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セルラー理論と セルラーシステム - Tohoku University

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セルラー理論と セルラーシステム - Tohoku University
「コミュニケーション工学B 」
目次
1. はじめに
2. セルラー理論
セルラー理論と
セルラーシステム
2.1
2.2
2.3
2.4
電波伝搬
セルラーコンセプト
クラスタサイズと繰り返しパターン
クラスタサイズの決定
3. 大ゾーン方式とセルラ方式
4. 周波数利用効率
4.1 周波数利用効率の定義
4.2 情報理論的考察
5. チャネル割当
6. セルラー方式
6.1
6.2
6.3
6.4
6.5
6.6
6.7
東北大学工学部
安達文幸
http://www.mobile.ecei.tohoku.ac.jp
コミュニケーション工学B
1
1.はじめに
携帯電話システムの構成
位置登録
着信接続
発信接続
ハンドオフ
音声符号化
認証
7. むすび
コミュニケーション工学B
3
コミュニケーション工学B
5
2.セルラー理論
2.1
2.2
2.3
2.4
限られた無線帯域幅で日本全国にサービスを提供するに
はどうしたら良いか?
1億人ものユーザに異なる無線搬送波周波数を割り当てる
ことはできない.
もし,同じ無線搬送波周波数を他のユーザに割り当ててし
まうとどうなるか?銅線や光ファイバーケーブルと違って,
無線信号は広がりながら伝搬するので,同一周波数を利用
している他のユーザへ干渉を与える.
この問題を解決するために開発されたのが,1960年代後半,
日本,米国で誕生したセルラーコンセプトである.
セルラー方式では,電波が減衰しながら伝搬するのをうまく
利用している.
コミュニケーション工学B
4
電波伝搬
セルラーコンセプト
クラスタサイズと繰り返しパターン
クラスタサイズの決定
2.1 電波伝搬
定在波の発生
送信点からの距離に依存した伝搬損失
数十から数百メートルの周期で不規則に伝搬損失が変動
するシャドウイング
搬送波波長の半分程度の周期で不規則に受信電力が変
動するマルチパスフェージング
マルチパス
フェージン
グ
電波が前方と後方から到来しているときには定在波が生成
される.
アンテナが移動すると受信信号の強さが変動する.
実際の環境では,定在波パターンは複雑であるので統計
的取り扱いが用いられる.
電波
約1 m
シャドウ
イング
約100 m
Pr  r   ;   2 ~ 4
伝搬損失
基地局
/2
距離 d
距離 r
コミュニケーション工学B
6
コミュニケーション工学B
7
フェージングの発生
50cm×50cmの範囲における電波(2GHz)の強さの変動
の様子.
アンテナをわずか数センチ移動させるだけで電波の強さが
大きく変動する.
電波の強さ (dB)
携帯電話機の周辺の建造物などによって電波が反射され,
様々な方向から端末アンテナに到来する.
複雑な電波強度の分布が作り出される.
携帯機
y (cm)
無線基地局
x (cm)
コミュニケーション工学B
8
•搬送波周波数 2GHz
•素波数 16波
コミュニケーション工学B
9
受信信号振幅の時間変動
アンテナの移動につれて電波の強さが大きく変動する.
この現象はマルチパスフェージングと呼ばれる
電波の強さ (dB)
送信信号波形
時速4km
受信信号波形
10msec
・搬送波周波数
=2GHz
・平面波数N=16
波
10msec
最大ドップラー周波数fD=120Hz (搬送波周波数2GHz, 移動速度64.8km/h)
時間 (sec)
コミュニケーション工学B
コミュニケーション工学B
時速
400km
・搬送波周波数
=2GHz
・平面波数N=16波
11
・搬送波周波数
=2GHz
・平面波数N=16波
電波の強さ (dB)
電波の強さ (dB)
時速40km
10
時間 (sec)
時間 (sec)
コミュニケーション工学B
12
コミュニケーション工学B
13
2.2 セルラーコンセプト
同一周波数の繰り返し利用
電波伝搬の特徴
限られた無線帯域幅(限られた数の無線チャネル)で日本
全国に携帯通信サービスを提供するにはどうしたら良い
か?
これを解決するのが干渉を許容した同一周波数の再利用
電波の強さはおよそ距離の2~4乗に反比例して減衰
→離れたところから発射された電波は干渉しない
→同じ周波数を繰り返して使える
電波の強さはおよそ距離の2~4乗に反比例して減衰するので,同一周波数
のチャネルを十分離れた場所で繰り返して使える.
これをうまく利用したのがセルラー方式である.
近くの基地局で同一周波数を使うと,強い干渉を受ける
Pr  r   ;   2 ~ 4
電波の強さ
電波の強さ
基地局がカバーす
るエリア(セル)
半径0.75-5km
基地局
無線局
距離
強い干渉
基地局
コミュニケーション工学B
干渉
R
14
同一周波数を使う
基地局
D
距離
コミュニケーション工学B
15
セルラーコンセプト
1960年代後半,日本,米国で誕生
充分離れた基地局で同一周波数を使えば干渉が弱い
どのくらい基地局を離せば良いかは,通信品質を確保する
ために必要な信号電力対干渉電力比(SIR)に依存する
広いサービスエリアを小さな無線細胞(セル)に分割し,各セルに基地局を
配置する.
総チャネルをF個(1,3,4,7,9,..)のチャネル群に分割し,各チャネル
群を離れた基地局で繰返し利用する.
いくつのチャネル群にできるかは,電波伝搬環境や無線技術に依存する.
電波の強さ
繰り返しの単位となるエリアに含まれる基地局数(すなわちチャネ
ル群の数F)をクラスタサイズという.
弱い干渉
無線局
R
干渉
同一周波数を使っている
距離
基地局
D
コミュニケーション工学B
16
 K. Araki, “Fundamental problems of nationwide mobile radio-telephone
system”, NTT Rev. Elec. Comm. Lab., 1967.
 荒木:全地域移動通信方式の基本的諸問題,通研実報,16,No.5, p. 843, 1967.
 K. Araki, “Fundamental problems of nationwide mobile radio-telephone
system”, NTT Rev. Elec. Comm. Lab., 16, May/June, pp.357-373, 1968.
 森永ほか:新公衆移動通信方式,信学会通信方式研究会資料,CS-69-68, 1969.
 R. H. Frenkiel, “A high–capacity mobile radiotelephone system,” IEEE
Trans. Veh. Tech., 1970.
 Bell Laboratories, “High-capacity mobile telephone system technical
report,” submitted to FCC, Dec. 1971.
コミュニケーション工学B
17
セルラー方式の利点
複雑な制御技術
同一周波数の繰り返し利用するので,限られた周波数資源
を有効に利用できる
少ない送信電力で通信できる(通信可能時間や待受け可
能時間の長期化)
無線セル半径を小さくすることでより多くのユーザを収容で
きる
位置登録
全てのユーザの位置情報や通信状態を位置登録局(データベース)
に記憶し,各ユーザの位置情報や通信状態を随時更新する.
発着信のつどデータベースへアクセスしユーザ情報を検索する.
ハンドオーバー
移動局の移動によりそれに近い基地局が変わる
移動局と無線通信する基地局を新しい無線基地局に切り替えて通
信を継続させることが必要になる.
屋内ではピコセル(半径数10m)
トラフィックの大きい都市部ではマイクロセル(数100m)
少ない郊外ではマクロセル(数km)
コミュニケーション工学B
18
コミュニケーション工学B
19
2.3 クラスタサイズと繰り返しパターン
あるセルにある周波数を割り当てたとき,その周波数を干
渉条件を満足する一定の間隔を置いて再利用することがで
きる.
繰り返しの単位となるエリアに入るセル数をクラスタサイズ
Fという.
全帯域幅 B
F5
周波数
F1
F2 F3 F4 F5 F6 F7
F=7の例
F7
F1
F4
D
R
2
1 D
F  
セル
3 R 
 i 2  j 2  ij  1,3,4,7,9
F1
F4
F2
F3
F6
F2
F3
F6
F5
F7
F1
F6
F5
F7
F1
F4
F2
F3
F1
F4
F2
F3
F6
F5
F3
F6
F5
F7
F1
全チャネル数N,クラスタサイズFのとき,1セル(基地
局)あたりのチャネル数nはn=N/F
従って,クラスタサイズFを小さくできれば,1基地局あ
たりのチャネル数が多くなる
つまり,全チャネル数Nが与えられているとき,1基地局と通
信できるユーザ数が多くなる
全国サービスを提供できる
F7
F1
F4
F2
0.75-5km
コミュニケーション工学B
20
コミュニケーション工学B
21
クラスタサイズNのとり得る値は離散
値である.
Q  3 3 / 2  R
 2
2
2
 D  (Qi )  (Qj )  2(Qi )(Qj ) cos(2 / 3)

 3(i 2  j 2  ij ) R 2 ( 2)

式(1)と( 2)より
同一周波数のチャネルを使用する基地局間の最小距離D
とクラスタサイズFの関係を求める.
周辺の6個のセルは,それぞれ中心のセルと同じように他
の6つのクラスタの一部である.しかもそれらの120度の範
囲(クラスタ面積の1/3相当)が面積Sのエリアに入っている.
従って,面積Sは合計でクラスタ面積の3倍になる.
Dが大きいとFが大きくなるから,必要な周波数の数が多く
なる.
 S 0  F  (3 3 / 2) R 2

 S  2 S 0  S 0  3S 0

2
 S  ( 3 3 / 2)  D
より
 F  i 2  j 2  ij  1, 3, 4, 7, 9,12, 13, 16, ..

2
 F  (1 / 3)( D / R )
D
D
面積=S
Q
S0
j
i
j
F
1
0
1
1
1
3
2
0
4
2
1
7
2
2
12
3
0
9
3
1
13
3
2
19
3
3
27
4
0
16
4
1
21
2
(3 3 / 2  D 2 ) / 3 1  D 
F
   (1)
3 R 
3 3 / 2  R2
クラスタ面積S
0
コミュニケーション工学B
0
i
0
22
コミュニケーション工学B
23
基地局当たりのチャネル数を増加させる
には?
クラスタサイズと繰返しパターンの例
F  4(i  2, j  0)
F  3(i  j  1)
D  3R
D  2 3R
D
D
F  7(i  2, j  1)
F  9(i  3, j  0)
D  21R
D  3 3R
F=7
D
D
コミュニケーション工学B
24
→
F=4
n=3
n=5
F1 F2 F3 F4 F5 F6 F7
F1
→
F=3
n=7
F2
F3
F4
F1
F2
F3
コミュニケーション工学B
25
2.4 クラスタサイズの決定
受信電力(dB)
クラスタサイズFは,所要品質を確保するために必
要な信号対干渉電力比(SIR)で決定される.
シャドウイングを無視,かつ周辺6個の干渉セルのうち
の1つからの干渉が支配的であるものとすると,セル端
における信号対干渉電力比とRおよびDとの関係は,
周辺6セルから干渉があるから
  S/I  R

6(D  R)  [(D / R)  1]


干渉局
距離
/6
ここで,は伝搬損失指数で,実測によると  3 ~ 4
R
D
である.なお,自由空間なら  2になる.
上式で与えられるが所要SIR以上でないといけない .
干渉セル
最悪点
そこで,以下ではは所要SIRと等しいものとする.
文献: 奥村,進士「移動通信の基礎」,第9章,信学会
コミュニケーション工学B
26
コミュニケーション工学B
27
所要SIRとクラスタサイズN
周辺6セルから干渉があるから
全チャネル数N,クラスタサイズFのとき,1セル(基地局)あ
たりのチャネル数nはn=N/F
従って,クラスタサイズFを小さくできれば,1基地局あたり
のチャネル数が多くなる
所要SIRを小さくできればクラスタサイズFを小さくできる
所要SIRを低減する効果的な技術
  S / I  R   6( D  R )    [( D / R )  1] / 6


1
2
F  3 ( D / R) 
より
2
1
F  (6 )1 /   1
3
ただし,F  i 2  j 2  ij  1, 3, 4, 7, 9, 12,13, 16, ..しか取りえない
アンテナダイバーシチは,受信信号レベルの落ち込みを軽減でき,
その結果,所要SIRを小さくできるので,クラスタサイズを小さくでき
る.大変効果的な無線技術
誤り訂正符号化,自動再送(ARQ)
D
R
コミュニケーション工学B
28
コミュニケーション工学B
29
ダイバーシチ受信時の所要SIR 
アンテナダイバーシチ技術
アンテナダイバーシチ受信を用いるときのBPSKの平均ビッ
ト誤り率Pb()より所要SIR を求める.
同一周波干渉を零平均のガウス過程として近似すると
Pb() は次式で与えられる.
選択合成ダイバーシチ
アンテナ#1
r1(t)
r(t)
受信
データ
受信機
アンテナ#2
r2(t)
● 非フェージング環境:pb ( ) 
● レイリーフェージ ング環境
電波の強さ
(a ) ダイバーシチなし :Pb ( ) 
 1 1
1
1
1 
  
2
1  1/   4
(b) 2アンテナダイバーシチ受信
 
2

 1 

1  1/   3 2
1 
  for Selection combining (SC)
2 
 8
1
 
( 2)

Pb ( )  
1 2/  
 
 1  1  (3 / 2) /   3
 1 
   2 for Maximal ratio combining (MRC)
 2  (1  1 /  )3 / 2  16
アンテナ#1
アンテナ#1
アンテナ#2
時間
アンテナ#2
コミュニケーション工学B
30
 
1
erfc 
2

1
1
Pb ()  1 

2
1  1/  
1

for   1
4
2


1 

1


1
1
/
)

()  
Pb(,2SC
1

2




1
2
/


3 1

for   1
8 2
1  1  (3 / 2) /  
)
Pb(,2MRC
( )  1 

2  (1  1 /  ) 3 / 2 
3 1

for   1
16 2
10
-1
10
-2
31
BPSK伝送を用いるセルラー方式について,レイリーフェー
ジング環境下でのダイバーシチ受信なしとありのときのクラ
スタサイズFを求めよ.ダイバーシチとして選択合成(SC),
最大比合成(MRC)の両方を考えよ.ただし,伝搬指数
=3.44,所要BER=10-3とする.
0
10
コミュニケーション工学B
練習問題
2アンテナSCとMRC受信時の平均ビット誤り率
pb () 
 
1
erfc 
2
2PSK_BE R,AW GN
2PSK _BER,Rayle igh
2PSK_BE R,appr.
BER_SC,Rayle igh
BER_SC,appr.
BER_M RC,Rayele igh
BER_M RC,appr.
no diversity
10
SC
-3
AW GN
No fading
10
-4
10
-5
0
5
M RC
10
15
Average
E b/N0 (dB)
(dB)
20
25
Average
R performances
ith SC
nel.2PSK
2PS
AverageBE
BER
performance wwith
SC and
and MRC
MRC in
in Rayleigh
Rayleigh chan
fading.
コミュニケーション工学B
32
コミュニケーション工学B
33
解答
3.大ゾーン方式とセルラ方式
1基地局(セル)あたりのチャネル数
クラスタサイズFと所要との関係
F
 (dB)
3
10.4
4
13.5
7
19.1
9
21.4
12
24.04
13
24.8
=3.44
1セル当たりのチャネ
ル数n=N/Fチャネル
Nチャネル
所要BER=0.001のときのクラスタサイズF
ダイバーシチなし:所要=24.0dBより,F=12.
SCダイバーシチのとき:所要=12.6dBより,F=4.
MRCダイバーシチのとき:所要=11.1dBより,F=4.
運べる呼量
クラスタ数Fのセルラ方式
大ゾーン方式
ユーザ全体で見た呼の生起はポアソン分布,回線保留時間は指数分
布
セルあたりチャネル数をn (大ゾーンのときn=N) ,呼量をaアーランと
したとき,呼損率BはアーランB式より求めることができる.
呼損率B 
コミュニケーション工学B
34
an / n
n
a
i 0
i
/ i!
(注)呼損率:運ばれなかった呼の割合
1アーラン:1回線を1時間占有した場合の呼量.
コミュニケーション工学B
35
計算例
チャネル総数N=140,クラスタサ
イズF=7とすると,1セル当たりの
チャネル数はn(=N/F)=20となる.
表より,呼損率B=3%のとき,大
ゾーン方式で運べる呼量aは
130.6088アーラン(チャネル使用
率93.29%).
セルラー方式で運べる呼量aは,
1セルあたり13.9974アーラン
(69.99%). →1チャネルあたりの
呼量=0.75×大ゾーン方式
エリア内のセル数は19個である
から,セルラー方式の総呼量は
13.9974×19=265.9506=2.0×大
ゾーン方式
となり,セルラー方式のほうが2
倍だけ多くの呼量を運べる.
Bとnが与えられたときのセルあたりの呼量(アーラン)
B=0.001
0.01
0.03
n=1
0.0010
0.0101
0.0309
5
10
15
20
25
30
35
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
0.7621
3.0920
6.0772
9.4115
12.9689
16.6839
20.517
24.4442
32.5119
40.7950
49.2349
57.8104
66.4837
75.2420
84.0723
92.9645
101.9104
110.9044
1.3608
4.4612
8.1080
12. 0306
16.1246
20.3373
24.638
29.0074
37.9014
46.9497
56.1120
65.3628
74.6843
84.0642
93.4930
102.9636
112.4705
122.0090
1.8752
5.5294
9.6500
13.9974
18.4828
23.0623
27.71
32.4118
41.9327
51.5698
61.2913
71.0775
80.9149
90.7939
100.7076
110.6506
120.6188
130.6088
コミュニケーション工学B
1人あたり,1回平均3分の通話を1日に10回行うものとする.
このときの1人あたりの呼量は3×10/(24×60)=0.02083アー
ラン
収容可能なユーザ数の比較
大ゾーン方式:130.6088/ 0.0208=6279人
セルラー方式: 13.9974/0.0208×19=672人×19=12768人
36
コミュニケーション工学B
37
4.1セルラー方式の周波数利用効率の定義
(1)アナログ方式
4.周波数利用効率
1チャネルあたりの帯域幅をW (Hz),クラスタサイズをF,クラ
スタ内での総帯域幅をB (Hz),そしてクラスタの面積をA
(km2)とする.
Bの帯域幅を使って面積Aのエリア内のF人(1チャネルで1人
なので合計でF人)に通信サービスを提供することであるか
ら,セルラー方式の周波数利用効率は次のように定義でき
B
る.
4.1セルラー方式の周波数利用効率の定義
アナログ方式:人/Hz/km2
ディジタル方式:bps/Hz/km2
4.2情報理論的考察
 
F
(ユーザ/Hz  km 2 )
B A
f
ここで
 S  1セル当たりの面積 (km 2 )

W  1チャネル当たりの帯域 幅(Hz)
とすると
F7
F2
F6
F1
F3
F5
F4
クラスタサイズF=7の例
コミュニケーション工学B
38
コミュニケーション工学B
選択合成ダイバーシチ
B  F  W,A  F  Sであるから,周波数利 用効率は
次式のようになる.
1 1 1
    (ユーザ/Hz  km 2 )
W F S
アンテナ#1
つまり,周波数利用効 率を高めるためには
アンテナ#2
受信機
クラスタサイズFの低減
(F=7→4→3→1),すなわ
ち所要SIRの低減
・アンテナダイバーシチ受信
・基地局のセクタ化
・ビームチルティング
電波の強さ
・セルサイズの縮小
r1(t)
r(t)
・狭帯域化
・クラスタサイズの 低減
39
セルサイズ(半径)の低減
・マクロセル(半径数km)
→マイクロセル(半径数100m)
→ピコセル(半径数10m)
アンテナ#1
アンテナ#2
コミュニケーション工学B
40
r2(t)
受信
データ
アンテナ#1
アンテナ#2
時間
コミュニケーション工学B
42
干渉自体を低減しクラスタサイズFを小さく (F=7→4→3→1)
する技術の採用
セルサイズ(半径)を小さくする
マクロセル(半径数km)→マイクロセル(半径数100m)
→ピコセル(半径数10m)
基地局のセクタ化
半径
1km
100m
x100倍
x100倍
干渉
電波の強さ
ビームチルティング
セクタ化なし
10m
都市部ではユーザ数が多いため,周波数利用効率を高くす
ることが必要である.このため,都市部ではセル半径を郊
外地より小さくしている.
3セクタ
干渉
基地局
同一周波数を使う
基地局
コミュニケーション工学B
都市部
(高トラフィック)
43
コミュニケーション工学B
44
(2)ディジタル方式
周波数利用効率 は,A  S  F , B  W  F , Ctotal  C  F
総帯域幅をB (Hz),クラスタサイズをF,クラスタ内でのクラ
スタ内での総情報レートをCtotal (bps),そしてクラスタ当たり
の面積をA (km2)とする.
総帯域幅Bを使って面積Aのエリアに総情報レートCtotal の
データサービスを提供することであるから,セルラー方式の
周波数利用効率は次のようになる.
B
 
C total
(bps/Hz  km 2 )
B A
であるから次式のよう になる.
 
1Hz当たりの
伝送効率の向
上
・多値変調
・符号化率の
高い誤り制御
f
ここで
S  1セル当たりの面積 (km 2 )

W  1チャネル当たりの帯域 幅(Hz)
C  1チャネル当たりの情報 ビットレート (bps)

F7
F2
F6
F1
F3
F5
C 1 1
  (bps/Hz / km 2 )
W F S
クラスタサイズFの低減
(F=7→4→3→1),すなわち
所要SIRの低減
・誤り訂正符号,ダイバーシ
チ受信
・セルのセクタ化,ビームチル
ティング
セルサイズ(半径)の低減
・マクロセル(半径数km)
→マイクロセル(半径数100m)
→ピコセル(半径数10m)
F4
とすると
クラスタサイズF=7の例
コミュニケーション工学B
45
コミュニケーション工学B
46
4.2情報理論的考察
変調技術からのアプローチ
1チャネル当たりの伝送レートを高くする.このためには,多値数Mの高
い変調を用いる.例えば,2PSK(M=2)の代わりに4PSK(M=4)を用いる.
チャネル容量(干渉をガウス雑音近似する)
C / W  log 2 1    bps/Hz,   P / I  信号対(干渉+雑音) 電力比
変形
C / Wは1Hz あたりの情報ビットレ ートであり, Mレベルの多値変調
Eb / I 0  ( P / C ) /( I / W )  (W / C )であるから
と誤り制御を用いると
C / W    log 2 M

E C
C
 bps/Hz
 log 2 1  b
W
I 0 W 

ここで, は広い意味で符号化率 を表す.
周波数利用効率 は
1 1
(bps/Hz  km 2 )
    log 2 M  
F S
高効率誤り制御
・ターボ誤り訂正符号,
HARQ
ビットレートを一定のままで帯域幅Wを無限大にしたとき
(C/W→0)のEb/I0の極限.


E
C
b  2C / W  1
I0
W
多値変調
M=2→4→16 →256
であるが,ここで 2 x  e x ln 2  1  x ln 2 を用いると
Eb
 ln 2  1.6dB
I0
コミュニケーション工学B
47
所要Eb/I0と伝送効率C/Wの関係
FA/Tohoku University
FA/Tohoku
University
コミュニケーション工学B
48
どんな変調・誤り制御技術を使うかの議論から離れて,純粋
に理論的チャネル容量だけを考える
周波数利用効率を最大化するSIR(あるいはクラスタサイズ
F)が存在するだろうか?
100
C/W [bps/Hz]
10
周波数利用効率
C 1 1
    (bps/Hz  km 2 )
W F S
に
1
容量を最大に
する許容SIR
が存在する
C / W  log 2 (1   ) (bps/Hz)

2
 F  (1 / 3)1  (6 )1 /  
0.1
を代入すると
log 2 (1   ) 1

(bps/Hz  km 2 )
  3
1/  2
S
1  (6 ) 
0.01
-5
0
5
10
15
20
25
30
E
Ebb/I/N0 [dB]
0 [dB]
コミュニケーション工学B
49
セルサイズ(半径)の低減
・マクロセル(半径数km)
→マイクロセル(半径数100m)
→ピコセル(半径数10m)
コミュニケーション工学B
53
5. チャネル割当
×S/3
クラスタサイズF=4~7がスぺクトル利用効率を最大化
セルラー方式では各セルで異なった周波数を利用する.これまで,周波
数を決まった繰り返しパターンで割り当てる場合(固定チャネル割当とい
う)について述べてきた
現在のセルラー方式では固定チャネル割当が使用されている.固定チャ
ネル割当では,各セルで使用できるチャネル数と各チャネルの周波数を
予め決定して配置しておく.しかし,トラフィック量は時間変動するから一
時的にトラフィックが増大したセルでは呼損が発生する.
固定チャネル割当の他には下図のようなチャネル割当がある.
0.2
  3.5
3
log 2 (1   )
1  (6) 
1 2

1
S
0.1
F=3 4
チャネ
ル割
当
7
0
0
5
10
15
20
25
30
35
40
 (dB)
コミュニケーション工学B
54
固定チャ
ネル割当
適応チャ
ネル割当
集中
制御
分
散
制
御
ダイナミックチ
ャネル割当
フレキシブル
チャネル割当
棲み分け学習型
チャネル割当
コミュニケーション工学B
55
コミュニケーション工学B
57
ダイナミックチャネル割当
あるセルで呼が発生するたびに,エリア全体のチャネル使用状況をみて
干渉を生じないチャネルを選択して割り当てる.制御が複雑になるので,
現在はまだ実用化されていない.
フレキシブルチャネル割当
6. セルラー方式
トラフィックがピークとなる時間帯にズレがあることを利用する.予め複数
のセルに共通に使用できるチャネルを配置しておいて,ピークとなるセル
で順次,共通のチャネルを使用する.
6.1
6.2
6.3
6.4
6.5
6.6
6.7
棲み分け学習型チャネル割当
各基地局には全チャネルを割り当てておく.各基地局では,過去に割当
てに成功した確率の高いチャネルから順に検索を行い,許容干渉レベル
を満たすチャネルを使用する.
(文献)
[1] Y. Furuya and Y. Akaiwa, “Channel segregation, a distributed adaptive channel
allocation scheme for mobile communication systems”, IEICE Trans., vol.E74, no.6,
pp.1531-1537, June 1991
[2] I. Katzela and M. Naghshineh, “Channel assignment schemes for cellular mobile
telecommunication systems: a comprehensive survey”, IEEE Personal
Communications, pp.10-31, June 1996
コミュニケーション工学B
56
携帯電話システムの構成
位置登録
着信接続
発信接続
ハンドオフ
音声符号化
認証
桑原監修: “ディジタル移動通信,” 科学新聞社, 第3章の1節-3節, 1992年.
6.1 携帯電話システムの構成
携帯電話システムの構成
携帯電話機は最も近くの無線基地局と通信します.
ホームメモリ局は,携帯電話機がどこにいるかという情報を
記憶します(位置登録) .
交換局は,信号の行き先を制御します.
インター
ネット
中継
交換
局
中継
交換
局
携帯端末と
直接通信
ローカル
交換局
基地局
基地局
インター
ネット
信号の
行き先を制
御
電話機と
直接通信
ローカル
固定電話網
ルータ
携話機の
位置を記憶
ゲートウェイ交
換局
信号の行き
先を制御
携帯電話は最も近くの無線基地局と通信す
る
中継
交換
局
中継
交換
局
ホーム
メモリ局
基地局
ローカル
交換局
電話機の
位置を記憶
基地局
58
携帯電話システムの構成
インター
ネット
インター
ネット
信号の
行き先を制
御
電話機と
直接通信
ローカル
ルータ
ホーム
メモリ局
ローカル
交換局
59
交換局は信号の行き先を制御
固定
電話網
ゲートウェ
イ交換局
コミュニケーション工学B
携帯電話システムの構成
ホームメモリ局は電話機がどこにいるかとい
う情報を記憶(位置登録)
交換局
ホーム
メモリ局
ゲートウェ
イ交換局
基地局
コミュニケーション工学B
信号の
行き先を制
御
電話機と
直接通信
ローカル
ルータ
交換局
ローカル
交換局
基地局
固定
電話網
電話機の
位置を記憶
コミュニケーション工学B
60
交換局
固定
電話網
ルータ
ホーム
メモリ局
ゲートウェ
イ交換局
ローカル
交換局
携話機の
位置を記憶
コミュニケーション工学B
61
6.2 位置登録
携帯電話機のまわりには無線基地局が沢山あります.
携帯電話機は,自分に最も近い無線基地局を探し,それと
通信するようになっています.
携帯電話機は移動します.自分が今どの地域にいるか常
に自動的に調べています.
どうして自分の“いどころ”が分かるのでしょうか?
弱い電波で通信できるので,バッテリーの減りが少なく,充電頻度を少なくできます.
電波
無線基地局
コミュニケーション工学B
62
全ての無線基地局は,それが所属している地域を表わす
信号をいつも送信しています.
いわゆる,電波の灯台と言えるでしょう.
コミュニケーション工学B
63
新しい地域に移動したことが検出されたら,携帯電話機は
ホームメモリ局に報告します.
①今まで地域Aに所在
②地域Bを表わす信号を受信
ここは
地域Aです
③新しい地域に移動したこ
とをホームメモリ局に報告
ここは
地域Bです
④
⑤
交換局
無線基地局
コミュニケーション工学B
64
ホーム
メモリ局
⑥地域A→地域
Bに書き換え
コミュニケーション工学B
65
6.3 着信接続
地域Bに移動したXXさんと携帯電話で会話することにしま
しょう.
固定電話で,XXさんの携帯電話番号をダイヤルします.
地域Bの無線基地局から,xxさんの携帯電話機を一斉に
呼出すのですが,どのよう
に一斉呼び出しするか見て
みましょう.
このようにして,ホームメモリ局は携帯電話機の所在地域を
記憶しています.しかし・・・・
どの無線基地局の近くにいるかまでは分かりません.
では,どうしてその携帯電話ユーザと通話できるのでしょう
か?
11桁の番号
090 xxxxxxxx
しかし,どの無線基
地局の近くにいるか
までは分らない
地域A
地域B
コミュニケーション工学B
携帯であることを表わし
ています
コミュニケーション工学B
66
67
6.4 発信接続
③所在地は
①
電話網
②
ゲート
ウェイ
交換局
どこですか?
ホーム
メモリ局
電話網
⑦
④地域Bです
地域A ローカル
交換局
⑥呼出し
信号
⑥呼出し
信号
④確認
ホーム
メモリ局
⑤
⑤ 地域B ローカル
交換局
⑥呼出し
信号
⑥
ゲート
ウェイ
交換局
地域B ローカル
交換局
⑥呼出し
⑥呼出し
信号
①通信
要求
⑦応答
信号
⑥呼出しXXさんの携帯電話
コミュニケーション工学B
信号
③正規の
ユーザか?
②応答
信号
XXさんの携帯電話
68
コミュニケーション工学B
69
6.5 ハンドオフ
6.6 音声符号化
音声はアナログ信号です.これをデジタル信号(0と1の符号
系列)に変換して伝送しています.
では,どのように変換しているのでしょうか?
携帯電話機は,電波が弱くなると新しい無線基地局を探し
て,次々と切り替えます(これをハンドオフという).
このようにして,携帯電話ユーザが移動していても通話をし
続けることができるのです.
音声符号系列
(1秒間におよそ
8000個の0と1から
なる系列を伝送)
もしもし
ローカル
交換局
無線基地局
ディジタル被変
調信号
マイク
電波に
乗せる
音声
符号器
アナログ
電気信号
…1011010001101…
時間
コミュニケーション工学B
70
固定電話
のどの声帯は音源.これをパルス系列と雑音波形で表します.
人の声に特徴を与えているのが“のどと口”の形です.これを電気
回路で表します.
移動通信
低ビットレートで高品質のハイブリッド符号化である.6.7kbps VSELP(フ
ルレート)や 3.75 kbps PSI-CELP(ハーフレート)が開発されている.
非常に
よい
8
4
2
LD-CELP
GSM
RPE-LTP
CS-CELP
IS-54
PDC
移動通信網 VSELP
PSI-CELP
(3.75kbps)
(誤り訂正を含まない)
1970 80
85
90
年
95
2000
主観評価値(平均オピニオンスコア)
符号化レート(kbps)
16
4
固定電話網
PCM
(G.711)
ADPCM
(G.721)
もしもし
発声(のどの声帯)
ハイブリッド
よい
複雑な
波形符号化
3
普通
有声
音源
単純な
波形符号化
2
分析-合成
無声
音源
悪い
1
非常に
悪い
00
+
調音(のどと
口)
スペクトル
情報
移動
通信
周波数
8
16
話す
32
ビットレート(kbps)
コミュニケーション工学B
64
72
音声波形
聞く
電力
64
71
声帯と“のどと口” のモデル化
波形符号化(64kbpsPCMや32kbps ADPCM)が用いられている.
32
コミュニケーション工学B
周波数
音源の電力スペクトル 音声の音源の電力スペクトル
コミュニケーション工学B
73
6.7 認証
携帯電話には,符号帳駆動線形予測(CELP)と呼ばれる,最新の音声
符号化技術の一種が使われています.
移動機番号を盗み不正に使用する(なりすまし)のを防止す
るため,通信開始時に各移動局が保有している秘密鍵とネ
ットワーク側に登録されている鍵と照合し,正しい移動局で
あることを確認する.
音源を表わす雑音波形を雑音符号帳に記憶しています.相手側も同じ雑
音符号帳を持っています.
会話相手に送るのは音源を表す符号帳番号と“のどと口”を表す電気回路
のパラメータです.
ホームメモリ局
(HLR)
聞こえてくるのは合成音です!
のどの声帯の
震え(音源)を
表す雑音
“のどと口”
を表す電気
回路
#1
#2
ピッチ
再生
音声波形
(のどと口)
LPCパラメータ
LPC
分析
LPC
フィルタ
-
(音源)
聴覚的 符号帳番号
重み付け
#232
雑音符号帳
②認証要求
(乱数の転送)
認証用の
秘密鍵
①認証鍵の読み出し
乱数
認証用
の秘密鍵
③暗号化
演算
③暗号化
演算
④認証応答
(演算値の転送)
⑤照合
自乗誤差最小化
移動局
232回の符号帳サーチ
コミュニケーション工学B
74
7. むすび
セルラー技術は,限られた周波数帯域幅を利用して,多数
のユーザに通信機会を与えることができるすぐれた周波数
利用技術である.
しかし,電波伝搬は複雑で地域ごとにその統計的性質が異
なるので,設計通りの周波数利用効率が得られるとは限ら
ない.
また,セルラー方式は統計論に基づいているため,通信品
質が設計値以下になってしまう場所も存在し得る.
コミュニケーション工学B
85
交換局
コミュニケーション工学B
84
Fly UP