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プロD2との一致

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プロD2との一致
● シンポジウム 1
臨床脳循環代謝測定の最前線
4.SPECT を用いた脳血流・血管反応性の定量評価と標準化
飯田
竹内
飯原
1)
秀博 ,渡部
1)
朝子 ,岩田
2)
弘二 ,横田
1)
浩司 ,赤松
1)
倫明 ,林
3)
千晶 ,森脇
要
1)
哲哉 ,中澤
1)
拓也 ,山本
3)
博 ,福島
1)
真弓 ,松原
1)
明秀 ,宮本
4)
和人 ,福本
1)
佳亮
2)
享
4)
真司
旨
SPECT の汎用性は高く,日常の臨床だけでなく多施設臨床評価試験での利用が期待される.しかし,現実に
は SPECT の定量性は保障されておらず,施設を超えた再現性も確保できていない.当該研究グループでは,正
確な吸収補正と散乱線補正を組み込んだ SPECT 画像再構成プログラム(QSPECT)の開発を行い,PET に匹
敵する定量精度を確保した.施設誤差を最小にする試みに基づき,初回循環移行係数の高い IMP 検査に数理モ
デル解析を適用することで,一回の検査で安静時と血管拡張後の局所脳血流量,血管反応性を定量評価する方法
が可能になった.先行研究によって,施設を超えた再現性,施設内での再現性,PET との一致が確認でき,今
後血行力学的脳虚血の病態診断への利用が期待される.
(脳循環代謝
19:110∼119,2008)
キーワード:SPECT,脳梗塞,脳循環予備能,定量
統一化されておらず,現実には操作者の技術に依存す
はじめに
ること,加えて装置のクオリティコントロール(QC)
が未成熟であり,機器メーカー間で異なることが原因
SPECT は,PET と同様に種々の生体機能をイメー
であった.
ジングすることができ,循環器系疾患の診断を中心に
一方,定量的な SPECT 画像再構成においては多く
臨床医学において重要な役割を担ってきた.組織血
の数学的手法が提案され,また散乱線を補正する方法
流,基質代謝,神経受容体のイメージング,さらに近
についても多くの論文報告がなされてきた.最新の技
年では遺伝子発現や,タンパクやペプチドの動態イ
術を用いると,上記ふたつの補正は十分に正確に行う
メージングも可能になりつつある.一方臨床施設にお
ことができ,PET に匹敵する精度での画像提示が可
ける SPECT の汎用性は高く,また多くの診断放射性
能であると考えられている.我々は,これらの技術を
薬剤の流通が確立していることから,多くの臨床研究
結 集 し て 汎 用 的 な SPECT 画 像 再 構 成 パ ッ ケ ー ジ
にも応用されている.PET を使った創薬支援が議論
(QSPECT)の開発に着手し,Wondows コンピュー
される中,大規模な臨床評価試験での SPECT の貢献
タで実行できるプログラム群を開発した.これに基づ
が期待される.一方,現時点では SPECT 画像の定量
いて SPECT 診断の精度向上,検査と解析にかかるプ
性は必ずしも保障されておらず,施設を超えた再現性
ロトコルの最適化と標準化を目指すもの で あ る.
は確保できていないとされる1).これは,機器毎に画
SPECT 装置を使った機能画像診断における施設間誤
像を再構成する手法や散乱線や吸収補正を行う手技が
差を最小限にすることで,今までにない生体機能イ
メージングの客観的評価基準の確立が可能であると考
1)
国立循環器病センター研究所先進医工学センター放射線
医学部
2)
国立循環器病センター病院脳神経外科
3)
国立循環器病センター病院脳血管内科
4)
国立循環器病センター病院放射線診療部
える2∼4).また,このような定量計測で得られた SPECT
画像に対してコンパートメント数理モデル解析を適用
することで,一回の検査で安静時および血管拡張時の
複数の局所脳血流量の画像撮像も可能になった5).こ
― 110 ―
4.SPECT を用いた脳血流・血管反応性の定量評価と標準化
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).
の方法に基づき,血行力学的脳虚血診断検査への応用
は,SPECT 画像の施設間誤差は予想以上に大きく,
が可能になった.
多施設臨床研究は困難(神話)であるとの見解が報告
本稿では,QSPECT 画像再構成と血行力学的脳虚
れさた1).具体的には,数値的に計算された共通のプ
血診断検査のそれぞれの理論背景,撮像と画像解析に
ロジェクションデータを,フランス国内の 6 つの施設
かかる基盤技術を概説し,機能画像の定量解析の意義
において 12 の異なる画像再構成プログラムによって
と妥当性について議論する.施設を超えた再現性を確
画像計算し,画像の絶対値およびコントラストが比較
保するための課題についても述べる.
された.結果は,施設および装置,また画像処理プロ
グラムに依存して大きく異なっており,施設を超えた
定量的な SPECT 画像再構成法
再現性を確保するためには,標準化に向けた本質的な
技術開発の必要性が確認されたところである.
一般的な臨床脳 SPECT 検査では,60∼80% の光
SPECT における光子の吸収は重要な補正要素であ
子が体内で吸収を受け,30∼40% の光子が散乱によっ
るにもかかわらず,厳密(解析的)な補正法はまだ発
て偽りの信号を与えている(図 1).脳 SPECT 検査
見されていない.このために SPECT を使った定量は
では,ほぼ全ての装置で吸収補正がなされるように
不可能であるとの極論もあった.PET の場合には外
なっている.しかし頭部輪郭抽出法などの補正におけ
部線源などで得たデータを使って単純な処理で正確に
る詳細な手技は必ずしも統一化されておらず,たとえ
補正できるが,この手法は SPECT には適用できな
ば頭蓋の輪郭抽出の方法や精度,また吸収減弱係数は
い.これは放射線信号の受ける吸収が深さに依存して
ユーザーが任意な数値を設定するような仕様が通常で
変化するためである.数値的な逐次近似に基づく再構
ある.散乱線補正については,手法そのものが機種毎
成法において,吸収減弱のプロセスを計算に組み込む
に異なり,装置によっては補正を行わない場合もあ
ことで必要十分な精度での補正が可能となった.仮想
る.この場合には吸収減弱係数としては理論的な数値
した画像分布から吸収減弱を含むプロジェクション
に固定するのではなく,ユーザーが任意な数値を設定
データを推定し,最尢法(MLEM 法)と呼ばれる統
することでアーチファクトの除去あるいは軽減を推奨
計学に基づくアルゴリズムで逐次,真の画像に収束さ
している.したがって画像再構成に必要なパラメータ
せていくものである.SPECT を使った定量診断に
数値の選択は,各機関の技師などの判断に基づいて行
とっては極めて重要な進歩であり,このアルゴリズム
われ,本来は画質改善や補正の精度向上を目的にする
の登場によって SPECT での定量評価が初めて確実な
ものであるが,施設間誤差の要因になっていることは
ものになった.MLEM 法における逐次近似の収束性
明らかである.結果として画像のコントラストは装置
は理論的に保証されており,かつ正確に吸収補正され
メーカーや機種によって異なり,またさらに機種毎に
た画像が得られる.またさらに収束速度の高速化法も
異なる画像の表示法(カラースケールなど)が異なる
確立し,結果として従来の方法と比べてほぼ同程度の
ことも,装置を越えた再現性を確保することを難しく
計算時間で正確な画像が得られるように な っ た.
している.近年,欧州にてなされた多施設評価研究で
QSPECT においてもこの方法を採用している.
― 111 ―
脳循環代謝
第 19 巻
第3号
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もうひとつの誤差要因である散乱線については,多
SPECT 画像再構成プログラムの中で最も実用的かつ
くの方法が提案されてきたにも関わらず,臨床データ
精度の高いプログラムであると考えられる.このプロ
に適用された事例は極めて少ない.吸収補正法が十分
グラムの流れ図を図 3 に示す.
に確立していなかったがために散乱線補正法の厳密な
図 4 には,QSPECT 画像再構成の結果と,散乱線
評価ができなかったこと,加えて補正による統計ノイ
補正を行わない従来法によるものとの比較を示す.
ズの上昇(画質の劣化)が大きくて実用に耐えられな
IMP を使った脳血流量の定量診断においては散乱線
かったことが主な理由である.QSPECT プログラム
補正によって画像のコントラストが上昇する.また,
では,吸収補正に利用するための吸収減弱データを
今までの研究では,散乱線の影響は脳内部位によって
使って散 乱 線 分 布 を 推 定・補 正 す る Transmission-
異なり,脳血流量値は,脳皮質領域では 20% 程度の
6∼9)
Dependent Convolusion-Subtraction(TDCS 法)
と
上昇,小脳では 30% 程度の上昇,深部灰白質領域で
呼ばれる方法を採用している.補正に必要なパラメー
は 5∼10% 程度の上昇,半卵円中心領域では逆に 30%
タは系統的な理論的・実験的な検討によって最適化し
程度減少することが報告されている2).D2 ドーパミン
たことで十分に高い精度が確保でき
6∼9)
,また画質の
受容体リガンドである I-123 標識 IBF の画像において
劣化がほとんどないことも確認できたので,既存の散
も散乱線補正は画像のコントラスト上昇に寄与してお
乱線補正法としてはもっとも実用的かつ精度の高いも
り,線状体領域での集積率の上昇,参照領域である小
2,3,5)
.Tc-99m,I-123,Tl-201 な ど 全 て の
脳∼後頭葉での低下(散乱線成分の除去)が明白であ
SPECT 製剤に利用できる利点もある.図 2 に示すよ
る.心筋 Tl-201 においては,従来法では散乱線のみ
うに,I-123 IMP の臨床においても,画像ノイズをほ
ならず吸収補正も行っていないため放射性薬剤の集積
とんど上昇させずに散乱線補正を行うことができ
は不均一である.特に後壁における欠損が認められ
のとなった
2,7∼9)
.脳 SPECT 検査においては,頭部の吸収減弱
る.吸収補正および散乱線補正を含む QSPECT 画像
分布はエミッションのプロジェクションデータの輪郭
再構成ではほぼ一様な集積画像を得ることができたと
抽出によって計算することができる.QSPECT にお
しており,当該研究グループだけでない多くの検討に
ける画像再構成アルゴリズムは,脳だけでなく心筋な
よって正確な画像提示の妥当性が確認されてい
どの体幹部の検査にも応用でき,現存する実用的な
る2,9∼16).
る
― 112 ―
4.SPECT を用いた脳血流・血管反応性の定量評価と標準化
図 3. Fl
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は,PET で広く行われているようなコンパートメン
局所脳血流量と血流予備能の
計測理論と必要条件
トモデルに代表される数理モデル解析と機能画像の定
量評価が可能になったことを意味する.脳血流製剤を
複数回投与して行う SPECT 検査に,数理動態モデル
脳内の放射性薬剤の分布が正確に計測できること
を適用することで,一回の検査のみで安静時と血管反
― 113 ―
脳循環代謝
第 19 巻
第3号
図 5. Sc
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応性を診断評価することが可能になった2)(図 5)
.
拡張時の局所脳血流量画像は,絶対値および画像コン
Dual-Table ARG 法 と 呼 ば れ る 方 法 で は,2 回 目 の
トラストは PET に一致する診断情報となっているこ
IMP 投与に同期させて 2 度のダイナミック SPECT ス
とが確認されている2).このような血行力学的脳虚血
キャンを行う.2 回目 IMP 投与のおよそ 10 分前に血
の診断情報は,頭蓋内血管バイパス術を含む血行再建
管拡張薬(Acetazolamide)を投与することで 2 度目
術の適用を判定するなどで有効利用できることが期待
のスキャン画像から血管拡張時の局所脳血流量画像が
される.
得られる.安静時および血管拡張時の一連の画像デー
このような血管拡張能の画像診断においては,高い
タに対してコンパートメントモデルを適用し,安静時
血流量領域まで定量計測できる診断薬剤を利用するこ
と血管拡張時の局所脳血流量の定量画像を計算する.
とが重要である.I-123 標識ヨードアンフェタミン
この方法では,被験者が SPECT 装置内で横になって
(IMP)は脳内への取り込み率が高く17),実際に O-15
いる間に得られる全ての放射線信号を解析に利用す
標識水に匹敵する初回循環移行率を有するので,血管
る.また,単純な減算処理を行なわず,一連の画像に
拡張薬を投与した後の局所血流量および血管反応性
動態解析理論を適用することで画像ノイズの上昇を抑
(あるいは血流予備能)の検査に利用することができ
制しているので最善の画質が得られる.高い精度で,
る.SPECT 検査用の脳血流量製剤としては Tc-99m
安静時および負荷後の局所脳血流量画像を得ることが
標識薬剤もあるが,高血流量領域では集積率が飽和す
できる方法は,血行力学的な脳虚血の重症度診断に有
る傾向にあることが知られており,したがって血管反
効である.図 6 には本方法で得た典型的なふたつの症
応性の定量評価には適していないと考えられる.慎重
例の結果を示す.ともに内頚動脈閉塞症であるが顕著
な検討が望まれる18).
な脳梗塞は認めない症例であるが,上図では安静時に
一回の検査において局所脳血流量画像を複数計測す
おいて左右差はないが血管反応性の低下を認め,軽度
るためには,検査途中で血流量を変化させる必要があ
のリスクを有することを示唆する.一方,下図では安
る.これは従来の数理モデル解析における大前提とさ
静時に低下かつ血管反応性が消失しており,高度のリ
れている「生理パラメータは計測中に普遍である」と
スクを有することを示唆する.また,図 7 に示すよう
いう仮定に矛盾するものである.当該研究グループで
な PET との比較検討においても,安静時および血管
は,過渡的な重み関数の概念を導入してこれが問題に
― 114 ―
4.SPECT を用いた脳血流・血管反応性の定量評価と標準化
図 6. Typi
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― 115 ―
脳循環代謝
第 19 巻
第3号
ならないことを突き止めた.すなわち,第 1 スキャン
クオリティコントロールの標準化について
中の後半に局所脳血流量が変化しても,1 回目のス
キャンから計測される脳血流量値はほぼ初期の数分間
の平均値を示すものであり,後半の変化の影響は無視
当該研究グループでは,すでに本定量的 SPECT 画
できるほど小さい.また第 2 回目のスキャンが提示す
像再構成および機能画像解析プログラムを複数の施設
る脳血流量画像も,2 回目の IMP 投与の前に血流量
に提供し,施設間の一致,施設内の再現性,さらに PET
が変化している限り正確に 2 回目投与後数分間の脳血
との一致について検討してきた.機器メーカーを超え
流量値を反映する.2 回目のスキャン中の血流が変化
た機能画像の一致を確認する一方で,機器の日常管理
してもこの影響は反映されないことが明らかになっ
の重要性が再認識されてきている.具体的な注意事項
19)
た .
として以下が挙げられる.
1.コリメータおよび検出器感度の均一性補正にか
このことは以下の理論的考察により示される.2 回
かるクオリティコントロール(QC)
目 IMP 投与時における 1 回目の IMP 投与によるバッ
bkg
クグラウンドとしての脳内放射能濃度{C(T
)ここ
i
2.撮像パラメータの確認
で Tbkg はバックグラウンドに対応する計測時刻を示
3.検査実施プロトコルの詳細管理
す}は,過渡的な寄与関数(W
(t)
)および過渡的に
4.採血カウントを計測する井戸型検出器の日常管
理
変化する脳血流量(f
(t)
)を使って以下のように書け
る19).
5.その他
Tbkg
Ci(Tbkg)=∫0 w(t)
・f(t)dt
(1)
一方,2-コンパートメントモデルを仮定するとここ
確な画像を撮像することができない.機器メーカーの
提示する種々の補正パラメータによって不均一な誤差
の時刻において次式が成り立つ.
dC(t)
i
i
C(t)
−
= f・ C(t)
a
Vd
dt
特に均一性補正は日常の SPECT 撮像を行う際に最
も基本的な確認事項であり,これが保証されないと正
は確認しにくい場合もあるが,たとえば定期的に一様
(2)
円筒ファントムにおける一様性の目視によって確認す
るこがができる(図 8A).また,血液放射能濃度の
2 式を区間[0,
Tbkg]で積分すると
計測においては,図 8B に示すようにエネルギーウイ
ンドウ設定を毎回確認することが望ましい.NaI シン
Tbkg
Ci(T )=f・∫0
bkg
Tbkg
=f・∫0
C(t)
i
−
dt
C(t)
a
Vd
チレータの場合とプラスチックシンチレータの場合で
(3)
dC(t)
i
dt
dt
状況は異なるが,前者の場合にはふたつのピークの両
方を含むのが理想である.プラスチックシンチレータ
の場合には,カウントの閾値の設定によって絶対感度
となるので,1 式と 3 式を比べることで w
(t)はお
が大きく変化することを認識しておくべきである.
おむね以下のように記載できる.
w(t)
dC(t)
i
dt
今後の課題
(4)
すなわち,寄与関数は脳内放射能濃度曲線の一時微
本稿で述べた血行動態力学的な脳虚血の定量的診断
分に比例することになり,これは IMP が脳内に早く
法は,今後多くの新規治療プロトコルの客観的評価な
流れ込む入力関数のピーク付近にて大きな値をとり,
どに貢献することが期待されている.適切な QC 管理
一方徐々に洗い出される後期フェーズにおいては若干
のもとであれば当該研究グループの開発したプログラ
の負値となることを示す.このことは,IMP バック
ムパッケージを利用することによって,正確な放射性
グラウンド画像は,それ以前の脳血流量の変化がいか
薬剤の分布画像を撮像することができ,さらに数理モ
ようであってもほぼ IMP 投与の初期の値でほぼ決定
デル解析プログラムを適用することで種々の生理・生
され,その後の変化にはあまり影響を受けないことを
化学的機能画像の定量評価が行える.当該プログラム
示す.同様に考えると,1 回目および 2 回目の IMP
は臨床研究を目的に開発されたものであり,当該研究
投与後の積算画像は,それぞれ IMP 投与直後の脳血
機関との共同研究によって無償利用が可能である.利
流量分布を反映しており,その後の変化はそれほど反
用にあたっては,まず QC を確認するための必要最小
映しない.十分に短い時間解像度で脳血流量を観察し
限のファントム実験が推奨され,万一結果に不備があ
ていることになる.
る場合には機器メーカーのサービスを受けるなどの調
― 116 ―
4.SPECT を用いた脳血流・血管反応性の定量評価と標準化
図 8A. Fi
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図 8B. Ene
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整作業が不可欠である.さらに,安定した結果を得る
者における血流予備能の低下,無自覚無症状の糖尿病
ためには,当該研究グループの提示する検査プロトコ
患者における血流予備能の低下,血糖コントロールの
ルに厳密に従うことも推奨される.
過去数年間の平均値と血流予備能が逆相関することな
現在のところ IMP を使った安静時および血管拡張
ど,が報告されている.多くの臨床機関に設置されて
時の局所脳血流量画像の定量診断の際には一点の動脈
いる既存の SPECT 装置を用いて,脳・心の血管反応
血採血を必要としている.これは予め求めてある標準
性や血流予備能の定量評価が実施可能になると,PET
入力関数を較正するためである.しかし,分布体積を
ではできない大規模な臨床試験が実施可能になり,病
固定する本法においては採血を行わなくても絶対値の
態の調査研究や新規治療薬の効率的な開発推進に貢献
定量を行えることが確認できている20).より詳細な精
する可能性が期待される.糖尿病や高脂血症,高血圧,
度評価を行うことで,無採血定量診断プロトコルの構
喫煙などの血管病変のリスクをかかえる疾患予備軍に
築が今後の課題である.
おいて,潜在的に進行している動脈硬化の早期発見に
このような一回の検査で血管拡張能を定量的に評価
できる SPECT 診断法は,微小循環および微小循環制
貢献し,また治療薬有効性の客観的評価が可能になる
かもわからない.
御機構の変化をとらえることで,糖尿病や高脂血症,
いずれにせよ,新規治療法の開発プロセスにおいて
高血圧,喫煙などの循環器疾患のリスク因子に基づく
画像情報を利用すること,これに基づく EBM 医療の
潜在的な病態進行の理解に応用できる可能性が期待さ
企画と実施は,近年米国 FDA もガイドラインを作成
れる.過去の PET を使った研究によると,リスク因
したところであり,今後の検査実施体制の整備と検証
子の数は冠血流予備能と相関し,また糖尿病患者にお
が望まれる.SPECT はすでに多くの施設に設置され
ける造影上正常な冠動脈における血流予備能の低下と
た機能画像診断装置であり,PET と同様,あるいは
アセチルコリン反応性の低下,高血圧非合併糖尿病患
それ以上の可能性を秘める.さらなる方法論の整備が
― 117 ―
脳循環代謝
第 19 巻
第3号
tion of a Quantitative myocardial
望まれる.
201
Tl SPECT Sys-
tem. IEEE Trans Nucl Sci 46 : 720―726
10)Fujita M, Ichinose M, van Dyck CH, Zoghbi SS,
まとめ
Tamagnan G, Mukhin AG, Bozkurt A, Seneca N, Ti-
SPECT の画像診断は,当該 QSPECT パッケージ
を用いることで PET に匹敵する定量精度を確保する
ことが可能になった.初回循環移行係数の高い IMP
検査に数理モデル解析を適用することで,安静時だけ
pre D, DeNucci C, Iida H, Vaupel B, Horti AG, Koren
AO, Kimes AS, London KE, Seibyl JP, Baldwin RM,
Innis RB : Quantification of nicotinic acetylcholine receptors in human brain using[123I]5-I-A-85380. Eur
J Nucl Med Mol Imaging accepted, 2003
でなく血管拡張後の局所脳血流量,および血管反応性
11)Fujita M, Varrone A, Kim KM, Watabe H, Zoghbi SS,
を定量評価することができる.一回の検査で二つの血
Seneca N, Tipre D, Seibyl JP, Innis RB, Iida H : Effect
流量画像を計測することも可能であり,血行力学的脳
of scatter correction on the compartmental measure-
虚血の病態診断への利用が可能になった.
ment of striatal and extrastriatal dopamine D2 receptors using[123I]epidepride SPET. Eur J Nucl Med
文
Mol Imaging 31 : 644―654, 2004
献
12)Fujita M, Ichise M, Soghbi SS, Liow J-S, Ghose S,
1)Hapdey S, Soret M, Ferrer L, Koulibaly P, Henriques
Vines D, Sangare J, Lu J-Q, Cropley VL, Iida H, Kim
J, Gardin I, Darcourt J, Buvat I : QUATNTIFICA-
KM, Chohen RM, Bara-Jimenez W, Ravina B, Innis
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200
― 118 ―
4.SPECT を用いた脳血流・血管反応性の定量評価と標準化
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20)Iida H, Ito H, Munaka M, Bloomfield PM, Higano S,
Abstract
Standardization of Rest-Diamox CBF Assessment using SPECT―Value for a Multi-Center Study
Hidehiro Iida, Hiroshi Watabe, Tetsuya Akamatsu, Mayumi Nakazawa, Keisuke Matsubara,
Asako Takeuchi, Michiaki Iwata, Takuya Hayashi, Akihide Yamamoto,
Susumu Miyamoto, Koji Iihara, Chiaki Yokota, Hiroshi Moriwaki,
Kazuto Fukushima and Shinji Fukumoto
National Cardiovascular Center,
5―7―1 Fujishiro-dai, Suita City, Osaka, Japan 565―8565
SPECT has a potential to provide parametric functional images, in a“quantitative”manner, for several
radio-tracers in vivo, as has been widely done with PET. Due to availability of SPECT, in addition to wellestablished delivery!transportation of various radio-ligands, SPECT has an advantage for large-scale clinical
evaluation. It has however been considered that accuracy and inter-institutional reproducibility of SPECT are
not well verified, largely attributed to a lack of general consensus of reconstruction procedures(attenuation!
scatter correction)
. We have recently developed a novel method to reconstruct SPECT images from existing
projection data including appropriate corrections for scatter and attenuation in the object. We have demonstrated that this program is capable of providing accurate radio-distribution in brain and thorax regions, and
also rest-Diamox CBF using split-dose I-123 amphetamine(IMP)
. Various phantom experiments also supported
validity of inter-institutional reproducibility. These data suggested that QSPECT could be a useful tool for quantitative mapping in clinical research, allowing a large scale clinical evaluation even using SPECT cameras from
different manufacturers.
Key words : SPECT, cerebral infarction, cerebral blood flow reserve, quantitation
― 119 ―
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