視空間知覚における認知的過程の研究( Abstract_要旨 )
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視空間知覚における認知的過程の研究( Abstract_要旨 )
大羽, 蓁
Kyoto University (京都大学)
1969-01-23
https://doi.org/10.14989/doctor.r1332
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
author
Kyoto University
、I ・- ・
・
、J ・・
J
【7 】
氏)
大
羽
おお
ば
--
藁
しげ る
学 位 の 種 類
文
学 位 記 番 号
論 文 博 第 3
5号
学位授与の 日付
昭 和 4
4年 1 月 23 日
学位授与の要件
学 位 規 則 第 5 条 第 2 項 該 当
学位論文題 目
視空 間知覚 におけ る認知的過程の研究
論 文 調 査 委員
教 授 園 原 太 郎
(主
学
博
士
査)
論
文
内
教 授 野 田 叉 未
容
の
要
森 授 井 島
勉
旨
本論文は視空間知覚 における現象的諸特性を規定す る内外 の諸要因の関係を, 主 と して所謂恒常性 の回
帰傾向の吟味によって詳細 に検討 し, これに統一的な説 明を与え るため機能主義的立場 よ り体系化を試み
た ものである。
第 1章 よ り第 4章 に亘 って, 著者は知覚 の意義について理論的考究を行 な う。 即ち現代心理学における
機能主義的立場 と目され る諸学説を発展的に系統づげ, 特 に著者 も最 も影響 を与えた トランズアクシ ョニ
ズムと確率 的機能主義 とについて, その理論的枠組 を詳細 に検討叙述 している。 これ らの考究 を通 じて著
者は, 知覚 は 「プロバ ブルな意味を理解」 す る認知的活動であ り, 現前 の事態を過去の因果的複合 に基 い
ueの確率的適用であるとす る立場を明確に し,s
e
tの概念を導入 して著
て妥当な対象的関係に達成す る c
者 の実験的研究の問題設定を行 な っている。
3章 に亘 ってほ, 如上 の視点から展開され る諸側面につ いて, 自家 の実験的研究を中心に,
第 5茸 よ り1
主 と して恒常性判断に及ぼす主体の内的過程 に関 して綿密な論考がなされている。 これ らの実験 は還元視
空間における外的 ・ 内的諸要因の分析, 特殊な視空間における知覚の特質 の吟味, 発達的および人格的側
面よ りのアプローチ, 知覚判断における主体 的変数の検討な ど, 多岐に亘 っているが, その中で も
β運
動の最適時柏を規定す るとされた現象的距離の概念を再吟味 し, 現象的距離 と刺激配置条件 との対応を審
かに検討 して, 恒常性が常に恒常別 と網膜法則への回帰の 「妥協」 と して出現す ることを指摘 し た 研 究
(第 5茸), 長 さの再生的恒常判断が還元状況 において もかな りな 恒常度を もってなされ得 ること並 びに
初めに与え られ る手がか りの影響 の大なることを示 した実験 (第 6章), テ レヴ ィジ ョンの如 き媒体 にお
ける形 の恒常性 の研究 において現実性 と恒常性 との関係 につ き問題を示唆 した結果 (第 9童), 発達的見
地 より恒常性を検討 し, 幼児 において視角的要因への回帰がよ り顕著で恒常性 は発達的に達成 され るもの
であろ うとの結論 に達 した研究 (第1
1章) 等 に注 目さるべ きものである。
これ らの実験的研究 は常に関連す る諸家の諸知見諸考察を禍羅 して論考 され, 機能主義的アプローチの
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有効性を支持す るデータと してその意義が強調 されているが, 同時 に尚多 くの条件の分析 と, 事実的知見
の集積の必要な ることの指摘を忘れていない。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
視空間知覚 の現象的特質, 殊 にその所謂恒常性 についての研究は, 現代心理学における中心問題のうち
で も最 も根幹 的な ものの一つ と して, 実に移 しい数 に上 っているo 著者 の実験的研究 は多岐に亘 るとはい
え, 個 々にみればその大海の中の片 々たる断片 に過 ぎないか もしれないが, 著者が広 く文献を 渉 猟 検 討
し, 視空間知覚を一つの認知的活動 として研究す る立場を理論的に発展 させ, この展望 のなかに自家及び
諸家の研究結果を批判位置づげ, 体系的構想を基礎づけたことは, 実験的事実が紛糾 している現状 におい
ては却 ってその意義が認め られ るといい得 る。
著者 のとった機能的立場は研究 の出発点 と しての視点の定位であ り, 同時に又実験結果の解釈 に当って
の説 明的立場で ある。 理論的にこの立場 において人間行動の適応的性格を捉え, 知覚活動が経験の中に成
立す る可塑性 に富む認知的枠組 の適用 によって現前す るとい う見解 は, - ケの見識 と して尊重 されるが,
それだけに概念 の明確化 に実験的検討を要す る幾多の本質的問題点を蔵 している。 矛盾す る他者の研究結
果 の評価 に当 っては, 更 に慎重 に して公平なる実験的吟味が必要で あろ う。 著者 の論考 において, この点
にいささか早 断 にす ぎるとみ られ るものもあ り, 著者 自身 もい う如 く今後の条件分析, 事実的知見の集積
ue
が望 まれ る。 しか し, 複雑なる現象的知覚特質 を認知 における和解的達成 として捉え, その解明に, c
の選択,s
e
tの形成, 確率的達成, 人格的特質等 の要因を導入す ることによって, 一応系統的なアプロー
チの体系を展開 した業績は, 著者 自身 によって指摘 されたい くつかの実験的新知見 とともに, 現時点にお
いては高 く評価 されて然 るべ きで ある。
よって本論文 は文学博士の学位論文 と して価値 あるものと認める。
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