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報告書サマリー(PDF形式:1935KB)
クリエイティブ産業に係る知的財産権等の侵害実態調査
及び創作環境等の整備のための調査
報告書サマリー
株式会社野村総合研究所
〒100-0005
東京都千代田区丸の内1-6-5 丸の内北口ビル
1.クリエイティブ産業の定義・外縁
2.クリエイティブ・シティ
3.デザインと経営
4.クリエイティブ産業個別分野
Copyright © 2011 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
1
1.クリエイティブ産業の定義・外縁
我が国におけるクリエイティブ産業の定義
 我が国におけるクリエイティブ産業の定義は以下とする。
 「クリエイティブ産業」は、価格ではなくクリエイティビティの付加価値によって市場から選択されるモノ・コト・ヒトからなる。
 「クリエイティビティ」とは、個人的・組織的な製品(モノ)の製造・流通プロセス及びサービス(コト)の提供プロセスにお
いてなされる独創的または固有のインプットのことであり、また個人(ヒト)が人的資源として保有するそのようなスキ
ル・才能のことをいう。なお、「独創的または固有のインプット」とは、芸術的・文化的・知的・伝統的・革新的な取組を含
む。
“Creative Industries” consists of goods, services, and workforce whose market competitiveness lie not so much
in price but in added value of creativity.
“Creativity” here means original or unique endeavors which result from an individual or organizational process
of production, offering, and distribution of goods and services, and such skill and talent that a person has as a
human resource. “Original or unique endeavors” include artistic, cultural, intellectual, traditional and innovative
activity.
(ポイント)
▪ クリエイティブ産業の核がクリエイティビティに係るインプットにあることをより正面から捉え、定義した。
 クリエイティビティの要素が大きければ、理論的にはすべての産業がクリエイティブ産業になる可能性がある。
 製品やサービスの種類といったアウトプットの外形によってクリエイティブ産業に該当するか否かを議論するこ
とは本質的な議論ではないと考えられる。
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2
1.クリエイティブ産業の定義・外縁
(参考)各国・各機関におけるクリエイティブ産業の定義
(1)イギリスのDCMS(文化・メディア・スポーツ省)における定義(1998年)
 クリエイティブ産業とは、個人の創造性、技能、才能に由来し、知的財産の生成や活用を通じて富や雇用を創出する
潜在力を持つ産業のことである。
(出所)DCMS「Creative Industries Mapping Document 1998」(クリエイティブ産業に関する初めてのレポート)
(2)UNESCO(国際連合教育科学文化機関)における定義(2006年)
 クリエイティブ産業という用語は、文化産業のみならず全ての文化的または芸術的な生産活動に係る広範な活動を網
羅する。クリエイティブ産業とは、芸術的または創造的な要素が相当程度に盛り込まれた製品やサービスであり、建築
や広告のような活動を含む。
(出所)UNESCO「Understanding Creative Industries Cultural statistics for public-policy making」
(3)UNCTAD(国際連合貿易開発会議)における定義(2008年, 2010年)
 クリエイティブ産業とは、
▪ 創造性や知的資産を第一義的なインプットとして活用した製品・サービスの制作・製作・流通に関わる一連のサイ
クルである
▪ 貿易や知的財産権からの収入を生み出す潜在力のある一連の知的な活動からなり、アートに焦点が当たるがそ
れにとどまらないものである
▪ 有形の製品及び無形の知的または芸術的サービスであって、創造的な内容、経済的な価値、そして市場ニーズ
をともなうものである
▪ 職人技、サービス、そして産業が交差するところにある
▪ 国際貿易において新しくて活力に満ちた産業セクターを構成する
(出所)UNCTAD「Creative Economy Report( 2008年, 2010年)」
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3
1.クリエイティブ産業の定義・外縁
我が国におけるクリエイティブ産業の分野
 我が国におけるクリエイティブ産業の中核を担うと考えられる
具体的な産業分野は、右記の9分野とする。
 クール・ジャパン官民有識者会議(2010年11月~2011年
5月、全8回)では、クール・ジャパンの海外展開について
「ファッション」、「食」、「コンテンツ」、「地域産品」、「すまい」、
「観光」の6分野が対象となっている。
 「イギリスDCMS」、「UNCTAD」、「オーストラリアCentre
for International Economics」の先行事例を基に、上記6
分野に「広告」、「アート」、「デザイン」の3分野を加え、9分
野を我が国におけるクリエイティブ産業の大分類とした。
 日本人のこれまでの長い歴史の中の生活実感によって育まれ、
選択されてきた、日本のライフルタイル・価値観を体現している
モノ・コト・ヒトに係る産業(衣・食・住・エンターテインメントに係る
産業))が、日本におけるクリエイティブ産業の中核を担っている。
(ポイント)
▪ ただし、この9分野の抽出は、当該産業分野のみがク
リエイティブ産業であり、これら以外はクリエイティブ
産業に該当しないとする趣旨ではない。
▪ クリエイティブ産業はクリエイティビティのインプットに
着目されるべき産業であり、従って理論的には全て
の産業がクリエイティブ産業となりうる。
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大分類
①ファッション
②食
③コンテンツ
④地域産品
⑤すまい
⑥観光
中分類
・繊維・素材
・アパレル
・美容・コスメ
・外食
・農水産物
・加工食品
・食器・調理器具
・映画・映像・放送(アニメ含む)
・音楽
・出版(マンガ含む)
・ゲーム
・ソフトウェア
・伝統工芸品
・建築
・インテリア
・ホテル・旅館
・観光地・観光施設
・代理店
⑦広告
⑧アート
⑨デザイン
4
1.クリエイティブ産業の定義・外縁
(参考)各国・各機関におけるクリエイティブ産業の分類との比較
項目を
含む数
繊維・素材
0
アパレル
2
美容・コスメ
0
外食
0
農水産物
0
加工食品
0
食器・調理器具
0
映画・映像・放送(アニメ含む)
3
日本
①ファッション
②食
③コンテンツ
④地域産品
⑤すまい
⑥観光
イギリス
UNCTAD
-
・designer fashion
-
-
-
-
-
・film and video
・television and radio
-
・Design(fashion, jewellery)
-
-
-
-
-
・film, television and radio
・music
・Audiovisuals(other broadcasting)
・Performing arts (live music)
・music
・publishing
・Publishing and printed media
・writing, publishing and print media
・Design(toys)
・New media(software, video games
and digitalized creative content)
・Traditional cultural expressions(art crafts)
・Creative services(architectural)
・Design(interior)
-
・Traditional cultural expressions(festivals
and celebrations)
・Cultural sites(archaeological sites)
-
・Creative services(advertising)
・Cultural sites(museums, libraries, exhibitions)
・Visual arts
・Creative services(cultural)
・Performing arts
・Design(graphic)
・Creative services(recreational, creative research
and development (R&D), digital and other related
creative services)
・interactive content
音楽
3
出版
(マンガ含む)
ゲーム
ソフトウェア
3
3
3
・interactive leisure software
伝統工芸品
建築
インテリア
ホテル・旅館
観光地・観光施設
2
3
1
0
1
・crafts
・architecture
代理店
0
3
3
・software and computer services
-
-
-
・advertising
・art and antiques market the
performing arts
⑨デザイン
日本にない項目
3
-
-
-
-
-
-
-
・Audiovisuals(film, television, radio)
-
⑦広告
⑧アート
オーストラリア
・design
1
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-
・software development
-
・architecture
-
-
-
-
・advertising and marketing
・visual arts
・performing arts
・design
-
5
1.クリエイティブ産業の定義・外縁
我が国におけるクリエイティブ産業の市場規模
 我が国におけるクリエイティブ産業の分野と日本標準産業分類細分類を突合し、クリエイティブ産業に該当する細分類を抽
出し、各種統計を活用(一部推計の実施)し、市場規模を算出した。
 なお、以下の4点を「クリエイティブ産業に該当するか、否か」の判断根拠とした。
①クリエイティブ産業9分野に該当する
②「既に海外に輸出されている(外国人が来日した時に購入する)割合が少なくない」、「日本の固有の文化に基づいて
いる」、「各国と比較して含むことが標準的である」のいずれかに該当する
③それ自体が競争力を持って販売されている
▪ 競争力のある製品を作るための材料は含まない。ただし、材料自体が最終製品として競争力を持ち、
輸出されている場合は組入の対象とする。
④日本標準産業分類での具体例のほとんどすべてが、①~③の条件を満たしている
 ただし、「クリエイティブ産業の中核を担うと考えられる産業分野の市場規模」であることに留意が必要である。
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1.クリエイティブ産業の定義・外縁
我が国におけるクリエイティブ産業の市場規模(大分類)
 クリエイティブ産業9分野の市場規模は、約64.4兆円であると試算された。
 分野別では、「食」が約13.9兆円と最大であった。次に「すまい」12.5兆円、「コンテンツ」11.4兆円、「広告」9.8兆円、「観光」
7.8兆円と続く。
 なお、「デザイン」は「デザイン業」の規模を算出しているが、インハウスデザイナー、副業デザイナーは含まれておらず、
実際はより大きな市場規模になると考えられる。
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出所)野村総合研究所作成
7
1.クリエイティブ産業の定義・外縁
我が国におけるクリエイティブ産業の市場規模(中分類)
 市場規模の内訳は以下のとおりである。
大分類
市場規模
繊維・素材
0.5
アパレル
2.0
美容・コスメ
3.8
外食
5.2
農水産物
1.2
加工食品
6.2
食器・調理器具
1.4
映画・映像・ラジオ
5.5
音楽
0.2
出版
4.9
ゲーム
0.1
ソフトウェア
0.6
④地域産品
工芸品
0.6
⑤すまい
建築
①ファッション
②食
③コンテンツ
⑥観光
Copyright © 2011 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
中分類
10.7
インテリア
1.8
ホテル・旅館
2.8
観光地・観光施設
0.5
代理店
4.5
⑦広告
9.8
⑧アート
1.6
⑨デザイン
0.4
出所)野村総合研究所作成
8
1.クリエイティブ産業の定義・外縁
クリエイティブ産業9分野の市場規模「約64.4兆円」の妥当性の検証①
(1)過去類似調査結果との比較
 過去の類似調査結果によれば、2004年におけるクリエイティブ産業全体の売上高は約45兆2,355億円と推計されている。
(過去の類似調査における対象業種)
 製造業(家具/繊維・アパレル/皮革製品/食器/玩具/ジュエリー/工芸/文具)
 サービス業(コンピューターソフト・サービス/広告/出版/建築デザイン/TV・ラジオ/音楽・ビデオ/映画/舞台芸術/デザイ
ン/アート)
 クリエイティブ産業9分野の市場規模と比較すると、およそ20兆円程度少ない結果であったが、そもそも対象業種が上記業
種に限定されており、本調査で新しく定義されたクリエイティブ産業に基づく業種とは異なっていることに拠る。
 特に、21.8兆円程度の市場規模と推計された「食」や「観光」関連産業が前回の調査では含まれていない。
 「食」や「観光」以外でも対象業種(細分類)の違いはあるものの、前回の調査と比較しても、クリエイティブ産業9分野の市場
規模が64.4兆円程度という結果は妥当な数値であると推察される。
前回調査結果
今回調査結果
約45.2兆円
平成21年度中小企業支援調査(生活
文化産業支援のあり方に関する調査)
約64.4兆円
「食」や「観光」関連産業の追加
クリエイティブ産業9分野の市場規模
(市場規模:21.8兆円程度と推計)
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1.クリエイティブ産業の定義・外縁
クリエイティブ産業9分野の市場規模「約64.4兆円」の妥当性の検証②
(2)他国との比較(イギリスとの比較)
 イギリスは全付加価値額に占めるクリエイティブ産業の付加価値額の割合を算出している。2009年時点では、クリエイティ
ブ産業が占める割合は2.89%であった(次ページ参照)。
 一方、今回実施した市場規模算出の手法で、日本全体の売上高(出荷額ベース)を算出するとおよそ1,326兆円となる 。
従って、今回のクリエイティブ産業9分野の市場規模64.4兆円程度は全体のおよそ4.85%となる。日本の場合、イギリスと
異なり、「食」や「観光」さらには「住まい」関連産業が含まれていることからも、妥当な数値であると推察される。
(参考)他産業との比較
 参考までに、他産業との比較を行った。同様の手法で各産業の市場規模を算出した結果は以下のとおりである。
 農業
: 8兆円
 金融業
:98兆円
 鉄鋼業
:16兆円
 自動車(部品業含む) :42兆円
 医療福祉業
:42兆円
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1.クリエイティブ産業の定義・外縁
(参考)イギリスにおけるクリエイティブ産業の付加価値額
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1.クリエイティブ産業の定義・外縁
市場規模算出に当たっての現状の課題①
(1)日本標準産業分類の項目がクリエイティブ産業の定義になじまない
 現時点で最も活用できる産業分類は、日本標準産業分類のみである。
 しかし、細分類の事例として挙げられている具体的な製品の中には、市場規模の算出対象とならないものが混在する
ケースが数多く存在した。
▪ これは、現行の産業分類が製品・サービス等の外形的種類(アウトプット)によって分類するものであり、インプッ
トに着目しているクリエイティブ産業の基本的な考え方とは乖離しているためである。
 現行の産業分類ではクリエイティブ産業の正確な市場規模を算出することは難しいと考えられる。
(2)日本標準産業分類の項目に基づいた売上高に関する統計が散在している
 日本標準産業分類の細分類全てにおいて、数値は必ずしも把握されていない。
 工業統計、商業統計をはじめ、数値情報が様々な統計に散在しており、調査方法、売上高の定義、調査年度も統計に
よって異なる。
 複数の統計を活用し、日本のクリエイティブ産業全体の正確な市場規模を算出することは難しいと考えられる。
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1.クリエイティブ産業の定義・外縁
市場規模算出に当たっての現状の課題②
(3)付加価値の算出ができない
 日本標準産業分類細分類の市場規模を足しあわせ、クリエイティブ産業9分野の市場規模としたが、この方法の場合
、各産業のダブルカウント分が含まれてしまう。
 この問題を避けるべく、可能な限り最終製品に近い細分類項目のみを市場規模算出の対象にするなどの対応を図っ
たが、統計の限界もあり、これ以上の精緻化は難しいと考えられる。
今回の算出方法(イメージ)
+
米作農業
+
望ましい算出方法(イメージ)
+
精米・精麦業 米麦卸売業 日本料理店
+
米作農業
+
+
精米・精麦業 米麦卸売業 日本料理店
(3)調査実施時期のずれが生じている
 今回使用した統計は、調査が数年おきに実施されるものもあり、毎年の更新、調査実施年の統一を行うことは難しいと
言える。
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1.クリエイティブ産業の定義・外縁
今後の方策 ~市場規模の算出において先行しているイギリスの取組みの紹介~
 イギリスDCMSは、過去10年以上にわたり、クリエイティブ産業の市場規模算出に向けた統計整備に関する調査・研究を継
続しており、2007年以降、毎年「Creative Industries Economic Estimates」を公開している。本レポートではイギリスのクリ
エイティブ産業13分野ごとに以下の情報を公表している。
 GVA(Gross Value Added:付加価値合計)
 従業員数
 企業数、事業所数
 なお、従業員数に関しては、13分野ごとに産業と職業のマトリックスを作成、該当する数値を公表している。
産業
クリエイティブ産業
その他
クリエイティブ業
Creative Employment within
Creative Industries
Employment in businesses
outside Creative Industries
その他
Support Employment within
Creative Industries
―
職業
 今後は、先行事例を参考に、日本の統計や各国のクリエイティブに関する統計に関する詳細な調査を行うとともに、より精
緻な市場規模を算出できる統計のあり方について、検討を行う必要がある。
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1.クリエイティブ産業の定義・外縁
クリエイティブ産業政策の目的
 “64.4兆円”という市場規模を有するクリエイティブ産業を今後さらに強化するため、以下の2点を政策の目的とすべき。
①我が国のクリエイティブ産業に係るモノ・コト・ヒトを世界に広げることによって、それが体現している日本のライフスタイル
や価値観を世界に浸透させること
②日本がその「本場」としての地位を確立すること
※ ただし、この目的を、ビジネスに結びつけながら(お金を稼ぎながら)達成することが肝要である 。我が国のクリエイ
ティブ産業のビジネス上のポテンシャルは未だ十全に発揮されているとは言い難い。
(アウトバウンド戦略としての目的)
 「クール・ジャパン」は既に海外で一定の人気を獲得して
いるが、その人気が収益に結びついているとは言えない。
「クール・ジャパン」のマネタイズを可能とし、ビジネス的に
持続可能な形でクリエイティブ産業の海外展開が推進さ
れるようにするべきである。
 日本のライフスタイル・価値観を体現した製品・サービス
が、価格ではなくまさにそのライフスタイル・価値観によっ
て海外の消費者から継続的に選択されることにより海外
の生活者に浸透していくことは、単なる市場シェアの獲得
を超えたレベルにおいても、世界における日本のプレゼン
スを発揮する上で戦略的重要性を持つ。日本各地域の活
性化にもつながることが期待される。
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(インバウンド戦略としての目的)
 世界ではクリエイティブ・シティと呼ばれる都市が注目され
ており(ニューヨーク、ロンドン、ボローニャ等)、旺盛な発
信力により国外における人気を継続的に高めるとともに、
その人気を、発信源としての「本場」感の醸成にまで昇華
して外部から人を呼び込み、外需をも取り込んで成長して
いる例が見られ、日本でも同様の取り組みが進んでいる。
「クール・ジャパン」はまだまだ日本各地に眠っており、そ
の掘り起こし、発信の強化も通じて、「本場」感を醸成して
いくことが今後一層必要である。
※さらにクリエイティブ産業は若年層の雇用・就労のための一つの
ルートとして機能するとも考えられる。
15
1.クリエイティブ産業の定義・外縁
2.クリエイティブ・シティ
3.デザインと経営
4.クリエイティブ産業個別分野
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2.クリエイティブ・シティ
クリエイティブ・シティとは
従来型の地域活性化手法
取組例
目的
取り組み
ものづくりによる活性化
(工場の誘致)
工場の誘致による税収の増加や雇用の拡大
企業に対し、多額の補助金の交付、税制優遇
措置の実施、インフラの整備
知的クラスターの形成に
よる活性化
新しい産業の創出による税収の増加や雇用
の拡大
バイオやIT分野など技術革新が起こりやすい
産業の集積またはベンチャー企業の育成
自治体によるまちおこし
(地域資源の活用)
商品の販売、観光客・移住者の呼び込み
地域固有の資源の再発見、その魅力を外部
に発信、製品化・ブランディングの実施
新たな地域活性化手法~クリエイティブ・シティ~
 クリエイティブ・シティでは、
『地域固有の文化的資源を核として、地元の住民が参画し、またはその魅力を求め、外部から多様な人材や企業が集
まり、これらを活用することにより、当該地域において新たな産業や観光産業の発展につながること』 が期待される。
▪ この都市の核となる文化的資源は、各地域によって異なっており、魅力的な街づくりのあり方も異なる。
▪ 近年、日本各地で美術館や廃校、空き家、町家をクリエイターやアーティストの創造拠点や観光拠点、観光拠点
として組成する取り組みが進展している。こうした取組は地域の食、伝統、文化、観光をはじめとする各種産業と
結びつき、コミュニティの活性化、移入人口の増加、産業の活性化につながりつつある。
 なお、経済産業省は、「クール・ジャパン」に代表されるアウトバウンド戦略を補完する新たなインバウンド戦略として、
海外需要を地域に呼び込むための拠点としての「クリエイティブ・シティ」の創出を推進しているところである。
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2.クリエイティブ・シティ
クリエイティブ・シティ形成の方向性
 クリエイティブ・シティ形成に向けては、自治体、伝統産業(地元企業)、文化施設、地域住民が外部のクリエイターや
プロデューサー、観光産業、企業、大学などと連携しながら、地域産品や自然・歴史という資源を活用していくことが重要で
ある。
ステークホルダー
資源
(濃い色のものは主体)
外部
ク
リ
エ
イ
テ
ィ
ブ
・
シ
テ
ィ
外部のクリエイター、
観光産業
プロデューサー
企業
地域固有
自治体
伝統産業
(地元企業)
住民
文化施設
地域産品
自然・歴史
教育機関
出所)野村総合研究所作成
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2.クリエイティブ・シティ
クリエイティブ・シティ形成の実現に向けた具体的な打ち手①
 我が国でも文化的資源を活用し、地域が活性化している事例がいくつか挙げられる(例:石川県金沢市、岡山県直島町、
徳島県神山町)。クリエイティブ・シティの形成のためには以下の6点の要素を満たす必要がある。
(1)外部人材(クリエイター、プロデューサー)の誘致
 クリエイティブ・シティにおいて、「外部からのクリエイターやプロデューサー」が重要な役割を担う。地域の特性に
あった外部人材をどのように誘致するかが重要である。
(外部人材の役割)
① 外部からの視点で地域固有の資源の希少性や高付加価値性の目利き
② 既存の地域資源を国内・海外マーケットに適合する形に改良
③ 多岐にわたる産業同士と住民、自治体を結びつけて活動を一体化させるための媒体
④ 連携した場・拠点において、クリエイター同士または地域の代表的な企業とコラボレーションし、
新たなイノベーションを創出
⑤ 次のプロデューサー世代の育成
 さらに、これらの外部人材を呼びこむためには、必要な人材にリーチできるネットワークの構築も必要となる。
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2.クリエイティブ・シティ
クリエイティブ・シティ形成の実現に向けた具体的な打ち手②
(2)多様な主体の参画と拠点の存在
 住民、NPO、企業、経済界など、行政も含め、多様なプレイヤーがクリエイティブ・シティを作るという目標を共有し、
各プレイヤーが継続的に集まれるプラットフォームの整備が必要である。
【具体的な打ち手】
① 民間、NPO、市民団体などへのプラットフォーム運営の委託
 行政機関よりもその地域の住民やNPOの方が、住民や産業との連携促進に効果的な場合が多い。
▪ PFI方式や指定管理者制度の活用も効果的である。
② 金融支援(地銀、信金による融資環境、ファンドの創設等)
 NPOや中小企業にとって、運営資金の不足が事業拡大を進める障害となる。そのため、きめ細かな対応ができ、地域
組織に関して与信能力、経営への助言の能力が高い地方銀行や信用金庫が融資できる環境を整える。
▪ 自治体がファンドを立ち上げ(例:アーツカウンシル)、組織に対して中長期的な支援を行うことも効果的である。
③ リノベーション(廃校、町家等)によるプラットフォーム形成
 既にある施設をリノベーションし、様々な人々が集まり、活動することのできる場を作る
▪ 廃校のリノベーション:学校は地域との結びつきが強いため、リノベーション後の施設にも住民が親近感を持つ。
神山町では、昭和4年に建て
られた劇場「寄井座」を復元
し、新たな拠点として活用
出所)イン神山ホームページ
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2.クリエイティブ・シティ
クリエイティブ・シティ形成の実現に向けた具体的な打ち手③
(3)自治体のコミット
 先に掲げた目標を確実に達成するために、自治体もクリエイティブ・シティ創出に向けたコミットメントを打ち出す必要
がある。
【具体的な打ち手】
① 規制緩和(または強化)
 これまでのまちづくりにおいて有効であった規制が障害となる場合もある。国や自治体はこのような規制を積極的に緩
和(リノベーションに伴う法令の緩和および補助金、税等)し、各プレーヤーが効果的に機能できるように促すことが有
効である。一方で、街並みや建築の保存など、規制強化が有効な場合もある。
② 有望な組織への継続的な助成
 現状の助成事業の多くは単年度事業であり、用途も明確に限定されている場合が多い。今後、クリエイティブ・シティの
担い手(NPO等)を育成するためには、当初は事業助成を行い、そのプロセスの中で組織のポテンシャルを見極め、
有望な組織に対しては、適宜、事業助成から組織助成による支援に切り替えるなど、柔軟な対応も必要である。
③ 政策のストックができる仕組みの構築
 自治体の職員は定期的な異動により、ノウハウが蓄積されない場合が多い。各自治体、海外の取組をストックできる「
シンクタンク機能」を設け、中長期目線で政策を形成し、定点的にその成果を検証し続けることが必要である。
④ アクションプランの作成とモニタリング指標の設定
 自治体はクリエイティブ・シティのゴールイメージおよび短期・中期のアクションプランを設定し、行政のなかでクリエイ
ティブ・シティを進めていくというコミットメントを行う。
 モニタリング指標を設定し、一定のタイミングで成果を確認、アクションプランを改訂していくことも必要である。
Copyright © 2011 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
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2.クリエイティブ・シティ
クリエイティブ・シティ形成の実現に向けた具体的な打ち手④
(4)地域固有の資源の産業化(地域の食や伝統工芸・歴史、自然環境の産業化)
 地域固有の資源から、特に競争力のあるものを見出し、それらを産業化することで経済的な成果を生み出すことが
必要である。
▪ 経済的な成果は、資源の魅力の強化や、外部人材の誘致、多様な主体の参画と拠点の整備などに再投資する
ことで、クリエイティブ・シティ形成に向けての好循環を生み出すことができる。
金沢の数々の伝統工芸
出所)金沢市ホームページより野村総合研究所作成
Copyright © 2011 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
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2.クリエイティブ・シティ
クリエイティブ・シティ形成の実現に向けた具体的な打ち手⑤
(5)リーダーが育つ環境の整備(プロデューサー人材の育成)
 外部から人材を呼びこむだけではなく、自立的かつ継続的にプロデューサーやクリエイターとなる人材を育成する
ことが必要である。
▪ 行政がトップダウンで育成するというより、学びたい者が学べる環境・仕組みを行政が整えることが重要である。
▪ 若手の育成が重要であるとともに、中堅クラスをリーダーにふさわしい人材として育てる教育機会の付与も必要
である。
金沢美術工芸大学の組織図
出所)金沢美術工芸大学ホームページ
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金沢職人大学校のコース
出所)金沢美術工芸大学ホームページ
23
2.クリエイティブ・シティ
クリエイティブ・シティ形成の実現に向けた具体的な打ち手⑥
(6)未来志向のムードの醸成
 クリエイティブ・シティを創出し、長期にわたってクリエイティブ・シティを継続させることを打ち出すための取組を実施す
ることが必要である。
【具体的な打ち手】
① 都市のブランド戦略の発信
 自治体のトップは、国内外に向け、積極的に自分たちの都市の魅力、他都市と差別化できる部分を明確に示すべきで
ある。また、自治体の住民に対しても、クリエイティブ・シティの実現による姿と効果を具体的に示すことも重要である。
② メディアと一体になったPR
 クリエイティブ・シティ形成にかかる活動に地元のメディアが協力することで、様々な活動がメディアに取り上げられるこ
とになる。それに触れた住民のクリエイティブ・シティの認知度は高まり、積極的に活動に参加することも期待される。
また、住民の認知度が高まれば、経済界も政策に協力するインセンティブが高まる。
③ 継続性のあるイベントの実施
 世界では建築、デザインなど様々な分野においてビエンナーレ、トリエンナーレ と呼ばれる取組が行われている。
 これまでのような一過性の取組ではなく、継続性を前提とした取組であり、地域に祝祭性をもたらす。同時に、住民や
関係者に対してそのイベントが、「今後も同様の取組が継続的に行われる」という未来志向のメッセージを送ることがで
きるという点でも効果的である。
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24
2.クリエイティブ・シティ
クリエイティブ・シティ形成に向けた国レベルでの横断的な施策
 今後、クリエイティブ・シティを創出するため、政府もクリエイティブ・シティ形成に向けた施策を実施すべきである。
政府が実施すべき施策
具体的な打ち手と
の対応関係
Ⅰ
外部人材誘致のための日本に関心のある外国人クリエイターのネットワーク化、データベース化
(1)
Ⅱ
クリエイション活動の活性化のための規制緩和
(路上イベントの実施や深夜営業許可、交通規制の緩和等)
(2)
Ⅲ
金融による支援
(地銀や信金によるアイデアへの融資環境整備、ファンドの創設)
(2)
Ⅳ
国内外におけるビジネスマッチング(商談会)参加支援
(4)
Ⅴ
海外進出企業における継続的な情報発信の場の確保
(4)
Ⅵ
外国マーケットを知るプロデューサー人材の育成
Ⅶ
メディアの活用によるPR(横断的な広報活動)
(6)
Ⅷ
既存の財団や独立行政法人を念頭に、日本を代表するジャパンクリエイティブセンター(JCC)を
設置し、JCCがクリエイティブ・シティを支援
全般
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(1)、(5)
25
1.クリエイティブ産業の定義・外縁
2.クリエイティブ・シティ
3.デザインと経営
4.クリエイティブ産業個別分野
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26
3.デザインと経営
デザインと経営に関する現状と課題
 デザインは重要な経営資源であるが、日本の経営者の多くはデザインに対する意識が低く、デザインを経営資源と捉え、戦
略的に活用できている経営者は少ない。
 米国のアップルやイギリスのダイソン、韓国のサムスン電子など、欧米や韓国にはデザインを経営戦略の一つと位置
付け、デザイン経営を進め、世界でヒット商品を生み出している。
 今後、日本企業が高付加価値化を実現し、世界市場における存在感を高めていくためには、経営戦略としてデザインを活
用していくことが必要と考えられる。
デザイン活動を実施している企業における
デザイン戦略策定の有無
デザイン活動を実施している企業における
デザイン経営に関する活動への取組状況
(N=641)
出所)「平成20年度 民間企業の研究活動に関する調査(文部科学省)」より野村総合研究所作成
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27
3.デザインと経営
課題解決に向けた施策の方向性
 日本のデザイン産業におけるプレイヤーは、「①グローバル企業」、「②地域の中小企業+デザイナー」、「③デザイン事務
所」に類型化され、プレイヤーの特徴を勘案した施策の実現が期待される。
施策1.公共分野におけるデザインの活用促進
• 公共経営(国家経営、自治体経営)におけるデザイン活用を促
進する。また、有望分野について、関係省庁と連携しつつ、デザ
イン活用が促進されるための取り組みを推進する(デザイン活
用の制約要因がある場合はその除去に向けた取組推進、調達
仕様へデザイン視点を反映させるための取組推進 等)。
施策2.有望分野におけるデザイン/デザイナーの新規活用促進
• デザイン産業の発展に向け、デザイナーの海外進出や、B2B向
けの製品・サービス開発、地域中小企業のものづくり、ファッショ
ン、ハウス・住まい(リフォーム)等の分野におけるデザイン/デ
ザイナーの新規活用を促進する。
施策3.企業経営におけるデザインの活用促進
• 企業経営におけるデザインの活用促進に向け、経営者にデザイ
ンの価値・重要性を訴求するために、以下のような「見える化」
(経営者に「刺さる」データ・事例の提示)の推進を検討する。
• 他社のデザイン活動の見える化
• デザイン経営による成功事例の見える化
• 経営におけるデザイン投資(コスト)/効果の見える化
• 海外における日本製品の現状の見える化 等
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28
3.デザインと経営
具体的な打ち手 : 施策1.公共分野におけるデザインの活用促進
 「公共分野におけるデザインの活用促進」にあたっては、以下の取り組みの実施が期待される。
【具体的な打ち手】
① 公共経営における成功事例の見える化
 公共経営においてデザインを活用した成功事例の普及を図る。
②有望分野におけるデザイン活用の制約要因の除去に向けた取組推進
 有望分野(まちづくり、医療、保育、交通、防災等)において、デザイン活用の際に制約となっている要因を調査し、関
係省庁と連携しつつ、必要に応じて、規制緩和の働きかけ、制度改正プロセスへの参画等を行う。
③ 調達仕様へのデザイン視点を反映させるための取組推進
 公共調達の基準となるデザインガイドラインを策定し、公共調達におけるデザインの活用を促進する。
新・母子健康手帳(親子健康手帳)
富山ライトレールトータルデザイン
出所)博報堂ニュースリリース
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出所)デザインと経営部会田中委員(GKデザイン機構)発表資料参照
29
3.デザインと経営
具体的な打ち手 : 施策2.有望分野におけるデザイン/デザイナーの新規活用促進
 「有望分野におけるデザイン/デザイナーの新規活用促進」にあたっては、以下の取り組みの実施が期待される。
【具体的な打ち手】
① デザイナーの海外進出の促進
 ターゲットとなる地域のマーケット分析とマーケットニーズを踏まえたデザイン開発をできるデザイナーの育成や、海外
市場における成功事例の普及等を通じて、デザイナーの海外進出を促進する。
② 有望分野におけるデザインの活用
 B2B向けの製品・サービス開発分野や、システム構築分野、製品・サービス企画分野、地域中小企業のものづくり分
野、テキスタイル分野、住宅リフォーム分野におけるデザイン/デザイナー活用を促進する。また、これらの分野におけ
るデザイン活用の成功事例の普及を図る。
産業機械(油圧ショベル) 住友建機
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大型印刷機
出所)「デザインと経営部会」田中委員(GKデザイン機構)発表資料
30
3.デザインと経営
具体的な打ち手 : 施策3.企業経営におけるデザインの活用促進
 「企業経営におけるデザインの活用促進」にあたっては、以下の取り組みの実施が期待される。
【具体的な打ち手】
① 他社のデザイン活動の見える化
 他社のデザイン活動の見える化のため、デザイン活動に関する継続的なアンケート調査の実施に向けた検討を行う。
例えば、既存の継続的なアンケートの中へ、デザイン活動の実態を把握できる項目を増やすべく、アンケートの実施機
関への働きかけを行う。
② デザイン経営における成功事例の見える化/海外における日本製品の現状の見える化
 デザインを活用した成功事例及び海外における日本製品の現状を経営層へ普及する。
デザイン関連経費の内容(上)とデザイン活動の効果を図る指標(下)
国内電機メーカー
B社
・製品毎のデザイン開発費
 人件費
 モックアップ費
 外注費 等
国内電機メーカー
C社
国内電機メーカー
D社
国内自動車メーカー
E社
・製品毎のデザイン開発費
・製品毎のデザイン開発費
・製品毎のデザイン開発費
 人件費
 モックアップ費
 デザイン外注費 等
 人件費
 モックアップ費
 デザイン外注費 等
 人件費
 モックアップ費
 デザイン外注費 等
・デザイン研究開発費
国内電機メーカー
B社
・消費者・顧客によるデザ
イン評価
 人件費
国内電機メーカー
 委託(共同)研究費 等
・デザイン研究開発費
・デザイン研究開発費
 人件費
国内電機メーカー
 デザイン開発経費 等
 間接スタッフ人件費
国内自動車メーカー
 一般経費
E社等
 償却費用
・消費者・顧客によるデザ
イン評価
・消費者・顧客によるデザ
イン評価
・消費者・顧客によるデザ
イン評価
・有識者によるデザイン評
価
・デザイン評価委員会での
評価(デザインのクオリ
ティを評価)
・ブランド価値
C社
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D社
出所)国内企業へのヒアリング
結果より野村総合研究所作成
31
1.クリエイティブ産業の定義・外縁
2.クリエイティブ・シティ
3.デザインと経営
4.クリエイティブ産業個別分野
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32
4.クリエイティブ産業個別分野
4.1 ファッション産業
ファッション産業における現状・課題および施策
 日本のファッション産業は高い潜在力を有していながら、実際のビジネスとしては重層的に展開できていない。
 日本のファッション産業ならではの特長や優位性を有する。
▪ ①個々のデザイナーの感性・能力は世界トップレベル、②川上・川中・川下全てが国内に存在し、高い技術力・品質管理能力を有す
る、③洋服に関心を持つ一般生活者のファッションに対する高いセンス・感度 など
 しかし、実際のビジネスの現場においてこれらの特長や優位性を発揮できていない。
 付加価値率の低さ、輸出実績の少なさ
 海外ビジネスネットワークの欠如(国内市場を前提としたビ
ジネスモデル)
 日本のファッションブランドの大半が中小企業であり、個別
ブランドごとの海外展開に限界がある など
 情報発信力の低さ
 東京コレクションが必ずしも海外への効果的な発信の場に
なっていない など
 クリエイティブと経営の役割分担の曖昧さ
 流通・小売とのコミュニケーションの不足
 ブランド力の欠如
 事業効率の低さ
 複雑かつ多段階の流通構造に起因した非効率な取引
慣行
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 人材育成
 若手デザイナー向けアワードの設立
 プロデューサー型人材育成のための教育カリキュラムの策定
 情報発信力の強化
 東京コレクション出展ブランドの充実、キーマンの招聘、主
要メディアによる情報発信体制の構築
 業界団体ポータルサイトの強化(日本版“Fashion from
Spain”の構築)
 アジアを中心としたマーケット獲得に向けた情報収集
 海外展開において有効な情報の収集・提供
 連携の強化
 ファッション産業のパートナーとなる業種(百貨店やデベロッ
パー等)との連携の推進 など
(一部のみ掲載)
33
4.クリエイティブ産業個別分野
4.2 ハウス・住まい産業
ハウス・住まい産業における現状・課題および施策
 日本のハウス・住まい産業は一つのターニング・ポイントを迎えている
 少子化および経済成長の停滞による国内の新築着工数は減少傾向、中古住宅の流通は拡大
 若年層の失業率の高まり、収入の不安定さから、若年層にとって住宅の入手はますます困難な状況になっている
 住宅の購入のために巨額の貯蓄を強いられる結果、若年層の消費活動が妨げられるといった弊害も生じる
 ハウス・住まい産業が供給力に見合う需要を確保していくためには、内需の掘り起こし、海外市場の獲得が不可欠
 地域資源やライフスタイルの観点からハウス・住まいの在り方をとらえなおし、新たなハウス・住まいビジネスを創出していくことが必要
(国内)
(国内)
 供給側と需要側の「情報の非対称性」
 住宅に関する情報の見える化の実施
 リフォーム費用や工期、品質等に係る情報が十分に提供さ
れていない
 デザインを考慮したリノベーションの活性化
 デザインを考慮したリノベーションを担う人材の参入・活
用の推進(住宅のみならず街そのものも想定)
 クリエイターの活躍の場にもつながる
 長期優良住宅のさらなる利用促進
 長期優良住宅認定基準の緩和、手続きの簡略化
(海外)
(海外)
 個々の規制・制度、地域ごとに異なる運用実態への対応
 国際的な官民協力の強化
 現地事情に即した提案の実施
 日本の高い施工技術や優れた建材は「海外の人が心地よ
いと思う基準」には必ずしもならない
 海外展開の推進
 日本企業の海外展開に関する取組について体系的にまと
まった情報はない
Copyright
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 人材交流、共同プロジェクトの実施によるデザイン・プランニ
ングにおける協力
 現地での施工・行程管理に日本の技術者を活用するなどの
人材活用における協力
 展示会やショーケースを活用した情報発信の強化
 日本に対する理解が深い現地パートナーとの連携
34
4.クリエイティブ産業個別分野
4.3 キャラクタービジネス
キャラクタービジネスにおける現状・課題および施策
 日本はキャラクター大国だが、その潜在力を活かし切れていないのが現状である
 国内だけでなく海外においても日本発のキャラクターが人気を博している
▪ ハローキティ((株)サンリオ)、初音ミク(クリプトン・フューチャー・メディア(株))
 一方、キャラクター/キャラクターグッズが国内に留まっており、仮に海外で人気が出たとしても、その人気を権利ホルダーである日本企
業の収益に結び付けきれていない場合も多い
 キャラクタービジネスに関する海外マーケット情報の不足
 個別の企業が海外への進出を計画しようにも現地のマーケ
ット情報が無く、戦略を立てられていないケースが多い
• 国毎の独自の玩具文化、国毎の独自の子ども観を
反映した独自かつセンシティブな規制が存在するた
め、きめ細やかなローカライズが必要
 キャラクター商品の購入環境の未整備
 キャラクター商品を物理的に海外ファンの手元まで届けるに
は、キャラクター商品に係る流通を整備・強化することが必
要
 世界の広い範囲の販路にアクセスを持つ海外現地プレイヤ
ー(グローバル大手玩具メーカー)、地上波テレビ枠を確保
するための放送枠へのアクセスを持つ海外現地プレイヤー
などとの連携が必要
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 キャラクタービジネスに関する海外マーケット情報の整備
 海外各国におけるキャラクタービジネスに係るマーケット調
査を実施し、情報整備を行う
 調査を定期的に行う等し、海外進出を計画する企業が時系
列で情報を把握できる環境を整える
 流通を念頭に置いたキャラクタービジネス海外展開の支
援
 クール・ジャパン海外展開支援事業等において、流通を念
頭に置いたキャラクタービジネスに係るプロジェクト(テレビ
枠の確保、小売・流通との連携、物理的拠点確保等)を組
成・支援・推進し、成功事例やノウハウを蓄積する
 キャラクタービジネス海外展開プロジェクトの組成を促進す
るため、国内外企業の連携を推進すべく、マッチングの場を
設ける
35
4.クリエイティブ産業個別分野
4.4 地域産品・ものづくり分野
地域産品・ものづくり分野における現状・課題および施策
 海外でも日本の地域産品や高付加価値品に対する理解が深まってきており、年々需要が高まりつつある
 日本には、地域文化を継承した伝統工芸品などの地域産品、文具や楽器など高度な技術を活用した品質の高い生活文化関連製品が全
国各地に存在
 地域産品・生活文化関連製品に携わる人材の育成や海外展開に向けたマーケティングにおいては改善・強化すべき点も多い
 日本の伝統工芸品に関する海外の認知度は向上しつつあるものの、これまで効果的なマーケティング活動が行われておらず、いまなお
確固たる市場が形成されていない状況にある
 海外展開の促進
 業界構造の実態把握
 事業者が海外進出するにあたり必要となる基礎情報(消費
者の嗜好や製品の商流構造)の不足
 各地に存在する伝統工芸品に関連した活動を行う有力産
地組合等を把握するため、業界構造実態把握調査の実施
 海外市場で製品の販売拡大に成功した企業事例の収集、
分析および海外市場攻略のための要諦の整理
 各地域に存在する海外展開を志す優良企業、やる気のある
若手・女性の担い手、産地のキーマン等の把握
 人材育成・若手登用
 ものづくりの高度な技法を継承する人材育成問題が顕在化
(若手が活躍する場、情報発信できる媒体が少ない)
 グローバル化を見据えた若手の育成
 優秀な若手に対する適切な評価
 産業構造の把握・他分野との連携
 生産者や所在する地方自治体とネットワークの形成、情報
共有の推進
 地域産品と食や観光との連携
 クリエイティブ・シティ形成を目的とした観光・食文化等と一
体となった商品の開発・ブランディング化の推進
 地域産品・ものづくり産業の海外展開促進
 地域産品に関連する業界の状況、業界内外の連携状況に
関する情報の不足
 各製品の商流構造や各国・地域の消費者の嗜好に関する
基礎調査の実施
 各地域の地域産品に関する生産者や地方公共団体にわた
る地域産品ネットワークの形成、情報共有の推進
 海外マーケット拡大に向けた基礎情報の収集・分析
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 流通関連産業と連携した施策を推進し、オール・ジャパン体
36
制での海外販路開拓の推進
4.クリエイティブ産業個別分野
4.5 日本食
日本食分野における現状・課題および施策
 海外における高い潜在競争力を有していながら、日本食の輸出、外食サービスの海外展開は小規模にとどまる
 海外における日本食の認知度は高く、訪日外国人の日本食に対する期待度、満足度も高い
▪ 2010年に日本を訪れた外国人の62.5%が食に期待して来日し、71.8%が食に満足して帰国している
 海外と比較すると、食関連商品の輸出や、外食サービスの海外展開等は途上段階にある
【食関連商品】
 制度・インフラに関する情報収集と対応
 海外での輸入制度や需要動向を把握するための正確な情
報が入手しにくい
 相手国インポーターの信用度や卸・小売へのチャネルが不
明である
 日本での必要書類(衛生証明書、検疫証明書等)を揃える
のに時間がかかる
 貿易実務が煩雑で人手と時間の負担が大きい
出所)JETRO 「わが国農林水産物・食品の輸出拡大に向けた 阻害要因と対応策」
【外食サービス】
 (上記に加え)料理の再現性の確保
 再現性を確保するための調達先(サプライチェーン)の構築
 日本食の技法・技能や文化まで含めた広い意味での「学
び」の場や機会の提供・整備
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 海外展開に向けたプラットフォームの形成
 生産・加工・外食など多岐にわたる企業をカバーするプラッ
トフォーム組織の活用(原材料の共同調達や物流機能の共
同化、シェアードサービス機能の提供など)
 海外の商流開拓や効率的な物流運用を行なうための情報
基盤の整備や情報提供サービスの確立
 日本食の多様な魅力の訴求と更なるファンの開拓
 伝統的日本料理から「B級グルメ」まで幅広い魅力の訴求
 日本食の付加価値(健康、繊細な味覚等)を簡潔かつ分か
りやすいメッセージとして広報やデザインに反映
 日本食の海外展開を担う人材の育成
 日本食を志す外国人の日本への受け入れ環境の整備
 一定レベルの知識・技術を獲得した日本食料理人の認定制
度の構築
 地域の人や資源との連携の促進
 地域の人・情報・企業のネットワーク化、食と地域の観光施
設・観光資源との連携など基盤整備の実施
37
4.クリエイティブ産業個別分野
4.6 観光
観光分野における現状・課題および施策
 世界各国は、富裕層をターゲットにしたラグジュアリートラベルビジネスを推進している
 地域活性化のためには、旺盛な外需を取り込むことが不可欠となっており、観光による外需取り込みは有力な手段となる
 日本には、本物志向の富裕層に訴求できる「和」の地域資源が豊富に存在するものの、ラグジュアリートラベルビジネスが活
性化していない
 富裕層へのアプローチ
 ラグジュアリートラベルビジネスでは、エージェントが富裕層
を顧客として囲い込んでいるが、日本の観光関連事業者が
エージェントに対して効果的にアプローチできていない
 富裕層を誘客する体制も不十分
 地域資源の発掘、ブランディング、国際的発信
 海外富裕層に訴求できる本物の高品質な「和」の地域資源
は全国各地に存在しているが、これらの発掘やブランディン
グ、プロモーションが効果的になされていない結果、一部で
は外国人観光客にその魅力が届いていない
 エージェントに対する「和」の地域資源に係る観光コンテンツ
情報の発信に関しては、旅行会社・観光コンテンツ各社・各
団体単体での実施には限界があり、共通の情報発信機能
が必要
 エージェントとのマッチング
 富裕層旅行商談会等において、海外エージェントと日本の
観光関連事業者等とのマッチングの実施
 受け入れ体制の整備
 全国各地のラグジュアリートラベルに係る先進拠点をつな
いだネットワークを整備し、海外からの要請、問い合わせに
対応できるワンストップサービスに関する基盤の整備
 受入人材育成等を行うプラットフォーム機能の構築
 国内地域資源の発掘・ブランディング・国際的発信
 海外富裕層に認知されていない地域資源の発掘、外部有
識者等の目利きによる磨き上げ、ブランディングの実施
 旅行会社・観光コンテンツ各社・各団体単体等が共同で情
報発信できるプラットフォームの整備
 各地のクリエイティブ・シティ創出の取り組みとの連携
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