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「考える音読」を手立てとして、確かな読みの目を育む授業づくり 「天気を

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「考える音読」を手立てとして、確かな読みの目を育む授業づくり 「天気を
「考える音読」を手立てとして、確かな読みの目を育む授業づくり
「天気を予想する」
(光村図書5年)
寺内
健@山口県光市立浅江小学校
はじめに
低 ・中 学 年 段 階 の説 明 文 教 材 は、 絵 や 写 真 な ど の資 料 を 手 が かりに 文 章 を 読 ま せ る ものが ほとん
ど です。 高 学 年 段 階 では、 それ に 加 えて、 図 ・表 ・グ ラフ な ど も登 場 し ま す 。それ も 、 ひとつ の説 明 文 の
中 に、図 、表 、グラフなどの資 料 が、複 合 的 に組 み合 わされて使 われること があります。そのため、
文 章 を正 しく読 み取 る手 助 けのはずの資 料 が、 子 どもたちにとっては 文 章 を読 む際 の障 壁 にな る
こ とが ありま す。
ま ず は、文 章 ( 連 続 テ キ スト) と、 資 料 ( 非 連 続 テ キ スト) とを 対 応 させ て、 正 し く読 み 取 る 力 を 、
子 ど も た ち 全 員 に つ け て いき た い も の です 。 そ の 上 で 、 資 料 の 効 果 や そ れ を 用 いた 筆 者 の 意 図 へ も
全 員 で迫 らせ ていき たいと思 いま す。
こ こ では、 説 明 文 教 材 「 天 気 を 予 想 す る 」 ( 光 村 5年 ) の実 践 を 例 に 、 「 考 え る 音 読 」 を 用 い た 資 料
へ の着 目 のさせ 方 を 紹 介 し ま す。
1
資 料 を 抜 いた文 章 を 提 示 する こ とで、資 料 の 役 割 に 着 目 させ る
全 文 を 読 ん だとこ ろで、 資 料 を 抜 いた文 章 を 配 りま す。文 章 を 目 に し た 瞬 間 、 空 いたとこ ろを 指 さ
し て、 「 写 真 が な い!」 「 文 だけじ ゃ読 む 気 せ ん !」 な ど、 子 ど もたち は 口 々に 言 います。
「 な くて も 意 味 は 同 じ でし ょ ? 丁 寧 に 読 め ば わ か らな いこ と はな いよ 。 」 と教 師 が いう と 、 子 ど も たち
は「 絵 や写 真 が な い と、 文 章 が 難 し く 感 じ る !! 」 「 数 だ けじ ゃ、 そ の数 が 多 い か 少 な いか イ メー ジが
わ か な い 」 な ど 、 資 料 の効 果 に つ い て、 発 言 し ま す 。 それ を 聞 き 合 う 中 で、 自 然 と資 料 の 役 割 に 気 づ
き 始 め ま す。
2
ペ アで 「 読 み 比 べ る ・聴 き 比 べる 」 こ とで、 資 料 の必 要 性 を 実 感 させ る
次 に 、 アメダスや衛 星 な ど の写 真 を 示 し 、「 グ ラフ や表 に
比 べ て、 こ れ らの写 真 は、 特 に 何 かを 詳 しく 説 明 し ている
わけではな いよ 。 それ な ら必 要 な い よ ね。」 とゆ さぶりま す。
子 ど もたち は、 「 よ く 知 らな いものだから、 こ れ らの写 真 は
あっ た方 が いい。」 と言 いま す。
そこ で、 ペ アの相 手 に 資 料 を 指 差 しな がら 音 読 を し た場 合 と、
な し で音 読 し た場 合 を やっ てみ て 聴 き 比 べ ま す。 ( 右 絵 参 照 )
音 読 する 側 が 筆 者 役 、 聴 き 手 に なる のが 読 者 役 です。
実 際 に 役 割 を つ けて、 音 読 し てみ る こ とで、 写 真 の資 料 とし て
の必 要 性 と 、 その効 果 を 改 め て 意 識 するこ とが でき る よ うに
な る のです。 名 付 けて「 筆 者 な りき り読 み」 です。
写 真 な ど の資 料 が 、「 文 章 だけでは読 み 手 に 伝 わりに くい
イ メージを 補 う 働 き 」 を し ている こ とに 気 づかせ ていき ま す。
写真(資料)を指差しながら、筆者になりきって
読者に説明する「筆者なりきり読み」
3
し かけ 資 料 と比 較 する こ とで 、 「 こ の」資 料 を 用 いた筆 者 の意 図 に 迫 らせ る
こ こ ま で で、 子 ど も たち は知 らず 知 ら ず のうち に 文 章 と資 料 を 対 応 させ て 読 む よ うに な っ てき ま す。
し かし 、 ま だ全 ての子 ど もが 資 料 の内 容 までき ち ん と読 め ている わけではありませ ん。
そこ で、 教 科 書 に 掲 載 し てあ る 資 料 と、 しかけ 資 料 を 比 較 でき る よ うに 並 べ て 提 示 し 、
「 ど こ が 間 違 っ ている か分 かる かな ? 」 と投 げかけま す。
○教科書の資料
「
天
気
を
予
想
す
る
」
(
光
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図
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五
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0
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8
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ン
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た
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か
っ
た
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が
こ
れ
を
見
る
と
、
1
9
7
0
年
代
に
は
、
5
年
ご
と
の
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均
で
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し
た
も
の
で
す
。
気
象
庁
が
行
っ
た
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報
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的
中
率
を
、
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日
に
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が
ふ
る
か
ど
う
か
に
つ
い
て
、
上
の
表
は
、
的中率(%)
1970—1975
79.0
1976−1980
79.0
1981−1985
82.0
1986−1990
82.2
1991−1995
83.4
1996−2000
83.6
2000−2005
86.4
△しかけ資料
)
的中率(%)
1970−1980
79.0
でも、こっちの方
これは5年ごと
1981−1990
82.0
が 分かりやすく
じゃない!!
1991−2000
83.4
ない?
10年ごとだよ。
2001−2010
85.2
「5年ごとって書いてあるのに、これは10年ごとだからおかしい。文章に合ってない。」(確認読み)
「的中率があがっていることはこっちの方がよくわかる。教科書のものは分かりにくいよ。」(評価読み)
「この資料で5年ごとに示してあるのは、武田さんの意図があるのかな。だんだんとあるから・・・。」(解釈読み)
こ のよ うに 、 教 科 書 の資 料 と し か け 資 料 と 比 較 す る こ とで、 資 料 を 正 し く読 み 取 る ( 確 認 読 み ) だ
け で はな く、 筆 者 の意 図 を 解 釈 し た り( 解 釈 読 み ) 、 筆 者 の工 夫 を 評 価 し た り( 評 価 読 み ) する こ と が
でき ま し た。
最 後 にもう一 度 、音 読 する(「まとめの音 読 」といいます。)ことによって、文 章 と資 料 の対 応 を
明 確 に し ていき ま す 。もち ろん、 こ のとき も「 筆 者 に な りき っ て」 音 読 させ ま す。
おわりに
こ のよ うに 、 資 料 と向 き 合 い、 その効 果 や 必 要 性 を 改 め て 実 感 でき た子 ど も たち 。 別 の単 元 や他 教
科 で資 料 と出 会 っ たとき に 、 立 ち 止 ま っ て 考 える よ うに な り ま し た。 さ らに 、 読 む だけ でな く、 書 いたり 、
話 し たりする 活 動 を 行 う際 に も 積 極 的 に 資 料 を 活 用 でき る よ う に なっ てほし いと思 いま す。
*本 稿 は、「 考 える 音 読 」 の会 ( 授 業 の ユニ バーサ ル デ ザイ ン 研 究 会 ・山 口 支 部 ) 定 例 会 で
実 践 発 表 し た内 容 を 、 加 筆 修 正 し て書 き上 げま し た。
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