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「リーグファイル」第11号 (PDF形式 343KB)

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「リーグファイル」第11号 (PDF形式 343KB)
リ ー グ フ ァ イ ル 11
地域住民のみの力で里山の維持管理を続けること
とちぎ協働デザインリーグは、
協働のまちづくりの調査研究、
支援・協力、政策提言等を行う
シンクタンクです
は望 め そう に ない の が現 状だ 。
追い 打 ちを か ける よ うに 、里 山 では 野 生鳥 獣 と人
間の 軋 轢問 題 が深 刻 な問 題と な って い る。農 作物 被
害に つ いて 見 ると 、栃木 県で は イノ シ シに よ る被 害
が最 も 大き く、こ の他 に シカ 、サ ル、ク マに よ る 多
様な 獣 害が あ る。加え て 、近 年で は 中型 哺 乳類 の ハ
クビ シ ンに よ る被 害 が広 がり 、外見 に 似合 わ ず獰 猛
な外 来 動物 、ア ラ イグ マ も忍 び 寄り つ つあ る。様 々
な対 策 が講 じ られ て いる もの の 、鳥 獣 害を 押 さえ 込
むの は 難し く 、ほ と んど 目立 っ た効 果 が表 れ てい な
い。鳥獣 害 の激 化 は、里 山で 人 間活 動 が低 下 して い
るこ と と、 表 裏一 体 であ る。
〒 3 2 0-0032 宇 都 宮 市 昭 和 2-2-7
と ち ぎ ボ ラ ンテ ィアNPOセ ンター 内
UR L : http ://www.tochigi-tcdl.net
個性 あ る豊 か な里 山 を地 域に 維 持 す る ため に 、何
か 良い 方 法 は ない の だ ろ う か。 近 代 社 会に お い て 、
と ちぎ協働デザイ ンリ ーグ
資源 の 適切 な 維持 管 理は 、国 家 によ る 中央 集 権的 な
TOCHIGI COLLABORATION DESIGN LEAGUE
方法 か 、民 間 によ る 市場 原理 に よっ て 成さ れ るも の
と 考 え ら れ て き た 。 こ れ に 対 し て 、 2009 年 に ノ
協働による地域資源の維持管理
ーベ ル 経済 学 賞を 受 賞し たエ リ ノア・オス ト ロム は 、
-栃木の里山に向き合い思うこと-
国家 で も市 場 でも な く、地域 の 人々 が 自主 的 にル ー
ル を決 め て 資 源を 管 理 す る 第三 の 方 法 を提 起 し た 。
この 際 に列 挙 した 世 界中 の事 例 には 、日本 の 入会 に
高橋 俊守
宇都 宮大学農学部 付属里山 科学センター
よる 方 法も 含 まれ て いた 。
入会 と は、地域 で 暮ら す 住民 が、入 会地 と して 定
めた山林や漁場の資源を共同で管理して利用する
もの で 、日 本 で は 古 くか らの 慣 行と し て各 地 で行 わ
栃木 県 の 都 市 と奥 山 の間 に は 、農村 集 落を 囲 んで 、 れて き た。とこ ろ が、明 治期 の 近代 化 の過 程 にお い
田畑 、森 、川 がな だ らか な地 形 に添 う よう に 入り 組
て、い わゆ る 地租 改 正に よっ て 土地 と 租税 制 度が 改
んだ 、里 山 の美 し い田 園 景観 が 広が っ てい る。里 山
革さ れ、こ の際 に 入会 地 の多 く は、解体 を 余儀 な く
の景 観 は、人 の暮 ら しや 農の 営 みを 通 じて 自 然へ の
され て いる 。土 地 の私 的 所有 を 認め 、地 価 を基 準 と
働き か けが 長 年に 渡 って 続け ら れ、形 作ら れ てき た
して 土 地所 有 者か ら 金納 させ る 新た な 制度 に は、誰
もの で ある 。
のものでもなく地域のものとして共有されてきた
かつ て の里 山 は、暮ら し に必 要 な燃 料 や木 材、農
入会 地 は、 ど うし て も馴 染ま な かっ た ので あ る。
業に 必 要な 肥 料、商 品価 値の あ る農 林 水産 物 の供 給
いず れ にし て も、伝統 的 に見 ら れた 入 会は 、共 同
源と し て、地 域で 暮 らす 人々 の 暮ら し に様 々 な恵 み
管理 に よっ て 、地 域 資源 を長 期 にわ た って 維 持す る
と潤 い をも た らし て きた 。今 日で も 里山 に は、棚 田
こと が でき る 一つ の 方策 を示 し てい る 。明 治 から 平
や谷 津 田等 の 景 観 の 審美 性に 加 え、地 域の 祭 りや 伝
成ま で の年 月 より も ずっ と 長 い 間、日 本で は 各地 に
統工 芸 の維 持 、さ ら には 絶滅 の 恐れ の ある 動 植物 が
入会 の 仕組 み が機 能 して いた 。行政 サ ービ ス や市 場
集中 的 に分 布 する 生 物多 様性 の 高い 地 域と し て、そ
が隅 々 まで 行 き届 い た現 代社 会 にお い て、簡 単に は
の地 域 資源 価 値が 認 めら れて い る。
解決 で きな い 地域 課 題に 向き 合 うと き に、何 か参 考
とこ ろ で里 山 は、人 手が 加わ る こと で 始め て 維持
にす べ きと こ ろは な いだ ろう か 。里 山 に見 ら れる よ
され る が、この た めに 必 要な 作 業の ほ とん ど は、地
うな 、個 性 ある 地 域資 源 を、ゆる や かな 協 働の 仕 組
域に 暮 らす 人 々に 長 い間 委ね ら れて き た。と ころ が
みに よ って 維 持管 理 する よう な 、個 々 の地 域 レベ ル
今日 で は、里 山の 基 幹産 業と も 言え る 農林 水 産業 の
で機能する新たな仕組みが待たれているように思
衰退 と とも に、過 疎高 齢 化や 集 落機 能 の低 下 等、里
える 。
山は 様 々な 課 題に 直 面し てお り 、従 来 と同 じ 方法 で 、
とちぎ協働デザインリーグ
1
リ ー グ フ ァ イ ル 11
足利・名草ふるさと自然塾
小針
-多様な主体間の協働によるコミュニティづくり -
協子 ( とち ぎ 協働 デザ イ ンリ ー グ主 任 研究 員)
始め 、今 後 の地 域 経済 活 性化 に つい て も、速や か に
取り組まなければならなくなっていた。折しも
1990 年 に は 、 足 利 事 件 が 発 生 し 、 子 ど も の 安 全
確保 は 、未 来 に向 け ての 大き な 課題 と なっ た 。
その よ うな 社 会情 勢 を経 て、足 利市 は 振興 計 画検
討委 員 会を 設 置し 、 1996 年 第 5 次 足 利市 振 興 計
画「 ニュ ー 足利 創 造プ ラ ン」を策 定 した 。そ の 戦 略
プロ ジ ェク ト のひ と つに「北 部リ ゾ ート 計 画」が 掲
げら れ、そ の中 に「 子 ど もの 森 の整 備」が 位置 付 け
られ た 。
こ れ を 受 け 、 2000 年 に は 「 子 ど も の 森 整 備 計
画」を策 定 し、広く 市 民 に意 見 を募 っ たと こ ろ、多
名草ふるさと交流館
様 な意 見 を 収 集で き た 。 こ の頃 に は 、「 北部 リ ゾ ー
1.足利市名草地区の概要
ト計 画 」と「 子ど も 」は 、足利 市 北部 に おい て 、行
名草 地 区は 、足 利 市の 北 北東 に 位置 し、名 草上 町 、
名草 中 町、名 草 下 町 か ら なり 、約 650 世 帯 が名 草
政のみでなく住民にとっても重要なキーワードに
川の川筋にまとまっている。自治会加入率は約
なっ て いた の では な いだ ろう か 。
バブ ル 経済 が 崩壊 し た 1990年代 に は 、「 官 から
95% で 、 地 域 の 夏 祭 り 等 に は 、 全 戸 が 関 わ っ て い
民へ 」「 国か ら 地方 へ 」 のか け 声の も と、 地 方分 権
る。中心 部 から 離 れ、豊 かな 自 然環 境 に恵 ま れて い
改革 が、国 の大 き な課 題 とし て 推進 さ れて き た。そ
る反 面 、少 子 高齢 化 、過 疎化 の 課題 が 大き い 。
の理 由 のひ と つに「 高齢社会・少子化社会に対応して
いくためには、市町村の創意工夫が重要であり、地方分
2.時代背景
権を推進し、行政の総合化と公私協働を促進する必要が
ある」(井川
日本 経 済の バ ブル 期 ( 1985 年 ~1991 年頃 )
には 、好景 気 の風 を 背に 受け リ ゾー ト 法が ス ター ト
博
2008年)と述べられている。
地方 分 権の 流 れの 中 、 1999 年 3 月に は 「横 浜
し全 国 各地 で リゾ ー ト開 発が 立 ち上 が った 。
市に お ける 市 民活 動 との 協働 に おけ る 基本 方 針( 横
足利市北部でも豊富な自然に着目した民間業者
浜 コー ド )」 が 発表 さ れ 、 市民 協 働 と いう 概 念 が 、
のリ ゾ ート 計 画が も ちあ がっ た 。し か し地 元 の賛 同
自治体政策の柱として多く見受けられるようにな
を得 ら れな か った た めか 、バ ブ ルが 終 焉に 向 かっ て
った 。
いた た めか 理 由が 定 かで はな い が、い つの 間 にか 立
2002 年度 、足 利 市の「 北部 リ ゾー ト 構想 」、
「子
ち消 え にな っ た。
ども の 森整 備 計画 」を支 援す る 地区 住 民の 集 まり か
当時 、当 該 地域 の 住民 は 、ど のよ う な思 い を抱 い
ら 、 市 民 団 体 「 名 草 里 山 の 会 」 が 発 足 し 、 2003
たで あ ろう 。好 況 のう ち にそ の 波に 乗 って 、何 ら か
年に は 「 NPO 法 人 名草 里山 の 会」 と して 、 活動 を
の リゾ ー ト 拠 点が 出 来 上 が って い れ ば 、あ る い は 、
進め た。バ ブル 崩 壊時 か ら、行政 に も市 民 にも 共 通
里山の整備だけでもできたらよかったと思っただ
の 課題 意 識 が あり 、 高 齢 化 、人 口 減 少 、地 方 分 権 、
ろう か。い や、大 き なハ ード 事 業の ツ ケを 払 わさ れ
市民 協 働と い う概 念 の芽 生え 、特定 非 営利 加 活動 促
ずに 済 んだ 。あ る いは、環境 破 壊や 環 境汚 染 をも た
進 法 の 施 行 ( 1998 年 ) な ど の 社 会 情 勢 を 背 景 に
ら さず に 済 ん だと 胸 を な で おろ し た こ とだ ろ う か 。
当法 人 が設 立 され 、
「 市 民社 会 の創 造 」ある い は「 住
いず れ にせ よ、こ の出 来 事は 地 域住 民 にと っ て、身
民自 治 」へ の 一歩 を 踏み 出し た こと は 特徴 的 であ る 。
近な 自 然、地域 資 源に つ いて 、ま た それ ら の未 来 及
3.足利・名草ふるさと自然塾設立にいたる経緯
びこ れ から の 生き 方 につ いて 、危機 感 をも っ て思 い
2004 年 度 、 足 利 市 の 「 足 利 ・ 名 草 ふ る さ と 自
を寄 せ るき っ かけ と なっ たの で はな い か。
然 塾基 本 計 画 」作 成 に あ た り 、「 目 指 す 名草 - 目 標
足 利 市 の 人 口 は 、 1990 年 を 境 に 急 激 に 減 少 し
とちぎ協働デザインリーグ
2
リ ー グ フ ァ イ ル 11
像の 明 確化 」をす る ため 地域 ヒ アリ ン グ等 を 実施 し 、 り 、参 加 し 、体 験 する 」こと で 自己 発 見 、自 己 開 発
住民 の 声を 聴 いた 。地 域 活性 化・環 境整 備 が課 題 に
する 場 を提 供 する 。ま た 、活 動を 通 して 、都 市 住 民
あが り、そ れら を 検討 し つつ 、名 草 全体 の 将来 像 を
との交流を図り、地域が活性することを目指している。
市民 と 行政 で 見据 え てい った 。地域 住 民に よ るワ ー
表
クシ ョ ップ と いう 手 法が 、住 民 参加 の さら な る入 り
自 然塾 運 営協 議 会の 構成 メ ンバ ー
・名草地区自治会-名草 3 地区(上町、中町、下町)の
口に な って い る。ワー ク ショ ッ プで は、地 域資 源 お
自治会。
よび 人 材活 用 が課 題 とし てあ が り、そ れを 克 服す る
・NPO 法人名草里山の会―名草地区の豊かな自然を背
様々 な プロ グ ラム が 話し 合わ れ た。少 子高 齢 化が 進
景に「まちづくりの推進」、
「環境の保全」
、
「子どもた
む中 、地 域 づく り の担 い 手と し て、多く の 人に 扉 を
ちの健全育成」を目的に活動。
開け て いく こ とが 考 えら れた 。
・NPO 法人自然学校 NOSAP―フリースクール自然学
豊か な 地域 資 源を 生 かし 、自 然 体験 活 動で 県 内外
校。ここの児童が、「名草里山の会」のイベントに参
の人を呼び込む事業を基盤に北部を活性化してい
加する機会を設けている。理事等は、里山の会の会員。
く方 向 で 、2005 年 2 月 にこ の 計画 が 策定 さ れた 。
✽
✽
・名草観光協会―名草地区の住民をもって組織。
・名草地区社会福祉協議会―自治会長、民生委員、社会
✽
福祉事業に関心を有する住民により組織。
2005 年 度、 いよ い よこ の 基本 計 画を 具現 化 す
るた め には 、地 域 とし て の受 け 皿( 実働 す る人 た ち )
・足利市立名草小学校 PTA
が必 要 なた め 、市 は 、「 足利 ・ 名草 ふ るさ と 自然 塾
・名草地区青少年育成会連合会
運営 協 議会 準 備会 」 を設 立し た 。
・名草山草愛好会
・友愛 16―旧名草中学校台 16 期生の集まりによる、
す で に、足利 市 の「 北 部リ ゾ ート 構 想 」、
「子 ど も
の森整備計画」を支援する地区住民の集まりが、
そばつくり愛好者の会
「 NPO 法 人 名草 里 山の 会」 を 設立 し 活動 を 進め て
・中屋敷そばの会―そばつくり愛好者の会
いた た め、行 政の 呼 びか けで 準 備会 に 集う 住 民 の 9
・名草集落営農組合(協力団体)等
割が 同 法人 の メン バ ーで もあ っ た。その た め、活 動
◆体験プログラム
の 方向 性 も 同 法人 の 考 え と ほぼ 一 致 し た。 そ こ で 、
・田んぼの学校!
「名 草 ふる さ と自 然 塾」をま っ たく 新 しい 組 織と し
・大豆の力を学ぼう!・そばをみんなで育てよう!
て立 ち 上げ る ので は なく 、 NPO 法 人 名草 里 山の 会
・私だけのしいたけを作ろう!
を拡 大 する イ メー ジ 、あ るい は 同法 人 の 事 業 に共 催
・親子でクワガタを育てよう!
する よ うな 形 で「 名草 ふ るさ と 収穫 際」等 の体 験 活
◆交流イベント
動を 実 施し て いく も のと した 。ス タ ート は、行政 か
・スプリングフェスタ
らの 呼 びか け であ っ たが 、民 間 なら で はの フ ット ワ
・名草ふるさと収穫祭
ーク の 軽さ を もつ NPO 法人 の 先駆 性 が 、足利 市 北
・力士ふれあいフェスタ in 名草
✽
・フラワーフェスティバル
(土俵あり!)
毎年、合宿に来る陸奥部屋の協力により、交流イベン
部地 域 の未 来 を担 う 上で の礎 と なっ た 。
✽
・田んぼの学校!加工編
トを開催。特に子どもと力士の対戦は、興を呼ぶ。
✽
◆名草ふるさと交流館
2008 年に は 、
「 足利・名草 ふ るさ と 自然 塾 運営
(築 150 年の古民家!)
協議 会 」が 発 足し 、 NPO 法人 「 名草 里 山 の会 」 を
足利・名草ふるさと自然塾運営協議会が、交流館の管
はじ め とす る 地域 の 様々 な主 体 が、新 たに メ ンバ ー
理運営を受託し、地域にマッチした活用を心がけて事業
とし て 加わ り、こ こに「 多様 な 主体 間 の協 働 によ る
を展開している。
コミ ュ ニテ ィ づく り 」が スタ ー トし た 。(表 参 照 )
地域における様々な主体が、構成メンバーとして名
5.まとめ
を連ね、共に地域づくりに関わっている。特に自然体験
近く を 高速 道 路が 走 り、道路 も 整備 さ れ 特 に 辺鄙
活動において、構成団体ごとに得意分野で力を発揮して
な 地域 で も な いが 、 コ ン ビ ニエ ン ス ス トア は な い 。
いる。
土 地柄 と し て 、「味 噌 や 醤 油の 貸 し 借 り」 に 準 ず る
よ うな 豊 か な コミ ュ ニ テ ィ の人 間 関 係 が見 ら れ る 。
4.足利・名草ふるさと自然塾の活動
名草 地 区に 残 る豊 か な自 然環 境 や施 設、人 的・文
NPO 法人 同 士も 連 携し 支え あ って 活 動を し てき て
化的 資 源な ど の特 性 を生 かし て「 自 分 でも の をつ く
てい る こと は 高く 評 価さ れる 。
とちぎ協働デザインリーグ
いる 。民 間 と行 政 の間 に も、深い 信 頼の 絆 が結 ば れ
3
リ ー グ フ ァ イ ル 11
【書
評】
まちづくりデッドライン
大波
生きる場所を守り抜くための教科書
木下 斉、広瀬 郁 著/日経 BP 社/2013 年 4 月発行
龍郷(とちぎ協働デザインリーグ 非常勤研究員、マチナカプロジェクト 代表)
―――――――――――――――――――――――――――――
目
次
はじめに
CHAPTER1
お金とお客は「正直」だ まちの姿にはワケがある
CHAPTER2
まちはなぜ大きくなった?統計の「数字」から遡る
CHAPTER3
まちの「仕組み」をまずは頭に入れよう
CHAPTER4
全てがひっくり返った 発想を逆転させよう
CHAPTER5
日本の各地で胎動が それぞれの「守り方」
CHAPTER6
すぐに実行に移そう 変革を導くステップ
おわりに
―――――――――――――――――――――――――――――
国立 社 会保 障・人 口問 題 研究 所「 日 本の 地 域別 将
空 き店 舗 の 実 情を 比 較 説 明 し 、「 駅 前 や メイ ン ス ト
来推 計 人口 」
( 2013 年 3 月推 計)の 予測 で は、栃 木
リー ト が指 向 して き た“ 大き さ ”
“ 新 し さ ”」よ りも 、
県の 人 口は 、2,007,683 人(2010 年 )か ら 1,643,368
路地 裏 に残 る「 大切 に 維 持さ れ てき た“ 小さ さ ”
“古
人( 2040 年 )へと 、こ の 30 年 間 で約 36 万人 が減
さ ”」と 「 空 間 体験 」 に 惹 かれ る 若 い 世代 が 増 え て
少す る 。人 口 10 万 人を 超え る 各市 の 2040 年 の 人
きた こ とに 触 れて い る 。 店づ く り を DIY や ワ ー ク
口指 数 ( 2010 年= 100)を 見 ると 、 小山 市 92.3、
ショ ッ プ形 式 でお こ なう 方法 や 、空 間 や機 能 を 複 数
那須 塩 原市 91.2、宇都 宮 市 90.7 で 1 割程 度 の減 少 、
人で シ ェア( 共 用)す る 方 法な ど 、不動 産 の借 り 方 、
鹿沼 市 78.0、佐 野 市 74.4、栃 木 市 73.2、足 利市 70.3
建物 の 維持 管 理、運 営コ スト の 分担 に 様々 な 工夫 が
は、 さ らに 減 少率 が 高い 。
見ら れ 、そ れ らの プ ロセ ス を 情 報発 信 また は 参加 型
また 、総 務省「 住 宅・土 地統 計 調査 」( 2008 年 )
が 示 す 栃 木 県 の 空 き 家 率 は 、 15.0% と 全 国 平 均
とす る こと で 、コ ミ ュニ ティ の 形成 が 期待 で き る 。
CHAPTER2~4 では 、
「 成長・拡 大 」から「 縮退 」
13.1%より や や 高く 、鹿 沼市 13.0%、足 利市 16.1%
への 転 換を 統 計デ ー タで 示し た うえ で 、土 地 建物 の
では 、空き 家 等の 所 有者 に適 正 な維 持 管理 を 義務 付
需要 と 供給 の 逆転 、商品 の販 売 方法 や 消費 者 ニー ズ
け る 条 例 を 施 行 し て お り 、 宇 都 宮 市 13.8%も 策 定
の多 様 化 と い う時 代 の変 化に 、不動 産 オー ナ ーが ど
にむ け て 準 備 を進 め てい る。高齢 化・人口 減 少 に 伴
う対 応 すべ き か言 及 して いる 。さ ら に、集 積 によ っ
い、中心 市 街地 の 限界 集 落化 、空 き 地・空き 家 の 増
てそ の エリ ア の価 値 を高 め、商 店経 営 者間 や 消費 者
加が 目 立ち 、地 域 コミ ュ ニテ ィ の 機 能 低下 や、地 域
間の コ ミュ ニ ティ を 形成 する 利 点や 、その 機 会 と し
の安 全 安心 の 確保 に 課題 を抱 え るま ち は多 い 。
ての 市( マ ルシ ェ)な ど 、先 進事 例 を紹 介 して い る
こう し た、まち の 衰退 と いう 現 実に 対 して「守 る
(CHAPTER5)。県内 で も ネ コ ヤド 商 店会( 鹿沼 市 )、
べ きエ リ ア 」 を明 確 に し 、「 すぐ に 行 動 せよ 」 と い
もみ じ 通り・釜 川沿 い( 宇都 宮 市 )、門 前( 真岡 市 )、
うメ ッ セー ジ が、本書 の「デ ッド ラ イン 」と い う 表
嘉右 衛 門町 ( 栃木 市 ) な どが 注 目を 集 めて い る。
現に 込 めら れ てい る。ま ちの「守 り 方」を知 る た め
CHAPTER6 では 、 既存 建物 ( まち の 資産 ) を活
には 、ま ち の「 仕組 み」を読 み 解く こ とが 必 要で あ
用し 、まち に 居住 ま たは 店 を 構 える と いう 選 択肢 を
り、経営 の 基本 と なる「 バリ ュ ーネ ッ トワ ー ク」と
関心 層 に提 示 し、希 望者 を サ ポ ート す る組 織 づく り
いう概念を用いて丁寧に解説している。バリュー
の要 点 が 、 著 者の 知 見を もと に 示さ れ 参考 に な る 。
(価 値) は 、「 商 品・ サ ービ ス・ 空 間体 験」 の 3 つ
最近 、消 費 税増 税 を控 え てか 、解 体 され る 建物 を
に 大別 さ れ 、「 不動 産 オ ー ナー ・ 商 店 経営 者 ・ 消 費
目に す るこ と が 増 え た。建物 と とも に 地域 固 有の 歴
者」 の 3 者 間を 、「 売る ・買 う 」「貸 す ・借 り る 」
史文 化、景 観、生活 の 物 語が 失 われ て いく 。住 み 継
とい う やり と りで 流 れて いる 。その 流 れ を い かに マ
ぎ、守り 伝 え た い エリ ア を意 識 し、みん な の参 加 と
ネジ メ ント す るか と いう 視点 が 重要 だ とい う 。
支え で まち の 資源 の 維持・活用 を図 る 機運 が 各地 で
CHAPTER1 で は 、メ イン ス トリ ー トと 路 地 裏 の
とちぎ協働デザインリーグ
高ま る こと を 期待 し て、 本書 の ご一 読 を薦 め た い 。
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