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デジタルメコンの風 - JBAH ホーチミン日本商工会

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デジタルメコンの風 - JBAH ホーチミン日本商工会
2014年01~03月号
季刊
Digital Report
デジタルメコンの風
ホーチミン日本人学校入学式
目次
JBAH新年会
P2
JBAH南部回廊カンボジア・タイ視察団
ロンアン省人民委員会との意見交換会
バリアブンタウ省人民委員会との意見
交換会
P6
ホーチミン日本人学校卒業証書授与式
ホーチミン市人民委員会新年会 P3
ビンズン省税関局とのJBAH第三工業部
会との対話セミナー JBAH事務局移転
サン国家主席と面談 P4
中小企業支援委員会「第5回中小企業支援
委員会学習会」開催
JBAH第18回チャリティーバザー
P5
P7
教育・医療・安全委員会「医療セミナー」
開催
メコンの風 1号・2号による ベトナムM&Aの本当の実務
P8 ホーチミン日本商工会(JBAH)/広報委員会発行
※本誌の内容を無断で複写・複製・転載することを禁じます。
掲載の内容についてのご質問などはJBAH事務局までお問い合せください。
Digital Report
デジタルメコンの風
JBAH新年会
(2014年01月10日)
ホーチミン日本商工会は、1月10日、ロッテレジェンドホテルサイゴンにて、「平成26年JB
AH新年会」を開催しました。当日は、在ホーチミン日本国総領事館日田総領事もご出席のも
と、商工会会員及びご家族の皆様をはじめ在留邦人が200名程参加いただきました。毎年恒例
の餅つきイベントをはじめ、当日は「JBAH部会対抗ザ・ゴルフトーナメント」の表彰式も
開催され、優勝した第一工業部会の出場者にJBAHロゴ刺繍入りチャンピオンキャップが贈
呈されました。
バリアブンタウ省人民委員会との意見交換会
(2014年01月20日)
ホー チミン日本商工会は2014年1月20日、バリアブンタウ省人民委員会にて、バリア
ブンタウ省人民委員会との意見交換の場をもちました。バリアブンタウ省 人民委員会側 から
はNien副委員長はじめ計画投資局長、交通運輸局、商工局、バリアブンタウ工業団地管理委員
会、公安局、テレビ局などから局長クラス10名程度が、 日本側からはJBAH山口会長、森
副会長、安栖副会長、金﨑委員長、大林事務局長、バリアブンタウ地域連絡委員会メンバーが
出席しました。バリアブンタウ 省人民委員会との意見交換会開催は今年度2回目となり、前回
の意見交換会を受けて、その後の対応状況に関するフォローアップの位置付けで開催いたしま
し た。工業団地での交通・運輸・インフラ、治安、労働許可証更新手続き、裾野産業誘致など
17項目の要望について一つづつ活発な意見交換を行いました。ま た、意見交換会後には、会
場をブンタウのパレスホテルに移し、懇親会も開催、大いに盛り上がりました。
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2014年01~03月号
ホーチミン市人民委員会新年会
(2014年01月23日)
1月23日、ホーチミン市人民委員会庁舎にて、ホーチミン市人民委員会新年会が開催されまし
た。JBAHからは安栖副会長、藤崎広報委員長、大林事務局長が代表して出席いたしまし
た。本新年会には在ホーチミンの各国総領事ならびにご夫人も参加されました。
JBAH事務局移転
(2014年01月27日)
ホーチミン日本商工会の事務局オフィスは本会第8回理事会での承認を受け、2014年1月27日
(月)より移転することになりました。移転先はこれまでと同じSun Wah Tower 14階で、移
転前のオフィスと接する隣のスペースへの引越となります。 なお、住所・電話番号・ファック
ス番号に変更はございません。 3
Digital Report
デジタルメコンの風
サン国家主席と面談
(2014年02月08日)
2014年2月8日、国家主席府にて、深田大使、ベトナム日本商工会幹部とともに、JBAH山
口会長、永島日本人学校運営委員長、大林事務局長がサン国家主席と面談、2時間にわたり議
論を行いました。
中小企業支援委員会「第5回中小企業支援委員会学習会」開催
(2014年02月19日)
ホーチミン日本商工会 中小企業支援委員会(委員長=渡邉豊・TOWA INDUSTRIAL
VIETNAM)は、2月19日、Palace Hotel Saigonにて、第5回学習会「2013(2014)時事放
談、言いたい放題、聞きたい放題」を開催しました。
当日は約100名 が参加、I- GLOCAL の實原 享之氏より「The 税務調査 その時 あなた
は?」と題して、非常にわかりやすく解説いただきました。前半は講演・質疑応答、後半は渡
邊委員長のコーディネートの下、会員企業が抱えている税務問題についての活発な情報交換を
行いました。
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2014年01~03月号
JBAH第18回チャリティーバザー
(2014年02月23日)
ホーチミン日本商工会は、2月23日、Nguyen Du Cultural Sports Clubにて、「第18回チャ
リティーバザー」を開催しました。午前中はバザー販売、午後は日本人学校、空手教室、ベト
ナムの聾唖学校生徒によるパフォーマンスが披露されました。当バザーのチケット代や売上金
は、ホーチミン市内の病院に寄付され、恵まれない子供達の手術や治療代として使われます。
JBAH南部回廊カンボジア・タイ視察団
(2014年03月03日)
ホーチミン日本商工会事業環境委員会(委員長=坂上勉・丸紅ベトナム)は、
本 視察団では、カンボジア・プノンペンから南部回廊を辿り、タイとの国境付近のポイペト、
バンコク、レムチャバン港を訪問、現地進出事情や交通インフラ、地 域的特色などを視察する
とともに、タイやカンボジアの視点からもメコンならびにベトナムを考察いたしました。普通
では見学が許されない大型船内にも入るこ とができ、参加者からは「非常に有意義な視察団で
あった」「来年の視察団にもぜひ参加したい」などといった声が寄せられました。
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Digital Report
デジタルメコンの風
ロンアン省人民委員会との意見交換会
(2014年03月04日)
ホーチミン日本商工会は2014年3月4日、ロンアン省人民委員会庁舎にて、ロンアン省人
民委員会との意見交換の場をもちました。ロンアン省 人民委員会側からはLam委員長、Ranh
副委員長はじめHa投資計画局長、他、LEAZA、 農業農村開発局、商工局、社会保健局、公
安局、電力会社幹部等から局長クラス10名程度が、日本側からはJBAH山口会長、森副会
長、安栖副会長、金﨑委 員長、大林事務局長、ロンアン地域連絡委員会メンバーが出席しまし
た。ロンアン省での交通・運輸・インフラ、公共サービス、電力、税務、治安などの項目につ
いて一つづつ活発な意見交換を行い、さっそく成果が見られるなど有意義な意見交換会となり
ました。また、意見交換会後には懇親会も開催、大いに盛り上がりました。
ホーチミン日本人学校卒業証書授与式
(2014年03月13日)
3月13日にホーチミン日本人学校の卒業式が行われ、小学部37名、中学部14名が巣立ってい
きました。日田総領事、山口JBAH会長、永島学校運営委員長ほかJBAH関係者が参加し、総領
事・学校運営委員長が祝辞を述べました。
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2014年01~03月号
ビンズン省税関局とJBAH第三工業部会との対話セミナー
(2014年03月19日)
2014年3月19日、ホーチミン日本商工会第三工業部会(部会長=山本和人・大成美術印刷)
はビンズン省税関局との対話セミナーを開催いたしました。ビンズン省税関局からDung局
長、Giang副 局長をはじめ、外務局、ビンズン省工業団地管理委員会代表者が、JBAH側からは
山口会長、山本第三工業部会長、大林事務局長、第三工業部会員が出席しま した。4時間にわ
たる対話方式のセミナーで、税関手続きに関するプレゼンテーションとともに、事前に提出し
ていたJBAH会員企業からの質問についての回 答がありました。なお、ホーチミンJBAH第三工
業部会はビンズン税関局と「税関手続きについての質疑応答及び法律周知プログラム」の覚書
を2013年10月24日に締結しています。
教育・医療・安全委員会「医療セミナー」開催
(2014年03月19日)
ホーチミン日本商工会 教育・医療・安全委員会(委員長=佐野渉・豊田通商ベトナム)は、3
月19日、パレスホテルサイゴンにて、医療セミナーを開催しました。
第1部では三井住友海上ベトナム現地法人・鶴岡 友輔氏より「海外旅行傷害保険の概要」と題
して、第2部ではインターナショナルSOSホーチミンクリニック・富浜 有香氏より「ホーチミ
ン近郊の医療事情・ベトナムでの感染症とその対応」について詳細にご解説いただいたきまし
た。
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Digital Report
デジタルメコンの風
文責:メコン1号・2号
【プロフィール】
メコン1号 職業:弁護士
性別:男、年齢:30代、昼飯:25,000ドン、趣味:勉強
メコン2号 職業:コンサルタント
性別:男、年齢:30代、昼飯:ほっと一息できるもの、趣味:スポーツ観戦
ベトナムM&Aの本当の実務
今回は、メコン1号・2号がベトナムで実際に体験した案件を元に、ベトナム
M&Aの実態を2つお伝えしたいと思います。
第1話
<主な登場人物>
Sさん:ベトナム企業の買収を計画する日系企業の担当者。
Mさん:買収対象のベトナム企業のオーナー
T会計士:日系企業側の会計士(日本人)
L弁護士:日系企業側の弁護士(ベトナム人)
私(メコン1号):日系企業側の弁護士(日本人)
いつものようにホーチミン市のオフィスで仕事をしていた私に、Sさんから電
話がかかってきました。「メコン1号さん、明朝10時にMさんとの交渉アポが
取れました。今日中にハノイ入りしてもらえますか?私は出席できないので、
よろしくお願いします。」
すぐに航空券とホテルを手配し、夜の間にハノイ入りした私にT会計士から連
絡が来たのは深夜3時でした。「メコン1号さん、明日の10時からの交渉がリ
スケされました。Mさんが自宅の改装工事で忙しいとのことです。スタートは
午後6時になりました。」
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2014年01~03月号
「今日ハノイ入りする必要なかったやん。」と思いつつも別に驚きはしません
でした。なぜなら、Mさんが交渉をドタキャンするのは今回が10度目で、予
定の時間に開始できたことはこれまでただの一度も無かったからです。
話の長いMさんとの交渉は、短いときで3時間、長いときは6時間にも及びま
す。交渉の途中でガス欠にならないように、T会計士と私は、新しくできたラ
ーメン屋で大盛りラーメンとチャーハンで腹ごしらえをし、Mさんの待つ工業
団地へと向かいました。
もうすぐ工業団地に着こうかというタイミングでT会計士の携帯がなりまし
た。「はい、Tです。はい、え?はぁ、では、そちらに向かいます。」
会話の内容は聞こえませんが、よからぬ内容であることはわかります。そうで
す、Mさんは、オフィスではなく工業団地そばの自分が経営するレストランに
いるというのです。
Mさんに会えなくては交渉になりません。仕方なくレストランに行くと、L弁
護士もちょうど着いたところでした。「メコン1号さん、T会計士さん、どう
やら中で宴会しているみたいですけど、どうします?終わるまで外で待ちます
か?」
外は雨が降っています。宴会が終わるまで待っていては、何時間かかるかわか
りません。意を決したわれわれ3人はレストランの中に入りました。
中では、50人ほどの男女が楽しそうに食事をしています。その中にMさんを
見つけたT会計士が尋ねました。「Mさん、午後6時から交渉を始めるという
話でしたよね??」
しかし、Mさんは悪びれる様子もなく答えました。「北部の省から役人が視察
にきてるから、接待してるんだ。まずは、食事をしよう。」
「じゃあ、なんで俺たち6時に呼ぶねん!」という突っ込みを我慢し、われわ
れ3人も食事会に参加です。テーブルには山盛りの郷土料理が並びます。食べ
始める前から満腹ですが、食べなければ失礼に当たり、Sさんの顔をつぶして
しまいます。「Ngon lam!」を連発して食べ続けます。外国人なので、みんな
が気を遣って取り分けてくれます。
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Digital Report
デジタルメコンの風
周りを見渡すと、T会計士とL弁護士がいません。そうです、彼らはトイレに
行くふりをして逃げたのです。
どうにかこうにか食事を平らげましたが、この手の宴会が食べ物だけで済むは
ずはありません。怪しい地酒が次々と運ばれてきます。外国人なので、みんな
が気を遣って乾杯しにきてくれます。「Mot, Hai, Ba, Do!」の嵐です。
周りを見渡すと、またT会計士とL弁護士がいません。そうです、彼らはトイ
レに行くふりをして逃げたのです。
どうにかこうにか乾杯の嵐を乗り越えましたが、この手の宴会が酒だけで済む
はずはありません。次はカラオケ大会です。外国人なので、みんなが気を遣っ
てマイクを回してくれます。取りあえず定番のUoc giとテトの歌でしのぎま
す。実はこういうこともあろうかと、事前にファミリーカラオケで特訓をして
いたのです。
練習の甲斐あって大絶賛、乾杯の嵐がもう一巡やってきます。
周りを見渡すと、またT会計士とL弁護士がいません。そうです、彼らはトイ
レに行くふりをして逃げたのです。
どうにかこうにか乾杯の嵐を乗り越えましたが、この手のカラオケが歌だけで
済むはずはありません。後半はダンス大会です。外国人なので、みんなが気を
遣ってお立ち台を譲ってくれます。しかも、おじさん二人が私の太ももを優し
く撫で回してくれます。
周りを見渡すと、またT会計士とL弁護士がいません。そうです、彼らはトイ
レに行くふりをして逃げたのです。
既に時は午後10時を回り、役人達がばらばらと帰り始めました。いよいよ交
渉スタート、われわれ3人は戦闘モードです。
Mさんが言いました。「宴会で疲れたから、上のサウナに入ってからにしよ
う。」
二階のサウナルームへ上がると、まずは薬膳風呂です。10個くらい並んだバ
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2014年01~03月号
スタブの中に紫色のお湯と香草が入っています。入ってみると、程よい湯加減
でぬるっとして心地よいです。さっきのおじさん二人と並んで入ります。そこ
へ、スポンジ型手袋をつけたお兄さんたちが登場です。そう、いかついお兄さ
んが全身を洗ってくれるサービスがついているのです。意外と悪くありませ
ん。
周りを見渡すと、またT会計士とL弁護士がいません。そうです、彼らはトイ
レに行くふりをして逃げたのです。
最後に、ヒノキサウナからのミストサウナで仕上げです。
ようやく事務所に移動すると、既に深夜12時30分。眠くて仕方ありません。
ところが、Mさん「サウナで水分出したから、フルーツを食べたい」と言い出
しました。どこからともなくMさんの奥さんと姪が現れ、マンゴー、ジャック
フルーツ、ザボンなどをむきはじめたではありませんか。知ってのとおり、ジ
ャックフルーツはむくのにとても時間がかかります。
むき終わると時は深夜1時30分。しかし、まだ交渉を始めることはできませ
ん。せっかく奥さんたちがむいてくれたのです。山盛りフルーツをやっつけな
ければなりません。
周りを見渡すと、またT会計士とL弁護士がいません。そうです、彼らはトイ
レに行くふりをして逃げたのです。
30分にわたる激闘の末、大量のフルーツを倒したわれわれ(私)は、ついに
交渉のスタートラインに立つことができたのです。Sさんの案を提示し、説明
をはじめること3分、Mさんが言いました。「眠たいから来週にしよう。」
<ハノイ滞在時間>36時間
<交渉時間>3分
<得難い経験>プライスレス
次号に続く(かも)
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Digital Report
デジタルメコンの風
第2話
<主な登場人物>
H氏:ベトナム企業の買収を計画する日系企業の日本本社の経営企画部長
私(メコン2号):日系企業側のコンサルタント(日本人)
経営企画部のH氏は、過去に、いくつかの案件で一緒になったことのある経営
コンサルタントであるメコン2号と会議をしていました。
H氏は、ベトナムで出資を検討中の現地企業の価値算定が急務となったこ
とから、算定の勘所の確認をするためにメコン2号と議論することにしたので
す。企業価値算定については、経験豊富なH氏が所属する日本本社の経営企画
部が主にハンドルすることになっていました。とはいえ、H氏自身も新興国企
業の買収案件の経験はほとんど無く、様々な固有の難しさがあるであろうこと
を予感していたところです。
メコン2号は、手元のプレゼンテーション資料をめくりながら、新興国での企
業価値評価に関するレクチャーをしていました。
「新興国の企業と企業価値について合意を取り付けるのは、とても難しい作業
です。ましてや、新興国企業が売り手になる場合には、売り手側の企業の論理
やオーナーの個人の論理、あるいは、オーナーの家族の論理が絡み合い、極め
て、複雑な交渉となります。
新興国の路上マーケットで、定価の無いような舶来の布の値段交渉をするよう
なものかもしれないです。」
メコン2号は、発言に重みが付くよう、少し間合いを置いた後、説明を続けま
した。
「価値算定のロジックとしては、日本と同じく、
将来のキャッシュフローに着目する方法、
現時点での資産の価値に着目する方法、
同業他社との比較をする方法、
の3つのうちのいずれかが採用されることが一般的です」
H氏は、手元の資料に目を落としながら、ひとつ、頷きました。
「ただ、新興国企業の場合には、3つのうち、いずれの方法を取っても、なか
なか難しいプロセスになります」
メコン2号は続けます。
「まず、将来のキャッシュフローに着目する方法では、将来のキャッシュフロ
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ーの見極めがとても難しいです。
新興国企業側から経営計画の提出が無かったり、提出されても信頼性に乏しい
ようなことが多いです」
H氏はベトナム法人から転送されてきた対象企業の経営計画書を思い浮かべて
いました。ベトナム法人との電話会議では、ベトナム側の担当者が「こんな適
当な計画しか作らない会社と組むべきなのか」と弱気な言葉もこぼしていたと
ころです。
「また、出資企業側が客観的に将来のキャッシュフローを見極めようと思って
も、事業環境の不確実性が高く、結果として『自分たちが出資すれば、これく
らいの事業規模にしていくんだ!』というような、出資価格からの逆算の決意
表明になるケースも多いです」
メコン2号のプレゼンテーションは続きます。
「現時点の資産に着目する場合にも、例えば、国によっては外国企業が保有で
きない不動産の価値については、現地企業として不動産保有が出来る権利をプ
レミアム評価するべきだ、という交渉になってくることもあります。このポイ
ントは新興国企業が目をつけて狙ってくるところですので、場合によっては、
かなりアグレッシブな要求をしてくることがあります。この点は外資規制が絡
んでくるケースでも同様ですね。」
メコン2号は水を一口含み、更に続けます。
「最後に、同業他社との比較です。
この場合、新興国では、株式市場が未成熟な状況ですので、適切な類似企業が
無かったり、その類似企業の時価総額の妥当性が問題になります。」
一通りのプレゼンテーションを聞き、H氏は内容を咀嚼するように思案して
いました。しばらく会議室に沈黙が流れた後、H氏はゆっくりと口を開きまし
た。
「なるほど。ということはメコン2号さん、新興国企業の価値評価というのは
結局、どういう手法が良いのですかね」
「どの手法が良いかと慎重に検討するだとか、スプレッドシートの数字を細か
くイジり過ぎるようなことはしないで、決断していくことだと思います。
当然、3つのうちのいずれかか複数の手法を使って丁寧に算定するのですが、
そこから先は全社の戦略や対象国の位置づけを踏まえた会社としての肝の据わ
った意思決定の世界だと思います。」
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Digital Report
デジタルメコンの風
「更に、いつの間にか、出資の実現自体が、自己目的化してしまうことにも気
を付けなければなりません。案件を完了させるために、必要以上に高い価格で
出資してしまうようなケースもあります。結局、企業価値を正当化するための
リターンを、スプレッドシート上で設定してしまい、後々に減損処理、という
ような事態も起こりかねません。
出資交渉の担当者が、出資後の運営にもコミットしていくようなことも、1つ
の在り方であるように思います」
メコン2号は、確信を持った言葉で、この日の面談を終えました。
H氏は、メコン2号をエレベータホールまで見送ると、分かったような分から
ないような、少しモヤモヤした気持ちのまま喫煙ブースに入っていきました。
※この文章は、実際の事例を元にしたフィクションです。
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