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平成 25 年度 長崎県立大学地域志向教育研究経費報告書 平成27年3

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平成 25 年度 長崎県立大学地域志向教育研究経費報告書 平成27年3
平成 25 年度 長崎県立大学地域志向教育研究経費報告書
平成27年3月
長崎県立大学
□目次
1.はじめに
2.平成25年度
・・・ 1P
採択研究課題一覧
・・・ 2P
3.研究内容報告
①看護栄養学部 栄養健康学科 教授 田中 一成
「対馬特産緑豆「マサラ」を用いた機能性食品開発の基礎研究」
②看護学部 看護学科
・・・ 3P
准教授 中尾 八重子
「しまの地区特性と行政保健師の地域診断」
・・・ 6P
③経済学部 地域政策学科 教授 山崎 祐一
「地域における異文化共生の礎を築くための地域貢献と経験的英語教育
アプローチに関する研究」
・・・11P
【参考】
1.平成25年度 長崎県立大学地域志向教育研究経費 応募要領
・・・24P
2.地域志向教育研究経費の審査方針
・・・27P
1.はじめに
本報告書は、本学が文部科学省による「地(知)の拠点整備事業」として採択された
「長崎のしまに学ぶ
−
つながる とき・ひと・もの −」のプログラムのなかで、
平成25年度地域志向教育研究として行った研究成果をまとめたものである。内容は地
域特産を使用した機能性食品の開発に関する研究、地域における医療・保健に関わる人
材育成に関する研究、地域における国際化と異文化共生に関する研究の3編であり、い
ずれもこれから地域をいかに活性化していくかを考えるうえでは、重要な視点に立つ貴
重な報告と言える。
大学の役割として教育・研究は古くから言及されてきた。近年ではこれらに加え地域
貢献が重視されつつあり、多くの大学が地域と結びついた特徴あるプログラムを考案し、
地域と共同で実施している。本学としては公立大学の使命を考え、従来からさまざまな
形で地域貢献に関わる教育・研究を実施してきた。今回採択されたいわゆる「しま体験
教育プログラム」は、これを全学的な取り組みとして拡充し、とくに教育においては、
このプログラムを全学教育の必修科目とし、情報技術を活用した学生の学びの転換、す
なわち受け身の学びから主体的かつ能動的な学びへと転換を図ることを目指している。
このプログラムで育った学生が、将来は地域の中核として活躍できることを願っている。
同時に地域の資産や財産を今後いかに活用していくかの意見交換や研究を、今後も地域
と共同して行いたいと考えている。
地域や各自治体の関係者の皆様には、このプログラムの趣旨をぜひご理解いただき、
今後ともご支援をいただければ幸いである。
平成27年 3月
長崎県立大学 COC プロジェクト推進本部
副本部長
1
正木 基文
2.平成25年度
採択研究課題一覧
研究領域
地域課題の解決に
代表者
共同
所属
氏名
看護栄養
田中 一成
資する研究
研究課題
対馬特産緑豆「マサラ」
を用いた機能性食品開
発の基礎研究
地域課題の解決に
個人
看護栄養
中尾 八重子
資する研究
その他事業を推進する 個人
しまの地域特性と行政
保健師の地域診断
経
済
山崎 祐一
地域における異文化共
上で学長が必要と
生の礎を築くための地
認める研究
域貢献と経験的英語教
育アプローチに関する
研究
2
3.研究内容報告
① 看護栄養学部
栄養健康学科 教授 田中 一成
「対馬特産緑豆「マサラ」を用いた機能性食品開発の基礎研究」
3
対馬特産緑豆「マサラ」を用いた機能性食品開発の基礎研究
研究期間 平成 25 年度
研究代表者名 田中一成
共同研究者名 田丸靜香, 田辺賢一
・ はじめに
一般的な豆類である大豆は、脂質代謝改善作用を有することは広く知られている。
同じ豆類に属する緑豆は、血清脂質濃度低下作用や抗菌作用を有することが報告さ
れている。
「マサラ」は、長崎県対馬にのみ生育する緑豆の一種で、古くはぜんざい
などに使用されていたが、現在は絶滅危惧種の一つである。この希少なマサラに関
しては栄養学的、食品学的評価はまったく行われていない。我々は、これまでの研
究でマサラを摂取したラットで血清と肝臓の脂質濃度が低下することを初めて明ら
かにした。本研究では、マサラが脂質低下作用を引き起こすメカニズムを明らかに
することを目的として、緑豆および大豆と比較することにより検討した。
・ 研究方法
実験試料として長崎県対馬産のマサラ,中国産の緑豆,長崎県諫早産の大豆を粉
末状にしたものを用いた。コントロール食は AIN-93G 組成を基本とし,試験食はコ
ントロール食のカゼイン 20%のうち 5%をマサラ,緑豆,大豆のたんぱく質で置換
した。これら飼料を 4 週齢の雄性 Sprague‐Dawley ラットに摂食させた。ラットを
1 週間予備飼育後,飼料と水を自由摂取させ,2 日毎に体重と摂食量を測定した。飼
育開始から 2 週間後に摂食下で尾静脈から採血した。屠殺前 2 日間,糞を採取し凍
結乾燥した後,重量を測定した。4 週間の飼育終了後 6 時間絶食した後,屠殺し採
血した。屠殺時に肝臓,脂肪組織(腸間膜周辺脂肪,腎周辺脂肪,副睾丸周辺脂肪,
褐色脂肪)を摘出し,重量を測定した。血清トリグリセリド(TG),コレステロール
(Chol)
,リン脂質(PL)
,インスリン,遊離脂肪酸およびにグルコース濃度を酵素
法にて分析した。肝臓脂質は Folch 法により抽出し,TG、Chol、PL 濃度を酵素法で
分析した。肝臓における脂肪合成関連酵素である Fatty acid synthase (FAS),Malic
enzyme , Glucose 6-phosphate dehydrogenase (G6PDH) , Phosphatidic acid
phosphohydrolase (PAP)活性,肝臓と褐色脂肪組織における脂肪酸分解酵素である
Carnitine palmitoyltransferase (CPT)活性を測定した。糞中脂肪酸量の測定は,
Jeejeebhoy らの方法に準じて行った。
・ 研究成果
マサラのたんぱく質含量(26%)は,大豆(37%)より低かったが,緑豆(20%)より
高かった。マサラの脂質含量は,緑豆と同程度の 1 2%で,大豆の 16%より著しく
4
低値であった。一方,マサラは,食物繊維を大豆と同等度の 14∼17%含み,緑豆 8%
より多かった。4 週間飼育終了後の体重増加量,摂食量および臓器重量には,すべ
ての群間で差は認められなかった。血清 TG 濃度は,4 週間後に緑豆群でコントロー
ル群より低下する傾向を示したが,マサラ群では影響はみられなかった。豆類の摂
取は,血清 Chol 濃度に影響を与えなかった。血清 PL 濃度は,すべての豆類でコン
トロール群より低下する傾向にあった。血清遊離脂肪酸は,4 週間後に緑豆群と大
豆群においてコントロール群より有意に低値を示したが,マサラ群とコントロール
群との間に差は認められなかった。肝臓 TG 濃度は,すべての豆類でコントロール群
に対して有意に低値を示した。肝臓 Chol 濃度は,マサラ群および緑豆群でコントロ
ール群より有意に低下した。肝臓 PL 濃度には,群間に有意差は認められなかった。
脂肪合成関連酵素の活性には,各群間で有意差が認められなかったが,豆類の摂取
で低下する傾向が見られた。脂肪酸分解酵素の活性に,群間で有意差は認められな
かった。すべての豆類は,糞排泄量を増加させ,特にマサラ群はコントロール群お
よび大豆群に対して有意に増加させた。糞中脂肪酸は,コントロール群に対して緑
豆群で有意に増加し,大豆群でも増加する傾向にあったが,マサラ摂取による影響
は認められなかった。
以上の結果から,マサラは,肝臓 TG および Chol 濃度を低下させた。マサラは緑
豆,大豆と異なり,糞排泄量が多いにも関わらず糞中脂肪酸排泄量に影響を与えな
いことから,肝臓 TG 濃度低下に関与するメカニズムは緑豆,大豆と異なっていると
考えられた。
80
70
60
b
mg/g liver
50
30
20
10
0
コントロ
マ
ール
サ
緑
ラ
大
豆
豆
40
a a
a
肝臓トリグリセリド濃度
糞排泄量
糞中脂肪酸排泄量
Mean±SE (n=6);abc 異なる文字間で有意差あり,p<0.05
マサラが脂質低下作用を有することが知られている大豆や緑豆と同等あるいはそ
れ以上の効果を発揮し、低下の作用機序がそれらと異なることから、マサラを用い
た新規の機能性食品を開発できる可能性が得られ、対馬の活性化に寄与するために
さらなる取り組みを推進していきたい。
5
②看護学部
看護学科 准教授 中尾 八重子
「しまの地区特性と行政保健師の地域診断」
6
しまの地区特性と行政保健師の地域診断
研究期間
平成 25 年度
研究代表者名 中尾 八重子
Ⅰ はじめに
人々の健康は、環境や政策、経済、社会情勢など地域を取り巻くさまざまな条件とも
深く結びついているので、保健師は、地理的な環境や社会資源なども含めた地域全体を
対象として活動する必要がある。また、保健師には、地域を俯瞰的に眺め、人々の健康
な生活に必要なことを総合的に判断することが求められる。この機能は「地域診断」と
称され、地域に暮らす人々の健康と生活の質の向上を目的とした、公衆衛生看護活動を
効果的に展開していくためのプロセスである。地域診断は活動のエビデンスとなり、不
可欠なこと理解しながらも、生活習慣病の増加や介護予防、児童虐待などさまざまな健
康課題に対する事業の実施に追われ、地域診断を敬遠しがちな保健師も少なくない。
そこで、離島のA保健所とともに、管内の地域保健関係職員研修の一環として地域診
断に取り組むこととした。筆者の役割は、研修会の企画・運営および地域診断への助言・
指導と研修会の講師である。本取り組みの実際から行政保健師が地域診断を進めていく
上での各段階における課題を検討する。
なお、地域診断とは、情報収集・アセスメント・アセスメントの分析および統合・健
康課題の抽出・対策(計画)立案・実践・評価、さらなる情報収集へと循環する一連の
過程で、公衆衛生看護の方法であるとともに、1つの技術でもある。
Ⅱ.本取り組みの概要
1.目的
地域保健に従事する職員が関係職員とともに地域診断の一連の過程を実施する
ことで、根拠に基づいた事業展開を図る。
2.目標
1)地域診断の一連の過程が理解できる。
2)地域全体を様々な側面から捉えることができる。
3)保健活動の全体像が理解できる。
4)地域診断の必要性を再認識することができる。
5)根拠に基づいた対策が考えられる。
3.実施期間:2013 年7月∼2014 年 3 月
4.地域診断のすすめ方
1)1グループ4∼5名で、日頃、気になることをテーマとする。
2)コミュニティ・アズ・パートナーモデルに基づき、テーマについて実施する。
7
3)3回の研修会で地域診断の各段階を理解しながら、グループワークで情報収
集から対策までを完成させる。
5.対象保健師
平成 25 年度A保健所地域保健関係者研修会に参加し、地域診断を行った管内市
町村保健師 14 名およびA保健所保健師 5 名
Ⅲ.地域診断の実際と課題
3 回の研修会とグループワークで実施した。その経過を表1に示す。
表1
地域診断の流れ
グループ
全体
・テーマの決定
・情報収集
研修会①
講義:コミュニティー・アズ・パートナーモデルの概要
グループワーク:情報の見直し
・情報追加
・アセスメント
研修会② 各部署の課長参加
・総合分析
発表:「地域診断に基づく我が町の健康課題」
・健康課題の抽出
講義:対策の立案
・健康課題の抽出
研修会③
・対策立案
発表:「健康課題とその対策」
グループワーク:対策の見直し
1.情報収集
コミュニティ・アズ・パートナーモデルでの情報 11 項目を事前に例示していたもの
の、保健医療に関する情報が圧倒的に多く、他は断片的な収集となっていた。また、
報告書や調査結果の冊子などが出され、資料化が不十分なところもあった。行政では、
各種データが保管されているので、行政保健師ならば、それら資料等の入手は容易と
推測する。しかし、偏った収集内容だったことから提示した情報の必要性が理解され
ていなかったと考える。情報項目やその内容だけではなく、地域診断あるいは健康と
の関連を理解することが必要と考える。
グループワークでは、日頃の活動や住民の様子から住民の状況や生活環境などに関
する発言は多いが、情報として記載されていなかった。保健師は、主観的な情報を沢
山持っているが、それらがデータ・情報であるという認識が乏しいと考えられる。日々
8
の活動で把握された事象やこれまでの経験に基づく判断は、情報として重要であるた
め必要な情報として主観的項目も提示する必要がある。
2.アセスメント
コミュニティ・アズ・パートナーモデルでのアセスメントは、情報の項目ごとに簡
潔に概要を示すものだが、情報の分析や情報の繰り返しになっていた。保健師は、地
域のことを知っているが故に、どの情報も省けず、簡潔にできないのではないかと推
測する。また、各項目のアセスメントによって、地域の特徴を把握することになるが、
その地域に長年居住していると、特徴として捉えないことも考えられる。市町村保健
師は、異動のある保健所保健師と地域診断を行うことも一案と考える。
3.アセスメントの分析・統合
限られたアセスメントからテーマの原因や要因などが考えられ、問題だけが列挙さ
れていたので、原因・対処力・影響の3つの観点から分析するようにした。結果、不
足していることだけではなく、活用できる地域のさまざまな住民組織や場・機会が「対
処力」として挙げられた。住民を巻き込んだ活動の重要性や市町村合併後の住民組織
との関わりの軽減など保健師活動のあり方についても考えていた。市町村合併後の保
健師は、住民と遠くなったとの指摘もあるが、活用できる地域組織や団体を列挙でき
るのは、地域をよく知っているからこそといえる。また、社会資源が限られているし
まにとって住民や住民組織は、重要な存在である。
4.健康課題 (健康課題への対策の方向性)
テーマが健康課題に該当するので、
『健康課題の対策の方向性』という表現にした。
記載は、目標的な表現から具体的な事業まで、まちまちであった。保健師は、子ども・
成人・高齢者というライフステージあるいは精神・難病という健康課題別での業務担
当体制にある。そのため、通常は、担当業務に該当する住民を対象に活動しているが、
例えば子どもに関するテーマでも働きかけの対象は全世代だったり、高齢者がテーマ
でも成人期での対策など他の部署との協働の必要性が明らかとなった。地域診断によ
り、健康課題の対策だけではなく業務体制や保健師活動のあり方など、保健師活動の
基盤が見直されることは大きな効果と考える。
5.対策
列挙された対策は、当事者や家族を対象にしたものが多く、具体性にばらつきがあ
った。そこで、ヘルスプロモーションや公衆衛生看護の考え方から「人々」「地域・
環境」に大別し、さらに前者を「ポピュレーションアプローチ」と「ハイリスクアプ
ローチ」の観点から考えることにした。4つの観点から考えたことで、保健師として
の視点が再確認され、また、住民組織や団体との活動も示された。保健師は、日頃、
課題解決型の活動をしているので、対策立案は得意とする部分といえよう。考える枠
組みを明確に、意図とともに提示することが大事と考える。
9
Ⅵ.おわりに
本取り組みは、地域診断の過程の理解をねらいとして、基本的な手順に従い、情報収
集から対策までの過程を行ったものであり、対策の実践までしていないので、しまの地
区特性までに至っていない。今後は、明らかとなった健康課題への対策の方向性や現時
点で考えられた対策を実践する中で、地域特性を考えながら行っていく必要がある。ま
た、地域診断におけるさまざまな能力は、実践しなければ習得できないので、日頃の活
動の中で、繰り返し実践することが重要となる。
今回は、研修として助言者がいる中で行ったが、保健師は、業務もあり時間的に大変
だったと述べており、業務の中で自主的に地域診断を行うことは容易ではないと推測す
る。そのため、保健師が地域診断を実践するには、業務として取り組む仕組みづくりと
地域診断の具体的な手順や様式・記載例などの提示が必要と考える。
10
③
経済学部 地域政策学科
教授 山崎 祐一
「地域における異文化共生の礎を築くための地域貢献と経験的英語教育
アプローチに関する研究」
11
地域における異文化共生の礎を築くための
地域貢献と経験的英語教育アプローチに関する研究
研究期間 平成 25 年度
研究代表者名 山崎 祐一
1.はじめに
英語学習者が、それぞれの学習過程で培ってきた英語に関する知識や技術を、実際の
国際的なコミュニケーションの現場で、どのように役立たせることができるかが問われ
る時代がやってきている。日本国内においても、外国の人との仕事でのやり取りや、生
活における日常的な異文化接触が不可避になってきている中で、学習者は何を学び、何
を習得するべきなのかをしっかりと意識していなければならない。急激なグローバル化
に対応するためには、英語能力を実践の中で通用する戦略的なコミュニケーションスキ
ルへと転換していくことができるかどうかが重要な鍵とも言える。天野(2012)はコミュ
ニケーションの障害として、「言葉の壁」だけではなく「ネットワークの壁」の存在に
ついて言及している。日本人の多くが、異文化の人との交流において制限を受けたり、
適切な評価が得られないといった事態も生じているが、それは、必ずしも単に英語力が
十分でないためとは言えない。つまり、異文化を理解、容認し、かつ自文化についても
臆することなく発信でき、異文化圏の人々と適切に、そして効果的に相互作用をし、目
的を達成できる能力が必要である。また、異文化間コミュニケーションの経験不足は日
本人の大きな課題のひとつでもある。このような課題を克服する方策として、グローバ
ルなコミュニケーションのスキルとマインドを身に付け、自立した人材育成につないで
いく大学生の地域貢献と国際サービスラーニングの活動を、過去 9 年間継続的に実施し
てきた。その中で学習者は英語の学習法について問い直し、語学力とともに異文化圏の
人々との有効なコミュニケーション方法や文化を超えて相互理解する戦略について学
んでいる。
本取組では、アメリカ文化が混在する長崎県佐世保市において、「地域における異文
化共生」を主要なテーマとし、佐世保商工会議所との相互協力体制のもと、本学学生の
地域貢献と産学連携のサービスラーニング活動を展開している。この取組を始めるに至
った背景には、米海軍基地が佐世保市中心街に隣接し、約 6,000 人のアメリカ人が基地
内外で生活しており、アメリカ人客が外食や買い物などで頻繁に商店街に出かけるとい
う事実がある。ところが、商店街からは、英語での接客、文化のルールや礼儀の違い、
支払いなどシステムに関するトラブルなど、アメリカ人客の対応に非常に苦労している
という実情がある。しかし、そういう問題を抱えながらも、市内の商店街からは、アメ
リカ人の集客が、街の経済の活性化や地域における異文化共生につながるという声が上
がっているのもまた事実である。この取組では、本学で「英語」を学ぶ「経済学部」の
学生が、地域の経済の活性化の問題と異文化理解を含む英語学習に同時に取り組むこと
12
ができる。しかも、地域貢献活動とその経験の中から培われる英語運用能力の習得を組
み合わせることにより、「国際的な素養を持ち、地域に貢献できる人材の育成」にもつ
なぐことができる。
この取組と並行し、地域の異文化共生という共通テーマで、英語(外国語)教育分野
においても、大学生の地域貢献やサービスラーニングを継続中である。佐世保市内のア
メリカンスクールや、そのアメリカンスクールと国際交流を実施している同市内の公立
小学校、及び、海外の大学と小学校を主なフィールドとして、大学生が地域貢献活動や
国際サービスラーニングに継続的に取り組むことを、本学学生が「地球規模で考え、地
域に根ざして活動する」という考え方につなぐことを目的とした。英語コミュニケーシ
ョンについて学生が教室で学習した知識や獲得した技術を、地域社会や海外での活動を
通して応用し発展させていくことを、異文化間コミュニケーション能力の養成、英語学
習に対する意欲の向上、そして、実践力のある人材づくりに非常に効果的な方法の一つ
として継続し、大学生の国際交流や英語学習の大きな礎になるような本学の教育にも役
立てることができる。
2.サービスラーニングの目的と意義
大学生によるサービスラーニングの主要な目的は、大学と地域が連携することにより、
大学生が活動現場での体験によって得られた知見を、大学における英語関連科目にフィ
ードバックし、さらに学び、さらに学んだ知識や技術を地域に還元し、それを円循環式
に展開していくことである。そうすることによって、地域のためにもなり、かつ大学生
自身の学習にもつながるというものである。
Troppe(1999)は、サービスラーニングを以下のように定義している。
Service-learning combines community service with structured
opportunities for learning. When designed and implemented
thoughtfully, service-learning:
・engages students in active learning
・enables students to achieve learning goals
・integrates disciplinary theory and knowledge with practice
・deepens understanding of the complex causes of social problems
・creates new knowledge.
また、Toole(1999)はアメリカの National Youth Leadership Council のマニュアルの
中で、サービスラーニングを次のように説明している。
Service-learning is an educational method that involves
students in challenging tasks that meet genuine community needs
and requires the application of knowledge, skills, and
systematic reflection on the experience.
13
いずれも、活動に参加する学生と地域の関連は指摘しているが、視点が参加学生の立場
にたった利点に置かれている。
一方、Sigmon(1994)や Furco(1996)は、サービスラーニングを、
「Reciprocal Learning
(相互学習)を基礎とした経験的教育アプローチ」と定義している。つまり、大学生の
学習が、地域での貢献活動を原点に発するものなので、サービスを提供する側と、その
サービスを受ける側の双方が、ともに「学習する」ということである。これは、自分自
身の learning 目的重視の捉え方と、相手に対する service 目的重視の捉え方という一
方的な円の作り方ではく、絶えず円をふたつ持ち、
「service」と「learning」の両方が
互いに活動を高め、すべての活動当事者にとって意味深いものにすることである。そう
いう意味では、
「海外サービスラーニング」は、相手に対するサービスを基本とする「海
外ボランティアリズム」や、逆に自分自身のためのラーニングを最優先する、最近注目
されている「海外インターンシップ」の先をいく取組と言える。
3.地域の実態に応じたテーマとしての異文化理解と英語教育の実践と成果
本取組では、経験的英語教育アプローチを通して、主に産学連携による地域貢献活動
を基盤に、英語学習と異文化理解につながる本学学生によるサービスラーニングを実践
した。佐世保商工会議所との相互協力体制のもと、「佐世保市内の日米異文化共生と街
の経済の活性化」と「国際的な素養を持ち、地域に貢献できる人材の育成」を主たる目
的とし、地域貢献と産学連携の活動に継続的に取り組んだ。英語教育と異文化理解に関
するこの取組を始めるに至った背景には、
米海軍基地が同市中心街に隣接し、多くのアメリカ人が基地内外に生活しており、ア
メリカ人客が頻繁に外食や買い物などで商店街に出かけるという事実がある。ところが、
商店街からは、英語での接客、文化のルールや礼儀の違い、支払いに関するトラブルな
ど、アメリカ人客の対応に非常に苦労しているという実情がある。そこで、「地域の異
文化共生と国際交流」と「街の経済の活性化」を目的に、市内在住のアメリカ人に対し、
「外国人消費動向調査」を実施し、276 人から得られた回答をもとに集計結果を公表し
た。
毎回の学生たちとの会議には、商工会議所の総務課長、及び担当職員の方たちにも本
学を訪問していただき、佐世保市の商店街のニーズについてヒントをいただきながら議
論を進めた。集計結果から、異文化での生活やコミュニケーションに関する事象を抽出、
分析し、それをもとに佐世保市民がアメリカ人客の応対に活用するための『英語接客表
現集』を作成し、市内商店街を中心に約 150 部を無料配布した。また、配布にとどまら
ず、それぞれの業界特有の英語コミュニケーションの問題点や悩みを聞き取り調査し、
大学や大学生が地域に役立てるよう、さらに改善をしていく計画である。
それに連動した形で、これまでに得られた知見を基盤に、継続的な研究活動、及び地
域連携の取組として、佐世保市内、特にアーケード街を中心に、英語でのインタビュー
14
をもとに、英語で接客の準備ができている「フレンドシップ店」を 50 店舗を選別した。
これに関しては、実際に本学学生と申請者が佐世保市商店街の店舗を訪問、店舗のスタ
ッフと学生が対面で接客に関する英会話実践を試みることによって、「フレンドシップ
店」として可か不可かの判定をした。ここでは、英語での対応力や積極的なコミュニケ
ーションの姿勢等も含め、活動参加学生たちの英語による発信力と実践能力がある程度
確認された。「フレンドシップ店」として可であった店舗には、英語で書かれた「フレ
ンドシップ店」の看板を店頭に掲げ、そうすることによって、アメリカ人客が入店しや
すい環境を作った。
「フレンドシップ店」の決定だけではなく、
「フレンドシップ店」と
してまだ準備ができていない店舗については、改善点についての助言、今後の英語での
応対に関する支援をしていく計画である。
また、継続的な取組として、佐世保市の「異文化共生」と「街の経済の活性化」をさ
らに高めるため、本学学生とともに英語マップを作成し約 100 部を街頭で無料配布した。
英語マップ作成に関しては、学生、佐世保商工会議所、申請者との間で密接に連携を図
り、作成会議の中で、店舗の名称、業種、場所、営業時間、また他の佐世保市内の施設
などを、英語に翻訳した。英語マップの作成、配布に関しては、米海軍佐世保基地の司
令官に本取組の主旨をご理解いただき、基地内でも配布の許可を得るなど、基地内外で
の異文化共生に努めた。大学生の地域における異文化共生や英語学習に対する意識の向
上や国際交流への前向きな姿勢の獲得も認められたが、インタビューやアンケート調査
などにより、さらに観察を継続していく予定である。
参加学生たちも、フィールドにおける英語の経験的な学習によって、様々な意識の向
上について報告している。第一に、英語による発信型コミュニケーションに対する態度
の変化である。Hofstede(2003)は、異文化圏の人々とコミュニケーションを図る能力を
獲得するには、自分とは異なる精神構造の存在に気づき、それを認める「自覚」、異文
化の価値観と自文化の価値観の違いを検討するための異文化に関する「知識」、それら
を実際に応用し、違った環境の中で上手く機能していけるという満足感を体験するため
の「技術」の3つの段階を経なければならないことを主張している。参加学生たちは英
語を学習するだけに留まらず、異文化と自文化のルールを比較しながら、両者の考え方
を客観的に理解し、日本の習慣やシステムを積極的に英語で伝えていこうとする「発信
型コミュニケーション」の態度が身に付いてきた。異文化を尊重しながら、日本の文化
も理解してもらえるよう努力しようという考えを持つようになったことを、活動参加学
生全員が、アンケートの中で言及している。
第二に、地域貢献やサービスラーニングの経験的な活動は、学生たちに英語による積
極的なコミュニケーションの姿勢を身に付けさせるだけではなく、広い国際的な視野を
持ち、異なる文化や習慣を持った人々と偏見を持たずに自然に交流し、共生していく資
質や力量を養成することも可能にしてくれた。異文化であるアメリカの人々を「文化相
対主義」(cultural relativism)の視点で、異文化共存の国際化について意識するよう
15
になったことを、参加学生の数名がアンケートの中で述べている。佐世保市民と同市在
住のアメリカ人の相互理解の可能性について考えることができるようになった。人や文
化間の平等性意識や、そこから発展する異文化共生への意識が向上した。
第三に、異文化間コミュニケーションにおいて、「言葉」の背後にある「文化」に高
い意識を持つことの重要性に気づくようになった。活動の実践の中で英語を共通媒体と
して使用したことで、英語習得の重要性について、さらに強く感じるようになったこと
を、参加学生の全員が、アンケート調査の中で述べている。自分自身の英語力が経験に
よって高まったこと、また、試験の成績では得点は伸びているものの、実践的には上手
く機能できず、今後の学習意欲の向上につながったことについて、数名の学生が言及し
ている。
また、商店街における集客については、すでに数店舗からアメリカ人の客足が伸びた
という報告も受けている。このことに関しては、さらに追跡調査を行い、この産学連携
のサービスラーニング活動が、街の経済の活性化に少しでも役立つことができたのかど
うかを検証する計画である。
本取組については、新聞(読売新聞、西日本新聞、産経新聞、長崎新聞、ライフ佐世
保)に掲載され、またテレビ(NBC)でも放映されるなど、メディアにも幅広く取り上げ
られ、地域からの反響も大きかった。商工会議所の会報誌にも学生たちと申請者のイン
タビューが掲載され、大学の広報にもつながったのではないかと思う。研究の内容と成
果については、全国規模の学会で発表し、本学の地域との連携についても公表した。今
後も、佐世保商工会議所、市内商店街との連携をさらに強固なものとし、異文化共生と
街の経済の活性化、そして学生の英語対応実践能力の向上を目的に、本学学生を中心と
した活動を継続する予定である。商工会議所とは、市内の店舗におけるアメリカ人客に
対する新たな接客、応対の取組や方策について、すでに議論を進めている。本学学生が
教室で習得した英語の知識を、経験的アプローチを通して実践的なコミュニケーション
に活用し、実践に耐えうる英語運用能力と異文化間コミュニケーション能力をさらに高
めていくことができるよう努力したい。
商工会議所の担当者も交え事前会議
佐世保市商店街で英語での応対を確認
16
英語マップを作製、市内で無料配布
本学学生がマップ作製の目的を英語で説明
佐世保の商店街について英語で説明
佐世保の商店街について英語で説明
4.外国語教育に関する地域連携
産学連携と同時に並行して、本学学生が地域における異文化共生と英語学習を目的に、
日本語や日本文化について英語で発信し、同時にアメリカンスクールの生徒たちも英語
とアメリカ文化を発信するというサービスラーニングを実践した。佐世保市内のアメリ
カンスクールである E. J. King High School と、本学で授業交流を 4 回実施した。本
学学生が教室で学んだ英語の知識を、実践的なコミュニケーションに使い、応用する練
習の場にもなったが、英語で自文化を発信し、地域における異文化共生について考える
ことで、学生の学びに対する自信にもつながったことが、学生インタビューの中で述べ
られた。また、アメリカンスクール側からも、同校生徒が英語について発信することが、
学習の動機付けにつながったことが述べられた。この地域連携の取組は 9 年間継続的に
実施してきた。「日米高大連携」という形で、地域のアメリカの教育機関に本学のこと
を、さらに認知してもらいながら、地域における国際交流にも役立てている。
さらには、市内のアメリカンスクールの異文化理解教育のサポートとして、週 1 回の
ペースで(今年度は毎週火曜日)、本学学生たちが実際に英語を使い、自文化発信をし
17
ていくという英語コミュニケーション能力向上のための地域貢献も実践した。アメリカ
文化が歴史的に混在する佐世保市にある本学にとって、「日米学校連携」は両国の親善
と友好にも役立ち、かつ他の県や市ではなかなか体験できない、「地域の特色を活かし
た教育実践」とも捉えることができる。このことに関しては、昨年度、全国学会で発表
し、本学での取組のユニークさを強調した。参加している本学学生からは、この地域貢
献活動が有意義であることや、異文化理解と英語学習の意欲が向上したという意見が出
ている。
「小学校外国語活動」に係る国際交流事前指導分野においても、サービスラーニング
の活動を実現した。活動を継続することで、参加学生たちは小学校英語教育や地域にお
ける異文化共生、及び国際交流において英語通訳の役割を担った。地域の小学校の英語
活動や国際交流に貢献をしながら、学内で学んだものを地域に還元することにより、学
生たち自身も英語コミュニケーション能力をさらに高め、かつ英語学習に対する意識改
革にもつないでいる。
本学で日米高大連携、授業交流
本学学生が小学校外国語活動指導補助
本学学生が江上小学校で国際交流の通訳
アメリカンスクールでの国際交流通訳
18
5.自文化発信と国際サービスラーニングの実践及び成果
Toole(1999)が論究しているように、それぞれの活動内容の中で進められる「サービ
スラーニング」は、学習者が「アクティブラーニング」としてそれらに従事することに
直接結びついている。本取組では、地域における国際交流とサービスラーニングの実践
をテーマに、本学学生が、大学で培った英語力をどのようにしたら社会で通用する「戦
略的なコミュニケーションスキル」へと転換できるかを実体験できるよう、本学とハワ
イ大学カピオラニコミュニティカレッジの学生の相互国際交流活動を実施した。この取
組は、15 年間継続している個人研究の一環として、カピオラニコミュニティカレッジ
の担当教員と私の信頼関係のもとに実現したもので、今年で交流 3 年目になる。単なる
受身的な「語学研修」ではなく、お互いが自文化を相手に伝える「発信型のコミュニケ
ーション」能力の促進を大きな目的の一つとしている。国際交流は、単に「行った、見
た、楽しかった」という目的意識が曖昧なものでは効果が半減してしまう。「英語は知
っているだけでは役に立たない。使えて初めて意味がある」というスタンスを決して崩
さぬよう心がけた。真珠湾攻撃を経験しているハワイ州ホノルル市、また、その攻撃を
発令した針生無線塔が存在する佐世保市、そして、原爆投下を経験している長崎県とい
う両州(県)と両都市の悲劇の共通点を、大学生の平和学習にもつないだ。
この取組の目標に沿って実施した活動の成果として、第一に、参加学生たちは異文化
理解と地域貢献を外国語教育分野に結び付けながら、日米両国の大学生たちがそれぞれ
の地域のサービスラーニングで培った発信力をもって、海外の外国語教育と異文化理解
教育に貢献することができた。英語運用能力に関しても、現地機関より高い評価を得る
ことができた。
第二に、大学生が、「地球規模で考え、地域に根差した活動をする」という前提のも
と、グローバルなコミュニケーションのスキルとマインドを身に付け、お互いの地域文
化、歴史について世界に発信する力の基盤を作ることができた。
第三に、両大学の学生たちが異文化についてさらに興味、関心を抱き、自文化を再認
識するとともに、彼らの外国語学習の動機付けに役立てることができた。参加学生は、
活動終了後、英語学習と異文化理解の不足を自ら反省し、またその大切さに気付くとと
もに、今後の学習に対する意欲が増したことを、活動後のインタビューの中で述べてい
る。この国際サービスラーニング活動を通して本学学生の英語学習や国際交流、そして
地域における異文化共生に関する意識の向上につなぐことができた。
第四に、ハワイの大学生 2 名が 5 月に本学を訪問し、本学や市内の小学校(江上小学
校)でハワイの文化を伝えることで学生たちと有意義な交流を実現させた。太田学長に
もお時間をいただき歓談していただいた。
また、活動中には日本文化や歴史も異文化理解として学び、本学学生たちは自文化再
認識として共に学習した。3 月には本学学生 2 名がハワイ大学カピオラニコミュニティ
カレッジと現地の小学校(ワイアラエエレメンタリースクール)を訪問し、国際交流に
19
取り組みながら、長崎や佐世保、日本文化についてのプレゼンテーションやデモンスト
レーションを英語で行った。本学学生たちは同大学の学長とも面会し、活動に対して高
い評価を得ることができたと同時に、両大学の「国際サービスラーニング」をテーマに
した国際交流のさらなる展開について確認した。以下は、本学学生及びハワイの大学生
がハワイ州ホノルル市と長崎県佐世保市で相互に実践した自文化発信のコミュニケー
ションの実践と国際サービスラーニングの取組の様子である。
(1)本学における国際サービスラーニング①
(ハワイ大学カピオラニコミュニティカレッジの学生たちが長崎県立大学佐世保
校と市内の公立小学校を訪問、本学学生たちとの異文化共生と国際平和を主要な
テーマに、国際交流と平和学習を通してサービスラーニングを実践)
本学でハワイの学生のプレゼンテーション
太田学長と学長室で歓談
本学学生のハワイ文化体験
江上小学校で本学学生が英語プレゼン
通訳
20
真珠湾攻撃発令の針生無線塔と長崎原爆
資料館で平和学習
両大学学生が国際交流で座禅を体験
(2)海外における国際サービスラーニング②
(本学学生がハワイ大学カピオラニコミュニティカレッジとワイアラエエレメ
ンタリースクールを訪問、異文化理解、異文化共生、国際平和を主要なテーマに、
国際交流と平和学習を通したサービスラーニングを実践)
ハワイで本学学生が長崎、佐世保、日本
文化について英語でプレゼンテーション
本学学生の出身地である沖縄についての
英語プレゼンテーション
21
ハワイの小学校で日本文化についての
デモンストレーション
硫黄島の記念碑前で平和学習
(ハワイ・カネオヘ基地内にて)
6.おわりに
我々が住むこの時代がインターナショナルな時代であると言われるようになって久
しい。近年ではグローバルな時代到来と言われるようになり、それが今やボーダレスの
時代へと変化しようとしている。大学生たちが複眼的な視野と異質なものに柔軟な考え
方を持ち、異文化接触が絶えないこの社会を生き抜いていく力を身に付けていくことが
求められている今日、英語教育における大学の責任は極めて大きいと言える。
「TOEIC730
点でなければ管理職に就けない」とか「国際人になるために英語研修をして点数アップ」
といった要求が増えている中、本当にそれだけで、大学生たちが現在声高に叫ばれてい
るこのグローバル社会を生き抜いていくことができるのかどうか再考する必要がある
ように思う。
「グローバル人材の育成」においては、異文化理解を含め、
「英語を使って
何ができるようになったのか」ということが最大のポイントである。特に、自文化を発
信し、異文化の人々と適切に相互作用ができるかどうかということが重要であり、大学
生たちがそれに少しでも近づくことができるような教育実践が必要であると感じる。
「グローバル人材の育成」においては、様々な英語学習の取組がなされる中、実際のコ
ミュニケーションのスキルアップにはあまりつながっていないのが現状のようだ。コミ
ュニケーションの効果性と行動の適切性を十分に意識しながら、積極的に他者とかかわ
っていく姿勢を身に付け、かつ、英語運用能力も含め、異文化理解学習で得られた知識
をコミュニケーションスキルへと転換していくことができるかどうかが、本当の意味で
世界で役立ち活躍できる日本人にとっての課題であると言える。
22
謝辞
これらのプロジェクトに関しては、太田学長、百岳事務局長、平川学生支援課長をは
じめ、事務局、学生支援課のスタッフのご理解とご協力があったからこそ実現できたも
のです。ここに深く感謝の意を表します。
参考文献
Furco, Andrew. 1996. Service-learning: A Balanced Approach Experiential Education.
Expanding Boundaries: Service and Learning, 2-6.
Sigmon, Robert. 1994. Service to Learn, Learning to Service. Linking Service with
Learning. Council for Independent College Report.
Toole, Pamela (Editor). 1999. Academy for Service-learning Tools. Roseville, MN:
National Youth Leadership Council.
Troppe, Marie (Editor). 1999. Faculty Handbook for Service-learning. University
of Maryland, College Park, MD: Commuter Affairs and Community Service.
天野雅晴(2012)『180 日でグローバル人材になる方法』東洋経済新報社
23
【参考】
1.平成25年度
Ⅰ
長崎県立大学地域志向教育研究経費 応募要領
地域志向教育研究経費の目的と領域
1.目的
地域志向教育研究経費は、平成25年度文部科学省「地(知)の拠点整備事業」
に採択された「長崎のしまに学ぶ −つながる とき・ひと・もの
−」
(以下
「事業」という。
)を推進するにあたり、研究の成果を通じて地域に新たな活力
を与え、地(知)の拠点として地域に貢献することを目的とする。
2.研究課題の領域
①「長崎のしまに学ぶ」ための教育の推進に関する研究
ア 「教材の開発」に関する研究
イ 「eラーニング」に関する研究
ウ 「教育効果の検証」に関する研究 など
②地域課題の解決に資する研究
ア「人材育成」に関する研究
●住民協働で地域を支える人材育成 など
イ「健康増進」に関する研究
●地域での健康増進の取り組み
など
ウ「産業振興」に関する研究
●地域資源を活用した食品開発
●物流・流通の効率化 など
エ「伝統文化の継承」に関する研究
●地域の伝統文化の継承とその活用 など
③その他事業を推進する上で学長が必要と認める研究
Ⅱ
申請要領
1.申請数と申請上限額
申請数は、研究代表者(個人研究または共同研究代表者)としての応募は1研究
課題とし、申請上限額は30万円とする。
2.選定人数
選定人数は年間5人以内とする。ただし、共同研究については1研究課題につき
1人とみなす。
24
3.研究期間
研究期間は原則単年度とするが、複数年(2∼5年)とすることができる。
その場合は、採否は単年度ごとに行うので、年度ごとに申請が必要となる。
4.申請者の範囲
当研究経費の申請者は教育・研究・社会貢献を地域志向に改革しようとする本学
の常勤教員(特任教員を含む)でなければならない。なお、他から類似の経費の助
成を受けている者は除く。
5.対象経費について
研究実施にあたっては、パソコン、カメラ、器具など本学既存の備品等を極力活
用
することとし、備品購入はやむを得ないと認める場合に限る。
学会参加のための旅費については、申請した研究に係る成果発表として1回分の
みを対象とする。
6.申請方法と申請期限
(1)応募方法
「地域志向教育研究経費申請書(様式1号)
」により、具体的な活動計画を記載の
うえ、事務局へ提出する。
※
共同研究の場合は、各研究分担者の「承諾書(様式1号)その6」を提出する。
(2)申請期限 平成25年11月11日(月)までに提出する。
Ⅲ
選考方法及び採択
別紙、
「地域志向教育研究経費の審査方針」に基づく。
Ⅳ
研究内容の変更
研究者の役割、研究目的、計画、研究分担者の分担内容・研究費配分額等の変更
及び予算の大幅な変更がある場合は、「地域志向教育研究経費 研究内容変更申請
書(様式1号)その7」を速やかに事務局へ提出する。
Ⅴ
研究成果の報告と公表
全ての研究成果の報告については、
「地域志向教育研究経費成果報告書(様式2
号)その1∼その3」を下記期限までに提出することを必須とする。
共同研究の場合は、研究代表者が取りまとめのうえ報告する。
公表時期について指定がある場合は、可能時期を明記して提出すること。
「地域志向教育研究経費成果報告書(様式2号)その1,その2」は本学リポジト
25
リに掲載するので、(様式2号)その1は別添書式にて、(様式2号)その2は抄録
(研究概要)2∼4枚にまとめ、どちらも E-mail にて提出すること。
(また、
(様式
2号)その2については、掲載可能な論文形式での提出をもって替えることができ
る。)
提出期限
※
平成26年3月20日(木)
学長が特に優れた研究と判断するものについては、公開講座等での研究成果の
報告を実施する。
※
研究成果は、査読付論文として投稿することが望ましい。
※
提出された報告書は、次年度以降の地域志向教育研究経費審査の参考とする。
26
2.地域志向教育研究経費の審査方針
平成25年10月23日
地域志向教育研究経費の審査は、以下の方針により行う。
1.「地域志向教育研究経費」の審査方法
(1)「地域志向教育研究経費申請書」をもとに、副学長(研究担当)が招集する審査
会(副学長及び事務局長)において選定を行い、その内容を考慮して学長が最終的
に採否を決定する。
1次審査においては書類審査を実施し、1次審査を通過した研究課題については、
必要に応じて面接による2次審査を実施する。
(2)審査会は、審査にあたり学部長から意見を聴取する。
また、必要に応じて研究科長、学科長、地域連携センター長等および自治体等
関係機関から意見を聴取する。
(3)複数年度にまたがる研究計画も可とするが、採否は単年度ごとに決定する。
2.審査基準
(1)研究の必要性
本事業に必要な活動であること。
(2)研究成果目標
明確な研究成果目標があること。
(3)研究実施体制等の妥当性
研究を遂行する上で、必要な実績を有する研究者構成となっており、必要な
研究施設・資材等を有し、かつ研究費を適正に執行できる能力を有していること。
(4)研究の倫理性
研究を遂行する上で、適切な倫理的配慮がなされていること。
(5)地域への寄与
研究の成果が、地域に新たな活力を与えるものであること。
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3.申請額について留意事項
(1)消耗品
特別に必要なものは具体的に記載をすること。それ以外は、研究代表者、研究分担
者それぞれ上限 100,000 円とする。
(2)書籍
特別に必要なものは具体的に記載をすること。それ以外は、研究代表者、研究分担
者それぞれ 1 冊あたりの単価は上限 5,000 円とし、冊数は 5 冊までとする。
(3)旅費単価
【例】
<県内・離島>
上五島:(佐世保校発) 6,000 円/回 ※日帰り
(シーボルト校発)12,000 円/回 ※日帰り
五 島:(佐世保校発)16,000 円/回 ※日帰り
(シーボルト校発)12,000 円/回 ※日帰り
壱 岐:20,000 円/回 ※日帰り
対 馬:30,000 円/回 ※日帰り
<県外>
東 京:60,000 円/回(1泊2日)
大 阪:50,000 円/回(1泊2日)
<国外>
ソウル:80,000 円/回(2泊3日)
宿泊数が増減するときは 10,000 円/泊として調整すること。
これ以外の旅費については事務局へ問い合わせのうえ、適正な額を積算すること。
(4)謝礼品
アンケート調査に関しては、アンケート送付時に謝礼品を入れておくようなことは
禁止。回答者にのみ渡すこと。
(5)謝金単価
本学短期臨時職員賃金単価(日給 5,900 円・時給 761 円(専門業務:保健師・看護
師・管理栄養士 時給 1,012 円、栄養士 時給 845 円)に準じる。非常勤講師は 5,000
円/時間とする。
(6)その他
・長期研修(予定)の教員は、研修に専念する義務があるため、申請や研究分担は
原則不可とする。ただし、研修期間にかからない期間で研究計画をたてる場合はこ
の限りではない。
28
平成 25 年度 長崎県立大学地域志向教育研究報告書
平成 27 年 3 月発行
長崎県立大学
経済学部(佐世保校)
〒858-8580 長崎県佐世保市川下町 123
TEL :0956-47-5856
国際情報学部・看護栄養学部(シーボルト校)
〒851-2195 長崎県西彼杵郡長与町まなび野 1-1-1
TEL :095-813-5500
Copyright 2015 University of Nagasaki All Rights Reserved.
無断転載を禁じます。
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