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液体とは何か 気体との共通点=固体との相違点: 秩序がなく、周期的構造

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液体とは何か 気体との共通点=固体との相違点: 秩序がなく、周期的構造
教養物理化学ノート 液体と溶液 2012-12-14
液体とは何か
気体との共通点=固体との相違点: 秩序がなく、周期的構造を持たず、流動
性があること。
固体との共通点=気体との相違点: 凝集力により凝集していること。
気体の中の分子は、相互作用を無視できるほど、互いに離れている。一
方、液体や固体の中では、分子同士が直接接触するほどに接近している。
このため、密度から分子1個の占める体積がおおよそわかる。1
液体の中では、分子は凝集しているが、常に動きまわり、その位置を変え
ている。(拡散)固体の内部では分子は拡散しない。
理想気体には凝集力がないので、液体にならない。また、斥力もないの
で、固体にならない。
蒸発
分子が蒸発するためには、液体の凝集力(ポテンシャルエネルギー)をふり
きるだけのエネルギー(運動エネルギー)が必要。熱エネルギーにより、液
体からは、一定の確率で、分子が凝集力をふりきってとびだし、気体(蒸
気)となる=蒸発。一方、蒸気分子もまた、一定の確率で液面に衝突して液
体にとりこまれる=凝縮。十分時間が経てば、分子がとびだす頻度と、分
子がとりこまれる頻度がつりあう。この状態を気液平衡と呼び、この時の
蒸気の圧力を飽和蒸気圧と呼ぶ。
温度が高くなると、分子運動が激しくなり、凝集力
をふりきって分子が飛びだす頻度が急激に増加する
一方、分子がとりこまれる頻度はそれほど変化しな
いため、飽和蒸気圧は急激に増加する。
飽和蒸気圧が大気圧を上まわると、蒸発速度が常に
凝縮速度を上回るようになり、激しく蒸発しつづけ
る=沸騰
逆に温度を下げる場合、蒸気はCharlesの法則に従い
収縮するだけでなく、凝集して液体になる。このた
め、凝縮する気体の圧力は非常に低くなる。
凝固
液体を冷やすといずれ固体になる。液体と固体の平衡も、気液平衡と同じような考え方があてはまる。つま
り、固液平衡では、固体が融ける頻度と、液体が固化する頻度がつりあっている。この温度を融点または凝
固点と呼ぶ。融点よりも温度を少し下げると、液体が固化する頻度が、固体が融ける頻度を上まわるため、
徐々に固体が成長する。
溶液
溶液 = 溶質(溶けこんでいる物質) + 溶媒(溶かしている液体)
3成分以上の溶液もある。溶質は気体、液体、固体のいずれの場合もあ
る。
例: 食塩水の溶媒は水、溶質は食塩。炭酸水の溶質は二酸化炭素。
1
気体の場合は、体積から分子の個数が推測できた。(アボガドロの法則)
教養物理化学ノート 液体と溶液 2012-12-14
気体を混ぜる場合と違い、溶けやすい組みあわせ、溶けにくい組みあわせ
がある。混ぜる前よりも体積が減るもの、増えるものがある。混ぜると発
熱するもの、吸熱するものがある。
濃度
濃度の表現方法は非常にたくさんあり、ややこしい。
いずれの単位でも、分母は溶液の総量、分子は溶質の量。
1.
質量パーセント濃度: (溶質の質量)/(溶液の質量)を百分率あるいはppm
で表す。
2.
質量モル濃度: (溶質のモル数)/(溶液の質量) 単位はmol kg–1。
3.
体積モル濃度: (溶質のモル数)/(溶液の体積) 単位はmol dm–3。(mol / L)
4.
体積パーセント濃度: (溶かす前の溶質の体積)/(溶液の体積)を百分率で
表す。
5.
モル分率: (溶質のモル数)/(溶液のモル数) 単位なし。
実験を行う場合には、溶液を単位量(単位質量あるいは単位体積)計量すれ
ば、その中に溶質がどれだけはいっているかが簡単に推測できるのが便利
なので、1,2,3をよく使う。
体積パーセント濃度は化学ではほとんど使わない。酒の度数で使用する。
モル分率は理論およびシミュレーションで用いる。
凝固点降下
溶液から、溶媒分子だけが結晶化する場合(例えば、水溶液から、水だけが結晶化する場合)を考える。純水
と氷の固液平衡(融点、凝固点)では、氷が融けて中の水分子が液体に出ていく頻度と、液体の水分子が氷表
面にとらえられて凍る頻度がつりあっている。ここで、水に溶質分子が溶けている場合を考える。この場合
も、氷が融けて中の水分子が液体に出ていく頻度は変わらないが、液体の水分子が氷表面に到達する頻度が
下がるので、氷の融解が優勢となる。温度をもう少し下げれば、氷の融解頻度が下がって、水溶液のなかの
水が凍る頻度とつりあう。このため、融点(凝固点)は低くなる。凝固点は、おおよそ溶質の濃度に比例して
低くなる。
Tf = Kf mB
Tf は凝固点の降下量(K)、mB はBの質量モル濃度、比例係数Kf をモル凝固点降下と呼ぶ。
凝固点降下の例
氷に塩をかけると、氷表面の水に塩がとけて、濃厚な食塩水ができる。食塩水中では、氷の凝固点が下がる
ので、氷の表面が強制的に融けはじめ、その時に融解潜熱が奪われるために食塩水の温度が即座に低下する
とともに、食塩水の濃度が下がり、やがて平衡に達する。この方法で、氷の温度は–20℃ぐらいまで下げる
ことができる。
気体の溶液
溶解度の低い気体が液体に溶ける時、その気体の物質量(分子数、あるいは質量)は気体の分圧に比例する。
(圧力に比例してたくさん溶けこむ) = Henryの法則
気体の体積比で考えると、圧力に関係なく一定割合で溶けるとみなせる。
Raoultの法則
⇤
成分A の純物質の蒸気圧を pA 、モル分率をxA とすると、溶液での分圧は
pA = p⇤A xA
教養物理化学ノート 液体と溶液 2012-12-14
成分AとBの混合物の全蒸気圧はこれらの和で表せるので、
p = pA + pB = p⇤A xA + p⇤B xB
Raoultの法則が成りたつ溶液を理想溶液と呼ぶ。
沸点上昇
成分Bが不揮発性(=蒸気圧がほとんど0)であれば、溶液の蒸気圧pは成分A
の蒸気圧 pA に等しくなり、xB が増えるほど( xA が減るほど)蒸気圧が小
さくなる。つまり、溶質成分Bの濃度が上がると、蒸気圧が低くなり、沸
騰しにくくなる。このため、Bの濃度に比例して沸点が高くなる。
Tb = Kb mB
Tb は沸点の上昇量(K)、mB はBの質量モル濃度、比例係数Kb をモル
沸点上昇と呼ぶ。
実在溶液の蒸気圧
A成分同士の分子間相互作用および、 B成分同士の分子間相互作用に比べ
て、A-B間相互作用が弱い場合、AとBは混ざりにくく、混ぜると分子間の
結びつきが弱くなり、蒸発しやすくなる = 蒸気圧が上昇する。このため、
溶液の蒸気圧は、Raoultの法則よりも大きくなる。また、混合することで
吸熱する。
逆に、異種分子間相互作用が強い場合には、混合すると蒸気圧が下がり、
発熱する。
溶解度と飽和
溶解度:溶媒100gに溶ける溶質の最大量。混ぜる前の物質量の比であり、
通常の濃度とは単位が違うことに注意。 例: NaClの水への溶解度は27g。
溶解度まで溶質が溶けている状態を飽和状態、その溶液を飽和溶液と呼
ぶ。
浸透圧
気体の解説の中で、空気だけを通す袋に純ブタンを入れたらどうなるか、
という話をした。一部の成分だけを通す膜を半透膜と呼ぶ。空気は、袋の
外と密度が等しくなるまで入りつづけ、最終的に内外の空気の圧力が等し
くなる。一方、ブタンの圧力Π(理想気体の状態方程式によればΠ = nRT/
V、Vは袋の体積、nはブタンのモル数) はそのまま持続する。そのため、
膜の内外でΠだけ圧力差が生じる。
この現象は、空気を液体に置きかえても同様に成り立つ。半透膜を通りぬ
けられない物質(気体分子とは限らない)が生む圧力を浸透圧と呼ぶ。
Π = nRT/V はvan’t Hoffの式と呼ばれる。
教養物理化学ノート 液体と溶液 2012-12-14
先週の練習問題と解答例
練習問題1
水素分子H2はヘリウムHeよりもさらに分子量が小さい。HeをH2におきかえることで、風船の浮力は何%増
すか。風船がつりあげられる質量は何%増えるか。空気の平均分子量を29、水素分子の分子量2、ヘリウム
の分子量4とする。
浮力は、風船と同じ体積の大気の質量に等しい。風船のなかの気体の量を1モルと仮定すれば、2 大気1モル
の質量は29 gなので、浮力は中のガスの種類によらず29 g。一方、中の気体の質量は、He 1モルが4 g、H2
1モルが2 gなので、つりあげられる質量はそれぞれ25 g、27 gとなり、8%だけ増す。
練習問題2
空気(窒素と酸素のモル比4:1)の中から、酸素だけを吸着する脱酸素剤を、ビ
ンに入れてふたをすると、ビンの内圧は何気圧になるか。
分圧の法則によれば、モル比は分圧の比に等しいので、1気圧の大気の酸素
と窒素の分圧は0.2気圧と0.8気圧。脱酸素剤が酸素だけ除去すると、窒素だ
けが残って内圧は0.8気圧になる。ペットボトルの場合には、容器が柔らか
いので、内圧が1気圧になるまで容器が収縮し、体積が20%減る。
練習問題3
純ブタン気体を袋に密封する。袋には、酸素や窒素分子は通るが、ブタン分
子は通らない程度の大きさの穴がたくさんあいている。大気中に袋を放置す
ると、袋はどうなるか。(1)徐々に膨張する (2)変化しない (3)徐々に収縮す
る。自分の予想と、理由を述べよ。
当初のブタンの圧力は1気圧。理想気体を仮定すれば、酸素や窒素は、ブタ
ンとは相互作用しないので、酸素や窒素分子から見れば、袋の内部は真空と
違いがない。したがって、酸素や窒素は袋の中に流入する。一方、ブタンは
袋から逃げだすことはできない。袋内部の気体の圧力は、分圧の法則により、ブタンの分圧と酸素窒素の分
圧の和だが、ブタンの分圧は当初と変わらない(体積も温度も分子数も変化していないから)が、酸素と窒素
が流入したぶん、内圧が上昇する。 3 そして、内圧が外圧(1気圧)とつりあうまで、袋は膨張する。
2
比率を知りたいだけなので、実際の気体の量は適当に設定して構わない。
3
液体の浸透圧と原理は同じです。
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