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映像身体の誕生: 19 世紀末~ 20 世紀初頭における映像実

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映像身体の誕生: 19 世紀末~ 20 世紀初頭における映像実
Kobe University Repository : Kernel
Title
映像身体の誕生 : 19世紀末~20世紀初頭における映像実
践と身体の関係 : 博士論文要旨
Author(s)
松谷, 容作
Citation
美学芸術学論集,7:94-95
Issue date
2011-03
Resource Type
Departmental Bulletin Paper / 紀要論文
Resource Version
publisher
DOI
URL
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81002970
Create Date: 2017-03-30
奨学芸術学績集第 7号 樽土橋文要旨
映像身体の誕生
1
9世紀末 -20世紀初頭における則撤実践と身体の関係
松谷容作
小論の民的は、初期映由一 一映幽誕生から 1906
年または 1
907年頃までの映山一 ーと様々な映
像実践のイメージに l
品l
わる諸身体を抽出することである。1
980年代以降隆盛する初期映画研究に
おいて、トムガニングらを代表とする研究者たちは、初期映画では物語映画がドミナントな制作モ
に浸っていない初期映画と観客との出 係を「
アトラクシ
ードではなかったことを指摘し、物語の体制l
ヨンの映画J
としづ概念を軸として考察することを提案した。初期映画そして初期映画と観客との関
係を表象する f
アトラクションの映画」としづ概念は、一方で、物語映画との関係で、未成熟なものと
Lてのみ扱われてきた初期惚た画の地位を見直し、従来の映画史観を修正するための有効なツー
ルとして機能したのであり、他方で、その株主は、物語映聞の幻想に拘束されてし、く近代的主体で
980年代以降
はなく、物語的体制から脱する主体を論じることを可能にした。つまり、その担
正念は、1
の新たな映画と観詰:
との関係を分析する可能性を与えたので&る a
しかしながら、「
アトラクシヨンの映画J
を用いた議論の多くは、イメージと身体の院係に注意を払
うものの、身体そのものの変容や更新なと'については、殆と'恒関心を装ってしも。そうした磁論に
おいて、世紀転換期の臥快実践が 当時の人びとに生じさせた諸々の身体性については、「
アトラ
クションの映画」を図式化し、観客は y ョックを受け、視覚的快楽を草萱するという、画一的な駿論
に陥り、依然として │分な議論がなされていないのである。つまり、初J9映画研究は、従来の映画
研究と同様に、未だ観客四多犠牲を論じ切れていないのである。
そうした背最の下、本論は、テクス卜解釈を越えた、初期映画におけるイメージと身体の多様な
イメー ジを受容する身{
判 、「
イメー ジを産
│刻附を明らかにするのである。詳しく言えば、本給は、f
イメージ化した身体J、「
吏新、変容した身体J
という四つの身体を対象とし、1
9世紀
出する身体j、「
末から 2
0世紀初耳目における彫制並実践の分杭を通じて、 身体が、自動的に 、自発的に 、強制的に変
容し、更新する苦様相を世らの行動行為、身振りまたイメージから摘出することを試みるのである。
そして以上の試みは、次のような手順で構成される。
第1
章では、イメージを受容する身体に注目する。そこではまず「アトラクγ ョンの映画 J
をめ
ぐる議論における三つの問題一一-Q)r
アトラクンヨンの映画」への還元主義② f
物 語Jr
アトラクショ
ンJ
の三者択一的な議論③ 「
アトラク、
ンヨンの映画 J
I
こ対する反省の欠虫トーーを指摘する。そして、
9
0
0年パリ万宣博覧会に登場した、当時の映画理念を具現化した品先端のアトラクシヨ
私たちは、1
口
町、
ずれの側面にも還元され符なし咋月 )
9
1
映画の
ン「
シネオラマ jの分析を通じ、アトラクシヨン、物Z
抽出する。こうした議論を通じ、第¥
f
;
'
i
で
は、初期映
イメージ経験の多係性とそれを受容する身体をJ
画のイメージの若本的構成と映像実践における受容する身体を明らかにする。
次に第2章では、イメージを産出する身体、つまり世紀転換期の映像制作を担う身体について
考察する。ここでは、初期帆画の色に関する従来の議論を反省的に書照しつつ、とりわけ初期映
画に色を付与した女性工員の身体と彼女たちの作業によって立ち上がる娠動する色町関併 につ
いての分析を行う。初期映画における色の反動を 、当時の社会に住まう女性 H
N作者の身体性を軸
94 爾士論文要旨 『映像身体の誕生』
として考察していくことで、私たちは、初期映画のイメージに平む保々な力年戸 ー思想、科学、経
係を明らかにしていく。
済、社会、芸術なと唱力学とそのハラノスー ーと身体の出]
そして第3章では、
イメージ化された身体について考察する。ここでは、 1
9
世紀末の医学、とりわ
け当時櫨盛を極めたフランスのヒステリー研究、神経症研究、外科守における、身体の描出のため
の隙々な映像実践を考察する。こうした映像実践におし、て、身体はどのようなまなざしで摘き出され
るのか。以上の問題意識で考察を押 LiJ!!め私たちは、世紀転換期の映閣の治療器具としての機
能を、 言し
、牧換えるならばイメ一ジ列化
己
岱
された身体を通じて、受容者が感覚的だけでなく、身体運動、精
神 、 思考にまで変容を強4 、ることになる~像の機能を当時の諸言説のなかで浮き彫りにしてし、く。
I
止桂に第4
章では、イメージを通じて吏新、変容する身体について考察する。この章では、映画
胆に人類学で行われた時々の刷卑
的装世を通じた身体cr;変容を詳細に分析するため、世紀転換J
実被の分析とリュミエーノレ社の映像の再考を試みる。具体的に言えば、私たちは、1
8
9
5
年のパリ民
族学博覧会て叶制作された最初期!の人類字却叫卑に注目し、そうした映像を通じて畳容者が喚起する
柑反的な特徴をもっこつの身体一 一順応的身体と抵抗的身体ー ーを明らかにする。そして同時
世紀初
に、二つの身体が共有する筏倣的傾向を指摘する。こうした議論を通じ、 1
9世紀末から20
頭に映像実践との院係の中で自発的に、自動的に、強制的に変容し、更新する身体および身体イ
メー ジを明らかにしていくのである。
(まったにょうさく神戸大学人文学研究科学術~I民主研究員)
"土諭文要 旨 r
映像身体の誕生
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