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新書紹介 ネットワーキング

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新書紹介 ネットワーキング
新書紹介
ネットワーキング
J・リップナック・J・スタンプス著
社会開発統計研究所訳
﹁ある組織﹂であるという認識
ワクからはみ出した、画期的な
も、明らかに既存の社会組織の
もある。﹁もう一つのアメリ
拡大はより人間的な輪の拡大で
ある。従って、ネットワークの
づくりは資格や世間の評判とは
ーカーになれる。ネットワーク
し、﹁望む人は誰でもネットワ
状では既存の諸組織への影響、
無関係である。それは、どんな
発展段階における社会現象とし
目的をもち、困難にもめげずに
ての体系づけ等、まだ明確に位
カ﹂の発見とは、こうした数多
いて、著者はさまざまな個所で
置づける段階に達していない部
くのネットワークのつながりに
イメージを描き出すことができ
この﹁もう一つのアメリカ﹂と
分もあるが、極めて自然なかた
を得るであろう。
のについては、既存の社会組織
る。一般市民が日常生活の中で
しての示唆を与えているわけで
ちでこうした新しいうねりが生
第一章の﹁もう一つのアメリ
とは異なってはいるが﹁ある種
抱くさまざまな疑問や問題意識
あるが、なによりも、七つのカ
じている事実を認識できる本書
やるかにかかっている。﹂と述
の﹂組織であり﹁ただこの組織
を、そのまま眠らせずさらに拡
なネットワークの具体例を読み
テゴリーに分類されたさまざま
は、一つの衝撃でもある。
べている。今後自主活動を行っ
本書は、その題名から、物理
は官僚組織や階層組織とは明確
大し、目的を明確にし、より良
進めていくことが、事実として
また、今後高度情報化社会へ
よって生じる、表面に出ない結
的ネットワーキングーシステム
に異なる﹂ものとしている。そ
い方向へ進む努力をするという
の新しい兆候を認識できる一番
と突入していく中で、物理的な
びっきの集合体としてのアメリ
について述べているように思わ
の柔軟で自由に変化し得る性質
一連の行動は、市民運動等とし
の近道かも知れない。
情報手段の発達により、これら
カ﹂の概念について﹁ある場所
れるが、実はここでいうネット
として、著者は一〇の側面をあ
ての位置づけの前に、人間とし
最終章において﹁ネットワー
のネットワークがどんな変容を
をいうのではなく、心の状態を
ワーキングとは、人間的なつな
げているが、その中でも、ネッ
てとても素朴な行動、非常に人
クづくりの手法﹂として、著者
なしていくかという興味は﹁情
ていく意思のある人々にとって
がり︱人と人との関わり、結び
トワークの成員がそれぞれのあ
間的な行為であるといえよう。
自身の体験が述べられている。
報﹂伝達の観点から、大きなも
は大いに参考になるであろう。
つき︱である。アメリカ合衆国
らゆる活動部分において重要性
それゆえ、この人々は現状の
本書をまとめあげるために著者
のとして浮かび上がってくる。
カを見出すことにほかならな
ループを調査し、その内容を分
における多種多様な自主活動グ
を認識し、また﹁価値観﹂を共
社会政治体制のワクを超え、あ
がとった行動自体そのものも、
︿都市計画局総務課庶務係
い。そしてそれはもちろん、既
析し、七つのカテゴリー︵治療
有して結ばれているというこ
るいはワクにとらわれない発想
人とのつながりと、そこから得
藤又 衛﹀
さす。﹂と著者が述べているこ
・共有・資源利用・価値・学習
と、そして他人に依存しない、
を持つことによって、新しい解
た情報から成立している。
とについては、それを生み出す
・成長・進化︶に分類すること
あくまで自律的な参加者として
決策を生み出すことが可能とな
ネットワークづくりに関して
ネットワークそのものはいわ
によって、それぞれのネットワ
と同時に、内部では一つの﹁部
る。この活動のエネルギーとな
プレジデント社 三四〇頁 一、九〇〇円
ークの特徴を明確化している。
分﹂として機能する人々の集ま
るものがネットワークであり、
は敢えて身構える必要はなく、
ば非公式な﹁組織﹂であり、現
ネットワークの定義として、
りであると述べている点は、そ
ごく自然に行うべきであると
カと対比させている。本書にお
ついては﹁さまざまな問題を提
著者は、それに参加する人々に
の特徴をよく表わしている。こ
由で適応力に富んだものなので
本書で述べられているように自
存の公式の国家としてのアメリ
起し、その解決策を主として既
うした性質から、一つの組織論
察してみれば、かなり具体的に
存の体制の外に求めるような人
でネットワークをとらえてみて
ためのネットワークの拡大を考
々﹂とし、ネットワークそのも
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調査季報83―84.
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