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中古自動車等の輸出をめぐる現状及び課題への対応について

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中古自動車等の輸出をめぐる現状及び課題への対応について
中古自動車等の輸出をめぐる現状及び課題への対応について
平成24年11月
中古自動車等の輸出に関する検討会
Ⅰ
自動車リサイクル法の概要等
(1)自動車リサイクル法の概要
① フロン類の破壊並びにエアバッグ類及びシュレッダーダストの再資源化は、使用済
自動車の再資源化等に関する法律(平成 14 年法律第 87 号。以下「自動車リサイク
ル法」という。)に基づき、自動車所有者の負担の下、自動車メーカー等が実施して
いる。
② 自動車所有者が負担するリサイクル料金(再資源化預託金等)は、不法投棄防止等
の観点から、新車購入時に、資金管理法人(公益財団法人自動車リサイクル促進セ
ンター)にあらかじめ預託される。
③ 海外でそのまま走行させることを目的に中古自動車※を輸出した場合には、国内で
は自動車の解体は行われず、フロン類、エアバッグ類、シュレッダーダストの破壊・
再資源化の費用も発生しないことから、所有者は、自動車リサイクル法第 78 条に基
づきリサイクル料金を取り戻すことが可能である。
※
使用を終了した自動車(使用済自動車)は、自動車リサイクル法に基づき国内で適
切に解体することが必要。このため、輸出時のリサイクル料金返還は行われない。
(2)有害廃棄物等の輸出規制
①
有害廃棄物
バーゼル条約の対象となっている特定有害廃棄物等(自動車関連では、鉛蓄電池、
シュレッダーダスト等が該当。)を輸出する場合には、特定有害廃棄物等の輸出入等
の規制に関する法律(平成4年法律第 108 号)及び外国為替及び外国貿易法(昭和 24
年法律第 228 号)に基づき、経済産業大臣の承認を受けるとともに、環境の汚染を防
止するために必要な措置が講じられていることについて環境大臣の確認を受けるこ
とが必要である。
1
②
廃棄物
廃棄物(無価物)を輸出する場合には、当該廃棄物を国内において適切に処理する
ことが困難であること等について環境大臣の確認を受けることが必要である。
①中古自動車、②使用済自動車から取り外された部品は、いずれも、リユースを目
的として、有価で輸出されるのが一般的であり、基本的には、廃棄物には該当しない。
ただし、エアバッグ等を処理していないハーフカット車両等については、自動車リ
サイクル法に基づき廃棄物とみなされる。
(表1)バーゼル法と廃棄物処理法の対象範囲
シュレッダー
ダスト
中古自動車
中古部品
廃タイヤ、エアー
鉛蓄電池
バック搭載のハー
注:実際には、「主な例」に記載した分類と異なる分類となることがある。
(3)中古自動車輸出の判別に当たっての考え方
① 中古自動車を輸出するとの名目で、使用済自動車や解体自動車が不適正に輸出され、
海外で不法投棄される行為が横行すれば、使用済自動車に係る廃棄物の適正な処理及
び資源の有効活用という、そもそもの自動車リサイクル法目的が没却されかねない。
こうした点も踏まえ、使用済自動車から何らかの部品を取り外す行為(いわゆる部
品取り)は、基本的には解体行為と整理される。
② ただし、例外として、以下の行為は、解体行為に当たらないことを明確にしている。
(ア) カーナビ、カーステレオ等を取り外す行為
(イ) 車輸出時において、コンテナに積み込む際の幅や高さ制限の問題から、ミラー・
タイヤを取り外すことを余儀なくされ、取り外したミラー・タイヤを一体のも
のとして同じコンテナに積んで輸出する行為
2
Ⅱ
近年の中古自動車等の輸出状況
(1)中古自動車輸出におけるコンテナ使用比率の高まり
① 我が国の中古自動車は、経済成長を続ける途上国を中心に多くの国に輸出されている。
平成 21 年度には、最大の輸出相手国であるロシアが輸入関税を大幅に引き上げたこ
と等により、輸出台数は大きく減少したものの、その後は、回復傾向にある。途上国
を中心に中古自動車の需要ポテンシャルは引き続き高いものと考えられる。
② 中古自動車輸出のコンテナ使用率は、2001 年当時は、バスや貨物車では約3割だっ
たのに対し、乗用車では約1割程度にとどまっていた。その後、乗用車のコンテナ使
用率は急激に高まり、現在では4割程度まで上昇している。
輸出国別では、アラブ首長国連邦、南アフリカ共和国、パキスタンなどに向けた輸
出において、特にコンテナ使用率が高い。
cf:UAE(81.7%)、 南ア(83.2%)、パキスタン(90.6%) ※括弧内は 2011 年
③ 輸出に係る輸送費用は、自動車専用船を使用した場合には自動車の台数単位で、コン
テナ船を使用した場合にはコンテナの個数単位でかかる。
コンテナを使用する場合には、1個のコンテナにより多くの中古自動車を積載する
ことで、中古自動車1台当たりの輸送コストが割安になる。このため、コンテナの積
載効率を上げることを目的に、一部の部品を一時的に取り外して輸出することが一般
的に行われている。
(表2)輸出形態の推移
全車種の輸出台数
1,600,000
45.0%
1,400,000
40.0%
1,200,000
35.0%
30.0%
1,000,000
25.0%
800,000
20.0%
600,000
15.0%
400,000
10.0%
200,000
5.0%
0
0.0%
2001年2002年2003年2004年2005年2006年2007年2008年2009年2010年2011年2012年
全体
内コンテナ
※2012 年は 1~5 月時点データ
コンテナ比率
出典:財務省貿易統計
3
(表3)車種別の輸出台数コンテナ比率
車種別の輸出台数コンテナ比率
60.0%
50.0%
40.0%
30.0%
20.0%
10.0%
0.0%
2001年
2003年
2005年
乗用車
2007年
貨物車
2009年
2011年
バス
出典:財務省貿易統計
(表4)中古自動車輸出上位国の推移
出典:財務省貿易統計
(2)使用済自動車から取り外された部品の輸出
① 新車、中古車を問わず、日本車の輸出が増えれば、必然的に整備等に必要となる部品
のニーズも高まる。
② 使用済自動車から取り外された部品の輸出に当たっては、エンジンなど部品そのもの
が輸出されるケースもあれば、いわゆるハーフカットやノーズカットなど車体を切断
し、細かな解体作業を伴わない状態で輸出されるケースもある。これらの多くは、コ
ンテナに積載されて輸出されている。これら切断車両の中には、自動車リサイクル法
に基づき廃油・廃液等の処理やフロン・エアバッグの処理が適切に行われていない事
例が散見される。
4
(表5)解体台数に占めるハーフカット・ノーズカット比率
解体台数に占めるハーフカット・ノーズカット比率(n=2,871,729)
3.3%
4.4%
ハーフカット部品付輸出
ノーズカット部品付輸出
国内解体台数(部品付輸出なし)
2 011年
ハーフカット輸出台数 93,366台
ノーズカット輸出台数 126,523台
92.3%
出典:(株)矢野経済研究所
Ⅲ
検討課題
(1)輸送形態の変化に伴う中古自動車輸出とみなす取外し部品の範囲
① コンテナ輸出の増加に伴い、積載効率の観点からは一部の部品を一時的に取り外して
輸出するニーズが高まっている近年の情勢変化を踏まえ、現在、厳格に運用している
中古自動車のコンテナ輸出時に許容される取外し部品の範囲の見直しの是非につい
て、検討する必要があるのではないか。
② その際には、
(ア) 輸出現場での対応の統一性確保のため、どのような状態で輸出されればリサイクル
料金が返還されるのか、あらかじめ明確化し、広く周知徹底しておく必要があること
(イ) リサイクル料金の返還が一定のインセンティブとなり、廃棄物及び廃棄物に近いも
のの輸出が促進されてしまうことは、望ましくないこと
(ウ) 輸出時の部品取り外しを幅広く認めれば、国内における違法解体を取り締まること
が実態上困難となるおそれがあること
などに留意する必要がるのではないか。
(2)不適正な輸出への対応
① ハーフカット等の切断車両については、フロンやエアバッグの処理が適切に行われて
いない事例が散見されるなど、国内で自動車リサイクル法に基づく自動車解体が適切
に行われていないものもあるのが現状である。
② こうした不正な行為を防止するための横断的・統一的な対策を検討する必要があるの
ではないか。
5
Ⅳ
課題に対する検討
【輸送形態の変化に伴う中古自動車輸出とみなす取外し部品の範囲】
1. 基本的考え方
(1) 使用済自動車から部品を取り外す行為は基本的には解体行為であり、許可された解体業
者のみ行うことができる行為である。
(2) 一方、使用を継続している自動車については、整備や補修などの作業において部品を取
り外す行為を伴い、これは基本的に解体ではない。もちろん、自動車としての使用を継
続するための作業であることから、一定の限度を超える場合は、使用済自動車の解体に
当たることとなる。
(3) 中古自動車のコンテナ輸出に当たっても、合理的な理由が認められる一時的な部品の取
外しについては、中古自動車のコンテナ輸出に必要な作業として、輸出業者等が行うこ
とを認める余地がある。
ただし、輸出の際には、部品取外しの範囲を広く認めると、不正解体や不正輸出(廃
棄物輸出)につながるおそれがあることから、その認める範囲は限定的に定めるべきと
考えられる。
(4) 有識者や関係者における検討により、部品の取外しが、コンテナによる中古自動車輸出
に必要な範囲内であることが合理的に認められると基本的に整理可能な事案について
は、中古自動車としての円滑な輸出手続が行われることが期待される。
一方、この範囲外で、部品の取外しの要望がある場合には、必要に応じて個別に対応
していく必要がある。
2. 具体的な取外し品目等の検討及び必要な対応
(取外し部品の範囲を検討する要件)
(1) 中古自動車のコンテナ輸出に当たって行われ得る部品の取外しについては、輸送する車
種や混載する際の組合せなどにより多様な状況が想定される。
(2) 一方で、通関業者や輸出業者の円滑な事業活動を可能とするとともに、輸出における関
係機関による確認の透明性を確保するためには、一定の基準が具体的な品目を明らかに
する形で示されることが便宜である。
(3) また、多様な状況の中でも広く適用可能な一般的な基準として定める上では、取り外す
必要性について客観的な判断が可能であり、取外し範囲が過度に拡大しないことや中古
自動車としての基本性能の維持や解体行為との関係を考慮することが必要である。
(4) こうした考え方を踏まえ、具体的な品目を検討する上での要件は、
6
① コンテナへの積載のために取り外すことが余儀なくされ、当該取り外された部品が
車両と同一のコンテナに積載されていること
② 自動車の基本性能を損なわない範囲で行われていること
③ 解体に関する専門的知識・技術・経験が求められない範囲で行われること
と整理することが適当である。
(具体的品目とそれに沿った対応)
(5) これに沿って検討した結果、タイヤ、ミラーに加え、バンパー、ボンネット、リアハッ
チ・トランクリッド、については、合理的な経済活動の範囲でこの要件に合致すると判
断され、この範囲における一時的な部品の取外しに関しては、円滑な中古自動車輸出手
続が可能であると想定される。
(6) この他の案件については、事業者における必要な立証のもとで、必要に応じて個別に対
応する。
その際には、
① コンテナへの積載効率が向上すること、商品保護の要請が著しいことなど、取外
しを行う合理的な理由が存在し、車両と同一のコンテナに積載されているかどう
か
② 自動車の基本性能を損なうような取外しがなされていないか
③ 専門的知識・技術・経験が必要となる作業を伴う場合は適切な主体が作業を担っ
ているかどうか
といった項目を確認し、確認の結果中古自動車と認められた事例については、関係者に
適切な情報共有がなされることが必要である。
(7) ただし、外形上も明らかに使用を終了しているものと整理可能な以下の事例については、
中古自動車ではなく使用済自動車であると判断を行うことが適当である。
A)ハーフカット
B)ノーズカット
C)ルーフカット
D)テールカット
E)エンジンの取外し
F)車軸の取外し
G)サスペンションの取外し
(8) なお、バンパー、ボンネット、リアハッチ・トランクリッドの取外しなど中古自動車の
コンテナ輸出に伴う作業として合理的に認められる事例や、ハーフカットなど外形上も
明らかに使用を終了しているものと整理可能な事例について、関係機関が十分な認識を
共有することが事業の円滑な実施に資するため、事業者団体においては事業者への十分
な周知活動を行うことが期待される。
7
【不適正な輸出への対応】
(不適正輸出の防止に資する方策)
自動車が輸出される際には、中古自動車としての輸出以外に、部品や解体自動車として
の輸出が考えられる。こうした場面において、廃棄物や国内で適正に解体が行われなかっ
たものが輸出されてしまうことを防ぐためには、自動車リサイクル法に沿った適切な解体
等の処理がなされることを確認することが一つの手段になると考えられる。
それぞれの場面に応じ、この確認を行うための実効性ある対応を検討することが必要で
あり、以下の方策が考え得る。
1. 中古自動車輸出の場面を契機とした解体作業の確認
2. 解体自動車輸出時の解体作業の確認
(具体的な対応)
1. 中古自動車輸出の場面を契機とした解体作業の確認
(1) 中古自動車輸出の場面においては、部品の取外しを伴わない事例や中古自動車輸出に伴
う作業として合理的に認められる範囲での部品取外しの事例のほか、外形上も明らかに
使用を終了していると整理可能であるにも関わらず中古自動車と称している事例も存
在する可能性がある。
なお、いずれの場合にも、輸出を行う者が中古自動車としての輸出を意図している場
合には、税関への輸出申告の際に輸出抹消仮登録証明書が添付されている。
(2) 中古自動車としての輸出を申告していながら、ハーフカットなど外形上明らかに使用を
終了していると整理可能な事例が税関において確認された場合、廃棄物処理法及び自動
車リサイクル法に違反することが懸念される。
(3) このため、関係機関においては、こうした事例が確認された場合の円滑な情報提供、廃
棄物輸出に該当するおそれのある場合の輸出差し止めを行うとともに、ハーフカット等
の作業を行った主体の特定や輸出業者等への指導による再発防止に努めるなど、厳格な
対応を行うことが期待される。
2. 解体自動車輸出時の解体作業の確認
(1) 解体自動車の輸出は、自動車リサイクル法に基づき、解体業者が再資源化に関する基準
に従って解体を行い、当該解体自動車の全部を製品の原材料として利用する場合に限り
可能である。
しかし、一部において、海外での中古自動車用部品としての利用と申告しつつ、無許
可解体業者等により不適正に解体された自動車を輸出する事案が生じた。
8
解体自動車の輸出に当たっては、バッテリー、タイヤ、廃油、廃液などが回収されて
いない場合は、廃棄物処理法及び自動車リサイクル法に違反する不適正輸出が懸念され
る。また、こうした事案の場合には、自動車リサイクル法に基づく移動報告もなされて
いない可能性がある。
(2) こうした事態の発覚に端を発し、一部の地域においては、自治体が中心となり関係事業
者、税関、環境省及び経済産業省の協力体制を構築し、自動車リサイクル法における電
子マニフェストを利用した不適正解体自動車の輸出を監視する体制が構築されており、
この取組により実際に違反事例の発見に至っている。
(3) こうした取組は、解体自動車の輸出における確認を通じて、解体処理の適正化につなが
っていると考えられ、廃棄物の輸出を効果的に防止していると評価できる。
ただし、一部の地域における運用のみでは不適正事案が他の地域に流れるだけに終わ
るなどの限界があるとの指摘がある。
(4) より効果的・効率的な不正輸出対策を進めるため、上記取組の全国展開に向けた関係者
の協力体制や環境整備を検討することが必要である。
(5) また、水際対策とあわせ発生源対策(不適正解体に対する監視強化等)が重要であり、
実効ある対策のあり方や役割分担等について関係機関等と協議しつつ検討していく必
要がある。
以上
9
中古自動車等の輸出に関する検討会
第 1 回:平成 24 年 8 月 27 日(月)10:00~12:00
・ 中古自動車等の輸出をめぐる現状と課題について
・ 輸出時の自動車部品の取り外し実態について
第 2 回:平成 24 年 9 月 19 日(水)17:00~18:45
・ 中古自動車等の輸出をめぐる現状と課題について
・ 輸出時の自動車部品の取り外し実態について
第 3 回:平成 24 年 10 月 24 日(水)15:00~17:00
・ 日本中古車輸出業協同組合からの提案について
・ 中古自動車等の輸出に関する検討会における議論の整理
10
検討経過
中古自動車等の輸出に関する検討会
委員名簿
(敬称略・五十音順)
座長
小島
道一
委員
阿部 新
布施 正暁
佐藤 博
武藤 孝弘
河村二四夫
独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所
新領域研究センター環境・資源研究グループ長
山口大学教育学部 准教授
独立行政法人産業技術総合研究所 研究員
日本中古車輸出業協同組合 理事長
一般社団法人日本中古自動車販売協会連合会 専務理事
一般社団法人日本ELVリサイクル機構 代表理事
オブザーバー
財務省関税局業務課
国土交通省自動車局自動車情報課
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