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職業とコンピテンシー - 学校法人 関東学園

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職業とコンピテンシー - 学校法人 関東学園
職業とコンピテンシー
「~求められる人間力~」
目次
1.
プロジェクト選定理由と目的・手段 ....................................................................... 2
2.
関東学園大学におけるコンピテンシー ................................................................ 3
3.
群馬県太田警察署 ................................................................................................. 5
(1)
警察組織の概要 ............................................................................................... 5
(2)
警察署設置の根拠規定 ....................................................................................... 6
ア
警察組織の設置Ⅰ(警察本部) ............................................................................. 6
イ
警察組織の設置Ⅱ(警察署) ................................................................................. 6
ウ
警察組織の設置Ⅲ(交番・駐在所) ...................................................................... 6
警察官に求められるもの・資質 ......................................................................... 6
(3)
太田市消防本部中央消防署 .................................................................................. 8
4.
(1)
消防組織の概要 ................................................................................................... 8
(2)
太田市消防本部、消防署設置根拠 ..................................................................... 9
ア
消防組織法 ............................................................................................................. 9
イ
太田市消防本部及び消防署の設置に関する条例 .................................................... 9
ウ
太田市消防本本部の組織に関する規則................................................................... 9
(3)
5.
消防官に求められるもの・資質 ......................................................................... 9
太田市役所 ......................................................................................................... 10
(1)
太田市の概要 .................................................................................................... 10
(2)
市役所職員に求められるもの・資質................................................................ 12
6.
太田商工会議所 .................................................................................................. 14
(1)
商工会議所の概要 ............................................................................................. 14
(2)
商工会議所職員に求められるもの・資質 ........................................................ 16
7.
調査研究結果 ...................................................................................................... 17
8.
その他(人物試験技法研究会)におけるコンピテンシーについて ....................... 17
9.
参考文献 ............................................................................................................. 21
10.
担当教員による講評 ........................................................................................... 21
1
担当教員
参加学生
1.
藤原重紀先生
21111007
21111043
21111022
21111049
21111024
21111050
21111037
21111057
21111038
21111059
21111039
21111060
木村光雄先生
プロジェクト選定理由と目的・手段
本学園において研究開発され、独自に導入推進している「コンピテンシー・育成プログ
ラム」に関しては、制度導入以来、その効果が注目されているところであり、今後、更な
る発展展開に向けた取り組みが期待できるところである。
そこで、新たに警察・消防コースの新設に伴い、本学のコンピテンシー・育成プログラ
ムを基軸として、警察・消防組織の特殊性にみられるコンピテンシー及び民間企業や市役
所職員のコンピテンシーとの相違について調査・研究を行うため、本プロジェクトを選定
したものである。
調査・研究の手法として警察・消防組織において求められる人材や能力について警察署・
消防署等に赴き、現場で活動する警察官・消防官に直接話を伺い、本学のコンピテンシー・
育成プログラムとの比較を試みた。併せて、市役所等の公務員と商工会議所についても調
査・研究を実施した。
その調査・研究結果を踏まえ、警察官・消防官への道を目指す学生に対する指標を得る
ことにより、同コースの充実に向けての寄与・貢献に資することを目的とするものである。
年間の行動記録(研究スケジュール)
【1】4 月~7月
1
本講座の趣旨・目的及びその効果・活用等に関する講義
2
年間スケジュールの策定
3
太田市役所、太田商工会議所の担当者等を含めた検討会の開催
4
調査の対象・方法等に関する整理・策定の検討
4
調査対象に対する事前準備等
6
警察署、消防署からの聞き取り
2
【2】9 月~10 月
7
前期のまとめの確認
8
上記3「検討会」の開催
9
後期作業日程の検討
10
プロジェクトメンバーの分担決定
11
聞き取り調査の結果集計・分析作業等
12
三松祭での中間発表
【3】:11 月~2 月
13
太田市役所、太田商工会議所からの聞き取り
14
全体レポートの作成作業
15
最終報告書作成作業
16
学内成果発表
17
学外成果発表
2. 関東学園大学におけるコンピテンシー
3
図:関東学園大学におけるコンピテンシー
関東学園大学における 6 つのコンピテンシーの詳細
・表現力
自分の考えや価値観を正しく、わかりやすく人に伝え、同時に理解や賛同を得る自己プ
レゼンテーションができる。
・職業観、社会への関心
社会の問題、出来事に広く関心をもち、自分の携わる職業について、将来への的確な予
測や展望を描ける。
・理論的思考力
思考や信念を周囲と共有しあいながら、物事の要点を整理し、順序だてて考え、正しい
結論を引き出す。
・リーダーシップ
異なる意見を一つに束ねることで、組織をまとめ、もてるチカラを効率よく引き出し、
進むべき方向に仲間を導く。
・主体性・積極性
自発的にプロジェクトを立案し、実行プロセスも考案する。まさにグループとして取る
べき行動を柔軟に調整できる。
・人との交流、協業
周囲の人の意見や行動に俊敏に対応し、協調やサポートを図る。また相互に感化しあえ
る親密な関係を築ける。
4
3. 群馬県太田警察署
実施日:平成 25 年 7 月 22 日(月曜日 4 時限目)
場所:太田警察署署内にて
話し手:太田警察署 金田貴 署長
聞き手:ゼミ生 12 名
(1)
警察組織の概要
5
(2) 警察署設置の根拠規定
ア
警察組織の設置Ⅰ(警察本部)
警察法
イ
第 36 条
第1項
都道府県に、警察本部を置く。
第 47 条
第1項
都道府県警察の本部として都道府県警察本部を置く。
第3項
都道府県警察本部は都道府県県庁所在地に置く。
第4項
内部組織は、政令に定める基準に従い、条例で定める。
警察組織の設置Ⅱ(警察署)
警察法
第 53 条 第 1 項
第 4項
都道府県の区域を分かち、各地域を管轄する警察署を置く。
警察署の名称、位置及び管轄区域は、政令で定める基準に従い、
条例で定める。
ウ
警察組織の設置Ⅲ(交番・駐在所)
警察法
第 53 条
第 5項
警察署の下部機構として、交番その他の派出所又は駐在所を置
くことができる。
地域警察運営規則
第 15 条
第 1項
交番又は駐在所は、昼夜の人口、世帯数、面積、行政区画及び
事件又
は事故の発生の状況等の治安情勢に応じ、警察署の
管轄区域を分けて定め、所管区ごとに置くものとする。
第 2項
交番は原則として都市部の地域に、駐在所は原則として都市部
以外の地域に設けるものとする。
規
則(群馬県警察の組織及び警察職員の配置定数に関する規則)
第 48 条
第 1項
署の下部組織として、交番、駐在所及び署所在地を置き、必要
によりその他の派出所又は検問所を置く。
第 2項
交番等の名称、位置、管轄区域等は、別に公安委員会規則で定
める。
規
則(交番の名称等に関する規則)
訓
令(群馬県)警察の組織に関する訓令
(3) 警察官に求められるもの・資質
○憲法・地方公務員法上の規定から
(
~
すべての地方公務員に共通
~
)
全体の奉仕者(憲法)、法令及び上司の職務上の命令に従う義務・信用失墜行為の禁止・守
秘義務・職務専念義務・政治行為の制限・争議行為の制限・営利企業等従事制限(地公法)
など
○基本的事項
Ⅰ
規律観念
6
○
遵法精神・規範意識が重要視
○
規則正しく常識的な生活、社会・組織の秩序維持に資する考え方と行動
○
規律観念を身に付け、自分自身をスキルアップ
Ⅱ
社会貢献・奉仕の精神
○
全ての公務員に求められる大前提の能力
○
私利私欲とは真逆の存在」
○
この精神によって、警察官という職業に使命感や誇りが醸成
Ⅲ
職業観・社会への関心
○
職務執行に伴う各種法令等の理解
○
事例の習得、業務内外の知識の積極的吸収
○
自己啓発
Ⅳ
律義さ・責任感
○
社会人として、警察組織の一員として活動するに必須
○
前向きな姿勢、周囲との協調・協力関係、表裏ない良心的な心等
○
通常人の資質の一つ
Ⅴ
論理的思考力
○
各種の職務執行に当たっては問題、障害が発生
○
これら問題に対応する能力、対処できる能力が必要不可欠
Ⅵ
健全な精神と肉体
○
職務を円滑に行う上で不可欠な要素
○
国民の安全で安心な生活を確保する活動の大前提
○
知的体育会系の人物が求められる
○ 知的体育会系とは、職業観・社会への関心+論理的思考力+健全
な精神・肉体
コンピテンシーの根拠は警察職員の「職務倫理」からである。
警察職員の職務倫理に関しては、警察職員の職務倫理及び服務に関する規則(国家公安委
員会規則)第2条では、以下の通り規定している。
1
誇りと使命感を持って、国家と社会に奉仕すること。
2
人権を尊重し、公正かつ親切に職務を遂行すること。
3
規律を厳正に保持し、相互の連携を強めること。
4
人格を磨き、能力を高め、自己の充実に努めること。
5
清廉にして、堅実な生活態度を保持すること。
7
4. 太田市消防本部中央消防署
実施日:平成 25 年 10 月 7 日(月曜日 4 時限目)
場所:太田市消防本部中央消防署にて
話し手:
聞き手:ゼミ生 12 名
(1)
消防組織の概要
8
(2) 太田市消防本部、消防署設置根拠
ア
消防組織法
第10条
第1項
消防本部
「消防本部及び消防署の設置及び名称並びに消防署の管轄区域
は、条例で定める。
第2項
消防署
「消防本部の組織は市町村の規則で定め、消防署の組織は市町村
長の承認を得て消防長が定める。
イ
太田市消防本部及び消防署の設置に関する条例
第2条
「太田市の消防事務(委託事務を含む。)を処置するため、消防
本部(以下「本部」という。)及び消防署(以下「署」とい
う。)を設置する。
ウ
太田市消防本本部の組織に関する規則
第1条
「この規則は、消防組織法(昭和 22 年法律だ 226 号)第 10 条第 2
項の規定に基づき、太田市消防本部(以下「本部」とい
う。)の組織に関し必要な事項を定めるものとする。
(3) 消防官に求められるもの・資質
○憲法・地方公務員法上の規定から
(
~
すべての地方公務員に共通
~
)
全体の奉仕者(憲法)、法令及び上司の職務上の命令に従う義務・信用失墜行為の禁止・守
秘義務・職務専念義務・政治行為の制限・争議行為の制限・営利企業等従事制限(地公法)
など
○基本的事項
Ⅰ
全体の奉仕者・サービス精神
○
Ⅱ
警察と同様、特に救急現場等において力量を発揮
体力
○
Ⅲ
心身ともバランスのとれた高い能力
論理的思考力
○
Ⅳ
生命にかかわる緊急事態、災害発生時への対処能力
正義感
○
Ⅴ
自らの命を賭しても他者の人命を尊重するという強い信念
協調性
○
Ⅵ
隊長のもと「個」でなく「全」の意識で行動
リーダーシップ
○
隊員を迅速にまとめる力量が不可欠
9
5. 太田市役所
実施日:平成 25 年 11 月 11 日(月曜日 4 時限目)
場所:関東学園大学にて
話し手:太田市人事課
聞き手:ゼミ 12 名、公務員志望者 1・2・3 年生
(1)
太田市の概要
平成 17 年 3 月 28 日、太田市・尾島町・新田町及び薮塚本町の 1 市 3 町が新設合併して、
「新太田市」が誕生して、現在に至っている。太田市は、群馬県南東部の東経 139 度・北
経 36 度、東京から北西へ約 86km の距離にあり北関東自動車道が北部地域を通過して関越
自動車道、東北自動車道と接続し、東武鉄道によって東京都に接続しています。
図:太田市の人口(平成 25 年 3 月末)
10
図:太田市の議会と組織の概要
11
図:市町村・国・都道府県の仕事
(2) 市役所職員に求められるもの・資質
○市職員になるための心構え
Ⅰ.全体の奉仕者であり、一部の奉仕者ではない
Ⅱ.市民の思いや地域の声を正面から受け止める
Ⅲ.自らの行為が公務の信用に影響を及ぼす
Ⅳ.職務の執行は、市民の税負担によって賄われている
○憲法・地方公務員法上の規定から
(
~
すべての地方公務員に共通
~
)
全体の奉仕者(憲法)、法令及び上司の職務上の命令に従う義務・信用失墜行為の禁止・守
秘義務・職務専念義務・政治行為の制限・争議行為の制限・営利企業等従事制限(地公法)
など
○基本的事項
Ⅰ
コミュニケーション能力
○
地域住民との協同
○
幅広い年齢層の住民との対応
○
各種問題解決対応
Ⅱ
効率性とコスト意識
○
職務の執行、職員の雇用は市民の税金
○
無駄をなくすコスト意識
○
より良いサービスを住民に提供
Ⅲ
全体の奉仕者
○
自らの行動が公務の信用に影響
○
自らスキルアップを行い、行動
Ⅳ
先見性、多角で広い視野
○
地域住民のニーズ
12
○
ニーズに基づく政策立案
○
将来を見通す視野
Ⅴ
積極性
○
Ⅵ
各種の問題、企画対応を率先して実行
創造性
○
住民にとってより良いサービスを考え、提供
13
6. 太田商工会議所
実施日:平成 25 年 11 月 25 日(月曜日 4 時限目)
場所:太田商工会議所にて
話し手:商工会議所職員
聞き手:ゼミ生 12 名、石坂ゼミ 2 年生
(1)
商工会議所の概要
商工会議所は、一定地区の商工業者による総合的な経済団体。業種の違いや規模の大小
を超えて、その地区内の商工業の改善発達をはかると同時に、広く社会一般の福祉の増進
をめざしている。
現在の商工会議所の制度は、昭和28年8月に制定された「商工会議所法」にもとづ
くもので、特別許可法人として運営されている。
商工会議所の特色
1.商工業の総合的な改善発達から社会一般の福祉増進まで、幅広い公共性をもっている。
2.市内全域を対象とする地域団体で、活動の理念は常に地域の発展・向上を図る地域性
をもっている。
3.業種や企業規模、法人・個人にかかわらず、地域内のすべての商工業者が会員として
加入できる総合性をもっている。
14
4.世界各国の商工会議所などと連携をもち、民間経済の推進役として活躍する国際性を
もっている。
図:太田市商工会議所の概要
15
(2) 商工会議所職員に求められるもの・資質
○基本的事項
Ⅰ
表現力
○
Ⅱ
会社の社長に指導・支援を実施
主体性・積極性
○
Ⅲ
自らが会社や街を改善するための立案と行動
職業観・社会への関心
○
Ⅳ
傘下事業所の理解が必要不可欠
忍耐力・あきらめない心
○
Ⅴ
支援活動や支援は最後までやり抜く
人との交流・協業
○
Ⅵ
傘下の事業所、会社に対する指導・支援
リーダーシップ
○
内部の職員、部下指導
16
7. 調査研究結果
まとめ、考察
□警察・消防においては、類似点が多く見られる。
□公務員である、警察官・消防官・市役所職員では、本学のコンピと重なる部分がある
が警察では規律観念、消防では体力、市役所では奉仕の精神が強く求められることが
わかる。
□一方、商工会議所では、本学のコンピテンシーと一致する点が多く、その重要性が再
確認できる。
8. その他(人物試験技法研究会)におけるコンピテンシーについて
なお、コンピテンシーに関しては、次のような報告がなされていることから、以下に参考
まで紹介する。
【参考】
コンピテンシーの考え方の導入(「人物試験におけるコンピテンシーと「構造化」の導入(人
事院「人物試験技法研究会」(抜粋)
コンピテンシーという考え方は、アメリカ合衆国国務省における実証的研究から取り入れ
17
られ始めたものであり、アメリカ合衆国での国家公務員の採用はもとより、英国の国
家公務員採用試験のファーストストリーム試験等において、求められる能力、特性が
コンピテンシーとして表されている。
アメリカ合衆国の人事管理庁によれば、コンピテンシーは、「仕事上の役割や機能をうまく
こなすために個人に必要とされる、測定可能な知識、技術、能力、行動及びその他の
特性のパターン」と包括的に定義されている。しかし、コンピテンシーの定義には幅
がみられ、示される能力、行動特性のレベルについても、リーダーシップから専門分
野の具体的な知識にまで広がっている。また、新人の頃に必要なコンピテンシーの確
認を行う質問をする面接をコンピテンシー面接と称するところもある。
しかし、いずれの場合も共通しているのは、①行動に表れている、表すことができること、
②その能力、特性が結果や成果と結びつくものであることであり、人物試験において
は、コンピテンシーを、
「行動に表れる能力、特性」ととらえることとした。
職務遂行能力の評価という観点から、評定項目及び着眼点について検討した。
職務遂行能力の発揮を時系列的な場面に分けて考えると、まず(1)課題に取組むこと、(2)
取組んだ課題の解決に向けてのプロセス、(3)最後まで取組んで結果を出したか、(4)
結果が成功であった場合も失敗であった場合もその課題での経験を次に生かせるかと
いうことを挙げることができる。
これら一連の課題解決のプロセスを想定して、6 つの評定項目を設定した。
また、特に、評定項目については、二段書きにして能力面での評価要素を明確化するとと
もに、新たに経験学習力を加えた次の 6 項目が適切であると判断した。
評定項目1.積極性(意欲、行動力)
評定項目2.社会性(他者理解、関係構築力)
評定項目3.信頼感(責任感、達成力)
評定項目4.経験学習力(課題の認識、経験の適用)
評定項目5.自己統制(情緒安定性、統制力)
評定項目6.コミュニケーション力(表現力、説得力)
各評定項目及び着眼点の具体的な内容は以下のとおりである。
評定項目1.積極性(意欲、行動力)
・自らの考えを積極的に伝えようとしているか
・考え方が前向きで向上心があるか
・目標を高く設定し、率先してことに当たろうとしているか
・困難なことにもチャレンジしようとする姿勢が見られるか
積極性は、課題への取組みに関連し、それに結びつく能力を示すものであり、課題への率
先性、高い目標の設定、果敢な取組み等が含まれる。積極性のあることが必ず成果を
生むというわけではないが、それがないと職務遂行が始まらないという意味でも共通
に必要な能力である。
また、言葉数が多かったり、外交的であったりすると積極的であると受け止められやすい
が、言葉数が少ないとしても積極性がないとは限らないし、内向的な人でもチャレン
ジできる人はいるというように、多弁や外面的な快活さは必ずしも積極性そのもので
18
はない。このような誤解されやすい点について試験官へ事前に示しておくことも必要
である。
評定項目2.社会性(他者理解、関係構築力)
・相手の考えや感情に理解を示しているか
・異なる価値観にも理解を示しているか
・組織や集団のメンバーと信頼関係が築けるか
・組織の目的達成と活性化に貢献しているか
取組んだ課題の解決に向けてのプロセスの中では、課題の理解や知識、技術に関する能力
に加え、他者理解や関係構築力という対人的な能力としての社会性が求められる。組
織や集団の中でチームの一員として行動する場合はもとより、議論や交渉の場でも、
他者の考えや感情の理解を基礎とし、新しい関係を築いていったり調整したりしてい
ける能力は重要である。
また、例えば、新規の課題に対応し、これまでに関係のなかった部署との連携を図ること
の得意な人がいれば、既に関係のある部署との連携を深めることの得意な人がいるよ
うに、関係構築力には、新たに関係を構築する能力と関係を深めることのできる能力
の双方が含まれる。
評定項目3.信頼感(責任感、達成力)
・相手や課題を選ばずに誠実に対応しようとしているか
・公務に対する気構え、使命感はあるか
・自らの行動、決定に責任を持とうとしているか
・困難な課題にも最後まで取り組んで結果を出しているか
課題解決に向けて行動し結果を出すに至るまでの中では、安心して仕事を任せられる、誠
実に最後までやり遂げるという観点からの信頼感が重要である。公務においては、正
解のない問題や困難な問題に直面しても投げ出さない、粘り強く確実に成し遂げると
いうことが求められ、そのような行動が信頼を生むともいえる。
また、口に出してうまく言えなくても、自分がやらなければという使命
感を持って達成意欲を継続していけることも看過してはならない。
評定項目4.経験学習力(課題の認識、経験の適用)
・自己の経験から学んだものを現在に適用しているか
・自己や組織の状況と課題を的確に認識しているか
・優先度や重要度を明確にして目標や活動計画を立てているか
・他者から学んだものを自己の行動や経験に適用しているか
公務を遂行するに当たっては、これまでと状況が変化したり、新たな課題に出会うなど、
想定されていなかった状況や課題に対面しても対応していける力を持っていることが
求められている。広い知識、豊富な経験等は、このような能力にとって基礎となるも
のの一つであるが、このような基礎的な能力が行動レベルの顕在的な課題解決力とし
て発揮されるかをみるためには、これまでの経験から何を学んできているか、その経
験から何を抽出しているかに注目することが重要である。
この経験学習力は、経験から学びそれを新たな状況に生かす能力であり、着眼点として挙
げられているものは、コンピテンシーの習得や発揮と強く関係している。
19
また、経験学習力は、意欲やモチベーションともかかわりがあり、自己の成長への意欲、
達成感、自己効力感、活躍できたかという認識があることも重要である。
評定項目5.自己統制(情緒安定性、統制力)
・落ち着いており、安定感があるか
・ストレスに前向きに対応しているか
・環境や状況の変化に柔軟に対応できるか
自己を客観視し、場に応じて統制することができるか
組織の一員として行う場合でも個人が単独で行う場合でも、職務遂行全般において安定性、
感情面でのコントロールは必要である。この点について、自らをコントロールし、あ
る時には自分を抑え、ある時には自己表現ができるという能力の観点から、自己統制
(セルフコントロール)としてとらえ、情緒安定性と統制力をその要素として示すこ
ととした。これは、例えば、いわゆる逆境に強いということには、ストレス耐性が高
いという面と、緊張した状況やあいまいな状況でも落ち着いて最適解を見い出すプロ
セスをとることができるという面があるということである。
また、着眼点についても、自己を客観的に観察できること(セルフモニタリング)、ストレ
スを重圧として受け取るのではなく、それに前向きに対応することという能動的な要
素として示した。
また、このような能力は、過去の行動についての聴取事項への回答の様子に表れるだけで
なく、面接場面全体の対応においても表れうるものである。
評定項目6.コミュニケーション力(表現力、説得力)
・相手の話の趣旨を理解し、的確に応答しているか
・話の内容に一貫性があり、論理的か
・話し方に熱意、説得力があるか
・話が分かりやすく、説明に工夫、根拠があるか
この能力の基本は、相互理解にあり、まず相手の話がわかること、そして相手を理解でき
ることが前提となって自らを表現できることであるが、特に、職務を遂行する上では
表現が論理的であることが求められる。さらに、表現された内容が相手に受け入れら
れる(行動の変容をもたらす)ためには、熱意が伝わること、機知に富んでいたり例
示をうまく使うなど説明に工夫があることが必要である。
なお、コミュニケーション力は、これまでも職務遂行に欠かせない能力の一つとして評定
項目に挙げられていたものである。
20
9. 参考文献
人事院「人物試験技法研究会」
{人物試験におけるコンピテンシーと「構造化」の導入}
平成 17 年 8 月
www.jinji.go.jp./jhoukoku.pdf
10. 担当教員による講評
本学園において研究開発され、独自に導入推進している「コンピテンシー・育成プログ
ラム」に関しては、制度導入以来、その効果が注目されており、更なる発展・展開に向け
た取り組みが期待できるところである。
そこで、本プロジェクト型授業は、新たに警察・消防コースの新設に伴い、これまでの
コンピテンシー・育成プログラムに立脚し、警察官・消防官に求められる社会対応力とし
ては、どのようなものがより求められるか等を警察署・消防署等に赴き、現場で活動する
現役警察官・消防官をはじめ、太田市役所担当部署や市内優良企業・太田商工会議所等と
の協力を得て、職業人として求められる要素との整合性、特殊性等に関する調査・研究を
行ったものである。
21
本プロジェクト型授業を通じ警察官・消防官を目指す学生たちが自主的に計画・実行し、
収集した情報を分析するなどの作業を行い本調査・研究結果を導いたものであり、一連の
作業過程においても、コンピテンシーに掲げられた六つの項目に関連して多くのことを学
んだものと思料される。
加えて、調査・研究結果として警察官・消防官に求められるものと同じ公務員であっても
市役所職員に求められるものの違い、商工会議所職員とは明らかに異なる点などを剔抉し
たことは、大きな成果となったものと期待できる。
22
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