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月刊JASTPRO PDF 2011年4月号

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月刊JASTPRO PDF 2011年4月号
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2011- 04
今月号の内容
記事1.貿易円滑化の為の勧告と電子商取引標準化に関する
国際専門家会議
(第18回国連CEFACTフォーラム代替開催)
出席報告 …………… 1
2011年3月28日∼4月1日
(ワシントンD.C. 郊外)
記事2.◇連載◇ 貿易慣習の諸問題
(1) …………………………………………………… 26
早稲田大学名誉教授 朝岡 良平
記事3.国連CEFACTからのお知らせ ………………………………………………………… 36
記事4.JASTPRO 春期セミナーのご案内 …………………………………………………… 37
=JASTPRO広報誌電子版のご案内=
裏表紙にJASTPRO広報誌電子版のご案内を掲載しておりますので、ご参照下さい。
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記事1. 貿易円滑化の為の勧告と電子商取引標準化に関する
国際専門家会議
(第18回国連CEFACTフォーラム代替開催)
出席報告
2011 年 3月28日より4月1日までワシントンD.C. 郊外のLMI 本部にて開催されました掲題会議に日本
代表団として出席致しましたので、下記のとおりご報告します。
業務第三部長 平井 一海
1. 会議の概要
1.1 会期
2011 年 3月28日∼ 4月1日
1.2 開催場所
LMI 本部、Virginia 州 McLean 市(ワシントンD.C. 郊外)
1.3 参加者
主催者 LMIの発表では26 ヶ国 103 名が参加。
日本代表団
(敬称略)
鈴木耀夫、島野繁弘、阪口信吾、鬼頭吉雄、平井一海
1.4 会議運用の概要 第 1日目:3月28日
(月)
午前 :開会式と全体会議
午後 :組織改革についての自由討議 #1
(技術系常設グループ 1:ATG, ICG, TMG, TBG14,16,&17)
第 2日目:3月29日
(火)
午前 :各常設グループ別会議
午後 :組織改革についての自由討議 #2
(業務系 TBG 常設グループ会議 #1:TBG3,4,12,15, & 18)
第 3日目:3月30日
(水)
午前 :各常設グループ別会議
午後 :組織改革についての自由討議 #3
(業務系 TBG 常設グループ会議 #2:TBG1,5,6, & 19)
1 常設グループ TBGの略称については、参考資料 7をご参照下さい。
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第 4日目:3月31日
(木)
午前 :各常設グループ別会議
午後 :組織改革についての自由討議 #4
(業務系 TBG 常設グループ会議 #3:TBG8,9, & 10)
第 5日目:4月1日
(金)
午前 :組織改革についての自由討議 #5
(総括のための全体会議)
午後 :閉会式
2 変則開催について
2.1 国連とフォーラム開催国間の協定
(HCA)
義務化問題
今回の会議名称は、「貿易円滑化の為の勧告と電子商取引標準化に関する国際専門家会議:
Global Meeting of Experts [GME] on Trade Facilitation Recommendations and Electronic
Business Standards」
というもので、主催者はLogistic Management Institute(LMI: ロジスティ
クス管理研究所)
という組織であった
(LIMの概要は、下記 2.4を御参照下さい)
。この会議は本来、
第18 回国連 CEFACTフォーラムとしてLMI が昨年春より計画を進めていたものであるが、下記 2.2
に記した経緯によってLMIは正式フォーラムの開催を断念し、GME 会議に切り替えたものである。
昨年に一般メンバーにも明らかにされた国連法務部(OLA)
による国連とフォーラム開催国間の協
定(Host Country Agreement:以下、HCAと略す)義務化問題は、今回のGME 会議でも問
題化した。下記は、JASTPRO 事務局が GME 会議前の2月にECE 事務局に対して行った質問
への回答、および会期中に開催されたBureau 会議に招かれた際に入手した情報をまとめたもので
ある。
sHCAを必要とする根拠は、1985 年の国連総会決議第 40/243 号に基づき発出された国連事務
総長通達 ST/AI/342による。
(詳しくは、下記の参考資料 1および 2をご参照下さい)
JASTPRO 事務局はECE 事務局の回答に対し、これまで20 年以上にわたり、国連 CEFACT
はHCA 無しでフォーラムを開催して来た、それは当該通達の例外規定によるものではないかとの主
旨で再質問を行った。
sこの質問に対する回答は、国連法務室が、2010 年 10月に国連 CEFACTフォームは、その規
模(=参加人数)
などに鑑み例外規定には該当しないとの判断を下したことによるとの事であった。
(詳しくは、下記の参考資料 3をご参照下さい)
GME 会議中のHCAに関するBureauの特別打ち合わせにおいては、こうした事態が継続する
と、国連 CEFACTの正常な運営が出来なくなり、その活動を著しく阻害する故に、今後も、ECE
事務局および関係機関に対して粘り強く再考を促すと共に善後策の検討を進めることとした。
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2.2 変則開催に至るまでの経緯
下記の経緯は、GME 会議中のHCAに関するBureauの特別打ち合わせにおいて、FMG 議
長より説明されたものである:
• 2009 年 9月 国連 CEFACT は、札幌で開催された第 15 回フォーラム会期中のBureau/FMG 会議において
マレーアのDagangNetから提案されたマレーシア開催を承認した。
• 2009 年 12月 欧州委員会事務局は国連とマレーシア政府間のHCAの締結を主催者 DagangNetに求めた。
DagangNetは、マレーシア政府に諮ったが却下され、開催を断念した。
• 2010 年 1月
国連 CEFACTはESCAP 事務局の招聘に基づき、マレーシアの代替としてバンコクのESCAP
本部での開催を決定した。この場合、国連経済社会理事会の地域経済委員会の本部の一つ
での開催であるとして、HCAは締結不要とされた。
(詳しくは、OLA 見解の20 ページをご参照下
さい)
• 2010 年 5月
バンコクの騒乱で第 16 回フォーラムは中止となった。
• 2010 年 8月
第 17 回フォーラムはジュネーブで開催された。会議場は、国連欧州本部内ではないが、ジュネー
ブ国際会議場は、1946 年の国連欧州本部設置の際にスイス政府と国連が締結したHCAでカ
バーされるため、新たなHCAは締結不要とされた。
(詳しくは、OLA 見解の20 ページをご参照
下さい)
• 2010 年 10月
欧州委員会事務局は国連と米国政府のHCAの締結手続きを会議主催者であるLMIに求め
た。
• 2010 年 12月
LMIは米国国務省にHCAを結ぶための申請手続きを執ったが、同省は受理せず却下した。
• 2011 年 1月
LMIは、国連 CEFACTのBureauにHCA 不調と通知し、協議の結果、GMEとして変則開
催を決定し、各国代表団へ通知。
2.3 HCA 義務化の問題点
HCAの義務化問題は要するに、
① 国連 CEFACTフォーラム活動は、そもそもHCAを必要としない。
② それにも関わらず、HCAを国連と開催国政府の間で締結しなければならないというOLAの
見解が、HCAという国連特権免除条約の適用を大上段に振りかざす協定をメンバー国に課
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し、フォーラムの引き受けを極めて難しくしてしまい、③各国は、結果的に今回のワシントンで
開催されたGMA 会議の様な変則的な非公式開催のみしか開催出来なくしてしまう
という極めて、不合理な状況を引き起こしているという点に問題がある。
国連 CEFACTフォーラム活動は、政府正式な代表団が出席する上級レベルの国連会議と異な
り、その実態上、HCA が規定する国連特権免除条約の適用を必要としない。その事実は、前進
組織であったWP.4の時代から今に至る40年間のフォーラム運用実績がそれを証明している。
JASTPRO が知る限り、参加者がそうした特権を行使した事例や必要としたケール、あるいは免除
を享受した事は無い。
フォーラム開催国の費用負担は、フォーラム運用マニュアルで規定されている通り、開催組織の
負担となっているが、特段のHCAを締結しなくても問題は発生しない。また、フォーラム開催費用
の負担は、開催国政府の予算で行われる場合と、当該国の民間組織等の自己負担で行われる
ケースがあり、一様に定まっていない。
国連およびその職員に対する損害賠償責任の訴えが起きる蓋然性も極めて低い。
OLAの見解は、国連 CEFACTの活動の実態を知らない国連官僚が、形式的な判断で、
HCAによって、国連の特権、免除、賠償責任の排除、開催組織への費用負担の一方的な押し
つけを要求しているもので、国連官僚主義の弊害と言える。
2.4 GME 会議主催組織であるLMIについて
Logistics Management Institute(LMI)
は、1961 年に当時の国務長官であったマクナマラ氏
がケネディ大統領に諮問し国防関係のロジスティクスの改革の一貫として設立されたNPO 法人で、
収益の柱は、国防総省からの委託研究である。
理事は国防総省 OBや米軍の元士官で占められており、典型的な国防関係の外郭団体と言える。
現在、国連 CEFACTの米国代表団長を務めるMarion Royal 氏はこの組織の職員である。
2004 年に開催された第 5 回国連 CEFACTフォーラムも同組織が開催しており、米国に於ける国連
CEFACT 活動の中心を担っている組織である。
3 GME 会議開催までのメンバー国の動き
3.1 ロシア代表団長の動き
昨年の12月25日:ロシア代表団長より、国連 CEFACT 代表団長の権利と義務に関する規約
付属書の提案が、各国代表団長宛てに出された。当該提案の主旨は、
① 代表団長の権利と義務を明確化し、国連 CEFACT 活動への関与を強め、代表団長による
活動への監督を強化する事と、
② 総会間承認手続きの厳格化による総会権限の強化
にあった。
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この提案に対する各国代表団長の反応は極めて鈍く、フィンランド代表団長からの部分的な賛
成の意思表示があったのみであった。
今年の3月21日に、再度、ロシア代表団長より、意見が無いことは、賛成多数と見なすべきとの
メールが流された。
これに対して、フランス代表団長より、レビュー期間は2 ヶ月とすべきであり1 ヶ月で結論を出すの
は不適切である事、また、当該提案は総会間承認マターでは無いとの見解が表明された。
3.2 フランス代表団長の動き
3月19日付けでフランス代表団長より、Bureau, FMG 議長、および全代表団長に宛てて、意見
表明が行われた。
当該文書の主旨は、12月の総会以降、
組織改革を具体的にどの様に進めるかについて
Bureauより何らの情報公開が無い事へのクレームであり、
、総会で
(総論的に)提示された企画開
発領域(PDA)
について具体的にどの様な領域を設定すべきかを提案したもの。このフランスの提
案に対しては、3月21日にオランダ代表団長より賛意が表明された。
3.3 12月の総会において総会間承認に付された規約改正案について
当該改正案は、1月28日から3月28日までの審議期間で総会間承認手続きに付され、当該期
限内に、反対の意思表示が代表団長より行われなかったという事で、GME 会議最終日に開催さ
れたBureauの非公式会議における確認を経て、ECE 事務局より4月2日付けで、当該改正案が
承認された事が各国代表団長に告知された。
当該改正案に対しては、総会に於いて、日本は基本的に賛成の意思を表明しており、総会間
承認期間中に、改めて賛否の意思表示は行っていない。
3.4 国連 CEFACTアジア地区ラポータ選任問題
2009 年の9月に韓国のSangwon Lim 氏が辞任して以降、空席となっているアジア地区ラポータ
については、昨年 11月に横浜で開催されたAFACT 総会において、タイ国政府の正式承認条件
で Ajin Jirachiefpattana 氏を国連 CEFACTに推薦する事を決議した。これを受けて、2011 年
2月10日付けでタイ情報通信技術省の長官補名で承認状が発出されたが、当該書状には、
「予算
上の制約によって、いくつかの国連 CEFACTの会議に出席出来ない模様である。」(原文:”
please note that Mr. Jirachiefpattana may be unable to participate in some meetings due
to our budget constraint”
)
という文言があり、国連 CEFACTの規約が定める、総会、フォーラ
ム会議および Bureau中間会議への出席義務を十分に履行出来ない恐れがある事が判明した。
こうした事情に鑑み、国連組織とのコンタクトが出来ない2011 年 AFACT 議長国の台湾に代わ
り、AFACTの副 議 長 国である日本のJASTPRO 事 務局はGME 会 期中にFMG 議 長である
Mike Doran 氏と面談し、Ajin 氏をAFACT が推薦する事の可否を打診した。
それに対するMike Doran 氏の回答は、Bureau/FMGとしてその可否を判断する事は控え、
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AFACTとしての責任ある思慮と判断に結論を委ねるとともに、国連 CEFACT 副議長でもある
AFACTインド代表団長のKhan 氏へ 4月第 2 週中に電話し、調整を依頼するという事であった。
従って、本件は、5月に台湾の高雄で開催を予定するAFACT 運営委員会の中間会議で最終
的な結論を出す予定である。
4 GME 会議の特記事項
注)下記報告中において、説明あるいは脚注のない用語については本報告書末尾の参考資料 6を
ご参照下さい。
4.1 組織改革案についての討議
今回のGME 会議は、昨年 12月の国連 CEFACT 総会で組織改革が大筋で了承された後、
初めて開催される実質的なフォーラムであった。
従って、上記 1.4の運営日程が示す通り、毎日、午後の部は総て改革案に関する自由討議
(Brainstorming)
に費やされた。
先ず、第 1日目の自由討議の冒頭、国連 CEFACT 議長のStuart Feder 氏が、組織改革の
主旨を再確認し、7月の総会に向けて新体制の具体的構築作業を進める事の重要性を説明した。
その上で、たたき台としての原案を提示した。
改革案の骨子(下記の図1を御参照)
は昨年の総会で示されたものから変わってはいないが、今
回のGME 会議で新たに修正が加えられた点は、下記の図 2で示す通り、各企画開発分野(PDA:
Program Development Area)
に、Domain Coordinator
(業務領域別調整役)
を設け、原則と
して新組織に継承される総てのプロジェクト群とPDAとの橋渡し、調整役を担う構図を提示した。
この構図で、Domain Coordinatorに現行常設グループの議長、乃至は副議長を選任すれば、
複数の現行常設グループをある一つのPDAに集約する事が出来るというのが原案の眼目であっ
た。これをベースに提起されたのが下記の通り4つのPDAを設置する原案であった。
(常設グルー
プの略称については、参考資料 14を御参照下さい。)
PDA #1(仮称:Technology 技術分野)
収容を想定する常設グループ=ATG, ICG, TMG, TBG14 および TBG17
PDA #2(仮称:Trade Facilitation 貿易円滑化)
収容を想定する常設グループ=TBG3, 4, 5, 15, および 18
PDA #3(仮称:Supply Chain サプライチェーン)
収容を想定する常設グループ=TBG1,5, 6, および 19
PDA #4(仮称:Specific Domains 専門領域)
収容を想定する常設グループ=TBG8,9,10,12,13
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図1
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図2
4.2 移行計画諮問チームの立ち上げ
欧米の組織運営においては、日本流の根回しは全く行われていない様であり、今回のGME 会
議においても、上記の様にBureau 原案に対して甲論乙駁され、結論らしきものは出せず、結局、
移行計画諮問チームを設立し、総会までに原案を練り上げる事となった。
4.3 改革関連で積み残しとなった案件
新体制の運用上、重要なポイントである下記のBureau 補佐業務をどの様な編成でいかに運用
するかの方案の提示は、GME 会議では全く行われなかった。
上記の移行計画諮問チームの中で、これらの方案も検討されると推測されるが、総会までに成
案を得ることは、時間的に無理と思われ、年末に開催を予定する秋季フォーラムまで待たねば成ら
ないと考えられる。
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① 監査・品質管理
② EDIFACTディレクトリの保守
③ コア構成要素ライブラリの整合化作業と保守管理
④ シンタックス開発と保守
4.4 次回以降の会議予定
最終日にFMG 議長より説明された2011 年の会議予定は以下の通り:
s7 月7日∼ 8日 総会(ジュネーブ国連欧州本部)
s12月第 1 週頃 第 18 回フォーラム
但し、予定会場のCICG(ジュネーブ国際会議場)確保が出来ることを条件とし、開催不能の場
合は、ベルギーのブリュッセルでGMEと同様な代替会議を行う。
12月第 2 週頃 臨時総会
(ジュネーブ国連欧州本部)
を予定。
また、2012 年以降に関しては
2012 年春はインドが Bangaloreでの開催の意向を表明
2012 年秋はオーストリアがウィーンでの開催を検討中
2013 年春は韓国が開催の意向を表明
2013 年秋は中国が開催の意向を表明
5 常設グループ別の活動概要
今回のGME 会議は、常設グループ別の会議は上記 1.4の通り、第2日目から第 4日目の午前中の
みの開催とされ、多くの時間が組織改革についての自由討議に傾注された結果、各常設グループの
作業は限定された。また、恒例となっている閉会式に於ける常設グループ議長による成果の総括も行
われなかった為、
成果についてはJASTRPO 事務局が得られた範囲の情報にとどまった。
5.1 ATG
(応用技術グループ)
議長:Mark Crawford 氏
(DTC)
は、昨年のジュネーブフォーラムに続き、Version 3.1 草案の最終取り
s データ型カタログ
纏めを行い、保守管理手続きとしてGME 会議終了後にメンバーの投票に付し、公開することを
決定した。
はパブリックレビューを終了し、
sXML4CCTS(コア構成要素のXML 表記についての技術仕様)
実用性検証(ODP6)
に入った
(ローマ)
で日本電気などより新規提案されたSBDH 第 3 版開発プロジェクトは
s 第 14 回フォーラム
ODP3(内部草案起草)作業を継続した。
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5.2 ICG(情報コンテンツ管理グループ)
議長:Mike Conroy 氏
当該グループの出席者は、議長のMike Conroy 氏のみであった。
会期中に勧告 28 号(輸送コストコード)
の改訂版の監査を行い、GME 会議終了後、4月11日に
公開した。
5.3 TBG
(国際貿易と業務プロセスグループ)
議長:Natascha Pottier 氏
5.3.1. TBG1
(サプライチェーン& 電子調達)
暫定議長:Martin Forsberg 氏
sGHS(Globally Harmonized System of Classification and Labeling of Chemicals)
TBG1 が昨年立ち上げたプロジェクトで、化学品の分類と商品表示の世界的な統一を図る事
を目的とし、その為のビジネスモデルとクラス図を開発する企画である。プロジェクトのリーダー
は、LMIでGME 会議の運営責任者を務めたDelta Pilgrim 氏である。
sCCTS/NDR Version3の移行検証:
GME 開始でのTBG1の中心議題は、昨年からATG TBG6と共同で進めているサプライ
チェーン関係の文書のCCTS/NDR Version3 への移行パイロット開発の検証作業であった。
5.3.2 TBG6(Architecture, Engineering & Construction: 建設)
議長:Bernard Longhi 氏
s 昨年の総会において2011 年 2月11日を期限とする総会間承認に付された勧告第 37 号は、
当該審議期間中に、カナダ、ロシア、および米国代表より意見表明があり、米国は総会間承
認の為の審議期間を延長し、実質的な見直し、あるいは承認手続きの見直しをすべき旨要望
していた。
sこれらを受けて、これら代表を交え会期第 2日目に当該勧告の開発プロジェクトの会議が開催
された。この会議には、米国務省および米国法律家協会の法律専門家も出席し、国連国際
商取引法委員会(UNICITRAL)
の専門家はオンラインで参加した。当該会議では、上記 3ヶ
国からの意見を踏まえつつ、勧告第 37 号の目的と守備範囲を軸に論点整理を行った。具体
的には、このプロジェクトが基より技術標準を定める事を意図したもので無い事、および電子署
名に関わる法律問題はUNICITRALに委ねる方針であり、重複を避けるのが当初からの方
針であったという2点について関係者の誤解を解き、米国からの意見については、この会議に
おける討議を踏まえ、次回総会において承認を求めるべく当該勧告草案の改定作業を進める
こととした。
s 上記 2.3.1 のプロジェクトCCTS/NDR Version3の移行検証作業に参加した。
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5.3.3 TBG9(Transport Tourism & Leisure: 観光・旅行)
議長:鈴木耀夫氏
の作業を継続した。
s 昨年新規プロジェクトとして立ち上げた小規模宿泊施設(SLH:旅館など)
s アジアにおいて、AFACTの中で作業部会を設立し、目的地情報交換のプロジェクトを立ち
上げた。
5.3.4 TBG15(International Trade Procedures: 国際貿易手続円滑化)
議長:Johan Ponten 氏 (スエーデン)
s 新規プロジェクトとして、政府と民間組織の協議に関するモデル化の勧告開発の検討を進め
た。このプロジェクトは既に昨年、3 ヶ国ルールをクリアし、Bureau /FMGの承認を受け、
GME 会議終了後 4月12日付けで、プロジェクト参加募集を公告した
(下記の参考資料 4を御
参照下さい)。
s 昨年 8月、ジュネーブフォーラムで3 ヶ国ルールをクリアし新規プロジェクトとして承認された新勧
告 36 号(シングルウィンドウの国際的相互運用性の構築に関する勧告)
の開発は、当該プロ
ジェクトリーダーのEva Chan 氏が、マレーシアのDagangNet を辞職し、転籍した影響で作
業が停滞している。会期中に、作業計画の洗い直しを行い、GME 会議終了後 4月12日付
けで、プロジェクト参加募集を公告した。
5.3.5 TBG18(Agriculture: 農林水産業)
議長:Bruno Prepin 氏
seCert
日本の動物検疫所は、現在オーストラリア当局と動物検疫証明書情報のデータ交換をこれまで
のEDIFACTのSANCRTからe-CERTに移行する作業を完了し、2011 年 3月よりe-CERT
の運用を開始した事がオーストリア代表より報告された。半年間はEDIFACT との並行稼働
を行い、e-CERTの安定稼働を見極めた上で、これまでのEDIFACTによる伝送の廃止に進
む予定。
s 新規プロジェクト提案
会期中、カナダ代表(食品検査庁)
より家畜および鮮魚のトレーサビリティ確保の為のデータ辞
書構築プロジェクト提案の説明が行われた。
(提案内容は、参考資料 5をご参照下さい。)
5.3.6 TBG19
(e-Government: 電子政府)
議長:Antonio Reis 氏
の電子化プロジェクト)
se-Notification(EU 政府広報(官報)
e-Notification は、EUのOPOCE2 が 2008 年 3月にCEN/ISSS WS EEG13
(参考資料 13
2 OPOCE:The Publications Office of the European Union
(欧州委員会出版局) http://publications.europa.eu/
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ご参照)に申請したプロジェクトで、公共調達に関する欧州委員会および欧州議会指令
2004/17ECおよび 2004/18/ECに基づく欧州委員会政令 No 1564/2005に規程された公共
調達に関わる政府公報
(官報)書式の標準化施策おいてXMLによる電子化を目指すもので、
EUとしての地域的なプロジェクトではあるが、TBG19の働き掛けにより、国連 CEFACT 標準
に基づくXMLスキーマを開発する方針となったものである。
昨年 8月のジュネーブフォーラムで、TGB6と協議した結果、e-Tenderingの下位モデルを開
発する共同プロジェクトとして。e-Tenderingでカバーされない領域をe-Notificationのプロジェ
クト範囲に定めて作業を開始する事を両グループで合意された。GME 会議では、最終日4月
1日の昼に開催されたLunch & Learn Sessionで、当該プロジェクトの説明会が実施された。
5.4 TMG(Techniques and Methodologies Group : 基礎技術・技法開発グループ)
議長:Christian Huemer 氏
5.4.1 CCWG(Core Component Working Groupコア構成要素
(共通辞書)
関係基礎技術)
議長:Mark Crawford 氏
(UML Profile for Core Component)
は2011 年 3月25日に第 2 次パブリックレビューを
sUPCC
締め切り、関係者より提出された意見書への対応作業を終えた。
sUCM(Unified Context Methodology:統一コンテキスト処理手法)
昨年に引き続きODP3
(内部草案起草)
の作業を進めている。
5.4.2 BPWG(Business Process Working Groupビジネスプロセスモデル化技術)
議長:Marco Zapletal 氏
s Modeling Methodology)第 2 版
sUMM(国連 CEFACTモデル化技法 : UN/CEFACT’
のODP6(実用性検証)
は引き続き作業中。
の作業を継続中である。
sREA(Resource Event Action)は依然 ODP2(要件定義)
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参考資料 1:国連総会決議 A/RES/40/243 号抜粋
1985 年 12月18日
配布:一般
原文:英語
件名:国連会議規範(Pattern of conferences)
第1部
--- 途中省略 ---第4条
国連の諸機関は下記の例外事項を除き、原則として当該機関の本部が設置された施設でその会
議を計画し、開催しなければならない:
(a)国連開発計画
(UNDP)
理事会は国連本部
(NY)
と国連欧州本部
(ジュネーブ)
で交互に開催
する
(b)国連国際法委員会
(International Law Committee)
は、国連欧州本部
(ジュネーブ)
で開
催する。
(c)国連国際商取引法委員会(UN Commission on International Trade Law)
は、1966 年
12月の国連総会決議、第 2205 号第 2 部第 6 章の規定に従い、国連本部(NY)
と国連欧州
ウイーン本部で交互に開催する。
(d)経済社会理事会の下期例会(Second regular session)
は、その最終日が国連総会が開催
される6 週間前までに開催される場合は、国連欧州本部(ジュネーブ)
で開催出来る。
(e)経済社会理事会の下部組織は、それぞれの本部が置かれた施設で会議を開催しなければな
らない。但し、経済社会理事会が、国連事務総長および当該機関と協議の上で、より合理
的な作業計画を遂行する為に、上記以外の施設で会議を開催することを決めた場合はその
限りではない。
(f)アジア太平洋経済社会委員会
(ESCAP)
、ラテンアメリカ・カリブ経済委員会
(ECLAC)
、ア
フリカ経済委員会
(ECA)
、西アジア経済社会委員会
(ESCWA)
およびその下部組織の定例
会議は、それぞれの委員会がそれを決定し、経済社会理事会および国連総会が承認した場
合は、これらの本部所在地以外で開催することが出来る。
--- 途中省略 ---第5条
国連加盟国政府が、国連事務総長とその会議の性格と開催目的を協議した上で、その領土内に
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おいて、直接的および間接的経費を負担する条件で会議を開催する事を国連と合意した場合は、
国連機関はその会議を国連本部あるいはその下部組織の本部以外の場所で会議を開催すること
が出来る。
第6条
国連の総ての下部組織は、その報告書を総会に提出する場合は9月1日までに行わねばならないと
いう指示を再確認する。当該報告が承認された以降に行われた当該機関に関わる活動の報告が
必要な場合は、上記報告書の付属書として提出する事。
第7条
国連の下部組織は、国連総会が特に承認した場合を除き、国連総会の開催期間中にその会議
を開催してはならない。
第8条
総会は、事務総長に、国連の非公式会議に対する通訳者の派遣を臨機応変に行うことを要請する。
第9条
総会は、事務総長に、国連会議施設の有効活用を達成するため、可能な限り全体計画を策定す
る権限を付与する。
第 10 条
総会は、国連会議運営委員会および事務総長に対して、国連会議の年間会議計画
(案)
の作成
を下記の原則で行う事を要請する:
(a)国連総会で決議された2カ年の会議計画の下で、その他会議を計画する。
--- 途中省略 ---(f)国連総会で認められた本原則に対する例外を除き、国連の機関はそれぞれの本部所在の場
所で会議を開催しなければならない。
--- 以下省略 ---
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参考資料 2:国連事務総長通達
発)国連事務総長補(事務管理担当)
宛)総ての国連機関事務局長および総ての上級国連職員
件名:国連総会決議 第 40/243 号に該当する会議開催国政府との協定書作成指針
序
1.1985 年 12月18日国連総会決議第 40/243 号第 1 部第 5 条では、国連加盟国政府が、国連事
務総長とその会議の性格と開催目的を協議した上で、その領土内において、直接的および間接
的経費を負担する条件で会議を開催する事を国連と合意した場合は、国連機関はその会議を国
連本部あるいはその下部組織の本部以外の場所で会議を開催することが出来ることを規定した。
2.本通達の目的は、国連会議開催国政府との協定書作成と締結を担当する事務局の上級職員に
対して、詳しい指針を示し、開催国政府が負担すべき追加的費用をばらつきの無い様にする事
にある。この指針に外れる行為は、事前に統括責任者の承認を必要とする。本通達は、特別
会議の計画、準備、および運用に関する告示 ST/SGB/160、および宿泊、旅行時間および経
由地での休息に関する基準についての通達 ST/AI/249/ 第 2 版、およびその改正版1号と併読
されたし。
第 1 部 定義
--- 途中省略 ---4.本通達は、下記には適用しない:
(a)アフリカ経済委員会
(ECA)
、ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)
、アジア太平洋経
済社会委員会
(ESCAP)
、および西アジア経済社会委員会
(ESCWA)
が決定し、経済社会
理事会および国連総会が承認の下で、これらの本部所在地以外で開催する会議。
(b)ECA, ECLAC, ESCAP および ESCWA が決定し、これらの本部所在地以外で開催する会議。
(c)国連機関が決定した総体的な使命や計画の下で、事務局自身が開催し、運営されるセミ
ナー、作業部会、特定課題についての専門家会議、およびこれらと同様な性質の会議。具
体的な例としては、国連開発計画
(UNDP)
、国連人口基金
(UNFPA)
、あるいは国連加盟
国政府が予算措置し、国連開発技術協力部が実施する技術支援セミナーや作業部会。
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参考資料 3:国連 CEFACTフォーラムへの HCA 適用に関する国連法務担当見解
発)国際連合欧州本部
事務総長官房 法務問題連絡担当室
Makus Schmidt
宛)欧州経済委員会
Virginia Cram-Martos(国連 CEFACT 事務局長)
Tom Butterly, Rajan Dhanjee
2010 年 10月7日
件名:国連 CEFACTフォーラムへのHCA 適用の件
1.掲題に関して2010 年 9月1日に開催された、国連 CEFACT 議長 Stuart Feder 氏および FMG
議長 Mike Doran 氏との会議内容に於いて明確化を要請された点に関して国連法務部(以下、
OLAと略す)
と協議した結果を下記の通りお知らせします。
2.最初に申し上げたい点は、国連 CEFACTのFMGにおけるStuart Feder 氏および FMG 議長
Mike Doran 氏などの論議、即ち、国連 CEFACTフォーラムの運用はフレキシブル、且つ、世
界展開を各地の実状に合わせて行うべきである、その理由・目的は国連 CEFACT 活動の顕在
化にあるとの主張に対して、私共はいささか神経質になっているという事です。
3.言い換えますと、国連総会決議 40/243 号でその原則が規定され、事務総長通達 ST/AI/342
でその詳細が通達された内容に関連し、当該通達第 4 章の例外規定は国連 CEFACTフォーラ
ムには適用されないというのが我々の見解です。さる9月1日の会議で表明した小職の見解は、
国連法務部でも再確認されました。即ち、国連 CEFACTフォーラムの開催においても原則として
HCAの締結が必要となります。
4.これに関して留意されるべき点は、HCA(会議開催に関する協定書、あるいは交換書簡の形で)
は、会議参加者に対して広範な法的保護を提供するという事です。
特に、国連の任務を遂行する専門家として認定された者に対して特権および免除を授与する事を
HCAは規定する、また、会議に関連し必要となる、会議における公的資格に基づく行動、口頭
乃至は文書による発言に関する責任の免除、あるいは職能の非拘束的行使をHCAは規定する
という事です。
更に付け加えますと、国連法務部および内部監査部の指摘によれば、これら組織の監査人が、
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(当該組織が法的あるいは財政的問題に晒される可能性に対処するために、問題となっている会
議について通常 HCA が必要であると見なされるところの)国連が関わる組織・団体の会議で
HCAや交換公文が励行されていない事に対して疑問を呈する事案が増えつつあるという事が挙
げられます。
5.国連 CEFACTフォーラムのために一定形式の契約が求められるという一般原則の範囲内におい
て、比較的フォーマルでは無い協定を必要とするシナリオや集会事例毎に、その扱いを変える事
は許されると考えられます。
--- a. 国連とオーストリアとの間で結ばれたHCAの第 2 条第2項は、次の様に規定しています。
「国連が開催する会議に対してオーストリア政府の同意に基づき使用されるウィーン市内ある
いは市外の建物は、一時的に国連の場所と見なす。そうした会議については、現行協定
を必要な変更を加えて適用する。
」その結果として、ウィーン郊外のウィーン国際センターで
開催される会議については、別段のHCAを求められません。
--- b. 1946 年に結ばれた国連とスイスのHCA 第 9 条と第 10 条の規定では、国連の下での会議
への参加者に対する特権と免除を定めているがジュネーブ国連本部の内部と外部での差
異を設けていない。従い、スイスで開催される国連の会議については、個別や別段の
HCAを求められておりません。
--- c. 1946 年に結ばれた国連とアメリカ合衆国のHCAでは、特権や免除は「国連本部地域」お
よびその地域との往来に対してのみ与えられている。この場合、国連本部施設外部での会
議については正式なHCAの必要性が質されると考えられます。
--- d. 通例としてHCAを要求される会議が、国連関係機関の施設で行われる場合は、交換書
簡のみが求められる。
(例えば、国連地域経済委員会の本部、アジスアベバのアフリカ経済
委員会、サンチャゴのラテンアメリカ・カリブ経済委員会、ベイルートの西アジア経済社会委
員会、バンコクのアジア太平洋経済社会委員会)
。これらの場所についてはOLA が確認
しています。
--- e. 多人数の参加者のある会議が、国連の施設外および国連関係機関が所在していない国
連関係機関の勤務地で開催される場合は、通常 HCAは必要です
(但し、上記 aおよび b
の例外にはご注意願います)。
欧州経済委員会やその他の国連機関が、国連関係機関が所在していない都市、あるい
は国連関係機関が所在してはいるがその施設外の場所で開催した会議で、HCA が結ば
れた事例は多々あります。
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--- f. 多数の
(例えば数百人規模)
出席のある会議であっても、それが目立たない会議であって、
且つ政府の公式代表が出席しないものは、正式で詳細なHCAに代えて、交換書簡で済
ます事は出来ると考えます。
6.上記の説明が国連 CEFACTのFMGおよび Bureauのお役に立てば幸甚です。上記の国連総
会決議および国連事務総長通達の基本的要求事項を遵守する限りにおいて、HCAの基本条項
の殆どについてそれらを緩和する提案を行う事が出来ます
(例えば、会議参加者や現地スタッフに
対する特権および免除の付与、会議参加者へのビザ発給、保険の付保、第三者賠償責任の
放棄、紛争解決義務など)
。
OLAは、会議開催に先立ち十分な時間的余裕をもって依頼が行われる限り、HCA 草案や、交
換書簡草案のチェックを喜んで引き受けます。仮に、国連 CEFACT が、会議開催予定日と場所
を掲載した年間会議予定表をOLAに公開してくれるならば、我々は助かります。
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参考資料 4:国連 CEFACT 新規プロジェクト提案草案
(TBG15)
政府機関と民間組織の協議に関するモデル化についての勧告開発
提出日:2011 年 3月1日
最終更新日:2011 年 2月27日
1.目的
本プロジェクトは、政府機関と民間組織の協議に関するモデル化についての勧告開発を貿易分
野範囲を限定して行う。
2.範囲
勧告第 4 号は、貿易円滑化推進組織
(PRO-Organization)
を各国に設置することおよびその運
営方法を詳述した。しかしながら、勧告第 4 号は、政府機関と民間組織間の信頼関係の構築や、
民間企業とその組織を片方の当事者とし、政府機関とその部局をもう一方の当事者として、この2
者間の関係を強化するために必要なメカニズムを扱っていない。新勧告は、こうした領域をカバーし、
また、如何に官民協議を進めるかについて、戦略的レベル、戦術的レベル、運用レベルというそ
れぞれのレベルでの差異を明らかにする。勧告は、貿易円滑化に関して、WTO 交渉やその他の
会議の場で論議されている
(貿易円滑化の)透明性と
(官民)協議の必要性に対する解答を与える。
本プロジェクトの範囲は、新勧告の開発にあるが、勧告第 4 号の改訂の必要性も検討する。
広報上の見地より、勧告番号の30 番台は、シングルウィンドウ関係の勧告に予約し、本勧告番
号は40 号を想定する。
3.成果物
本プロジェクトの成果物は下記の通り:
s(官民)協議のモデルに関する勧告
s(官民)協議の指針
s(官民)協議の事例集
4.プロジェクトチームメンバーとその役割上必要となる専門性
本プロジェクトは、官民協議分野、政府間協議、および市民団体活動について広い知見を有す
る専門家の参加を期待する。各国代表団長は、その関係組織の中の専門家に参加を促す事も出
来る。参加する専門家は、単にその専門性に拠ってプロジェクトに貢献するのみでなく、国連
CEFACTの倫理綱領および知財権についての基本方針に従うことが求められる。
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5.地理的条件
(地域性)
本プロジェクトの成果としての勧告は世界各国で採用される事を目的とする。
6.プロジェクト初期に必要となる作業や文書等
添付の拝啓説明書の通り。
7.必要とする人的リソース等
本プロジェクトは、フォーラムの間に活動する。ECE 事務局が提供する電話会議施設を必要とす
る事を想定する。
8.プロジェクトチームと指導者
予定するプロジェクトリーダー:Johan Pontén([email protected])
草案起草担当:Gordon Cragge([email protected])
9.マイルストーン
(作業予定)
2010-05-15 : ODP1を完了
2010-06-01 : ODP2を完了
2010-08-30 : ODP3を完了
2010-10-31 : ODP4を完了
2011-02-31 : ODP5を完了
未定
ODP6を完了
2011-04-28 : ODP7(公開)
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参考資料 5:国連 CEFACT 新規プロジェクト提案草案
(TBG18)
家畜および鮮魚のトレーサビリティ確保のためのデータ辞書構築(草案)
提出日:2011 年 3月30日
最終更新日:-1.目的
本プロジェクトの目的は、家畜および鮮魚についてのトレーサビリティを確保するための正確で最
新の情報へのアクセス手段の提供にある。 電子的情報交換の為のフォーマットの標準化開発に
よって、当該情報を食品安全管理、伝染病や疫病発生時の対処、および自然災害対策などに役
立てる事が出来る。
2.範囲
本プロジェクトの対象は、家畜および鮮魚に限定し、関係政府機関の間
(G2G)
および民間と政
府機関(B2G)
において行われる電子的情報交換のための情報項目の整合化、その前提となる業
務処理プロセスおよび処理手順の標準化の対象とする。
今日、衛生管理などの有効性レベルの改善の目的で、各国の様々な民間組織や政府機関が、
トレーサビリティを確保するために各種の情報を収集している。
本プロジェクトの成果は、政府機関や民間組織が、国内および国をまたがって、農産物や食品
の生産地から消費地までの流通経路を追跡可能にする事で、食品安全管理上のリスク低減、あ
るいは伝染病、疫病、および自然災害発生時における迅速な処理を可能にする事にある。
本プロジェクトでは、下記の項目や分野についてトレーサビリティを確保するための情報項目を検
討する:
• 取引のための品目情報
• 地点(生産地、経由地点、消費地など)
• 関係者
• 連絡先
• 発生事象(トレーサビリティ確保上の事象に限定)
• 輸送
トレーサビリティの定義については、ISO/DIS 22005に準拠し、
「対象が動物、植物、食品、あ
るいは含有物のどれであっても商品として、サプライチェーンのある特定地点から他の地点まで上
流から下流あるいはその逆報告に追跡可能である事」
とする。
マクロ的には、トレーサビリティを確保する為のシステムは、異なる複数の産業のサプライチェーン
で採用されるべきものであるが、本プロジェクトの初期開発は、家畜と鮮魚に限定する。
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3.成果物
想定する成果物は下記の通り:
sUMM/UMLを用いた、トレーサビリティに関わる正確でかつ最新の情報を収集報告する業務
プロセスモデルのカタログ化
s 上記モデルのカタログから利用者が適切なモデル選択するための指針
(電文)
を生成するための業務処理に関するクラス図
sXMLメッセージ
とRSM
(要件仕様記述書)
sBRS(業務要件記述書)
sXMLスキーマ
4.プロジェクトチームメンバーとその役割上必要となる専門性
本プロジェクトは、各国の、トレーサビリティに関する官民協議や、政府間協議、民間組織にお
ける広い知見を持ち、国内問題および国際問題の経験を積んだ方々に広く参加を呼びかける。さ
らに、各国代表団長は、その関係先の中の情報通信技術分野の専門家に参加を促す事も出来
る。参加する専門家は、単にその専門性に拠ってプロジェクトに貢献するのみでなく、国連
CEFACTの倫理綱領および知財権についての基本方針に従うことが求められる。
5.地理的条件
(地域性)
本プロジェクトの成果は世界各国で利用される事を前提とする。
6.プロジェクト初期に必要となる作業や文書等
プロジェクトチームは作業計画草案を本プロジェクト提案に添えて提出する。
当該文書はプロジェクトチーム内部での検討材料として作成される、他のプロジェクト参加者は、
その知見と利害に基づく情報をプロジェクトグループに提供し、より多くの情報を参加者の間で共有
し、プロジェクトを進める事に寄与することが出来る。
7.必要とする人的リソース等
本プロジェクトに必要となる人材は、トレーサビリティに関わる電子的情報交換について広い知識
を持った当該業務の専門家であり、地域や国籍は問わない。
データモデルの専門家も必要となる。
注)本プロジェクトは、ECE 事務局の人的資源を必要としない。
8.プロジェクトチームと指導者
予定するプロジェクトリーダー:Eric Aubin
(カナダ、食品検査庁)
草案起草担当:Frans Van Diepn(オランダ、農務省)
予定するプロジェクトメンバー:
(作業予定)
9.マイルストーン
追って、決定する。
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参考資料 6:用語の定義
i)文書
本報告書中の記述で「文書」
(Document)
と書かれている場合、特記されていない限り、それら
は総て、紙の文書ではなく、XML/EDI で送受信されるデータ一単位であって、その内容が
(一
定のフォーマットによる)一件の文書、書類あるいは図表であるものを意味する。
ii)メッセージ
本報告書中の記述で、
「メッセージ」
と書かれている場合は、EDIFACTなど在来型のEDI で送
受信されるデータ一単位であって内容は上記「文書」
と同等のものを意味する。
iii)公開開発手順(ODP)
国連 CEFACTの各種勧告や技術標準は「公開開発手順」(ODP : Open Development
Process)
によって、その着手から公開標準として一般に公開するまでの全過程を1から7までの段
階に区分し、公開を原則に恣意性を排し、ルールベースで作業が進められます。本報告書中では
ODPと略し、段階の数字を添える。
ODP1: ステップ 1 --- プロジェクトの企画書の立案・開発担当チーム編成
ODP2: ステップ 2 --- 対象業務の要件収集と取り纏め
ODP3: ステップ 3 --- 開発担当チーム内部草案起草
ODP4: ステップ 4 --- 開発担当ワーキンググループ内部での草案の検討・審議
ODP5: ステップ 5 --- パブリックレビュー
(ユーザを始めとする利害関係者に対する意見の募集)
ODP6: ステップ 6 --- 実用性検証あるいは導入検証
ODP7: ステップ 7 --- 標準あるいは勧告としての正式公開
iv)BRS / RSM
下記の文書は国連 CEFACTにおける技術標準仕様を開発し公開する上での基本文書として
同組織の運用規約に定められている。以下の報告中ではこれらは総て下記の略号で表記する。
又、これらの文書中で用いられるモデル化技法は、国連 CEFACT 標準モデル技法
(略称:
UMM)
を使うルールとなっている:
BRS(Business Requirement Specification)
:業務要件記述書
RSM(Requirement Specification Mapping)
:要求技術仕様マッピング ‒ BRSで定義された
対象データモデルとコア構成要素辞書との対応関係を記述する文書)
v)B-S-Pモデル
国連 CEFACT が開発を進めている受発注
(Buy)
から出荷
(Ship)
、さらには代金精算
(Pay)
に
至る国際および業際サプライチェーンを包含する一連のビジネスプロセスの総称。これらをデータモ
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デル化した上で、それらを整流化し簡素化する事を目指している。
vi)CEN
欧州標準化委員会(European Committee for standardization)
http://www.cen.eu/cenorm/homepage.htm
下記の作業部会などを運営している
vii)ISSS
情報化社会標準体系:Information Society Standardization System
通常、CEN/ISSSと結合して表記する。
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参考資料 7:TBG 所属グループリスト
TBG1
サプライチェーン Supply Chain
TBG2
空席
TBG3
運輸 Transport
TBG4
税関 Customs
TBG5
金融 Finance
TBG6
建設 Architecture, Engineering and Construction
TBG7
無期限休止 (Statistics)
TBG8
保険 Insurance
TBG9
旅行・観光 Travel and Leisure
TBG10
保健・厚生 Health care
TBG11
無期限休止(Social Security, Employment and Safety)
TBG12
会計・監査 Accounting and Auditing
TBG13
環境問題 Environmental Management -
TBG14
ビジネスプロセス分析 Business Process Analysis
TBG15
国際貿易手続円滑化 International Trade Facilitation
TBG16
受付窓口 Entry Point(Asia, Australia, Europe, USA)
TBG17
共通辞書整合化作業 Harmonization
TBG18
農林水産業 Agriculture
TBG19
電子政府 e-Government
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◇連載◇
記事2. 貿易慣習の諸問題
(1)
早稲田大学名誉教授 朝岡 良平
1.CIF 条件と連鎖取引
1.1 本稿の目的
1.1.1 連鎖取引における既積品の調達
2010 年インコタームズは、
「序論」において、幾つかの改正点に言及していますが、その1つと
して、運送中の物品に複数回の売買が行われる、いわゆる連鎖売買
(string sales)
について、
次のような説明があります 1。製品の売買に対して、商品(commodities)
の取引においては、貨
物の輸送中に「紐のように連なって」、しばしば数回売買が行われます。このような取引では、紐
の中間にいる売主は、紐の最初の売主によって既に物品は船積みされているので、物品を
「船
積みする」
ことはありません。したがって、紐の中間にいる売主は、自分の取引相手である買主
に対する引渡義務を、
「物品の船積」によるのではなく、既に船積みされた「物品の調達」によって
履行します。この点を明確にするため、2010 年インコタームズは、このような取引に関連する取
引条件において、物品を船積する義務に対する選択肢として、「船積みされた物品を調達する」
義務を含ませています。
1.1.2 CIF 契約における既積品の調達義務
すでに紹介したことですが、2010 年インコタームズでは、CIFおよび CFR 条件における売主
の引渡義務を次のように修正しています。
「(A4 項)売主は、船舶上に物品を置くか、またはその
ように引渡された物品を調達することによって、物品を引渡さなければならない。いずれの場合に
も、売主は、合意された期日または期間内に、かつ、港の慣習的な方法で物品を引渡さなけれ
ばならない。」
しかし、インコタームズには、連鎖取引についてこれ以上の説明がありません。また、
この取引に関連する取引条件も具体的に示されていません。そこで、本稿では、CIF 条件と連
鎖取引の関係、連鎖取引における問題点を考察したいと思います。
1.2 連鎖取引とは何か
1.2.1 CIF 条件による通常の貿易取引
CIF 条件による通常の貿易取引を説明する場合、
[図 1]
のS
(売主、輸出者)
とA
(買主、輸
入者)
の間の売買契約について説明します。例えば、SはLondonの輸出貿易商で、Hamburg
の輸入貿易商であるAとCIF Hamburg 条件による売買契約を結んだと仮定します。Sは、船積
1 ICC, Incoterms 2010 , Introduction, para.9.
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港であるLondonで、自分が手配した船舶に物品を積込むか、または、既積品
(goods afloat)
を調達して、引渡を完了します。SはHamburgまでの海上運送および海上保険の手配を行い、
船荷証券、保険証券およびインボイスをAに提供します。Aは、船積書類と引換に代金を支払い、
Hamburgに到着した物品を運送人から受取ります。約定品を製造する工場でストライキが生じ
たため、物品の供給ができなくなったとき、Sは同種類の物品を他から調達する義務があるか否
かが問題になります。契約に定めた期間内に船積ができない場合には、Aとの契約にもとづく引
渡不履行の責を負うことになります。あるいは、物品が輸出禁止になった場合、Sは免責になる
のか、Aは損害賠償を請求できるのかという問題が生じる可能性がありますが、連鎖取引におけ
る契約に比べると、問題は比較的容易に解決できると考えます。
1.2.2 商品取引における既積品の売買
穀物、大豆、羊毛、などの商品は、実際の需給関係だけでなく、国際商品市場における投
機の対象として価格が大きく変動するので、これらの積荷は海上運送中に数回にわたり転売され
ることがあります。このような商品の売買においては、約定品の船積地は必ずしも売主の所在地
を意味するものではありません。例えば、ロンドンのような国際商品市場に営業所を有する貿易商
の取引にみられるように、
[図 1]
の売主(A)
も買主(B)
も共に同一地域に居て、買主が米国産の
大豆やオーストリア産の羊毛を売主から購入し、この大豆をNew OrleansからCIF Marseille/
Amsterdam/Hamburg 条件、あるいは、Sydneyから羊毛をCIF Kobe 条件で、船積港にい
る荷送人(S)
により需要国の購買者(sub-purchaser)
に向けて船積みします。積荷は海上運送
中に、さらに第 2、第 3の購買者に転売されることがあります。そして、最後の売買契約の買主
(Pn)
が、陸揚港で船舶から積荷を受取ることになります。このように、SからPnまで多数の売買
契約が鎖または紐のように連なるので、これを連鎖契約
(string またはchain contracts)
とか連
鎖取引
(stringまたは chain transactions)
と呼ぶことがあります。
[図 1] S(S1, S2, . .) (船積地、輸出国)
↓(契約の流れ) ↓(物品の流れ)
A ――→ B ――→ P1 ――→ P2 ――→ Pn (陸揚地、輸入国)
連鎖取引では複数の契約が文字通り連らなるので、その中間にある契約では、その契約の
売主は直前の契約の買主であり、また買主は次の契約の売主になります。最初のCIF 契約の
売主(または荷送人)
は、物品を船積港で船積みしますが、2 番目のCIF 契約の売主は、その
売買契約と同一条件で既積品を購入し、これを売買契約に充当する場合には、その物品の品
質 ・ 数量および船積などの諸条件がその売買契約に記載されている諸条件と合致しているかぎ
り、その既積品の船荷証券を取得して、これを買主に提供することにより、物品を売買契約に充
当したものと認められています。CIF 契約の売主が、物品の船積の他に、既積品の調達を認め
られているのは、船積書類による象徴的引渡というCIF 条件の特質によるものです。このように、
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CIF 条件の船積港は、必ずしも売主の営業所のある場所ではなく、一般に売買の目的物を積載
して、契約に指定された陸揚港に向けて発航しようとする船舶が停泊している港です。また、陸
揚地が最終的に決定しないで物品が船積されることがあります。物品の転売先
(市場)
を考慮し
て、上記のように、Marseille/Amsterdam/Hamburgのように陸揚地を表示することがあります。
既積品を売買の目的物とする貿易取引では、揚地選択B/Lを用いて、船舶の航海中に取引先
と商談を成立させ、積荷の陸揚地が決定したとき、売主が船主に船舶の陸揚港を通知し、そ
の港で積荷を買主に引渡すことが行われます。
1.2.3 連鎖取引における問題点
連鎖取引では、約定品の輸出または輸入が禁止になった場合、あるいは不可抗力
(地震、
戦争、ストライキなど)
の発生により船積みができなくなった場合、売主は契約の免責条項、不可
抗力条項などにより、免責が認められるのか、あるいは代替品として既積品を調達しなければな
らないのか、また買主は売主に対して既積品の調達を要求し、あるいは損害賠償を請求できる
のか、といった問題が生じます。連鎖取引の契約数が多くなると、中間の契約に関する情報が
途絶えるなどの理由で、輸出禁止または輸入禁止による引渡不履行を証明することができず、
免責の手続が遅延または不能になることが考えられます。また、契約履行を妨げるような出来事
が生じた場合に、全ての契約の売主が同じ責任を問われるのかといった問題も考えられます。
1.3 既積品の調達義務
1.3.1 売主による充当の通知
CIF 契約の売主は、契約に定められた期間内または合理的な期間内に、契約に一致した物
品を船積港で船舶に船積みするか、あるいは、売買契約に定めた物品が、契約成立の当時、
既に船舶に積込まれている場合、あるいは売主が契約を履行するため既積品を購入する権利を
有する場合には、既積品を調達しなければなりません。「既積品の売買契約は、実務上、CIF
契約またはC&F 契約と同義である」
と言われています 2。既積品を調達する場合には、売主の
履 行は、その物 品を売 買 契 約に充 当するだけです。すなわち、 充 当の通 知(notice of
appropriation)
と船積書類を買主に提供することによって、物品が売買契約に充当されたと推
定されます 3。CIF 契約において、何れの方法によって契約を履行するかを明示的に合意できま
すが、別段の合意がない場合には、売主がこれを選択できます。しかし、いずれか1つの方法
による履行が不可能となったとしても、売主は通常、他の方法によって履行する義務があるので、
契約は履行不能により解除されることはありません。例えば、CIF 契約の売主が物品の船積を
予定していたが、不可抗力の発生により、物品の船積ができなくなったとき、船積不履行の訴訟
2 Esteve Trading Corp. v. Agropee International(The Golden Rio)[1990] 2 Lloyd’
s Rep. 273, 276.
3 1932 年ワルソー ・オックスフォード規則の「規則 2 船積に関する売主の義務」
を参照。
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において、売主が不法性について答弁できる場合を除いて、売主は通常、既積品を調達する
義務を負うことになります 4。
1.3.2 買主による拒絶権
CIF 契約では、通常、売主から買主へ送付される充当の通知によって物品が契約に充当さ
れます。この通知は、一般に契約によって要求され、船舶の名称、船荷証券の発行日、および
船積数量を記載して、物品の船積後、指定された期間内に、買主に届けられることを要します 5。
この充当の通知により、CIF 契約の買主は、物品の転売に関する重要な情報を次の購買者に
対して迅速に伝えることができます。契約が明示的に売主による充当の通知を要求している場合、
これは、売主の義務の履行における重要な手続の1つなので、これを怠ったとき、または著しく
遅延したとき、買主は書類の受理を拒絶し、契約を取消す権利を取得します 6。
1.3.3 履行の延期を要請する通知
充当の通知が指定期間内に送付されなかったとき、買主は、この不履行に対して、指定期
間内の最終日に、損害賠償の請求を行うことができます。また、遅延した通知は、充当の通知と
しての効力がないので、買主はこれを拒絶できます 7。しかし、他の事件では 8、貴族院は、控
9
訴裁判所と異なる意見を示し、当該契約(GAFTA 100)
および四囲の状況にもとづいて、売
主が船積履行期間の延期を要請する通知(notice of extension)
を、充当の通知をなすべき期
間内に、遅滞なく送付しなかったが、これは契約の重要な要件ではないので、契約期間の延期
および当該契約の解除を要請する売主の権利を消滅させるものではないと判示しました。
1.3.4 不可抗力による免責の要件
そこで、Vantol(J.H.)Ltd. v. Fairclough, Dodd & Jones ltd. 事件 10 において、McNair 判
4 イギリス法では、不法性に関する訴訟で勝つためには、契約の準拠法または行為地法により訴訟を提起しなければなりま
せん。Congimex S.a.r.l.(Lisbon)v. Continental Grain Export Corp. [1979] 2 Lloyd’
s Rep. 346(C.A.)および
Congimex Companhia Geral de Comercia Importadora e Exportadora S.a.r.l. v. Tradax Export S.A. [1983] 1
Lloyd’
s Rep. 250(C.A.)
では、CIF 契約の買主により不法性について答弁がなされましたが、原則が準用されました。
D.M. Sassoon, C.I.F. and F.O.B. Contracts, 4th ed., 1995, p.35.
5 Dalgery v. Bradfield(1930)35 Com.Cas. 213; Comapagnie Continental d’
Importation v. Handelsvertretung
der USSR in Deutschland(1928)138 LT. 663(C.A.).
6 Societe Italo-Belge Pour le Commerce et l’
Industrie v. Palm and Vegitable Oils(Malaysia)Sdn. Bhd.(The
Post Chaser)[1981] 2 Lloyd’
s Rep. 695, at p.700, per Golf J.
7 Bunge GmbH v. C.C.V.Landbouwberland G.A. [1878] 2 Lloyd’
s Rep. 217, affd. by C.A. in [1980] 1 Lloyd’
s Rep. 458.
8 Bremer Handelsgesellschaft mbH v. Vanden Avenne-Izegem P.V.B.A. [1978] 2 Lloyd’
s Rep. 109(H.L.)
.
9 The Grain and Feed Trade Associationの略。穀物、飼料、豆類、米穀などの国際取引は、長年にわたり伝統的
にGAFTA 標準契約書式を用いて行われています。
10 Fairclough, Dodd & Jones Ltd. v. Vantol(J.H.)Ltd. [1956] 3 All E.R. 921; reversing sub nom. Vantol(J.H.)
Ltd. v. Fairclough, Dodd & Jones Ltd. [1955] 3 All E.R. 750; affirming [1955] 2 All E.R. 516.
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事は次のように述べています。
「一般に、
(a)売主自身が船積を妨げられたこと、および(b)売主が
約定期間内に船積みされた既積品の購入により契約を履行することが不可能であったことの2つ
を証明し得ぬかぎり、売主は、特定の事由により船積が妨げられた場合に契約を解除する旨の
契約条項にもとづいて、免責を主張することはできない。」11 けれども、CIF 契約の売主が不可抗
力により物品を船積みできない場合に、既積品の購入義務があるか否かについて疑問視する意
見もありました。例えば、Joseph Pyke & Son(Liverpool)v. Richard Cornelius & Co. 事件 12
では、売主は輸出が不可能であったことを証明できなかったので、既積品を購入する義務を履行
したか否かという問題は議論されませんでした。しかし、この事件で、Sellers 判事は、次のよう
な意見を述べています。
「(売主は)既積品購入の義務に関する実務と慣習上の証拠を提出するこ
とが必要である。私は間違っているかもしれない ―私は分からないが― CIF 条件による貿易取
引が始まってから何年も経過したのであるが、契約を履行するために、既積品を購入するのが慣
例であるのか否か、また、買主がそれを期待しているのか否か、私には分からない。」13
1.3.5 既積品の調達不能の証明
1975 年のP. J. Van Der Zijden Wildhandel N.V. v. Tucker & Cross Ltd. 事件 14 におい
て、Donaldson 判事は、不可抗力による売主の免責が認められなかったことを考慮して、次のよ
うに述 べています。「CIF 条 件によるChinese rabbitsの売買契 約における売 主の義 務は、
rabbitsそれ自体を船積みすることではなく、書類を提供することである。既に船積みされた
Chinese rabbits が存在するならば、売主はそれを購入すべきであったし、それが存在しないとき
は、そのような既積品のrabbitsの調達ができなかったことを証明するのが売主の義務である。」15
1.4 連鎖取引と輸出入ライセンス
1.4.1 輸入ライセンスを取得できない場合
CIF 契約では、別段の取決めがなければ、輸入ライセンスが必要である場合、それを取得す
るのは買主の義務であり、また輸出ライセンスを取得するのは売主の義務です。この義務が絶
対的であるか、あるいは条件付であるかは、すなわち、ライセンスを取得するためにあらゆる合
理的な注意を払う義務があるか否かは、契約条項によって決まります。この点について契約に何
ら取決めがないときは、輸入ライセンスの取得に関する危険を絶対的に負担する義務は買主にあ
るのに対し、売主がライセンスを取得するためにあらゆる合理的な注意を払うというのは条件付義
務です。そこで、輸入ライセンスが許可されなかった場合には、売主の努力が全く役立たなかっ
11 Ibid., [1955] 2 All E.R. 516, at p.519.
12 Joseph Pyke & Son(Liverpool)v. Richard Cornelius & Co. [1955] 2 Lloyd’
s Rep. 747.
13 Ibid., at p.751.
14 P. J. Van Der Zijden Wildhandel N.V. v. Tucker & Cross Ltd. [1975] 2 Lloyd’
s Rep. 240.
15 Ibid., at p.242.
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たとしても、売主側には何の過失もなく、契約は解除されます。Mitchell Cotts & Co.(Middle
East)Ltd. v. Hairco Ltd. 事件 16 において、被告は、Sudanにある原告の支店から大量のヤ
ギの毛(goat hair)
を買付ける契約を締結しました。契約の条件は、
“c.i.f. payment net cash
after approval of the goods at the port of arrival”
というものでした。イギリスの1940 年物品
輸入(管理)令(the Import of Goods(Control)Order 1940)
に規定する輸入ライセンスを何
れの当事者が取得すべきであるかという取決めは全くなく、何れの当事者も相手方の当事者がそ
れを取得するものと考えていました。物品が到着した時、買主はすでに船積書類を受領していま
した。けれども、物品の輸入ライセンスがないので、物品は税関当局に没収されてしまいました。
そこで、買主は代金支払を拒み、輸入ライセンスを取得するのは売主の義務であり、かつ物品
の承認
(approval)
が代金支払義務の停止条件であると主張しました。控訴裁判所は、本件の
売主に代金請求する権利があると判示しました。買主は、物品を承認できなかった点について、
自分に過失がなかったことを証明し得ないかぎり、物品の承認が代金支払いの停止条件である
ことを主張できません。買主が物品を承認するか否かを表明するためには、何らかの手続が必
要ですが、まず物品を検査する権利を関係当局から取得しなければなりません。けれども、この
事件では、買主は必要なライセンスを取得する努力を全く行わなかったので、もし買主が輸入ラ
イセンスを取得する努力をしたにも関わらず、これが取得できなかった場合にどうなるかという問題
は議論されませんでした。
1.4.2 輸出ライセンスを取得できない場合
Anglo-Russian Merchant Traders Ltd. v. J. Batt& Co.(London)Ltd. 事件 17 において、
売主は、輸出ライセンスを取得できなかったことを理由として、船積の責任を免れると判示されまし
た。両当事者は、イギリス政府の輸出ライセンスなしに船積ができないという輸出管理規則の存在
を知っており、これを考慮した上で、契約を締結しました。この事件で、売主には輸出ライセンス
を取得できなかったという結果について責任を負うことはないが、輸出ライセンスを取得するために
あらゆる合理的な手続を取らなければならないので、売主は、輸出ライセンスを取得する努力をし
たこと、ならびに、申請手続を行ったにもかかわらず、これを取得できなかったこと、または、自分
がライセンスを申請しても承認されなかったことを証明しなければなりません 18。この契約には、「輸
出ライセンスの許可を条件として」
(subject to granting of an export licence)
という文言が付記
されていたので、明らかに、売主は輸出ライセンスを取得するために最善を尽くすという条件付義
務を負うだけです。したがって、売主が実際にこの義務を履行したか否かということだけが問題に
なります。例えば、Societe D’
Avances Commerciales(London)Ltd. v. A. Beese & Co.
16 Mitchell Cotts & Co.(Middle East)Ltd. v. Hairco Ltd. [1943] 2 All E.R. 552.
17 Anglo-Russian Merchant Traders Ltd. v. J. Batt & Co.(London)Ltd. [1917] 2 K.B. 679.
18 J. W. Taylor & Co. v. Landauer & Co.(1940)57 T.L.R. 47.
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(London)Ltd. 事件 19 において、売主は、輸出ライセンスの申請を行いましたが、許可されなかっ
たので、何回申請しても無駄であると考えて、その後、輸出ライセンスの申請を全くしませんでした。
法廷は、売主が輸出ライセンスを取得するためにあらゆる合理的な手続をとる義務を怠ったと判示
しました。また、Vidler & Co.(London)Ltd. v. K. Silcock & Sons Ltd. 事 件 20 において、
CIF 契約の売主は、輸出禁止に関する免責条項が契約に挿入されていても、最初から失敗する
と分かっている物品の船積についても、ライセンスを取得する合理的な手続を取ったことを証明で
きなければ、輸出禁止を理由に契約を解除することができないと判示されました。
1.5 連鎖取引と輸出禁止
1.5.1 船積ができなくなった荷送人の確認
同様に、連鎖取引における売買契約が不可抗力による売主の免責
(契約の免責条項の範囲
内)
を規定する場合、一般に、売主が契約に充当することを意図した物品の船積を妨げる事由
を列 挙しますが、このような状 況にある売 主 の 責 任について、Cook Industries Inc. v.
Meunerie Ligeois S.A. 事件 21 において、Mustill 判事は、次のように述べています。「売主は
輸出禁止により、予定していた供給者が被った影響を証明する必要はない。売主がなすべきこ
とは、輸出禁止により、まだ充当されていない物品を船積みできる荷送人がいないことを証明する
か、あるいは売主が物品の購入を予定していた荷送人で、輸出禁止により規制されない者は一
人もいないことを証明すればよい。したがって、個々の積荷ではなく、関連のある荷送人に注意
しなければならない。」他方、Bremer Handelsgesellschaft mbH v. Westzucker GmbH 事件
22
おいて、Phillips 判事は、上記のMustill 判事の述べた「輸出禁止により、まだ充当されてい
ない物品を船積みできる荷送人がいないことを証明する」
ことについて、このような判例の状況に
おいて生じる可能性があるか否か、疑わしいと述べています。そこで、この事件で、Philips 判
事の意見を容認して、Lord Acknerは次のように述べています。「連鎖取引における船積が輸
出禁止により、当該取引のいずれかの部分が妨げられたので、売主はまず第1に、輸出禁止を
考量して、船積ができなくなった荷送人を確認しなければならない。これが証明できないと、輸出
禁止の場合の免責条項にもとづく免責を要求できず、損害賠償の責を負うことになる。」23
1.5.2 輸出禁止まで猶予期間がある場合
Ross T. Smyth & Co. Ltd.(Liverpool)v. W. N. Lindsay Ltd.(Leith)事件 24 において、
500トンのシチリア産ソラマメ
(Sicilian horse beans)
を
“Shipment from Sicilian port October
19 Societe D’
Avances Commerciales(London)Ltd. v. A. Beese & Co.(London)Ltd. [1952] 1 T.L.R. 644.
20 Vidler & Co.(London)Ltd. v. K. Silcock & Sons Ltd. [1960] 1 Lloyd’
s Rep. 509.
21 Cook Industries Inc. v. Meunerie Ligeois S.A. [1981] 1 Lloyd’
s Rep. 359, at p.365.
22 Bremer Handelsgesellschaft mbH v. Westzucker GmbH [1981] 1 Lloyd’
s Rep. 207.
23 Vanden Avenne-Izegen P.V.B.A. v Fingrani S.A. [1985] 2 Lloyd’
s Rep. 99.
24 Ross T. Smyth & Co. Ltd.(Liverpool)v. W. N. Lindsay Ltd.(Leith)[1953] 1 W.L.R. 1280.
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and/or November 1951 at £31 15s. per ton c.i.f. Glasgow.”
条件で売る契約を締結しました。
この契約には、
「本契約の履行が輸出禁止により不可能となったときは、履行不能となった部分は
解除されるものとする」旨の約款が挿入されていました。契約成立の日時には、ソラマメの輸出は
許可されていましたが、1951 年 10月20日付のイタリア政府の輸出管理規則により、特別ライセン
スを取得した場合にのみ輸出が許可されることになりました。この契約にもとづく船積が全く行われ
なかったので、買主は売主に対して契約不履行を宣言しました。この紛争は仲裁に付託され、
売主の履行不能はイタリア政府の法律変更によるものであり、売主に責任はないと判断されまし
た。しかし、仲裁裁判所の判断に対して、Devilin 判事は、次のような理由で、売主に責任が
あると判示しました。輸出禁止は即時に発効したものでなく、売主は、同規則の発効日まで10日
間の船積可能な期間があったにもかかわらず、この期間があることを見出す努力をしないで、単
に輸出禁止により船積が不能になったというのは、売主の履行義務を免れしめるものではないと
述べて、仲裁判断を覆しました。また、他の判例では、CIF 契約にもとづいて、物品の船積が
開始されたとき、輸出禁止令が公布されました。若干の猶予期間が設けられており、指定日時
以前にすでに艀に積込まれたか、または本船への船積が行われており、指定日時に60%以上が
船積みされた物品については、適用されないことになっていました。しかし、これを証明できなかっ
た売主は、輸出禁止令の適用除外の恩恵に与ることができませんでした 25。
1.5.3 商品の供給不足の場合、既積品の調達義務はない
輸出禁止により混乱が生じたので、挙証責任の要件は幾分緩和されたようでした。Andre &
Cie S.A. v. Tradax Export S.A. 事件 26 において、控訴裁判所は、売主が船積みできなかった
のは輸出禁止によるものであり、契約成立時に、新たに輸出契約を合法的に締結する荷送人が
皆無であり、また市場で同種類の物品を調達できる情報も証拠もないことを証明することにより責
任を免れると判示しました。連鎖取引において、売買される商品が供給不足である場合には、
売主は既積品を購入する義務および輸出禁止令の発効後における船積手配の義務がないとい
う判例があります 27。反対に、買主側から、輸出禁止になっても、若干の適用除外が認められる
ので、連鎖取引の売主がこのような状況の下でも船積を履行できたのではないかという意見が述
25 Andre & Cie S.A. v. Ets Michel Blanc & Fils [1979] 2 Lloyd’
s Rep. 427(C.A.);Bunge S.A. v. Deutsche Conti-
Handelsgesellschaft mbH [1979] 2 Lloyd’
s Rep. 435(C.A.);Avimex S.A. v. Dewulf & Cie [1979] 2 Lloyd’
s Rep. 57;
Bremer Handelsgesellschaft mbH v. C. Mackprang Jr. [1979] 1 Lloyd’
s Rep. 221(C.A.); Raiffeisen
Hauptgenossenschaft v. Dreyfus(Louis)& Co.; Dreyfus(Louis)& Co. v. Becher(Kurt A.)[1981] 1 Lloyd’
s Rep.
345; Bremer Handelsgesellschaft mbH v. Continental Grain Co. [1983] Lloyd’
s Rep. 269; Bremer Handelsgesellschaft
mbH v. Bunge Corp. [1983] 1 Lloyd’
s Rep. 476(C.A.).これらの連鎖取引に関する事件は、1973 年夏にアメリカから船
積みされた脱脂大豆に関する紛争で、同国の1969 年輸出管理法および同管理規則の影響があるようです。
26 Andre & Cie S.A. v. Tradax Export S.A. [1983] 1 Lloyd’
s Rep. 254(C.A.)
.: Cook Industries Inc. v. Tradax
Export S.A. [1983] 1 Lloyd’
s Rep. 327, affd [1985] 2 Lloyd’
s Rep. 457(C.A.)
27 輸出禁止の場合、船積を手配する義務がないという判例に、次のものがあります。Continental Grain Export Corp. v.
Still Grain Ltd. [1979] 2 Lloyd’
s Rep. 460; Toepfer v. Schwarze [1980] 1 Lloyd’
s Rep. 385(C.A.)
; Bunge S.A. v.
Kruse [1980] 2 Lloyd’
s Rep. 142(C.A.);Tradax Export S.A. v. Cook Industries Inc. [1982] 1 Lloyd’Rep. 385.
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べられることが仲裁であっても、法廷でこの問題が取上げられることはありません 28。
1.5.4 既積品の購入だけが予定されていた場合
連鎖取引に関連するCIF 契約の判例では、若干の場合に、当事者たちは、売主による物品
の船積を全く考えておらず、最初から
「既積品の購入」
を予定していました。このような事件では、
輸出禁止の結果、船積の不可能を答弁、あるいはそのために免責条項を援用する売主の権利
は明らかに制限されます 29。
1.6 Tradax v. Andre 事件
1.6.1 不可抗力の場合、既積品の調達義務はない
Tradax Export S.A. v. Andre & Cie S.A. 事件 30 において、控訴裁判所(Denning, M.R.、
Orr 判事および Browne 判事)
は、連鎖契約において、売主が既に物品を船積みする手配をし
ており、その後、不可抗力あるいは輸出禁止により、船積が妨げられた場合には、CIF 契約の
売主は、契約上の義務を履行するために既積品を調達する必要がないと判示しました。換言す
れば、連鎖取引の最初の契約の売主(または荷送人)
によって船積手配がすでに行われていると
きは、その後、売主が予定していた履行方法を妨げるような事態が生じた場合、そのような状況
において代替品として入手可能な物品の数量は極めて少ないので、売主が契約を履行するため
に既積品を購入できなかったことを証明しなくても、契約を解除できるということです 31。この事件
において、Lord Denningは次のように説明しています 32。
「このような取引においては、売主がす
でに船積手配を行った後で、当初予定していた船積港から直接物品を入手できなくなった売主
に対して、契約に一致する数量の既積品を購入しなければならない義務を課することは、大変
難しいことである。もし既積品を購入する義務があるとする場合、一体、誰がそれを購入するの
だろうか。買主に対する義務を履行するために、それぞれの売主が、既積品を購入するのだろ
うか。もしそうだとするならば、大勢の買主が僅かな物品を探し求め、その結果、価格が異常に
高騰することになろう」
と述べています。特に、この事件に関する資料によると、既積品の数量が
極めて少量であるのに対して、これを希望する買主が大勢なので、もし既積品の購入が要求さ
れるときは、買主自身が限定された数量の既積品を探し求めることになるであろうということです。
その後の判例で、このような状況にある場合、
「既積品を購入する義務は実際的でなく、かつ商
28 この点について、次の判例を参照されたい。Bremer Handelsgesellschaft mbH v. Raiffeisen Hauptgenossenschaft eg
[1982] 1 Lloyd’
s Rep. 599(C.A.);Raiffeisen Hauptgenossenschaft v. Louis Dreyfus & Co. Ltd; Dreyfus v. Becher
[1981] 1 Lloyd’
s Rep. 345; Bremer Handelsgesellschaft mbH v. Westzucker GmbH, supra ; Bremer Handelsgesellschaft mbH v. Westzucker(No.2);Westzucker GmbH v. Bunger GmbH [1981] 2 Lloyd’
s Rep. 130(C.A.);Cook
Industries Inc. v. Meunerie Liegeois , supra; Bremer Handelsgesellschaft v. C. Mackprange Jr., supra.
29 Bunge S.A. v. Deutsche Conti-Handelsgesellschaft mbH, supra.
30 Tradax Export S.A. v. Andre & Cie S.A. [1976] 1 Lloyd’
s Rep. 416.
31 D. M. Sassoon, op. cit., p.37.
32 Tradax Export S.A. v. Andre & Cie S.A., supra , at p.423.
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業上も望ましくものでない」
という意見が述べられています 33。
1.6.2 複数港から船積ができる場合
Tradax Export S.A. v. Andre & Cie S.A. 事件における特別の状況を考慮して、複数の国
の港(ports)
から船積をすることができた売主が、或る国の港から船積みする手配をすでに行っ
た後で、その港からの輸出が禁止になった場合には、この売主による不可抗力条項の適用を認
めないという判例があります。Warinco A.G. v. Fritz Mauthner 事件 34 において、控訴裁判所
は、Donaldson 判事が Tradax v. Andre 事件の判決を支持して、売主に有利な判決を下した
意見を覆しました。この事件の概要は次のとおりです。売主は、買主に対して、1,000トンの脱
脂大豆(soya bean meal)
を
“c.i.f. Weser, shipment Mediterranean port between May 29
and June 16, 1973.”
という条件で売る契約を締結しました。この契約には、「本契約に指定され
ている港のある原産国または地域の政府により輸出が禁止される場合」には、免責になる旨の約
款が挿入されていました。売主は、この契約を履行するために、
“f.o.b. Piraeus”
条件で脱脂大
豆を購入し、これを仕向地であるWeser へ輸送するための船舶を傭船しました。輸出ライセンス
を取得しましたが、船積が始まった日に輸出禁止となり、船積期間内に、残余の貨物を船積み
することが違法となりました。売主は、すでに輸出ライセンスを取得しているので、その輸出を認
可するか、または新規の輸出ライセンスを発行するよう関係当局に申請しましたが、許可されませ
んでした。買主は引渡不履行による損害賠償を請求しましたが、下級裁判所は、Tradax v.
Andre 事件のルールに従って、これを拒否しました。これに対して、控訴裁判所は、買主の損
害賠償請求を認め、判決理由の中で,Megaw 判事は次のように述べています。
「多数の判例に
もとづいて、法律上のルールは明白である。一般に、売主が多数の港の中から特定の港を選択
し、その港から船積みさた物品の供給を引き受けた場合、免責条項に記載されているような出
来事が、多数の港の中の1つの港だけに影響を及ぼす時は、売主はこの出来事を援用すること
ができない。ただし、売主は、合理的な努力をしたにもかかわらず、
(そして、私は、このような
努力について要求される基準が何かという点に言及しないが)
、契約に一致する物品を契約期
間内に、他のいかなる港からも船積みすることができないことを証明できる場合には、このかぎり
“f.o.b. Piraeus”
条件で脱脂大豆を購入した供給者に対し
でない。」35 しかし、この売主は、彼が
て提起した訴訟では、同じ判決を得ることができませんでした。FOB 条件による供給者は、契
約に挿入されていた同様の免責条項を援用し、供給者の義務はギリシャ国内における引渡なの
で、輸出禁止による引渡不履行に対する責任はないとされました 36。
(続)
33 Bremer Handelsgesellschaft mbH v. Vanden Avenne-Izegen P.V.B.A., supra, at p.115, per Lord Wilberforce.
34 Warinco A.G. v. Fritz Mauthner [1978] 1 Lloyd’
s Rep. 151(C.A.)
.
35 Ibid., at p.153.
36 Provimi Hellas A.E. v. Warinco A.G. [1978] 1 Lloyd’
s Rep. 373(C.A.).
̶ 35 ̶
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記事3. 国連 CEFACTからのお知らせ
3.1 2011 年 4月12日
TBG15
(国際貿易手続き円滑化グループ)
は官民協議に関するモデル化に関し、関係先に参加
を呼びかけております。 本件に関する勧告が広く受け入れられ、より多くの国で施行され、その恩恵
を十分に受けられることを期待致します。
本プロジェクトに参加する専門家としては、当該組織・団体で、官民両サイドからの協議・相談の
処理、政府間の交渉及び民間団体組織など実務に通じた方々が望ましいと考えております。更に、
各国代表団長は、それぞれの国の組織・団体の専門家を指名出来ます。 指名された専門家は自
身の専門分野から、国連 CEFACTの行動規範及び知的財産権政策に則り活動して戴きます。
現在 TBG15のメンバーでない場合は次の情報を連絡願います。
・組織又は会社名及び住所
・電話番号
・メールアドレス
参加の意向又はご質問は本件プロジェクトチーム
( [email protected]. )
にメールにてご
連絡ください。
3.2 2011 年 4月11日
TBG15は2つ以上の国又は組織を繋ぐシングルウィンドウ相互運用性に関するプロジェクトに参加さ
れる組織・団体を募集しております。
参加される団体は、上記 3.1と同様の要件を満たすことが条件となります。
参加の意向及びご質問は本件プロジェクトチーム
( [email protected])
までメールにてご連絡く
ださい。
3.3 2011 年 4月11日
ICG(国連 CEFACT 情報コンテンツ管理グループ)
は勧告 23 号(貨物輸送費用コード)のコードリスト
改定第 8 版を承認、公開致しました。
3.4 2011 年 4月1日
昨年 12月に開催された、第 16 回総会決議に従い総会間承認手続きに付された、国連 CEFACT
規約改正案(ECE/TRADE/C/CEFACT/2010/15/Rev.1)は、3月28日に編集上の若干の変更
を加えたのみにて規約に従い承認されました。
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JASTPRO
記事4. JASTPRO 春期セミナーのご案内
JASTPROは貿易関係者の方々に役立つ内容のセミナーを毎年春と秋に開催して参りましたが、
本年度春は下記によりセミナーを開催致します。
記
• 開催日時:2011 年 5月26日
(木)
• 会 場:世界貿易センタービルディング 3 階ルームB(東京都港区浜松町 2-4-1)
会場へのアクセスは下記をご参照下さい:
http://www.wtcbldg.co.jp/wtcb/map/index.html
• 参 加 費:無料。* 定員
(90 名)
になり次第、締切らせていただく場合がございます。
• 申し込み締め切り:2011 年 5月19日
(木)
• 申し込み方法:ジャストプロ事務局の下記アドレスへメールでお申し込み下さい:
[email protected]
• 講演プログラム
13:30 ∼ 14:00
受 付
14:00 ∼ 14:15
テーマ:PAA 活動報告
講 師 :JASTPRO シニアアドバイザー 増田博明氏
14:15 ∼ 15:00
テーマ:港湾における情報化政策について
講 師 :国土交通省港湾局 港湾経済課
情報化推進室 課長補佐 飯田 純也氏
15:00 ∼ 16:20
テーマ:台湾の小売業界における電子インボイスの活用と貿易金融の
電子化について
講 師 :Trade-Van Ms. Alicia Say 氏
16:20 ∼ 16:30
休 憩
16:30 ∼ 17:50
テーマ:PAAのカーゴトラッキングサービスについて
講 師 :KTNET Ms. Jin Song 氏
18:15 ∼ 19:30
情報交換懇談会
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̶ 協会ホームページのリンク集のご案内 ̶
http://www.jastpro.org/link/index.html
当協会のホームページのリンク集には、当協会の活動と日本輸出入者コードのユーザの方々の
お役に立つと思われる関係諸機関・団体のホームページへのリンクを下記の分類で掲載しており
ますので、ご活用下さい。
s 当協会に関係する我国の官公庁・公的機関(独立行政法人を含む)
s 輸出入関係手続きに関係する業界団体等
〔国内物流〕関係する情報源と用語集
s 輸出入関係手続きに
s 国際空港の公式ページ
s 国際貿易港の公式ページ
s 貿易振興・簡易化や電子商取引の標準化活動を行なっている国内組織・団体
s 貿易振興・簡易化や電子商取引の標準化活動を行なっている海外組織・団体
s 貿易振興・簡易化や電子商取引の標準化に関係する国際機関
sその他の組織・機関
JASTPRO 第37巻 第1号 通巻第391号
本協会の事業は、財団法人JKA、
日本財団、財団法人貿易・産業協
力 振 興 財 団 からの 助 成 金 等、
・禁無断転載
平成23年4月28日発行 JASTPRO刊11-01
発 行 所 (財)日本貿易関係手続簡易化協会
東京都中央区八丁堀2丁目29番11号
八重洲第五長岡ビル4階
電 話 03- 3555- 6031
(代)
ファクシミリ 0 3- 3555- 6032
http://www.jastpro.org
関係業界からの寄付金および賛助
会費ならびにコード事業の収入に
よって行われております。
編 集 人
山 本 達 見
本誌は再生紙を使用しております。
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̶ JASTPRO広報誌電子版への切り替えのご案内 ̶
当協会の広報誌は 2007 年 4 月より印刷版と電子版の 2 つのメディアを提供しております。
印刷版と電子版は二者択一ではございませんが、印刷版につきましては賛助会員の方々には、
これまで通り口数を配布部数の上限とさせて頂きます。
( 電子版には制限はございません。)
電子版への切り替えと、配布部数の追加方法:
毎月20日までに、次の項目を下記のアドレスへ送信してください。
sご所属の組織名称 s 所属されている部署
s申込者氏名
s 連絡先電話番号
s 送達をご希望のメールアドレス
【申込み宛先】
(財)
日本貿易関係手続簡易化協会
業務第三部長 平井一海
E-mail address: [email protected]
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