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日本食品等流通実態調査 (米国LA)

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日本食品等流通実態調査 (米国LA)
2006-IAD
食産国際化
2
平成 18 年度 食品産業国際化可能性調査
日本食品等流通実態調査
(米国LA)
2007 年 3 月
日本貿易振興機構(ジェトロ)
産業技術・農水産部
はじめに
近年、政府では農林水産物の輸出拡大の方針を打ち出しており、全国各地で輸出促進に向けた
取組みが盛んに行われている。
ジェトロでも、海外食品見本市への出展や貿易相談に対する情報提供など様々な手法で輸出促
進を支援している。本調査は、輸出に意欲的な地方の中小企業から輸出を希望する商品を募り、
サンプルを持ってロサンゼルス地域における市場性を探るとともに、
市場参入へのアドバイスを
提示することで、日本食品のこの地域への輸出拡大への一助とするために実施した。とりわけ、
食品見本市への出展など、これまでジェトロが実施してきた事業とリンクさせ、今後企業が見本
市出展など輸出・販路開拓に向けて取り組む上での参考資料を提供することを狙いとしている。
本調査報告書の特長として、以下のことが挙げられる。
・
カリフォルニア州、ロサンゼルスが日本食品の市場としてどれほどの可能性をもつか
を分かりやすく示したこと
・
個別の商品に則したヒアリングが実施されており、日本食品に関するロサンゼルス市
場の現在の状況が具体的に分かる報告書となっていること
・
30 もの地元の日系・非日系のレストラン・小売店の購入担当者等に直接ヒアリング
を行っており、このなかには現地で一流と広く名の通った先も含まれており、各参加
商品それぞれに通常の 1 回の視察等で得られる情報を超える内容を有すること
・
ヒアリング成果が調査対象品目の提供各社の協力により具体的に開示されており、同
業他社にとっても参考になる内容を含んでいること
本報告書が、食品の米国向け輸出や販路拡大を考える企業をはじめ、読者の皆様の参考になれ
ば幸いである。また、内容に関するご意見等も歓迎である。
最後に、本調査の実施に当たり温かい支援をしてくださった関係各位に心から御礼申し上げる。
2007 年 3 月
日本貿易振興機構(ジェトロ)
産業技術・農水産部
目
次
本報告書の構成 ............................................................................................................................1
第1章 ロサンゼルス市場の概要 ...............................................................................................2
Ⅰ.市場規模 ......................................................................................................................2
1.日米の人口比較..............................................................................................................2
2.カリフォルニア州の現状 ...............................................................................................5
3.ロサンゼルスの現状.......................................................................................................7
(参考1)ロサンゼルスの主要な日本食品顧客層の居住地 .................................................8
(参考2)カリフォルニア州におけるアジア系米国人市場 ...............................................10
Ⅱ.供給事業者 ................................................................................................................15
1.米国輸出業者 ...............................................................................................................15
2.流通事業者...................................................................................................................16
3.最終段階の販売事業者 .................................................................................................16
第2章 調査の概要...................................................................................................................20
Ⅰ.経緯 ...........................................................................................................................20
Ⅱ.スキーム ....................................................................................................................22
Ⅲ.実施プロセス .............................................................................................................23
1.募集から商品選定まで .................................................................................................23
2.商品の輸送...................................................................................................................24
3.ヒアリングの準備と実施 .............................................................................................24
(参考)輸入手続と想定価格 .............................................................................................25
第3章 商品別のヒアリング結果 .............................................................................................28
Ⅰ.総論 ...........................................................................................................................28
Ⅱ.各論 ...........................................................................................................................30
1.黒ごまペースト(ハチミツ入り) ............................................................................30
2.完熟梅ジャム ............................................................................................................34
3.わさびドレッシング .................................................................................................37
4.葉わさび ...................................................................................................................40
5.二十世紀梨酢 ............................................................................................................43
6.梅エキス ...................................................................................................................46
7.有機煎茶 遥 ............................................................................................................49
8.竹清水 ......................................................................................................................52
9.水出し煎茶 夏・物・語 ..........................................................................................55
10.有機八丁味噌 ...........................................................................................................58
11.自然派はるさめS麺(春雨) ..................................................................................61
12.極上の玄米コーヒー ブラウンカフェ粗挽き ...........................................................64
13.きりたんぽ ...............................................................................................................67
14.活性はと麦の力 GOLD ............................................................................................70
15.くま焼栗 ..................................................................................................................72
本報告書の構成
本調査は、中小企業による日本食品の対米輸出支援のための情報提供を目的として実施した。
これまでジェトロで実施してきた調査は海外における食品の輸出入に関する制度や食品安全
性確保への取組みなどが中心であったが、今回は、日本の中小企業による食品の輸出拡大に役立
つ情報の提供を提供する手段として、具体的な商品のマーケティング調査という方法をとった。
本報告書は、ジェトロ・ロサンゼルスセンターが国内各地の企業から提供していただいた商品
を持って、現地(ロサンゼルス地域および周辺地域)のレストランやスーパー、流通業者などに
ヒアリングしてその市場性や市場参入のアドバイスなどを聞き、それを取りまとめたものである。
本報告書は、
ロサンゼルス地域やカリフォルニア州における日本食品やアジアの食材の市場性
の紹介(第 1 章)、それを踏まえて今回の調査を実施した目的や経緯、調査手法など調査概要(第
2 章)、そして調査対象品目の紹介とヒアリング結果の報告(第 3 章)で構成される。
なお、本報告書の内容に関するお問合せは、以下までお願いいたします。調査対象品目を提供
した各企業への直接の問い合わせはお受けできませんので、ご了承ください。
【報告書の内容に関するお問合せ先】
国内連絡先:ジェトロ
産業技術・農水産部
〒107-6006
東京都港区赤坂 1 丁目 12-32 アーク森ビル
TEL:03-3582-5186
海外連絡先:ジェトロ
農水産調査課
FAX:03-3582-7378
ロサンゼルスセンター(JETRO Los Angeles)
777 S. Figueroa St., #2650, Los Angeles, CA 90017, U.S.A.
TEL:+1-213-624-8855
FAX:+1-213-629-8127
1
第1章
ロサンゼルス市場の概要
Ⅰ.市場規模
1.日米の人口比較
米国の人口は、国勢調査局によると 2005 年の推計人口は現在 2.99 億人であり、2006
年 10 月には 3 億人を超えたと発表された。これは、日本の人口 1.28 億人(2005 年)1の
2.4 倍に相当する。また、東アジアで米国を上回る人口を有するのは中国だけである(グ
ラフ1)。
【グラフ 1】東アジア諸国と米国の人口規模
百万人
人口
シ ンガ ポ ー ル
香港
マ レー シ ア
カ リ フ ォ ル二 ア
韓国
タ イ
フ ィリピ ン
イ ンドネ シ ア
日本
米 国
中 国
1,200
1,000
800
600
400
200
0
(出典)世界銀行、米国連邦国勢調査局
さらに興味深いのは、日米両国の人口格差が年々広がって行くと見られることだ。
この背景には人口増加率の違いがある。日本の人口推移を見てみると、少子高齢化が叫
ばれているとおり、1990 年代以降伸び悩んでいることが分かる(グラフ2)。この主な原
因としては、出生率の低下が指摘されている。出生率は、2005 年には 1.26%まで落ち込
んでおり、少子化が一段と進展していることを示している(グラフ 4)。
1
2005 年国勢調査による。
2
【グラフ 2】日本と米国の人口動向
百万人
300
250
200
人口
米国
日本
150
100
50
0
1980
1990
2000
2005
他方、米国は依然として 1972 年以降年率 1%近い人口増加率を維持している。グラフ
3 のとおり、人口規模の大きな主要先進国では唯一の高い人口増加を遂げている市場とも
言える。具体的に 3 億人の人口が 1%で成長するダイナミズムを日本国内に照らして考え
てみると、大阪市(263 万人)2を上回る規模の町が毎年生み出される市場ということが
分かる。
【グラフ 3】先進国の人口増加率
2
欧州通貨同盟
1.5
フランス
1
%
ドイツ
イタリア
0.5
日本
0
2000
2001
2002
2003
2004
2005
英国
-0.5
米国
-1
年
(出典)世界銀行
そして、この背景を出生率と移民に分けてみた場合、この双方ともにヒスパニック系
2
2005 年国勢調査による。
3
住民が大きく寄与している。
まず、出生率から見ると、米国は 2005 年に 2.08%と 2%を超えており(グラフ4)
、
多くの先進国で人口再生産に必要と言われる 2.08%と一致しており、若年層の規模が基
本的に維持できる構造にあることを意味している。この背景をさらにみていくと、移民が
増加していることに加え、この移民の主要な部分が高い出生率(2%後半)を維持してい
るヒスパニック系住民であることにより、出生率の増加につながっていることがある。
【グラフ 4】日本と米国の合計特殊出生率の動向
2.00
米国
日本
%
1.00
1980
1990
2000
2005
年
2005-06 年の米国の自然増加(出生率-死亡率)自体は人口 1,000 人に対し 5.7 人
(0.57%)に過ぎず、前述のグラフ 3 に示した 2005 年の英国とほぼ同じ水準でフランス
より低い水準にとどまる。しかしながら、米国は移民純増分が 4.0 人(0.40%)押し上げ
ること3から、結果的には 9.7 人(0.97%)と前述のように 1%近い成長を毎年遂げてい
る4。
このように見てくると、米国市場に進出するということは、世界で最も先進の市場で
ありながら、まだ人口が拡大過程にある国でビジネスを展開することを意味している。
3
4
3 億人の 0.4%であることから、米国は日本の政令指定都市規模の町が新しい移民だけで毎年出来る市場とも
言える。
これ以外に、不法移民が 1,200 万人程度いると推定されている。
4
2.カリフォルニア州の現状
(1)先進国一国並みの経済圏
カリフォルニア州を人口面からみると、05 年の国勢調査局の推計統計で 3,613 万人
となっており、全米人口の 12%を占めて、全米で最大の州である5。また、特に注目され
るのは 1 兆ドルを超える経済規模であり、GSP(Gross State Product:州民総生産)を国
際的に位置付けた場合、G8 の一員である隣国のカナダより大きな世界 8 番目に位置する
(グラフ 5)。
【グラフ 5】カリフォルニア州と主要先進国との経済規模の比較(2004 年)
兆ドル
12
10
8
6
4
2
カ ナダ
ス ペイ ン
加州
中国
イタ リ ア
フラ ンス
英国
ドイ ツ
日本
米国
0
国・州名
(出典)カリフォルニア州財務省
(2)全米の裕福層が集まる太平洋で最も裕福な土地
他方、面積は 40 平方キロメートルと日本とそれほど変わらない6。
また、表 1 にある通り、カリフォルニア州住民のもつ 1 人当たりの平均的な所得能力
は全米を大きく上回っている。さらに、グラフ 6 にある通り、二極化社会を反映して、
カリフォルニア州には全米で一番多くの億万長者7が住んでいる。また、2005 年の一人当
たりの GDP(GSP)を比較しても、カリフォルニア州がハワイ州とならんで、他を圧倒す
る購買力を有していることが分かる(グラフ7)。
これらを総合すると、日本がアクセスできる最も肥沃な市場の一つがカリフォルニア州
であると言える。
ちなみに、2005 年のテキサス州、ニューヨーク州、フロリダ州の人口は、それぞれ 2,286 万人、1,925 万人、
1,778 万人となっている。
6 中国の国土面積は日本の 25 倍。
7 グラフ 6 では、純資産 100 万ドル以上の資産を有する個人を「億万長者」と定義している。
5
5
【表 1】カリフォルニア州と全米との平均個人所得等の比較
(単位:ドル)
カリフォルニア州
53,025
47,493
22,711
家族世帯
世帯主
平均個人所得
全
米
50,046
41,994
21,587
【グラフ 6】州別億万長者居住者数
万人
60
50
40
30
20
10
バージ ニア
マサチ ューセ ッツ
オ ハイオ
ペンシルバ ニア
ニュージャージ
テキサス
イリノイ
フロリダ
ニューヨーク
カリフォルニア
0
州名
(注) 億万長者は、純資産 100 万ドル以上を有する個人。
(出典)「Personal Wealth, 2001」
【グラフ 7】太平洋諸国等の一人当たりの GDP(GSP)比較(2005 年)
千ドル
45
40
35
30
25
20
15
10
5
チリ
メキシコ
ブラジル
カナダ
ニュージーランド
オーストラリア
インドネシア
6
マレーシア
(出典)各国資料等
タイ
中国
シンガポール
香港
台湾
ハワイ
韓国
カリフォル二ア
0
(3)日本食材販売に有利な裕福なアジア市場の要素を内包
また、カリフォルニア州の特徴を人口面から主なものを挙げると、メキシコに近いこと
からメキシコ系ヒスパニック住民が特に多いこと8、さらに太平洋に面した西海岸にある
ことからあらゆるアジア系の住民が居住することが挙げられる。
このうち、特に後者のアジア系米国人については、後ほど参考 2 で詳述するように、
アジア系米国人がアジアの一国に相当する「シンガポール」規模で存在し、平均所得こそ
白人(除ヒスパニック)に及ばないものの、高い所得層が多く存在する。さらに、その背
景には白人を超える教育水準の高さがあり、まだ移民の一世など移民直後の若い世代を多
く含むことなどから、中長期的には米国の裕福層の1つの中核をなすことが期待される9。
また、日本がアジアに属することもあり、相対的に日本の食材にもともと理解が深い。
実際、魚や野菜に対してより支出し、健康的でグルメ志向であるなど、日本人によく似た
食習慣・嗜好性を有しているとした調査もある。これらはカリフォルニア州で日本食が支
持されている大きな要因と見られる。
3.ロサンゼルスの現状
(1)郡別で全米最大の地域
カリフォルニア州の中でも、特に人口の増加が著しい都市はロサンゼルス郡である。
2005 年時点でのロサンゼルス郡の推計人口は 993 万人であり10、単一郡でありながら、
カリフォルニア州全体の 27.5%と 3 割近い人口を占めているだけでなく、全米でも行政
単位の郡としては最大となっている。
さらに、グレーター・ロサンゼルス(Greater Los Angeles)とよばれるロサンゼルス
への通勤圏と目される近隣 4 郡(ベンチュラ郡、サン・ベルナルディーノ郡、オレンジ
郡、リバーサイド郡)を含めると、推計総人口は 1,760 万人にも上り、カリフォルニア
州全体で占める割合は 48.7%と約半分を占める。また、カリフォルニア州におけるこの
ロサンゼルスの大きさを理解する上で、日本人がよく知る都市と比較すると、サンフラン
シスコ郡 74 万人11、サンディエゴ郡 293 万人などとその規模の違いが分かる。なお、西
海岸全体でみた場合でも、シアトルが 57 万人、バンクーバー(カナダ)も 218 万人にと
どまり、人口面でロサンゼルスに匹敵する都市は見当たらない。
また、個人所得を見た場合、2004 年の(統計で定義される)ロサンゼルス都心部(MSA)
は 3 万 5,188 ドルとなっており、これは全米の 362 の都心部中 47 位と「豊かな都市」と
8
9
10
11
05 年の米国国勢調査によると、カリフォルニア州の 35.5%を占める 1,250 万のメキシコ系の人口がいるなど、
メキシコ経済との繋がりが深い。
これらの条件により、アジア系米国人は日本食品を販売する上でも見逃せない消費者層であると言える。
ちなみに、東京都の人口は 1,266 万人(2007 年 2 月)である。
なお、グレーター・サンフランシスコベイ地域(Greater San Francisco Bay Region)などと呼ばれるサンフラン
シスコ湾周辺の生活圏全体では、2000 年の国勢調査によると 678 万人となっている。
7
して上位に位置するとともに、全米平均の 3 万 3,090 ドルを 2,000 ドル以上上回ってい
る。
このように、ロサンゼルスは、単に人口規模が巨大というだけでなく、全体的に北米平
均を上回る豊かさを維持しつつその規模を全米以上に拡大しているというダイナミズム
を有している。
(2)膨張を続ける巨大都市
また、ロサンゼルスは米国のなかでも急速な勢いで人口が増加している面でも見逃せな
い。通勤圏であるグレーター・ロサンゼルス12の 2000 年から 2005 年にかけての人口増
加(7.7%増、126 万人増)は、同期間の全米の増加率(5.3%)やカリフォルニア州州の
増加率(6.7%)も上回っている。これは、人口の半分を占めるヒスパニック系の出生率
の高さに加え、ここから 224km しか離れていない米国-メキシコ国境を越えて押し寄せ
る新しいメキシコ移民、
さらに太平洋を越えて来るアジア系移民が大都会の魅力を求めて
ここに集まっていることがある13。
(参考1)ロサンゼルスの主要な日本食品顧客層の居住地
以下では、2000 年の米国国勢調査を用いて、販売戦略立案上参考になると考えられる
日本食品の主要な販売先の日系、富裕層、韓国系、中国系の主な居住地を図示してみる。
(1)日系住民
ロサンゼルスを含むカリフォルニア州における日系人等(日系米国人と駐在員などの日
本人長期滞在者を合わせたもの)の歴史は、我々日本人に直接関係があるだけでなく、今
日の食ビジネス振興の観点からも特筆されるものがある。
日系の最初の移民は、米国本土に 1850 年に上陸した記録があり、当初は北部カリフォ
ルニア州にいたが、次第にロサンゼルスにも南下してきた。具体的にはロサンゼルスのダ
ウンタウンにあるリトル・トウキョウ(Little Tokyo)は、すでに戦前の 1930 年には 3
万 5,000 人程度の日系住民がいたとされる。このように 150 年にわたる歴史を既にもつ
日系移民は、カリフォルニア州に稲作を伝えるなど特に農業の発展に大きく貢献した。
また、戦後、特に 1950~60 年代後半からは駐在員が多く滞在し、特に 80 年~90 年代
初頭日本のバブルを背景に日系社会が大きく伸長した結果、その後の撤退を経た現在でも
海外長期駐在員数でロサンゼルスは世界 2 位の 5 万 503 人に上るほか、地元の経済団体
12
13
ロサンゼルス郡は同期間の人口増加率が 4.4%にとどまっており、この背景として地価の高騰の影響から市内
の住宅保有率が極めて低いことなどからベットタウンがドーナツ化する現象が生じていることがある。
2000 年 11 月 6 日付の地元紙・羅府新報の記事によると、カリフォルニア州司法委員会は現行の 100 種類の法
廷通訳言語に 5 言語追加し、105 言語とする報道があった。その記事によると、カリフォルニア州では 224 種
類の異なる言語が話されており、州民の 4%がまったく英語を話さないという。
8
である南加日系企業協会(JBA:Japan Business Association)は会員数約 450 社と在外
経済団体としては世界最大クラスの規模を誇る14など、米国における日系社会の大きな集
積地となっている。このことは、日系食品関係事業者にも当てはまり、日本食品製造事業
者の集まりである「七味会」の他、南加日系レストラン協会(JRA)などが存在して、
活発な活動を行っている。また、少なくとも 3 系列の日系チェーンスーパーが確認でき
る他、日本語の補習校、進学塾までもが存在するなど、日本の地方都市とほぼ変わらない
住環境を備えている。
2000 年の米国国勢調査によると、日系人が 2,000 人以上居住する地域は、トーランス
(Torrance)
、ロングビーチ(Long Beach)等の南部地域を中心としている他、リトル・
トウキョウを有するダウンタウンなどにも居住していることが確認できる。日本人駐在員
もトーランス等南部の他、北部パサディナ(Pasadena)等に多く住んでいる。
(2)非日系住民
①富裕層
富裕層(年収 10 万ドルを超える層)は、La Canada Flintridge、Manhattan Beach、
Maribu、Palos Verdes Estate、San Marino など、ビジネスの中心街であるダウンタ
ウンから東西南北に離れた地域に多く住んでいる。開発が行き届いた市内というよりは、
丘陵地に大きな庭付きの戸建の家に住んでいるイメージである。
②韓国系
ロサンゼルスは韓国系にとって韓国外では最大の人口が集まる都市である。
2,000 人以上韓国系が居住する場所を挙げると、特にサウスベイと呼ばれる南西部地
域においてある程度上記の日系の居住地と似ているという特徴がある。これは、歴史的
に韓国系が日系に後を追うように行動している面があるためである。
他方で、日系と違いもあり、ロサンゼルス中心部については日系はダウンタウン内部
の東に位置するリトル・トウキョウが主な居住地であるのに対して、韓国系はダウンタ
ウンの外で西に隣接するコリアンタウンに居住しており、
コリアンタウンはダウンタウ
ンの直ぐ西からハリウッドまで広がる広大な地域となっている。また、南東部にも比較
的居住していることも特徴である15。
14
15
この他にも日系経済団体としては、日系米国人も数多く参加する南加日本商工会議所がある。
なお、ロサンゼルスのすぐ南のオレンジ郡に韓国のグローバル企業が拠点を置いている。例えば、現代自動
車の米国本社はファウンテン・バレー(Fountain Valley)、三星の情報技術部門はアーバイン(Irvine)などが
代表である。
9
③中国系
中国系住民は、アジア系では最も古い歴史をもつこと、人口が多いこともあり、アジ
ア系では数の上でロサンゼルスにおいても最も大きな存在感をもつ。特徴としては、前
述の富裕層と比べると、ベンチュラ郡のある北西部を除いてほぼ重なる。また、特にロ
サンゼルスの東部地区は大きな中国系の拠点となっており16、韓国系がダウンタウンの
西側にコリアンタウンを構えていることと好対照をなす。なお、2 カ所(South
Pasadena、La Canada Flintridge)を除いて、韓国系の集まる町には中国系も居住し
ている。
(参考2)カリフォルニア州におけるアジア系米国人市場
以下では、特に本調査対象となる日本食ビジネスにとって重要と見られるアジア系米国
人の特徴についてやや詳しく触れる。
(1)経済力をつけるアジア系米国人
①シンガポールに匹敵する「アジア」市場
2005 年時点で約 430 万人のアジア系米国人がカリフォルニア州に住んでおり、これ
はシンガポール(2006 年:450 万人)にほぼ匹敵する17。この点でもカリフォルニア
州は一国レベルのプレゼンスを示している。さらに、カリフォルニア州には、ほぼ全て
のアジア系住民が居住している。2000 年の国勢調査結果によれば、1 万人以上いると
されるアジア系は 13 に上り、多い順にフィリピン系(91.9 万人)、中国大陸系(91.8
万人)、ベトナム系(44.7 万人)、韓国系(34.6 万人)、インド系(31.5 万人)、日系(28.9
万人)、カンボジア系(7.0 万人)、ミャン族系(6.5 万人)、台湾系(6.2 万人)、ラオス
系(5.5 万人)、タイ系(3.7 万人)、パキスタン系(2.0 万人)、インドネシア系(1.8
万人)となっている18。この意味で、カリフォルニア州は太平洋を越えた「東端にある
アジア」としても位置付けられる。しかも、その規模は対前年比 0.3%増と引き続き増
大の傾向にある。
16
17
18
このような背景もあり、アジア系最大のスーパーチェーン、99 Ranch Market は東部地区が第 1 号店となった。
味覚面でエスニックごとに母国の食文化と一定程度の繋がりが続くことを考えると、今日日本がアジア諸国
へ食文化の輸出を促進している現状において大きな意味を有すると考えられる。
これら以外にもスリランカ系(5,700 人)、バングラデシュ系(3,000 人)、マレーシア系(1,900 人)が確認
されている。
10
② 北米アジア市場のルーツ
現在、全米の 3 分の 1 以上のアジア系米国人がカリフォルニア州に住んでおり、カ
リフォルニア州は米国におけるアジア系の拠点になっている(グラフ 8)。有名な所だ
けでも、サンフランシスコのチャイナタウンは中国系にとって世界最大規模で中国系の
拠点であり、ロサンゼルスのコリアンタウンは韓国外最大のコミュニティ、日系もリト
ル・トウキョウをもつ。IT で著名なシリコンバレーはインド系の存在抜きにもはや語
れないと言われるほどだし、フィリピンやベトナムなども地元で認められるエスニック
の町を形成している19。
【グラフ 8】アジア系住民の多い州(2000 年)
4.5
百万人
4
3.5
3
2.5
2
1.5
1
0.5
マサチ ューセッツ
ヴ ァージ ニア
フロリダ
ワシントン
イリノイ
ニ ュージ ャージー
テキサス
ハワイ
ニ ューヨーク
カリフォル二ア
0
州名
③引き続きコミュニティは発展
他方、その他のアジア系は伸びが目覚しい。規模別に見ると、中国系、インド系、
フィリピン系、韓国系、ベトナム系などが多く、いずれも引き続きその規模を拡大して
おり、特に最近ではベトナム戦争からの逃避や貧困回避の理由からベトナム系の拡大が
著しい。
とりわけ、約半数のアジア人は 1990 年以降の移民であり、一世世代が多いのが特徴
である。また、一世の母親による母国の家庭料理を経験できる二世までは特に母国の味
覚に対するこだわりを有するとも言う。したがって、民族ごとに成立するアジアンコミ
19
具体的には、フィリピン系のヒストリック・フィリピーノタウン(Historic Filipinotown)、ベトナム系のリト
ルサイゴン(Little Saigon)、タイ系のタイタウン(Thai Town)などがある。
11
ュニティなどでは、主に母国の食文化がそのまま受け継がれている。他方、三世以降は
現地化が進み、より一般的な米国人としての味覚に近づくと言われる20。
④所得層の高いアジア系住民21
アジア系住民は、比較的新しく米国市場に登場したマイノリティとして従来あまり注
目されることはなかったが、今日では特徴的な市場として一部のセールスの専門家の間
では注目を集めている。特に、関心を集めているのは、アジア系住民がもつ経済力と教
育水準の高さ、そして若い世代が多いという点である。
まず、経済力については、アジア系は白人(ヒスパニック系を除く)を平均では下回
っているものの、特に世帯主の中位値では上回る。飛び抜けて高い所得を有する富裕層
は少ないものの、比較的高い所得を有する層が厚い(表 2)。こうしたことを背景に、
購買力も大きなものがある22。
【表 2】アジア系と白人の平均所得等(カリフォルニア州)
アジア系
白人
(除ヒスパニック系)
65,342
53,734
31,700
カリフォルニア平均
(もしくは中位値)
53,025
47,493
22,711
家族世帯
61,383
世帯主
55,366
平均個人所得
22,050
(出典)2000 年米国国勢調査
(注1)家族世帯と世帯主は中位値
(注2)平均個人所得は、分類された中では白人・アジア系を除く黒人、太平洋島嶼出身、イン
ディアン、混血、ラティーノ、その他のいずれもが 2 万ドル以下。
⑤全体として最も教育水準が高いコミュニティ
アジア系住民の豊かさの背景には教育の高さがあることも知られており、大卒を示す
学士号をもつアジア系(太平洋島嶼系を含む)の比率は 2000 年に 40%を超え、白人
(ヒスパニック系を除く)に 10%以上の差を付けている(グラフ 9)。某米系高級小売
店でのヒアリングによると、「購入層は所得水準以上に教育水準と密接な関わりをもつ
との話も聞かれる」ことから、比較的価格の高い食品を供給する日本のメーカー各社
にとっても見逃せない。
また、学歴の高いのが相対的に若い年齢層であることから、中長期的に見た場合さら
に所得水準を引き上げる可能性もある。
20
21
22
他方、日系以外のアジア系米国人は、両親の教育とエスニックの連帯意識等を通じて出身国への紐帯をもつ
ための出身国の言語教育等が強く行われているとの話も聞かれ、必ずしも均質的な米国人になる訳ではない。
以下の分析は、MINDBRANCH 社の Packaged Facts の分析による。
全米レベルでは、4,340 億ドル超(52 兆円規模)と見込まれており、2010 年までに 6,110 億ドル(73 兆円規
模)との見方がある(MINDBRANCH 社の Packaged Facts による)。
12
【グラフ 9】全米における大学学士学歴取得者の比率
50
45
40
35
30
%
25
20
15
10
5
0
1980
1990
白人
アジア系、太平洋島嶼系
ヒスパニック
2000
黒人
インディアン出身、アラスカ
白人(非ヒスパニック)
(注) 25 歳以上の者に占める学士号以上の学位をもつ者の比率
(出典)2000 年米国国勢調査
(2)食生活上の行動様式
①支出分野
2004 年の消費者支出調査に基づいてアジア系米国人の食関連支出について調べてみ
ると、ユニークな特性が浮かび上がる。総支出額は、所得に高さに比例してアジア系は
食生活にも平均以上の高い支出を行っている(表 3)。また、内訳でも全米の平均的な
食生活と比較してユニークな特性が現れている。具体的には魚・シーフードに対する支
出が 2.4 倍と極めて多く、野菜や果物も 2 倍程度、他にもシリアルとシリアル製品、鶏
肉も支出額が高い。一方で、牛肉、ノンアルコール飲料、等が低くなっている。
【表 3】アジア系の食品に対する支出傾向
品
目
アジア系
全消費者
アジア系が消費性向の高い食材
シリアルとシリアル製品
243
154
豚肉
183
181
鶏肉
192
156
魚、シーフード
305
128
46
42
フルーツ
329
187
加工フルーツ
118
110
野菜
359
183
砂糖、甘味類
137
128
47
41
卵
旅行携行用菓子
(次ページへ続く)
13
(前ページより)
品
目
アジア系
全消費者
アジア系が消費性向の低い食材
パン類
284
307
牛肉
231
265
64
108
牛乳、ミルク
135
144
その他の畜産製品
151
226
加工野菜
63
82
脂質、オイル
76
89
その他の食品
479
527
ノンアルコール飲料
245
290
3,689
3,347
その他の肉
総
支
出
(注)2004 年消費者支出統計」から Packaged Facts が加工
②健康志向の強いアジア系
上記の支出項目にも既に現れているが、アジア系米国人、特に女性は健康志向が強い。
米国の民間調査会社の質問を通じた統計によれば、全米平均と比較して健康に対する意
識が高いことがはっきりと示されている。日々の食事をヘルシーだと感じるアジア系米
国人は 14%ほど全米平均より高く、特に女性の意識が高いことが注目される。他方、
食べすぎを感じる者は 3 割近く少なく、男性では半分以下となっている。また、自身
のウエイト管理についての意識も全米平均より全体では 1 割以上低く、普段の健康的
な食生活がダイエットの必要性を少なくしていることが分かる(表 4)23。
【表4】健康志向の食生活に対する考え
質
問
項
調 整 後
比較指数
目
アジア
系男性
アジア
系女性
私の食事はとてもヘルシーだと思っている
114
102
124
友達は健康/栄養について私のアドバイスを求める
112
84
136
しばしば食べすぎと感じる
72
46
95
ほとんどの時間、食事による体重減量を行おうとしている
89
66
109
現在ダイエット中
75
58
90
(出典)シモンズ・マーケット・リサーチ・ビューロー
(注)アジア系男性・女性の指数は調整前
23
また、結果的に健康志向の一つの表れとも解釈できるベジタリアンについても、シモンズ・マーケット・リ
サーチ・ビューロー社の調べでは、「自分がベジタリアンだ」と考えている人が全米平均が 5.8%に対して、
アジア系では 9.0%とかなり高くなるなど、ここでも健康志向を示している。
14
③女性が牽引する強いグルメ傾向
また、アジア系にははっきりとしたグルメ志向が見られる。「凝った盛り付け(art
form)の食べ物を好むか」という質問では全米平均から 7 割ほど高い回答をアジア系
は示し、「どんなときもグルメフードを食べようとする」との質問にも、およそ 9 割、
つまり約 2 倍近いこだわりを見せている(表 5)。この傾向から双方の質問とも女性が
強く、アジア系女性がグルメの牽引役となっていることが分かる。
【表5】グルメへのこだわり
質
問
項
調 整 後
比較指数
目
アジア
系男性
アジア
系女性
凝った盛り付け(art form)の食べ物を好むか
170
142
194
どんな時もグルメフードを食べようとする
187
173
200
(出典)シモンズ・マーケット・リサーチ・ビューロー
(注)アジア系男性・女性の指数は調整前
④新しい食品・飲み物に好奇心旺盛なアジア系
さらに、アジア系消費者の食に対する行動様式が保守的でなく、好奇心が強いという
ことだ。実際、アンケート調査では、特に女性は「新しい食製品が自分に合うか試した
い」、
「新しい飲み物を試したい」、
「新食品お試しクーポンがあると試そうと思うことが
たびたびある」の 3 つの質問項目全てで全米平均を上回っており、質問最後の「お試
しクーポン」を使用しようという意欲は特に強い(表 6)
。このことは、日本から新し
く進出する食品メーカーにとって、
アジア系米国人女性は顧客として見落とせない層で
あると言えよう。
【表6】新製品への関心
質
問
項
調 整 後
比較指数
目
アジア
系男性
アジア
系女性
新しい食製品が自分に合うか試したい
100
94
105
新しい飲み物を試したい
107
109
106
106
115
新食品のお試しクーポンがあると試そうと思うことが
111
たびたびある
(出典)シモンズ・マーケット・リサーチ・ビューロー(2005 年秋)
(注)アジア系男性・女性の指数は調整前
Ⅱ.供給事業者
1.米国輸出業者
日本のメーカーがロサンゼルスに輸出する場合、日本とロサンゼルスに拠点を有する食
品商社を使用することが条件となり、自ずと日系各社が有利になる。すでに日系の大手を
含めて多くの商社が事業を行っている。
15
2.流通事業者
(1)日系事業者
ロサンゼルスの日系の食品卸問屋は、JFC International, Inc.、西本貿易、共同貿易、
セントラル貿易、グッドフェローズ、マルハナ、ホソダブラザーズ、マルトなど多くの
事業者が活発な活動を展開している。
(2)地元事業者
流通事業者は小売事業者と異なり、原則として一般消費者との直接やり取りを行わな
いことから、判別しにくい。そこで、試しにロサンゼルス地域の企業ディレクトリー24を
用いて調べてみた。
その結果、関係が深いと見られる業態のうち明確に日系と分かるものを除いた企業が
「食料雑貨品、一般商品卸売(Groceries, General Line Wholesale)」で 46 社、「パッ
ケージ用冷凍食品卸売」
(Packaged Frozen Foods Wholesale)で 12 社、
「食料雑貨品
と関連製品、その他の卸売」(Groceries & Related Products、NEC Wholesale)に 87
社登録されており、合計 145 社となる25。このように極めて多くの企業がこのロサンゼ
ルスだけでも存在することが分かる。
また、具体的には最近米国の業者、シスコ、グルメアワード、DPI、ケイヒー(スー
パー用)などが日本食品に参入し始めた。このうち、グルメアワード、DPI はスペシャ
リティー・フード・ディストリビューターである。これらの業者はディストリビュータ
ーを通さないでメーカーまたはブローカーから直接買いを行う。一般的に日系マーケッ
トは取扱品目が多く、米系マーケットは少品目で多量を取り扱う特色がある。
3.最終段階の販売事業者
(1)日系マーケット
ロサンゼルスにおける日系スーパーマーケットは、大手としてはミツワ(Mitsuwa
Corporation)、マルカイ(Marukai Corporation)、ニジヤ(Nijiya Market)の 3 系列
がある。
ミツワは、ロサンゼルス圏にリトル・トウキョウ店、トーランス店、コスタメサ店、
サンガブリエル店、サンタモニカ店の 5 店がある26。
24
「2005 Directory of California Wholesalers and Service Companies」(Harris Infosource 社)を用いた。
ロサンゼルス近郊を分類する上で便宜的に日本の郵便番号に当たる zip-code が 90000 台と 91000 台の社のみ
を抽出対象とした。なお、カリフォルニア州全体では「食料雑貨品、一般商品卸売(Groceries, General Line
Wholesale)」に 151 社、「パッケージ用冷凍食品卸売」(Packaged Frozen Foods Wholesale)に 34 社、「食料
雑貨品と関連製品、その他の卸売」(Groceries & Related Prdts, NEC Wholesale)に 271 社登録されており、合
計 456 社となる。
26 他にカリフォルニア州内にはサンディエゴ店、サンノゼ店がある。
25
16
マルカイは、会員制スーパーマーケットとしてガーデナ(Gardena)店、ウエストコ
ビナ(West Covina)店、コスタメサ(Costa Mesa)店の 3 店、非会員スーパーマーケット
としてリトル・トウキョウ店、パシフィックマーケット(Pacific Market)店の 2 店、
日本の 100 円ショップと同じコンセプトの 98 セントストアはガーデナ店、サイプレス
(Cypress)店、トーランス店、ファンテンバレー(Fountain Valley)店の4店ある27。
ニジヤは、トーランス店、ローリングヒルズ(Rolling Hills)店、ソーテル(Sawtelle)
店、プエンテヒル(Puente Hill)店、リトル・トウキョウ店の 5 店がある28。
(2)アジア系マーケット
ロサンゼルスは、世界中の多様な民族を包含しており、特に太平洋を挟んで向かいあ
うアジア系についてはほぼ全ての民族がいると言って過言ではない。
このような中、それぞれが独立したコミュニティを形成する米国社会では、そのコミ
ュニティの規模の拡大に伴い、エスニック向け小売店が成立する。
具体的には、韓国系では Assi Market、California Market、H.K. Super Market、
Hannam Market の他、Galleria や Plaza といったスーパーマーケットは巨大なショッ
ピングモールの一角を占め、規模も大きく比較的新しい他、日本の食材も相当数取り扱
っている。一般に韓国系は、他のアジア系と比較して最も日系マーケットに近い品揃え
を有している。
中国系では、アジア系最大のチェーン店と言われる 99 Ranch Market のほか、Diho
Supermarket、Hong Kong Supermarket、Shun Fat Supermarket 等が見られる29。
フィリピン系では、Pacific Supermarket、Seafood City などがある。
伸長著しいベトナム系では、中国系ベトナム人による Ai Hoa Supermarket、Saigon
Supermarket などがある。
(3)地元マーケット
①全米展開型小売店
地元ロサンゼルスで見られる全米規模で展開している店舗、もしくはその主要な系
列となっているブランドとしては、Ralphs(Kroger 系列)、Vons(Safeway 系列)、
Albertson(SuperValu 系列)などがある。また、会員制での展開を行っている店舗と
しては、Costco もある。
27
なお、マルカイの HP(http://www.marukai.com/location-e.html)は、当地の日系スーパーの雰囲気をよく伝え
る作りとなっている。
28
他にカリフォルニア州内にはサンマテオ店、マウンテンビュー店、サンフランシスコ店、サンディエゴ店が
ある。
29
なお、参考までに韓国系コミュニティ向けのディレクトリーで Grocery Store の欄を数えると 65 店ある。
17
②地元密着型小売チェーン店
ロサンゼルス近郊にのみで展開している企業には Smart & Final、Jons、Stater
Brothers の他、ロサンゼルス郡外の北西部のサンルイス・オビスポ郡、サンタ・バ
ーバラ郡等に Scolari’s Food and Drug などがある。
③専門店・自然食取扱店
上記以外に、有機食品等を積極的に取り扱う企業がある。こうした所は、現在の米
国の自然食ブームを牽引する役割を果たしており、いわばトレンドリーダー的な存在
である。消費者も食にこだわりをもっており、ある企業関係者の話によると(所得以
上に)教育水準が高い消費者であるという。また、消費者への啓発を目的にした詳細
な使用方法の書いた商品札や、また、顧客も服装が比較的しっかりしているなど、店
内の陳列、雰囲気ともに上記のチェーン店と異なっている。
この代表としては、独自に全米で展開している Whole Foods Market があり、そ
の他としては Bristol Farms(SuperValu 系列)、Trader Joe’s(Aldi 系列)、Wild Oates
Markets 等が見られる。
④その他
ディスカウント幅の大きな地域展開を行っている店舗としては、Food 4 Less
(Kroger 系列)、Grocery Outlet などがある。また、地元の小売事業者が共同で利
用する卸売事業者による小売を行っている例としては、IGA がある。
⑤ヒスパニック系
地 元 で み ら れ る チ ェ ー ン 展 開 を 行 う 代 表 的 な 店 舗 と し て は 、 Superior
Superwarehouse、Supermercados Gigante などがある。
(4)日系レストラン
ロサンゼルス周辺30にある日系レストランの店舗数は、フード業界情報 U.S.A 社の調
べによると 2005 年途中の段階で 1,153 店となっており、カリフォルニア州全体(2,880
店)の実に 4 割(40.0%)を占め、全米(8,885 店)でも 13.0%を占めるなど、北米に
おける最大の集積地となっている。
30
ここでもロサンゼルス近郊を分類する上で便宜的に日本の郵便番号に当たる zip-code が 90000 台と 91000 台
の店舗のみを抽出対象とした。
18
(5)非日系レストラン
①総数
電話帳(イエローページ)を用いてロサンゼルス市の通勤圏と考えられる 30 マイル
(50km 弱)以内に位置する「飲食サービス業(food services and drinking places)」
の店舗数を調べると、2007 年 2 月現在、合計 26,769 店検出される。参考までに全
米レストラン協会(National Restaurant Association)は 2005 年にカリフォルニア
州全体で 5 万 8,426 店の飲食施設(eating-and-drinking places)があるとしている。
総合すると、年の違いや定義の違い等があり厳密ではないものの、大雑把にカリフォ
ルニア州におけるレストラン軒数の 4 割以上がロサンゼルス圏にあると考えられる。
②アジア系レストラン
ロサンゼルスにおけるアジア系レストラン数の直近の状況を示す統計は見つから
なかった。ただ、過去アジア系の民間団体の調べによれば、カリフォルニア州内の
2004 年のレストラン総数は 1 万 3,000 店を超えており、このうち過半数を中国料理
店が占めている。また、ベトナム料理、タイ料理が拡大していることも反映してい
る(表 7)。
【表 7】カリフォルニア州内のアジア系レストラン数
(2004 年 9 月 15 日現在)
国
名
店舗数
割合
中
国
6,996
53.5
日
本
2,555
19.6
ベトナム
1,132
8.7
タ
1,064
8.1
452
3.5
377
2.9
490
3.8
13,066
100.0
イ
インドネシア
韓
国
その他アジア
合
計
(出所)Asian Restaurant News
19
第2章
調査の概要
Ⅰ.経緯
ジェトロではこれまで、米国の食品輸入制度や農業政策、食品安全性確保への取組み等
に関する調査を継続的に実施してきた。
また、近年は小泉前首相が日本の農林水産物輸出拡大の方針を打ち出したことを受けて、
日本からの農林水産物輸出支援事業にも積極的に取り組んでいる。具体的には、食品見本市
への出展支援、輸出入を具体的に考えている企業に対する制度情報や食品市場情報等の情報
提供等を通じて企業を支援してきた。
さらに、2006 年、安倍内閣のもとで農林水産省が平成 25 年までに輸出額を現在の 3 倍
の 1 兆円とする政策目標が正式に掲げられ、食品・農産物の輸出促進が政策の大きな柱にな
る中で、より一層輸出を効果的に促進できるための「仕組み」が必要となった。
海外市場と一口に言っても巨大であり、そこに様々な消費者がいることから、抽象的に
考えるだけでは何ら解決をもたらさない。具体的には以下のような点で一段と工夫が必要で
あり、それを実行した。
(1)商談成果の向上
これまでの事業の結果を冷静に分析し、より効率的に取組むことができる方策を考えた。
このうち、まず視察準備に関しては、商取引の中心をなす商品自体が、日本国内の消費者、
場合によってはメーカーが拠点を有する日本国内の地元の消費者のみを念頭に置いた作
りとなっていることから、折角まとまった出張費を費やし視察や展示会に参加しながら、
結局、具体的な商取引に至らず、海外向け商品の再開発の情報を取得するだけで終わって
しまうケースが見られた。さらに、個別のメーカー各社が各々活動を行っていることから、
例えば有望とされる分野がある場合、同業各社が各々同じような視察先を訪れ、ほぼ同じ
内容の視察の成果を得て帰国するということもあった。何らかの方法でこれらの視察成果
に共通する情報を国内に有効に還元できる方法があれば、食品メーカー各社も事前に(海
外の消費者を念頭においた商品開発という)必要な準備を実施して視察や展示会への参加
を行うことができ、ひいてはより商談の成果が挙がる可能性が見込まれる。
(2)ロサンゼルスの有する魅力の紹介
カリフォルニア州、とりわけロサンゼルスは、米国における日本食の導入の地とも言え、
第 1 章で述べたように 150 年の歴史を有する日系米国人社会で脈々と受け継がれてきた。
また、戦後、日系大手流通事業者の 2 つが本部を構え、チェーン網をもつ日系食品小売店
が 3 つあり、日系食品事業者の親睦団体が存在し、実際に江戸前寿司が当地から全米に本
格紹介されるなど、いわば米国における日本食の供給基地となっている。また、ニューヨ
ークに次ぐ全米第 2 位の都市圏、カリフォルニア州の経済活動の中心としての規模を有す
20
る上に、現在も世界で第 2 位の日本人居住者31を有する都市であるなどコアな日本食消費
者が存在するほか、高感度な白人を中心とした消費者に加えて、日系以外のアジア系住民
も多くいわば「東端のアジア」とも言える様相を呈するなど、日本食事業者にとって世界
でも限られた参入しやすい市場である。このようなこともあり、「食」の観点からロサン
ゼルスを体系的・包括的に実態に即して紹介する必要性が感じられた。
(3)ロサンゼルス市場の実態に即した効果的な紹介
また、どのようにしたら今まで以上に効果的に地元市場について紹介することができ
るかを検討した。従来、ロサンゼルス市場についての情報は、視察等で実際に訪れた者が
企業訪問等を通じて実際に経験的に知ってもらうか、ジェトロのブリーフィングを通じて
知ることなどであった。他方、日本に居ながらにして、具体的に商品についての情報を得
るためには、まとまった調査を通じて、体系的・包括的に紹介する必要性が感じられた。
(4)マーケット調査の必要性
従来、食品・農水産関連の調査においては、輸出担当者のために制度を紹介するものが
多かった。この重要性は変わらないものの、食品・農水産分野を具体的に考えた場合には、
地方に隈なく存在する中小企業の実情を踏まえると、従来必ずしも海外輸出へ関心が高い
とは言えなかった企業にも分かりやすく輸出の可能性を紹介する必要があるのではない
かと考えた。この目的を達成するため、ロサンゼルス市場の特性を分かりやすく紹介でき
る具体的な商品に則した「マーケット」調査が必要と考えられた。
31
なお、世界最大の日本人の居住地はニューヨーク(2005 年 10 月現在、5.9 万人)。ただ、近年の増加率をみ
ると、ロサンゼルス(2005 年の前年比+8.6%)はニューヨーク(同▲1.9%)を大きく上回っているなど、ロ
サンゼルス(2005 年 10 月現在、5.1 万人)に勢いが感じられる。
21
Ⅱ.スキーム
このようなことを背景に、以下のような特長ある調査とした。
(1) 内外のネットワークを充分に活用した調査体制の構築
先に記した通り、ジェトロが有する国内外事務所のネットワーク機能を充分に活用し
た調査体制の構築を検討した。この結果、具体的に 38 カ所に及ぶ国内事務所の推薦を得
る形式32を用いながら、国内の地元にあって海外に輸出意欲のある経営者をジェトロが一
緒になって支援し発掘する機能が強化できるとも考えた。
また、参加企業とのコミュニケーションのみならず、調査中・調査結果に関する情報
を国内事務所に集中させることにより、地元にある他の輸出意欲のある企業へのサービ
スの充実にもつながることが期待できると考えた。
(2) 「ロサンゼルスと商取引のない中小企業への支援」に目的を明確化
あえて中小企業のみを調査対象として打ち出すことにより、公的な支援がなくとも自
力で海外市場のマーケティングが比較的可能な規模の大きな企業を対象とせず、言葉を
含めてビジネス開拓上の障害が少なくないものの、意欲ある地方の中小企業経営者にロ
サンゼルスの最新の情報を届けることに注力した。また、既にロサンゼルスと商取引を
有する企業への追加的な支援よりも、これまでロサンゼルスへの進出の機会がない、あ
るいは躊躇している経営者にその可能性を具体的に検討していただくために、そのよう
な企業のみを対象とした。
(3) 参加企業の費用の限定化
参加企業の負担は、現地でのヒアリング用に必要な食品のサンプル 60 食分の提供とジ
ェトロ指定の倉庫(千葉県成田市)までの輸送費のみにとどめ、米国への輸送料や通関手
続きにかかる費用、現地での調査にかかる費用はジェトロで負担した。
(4) 幅広い品目の取扱い
本調査の対象品目の種類を多様化させることで、多くの企業にとって有益なロサンゼ
ルスの市場の情報を提供することをめざし、15 品目を選定した。
(5) 情報開示への協力要請
参加企業の費用負担を限定する代わりに調査結果を企業名・商品名の実名とともに公
開することに了解していただいた。これにより、地方にいる食品関係事業者に広くロサ
32
この背景には、例えば応募資格の1つである「平成 16 年 4 月 1 日以降民事・刑事上責任を問われた衛生事故
を生じさせた工場等生産施設等で製造されていない」というような、現地でないと分かりにくい情報を確認し
て認証する意味合いも有している。
22
ンゼルスの現状を認識してもらい、かつ個別のケースに則したケーススタディを調査報
告書に多く含めることで、輸出意欲ある事業者にロサンゼルス進出を考えてもらう手掛
かりになるのではないかと考えた。
(6) 具体的な商品を持参した 30 に及ぶ購買担当者への直接のヒアリング実施
例えば一概に酢と言っても各社が実際に生産している商品はそれぞれ全て異なり、その
商品それぞれにロサンゼルス市場のもつ可能性は本来異なるはずである。このような考
えに基づき、現地の信頼の置ける輸入・卸売事業社のご協力を得て、個別の商品を 60 食
分ロサンゼルスに実際に運び込んだ。
また、評価する側も一定の見識がある者でないと信頼できるヒアリングにならないこと
や、全体としてある程度の数も必要なことから、当地で実際に信用力の高いレストラン・
小売店の購入担当者・シェフに 30 カ所で面会を行い、商品を実際に試食等をしていただ
き、それに対するコメントを得た。
(7) 調査参加企業を含めた関係者の日常活動に対する配慮
調査対象品目を扱う企業は、本調査に直接携わっていないことから、本報告書の内容
に対する問い合わせが読者から寄せられてもそれに直接答えることはできない。また、
仮に問い合わせが寄せられた場合、それに対応することで各社に無用の負担をかけるお
それがある。そうしたことを防止するため、調査参加各社には、本報告書に基づく問合
せには応じる必要が無いことを明確化し、ジェトロが情報照会の窓口になることとした。
また、調査参加各社には事前に問合せ等への対応方針を明確にしてもらい、その方針に
従ってジェトロは調査参加各社に情報提供を行うものとした。
Ⅲ.実施プロセス
調査実務は、業務上の都合もあり、以下の日程で平成 18 年度下期に集中的に実施され
た。スケジュールの概要を取りまとめると表 9 のようになる。
調査過程の主な段階における状況は以下のとおりである。
1.調査対象品目の募集から商品選定まで
2006 年 9 月にジェトロ・ロサンゼルスより、日本国内のジェトロ事務所(以下、「国
内事務所」)を通じて各地の企業に対して本調査対象品目を募集した。これに対して、15
の国内事務所から応募や質問等の照会があり、最終的に最終的に 11 の国内事務所を通じ
て 42 商品の応募があった。
その後、ジェトロ・ロサンゼルスセンターで現地の食品流通事業者の専門家を交えて調
査対象品目の選考を行った。このなかでは、まず商品選定を始める前にいくつかの選定基
23
準を明確化し、それに従って商品選定を進めることとした。具体的には、以下の基準に基
づいて選定を行った。
<選定基準>
・ 単に最も販売見込みの高い商品を選択するのではなく、幅広い業種の読者の関心に
応えられるようにできるだけ対象品目を幅広くとること
・ そのため、まず目安として参加商品を以下の 15 に応募商品を分類して、その区分
毎に資格等を満たす応募がある限り 1 品目は選ぶこと33
【対象となる品目分類】
穀物
イモ類
砂糖類
菓子類
油脂類
豆類
魚介類
野菜類
果実類
きのこ類
藻類
飲料類
調味類
加工食品
その他
・ 全国からの広範な応募を踏まえ、できるだけ多くの地域からの応募に応えること
・ 応募の時点で調査結果の情報開示に十分な協力をいただくことができる企業を優
先すること
・ 実際にロサンゼルス地域ですでに流通していることが確認される商品は調査対象
外とすること
・ 日本から米国への輸送に際して、通関等で特別に時間を要する可能性が見込まれる
商品は調査対象外すること(調査スケジュール上のリスクとなるため)
選定の結果、最終的に表 8 にある 9 国内事務所の 15 品目が選定された。選定結果は、
ロサンゼルスセンターから国内事務所を通じて応募各社に伝えられた。
2.商品の輸送
調査対象品目の決定後、国内事務所を通じて選定商品のサンプル 60 食分をロサンゼル
スセンターが指定する倉庫(千葉県成田市)に発送するよう依頼した。指定倉庫で商品を
全て受け取った後ロサンゼルス空港に空輸し、
通関を経てロサンゼルスの倉庫に到着した。
3.ヒアリングの準備と実施
商品がロサンゼルスに到着後、ロサンゼルスセンターの調査担当者と関係協力先が実際
の商品を確認するとともに、事前に入手した資料による知識と併せて地元のレストラン・
小売店に紹介するための英文資料を作成した。
同時に、非日系の小売店・レストランに面会を申し込んだ。ロサンゼルスセンターによ
33
この結果、魚介類、野菜類、果実類、きのこ類、藻類には該当する商品は無かった。
24
る事前の調査や地元での評判を手掛かりに、小売は日系 3 店34の他、東アジア系 12 店(中
国系 3 店、韓国系 2 店、ベトナム系 2 店、フィリピン系 2 店、タイ系 3 店)、地元高級小
売店 4 店、専門店353 店など幅広く申入れを行った。さらに、レストランも日系レストラ
ン 26 店、非日系レストラン 6 店に接触を試みた。ただ、レストランの取り扱いメニュー
について、選定食材の性質上、日本食事業者を対象とすることが有効と考えられ、結果的
に日系事業者が多くなった。こうした中でもロサンゼルスのトレンドをリードするような
特徴のある事業者に協力していただくよう努めた。その結果、ヒアリングのための面会に
応じて頂いた先は表 10 の通りとなった。
また、ヒアリングに際しては、全品目・全ヒアリング先共通の質問項目を設定し、包括
的で比較可能な回答が得られるように工夫した。
質 問 項 目
類似品を扱っているか
このまま利用できるか
質 問 の 狙 い
競合他社や日系メーカーを含めてその商品のイン
パクトを測る
対象商品がそのままでロサンゼルス市場に通用す
るかを問う
今回初めてのロサンゼルスで紹介されることから、
求められる改善点(あれば)
米国市場に浸透していくために何らかの工夫等が
必要な場合が多いことを想定して質問した
市場参入へのアドバイス
気付いた点を挙げてもらい、対象品目の市場参入の
参考とするため
(参考)輸入手続と想定価格
(1)輸入手続を迅速かつ確実にするためのラベル
今回の試食用商品を米国に持ち込む際には、成分表示を含むラベルを貼っている。
本来、試食用だけのためであれば、必ずしも必要とまでは言えないものの、よりUSDA、
FDAに協力的な姿勢を示すことで手続きを迅速・確実になることを重視して、メーカ
ー各社のご協力を得て、このような措置を行った。
(2)想定価格の設定
有益なヒアリングを行うためには、ロサンゼルスで実際に販売される際の価格を提
34
35
以下で小売店において「店」という場合には、1 店舗を経営する事業体ではなく、多くがチェーン店舗展開す
る事業体を意味している。
ここで言う専門店とは、例えば顧客の指定に基づき果実等をその場でミキサーにかけて新鮮なジュースを提
供するチェーン店舗のような、小売店にもレストランにも属さないタイプの店舗を言う。
25
示する必要がある。しかしながら、現段階では西海岸に輸出を行っていないことから、
実際には希望小売価格に相当するものは各社ともない。
そこで、今回事前に応募段階で国内希望小売価格を得ていたことから、卸値が日本
国内小売価格の 7 割と想定し、船運賃、関税、諸経費にマージン率 30~35%を基本と
した概算額を加算した価格を参考価格としている。
【表 8】選定品目一覧
メーカー名
商
品 名
担当国内事務所
有限会社タンポヤ林
きりたんぽ
秋
田
株式会社田丸屋本店
葉わさび
静
岡
〃
わさびドレッシング
〃
株式会社まるや八丁味噌
有機八丁味噌
名古屋
プラム食品株式会社
梅エキス
大
〃
阪
完熟梅ジャム
〃
有限会社美宝
竹清水
〃
株式会社半鐘屋
活性はと麦の力
有限会社ビーエムステーション
極上の玄米コーヒー ブラウン
カフェ粗挽き
有限会社 AON ケミカル
二十世紀梨酢
千金丹ケアーズ株式会社
黒ゴマペースト(はちみつ入り)
香
川
ヨネザワフーズ株式会社
自然派はるさめS麺(はるさめ)
熊
本
有限会社 ART
くま焼栗
鹿児島製茶株式会社
有機煎茶 遥
〃
GOLD
岡
山
鳥
取
〃
〃
鹿児島
水出し煎茶 夏・物・語
〃
【表 9】調査実施スケジュール
期
間
実
施
内
容
9月5日
応募用事務文書の発送(ジェトロ)
9 月 6~14 日
応募に関する質問(応募企業 → ジェトロ)
9 月 7~20 日
質問への回答(ジェトロ → 応募企業)
9 月 22 日
応募締切
10 月 2 日
選定品目連絡(ジェトロ → 応募企業)
10 月 2~12 日
調査対象品目サンプルの送付(調査対象企業)
10 月 16 日
品目サンプルをロサンゼルスへ輸送
10 月 27 日~12 月 7 日
ヒアリング調査実施
26
【表 10】ヒアリング一覧
月
10
11
12
日
ヒアリング先
場
所
27
Saigon Supermarket
Garden Grove(Orange 郡)
27
Benihana
Beverly Hills
31
Matsushisa
Beverly Hills
7
Hokusai
Beverly Hills
9
Mimi’s Café
Torrance
16
日系小売店
21
ニジヤ
Torrance
21
Marukai
Gardena
22
Inaba
Torrance
25
米系小売店
27
ビストロララミー
Torrance
27
かんぱち
Torrance
27
すし健
Torrance
28
米系小売店
28
割烹シーフード
Torrance
29
ゆず
Torrance
29
本多
Costa Mesa(Orange 郡)
29
新撰組
Torrance
30
寅福
Los Angeles
30
南蛮館
Los Angeles
30
Sushi Grumpy Fish
Laguna Beach(Orange 郡)
4
ホウセンカ
Torrance
4
たまえん
Torrance
4
ビストロボーズ
Torrance
4
OKIDOKI
Costa Mesa(Orange 郡)
5
サクラ
Ojai(Orange 郡)
5
おたふく
Gardena
6
Koryu
Costa Mesa(Orange 郡)
6
東京ひばち
Los Angeles
7
Shabu Shabu Garden
Sherman Oaks
(注) 場所の欄にカッコ書きがない場合は、ロサンゼルス郡に位置する。
27
第3章
商品別のヒアリング結果
Ⅰ.総論
1)ヒアリングの設定
本調査では、日本国内から応募があった食品・素材 42 品目のなかから 15 品目を選び、
ロサンゼルス地域における市場性が可能性が高いと見込まれる販売候補先、具体的には地
元の代表的なレストラン、小売店等へのヒアリングを行い、販売の可能性を探った。
ヒアリング先の内訳は、
日系の日本食レストラン 22 店、米系の日本食レストラン 2 店、
日系スーパーマーケット 3 店、米系スーパーマーケットが 3 店の合計 30 店である。
2)ヒアリングの目的
レストランでは、これらの食品・素材が料理の味付けや材料として使えるかどうかの調
査を、スーパーマーケットでは、一般の消費者に量販品として通用するかどうかを知るこ
とを目的として調査を実施した。米系スーパーマーケットは、比較的健康志向の高い顧客
を持つ店とエスニック系スーパーマーケットを選んだ。これは、現行の輸入価格から関税
や実際の輸入経費を加味して算出した当地での予想価格が現地の市場価格に比較して総
じて高いために、一般の量販品以外の用途としての市場性を探るためである。
3)ヒアリングの限界と価値
ヒアリングの対象店は限られており、この調査で米国市場での販売の可能性を完全に判
定することはできないが、本調査は日本からの短期出張で行う市場調査とは異なり、地元
に住むスタッフが長年の土地勘や経験を活かし、足で聞き取りした結果で、充分評価の判
断に役立つものと思われる。
ジェトロが直接売り込むわけではないので利害関係がないためか、ヒアリングの際、聞
き取りの相手は忌憚のないコメントをしてくれた。こうした本音の情報を伝え、米国進出
の参考にするために、敢えて厳しいコメントも網羅的に紹介した。ただし、具体的な価格
情報は、調査対象商品の個別情報に関連するので抽象的な表現に置き換えた。
4)米国市場開拓の留意点
新しい食材の新規販売において、米国ですでに人に知られつつある知名度の高い食材を
原料にしたものは、入口の段階では説明が不要で有利だが、今日相当日本食関連が普及す
る中で、よほどの商品性がなければ、
逆に価格競争等に巻き込まれるケースも少なくない。
その中で、新規商品の存在感を確立するには、その商品が他のものとどのように違うの
か、どうしてよいのか、どうしてその商品でないといけないのか、を明確に消費者に訴え
なければならない。そのために特定の層(教育水準、所得水準、趣味や考え方)をターゲ
28
ットにし、その層の消費者の心に届くように広告・ラベル・サイズ・パッケージ・販売戦
略などを考えてゆく必要がある。
5)ニッチ・マーケットの価値
その意味で当初はニッチな市場を目指し、ターゲットを絞り、商品の特性を明確にし、
初期のマーケティング・コストを抑えてゆくことは一考に価する。
また、こだわり商品は必ずしも否定されない。特に、サプリメント等に特化した商品に
は一定の大きな市場が存在する。米国は巨大なサプリメント市場があり、通常の専門店以
外に一般のスーパーマーケットなどにもかなりなスペースのサプリメント売り場がある。
ユニークな商品は「頭で買ってもらう」必要もある。一般的な米国人は食に関しては非
常に保守的な傾向がある。珍しいものを出されても、材料に何が使ってあるのかを聞き、
自分が納得しないと口にしない光景はよく見かける。寿司や刺身など、エスニック料理と
いわれる日本食が普及したのも、初期の段階ではハリウッドという新しい業界の進取と好
奇心に富んだ人たちが食べ始めたのがそのきっかけとなった。
人々は一度自分の頭でその食材や料理を納得すると食べ始め、人にも積極的に勧めるよ
うになる。近年、人々の健康への関心は高まり、健康志向の強い人々をターゲットにした
スーパーマーケットも現れ、比較的教育水準の高いこれらの顧客は、価格よりもオーガニ
ック素材や健康に留意した食材にこだわり情報も豊富に持っている。したがって、どのよ
うにこれらの消費者を説得するかは米国のマーケティングにおいては非常に大切である。
しかも近年の健康志向から、ヘルシーなイメージのある日本食はますます脚光を浴びてい
て、日本食材にとって今は追い風が吹いているといえる。
6)米国市場向け商品開発の留意点
その日本食普及を背景に、健康面、味覚、パッケージ、簡便さ等「なるほど日本人らし
く考えるな」と思わせる商品は評価され、買われる傾向にある。したがって、一般に加工
度の低いものほど、価格競争から逃れられないということがいえる。その意味で価格競争
力では難しい日本の商品は、完成度の高さとユニークさが米国市場参入の要件となる。
7)ホームページ活用による商品情報発信のお勧め
健康志向商品やサプリメントの愛用者には、比較的知識層の人たちが多い。彼等は自ら
積極的にこれら商品の情報を集めるので、商品の特性や強調したい点についての説明はく
どいほど行う必要がある。しかし、広告でこれを行えば相当の費用を要するしラベルやパ
ッケージのスペースは限られている。そのため、ホームページは最も利用価値の高い宣伝
媒体だと思われる。米国人の特性として、欲しい情報は自ら収集する習性があるので、英
文で分かりやすく魅力的なホームページを作れば効果が得られると思われる。
29
Ⅱ.各論
本調査の内容に関するお問い合わせは、ジェトロ・ロサンゼルスセンターもしくは東京本部農
水産調査課までお願いいたします。(連絡先は、P.1 参照)
調査対象品目の製造・取扱会社では、本報告書に関するお問い合わせにはお答えしておりませ
んので、予めご了承ください。
1.黒ごまペースト(ハチミツ入り)
(千金丹ケアーズ株式会社)
1)商品概要
項
Ⅰ
目
Ⅱ
販売年月
商品の特長
(PR のポイント、代表的な
消費方法、他)
Ⅲ
成分(特に、健康維持・
増進に効力がある成分)
Ⅳ 製法
内
容
日本(全国) 1996 年 8 月発売
トーストやクラッカーに塗って、おいしく食べるだけで「ご
ま」の豊富な栄養成分を効率よく吸収することができます。
セサミン、セサモール、ビタミンE、鉄分、カルシウム、食
物繊維
1 日本原産
日本固有の食品ではない。
2 類似製品の有無
類似製品有り。
3 製法上の特長
レシピの模倣は可能と思われるが、風合いの再現は困難であ
ろうと推測される。
Ⅴ
賞味期限
Ⅵ
市場
1 国内市場
(主な市場、購買層)
製造日より1年
全国レベルで流通。中高年層の購買比率が高く、性別は問わ
ない。季節性は低く、年間を通して首都圏およびその周辺地
域で販売。
2 海外市場
Ⅶ
① 米国市場
(東海岸、中・南部)
現在まで紹介、販売の実績は無い。
② アジア・オセアニア市場
2004 年 12 月より台湾の物産展を契機として台湾現地企業
と取引開始。1999 年 10 月より中国で代理店契約を締結し
取引開始。
③ その他市場
実績は無い。
国内希望小売価格
600 円(税込 630 円)
30
2)調査結果
味の評価は総体的に好評。パンに塗るジャムのイメージが強く、ピーナッツバターの味と類
似していることから、このままでは価格もピーナッツバターと比較してもう一段の価格努力が
必要。他方、レストランなどに様々な使い方のレシピを提案できれば、新しい市場に合った価
格設定が受け入れられる可能性もある。このためには、パッケージの改善や黒ゴマの健康面で
の効用を科学的に訴えることなどが課題と言える。
a)ヒアリング対象店
レストラン 17 店、日系スーパーマーケット 3 店、米系スーパーマーケット 3 店
b)レストラン
日系のレストランでは、ゴマを使ってはいるが、黒ゴマペーストまたは類似品を取り扱って
いる店はない。米系レストランでは類似品として、バター、ピーナッツバター、ジャムを上げ
ている。
「このまま利用できるか」という問いに対しては、「難しい」、「和食には難しい」
、「色が強
すぎるためこのままの使用はかなり難しい」、
「米国人に黒の食材は難しい」、
「寿司にも黒をで
きるだけ外に出さないようにしているのが現状」、
「甘さがあるので料理には難しい」、
「レスト
ランでは難しいが家庭ではいける」
、などの答えが 6 店からあった。
一方、
「他の調味料と合わせソースにすることは可能、
「デザート(ゴマプリン)のトッピン
グなどに使用」、
「アイスクリームなどのデザートで使用」、
「鳥ささ身の上に乗せる」、
「豆腐・
胡麻和え・フランスパンのペーストとしては面白い」、
「現在使用のバター・オリーブオイルの
代わりに使える可能性あり」、「デザートのソース」、などの様々な可能性が 10 店から指摘さ
れた。
改善点としては、「使用方法がわかりにくい」、
「パッケージの改良が必要で中身の価値を外
見でつぶしてしまっている」、とパッケージの高級感に対する改善要望が 10 店から求められ
た。
味については、
「味は良い」、
「意外に美味しい」
、
「香りもよく美味しい」
、と 12 店から評価
され大いに受け入れられる余地がある。
価格面では、
「価格が高すぎる、
「価格は味を考えても類似品と比べて高過ぎる」、
「パンに塗
ることが主体となると難しい」、「高価で価格的には健康食品扱いの品」、など価格が高いとい
う店が 8 店と多く、価格改善目標としては、「ピーナッツバターの 2~3 割増であれば、ピー
ナッツバターに合わせる」、などとピーナッツバターが価格比較の基準になっている。ところ
が、「価格は問題ないと思う」、「価格もオーケー」、と肯定的な意見も 2 店から寄せられ、パ
ッケージの改善とあいまって、どのような使い方をするかで価格に対する評価が分かれている。
また、「色が悪い」、「黒は米国人に対して食べるものとしてはマイナス」、「黒ゴマでなく白
31
ゴマではできないのか」
、「米国人向けの黒の食材は非常に難しい」、と黒に対して懸念する意
見が 3 店からあった。他にチューブ入りを提案した店もあったが、店でトッピングやデザー
トの味付けに使用する場合の使い勝手としては傾聴に値する意見である。
米系レストランからは、
「現在使用中のパン、バター、ピーナッツバターなどコストが上が
るので難しい」との指摘があった。
c)スーパーマーケット
日系のスーパーマーケットでは、類似品としてピーナッツバター、ジャムなどが挙げられ日
本製の類似品を扱っていると答えた店もある。
「黒ゴマのスティック状菓子を売っているが米
国人には売れない」、「黒ゴマに興味がないのかもしれない」、というコメントもあったが、こ
れも黒色が障害になっている表れであろう。味は、「黒ゴマ/ハチミツのコンビネーションが
よいのではないか」、「味は良く食べやすい」、
「なめらかで口当たりはとても良い」、と好評で
ある。価格はやはりピーナッツバターとの比較で今一歩の改善が期待されているが、パッケー
ジの改善と経営努力で達成可能の範囲だと推測される。
米系スーパーマーケットでは、類似品として「ピーナッツバターのほか、
中近東製の TANINI
を取り扱っている」という答えが1件、日本製のゴマペーストが 1 件あった。
「ピーナッツバ
ターのようで美味しい」
、
「健康に良いのであればなおさら」
、
「ユニークな商品なのでお客も興
味を持つのではないか」
、
「美味しく食べやすい」
、
「色も余り気にならない」、
「健康面で非常に
面白い」、
「効用などをうたったほうが魅力的」、と前向きの意見が多い。
「ラベルを改善すべき」
という意見はここでも聞かれた。1 店、「蜂蜜はまれに乳幼児がアレルギー反応を起こすこと
があるため乳幼児持ちのお客は蜂蜜入りを避ける人もいる」、という指摘があった。パッケー
ジに注意書きを書くか、製法に工夫が必要である。
d)市場参入へのアドバイス
「使用方法がわかりにくい」との指摘はあるが、「香りもよく味も美味しい」と評価され、
価格は高過ぎるという意見と問題ないという意見の2通りに分かれた。価格についてはどのよ
うなルートにどのような商品として販売するかで違ってくるが、高級品を目指すなら価格差を
克服するためにパッケージの改善、
また利便性を考えたチューブ入りの検討などが指摘された。
また、黒色への抵抗感を除くために白ゴマ使用の検討を求める声もある。一部の幼児の蜂蜜ア
レルギー対策としてはパッケージに注意書きを書くか、製法に工夫を凝らす必要がある。
e)全体的な感想
味のコーディネーションに対して多くの支持者が確認できる他、味覚的に類似する米国人に
慣れ親しんだピーナッツバターの代替品としての要素を有する。しかも、健康的であるという
「頭で食べられる」部分もあり、商品への関心は強いものがある。高所得者層にはこのままで
32
も一定の需要の可能性がある。ただ、市場を拡大させるためには、味に比べて競争力の弱いパ
ッケージや、
しばしば比較となるピーナッツバターの価格に対する価格設定などが検討課題で
ある。また、色(黒)も一定の受容は確認されるものの、白ゴマなどを用いて、黒という色を
回避できれば、一段と市場の拡大も期待できるのではないか。
日本では黒ゴマ、黒豚など、黒は高級感を持ったイメージがある。しかし、黒という色は米
国では一部にイカ墨パスタなどの料理はあるものの一般的ではなく、黒色の食材・料理は見た
目に抵抗感がある。もしこのイメージを破ることが出来れば開拓者利益とも言うべき恩恵を享
受できる可能性がある。そのためには黒ゴマの効用を強調する必要がある。味の絶妙なコーデ
ィネーションが認識され、関心が持たれ、まだ黒ゴマへの認知度が地元では必ずしも高くない
ことから、黒ゴマの健康面での効用などを訴えることに成功すれば、かえって新しい食材発見
となり、更に様々な商品開発につながる可能性が開ける
価格面では、量販されているピーナッツバターとほぼ同等に戦えるようになるか、または健
康面を強調して他の使い方を提案すれば、さらに可能性は拡がる。そのためには実験結果など
具体的に証明できる資料を用意するなど、説明のデータ揃えが必要となろう。
33
2.完熟梅ジャム
(プラム食品株式会社)
1)商品概要
項
Ⅰ
Ⅱ
目
内
容
販売年月
1986 年
商品の特長
完熟した紀州特産の南高梅に蜂蜜を加え、甘酸っぱさを少し
残したマイルドなおいしさが口に広がります。パン・ヨーグ
ルト等にかけて使用が代表的な使用方法です。
(PR のポイント、代表的な
消費方法、他)
Ⅲ
成分(特に、健康維持・
増進に効力がある成分)
Ⅳ 製法
1 日本原産
海外に有
2 類似製品の有無
有
3 製法上の特長
Ⅴ
賞味期限
Ⅵ
市場
1 国内市場
(主な市場、購買層)
製造日より 1 年
全国で販売、うち関西地区 4 割。主婦層が主な紅梅層。TV
ショッピングを放映する時期によく売れる。TV ショッピン
グ・お土産店での販売が多い。
2 海外市場
Ⅶ
① 米国市場
(東海岸、中・南部)
無し
② アジア・オセアニア市場
〃
③ その他市場
〃
国内希望小売価格
420 円(税込み)
2)調査結果
味のコーディネーションに日系を中心に高い評価があり、価格改善努力とその他高級感の演
出により、市場の可能性が見える。
米国では梅というと「プラム」だが、梅とプラムはかなり味が異なる。新しい食材・
「ウメ」
として売り込みに成功すれば、他の食材にない味、健康面での効用などから様々な利用方法が
普及される。また、日本で定評のある紀州梅のブランド力をアピールするのも効果がある。
34
a)ヒアリング対象店
レストラン 13 店、日系スーパーマーケット 3 店、米系スーパーマーケット 3 店
b)レストラン
類似品については、練り梅、梅酒、などを挙げた店が3店あったが、他は取り扱っていない。
利用方法については、「難しい」、「洋食には利用できると思うが和食には合わない」、「お店で
は使えないがパンにつけて食べられる」、「中途半端な状態なので使用しにくい」
、との意見が
8 店から寄せられた。使用方法としては、パンにつけるほか、デザート系、前菜のパン、クレ
ープの中身、などの提案が 4 店からあった。
味については、「美味しい」、「意外に美味しい」
、「味は良い」、「甘酸っぱいのは米国人でも
いける」、
「梅は珍しいのでチャンスはある」、と肯定的な意見が 10 店から寄せられたが、
「梅
の味がしなくて柑橘系の味に感じる」、
「料理に使うには甘過ぎる」、
「梅であるといわれなけれ
ばわからない」、
「梅の味が薄くいわれなければ柑橘またはアプリコットでも通用してしまう」、
「ジャムとしての味は良いが強調性に欠ける」
、と梅味を強調する味の改善要求が 4 店から出
された。
価格的にはジャムとして問題ない、という意見が 1 店から寄せられたものの、価格が高い、
と 5 店が答え、中国系で 10 分の 1 の価格で出回っている、という意見も 1 店あった。
c)スーパーマーケット
どの店もフルーツ系の多種類のジャムを扱っており、ピーナッツバターを挙げた店もあった。
この分野は多くの類似品があることで競争は厳しい。
味は、「美味しくて食べやすいので価格が合えば面白い」、
「もっと梅の味がしっかりしてい
た方が良いのでは」、
「ユニークで面白い上に美味しい」、と肯定的な意見が主流だが、
「少々水
っぽい」、という指摘もあった。
改善要望にパッケージ(ラベル)が挙がっている。「ラベルは日本語を残した方がよいとの
提案が米系スーパーマーケットから出された。価格要求については、日系マーケットでは紀州
産の梅であることを評価してある程度高めでも許容されるようであるが、米系は一般のジャム
と比較するので4割程度の改善要求となっているなど品質の認識にギャップがある。
d)市場参入へのアドバイス
ピーナッツバターとの比較から、価格に対する改善要望が強い。また、「パッケージが安っ
ぽい」、
「高級感に欠ける」
、と価格に見合ったパッケージの改善を求める声も多い。
「効能など
を紹介するとよい」、
「もっとセールスポイントを作った方がよい」、
「紀州産の梅を使っている」、
と商品の特性をアピールすべきとの改善意見がある。米系スーパーから出されている提案、ラ
35
ベルに日本語を使用する案は、
「ジャパンクール(日本はかっこよい)
」というアニメ・ポップ
ミュージックなどに憧れ漢字入りの T-シャツを着る米国の若者達の動向を反映している。
e)全体的な感想
ジャムはパン社会にはなじみの深い食品である。それだけに種類も多く競争も激しい。味に
ついては相対的によい評価が得られているので、今までにない「ウメ」味の特性と健康面での
メリットを強調することで多少の価格差を乗り越えられる可能性がある。梅味が薄いとの指摘
もあるが、甘さを出すためにメーカーは「梅の最高品種である紀州産南高梅を完熟させた」と
うたっている。完熟させることで甘さとうまさは出たが梅味が薄れたのかもしれない。
梅(ウメ)は米国のプラムとは違うことをわからせ、ウメの味を強調することで新しいファ
ン層の開拓が期待できる。そのためには、パッケージで日本語によるエキゾッチック感を強調
したり、高級化を図るなどの努力が必要となる。また「ウメ」の効用を証明する科学的データ
も必要となる。
広く売るためにはいま一段の価格努力(日系、店頭で 5 ドル未満)が望まれる。使い方(レ
シピ)の開発をして提案することで価格差を乗り越える道も残されている。
36
3.わさびドレッシング
(株式会社田丸屋本店)
1)商品概要
項
Ⅰ
目
Ⅱ
販売年月
商品の特長
(PR のポイント、代表的な
消費方法、他)
Ⅲ
成分(特に、健康維持・
増進に効力がある成分)
Ⅳ
製法
内
容
1995 年 4 月1日
本物の根わさび使用、新しい味のドレッシング。日本独自
の香辛料であり、抗菌、殺菌の効果が見直されているわさ
びの、家庭内食卓出現頻度の高いサラダメニューへの展開、
また、さっぱりした味が評価されている和風ドレッシング
のメニュー拡大。和風さっぱり味のため、各種和風料理へ
の汎用調味料として使用できます。
サラダにかけて、冷や奴にかけて、そうめんやうどんにか
けるのが代表的な消費方法です。
わさびは、食欲増進作業、ビタミン B1 合成増強作用、抗
菌活性、抗寄生虫活性、抗変異原性、抗酸化活性、抗血小
板凝集作用、抗ピロリ菌作用、消化管吸収促進作用、大腸
電解質分泌能に対する影響、骨代謝に対する影響、抗アレ
ルギー作用があることが分かっています。
日本固有
2 類似製品の有無
有
3 製法上の特長
・本物の根わさびを刻み込んだ、さっぱりとした辛さ
・植物油使用のオイルタイプのため、消化吸収が良い
Ⅴ
1 日本原産
賞味期限
市場
1 国内市場
(主な市場、購買層)
6 ヵ月
Ⅵ
静岡 40%、東京 40%。30 代以上、男女、8 月
2 海外市場
① 米国市場
(東海岸、中・南部)
② アジア・オセアニア市場
香港
③ その他市場
Ⅶ
国内希望小売価格
500 円
37
2)調査結果
わさびは寿司ブームと共に一般大衆に知られており、わさびの独特の味と辛味は地元米国人
にも評価されている。レストランからはドレッシングの他、カルパッチョ、前菜など使い方に
多くの提案があり可能性は高い。改善要望は、分離防止、明確なわさび味、価格面での大幅な
努力、ボトルデザインへ改善が期待されている。可能性は高いが価格が最大の課題である。
a)ヒアリング対象店
レストラン 21 店、日系スーパーマーケット 3 店、米系スーパーマーケット 2 店
b)レストラン
類似品としては、粉わさび、練りわさび、ポン酢ベース、醤油ジンジャー、マヨネーズ、和
風ドレッシング、自家製ドレッシング、ゴマドレッシング、からし醤油のブレンド、自家製し
ょうが、アップルビネガー・ドレッシング、ゆずポン酢系のドレッシングのほか、米国人向け
にクリーミータイプのドレッシングやチャイニーズ・ドレッシング(甘酸っぱい味)などが挙
げられた。
使い方としては、サラダドレッシングのほか、シーフード・サラダ、前菜、白マグロタタキ
のソース、カルパッチョのタレ、Thai Wrap のようなメニューのディップなど、様々な使い
方が 12 店から提案された。
味は 11 店が、「美味しい」、「香りも味もよいと思う」、
「さっぱり味でよい」、
「高級食材を
扱うレストランでは可能性がある」
、
「品質は良く味も酸味が薄めでドレッシングの素として可
能性あり」、
「米国人にも受けそうな味」、と肯定的な意見があったものの、
「オイルが多いよう
な気がする」
、
「もっとわさび味が強い方がよい」
、
「米国人には物足りない」、
「アミノ酸を無理
に入れている」、
「アミノ酸の味が濃い」、
「わさびの香りも味も薄い、
「わさびの辛さが少ない」、
「和風ドレッシングと変わらない」
、と味の改善を求める意見も 11 店からあった。
もう一つ目立った意見は、「オイルが多い」、
「混ざりにくく分離しやすい」、「オイルの切れ
が悪い」、「混ざりが悪いため本当の味が出し切れてない」
、とオイルとの混ざり具合に対する
改善要求が8店からあったことである。
価格については、他のドレッシングに比較して割高感が強く、13 店から強い価格改善要望
があった。ドレッシングは単体で価格はつけられないため価格に対する要求はシビアである。
「価格はオーケー」と回答したのは 1 店に留まった。
c)スーパーマーケット
日系のスーパーマーケットでも多種類のドレッシングを扱っている。商品としては受け入れ
られるが、いずれの店もかなりの価格改善を希望しており、これを達成するのは相当な企業努
力を必要とする。味については、「提案商品ではある」、「フレーバーとしてはとても面白い」、
38
「サラダ系のおすしなどによく合いそう」、と評価された。ここでも混ざりが悪い、という指
摘があり、業務用に大きいビンの方が良いのではないか、というコメントも寄せられた。
米系のスーパーマーケットでは、
「類似品として、和風を含め多種類のドレッシングあり、
同じような味のものを自社ブランドで取り扱っている」、と回答があった。価格さえ合えば取
り扱える感触は大であるが、現行の想定価格だと希望価格に対する乖離が大きく、量販店向け
商品として定着するには相当な企業努力が必要となろう。
味は、
「充分わさびの味がして美味しい」と評価されたが、
「混ざりが悪く振ってから注ぐ頃
には分離してしまう」、
「ビンでなくてもいいならプラスチック製にし、噴出注ぎ口にした方が
いいかも」、という意見があった。
d)市場参入へのアドバイス
価格努力とともに、
「わさび味が薄い」、
「米国人には味が薄い」、とわさび味を強調する改善
要望がある。また、レストラン用の業務用規格、ボトルデザインにインパクトをとパッケージ
の改善が望まれている。ユニークな味で味は受け入れられるので、レシピ(使い方)の開発・
提案が進めば販売の可能性が広がる。
e)全体的な感想
わさびは寿司ブームと共に米国ではすでに一般大衆に知られており、
商品自体への関心は高
い。ただ、既に他社商品もあることから、米国仕様まで作り込み、普及するまでになれば、大
型商品になる可能性がある。わさびの独特の味と辛味は地元米国人にも評価されており、口に
しただけで人々に寿司の味を思い起こさせる。レストランのシェフからはドレッシングの他、
カルパッチョ、前菜など多くの提案があり可能性は高い。
品質については、内容物がすぐ分離してしまい、使うたびに振らねばならないなどの手間が
かかり商品の改善を望む声が強い。
また類似品との競争から価格面での大幅な改善が期待され
る。さらに、微妙な味わいには疎い米国人には、よりきついわさび味を提供した方がよいとの
意見が強い。パッケージに関しては、現状でも一定の評価は有るもののボトルデザインへ改善
が期待される。
意外とオリジナルブランドで当該商品を有する米系事業者もいるなど、価格面の競争力は必
要である。自家製である程度同じものを作れるとのレストランの声も有り、品質を強調すると
共に、この点でも競争力のある商品作りが期待されている。
39
4.葉わさび
(株式会社田丸屋本店)
1)商品概要
項
Ⅰ
目
Ⅱ
販売年月
商品の特長
(PR のポイント、代表的な
消費方法、他)
Ⅲ
成分(特に、健康維持・
増進に効力がある成分)
Ⅳ
製法
内
容
1997 年 6 月 1 日
日本独自の香辛料とこだわりの醤油風味が長期間楽しめま
す。そのままか、御酒のおつまみとして、混ぜご飯の具と
してお楽しみください。佃煮、ご飯とともに、またお酒の
つまみとして、おむすびや海苔巻きの真に、お茶漬けに、
冷や奴にそえて楽しむのが代表的です。
わさびは、食欲増進作業、ビタミン B1 合成増強作用、抗
菌活性、抗寄生虫活性、抗変異原性、抗酸化活性、抗血小
板凝集作用、抗ピロリ菌作用、消化管吸収促進作用、大腸
電解質分泌能に対する影響、骨代謝に対する影響、抗アレ
ルギー作用があることが分かっています。
日本固有
2 類似製品の有無
有
3 製法上の特長
・各具ごとに別々に煮込み、それぞれの持ち味を十分に生
かしました。
・辛味を逃がさないよう、独自の製法で作りました。
Ⅴ
1 日本原産
賞味期限
市場
1 国内市場
(主な市場、購買層)
6 ヵ月
Ⅵ
静岡 40%、東京 40%。30 代以上、男女、8 月
2 海外市場
① 米国市場
(東海岸、中・南部)
② アジア・オセアニア市場
香港
③ その他市場
Ⅶ
国内希望小売価格
500 円
40
2)調査結果
米国人も「わさび」はなじみの味で葉わさびに対する評価も高い。一般の「粉わさび」とは
違い、本商品は本わさびが材料なので、わさびの特性や価値をアピールし、多少の価格差は受
容されるように説得する必要がある。価格面で改善要望が強いのでなお更である。また、レス
トランからはいろいろな使い方の提案が出ており、価格努力とともにユニーク性を活かし、多
様なレシピを提示してゆくことでレストラン向けに市場が広がる可能性が開ける。
a)ヒアリング対象店
レストラン 17 店、日系スーパーマーケット 1 店、米系スーパーマーケット 3 店
b)レストラン
類似品としては、小魚の佃煮、漬物を自分達でつけている、ぬかづけを作っている、日本製
のわさびを使用、という答えはあったが、これらは単に前菜やつまみとしての発想からで類似
品とはいえず、日本製のわさび醤油漬け(きざみわさび)
、が唯一の類似品だと思われる。
利用方法については、利用はできる、小鉢(前菜)、酒のあて、手を加えて巻き寿司、他食
品とあえて前菜に、ご飯の供、ランチボックスの漬物の代わり、弁当ご飯のお供、お茶漬けの
あて、などがあげられた。(酒のあては)自家製で作っている、出来合いのものは余り利用し
ない、と自家製にこだわる店も2店あった。独特の商品なので、限定的ながらこのままでも販
売先はある。
c)スーパーマーケット
類似品としては、わさび漬け、インド系の商品で、わさびではないが、しょっぱさなど見た
目にも似た商品がある、と答えがあったが、米系スーパーでは、ご飯のお供、お酒のつまみに
なるようなものを置いてない、という答えもあり、ユニークな商品であることは間違いない。
「時間がかかるかもしれないが、ご飯のお供のようなコンセプトは面白いかもしれないので
店頭試食してもらうのもいいかも」
、と米系でも積極的な意見もある。
「価格さえ合えば、この
商品は美味しいので可能性はある」
、
「少ししょっぱいが美味しい」、
「米国人には珍しく面白い」、
「食感・色も特に気にならない」、と価格次第で販売の可能性はある。
d)市場参入へのアドバイス
味もよく価格さえ合えばという意見は多く、価格面での改善が要望される。このままでもい
ける、という意見もあるが、特に、業務用なら価格面(コスト)の見直しが必要である。
味については、わさびの刺激度(明瞭な味)を上げる希望が強い。また、酒のあてとしては使
えるが高級レストランには難しい、根や茎を入れ歯ごたえをつければよい、アミノ酸の味が気
になる、という意見もあった。
41
e)全体的な感想
寿司ブームにより、
米国人へのわさびの知名度の高さが追い風になって認知度はある。また、
これまでにないという目新しさもある。ただし、一般の米国人が寿司を食べるときに口にする
「わさび」は、ホース・ラディッシュを原料とする「粉わさび」であり、本物のわさびに慣れ
ている人は少ない。わさびとはどのような植物かを説明し、葉わさびは「本物のわさび」であ
ることを強調して価格差を納得させる必要がある。
米国でも日本食の浸透と共に、弁当や寿司を食べる機会が増え米食が浸透してきた。そのた
め、これら日本食の前菜または酒のつまみとして受け入れられる可能性がある。また意外と色
は問題でないようである。なお、味は充分受け入れられる可能性はあるものの、使い方には工
夫がいる。レシピなどを開発し提案型の販売方法が望まれる。量の拡大までには時間を要する
ものの、ニッチ商品であることから競争相手は少ない。
42
5.二十世紀梨酢
(有限会社 AON ケミカル)
1)商品概要
項
Ⅰ
販売年月
Ⅱ
商品の特長
目
(PR のポイント、代表的な
消費方法、他)
Ⅲ
成分(特に、健康維持・
増進に効力がある成分)
Ⅳ
製法
1 日本原産
2 類似製品の有無
3 製法上の特長
Ⅴ
賞味期限
Ⅵ
市場
1 国内市場
(主な市場、購買層)
内
容
2006 年 4 月
二十世紀ならではのまろやかさの中にしっかりした酸味が
ある果実酢。今までにないタイプの酢。
料理(和風・洋風ドレッシング)
、健康飲料として水、ハチ
ミツ、牛乳などに薄めて飲む。
ミネラル類:カリウムが特に多い。
各種有機酸の中で特に体に良い有機酸(特許)を多く含む
鳥取県の特産品を使用。
二十世紀梨の酢としては日本で初めて開発した製品。
いわゆる赤梨といわれる豊水等を原料とした梨酢は千葉県
と兵庫県にある。
100%二十世紀梨で酵母、酢酸菌以外使用せず自然醸造法
にて製造。原料と酵母の選定模倣は難しい。
製造後 2 年。
現在販売したばかりなので、広い市場には出ていない。
現在鳥取県内が主な市場であるが、今後 70%は東京・大阪
の市場に出したい。
2 海外市場
① 米国市場
(東海岸、中・南部)
② アジア・オセアニア市場
③ その他市場
Ⅶ
国内希望小売価格
日本料理店。年間 1 トン目標。
台湾:2006 年の「フード台北」
(台北で行われた食品見本
市)に出品・商談中。
香港:商談中。
オーストラリア:2006 年 8 月にテスト輸出。
イタリア:日本スローフード協会の紹介で 2006 年オリヴ
ィエート・スローフード祭に出品。
120ml:550 円
500ml:1,600 円
2)調査結果
ロサンゼルスでは、世界各国の様々な酢が売られていて競争は激しい。梨は米国人にも馴染
みがあるが、梨酢は他では見られないユニークさがある。ただし、ヒアリングにおいては、梨
43
の味や香りが薄く梨酢の特徴付けが充分でないとの指摘があった。メーカー想定の使用法は、
ドレッシング、健康飲料、漬物(ピクルス)用であるが、米国人は酢を飲む習慣はなく、ピク
ルスの工場生産はヒアリングの対象外である。価格努力と、健康飲料とするか調理用とするか
を決めた商品開発が課題である。味や香りで梨の特性を強化すれば、ニッチ商品として販売の
可能性が広がる。
a)ヒアリング対象店
レストラン 19 店、日系スーパーマーケット 2 店、米系スーパーマーケット 1 店
b)レストラン
類似品としては、酢、寿司酢、バルサミコ酢、りんご酢をドレッシング用に使用、と答えが
あった。レストランでは酢は料理に欠かせないので多種多様であるが梨酢は見られない。
使用方法としては、酢の物、ドレッシング、お酒と割る、焼酎、炭酸と割る、前菜のたれ、
ゼリー状に固めて前菜の味付けや飾りとして使用、サラダドレッシングに混ぜ合わせ自家製ド
レッシングを作る、前菜・カルパッチョ等に手を加えて和風仕立てで使用、健康飲料として炭
酸水・水と割る、などが提案された。
味については、「梨の香りや味がしない」、「梨の香りが薄い」、「梨であることは言われない
と分からない」、と梨酢の特徴があまり感じられないという意見が 13 店から出された。料理
用には他の酢で充分なので、梨の特徴を出すべきというコメントが多い。味はまろやかなので
飲用には向くかもしれない、という声もある。パンに梨酢は難しいという感想もあった。
価格面では、
「価格が高過ぎる」、「値段が高くて業務用では使えない」
、「価格的にも味的に
も料理に使う案がない」
、「すし飯を作るとしても高すぎる」
、と価格の大幅な改善を求める声
が 12 店から寄せられ、価格に言及しない店も同様と思われる。そのため、「健康飲料として
効能をつければスーパーなどでいけるのではないか、
「健康食品店なら高価格でもいける」、
「健
康志向のお店ではいけると思う」、
「炭酸・酒・水・お湯割りで飲み物としては可能性あり」
、
「健康飲料としてはいいがそのままでは飲みづらい」、
「梨酢飲料水として炭酸水・梨酢水とし
てはいけるのではないか」、「健康飲料としてそのまま飲める企画も良いのではないか」、と健
康飲料水としての商品開発を示唆するコメントが 5 店から出された。
c)スーパーマーケット
類似品としては、一般的な酢、飲むお酢、りんご酢などが上げられた。味については、「梨
の味があまりしない」、
「これなら普通のお酢なので敢えて梨酢でなくとも良い」、
「梨の味がし
ないため期待を裏切られる」、
「りんご酢のようにフルーツ自体の味がしっかりした方がいい」、
との意見が寄せられた。
米系健康志向の店からは、類似取扱商品として、バルサミコ酢、一般のビネガーなど多種類
の酢があげられた。「味はとてもまろやかで、ボトルもシンプルでよい」、「米国人はお酢のま
44
ま飲むのは無理なので料理の一部として使う」
、
「ボトルはいいがラベルをもっとシンプルにし、
梨が原料だというところを強調した方がいいのでは」、という前向きのコメントがあった。
d)市場参入へのアドバイス
改善点としては、価格面と梨の味・香りに対する改善を求める声が圧倒的に強い。梨である
ことの効用を強調する必要がある。ボトルはいいがラベルをシンプルに、梨らしさを生かした
商品(梨の味、梨の実入り等)の開発と共に、梨を使う積極的な理由づけが欲しい。一部のレ
ストランで、ドレッシング、前菜のタレ、ゼリー状に固めて前菜の味付けや飾りとして使用、
との提案もあるのでレシピの開発と提示が可能性を拡げる。
e)全体的な感想
ユニークな商品として一定以上の消費力を有する層に予想以上の評価がある。類似品として
りんご酢があり、韓国系の類似品の販売が指摘されている。まだ市場には同じ商品がないとい
うユニークさもあり、梨自体も様々な種類が売られ、米国では梨の知名度はある程度浸透して
いる。したがって原料の梨にたいする抵抗感はない。
一般的な小売スーパーでも酢は様々な果実等から作ったものが幅広い価格帯で売られてい
る。またバルサミコ酢は一般のイタリアン・レストランで使われており、
人々の興味は惹ける。
一般に日系は調理用の他、飲料としても期待できるが、米系は酢を飲む習慣はまだ定着してい
ないので調理用として検討される。
販売戦略として、調理用でいくのか、健康飲料でいくのか焦点を絞ることで市場のニーズが
掴め商品開発も進めやすくなる。バルサミコ酢のようにパンに合うような商品になれば、市場
は格段に広がるだろう。
45
6.梅エキス
(プラム食品株式会社)
1)商品概要
項
Ⅰ
Ⅱ
目
販売年月
商品の特長
(PR のポイント、代表的な
消費方法、他)
Ⅲ
成分(特に、健康維持・
増進に効力がある成分)
Ⅳ
製法
内
容
1986 年
自社で抽出した梅果汁を長時間煮つめて造りました。その
まま使用するのが代表的な方法です。
昔から梅は三毒を断つと言われ、食物の毒・水の毒・血の毒
を断つ効果を持っています。血液に関して言えば、酸性体
質の血液の濁りを浄化し、アルカリ性体質にする働きがあ
ります。最近、梅エキスの中に新物質ムメフラールが発見
され、これはクエン酸とともに相乗効果を発揮し、血流改
善効果を高めていることが解っています。また、ムメフラ
ール実験結果でも効果の証明がされております。
※実験により、0.1cc の血液の通過時間を測定すると、速
度は若い人の血液でも速い人で 60 秒から 100 秒以上か
かる人が相当量の梅エキスを飲むと、血液の通過時間が
大幅に短縮して、わずか 30 秒あまりで通過してしまう
例も出ております。
(農林水産省研究所・梅研究会)血液
の流れがよくなれば、老廃物の回収が早くなり、動脈硬
化や脳梗塞・心筋梗塞などの生活習慣病にかかりにくく
なります。
1 日本原産
日本固有の食品
2 類似製品の有無
有
青梅の絞り汁をじっくり煮つめた、梅の有効成分が濃縮し
3 製法上の特長
た、梅の有効成分が濃縮した健康食品梅肉エキス。模倣は
容易です。
Ⅴ
賞味期限
市場
1 国内市場
(主な市場、購買層)
製造日より 3 年。
Ⅵ
全国を対象に通信販売。40 歳以上が主な紅梅層、通年でほ
ぼ一定の販売動向。通信販売が多い。
2 海外市場
① 米国市場
(東海岸、中・南部)
Ⅶ
無し
② アジア・オセアニア市場
〃
③ その他市場
〃
国内希望小売価格
1,575 円(税込み)
46
2)調査結果
高級食材取扱の米系小売店から評価が高い。これらの店では既に類似品を取り扱っていて、
購買担当者の試食による感触もよい。また、創作力のある一部のレストラン関係者から使用時
のアイデアが種々提案されており可能性は高い。ヒアリングの結果はサプリメントとしての可
能性もあり、逆に一般の量販店には評価されない。そのような反応から、本商品はニッチ・マ
ーケットに向く可能性が強い。商品の説得ある説明が成功すれば、米国の持つ世界への影響
力・発信力を生かせる可能性のある商品であり、通信販売も一案である。
a)ヒアリング対象店
レストラン 14 店、日系スーパーマーケット 3 店、米系スーパーマーケット 1 店
b)レストラン
使用している類似品としては、練り梅、梅干、梅ペースト、梅ではないが液体状エキス、が
あげられた。
利用方法については、「難しい」、「梅そのままの方がよい」
、「味の刺激が強い」、「健康には
よさそうだがそのままの味では利用が難しい」
、
「使用用途が難しい」、
「味がきつすぎる」、
「利
用方法がわからない」、
「酸味が強すぎて難しい」
、
「焼酎・日本酒の味にいけるが色合いが良く
ない」、
「和食レストランには使用が考えられない」、
「色合いを考えると黒は難しい」
、
「黒は色
的に和食にも洋食向けに難しい」、
「このままの利用は不可」
、
「健康食品としては面白いが使用
方法等が必要になる」、
「料理に加えるには難しい」、
「飲料向けに焼酎と割ったりできるが普通
の梅の方が良い」、と実に多くのコメントが寄せられ、強烈な印象を与えたことがわかる。
一方、一部のレストランで味付け用に評価する店がいくつかあり、水に薄めたり、ドレッシ
ングに混ぜ込む、白身魚のソース用、酢の物の隠し味、デザートのアイスクリーム、ゼリー、
佃煮、煮物、ソースの味付け、などの提案があり、「ゆず胡椒が売れているようにツーンとく
る味は使い方によっては可能性は充分にあり」
、と可能性を示唆する声もある。これだけ人の
注意を惹くということは、使い方によっては大いなる可能性がある証拠である。これから創造
力のあるシェフによって様々な利用法が考えられることが予想される。
価格については、価格が高すぎる、価格的に料理に使うには値がつけにくい、と 2 店から
高いというコメントがあったが、ヒアリングの店数からすると以外に少なく、「高級志向で行
くなら高価格をつけてブランドを作るべき」、という意見もあり、パッケージの高級化に改善
要求はあるものの価格に関する不満は少ない。
また、「健康志向店向け」
、「健康食品として効能をうたう」、
「健康によいということを売っ
てゆく」、という示唆もあり、業務用でも家庭用でも使用可能だが爆発的に売れる商品ではな
い、という意見がもっともだと頷ける。
47
c)スーパーマーケット
類似品として、エキス類は多種あり、と既に類似品は売られている。「梅の効用をもっとう
たって売る必要あり」、
「提案商品ではある」、
「梅のマーケティングをする必要あり」
、
「価格は
高くてもよいが箱にもっと高級感を持たせることが必要」
、
「コンビニではなく通販やビタミン
ショップなどの方が可能性がありそう」、と前向きな反応である。
d)市場参入へのアドバイス
酸味が強くユニークな味なの、でレストランでも使い方に戸惑いが見られる。積極的なシェ
フは様々な使い方に創造力をかきたてられるので、シピなどの料理方法が提案できれば面白い。
黒い色が米国人の食材としてはネックとなっており、シェフの創作意欲を失わせている。一
般市場向けとしては、米国のプラムとは違い「ウメ」であることを強調し、「ウメ」の効用や
特徴を前面に出した販売戦略が求められる。価格は充分に受け入れられる感触があるので、
「ウ
メ」のイメージと共にパッケージの高級化などの改善が必要である。
具体的には、米国人に理解できる効能のPR、バリュー感のあるパッケージ、梅の強調、
それに相応しい価格設定(安いとの声有り)、梅と分かる色になればなお良い、などがある。
e)全体的な感想
高級食材取扱米系小売店の一部の関係者等から評価が高い商品である。これらの店では既に
類似品を取り扱っていて、購買担当者の試食による感触もよい。また、創作力のある一部のレ
ストラン関係者から使用方法のアイデアが種々提案されており、可能性は高いといえる。
既に米国のセグメント化された小売市場には、サプリメント系に目ざとい消費者がいて、実
際に類似商品が取り扱われている。逆に、一般の量販店には評価されない。
本商品はそのような反応から、ニッチ・マーケットにおける「スター」になれるのであろう
か。 そのためには、商品の説得ある説明力が大きく影響(うるさい程の説明が望ましい)す
る。ラベルや箱には説明のスペースは限られているので、英文のホームページを併用するなど
して消費者に訴える必要がある。商品のユニーク性から考えれば、米国の持つ世界への影響
力・発信力を生かせる可能性のある商品であり、通信販売も一案である。なお、全く別のアプ
ローチとして、安価で梅焼酎を作るための商品にはならないかという意見もある。
48
7.有機煎茶
遥
(鹿児島製茶株式会社)
1)商品概要
項
Ⅰ
販売年月
Ⅱ
商品の特長
目
(PR のポイント、代表的な
消費方法、他)
Ⅲ
成分(特に、健康維持・
増進に効力がある成分)
Ⅳ
製法
内
容
完全堆肥(油かす・米ぬかなど有機質材料を微生物により
発酵させ、十分に熟した肥料)を使った土作りに始まり、
防虫には木酸液・糖蜜等を使用するなど、安心安全で風味
豊かなお茶。
カテキン・テアニン
1 日本原産
中国茶や紅茶等とは違う、日本独自の煎茶製造法です。
2 類似製品の有無
有
3 製法上の特長
Ⅴ
賞味期限
Ⅵ
市場
1 国内市場
(主な市場、購買層)
8ヵ月
主な市場は九州地区、特に鹿児島。主な購買層は、30 代後
半から 70 代の年配の方。販売時期は、4~5 月の新茶時期、
7~8 月の中元時期、11~12 月のお歳暮時期に集中。
2 海外市場
Ⅶ
① 米国市場
(東海岸、中・南部)
無し
② アジア・オセアニア市場
〃
③ その他市場
〃
国内希望小売価格
1,050 円(税込み)
2)調査結果
現在のままで限定的ながらも味の評価を得た。改善が進めば販路が一層拡がる。レストラン
では、お茶を無料サービスとしているので価格要求が強い。一般の米国人はお茶の品質に関し
てまだ評価する舌を持っていず、オーガニックであり高級茶であることを強調して健康志向の
49
店に売ってゆくのが効率的だと思われる。そのためのパッケージの改善努力や品質のアピール
の仕方が望まれる。一社だけでは出来ないが、米国人にはお茶文化を一体的に紹介することも
将来にとって大切である。
a)ヒアリング対象店
レストラン 9 店、日系スーパーマーケット1店、米系スーパーマーケット 2 店
b)レストラン
使用している類似品としては、緑茶、温緑茶、煎茶、ティパック、粉茶、粉末状のお茶など
が挙げられた。お客の立て込む時間帯のレストランでは、手間も取り扱いを決める際の大きな
要素で、ティーバッグ、粉茶はその手軽さが受けている。
使用に関しては、味は飲みやすい、味・香りは良い、と評価され問題なく使えるが、「価格
が高過ぎて業務用には向いていない」、
「良質のお茶であっても価格的に難しい」、
「お茶は無料
でおかわり自由なためコストをかけられない」
、
「米国人はお茶にこだわりはないので高級なお
茶でなくてもよい」、
「米国で緑茶にこだわりを持っている人が大勢いるとは思えない」、
「お茶
には価格がつけられず、平均的な価格+味で抑えたい」、とお茶がサービス品でありレストラ
ンにとってはチャージの対象にならないので、
コストを抑えたいという観点から価格引下げへ
の希望が強い。高級店では、価格は O.K.と答えた店もあるので、お茶の味に対する個人の価
格的評価はまちまちである。ただし、一般的に、日本に比べてお茶の味がわかる人は少ないと
はいえる。
c)スーパーマーケット
取扱類似商品としては、オーガニック茶、ティーバッグに入ったお茶は緑茶・ブラックティ
ー等がある、緑茶を含めお茶の種類は豊富、ルース(量り売り)・ティーバッグ・パウダーと
形態も豊富、と様々なお茶が様々な形態で提供されている。
スーパーでも通常のお茶の価格帯に比べて、
「高すぎる」、
「この価格帯(具体案あり)」であ
れば、と割高感が表明されている。ここでも米国ではお茶の味について明確な評価が下せる人
は日本に比べて少ないことが高級茶にはネックといえる。
このような市場を目指し販売を試み
るなら、販路・アピールの仕方・パッケージの工夫・販売対象消費者などを良く絞り込んで販
売戦略を考える必要がある。米国の市場では、良いものは置けば売れるのではなく、どの層の
消費者にどのように訴えてゆくかのマーケティングがあって販売に結びつくのである。
d)市場参入へのアドバイス
全体的に価格面での抵抗感が強い。ティーバッグの簡便さを望む声もある。米国では、価格
差を和らげるためパッケージに高級感を持たせ、オーガニックであることを強調するなどの差
別化が望まれる。
50
レストランからは、価格、パッケージの改善(高級化)、溶かすだけの手軽さ、ティーバッ
グへの要望、業務用サイズ、有機であることを主張すべき、などが出された。スーパーからは、
価格帯に見合う価格努力、ティーバッグへの要望、現在の袋だと開けたあと保管をどうしてい
いかわからない、パッケージ自体を筒状にすると保管方法にも悩まない、茶筒とセットで販売
するのもいいかも、中のお茶っ葉が見えるように 2~3 センチの透明のウィンドウをつける、
などが提案された。
e)全体的な感想
現在の中身で限定的ながらも評価を得た。改善が進めば販路が一層拡がる。お茶を無料とす
る多くのレストランでは関心が価格に集中するが、一部の品質重視の層には評価を得た。しか
し一般の米国人はお茶の品質に関してまだ評価する舌を持っておらず、オーガニックであり高
級茶であることを強調して健康志向の店に売ってゆくのが効率的だと思われる。1 社だけでは
出来ないが、米国人にはお茶文化を一体的に紹介することも必要である。茶筒・急須と一体に
して販売するのも面白いかも知れない。
51
8.竹清水
(有限会社美宝)
1)商品概要
項
Ⅰ
目
Ⅱ
販売年月
商品の特長
(PR のポイント、代表的な
消費方法、他)
Ⅲ
成分(特に、健康維持・
増進に効力がある成分)
Ⅳ
製法
内
容
2005 年 3 月より製造・販売開始
竹の繊維を煎じた御茶で、類似商品なし。そのまま飲料水
(水・お茶)として飲む。
成分不明
1 日本原産
日本固有のお茶
2 類似製品の有無
無し
3 製法上の特長
原材料の竹繊維に特徴があり、原材料の入手は困難
Ⅴ
賞味期限
Ⅵ
市場
1 国内市場
(主な市場、購買層)
製造日より 12 カ月
和歌山県で 50%、西日本各地で 50%。幅広い年齢の方に
受けている。特に季節感はない。健康食品・飲料関係の取
扱販売の店舗。
2 海外市場
Ⅶ
① 米国市場
(東海岸、中・南部)
無し
② アジア・オセアニア市場
〃
③ その他市場
〃
国内希望小売価格
220 円(税込み)
2)調査結果
日本人にとって竹の飲料水は発想がユニークで新鮮だが、味の面からそれほどのインパクト
がヒアリングから伝わってこない。むしろ竹の効用を強く訴えるなど、健康飲料水としてアピ
ールする必要がある。そのためには、ボトルやパッケージのデザインで竹を強調し、効果を説
得する必要がある。
52
a)ヒアリング対象店
レストラン 17 店、日系スーパーマーケット 3 店、米系スーパーマーケット 3 店
b)レストラン
類似品として、ウーロン茶、緑茶、煎茶、アイスティなどが挙がっているが、竹を使った飲
料水はない。
利用法としては、
「利用可能」、
「澄んだ味がする」、
「焼酎と割るのに良い」、と答えた店が 4
店あった。一方、
「このままでは利用不可」、
「味がいまいちなので難しい」
、
「飲み口がまずい」、
「薬っぽい味がする」、
「飲みにくい、店では出せない」、
「後味がウーロン茶に比べてさっぱり
しない」、「業務用には使用目的がない」、「味が中途半端」
、「後味が良くない」、「難しい味」、
「味が米国人には向かない」、とのコメントが 10 店から寄せられた。少数だが、
「澄んだ味が
する」、
「焼酎と割るのに良」い、
「有機専門店・ベジタリアン店用には可能性がある」、とのコ
メントが 3 店からあった。
相対的には味の評価が積極的でなく価格も高いことから、レストラン向きとは言えず、健康
飲料水として竹のイメージをもっと強く出し、
効能書きとともにパッケージに竹の特徴をアピ
ールする工夫が必要、極端な意見としては、竹の形のボトルに竹のコップがつけば納得できる
のではないか、との指摘があった。
「効能書き等を表記すべき」、「パッケージの改良、竹繊維
が健康に良いとの主張がない」、
「竹がどのように体によく竹清水がどのような健康材料になる
のかのアピールをすべき」、
「他と比べて竹の主張がないためなぜ選ぶのか、何がどういいのか
の主張が必要である」、という要望も 8 店から出された。
レストランではお茶はサービスとして出している店がほとんどで、お茶でお金は取れない、
価格が高いのでそれなら安い普通のお茶や水でよい、という認識が根底にある。
c)スーパーマーケット
日系スーパーは類似品として、ペットボトル入りの緑茶・ウーロン茶、昆布茶などが上げら
れた。味についてはそのユニークさもあり、「このような味にこだわって飲むお客様がいるか
どうか分からない」、「取り扱いは難しい」、「このままでは利用できない」、と戸惑いが見られ
る。価格的に難しい」、
「単純に分かりやすい商品でないと難しい」、との意見があるが、
「コン
セプトさえしっかりしていれば味は気にしなくてもいいのではないか」、
「パッケージも悪くな
いが竹の形にすると受けそう」、と前向きのコメントもある。
米系スーパーも類似品では日本製の緑茶、ウーロン茶、甘めのアイスティ、多種類のお茶が
上げられている。健康志向の店では、「味もすっきりしていて美味しい、パッケージも英語の
記載さえあればこのままで可能」、
「価格さえ合えばお客も買うのではないか」、という意見と、
「味が米国人に合わなくて非常に難しい」、
「フルーツ系の味を加えるなど甘さがあるとまだ飲
み易くなるのではないか」、と二手に意見が分かれた。ここでも価格がネックになっている。
53
d)市場参入へのアドバイス
ボトルやパッケージの改善を求める声が大きく、デザインで竹の効用を強調するなど、日本
語も一部残しながら英文説明を入れる必要性の指摘が多い。レストランからは、価格の改善(業
務用)が特に求められている。味については1社から、すっきりして美味しいという評価はあ
ったものの、全体的には甘さを加えるなど改善を求める声が圧倒的である。
e)全体的な感想
飲むと竹の味が感じられるが、一般には馴染みがなく味に対する戸惑いが見られる。ヒアリ
ングで、特に好奇心に基づく関心と焼酎割りの材料としての関心が寄せられたのはヒントであ
る。量販は難しいように見受けられるものの、好奇心を継続的な購入につなげるための一段の
経営努力が望まれる。特に、説得力ある竹の効能と後味の改善が示せれば大きな前進がある。
ただ、相当な価格努力とパッケージについての改善が必要になる。米国人に竹は余りなじみ
がないので竹の効用をどこまで説明できるかが付加価値をつける意味でもキーとなる。
54
9.水出し煎茶
夏・物・語
(鹿児島製茶株式会社)
1)商品概要
項
Ⅰ
目
内
容
Ⅱ
販売年月
商品の特長
(PR のポイント、代表的な
消費方法、他)
Ⅲ
成分(特に、健康維持・
増進に効力がある成分)
Ⅳ
製法
夏場に最適な商品。煎茶と抹茶が醸し出すハーモニー。
後味もよく、爽快さは抜群。
カテキン・テアニン
1 日本原産
日本では抹茶入りでない水出し煎茶が多いが、抹茶入りは少
ない。
2 類似製品の有無
有
3 製法上の特長
水でも浸出しやすいように、小葉・粉茶を使い、風味や濃い
緑色を出すために抹茶を入れる。
Ⅴ
賞味期限
Ⅵ
市場
1 国内市場
(主な市場、購買層)
8ヵ月
主な市場は、九州地区、特に鹿児島。主な購買層は、30 代~
60 代の男女。6月から9月の夏季に集中。
2 海外市場
Ⅶ
① 米国市場
(東海岸、中・南部)
無し
② アジア・オセアニア市場
〃
③ その他市場
〃
国内希望小売価格
6g×10 袋入り
525 円(税込み)
2)調査結果
お茶は寿司の普及と共に健康飲料としての認識が広がり、市場規模が拡大しつつある。しか
し、日本食レストランではお茶は通常無料サービスで、余りコストをかけられない。また先発
の日系メーカーとの競争、粉茶など簡便な商品が既に出回っているなど競争環境は厳しく、レ
ストラン向けは余程の価格改善がなされない限り難しい。
むしろ高級茶として徐々に味のわか
55
る層に教育を施しながら一歩一歩販売実績を築いてゆくことが妥当なステップといえる。
a)ヒアリング対象店
レストラン 20 店、日系スーパーマーケット 2 店、米系スーパーマーケット 3 店
b)レストラン
類似品としては、ウーロンティ、アイスティ、抹茶、緑茶、玄米茶、パウダー状の緑茶など
多種が上げられた。味については、
「他社の水出しお茶より美味しい」
、「美味しい」、「味はし
っかり出ているのでとても良い」、
「香りが良い」、と 11 店から肯定的な評価が寄せられた。
一方、「あと味が残る感じが良くない」、「他のお茶と味の違いがない」
、「あと味がいまいち」、
「日系スーパーで市販されているものと変わらない」、
「現在使っているパウダー物と変わらな
い」、「緑茶の味があまりしない」、という反対の意見も 4 店から出された。
「お茶の色が薄い」、
「色が薄い感じがする」
、「もう少しお茶の色が濃い方が良い」、と色の
薄さを気にする店が 7 店あった。また、
「味、色が変わらないのであればこのまま利用できる」、
「時間がたっても変色をしなければこのままで問題ない」
、
「味や色が変わらないが長持ちする
のか」、と肯定的な意見も 3 店から寄せられた。米国人の多い店からは、「夏にはいいかも」、
「飲みやすく余り濃くないのが米国人受けするのではないか」、と色に対する受け止め方の違
いを見せた店もある。また、「焼酎割りに良い」という意見も 1 店からあった。
相対的に価格面での改善要望が強く、
「価格が高い、
「お茶はただで出しているためレストラ
ンではわざわざ高いお金は出さない、「価格面で他のものとの違いがわからない」
、「お金が取
れないためお茶に対してのこだわりは強くない」、
「平均的な味で平均価格のものを希望」、
「価
格が高すぎて業務用には向かない」
、
「メニューに入れ込むには価格が高過ぎる」、
「現在使用し
ているものは数量的に 10 倍で同価格、日本食でお茶に価格をつけメニューに入れ込むのは非
常に難しい」
、
「アイスティは原価が非常に安い、同じくらいの価格でないとお茶としては使用
不可」、「米国人にはお茶の良し悪しがわからないので良質なものを出してもわからない」、と
ほとんどの 15 店から価格改善の必要性が指摘された。価格に言及しなかった店も同様であろ
う。
その意味で、
「味に評価はあるもののレストラン向けとはいえず、高級茶として家庭用には
出ると思う」
、「スーパー・家庭用ならあり得るが価格が高い」、という意見にはうなずける。
他に改善点として、「パッケージのインパクトが少ない」、
「パッケージに魅力がない」、「ティ
ーバッグから作るのに手間がかかる」、「ボトル品が多い中、古風すぎる」、といったコメント
が見受けられた。
c)スーパーマーケット
日系からは、
「類似品として日本製のパウダー状のものあり」、「ありきたりの味なのでイン
パクトがない」、「既に水出し緑茶はロサンゼルスにもあるので余程インパクトがないと難し
56
い」、「パッケージを工夫すべき」、というコメントがある。
米系からは、3 社の顧客層を反映して、1)類似品にパウダーの緑茶はある、価格さえ合え
ばこのままで可能性あり、味はいい、缶やペットボトルの緑茶に比べると経済的なので良いの
ではないか、バッグも見た目がきれい、とする店と、2)インスタントの粉末物を扱い、価格
で 3~4 割の改善なら手が出るのではないか、粉末状に比べて便利さに欠ける、という店、3)
類似品は扱っておらず、このままの利用は無理と関心を示さない店と 3 店がそれぞれの反応
であった。
d)市場参入へのアドバイス
お茶の色が薄いこと、価格面での改善の必要性を指摘する声が多い。パッケージを高級でイ
ンパクトのあるものに、手間をいかに省くか、他のお茶との相違点の説明などを要望するコメ
ントがある。手間の問題では粉茶の研究も必要性が指摘された。
e)全体的な感想
お茶は寿司に欠かせないアイテムとして、寿司の普及と共に平行して市場規模が拡大してい
る。地元米国人も日本食店に来店する顧客などを中心に、体によい飲料としての認識が普及し
ている。
日系は、特にレストランでは料金がつけられない(無料)なかで、平均的な味のお茶を安価
で入手したいという強い期待感があり関心は高い。ただ、先発の日系お茶メーカーとの競争が
あること、粉茶など簡便な商品が既に出回っているなど競争環境は厳しいこと、日系からは価
格面での要望が大きいこと、などが高いハードルとなろう。他方、お茶に対する知識・商慣習
の少ない米系レストランは、新しい商品として歓迎している。むしろ本商品の余り渋くない味
が米系を中心に一定の評価を受けた(逆に日系には物足りない)。
このようなレストランの事情から、
お茶を無料サービスとするレストラン向けは余程の価格
改善がなされない限り難しい。むしろ高級茶として徐々に味のわかる層に教育を施しながら一
歩一歩販売実績を築いてゆくことが妥当なステップと思える。
57
10.有機八丁味噌
(株式会社まるや八丁味噌)
1)商品概要
項
Ⅰ
Ⅱ
目
内
容
販売年月
1991 年輸出 2002 年 11 月日本国内発売
商品の特長
米 国 有 機 食 品 認 定 機 関 O.C.I.A. ( Organic Crop
Improvement Association)認定の有機大豆を原料と
した。味噌汁が代表的使用法。
(PR のポイント、代表的な
消費方法、他)
Ⅲ
成分(特に、健康維持・
増進に効力がある成分)
Ⅳ
製法
長時間熟成中に産み出される「こく」(特定できない)
1 日本原産
愛知県岡崎市八帖町(旧八丁村)
2 類似製品の有無
有(豆味噌)
3 製法上の特長
特有の麹造り、熟成期間が長い
Ⅴ
賞味期限
Ⅵ
市場
1 国内市場
(主な市場、購買層)
6 ヵ月
国内全域の業務用市場、健康食品市場、東京築地市場、
有名こだわり食品店舗。また、料理に係わる職種の人、
高級品を好むご婦人も使用。
2 海外市場
Ⅶ
① 米国市場
(東海岸、中・南部)
東京共同貿易(Mutual Trading)を通じてトヨタ系従
業員駐在地へ
② アジア・オセアニア市場
無し
③ その他市場
〃
国内希望小売価格
700 円
2)調査結果
古くからの味とブランドに対する一定の評価が確認される。元々高価な商品であり、一部の
高級料理店と米系高級小売店などに絞った展開が有効である。味に対する評価、ブランドに対
する評価、非遺伝子組換食品などの優位性を強調してはどうか。
58
a)ヒアリング対象店
レストラン 14 店、日系スーパーマーケット 2 店、米系スーパーマーケット 1 店
b)レストラン
取扱類似品として、白味噌、赤味噌、業務用のあわせ味噌などのほか、味噌ドレッシング、
洋風ソースなどが挙げられた。
利用法については、「料理に使える」
、「赤味噌の使用も多いので可能性はある」、「味噌煮、
焼き魚、味噌田楽、味噌汁、鍋に利用」、
「最近赤味噌も使われる数が増えてきたのでレストラ
ン系もチャンスがあるのではないか」、
「味噌自体の市場はアメリカでも伸びてきているので日
本食だけに拘らず洋食等にも可能性はある」、と 9 店が答え、味噌は様々な方法で使われ普及
が進んでいることがわかる。一方、
「米国人には赤だしは難しい」、「八丁味噌は隠し味程度に
しか使用しないため消費量も少ない」、
「業務用では小さ過ぎる」、と 9 店から難しさを指摘す
る声も聞かれた。
価格については、「手間隙がかかっているので価格が高い」
、「現在使用のものは 3 倍から 4
倍の量で同価格」、
「味噌汁はアメリカのすし屋ではおかわり自由で無料のため味噌にあまりコ
ストをかけられない」、と 11 店から価格差を指摘している。
また、八丁味噌に関する話ではないが、既存の味噌から変更を考えると、味・効能が特別に
出ない限り変更は難しいというこだわりをもった店が 4 店ある。
c)スーパーマーケット
日系では、「売れないことはないが、レストランと同様に手間隙をかけているため価格が高
い」との声があった。「お試しパックサイズなので先ずは味の良さを分かってもらうことが優
先」、という声もある。
米系健康食品スーパーでは、合わせ味噌、赤だしを扱っている、と普及の実態がうかがえる。
「ストーリー性があれば多少高くても可能」、と販売戦略の提案があった。
「米国産の大豆は遺
伝子組み換えなど人工的に手の加えられたものが多いため優位性がある」と評価している。
d)市場参入へのアドバイス
レストランからは、価格、業務用規格(大型サイズ、丸底容器)
、他社の類似品との差別化、
などの声があった。スーパーからも価格への言及はあるものの、類似品との差別化(非遺伝子
組換大豆の使用、長期熟成の手間を掛けた商品であることを英文で強調)、ストーリー性の加
味の提案があった。
e)全体的な感想
古くからの味とブランドに対する一定の評価が確認される。味噌は日本料理にとっては欠か
せない食材で、最近ではフュージョン系のアメリカンレストランでも味付けに使われ始めてい
59
る。それだけに種類も多く価格帯も広い。味噌本来の風味、他にはない味わい、焼いたときの
香ばしさなどで、まだまだ様々な使い方が工夫され味噌市場はこれからも広がると予想される。
このような中、本商品は元々高価な商品であり、一部の高級料理店と米系高級小売店などに
絞った展開が有効である。味に対する評価、ブランドに対する評価、非遺伝子組換食品などの
優位性を強調してはどうか。
米系スーパーの反応をみると、ロサンゼルスではアジア系の人口が増えていることもあり、
日本人以外のこだわりのある一般消費者にも市場が広がってゆくことが予想される。
60
11.自然派はるさめS麺(はるさめ)
(ヨネザワフーズ株式会社)
1)商品概要
項
Ⅰ
目
Ⅱ
販売年月
商品の特長
(PR のポイント、代表的な
消費方法、他)
Ⅲ
成分(特に、健康維持・
増進に効力がある成分)
Ⅳ
製法
内
容
日本(全国):2006 年 4 月発売
特殊技術の真空麺帯方式製法で精算された日本国産春雨
で、味の乗りがよく食感がまろやかで弾力性に優れていま
す。安全・衛生面に優れ、全国の学校給食でも幅広くご指
定を受けています。
春雨スープ、酢の物、サラダが代表的な使用方法です。
炭水化物、カルシウム、リン等がバランスよく豊富に含ま
れています。
1 日本原産
中国・台湾等には緑豆澱粉を原料にした春雨がありますが、
日本原産の春雨は、芋(馬鈴薯、甘藷)澱粉が主原料で、
食感等がまったく違います。
2 類似製品の有無
他メーカーにも澱粉春雨はあります。
3 製法上の特長
特殊技術の真空麺帯方式製法で生産された味の乗りのよい
春雨は、お湯で戻すだけでスープ、酢の物、サラダ等簡単
で幅広い料理にご使用いただけます。
Ⅴ
賞味期限
Ⅵ
市場
1 国内市場
(主な市場、購買層)
製造日より 2 年間
全国で広く販売。25 歳くらいから上の女性(最近はダイエ
ット向けとしても注目)
2 海外市場
Ⅶ
① 米国市場
(東海岸、中・南部)
無し
② アジア・オセアニア市場
〃
③ その他市場
〃
国内希望小売価格
450 円
61
2)調査結果
商品自体は知られているが、当地では、春雨はまだ高級食材とは認識されておらず、本商品
のよさを認識してもらうには時期尚早である。中国・韓国・ベトナムなどアジア系の安価な商
品が広く普及していることから、価格競争に応じるか、無添加などの特徴を強調して付加価値
をつける以外に価格差を認めさせるのは難しい。激烈な競争市場なので参入にはかなりな覚悟
が必要と思われる。
a)ヒアリング対象店
レストラン 7 店、日系スーパーマーケット 2 店、米系スーパーマーケット1店
b)レストラン
類似取扱品は、日本製品、中国産・韓国産をあげた店が4店ある。味については、新食感で
ある、という評価が 2 店から寄せられた。
しかし、「価格が高い」、
「春雨はアジアンフードのみで利用されているため中国製や韓国製
の方が安くて売れるのでは」、
「中国産・韓国産の方が安い」、
「価格が高過ぎる」
、
「春雨のよう
な食材を使用した料理はアジアンレストランが多いので、安い中国製・韓国製・ベトナム製を
使っている」
、と価格差を指摘する声が強い。春雨の認知が薄い、春雨の味にこだわりが薄い、
という声もあり、春雨は当地ではまだまだ高級食材とは認識されておらず、人々に馴染みも薄
いことから折角の本商品の良さが一般の人には認識されるに至ってないことが読み取れる。
改善点としては、価格のほかに、「パッケージが平凡」、「写真などの採用にてレシピを主張
すべき」、という指摘がある。
c)スーパーマーケット
類似の取扱品としては、日本製、他社ブランドが挙がっている。日系スーパーからは、業務
用はスーパーでは大き過ぎる、1kg のパッケージは大き過ぎると小売には小型パッケージ
(250g)への要望がある。
中国産、韓国産、ベトナム産などの類似品が出回っていて、ベトナム系の小売店では春雨が
何種類も売られているため価格競争が激しい、しかし価格さえ合えば可能、と価格面での競争
力強化が望まれている。無添加というところが良い、というコメントもあり、無添加をセール
スポイントにすることで付加価値を上げる可能性がある。
d)市場参入へのアドバイス
中国・韓国・ベトナムなどアジア系の安価な商品が出回っており、日本製も既にあることか
ら、競争は厳しい環境といえる。食材そのものは知られているので大幅な価格の改善が望まれ
る。価格差を和らげるために、質の優位性や無添加であることをアピールし、スーパー向けに
62
は小型パッケージを用意してデザインに工夫が望まれる。
e)全体的な感想
商品自体の知名度はあるものの、中国・韓国・ベトナムなどアジア系の安価な商品が広く普
及していることから、価格競争に応じるか、もしくは手間をかけて消費者を探る必要があると
考えられる。ロサンゼルスでは、はるさめはまだ高級食とは認識されておらず、折角差別化し
て開発した本商品のよさを認識してもらうには時期尚早であるといえる。当面は、原料の違い、
製法の違いによる味の乗り方の違い、煮崩れに強い点や無添加を強調して付加価値をつける以
外に価格差を認めさせるのは難しい。激烈な競争市場なので参入にはかなりな覚悟が必要と思
われる。
63
12.極上の玄米コーヒー ブラウンカフェ粗挽き
(有限会社ビーエムステーション)
1)商品概要
項
Ⅰ
販売年月
Ⅱ
商品の特長
目
(PR のポイント、代表的な
消費方法、他)
Ⅲ
成分(特に、健康維持・
増進に効力がある成分)
Ⅳ
製法
1 日本原産
2 類似製品の有無
3 製法上の特長
Ⅴ
賞味期限
Ⅵ
市場
1 国内市場
(主な市場、購買層)
内
容
2006 年 8 月 1 日
100%国産の玄米に 20 時間の長期焙煎を施し、コーヒーの
ように仕上げた飲み物。日本初ドリップ抽出を実現。玄米
コーヒーの粒を粗挽きにして、コーヒーメーカーまたはハ
ンドドリップで抽出して飲用する。
新タイプ食物繊維、抗酸化成分、ミネラル成分各種
鳥取県産玄米、有機栽培の玄米の使用も可能。
インスタントタイプはあるが、抽出できる粗挽きタイプは
他に無し。
通常、粘り成分が邪魔をしてドリップ抽出ができなかった
が、20 時間に及ぶ特殊焙煎を施すことによりドリップ抽出
を可能とした。
18 ヵ月
日本全国。35 歳以上の健康や暮らし環境のことを考え、人
生を楽しみ生きることに積極的な女性。
2 海外市場
Ⅶ
① 米国市場
(東海岸、中・南部)
無し
② アジア・オセアニア市場
〃
③ その他市場
〃
国内希望小売価格
80g 入 1,000 円
240g 入 2,600 円
の 15%前後 off
2)調査結果
カフェという名前から想像してコーヒー味を期待するが、あまりコーヒーの味がするとは言
えずヒアリングでは惑いが感じられる。米国人は、コーヒーは日常化してコーヒー味にもこだ
わりがあり、デカフェインのコーヒーも多くの種類が出されているので、一般の市場へ売ろう
64
とすると、味・利便性、価格面からもかなりな改善努力が必要とされる。健康飲料に特化した
アピールへと販売戦略を絞るのも一案だ。
a)ヒアリング対象店
レストラン 8 店、日系スーパーマーケット 2 店、米系スーパーマーケット1店
b)レストラン
類似取扱品には、アイスティ、アイスコーヒー、お茶、コーヒー、紅茶が 5 店からあげら
れた。
味については、「まずい」、「何なのかわからない」、「コーヒーの味がしない」、「出がらしコ
ーヒーの味」
、
「麦茶の濃い味」、
「コーヒーの味がまったくしない」、
「香りはいいが味は平凡」、
「美味しいがレストランでの使用は難しい」、
「健康食として玄米効能の認知を付けるべきであ
る」、と味に対する評価は厳しい。また、
「フィルターを通し手間がかかる」、
「ティーバッグ・
粉末にできないのか」、という意見があり、レストラン向けには手間を省くことも販売要素の
一つである。
価格についても、健康飲料としても高すぎる、価格が高い、とか価格帯が合わない意見が寄
せられた。
c)スーパーマーケット
日系では類似商品の取り扱いがない。
「インスタントコーヒータイプの方が良いのでは」、
「コ
ンセプトがよくわからない」、
「コーヒーならデカフェもある」、
「商品が中途半端」、
「コンセプ
ト自体が需要なし」、「こっちでは直球でないと難しい」、とのコメントがあり、一般のスーパ
ーには難しいことがうかがえる。
米系健康食のスーパーでは、「はと麦や大豆から出来たコーヒー感覚のあるものはあるが玄
米はない」とし、「他の穀物からできているコーヒー代理品は取り扱っているので販売可能」、
という答えがあった。「この店に来る客はかなり健康に気を遣っているのでコーヒーのように
飲めるが、カフェインのないものは常に置いてある」、
「他の穀物のものもあり、コーヒーの味
はしないものの可能性はある」、と前向きなコメントが得られた。
d)市場参入へのアドバイス
全体的に味と価格面で難色を示す意見が大半を占めた。味の改善、特にコーヒー味が薄いこ
とに対するコメントが多く、健康食品店のみに絞って「玄米」の効用を前面に押し出して「玄
米ドリンク」としてはどうかとの意見があった。効用の強調、手間を省く(ティーバッグ、粉
末)必要性も指摘された。
65
e)全体的な感想
味に相当な改善が必要で、利便性も手間がかかり、価格面でも努力が必要なことから日系か
らは支持する声が少ない。カフェの名前を削り、コーヒーの味でなく、玄米の効用を前面に押
し出し、健康飲料として米系の健康志向の高い消費者の店舗を狙うと可能性があるかも知れな
い。米国人は日常生活にコーヒーを飲む習慣が溶け込んでおり、コーヒーでもデカフェイン品
は多く出回っている。味、価格、消費者の利便性を考えた商品開発と販売戦略を基本的に見直
し、健康飲料に絞れば可能性が開けてくる。
66
13.きりたんぽ
(有限会社タンポヤ林)
1)商品概要
項
Ⅰ
目
Ⅱ
販売年月
商品の特長
(PR のポイント、代表的な
消費方法、他)
Ⅲ
成分(特に、健康維持・
増進に効力がある成分)
Ⅳ
製法
内
1997 年 7 月(きりたんぽ鍋用)
1996 年 7 月(焼ききりたんぽ)
ご飯をすりつぶして棒状に焼いたもの、アメリカンドッグ
感覚で親しみやすい。焼いた際に、お米と味噌の香ばしい
香りがただよう健康的な食品。そのまま焼いて味噌ダレを
つけて食べる、鍋に入れて食べるのが代表的な消費方法。
1 日本原産
日本原産
2 類似製品の有無
無し
3 製法上の特長
容易
Ⅴ
賞味期限
Ⅵ
市場
1 国内市場
(主な市場、購買層)
容
120 日間
関東 50%、関西 10%、東北・北海道 40%。40~60 歳くら
いの女性が主、10 月~1 月に販売の 70%。スーパー、デ
パート、土産物販売店で多く販売。
2 海外市場
① 米国市場
(東海岸、中・南部)
ハワイ
② アジア・オセアニア市場
③ その他市場
Ⅶ
国内希望小売価格
525 円
2)調査結果
日本人にも限定された商品で積極的な意見が少ない。一部だが、鍋向け創作料理の材料とし
て関心が寄せられたので、使い方(レシピ)の提案がキーとなる。価格の大幅な改善があれば
可能性もある。米系健康志向のスーパーからベジタリアン向けの可能性が示されたのは一つの
67
ヒントである。大幅な価格努力とともにニッチ・マーケットに特化すると可能性が開ける。
a)ヒアリング対象店
レストラン 8 店、日系スーパーマーケット 2 店、米系スーパーマーケット1店
b)レストラン
類似品として力うどんをあげた店が1店あるが、きりたんぽの類似品はない。利用方法とし
ては、「日本食屋に限り若干の需要はある、ただしコストが半分くらいであれば」
、「鍋用には
中に何かを入れて煮るなどすれば可能」、という意見も 2 店からあったが、「敢えてきりたん
ぽを食べることはない、
「メニューとしては数量が中途半端」、
「価格的に 5 本入りでこの値段
では高い」、
「このままきりたんぽでは使わない」
、
「調理後すぐ硬くなるので手間の問題から焼
き物としての問題がある」、
「通常メニューには難しい」、
「年一回の企画での使用は考えられる」、
「1 本ずつ小分けしたパッケージにし調理の手間がかからない工夫が必要」、
「パッケージの絵
にあるように串刺しにしたものを小分けパックすべき」、
「5 本セットは使いにくい」
、
「メニュ
ーとしてコンスタントに使えるものではない」
、
「鉄板焼きには向かない」、
「米国人にはきりた
んぽの食感が『ねちょねちょ』していて口に合わず、難しいのではないか」、と厳しい意見が
大半を占めた。価格的にもレストランの業務用にはかなりの改善が必要のようである。
c)スーパーマーケット
日系スーパーで1店が以前に冷凍品を扱ったが売れなかったとのコメントがあった。その店
では、秋田県出身でなければお餅で充分代用できるように思う、とも言っている。もう一つの
店では、価格次第で売れなくはない、と価格次第との見解を示した。
米系健康志向の店では、類似品は扱ってない、
「便利さを考え、スキューワー(竹串)を付
けるといいのでは」、
「味噌だけでなく他のたれも考えると面白い、食感も特に気にならない」、
「ベジタリアンに受けるのではないか」、とポジティブな反応があった。非常に限られたニッ
チ・マーケットをターゲットにして特殊な販売を展開すれば可能性が開ける。
d)市場参入へのアドバイス
価格の改善、すぐ硬くなる、小分けパックが必要との指摘が目立った。便利さを考えて串を
つけ何種類かのタレもつけるとよいのではないかという提案もあった。どのような使い方を提
案できるかで商品開発の方向性を定める必要がある。
e)全体的な感想
日系スーパーで、以前ある程度紹介されて消費者の反応があまり芳しくなかったようで、積
極的な意見は聞かれない。鍋向け創作料理の材料として関心が寄せられたので、使い方(レシ
ピ・料理方法)の提案がキーとなるだろう。一部の日系小売からは、価格を大幅に引き下げる
68
ことで可能性が生じるというコメントがあった。
米系健康志向のスーパーからベジタリアン向けの可能性が示されたのは一つのヒントであ
る。ヒアリングの反応からみてニッチ・マーケットに特化するのもよいと思われる。使い勝手
も限定された商品なのでアイデア次第である。
69
14.活性はと麦の力 GOLD (株式会社半鐘屋)
1)商品概要
項
Ⅰ
目
Ⅱ
販売年月
内
容
1991 年~現在に至る
商品の特長
(PR のポイント、代表的な
消費方法、他)
味がよいこと、自己治癒力増進
Ⅲ
成分(特に、健康維持・
増進に効力がある成分)
必須アミノ酸、γ(ガンマ)-アミノ酸、ビタミン K2、
カルシウム、ナットキナーゼ、食物繊維、鉄分等
Ⅳ
製法
1 日本原産
はと麦は大国さんを発芽活性し、焙煎後粉末にしてい
る。
2 類似製品の有無
無し
3 製法上の特長
発芽してあること(ビタミン、酵素、γ-アミノ酸等
の増加)
Ⅴ
賞味期限
Ⅵ
市場
1 国内市場
(主な市場、購買層)
1 年間(開封前)
市場は全国。特に年代を問わない。健康な人が食べれ
ばますます健康を維持。販売量が多い時期、場所は特
になく年中。
2 海外市場
Ⅶ
① 米国市場
(東海岸、中・南部)
無し
② アジア・オセアニア市場
〃
③ その他市場
〃
国内希望小売価格
5,250 円(税込み)
2)調査結果
実際にはと麦や類似品が販売されているが、一段と顧客の支持を得るには、価格設定、商品
の錬度の点で大きな改善を実現することが必要である。もともとレストラン向けではなく、健
康食品という限定された市場なので、はと麦の効用をいかに強調し納得させられるかが成功の
鍵となるだろう。日系でははと麦の効力自体は認識されており、他社の類似品もあることから、
70
価格競争力がつけば期待はできる。
a)ヒアリング対象店
レストラン 4 店、日系スーパーマーケット1店、米系スーパーマーケット1店
b)レストラン
レストランでは類似品を取り扱っている店はない。利用可能性については、「難しい」、「値
段が高すぎる」、と店で使う可能性は低い。他には、
「健康食レストランで使える可能性もあり」、
「健康によさそう」、
「健康によさそうだが米国では消費が少ない」、というコメントがあった。
総じてレストランの需要は低く、利用する意欲も見られない。本来が健康食向きの商品といえ
る。
c)スーパーマーケット
スーパーでは類似品として、グリーンマグマ、青汁、モロヘイヤ・パウダー、グアバ・パウ
ダーなどを取り扱っている。
「中高年層は健康茶・パウダーを愛用している」
、
「はと麦自体は良く売れている、このよう
な粉末状のものは1パッケージに多種類のもの(はと麦、他の穀物、葉物)が入っているもの
を飲む人が増えている」
、「お湯で溶かしても混ざりにくい」
、とのコメントがあった。
米系健康食品スーパーではすでに類似品を扱っているので、これらの店は経験があるため価
格について目安を持っており、「その価格帯(1 回分が 50 セントくらい)であれば販売可能」
との回答があった。
d)市場参入へのアドバイス
価格面の大幅な見直しとともに、水等へ溶解する性質を大幅に向上させるなどの改善提案が
ある。
e)全体的な感想
実際にはと麦や類似品が販売されていることはヒアリングで判明したものの、限られた今回
のヒアリングにおいては、一段と顧客の支持を得るには、価格設定、商品の錬度の点で大きな
改善を実現することが必要との認識が一般的である。もともと健康食品という限定された市場
なので、はと麦の効用をいかに強調し納得させられるかが成功の鍵となるだろう。日系ではは
と麦の効力自体は認識されており、他社の類似品もあることから、価格競争力がつけば期待は
できる。
71
15.くま焼栗
(有限会社 ART)
1)商品概要
項
Ⅰ
目
Ⅱ
販売年月
商品の特長
(PR のポイント、代表的な
消費方法、他)
Ⅲ
成分(特に、健康維持・
増進に効力がある成分)
Ⅳ
製法
1 日本原産
2 類似製品の有無
3 製法上の特長
Ⅴ
賞味期限
Ⅵ
市場
1 国内市場
(主な市場、購買層)
内
2004 年 9 月~
日本で質・量ともにトップクラスの栗の産地である熊本県
の栗を専用の釜でホッコリと焼き上げ、それを常温で 3 ヶ
月品質保持可能なレトルトパックにした、国内初の日本産
焼き栗のレトルト食品です。さらに、品種別に商品化して
います。
県内食品加工業者に委託し、レトルトパック(新含気調理)
製品として主にインターネット販売や委託販売し、そのま
ま、もしくは電子レンジで温めて召し上がっていただきま
す。
細胞の活性維持を促進するカリウムが多く含まれ、食物繊
維もさつまいもよりも多く含まれています。
熊本県球磨郡山江村
日本ぐりを原料にしたものは無いようです。中国産等外国
産のものはあります。
冷温貯蔵で 2 ヶ月間熟成させ、デンプンを充分糖化させて
焼いています。
3ヵ月
九州一円(特に福岡)およびインターネット販売にて北海
道から沖縄まで全国。
実演販売:地方では高齢者、都会は 20 代後半から 40 代く
らいの女性
インターネット:各世代。
販売が集中するのは 11 月~1 月
2 海外市場
Ⅶ
容
① 米国市場
(東海岸、中・南部)
無し
② アジア・オセアニア市場
〃
③ その他市場
〃
国内希望小売価格
650~700 円(14 個入)
72
2)調査結果
アジア系の多いロサンゼルスでは生栗や中国産の天津甘栗も見かける。本商品は、1)圧力
製法により日本の栗でも渋皮がパリッとむけやすくなっていること、2)冷温貯蔵で2ヵ月間
寝かせ熟成させることによりデンプンを糖化させ甘さを出している、と特徴づけているが、ヒ
アリングではその効果が充分に確認できなかった。また、相対的に価格の改善を求める声が強
く、米国市場に進出するにはかなりの企業努力を要するようである。
a)ヒアリング対象店
レストラン 11 店、日系スーパーマーケット 3 店、米系スーパーマーケット 2 店
b)レストラン
類似品としては、「中国産や韓国産が小売店にある」、という指摘はあったが、「米国産は取
り扱っている」、と取り扱いを認めたのは1店に留まった。
利用方法としては、「料理としては使えない」、
「乾燥し過ぎている」、
「このサイズは使用し
づらい」、と否定的な店が 10 店と 9 割を超えた。
「見栄えが今ひとつ」、
「甘みが少ない」、
「食
感がいまいちでもそもそしている」
、
「乾燥しすぎてぼそぼそしている」
、
「味は中国産と変わら
ない」、「中国産の天津甘栗の方が安くて美味しい」、と中国品に比べて味の優位性を認めない
店が 9 店と、メーカーが意図した日本産の栗を冷蔵熟成して甘みを増し、圧力製法で焼き上
げて身離れを良くしたという意図が評価されなかった。
価格は、「値段が高過ぎる」、「高級品扱いで貰えばよいが自ら買おうとは思わない」、「価格
が高くて売れない」、とほとんど全店が高過ぎるとの感想を述べている。味、身離れ、使い勝
手、価格からレストランには不向きな商品だということが言える。
c)スーパーマーケット
日系では、「栗むいちゃいました(商品名)
」、生栗、以前冷蔵栗を扱ったことがある、と回
答があった。
「おつまみのようでコンセプトはよい」というコメントはあったものの、
「もっと
甘さがしっかりしていた方がよい」
、
「栗の味があまりしない」、
「ナッツ系、ジャーキー系のス
ナックにどう対抗できるか分からない」、
「商品のストーリー性が今ひとつ」、
「米国産の栗とさ
ほど違いがないので、取り扱いは非常に難しい」、と厳しい意見が圧倒的である。
ベトナム系の米系スーパーでは、
「生の栗を売っている」、
「このままでは販売できない」、
「ベ
トナム人は栗を自分達で調理し、デザートとして食べることが多いので、あえてこれを買うか
どうかは疑問」、とコメントした。
d)市場参入へのアドバイス
全社が価格面での改善を指摘している。「身離れが悪く、味も甘さを出すなど商品開発が必
73
要」との指摘がある。「見栄えをもっとよくし、パッケージに産地の説明や写真をつけたらど
うか」との提案もある。
e)全体的な感想
栗に関心の強いアジア系住民の多いカリフォルニア州では、中国製、韓国製等アジア産の安
価で競争力のある栗が出回っており、その加工度も高く、天津甘栗など知名度が高い商品もあ
ることから、価格、手軽さを含む特徴を持った商品開発など、輸出のための準備にハードルは
低くない。特に、中国産の商品の競争力(身の大きさ、加工具合、知名度)は高い。商品の錬
度を上げる(剥き身にする、中身が固まる等)の商品開発努力、価格を大幅に下げるコスト面
での競争力強化など課題は多い。
74
平成 18 年度 食品産業国際化可能性調査
日本食品等流通実態調査(米国LA)
発行
2007 年 3 月
発行所
日本貿易振興機構(ジェトロ)
産業技術・農水産部
農水産調査課
東京都港区赤坂 1-12-32
電話
03(3582)5186
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