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シンポジウム ① 「どうする?20年後の離島周産期

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シンポジウム ① 「どうする?20年後の離島周産期
シンポジウム①
「どうする?20年後の離島周産期医療」
シンポジウム①
「どうする?20 年後の離島周産期医療」
座
長
山下
シンポジスト
1.山口 純子
2.白濵 園美
3.北島
翼
洋(長崎医療センター)
(対馬病院)
(上五島病院)
(五島中央病院)
○座長 :長崎医療センターの産婦人科医長をしております、山下洋と申します。きょうは、こちらの
長崎県地域医療研究会の『どうする 20 年後の離島周産期医療』の座長をということで、八
坂先生から依頼がありましてお引き受けしました。
今回のメインテーマが「地域で「いのち」を支えるために」ということで、生まれ来る命
をどうするかということで、本日は、いろんな職種の方が参加されていますが、皆さんも学
問的にどうこうということじゃなくて、今から 3 人のシンポジストにお話をしていただきま
すので、後からいろいろ質問していただければと思います。
それでは、まず、対馬いづはら病院から山口純子先生、お願いします。
○山口 :今回、2035 年の離島周産期を考えるということで、皆さん、一緒に考えてください。
まず、2015 年の対馬について紹介します。
対馬は現在、人口 32,000 人。ツシマヤマネコは 70~100 頭と言われています。
対馬は、2011 年に上対馬病院という、上対馬にあるお産を取り扱っていた病院の分娩が中
止となり、島内の分娩施設は対馬いづはら病院1施設に統合されました。
2013 年にそれを踏まえまして、へき地・離島周産期フォーラム in 対馬『しまうまの会』を
開催し、住民、医療サイド、行政と島の周産期について話し合いを行いました。
2015 年に対馬病院が開院しています。
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シンポジウム①
対馬の分娩状況ですが、分娩施設は対馬病院1施設、分娩件数は 230 件前後です。母体搬
送は、1 年間に 8 件。新生児搬送は、0.3 件。ここ 2 年間は新生児搬送はなく、3 年前に 1 件
あったのみとなっています。
産婦人科医師は、現在常勤 3 名、平均年齢は 42 歳です。
助産師さんは、平均年齢 39 歳と書いていますが、常勤が 7 名です。ただ、1 名は育児休業
中で、1 名は外来のみで、現在は 5 名で頑張っています。
小児科は、4 名体制で行っています。麻酔科医師が常勤で 1 人います。
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シンポジウム①
対馬の人口推移ですが、2000 年は 4 万人台いたのが、どんどん減少の一途をたどっており、
2015 年には 3 万 2 千人となっております。
分娩数も、6 年前までは島内で 300 件前後あったのが、人口減少に伴いだんだん減少してい
まして、今は 230 件前後となっています。
2035 年の対馬の人口を推計したものですが、人口自体は 1 万 5 千人台で、生産年齢人口が 3
分の 1、年少人口は 4 分の 1、高齢者が半数以上を占めるようになってくると見込まれます。
これを踏まえまして、分娩状況はどうなるか。これはただ 3 分の 1 にしただけなのですが、
78 件。少子化が進むとさらに少なくなる可能性があります。
ここで、全国離島、ほかの離島の分娩状況について調べてみました。
日本全国には 410 余りの有人離島があるんですが、現在、分娩を行っている島というのは
16 島だけでした。長崎県に既に 4 島あるので、壱岐、対馬、上五島、下五島を除いた 12 島に
ついて示しています。
人口が 1 万人を切っているところで分娩を取り扱っているのは、東京都の大島、八丈島だ
けでした。あとは大離島でお産が続けられているのと、沖縄本島は除いているんですが、本島
以外は宮古島と石垣島に集約しているという形で、そこに医療スタッフも集まっているといっ
た感じでした。
分娩施設自体は 21 あるんですが、
そのうちの 10 カ所は産婦人科が 1 人体制で行っています。
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シンポジウム①
助産師自体は集約したところは多いんですが、それ以外、お産が 300 件以外のところでは 2
人~7 人体制で行っていて、そこの中でも+1 とか+2 にしているのは、非常勤とか外来のみ
の方も多く、少ない人数で頑張っているという感じでした。
これまでほかのお産危機についても調べました。
産科医療崩壊の幕開けと言われていたのが隠岐の島です。隠岐の島は、2006 年に島根の県
立病院から産婦人科医師を 2 名派遣されていたんですけれども、派遣が中止となってお産の継
続が困難となったところに、島根の自治医大卒で隠岐病院で内科をされ、プライマリケア医と
して活躍されていた加藤医師が、奥様が助産師さんで、産婦人科医にならないと離婚するわよ
と奥さんに脅されて産婦人科医になり着任されています。今は 1 人体制じゃなければというこ
とで、県立病院からの派遣医師がもう 1 名来て、そのときに院内助産も開始して、今、分娩を
扱っています。
隠岐は、今 120 件前後で、30 件ぐらい院内助産で扱っていて、上五島と似たような分娩件
数になっています。
子宝の島として名高い徳之島や種子島でも分娩危機が数回訪れています。徳之島は、ここに
書いてある後にも産婦人科医師が着任する・しないという話があって、現在は何とか確保して、
2 名体制で行っています。
2000 年に入って、喜界島、久米島、この辺は 1 万人以下の離島なんですけど、分娩中止に
なっています。
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シンポジウム①
どこまで離島でお産ができるのでしょう。
・人口が 1 万人を切るのか?
・分娩数が 100 件/年? 50 件/年?
・産婦人科医は 1 人でやっていけるんでしょうか?
・財源は?
ということで考えました。
これは、さっき言った種子島が分娩危機に陥ったときに、種子島で島民と行政と医療サイド
と集まって、種子島は個人の産婦人科院が休診を宣言したんですけれども、種子島にある公立
病院の麻酔科の先生が音頭をとられてみんなで話し合ったときに出された、島内で分娩をする
ことによる経済効果です。社会補償費のお産にまつわる病院収入が島内に支出されるというこ
とと、お産にまつわる人件費、島内に個人消費など税収で還元される、二次的経済効果がある
ということと、あともう一つ大きいのは、島外で出産による個人負担が今後も問題になってく
ると思います。
離島でお産ができなくなると、島外での分娩施設でのお産になるんですけど、今、小離島、
小値賀でもやられているんですが、出産支援事業として、お産の際や妊婦健診の交通費、お産
も予定日の 1 日前に行けばいいわけじゃなくて、やはり 1 カ月前から待機しないといけない。
その間の産前産後の宿泊費を負担する。そこまでは出されているところが多いんですけど、そ
の間の家族の滞在費や 2 人目、3 人目の妊婦さんにはお子さんをどうするかとか、お子さんを
預けるのかとか、その辺の問題も出てきます。そういうのが出てくると、出産抑止につながり、
人口減少や若者の島外流出は加速していくのではないかと考えられます。
私も昨年島外分娩を経験しました。私の場合は、双子の妊娠だったというのと、第一子のと
きに上五島からヘリ搬送されたというハイリスク妊婦だったのでしようがなかったんですけ
ど、長崎医療センターでお産をしました。私の場合は長崎の夫の実家に滞在できたんですが、
島外分娩というのは結構、その間に上の子はどうしてるだろうかとか、精神的な負担も大きい
し、妊娠中というのは不安定になるときに、何もない人はホテルで一人滞在するときの不安な
気持ちを考えると、やっぱり島外出産というのは大変だなと。力の続く限りお産を続けたいと
言いたいところではあるんですが、産婦人科医師確保の問題もあるし、沖縄みたいに集約が必
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シンポジウム①
要なのかと思います。ただ、頑張りたいと言っているだけでは、医者もスタッフもみんな真っ
白な灰になってしまうのでは、と思います。
何が問題なんでしょうか?
問題は、産婦人科医が孤独だということが一つあるかなと思います。産婦人科は科の特殊性
というか、診療自体の特殊性や、女性のデリケートな部分を扱うということもあって、なかな
か他科からの応援が得られにくい状況に、他科から手を出しにくい状況にあるかなと思います。
これは離島に限らず、お産というのが昼夜がないため勤務体制が過酷になってくるので、産
科医師が離島だけじゃなくて地域や都市部でも産科医師不足が深刻になってきています。お母
さんと赤ちゃんの笑顔を見てたら頑張れるけど、それだけではやっていけないですね。
ここで、他の国ではどうなっているかというのを見ると、ほかの国では産婦人科医ももちろ
んお産をとっているんですが、家庭医、助産師さんが活躍していて、イギリスやニュージーラ
ンドでは産婦人科医の出番のほうが少ないといった感じです。
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シンポジウム①
日本はどうなっているかというと、日本のほうが特殊な状況にあって、病院で産婦人科医師
が立ち会う分娩がほとんどになっています。これは日本人の民族性、専門医志向というのもあ
るかもしれないし、あと、家庭医自体のなじみが少ないというのもあるかもしれません。家庭
医自体も、産婦人科医が分娩の主流となっているところでなかなか手を出しづらい状況になる
のが一つ問題だと思います。
じゃ、どうすればいいんでしょうか。
このシンポジウムの話をもらって、1 カ月寝ずに考えたプランがあります。それが、20 年後
の『しまのうまれる』を守るためにということで、「しまうま構想」を考えました。
孤独な産婦人科医のために仲間を増やすことが必要かと思います。産婦人科医が一人でやっ
ていくときに、助けが必要になってきます。日本の妊婦さんたちとか、ほかの医療スタッフさ
えも産婦人科医でない人がお産を診るなんて、妊婦さんを診るなんてという先入観というか、
思いがまずあります。
今度、産婦人科の新専門医制度では、離島が関連施設になりにくいとなって、産婦人科医師
確保がさらに困難になる可能性があります。
家庭医を目指している若い先生たちの中には、きっとウィメンズヘルスケアやお産まで扱
いたいと思っている医者もきっといるはずかなと考えました。
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シンポジウム①
そこで、その先生たちに 1 年程度の産科件数(お産 100 例以上)を経て、ローリスクの妊婦
健診を扱うことのできるバースプロバイダー(仮称)を認定する制度をつくります。そうする
と、安心感があるというのと、家庭医が診ることに対して一定の技量に対しての水準が得られ
るかなということがねらいです。
ローリスク妊婦健診・分娩は助産師さん、もちろん院内助産とかもいいでしょうけど、助産
師さんやバースプロバイダーで対応して、産婦人科医師も 1 人体制でいるところで何かがあっ
た場合、合併症がある、リスクがある場合、でも島で診れるレベルだったら産婦人科専門医が
登場します。もちろん、ローリスクに対しても要所要所でスクリーニングなどを行います。帝
王切開のときには一緒に行います。
ハイリスク症例に関しては、今までと同じように総合周産期センターへ相談します。
これを続けていけば、離島で未来永劫お産を続けるというのは現実的な話ではないと思うの
で、離島や地域で分娩中止になっても、妊婦さんを追い出すわけにいかないので、妊婦さんを
診ることができる。
もう一つ、総合外科医を養成します。
皆さんは総合診療医の先生や総合外科医の先生ばかりなのかもしれませんが、内科では既に
幅広く診療しているのに、外科医にも取り入れて、外科医として幅広く診療します。
離島地域の手術症例自体は、人口減少や医療を集約することによって減っていく可能性がある
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シンポジウム①
というのと、産婦人科だけじゃなく泌尿器科の医師不足も深刻なので、離島の外科医として離
島独自のプログラムを組んで、外科・麻酔科・産婦人科・泌尿器科を研修する。もちろんその
人たちや興味があるバースプロバイダーを併せ持ったりするし、帝王切開など緊急時に助ける
ことができる。こういう医師を養成します。
もう一つ、これは実際に行うことができるものですが、ITを駆使する。
モバイルCTGというのは、産婦人科医外の人にはなじみがないかもしれないですが、赤ち
ゃんの元気さとお産の陣痛を見る機械です。これを妊婦健診のときにつけたり、お産のときに
つけたりするんですけども、これがあれば自宅や妊婦健診の場でつけたのを、医師のモバイル
端末、アイパッドとか携帯電話にも飛んできて確認することができます。
こちらは徳之島と奄美をつないでる妊婦健診の、これはデモでまだされてはいないんですけ
ど、実際に助産師さんがエコーする像を奄美の医師が確認して、妊婦健診を遠隔地でも助産師
さんやバースプロバイダーの手で行いながらオンラインで相談できる。妊婦さん自身の話も聞
けるといった遠隔診療も検討できます。対馬のしまうまの会でも実際に行いました。
もう一つ、これは皆さんご存じだとうれしいんですけど、ALSO、BLSOと言って産科
の救急や病院前救急の講習会。さっきも話しましたが、お産がなくなっても妊婦さんは近くに
いるので、緊急時というのは起こる可能性があります。
これは車中分娩を取り扱っているところですけれども、こういうのが起こったり、飛び込み
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シンポジウム①
分娩の隠れ妊婦がいたりすると、お産を扱わないといけなくなったりする可能性があるので、
こういうトレーニングをする。BLSやACLSの産科版と思ってもらえたらいいかなと思い
ます。
もう一つは、お産の 20 年後の周産期の問題というのは、医療スタッフだけが考えればいい
ものではなくて、行政や住民と話をすり合わせていって、どうしていくかを考えないといけな
いと思います。対馬は対馬で、上五島は上五島、下五島は下五島、壱岐は壱岐で考えていかな
いといけないので、しまうまの会は問題を提起してみんなで考えることができたのを、何回も
ミニしまうまとして会をしていかなければいけないのではないかなと思います。
産科はなかなか取っつきにくいので、今、対馬で始めているんですけど、見ていて楽しいと
いうのと、気軽にしやすいということで、胎児エコーから。これは対馬病院の小児科の先生が
エコーをしているところですけど、小児科の先生や助産師さん、検査技師さんも最近は胎児エ
コーをされる方もいらっしゃるので、みんなでエコーをして少しずつ妊婦さんになじんでいく
というのをしています。
この構想には必ずバックアップが必要になってきます。離島だけではやっていけないので、
長崎医療センター、長崎大学のバックアップを得ながらやっていきたいと思います。
2035 年の離島の周産期を守るために、皆さんよろしくお願いします。
○座長 :山口先生、ありがとうございました。どうしてもここで聞いておきたいということがなけれ
ば、時間もかなり過ぎてきているので、次の白濵さんにお願いしたいと思うんですが、よろ
しいですか。
それでは、白濵園美さん、お願いします。
○白濵 :
「20 年後のお産」上五島病院 白濵園美
当院の産婦人科を紹介します。
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シンポジウム①
上五島で唯一の分娩施設です。産婦人科、小児科、そして主に内科、整形外科など、あらゆる
科の患者を担当しています。
患者の特徴としては、入院患者のほとんどが 75 歳以上の女性です。
スタッフは看護師 17 名、助産師 6 名です。アイランドナース、ジャパンハート、派遣ナース
の 4 名を含んでいます。助産師は、平成 16 年以降新規採用がなく、平均年齢が 40.8 歳で、35
歳が最年少です。
産婦人科医は 2 名で、長崎医療センターより派遣されています。
勤務体制は三交代制で、分娩に関しては拘束制であり、スタッフ減少のために拘束を連日を行
うこともあります。
助産師は助産業務と看護業務を兼任しています。毎日一人が産婦人科外来担当となり、助産師
外来、母親学級での妊婦指導、おっぱい外来での産後の育児支援を行っています。
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シンポジウム①
そのほかに、町の保健師とカンファレンスを 2 カ月に 1 回行い、出生連絡表を用いて町との情
報交流を行うなど、継続した援助を行っています。
島というコミュニティーだからこそ妊産婦の背景がわかり、情報も共有しやすく、外来から入
院中、退院後まで継続した関わりを持つことができるため、信頼関係を構築しやすい一面もあり
ます。
近年の分娩傾向ですが、切迫早産、妊娠高血圧症候群、高齢、若年妊娠など、ハイリスクの増
加が見られます。
当院の分娩状況ですが、2003 年は年間 234 例でしたが、年次ごとの変動はあるものの、減少
傾向にあります。
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シンポジウム①
現在住んでいる新上五島町の人口は 2 万 684 人ですが、20 年後の 2035 年には総数 1 万 1,946
人、生産年齢 4,790 人と予測され、直線的に減少していきます。
この人口推移の予測から、今後の上五島での分娩件数は 2015 年 118 件、20 年後の 2035 年に
は年間 24 件と推計されています。
分娩件数の減少が進めば、年間 35 件でマイナス収支になると予測されており、このままでい
くと 15 年後の 2030 年が分岐点となります。さらに、補助金なしとなれば、2022 年の年間 72
件でマイナス収支となるため、近い将来、早い段階で分娩施設としての機能を果たせない可能性
があります。
これまで述べてきた現状や 20 年後の予測を踏まえ、現在助産師としての役割や業務内容、勤
務体制について、あと 20 年後どうなってほしいか、どうしていったらよいか、記述調査を行い
ました。
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シンポジウム①
現状では分娩件数は減少しましたが、ハイリスク分娩の増加、さらに混合病棟での他科の割合
が増えた今日、助産師は看護師としての役割を兼ねることが多くなりました。さらに、看護師不
足もあり三交代勤務・連続拘束など、過酷な勤務も余儀なくされています。その中で、他科、高
齢、認知患者も分娩進行者と同時にケアを要求されることが常態化しており、助産師としては十
分なケアを提供することさえ難しくなっています。
お産は無事に安全に生まれてくるという概念に対して、困難を要することが多く、精神的、身
体的な疲労、ストレス、悩みは計り知れません。中には、家庭を持ち母となり、仕事と両立する
上で「離職」という文字が思い浮かぶことも少なくなかったです。
でも、島で唯一の分娩施設であり、妊産婦を守るのは自分たちしかいないという使命感に支え
られて今日までやってきました。さらに、産婦人科医不足も課題です。
長崎医療センターの応援にて支えられていますが、今後、医師が常在しない時代が来る可能性
が高いです。院内助産院を示唆して他施設を見学、検討したこともありましたが、現在置かれて
いる助産婦の業務体制とマンパワー不足では困難と考えています。
平成 16 年以降、助産師の新規雇用がない中、次世代へつなぐ「タスキ」を誰に渡せばよいの
かと模索をしています。
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シンポジウム①
20 年後当院の状況予測として、産婦人科医師 0 名、助産師 0~3 名となり、当院の分娩体制は
維持不能となる可能性が高いです。
もし島で分娩ができなくなれば、都市部へ集約化される可能性が高いです。そのときに、分娩
時の交通費や宿泊費助成など行政のバックアップが必要だと考えています。しかし、早産や未受
診分娩、島での急な出産など、予期せぬ事態も考えられます。守れるはずの尊い命も救えず、愛
する人を失う悲劇を起こさないようにしたいと考えます。
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シンポジウム①
対策として、現在長崎医療センターからの医師やアイランドナース、派遣体制にも助けられて
いますが、長期に携わることができるスタッフの確保や地元からの人材育成が求められます。そ
のために、現スタッフが働きやすく、そしてスキルアップが図れる職場環境・勤務体制の改善が
必要です。
20 年後、分娩ができなくなっても助産師は助産師外来での保健指導、おっぱい外来での産後育
児支援など、今後も継続的に妊産婦を支援していきたいと思います。また、都市部からの医師応
援で月 1 回の妊婦健診を行ってもらうことなども考えています。
まとめ。
このように 20 年後はかなり厳しい状況下にあることが予測されます。莫大な赤字を抱えるこ
とが前提ですが、人的・財的な無尽蔵の支援さえいただければ、当地区の産婦人科医療は継続で
きると考えます。
さらに、これから妊娠・出産を迎える方、さらにその子・孫の世代に引き継がれていく出産・
周産期をどのような状況下でも我々助産師は存在する限り、全面的に支えていくという使命感を
持ち続けたいと考えています。
20 年後は……②
20 年後の……(笑)どなたかわかりますか?
ご清聴ありがとうございました。
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シンポジウム①
○座長 :ありがとうございました。
次に、小児科の立場でということで、五島中央病院の北島翼先生お願いします。
○北島 :五島中央病院小児科の北島です。
僕のほうからは、五島市の現状と五島市に関しての話をさせていただくのと、今まではど
ちらかというと産科側の産婦人科の先生と助産師の方からの視点でしたけれども、小児科側
から、赤ちゃん側からの視点ということでお話をさせてもらいたいと思います。お題をいた
だいたときに暗い内容だなぁと思ったので、左上のほうにゆるキャラのつばきねこを入れさ
せてもらいました。
最初に、大まかな僕の意見としてまとめさせてもらいましたけども、現状としては、離島
周産期が今後縮小していくことは間違いないと思います。20 年後のことを考えたときには、
分娩を継続できる地域とできない地域というのが確実に分かれてきますので、分娩を継続で
きる地域はニーズにこたえられるだけのレベルを維持、向上していくことが必要ですし、分
娩を継続できなくなったところでは、逆に、お産だけじゃないということの周産期への考え
方というのを新たにしていく必要があるんじゃないかと思っています。
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シンポジウム①
五島市の紹介ですけれども、五島市の分娩施設は、地域の基幹病院である五島中央病院の
ほかに開業の産院が 1 つあります。
五島中央病院の中で話をしますと、産婦人科の常勤の医師は大学からの派遣の医師が
2 名、助産師は 10 名、うち派遣が 2 名です。小児科は、常勤が 1 名、平日は大学の医局か
らの応援が日替わりや 2 日交代で来ていただいているという状態です。
帝王切開はすべて五島中央病院で行っています。
五島市も、ほかの地区と変わりなく少子高齢化が進んでおり、今後の人口の試算としても
減っていくのは間違いないです。
出生数と死亡数の推移を見ましても、死亡数はもちろん増えてきているんですけども、出
生数も減ってきている状態です。
先ほどは出生数で五島市の住所の方のデータなんですけれども、五島市で分娩された方の
データとしてまとめておりますが、水色が五島中央病院、緑色が福江産婦人科の開業産院の
分娩数ですけれども、全体的に低下傾向なのは間違いありません。
それに、新生児搬送、母体搬送の年間の推移を表してみましたけれども、こちらに関して
は分娩数が減ってくるからといって、ハイリスクな妊婦さんであったり、生まれてからの不
可避な新生児の集中治療を要するような状態のお子さんが減るということは決してないと
いうのが実情かなと思っています。
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シンポジウム①
まとめると、五島市としては開業の産院もあります。年間の分娩数は緩やかに減少してき
ておりますが、分娩数と搬送の症例数というのは決して相関するものではないかなと。一定
数の搬送症例というのはやはりずっとついていくものだろうと思っています。
里帰り出産、五島市の住所の方と分娩数の差の分を計算すると、大体年間 50~80 例程度
で、それは大きく変動はありません。そうすると、里帰り出産の比率が増加しているという
のがあるかなと思っています。島内に在住されている方と里帰りで都市部から来られた方と
いうのは少し差があるかなというのが、臨床していての実感としてはあります。
全国での新生児医療の進歩ということで少し広い視点で考えると、ハイリスクの出産や新
生児というのは確実に年々増加してきている傾向にあるんですけれども、それでも新生児・
乳児死亡率というのは、近年減少してきています。最近、下がり止まってきている傾向はあ
るんですけれども、そういったものというのは胎児診断の技術だったりとか、新生児医療体
制の整備だったり、医療機器の進歩、新生児医療の進歩ということが大きく寄与しているか
と思います。
結果的に命を助けるということだけが新生児医療の目的ではなくなってきていて、いかに
障害を残さずに命を助けていくかということが、今の新生児医療のメインのアウトカムにな
ってきているかなと思います。
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シンポジウム①
離島で診ていく子に関して言うと、不可避で生まれてしまった仮死のお子さんなどに対し
ての初期対応、いかに早く高次医療機関につないで脳低温療法などにつないでいくかという
ことが、かなり予後に関わってくることにもなりますし、34~37 週の後期早産、レイトプ
レタムバースと言われる子たちのケアについても、そのケアの差で将来的な知的な部分であ
ったりとか、運動機能であったりとか、そういったことに差が出てくるんじゃないかという
のは少しずつ出てきていますので、今は明るみになっていないことというのが少しずつ出て
くる可能性があります。
お母さん方、ご家族のニーズを考えたときに、大きく分けると 2 つのニーズに分かれるの
かなと思います。地元で出産したいであったりとか、やはり不慣れな土地ではなくて自分の
ところで産みたい、もしかすると、「しまうまの会」というのがありましたけども、島で生
まれた子というのがいいなと思っている方もいらっしゃるかもしれません。
現実問題として、産前産後のお世話をしてもらえる人が周りにいないし、島の経済を維持
するためにというのもあるかもしれません。
あとは、出産は安全にしたい。安全性に対してのニーズというのももちろんあって、利便
性、経済面に対するニーズと、安全性に対してのニーズというのが大きく分かれるかと思い
ますが、そういったものがある程度てんびんにかけられるところがあるかなと。
実際、小児科側の立場として、赤ちゃん側の立場としていくと、やはり安全面を重視した
ところというのは、どうしてもこちら側としてはそういった視点になるかなとは思います。
小児科医として考えることとしては。分娩件数としては確実に減っていきます。ですが、
世論としてはどんどん安全な周産期を求める世論となってきていますので、一定の医療水準
を維持することが困難となれば、その地区で周産期を続けていくことは困難になってくるん
じゃないかと思います。その中でも分娩を続けるのであれば、やはり医師や看護師のスキル
アップや維持のための継続的な研修であったりとか、継続的な派遣であったりとか、そうい
ったことが必要になると思いますし、頻度が少なく高額であっても、安全性を重視した機材
の購入や経済的なサポートをもらう必要があると思います。
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シンポジウム①
ですが、実際問題として医療経済的なことを、人材不足ということを考えると、どこまで
も周産期を離島で続けるのは困難であることは明らかかなと。そうすると、いかにして分娩
を続けるかという議論も大切だとは思うんですけれども、いつかは必ず続けられなくなると
きが来る。あとは、地域の方のニーズとして、いつかは少ない分娩数でやっている施設より
も、できるだけ安全なところを求めてということで、本土でやりたいというご家族も出てく
ると思いますので、そういった方たちのサポートも必要になってくると思います。分娩を続
けられなくなったときにどのような体制をとるかということを、より議論していくことのほ
うが将来的には大事になってくるのではないかと思います。
20 年後ということを考えると、五島市に限って言うと、年間 100 少しの分娩数は維持し
ているだろうと考えられますので、分娩を続けていくからには離島の周産期として縮小して
いくのではなくて、機能の維持と技術の向上をしていく必要がありますし、安全面を重視し
た機材というのは購入していく必要があると思います。
反対に、特に上五島であったりとか、小規模な離島になると分娩を維持することが困難に
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シンポジウム①
なってくると思いますので、行政と協力して何とかご家族のサポートも含めて、妊婦さんの
サポートを含めて、本土もしくは上五島から五島でということで出産をするような体制を整
える必要がありますし、分娩をしないとしても妊婦さんはいるわけで、妊婦さんに対しての
初期管理というのはやっていく必要があるだろうと。五島市に関して言うと、安全性に関し
てはどんどんニーズが増えていくので、それに対応した機能の維持向上をしていく必要があ
りますし、分娩を維持できない地域では、分娩ができなくても妊婦さんの管理ができる体制
を整える必要があると思います。先ほど、山口先生からのお話もあったように、産婦人科の
医師が少なくなっていく中で、妊婦さんの管理をどうするかということになると、産婦人科
の応援体制というのはもう一度見直していただく必要があるとは思うんですけれども、産婦
人科を診れる総合診療医という方を増やしていくことというのは、その方だけがいて分娩を
続けるというのは、小児科側としては安全面のことを考えると、あまり推奨してもらいたく
はないのが本心かなと思いますけれども、そういった方と産婦人科の先生とが協力してやっ
ていっていただくことは必要なのかなと。
また、予期せぬ分娩というのは確実に起きると思いますので、それに対しての産科側の体
制と小児科側としても、それに対しては対応できる最低限の機能は維持してく必要があるだ
ろうと思います。
20 年後、お産ができなくなった地域での周産期医療を考えたときに、今の生まれた後の子
どもを診る立場の僕たちとしては、決してお産が減ってきているから問題がある人たちが減
ってきているわけでは全然なくて、低年齢での出産もやはりいますし、お母さん方もストレ
スにさらされて、ストレスに弱いお母さん方も増えてきているかもしれません。また家庭環
境も複雑になってきたり、お子さん自身がかなり手のかかる子というか、発達障害を含めて
ケアが必要になるお子さんたちもかなり増えています。
そういった中で、周産期というのは決して分娩だけではないということで周産期を考えて
いく必要があるかなと。まずは、妊娠の性教育の部分から含めて、子どもたちが独り立ちし
ていくまでのサポートという意味で周産期を考えていく必要があるかなと。そういったとこ
ろで今後お産を続けられなくなった地域でも、助産師さんたちの技術というのは十分使って
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シンポジウム①
いけるところじゃないかなと思います。
先ほど「しまうまの会」というのがありましたけれども、島で生まれるということが主体
の医療から、島で育つということを主体の医療にということで、ある程度転換も必要になっ
てくるのではないかというのが僕としての意見です。ありがとうございました。
○座長 :ありがとうございました。時間がかなりオーバーしていますので、申し訳ありませんが、急
いで登壇していただいてよろしいでしょうか。
最初に山口先生から、家庭医などからバースプロバイダーの認定をしてみるとか、総合外
科医の養成とか、ALSO・BLSOにいろんな職種の方が関わっていく。行政や住民の方
にも、お産が減っていき、産婦人科医や施設がなくなるかもしれないということをいろいろ
考えてもらう機会をつくるという話。
白濵さんからは、助産師の立場としてやっていく。上五島では将来的には、ずっと分娩を
続けていくことは困難だけど、ただ、島に帰ってくる子どもたち、お母さんたちがいるので、
母乳の状態を診てあげたりとかいろいろケアをしていく必要があるから、やっぱり助産師と
いうのは要るだろうという話。
北島先生は、五島と上五島を比較して、五島のほうではまだ維持できるけど、上五島はき
つい、だんだん分娩が減ってくる。分娩が続けられなくなったときの体制ということで、こ
の意味としては、分娩には産婦人科医が関わっていますけど、それ以外の離島で勤務する内
科の先生、外科の先生、整形外科の先生たちが不可抗力な出産に立ち会うことがあるかもし
れないということについて、問題を提起してくれたのじゃないかなと思いますが、会場のほ
うから何でもよろしいので、意見や質問などありましたらお願いします。
○フロア:上対馬病院の立花です。
いい発表というか、つらい発表お疲れさまでした。
先ほどから発表があっていますが、私、上対馬病院に着任したころが、お産が 80 くらい
ありました。先ほど発表されましたように、2011 年、やめたときがお産の数が年間 24 ぐら
いでした。旧上県町と旧上対馬町の 2 つの町です。人口が約 7,000 人です。そんな中でやっ
ていると、今回のテーマで言うところの大体 20 年先ぐらいが上対馬で起こっていることじ
ゃないかなぁと思われます。実際問題、やめた理由の 1 つは、より安全なお産、外科医がい
なくなったということで、帝王切開ができなくなる。そういうふうなことでお産を中止した
わけで、経済的に対馬市からの支援も十分いただいておりましたので、赤字だからやめたと
いうことではありませんでした。今現在やっていることというのは、週一の定期の産婦人科
の妊婦外来です。小児科も随分地域で減ってきています。実際にそうなってくると、小児科
外来自体が成り立たなくなってきます。私自身ずっと長らく小児科をやっていましたが、現
在、少ない日は 2 人とか、20 人しか生まれない地域では、やはり小児科は成り立っていか
ないですね。だんだんそういうふうなのが各地域で問題になってきますが、北島先生のおっ
しゃるように、やはりどんな地域であってもより安全なお産も必要ですし、また、それをし
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シンポジウム①
っかりケアできる小児科医も絶対に必要なので、これから起こり得ることというのは大体そ
ういうふうなことではないかなぁと感じました。どうもありがとうございました。
○座長 :実は、上対馬のほうにちょうど分娩を停止したということで、このテーマに合うかなという
ことで、ご意見をお願いしようかなと思っていたところでした。どうもありがとうございま
した。
○フロア:上五島病院の外来で勤務しています、石川です。
私自身も大好きな分野でして、本当に興味深く聞くことができました。お疲れさまでした。
ありがとうございました。
助産師の立場として白濵さんに質問なんですけれども、今の現状を見据えての 20 年後のこ
とだと思うんですけども、分娩数が減少する中、もしかしたら数年後、ひょっとしたら数カ
月後に医師の派遣ができないという現状に立ったときに、助産師として具体的にどういうこ
とを考えているかというのを教えてほしいんですけど。
○白濵 :院内助産院の検討をしてみたのですが、やはり医者がいなくなったときに、安全を考えると
赤ちゃんの命がかかっているので、自分たちにそれだけの力量があるのかというと、かなり
スキルアップを図っていないと、赤ちゃんを死なせてしまって怖いなという部分があるので、
院内助産院というのがやはり検討したときにも、私自身も怖いなぁとすごく思った部分があ
ります。だから、院内助産院をやっている方のところは、助産婦さんとしてのスキルがすご
く高いだろうと思っています。
聖隷浜松病院に私は見学に行かせてもらったんですけれども、分娩部として院内助産部があ
って、すぐ病棟に搬送できる状態であれば可能なのかなぁと思いました。今みたいな混合病
棟の勤務状況では無理なのかなと思っています。
○フロア:守られた環境の中でとか、与えられた環境の中で助産師としての専門性を生かしていくのか、
助産師としてもっと、地域の助産師なので、もっと地域の妊婦さんとか、それに関わる人た
ちのことを考えて、周囲を動かせるような行動をとっていってもらいたいなぁと、私という
か、多分地域の人たちも思っていると思うんですけど、以前、上五島地区が里帰りを受け入
れなかった時代に、先生はいないけど助産師さんは何をしてくれるのという地域の声を聞い
たことがあって、山口先生とか北島先生のお話の中にも出てきたと思うんですけども、お産
はできなくてもすることがいっぱいある、実際そうなんですけど、そういうところから、今
からでもいいので少しずつ取り組みをしていって、周囲を動かせる力をつけてほしいなと思
っています。
助産師の仕事というのは、安心した妊娠・分娩・育児環境を整えるということと、助産師と
しての質とか量を仕事をしながら高めていかなくちゃいけないと思うので、今後、お産がな
くなっても妊婦さんは 1 人でも 2 人でも残るはずなので、その人たちのためにしっかり今後
に向けて働きをしてほしいなと思っています。
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シンポジウム①
○白濵 :ありがとうございます。参考にさせていただきます。
○フロア:壱岐病院の向原です。
2 つありまして、1 つは、山口先生がおっしゃったように、産科医がいないときにプライマ
リケア医というか、総合外科医というか、ほかの診療科の先生がそこに関与する。大変すば
らしいことだと思うんですが、僕の経験から言うと、奈留島に最初に行ったときに、産婦人
科がいないので、6 カ月のうち 2 カ月産婦人科を研修して、1 人お産に立ち会うことができ
たんですが、そういう緊急避難的なことはいいんですが、最も重要なのはハイリスクのケア
ができて、早めにそういうのを見極めて専門医に送ることが重要かなと思うんですけど、2
年間の初期研修のうちに、どのくらい時間を割くと先生が提言したようなことが可能になる
んでしょうか。
○山口 :正直 2 年間の初期研修では厳しいのかなと、どうですかね、山下先生。
○座長 :実際、初期研修の中でいろんな科を回って経験するというところもありますので、産婦人科
だけをこういう離島のほうに出てこられる自治医の先生たちとか、離島医療圏の企業団の先
生方とかが回るというのは難しいかもしれないんです。今、僕がよく関わっている研修医の
先生たちの中で、離島に行く先生たちはかなり積極的に、産婦人科の研修もお産についてく
れるし、帝王切開なんかにしても、もしかしたら自分が前立になるんじゃないかという気持
ちでやってくれるし、麻酔をするんじゃないかという立場で、という気持ちは結構みんな、
そういうアクティブな気持ちはあるんですよね。
ただ、それだけで 1 人でというのは無理なので、今の感じだったら産婦人科が 1 人いてサポ
ーターになってもらえばいいのかなというところぐらいなので、レジデントぐらいのときに
また、可能だったら 3 カ月とかそういうところでも回っていただけると、また違うのかなと
思います。
○フロア:ぜひ進めてほしいと思います。
2 つ目は、意見というよりはお知らせというか、皆さんにぜひ知っていただきたいというこ
とです。
「すくすく」という、母子周産期小児発達支援システムというのを、県にいたときに作り始
めてて、やっと医師会の森崎先生を中心に実働し始めました。要は、妊婦健診のデータを助
産師さんが中心に日々入れてて、母子周産期センターは県内に 4 つ(大学、市民病院、医療
センター、佐世保)ありますが、そこへデータが瞬時に飛ぶというシステムです。活用も随
分、登録患者数も増えてきているように聞いておりますので、ぜひ興味のある方はあじさい
ネットの中で動かしていますので、お問い合わせをいただければ。離島にもぜひ進めていき
たいと考えていますので、壱岐には今年中に入れることにしておりますので、また離島での
活用ということの参考にもなると思いますので、興味を持った方はご連絡いただければと思
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シンポジウム①
います。
○座長 :時間になってきたんですけど、このテーマを選ばれた八坂先生に最後にコメントなり、今後
お産も減ってくるかもしれないし、そこに産婦人科がいないかもしれない。その間の過程の
ところで総合外科医なり離島で勤務する医師が産科的なトレーニングをやっていくとか、そ
ういうことに対する先生のコメントとか考えを教えていただければと思います。
○八坂 :きょう、皆さんの発表を聞いてやはり分娩をするには産科医 1 人は必要だと思っています。
そして、その周りを総合医、家庭医、助産師、皆さんがどれだけバックアップするかだと思
います。5,000~8,000 人ぐらいまでの地域人口でお産が年間 20~30 件以上あればぎりぎり
やれると思いますが、人口が 3,000 人、2,000 人を切ってくると、産科を運営するのは恐ら
く無理になってくる。ですから、そこのぎりぎりのところまで頑張ることがまず大切でしょ
う。そして、頑張れなくなれば、次は家庭医や助産師が島にいる妊婦のハイリスクを早く見
つけて、適切な指導、あるいは出張診療を婦人科医にやっていただきながら、外でお産をす
ることになりますが、なるべく早く帰ってこれるような環境づくりや経済的支援や、北島先
生がさっき言われた子育てというところをしっかり取り組むような形を作るべきじゃない
のかなと考えます。私は上五島にいますが、上五島の人口が 5,000 人以下にならないように
したいというのが目標であり、お産を守る方法であると思っています。
どうもありがとうございました。
○座長 :ありがとうございました。
きょうは医療サイドの方だけの話し合いになっていますけど、本当はそこで産む人たち、住
民の人たちはどう思っているのかということが一番大事なのかもしれないと考えています
ので、もっともっといろいろ議論を進めていかないといけないと思います。皆さんもこれを
機会にそれぞれ考えていただければと思います。
すみません、座長の不手際で時間がオーバーしていましました。
どうもありがとうございました。
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