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GE-PON FTTHシステム向け光トランシーバモジュール

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GE-PON FTTHシステム向け光トランシーバモジュール
小特集:光技術の研究開発/光アクセス系 GE- PON F T TH システム向け光トランシーバモジュール
小特集 光技術の研究開発/光アクセス系
GE-PON FTTHシステム向け光トランシーバモジュール
Optical Transceiver Modules for the Gigabit Ethernet-PON FTTH System
岩 瀬 正 幸*
石 川 陽 三*
小 松 拓 也*
笠 原 淳 一*
服 部 伸 彦*
三 浦 昌 之*
中 村 尚 人*
尾 高 邦 雄*
Masayuki Iwase
Nobuhiko Hattori
Yozo Ishikawa
Masayuki Miura
Takuya Komatsu
Junichi Kasahara
Naoto Nakamura
Kunio Odaka
概要 GE-PON FTTH(gigabit ethernet-passive optical network fiber to the home)システムは,
次期光通信アクセス系システムの本命として期待されており,2005 年度からサービスの本格的な導
入が開始される。
我々は,IEEE802.3ah GE-PON 規格準拠の一心双方向光トランシーバを,独自の無調心組立て技
術による OSA を適用し,ONU 用及び OLT 用としてそれぞれ開発した。
1. はじめに
FTTH はブロードバンドアクセス系の本命インフラストラ
クチャーと期待されており,日本国内では 2003 年より本格的
な導入が始まり,2004 年 7 月には 208 万加入を超えた(総務省発
表)。2005 年度より IEEE802.3ah 1000BASE-PX ギガビットイー
サネット PON 規格(GE-PON)に基づくシステムの実用導入が
開始される。
我々は,GE-PON 用 ONU(加入者端末)及び OLT(センター
局端末)機器に必要な一心双方向光トランシーバモジュールを
開発した。キーデバイスである光サブアセンブリ(optical subassembly : OSA)には,新規に開発した高精度樹脂成形体パッ
ケージの内部にて,光ファイバと光素子を無調心により組立て
し,また,WDM フィルタを光ファイバの端面に直接形成する
ことによる超小型の WDM 回路を適用することで小型化,低コ
スト化を図った。
図1
GE-PON FTTH システム
GE-PON FTTH system architecture.
本稿では光トランシーバについて解説する。
2. GE-PONシステムの概要
ファイバを占有するメディアコンバータを用いた100 Mbps FTTH
システムとの違いは,
上り/下り波長にそれぞれ1310 nm/1490 nm
GE-PON システムは,光ファイバの効率的な使用を目的とし
を用い,16 分岐の PDS(passive double star)伝送路にて最
たアクセス系システムであり,1 Gbps のデータ通信速度を複
大 1.25 Gbps の一心双方向通信を行う点にある。センター局
数の加入者に分配して使用する。
の OLT と分岐点(スプリッタ)までの光ファイバを複数の加
この規格は IEEE にて Ethernet の 802.3ah 1000BASE-PX と
入者で共有することで,経済的メリットがある。また,IEEE
して 2004 年に制定された。伝送距離 10 km 版である PX10 と
802.3ah 規格では規定されてはいないが,ITU-T983.3 規格に基
20 km 版である PX20 として物理層の要求仕様が規定されてい
づく 1550 nm 帯を使用した映像信号を下り方向に重ねて(3 波
る。
多重),映像配信することも考慮されている。
図 1 に GE-PON の概要を示す。従来の加入者ごとに一本の
GE-PON システムでは,OLT は分岐点のスプリッタより先
で,距離の異なる複数の光ファイバを介して加入者宅の ONU
*
研究開発本部 ファイテル・フォトニクス研究所
との間で時分割(TDM)通信を行う。したがって,OLT は各
古河電工時報 第 116 号(平成 17 年 7 月) 14
小特集:光技術の研究開発/光アクセス系 GE- PON F T TH システム向け光トランシーバモジュール
ONU からのパワーレベルが異なる,衝突の無い上り信号を受
用い,OSA のみで 2R 機能を実現し,部品点数の削減及び低消
信するため,OLT の受信器は各々のパワーレベルに対して瞬
費電力化を図った。
時に追従して順番に通信を行う必要がある(バーストモード通
3.2 OLT 用トランシーバモジュール
信)。なお,下り方向は従来の通信方式と同じく連続モードで
図 4 に 20 km 版 OLT 用トランシーバモジュールのブロック
ダイアグラム,図 5 に外観写真を示す。OLT 用トランシーバ
ある。
GE-PON システムのロスバジェットは,IEEE802.3ah 規格で
モジュールの寸法は,伝送装置のラック内での高密度ボード間
は 10 km 版と 20 km 版の仕様があり,それぞれファイバによる
実装の要望から,高さ 8.5 mm 以下とするため,FSAN ATM-
ロスが異なる。実際のシステムにおいては,OLT は 20 km 仕
PON 用トランシーバサイズに準拠した。光コネクタには,SC
様を選択し,場合に応じて ONU を 10 km 版,20 km 版を使い
レセプタクル型を採用した。
分けることが実用的である。
3. トランシーバモジュール設計
GE-PON で は,OLT の 光 出 力 は 高 出 力 の 1490 nm 波 長 の
DFB レーザを必要とする。このため,OSA には送信レーザに
キャンパッケージを採用し,非球面レンズによる高結合効率設
3.1 ONU 用トランシーバ
計とした。受信側は ONU 用 OSA と同構造の無調心組立て樹脂
図 2 に開発した 10 km 版 ONU 用トランシーバモジュールの
パッケージに WDM フィルタ付きファイバ,受信 PD,受信ア
ブロックダイアグラム,図 3 に外観写真を示す。ONU 用トラ
ンプを内蔵した。OLT 用受信アンプはトランスインピーダン
ンシーバモジュールは,宅内に設置される ONU 機器に搭載さ
スプリアンプとリッミッティングアンプを集積した 2R 機能
れるため,小型な SFF(small form factor)準拠サイズで設計し
バースト受信対応カスタム IC である。
た。光コネクタには,SC レセプタクル型を採用した。
4. OSA 構造と特性
ONU 用トランシーバモジュールは,一心双方向機能を有す
る小型の OSA(optical sub-assembly)と送信用ドライバ回路を
4.1 ONU 用 OSA 構造
内蔵した回路基板,きょう体,SC コネクタレセプタクルから
一心双方向トランシーバの性能及びコストは OSA によって
構成される。OSA は後述するように,樹脂パッケージによる
決定される。特に ONU 用 OSA は小型,低消費電力であること
無調心組立て構造であり,WDM フィルタ付きファイバ,受信
が重要である。本トランシーバモジュールの開発に当たっては,
側にバンドパスフィルタ,受信用 PD,電気信号アンプ IC,送
OSA の組立てプロセスの簡略化,部品点数の削減,集積密度
信側に FP-LD(ファブリペロレーザ),モニタ PD を内蔵してい
の向上を目的として,以下の新技術を開発した。
る。本機の特徴として受信アンプにトランスインピーダンスプ
リアンプとリッミッティングアンプを集積したカスタム IC を
図2
ONU用トランシーバモジュールのブロックダイアグラム
Block diagram of ONU transceiver module.
図3
ONU 用トランシーバモジュールの外観
Picture of ONU SFF size transceiver module.
1)高精度樹脂成形技術によるファイバ固定用Ω溝と成形突起
を備えた無調心組立てパッケージ 1,2)
図4
OLT用トランシーバモジュールのブロックダイアグラム
Block diagram of OLT transceiver module.
図5
OLT 用トランシーバモジュールの外観
Picture of OLT transceiver module.
古河電工時報 第 116 号(平成 17 年 7 月) 15
小特集:光技術の研究開発/光アクセス系 GE- PON F T TH システム向け光トランシーバモジュール
2)30 斜研磨したファイバ端面への誘電体多層膜 WDM フィ
Ω溝
Ω溝樹脂成形体
ルタ蒸着技術
突起/V溝勘合
PD
3)無調心組立て用 V 溝付きスポットサイズ変換石英導波路
(SSC-PLC)3)
Rx部�
Rx-SiOB
図 6 に ONU 用 OSA の断面構造を示す。OSA は WDM フィル
タ付きファイバ,受信側にはシリコン基板上に搭載した受信用
PD 及び電気信号アンプ IC,送信側にはシリコン基板上に搭載
Ω溝樹脂成形体
した FP-LD,モニタ PD を内蔵し,電気端子をプリモールドし
突起/V溝勘合
PLCコア
たリードフレームパッケージ,セラミックフェルールを含む樹
SSC部�
脂パッケージから構成される。図 7 は ONU 用 OSA の外観写真
SSC-PLC
である。寸法は最大高さ 5.0 mm,幅 6.2 mm,長さ 13.0 mm(リー
ド部を除く)である。以下に主要部品について説明する。
4.2 高精度樹脂成形体
突起/V溝勘合
Ω溝樹脂成形体
高精度樹脂成形体パッケージは,高精度な樹脂フェルールで
LD
ある MT コネクタの成形技術により,ファイバと光素子の相対
的な位置決めをパッシブアライメントで行うパッケージとして
Tx部�
Tx-SiOB
開発した。図 8 に OSA の受信(Rx)部,SSC-PLC 部,送信(Tx)
部の断面図を示す。
図8
本成形体の特徴は,1)樹脂成形体にファイバを位置決めす
OSA の断面図
Cross-section of OSA.
る穴,2)光素子を搭載するシリコン基板上の V 溝との位置合
わせを行うための突起,3)角度付き研磨ファイバの端面に施
ファイバが溝から外れないという特徴がある。受信用 Pin-PD
されたフィルタにより反射した下り光信号をファイバの側面か
には結合ロスを低減するため受光径 80 µm のものを使用し,受
ら取り出し受信 PD に入射させるため,パッケージ内のファイ
信感度は 1.0 A/W 以上を得ている。送信側の光軸の位置決め
バ位置決め穴の側面の一部分に開口部を設けたことである。こ
方法は,光素子を搭載したシリコン基板(SiOB : silicon optical
のファイバ固定溝は断面形状がギリシャ文字のΩの形状をして
bench)及び後述の SSC-PLC それぞれの上の 2 本の V 溝と整形
いることからΩ溝と呼び,従来の V 溝とは異なり,挿入した
突起のかん合により自動的に行われる。シングルモードファイ
バの低ロス結合を実現するため,樹脂突起とファイバ穴の相対
Ω溝樹脂成形体パッケージ
1550 nm
1490 nm
SSC-PLC
SMF
PD
TIA/LIA
バ,SSC-PLC,LD の光軸は組立て後に± 1 µm に収まる。図 9
に樹脂成形体の突起とシリコン基板上の V 溝のかん合状態と
ファイバ端WDMフィルタ
1310 nm
位置精度は± 0.5 µm に管理しており,シングルモードファイ
1310 nm
FP-LD
Ω溝の断面写真を示す。
4.3 ファイバ端 WDM フィルタ
GE-PON システムでは,上り/下りの光波長を分離するため
に WDM フィルタによる波長分離が必要である。従来の WDM
SCフェノール
図6
バンドパスPIフィルタ
1480-1500 nmのみ透過
ONU トランシーバ用 OSA の構造
Structure of optical sub-assembly for ONU transceiver.
フィルタはガラス基板等に成膜し,数 mm 角の大きさのチップ
に切り出し OSA に搭載している。我々はフィルタのサイズを
極小にするため,30 角度付き研磨ファイバの端面に直接的に
WDM フィルタを形成する技術を開発した。このフィルタ付き
ファイバは,前述の樹脂成形体のΩ溝に挿入固定され,下り信
号光はフィルタ反射により受信 PD に結合される。これにより,
コストアップの主要因であった WDM フィルタ回路をパッケー
ジ内のファイバ組立てのみで実現できた。なお,LD と結合す
図9
図7
ONU トランシーバ用 OSA
Optical sub-assembly for ONU transceiver.
樹脂成形体突起部とシリコン基板の V 溝かん合部断面
(左)及びΩ溝部断面(右)
Cross-sections of the V-groove alignment on silicon
substrate (left), and the Ω -shape groove of plastic mold
(right).
古河電工時報 第 116 号(平成 17 年 7 月) 16
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るファイバは,別の 30 角度付き研磨ファイバを樹脂成形体の
Ω溝内で突き合わせている。図 10 はファイバ端に形成された
フィルタの写真である。図 11 はフィルタの透過スペクトル波
長特性である。上り方向の最大波長 1360 nm と下り方向の最小
波長 1480 nm の間の透過損失差は 20 dB である。更に,送信
Total loss = 4.0 dB
100 um
300 um
100 um
Wfiber
WLD
LD の波長 1310 nm 光のモジュール内部のクロストーク及び映
像下り信号である波長 1550 nm 光に対しての光のアイソレー
別に 1480 ∼ 1500 nm 波長のみを透過するバンドパスフィルタ
図 12 SSC-PLC の導波路構造と光学結合系
Structure of spot size converter using planer lightwave
circuit.
を受信 PD の直前に挿入している。バンドパスフィルタの特性
品であり,光導波路により LD 光のスポットサイズをファイバ
を十分に得るため,PD を 30 傾けて実装し,反射光が PD にほ
のそれに変換することで接続ロスを低減する 3)。
ションを各々 40 dB 以上にするため,ファイバ端フィルタとは
図 13 は SSC-PLC と LD,シングルモードファイバ各々に対
ぼ垂直に入射するように工夫をした。
4.4 SSC(spot size converter)-PLC
する結合ロスと光導波路幅の計算結果である。光導波路のコア
GE-PON システムではスプリッタにより 16 光分岐を行うこ
とクラッドの屈折率比は 0.8%を用いた。計算の結果,LD 側を
とから,従来の光通信システムに比較して高いパワーの信号光
4.5 µm,ファイバ側を 10 µm 幅にすることで LD とファイバの
が必要である。ONU の光出力要求仕様は−1 ∼ 4 dBm である。
結合ロスを最小 4 dB にすることが期待できる。
一方で,低コスト要求に応えるための無調心組立て構造にお
図 14 に SSC-PLC の効果を検証するために試作したフィルタ
いては,レンズレスでファイバと LD を直接に突き合わせて結
無しの ONU 用 OSA の光出力−電流特性を示す。SSC-PLC を介
合を行うが,ファイバと LD のモードフィールド径の差による
したシングルモードファイバと 1310 nm FP-LD との結合損失
結合ロスは約 10dB 程度であり,それ以上の高結合を得ること
は,4.4 dB と見積もられ,設計にほぼ合致した結果であった。
は困難であった。更に一心双方向モジュールでは WDM フィル
85℃でのファイバ出力 Pf は+ 3 dBm 以上が得られた。
タの挿入損失も加わるため,所望の光出力を得るには LD と
4.5 ONU 用 OSA の特性
ファイバの結合ロスを低減することが必須である。
図 15 は SSC-PLC を用いた ONU 用 OSA の光出力−電流特性
我々は低コストでありながら高出力という,相反する要求に
と結合ロスのヒストグラムである。WDM フィルタのロスと実
応えるため,LD とファイバの間にスポットサイズ変換を行う
装ばらつき,内蔵アンプ IC の発熱による LD の発光効率低下な
石英導波路(SSC-PLC)を挿入することで結合損失の改善を行
どが加わった結果,トータルのロスは約 8 dB ± 1 dB であった。
うとともに高精度樹脂パッケージ内での無調心組立てを実現し
12
1.2
SMF coupling loss
(dB)
長さ 300 µm のテーパ部を有する長さ 500 µm の微小な光学部
SOLUTION
4.5 µm - 10.0 µm
1.0
0.80%
10
8
0.8
0.6 dB
0.6
6
3.4 dB
0.4
SMF
LD
0.2
0.0
4
0
2
2
4
6
8
10
12
14
16
LD coupling loss
(dB)
た。図 12 に SSC-PLC を用いた光学結合系を示す。SSC-PLC は,
0
Waveguide width of SSC-PLC
(µm)
図 10 ファイバ端の WDM フィルタ
WDM filter evaporated on the facet of angled
polished fiber.
図 13 SSC-PLC の構造パラメータと結合損失計算
Calculated results of coupling loss of SSC-PLC versus
LD and fiber.
6
-10
-20
-30
-40
0℃
25℃
4
3
70℃
85℃
2
-50
-60
1200
-40℃
5
20 dB
P(mW)
f
Transmittance
(dB)
0
1360 nm
1250
1300
1350
1400
1480 nm
1450
1500
1
1550
1600
WL
(nm)
図 11 ONU 用 SWPF フィルタ特性の例
Characteristic of the SWPF (Short wavelength pass
filter) on the 30 degree angled polished fiber facet.
0
0
10
20
30
40
50
(mA)
If
図 14 フィルタ無し ONU 用 OSA の L-I 温度特性
L-I characteristics of ONU OSA without WDM filter.
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16
10
14
25℃
8
12
70℃
85℃
P(mW)
f
12
−15℃
P(mW)
f
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
6
4
2
0
20
40
(mA)
If
60
80
0
-10℃
0℃
25℃
10
70℃
8
6
図 15 ONU 用 OSA の光−電流特性と結合ロスヒストグラム
L-I characteristics and histogram of insertion loss of
ONU OSA.
同一組立てロット内の光結合効率は正規分布を示しており,組
85℃
4
−5 −6 −7 −8 −9 −10
ロス
(dB)
2
0
0
20
40
(mA)
If
60
80
図 18 OLT 用 OSA の L-I 温度特性
Temperature dependence of L-I characteristics of OSA
for OLT transceiver.
立ての再現性が得られている。
一方,
ONU 用 OSA の 1490 nm 波長に対する受信感度は 1.0 A/
W 以上が得られた。オーバーロードは+ 3 dBm が得られてい
る。
24 mm(リード部を除く)である。
図 18 は,OLT 用 OSA の光出力−電流特性である。85℃にお
いて目標仕様上限を満たす 5 mW(+7 dBm)以上の光出力が得
4.6 OLT 用 OSA 構造と特性
られた。フィルタの透過ロスを最大 1 dB と仮定した場合の
GE-PON システムの OLT 用 OSA には仕様上 1490 nm 波長の
DFB-LD とのトータルロスは 3 dB である。
DFB-LD を用いることが必須となっている。特に 20 km 版にお
いては,+2 ∼+7 dBm の光出力が求められる。図 16 は開発し
一方,1310 nm 波長に対する受信感度は 1.0 A/W 以上が得ら
れた。
た OLT 用 OSA である。受信側に ONU 用 OSA と同様な構造の
5. トランシーバ特性
WDM フィルタ(LWPF)内蔵 PIN-TIA/LIA を用い,非球面レ
ンズ付き金属キャンパッケージ DFB レーザを溶接固定したハ
イブリッド構造の OSA を開発した。溶接固定を行うため,メ
5.1 ONU 用トランシーバ特性
図 19 に ONU トランシーバに要求されるバースト送信特性の
タルフェルールを高精度樹脂成形体にインサートモールドし,
評価結果を示す。図中(a)に示す波形にてバースト送信し,立
ファイバ組立てを行った。また,レーザとの高結合による反射
ち上がり・立ち下がり時間の測定,及びバースト送信時の送信
戻り光対策として,メタルフェルールの端面にアイソレータを
アイを取得した。
実装し,反射戻り光の影響を低減した。図 17 は OLT 用 OSA
の外観写真である。寸法は最大高さ 5.6 mm,幅 6.2 mm,長さ
トレース<上>
バーストEnable信号
(反転)
Ω溝樹脂成形体パッケージ
メタルフェルール 1.49um DFB-LD CAN
SMF
ファイバ端WDMフィルタ
1310 nm
1490 nm
PD
SCフェノール
トレース<下>
バースト光波形
TIA/LIA
アイソレータ
非球面レンズ
図 16 OLT トランシーバ用 OSA の構造
Structure of OSA for OLT transceiver.
Ton近傍(立ち上がり後30 ns)
Toff近傍
(立ち下がりの2 bit-Time程度前)
Continuousモード駆動
図 17 OLT トランシーバ用 OSA
Optical sub-assembly for OLT transceiver.
図 19 ONU 用トランシーバのバースト送信アイダイアグラム
Eye diagram of ONU transceiver in burst mode
operation.
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T on,T off 時間はそれぞれ数 ns であった。バースト送信時の
アイに関しては(b),(c)に示されるように連続発光モードで
動作させた時(d)のアイマスクマージンと同等であり,いずれ
も IEEE802.3ah 規格に対して充分な余裕が得られた。
ONU 用トランシーバの受信特性を図 20 に示す。送受同時動
作での誤り率 10 −12 での最小受信感度は−29.0 dBm が得られ,
目標とする最小受信感度仕様−24 dBm に対して 5 dB のマージ
ンが得られた。なお,送信受信同時動作(Tx on)でのクロストー
クによる感度劣化は 0.5 dB であった。
5.2 OLT 用トランシーバ特性
OLT 用トランシーバの送信特性を図 21 に示す。1.25 Gbps に
おいて良好なアイパターンが得られている。
OLT 用トランシーバのバースト受信特性は,OLT トラン
シーバに 2 台の ONU を接続し,図 22 に示す入力条件にて測定
した。バースト受信信号としては,一番厳しい条件,すなわち,
ダミー信号にオーバロードの光信号,測定信号に最小受信感度
の光信号を入力し,かつバースト間隔を 0 にした条件で測定を
行 っ た。 受 信 機 の settling time は 約 300 ns で あ り,IEEE
図 22 OLT 用トランシーバのバースト受信特性
Burst mode receiver characteristics of OLT
transceiver.
802.3ah の規格 400 ns に対して,十分なマージンがあることを
1e-03
確認した。図 23 は OLT 用トランシーバの受信誤り率特性であ
る。送受同時動作における誤り率 10 −12 での最小受信感度は
1e-04
−28.5 dBm であり,
目標とする最小受信感度仕様−27 dBm に対
でのクロストークによる感度劣化は 0.5 dB であった。
1e-03
1e-04
Bit error ratio
1e-05
1e-06
Ambient temperature 25℃
Supply voltage 3.3 V
1.25 Gb/s, PRBS 27-1
1e-05
Bit error ratio
して 1.5 dB のマージンが得られた。送信受信同時動作(Tx on)
Transmitter extinction ratio:
9.0 dB
:Transmitter OFF
:Transmitter ON
1e-07
1e-08
1e-09
1e-10
1e-11
1e-12
1e-13
1e-14
-35
-30
-25
-20
Average received power
(dBm)
図 20 ONU 用トランシーバの受信誤り率特性
Bit error ratio of ONU transceiver.
1e-06
Ambient temperature 25℃
Supply voltage 3.3 V
1.25 Gb/s, PRBS 27-1
Transmitter extinction ratio:
9.0 dB
:Transmitter OFF
:Transmitter ON
1e-07
1e-08
1e-09
1e-10
1e-11
1e-12
1e-13
1e-14
-35
-30
-25
-20
Average received power
(dBm)
図 23 OLT 用トランシーバの受信誤り率特性
Bit error ratio of OLT transceiver.
6. おわりに
我々は,GE-PON FTTH システム向け一心双方向トランシー
バモジュールの開発を行った。新規に開発した無調心構造の一
心双方向 OSA により,トランシーバの小型化と低コスト化を
図ることができた。完成したトランシーバモジュールは IEEE
802.3ah 規格を十分に満たしており,ONU,OLT 機器への適用
を期待する。
参考文献
図 21 OLT 用トランシーバの送信アイダイアグラム
Eye diagram of OLT transceiver.
1) M.Iwase:“Passive Alignment Optical Modules using High
Precision Plastic Package and Silicon Optical Bench
Technologies,” OECC2002 10C1-1, (2002), 134.
2) 岩瀬正幸,石川陽三,伊澤敦,水野一庸,阿部拓行,川島洋志,
奈良一孝 :「高精度樹脂成形体による GE-PON 対応一心双方向送
受信 OSA(I)― OSA 構造および特性―」
, 電子情報通信学会 2004 年総合大会講演論文集 , C-3-62, (2004), 235.
3) 川島洋志,奈良一孝,石川陽三,岩瀬正幸 :「高精度樹脂成形体
による GE-PON 対応一心双方向送受信 OSA(II)―スポットサ
イズ変換 PLC ―」
, 電子情報通信学会 2004 年総合大会講演論
文集 , C-3-112, (2004), 286.
古河電工時報 第 116 号(平成 17 年 7 月) 19
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