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参考資料3 屋外施設のLED化改修における光の質と省エネルギーの追求

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参考資料3 屋外施設のLED化改修における光の質と省エネルギーの追求
第2回皇居外苑照明のあり方検討会 参考資料3
屋外施設のLED化改修における
光の質と省エネルギーの追求
1
概要
皇居外苑は、昭和24年4月に旧皇室苑地の一部が公園として開
放された国民公園である。
本プロジェクトは、低炭素化社会の実現に向け皇居外苑の照明
をLED化改修し、環境配慮型の照明環境を形成することを目的
として実施された。敷地全体約115haのうち、本プロジェクト
の対象である皇居前広場および和田倉噴水公園の約60haにお
いて、対象エリアの照明を全LED化した(ガス灯を除く)。
取り組みに当っては、歴史ある国民公園の照明環境をすべて見
直すのではなく、『良いものは残し、課題は改善する』という
方針とし、照明環境の改善と省エネルギー化を両立している。
皇居前広場の風景
1
和田倉噴水公園の大噴水
基本的な考え方
平和的文化的国家の象徴である皇居を取り囲む空間であり、江戸城の歴史的
景観を残す皇居外苑の性格を損ねない改修とする。
近年の東京駅周辺地域の再開発による街の性格の変化に対応し、夜間の来苑
者の安全・安心な通行を確保する一方で、周辺の町の変化に対して、皇居の
持つ静穏な空間の特性を保全するバッファーゾーンとしての役割を保持した
内容とする。
2
和田倉噴水公園
環境配慮
照明の消費電力によるCO2排出の削減のため、光源のLED化によって皇居外
苑の外灯照明全体でのCO2排出量が削減されるよう計画する。
3
照明及び灯具のデザイン
照明の明るさは、全体としてできる限り低めに抑えつつ、照明の配置、照ら
し方、連続性により、良好な景観の形成、安全・安心な通行を確保する。
① 皇居前広場
基本的に、現状の機能、明るさ、デザインを踏襲し、明るさの不足する部分
に外灯を追加する。
② 和田倉噴水公園
皇居前広場
皇居前広場と和田倉噴水公園の位置
噴水照明を主体として親しまれてきた照明デザインを踏襲し、省エネルギー
化を図るとともに、メンテナンス性を向上させる。
2
皇居前広場のコンセプト
器具要求性能
灯具仕様
改修前の外灯点灯状況、器具配光、
分光分布の測定結果を図(左)に
示す。改修前(ダブルアークラン
プのナトリウムランプ利用)は、
横広がりの配光で効率よく路面を
照らせず、分光分布も600nm付
近に集中して芝生が光源色に染ま
るという課題があった。
灯具は、広場の雰囲気に調和したデザイン
で 古くから親しまれており、劣化等の問
題もないことから再利用することにした。
これによりイニシャルCO2排出量の低減
が可能である。
LED化改修後のイメージを図
(右)に示す。下方照射の配光と
して効率よく路面を照らすと共に、
滑らかな分光分布を持つ高演色タ
イプのLEDを用いることで、広場
の景色を自然な色味で見せるよう
な仕様を検討した。下方照射の配
光にすることで、灯具全体の輝度
が低減され、広場全体が落ち着い
た雰囲気となる。
主要製造者への事前ヒアリングの
上、LED光源の性能向上の可能性
を織り込み、先端的な光源効率約
70lm/W、Ra85を要求性能とし
た。
改修前
改修前
改修後(イメージ)
付加機能
・灯具ごとに調光可能な仕組み
→設置場所の周辺環境や社会状況により、灯具ごとに必要
となる明るさは異なる。灯具ごとに調光可能な仕組みを
設けることにより、調光あるいは存在のみを知らせる微
点灯(演出)といった、安全・安心と省エネルギーを両
立させた運用が可能となる。
・照射角度が可変な仕組み
→下方照射優先のエリアと横広がりの配光が適したエリア
とがあるため、器具配光の調整が可能な仕組みとした。
100
10
1
器具単体の
水平面照度分布
(照射角度40度)
1lx範囲:12m
器具単体の
水平面照度分布
(照射角度50度)
1lx範囲:14m
皇居前広場
のポール灯
0.1
照度[lx]
照射角度別の水平面照度シミュレーション結果
ポール灯の姿図
3
皇居前広場の技術検討
試験用LEDユニット仕様
照度、輝度確認
要求性能に従った以下のLEDユニットの試作品を用い
て検討を行なった。
照度確認では、ユニット設置位置や配光性能の課題を抽出した。輝度分布確認では、ナ
トリウム灯に比べてLEDの方が最高輝度が低く、グレア発生の可能性が低いことを確認
した。
10800
Ra85
156
3500K
72
11280
Ra85
156
4000K
76
11880
Ra85
156
80
60
輝度分布
NH
220W
40
最大輝度:
8697cd/m2
20
0
10.0
69
8.0
3000K
測定状況
既存器具
(NH220W)
LED器具
100
6.0
電力
(W)
4.0
演色性
2.0
光源光束
(lm)
0.0
光源効率
(lm/W)
水平面照度
照度(lx)
色温度
LED
水平距離(m)
ユニット構成
最大輝度:
3951cd/m2
水平面照度実測結果
(灯具設置高さ2m)
灯具取り付け状況
1
10
100
1000
10000
輝度[cd/m2]
演色性の確認
現地点灯確認
各色温度のLEDユニットについて、色見本やグリーンを用いて色の見え方を
確認した。
現地にてLEDユニットを取り付けた灯具を吊り上げ、昼間・夜間
の見え方、明るさなどを確認し、器具の最終仕様を決定した。
高圧
ナトリウムランプ
2100K
参考
(ハロゲン:
2900K)
LED
3000K
LED
3500K
LED
4000K
ハロゲン LED:
3000K
昼の実験風景
夜の実験風景
灯具を吊り上げている様子
4
皇居前広場の照明器具仕様
改修前
改修後
220W
156W(26W×6モジュール)
光束数
20,000lm
10,800lm
色温度
2,100K
3,000K
25
85
9,000h
40,000h
ランプW数
Ra
定格寿命
灯具に取り付けた
LEDユニット
LEDユニットは6つのモジュールで
構成される。各モジュールはそれぞ
れ単独で40°~50°の範囲で角度
調節が可能である。
光源配置
2色発光形
HIDランプ
(仕様はナトリウムランプ)
LED
モジュール
電源ユニットには調
光つまみがついてお
り、10%~100%の
調光が可能である。
改修後の桜田門周辺の風景
皇居前広場のポール灯
5
LED化改修による光環境の効果(皇居前広場)
照度分布、輝度分布、分光分布、色温度を測定し、光環境の総合評価を実施した。
水平面照度分布は、改修前と比べると灯具から5m以上離れた場合にやや低くなるが、当初設定した水平面照度1lx範囲12mをクリアしている。
輝度分布は、ピーク輝度、平均輝度共に改修前に比べて下がっており、皇居前広場全体を見渡したときのグレアが低減され、全体が落ち着いた雰
囲気となった。分光分布、色温度についても設計仕様を満足しており、緑や桜を美しく表現できることを確認した。
灯具からの距離(m)
11m
9m
7m
高圧ナトリウムランプ
5m
3m
1m
水平面照度(lx)
LED
12.0
10.0
8.0
6.0
4.0
2.0
0.0
改修前後の水平面照度分布
改修後の桜田門周辺の風景
色温度:3079K
1.5
1
0.5
780
740
700
660
620
580
540
500
460
420
0
380
分光放射照度
(μW/cm^2/nm/1000lx)
2
ピーク輝度:84,179cd/m2
波長(nm)
改修後の分光分布
ピーク輝度:18,519cd/m2
改修前
1
10
輝度[cd/m2]
100
改修後
1000
10000
改修前後の輝度分布比較
改修後の二重橋周辺の風景
6
和田倉噴水公園のコンセプト・技術検討
基本方針
和田倉噴水公園は、夜20時まで(夏季は21時まで)ライトアップ演出される夜間の広場機能を備えた噴水公園である。照明デザインは、噴水を美し
く見せる計画で親しまれており、そのまま踏襲することとした。
和田倉噴水公園の改修の課題としては、以下があった。
①高さ8.5mの大噴水を照明するための大容量のLED水中照明が存在していない。
②噴水、水路部分の建築(防水等)工事は影響が大きく、原則として既設の器具スペース、ルートを使用する。
③水路の存在を警告するためのLEDインジケータが、漏水の影響により不点となっている。
④水路両端に設置されたライン照明が、汚れの影響により
点灯を確認できない。
技術検討
LED
改修の課題を解決するため、以下の方法で検討を進めた。
無電極
ランプ
①大容量の水中照明器具の開発。
②現状の器具設置範囲に納まる器具形状とする。
無電極
ランプ
③ LEDインジケータは、独立で点灯できるように太陽電池組
込式に変更する。
④ライン照明は、ライトチューブ形式をとっていたが、LED
テープライトで対応する。汚れによる光量不足の問題が無
い様、水面より上に器具を設置する。
ハロゲン
LED
(光量は1/4)
大噴水用照明の点灯実験
(水しぶき等の見え方の確認)
階段用足下灯の点灯実験
⑤グレアの発生や必要以上の明るさとならないよう、器具一つ
一つについて点灯確認する。明るさだけでなく、水しぶき
や揺らぎまで忠実に再現できる仕様とする。
改修前
太陽電池
組込式
ハロゲン
水中照明納まり検討図
ライン照明の点灯実験
(映り込み確認と改善検討)
LEDインジケータの点灯実験
LED
落水池用照明の点灯実験
(水膜や水の揺らぎ等の見え方の確認)
7
和田倉噴水公園の照明器具仕様
上段:改修前
下段:改修後
噴水照明
A
ハロゲンランプ
噴水照明
B
ハロゲンランプ
LED
ランプ
W数
(W)
光束数
(lm)
色温度
(K)
平均演色
評価数
(Ra)
定格寿命
(h)
130
2,400
2,900
100
2,000
39
2,700
3,000
85
40,000
250
4,500
2,900
100
2,000
78
5,400
3,000
85
40,000
150
37.5W/m
9,000
6,500
69
3,000
-
3,000
85
40,000
①
②
ライン照明
LED
メタルハライドランプ
+ライトチューブ
LEDテープライト
③
LED
インジケータ
4W/m
改修前
0.24
-
-
-
40,000
改修後
(太陽電池式)
0.03
-
-
-
40,000
足下灯
A
無電極ランプ
18
1,000
3,000
80
40,000
LED
6
500
3,000
85
40,000
足下灯
B
無電極ランプ
6
350
3,000
80
40,000
LED
9
750
3,000
85
40,000
改修後の大噴水の風景
④
水中照明の改修器具の納まり
改修後のLEDインジケータ
改修後の落水池の風景
8
LED化改修による光環境の効果(和田倉噴水公園)
改修前後の輝度分布を比較し、水の演出が踏襲できているか確認した。各
要素ごとに輝度分布比較を実施したが、代表として大噴水、落水池の輝度
分布を示す。
改修前、改修後の輝度分布を確認した結果、明るさに若干の違いのあるも
のの、初期照度による問題と考えられ大きな差は発生していない。改修前
のデザインを踏襲できたことを確認した。また、水の揺らぎや細かい水し
ぶきも改修前と同様に表現していることを確認した。
1
10
100
輝度[cd/m2]
改修後の和田倉噴水公園の俯瞰
改修前の大噴水の輝度分布
改修後の大噴水の輝度分布
改修前の落水池の輝度分布
改修後の落水池の輝度分布
改修後の落水池からみた和田倉噴水公園
9
まとめ
改修前後の電力消費量を確認した。
皇居前広場は、効率よく下方照射することで改修
前に比べて横方向の無駄な光を削減し、光の質を
大幅に改善したうえで、改修前の低演色のナトリ
ウムランプに比べて約30%の電力消費量の削減
を実現した。
和田倉噴水公園は、大容量の水中照明器具のLED
化により、約70%と大幅な電力消費量の削減を
実現した。
年間電力消費量(MWh/年)
エネルギー性能
140
120
100
80
60
40
20
0 皇居前広場
改修前
改修後
55Mwh/年
削減率44%
和田倉噴水公園
全体
改修前後の電力消費量の比較
全体では、改修前に比べて約44%の省エネル
ギー化を実現した。
まとめ
改修前の皇居前広場の俯瞰
皇居外苑地区の照明改修では、これまでLEDの課題であったグレアや水
中照明の大容量化等の問題を解決しながらLED化を実現した。静謐性の
確保やこれまでのデザインの踏襲には、様々な課題があったが、器具種
別の点灯確認等の実施により仕様を決定することで、すべてを新しく見
直すのではなく、良い環境を残したまま問題点を解決することができた。
皇居前広場では、LEDユニットで構成した光源としており、他の標準的
なポール灯へ展開が可能である。調光機能の組み込みや、照射角度可変
型の仕組みを導入することにより、新しい外灯のあり方を提案した。東
日本大震災の発生により節電時の外灯のあり方についても注目が集まっ
ている中、間引き点灯ではなく、調光により最低限の明るさを確保する
といった今後の外灯のあり方の一つの答えを示したと考えている。
和田倉噴水公園では、大容量のLED水中照明器具を開発した。LEDは方
向性の強い光源であるために、水の細かい粒子の表現や、多数のLED素
子を用いることによる揺らぎの表現への課題があったが、今回の器具開
発により、大噴水への適用や水の流れの表現が可能となり、LEDの適用
の幅が広がった。
本プロジェクトの成果は、今後の外灯のLED化に大きく貢献するものと
考えている。
改修後の皇居前広場の俯瞰
10
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