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第1章 序論 1.1 単位系 いろいろな輸送現象を定量的に記述するために

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第1章 序論 1.1 単位系 いろいろな輸送現象を定量的に記述するために
第1章 序論
1.1 単位系
いろいろな輸送現象を定量的に記述するために使用する基本単位と、特に運動量、熱、物質に関連する輸送現象
を定量的に表すのに使う誘導単位を以下に示す。具体的に基本単位とは、下に挙げる長さや時間等の基本的な単位
であり、実際の輸送を表す単位が誘導単位である。誘導単位を使って表す数値があまりに大きいか、小さいときに
接頭語を付け、分かりやすく比較しやすい単位で表す。
l
基本単位:長さ (m)、質量 (kg)、時間 (s)、平面角 (rad)、電流 (A)、温度 (K)、物質量 (mol)、光度 (カン
デラ, cd)など
l
接頭語:femto(f=10-15)、pico(p=10-12)、nano(n=10-9)、micro(µ=10-6)、milli(m=10-3)、centi(c=10-2)
deci(d=10-1)、hecto(h=102)、kilo(k=103)、mega(M=106)、giga(G=109)、tera(T=1012)、peta(P=1015)
l
誘導単位:力、ニュートン(N=kg•m/s2)
圧力、パスカル(Pa=N/m2=kg/(m•s2))
仕事、エネルギー、熱(J=N•m=kg•m2/s2)
仕事率、ワット(W=J/s=kg•m2/s3)
電位、電圧、ボルト(V=W/A)
電気抵抗、オーム(Ω=V/A)
電荷、クーロン(C=A•s)
電気容量、ファラッド(F=C/V)
周波数、ヘルツ(Hz=1/s)
磁束密度、テスラ(T=Wb/m2)
磁束、ウェーバー(Wb) :1 秒あたりの磁束の変化に伴い 1 ボルトの起電力を生じるもの
放射能、ベクレル(Bq=1/s)
吸収線量、グレイ(Gy=J/kg)
線量等量、シーベルト(Sv=放射線荷重係数・Gy)
l
温度の換算:T=t+273.15、T 絶対温度[K]、t 摂氏温度[°C]、t’ 華氏温度[°F]、t=(t’−32)/1.8
l
熱量の換算:1 cal=4.1868 J, 1 J=107 erg(=g•cm/s2)
kg を質量として扱うのが SI 単位であり、kg を力として扱うのが工学単位系である。いまは広く SI 単位が使わ
れている。
1km2=106m2、1ms-1=10-3s-1、kmol/m3, J/(mol•K)の使用は○、mol/dm3, J/mol/K は一般に使用せず×。
1.2 気体の状態方程式
(a) 理想気体
理想気体の圧力 p と温度 T の関係は次の状態方程式で表せる。
pvm = RgT
(1-1)
3
理想気体の圧縮係数 z は、z = pvm RgT = 1 と定義され一定値になる。ここで vm は1モルあたりのガス容積[m3/mol]、
Rg はガス定数[J/(mol•K)]である。表 1-1 は実在気体の臨界状態における(臨界)圧縮係数 zc、臨界圧力(= pc [MPa])、
臨界温度(= Tc [K])、臨界密度(=ρc [kg/m3])の値を表す。
Table 1-1 気体の臨界定数と沸点
ガス
臨界温度
臨界圧力
臨界密度
臨界圧縮係数
沸点
Tc [K]
pc [MPa]
ρc[kg/m3]
zc [-]
[K]
He
5.2
0.23
0.30
4.2
H2
33.2
1.32
31.6
0.305
20.3
N2
126.2
3.40
314
0.292
77.3
O2
154.6
5.04
436
0.292
90.2
Ar
150.7
4.87
536
0.291
87.5
CH4
190.6
4.60
162
0.290
111.7
CO2
304.2
7.38
4661
0.279
194.7
H 2O
647.3
22.1
316
0.231
373.2
(b) van der Waals の状態方程式
(1-1)式の理想気体状態式に分子間力の補正因子(a [Pa•m6/mol2])と分子大きさの補正因子(b [m3/mol])を考
慮して求められた実在気体の圧力と温度の関係を表す式が van der Waals 式であり、次で示される。
⎛
a ⎞
⎜ p + 2 ⎟ vm − b = RgT
vm ⎠
⎝
(
)
(
臨界状態の条件: ∂ p ∂ vm
(
a = 27 RgTc
)
2
(1-2)
)
TC
(
= 0 , ∂ 2 p ∂ vm 2
)
Tc
= 0 より(1-2)式中の定数 a, b の値を求めると次の値と関係を得る。
64 pc = 27 pc b2 ,
b = RgTc 8 pc = vC 3 , Tc = 8a 27Rg b ,
(
Tr=T/Tc
)
これらの値を臨界圧縮係数 zc = pc vm / RgTc としてま
とめると zc = pc vc RgTc = 3 8 を得る。
(c) 圧縮係数 z を用いた状態方程式
実在気体の圧縮係数 z を、実測値を使って予め求めて
おき、これを状態方程式に代入して求めた次の関係が実
測値を最もよく表すことが知られている。
pvm = zRgT
pr=p/pc
(1-3)
実際のガスの p-vm-T 関係から(1-3)式を使い z の値を
求め、これを pr(=p/pc)と Tr (=T/Tc)の関数として表すと、
Fig. 1-1 気体の圧縮係数と対応状態原理
4
この関係はガスの種類によらず一つの関係に収束することから、対応状態原理と呼ばれる。例えば pr が低いとき、
あるいは Tr が5以上になると、z が1に近く、言い換えれば理想ガス条件になる。例えば、(1-2)式の van der Waals
式の関係をすべて pr, vr, Tr の関係に書き直すと、次式を得る。
⎛
3⎞
8
⎜ pr + 2 ⎟ vr − 1 = Tr
3
v
⎝
r ⎠
(
)
(1-4)
この関係を表した結果を Fig.1-1 に示す。圧縮係数は、次式で表される。
z =
3 pr vr
8 Tr
(1-5)
対応状態原理の関係は、van der Waals 式と矛盾が無い。
1.3 流れの分類
(a) 層流と乱流
l
層流:不規則な乱れのない流れ、整然
と流れる状態を言う。
l
乱流:流体が時間的、空間的に不規則
に流れる状態を言う。
流れが遅いとき、層流であるが、速くなり
ある臨界値を超えると、乱流に遷移する。ど
ういう場所を流れるか、あるいは圧力駆動か
Fig. 1-2 層流と乱流の流れの様子
熱駆動で流れるかによって遷移する臨界値
は異なるが、決まった値で遷移する。
(b) 圧縮性と非圧縮性
流れる流体の圧縮性あるいは粘性を考える必要があるか、必要がないか等の種類により、以下の二つに分類し流
れを区分して表す。
l
圧縮性流体:流体の膨張収縮を考慮する必要がある場合の流れ。直接的には膨張収縮により密度 ρ が変
化する流れである。
l
非圧縮性流体:流体の膨張収縮が無視できるときの流れ。直接的には密度 ρ が変化しないときの流れで
ある。
(c) 完全流体と粘性流体
l
完全流体:流体の粘性を無視した流体。流体と接触する物体から十分離れたところで粘性の影響が無視
できる場合には、粘性の無い流れとして取り扱える場合がある。
l
粘性流体:実在の流体は粘性を持っており、物体の近傍で、粘性の影響が大きく表れる箇所では粘性流
体の流れとして扱う。
5
演習問題
1. 次の van der Waals の状態方程式
p=
RgT
vm − b
−
a
vm2
において、定数 a,b が次の関係にあることを証明せよ。なお以下の関係で、臨界圧力 pc、臨界モル容積 vc、臨
界温度 Tc を本文と同様に使っている。
a=
b=
(
27 RgTc
)
2
64 pc
= 27 pc b2
vc RgTc
=
3 8 pc
さらに、この関係を元の式に戻し、次式の関係になることを確かめよ。
⎛
3 ⎞⎛
1⎞ 3
⎜ pr + v 2 ⎟ ⎜⎝ vr − 3 ⎟⎠ = 8 Tr
⎝
r ⎠
ここで、 pr =
v
p
T
, vr = m , Tr = である。
pc
vc
Tc
2. 対応状態原理(Fig.1-1)を用いて、256°C(529K)、3.04MPa におけるアセトンの圧縮係数を求める。なお、
アセトンの臨界温度 TC, 臨界圧力 pC は TC=508.7K、pC=4.72MPa である。
3. 実在気体の圧縮率 z を次のようなベキ級数展開で表したときの係数 BV, CV, DV, - - を第二、第三、第四ビリア
ル係数と呼ぶ。
⎛ pv ⎞
B C
D
z ⎜ = m ⎟ = 1+ V + 2V + 3V + − −
R
T
v
v
vm
⎝
g ⎠
m
m
van der Waals 式を代入し、BV, CV を a, b, T の関数として求めよ。
6
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