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2.2MB - 地質調査総合センター

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2.2MB - 地質調査総合センター
一!4一
静岡県清水市における地震予知のための
水位および水質観測井の設置について
加藤
完・衣笠善博・村下敏
夫・垣見俊弘
(環境地質部)
池田喜代治(化学課)
1はじめに
近年地震予知に関する研究が進歩し大地震は断層運
動によって惹き起されそれは蓄積された盃の解消によ
るものであり歪蓄積が限界に達した領域では地殻変
動・地震波速度・地磁気・地電流・地下水の異常変化を
一`4則.
活
断
層
_叫紬“
婁蓬奈
」魯養1二奉
赤、軍ミ〕
''占'{
・^'岨眺み㌶
“
ダイラタンシーによる地震発生
(ショルツらによる)
第4段階
前兆段階地
第1段階
震
第2段階
第3段階
第5段階
地震波速度比
地殻変動
ラドン放射
電気抵抗
地震の数
示すものと言われている.第'1図にショノレツらによる
ダイラタンシーモデルによる地震発生メカニズムとダイ
ラタンシーによる物理量の変化を示した.
これら前兆現象の一つとして地下水の挙動の変化があ
げられ大地震の前に地下水位が変わったり水温の変
化や水カミ濁ったりすることが昔から
経験的に言われている・近年目本
ダイラタンシーによる物理量の変化
水の移動を考慮に入れた場合
〃入れぬ場含
餉兆俄脂
銘1搬脂
簗2放陥
蟻3般脂
蟻4股階
第5般階
応力の突然の降
水の移鋤を考慮
弾性歪の留欄
1二入れたモデル
グイラタンシー
水の流入
地璽
下それにひき
つづいて余塾
がお二る
断層地榊二おけ
ダイラタンシー
水のξ鋤を考慮
聚吸
る不安定蜜形お
弾性璽の留梱
i二入れぬモデル
応力の突然の脾
およぴ細れ目の
「なκれ的な」
る繍分的な応力
よぴそれをとリ
まく地蜘二おけ
飽災
つづいて余渓
がお二る
の鯛放
では1946年の南海地震(M=8-1)
の前に第2図の示したように紀伊
半島・四国南岸の井戸の水位が変化
したり濁ったことカミ報告されてい
る.また1964年の新潟地震(M=
7.5)の前に農林省の地盤沈下観
測井群(19本中5本を除く)が地
震の約9時間前から特異のマイナス
の抜け上がり(0.3∼0-4mm/9h)や
地震の約1目前からガスを噴出した
観測井が1本あったことが報告され
ている.
外国の例では1966年のソ連タシケ
ント地震(M=5.5)の前にラド
ン濃度・水位・水質・水温が長期お
よぴ短期間にわたって変化したこと
が知られ系統的に研究されている.
中国でも1975年の海城地震(M=
7.3)の予知には他の前兆現象と
共に第3図に示したように水位・ラ
ドン濃度の変化が用いられた.
今回いわゆる駿海湾地震の観測体
制の一環として地質調査所が静岡県
清水市庵原中学校敷地内に深度50
mの水位観測井およぴ深度60mの水
質観測井を掘さくしたので報皆する.
2観測井付近の地形および地質
観測井は気象および人工的な変化
の多いと思われる第四紀の滞水層を
抜けて第三紀の滞水層が深度50m
以浅に当たるような位置を選んだ.
第1図ダイラタンシーによる地簸発生のメカニズムと物理量の変化
下それ1二ひき
一15一
φ、十㌻べ{
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ホブ"、、由㌧
〆Lし良
ノ浦
}。ノー
。小室戸
'佐賀
下田
.布
第2図南海地震前の地下水異常分布図
矢印は地下水の下降を示す.半黒丸は水がにごったことを
示す(水路要報による)
選択された庵原中学校は扇状地堆積物上にあり北方の
山地は新第三紀中新世の富士川層群の下部層で砂岩
シルト岩・礫岩の互層からなる.これらの地層は湊透
率が小さく地下水系を大きく支配しない.揚水試験の
結果透水係数は1.09×10-4∼2.65x10-5と低い値を
示している.近くを流れる庵原川は天井川を形成し水
量は大きくない.第4図に観測井の位置と観測井付近
の地質柱状図を第1表にそれらの水質を示した.
◎
ぶ蕾も
⑳輪⑳篭
叙ム⑳Φg
⑳9
嚇
⑳⑳め
盆曇
版尺章
⑳⑳
星⑳
◎帥亭
唯⑳軋寧
屯
◎、
めめめ6、
歩
め。
海城震前
地下水異常分布図
&愈
曳船
タ
3掘さ<
3-1水位観測井
工事は株式会社目さくにより実施され自動車搭載式
101型パーカッション掘さく機を使用して深度50mま
で口径350m血のワンビットで掘さくしカッティング
と電気検層の結果より第三紀の砂層中にスクリーン
第3図海城地震直前の地下水異常の分布.丸印右下の数字は井戸の
数矢印は地下水の上昇又は下降を示す.半黒丸は水がにご
ったり泡洗出るなどの異常を示す
(中国地震考察団講演論文集による)
(44.5∼50㎜)をセットし口径200m㎜のケーシング
で仕上げた.
第5図に地質柱状図と電気検層図を示した.揚水試
40m①②
永観永観③
位測質測廃水
井井原源
.一..井
20一一二
卌
一20一・
一40
一60
頃!許
切
庵
。3
川
原速
川高
名
清東4
水
姥
050\
第4図観測井付近の位置図
地質柱状図
④
清3
水母
市井
農
協
写真1自動車搭載式101型パーカッション掘さく機
一16一
策1表
丰
観測片付近の井戸の水質およびラドン濃度
片戸名
水脈鶴測炸
庵原水源川二
農協3亭片
水沮
アルカ
リ度
㌲
㌷
C「
偐
偐
㈬
㈴
㈶
偐
㈬
㈵
㈵
PP㎜
偐
偐
電導度
M〃/㎝
㈹
㈱
㈳
ラドン濃度
Rn(×10■10Cヨ//一
㌵
5.19∼5.37
分析は地賃調査所化学課による
箱2表音場ノ大.…式蟻責糸占第と{ノ」κ壬、丈雀見泌』川=)
水理常数
遊水蛙係数
解析法
遊水係数
Tm2/sec
連続Theis
1.59×10■4
9.10X10-6
阿復Jacob
平均f直
Kc㎜/s㏄
7.96×10■6
j担続Jacob
[口1復Theis
1.8×10-4
6.12×10-6
6.5×10■6
7.42×1O■6
1.22×10-4
1.3×10■4
1.48×10■4
箔3表揚水試験結果(水脈観測炸)
水理術数
透水'嚢係数
解析法
透水係数
Tm2/sec
Kcm/sec
連続Theis
3.98×10-6
2.65×10■5
連続Jacob
22.3×10■5
1.49XI0'4
1n1復Theis
回復Jacob
平均値
3.98×10■6
3.52×10■5
1.64×1O-5
2.65×10■5
2.35×10■吐
1.09×10■4
験は段階揚水試験・連続揚水試験・水位回復試験を実施
しその結果を第2表に示した.
3-2水質観測井
工事・掘さく機も水位観測井と同じで水位観測井よ
り東南150m離した位置で深度60mまで掘さくしカッ
ティングと電気検層の結果より第三紀の砂礫層・砂混
じり粘土層中にスクリーン(43.5∼60m)をセットし
n径200m皿のケーシングで仕上げた.第6図に地質
柱状図と電気検層図を示した.揚水試験の結果は第3
表に示した.
4観測機器
4-1水位観測井
掘さく完了後コンクリートブロックにて観測小屋を建
て内部に第7図の如く中浅測器製の水位計・水温計・
比抵抗ρΩ・皿rヨ里.2.蝸
㈰
㌰
㌵
02030{050箇070畠090100110120130140
出…皿■…
凹u」⊥
岨色帖1、
化馴舳由
く一一一一一一田一〇.4m
副一1Iam
摠
漉
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前嶺色帥〒1
」1-1則1庄
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山●叶但。
o'由○自
裡色砂利
一1、一一一
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\.
直一〇
鞘色乾砂
'百.
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一60.
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1舳砂利
ノ
竜曲混'1
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一
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洲1
■、
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㌧
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一〇三
生目
舳.1趾'1
砂利
ノー一一
第5図地質柱状図
電気検層図(水位観測井)
蝸
一P
o■
美ト
描色帖止
血凸;冊11
砂利
競鰍
鴫袖鰍利
他111砂
背芭柚止
音色砂質
帖上
織■」
鱗色。
荒砂
荒砂睨■1
砕利粘土
含む
粘土肥1」
荒砂
褐色
十
青色
第6図地質柱状図
斑甑間隔
電気検層図(水質観測井)
雨量計感音
度計感音
気圧計感
水位討感部
測定項目水位水温雨量湿度気圧
0m
=ヨ≡二'^■■
宣^←…・『
』肩
水
丁
=一〇一■.一
10
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位
第
1'一■一`一一1一'1■1'
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四
罫
計
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雨
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水
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層
6打点記録計
深度
カッティングサンプル
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水
第7図
6
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雪白雲。
3j30口3月29日h2h2h2】12胎h811
7230
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目
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湿
度
フ(k1'晶仙
言罵§■・〇一〇
o○但百`百齪e
、
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10皿回
積算雨鐙
O%5CユO皿93
水位観測小屋内の温度計(左)と6行
記録計(看)
写真6
タ
デ
井
田
源
上皿
イ
穴
フ
第8図
水位観測小屋内の水位計
・写
シグ熔接
シ
ケ
写践層
中
一騎
・真
写
mbOmm
一18一
深0m
度
㈰
㌰
引
観測工員H
自動観淑11ラドン水温電叙伝導率pH
定期観測水中化サ成分溶存ガス等
凄第
輩一.二
臣層
俸
摩
ド
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言一■」
辮A
テヒメーターシステム
水
質
自
動
観
洞1」
装
協B
流し
Aラドン連続楓」定器
(アロカEQM-i01〕
ラドンガスの。線量〕
連続測定
B自動水質観湖■麟置
(東亜電波工業WQ-52T〕
水温電導度pH
連線測定
排水
■一ク/メータ
アンブアンプト20^
■戸夕■メータ
寛導度測定鴛鴻度拡大OUT
アンプアンプー_刎^
/メータ/メ_夕
pH測定FH拡大OUT
アンブアンプ4一別弘
軌H
坤弧
度極
排水
振動子
超驚器
温度センサー
第9図水質観測井用観測機
雨量計・湿度計・気圧計をセットし6打点記録計にて
自動記録している.それぞれの記録は第8図に示した
ように40回巻きのチャートに打ち出される・
器第10図水質自動観測装置
検出し同時に水温・流量をも計測する.水質自動観測
装置は第10図に示したように水温・電気伝導度・PHを
計測している.
4-2水・質観測井
掘さく完了後プレハブ製の観測小屋を建て内部に第
9図のように深度40mにセットした水中ポンプにより毎
分5Z揚水しアロカ製水中ラドン連続測定器EgM101と東亜電波工業製水質自動観測装置W9-52Tに送
水している.ラドン連続測定器は地下水中のラドンガ
スのα線量をZnS(Ag)シンチュレーション検出器で
5テレメーターシステム
第11図のように各種水質観測機器より得られたデータ
を安立電気製のH-300型テレメーター子馬装置とH
-100A型テレメーター親局装置を使用して清水市よ
り川崎市の地質調査所まで伝送するものである.伝送
系は日本電信電話公社D-1・2W方式の専用回線を使
用し伝送速度は200bit/secであり周波数分割によ
計ギ㌃ピ
(子馬)
時計
1・ll11戸
匿ト、窺局、
災禰イジ
貿作表
第11図テレメーターシステム
(租理)
写真7
水質観測小屋内のラドン連続測定器(右)と水
質自動観測装置(左)
一ユ9一
年
井を東海地域に広域的に配置することが必要である.
また今回のテレメーター観預、帷水質観測井のみにつ
いて実施されたか総合観測のためには水位観測丼をも
テレメーター化する必要がありさらにそのデータを短
期予知に役立てるためには現在のオフライン.バッジ
処理方式をオンライン・白動処理化することが必要な
ことは言をまたない・私達は経験も浅く微力である
が大方の御援助を得て上記のような目標に近づくよ
う努力したい.
おわりに観測井設置のため敷地を提供して頂いた庵原
巾学校・清水市・静岡県の関係者各位に厚くお礼申し上
げます.
参考文献
ユ)水路局(ユ948):曙和21年南海大地震調査報告水路要報
増刊号
2)農林省(1964):薪潟地盤沈下調査報皆1幽〔7〕
3)朱鳳鳴(1976):海城に発生したM=7,3の地震に関する
予知・予報と防災の概況中国地震考察団講演論文集地
震学会
4)本島公司他(1955):静岡県庵原郡高部村附近天然ガス'調
査報告地質調査所報告166号
5)広川治他(1976):20万分の1地質図幅静岡・御前崎
地質調査所
日
㈶
㈶
㈶
㈶
㈶
㈶
㈶
㈶
㈶
㈶
㈶
㈶
㈶
㈶
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㈶
㈶
㈶
㈶
㈶
㈶
㈶
㈶
㈶
㈶
㈶
㈶
㈶
㈶
㈶
㈶
㈶
㈶
㈶
㈶
㈶
㈶
㈶
㈶
㈶
㈶
時分計測機器テレメの状況
均
勾
勾
勾
均0
㈰
㌰
細
㈰
㌰
㈰
㌰
工0
㈰
珊
ψ0
㈰
㌰
椰
㈰
ψ0
㈰
㌰
“0
第12図
1」
[■
Ω
估
〰
〰
ふ
住
住
住
〰
〰
〰
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住
〰
〰
〰
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住
〰
〰
〰
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〰
〰
〰
ふ
住
〰
〰
〰
Ω
Ω
〔1
ラドン
Kc/皿
㈸
1.2均5
㈳
㈿
ユ.26{
1.2旬9
㈳
㈵
㈵
㈳
工・2ξ0
ユ.2',5
㈧
㈶
ユ.2均3
一.23δ
1.23凸
㈴
㈧
i.2ユ1
㈳
㌲
i.22ち
一,238
1.2・32
1.22“
㈵
㈱
㌲
水質観測井におけるラドン濃度
ラドン計へ
の流量〃㎜
ユ.550
1.58一
一.572
1.5舳
ユ.578
工.563
i.5舳
1.58ユ
ユ.575
1.58ユ
1,58工
1.5勾7
一.5;O
王.575
ユ.556
水混・PR
ラドン計測部
での水温℃
17.50f〕
17.勾9{
i7.'1椰
17・''9''
1?.均9''
i7。{9''
一7.5コ3
〰
ユ7,506
,7.11引
i7.{蝸
コ7.5!3
ユ7.5ユ3
㈵
i7.5ユ9
-7.59勾
一7.5洲
ユ7.59巧
〶
ユ7.625
一?.656
9.2ち0
9.2ち5
9.2湘
㈿
9.2ろぢ
9.23葛
〰
電気伝導度の変化
電気伝導度
Mリ/㎝
296.6脇
296.6朋
296.6胴
㈹
㈹
㌸
㈹
㈹
㈵
㈹
296.8珊
㈹
㈹
㈹
㈹
㈹
㈹
㈵
㈹
296.㈹9
㈹
㈹
296.87う
㈹
㈹
㈹
㌸
㈹
㌸
㈹
享g6・800
㈹
㈹
㍒
㈹
㈹
296・875
㈹
㈹
㈹
〰
㈹
㈹
㈵
㈹
㈹
㈹
㈹
2台6.875
㈹
㌸
㈹
㈹
㈵
㈹
㈵
水瀞C
17.コ95
17.2'1号
17.2ψ5
㈲
17・255
工7.25窩
17・255
㈵
㈰
17・265
17.2い
㈶
㈵
㈱
17.2勾葛
㈵
17.2蝸
㈱
㈵
17.一90
i7.]S.膏
㈵
㈶
㈳
㈶
㈶
ユ7.26昌
i7.一90
㈳
㈶
㈲
㈲
㈲
㈶
㈳
17.2々0
17.2蝸
る保守用通話も可能である.
第12図は紙テープにパンチされたデータを東芝製コ
ンピューターTOSBAC-340にて作製したものである.
6おわり1二
これらの工事は1977年3月末に完成し現在データの
集録解析か行なわれている段階である.地下水の挙動
を地震予知に利用する試みは目本では未だはじめられ
たばかりであり当分の間は試行錯誤をくり返しつつ
手法を開発していく段階にあるといわなければなら在い.
しかしそれまでr大地震」添待ってくれるという保証も
ない以上は開発段階から観測網の機能を果していく必
要があろう.このためには今後比較的短期間に観測
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