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ÿþ bÎW`Yf
研究ノート
ベルギー会計制度の研究(4)
――資産・負債要素の内容と貸借対照表価額(3)
――
斉 藤
昭
雄
1. はじめに
2. クラス2に属する資産
2−1 組織費 (Frais d’établissement)
2−2 無形固定資産 (Immobilisations incorporelles)
2−3 有形固定資産 (Immobilisations corporelles)
2−4 金融固定資産 (Immobilisations financières)
2−5 1年以上の債権 (Créances à plus d’un an)
――以上本誌第1
7
0号
3. クラス3に属する資産
3−1 勘定分類
3−2 貸借対照表価額
4. クラス4に属する資産
5. クラス5に属する資産
――以上本誌第1
7
3号
6. クラス1に属する負債
負債は,クラス1「自己資本,引当金および繰延税金,長期債務1)」と
クラス4「短期債権・債務」の中に次のように分類されている2)。
1) クラス1の特殊性については,後にクラス1の中心を占める資本について検
討する際に明らかにしたい。
―261―
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9号 (2
0
0
8年3月)
クラス1
16. 引当金および繰延税金
17. 長期債務
クラス4
42. 年度内期限到来長期債務
43. 金融債務
44. 営業債務
45. 税務債務・対従業員債務・社会的債務
46. 前受金
47. 利益処分関連債務
48. その他の債務
49. 決算調整勘定・仮勘定
以下,これらの負債を順次検討してみたい。
6−1 引当金 (Provisions)
引当金は160から165にかけて次のように分類されている。
160 年金等引当金 (Provisions pour pension et obligations similaires)
161 納税引当金 (Provisions pour charges fiscales)
162 大修繕・維持引当金 (Provisions pour grosses réparations et gros entretien)
163−165 その他の危険・費用引当金 (Provisions pour autres risques et
charges)
日本で引当金が大幅に縮小される方向に動いていることを,いわば先取
りするようなかたちで非常に簡素化されているように見えるけれども,最
後に「その他の危険・費用引当金」が用意されていて,後述するように,
2) ここではカドル・コンタブル(つまり2桁のコード番号)のレベルで示して
みたい。
―262―
ベルギー会計制度の研究(4)
引当金が見た目ほど少ないわけではない。それよりも日本との決定的な違
いは,貸倒れに関する対処の違いである。
ここは負債の部であるので,その限りではここに貸倒引当金が登場しな
いのは当然であるが,ベルギーには,そもそも貸倒引当金なるものが存在
しないし,フランスのように「減価引当金」を計上することもない。すな
わちベルギーでは,
「評価減」の認識と「不良債権3)」への振替えによっ
て対処するすることになる。
しかし我々の見るところでは,ベルギーの対処には若干の疑問を残して
いるように思う。ただし,もしも会計の情報提供という観点を重視すると
すれば,貸倒引当金のみによって対処をしている日本に比べベルギーに若
干の長があると言えるような気がする。すなわち,当該債権を不良債権と
して科目変更をするということは,資産の質的変化を直ちに認識すという
点で,適切な処置であると言えるからである。
そのうえで,ベルギーでは,不良債権のみならずすべての債権が,①満
期日の償還額が全体としてあるいは部分的に不確実あるいは妥協額になる
場合,ないしは②期末時点での実現額が帳簿価額を下回る場合には評価減
が行われる4)。ベルギーのみならず EU 加盟国は第4号指令によって,財
政状態のみならず財産の状態をも開示することが義務づけられているから,
このような対応は当然である。上述の①の場合のように,満期日が到来し
た時点で回収不能の危険性が具体化した場合には,当然のことながらその
3) 売上債権であれば «Clients douteux ou litigieux»(不良ないし係争顧客)に,
その他の債権であれば「不良債権」に移される。ただし,売上債権にのみ「係
争」が追加されている理由は判然としない。なお不良債権は「その期日到来
日の回収が(全部的にしろ部分的にしろ)主として債務者の財務状態によっ
て不確実 あ る い は 危 う く な っ た 債 権」(Josoph Antoine & Jean-Paul Cornil;
Lexique thématique de la comptabilité, 7e éd. De Boeck & Larcier 2002, p. 91)
と定義され,そのような状態は強制和議,破産,債務者の弁済不能,債権に
ついての異議等によってもたらされると考えられている (Cf. Josoph Antoine
et al .; Traité de comptabilité, De Boeck 2004, p. 221)。
4) Art. 68 de l’Arrété royal du 30 janvier 2001 portant exécution du Code des sociétés.(以下,この国王令については「2001年国王令」と表記する。)
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損失は認識されることになろうし,その債権を不良債権として分離するこ
とも妥当なところである。
売上債権の場合,当期の売上のうち期末に現金回収が行われていない債
権残高に含まれる回収不能見込み額は,売上と言うよりは,商品が対価な
く失われているわけだから,わかりやすく言えば盗難にあったことに等し
い。したがってそれは当然売上のマイナス項目であるので,当期の損益計
算に組み入れるのが妥当である。一方,一般債権の場合,他の資産と同じ
ように期末時点の実現額まで引き下げて評価減をその年度の損益計算に組
み入れることが,
「財産」価値の測定上当然のように考えられている。ベ
ルギーでは古くから,低価基準の適用が強制されていた(「2001年国王令」
では第46条から48条)のであり,しかもそれが決算日から経営意思決定機
関が定めた期日までの期間にわかった場合でもすべて考慮される(「2001
年国王令」第3
3条第1項)という,きわめて積極的なものとなっている。
ただし,担保をとって貸付が行われているような債権については,明言さ
れてはいないけれども,実現額は当然その担保を前提にしてなされること
になろう。
ただし,引当金による対応を図っていない結果,ベルギーでは,債権は
評価減を差し引いた純額で貸借対照表に計上された上で,次年度には戻入
れられる可能性がある。戻入れの可能性を認めながら貸借対照表上では純
額表示という形式をとっているのである。本体の財務表の上ではもとの帳
簿価額が不明であって,この点ではむしろ情報の的確性という点で若干の
問題を残していると言えよう。
しかし,貸倒引当金が存在しないことによって,引当金はすべて負債性
を持ったものだけとなり,引当金は負債たる
「危険・費用引当金 (Provisions
pour risques et charges)」だけに整理されることになった。その「危険・費
用引当金」は,「2001年国王令」の第5
0条において次のように規定され
ている。
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ベルギー会計制度の研究(4)
「その性格に関してはっきりと限定されているが,年度末に蓋然性があ
るか確実な,しかしその金額が確定しないところの損失ないし費用をカバ
ーすることを目的としている。」
これだけでは当然貸倒引当金を含むことになるが,それについては,こ
の規定の直後の但し書きで,
「危険・費用引当金」には資産の部に計上さ
れる項目の価値修正を含まないことが,明言されている。その結果,この
「危険・費用引当金」はわが国の負債性引当金とほぼ同じものになってい
ると言える。ただしここでもまた,それが決算日から経営意思決定機関が
定めた期日までの期間にわかった場合でもすべて考慮される(「2001年国王
5)
令」第33条第1項)という,
「慎重性 (Prudence)」に基づく積極的な対応
が,求められている。
6−2 個々の引当金
160の「年金等引当金」勘定については,プラン・コンタブルにはなん
らの言及がないけれども,たとえば次のような下位勘定が考えられる6)。
1600 退職年金引当金
1601 事前年金7)引当金
1602 法定外年金引当金 (Pensions pour rentes d’invalidité extra-légales)
ベルギーには退職一時金制度はないので,前二者が法定年金制度に備え
るもので,最後のひとつが日本で言う付加的な企業年金に当るものと考え
られる。それらの金額は,前者は法定額であり,後者については従業員と
の協定額となる。
161の「納税引当金」は,あくまでも「課税標準ないし課税計算の修正
5) この点については,拙稿「ベルギー会計制度の研究(1)―評価の基本ルー
ル―」本誌第1
6
8号,9
7ページを参照していただければ幸いである。
6) Christian Fisher; La règlementation sur les comptes annuels et le Plan
comptable, Éditions de la chambre d’économie et de droit des affaires, §2507.
7) 1
9
7
4年1
1月1
9日付の「労使間団体労働協約 (Convention collective du travail)」によって創設された,年金受給年齢前の解雇に伴う年金制度である。
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から生じうる税務費用をカバーするために設けられる引当金(「2001年国王
令」第95条§2,VII. A, 1o)
」である。
ベルギーでは,法人税の予定納税が一般化していて8),決算の結果納税
額が確定した段階でその調整が行われるが,この納税引当金はそれとは関
係ない。すなわち,課税当局からの追徴の通知を受けた段階で現れること
になる。その後場合によっては不服申し立てなどを経て金額が確定した時
に,戻入れないし追加支払いのための記帳が行われる。したがってこの納
税引当金は,係争引当金とほぼ同様のものと考えることができる。
162の「大修繕・維持引当金」は,「維持」についての配慮が加わって
いることを除けば,わが国の修繕引当金と変わるところがない。
163−165の「その他の危険・費用引当金」の対象となるものは,
「2001
年国王令」の第5
4条に,次のようなものから生ずる可能性の高い損失な
いし費用をカバーするために設けられると規定されている。
◇
第三者の債務ないし契約の保証
◇
固定資産の取得ないし譲渡契約
◇
注文の遂行
◇
通貨先物取引およびポジション
◇
商品先物取引およびポジション
◇
製品保証
◇
係争
そのほかにも,
「バカンス手当引当金 (Provisions pour pécules de vacances)」
と言われるものがベルギーには存在する9)。これは,バカンスの時期に支
払われるためにそう呼ばれているのであって,わが国の賞与引当金と異な
るところがないように見える。しかしながら,賞与の場合と違って,一年
8) Cf. Joseph Antoine et al.; Traité de comptabilisation, De Boeck 2004, p. 273
et suiv.
9) Cf. Josoph Antoine & Jean-Paul Cornil; Op. cit., p. 150. なお,バカンス手当
については7−4を参照されたい。
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ベルギー会計制度の研究(4)
間の労働の提供に対する一定率の支給が法律によって定められていて,
「確定はしないが確定できる確実な債務であって,会計法に規定されてい
る意味での引当金ではない10)」がゆえに,
「引当金にかえて見積債務と呼
ぶほうがよりふさわしいかもしれない11)」という発言がみられる。それに
もかかわらず,我々には,金額決定が法律によって決まるか労使協議によ
って決まるかは,会計的には無差別であって,やはり引当金として処遇す
るほうがいいのではないかと思える。実際,ベルギー国内にもそれを支持
する見解が存在する12)。
上に列挙されている「その他の危険・費用引当金」を見ると,わが国で
は偶発債務と考えられるものも含まれていて,ここにも「慎重性」つまり
保守主義を優先するベルギーのスタンスが明瞭に読み取れる。
6−3 繰延税金 (Impôts différés)
引当金と並列されている「繰延税金」勘定は,1
680から1688にわたっ
て以下のような下位勘定を持っている。
1680 資本助成に係る繰延税金 (Impôts différés afférents à des subsides en
capital)
1681 無形固定資産に関して実現した増価額に係る繰延税金 (Impôts différés afférents à des plus values réalisées sur immobilisations incorporelles)
1682 有形固定資産に関して実現した増価額に係る繰延税金 (Impôts différés afférents à des plus values réalisées sur immobilisations corporelles)
1687 国内公債に係る繰延税金 (Impôts différés afférents à des plus values
réalisées sur titres émis par le secteur public belge)
1
0) Joseph Antoine et al.; Op. cit., p. 145.
1
1) Idem.
1
2) Cf. Joseph Antoine et al.; Op. cit., p. 146.
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1688 外国の繰延税金 (Impôts différés étrangers)
ここでの「繰延税金」は,一見した限りでは,繰延法に基づく税効果会
計の適用に係るものであるような印象を与えるけれども,上記の下位勘定
が示唆しているように,その内容はベルギー特有のものである。すなわち,
これは主として数年間にわたる課税延期というベルギー税法における2つ
の特例に係るものである。個々の内容については後述するとして,
「繰延
税金」は「直ちには確実ではなく確定もしないものの,税務上の損失の存
在ないし突発のような外因性の要素の介在がなければ,通常は以後数年間
にわたって確実かつ確定することになるところの,税務上の債務13)」と定
義されている。そしてまた,この繰延税金の対象になるものは次の3つに
限定されることが,国王令(第95条§2,VII B)によって規定されている。
a) 固定資産への投資を考慮して,政府から得られた資本助成に係る
もので,後の期間に繰延べられる税金,
b) 無形・有形固定資産,ベルギーの公的部門によって発行された有
価証券に関して実現した増価額に係るもので,その増価額課税が繰
延べられる場合に後の期間に繰延べられる税金,
c) 上記a)およびb)と同様の性格を持っていて,後の期間に繰延べ
られる外国の税金。
1680の資本助成に係る繰延税金は,このa)に対応するものであって,
固定資産投資に対する税法上の優遇措置に基づくものである。その金額は,
資本助成金の額にその時の法人税率を乗じて決定される。その後,当該資
本助成は,それによって取得した固定資産の減価償却にあわせて取崩され,
「その他の財務収益」として損益計算書に計上されることになるが,繰延
税金は,その収益計上に合わせて費用化される。
わが国でかつて「建設助成金」ないし「国庫補助金」の会計学的性格を
めぐって論争が見られたが,その際に税法上の純財産増加説に基づく課税
1
3) Rapport au Roi de l’Arrêté royal du 30. 12. 1991.
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ベルギー会計制度の研究(4)
所得か否かということもかなり意識されていたように思う。ベルギーのこ
の対応は,一方で,資本助成によって取得した資産の減価償却費を助成金
で相殺することによって,国からの更なる優遇になるのを避けると同時に,
他方で,補助金が結局は利益計算にプラスの作用をして株主への配当財源
になるという,本来の趣旨と違った結果になってしまうことを避ける,と
いう点で,制度としてはそれなりの成果を挙げているように見える。
1
681の無形固定資産に関して実現した増価額に係る繰延税金と1
682の
有形固定資産に関して実現した増価額に係る繰延税金は,ともに固定資産
の処分によって得られた金額(処分益を含む)が再投資された場合に繰延
べられる税金である。その処遇は,資本助成に係る繰延税金の場合と同様
に,当初はその処分益にその時の法人税率を乗じて繰延税金の金額が決定
され,その後,再投資資産の減価償却に合わせて処分益が損益計算に加え
られるのにあわせて,繰延税金が取崩されて費用化される。
1687の国内公債に係る繰延税金も,公債への投資によって得られた処
分益への課税優遇措置を反映したものであって,前述の固定資産に関して
実現した増価額に準ずるものである。
これらの繰延税金は,
「厳密に言えば危険・費用引当金とは言えないけ
れども,企業が後の期間に負担するものであって,確実ではあるが確定は
していない税務費用であるという限りにおいて,それに近い14)」という判
断が働いて,引当金と並列されているようである。
なお,周知の通り,2
005年以降 EU 加盟国は連結財務諸表の作成に際
しては国際財務報告基準 (IFRS) に従うことになったので,その際には税
効果会計は当然行われるが,国内基準では,ベルギーは税効果への対応は
図っていない。
1
4) Christian Fisher; Op., cit., §2691.
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6−4 長期債務 (Dettes à plus d’un an)
17の「長期債務」には,次のような下位勘定が設けられている。
170 劣後債
1700 劣後転換社債
1701 劣後非転換社債
171 非劣後債
1710 転換社債
1711 非転換社債
172 リース債務等
173 金融機関
1730 借入金
1731 手形借入金
1732 銀行引受ローン
174 その他の借入金
175 営業債務
1750 仕入先
1751 支払手形
176 前受金
178 預り保証金
179 その他の債務
170の劣後債にしろ171の非劣後債にしろ,それらは,発行価額で記帳
された後,現在のわが国と同じように償却原価法に基づいて,保険経理的
に処理されるのを原則としている(「2001年国王令」第77条)。ただし次の
2つの方法が簡便法として認められている15)。
1) 発行価額と償還額の差額を,毎年一定額ずつ発行価額に加える。
2) 金額に重要性がないと認められる場合に,発行価額のまま据え置く。
1
5) Cf. Joseph Antoine et al.; Op. cit., p. 397.
―270―
ベルギー会計制度の研究(4)
172のリース債務等は,リースに伴う資産計上に対応するものであって,
ベルギーではかなり以前からリース契約の資本還元を義務付けていること
の現れである。
175の営業債務は,わが国ではその長短に係らず流動つまり短期債務に
分類されるところであるが,ベルギーではすべての資産・負債は1年を基
準に分類されるので,1年以上にわたる営業上の債務が,ここに収容され
る。
これらの貸借対照表価額については,わが国の場合と特に異なるところ
はない。
7. クラス4に属する負債
クラス4は,「短期債権・債務」に充てられていて,債務は42以下で扱
われている。
42の次年度内期限到来長期債務 (Dettes à plus d’un an échéant dans l’année)
は,「年度末にのみ移し替えの処置が行われる」という注がついているこ
と以外とりたてて言及すべきことはない。
7−1 短期借入金 (Dettes à un an au plus)
次に43の「金融債務 (Dettes financières)」の下位勘定は次のようになっ
ている。
430 金 融 機 関―期 限 確 定 借 入 金 (Etablissements de crédit–Emprunts en
compte à terme fixe)
431 金融機関―手形借入金 (Etablissements de crédit–Promesses)16)
432 金融機関―銀行引受手形債務 (Etablissements de crédit–Credits d’acceptation)17)
1
6) 直訳すれば,「金融機関―約束手形」であるが,わが国の表現の仕方に拠っ
た。
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433 金 融 機 関―当 座 借 越 (Etablissements de crédit–Dettes en compte courant)
439 その他の借入金 (Autres emprunts)
やや特異な感じがするのは,銀行引受手形債務であるが,これは,主とし
て国際的な取引において用いられるものであって,手形の支払義務を銀行
が引受けてくれる場合に発生する18)。銀行の顧客への信用供与である。
433の当座借越は,期末に当座勘定の借方残高が確認された場合に,用
いられるもので,次年度の初めには反対記入が行われる19)。
7−2 営業債務 (Dettes commerciales)
44の「営業債務」には,440「仕入先」
,441「支払手形」および444「未
払請求書」の3つの下位勘定が設けられている。フランス同様ベルギーで
も,先の「金融機関」が示しているように対人勘定を用いるのが普通であ
るので,売掛金が仕入先となっているのは当然のことであり,ここでは特
にコメントが必要なのは最後の未払い請求書ぐらいである。これは支払期
限が来た営業債務であって,正確な情報提供という点では評価されるかも
しれないけれど,自らが支払いの遅れを外部に向かって開示することが,
果たして現実的であるのかどうか。さすがに,プラン・コンタブルにおい
ても,「440の仕入先の下位勘定の対象になりうるか,あるいは仕入先の
諸勘定に含めることができる」という注記を伴っている。
7−3 税務債務 (Dettes fiscales) 等
45の「税務債務・対従業員債務・社会的債務」の下位勘定は次の通り
1
7) 日本語訳は内容を表わすためのものであって,直訳すれば「受入信用」とい
うことになろうか。
1
8) Joseph Antoine & Jean-Paul Cornil; Op.cit., p. 28.
1
9)『最低限度の標準プラン・コンタブル(Plan comptable minimum normalisé)』
注1
7)
。
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ベルギー会計制度の研究(4)
である。
4
50 見積税務債務
4500∼4524 国内法人税
4525∼4527 その他の国内税金
4528 外国税金
451未払付加価値税
452 未払税金
4520∼4524 国内法人税
4525∼4527 その他の国内税金
4528 外国税金
453 源泉徴収税額
454 社会保障拠出金
455 報酬
456 バカンス手当
459 その他の社会的債務
法人税に対しては,450の「見積税務債務 (Dettes fiscales estimées)」と452
の「未払税金 (Impôts et taxes20)à payer)」の2つが用意されている。前者は,
決算に伴って当該企業が自ら算定した法人税額を記帳対象とするものであ
り,後者は,次年度になって税務当局から納税告知書が届いた時に用いら
れるものである。きめの細かい処置といえるが,内容的に取り立てて問題
にすることはなさそうである。
2
0) ちなみに,フランス語では,本来は «impôt» と «taxe» とが区別されていて,
前者は「経済力に応じて国庫を支えるための税金」を意味し後者は「義務教
育や国道などのサービス提供に対する対価としての税金」をさすものと考え
られていたが,最近ではそのような区別はほとんど意識されていないように
見える。
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7−4 その他の短期債務
これまでに触れた短期債務以外には,バカンス手当てを除くと,決算調
整勘定つまり経過勘定を含めて特にわが国と異なるところがない。
456の「バカンス手当 (Pécules de vacances)」とは,従業員に対する追加
報酬 (Complément de rémunération) であり,前年度の報酬に一定率21)を乗じ
て金額が求められる22)。
最後に,46以下の勘定分類を,紹介しておきたい。
46 前受金
47 利益処分関連債務
470 前年度分配当金・役員賞与
471 当期配当金
472 当期役員賞与
473 その他の受益権者
48 その他の債務
480 期限到来社債・利札
488 受取保証金
489 その他の債務
49 決算調整勘定・仮勘定
(4
9
0 前払費用)
(4
9
1 未収収益)
492 未払費用
493 前受収益
499 仮勘定
49の「決算調整勘定・仮勘定 (Comptes de régularisation et d’attente)」のう
2
1) ちなみに,2
0
0
4年の率は,賃金労働者 (Ouvriers) に対しては10.
2
7%,事務
系の従業員労働者 (Employés) に対しては18.
8% であった。
2
2) Cf. Joseph Antoine & Jean-Paul Cornil; Op. cit., p. 150.
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ベルギー会計制度の研究(4)
ち最初の4つはわが国で経過勘定と呼ばれるものに相当し,これに関して
はわが国の場合と全く同じである。最後の499の「仮勘定 (Comptes d’attente)」は,発生した時点では該当する勘定が確定し得ないものであって,
わが国の借受金に相当するものである。したがって,年度末には可能な限
り,該当する勘定に振り替えられることになる。ほかに分類に適するとこ
ろがないための処置であるように思える。
(本稿は,成城大学教員特別研究助成による研究成果の一部である。
)
―275―
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