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聖マリアンナ医科大学病院の後発医薬品使用促進へ

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聖マリアンナ医科大学病院の後発医薬品使用促進へ
2015/2/25
茨城県後発医薬品推進協議会 薬剤師セミナー
聖マリアンナ医科大学病院の
後発医薬品使用促進への取組について
2015年3月7日(土)15:30~17:00
聖マリアンナ医科大学病院
薬剤部 増原 慶壮
本日の内容
1.ファーマシューティカルケアの理念と実践
2.ジェネリック医薬品の事実と誤解
3.ジェネリック医薬品の普及への取組
4.平成26年診療報酬改定におけるジェネリック医薬
品の影響
5.臨床薬剤師の育成と論文の批判的吟味
6.薬剤師の臨床活動に役立てる
~MUE・CDTMの実践・フォーミュラリーの作成~
7.まとめ
1
2015/2/25
聖マリアンナ医科大学病院




診療科:29科(27病棟)
病床数:1208床
(実稼働:1028床)
医師・看護師数:576名・961名
薬剤師数:74名(2014年4月予定)

理念:
「生命の尊厳」を重んじ、
病める人を癒す、愛あ
る医療を提供します。
医師に怯んで沈黙を選べばいつか、逆風にさらされる
東京慈恵会医科大学外科学講座統括責任者・血管外科教授
大木隆生 TURNUP 2015(20)
「日本の高薬価構造が是正され、その財源が技術料引き上げ
や患者負担の軽減の方に振り向けられ、国民医療の改善が図
られることを強く求める」
2
2015/2/25
医師に怯んで沈黙を選べばいつか、逆風にさらされる
東京慈恵会医科大学外科学講座統括責任者・血管外科教授
大木隆生 TURNUP 2015(20)
薬局薬剤師が徹底的に疑義照会し無駄な薬剤を駆逐し、効果の低い処方せん
を糾弾している様が浮かび上がるような状況であってほしい。
処方権は医師にあるとは言え、疑義照会の電話を煙たがる医師に、それ以上も
のが言えない。医師には逆らいづらいのでやむ得ないと受け取れますが、私は
あえて責任放棄といいたいし、『薬の袋詰めだけしている』と揶揄されても反論で
きないでしょう。そこで押し返すのが、薬剤師法に明記された使命であり、存在意
義です。
公費を使った性善説(使命感を持って行動する)の世界で、国民のために働くこ
とを期待されている自覚とともに切磋琢磨し、責任を全うし、いざというときには
自浄能力を発揮し信頼を得る。その際、鍵となるのは薬剤師の遺伝子に組み込
まれた医療者としての良心と使命感です。
薬剤部の理念
【ファーマシューティカルケアの理念】
「患者のQOLを改善するという明確な成果を引き出
す目的のために、責任ある薬物治療を提供する」
1.疾病の治療
2.患者に症状の除去又は軽減
3.疾病の進行を止めたり、遅らせたりすること
4.疾病又は症状の予防
C. Hepler, Am.J.Hosp. Pharm.,1990,47, 539
WHO(1993)
3
2015/2/25
薬剤部のビジョン
 薬物治療に責任をもつ臨床薬剤師
 チーム医療での薬物治療の専門家としての
職能の発揮
ファーマシューティカルケアに基づく
薬剤師の行動指針
1.適正で合理的な薬物治療への参加
☑薬物治療ガイドラインに遵守
☑根拠に基づく薬物治療(大規模臨床試験)
2.副作用の収集・解析・究明
3.廉価で適正な薬剤の選択
☑ジェネリック医薬品の使用促進(一般名処方)
☑経済的な薬剤の選択(フォーミュラリーの作成)
4
2015/2/25
臨床を担う薬剤師の病棟での業務
 主たる業務







処方チェック(5 Rights*、効能効果、禁忌、相互作用など)
処方提案(EBM、経済観点など)
薬物治療モニター(効果・副作用・検査など)
TDM(全患者のコンサルテーション、採血指示)
回診・カンファレンスの参加
医薬品情報の提供(医師、看護師など)
薬剤部員と薬学生の教育
 従たる業務





服薬指導(退院指導など)
持参薬の管理
配置薬・中止薬の処方入力
定時薬のセット
抗がん薬の調製
*:5rights(正しい患者、正しい薬剤、正し
い投与量、正しい投与経路、正しい投与時間)
FIP(国際薬学会議)病院薬剤師声明
~第68回FIP:バーゼル 2008~
2008年8月29日~9月4日の期間に、スイスのバーゼル市
で開催された第68回FIPにおいて、100カ国余りの薬剤師が
1.全体に関わる声明
集まり、グローバルな病院薬剤師の役割について討議が行
2.薬品購入
われました。2日間にわたって夜遅くまで活発な議論がな
され、1つ1つの項目について各国の代表権を持つ病院薬剤
3.処方への影響
師によって投票が行われました。その後、語句の微修正が
4.医薬品の調製と搬送
なされ、最終的な声明として発表されております。この声
5.薬剤投与
明は、各国の経済状態などに関わらず、病院薬剤師として
遂行しなければならない基本行動計画です。
6.薬物モニタリング
我々日本のすべての病院薬剤師も、この声明を日々の業
7.人的資源と研修
務の基本として頂きたいと考えています。
平成21年6月16日
社団法人
日本病院薬剤師会
国際交流委員会
5
2015/2/25
FIP(国際薬学会議)病院薬剤師声明
~第68回FIP:バーゼル 2008~
【全体に関わる声明(1)】
1.病院薬剤師の最大に目標は、適正な判断・安全・有効・適切かつ費用対効果
に優れた医薬品使用により、患者に最大限の治療効果をもたらすことである。
2.エビデンスに基づいた「病院薬局実務基準」のガイドラインを世界的な規模
で作成すべきである。このガイドラインは、病院薬局業務の水準、領域、将来
にわたる基準を定義する国家的努力を支援するもので、相当する人的資源と研
修の必要条件が含まれなければならない。
3.5rights(正しい患者、正しい薬剤、正しい投与量、正しい投与経路、正し
い投与時間)が、病院でのすべての薬物治療における活動で確認されなければ
ならない。
4.保険医療当局や病院管理者は、病院における薬剤使用のすべてのステップに
おいて病院薬剤師を従事させなければならない。
5.保険医療当局者は、病院薬局に関する専門研修を受けた薬剤師によって、各
病院薬局が管理されるようにすべきである。
6.薬局長/薬剤部長は、病院において、適正な判断・安全・有効・適切かつ費
用対効果に優れた薬剤使用に責任を負う上級専門職である。
平成21年6月16日
社団法人
日本病院薬剤師会
国際交流委員会
6
2015/2/25
医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進
薬剤師を積極的に活用することが可能な業務
1.薬剤の種類、投与量、投与方法、投与期間等の変更や検査のオーダについて、医師・薬剤師等
により事前に作成・合意されたプロトコールに基づき、専門的知見の活用を通じて、医師等と協働して
実施すること。(CDTM)
2.薬剤選択、投与量、投与方法、投与期間等について、医師に対して積極的に処方提案すること。
(薬物治療の提案)
3.薬物治療を受けている患者(在宅の患者を含む)に対して、薬学的管理(患者の副作用の状況の
把握、服薬指導等)を行うこと。(在宅薬剤管理)
4.薬物の血中濃度や副作用のモニタリング等に基づき、副作用の発現状況や有効性の確認を行う
とともに、医師に対して、必要に応じて薬剤の変更等を提案すること。(TDMコンサルテーション)
5.薬物治療の経過などを確認した上で、医師に対し、前回の処方内容と同一の内容の処方を提案
すること。(同一処方の継続可否)
6.外来化学療法を受けている患者に対して、医師等と協働してインフォームドコンセントを実施する
とともに、薬学的管理を行うこと。(IC)
7.入院患者の持参薬の内容を確認した上で、医師に対し、服薬計画を提案する等、当該患者に対
する薬学的管理を行うこと。(持参薬管理)
8.定期的に患者の副作用の発現状況の確認等を行うため、処方内容を分割して調剤すること。(リ
フィル調剤)
9.抗がん剤等の適切な無菌調製を行うこと。(抗がん剤の無菌調製)
厚生労働省医政局長発0430第1号 2010年4月30日
在宅医療の基本は病棟
診療所医師
・診断と治療方針の決定
・治療のゴール設定
・総合的管理
訪問看護師
・24時間のケア
・日常生活の支援
・患者と医療者の
懸け橋
患 者
薬局薬剤師
・薬物治療の提案
・薬剤の情報提供
(患者&医療者)
・効果・副作用の
モニタリング
7
2015/2/25
ファーマシューティカルケアの取り組み
年月日
業 務 内 容
薬剤師数
01年10月
2病棟1名の薬剤師配置の開始(調剤・製剤業務の合理化)
36名
02年4月
ジェネリック医薬品導入の検討を開始、新人研修会の開始
03年4月
DPCの導入
03年5月
ジェネリック医薬品への切り替え(注射薬:64品目)
04年5月
一般名処方を開始(ジェネリック医薬品へ内服薬:115品目)
05年9月
薬剤部による抗がん剤の調製開始
41名
06年4月
2病棟1名の薬剤師配置を完了
43名
07年9月
1病棟1名薬剤師配置のモデル6病棟を開始
手術室への薬剤師配置
45名
08年4月
腫瘍センターとレジメン審査委員会発足
55名
08年9月
ジェネリック医薬品の直接取引き(ヤマトHD)
10年2月
1病棟1名薬剤師配置終了、ジャーナルクラブの開始
64名
12年4月
病棟薬剤業務実施加算の算定 一般名処方加算の算定
69名
13年4月
MUE、CDTMの取組、フォーミュラリーの作成の開始
71名
14年4月
ラウンド薬剤師の配置
74名
38名
ジェネリック医薬品の事実と誤解
2012年3月30日
8
2015/2/25
1.新薬(先発医薬品)と「同じ成分、同じ効能」か?
新薬(先発医薬品)の承認申請では26項目のデータをチェック。ジェネリック医薬品は
新薬で承認済みなので、安定性・同等性のみをチェック。だから、副作用のチェックがも
れるなどまるまる同一ではありません。
2.ジェネリックの効能に“ばらつき”がある
ジェネリックは新薬と比べて多くのメーカーで製造されますが、新薬と比べるとチェック
項目が少ないので、製法などが少し違っている場合があり、効能にばらつきがあります。
3.ジェネリックの効能格差は最大40%!
新薬では効能格差が+5%~-5%の範囲ですが、ジェネリックは許容範囲が+20%
~-20%であり、効き目が強いものと弱いものがあります。
4.薬局で良く効くジェネリックはもらえるの?
薬局ごとに採用しているジェネリックは違っていて、良く効くジェネリックを調剤してもら
えるとは限りません。ジェネリックに切り替えときは医師に相談しましょう。
ジェネリック医薬品の有効成分は、先
発医薬品の有効成分と同一の化合物
先発医薬品の有効成分
ジェネリック医薬品の
有効成分
9
2015/2/25
ジェネリック医薬品は特許期間が過ぎて国民共有
の財産となった先発医薬品の「有効成分」を用い、
新たに開発された「製剤」
「ジェネリック医薬品は服用後、体内に、先発医薬品と同一
の有効成分を同等に運ぶ製剤(入れ物・器)といえる。」
ノルバスク錠(先発)
有効成分 5mg
アムロジピンベシル酸塩
(アムロジピンとして)
アムロジピン錠(後発)
添加剤 200mg
内服剤
バイオアベイラビリティ
量 :AUC
崩壊
速度:Cmax
作
用
部
位
効
果
分散
血
液
溶解
溶液
吸収
腎
臓
尿
消化管
10
2015/2/25
先発医薬品と後発医薬品の承認申請資料
1 起源又は発見の経緯
イ 起源又は発見の経緯及び外国における使用状況
等に関する資料
2 外国における使用状況
3 特性及び他の医薬品との比較検討等
1 構造決定
ロ 物理的化学的性質並びに規格及び試験方法等に
関する資料
2 物理的化学的性質等
3 規格及び試験方法
1 長期保存試験
ハ 安定性に関する資料
2 苛酷試験
3 加速試験
1 単回投与毒性
2 反復投与毒性
3 生殖発生毒性
ニ 急性毒性、亜急性毒性、慢性毒性、催奇形性その
他の毒性に関する資料
4 変異原性
5 がん原性
6 局所刺激性
7 その他の毒性
1 効力を裏付ける試験
ホ 薬理作用に関する資料
医薬品原薬固有の
有効性・安全性は
共通である。
2 一般薬理
1 吸収
2 分布
ヘ 吸収、分布、代謝、排泄に関する資料
3 代謝
4 排泄
5 生物学的同等性
ト 臨床試験の試験成績に関する資料
臨床試験成績
その他
後発医薬品の製造承認申請の際に
必要な提出書類
製剤化した時の有効性・安全性
1.化学的・製剤的に同等性
ー規格及び試験方法
ー安定性、加速試験
欧米共通
有効性・安全性を保証
2.臨床的同等性(血管外投与)
ー生物学的同等性
11
2015/2/25
生物学的同等試験の目的
 臨床上の同等性の証明
 作用部位中薬物濃度推移が
重なっている場合
臨床試験は不要
作
用
部
位
中
薬
物
濃
度
 作用部位中薬物濃度が重
なっていない場合
臨床試験を行なう
生物学的同等性試験
作用部位中薬物濃度推移が重なっていることを示すこ
とで、臨床上の同等性を実証する試験
生物学的同等性試験の個別データ
クラリスロマイシン錠200mg(n=30)
2500
クラリシッド錠200mg(n=30)
2500
ジェネリック医薬品
先発医薬品
2000
血漿中濃度(ng/mL)
血漿中濃度(ng/mL)
2000
1500
1000
500
1500
1000
500
0
0
0
4
8
12
16
投与後の時間(hr)
20
24
0
4
8
12
16
投与後の時間(hr)
20
24
医薬品の規格内の誤差に比べて、
投与後の個体間の変動が明らかに大きい。
12
2015/2/25
先発医薬品の製剤処方の変更時の対応
タケプロンカプセル
生物学的同等性試験
タケプロンOD錠
添加剤などによる有効性・安全性
添加剤は先発とジェネリック医薬品
とも共通である
先発医薬品と異なる添加剤を使用する場合であっても、日本薬局方の製剤
総則の規定により、薬理作用を発揮したり、有効成分の治療効果に影響を
及ぼす物質を添加剤として使用することはできない。使用前例のある、安全
性が確認された添加剤のみが使用される。仮に、使用前例のない添加剤を
医薬品に使用する場合には、その添加剤の毒性試験などを実施して、改め
て安全性等の審査が必要である。
13
2015/2/25
溶出試験規格設定と品質再評価の流れ
通知時期等
~1971年
(昭和46年)
1971年
(昭和46年)
1980年
(昭和55年)
溶出試験
品質再評価対象
先発医薬品 後発医薬品
生物学的同等性試験
○
なし
先発医薬品とジェネリック医薬品の品質は、
○
動物(家兎、犬など)の試験
同等である。
○
(当該品の後発
医薬品が製造販売承認を得るためには、その製剤所での製
4月以降に 医薬品を今後
健康成人被験者を対象
造がGMP基準に適合していなければならない。先発医薬品
申請した医 申請する際は
1995年
とし、適切な対象薬と交
対象外
メーカー、ジェネリック医薬品メーカーを問わず、すべての医
(平成
7年) 薬品に溶出 同等の溶出試
差比較試験
験規格の設定
薬品は、共通のGMP等の基準を満たした製剤所でのみ製造
(旧ガイドライン)
試験を設定 が求められる)
が許可される。
1997年
(平成 9年)
第1次品質再評価指定
○
1997年
(平成 9年)
平成19年度に
再評価が終了
(先発品が平
成7年4月以降
申請の場合は
対象外)
新ガイドライン(適用
は平成11年申請から)
医療用医薬品の品質に係る再評価の実施等について
(医薬発第634号、平成10年7月15日、医薬安全局長)
先発医薬品とジェネリック医薬品の品質の同等性
2006年12月末現在4265品目が終了
3906品目 適合
4265品目
359品目 不適合
2008年度に
終了
2007年2月末で終了見込
14
2015/2/25
アメリカにおける後発医薬品の医薬品情報担当者(MR)
米国では後発品の医薬情報
担当者はいない。先発品と
同じ薬なら情報は不要との
認識が医師や薬剤師に定着
している。
日本経済新聞2007年8月15日(水)
ジェネリック医薬品の普及への
取り組みと経済効果
15
2015/2/25
日本のGE医薬品普及促進の足跡
薬価改定・GE医薬品院外処方加算、 国立病院におけるGE医薬品採用推進
DPC導入
薬価改定
DPC拡大
薬価改定・処方箋様式変更、安定供給・全規格対応・情報提供への対応
GE医薬品のシェア目標設定(12年までに30%)、GE促進アクション
プラン(信頼性向上への対応)、 GE医薬品薬価収載年2回化
薬価改定、 処方箋様式再変更・調剤体制加算、
療養規則改定(代替調剤の努力義務化)
国立病院のGE医薬品採用リスト公表
薬価改定、 調剤体制加算
入院基本料加算、療養担当規則
(医師の努力義務化)
25.0
20.0
15.0
10.0
5.0
0.0
17.1
16.8
16.4
12.2
4.8
5.2
5.2
2002年
2003年
2004年
5.1
5.7
6.2
6.8
2005年
2006年
2007年
2008年
数量(%)
23.1
20.3
17.6
17.2
16.9
8.5
9.4
2009年
2010年
金額(%)
16
2015/2/25
ジェネリック医薬品を積極的に導入した背景
1.DPCの導入(病院経営的観点)
2.医療費削減への貢献(国家財政的観点)
3.患者の経済的負担の軽減(家計的観点)
4.薬剤師の職能向上
(ファーマシューティカルケアの実践)
厚生労働省医政局経済課 委託事業
ジェネリック医薬品使用促進の先進事例に関する調査(平成23年3月)
ジェネリック医薬品の普及
のための入院体制
病棟への薬剤師の配置(2001年10月~)
薬物治療への参画を目的に病棟に薬剤師を配置する
ジェネリック医薬品の普及へ体制
・医師・看護師に迷惑をかけない
・情報などMRに頼らない
(ジェネリック医薬品メーカーにMRはいらない)
☑患者へのジェネリック医薬品の説明は、薬剤師が担うこと
☑ジェネリック医薬品の情報は、薬剤師が収集すること
☑医師、看護師、その他の医療従事者への情報提供は、薬
剤師が担うこと
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ジェネリック医薬品の普及
のための外来体制
【2004年5月~】
ジェネリック医薬品の普及の基本コンセプト
「患者さんが選択」
一般名処方の発行
1.川崎市薬剤師会との連携と定期的な勉強会
2.調剤薬名の病院へのフィードバックの不要
3.患者に十分な説明と同意
一般名処方のメリット
【2004年5月~】
1.薬局で必ず、先発医薬品かジェネリック医薬品か説明が
必要になる(ジェネリック医薬品への変更が勧めやすい)
2.薬局のジェネリック医薬品の在庫が、1成分1規格を1種
類だけの在庫でよい(薬局の在庫の負担軽減)
3.一般名の後に「錠、口腔内崩壊錠、フィルム」など剤形を
印字することにより、患者が選択することができるし、薬局
の在庫が1種類で対応できる(患者が選択)
18
2015/2/25
聖マリアンナ医科大学病院における
ジェネリック医薬品のオーダー手順
 オーダー例
先発品名
アモバン錠7.5mg
院内採用の後発品名
スローハイム錠7.5mg
一般名
ゾピクロン
先発品名称の先頭には “先)”
後発品名称の先頭には “後)”
を表示しています。
先発品名称で処方オーダする場合
オ
ー
ダ
ー
画
面
“あもば“と入力してEnterキーを押下する
と、アラートが表示される
「先)アモバン錠7.5mgは○年○月○日よ
りゾピクロン錠7.5mgに変更になりました。
ゾピクロン錠7.5mgに変更します。」
OKを押下するとゾピクロン錠
7.5mg(一般名称)に自動変換さ
れ、そのままカルテに表示される
カルテ画面
19
2015/2/25
院内採用の後発品名称で処方オー
ダする場合
“すろーは“と入力してEnterキーを押下する
と、アラートが表示される
「後)スローハイム錠7.5mgは○年○月○日
よりゾピクロン錠7.5mgに変更になりました。
ゾピクロン錠7.5mgに変更します。」
オ
ー
ダ
ー
画
面
OKを押下するとゾピクロン錠
7.5mg(一般名称)に自動変換さ
れ、そのままカルテに表示される
カルテ画面
一般名で処方オーダする場合
オ
ー
ダ
ー
画
面
“ぞぴく “と入力してEnterキーを押下すると、
そのままゾピクロン錠7.5mgとなる
カルテ画面
20
2015/2/25
院内処方箋
院内処方箋には、一般名の下に
【院内採用の後発品名称】が表示される
院外処方箋
院外処方箋には、
一般名のみ表示される
カルテ画面
カルテ画面には、
一般名のみ表示される
41
21
2015/2/25
薬事委員会規程の改正
2006年4月1日
第3条 委員会は、次の事項を審議する。
(1)医薬品(放射線医薬品、診断用医薬品、血液製剤、消毒剤
、院内製剤などを含む)の採用に関する事項
(2)後発医薬品の採用に関する事項
(3)採用医薬品の変更及び削除に関する事項
(4)採用医薬品の安全性確保、評価、経済性及び適正使用に
関する事項
(5)院内における医薬品の管理・運用等細則に関する事項
(6)病院医薬品集の編集、改定に関する事項
(7)医薬品副作用情報及び報告に関する事項
(8)その他薬事に関する事項
薬事委員会細則規程の改正
2006年4月1日~
(後発医薬品への切替)
第12条 後発医薬品が市販された場合、先発医薬品を速やかに切り替えるも
のとする。
2 先発医薬品から後発医薬品への切替は、本採用の手順に準ずる。
3 毎年7月と11月に後発医薬品が薬価に収載されるので、薬剤部は9月と1
月の定例会にリストを提出し、審議し、決する。
4 後発医薬品の選定には、価格、安全性、品質、安定供給及び情報提供に
ついて、考慮すること。
5 採用を許可された後発医薬品の購入は、原則として、それが決定した翌々
月10日からとする。
6.後発医薬品へ切り替えた先発医薬品の削除は、原則として、それが決定し
た翌々月10日とする。
7.後発医薬品の院内処方せんへの記載については、注射薬は「商品名」で、
また、内用薬と外用薬は、「一般名」と「商品名」の併記とする。
8.後発医薬品の外来処方せんへの記載は、原則として、「一般名」とする。
22
2015/2/25
薬事委員会細則規程の改正
2006年4月1日~
(採用取消の基準)
第13条 採用医薬品を採用取消にする場合、薬事委員会規程第
7条の届出の他、次の基準に該当するものは、委員会に
諮り採用を取消す。
(1)定例棚卸し(9月及び3月末日)間に、全く購入及び使用実績
のなかったもの。ただし、特別に稀な疾患に使用するものは
除く。
(2)本採用より6ヵ月後の1ヵ月の使用数が、仮採用期間1ヵ月の
平均使用数の20%を下回った場合
(3)採用の条件として、取消すもの
(4)使用頻度が著しく低く、他に同効薬があり、薬剤部より取消し
希望のあるもの
(5)後発医薬品へ切り替えた先発医薬品
平成26年診療報酬改定における
ジェネリック医薬品への影響
23
2015/2/25
平成26年診療報酬改定における
ジェネリック医薬品への影響
1.薬局
後発医薬品調剤体制加算の見直し
2.DPC病院
機能評価係数Ⅱへ「後発医薬品指数」の導入
3.薬価の見直し・妥結率
新規収載後発医薬品の薬価
既収載後発医薬品の価格帯の見直し(3価格帯)
平成26年診療報酬改定における
ジェネリック医薬品への影響
1.薬局
後発医薬品調剤体制加算の見直し
2.DPC病院
機能評価係数Ⅱへ「後発医薬品指数」の導入
3.薬価の見直し・妥結率
新規収載後発医薬品の薬価
既収載後発医薬品の価格帯の見直し(3価格帯)
24
2015/2/25
薬剤師法 第25条の2 (情報の提供及び指導)
薬剤師は、調剤した薬剤の適正な使用のため、販売又は授与の目的で調
剤したときは、患者又は現にその看護に当たっている者に対し、必要な情報
を提供し、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない。
「情報提供義務」
「情報提供及び指導義務」
25
2015/2/25
平成26年診療報酬改定における
ジェネリック医薬品への影響
1.薬局
後発医薬品調剤体制加算の見直し
2.DPC病院
機能評価係数Ⅱへ「後発医薬品指数」の導入
3.薬価の見直し・妥結率
新規収載後発医薬品の薬価
既収載後発医薬品の価格帯の見直し(3価格帯)
平成26年診療報酬改定おけるDPC見直
26
2015/2/25
平成26年診療報酬改定おけるDPC見直
大学病院のシュミレーション
数量割合(%)
年間予想金額 136,086,691円
聖マリアンナ医科大学病院:0.01544
西部病院:0.01544
多摩病院:0.01350
27
2015/2/25
法人DPC3病院の後発品使用割合
2014年2月10日現在
2013年度
医薬品総数
(先発品目数)
後発品
目数
2013年度 2012年度 2011年度 2010年度
後発品
後発品
後発品
後発品
割合(%) 割合(%) 割合(%) 割合(%)
(2013年度)
大学病院
1,700(1,197)
503
29.6
25.5
24.0
23.2
西部病院
1,237(911)
326
26.4
20.2
20.4
14.8
多摩病院
1,225(840)
358
31.4
24.0
22.0
14.8
法人出来高2施設の後発品使用割合
医薬品総数
(先発品目数)
東横病院
後発品目数
後発品割合(%)
542(351)
191
35.2
84(56)
28
33.3
B&I
年度別先発品とジェネリックの差額
(薬価ベースで算出)
後発医薬品指数
約2.2億円の収入増加
700,000,000
665,550,087
600,000,000
607,534,838
500,000,000
519,830,966
400,000,000
420,969,644
360,340,473
335,231,196
300,000,000
200,000,000
153,572,413
134,882,085
109,698,358
100,000,000
92,975,411
91,624,359
85,621,952
0
2010年度
2011年度
大学病院
西部病院
多摩病院
2012年度
合計
28
2015/2/25
各病院群の基礎係数
DPC群
平成24年度
平成26年度
差
DPC病院Ⅰ群
1.1565
1.1351
-0.0214
DPC病院Ⅱ群
1.0832
1.0629
-0.0203
DPC病院Ⅲ群
1.0418
1.0276
-0.0142
暫定・基礎係数・機能評価係数Ⅱの考察
年度
▲269,705,885
年度
289,096,504
年度
▲188,617,841
合計 ▲169,227,222
29
2015/2/25
機能評価係数Ⅱの内訳
神奈川県4大学病院の比較
0.018
0.016
0.014
0.012
0.01
0.008
0.006
0.004
0.002
0
保険診療係数
効率性係数
複雑性係数
カバー率係数 救急医療係数 地域医療係数 後発医薬品係
数
機能評価係数Ⅱの内訳 (医療機関別)
聖マリアンナ医科大学
横浜市立大学 * 少数第5位を四捨五入し、小数第4位までの値として設定。
北里大学
東海大学
なお、端数処理の影響により各係数の合計とは一致しない場合がある。
10030
神奈川
公立大学法人 横浜市立大学附属病院
機能評価
医療機関 保険診療 効率性係 複雑性係 カバー率 救急医療 地域医療
定量評価 定量評価 後発医薬
係数Ⅱ合
体制評価
群
係数
数
数
係数
係数
係数
係数(小 係数(小 品係数
計*
係数
児)
児以外)
Ⅰ群
0.00731 0.00946 0.00943 0.00626 0.00298 0.00413 0.00329 0.00028 0.00055 0.01544
0.0550
10033
神奈川
聖マリアンナ医科大学病院
Ⅰ群
0.00731
0.00745
0.00243
0.00860
0.00393
0.00576
0.00418
0.00085
0.00073
0.01544
0.0509
10031
神奈川
北里大学病院
Ⅰ群
0.00731
0.00549
0.00852
0.00811
0.00592
0.00506
0.00345
0.00096
0.00066
0.00368
0.0441
10032
神奈川
東海大学医学部付属病院
Ⅰ群
0.00731
0.01019
0.01210
0.00888
0.00877
0.00544
0.00397
0.00052
0.00095
0.00304
0.0557
告示No
都道府県
医療機関名
機能評価係数Ⅱの内訳
神奈川県4大学病院の比較
0.06
0.05
0.04
0.03
0.02
0.01
0
機能評価係数Ⅱの内訳 (医療機関別)
聖マリアンナ医科大学
横浜市立大学 * 少数第5位を四捨五入し、小数第4位までの値として設定。
北里大学
東海大学
なお、端数処理の影響により各係数の合計とは一致しない場合がある。
10030
神奈川
公立大学法人 横浜市立大学附属病院
機能評価
医療機関 保険診療 効率性係 複雑性係 カバー率 救急医療 地域医療
定量評価 定量評価 後発医薬
係数Ⅱ合
体制評価
群
係数
数
数
係数
係数
係数
係数(小 係数(小 品係数
計*
係数
児)
児以外)
Ⅰ群
0.00731 0.00946 0.00943 0.00626 0.00298 0.00413 0.00329 0.00028 0.00055 0.01544
0.0550
10033
神奈川
聖マリアンナ医科大学病院
Ⅰ群
0.00731
0.00745
0.00243
0.00860
0.00393
0.00576
0.00418
0.00085
0.00073
0.01544
0.0509
10031
神奈川
北里大学病院
Ⅰ群
0.00731
0.00549
0.00852
0.00811
0.00592
0.00506
0.00345
0.00096
0.00066
0.00368
0.0441
10032
神奈川
東海大学医学部付属病院
Ⅰ群
0.00731
0.01019
0.01210
0.00888
0.00877
0.00544
0.00397
0.00052
0.00095
0.00304
0.0557
告示No
都道府県
医療機関名
30
2015/2/25
平成26年診療報酬改定における
ジェネリック医薬品への影響
1.薬局
後発医薬品調剤体制加算の見直し
2.DPC病院
機能評価係数Ⅱへ「後発医薬品指数」の導入
3.薬価の見直し・妥結率
新規収載後発医薬品の薬価
既収載後発医薬品の価格帯の見直し(3価格帯)
新規後発医薬品の薬価の見直
31
2015/2/25
既収載後発医薬品の価格帯の見直
32
2015/2/25
後発医薬品品目数・数量割合
大学病院
年月
先発医
薬品
後発医
薬品
院内採用
医薬品
後発医薬品品目
数割合(%)
後発医薬品数量
割合(%)
2013年9~11月
1193
515
1708
30.2
83.6
2014年5月
1197
514
1711
30.0
85.7
2014年6月
1201
514
1715
30.0
84.5
2014年7月
1203
515
1718
30.0
85.9
2014年8月
1203
515
1718
30.0
85.4
2014年9月
1203
514
1717
29.9
85.4
2014年10月
1144
562
1706
32.9
84.7
2014年11月
1147
561
1708
32.8
87.9
臨床を担う薬剤師の育成と論文の
批判的吟味
33
2015/2/25
聖医大病院薬剤師の研修目的
1.病態生理、病状など疾患の基礎知識を身につける
2.薬物治療を理解して、個々の状態に即した
投与計画を立て、モニターできるようにする
Textbook:
Textbook:
Pharmacotherapy: A
pathophysiologic
approach
Joseph T. DiPiro, et. al.
アプライドセラピュー
ティクス
緒方、越前、増原
薬剤部の教育・研修体制
On JOB
 新入職者研修(4~9月)
 病棟研修(1~2年目の間)
<病棟担当後>
 昼のケースカンファレンス
 チーム内での申し送り
 病棟担当者間・DI/TDM担
当者とのやりとり
1年目
2年目
3~5年目
6年以上
Off the JOB
 新人教育(12回)
 ファーマシューティカル
ケアの基本講座
 症例報告会(月1回)
 ジャーナルクラブ
(月1回)
 JCアドバンス(隔月)
34
2015/2/25
アメリカ保険政策局(AHRQ)エビデンス評価の分類
Ⅰa
Evidence obtained from meta-analysis of randomized controlled trials
ランダム化比較試験のメタアナリシス
Ⅰb
Evidence obtained from at least one randomized controlled trials
少なくとも一つのランダム化比較
Ⅱa
Evidence obtained from at least one well controlled study without randomization
少なくとも一つのよくデザインされた非ランダム比較試験
Ⅱb
Evidence obtained from at least one well other type of well designed quasiexperimental study
少なくとも一つの他のタイプのよくデザインされた準実験的研究
Ⅲ
Evidence obtained from well designed non-experimental descriptive studies, such as
comparative studies, correlation studies and case control studies
比較研究や相関研究、症例対照研究など、よくデザインされた非実験的記
述的研究
Ⅳ
Evidence obtained from expert committee reports or opinions and/or clinical
experience of respected authorities
専門家委員会の報告や意見、あるいは権威者の臨床経験
バルサルタン臨床研究の調査比較
2014年4月26日現在
京都府立医大
患者数
3031人
慈恵医大
3081人
名古屋大学
滋賀医大
千葉大
1150人
150人
1021人
研究期間
04年1月~07年6月
02年1月~04年12月
04年10月~10年7月
03年12月~06年3月
02年7月~09年3月
論文主
な結論
脳卒中などを防ぐ
効果
脳卒中などを防ぐ
効果
他の薬と差なし 腎臓保護作用
心臓や腎臓の
保護作用
データ
の操作
カルテに記載にな
い症状が論文の
データにあるなど
内容の不一致が
34件「論文撤回」
大学保有データと
論文の統計解析
に使ったデータの
血圧値が少なくと
も86件不一致「論
文撤回」
データ改ざんは 10.1%のデータ
なし
に不一致があり
「恣意性が否定
できない」学会
が「論文撤回」
大学保有デー
タと論文の
データが10%
以上で不一致
論文の「撤回
勧告」
元社員
の関与
大阪市立大の肩
書で参加。データ
解析を担当。
発症を判断する会
議にも出席
大阪市立大の肩 所属は明記な
書で参加。統計解 し
析を担当。
発症を判断する
会議にも出席
奨学寄
付金
03~12年に
3億8170万円
02~07年に
1億8770万円
02~12年に
2億5200万円
大阪市立大の
大阪市立大の
肩書で参加。別 肩書で参加。
の社員も関与
02~08年に
6550万円
02~09年に
2億4600万円
35
2015/2/25
ノバルティス社奨学寄付金大学別金額一覧 2012年度
ノバルティス社
2012年度奨学寄付金・講
演料・交際費等
総額239億円
2012年度資金提供額
武田:総額400億円
(臨床研究費:219億円)
第一三共:総額366億円
(臨床研究費:166億円)
アステラス:総額193億円
(臨床研究費:57億円)
エーザイ:187億円
(臨床研究費:61億円)
ARB換算比表
薬品名 【適応用量(mg/日)】
採用規格(★院外採用)
換算値
(切り替え時には、適応症、肝・腎機能、既往歴、アレルギーを確認
換算値はあくまでも目安であり、個人により反応性は異なる
切り替え後には、血圧、血清K値、腎機能をモニターすること)
ディオバン*【40-16】
★40mg/80mg/★160mg
40mg
80mg
160mg
320mg
ロサルタン*【25-100】
★25mg/50mg/★100mg
25mg
50mg
100mg
ー
ブロプレス*【4-12】
★4mg/8mg/★12mg
4mg
8mg
16mg
16-32mg
ミカルディス【40-80】
40mg/★80mg
20mg
40mg
40-80mg
80mg
オルメテック【10-40】
★10mg/20mg/★40mg
10mg
20mg
20-40mg
40mg
20mg¶
20mg¶
20mg¶
20mg¶
アジルバ【20-40】
20mg/★40mg
¶ 米国アジルサルタン・メドキシミルとしての換算比を示す。日本のアジルサルタンとのバイ
オアベイラビリティ比は0.5~0.6 他のARBより降圧効果が高く、明確な換算比がないため
アジルバへの切替は低用量から開始し効果により調節することが推奨される
イルベサルタン【50-200】
★100mg(院外採用のみ)
75mg
150mg
300mg
*1日2回分割投与も可、
300mg
は本邦承認用量超過
参考文献:Pharmacist’s Leter/Prescriber’s Leter August 2009 Vol25 No. 250801 Full update 2012 から翻訳
36
2015/2/25
第Ⅳ相臨床試験の管理
わが国は、第Ⅳ相臨床治験において、先進諸外国に比べて管
理体制ができていない。このことが利益相反を生み、臨床試験
の捏造などを生じやすくなる土壌がある。
 第Ⅳ相臨床試験を中立的な立場で管理するシス
テムの確立
 薬剤師が論文を批判的に吟味できる能力
 製薬会社のプロモーションを規制
ファーマシューティカルケアの実践
に必要な能力
• 薬物治療学の知識・スキル
• リーダーシップ
全ての薬剤師に求める能力
• 問題解決能力
• コミュニケーションスキル
• 自己学習の姿勢
37
2015/2/25
薬剤師の臨床活動に役立てる
1.医薬品使用実態調査(MUE)
2.薬物治療共同管理(CDTM)
3.フォーミュラリーの作成
医薬品使用実態調査(Medication-Use
Evaluation : MUE)
医薬品の使用のみならず、医薬品使用プロセス等の
実態を把握することにより、医薬品適正使用の推進・
患者の安全の向上を図るもの
• MUEは薬剤師主導で行うだけでなく、他職種との
連携で行うことにより、調査結果を臨床現場に反
映できるとされる。
Reference : ASHP guidelines on medication-use evaluation.
Am J Health-Syst Pharm. 1996; 53:1953-5.
38
2015/2/25
プラザキサ使用実態調査(MUE)
期間:2011年6月~9月
使用量
処方患者総数
総使用量
外来
入院
平均年齢
42
1,792
5,316
1,666
5,084
126
232
例
110mg
Cp
75mg
Cp
110mg
Cp
75mg
Cp
110mg
Cp
75mg
Cp
患者背景
64.3 歳
(26-88)
男/女比
26/16
適応症例(非弁膜症性心房細動)
適応外症例
23例[54.8%]
19例[45.2%]
※17例が皮膚科症例
既往歴
消化管出血の既往あり
※2例とも出血性胃潰瘍の既往
2例[4.8%]
処方診療科 症例数
皮膚科
循環器内科
神経内科
心臓血管外科
リウマチ内科
眼科
禁忌該当症例
出血症状あり・止血障害あり
出血リスクのある器質性病変あり
(6ヶ月以内の出血性脳卒中を含む)
脊椎・硬膜外カテーテル留置
抜去後1時間以内
高度腎障害(CLcr<30mL/min, 透析)
イトラコナゾール(経口剤)投与中
導入前の腎機能
CLcr≧50mL/min
30≦CLcr<50mL/min
CLcr<30mL/min
透析
不明
17 例
14 例
7例
2例
1例
1例
5例[11.9%]
2例[4.8%]
1例[2.4%]
なし
2例[4.8%]
なし
35例[83.3%]
2例[4.8%]
2例[4.8%]
なし
3例[7.1%]
薬物治療共同管理(CDTM)
Collaborative Drug Therapy
Management
条件を満たす薬剤師が、医師と交わした共同業務の契約(プロ
トコール)に認められた範疇で薬物治療管理を行うこと
 患者の薬物治療の評価
 薬の開始、選択、処方、投与量変更
 薬物治療に関連する臨床検査のオーダー
 継続的モニタリング
 服薬指導、患者教育
39
2015/2/25
79
大腸癌治療における抗EGFR抗体
 アービタックス®注(セツキシマブ)
 ベクティビックス®注(パニツムマブ)
 腫瘍細胞の上皮成長因子受容体(EGFR)に作用し
て, 腫瘍の進行を抑制する.
代表的な副作用・・・皮膚障害(90%以上)
 結腸直腸癌の1次〜3次治療において抗がん剤との
(ざ瘡様皮疹, 爪囲炎, 皮膚乾燥, そう痒症など)
併用や単剤で用いられている.
患者のQOL(生活の質)の低下や
治療中断の原因となる
腫瘍センターでの実際の診察の流れ
医師の診察
薬剤師面談
伝達
シート
点滴
伝達
シート
薬剤師
医師
CDTM
副作用評価
抗EGFR治療継続決定
副作用評価
セルフケア指導
✔伝達シート記載
✔処方箋へ押印
✔伝達シート記載
副作用評価
支持療法薬の選択
✔伝達シート記載
✔処方入力
看護師
※薬剤師と評価が異なる時
→処方箋の修正
評価が異なる場合は3職種で議論し,再評価する
40
2015/2/25
薬剤師↔医師↔看護師伝達シート
ID :0123456A
名前 :聖マリ 花子様
化学療法レジメン:FOLFIRI + セツキシマブ
症状の
ある部位
CTCAE ver.4
前回
患者(マークシート)
最悪
ざ瘡
診察日
最悪
診察日
薬剤師
医師
薬剤師
医師
薬剤師
医師
2
1
1
1
1
1
1
1
乾燥
1
2
1
1
1
1
1
1
掻痒感
1
1
1
1
1
1
1
1
爪囲炎
2
2
2
2
2
2
2
2
本
日
の
提
案
・抗EGFR抗体
□同量
□減量 □延期
✓
・支持療法
□予防セット
□軽度セット
□中等度セット
□高度セット
✓
・皮膚科受診
□必要 □不要
✓
薬剤師
医師確認
●
田
津
●
⇒ □処方済
□処方不要
✓
備考
爪周囲炎増悪にて、ステロイド軟膏指示、抗生剤内服を開始
看護師確認
□ 変更有
□
✓変更無
京
●
【再指導内容】
□保湿方法
□洗浄方法
□家事時の保護
✓
□化粧/□髭剃り
□爪(テーピング)
✓
診療録にスキャン
して取り込む
皮膚障害の重症度に応じた治療(セット)
軽度
ざ
瘡
様
皮
疹
・
掻
痒
感
・
乾
燥
顔:medium
(ロコイド軟膏)
頭:very strong
(メサデルムローション)
体:very strong
(アンテベート軟膏)
中等度
高度
顔:medium
(ロコイド軟膏)
顔:medium
(ロコイド軟膏)
頭:very strong
(メサデルムローション)
体:very strong
(アンテベート軟膏)
ミノマイシン内服
±エピナスチン内服
(掻痒感がある時)
頭:strongest
(デルモベートローション)
体:strongest
(デルモベート軟膏)
±アクアチムクリーム
染時)
(感
ミノマイシン内服
セレスタミン内服
皮膚科受診考慮
爪
囲
炎
very strong
(アンテベート軟膏)
very strong
(アンテベート軟膏)
ゲンタマイシン軟膏
ミノマイシン内服
strongest
(デルモベート軟膏)
ゲンタマイシン軟膏
ミノマイシン内服
皮膚科受診考慮
皮膚科受診
41
2015/2/25
フォーミュラリー
医療機関における
患者に対して最も有効で経済的な
医薬品の使用における方針
ASHP guidelines on the pharmacy and
therapeutics committee and the formulary system.
Am J Health-Syst Pharm. 2008; 65:1272-83.
大学病院における医薬品購入実績
図19 薬効別年間購入実績
百万円
6,916
7,000
6,624
6,200
5,607
6,000
405
440
その他
402
5,250
406
5,000
2,448
2,266
446
2,041
病原生物に対する医薬品(抗生物質
等)
1,890
4,000
組織細胞機能用医薬品(抗癌剤等)
1,672
3,000
1,108
2,000
824
1,000
0
1,455
1,655
1,746
890
987
1,060
個々の器官系用医薬品(循環器・呼吸
器・消化器等)
神経系及び感覚器官用医薬品(中枢・
末梢神経用剤等)
代謝性医薬品(ビタミン・透析用剤等)
1,172
812
938
1,038
1,138
995
956
263
290
274
282
301
21年度
22年度
23年度
24年度
25年度
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PPI注射薬
2011と2012年度のPPI注射剤の購入額
後発品オメプラゾール注使用により期待で
PPI注射剤 きる購入額削減効果
第1選択:オメプラゾール注
第2選択:タケプロン静注用
(原則、相互作用のあるワルファリン・クロピドグレルを使
用している長期にPPI注射剤治療が必要な患者)
ま と め
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改正薬剤師法2014年6月12日施行
薬剤師法第25条の2
薬剤師法 第25条の2 (情報の提供及び指導)
薬剤師は、調剤した薬剤の適正な使用のため、販売又は授与の目的で調
剤したときは、患者又は現にその看護に当たっている者に対し、必要な情報
を提供し、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない。
「情報提供義務」
「情報提供及び指導義務」
・患者目線に立ち、患者のニーズをより一層把握し、複雑化している薬物治療に
対して、薬学的知見に基づいた指導を実施する。
・個々の患者に対して実施される薬物治療に対して薬剤師が責任を持ち、薬学
的指導を行い、入院中に薬学的指導が実施されないという事態を回避する。
・これに伴い「医薬品安全使用のための業務手順書」の改訂する。
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必要な薬学的知見に基づく指導の進め方
日本病院薬剤師会(平成26年5月24日)
1.入院患者への薬学的指導(薬剤管理指導業務・病棟薬剤業務実施加算)
① 過去の投薬・注射及び副作用発現状況等把握
② 特に安全管理が必要な医薬品等の確実な指導
③ 入院中に使用した薬剤で副作用が発現時、薬剤・用量の変更時の指導
① 薬剤管理指導業務
2.退院患者への薬学的指導(退院時薬剤情報管理指導)
患者又はその家族等への、退院後の薬剤の安全管理、服用等に関して情報提供
及指導(改正の根幹)
② 病棟薬剤業務実施加算
3.外来患者への薬学的指導
③院内調剤を行った外来患者への外来のお薬渡し窓口での指導
退院時薬剤情報管理指導
① ハイリスク薬投与患者への指導
② 処方の継続性を考慮した指導
4.薬学的指導の完全実施に向けて
特に退院時の薬学的指導の完全実施に向けては、病院独自のロードマップを作成
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「医薬品安全使用のための業務手順書」に明示し、可及的速やかな実現に努める。
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ファーマシューティカルケアの実践
「薬剤師が薬物治療に責任を持つ」
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