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サイト・サーベイ の実施

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サイト・サーベイ の実施
Application Note
サイト・サーベイ
の実施
N934xCシリーズ
ハンドヘルド・
スペクトラム・
アナライザの活用
はじめに
サイト・サーベイを
行う理由
サイト・サーベイの必要性は、
トランシーバが動作する周波数
帯やチャネルを管理する必要性
から生じます。国際電気通信連
合(ITU)は国連の専門機関であ
り、192の 加 盟 国 と、700の セ
クタ・メンバ/アソシエートか
ら 構 成 さ れ て い ま す。ITUは、
ライセンスを通じて周波数帯の
割り当てと管理を行うための指
針を定めることにより、世界の
無線ネットワークの「拡大と持
続的な開発を可能にすること」
を目指しています。このために
ITUは、米国の連邦通信委員会
(FCC)をはじめとする加盟各国
の監理機関と緊密に協力してい
ます。FCCの最大の役割の1つ
は、ライセンスを通じて周波数
帯を割り当てて管理することで
す。FCCや他の国の同等の機関
は、周波数帯の監視と管理の基
盤を築くために、サイト・サー
ベイを行います。
無線サービスの急速な拡大、消費者の期待とニーズの増加、無線通信のシグナ
リング方式の複雑化により、大きな価値がもたされました。その一方で、この
ような進化により、周波数帯が密集し、新しいサービスの展開が困難になり、
電波が干渉する可能性がますます高まっています。このような理由で、軍事、
医療、監理機関、無線通信サービス・プロバイダといったさまざまな分野で、
サイト・サーベイが必須の作業となっています。
幸い、無線通信の進化とともに、計測テクノロジーも進歩しています。本アプ
リケーション・ノートでは、新しいテクノロジーによって開発された、革新的
なハンドヘルド・スペクトラム・アナライザ
(HSA)を紹介いたします。その
代表が、Agilent TechnologiesのN934xCファミリです。このファミリには、
20 GHzのN9344C、13.6 GHzのN9343C、7 GHzのN9342Cのモデルがあり
ます。従来のサイト・サーベイ用の機器は、今日のサーベイの要件を必ずしも
満足できませんでしたが、これらの新しいHSAは、同要件を容易に満足でき
ます。
N934xC HSAは、信号強度の測定ツールとして理想的な機能と性能を備えて
います。ケーブルとアンテナの校正係数をロードできるので、ベンダが指定し
たRSSIを測定することも、エミッション強度をdB μ V/mなどの絶対単位で直
接測定することもできます。また、すべてのトレースにGPS座標と測定時刻を
記録することもできます。これらの機能に加えて、オプションのタスク・プラ
ンナを使用することにより、同じ設定とシーケンスで測定を行って、最初のサ
イト・サーベイと直接比較可能なデータを入手できます。
無線通信ネットワークの計画、
敷設、保守を行う組織は、シス
テムが指定された性能を満たす
ように最適化されていることを
確認するとともに、ITUの周波
数規制への適合を確立し維持す
るために、サイト・サーベイを
行います。
2
サイト・サーベイとアプリケーション
スペクトラム除去
サイト・サーベイの主な目的は
以下の2つです。
• スペクトラム除去
• 信号強度マッピング
本書で扱うスペクトラム除去とは、運用するシステムの性能低下につながるお
それがある不要または不法な発射源を検出して除去することです。無認可のト
ランスミッタが存在する可能性があるため、必然的に何らかの形での方向検出
が必要になります。また、無認可のトランスミッタにはTDD
(時分割デュプレッ
クス)方式でスペクトラムを共有しているものもあるため、信号の捕捉と識別
の際に時間的な変化もあり、検出がますます難しくなります。この問題は、認
可されているトランスミッタ
(タクシー、緊急車両、プッシュツートーク機能
を持つ双方向無線機など)でも発生する可能性があります。認可を受けた事業
者は、地域内で一様に送信を行うとは限りません。例えば、タクシー無線の送
信は、都市区域内の通勤時間帯に最も多くなるでしょう。サイト・サーベイの
一部としてのスペクトラム除去はかなり複雑になることがあるので、特定の干
渉源の解析/識別については、このアプリケーション・ノートでは扱いません。
干渉解析とスペクトラム除去の詳細については、アプリケーション・ノート
『Interference Testing with Handheld Spectrum Analyzers』(カタログ番
号5990-9074EN)を参照してください。
信号強度マッピング
N934xCファミリ ハンドヘルド・スペクトラム・アナライザは、CSVフォーマッ
トで測定値を出力できます。製品に付属するPCソフトウェア・パッケージには、
CSVフォーマットのデータを、Open Geospacial Consortiumの国際標準で
あるキーホール・マーキング言語
(.kml)に変換する機能があります。この変換
により、HSAで収集したデータをGoogle Earth
(.kml)またはMapInfo(.csv)
ソフトウェア・パッケージにインポートして表示できます。
アプリケーション
民間と公共の多くの事業者が、日常的にサイト・サーベイを実行して、信号強
度マップを作成しています。
3
サイト・サーベイとアプリケーション(続き)
軍事
軍の周波数管理担当者には、基地、航空機、船舶、戦場での周波数管理を実施
する責任があります。周波数管理は、クリティカルなC3I
(指揮、統制、通信、
情報)システム、状況認識、兵器運搬システムの確実な動作を保証するために
重要です。また、同盟国とのシステムの相互運用性を保証することも重要な任
務です。
図1. 軍事分野で必要とされるスペクトラム解析
では、航空通信の周波数管理を確実に行う必要も
あります
4
サイト・サーベイとアプリケーション(続き)
政府機関と商業事業者
これらの組織は、大規模なイベントにおけるセキュリティや無線カバレージを
保証するために、サイト・サーベイを実行します。例えば、オリンピックの前
には、監視機関と放送局で国際的な協力を行います。イベントは1回限りであり、
放送局は認可されたチャネルで適切に確実に映像を放送する必要があります。
無認可の放送や干渉信号は、ただちに発見して抑制する必要があります。この
ような作業には、基準となるサイト・サーベイが不可欠です。
無線サービス・プロバイダ
無線サービス・プロバイダは、新しいサービスを導入する前に、周波数環境の
基準を定めるためにサイト・サーベイを実施します。サーベイのプロセスは導
入後も繰り返され、設計通りのシステム・カバレージが実現されているかどう
かが確認されます。また、サービス・プロバイダは、通話の切断や収入の減少
につながるシステムの障害や故障をすばやく正確に発見する必要があります。
導入されるサービスが増えるにつれて、干渉が発生する可能性も高くなります。
それによって、最初のサイト・サーベイのデータの重要性もますます高まります。
5
サイト・サーベイとアプリケーション(続き)
医療機関
医療機関で日常的に使用されているモニタ機器や治療機器の中には、20年程
前の無線通信が使用されているものもあります。これらの機器のさまざまな周
波数、変調方式、旧式のシールドによって、機器間に干渉が生じるおそれがあ
ります。さらに、新しい医療機器が続々と加わることによって、干渉が増加す
る可能性があります。多くの医療機器の他に、至るところにある無線LAN、
病院スタッフが使用する無線PDA、緊急車両の双方向無線などが混在する病
院では、周波数管理が必須となります。徹底したサイト・サーベイを行うこと
により、干渉源を特定し、新しい機器が使用可能かどうかを判定するためのベー
スライン・データが得られます。
図2. 病院屋上のアンテナ群
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ハンドヘルド・スペクトラム・アナライザの
サイト・サーベイ向け機能
Agilent N934xCハンドヘルド・スペクトラム・アナライザを使えば、正確で再
ヒント:
スペクトラムの測定中に、直接
測定の対象となっていないハ
イ・パワー信号が存在し、スペ
ク ト ラ ム・ ア ナ ラ イ ザ が オ ー
バーロードになる可能性があり
ます。スペクトラム・アナライ
ザがオーバーロードになると、
歪み成分がディスプレイ上に表
示されることがあります。この
ような歪み信号を、誤って、環
境に存在する信号として認識し
てしまうおそれがあります。ス
ペクトラム・アナライザのオー
バーロードをテストする簡単な
方法は、入力アッテネータを追
加することです。アナライザが
オーバーロード状態ではない場
合、画面上の信号は変化しませ
ん(マイクロプロセッサが減衰
を補正し、信号を実際の振幅で
表示するため)。表示される信
号の振幅が増加する場合は、ア
ナライザがオーバーロードに
なっています。十分な確度を得
るには、信号が変化しなくなる
までアッテネータを追加し、そ
の後さらに10 dBアッテネータ
を追加します。
現性のあるサイト・サーベイを、効率的かつ確実に行えます。これまで、重さ
20 kg以上あるようなベンチトップ型やポータブル型のスペクトラム・アナラ
イザでしか得られなかった性能が、低価格で軽量のN934xCハンドヘルド・ス
ペクトラム・アナライザに標準装備されています。
主な測定仕様
フィールド・エンジニアがサイト・サーベイを行う場合、低レベル信号の検出
が必要になることがあります。N934xC HSAの表示平均雑音レベル(DANL)
は18 GHzで−151 dBmと低く、最小分解能帯域幅は10 Hz、残留応答は−85
dBm未満、入力関連スプリアス応答は−60 dBm未満です。これにより、低レ
ベル信号の検出が容易になります。
高いレベルの信号の存在下で低いレベルの信号を測定することが必要な場合も
あります。3次インターセプト(TOI)が18 GHzで+13 dBmと高いため、ハイ・
パワー送信の存在下でも正確な測定が行えます。
形状
サ イ ト・ サ ー ベ イ の 多 く は 屋 外 で、 さ ま ざ ま な 気 象 条 件 で 行 わ れ ま す。
N934xCハンドヘルド・スペクトラム・アナライザは、MIL規格準拠の堅牢性
(MIL-PRF-28800F Class 2適合)を備え、ファンや通気孔が存在しないデザ
インになっています。また、AgilentのHSAは、バッテリを含めた重さがわず
か3.6 kgであり、明るい太陽光の下でも見やすい半透過型ディスプレイと、暗
い場所でも使いやすいバックライト付きのキーを備えています。このような特
長により、日夜を問わず、厳しい環境でのサイト・サーベイに最適なツールに
なっています。
GPS機能
これまで、サイト・サーベイの際に、測定場所の正確な位置を記録するには、
GPSユニットが別途必要でした。N934xC HSAにはGPSレシーバとアンテナ
が内蔵されていて、位置と時間の情報をデータに付加できるので、最初のサイ
ト・サーベイの精度が高まるとともに、後で測定を行う際の再現性が向上しま
す。また、内部周波数基準をGPS受信信号にロックすることにより、周波数精
度を±50 ppmまで高めることもできます。
7
ハンドヘルド・スペクトラム・アナライザの
サイト・サーベイ向け機能(続き)
図3. スペクトラム・データにマーカ・テーブ
ルとズームイン機能を使用して、dBμV/m単位
のデータとGPS座標を表示
タスク・プランナ
図4に示すのは、N934xC HSAのオプションのタスク・プランナ機能です。こ
れは、サイト・サーベイのプロジェクト・マネージャが、正確な測定シーケン
スを作成するために使用します。これにより、以下のような利点が得られます。
1. 測定が常に同じ方法、同じ順序、同じ測定器設定で行われます。これにより、
場所によるサーベイ・データのバラツキが低減し、サーベイのベースライン・
データを以前のデータと比較できます(通信システムの設置の前と後など)。
2. 経験の浅いオペレータでも、エキスパートと同じ確度と再現性でサイト・
サーベイを実行できます。
3. オペレータが行う測定セットアップが簡素化され、フィールドでのテスト
準備の時間を最大95 %削減できます。
8
ハンドヘルド・スペクトラム・アナライザの
サイト・サーベイ向け機能(続き)
プロジェクト・マネージャが
すべての測定を設計
™ 複数のオペレータおよび測定器
に対して1つの測定セット
™ サイトの周波数特性を正確に評
価するように設計された測定
プロジェクト・マネージャが
すべてのオペレータの全測定
データを解析
プロジェクト・マネージャが
測定シーケンスを設計し、
測定器にロード
™ 状況に応じて、測定を独立に実行す
ることも、
オペレータの操作によっ
て実行することも可能
™ すべての測定器に同じ測定をロード
可能
™ フィールドでの作業内容をプロジェ
クト・マネージャがコントロール
オペレータがフィールドで
測定を実行
™ 経験の浅いオペレータでも高度
™ 1ヶ所で解析することで結果を短時
™
図4. 各使用段階における
N934xCタスク・プランナの利点
™
間で入手
プロジェクト・マネージャが一貫性の
ある結果を解析することにより、系
統誤差を結果から排除
結果の信頼性と再現性が向上
な測定を実行可能
™ 正確で再現性のある結果
詳細については、タスク・プランナのアプリケーション・ノート『タスク・プ
ランナによるフィールド・テストの簡素化 Agilent N9344C/43C/42Cハンド
ヘルド・スペクトラム・アナライザ(HSA)』(カタログ番号5990-6041JAJP)
を参照してください。
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サイト・サーベイの例
本セクションでは、N934xCハンドヘルド・スペクトラム・アナライザを使用
したサイト・サーベイの実施方法の概要を説明します
(注記:具体的なキー操
作 方 法 は、
『N9342C/N9343C/N9344C Handheld Spectrum Analyzer
(HSA)
User's Manual』
(マニュアル番号N9342-90002)
に記載されています)
。
1. 目的のチャネルをロードします。この例では、5つのFMラジオ放送チャネ
ルを使用して、カスタム・チャネル標準をサポートするHSAの機能を説明
しています。HSAには100種類以上の信号標準がロードされていて、容易
に選択できます。
図5. カスタム・テーブルで選択されたFMチャ
ネル
ヒント:
2. チャネル・スキャナで測定間隔を設定します。この例では、ビルの間を歩
きながらサイト・サーベイを行ったので、間隔は30フィートの距離に設定
されました。
.csvの方がメモリ使用量が少なく、
HSA PCソフトウェア・パッケージ
で簡単に.kmlに変換できます。
3. 内 蔵GPSレ シ ー バ が ロ ッ ク を 確 立 し た ら、{Scan Start}、{Logging
Start}、ファイル・タイプ.csvまたは.kmlを選択して、データ収集を開始
します。目的のカバレージ・エリア内を移動します。すべてのルートをたどっ
たら、{Scan Stop}を選択してデータ記録を終了します。
10
サイト・サーベイの例(続き)
図6. チャネル・スキャナのログ・データ
4. USBメモリまたはUSBケーブル経由でPCに.csvファイルを転送し、HSA
PCソ フ ト ウ ェ ア を 起 動 し ま す。 ソ フ ト ウ ェ ア・ コ ン ト ロ ー ル で、
Instruments、KML Convertorを選択し、変換する.csvファイルを指定し
ます。変換が完了すると、.csvファイルのあるディレクトリに.kmlファイ
ル が 追 加 さ れ ま す。PCにGoogle Earthが イ ン ス ト ー ル さ れ て い る 場
合、.klmファイルのアイコンをダブルクリックすると、マッピング機能が
開き、ルートが表示されるとともに、各測定位置にチャネル・パワー・イ
ンジケータが示されます。
図7. Google Earthによるサイト・サーベイの
表示
11
サイト・サーベイの例(続き)
図8. マッピングされた位置ごとのサイト・サー
ベイ結果
5. マップ上の測定アイコンの1つをクリックすると、測定結果が表示されます。
結果には、測定時刻、GPS位置、チャネル番号、周波数、測定帯域幅、チャ
ネル・パワーが含まれています。
まとめ
技術の進歩により、従来使用されていたサイト・サーベイ機器の欠点を克服し
た、フィールドで使いやすい革新的なハンドヘルド・スペクトラム・アナライ
ザが実現されました。Agilent Technologies N934xCファミリには、20 GHz
のN9344C、13.6 GHzのN9343C、7 GHzのN9342Cがあり、ベンチトップ機
器と同等の測定確度、軽量で耐候性の高い筐体、GPS機能、独自のタスク・プ
ランナ機能といった特長を備えています。これらのHSAは、軍事施設、病院、
無線施設、政府または商用の設備導入など、さまざまな場所におけるサイト・
サーベイの最新要件を満たします。
詳細情報
以下に示す各ハンドヘルド・スペクトラム・アナライザ製品ページを開いて、
「技
術資料ライブラリ」タブをクリックすると、その他のアプリケーション・ノー
トを参照できます。
• www.agilent.co.jp/find/n9344c
• www.agilent.co.jp/find/n9343c
• www.agilent.co.jp/find/n9342c
12
www.agilent.co.jp
www.agilent.co.jp/find/hsa
www.agilent.co.jp/find/hsa-videos
契約販売店
www.agilent.co.jp/find/channelpartners
アジレント契約販売店からもご購入頂けます。
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Published in Japan, October 31, 2012
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