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回転機械の技術的進化 − 低炭素社会を実現するために

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回転機械の技術的進化 − 低炭素社会を実現するために
回転機械セクター
Rotating Machinery Operations
回転機械の技術的進化
− 低炭素社会を実現するために −
回転機械を代表するターボ機械は,回転する羽根車の作用を用いるエネルギー変換機械である.
ターボ機械は,社会基盤を支える「 現代社会の心臓 」であり,環境負荷の低減を目指した低炭素社会の実
現など,社会ニーズに応えた進化が求められている.
超電導ケーブル
小型バイナリー発電装置
極低温回転機械
温泉発電
工場動力源
プロセス用途
廃熱発電
ターボ圧縮機
低炭素社会に貢献しているターボ機械
温泉の源泉からあふれ出した温泉水が,電気を生み
だしている.お湯が電気に? これが回転機械の成せ
る業だ.回転機械を代表するターボ機械とは,回転する
羽根車の作用でエネルギーを変換できる機械である.
械はさまざまなシステムの心臓部に内蔵され,社会基盤
と市民生活を支えている.
低炭素社会においては,これらのターボ機械の極限
的なエネルギー変換効率や高信頼性が役立っている.
工場の動力源,石油化学プロセス用のインフラ設備
さらに,電気抵抗をゼロにすることで大電流を流せる超
としての圧縮機,輸送機械向けの船舶用過給機,再生
電導社会においても,冷凍システムの心臓部として回転
可能エネルギーにおけるタービン発電機など,ターボ機
機械の極限環境下で高い信頼性を得ている.
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IHI 技報 Vol.54 No.4 ( 2014 )
We will
廃熱や未利用熱が電気に
エンジニアが語る
力な磁場を発生させ利用する加速器,③ 核融合炉に使
用される超電導磁石,がある.
工場から排出されている廃熱や温泉の未利用熱など,
超電導現象の実現には,超電導材料を極低温状態に
比較的温度の低い領域の熱エネルギーを有効に活用す
安定して冷却することが必要であり,冷却技術が重要
ることができれば,新たな「 省エネ 」や「 創エネ 」へ
な役割を果たす.極低温回転機械は,この冷凍システ
の貢献が可能になる.小型バイナリー発電装置はこれら
ムのキーハードとなる回転機械である.
を実現するためのものである.
極低温回転機械には,潤滑油を使用できない極低温
そのなかでも温泉熱発電は自然エネルギーを使うた
環境のためにガス軸受,あるいは磁気軸受が採用され
め,発電時には CO2 を排出しないので,低炭素社会の
ている.また,システム効率向上のために極低温部への
実現に貢献する.
熱侵入を低減させるための高断熱構造の採用など,高
小型バイナリー発電装置は,水よりも低い温度で蒸
度の技術的課題の克服が要求される.
発する沸点の低い有機媒体を用いた「 オーガニックラ
ヒッグス粒子の発見に用いられた欧州合同原子核研
ンキンサイクル方式 」を採用している.すなわち,70
究所( CERN,スイス )の大型ハドロン衝突型加速器の
∼ 95℃の温水の熱で作動媒体としての有機媒体を蒸発
冷凍システム用ヘリウム圧縮機は IHI 製で,世界の超
させ,その蒸気力でタービンを回して発電する仕組みに
電導応用技術に貢献してきた.国際熱核融合実験炉プ
なっている.これからも発電性能の向上に向けた開発,
ロジェクトの冷凍システム用超臨界圧ヘリウムポンプも
市場の要望に合わせた媒体の適用などにより,バイナ
製作している.
リー発電装置としての機能向上を目指している.
IHI は,超電導社会実現に向けて,これからも信頼性
向上のための磁気軸受などの高速回転機械技術と,シ
自己熱再生
ステム効率向上のため高断熱技術などの高度化を図り,
世界の超電導応用技術に貢献していく.
化学プロセスの省エネルギー化として自己熱再生法
が注目されている.自己熱再生法は,自己熱をもったプ
ロセスガスを再び断熱圧縮し,高温の吐出ガスの廃熱
を直接再利用することで,化学プロセスの消費エネル
ギーを大幅に削減する技術である.
以上のように,低炭素社会を実現するためには回転
機械の技術的進化は必要不可欠である.
エネルギー変換機械としての回転機械は,空力性能
のさらなる向上のみならず,モーター・発電機技術,イ
自己熱再生法に使用されるターボ圧縮機は,化学プ
ンバーター技術などを含む全体システムとしての効率向
ロセスに応じて処理ガスの性状がさまざまなこと,廃熱
上,ライフサイクルコスト削減のための信頼性向上など
の再利用に伴う処理ガス温度が高温であることなどか
の技術の高度化を図り,環境負荷を低減し,低炭素社
ら,インペラ,シールなどの構成部品の耐食性や耐熱
会の実現に貢献していく.
性,処理ガスの大気漏えい防止のためのシール技術な
どが重要となる.豊富なターボ圧縮機の各要素技術を
化学プロセスガスへも発展的に応用,活用することで,
自己熱再生法用圧縮機の拡大を目指している.
超電導社会のキーハード
超電導現象のなかでも「 電気抵抗がほぼゼロにな
る 」特長を活かしたものとしては,① 低損失で電力を
輸送する超電導ケーブル,② コイルに大電流を流し強
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