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報告書全文(PDF形式:1014KB
平成 21 年度 地域活性化推進事業
東アジアと九州を繋ぐブリッジ人材醸成のための
留学生等海外高度人材活用方策調査
企業における
海外高度人材活用事例集
平成 22 年 3 月
は じ め に
九州経済の持続的な発展を図るためには、地域におけるイノベーションを創出するとともに、アジア
の成長を取り込みつつ、共に成長・発展を図ることが大切であり、地域企業における海外事業展開の進
展を図ることが重要となっています。
このためには、アジアとの架け橋となり、イノベーションを先導するようなグローバル人材となり得
る留学生を始めとした海外高度人材の活用・育成が求められています。
現在、我が国では、
「留学生 30 万人計画」として、海外からの留学生の受入増加に向けた体制づくり
が進められているところです。今後、世界的な視点での人材育成・確保を行うため、優秀な留学生等海
外高度人材の受入環境の整備が必要とされています。
九州経済産業局では、このような状況を踏まえ、九州企業における留学生等海外高度人材の活用状況
についての実態を把握する目的で、約 60 社の企業を対象に、ヒアリング調査を実施しました。
本事例集は、ヒアリング調査を実施した企業の中から、実際に海外高度人材を活用している企業を選
定し、採用に至った経緯、現在活用している海外高度人材の状況、企業が採用や業務遂行上で経験して
きた課題や方策等を紹介することを目的としています。今後、海外事業展開の一環として、海外高度人
材を活用しようとしている企業や、現在既に活用をしており、いくつかの課題を抱えている企業の皆様
にとって、参考となれば幸いです。
最後に、本事例集作成に当たり、ご協力頂きました企業の皆様、関係機関の皆様に、この場をお借り
して、厚くお礼申し上げます。
(以下、注)
・企業は、県別、業種別の順番に並べて、次ページのリストの順に掲載しています。
・リストと各社の紹介の冒頭に記載している「パターンⅠ(In-Out)」等の記載の意味は、海外高度
人材をどこで採用し、どこで活用しているかというケース分けで、次のようになっています。
パターンⅠ(In-In)
Ⅱ(Out-In)
Ⅲ (In-Out)
Ⅳ(Out-Out)
日本で採用・日本で勤務
海外で採用・日本で勤務
日本で採用・海外で勤務
海外で採用・海外で勤務
・海外高度人材には採用場所や勤務場所によりそれぞれ特徴がありますので、それらの採用・勤務パ
ターンを区分しながら事例紹介を行っています。
・なお、各社の掲載内容については、本ヒアリングを実施した平成 21 年 11 月時点での情報ですので、
ご留意ください。
平成22年3月
九州経済産業局
企業における海外高度人材活用事例集
掲載企業リスト
(県別 → 業種別 → 採用・配属パターン別に掲載した)
掲載
番号
所在県
業種
社名
従業
員数
所在地
頁
(名)
1
食料品製造業
(株)八ちゃん堂
110
福岡県みやま市
1
2
窯業・土石製品製造業
大光炉材(株)
170
福岡県北九州市
3
3
窯業・土石製品製造業
コヨウ(株)
14
福岡県みやま市
5
4
窯業・土石製品製造業
海天通産(株)
4
福岡県福岡市
7
5
金属製品製造業
松本工業(株)
210
福岡県北九州市
9
6
はん用機械器具製造業
空調技研工業(株)
167
福岡県糸島郡
11
7
はん用機械器具製造業
第一施設工業(株)
116
福岡県糟屋郡
13
生産用機械器具製造業
(株)筑水キャニコム
200
福岡県うきは市
15
9
情報サービス業
(株)CCI
35
福岡県福岡市
17
10
情報サービス業
(株)早信国際
7
福岡県福岡市
19
11
情報サービス業
ユニティ・ソフト(株)
12
福岡県福岡市
21
12
機械器具卸売業
(株)大有
8
福岡県福岡市
23
13
技術サービス業
環境テクノス(株)
福岡県北九州市
25
14
宿泊業
(株)ホテルオークラ福岡
320
福岡県福岡市
27
15
宿泊業
(株)ホテルサンライン福岡
38
福岡県福岡市
29
情報サービス業
木村情報技術(株)
13
佐賀県佐賀市
31
はん用機械器具製造業
協和機電工業(株)
長崎県
33
18
輸送用機械器具製造業
(株)タケシマ
20
長崎県長崎市
35
19
化学工業
(株)同仁化学研究所
90
熊本県上益城郡
37
技術サービス業
(株)アルプス技研( 熊本営業所 )
76
熊本県熊本市
39
その他の事業サービス業
(株)ツカサ創研
36
熊本県熊本市
41
37
大分県速見郡
43
宮崎県延岡市
45
鹿児島県曽於市
47
鹿児島県鹿児島市
49
8
16
福岡県
佐賀県
17
72
416
長崎県
20
熊本県
21
22
大分県
生産用機械器具製造業
(株)大川金型設計事務所
23
宮崎県
はん用機械器具製造業
清本鐵工(株)
300
食料品製造業
日本有機(株)
20
飲食料品卸売業
(株)西原商会
1,363
化学工業
三菱化学(株)
25,000
東京都港区
51
情報通信機械器具製造業
富士通(株)
26,102
神奈川県川崎市
53
24
鹿児島
25
26
関東
27
掲載
番号
海外高度人材
雇用人数規模
( 平 成 21 年 11月 時 点 )
(Ⅰ ,Ⅱ 等 は パ タ ー ン )
掲載企業での取り組みのポイント
1
Ⅰ=3名、Ⅲ=1名、Ⅳ=25名
中国・ベトナムで原料生産・加工。「八ちゃん堂精神」を身につけ母国貢献を応援。
2
Ⅰ=1名
中国人採用で、中国内の情報収集活動が大きく広がった。
3
Ⅰ=1名、Ⅳ=1名
現地官公庁への売り込みには現地出身者が必要。女性人材の活用も有効。
4
Ⅰ=1名、Ⅳ=数名
社長自身が海外高度人材の成功例。海外で原料安価生産、日本で販売。
5
Ⅰ=1名
大卒オペレーターとして活躍。多くの研修・実習生の指導も行う。
6
Ⅰ=2名、Ⅱ=1名
海外調達には現地出身者が必要だが、日本で採用が困難ため、現地でも採用。
7
Ⅰ=10名、Ⅱ=5名、Ⅲ=1名、Ⅳ=10名
企業のグローバル化と海外高度人材活用は事業継続に必須。
8
Ⅰ=5名、Ⅱ=1名、Ⅳ=2名
海外への製品販売には海外高度人材が必要。国内では幅広い業務に従事させる。
9
Ⅰ=6名、Ⅱ=4名
現社長自らが雇用されて20年。日本への韓国人受入促進を支援。
10
Ⅰ=1名、Ⅱ=4名
日本語と中国語の連結ソフト開発には、実用的技術を有する現地中国の大卒が有効。
11
Ⅰ=1名、Ⅱ=3名
中国市場と日本在住中国人向けソフト開発に中国人活用は必須。
12
Ⅰ=5名、Ⅲ=1名、Ⅳ=7名
特殊な機械を扱うため、経験者より対応能力の高い人材を求む。
13
Ⅰ=1名、Ⅲ=1名、Ⅳ=18名
グローバル化必須。それぞれの海外高度人材に合った業務に従事させる。
14
Ⅰ=2名
日本人も含め全員に3ヶ国語を推奨。国籍に関係なく能力次第で処遇。
15
Ⅰ=6名
通常のホテル業務に加え、海外での集客と韓国等外国人宿泊客の対応。
16
Ⅰ=1名
海外調達要員として試用を経て正社員で採用。採用して未だ日が浅く、今後の成長に期待。
17
Ⅰ=1名、Ⅳ=33名
日本人と同様の扱い。業務遂行能力と高い日本語能力を求める。
18
Ⅰ=2名
製品の海外営業目的での採用。社長自ら海外営業教育に当たる。
19
Ⅰ=1名、Ⅳ=10名
日本人と同様の扱いで日常技術業務にあたる。英語と日本語が必要。
20
Ⅰ=20名、Ⅱ=200名、Ⅳ=30名
全国展開の技術派遣業で、顧客が満足するレベルの専門能力・日本語等を教育する。
21
Ⅰ=1名
日本人と同様の扱いだが、日本人に無い感覚も期待。
22
Ⅰ=1名、Ⅳ=多数
企業の生き残りをかけ、海外高度人材を国内外の拠点で柔軟に、かつ多数に活用。
23
Ⅰ=2名、Ⅲ=1名
海外高度人材の受け入れ準備を行っている。中国対象、即戦力に期待。
24
Ⅰ=1名
中小企業での海外高度人材活用促進には公的機関の支援が必要。ビジネス日本語が必要。
25
Ⅰ=3名
日本国内の中華料理店等への営業で中国人を活用。
26
Ⅰ=36名、ⅡⅢ=必要に応じ、Ⅳ=多数
グローバル展開で、場所・業務に関わらず活用。海外高度人材向け社内支援システムあり。
27
Ⅰ=250名、Ⅲ=少数、Ⅳ=多数
グローバル化前提で、採用の1割を外国人にする。海外高度人材の社内支援体制あり。
1
(株)八ちゃん堂
業種: 食料品製造業
海外高度人材雇用パターン
Ⅰ、Ⅲ、Ⅳ
代表者
ヒアリング対応者
代表取締役社長 川邉 博之
常務取締役 川邉 勝代
所在地
創業年次:昭和 52 年
福岡県みやま市
URL: http://www.hatchando.co.jp
資本金: 3,000 万円
主要製品、事業内容
海外での原料の生産、輸入、冷凍たこ焼き等製品の製造・輸入、卸・販売。
海外事業
中国:たこを原料として、たこ焼き製造、冷凍加工して日本に輸出。
ベトナム:茄子を生産、茄子焼きを製造、冷凍加工して日本に輸出。
パターンⅠ(In-In)
ベトナム人 2 名、中国人 1 名。
雇用パターン別
海外高度人材の活用
従業員数: 110 名
パターンⅡ(Out-In)
パターンⅢ(In-Out) ベトナム人 1 名。
パターンⅣ(Out-Out) ベトナム人等 25 名。
(株)八ちゃん堂の海外高度人材に対する取り組みの特徴
(1)冷凍技術と焼き技術を基盤とした冷凍食品の海外での原料・加工品生産と日本での輸入販売が主たる業
務であり、海外展開する国の数、事業内容、事業規模の拡大を基本的な方針としている。従って良い人
がいれば、海外高度人材をいつでも受け入れる方針である。
(2)海外高度人材を多く受け入れ、「八ちゃん堂精神」を身につけたのち母国で独立して母国に貢献するこ
とを応援している。従って、日本での長期勤続は求めていない。
(3)奨学金の提供やインターンシップの受け入れなどで、業務を離れてアジアの若者を支援し続けている企
業である。
(1)海外高度人材の活用状況
◇1 名は中国の関係者からの依頼で採用、中国の大学卒業後、日本への大学院生留学生であった(In-In)。
他のベトナム人(1 名)は、東京の大学卒の中途採用で、八ちゃん堂本社での 15 年の国内経験をバックに、
近々ベトナム現地法人に日本人のアシスタントとして送り込む予定である(In-Out)。
◇日本における海外高度人材のうち、文系大卒は主に国内営業を担う。世界からの原料やベトナムや中国か
らの製品輸入も補助的に担う。具体的な業務は、管理・事務、国内営業・販売、通関・物流・運送・倉庫
である。機械工学など理工系の大卒は一連の製造設備の改良・開発を担う。
◇ベトナム現地法人の茄子農場・加工工場では 25 名のベトナム人女性の大卒スタッフが 300 名近い農場労働
者と加工工場作業者の管理運営にあたっている。現地法人立ち上げの際に、全員女性の大卒を、即戦力と
して中途採用した。大学新卒者の採用はまだ少ない。逆に年齢制限をしていない。
(2)海外高度人材活用のポイントと活用メリット
◇経済不況で現状維持となってはいるが、本来の海外展開は、中期的には国の数、事業内容、事業規模とも
拡大方針である。従って、
①海外調達では、現地と九州本社のコミュニケーションに海外高度人材の活用が重要である。
②現状では英語の達者な日本人でかなりカバーできるが、複雑な事情に至れば、どうしても現地出身の外
国人の力に頼らざるを得ない。
③従って、良い人がいればいつでも雇用したい、というポジションである。
1
◇現在雇用している海外高度人材は現場における日本人とのコミュニケーションも良く、日本人に好影響を
与えることができ、社内がより活性化されている。
◇現在の同社の状況では、国内営業での海外高度人材活用の必要性は必ずしも高く無いため、増員予定は無
いが、業務の必要性以上に、アジアの若者を応援したいという気持ちで雇用機会を与えている。
「八ちゃん
堂精神」(きめ細かいものづくり、衛生感覚)を身につけ、母国に戻って、国づくりに貢献してほしい。
◇アジアの若者の応援のために 10 年程前より奨学金を出すなど支援しているが、同社への就職は前提として
いない。純粋に「アジアの若者の応援」が目的。
(3)海外高度人材活用の課題
◇海外高度人材の雇用は定期的に採用する規模に達していない。ケース・バイ・ケースで雇用した。
◇(日本語と英語の語学力問題について)工場のある中国やベトナムとの母国語での折衝のために中国人と
ベトナム人を雇用しているが、現段階では、企業のビジネスがアジア全体に関係するので、かえってグロ
ーバルな営業のための英語のほうが役立つ。ベトナムも英語で対応できる。日本人の雇用でも同じ。
社内コミュニケーションや国内営業で必要な日本語能力は、採用面接時にかなり慎重に査定することで対
処している。
◇今回初めて、日本で訓練したベトナム人大卒をベトナムの農場・加工工場に派遣する(In-Out)が、現地
の 25 名の女性スタッフとの役割調整や、日本の残留家族問題を含めた処遇問題を考慮したシステムを構築
した。
◇ベトナム現地法人の 25 名の大卒・女性スタッフ陣は、現地採用・現地配属である(Out-Out)。
特に日本での業務研修はせず、
“ご褒美”的に日本の見学を主目的とした短期招聘はしているが、ベトナム
と日本の勤務ローテーションはしない。
◇かつて佐賀県の大学卒の中国人男性がいたが、入社後日本国籍をとり、全く別の業種で独立した。その後
も良い関係が続いており、応援している。逆にノウハウを身につけた段階で退職・独立して敵対的企業を
起した人がいたが、事業運営は簡単でなく、結局失敗した例もある。
本社工場の様子
ヒアリングに対応して頂いた川邉常務
2
2
大光炉材(株)
業種: 窯業・土石製品製造業
海外高度人材雇用パターン Ⅰ
代表者
取締役社長 小林 滉
ヒアリング対応者
業務統括部 総務部長 平川 明宏
所在地
福岡県北九州市
URL: http://www.taiko-ref.com/
資本金: 5,000 万円
創業年次:昭和 25 年
主要製品
事業内容
海外事業
雇用パターン別
海外高度人材の活用
従業員数: 170 名
【不定形耐火物、ファインセラミックス】
耐火物の同業他社は、上場企業の関連会社が多く、技術力が優れていないと、ユ
ーザーから購入してもらえない。セラミックスは、大手企業が参入しない分野の
ノウハウが同社の強みである。
耐火物の原料鉱物(アルミナ、マグネシア)を中国等から調達している。
製品は重量物で、日本で製造して輸出することは不向きなため、海外の企業に技
術移転してロイヤリティを受け取っている。
パターンⅠ(In-In)
中国人 1 名。
パターンⅡ(Out-In)
パターンⅢ(In-Out)
パターンⅣ(Out-Out)
大光炉材(株)の海外高度人材に対する取り組みの特徴
(1)オーナーのネットワークで、昨年、中国からの長崎県の留学生(文系・博士課程、女性)を 1 名採用。
(2)従来できなかった中国語で書かれた情報(ホームページ、新聞等)の収集などの業務に従事。
同社の情報収集活動が大きく広がった。
(3)原料鉱物を中国から調達する際に、中国語のネイティブの人がいると、価格の交渉などでいろいろ有利
な面がある。但し、契約業務そのものは弁護士を起用する。
(1)海外高度人材の活用状況
◇オーナーのネットワークで、昨年、中国からの長崎県の留学生(文系の博士課程の女性)を 1 名採用。正
社員である。平成 13 年に来日し日本語学校で学び、長く日本で生活しているので日本語は堪能。留学生の
リーダー的存在であった人である。
(2)海外高度人材活用のポイントと活用メリット
◇中国語で書かれた情報の収集等、従来十充分出来ていない分野の業務を担当しており、情報収集の幅が広
がった。日本語も堪能で、丁寧できれいな文字(日本語)を書く。
◇耐火物の原料鉱物(アルミナ)を中国、ブラジルから商社経由や直接調達しており、海外からの原料の調
達、中国語で書かれた情報の収集などの業務に従事。耐火物の原料鉱物を中国から調達する際に、中国語
のネイティブの人がいると、価格の交渉などでいろいろ有利な面がある。
◇製品は、重量物であるので日本で製造して輸出することは不向きなため、海外の企業に技術移転して、ロ
イヤリティを受け取る。契約に際しては、海外に強い弁護士を起用しているため、外国人社員に契約業務
までを求めている訳ではない。
◇自社の海外拠点との業務円滑化、拡大への備え、海外との取引ビジネスの円滑化、多様な社員の融合によ
る国際化機運の醸成などを目的にしている。
3
(3)海外高度人材活用の課題
◇採用した外国人社員のキャリアパス、給与等は日本人の社員と同じ扱いである。そのためにも長期に勤務
して欲しい。
◇採用前は、ノウハウ流出・機密漏洩が気になっていたため、採用面接時点でも特に機密保持と長期勤務す
る事について確認した。雇用して技術を教えた後、短期で退職された場合のダメージをおそれた。但し、
雇用契約で秘密厳守を記載するところまではしていない。
◇就労ビザの取得については、本人と総務の担当者で実施したが、問題があったとは聞いていない。
◇採用後の特別な研修等は実施していない。
◇住居については、アパートを借りた当人に住宅手当を支給しており、問題は生じていない。
(4)今後の海外高度人材採用方針
◇将来的に海外高度人材を採用するかどうかは未定。
◇いわゆる団塊の世代の従業員が多く、定年は 60 歳だが、雇用延長を 65 歳にして対応。最近は、毎年数名
を新規採用してきたが、今年は現下の経済情勢から募集していない。外国人枠があるわけではない。
◇インターンシップは、条件があえば断続的に受け入れている。
社会貢献が目的で、必ずしも採用に繋がらなくても良いが、怪我等の問題もある。
10 名程度の大学、高校の学生やポリテクセンターの受講生のインターンシップを受けている。大分工場で
は大分県の大学生も受け入れている。期間は 1~2 週間。拒むつもりはないが、留学生はまだ受け入れてい
ない。
ヒアリングに対応して頂いた平川部長
4
3
コヨウ(株)
代表者
ヒアリング対応者
所在地
創業年次:昭和 35 年
主要製品
事業内容
海外事業
雇用パターン別
海外高度人材の活用
業種: 窯業・土石製品製造業
高度人材雇用パターン Ⅰ、Ⅳ
代表取締役社長 古賀 雅之
代表取締役社長 古賀 雅之
福岡県みやま市
URL: http://koyoh.jp/
資本金: 1,200 万円
従業員数: 14 名
エコ・バイオブロック。
有用微生物である納豆菌を封入したセメントベースブロックの材料開発及び加工
製品の開発製造と販売。
エコ・バイオブロックの加工製品の販売。
パターンⅠ(In-In)
タイ人 1 名。
パターンⅡ(Out-In)
パターンⅢ(In-Out)
パターンⅣ(Out-Out) 中国人 1 名(アルバイト)
。
コヨウ(株)の海外高度人材に対する取り組みの特徴
(1)海外拠点は有していないが、自社開発製品の海外への売込みを積極的に進めている。
(2)輸出の場合、売り込む相手は官公庁が主体であり、その国の海外高度人材を採用して売り込みを図るの
が有効である。
(3)日本では日本人と外国人の扱いに差をつけない方針である。
(1)海外高度人材の活用状況
◇九州の全社員数は 14 名、うち海外高度人材が 1 名である。過去に日本で通訳をしていた中国人女性を改め
て雇用したが、母国の家庭の事情で退社・帰国した。現在はタイ人女性の日本への留学生を雇用している。
タイ人女性は、中国人女性が退職前に九州での留学生合同面談会で見いだし、卒業時点で採用に至った。
佐賀県の大学の農学部で研究をしていた留学生であった。
◇大連市の拠点では現地で日本企業に勤務していた中国人を雇用できた。延辺地域の朝鮮族で日本語、中国
語、韓国語と英語のマルチリンガルである。
◇製品の PR・販売を目的とした海外拠点を韓国と大連市に有している。近々、上海市での営業活動を強化し
万博に備える。上海市での活動も広げたいが、現時点では雇用する段階までは達していない。
(2)海外高度人材活用のポイントと活用メリット
◇販売の半分は海外向け。販売先は各国の環境・インフラ担当の官公庁である。日本からのグローバル販売
活動は、英語を使える日本人の研究者が営業活動を行うことで、ある程度カバーできる。しかし、環境改
善素材・機器の販売先は各国の環境関連官公庁であり、その動きを把握し、売り込み販売を行う上で、そ
れぞれの国の拠点があればその活動が有効であることは当然である。従って、これらの官公庁に技術営業
ができる現地人材を求めている。
◇ただし、官公庁への営業活動は日常的な売り込みではなく、海外拠点の業務量はさほど多くないので各国
拠点の常設は必須ではない。従って、日本から海外の官公庁に技術営業ができる海外高度人材を求めてい
る。
5
◇国情によって、PR 効果の高い製品のあり方が異なる。中国では「見える環境製品」であることが大事であ
る、との現地社員のアドバイスに基づき、日本向けデザインと全く異なる製品に仕上げた例もある。
◇しかし販売規模・利益は、まだ拠点国や拠点数の増加・強化を積極的に展開するには至っていない。従っ
て、現地の強化是非はコスト・パフォーマンスとのバランスを図ることが大事である。
◇日本の本社で英語を使ったグローバル販売と、海外拠点のローカル活動の組み合わせが重要なポイントと
なる。
◇日本では、日本人と外国人の扱いに差はつけない、というより実力次第である。両者(中国人女性・タイ
人女性)とも、日本人以上に真面目・勤勉で、出社も早く掃除等も行うなど、日本人の見本ともいえる存
在である。
◇採用にあたっては福岡県や福岡労働局などの合同就職面談会などを利用したり、海外では銀行の紹介など
で採用している。
(3)海外高度人材活用の課題
◇在留資格については、技術系のため、業務内容が記述しやすく、審査上問題は起きていない。現時点では、
雇用している外国人の数も少なく、又、研究・営業の両方が分かる高度人材であることから、特にビザ上
の問題も起きていない。
◇同社の経験では、住居問題、保険問題等は、採用前に本人が解決していた。企業としては、必要な証明と、
住宅の保証人になることぐらいで済んでいる。
◇それでも、企業としての支援策を整備する必要性があるが、社内の総務・人事の業務範囲でこなすだけの
陣容と体力が無いと感じる。
(4)今後の海外高度人材採用方針
◇現在の企業規模では、日本人社員でも定期的な採用をする力はない。海外の高度人材は、良い人がいれば
採用する、という段階である。
◇海外販売の拡大が必要で、そのための海外高度人材の活用も必要であるが、中小企業の体力の範囲内で、
徐々に拡大してゆく。短期的には韓国の経済復活のスピードについて行くこと、次が中国・上海万博への
対応が喫緊の問題である。次が大連のアクティビティの強化である。延辺地域の朝鮮族の活用が鍵となる
だろう。
◇九州で活用する人材は九州・日本で採用する、海外拠点で使う人材は現地採用が基本である。
九州の業務は製品の研究・開発が主体となる。海外拠点での業務は、PR、販売の拡大営業、日本での開発
に対するアドバイスが主体となる。例として水環境はあまり表に出ないようにアレンジされることが多い
が、中国では「見える製品」にする方が販売効果が高いということで、デザインを変えた。
◇留学生採用を考えた場合、理工系の専門性が必要であるが、就学レベルで日本語能力に違いがある。すな
わち、4 年制大学は最も日本語に優れる。外国の大学から日本の修士課程に入った学生の日本語は多少落
ちる。博士課程はもともと本国に戻るつもりの人が多く日本語修得はあまり熱心でないケースがある。以
上から、専門性と日本語のバランスで 4 年生大学か修士課程までが採用対象と考えている。
◇要求する語学能力については、企業形態やそれぞれの業務でかなり異なる。
グローバル販売をしているが、その国によって、かなりの商売規模になれば、担当者と対象国を直接繋ぐ
ためには、その国の出身者が母国語で商売できることが必要だが、そうでない場合は、多くの国と日本か
ら英語で業務を行うこととなるだろう。
6
4
海天通産(株)
業種: 窯業・土石製品製造業
海外高度人材雇用パターン Ⅰ、Ⅳ
代表者
ヒアリング対応者
所在地
代表取締役 張 先海
代表取締役 張 先海
福岡県福岡市
URL: http://www.kaiten-ti.co.jp/
設立年次:平成 16 年 開業年次:平成 18 年
資本金:1 億円
従業員数:4 名(九州本社)
主要製品
・研磨材の開発・生産・輸入・卸売、建築材料・中間製品・原材料などの輸入、特殊
事業内容
機電設備・自社製品の開発、電子電気機械などの受託設計および加工、エコ・省エ
ネの技術開発。
海外事業
・中国: 通化、牡丹江、北京、永靖県鏡泊湖、大連などに複数の拠点、協力会社、
人材育成センター等を有し、上記各種製品の生産拠点としている。
雇用パターン別
パターンⅠ(In-In)
中国人 1 名。
海外高度人材の活用 パターンⅡ(Out-In)
パターンⅢ(In-Out)
パターンⅣ(Out-Out)
中国人数名。
海天通産(株)の海外高度人材に対する取り組みの特徴
(1)張社長自身が、日本で語学を学び、留学生として博士号をとり、日本で起業した成功事例である。
(2)中国に 3 つの工場と 1 つの企業があり日本に製品を持ち込む。現地で幹部職員数名(パターン IV)採
用しているが、ここで如何に優秀な高度人材を確保し、高品質低コストの製品を製造出来るかが事業の
ポイントである。但し、日本との人的ローテーションはしていない。
(3)日本で中国人スタッフ 1 名(パターン I)が従事している。日本の業務は日本の大手企業への納入を中
心に事業を展開。海外高度人員は充足しており、増員は考えていない。
(1)事業内容
◇張社長の経歴(海外高度人材の例、外国人の日本での起業例として)
社長は、ハルピンの大学にて金属材料学を専攻、大連で 3 年間勤めた後、日本に留学した。九州で 1 年間
日本語を勉強し、福岡県の大学で経済の修士を取得し、更にその後芸術工学修士を取得した。福岡県の別
の大学で博士課程と研究員を経て、平成 18 年に開業した。
◇以前は IT 関連の事業を行っていたが、現在は研磨材の開発・生産・輸入・卸売及び工業や建築の製品・中
間製品・原材料などの輸入、特殊機電設備、機器、部品の輸出が主業務である。製品は中国の 3 工場で生
産し、一部は日本に輸入し販売する他、中国国内で販売している。
◇中国での工場生産は、工場毎に異なる中国の友人と共同経営をしている。中国での生産目的は、原料の確
保やコストの低減である。近々ISO 認定を受けるつもりである。
◇第 1 工場(吉林省)は、平成 18 年に設立し、建築材料の開発・生産・販売を営んでいる。第 2 工場(黒龍
江省)は、発電所の建物を利用して短期で立上げ、平成 19 年の稼動後、現在 24 時間稼働中であり、生産
した研磨材をほとんど日本に輸入している。第 3 工場(甘粛省)は、原料調達や輸送に便利な立地で、平
成 22 年から稼働し始めた。生産した研磨材は、3 分の 1 を日本に輸入し、3 分の 2 を山東省にあるグルー
プ工場に納入する。また、北京で設立した現地法人は、エコ・省エネの技術開発と製品の生産・販売を主
な業務として展開しており、今後、日本との連携を深めたいと考えている。
(2)海外高度人材の活用状況
(2)-1 日本・本社
◇日本の本社は中国人社長と日本人を含め 4 名。うちスタッフ 1 名が中国人女性で総合職(パターンⅠ
In-In)である。日本の業務は、日本の大手企業への納入がほとんどであるため、現時点では海外高度人材
の増員は考えていない。
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(2)-2 中国の現地工場等
◇現地工場の工場長及び数名の管理者が活躍中である。採用は全員現地採用(パターンⅣ Out-Out)である。
中国での製造・生産に携わっている人員が、3 つの工場で中国人は 86 名おり、そのうち工場長と数名の管
理者が大卒で高度人材にあたる。他はワーカー。
北京の現地法人には 5 名の現地の従業員がいる。そのうち、3 名は修士又は博士であり、高度人材にあた
る。
(3)海外高度人材活用のポイントと活用メリット
◇九州の本社では、業務の性格上、海外高度人材活用は必ずしも必要ではない。現在の 2 名(社長を含む)で
充足しており、新たに中国人を新卒採用して育成するのは、現在の業務内容や企業の体力を考慮すると難
しい。
◇中国に、低コストでかつ日本市場で販売可能な品質を確保できる生産拠点を持つことが最大の要件である。
日本向け品質を維持するための技術は、張社長と中国国内の友人と、各工場の中国人スタッフで対応して
いる。現地工場での高度人材(Out-Out)の確保と、技術蓄積のため長期勤続して欲しいことから、基本給
(現地でトップレベルの金額)とボーナス及びその他の中国流のインセンティブを厚くしている。
◇日本市場に見合う品質確保のための経費は充分に使い、品質の重要性を理解させている。
◇日本人の研磨材技術経験者を現地での指導者として得たいのだが、現時点では得られていない。
(4)海外高度人材活用の課題
◇九州地域での海外高度人材活用は、需要が少ないように感じる。
◇一方で中国人留学生も、本当に真面目に安定的に働ける人材は少ない。
◇中国人の場合、エリートクラスは中国へ帰り、日本で勉強しなかった人も帰国せざるを得ない。中間クラ
ス(1/2)は日本に残って就職を希望するのが一般的ではないか。
◇日本人と全く同じような仕事に従事すれば、言葉の問題もあり有利ではない。外国人の特徴を活かせる場
(輸出入業務や海外企業との連携など)が必要と考える。
(5)その他-1:日本人を中国工場で活用したい。
◇中国市場での活用は有望と考えられる。特に日本の技術や経験を
有する人材は、中国市場において、リーダーや指導者として活用
できる。
◇中国の大手企業では日本人の採用に積極的で、特に中国語のでき
る日本人女性は活用が期待できる。
◇日本本社では、現段階では海外高度人材活用より日本人採用を考
えており、研磨材に関する経験者がいれば採用し、技術指導・経
営的な面で中国へ行って活躍して欲しい。
(6)その他-2:日本企業への中国進出の勧め
◇中国市場は有望。日本企業の技術と経営力があれば、進出して成
功する確率は高い。中国では日本の技術を必要としている。現地
には元日本留学生が多数おり、日本企業進出時には有効に活用で
きる。
ヒアリングに対応して頂いた張社長
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松本工業(株)
代表者
ヒアリング対応者
所在地
創業年次:昭和 41 年
主要製品
事業内容
海外事業
雇用パターン別
海外高度人材の活用
業種: 金属製品製造業
海外高度人材雇用パターン
Ⅰ
代表取締役社長 松本 茂樹
工場長 西宣之、業務課課長 後藤 洋
福岡県豊前市
URL: http://www.matsumoto-kk.co.jp
資本金: 4,800 万円
従業員数: 210 名(グループ全体)
第 2 工場(ヒアリング先):自動車部品、金物部品(住宅関連)。
同社全体の 7 割の売上を担っている。
本社:ゼネコン、食品部門(スーパー等)、商社機能(自社製品販売)。
第 1 工場:製缶工場(物流用パレット、ダムの型枠等)。
関連会社(松本エンジニアリング):設備・金型(社内用)製造。
韓国、タイにライセンス契約した協力メーカーがある。
パターンⅠ(In-In)
中国人 1 名。
パターンⅡ(Out-In)
パターンⅢ(In-Out)
パターンⅣ(Out-Out)
松本工業(株)の海外高度人材に対する取り組みの特徴
(1)中国人大卒 1 名がオペレーターとして活躍。日本滞在は 10 年に達する。
(2)研修・実習生は中国から 3 年間、毎年 5 名受け入れ・全体で 15 名前後いるが、中国人オペレーターに
は研修・実習生の通訳や指導も担ってもらっている。
(3)今後ベトナムからの研修受け入れに切り替えを検討しており、併せてベトナム人海外高度人材の新規雇
用を検討中。
(1)海外高度人材の活用状況
◇東京の大学を卒業した中国人男性 1 名が 3 年前に中途入社して活躍中である。現在は日本人女性と結婚し
ているが、日本居住期間は学生時代も含めて約 10 年になる(In-In)。
◇以前、中国進出の計画があり、通訳も兼ねて九州の大学出身の中国人を採用する予定だったが、顧客の都
合でプロジェクトが中止となり、採用に至らなかった。
◇タイや韓国のライセンス契約をしている企業のスタッフを受け入れ、管理者育成をすべく検討したことが
あったが、経済状況により現在まで取り止めている。
◇海外高度人材の範疇には入らないが、若い溶接工が欲しいという社長の方針で 8 年前に中国の武漢から研
修・実習生を 5 名受け入れている。以後、無錫、青島からも継続的に受け入れしている。来年度はベトナ
ムからの研修・実習生を受け入れる予定である。
(2)海外高度人材活用のポイントと活用メリット
◇第 2 工場で働く中国人の現場オペレーターには、中国からの研修・実習生の通訳も兼ねた指導員の役割も
担ってもらっている。
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(3)海外高度人材活用の課題(主に外国人技能研修生について)
◇研修生 1 年目は研修期間であり、
(時間など)制約内で現場指導している。以前は、近隣の日本人講師が日
本語教育を行っていたが、現在は実施していない。各人が空手を習ったり、バスケットのサークルに参加
したりと、積極的に日本人とのコミュニケーションを取っているようである。
◇研修・実習生の採用試験は現地で行なっており、溶接試験と面接を通じて、日本語は日常会話ができる程
度の人材を採用している。当初は熱心な研修生が多かったが、近年は「金稼ぎ」と割り切って来日してい
る研修生が多く見受けられる。また、インターネットの普及、近隣工場の中国人従業員の増加に伴い、日
本人とのコミュニケーションの必要性も減少しており、日本に馴染みにくくなってきた。
◇監査や研修生に対する法制約が厳しく、企業の負担が大きい。例えば、住宅や寝具の提供、送迎などもや
っている。さらに受け入れ手続きや更新手続き、1 回/年の監査対応も全て自社内で行なっており、コスト
や業務負担が増えてきている。
(4)今後の海外高度人材採用方針
◇来年度、中国でなくベトナムからの研修・実習生の受け入れを検討しており、それに併せて 1 名の海外高
度人材の採用を検討中である。
◇現段階では、ベトナムからの研修・実習生の受入れに伴う 1 名以外に、採用の予定はないが、今後の海外
進出動向により採用を行う。
◇研修・実習生の受け入れ状況により、今後採用の可能性は多いにある。
松本工業株式会社 第 2 工場
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空調技研工業(株)
代表者
ヒアリング対応者
所在地
創業年次:昭和 41 年
主要製品
事業内容
海外事業
雇用パターン別
海外高度人材の活用
業種: はん用機械器具製造業
海外高度人材雇用パターン Ⅰ、Ⅱ
取締役社長 占部 幹彦
取締役経理部長 平野実、総務係長 小串 彰
福岡県糸島郡志摩町
URL: http://www.kuchogiken.co.jp/
資本金: 1 億円
従業員数: 167 名
冷房・暖房・換気・防災などの空調機器製造。
制気口、空調用ダンパー、防火・排煙用ダンパー、排煙口等の開発・生産・販売。
中国(上海)の委託生産工場から部品調達している。
パターンⅠ(In-In)
中国人 2 名。
パターンⅡ(Out-In) 中国人 1 名。
パターンⅢ(In-Out)
パターンⅣ(Out-Out)
空調技研工業(株)の海外高度人材に対する取り組みの特徴
(1)事業が海外調達のウェートが増加したことから、海外の人材活用を進めている。採用はコンサルタント
企業を起用して進めている。
(2)日本の大学に留学する外国人の採用については、大学を通じての応募が少なく、より良い人材の確保が
難しい。従って現地採用・国内就業(パターンⅡ)に踏み切った。
(3)給与は採用地での給与がベースとなると考えている。
(1)海外高度人材の活用状況
◇海外留学生の採用実績は中国人 3 名である。うち 1 名は勤続 10 年の男性で、中国の大学を卒業後、日本の
大学に留学したのち、同社に技術系で就職した。現在は購買課長(対中国企業)として活躍中。永住権を
申請できる年数に達した (In-In)。
◇他に現地・中国にて 1 名の女性を採用(勤続 2 年)
。中国の大学に在学中、長崎県の大学に留学、帰国して
現地にて直接試験し採用に至った。現在は九州で技術部技術課に所属している (Out-In)。
ちなみに技術系部門には日本人女性が 5 名所属している。
◇さらに、1 名の女性(勤続 1 年)が中国の大学に在学中、長崎県の大学に留学時に、日本で採用試験を受
け内定後、一旦帰国して卒業後、入社した。現在は九州で開発課に所属している (In-In)。
◇九州での採用活動は、コンサルタント企業経由の紹介で、複数企業と合同で就職説明会を実施した。採用
基準は工学系で日本語が分かる人で、応募者は 10 数名集まった。コンサルタント企業(福岡県)には大学
紹介、手続きの指導などをお願いしている。中国の大学とのパイプが強いコンサルタント企業である。
◇平成 21 年は日本人の高卒 7 名を採用した。平成 22 年は大卒 2 名(技術開発職員として)
、高卒 6 名(現業
職員として)を採用した。
◇給与形態について、採用場所での給与がベースと考えている。日本国内採用の場合は、中国駐在となって
もベースは日本の給与形態になるだろう。
(2)海外高度人材活用のポイントと活用メリット
◇事業が海外調達のウェートが増加したことから、海外からの人材活用が自然と根付いた。現地生産委託企
業との正確なコンタクトが取れることが最大のメリットである。勤続年数が少ない間は、日本人スタッフ
の出張に同行する形だが、将来は、より広い活躍が出来ると考えている。
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◇日本の大学に留学する外国人の採用については、大学を通じての応募が少なく、より良い人材の確保が難
しい。従って現地採用・国内就業(パターンⅡ)に踏み切った。
◇外国人の活用は企業としての目的が明確である必要があるようだ。たまたま外国人を採用するのでは難し
いだろう。
◇社内に良い影響を与えており、社内で中国語サークルを立ち上げてはという話があった。
(3)海外高度人材活用の課題
◇ビザ切り替え手続きは本人が行っている。業務が技術職のため、比較的容易なのかもしれない。住居は同
社が保証し、近くにアパートを借りている。何れも特に問題はない。社会保険関連も日本人と同様に行っ
ており、問題はない。
◇日本語研修は特に実施していないが、問題もない。同社自体は輸出業務がないので、英語もさほど重要で
はない。
◇インターンシップは日本人の高校生向けは実施しているが、留学生向けは経験がない。
(4)今後の海外高度人材採用方針
◇海外高度人材の採用については、今後、様子を見ながら検討していく予定である。
◇募集職種は、海外(中国)調達要員で、日常会話が分る程度の日本語能力、工学系の知識を有する人を採
用する方針。技術系の話ができる人という条件になる。
◇将来は海外(中国)駐在が出来る人材が欲しい。
◇過去にベトナム人の採用を希望して、福岡県の合同就職説明会に参加したことがあった。しかし、条件(工
学系)に適した人が少なく、採用に至らなかった。いずれは、中国以外への進出の可能性も視野に入れて
いるが、まだ具体化はしていない。
◇採用条件ではないが、本来は新卒採用で育てていき、長く勤めて欲しいと考えている。
ヒアリングに対応して頂いた平野部長(右)と小串係長(左)
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第一施設工業(株)
業種: はん用機械器具製造業
海外高度人材雇用パターン Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ
代表者
ヒアリング対応者
所在地
代表取締役 篠原 統
代表取締役 篠原 統
福岡県糟屋郡新宮町
URL: http://www.daiichi-shisetsu.co.jp
創業年次:昭和 42 年
資本金: 9,950 万円
主要製品、事業内容
エレベーター、半導体、液晶搬送装置の設計、製造、販売。
海外事業
製品の 70%は海外へ販売。
中国(大連)に設計拠点あり。
雇用パターン別
海外高度人材の活用
パターンⅠ(In-In)
従業員数: 116 名
中国人 10 名。
パターンⅡ(Out-In) 韓国人 5 名。
パターンⅢ(In-Out) 中国人 1 名。
パターンⅣ(Out-Out) 中国人・韓国人 計 10 名。
第一施設工業(株)の海外高度人材に対する取り組みの特徴
(1)九州の中小企業の将来を懸念し、自社のグローバル戦略の一環として海外高度人材の活用を積極的に進
めていると同時に、内外の企業に対してもグローバル対応の必要性を説いている。
(2)同社の九州本社の従業員は 116 名、うち海外高度人材は 15 名。ピーク時には 18 名いた。
(3)九州の本社と海外の複数の拠点を有機的に結合し、海外高度人材も国際間異動やローテーションを柔軟
に実施しており、海外の拠点を含めた同社全体として、採用場所と勤務場所の 4 パターン(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・
Ⅳ)を網羅して活用している。
(1)海外高度人材の活用状況
(1)海外高度人材の活用状況
◇パターンⅠ(In-In)では現在 10 名の中国人が正社員として勤務している。長い人で 8 年になる。九州内
の留学生と、在日外国人就労者(他社からの転職)で構成される。
現在、国内で雇用しているのは理工系が中心で、海外の工場の管理や設計・開発業務にあたっている。文
系も含めれば、広報・通訳・翻訳、海外営業・貿易、設備設計・エンジニアリング等幅広い業務について
いる。
国内での採用に際して利用した手段は関連企業や知人からの紹介が中心。その他、会社説明会・合同就職
面談会、自社でアルバイトをした留学生の勧誘、自社のインターンシップに参加した留学生の勧誘等の手
段も活用した。
◇パターンⅡ(Out-In)は韓国で採用した現地の大学・大学院の新卒学生を、3 年前からローテーションで、
九州の正社員として日本に受け入れている。
◇パターンⅢ(In-Out)では日本で働いていた中国人を、2 年前に海外工場のトップとして配属した。現在
の業務として「経営」にあたっている。
◇パターンⅣ(Out-Out)では中国(上海)の現地法人で、現地採用としての海外スタッフが 10 名勤務して
いる。海外の現地法人での求人は現地の大学からの採用と中途採用の組み合わせである。
中国の現地法人で雇用する人材は、韓国企業との競合に負けないような製品を作ってもらっており、十分
満足している。
製品販売の最大の競合者は韓国企業であるが、同社の韓国人スタッフが韓国での販売を担ってくれており、
満足している。
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(2)海外高度人材活用のポイントと活用状況
◇現在の日本の置かれた環境から、企業の国際化は避けえないと考え、以前から重要課題として取り組み、
特にここ 10 年は精力的に実施している。日本の中小企業の国際展開は必須であり、国際化するには、現地
事情に通じた海外高度人材を雇用することも必須である。
◇現在は中国で生産し、韓国に販売する形式が中心だが、国、事業内容、規模も拡大方向にある。今後もよ
り強く、海外高度人材への依存が高まるものと考え、社内外の準備を進めている。
◇海外高度人材の雇用を通じて、同社の海外拠点との業務円滑化、拡大への備え、海外との取引ビジネスの
円滑化のメリットを感じている。
◇また、国内事業においても、日本人にない能力・スキルの確保、国籍に関係なく優秀な人材を確保でき、
将来の海外展開の幹部候補生として期待できる。企業・日本人社員の活性化、多様な社員の融合による国
際化機運の醸成、風通しのよい社風の創生などにも役立っている。
◇留学生の採用にあたっては、現場における日本人とのコミュニケーションを上手にとれ、日本人にも好影
響を与えることができ、社内がより活性化されるような人材を望む。
また、長期雇用に対する理解が比較的得やすく、定着が期待できると考えている。
(3)海外高度人材活用の課題と社内支援策
◇採用に関して、求職者情報不足が問題であった。結局は、関連企業や知人からの紹介が中心となった。そ
の他、会社説明会・合同就職面談会、同社でアルバイトをした留学生の勧誘、同社のインターンシップに
参加した留学生の勧誘等も活用した。採用に際しては、アジアへの事業展開意識、同社の将来性、仕事の
内容に興味を持たせる、専門性の高度活用、キャリア・スキル形成、企業の風土などをアピールしている。
◇業務や生活を通じて次のような点が、多少問題となったが、それぞれ解決できている。
在留ビザ延長・永住権・帰化の手続きが煩雑であること、実際の専門知識と採用後の業務の不一致が起き
たこと、英語能力の不足、企業の機密情報の漏洩も問題となった。
◇語学に関しては、業務遂行に必要な日本語能力を優先する。英語で国際化を目指せるのは、大都市圏の大
企業だと考える。
◇同社では、現時点では未だ 8 年勤務が最長だが、新卒の留学
生には 5~10 年程度は勤めてほしい。その後母国へ帰ること
があれば、「分社」した「暖簾わけ」ができれば理想だ。
◇海外高度人材を活用するにあたっては、企業としてそれなり
の支援策が必要だが、特に、住居確保に関する支援・金銭的
補助、社会保険(医療保険、雇用保険、年金)支援、家族に
対する支援などは、外国人従業員が安心して勤務できる環境
を整えるために有効と考える。
ヒアリングに対応して頂いた篠原社長
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(株)筑水キャニコム
代表者
ヒアリング対応者
所在地
創業年次:昭和 23 年
主要製品、事業内容
海外事業
雇用パターン別
海外高度人材の活用
業種: 生産用機械器具製造業
海外高度人材雇用パターン Ⅰ、Ⅱ、Ⅳ
代表取締役社長 包行 均
グローバルリーダー人材部責任者 武井 和幸
福岡県うきは市
URL: http://www.canycom.jp
資本金: 3 億 4,740 万円
従業員数: 200 名
農業用・土木建設用・林業用運搬車、乗用作業車の製造販売。
・海外拠点有無:米国(シアトル現地法人)ドイツ、韓国。
・海外業務:農業機械の製造・販売。
パターンⅠ(In-In)
中国人 4 名 香港 1 名。
パターンⅡ(Out-In) ベトナム人 1 名。
パターンⅢ(In-Out)
パターンⅣ(Out-Out) ドイツ人 1 名、韓国人 1 名。
(株)筑水キャニコムの海外高度人材に対する取り組みの特徴
(1)ユニークなネーミングやデザインの乗用草刈機を始めとした農業機械を製造・販売している。
従って、海外高度人材への知名度も比較的高い。
(2)中国を中心として、更にインド等にも海外展開を拡大していく方針である。
(3)海外高度人材の採用は理工系が中心であるが、製造分野のみならず管理、販売、宣伝等の幅広い分野に
従事させる。将来的には海外駐在等で現地拠点の強化を担える人材に育て上げる。
(4)基本的には日本人と同様に終身雇用を想定している。
(1)海外高度人材の活用状況
◇現在、国内事業所(主に設計部門)で国内で採用した中国人 4 名(In-In)、海外で採用したベトナム人1名
(Out-In)が勤務している。勤務期間の長い従業員は 3 年間を経過している。
◇海外高度人材の採用は、これまで中途採用が主体。平成 22 年度の採用(内定者 10 名)において、初めて
新卒留学生を4名採用。(うち1名は平成 21 年 9 月入社)(In-In)。
◇いわゆる「ものづくり」企業であり、In-In で採用する海外高度人材は、理工系を主に採用しているが、
業務としては、製造分野のみならず、管理、販売、宣伝等、幅広い分野で従事。
(技術的知見を持つ人材が販売等を担当することで、顧客ニーズ等を適格に把握するため)
◇同社の売上の内、海外比率は約 40%である。今後も海外展開を拡大していく方針である。海外の営業拠点
として、米国に現地法人(キャニコム USA)を設置した。また、ドイツ、韓国にも現地のスタッフを各1
名現地で採用し、営業関連業務等を行っている(Out-Out)。
◇海外への販路拡大等を目的として、海外高度人材の採用も積極的に行っている。また、雇用のミスマッチ
を避ける観点から、インターンシップの受け入れにも積極的である。
(2)海外高度人材を採用に至った背景
◇現地ユーザーニーズの詳細な把握等の観点から、現在、日本人スタッフが海外出張等で対応している営業・
メンテナンス関連業務等についても、将来的には、現地駐在とする等、現地拠点の強化を図りたいと考え
ている。
そのための人材として活用することなどを想定して、留学生等の海外高度人材を採用している。
◇平成 21 年 7 月に、福岡労働局等の主催で開催された「留学生就職フェア」に参加したことが、留学生の採
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用に繋がった。近年、ユニークな商品開発・ネーミング等でマスコミに取り上げられたこともあり、同フ
ェアでは、約 50 名程度の就職希望者があった。最終的には留学生 4 名を採用(開発部門1名、設計部門 3
名)。
◇日本人・海外高度人材を問わず、職員の採用方法としては、就職フェア等の企業と学生のマッチングの場
への参加や、インターネットでの採用情報の発信である。また、平成 20 年度から、福岡県の大学など地元
大学を訪問(これまでに 30 程度の大学を訪問)し、採用情報を発信している。
(3)海外高度人材活用のポイントと活用メリット
◇インターンシップは、就職のミスマッチを解消する上で有効な方策。特に海外高度人材については、取り
組みたい業務に関する意識が明確な者も多く、就職前に企業の業務内容をよく説明し、理解してもらうこ
とが大切である。海外高度人材は、全般的には仕事に対する意識は高く、日本人社員にも良い影響を与え
ている。
◇海外市場としては、現在、中国を主たるターゲットとしており、中国人留学生に期待するのは、市場調査
及びマーケット開発である。その後は、インド等の成長市場への進出を想定しており、将来的には、イン
ド等、今後ターゲットとしている国の人材を採用する可能性がある。
◇留学ビザから就労ビザへの切り替えについては、大学の担当教官と企業が連携することで、特に問題なく
取り組むことができた。なお、採用に際しては、性別や年齢層に制限はない。
(4)海外高度人材の処遇
◇平成 21 年 9 月に、大分県の大学の中国人留学生が 1 名入社した。将来的には、海外営業の担当を予定して
いるが、半年間は、工場勤務を経験させ製品知識を習得させる予定である。
◇平成 22 年 4 月には、3 名の留学生を採用予定。うち 1 名はプロカメラマンの経歴を持つ中国人である。中
国のマーケット拡大のためのパンフレットデザイン等、母国文化に根ざした宣伝活動を担当予定である。
◇海外高度人材は、一般的に就業期間が短く、機密情報については漏洩懸念があるともいわれるが、同社と
しては、基本的に日本人同様、終身雇用を想定しており、設計部門に配置した海外高度人材についても、
当初から、中核的な分野を経験できるよう配置している。
(5)海外高度人材に対する支援策
◇海外高度人材に対しては、一定のコミュニケーション能力を習得するため、日本語能力検定を取得するよ
う進めている。それぞれの日本語力には差があるので、それを認識させ、各自、切磋琢磨するよう促して
いる。
◇新入社員の研修は、日本人・海外高度人材の区別はない。人事担当者が企業概要等を 3 日間程度で説明。
その後は、各製造部門等に配属し、現場で OJT 研修を行う(中小企業では、いわゆる新人研修にコストを
かける余裕がなく、現場での技術習得が中心となる)
。
同社工場の様子
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(株)CCI
代表者
ヒアリング対応者
所在地
創業年次:昭和 59 年
主要製品
事業内容
海外事業
雇用パターン別
海外高度人材の活用
業種: 情報サービス業
海外高度人材雇用パターン
代表取締役 野藤 泰昇
取締役社長 申 春植
福岡県福岡市
URL: http:// www.cci-web.co.jp
資本金: 7,650 万円
Ⅰ、Ⅱ
従業員数: 35 名
通信・ネットワークシステム開発、カオス分析による脈波診断装置、メディカル
事業、ソフトウェア受託開発等。
海外向け事業は無い
パターンⅠ(In-In)
韓国人 4 名、中国人 1 名、フィリピン人 1 名。
パターンⅡ(Out-In) 過去に韓国で採用して日本で活用 現在計 4 名。
パターンⅢ(In-Out)
パターンⅣ(Out-Out)
(株)CCI の海外高度人材に対する取り組みの特徴
(1)申社長自らがパターンⅡでの同社就職後 20 年を経て社長になった成功事例である。
また、同社には部長になった海外高度人材もいる。
(2)同社は、IT ソフトウェアの日本企業で、韓国人を中心に、中国、フィリピン等からの外国人を雇用し
ている。
国籍の違いでの理解不足で、問題が起きることもある。
(3)韓国人留学生が日本での就職できずに帰国すると、韓国に戻ってからも就職に苦労していることが多
い。このため、韓国政府が実施している韓国人材の日本での活躍を支援する施策を背景に、韓国人の
日本企業就職を支援する仕組み構築に取り組んでいる。
(1)海外高度人材の活用状況
◇パターンⅠ(In-In)
現在の全社員数 35 名のうち、九州本社に韓国人が 4 名。他に 10 年前に留学生から採用した中国人が 1 名
おり、現在は部長職である。さらに、フィリピン人の契約社員が 1 名いる。
申社長は、自身が 20 年程前に同社に就職した時に、韓国の友人・知人 3 名を誘い一緒に来日した。1 名は
現在も勤務しているが、他は帰国した。
◇パターンⅡ(Out-In)
現在までほとんどの外国人社員は韓国で雇った韓国人(現在計 4 名)で、韓国で中途採用した人は九州で
設備設計、エンジニアリングに従事している。
◇カオスの研究は専門性が高いので、大学とのコンタクトから日本人を採用している。今後、留学生のカオ
ス研究者の採用があるとすれば同様のルートになるだろう。
(2)海外高度人材活用のポイントと活用メリット
◇中小企業で優秀な人材を採用しようとすると、海外高度人材に目が向く。日本人の優秀な卒業生や中途採
用者は、大企業に就職してしまうため、知名度が低い中小企業が優秀な人材を採ろうとすると、自ずと外
国人を選ぶ機会が増えるのが現状である。
◇外国人の雇用が他の日本人社員の活性化に繋がる例は多い。某大手企業が平成 20 年に日本人の定期採用後
に、日本人の活性化を狙って 5 名の韓国人留学生を採用した。その結果が大変によく、平成 21 年は実に
20 倍の 100 名を採用し、全国の職場に配属させたとのこと。
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(3)パターンⅠ(In-In)での海外高度人材活用の課題と社内支援策
◇九州では、留学生と企業の就職のためのマッチング機会が少ない。企業側からの求人は東京からが多く、
九州で就職フェアがあっても東京から参加した企業に人気が集中し、九州企業の PR 不足が目立つ。就職支
援で最も重要なのは、留学生を採用したいとする企業を、具体的に企業名付きで把握できる仕組みの構築
である。それぞれの企業がどのような人間を採用したいのか、という情報が大学側、留学生に届く仕組み
が必要。インターンシップも、その後の就職に至る準備過程として非常に有効である。
◇技術系以外の業務対象者の採用は大学が参加するマッチングフェアへの参加が中心。ただし、大学がマッ
チングフェアの存在を知らない場合が多いので、開催の PR が必要であろう。最近の経験では、長崎県の大
学で面接を実施し、韓国人 5 名、中国人 10 名の海外高度人材を面接した。
◇大学内で、留学生の就職に関する相談制度、就職斡旋・コーディネートが必要で、かつ有効と思う。いく
つかの大学ではできているが、ほとんどの大学では対応が不足している。留学生を受け入れる段階で、出
口(=就職)まで考えないと、卒業時点でのミスマッチが起きる。留学だけでよいとする学生は少ない。
◇外国人に関する問題は、日本語の錬度の差である。
職場では日本人、韓国人、フィリピン人がいるため、価値観の違いと日本語力の違いと絡んで問題化する
ことがある。ビジネスレベルでの日本語の教育が重要。同社としては、語学力のある人材を採用している
ので、企業の支援策としては語学教育をしないが、行政としては是非とも必要な項目となるだろう。
◇日本社会でのモラル、マナー、言葉の使い方などについては、韓国内で教育する機関・機会はない。日本
の大学にこれらの面での教育の仕組みが望まれる。留学生に関しては、家族問題は少ないが、就職後結婚
をすれば、問題化する可能性が高い。
◇同社では、技術系が中心であり、ビザの申請にあたって業務内容が明確に記述しやすいので、問題となっ
ていないが、文系を営業や管理業務に就けようとすれば、申請ノウハウが必要になろう。
◇(情報漏洩などのセキュリティについて)同社では、外部企業との共同研究や受託研究があるため、IT 企
業や金融機関からのセキュリティへの対応が求められる。外国人がいる場合には、更に対応要請は厳しく
なる。
◇留学生採用後の勤務は長い方が互いに良いと思うが、日本では少なくとも 5 年の勤続が必要と考えている。
(4)韓国人留学生や韓国の現地人材を日本の企業へ就職させる仕組みへの支援
◇韓国の新卒学生や日本への留学生の就職支援に関
する取組を行っている。現在、日本への留学生が日
本で就職できずに帰国すると、その多くが韓国に帰
っても就職が難しいことが問題となっている。韓国
人が日本に留学することが、欧米への留学に比較し
てマイナス面があるといわれており、このハンデを
克服するような対応が必要である。
◇社長となって以来、現在まで、韓国人が日本で活躍
できる仕組み作りに取り組んでおり、同社の内部に
「グローバル人材支援センター」を設置した。
◇これらの取組に関して相談できる公的な「相談窓
口」が以前は少なかった。
◇同社としては、日本内のみならず、韓国の公的機関
とも連携しつつ、韓国人が日本企業で活躍できる仕
組み作りの実現に向けて取り組んでいる。
ヒアリングに対応して頂いた申社長
18
10
(株)早信国際
業種: 情報サービス業
海外高度人材雇用パターン
Ⅰ、Ⅱ
代表者
代表取締役 王 守玉
ヒアリング対応者
所在地
創業年次:平成 19 年
部長 姚 小全
福岡県福岡市博多区
URL: http://www.sj-sol.com/
資本金: 1,000 万円
主要製品、事業内容
ソフトウェア開発:アプリ開発、携帯システム開発、組み込みソフトウェア開発
海外事業
中国の北京に資本関係がある企業、上海には業務提携をしている企業があり、日
中共同でソフトウェア開発に取り組んでいる。
中国市場や日本の中国関係者市場狙いでソフトウェアを開発している。
パターンⅠ(In-In)
中国人 1 名。
雇用パターン別
海外高度人材の活用
従業員数: 7名
パターンⅡ(Out-In) 中国人 4 名(正社員 2 名、契約社員 2 名)。
パターンⅢ(In-Out)
パターンⅣ(Out-Out)
(株)早信国際の海外高度人材に対する取り組みの特徴
(1)開発しているソフトウェアは、中国語や中国に特徴的なロジックを織り込んだ、中国語と日本語・英語間
転換を容易化したソフトウェアである。
(2)IT の専門能力に関しては、日本の大学卒業生より、中国の卒業生のほうが実践的な技能を身につけて
いるので、中国での採用を優先している(Out-In)。
(3)全体として日本人と中国人のミックス体制で業務を遂行している。その意味で、中国人が日本語に長け
ていなくてもチームで対応するという社風である。
(1)海外高度人材の活用状況
◇日本で、留学生を採用したのは、平成 19 年採用の文系の中国人 1 名。システムには強いが専門家ではない。
その後、上海の業務提携先から紹介され、現在 4 名の中国の大学卒業生のソフトウェア開発者を受け入れ
ている。2 名は正社員、2 名はまだ契約社員である。いずれも日本語は中国で学んでいる(Out-In)。
◇開発しているソフトウェアは、中国語や中国に特徴的なロジックを織り込んだ、中国語と日本語・英語間
の転換を容易化したソフトウェアである。開発は日本で基本設計され、コストが安い北京、上海で具体的
な詳細設計がなされる。
◇上海の提携先から紹介を受けて、九州に在籍している中国人の仕事も、日本人や日本で採用された外国人
エンジニアと、業務上の差異はない。
◇事業目的と業務上、中国人と日本人のミックス体制で展開している。
◇日本での処遇は日本の給与体系で日本人と同等の扱い。九州の居住環境は非常に良好と考えている。
(2)海外高度人材活用のポイントと活用メリット
◇日本人の IT・ソフトウェア関連学部の卒業生は実技の面で訓練度が低く、中国の大卒の方が、即戦力とい
う面では使いやすいので、中国の大卒を日本に受け入れている。上海の提携先からの紹介を受けて採用し
ているのは、選定の面で上海企業のサポートを得られるからである。
19
◇早信国際の内部スタッフの多くが中国人であるので、多少日本語に難があっても、チームとして仕事がで
きる。それでも、日本企業で働く以上一定レベル以上の日本語能力は要求される。日本語能力という意味
では、中国で学んだ若者と日本で留学した若者の両方がいるが、特に日本語能力の差異を感じない。要は、
開発能力が大事である。
◇結果として、日本人と中国人が半々となるようなバランスを維持している。早信国際は、それぞれのスタ
ッフが全てをこなすというより、社員全体のチームワークで業務をこなすという思想で取り組んでおり、
個々人に全ての能力を要求しない社風である。
(3)海外高度人材活用の課題
◇知人からの紹介、直接応募、海外提携先からの紹介等、採用ルートの面での苦労はない。
◇ビザの発給に関しては、行政書士を起用して任せている。入国管理局からは、文系スタッフの必要性に関
する説明は細かく求められる。一方で、専門性の高い、理工系のソフトウェア開発者に対するビザ発給は
比較的に問題がない。
◇企業の機密漏洩問題は、顧客である外国企業や日本の大企業でも、早信国際のように外国色の強い企業に
対して漏洩問題に厳しい企業もある。ただし、この問題は国際的にどこでも生じる問題で、九州に特別な
ことではない。
◇インターンシップについて、同社のようなソフトウェア開発では、企業秘密も多く、実習させる内容にも
乏しいので、受けられない。
(4)今後の海外高度人材採用方針
◇現在は業況悪化で採用を控えているが、全体で 20 人体制、そのうち半分が中国人という構成を目指してい
る。平成 20 年にも採用を検討していたが、最終的には採用しなかった。
◇日本での採用は、理工系に限定していないが、文系でもシステムの基礎知識は必要である。理工系の専門
職であれば、大学卒または修士課程卒が望ましい。
◇勤続年数に関しては、一般に IT のソフトウェア開発は若手が多く、かつ同社のような設立後間もない企業
では 20 代の若手しかおらず、就労年数実績が少ない。ただし、中国の国有企業は終身雇用を前提としてき
たので、中国人には長期雇用に抵抗感はない。
ヒアリングに対応して頂いた姚部長
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ユニティ・ソフト(株)
業種: 情報サービス業
海外高度人材雇用パターン
代表者
代表取締役社長 萩田 寛司
ヒアリング対応者
部長 東 吉弘
所在地
福岡市博多区
URL: http://www.g-unity.jp/
資本金: 1,350 万円
創業年次:昭和 62 年
主要製品、事業内容
海外事業
雇用パターン別
海外高度人材の活用
Ⅰ、Ⅱ
従業員数: 12 名
IT・ソフトウェア開発。
日・中・英の言語を用いたシステムコンサルティングサービス、システム開発、
ホームページ作成である。すべて福岡の事務所で作成している。
ソフトウェア開発、海外高度人材スタッフサービス、翻訳サービス。
パターンⅠ(In-In)
中国人 1 名。
パターンⅡ(Out-In) 中国人 3 名。
パターンⅢ(In-Out)
パターンⅣ(Out-Out)
ユニティ・ソフト(株)の海外高度人材に対する取り組みの特徴
(1)中国語市場、日本の中国人市場を目的とした事業を展開しており、中国人の採用は必須である。
従って、海外高度人材の活用ということを業務上で意識するようなことはない。
(2)IT 技術者も、長い年月をかけて徐々に能力や業務領域が広がって、それが処遇やキャリアパスにつな
がる。従って日本人と同様に長期の就労を期待して、育成・活用をしている。
(3)それでも海外高度人材に伴う、業務以外での様々な問題は存在しており、日本人従業員や外部コンサル
タントによる親身になったサポートを心掛けている。
(4)インターンシップは受け入れている。採用に結びつけばよいが、受け入れ条件ではない。
(1)海外高度人材の活用状況
◇国内採用で九州の理工系大学のシステム部門卒の元留学生中国人男性が 1 名おり、4 年経過した(In-In)
。
また、4 年前から、威海の拠点から 3 名の中国人システム技術者を正社員として受け入れている。3 名とも
中国・山東省の大学の新卒に近い立場、及び海外拠点で採用した他企業からの転職者である(Out-In)。
◇In-In での採用時に利用した求人手段として、会社説明会・合同就職面談会、大学での求人情報・大学か
らの紹介や海外における求人を活用している。九州の合同就職面談会は常に企業情報を出し、極力出席し
ている。
◇九州での海外高度人材採用は毎年定期的に募集を行っている。1~2 名/年程度で推移しているが、必ずし
も毎年採用するだけの企業体力はない。設立後、11 年で総勢 12 名体制となっており、それなりの採用は
出来ている。その中で、中途採用で情報処理経験が無い九州の大学院を卒業した中国人女性を採用して社
内教育(OJT)を実施している。
(2)海外高度人材活用のポイントと活用メリット
◇IT の専門性では、特に留学生が日本の新卒大学生と大きく異なる要素は少ない。中国語市場や日本の中国
人市場を目的とした事業を展開している以上、中国人の直接雇用は当然の企業方針と考え、業務の上では
特に意識していない。
◇海外取引があること、海外高度人材の活用が必須であることは事業の前提であるため、海外高度人材の活
用による取引獲得に対する業務上のメリット等を個別に把握することはない。
21
(3)海外高度人材活用の課題
◇さほど顕著な問題ではないが、当初はそれなりに問題もあった。
◇山東省からの受け入れ人材の日本語レベルは比較的高い。山東省では日本との関係を深める意識が強く、
日本語の教育が進んでいるように見受けられる。但し、それでも Out-In ケースでの日本語能力不足は、社
内コミュニケーションの範囲ではあるとはいえども、やはり問題にはなる。
◇企業側の問題であるが、就労年数に関わるキャリアパス・処遇問題が適切に明示できない面があり、企業
と就労者の意識のギャップがあった。
一般に IT 技術者の専門性維持期間は短いといわれる。しかし、プログラマーからシステムエンジニア、IT
エンジニアと、経験を積むことが必要な業務もあり、トータルとしての IT 技術者期間は長いのが実状であ
るので、同社としては日本人と同じ終身雇用的期待をベースにした育成・昇進制度を持っている。
◇ビザ手続は当初は大変と感じた。ただし、問題は手続き・手順に関する不慣れが原因であり、一度経験し
てしまえば、その後はさほど問題にならない。初めての場合はマニュアル等があれば役に立つと思う。
◇住居での生活習慣が中国と日本で大きく異なる。新人の中国人が問題を起こさないよう日本人独身者を隣
に住まわせたり、日本人管理職が定期的にチェックに行ったりした。
ごみ処理の習慣、食材の違い等が問題化することもある。
◇ガス、水道等の支払いに関して、外国人がカードを容易にもてないために銀行口座引き落としが出来ず、
同社の総務課が代理で支払うなど企業への負担もある。
◇同社として、様々な面で高度人材の支援を行っているが、小さな企業であり、自ずと出来ることに限界が
あるのも事実である。このようなこまごました問題は、日本人が対処するだけでなく、行政書士などのコ
ンサルタントを起用して解決している。
(4)今後の海外高度人材採用方針
◇海外高度人材を活用した業務が自然な形であり、
特に意識しない。
◇IT 企業であるので、新卒留学生の採用条件は自ず
と理工系学生に絞られる。電気・電子・情報工学
系である。但し、博士課程の高度な専門性は求め
ない。
◇業務遂行に必要な日本語能力を優先する。
◇大学・大学院生インターンシップ受入については、
条件が合えば断続的に受け入れている。
昨年、たまたま福岡県の大学の経済学部の学生が
きたが、IT 事業の仕組み作りについて経験しても
らった。インターンシップが採用に結びつけば良
いが、受け入れの条件ではない。
ヒアリングに対応して頂いた東部長(右)と
中国出身スタッフ(左)
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12
(株)大有
代表者
ヒアリング対応者
所在地
業種: 機械器具卸売業
海外高度人材雇用パターン
Ⅰ、Ⅲ、Ⅳ
創業年次:平成 10 年
代表取締役 渡野 安春
専務取締役 渡辺 太志
福岡県福岡市博多区
URL: http://www.daiyu-co.com
資本金: 4,000 万円
主要製品、事業内容
中古クレーン車の買取、販売、レンタル
海外事業
韓国に現地法人(営業販売拠点、整備のサービス工場)。
ベトナム、タイに営業拠点。
日本で買い取った中古クレーン車の販売、リースのための営業等を展開。
パターンⅠ(In-In)
5 名(過去を含む)
。
雇用パターン別
海外高度人材の活用
従業員数: 8 名
パターンⅡ(Out-In)
パターンⅢ(In-Out) ベトナム人 1 名。
パターンⅣ(Out-Out) タイ人 1 名、韓国人 6 名。
(株)大有の海外高度人材に対する取り組みの特徴
(1)業務内容は海外の新興諸国を中心に日本の中古クレーン車を売り込むことであり、そのための海外営業
要員として海外高度人材を複数名活用している。
(2)中小企業では新人を教育しながら育てる余裕はないので即戦力・営業経験者を採用する。
中古クレーンの販売という特殊な業務であるので、中途採用といってもその業種出身者ということでは
なく、個人の対応能力を活用の鍵として採用している。
(3)販売先の国の出身者を、極力多く採用していく。販売相手国の拡大に応じて活用人員を増やしたい。
(1)海外高度人材の活用状況
◇現時点での In-In での海外高度人材の活用数は 4 名である。
◇福岡で採用したベトナム人が、現時点では母国に戻り、同社の仕事を続けている(In-Out)。
タイ人の 1 名が福岡(In-In)、1 名が現地で業務についている(Out-Out)。
韓国の拠点にも韓国人スタッフが 6 名いる。九州には、韓国人はいない(Out-Out)。
◇海外拠点での採用はパターンⅣの Out-Out が基本となる。現段階では、パターンⅢの In-Out は時期尚早と
考えている。
◇九州の事務所には 10 年程前は中国人 1 名しかいなかった。現在 5 カ国に拡がり、今後も、インド、ロシア
等の人材がいれば、活用を拡大していく予定。
◇In-In ではすべて正社員。就労ビザ手続きも特に問題はない。基本は海外への営業・販売であり、営業系
の人材を九州の本社で活用。福岡市箱崎にストックヤードや、クレーン整備のサービス工場はあるが、技
術系の海外高度人材をあてる必要性はない。
◇複数の海外高度人材を定期的に採用するほどの企業規模でないことと、中古大型クレーンのグローバルな
販売という特殊な業務であるため、経験者が少なく、広く人材を求める必要があるため、採用手段に制約
は設けていない。即戦力を求めるという口コミや Web 経由で、突然先方からの電話で就職希望のコンタク
トを受けるというケースが多かった。
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(2)海外高度人材活用のポイントと活用メリット
◇中古の大型クレーンの販売はルーティン業務でなく、個々の柔軟な対応が求められる。
そのため、個々人の対応能力がポイントである。
◇同社は、中古クレーンの活躍場所である東南アジア、中近東、オセアニア、アフリカ等新興諸国がターゲ
ットであり、一箇所に集中せず、グローバルな変化に追従する必要がある。そのため、会社設立以来グロ
ーバルな展開が前提となっている。基本的には日本からのオペレーションが柱となる。
◇福岡の本社では日本人や他の外国人と共に業務にあたるので、全員に日本人的なビジネス感覚を身に付け
てほしいと考えている。
◇大型クレーンという特殊機械を扱うので、長年の経験がものを言う。従って、極力長く勤続してほしいと
考える。特殊機械であるため、経験者が少なく、代替が利きにくい。
◇海外高度人材に求める能力は、母国の開発営業を日本の本社から管理できることである。従って、母国語
が絶対に必要となる。ただし、営業は母国語のみで充足できないのが実際なので、英語や他の言語で広く
営業活動ができることを望む。
◇日本語については、福岡本社内部での業務をこなせるレベルが必要である。
(3)海外高度人材活用の課題
◇業務や家族生活に関わる問題の解決は、内容が多様であるため、システマチックな対応ができず、個々に
対応し、解決してきている。
(4)今後の海外高度人材採用方針
◇現在は、定期的に採用する事業規模ではない。良い人材がいれば、採用を拡げて行く予定。採用に関して
は、特に厳しい制約はない。
◇事業形態は、日本で買い取った大型クレーン車を、日本国内および海外各国の建設企業に中古販売を行う。
単純化すると、国内調達・グローバル転売。
従って、転売先の国数が多く、多様な国の出身者を販売営業要員として確保したい。
すでに中国、韓国、ベトナム、タイ、米国の人材を活用しており、今後、インド、ロシア等に拡げて行き
たい。
◇韓国は現地法人、タイやベトナムにも販売拠点がある。海外の拠点では、原則、現地採用・現地雇用。
◇グローバルな営業が必要だが、高度な専門性は不要で
ある。よって、大学卒を採用しており、大学院卒は不
要と考える。
◇大型クレーンは特殊ではあるが、高度な専門性は不要
である。サービス工場では機械に関する専門性も必要
だが、基本的にサービス業務は外注しており、社内で
はその専門性はあまり必要ない。従って、採用は人物
次第ということになる。
同社事務所内の様子
輸出用の中古クレーン車
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13
環境テクノス(株)
業種: 技術サービス業
海外高度人材雇用パターン
Ⅰ、Ⅲ、Ⅳ
代表者
代表取締役 鶴田 暁
ヒアリング対応者
所在地
創業年次:昭和 48 年
代表取締役 鶴田 暁、取締役管理部長 本村 修一
北九州市戸畑区
URL: http:/www.kan-tec.co.jp
資本金: 4,000 万円
従業員数: 72 名
主要製品、事業内容
環境分析・測定・調査、アセスメント、コンサルティング、有害物質製品検査。
海外事業
平成 17 年・上海に現地法人設立。平成 20 年・大連事務所開設。
雇用パターン別
海外高度人材の活用
パターンⅠ(In-In)
中国人 1 名(実質は In-Out 状態)
。
パターンⅡ(Out-In)
パターンⅢ(In-Out) 中国人 1 名(以前は In-In であった)。
パターンⅣ(Out-Out) 中国人 18 名(ワーカーを含む)
。
環境テクノス(株)の海外高度人材に対する取り組みの特徴
(1)同社は、社長自らの戦略に基づく事業グローバル化を同社の重点課題としている。
今後、九州の中小企業は自ずとグローバル化に対応せねば立ち行かなくなる。中国人等の高度人材の採
用・育成・処遇等に本格的に取り組む必要がある。
(2)これまで 2 名の中国人高度人材を採用した。1 名は 15 年の在籍経験を経て、現在は海外拠点の幹部社
員となり、1 名は新人であるが海外業務で広く活躍している。経歴も業務内容も全く異なる 2 名それぞ
れに合った業務環境を与えている。(In-In、In-Out)
(3)平成 17 年年設立の上海現地法人及び平成 20 年に開設した大連事務所では現地採用・現地雇用をしてい
る。(Out-Out)
(1)九州企業のグローバル化に関する同社の視点
◇産業公害、都市環境、地球環境といった問題に関するグローバルな視点からの意識を持っている。日本と
アジア各地の特徴を分かちあって、共存共栄の道を探る必要がある。中国もマーケットとしては未成熟だ
が、将来性は高い。社長自らはグローバル化の観点から講演したり、海外視察ミッション等積極的に参加
している。日本も、過去、欧米へのミッションを送って多くを学んできた。これからは中国、アジアに還
元する時期だろう。
◇しかし九州の中小企業での海外高度人材の活用は容易ではない。海外高度人材は自ずと大企業、大都市に
ひかれ、九州の中小企業では採用しにくい。そもそも九州側の事業所では、大卒スタッフを必要としてい
なかったり、作業員レベルの雇用ですむという企業も多い。
◇一方、九州企業への就職率 4%が低いというが、中小企業という範疇で九州と大都市圏を比べれば、決して
低くはないのではないか。又、全国の中での九州の留学生比率が高いのは、あくまで大分県と福岡県の 2
校が突出しているからで九州全体が高いわけではない。このような面から冷静に分析する必要もあろう。
(2)海外高度人材活用状況
◇同社は現在までに 2 名の海外高度人材を採用している。1 名は、15 年前に九州の大学の化学系修士の中国
人を採用し、3 年ほど日本で働いた後、中国市場調査等の目的で中国に渡り、同社の中国での事業展開の
マーケットリサーチや中国での情報収集活動などを経て、平成 17 年に設立した上海の現地法人の幹部社員
として赴任した(In-In 3 年の後 In-Out)。 この人は、大学教授と鶴田社長の関係でアルバイトを経て採用
したが、結果としてその後の中国との協業に大いに役に立った。15 年の勤続経験を経て力をつけ、新事業
所の経営管理等も行っている。
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◇他の 1 名は、九州の大学の理工系博士課程修了者で、平成 21 年に入社した中国人である。
同じ九州の大学教授の紹介である。中国の大学院から日本に留学し、博士課程の途中で採用した。この新
人は、本来、国内での環境分析の専門家としての採用だったが、本人の発展的性格から、短期間の OJT の
後は、大連と上海を繋げた業務を広く担当してもらっている。特に考え方が大きい外国人新人の活躍は日
本人社員への良い刺激となっている。(In-In を経て、In-Out 的状況)
。
◇上海の現地法人に 17 名(ワーカーを含む)
、大連事務所に1名の現地雇用者がいる。何れも中途採用の即
戦力である。平成 21 年については経済状況が悪化しており、当面現状維持となる。スタッフの日本へのロ
ーテーションはない(Out-Out のみ)。
(3)海外高度人材活用の当初の考え方と、活用メリット、課題
◇2 名の海外高度人材を活用しているが、それぞれの能力にあった活躍をしてくれている。企業側も、長年
の経験の積み重ねで、ノウハウも蓄積され、海外高度人材活用のポイントがわかってきた。
◇15 年前に初めて採用した時点では、きちんとした海外高度人材登用の考え方があったわけではなく、大学
教授の紹介があったのでアルバイトを経て採用した。当時は滞在許認可の手続き等、企業には負担となっ
た点もある。
◇又、今回の採用以前に幾つかの採用トライをしているが、結果として採用に至らなかった。数年前までは、
新卒を採用し、教育・育成を図ろうとした時期もあったが、中小企業では、育成期間を設けるだけの体力
がないため、近年は日本人の採用ですら、国内の U ターン組の即戦力を主体に中途採用に力点を置いてい
る。日本で採用した 2 名の中国人はいずれも大学院修士と博士の新人であったのは、いわば対に出会いの
タイミングによる偶然。
◇(採用ルートについて)信頼できる人材を雇用する手段としては、社長と九州の大学の教授間の個人的チ
ャネルで人を紹介してもらい採用する形のみが残っている。通常のルートで人を探した場合、能力があっ
て、かつ信用できる人をなかなか探せない。平成 21 年以前にも、採用トライはしているが、求職者の力不
足のため、採用に至らなかった。求職者情報の不足、面接や選考方法が未熟、専門能力評価方法の未整備
なども原因である。
◇(処遇問題について)異なる経歴・特徴をもった 2 名を、日本と大連・上海の間で、それぞれの能力を発
揮してもらうための土壌作りが必要と感じている。15 年と 1 年の経験の差は自ずと社内の序列に繋がるが、
業務内容等も大きく異なる。
なお、現地採用の場合、現地の給与体系があるのでコスト削減ができるが、現地採用の社員と日本で採用
され現地に赴任する海外高度人材の処遇バランスも問題であり慎重に対応する必要がある。
◇(ビザ手続きについて)15 年前に始めて海外高度人材を雇用
した当初は、就業ビザを 1 年単位で更新する必要があり負担
だった。やがて 3 年毎になり、ある程度楽になった。今後、
入管法等の改正により、最長 5 年となるのは歓迎である。
◇(業務、生活上の支援策について)15 年経過者は、現時点で
は既に成熟しており、支援策を必要としない。また、新人も
自ら身を処すタイプであり、企業としての支援は現在のとこ
ろ不要。ただこれらはあくまでも例外であるので、本来、企
業としての対応を考えておく必要がある。
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(株)ホテルオークラ福岡
業種: 宿泊業
海外高度人材雇用パターン
代表者
代表取締役社長: 徳安 弘明
ヒアリング対応者
総務・経理課 課長 山中 裕司
所在地
創業年次:平成 8 年
福岡県福岡市博多区
URL: http://www.fuk.hotelokura.co.jp
資本金: 5 億円
従業員数: 320 名
主要製品、事業内容
ホテル:宿泊・食事等がメインのサービス
海外事業
現在国内外に 21 のグループホテルがある。
内、中国、韓国、オランダ、ホノルルなどに海外拠点を持っている。
パターンⅠ(In-In)
中国人 1 名、韓国人 1 名。
雇用パターン別
海外高度人材の活用
Ⅰ
パターンⅡ(Out-In)
パターンⅢ(In-Out)
パターンⅣ(Out-Out)
(株)ホテルオークラ福岡の海外高度人材に対する取り組みの特徴
(1)In-In タイプの留学生 2 名を採用(中国人1名、韓国人1名)、2名とも大卒・女性の正社員。
(2)海外高度人材採用は国籍に関係なく優秀な人材を確保することで、企業・日本人を含めた社員全体の活
性化を目指している。
(3)採用に当たって、外国人扱いせず、基本的に日本人と同様の条件で採用している。
(1)海外高度人材の活用状況
◇外国人留学生を今年 4 月に正社員として 2 名を採用(中国人1名、韓国人1名)した。2名とも大卒・女
性。入社後半年間の研修期間を経て正式配属。今年 4 月採用の 2 名のうち 1 名は中国料理レストランに配
属(中国人)し、もう 1 名はクローク担当として配属(韓国人)している。ホテルとしての業務は種類が
多いが、内部でローテーションをして全体を学んでゆく。(採用パターンは In-In)
◇新聞・就職情報誌・ホームページからの求人情報、知人からの紹介等により応募。日本人と同様、面接を
経て採用に至った。日本に来て 4 年以上経っていて日本語には問題ない。同社は日本人にも 3 つの言語(日
本語、英語、ほかの言語)の習得を推奨している。
(2)海外高度人材活用のポイントと活用メリット
◇海外高度人材のほとんどは意欲が高い。現場における日本人とのコミュニケーションも良く、日本人にも
好影響を与えており、社内がより活性化されることが期待される。
◇同社は自立した人材として、業務遂行に必要な英語と日本語の両方を求める。日本の商習慣を理解し、日
本語でのコミュニケーションがとれれば良い。これは日本人にとっても同様。
◇英語ができるからといって、すぐ希望の職に就けるわけではない。採用に当たって語学は落とすための手
段ではなく、本人の能力の判断材料に用いている。
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(3)海外高度人材活用の課題
◇過去 2 名の採用を経験(韓国人、両方女性で中途採用)したが、いずれも最近退職(3~5年勤務)した。
退職の原因は、英語ができるからフロント等華やかな業務に付きたいと要望したが、フロントの仕事は、
ある程度経験を積み、ホテル全般の業務を理解しないと対応できないため、希望通りの配属とならなかっ
たことが一因。このように、ホテル側と海外高度人材側の認識のギャップからやめるケースが多い。
◇専門知識があっても基礎ができていないと仕事をこなすことが出来ない。入社後 2~3 部門を経験(5 年間
程度)すると主任クラスになり、営業や企画・管理部門などに配属される。
◇ホテル業界は基本的に宿泊と飲食を主としている。宿泊部門と飲食部門でスタッフとして半年間研修を受
けてから、他の部門に配属する。その能力により、徐々に昇任することもありうる。ただし、1 年程度で
管理職になるようなことはない。当社では採用に当たって、外国人扱いせず、基本に則って日本人と同様
な条件で採用している。
◇言語の研修はやっていない。仕事対応のトレーニングはしている。これは別の意味での言語の研修ではと
思う。他に社内での勉強会などがある。
◇ビザは総務で担当しているが、側面的なサポートだけである。手続きが多いだけの問題で、さほど問題に
はなっていない。
◇外国人の家族に関する支援は特に実施していない。外国人留学生は日本に 4~5 年住んでいるので、住まい
はそれほど問題がないと思う。
(4)インターンシップ
◇現在、韓国の大学から 4 名の研修生(3 ヶ月)を受け入れている。日本語ができる学生が厳選されて研修に
来る。東京の大学の仲介で始め、今まで 5~6 年実施している。現在のところ、九州の大学からの要請は受
けていない。
(5)今後の海外高度人材採用方針
◇今年 24 名採用、うち日本人 22 名、外国人 2 名。来年は、30 名の内定を決めているが全部日本人で、外国
人の応募はなかった。
◇パターンは In-In で、海外との取引ビジネスの円滑化が主目的である。
採用は国籍に関係なく優秀な人材を確保することで、企業・日本人を含めた社員全体の活性化を目指す。
◇採用対象は大学、大学院(修士・博士)とも新卒を採用する。学力の裏打ちがあり、かつ 1 名で広い分野
をカバーできることが大切。
◇オークラ全グループ企業には、現在 10 数カ国の外国人従業員が数十名いる。ホテルオークラ全体の計画と
して、アジア中心にホテル数を増やす計画があり、アジアへの進出の際のスタッフ養成を目的とした施設
を設置する予定である。
28
15
(株)ホテルサンライン福岡
業種: 宿泊業
海外高度人材雇用パターン
代表者
代表取締役 本永 幸秀
ヒアリング対応者
マネージャー 早川 健太
所在地
創業年次:昭和 63 年
福岡市中央区
URL: http://www.h-sunline.co.jp
資本金:2,500 万円
主要製品事業内容
海外事業
宿泊業
海外での集客営業はあるが、海外事業は無い。
雇用パターン別
海外高度人材の活用
パターンⅠ(In-In)
Ⅰ
従業員数: 38 名
6名(中国人、台湾人、韓国人)
パターンⅡ(Out-In)
パターンⅢ(In-Out)
パターンⅣ(Out-Out)
(株)ホテルサンライン福岡の海外高度人材に対する取り組みの特徴
(1)海外での集客営業の成果を高めるためと、ホテル内の外国人顧客の接客対応のレベル向上のために現
地出身の人材を活用し始めた。現地のインターネットを利用した集客等、新しい形の営業が出来るよ
うになった。
(2)外国人の宿泊客がかなり増えており、海外高度人材を活用することで、ホテル内でも言語・コミュニ
ケーションのトラブルを未然に防ぐことができるようになり、接客レベルが向上した。
(3)採用は文系に限らず、数字を扱うので数字に強い人が望ましいと考えている。
(1)海外高度人材の活用状況
◇全社員数 38 名、うち海外高度人材は 6 名(留学生からの採用は 3 名)である。
◇留学生採用は韓国人が 2 名、中国人が 1 名で、先ず契約社員として採用した。同社では日本人・外国人共
に入社後 3 年は契約社員で、その後審査にて正社員に登用する仕組みを取っている。ただし、契約社員と
正社員の間には給与等の雇用条件に差異はない。
◇フロント業務は、現在、日本人 5 名、外国人 5 名が担当。その他、韓国人スタッフが宣伝(集客のセール
ス)業務を担当している。
◇他にアルバイトで中国人 1 名、ネパール人 1 名(26 歳・大学生)、レストランで中国人 1 名(大学生)が働
いている。
(2)海外高度人材活用のポイントと活用メリット
◇海外高度人材活用の発端は客筋の変化である。近年、ホテルでの外国人の顧客が増加するとともに言葉の
問題でトラブルが発生していた。不況も相まって、台湾・韓国をターゲットに現地出身の海外高度人材を
スタッフとして雇用し、ホテルでの通訳や海外での集客セールスを開始した。インターネットの書き込み、
案内態度・能力も向上し、口コミで集客がアップした。リーマンショック後、一時、海外からの客数が減
ったが、半年前から目に見えて集客が増加し、韓国からの客は倍増している。
◇韓国人スタッフは、日本人に近い常識感覚を持っており活用しやすい。海外出張での集客セールスも、当
初は日本人営業マンに同行する形であったが、最近では単独で行動が可能なレベルに成長してきている。
◇海外高度人材がいると社員全体のレベルアップに繋がっている。日本人も含めたスタッフによる集客、接
客の両面で向上している。外国人客の増加による、ホテル内での言語・コミュニケーショントラブルも、
その国出身のスタッフが間に立つことで解消された事例も多い。
29
(3)海外高度人材活用の課題
◇ホテルの職員もある意味で特殊業務であり、短期養成が難しい。職員は、時間をかけ、社内ローテーショ
ンを通じて育成していくが、窓口業務の人間が引き抜きに合うことも多い。
◇現在でこそ6名の海外高度人材が働いているが、グローバル化への対応としては、出遅れた感がある。
今後の成果の増大に期待している。
(4)今後の海外高度人材採用方針
◇ハローワークに「外国人受入可」で出したところ 40 名の応募があり、今年は 2 名採用した。来年度は未定。
◇採用対象は文系だけではない。コンピュータによる社内統計などの数字に強い人材が好ましい業務もある。
ヒアリングに対応して頂いた早川マネージャー
30
16
木村情報技術(株)
代表者
ヒアリング対応者
所在地
業種: 情報サービス業
海外高度人材雇用パターン
Ⅰ
創業年次:平成 17 年
代表取締役社長 木村 隆夫
専務取締役 木村 敦子
佐賀県佐賀市
URL: http://www.k-idea.jp/
資本金: 2,450 万円
主要製品
事業内容
インターネットテレビ会議システム、セキュリティーシステム、セミナー・イベ
ントに関する IT 技術の応用システム。
海外事業
中国等の IT・ソフトウェア会社からのソフトの開発輸入、日本国内販売。
その他、中国等からの IT 関連機器の輸入、日本国内販売。
雇用パターン別
海外高度人材の活用
パターンⅠ(In-In)
従業員数: 13 名
中国人 1 名。
パターンⅡ(Out-In)
パターンⅢ(In-Out)
パターンⅣ(Out-Out)
木村情報技術(株)の海外高度人材に対する取り組みの特徴
(1)同社は平成 17 年設立で、未だ若い IT 関連企業である。中国等における IT・ソフトウェアの開発、輸
入等の業務上、IT 専門分野と日本語が分かる中国人が必要と考えており、中国の高度人材をアルバイ
トとして試用し、最近、正社員として採用した。
(2)海外高度人材活用に伴う業務以外を含めた課題については、いまだ活用期間が短いので具体的な問題は
起きていない。現在、今後に備えた準備段階にある。
(3)日本のビジネスの厳しさを体得してもらうべく、更なる社内訓練が必要と考えている。
(1)海外高度人材の活用状況
◇従来、中国等からの IT・ソフトウェアの開発・輸入や IT 関連機器の輸入に伴う折衝は国内の仲介業者(中
国人が担当)を通じて実施してきたが、自社側にも IT 専門分野と日本語が分かる中国人が必要と考えてい
た。
◇佐賀県内で、条件に合う中国人がいたので、当初アルバイトとして試用を開始した。
本人は、中国の大学で IT を学び、来日して就職先を探していた。アルバイト開始後数ヶ月を経て正社員と
して採用した。採用面接では日本語能力等もチェックした。
◇当初の予定通りに、設備やソフトウェアの輸入仲介業者との接点となったり、中国側の協力企業や製品輸
入先との折衝に当たったりしているが、未だ日数は浅く、評価するには時期尚早である。
(2)海外高度人材活用のポイントと活用メリット、課題
◇現状としては、実質的に新卒の採用である。輸入仲介業者もそのまま起用しているので、OJT にも繋がっ
ているが、企業内教育が始まった段階で成果はこれからであり、今後の成長を期待する。
◇中国企業との折衝業務についたばかりであり、従来の仲介業者の経験豊かな中国人との比較ができるレベ
ルに至るには時間が必要である。特に、日本式の厳しいビジネス環境の理解が今後のポイントであろう。
31
◇中国の大学卒であったので、専門知識能力と日本語能力の判断がつきにくかったため、先ずアルバイトで
試用して対処する方法をとった。
◇業務が IT 関連で明確になっており、日本人との結婚もしているため、就労ビザ問題もないものと見られる。
(3)海外高度人材に対する支援策
◇まずアルバイトとして試用し、それから本採用し、未だ日が浅いが、人柄が温和で熱心に勤めており、企
業として対処するほどの問題はなく、特別の支援をしていない。
◇とはいえ、日本の顧客向けの日本語レベルに達するまでには更なる日本語教育が必要であろう。又、日本
の厳しいビジネスについては引き続き社内教育が必要と感じる。
(4)今後の海外高度人材採用方針
◇現段階では次の採用を必要と考える状況にはないので、当分は現状で推移する。
インターネットテレビ会議システム
32
17 協和機電工業(株)
業種:はん用機械器具製造業
海外高度人材雇用パターン Ⅰ、Ⅳ
代表者
ヒアリング対応者
所在地
代表取締役社長 坂井 秀之
総務部門 総務グループ グループ長 田島 秀一郎
長崎県西彼杵郡時津町
URL: http://www.kyowa-kk.co.jp/
創業年次:昭和 23 年
資本金: 5,000 万円
主要製品、事業内容
海外事業
雇用パターン別
海外高度人材の活用
従業員数: 416 名
製造業:水処理プラント施設等、機械・電機設備等
・海外拠点:中国にグループ会社として設計業務・水処理技術を行う海外拠点(中
国・深圳)あり。
・海外業務:主に中国での処理施設と中国拠点での設計業務(電気、機械)。
中国では、当初、設計業務で立ち上げ。広東省中心に企業の水処理施設の設計・
施工等へ事業を拡大。
パターンⅠ(In-In)
韓国人 1 名。
パターンⅡ(Out-In)
パターンⅢ(In-Out)
パターンⅣ(Out-Out) 中国人 33 名。
協和機電工業(株)の海外高度人材に対する取り組みの特徴
(1)国内で勤務する海外高度人材の採用については、日本人と全く区別していない。技術者としての能力を
採用基準としている。
(2)中国拠点での中国人の採用については、最近は現地の労働力単価も上昇しているが、国内と比べ、労働
力単価が安く、コスト削減が図られている。
(3)国内工場では、外国人研修生の受け入れも積極的に行っている。日本人社員も刺激を受け、モチベーシ
ョンも向上する等、効果が上がっている。
(1)海外高度人材の活用状況
◇現在、国内では、韓国人の高度人材が正社員で 1 名が在籍(In-In)。
中国の現地法人(深圳市)では、33 名(ほとんど大卒)を現地で採用した(Out-Out)。
◇国内拠点では、昨年度、全体では日本人 18 名、留学生 1 名を採用した。国内は特に日本人との差を意識し
ていない。日本人と同様、各種機械等の製造部門で勤務させ、通訳などの国際業務は担当していない。
◇採用は人物本位であり、出身国は特に関係ない。ただし、留学生の場合は年齢がやや高い傾向があるので、
もし同じレベルの人材ならばより若い人を雇うこともあり、結果的に日本人を選択することが多い。採用
は技術系のみである。
◇以前、中国人が在籍していたが、米国の会社に勤務したいとのことで、3 年程度で退職して渡米した。
◇中国拠点は、主に設計業務や水エンジニアリング等の事業を展開している。当初は、労働力単価が安いこ
とから、コスト削減等を目的として進出した。より高度なシステム設計は日本国内で設計し、製造設計は
中国で設計している。現地では日本人 3 名が指導を行っている。
◇この他、外国人研修制度を利用して 12 名のベトナム人が国内工場で勤務。季節的な人材不足から、来年は
更に 6 名を研修制度で受け入れる予定。
33
(2)海外高度人材活用のポイントと活用メリット
◇現在勤務している韓国の人材は、兵役で電気工事等も経験し、しっかりしている。仕事面では日本人と特
に区別していない。
◇中国現地設計は賃金が国内より安く、コストメリットあり。
(3)海外高度人材活用の課題
◇国内の海外高度人材は、在留資格など手続きをはじめとして、現在のところ特段問題は抱えていない。生
活面等は、長崎県内に在住している親戚がサポートしたりしている。
◇以前、ベトナム人の長崎県の理工系大学の留学生が通訳として会社に関わっていた。本人も当社への就職
を希望したが、日本語の能力が十分でなく採用を見送った。企業で勤務するには高い日本語能力が必要で
ある。
◇中国の現地採用では、企業側が解雇したいときに、中国の法規上、解雇が困難なケースもあるので、中国
人の採用にあたっては慎重に対応している。
◇ベトナムの研修生受け入れは、公的施設での座学を 80 時間実施する必要がある等、企業にとって負担が大
きい面もある。
(4)今後の海外高度人材採用方針
◇優秀な人なら国籍には全くこだわらない。採用方法としては、日本人学生を採用する手順・方法と外国人
留学生とで区別をしていない。
◇今後、仕事がどれだけ受注できるかにより海外高度人材の採用も左右される。また、会社の中期的な方針
にも影響されると思う。欧州でオランダとの水処理での付き合いが始まったので、そちらの方面での活用
の可能性もある。また、中国での資材調達などでの活用の可能性もある。
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18
(株)タケシマ
代表者
ヒアリング対応者
所在地
創業年次:昭和 30 年
主要製品
事業内容
海外事業
雇用パターン別
海外高度人材の活用
業種: 輸送用機械器具製造業
海外高度人材雇用パターン Ⅰ
代表者 代表取締役社長 和田 耕一
代表取締役社長 和田 耕一
長崎県長崎市
URL: http://www.takesima.co.jp/
資本金: 1,000 万円
従業員数: 20 名
船舶用機械及び部品、発電機、発動機、空気圧縮機、船艇及び付属物品、冷凍機
械装置及び付属物品等の販売・メンテナンス。
船舶関連、自動車関連製品の輸出。
パターンⅠ(In-In)
中国人 1 名、マレーシア人1名。
パターンⅡ(Out-In)
パターンⅢ(In-Out) 今後のテーマ。
パターンⅣ(Out-Out) 現在は拠点がない。
(株)タケシマの海外高度人材に対する取り組みの特徴
(1)海外営業を目的に中国人 1 名、マレーシア人 1 名を採用。社長自ら海外営業に関して指導している。
(2)中国を含む東南アジアでは、人的ネットワークがないとビジネスは非常に難しい。留学生人材を育てて、
人間関係を築くことにより、海外展開を図る。
(3)優秀な人材を確保し、将来の海外展開の幹部候補生として採用している。しかし Out-In は両国の文化
や習慣の違いで、実現的には困難だと考えている。
(1)海外高度人材の活用状況
◇外国人 2 名を採用している。1 名は中国人で、長崎県の大学の新卒で、採用後 3 年目になる。他の 1 名は
マレーシア人で、やはり長崎県の理工系大学の新卒で 2 年目である。仕事は何れも主に通訳、海外営業な
どの国際業務に従事している。2 名とも正社員(In-In)。
◇中国人は男性で、付き合いのある大学教授の紹介による。マレーシア人は女性で、合同企業説明会を経由
して採用に至った。
◇海外営業に関しては社長が自ら、2名を育成・指導している。
(2)海外高度人材活用のポイントと活用メリット
◇中国を含む東南アジアでは、人的ネットワークがないとビジネスは非常に難しい。留学生人材を育てて人
間関係を築くことにより、海外展開を図る考えである。
◇海外高度人材の採用に伴い、日本人側の海外業務の負担が軽くなり、会社全体としての海外事業展開が拡
大している。
◇2 名とも優秀であり、モチベーションが高い。
35
(3)海外高度人材活用の課題
◇キャリアパス、処遇は日本人と同じである。日本人社員も、海外高度人材を抵抗なく受け入れている。
◇ただし、2 名の現在の日本語レベルは、社内では問題ないが、国内の営業を任せるには不十分である。従
って、国内営業活動では日本人の営業マンが同行している。
◇ビザの申請手続きは、現在のところ特に問題ない。
(4)今後の海外高度人材採用方針
◇海外事業の業務円滑化・拡大への備えを目的に、優秀な人材を確保し、将来の海外展開の幹部候補生とし
て採用しており、この方針は変らない。採用・配属パターンは In-In、In-Out を考えている。ただし、Out-In
は両国の文化や習慣の違いで、実現的には困難だと考えている。
◇海外との取引強化を目的として、日本人より外国人を優先して採用してきた。しかし、今年は外国人の就
職を頼まれたが不景気のため断った。今後の採用は、ビジネスが広がって必要となれば採用を考える。日
本人採用も、随時、中途採用等を行っている。
◇留学生は定期的に雇ってはいないので、人材確保に関する情報収集等は常時気を使っているわけではない。
船舶用エンジン
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19
(株)同仁化学研究所
代表者
ヒアリング対応者
所在地
創業年次:昭和 53 年
主要製品、事業内容
海外事業
雇用パターン別
海外高度人材の活用
業種: 化学工業
海外高度人材雇用パターン
Ⅰ、Ⅳ
代表取締役社長 野田 栄二
総務部 部長 松野 寛明
熊本県上益城郡益城町
URL: http://dojindo.co.jp
資本金: 2,000 万円
従業員数: 50 名以上 100 名以下
各種試薬の研究開発と製造販売。
海外拠点:現地法人・海外拠点としては中国オフィス 2 か所(上海と北京)
、米国
オフィス、ヨーロッパオフィス(独)。
海外業務:試薬の営業業務、マーケティング、日本からの技術指導。
パターンⅠ(In-In)
中国人 1 名。
パターンⅡ(Out-In)
パターンⅢ(In-Out) 将来の可能性あり。
パターンⅣ(Out-Out) 中国 8 名、米国 2 名。
(株)同仁化学研究所の海外高度人材に対する取り組みの特徴
(1)海外展開は重要課題で、パターンⅠ・In-In では現在は1名だが、今後の事業展開次第で更に海外高度
人材採用の可能性がある。
(2)海外高度人材の仕事は日本人同様、普段は合成試薬製造を行っているが、購入原料等の中国の購買先委
託会社に対しての技術指導も行う。
(3)日本で採用する場合は、日本人と全く同じ待遇であり、特別な教育もしていない。
(4)日本語のコミュニケーション同様、英語能力(プレゼンテーションができること)が重要であり、この
点にも期待している。
(5)海外で採用する場合、日本語は重視するが、おのずと限界がある。
(6)パターンⅢ(In-Out)も将来的にはあり得ると考えている。
(1)海外高度人材の活用状況
◇国内では中国人 1 名が本社に在籍している。昨年 4 月に入社した(熊本県の大学留学生)(In-In)。
◇海外では中国オフィスで 8 名を現地採用し、現地で仕事をしている。米国オフィスでは現地で 2 名(営業
等)を採用した(Out-Out)。ヨーロッパオフィス(独)は仕事上の関連会社であり、同社関与の採用では
ない。
◇昨年は全体で 6 名入社し、その内 1 名が中国人。一昨年は日本人 5 名のみ入社。海外高度人材の採用手順
は日本人と同様であり、専門性が高いので、研究開発企業として付き合いのある研究室(熊本県内の大学)
の学生から採用した。就職説明会などでの留学生の募集はしてない。
◇日本で採用する場合は、日本人と待遇等は全く同じ正社員である。新入社員教育は日本人と同じ研修であ
る(In-In)。
◇中国での現地採用では、オフィススタート時は日本語が出来ることを必須条件として採用したが、それで
は人が集まらなくなり、日本語不十分でも採用している(Out-Out)
。
37
◇北京では中国人 4 名と日本人 1 名、上海では中国人 7 名と日本人 2 名がいる。
◇以前インターン的に韓国人を 1 年間受け入れたことがある。非常に真面目であった。
(2)海外高度人材活用のポイントと活用メリット
◇日本の技術スタッフ(海外高度人材を含む)の仕事は日本人同様、普段は合成による試薬作りをしている
が、当方が購入する原料などの中国の購買先委託会社に対しての技術指導を行う。
◇日本語のコミュニケーション同様、英語能力(プレゼンテーションができること)が重要であり、この点
にも期待している。
(3)海外高度人材活用の課題
◇日本語は通常業務でのコミュニケーションでは問題ないが、ディスカッションやプレゼンテーションでは、
文化的な違いがでる。日本語の能力は更に高めたい。
◇国内での採用プロセスはスムースで問題ない。
◇中国の現地雇用では労務管理で苦労している。給与面で、他の企業と比較したり、同期入社の職員と差が
生じた場合など不満が出るケースがある。
(4)今後の海外高度人材採用方針
◇海外展開は重要課題で拡大する方針である。事業展開の状況により更に海外高度人材採用の可能性はある。
◇今後、国内で採用し、海外拠点配属のパターンⅢ(In-Out)はあり得る。
同社の研究開発の様子
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(株)アルプス技研
代表者
ヒアリング対応者
所在地
創業年次:昭和 43 年
主要製品
事業内容
海外事業
雇用パターン別
海外高度人材の活用
業種: 技術サービス業
海外高度人材雇用パターン
Ⅰ、Ⅱ、Ⅳ
代表取締役社長 牛嶋 素一
西日本事業部担当業務執行役員 久保 一郎
熊本営業所長
中村 修
(熊本営業所)熊本県熊本市
URL: http://www.alpsgiken.co.jp
資本金: 23 億 5,000 万円
従業員数: 76 名(熊本営業所)
・技術者派遣、技術プロジェクト受託。
・受託内容によっては、工場での試験や設備製作・運転も行う。
・中国に 4 拠点を有する(主力拠点は青島、北京、広州、台湾(殷))
。
・中国では人材・教育事業を展開。青島で現地大学卒業生の日本語訓練をして、
日本に技術系スタッフとして派遣、及び、中国現地での技術サービスを展開。
・台湾は半導体分野の訓練拠点。
・今後、中国でのエンジニアリング事業、及び、中国に進出している日系企業へ
の技術者派遣、技術プロジェクト受託事業の本格展開を予定。
パターンⅠ(In-In)
約 20 名。
パターンⅡ(Out-In) 約 200 名。
パターンⅢ(In-Out)
パターンⅣ(Out-Out) 約 30 名。
(株)アルプス技研の海外高度人材に対する取り組みの特徴
(1)昭和 61 年の派遣法改正を契機に、海外高度人材の登用の検討を開始した。
採用・配属パターンⅡ(Out-In)に強みのある企業である。
(2)海外の新卒者(大学)を現地で採用し、約 1 年間教育し、その中から優秀者を採用して、日本に正社員
として受け入れる。日本では客先に派遣するので、派遣先からクレームがつかないレベルまで教育す
る。教育体系はこれをビジネス化できるほど整備されたものである。
(3)企業機密漏洩防止や個人情報保護の教育も念入りに行っている。
(1)海外高度人材の活用状況
◇全国・24 支店で 2,800 名のスタッフを抱えるが、そのうち約 1 割が海外高度人材である。
日本で採用した人材もいるが、ほとんどが中国で採用して日本で雇用している。
◇アジアにおける高度技術者集団の確立を目指し、中国山東省青島市の教育ライセンスを取得し、中国人技
術者を養成するため、現地法人を設立し ALPS 教育開発センターを設置。
◇業務は設備設計・エンジニアリング、技術開発・研究開発が中心で、学部の専門は環境・新エネルギー系、
機械工学系、電気・電子・情報工学系が中心である。業務は、全て日本国内の顧客への派遣等であり、海
外業務は、現時点ではない。
◇海外高度人材のほとんどが、海外の大学または大学院の新卒で、現地で主に日本語と日本の企業や社会生
活に関する教育訓練を実施し、成績の良い人材を最終的に採用し、日本に同社の正社員として受け入れる。
青島での留学生採用数の推移は、平成 17 年 14 名であったが平成 20 年には 80 名に達した。しかし平成 21
年は採用していない。
◇現地での教育は、大卒 4 年目から開始し、卒業後 9 月に来日するまで 1 年に亘る。日本でも、最初の半年
は訓練が中心である。日本では客先に派遣するので、顧客からクレームがつかないレベルにまで、綿密に
訓練をする。
◇日本への受入は全て本社で、神奈川入国管理局で審査を受け、入国後、本社が 23 支店に配属する。
39
(2)海外高度人材活用のポイントと活用メリット
◇海外高度人材の採用は、日本で技術系の新卒を採用しにくくなったため、日本人と同等の専門能力と、客
先との日本語を通じたコミュニケーションが出来る技術系人材を採用することにある。
◇日本-現地両方を理解している技術人材を採用することで、海外現地に開発拠点を展開している顧客、ま
たは展開予定の顧客ニーズにより一層応えることが出来る。
(3)海外高度人材活用の課題
◇同社は、人材派遣と技術プロジェクト受託会社であり、顧客の要請に合わせた業務を行うのが目的である。
従って、ケース毎に異なる要請に合わすことが出来て、クレームが付かないレベルのスタッフである必要
がある。そのため、同社の訓練は、日本語、顧客にあった就業態度、社会との融和等、あらゆる面での教
育が出発点にある。客先との契約が終了すれば、また同社の正社員として戻ってくる。
◇しかしながら、このような業態の企業での平均勤続年数は短く、同社の平均は 5 年程度で、有力他社では
3 年程度とも言われる。10 年の継続勤務があれば、プロジェクトを任せられる位に成長するが、転職した
くなる時期とも重さなり、未だベテラン活用事例は少ない。これらの背景から未だ、海外高度人材に対し
て社内のキャリアパスを明示できないのが問題ではある。
(4)海外高度人材活用に対する支援策
◇それぞれの企業によって、次の項目への対応が重要であり、同社でも蓄積をして来た。
・ビジネスレベルの日本語教育に対する支援、日本企業の商習慣等の理解促進支援。
・海外高度人材受入の社内風土の醸成。
◇海外高度人材に対する企業機密漏洩防止や個人情報保護の教育は、企業によっては会社存続の根幹に関わ
る場合も多く、充分な対策が必要である。
◇現在、福岡県の大学の留学生に奨学金を出し、出口としての同社をアピールしている。
◇留学生に対する語学、日本企業の知識、日本社会との融合等に関する教育システムには自信があるので、
行政の支援を得て、新業務にする方法を考えている。
◇インターンシップについては、日本人学生の受入実績はある。製造工場や全国 23 支店も有するので、留学
生の受入も可能である。
(5)今後の海外高度人材の採用方針
◇平成 20 年以来の業況の悪化により、当面は事業の拡
大は考えられない状況にある。業況が良くなれば、
中国に進出した日系企業向けの業務展開を考えたい。
◇現在実施している、現地中国人の日本語、日本の企
業・日本の社会に関する教育体系の充実度には自信
をもっており、この教育自体を新規事業として使え
るのではないかと考えている。
ヒアリングに対応して頂いた
久保執行役員(左)と中村所長(右)
40
21
(株)ツカサ創研
代表者
ヒアリング対応者
所在地
創業年次:昭和 52 年
主要製品
事業内容
海外事業
雇用パターン別
海外高度人材の活用
業種: その他の事業サービス業
海外高度人材雇用パターン Ⅰ
代表取締役 渕田 俊郎
専務取締役 渕田 美恵子
熊本県上益城郡
URL: http://www.tsukasa-soken.co.jp/
資本金: 1,000 万円
従業員数: 36 名
展示会、イベント、見本市、コンベンション、博覧会、舞台装飾、商業施設
の企画設計施工。映像機器、展示会備品レンタル。
バス、電車等のラッピング加工等。
海外向け事業はない。
パターンⅠ(In-In)
韓国人 1 名。
パターンⅡ(Out-In)
パターンⅢ(In-Out)
パターンⅣ(Out-Out)
(株)ツカサ創研の海外高度人材に対する取り組みの特徴
(1)懇意にしているデザイン専門学校の副校長からの紹介で、韓国人で日本の大学卒の高度人材を採用し
た。当時は海外高度人材の採用というより専門性がメインの採用であった。
日本人と異なるデザインセンスがあり、人物等を含め結果的に良い人材に恵まれた。
(2)日本での顧客が韓国に出張した際に同行させたが、非常に喜ばれ、その後の国内での仕事にも良い影響
をもたらした。
(3)日本人スタッフにも良い影響をあたえ、企業内の活性化につながっている。
(4)海外展開に関しては、将来は国際部門を作りたいと考えているが、具体的な計画は未定であり、現時点
では新たな海外高度人材の採用予定はない。
(1)海外高度人材の活用状況
◇昨年、海外高度人材 1 名を採用しデザイナーとして活用している。韓国人男性で、専門学校で情報建築学
科を卒業後、関西の大学の通信コースの編入を経て、昨年度入社した。
◇専門学校の副校長と同社社長が懇意にしており紹介されたため、当時はそれほど海外高度人材採用の意識
は無く、専門能力で採用した。
(2)海外高度人材活用のポイントと活用メリット
◇今回のケースは、結果的によい人材に恵まれたと思う。仕事に熱心に取り組むまじめな努力家であるため、
他の日本人スタッフへの良い刺激となっている。
◇クライアントの中に、韓国・中国への進出を計画している企業があり、中国出張の際に通訳を兼ねた案内
役で同行させたところ大変喜ばれ、同社の信用が向上した。今後の取引にも繋がっていくと思われる。
41
(3)海外高度人材活用の課題
◇採用時や更新時のビザ等手続きについては、本人主体で行っており、必要に応じて会社書類を発行する程
度で、現在までにトラブルや問題点はない。
◇他の日本人社員の刺激となるほど、仕事に対してとても熱心で、デザインセンスも優れている。コミュニ
ケーションは日本語で問題ない。他のスタッフとも違和感なく働いており、上手くいっている。
◇本人は日本人との結婚を望んでいるが、なかなかよい出会いがない。
(4)今後の海外高度人材採用方針
◇海外高度人材獲得に関して、戦略的な採用計画はない。
◇海外展開に関しては、将来的には国際部門を作りたいと考え
ているが、具体的な計画は未定である。現在はクライアント
の海外展示会出展の手伝いをする程度であり、外国人採用の
予定はない。
◇外国人に対する支援等は特になく、他の日本人社員と同じよ
うに教育している。例えば、日本語の倫理関連の資料を、他
の日本人と同じように朝礼で毎日読む程度である。
◇インターンシップは毎年受入れているが、日本人のみで外国
人受入れの経験はない。仮に外国人が来ても同様に受入れる
予定である。
◇社長と専務は以前外国人 2 名(男性・女性)の保証人になっ
たことがあり、男性は同社でアルバイトとして働いていた。
現在は、中国・大連市に帰国しており、大連市での仕事の際
は手伝ってもらうことも考えている。
ヒアリングに対応して頂いた渕田専務
海外高度人材が作成したデザイン画の前で
42
22
(株)大川金型設計事務所
代表者
ヒアリング対応者
所在地
創業年次:昭和 47 年
主要製品、事業内容
海外事業
雇用パターン別
海外高度人材の活用
業種: 生産用機械器具製造業
海外高度人材雇用パターン Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ
取締役会長 大川 貞雄
代表取締役 大川 滿智子
大川会長、大川取締役、総括 小林克己
大分県速見郡日出町
URL: http://www.med-ohkawa.co.jp/
資本金: 5,000 万円
従業員数:九州:37 名
プラスチックス射出成形、金型設計及び製作、ソフトウェア開発
海外拠点:インド(1)、マレーシア(1)、フィリピン(3)合計 5 工場を設置。
海外業務:外国人スタッフを派遣、国内スタッフと交流。
日本で、平成 4 年~平成 21 年(17 年間)に延べ 56 名の海外高度人材を雇用。
パターンⅠ(In-In)
現在はスリランカ人 1 名。
パターンⅡ(Out-In)
過去に事例あり。
パターンⅢ(In-Out) 過去に事例あり。
パターンⅣ(Out-Out) 海外の 5 工場で、それぞれの現地出身者に関わらず
多数活躍中。
(株)大川金型設計事務所の海外高度人材に対する取り組みの特徴
(1)日本人学生の学力が低下傾向にあり、中小企業としての生き残りをかけて、海外高度人材の採用を積極
的に進めている。
(2)海外高度人材は、同社のグローバルなネットワークの中で、地理的にも業務内容的にも有機的にかつ柔
軟に活用されている。過去 17 年の間に延べ 56 名の海外高度人材を国内外で採用した。
(3)同社はものづくり企業として、日本人も含めて社員の技術教育に力を入れている。これにより、水平展
開が容易になり、何でもこなせる人材が育つと考えている。
(1)海外高度人材の活用状況
◇日本と海外拠点の両方で、平成 4 年~平成 21 年(17 年間)に延べ 56 名を雇用した。
マレーシア人 10 名、インド人 9 名、スリランカ人1名、中央アフリカ人1名、フィリピン人 5 名、モンゴ
ル人 1 名、中国人 28 名、韓国人 1 名等である。これらの海外高度人材の業務は、営業が 1 名いるが、ほと
んどが理工系で、製造・管理・金型設計、ソフトウェア開発等で活躍している。
◇3 次元画像ソフトウェア開発等で、高度な数学を扱う仕事もこなしている。数学の能力が優れたインド人
等、外国人は三次元画像解析ソフトウェア開発には必須である。
◇同社はものづくりが基本で、技術(特に製造技術)をしっかり教える。そうすれば水平展開ができ、他の
作業にも応用力がつき、なんでもできるようになる
◇同社では原則的に正社員とし、勤務地や国籍に関係なく家族同様、親身になって育てている。
◇現在の九州の全社員数は 37 名、うち外国人はスリランカ人 1 名で、製造(ものづくり)に専念してもらっ
ている。東京の大学を卒業後、海外で国際的な証券会社に勤務していたが、リーマンショック後に都合に
より退職し、友人を介して同社に入社し今日に至っている。
◇フィリピンの工場には 3 名のインド人の博士がいる。九州勤務の経験もあって、同社のグローバルなネッ
トワークの中で活躍している。
◇昨年までは、大分県の大学卒業の中国人女性がいた。6 年間在職したが日本人と結婚して退職した。中央
アフリカ人も退職したが大成した。九州の理工系大学卒で、現在沖縄で教授をしている。
43
(2)海外高度人材活用のポイントと活用メリット
◇日本の町工場として続けていけるのは、これから 3 年程度ではないかと危惧している。
生き残るには海外進出・海外高度人材活用しか手段がない。
◇良い外国人は積極的に採用すべきだと思う。教育レベルが高く、良いアイデアがでる。
◇大分県の大学で「中小企業の技術力~国際性豊かな経営者の人間力は企業を発展させる」という講演を会
長自ら行った。その講演を聴取した留学生のレポート内容に接して語学力、特に文章力の素晴らしさに感
心した。
(3))海外高度人材活用の課題
◇インド人は数学力に秀でているので大いに期待しているが、人生観が日本人と異なる面がある。
◇過去雇用した某国の人はプライドが高く非常に扱いが難しかった。両親が知識層でその国として恵まれた
環境なのか、なかなか聞く耳を持たず、苦しくなると「私は言葉が解りません」で逃げる。ある国の 2 名
は極端であった。1 名はプライドが高く企業への就職に向かなかったが、他の 1 名はうまく育った。出身
国というより人それぞれである。
◇大学において、留学生の地元志向を十分くみ上げた就職支援等が必要と思われる。
(4)今後の海外高度人材採用方針
◇優秀であれば国籍は問わない。人間性、熱意が必要である。
◇三次元画像ソフトウェアの開発には優秀な人材が欲しい。数学に優れた人が良い。
◇何処からでも頼まれれば採用する。英語圏出身者も必要である。フィリピンも英語圏で、奨学金を出して
育成補助をしている。
◇日本語が出来ないというのは気にしない。
「心と心」が大切であり、自分の出来ることをやらせる。同社に
就職したのに「これしか出来なかった」と言うようではだめであり、何でも出来るように教育する。同社
の社長にもなり得るくらいの気概が必要だ。
ヒアリングに対応して頂いた大川会長と大川社長
44
23
清本鐵工(株)
代表者
ヒアリング対応者
所在地
創業年次:昭和 12 年
主要製品
事業内容
海外事業
雇用パターン別
海外高度人材の活用
業種: はん用機械器具製造業
海外高度人材雇用パターン Ⅰ、Ⅲ、Ⅳ
代表取締役社長 清本 英男
総務部長 福島 秀幸
宮崎県延岡市
URL: http://www.kiyomoto.co.jp
資本金: 9,500 万円
従業員数: 300 名
一般産業用機械、化学プラント装置設計・製作・据付(環境・水処理等、
)船舶機
械部品製作。
上海営業所、大連・船舶部品製造工場、大連・排水浄化設備建設。
パターンⅠ(In-In)
中国人 1 名、韓国人 1 名。
パターンⅡ(Out-In)
パターンⅢ(In-Out) 中国人 1 名。
パターンⅣ(Out-Out) 佐賀工場の管轄のため人数の聴取をしていない。
清本鐵工(株)の海外高度人材に対する取り組みの特徴
(1)海外高度人材の活用に伴う種々の問題に対して、事前に用意周到に準備を進めた結果、担当部門の
負担とはなったものの具体的な問題とならずに処理できている。事前準備の重要性が伺われる。
(2)事業内容、規模はグローバルに拡大方向にあるが、当面対象地域は中国に絞っている。従って、中国語
系の人材を求めている。
(3)企業規模等から、新卒者より即戦力を求めている。外国人活用に伴う問題は総務部で一元的に対処する
体制を整えている。
(4)In-Out の経験があるが、国際間異動に伴う処遇の差異については、慎重に対処する必要がある。
(1)海外高度人材活用状況
◇同社は、九州に延岡市の本社・工場と佐賀工場がある。中国や韓国向け輸出、現地生産・輸入を開始し、
現在は更に、中国・大連市の地方行政からの依頼を受けて現地で汚水処理プラントの設計・建設を行って
いる。
◇九州の 2 工場で、合計 3 名(中国と韓国)の海外高度人材がいる。うち 1 名は、大連市の下請工場を現地
法人として買収した際に、委託生産先との折衝の通訳として、日本で中国人(理工系)を中途採用・活用
した。その後、日本で経験を積んで、現在は上海営業所に転勤(In-Out)し、主に営業を担当している。
◇大連市にプラントを建設することとなり、建設現場に技術者を送って建設・指導をしてきたが、そのうち
の 1 名は延岡工場で経験を積んでいる中国人技術者である(出張ベースであり、In-In)。
◇これらとは別に、韓国の顧客企業の紹介で、韓国の大学を卒業した新人を受け入れたが、本人が日本での
長期勤務を希望したので、そのまま継続している(In-In)。業務は、延岡工場の工場管理・運転管理であ
る。
◇大連工場には日本人経営者と日本人技術指導者が派遣されているが、海外高度人材(In-Out)は送り込ん
でいない。現地人スタッフは現地採用であり、佐賀工場で短期研修を実施しているが、転勤による Out-In
ではない。
(2)海外高度人材活用のポイントと活用メリット
◇中国人 1 名は、製品の中国及び韓国向け輸出と中国生産委託企業との折衝のための日本語・中国語・韓国
語の通訳・資料翻訳として業務を開始し、大いに活躍した。その後、日本での業務を通じてスタッフとし
て育成され、現在は上海市に赴任し(In-Out)し、現地での営業を担当している。
45
◇他の中国人 1 名は、日本国内の企業の紹介を受けて中途採用された後、延岡工場の勤務を経て、現在は、
大連市の建設工事に携わっている。現地工事では日本語も英語も通じない現地人スタッフや工事労働者を
多数雇うので、日本人技術者との間に立った業務が必須である。単なる通訳ではなく、設計・建設技術に
裏打ちされた中国語での業務を担う人間がいなければ、排水設備の受注・建設は出来なかったと思われる。
(3)海外高度人材活用の課題
◇外国人活用に伴う課題には、総務部で前広に準備・対応している。外国人からの相談にも丁寧に対応して
いる。結果的には、大きな問題は生じていない。
◇3 名とも技術系の採用であったが、ビザ取得時に、将来の業務展開等も勘案して周到に準備して申請をし
た結果、手間暇はかかったものの問題は生じなかった。その後の更新期間も 1 年から 3 年になり、大いに
助かった。
◇韓国の大学卒業後、直に日本に来て受け入れた人材は当初日本語問題が懸念されたが、全寮制の日本語学
校に入れたところ著しい進歩を見せ、短期間で問題は解決された。
◇In-Out で海外に転勤する場合の日本と中国の賃金格差問題も、会社側と本人間で納得した処遇体系を適用
する等の工夫で問題はある程度防げるが、In-Out 特有の問題は内在していると考えられる。基本は、勤務
地ベースの処遇体系として、種々の配慮を織り込んだ体系を作っている。
◇家族問題に対しては、問題が顕在化しなかったために、企業としての対応ノウハウ等が蓄積されるような
状況にはなっていない。ちなみに、中国の 2 名はともに家族がある。
(4)海外展開に関する取り組み姿勢
◇海外展開は以前から重要課題として取り組み、実施している。事業内容、規模はグローバルに拡大方向に
ある。ただし対象地域は当面中国に絞っており、他の国への展開は意図していない。
◇ものづくりをベースとした企業であるので、あらゆる側面で「専門技術」の素養が必要となる。
延岡の工場では、食品機械、環境・エネルギーの分野の専門性が必要である。佐賀工場では、機械・電気
等の専門性が中心となる。
◇最初に採用した 2 名の中国人は何れも、即戦力としての中途採用であった。韓国からの受入人材は、韓国
の大学の新卒であるが、当初は短期の勤務を想定していたこともあり、例外である。企業規模等からは、
未だ、新卒・教育というより、即戦力を求める傾向にある。
(5)インターンシップ、研修受入
◇最近では、九州の大学から、文系の外国人留学生をイ
ンターンシップとして受け入れたことがあるが、同社
が機械製造企業であるため、あまり多くを学んでもら
うことができなかった。
◇かつては、宮崎県の経済協力活動の一環として、ミャ
ンマー政府からの依頼を受けて、ミャンマーの高卒や
大卒の、約半年のインターンシップを受けていたこと
もある。同社のみでなく、関係する国内の他の企業に
もお願いして分散している。非常に勤勉な人材が多く、
国に戻った後の活躍を期待している。
◇更に以前は、ブラジルからの受け入れをしたこともあ
る。何れも、同社への採用を前提とはしていない。
ヒアリングに対応して頂いた福島部長
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24
日本有機(株)
代表者
ヒアリング対応者
所在地
業種: 食料品製造業
海外高度人材雇用パターン
Ⅰ
創業年次:昭和 52 年
代表取締役社長 野口 愛子
代表取締役会長 川崎 暢義
鹿児島県曽於市
URL: http://www.e-kamo.co.jp
資本金: 1,000 万円
主要製品
事業内容
海外事業
有機肥料の製造販売、食品製造販売(発酵健康食品、でんぷん麺など)
、種子関連
事業。
台湾のほか中国、タイ、フィリピン等との取引。
雇用パターン別
海外高度人材の活用
パターンⅠ(In-In)
従業員数: 20 名
フィリピン人 1 名。
パターンⅡ(Out-In)
パターンⅢ(In-Out)
パターンⅣ(Out-Out)
日本有機(株)の海外高度人材に対する取り組みの特徴
(1)英語圏の海外取引が多く英語は重要であるが、それよりも先ず企業内部での業務遂行に必要な日本語能
力が優先される。
(2)企業としては海外高度人材の迅速な戦力化が極めて重要と考えている。同社では、留学生の新卒が短期
間で戦力になるためには、留学生の就学期間中に大学や行政が日本語や日本ビジネスについて教育を
することが大事であると考えている。九州の中小企業は体力が乏しく、各種研修など自らの力で十分
に対処できないケースが多い。
(1)海外高度人材の活用状況
◇海外高度人材は、現在フィリピン人・男性 1 名を国内で採用し国内で就業している(In-In)
。
鹿児島県の大学で水産学の博士号を取得している。現在の業務は研究も営業も担当している。正社員とし
ての採用であり、同社としては永住化による長期勤続を期待している。
◇以前に、中国人(ウイグル自治区出身)が 10 年間同社に勤務していたが退職した。他に中国(湖南省出身)
の女性が一時勤務していたこともある。何れも鹿児島県の大学出身であった。
◇海外からの採用(Out-In)はまだない。
◇同社は外国との取引(台湾、中国、タイ、フィリピン、シンガポール、米国など)が多い。海外取引は商
社経由でなく直に商売しているため、英語は必要である。
中国・大連との取引は英語だけでは困難な面もあり、社内の中国人スタッフがいなくなったので、当面は
商社経由になる可能性はある。
◇現在の海外展開は以下のとおりである。
・台湾:有機肥料、サプリメント、種子。
・タイ・中国雲南省:トルコキキョウ種子。
・大連:有機肥料 など。
47
(2)海外高度人材活用のポイントと活用メリット
◇同社は海外の英語圏との取引が多く英語が必要である。
◇取引は海外が多くとも、社内でのコミュニケーションや国内での販売については、留学生も日本語を修得
しなければいけない。これが一番の基本である。日本語を覚えて、次に英語もできること。留学生のいる
大学の対応として最も大事であり、これにつきる。(事ある毎に大学の関係者等に伝えている。)
◇従来から採用してきた海外留学生はハイレベルの人たちであり、性格もよく社内の日本人スタッフも気持
ち良く受け入れている。
(3)海外高度人材活用の課題
◇留学生との就職マッチングは行政等で支援を行う必要がある。県内の企業も多数参加してもらう必要があ
る。
◇同社は博士を採用したが、即戦力になることが必要である。中小企業では長い育成期間はかけられない。
一般論として海外留学生の迅速な戦力化が、九州の中小企業としては最重要であろう。その意味で、留学
生に在学期間中に日本語の教育や、商習慣等を理解させるための方策を講じることが、大学・行政等にと
って大事である。
◇同社のフィリピンの人材は家庭でも英語を使っているようで、日本語修得のためには特別な努力が必要と
思われる。業務の中で日本語から英語に翻訳するような場合でも、日本語の真の意味を理解していないと
英語への翻訳が不十分になることもある。同社としては高校の教師経験者をつけて、細かい日本語の意味
を伝え、英語に翻訳させる等の手段を講じたこともある。
(4)今後の海外高度人材採用方針
◇海外展開は拡大方向である。発展していけば今後さらに海外高度人材採用の可能性はある。
ヒアリングに対応して頂いた川崎会長
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(株)西原商会
代表者
ヒアリング対応者
所在地
業種: 飲食料品卸売業
海外高度人材雇用パターン
Ⅰ
創業年次:昭和 43 年
代表取締役 西原 一義
取締役人事部長 北園 賢一、人事部 中野 友宏
鹿児島県鹿児島市
URL: http://www.nishihara-shokai.co.jp/
資本金: 2 億 35 百万円(グループ全体) 従業員数: 1,363 名
主要製品
事業内容
海外事業
業務用総合食品卸(ホテル、レストラン、結婚式場、料亭、居酒屋等)への食品
材料卸売。
海外向け事業は無い。
雇用パターン別
海外高度人材の活用
パターンⅠ(In-In)
中国人 3 名。
パターンⅡ(Out-In)
パターンⅢ(In-Out)
パターンⅣ(Out-Out)
(株)西原商会の海外高度人材に対する取り組みの特徴
(1)食品で急成長を続けて全国展開している。レストラン・食品で留学生にもなじみがあり、一般の採用募
集に対して留学生の応募が非常に多い。
(2)採用に当っては、日本人と外国人の区別はしていない。終身雇用が望ましいと考えている。
(3)飲食店が相手のビジネスで、中華料理店の中国人を相手にするケースも多く、中国人を営業要員として
雇用している。海外人材が国内営業する際、日本語でのビジネスコミュニケーションが重要課題であ
る。顧客のレストランの購買担当者が中国人か日本人であるかにより、先方の評価が違ってくる。
(4)業務拡大が進めば、レストランの種類が増加し、英語やイタリア語でのビジネスも必要になる可能性が
あり、そのための海外高度人材活用の必要性が生じると考えている。
(1)海外高度人材の活用状況
◇海外高度人材は中国人が 3 名(福岡と関東)おり、その内 1 名は中途採用である。国内で採用し国内に配
属している(In-In)。1 名が 5~6 年、あと 2 名が 2~3 年勤務している。パート作業員では相模原工場で
ブラジル人が 1 名いる。
◇飲食店が相手のビジネスであり、販売先は関西から以東は「中華料理」の飲食店が多く、中国人経営者が
多いので、そのような顧客には同じ中国人が営業に出向いている。
◇採用にあたっては日本人と一緒で区別はなく、国内の大学求人と Web へのエントリーを行っている。全国
7 か所で採用活動を行った。同社としては営業職で採用している。正社員である。
◇今年は営業で女性 4 名と男性 50 名を採用した。その中で中国人女性 1 名を九州の大学から採用した。
◇海外留学生は日本での就職を希望する人材が多くおり、就職説明会に多数参加するようになっている。9
年前から人事として公募を主体とした採用活動を行ってきているが、過去に比べて現在は応募者が 5 倍以
上に増えてきているように思う。全体の応募者の 1 割くらいは留学生である。中国人・韓国人の応募が多
い。留学生は飲食店でのアルバイトを通じて、同社へのなじみがあると想定される。皆、就職に非常に熱
心である。
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(2)海外高度人材活用のポイントと活用メリット
◇営業・顧客先の中国人経営者や購買担当者と会話が進み、質の高いコミュニケーションができる。営業と
して良い結果が出ている。
◇海外高度人材は仕事に非常に熱心である。能力は高く、勉強してきていて日本人以上にマナーも良い。周
りの日本人スタッフも、中国の商品名など質問したりして、刺激を受け活性化されている。
(3)海外高度人材活用の課題
◇顧客先でも、中華料理店との関係は良くなっているが、逆に日本料理関連の顧客からはコミュニケーショ
ンの問題でクレームがくるケースもある。日本人とのコミュニケーションが上手にとれることが一番の課
題である。従って、日本語レベルが重要な要素となる。
◇ビザに関しては手続きなども特に問題はない。証明書を同社として出すだけである。
◇中国人に限らないかも知れないが、自分が学んだことや仕事の内容を他の日本人スタッフや海外高度人材
に連絡したり指導したりしない傾向にある。組織としての能力伝承には差し障りとなる可能性がある。
(4)今後の海外高度人材採用方針
◇採用方法としては、日本人と外国人留学生との区分はない。また終身雇用ができればよい。
◇海外拠点は持っておらず、今のところ海外への展開の予定はない。今後、国内において中国料理以外のイ
タリア料理等への顧客拡大で、英語・イタリア語ができる人が必要になるかもしれない。
◇インターンシップを受け入れることはあるが、実績では留学生は受け入れていない。
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三菱化学(株)
業種: 化学工業
海外高度人材雇用パターン
Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ
代表者
代表取締役社長: 小林 善光
ヒアリング対応者
人材・組織開発部 グループマネーシャー 吉岡 昌一
所在地
創業年次:昭和 9 年
東京都港区
URL: http://www.m-kagaku.co.jp/
資本金: 500 億円
主要製品、事業内容
機能商品、ヘルスケア、化学品
海外事業
世界各地に製造拠点、販売拠点、研究拠点を展開(現地法人、合弁含む)
。
雇用パターン別
海外高度人材の活用
パターンⅠ(In-In)
従業員数: 24,705 名(連結)
他の研究開発・製造・販売
三菱化学籍 36 名、出身国多数。
別にミッション別特別雇用あり。
パターンⅡ(Out-In) 必要に応じて実施されている。
パターンⅢ(In-Out) 必要に応じて実施されている。
パターンⅣ(Out-Out) 多数の海外拠点で、現地人が多数採用されている。
三菱化学(株)の海外高度人材に対する取り組みの特徴
(1)大都市圏の大手化学企業である。海外高度人材の活用はかなり以前から行っていたが、正社員としての
採用は約 10 年前から始めた。
(2)基本は国籍に関わらず優秀な人材を採用することである。採用ルートは海外研究機関からの招聘、国内
外大学からの直接採用等、国内外を問わない。新卒も経験者も問わない。業務に必要か、必要な能力
を備えているかが、採用基準である。
(3)国内大学修了者、日本語能力のある海外大学新卒者は日本人と同じ待遇とする。正社員は日本人と全く
同じ各種研修を受ける。正社員には長期勤務を望む。
(4)社員雇用ではなく、特別なプロジェクトや短期業務などに期間限定で活用することもある。
(5)職務によっては日本語が分からず、英語等のみの人材もいるが、日本人側で対応する。
(6)嘱託社員も含めた外国籍社員のグローバルネットワークミーティングを社内に設置している。
(1)海外高度人材の活用状況
◇現在、三菱化学籍の国内業務の海外高度人材は 36 名である。内留学生は 24 名(In-In)。
海外の関連会社を含めた海外採用・海外勤務(Out-Out)は非常に多い。
日本と海外拠点間の海外高度人材の異動も、普通に行われている(Out-In、In-Out)。
◇In-In スタッフの出身国は、中国(16 名)、韓国(7 名)、インド(4 名)
、ASEAN(インドネシア、マレーシ
ア)
(各 1 名)
、その他米国、ロシア、スリランカ、カナダ、フランス、香港等である。うち、正社員は 24
名で、処遇は日本人と同じである。他に嘱託社員(ミッションを持って採用され、処遇もミッションに従
って決める)が 10 名以上在籍している。
◇主な勤務(任用)先は、国内・海外、国際間異動等のすべてのパターンで活用している。職種は、技術、
情報、事務部門職、また配属分野は、研究、生産技術、事務部門、人事部門にまたがる。
(2)海外高度人材採用のポイントと活用メリット
◇以前より様々な形で外国人社員を活用していたが、正社員としての積極的採用は約 10 年前から実施してい
る。基本は、外国人を特別に採用するということではなく、国籍に関わらず優秀な人材を採用するという
51
考え方による。業務に必要か、必要な能力を備えているかが採用基準である。国内大学でも、留学生は優
秀者が多い。新卒、海外大学の研究者、海外研究機関の研究者を採用している。海外社員を特別視してい
るわけではないが、結果として将来の海外勤務要員となる可能性はある。
◇海外高度人材の活用によって、組織内の国際化が進展する、特に留学生は異文化コミュニケーション能力
が高いので組織に良い影響を与えている等のメリットがある。
◇海外に現地法人、営業所、研究開発拠点を持ち(形態は現地法人、合弁を含む)、子会社を含めて今後も積
極的に海外展開を行う。国、事業内容、規模は拡大方向にある。
(3)海外高度人材活用の課題
◇採用ルートについては、以前は研究の立場で、関係の深い海外の研究機関からの招聘、という形を取って
いた。これは現在もあるが、それ以外に、直接国内外の大学からの採用も増えてきている。海外での人材
探しについては、大学のレベル、応募者の探索等、情報が十分にないことから苦労している面がある。現
在は、外部専門機関を使ったコンタクトも行っている。
◇国内大学留学生であれば日本語の語学カに問題はない。アジア系の場合、英語よりも日本語が得意という
人材も多い。処遇や業務内容も日本人と全く同様の扱いとしている。中国を中心とするアジアの大学から
の直接新卒採用を始めているが、日本語能力があることを前提として採用し、処遇も日本人新人と全く同
等とする予定である。
◇英語がコミュニケーションの主体という前提で入社した場合は、基本的には社内でも採用目的に沿い、英
語で問題のない職場に配置されるが、細かいところでコミュニケーションギャップが生じる可能性はある。
それでもグローバルビジネスの拡大が課題である同社にとっては、外国人の活躍は良い影響を与えている
と考える。
◇海外拠点のマネジメントに現地の人が就く場合は当然あるが、日本国内のグループ会社で外国人の役員の
例もある。
◇欧米系の人で子供の教育で悩んでいる例がある。インターナショナルスクールの費用は外国人駐在員レベ
ルを対象として設定されているので、日本水準の給与では負担が大きく厳しい。
◇生活環境問題は大なり小なりあるようだが、現勤務者に限れば大きな障害とはなっていない。郊外の研究
センター等は居住環境が整備されており、特に問題はない。
(4)海外高度人材に対する支援策
◇嘱託社員等も含めたネットワーク構築を目的として、昨年より、日本に勤務する外国籍社員を集めたグロ
ーバルネットワークミーティングを開始した。その場において企業情報の提供、横のネットワークの構築、
同社への要望の吸い上げ等を実施している。
◇基本的に日本語が堪能とはいえ、社内規則、手続き、安全教育等、細かい日本語規定等の伝達に関しては
苦労する面もある。人事手続き書類の英訳を行いデータベースとして社内公開している。
(5)今後の海外高度人材採用方針
◇引続き優秀者がいれば採用する。中国の大学からの直接採用は進んでいるが、今後は中国以外の国の大学
からの直接採用も検討していく。
◇大学・大学院生インターンシップは定期的に受け入れている。
52
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富士通(株)
業種: 情報通信機械器具製造業
海外高度人材雇用パターン Ⅰ、Ⅲ、Ⅳ
代表者
代表取締役会長 兼 社長 間塚 道義
ヒアリング対応者
人事部人材採用センター担当課長 高野 恭子
所在地
神奈川県川崎市
URL: http://jp.fujitsu.com/
資本金: 3,246 億 2,507 万 5,685 円
従業員数: 26,102 名単独
同社のグループは IT 分野において、最先端かつ高性能、高品質を備えた強いテク
ノロジーをベースに、品質の高いプロダクト、電子デバイス及びこれらを活用し
た各種サービスの提供によるトータルソリューションを提供。
世界でも有数の IT ベンダーであり、現地法人等多数。
創業年次:昭和 10 年
主要製品
事業内容
海外事業
雇用パターン別
海外高度人材の活用
パターンⅠ(In-In)
中国人、韓国人など約 250 名。
パターンⅡ(Out-In)
パターンⅢ(In-Out) 少ない。
パターンⅣ(Out-Out) 現地法人等で多数就業している。
富士通(株)の海外高度人材に対する取り組みの特徴
(1)同社の方針として多様な人材の活用を積極的に進めることにしており、外国人も毎年採用数の1割程度
の実績がある。
(2)理系の採用は学校推薦が多いが、文系は公募による学部卒が多い。
(3)採用、その後の処遇で日本人と区別はしない。国内外の転勤も有る。
(4)採用部門として入社 2 年目に全員面談を行い従業員の状況を把握する仕組みがあり、入社後も各人事部
門と連携をとりながら、フォローを行っている。
(5)日本語教育、社内イントラネットなどでのコミュニケーション向上などを行っている。
(1)海外高度人材の活用状況
◇(採用・配属パターンⅠ In-In について)大卒以上の採用が基本で、現在約 250 名(単独ベース)であ
る。日本の大学からの留学生採用がほとんどで、海外からの採用は数名程度。中国出身者が一番多いが、
最近は出来るだけ多様な国の方を採用している。
先輩が勤務しているかどうかが就職先を選ぶポイントになっているようで、採用実績のある大学からの採
用が多くなる傾向にはあるが、同社としては優秀な人材を幅広く求めていきたい。
◇理系の採用が多く大体 6 割。理系は大学院がメイン。研究・開発の仕事に配属する例が多いが、営業や SE
など顧客対応の仕事にも配属している。
◇文系は学部卒が多い。営業・SE や事業スタッフ系の配属が中心となる。
(2)海外高度人材採用に至った背景
◇比較的早い時期から外国人の採用を行ってきたが、ここ 5 年ぐらいで採用数が増えてきた。少子高齢化や
理工系離れによる人材不足ならびにビジネスのグローバル化やダイバーシティの推進を背景として増やし
てきた。
◇現在、理系の採用はほとんど学校推薦。文系は、日本人同様、会社説明会などに参加したうえでの応募と
なっている。自社の説明会には多いときで 1 日 100 名前後の学生が参加してくれている。
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(3)海外高度人材採用のポイントと活用メリット
◇基本的には、外国人にも日本人と同じ仕事をしてもらって、日本の社員と同じように処遇している。国内
の事業所や将来的には海外拠点への派遣も行っているが、入社時から海外への派遣(In-Out)は実績として
ない。まずは国内で経験を積んでもらうことが前提。
◇外国人の定着率は比較的良いと思う。ただ、大量に採用を始めたのはここ 5 年のことなので、これから退
職が多くなる可能性は否定できない。最初は、外国人と机を並べて仕事をすることに慣れず、違和感を持
つ職場もあったようだが、今は当たり前になってきた。若手社員の海外への研修派遣も積極的に行ってい
る(新聞で報道された)。
(4)海外高度人材活用の課題
◇ビザの手続において、A 地ではビザが下りたのに B 地では同じ書類でもビザが下りなかったケースを幾つ
か経験している。
◇ビザの手続きをスピーディに行ってほしい。
(採用日までに間に合わないケースもある)本社は問題がない
が、グループ会社ではビザ申請は大変だと聞いている。
(5)海外高度人材の処遇
◇処遇はまったく日本人社員と同様である。ただ、日本語が問題になるケースは散見される。とくに顧客対
応が必要な営業・SE 部門では、日本語能力は必須。日本人社員とほぼ同様の日本語能力を求めている。反
面、研究・開発職はこの限りではない。英語での文献などを仕事で多用していることもあり、日本語能力
はそれほど問題にはなっていない。
◇外国人は日本人に比べて明確なキャリアパスを求める傾向にある。職場もそこを意識して育成計画を立て
ていかないと、早期離職につながる恐れがある。
(6)海外高度人材に対する社内支援策
◇海外拠点と人材交流も行っており、これからはだんだん増えていくだろう。海外拠点から日本に人材を送
り、研修を受けさせたり多様な経験を積ませてから現地に戻すことによって、文化を理解したり人脈形成
に役立つなど、ビジネスの円滑化に役立っている。ただし、あくまでも「育成」が目的の大部分を占めて
おり、海外から国内への転勤(パターンⅡ Out-In)という位置付けではない。
◇配属後の日本語力に関しては、課題を持っている。顧客とのコミュニケーションでうまくいかない事例も
あり、現在は内定期間中に日本語研修を行い、少しでも日本語レベルをあげる取組みを行っている。
◇社内のコミュニケーションを図るために、イントラネットを利用して、規程や各種文書、フォーマットの
英語化を行っている。また、場合によっては環境への適応や住居などの生活サポートも行うようにしてい
る。
(7)今後の海外高度人材採用方針
◇毎年の新人採用の 1 割程度は、外国人を採用するようにしていきたい。勿論「質」ありきの採用が前提。
そのうえで国籍や学校にこだわることなく、多様な人材を採用していく。
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平成 21 年度地域活性化推進事業
東アジアと九州を繋ぐブリッジ人材醸成のための
留学生等海外高度人材活用方策調査
企業における海外高度人材活用事例集
平成 22 年 3 月
経済産業省 九州経済産業局
国際部 投資交流促進課
〒812-8546
委託先:
福岡市博多区博多駅東 2-11-1
電話 092-482-5426
株式会社三菱化学テクノリサーチ
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