...

街の構造と児童の外遊び行動の関係に関する調査分析

by user

on
Category: Documents
19

views

Report

Comments

Transcript

街の構造と児童の外遊び行動の関係に関する調査分析
 街の構造と児童の外遊び行動の関係に関する調査分析
子ども
外遊び
環境行動
遊び場
○鈴木麻耶 *
松本真澄 **
上野 淳 ***
正会員
同
同
‐多摩ニュータウン・若葉台地区におけるケーススタディー‐ 多摩ニュータウン
1. 背景と目的 急激な都市化に伴う遊び場所の減少や,
文中の児童とは小学生を指す.
塾通い,TVゲームの普及などの影響で,児童の外遊び
3.児童の外遊び行動の実態 今回の調査で見られた児
行動が減少しているといわれている.健全な地域環境の
童の活動を「移動」,「遊具等を使用した滞留行動」,「環
中で外遊び行動が促され,発育に寄与できる街づくりを
境 利 用 型 の 滞 留 行 動」,「も の を 使 用 し な い 滞 留 行 動」
行っていくことは重要な課題と考える.本研究は,児童
に大別し,さらに 11 種類に分類した(表・1). の外遊び行動の実態を把握し,街の構造との関係を分析
3-1.活動場所と活動内容 対象地での活動の分布を
することで,児童にとって快適な外遊び環境づくりのた
図・2に示した.GMの環状部分から距離のある公園に
めの地域計画的指針を得ることを目的としている.
は児童が少なく,GMとの位置関係が遊び場所に影響を
2.研究方法 与えているといえる.遊び場所の割合(図・3)は,平
2 -1.対象地域の構造 調査対象地として,特徴的な
日はPLやマンション構内,休日は公園・緑地での活動
街区構造を持つ,多摩ニュータウン・若葉台地区をとり
が多く,平日の放課後と休日での遊び場所の使いわけが
あげた.若葉台地区では住区幹線・住区道路と歩行者専
みられる.また,児童同士の活動で,PL,公園・緑地
用道路を一体化したグリーンモール街路(以下:GM)
と並んでマンション構内での活動割合が多いことは特徴
が環状に街に配置され,住宅と生活施設を結ぶ中心的な
的である.平日・児童同士での活動場所と内容の関係(図
回廊として位置づけられている(図・1).また,GMと
・4)か ら は,マ ン シ ョ ン 構 内 で,PLや 公 園・緑 地 に
一体的に計画された学校を中心としたコミュニティの形
見られるような様々な活動が展開されていることがわか
成や,街区ごとの明確な機能とまとまりのある計画も本
カルチャーコア :
グリーンコア:
生活文化活動に求心性
を持たせる拠点
地区の特徴である.
若葉台地区の緑地
資源の介入
2-2.調査概要 対象地区全体で児童の外遊び行動に
幹線道路と立体的に交差
関する時間断面でのマッピング調査を平日 (2009 年 10 月
緑地と一体
13 日 15:30, 16:30), 休日 (2009 年 11 月 1 日 10:30,
13:30, 16:30) の2回と, 児童の遊びグループの追跡・
活動記録調査を 7 事例について行った(2009 年 8 月 17
GM(グリーンモール):
マンションの中庭と一体
日~ 11 月 8 日).なお,本研究では小学生を対象とし,
学校
街の中心的な動線となる
生活環境軸
住宅地・マンション
緑地
N
商業施設
0
1000
幹線道路と交差
SCALE:1/40000
図・1. 若葉台地区の街の構造
休日
2009 年 11 月 1 日
11:30 ~、13:30 ~、
15:30 ~
平日
2009 年 10 月 13 日
15:30 ~、16:30 ~
PLの遊具で
おしゃべり
公園でボール遊び
住宅前の 道路で
キックボード
公園でBBQ
公園でキャッチボール
大人に見守られながら
複合遊具で遊ぶ
マンション構内の広場
でボール・乗り物遊び
マンション内の道で
ボール遊び
子どものみ 大人と一緒
滞留 移動 滞留 移動
校庭でスポーツクラブ
1人
2人
3人
4人
以上
N
自転車
SCALE:1/20000
0
100
500
公園の遊具で遊ぶ GM
歩行者専用道路
公園・緑地
戸建住宅地
マンション構内
学校
駐車場
建物
その他
非調査範囲 小川で水遊び
図・2.若葉台地区における児童の屋外活動の分布
Analysis for the Environmental Behavior of Children’s After School Outdoor Activities
: Case Study in Wakabadai dictrict in Tama-Newtown
SUZUKI Maya,
MATUMOTO Masumi,UENO Jun
表・1.児童の屋外活動の分類
移動
遊具等を使用した滞留行動
移動
行為名 A
乗り物遊び
B
行為内容 歩き・自転車等による移動
C
遊具遊び
環境利用型の滞留行動
道具遊び
D
自転車・キックボード・一輪車等
複合遊具・砂場・ブランコ等
走り回る
H
追いかけっこ・走り回る等
歩き回る
I
うろうろする・歩き回る等
自然物遊び
E
F
ボール・ゲーム機等持参した道具で遊ぶ 草・土・水・虫等
地形・環境遊び
塀に登る・坂を転がる等
写真
ものを使用しない滞留行動
行為名 G ふり遊び
行為内容 ごっこ遊び・おままごと等
会話
J
おしゃべり
休憩
K
座って休む・ボーっとする
写真
(%)0
児童同士での活動場所
20
40
60
80 100 延べ
人数
平日
15:30
(442)
(108)
休日
15:30
道路
PL
公園・緑地
マンション構内
(139)
A
学校内
その他 B
駅前広場
図・3. 児童の活動場所の分析割合
GM
道路
PL
公園・緑地 マンション構内 学校内
駅前広場
移動
17:00
16:30
ドッヂ
ボール
遊具の上で
おしゃべり
水を飲む
14:30
15:00
15:30
16:00
16:30
17:00
15:30
16:00
16:30
17:00
ゲーム機
C
D
E
F
G
H
I
J
K
ゲーム機
その他
乗り物
16:00
④
カードゲーム
①
②
case2
(141)
15:30
③
カードゲーム
休日
15:30
(144)
15:00
ドッヂボール
(54)
休日
11:30
休日
13:30
(51)
(80)
B
C
D
E
F
G
H
I
J
K
14:30
カードゲーム
その他
休日
11:30
休日
13:30
平日
16:30
case1
A
バスケット
(272)
( )
バスケット
平日
16:30
GM
大人と一緒にいる児童の活動場所
20
40
60
80 100 延べ
人数
平日
(31)
15:30
( ) (%)0
遊具
case3
道具
図・4. 活動場所と活動内容の関係(平日・児童同士)
る.構内の噴水,小川,広場などの環境構築が児童の遊
びを誘発し,ここが安定的な遊び場になっているものと
考えられる.
3 -2.時系列的にみた児童の活動について 本調査で
構内全体を使って缶蹴り
(缶の代わりにボール使用)
芝生に
寝転がる
調査概要及び備考
case1: 公園・緑地
平日 晴れ
①高学年・男・2人
自転車2台・カードゲーム持参
②高学年・女・2人
自転車2台・ボール1個持参
③高学年・男・2人
自転車2台持参
④低学年・男・3人
自転車1台持参
動的行動
case2: 公園・緑地
祝日 曇り
低学年・男・2人
ゲーム機2台・本数冊持参
case3:PL
平日 晴れ
低学年・男・2人
親と一緒
自転車1・キックボード1持参
小川で水遊び
休憩・
その他
②
ドッヂボール
その他
会話
③
サッカー
歩き回る
キックボード
走り回る
砂場
case4
①
自転車
キックボード
ふり遊び
16:00
バランス遊具
なわ遊具
B
C
D
E
F
G
H
I
J
K
自然物
地形・環境
15:30
砂場
A
静的行動
case4: マンション構内
休日 曇り
①低学年・男・2人
キックボード2台・
ボール1個持参
②低学年・男・4人
キックボード1台
自転車1台
野球ボール1個持参
③低学年・男・1人
図・5. 児童の屋外活動の時刻変化の事例
は 7 事例の児童の遊びグループの追跡を行った(図・5).
これによると,様々なきっかけで児童は分刻みに活動内
が窺える.
容を変化させていることがわかる.さらに,活動内容と
4.まとめ 以上から,若葉台地区では,計画的に作ら
遊び場所の関係から,遊び場所の決定方法には以下の3
れたマンション構内が児童の遊びを誘発していること
パターンがあると考えられた.①活動内容が場所に関係
と,GMの配置が遊び場選びに影響を与えていることが
している場合 (case1:バスケットゴールのある公園で
わかった.遊具だけでなく,小川や斜面や回遊性といっ
比較的長時間バスケットボールをしている ),②活動内
た環境要素が遊びに多様性を与え,外遊びを豊かにする
容が場所に関係していない場合 (case2),③大人の見守
要素であるといえる.また,児童の滞留と移動の両方の
りが活動場所に影響する場合(case3).尚,case4 では,
行動において歩行者専用空間は影響を与えており,外遊
マンション構内において,構内全体を使った缶蹴りや小
びにおける安全性と,遊び場選択に多様性を与える上で
川での水遊びなど,構内計画が遊びを誘発している様子
有効であるといえる.
*
首都大学東京大学院 建築学域 博士課程前期
** 首都大学東京大学院 建築学域 助教
*** 首都大学東京大学院 建築学域 教授・工博
*
Division of Arch., Graduate School of Arch., Tokyo Metropolitan University
** Division of Arch., Graduate School of Arch., Tokyo Metropolitan University
*** Prof.,Graduate School of Arch., Tokyo Metropolitan Univ., Dr.Eng.
Fly UP