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「トロント小児病院で学んだこと」 研修医2年 堀谷美奈 昨年の稲村憲一

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「トロント小児病院で学んだこと」 研修医2年 堀谷美奈 昨年の稲村憲一
「トロント小児病院で学んだこと」
研修医2年 堀谷美奈
昨年の稲村憲一先生・服部孝二先生に引き続き、平成 24 年 6 月の 1 か月間、カナダのト
ロント小児病院(通称 Sick kids)で研修をさせていただきました。
学生時代から小児科医を目指していた私にとって、世界最高峰の小児病院での研修は夢
のようなお話でした。幸運にもその機会を手に入れ、期待と興奮に胸を躍らせていました
が、国内の出張でも一瞬の隙に迷子になる私が、果たして海外で 1 か月も無事に過ごせる
のだろうか?と、周囲の友人・先輩・後輩を始め多くの方々にご心配をおかけしました。
成田空港での乗り継ぎで迷子になることもなく、順調にカナダまで辿り着くことができ
ましたが、嵐で飛行機が着陸できずしばらく上空で旋回していました。予定より 1 時間遅
れでトロントの地に降り立った!と安心したのも束の間、入国審査の際に自分一人だけ別
室に連れて行かれて「帰りの航空券はちゃんと持っているのか?」「家族か友達と来ている
のか?」と質問攻めにされました。もしかして、迷子か家出かと疑がわれているのでしょ
うか。最後に「What’s your job?」と聞かれて「I’m a medical doctor.」と答えると、
「Too young!
Ha Ha!」と笑顔で通されました。
その後も地下鉄が冠水により閉鎖されていたなどのトラブルはあったものの、無事に
Sick Kids での研修は始まりました。引率してくださった加藤敦先生には厚く御礼を申し上
げます。
Sick Kids は 300 床のベッドを有し、700 万人の人口を請け負う大規模な小児病院です。
病院の玄関は大きな吹き抜けで開放感があり、とても病院には見えません。外来や病棟の
壁には可愛い絵が描かれていて、待合室には沢山の絵本やおもちゃがあり、遊園地か保育
園のような雰囲気です。ゲームをする部屋や音楽室、劇場があり、長く入院する子どもも
楽しめる工夫がそこかしこに見られました。
私と杉本悦子先生がお世話になった部署は臨床薬理科教室といい、川崎医大小児科教授
の尾内一信先生と、Sick Kids の臨床薬理科教授の伊藤信也先生との間に以前からご親交が
あったため、平成 20 年度から研修医を受け入れてくださっています。
教室のメンバーはカナダ人よりも留学生の数が多く、ヨーロッパ、中東、アジアなど世
界各地から留学に来られていました。特に、伊藤先生を始めとする日本人スタッフの先生
方には多方面に渡ってお世話いただきました。田野島玲大先生には実験を見せていただい
たり、神谷太郎先生には小児科医として成長するためには?と熱く語っていただいたり、
市内の観光スポットを案内していただいたり、研修以外のことまでたくさんの相談に乗っ
ていただきました。おかげさまで、充実した研修生活を送ることができました。
日本ではあまり馴染みのない臨床薬理という分野ですが、主に薬物が子どもに与える影
響について研究しています。臨床薬理科に病棟はなく、他科からの紹介で有害事象の発生
した児を診察します。また、Mother Risk といって、妊娠中や授乳中のお母さんの服薬カ
ウンセリングを行う専門外来があります。
私たちは病棟や外来での診察やカンファレンスを見学しました。かかりつけ医から患者
さんが紹介されると、スタッフ全員で情報を共有した後、一人に 1 時間以上かけて外来で
面接を行います。患者さんは英語圏の方ばかりでなく、通訳を介しての面接が行われるこ
とが印象的でした。
また、院内で開かれる勉強会にも参加しました。なんとか話の内容は理解できますが、
自分が疑問に思ったことを英語で上手に表現できず、勉強不足を反省しました。帰国して
からも可能な限り英語の勉強は続けたいと思います。
臨床薬理教室のほかに、本大学麻酔科教授の中塚秀輝先生、Sick Kids PICU フェロー
の小原崇一郎先生のご厚意により、PICU の回診に同行させていただきました。PICU は周
術期 ICU と CCU を併せて 40 床もあり、病棟の規模の大きさに驚きました。また、それぞ
れの部屋も広々としており、患児とそのご家族が安心して過ごせるように工夫されていま
した。回診には医師だけでなく看護師を始めとしたコメディカルも多く参加し、ご家族も
同席のもとで活発に議論していました。
病院以外の場所でも、ワーキングホリデーを利用した留学生や、他医科大学の実習生、
カナダで剣道を指導している剣道選手など、大きな志を持った同年代の日本人に出会い、
彼らの行動力に刺激を受けました。ただ与えられるものを待っているのではなく、自分で
つかみに行かなくては得られないものがある、と分かったことが今回の研修の大きな収穫
でした。
最後になりましたが、研修にあたってご尽力いただいた尾内一信先生、伊藤信也先生、
素晴らしい機会を与えてくださったレジデント教育委員長の中田昌男先生、プログラムデ
ィレクターの長谷川徹先生、角田司病院長先生、福永仁夫学長先生、川﨑誠治理事長先生
を始めとする川崎医科大学附属病院関係者の皆様、少ない人数で6月中の小児科当直を受け
持ってくださった小児科研修医の皆様へ、この場をお借りして厚く御礼を申し上げます。
伊藤信也教授と
神谷先生と
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