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講演内容 - 第1回福島第一廃炉国際フォーラム

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講演内容 - 第1回福島第一廃炉国際フォーラム
第 1 回福島第一廃炉国際フォーラム
セッションⅢ
リスク評価

米国パシフィック・ノースウエスト国立研究所シニアアドバイザー M.トリプレット

英国原子力廃止措置機関(NDA) 環境修復部長 A.クラーク

国際原子力機関(IAEA) 廃棄物環境安全課長 A.オレール

原子力損害賠償・廃炉等支援機構 審議役 肥田 和毅

電力中央研究所 研究参事 小山 正史
(注)当日通訳された内容をそのまま記録していますが、実際に話をされた言語による記録に基づいて
若干の補正をしております。
M.トリプレット:
おはようございます。セッションⅢ、リスク評価のセッション、ようこそお越しくださいました。
マーク・トリプレットと申します。 私は DOE パシフィック・ノースウエスト国立研究所に勤務をしております。
まず、NDF、そして経済産業省に対しまして、お礼を申し上げたいと思います。 そして、この素晴しい世
界での専門家を集めての会議を心よりお祝い申し上げます。
ここでは、パネルのメンバーの中でリスク評価のツールを使いながら、この廃炉の取り組みを支援するやり方
について、模索したいと思います。 そして、リスク評価のツールはこれまで、例えば廃炉の優先順位を設
定したり、または効果的にリスク管理の戦略を立てるのに、いかに有効であったということもシェアしていただ
きたいと思います。
このセッションでは、どのようにリスクを特定するのかということは、例えば人、これは一般公衆であったり、ま
たは作業者であったりということですし、または環境にとっての危険がどれくらいあるのかということに焦点を当
てて、お話をしていただきたいと思います。
まずはパネルの皆さま方に発表していただいて、パネルの間でディスカッションして、そして、皆さま方、会場
の皆さま方からも時間が許す限り、質問を受けたいと思います。
小山先生、お願いします。
小山:
では、最初のプレゼンテーションに入りたいと思います。
今、ご紹介いただいたトリプレット博士からお願いいたします。 トリプレット博士は今、ご本人からお話あり
ましたようにパシフィック・ノースウエスト研究所で、30 年以上の廃棄物管理のシステム開発あるいは環境
修復のデシジョン・アナリシスといった研究をされてきたリスクの専門家であります。
パシフィック・ノースウエスト国立研究所の隣に汚染されたハンフォードサイトがあるのですけれども、そちらの
汚染が大きな問題になってからは、特に対象サイトのクリーンアップに広げまして、現場に密着した研究を
進められております。
それでは、今回は、ハンフォードにおけるクリーンアップ意思決定支援のためのリスク評価の概要と題してご
講演いただきます。 トリプレット博士、よろしくお願いいたします。
M.トリプレット:
小山先生、ご紹介ありがとうございました。
それでは、本日、私のほうからはハンフォードのサイトのクリーンアップの一番初期、これは 89 年ですけれど
も、そこから携わっておりますので、その経験を共有したいと思います。
少し振り返りましてハンフォードのクリーンアップが始まってから、5 年経ってから、どのような状況だったかとい
うことをお話したいと思います。福島第一の現在の 5 年目という時期と共通するところがあると思います。
ですから、今、少し立ち止まって、そして当時どのようなところに優先順位を置いていたかお話したいと思い
ます。 そして、ハンフォードのこれまでの経緯ですが、Pu を製造するミッションを持っていました。その後、ク
リーンアップに入っていったというお話をして、そしてリスク情報を活用した戦略を、どのように策定していった
のか、お話をしたいと思います。
またリスク管理戦略、これもわれわれが作ったものですけれども、クリーンアップに使われた戦略のお話をしま
す。 そして、最終的には手短かになりますけれども、いかに DOE、PNNL、そして NDF が福島第一の廃
炉に協力できるか、またリスク評価のサポートに携われるか提案をしたいと思います。
こちらですけれども、非常に大まかですけれども、Pu の製造がハンフォードでおこなわれていた流れです。
43 年から 89 年まで製造がおこなわれていたわけですけれども、大々的におこなわれておりまして、9 ヶ所
の Pu 生産炉がありました。 化学プラント、また分離プラントがありました。
また、177 のタンクが地下にありまして、放射性廃棄物が収納されておりました。 また、200 人あまりのリ
ーダーがおりましたし、また 2 億リットルのタンクに入った廃液がありましたし、また核物質の入った容器など、
すべて対応しなくてはならなかったという状況でした。 このハンフォード、どれくらいの規模、どれくらいの広大
の面積かということを示しておりますけれども、だいたい 1,500 平方キロという面積であります。
非常に巨大なサイトです。 特徴的なのは真ん中に流れているのがコロンビア川だということです。
これは、80 キロにおよぶ川でありまして、太平洋のこの地域の農業ですとか経済に重要な川であるわけで
すけれども、福島第一には海があって、そして漁業組合があるというのと似ているところがあると思います。コ
ロンビア川をいかに守るかということが、トッププライオリティであったということで、また、いろいろな取り組みも
そこが一番の原動力となっていたという状況でした。
このクリーンアップのミッションが始まったのが 89 年。三者協定が結ばれましてエネルギー省、環境保護庁、
ワシントン州が協定を結んでおりました。 この協定の中ですべてのクリーンアップのプロセスをカバーしており
ました。 施設の廃止、タンクに入った廃液の処分ですとか、または各部分の廃炉、除染なども入っており
ました。 ハンフォードのサイトというのは、エネルギー省が持っている最も大きなサイトでありまして、22 億ド
ル規模の年間予算を持っていたわけなのですけれども、このクリーンアップミッションが始まった時には、だい
たい 30 年くらいで終わるだろうといわれておりました。
しかしながら、すぐに分かったのは、それだけでは終わらないであろうということでした。
ですから、もう一度、見直しをして、そしてどんな課題が目の前にあるのかを改めて見直した。
そして、リスク評価ツールを使って、その上で、意思決定、そして戦略策定をおこなったという流れになってい
た話をしたいと思います。
なぜこれを申し上げるかといいますと、想定よりも長い時間がかかったわけではありますけれども、にもかかわ
らず、環境、そして住民に対するリスクを大幅に低減することができたという事実があったからです。
こちらですけれども、これはハンフォードと福島第一の共通点、そして違いを示しております。
どんな問題があるのか、または規模がどれくらいかというところ。 共通点もありますけれども、違う所がありま
す。 ハンフォードというのは 45 年間、運転をしていて、Pu を製造していたということで、過酷事故があった
というわけではないということ。
また、もうひとつの違いは、ハンフォードの場合には、この地域 70 年以上、人が住んでいなかった地域だっ
たということです。 そして、そこに誰か住むという予定もなかったということです。
これは、何か危険が残っているということではなくて、ハンフォードのサイトというのは将来的にそこにある資源
を保持することであるということで、人は住まないということが、意図的に決定されていたという事情がありま
した。
ということで、クリーンアップが始まって 5 年経ったところで、もともとの工程ではだめだということが分かったとい
うことです。 ということで、グループを結成しました。 新しい戦略を策定いたしました。
もっと現実的な計画を立て直すということになったわけです。 このアプローチとしまして、まずいろいろなリス
クの分類をしたのです。 中にはここに出ておりますけれども、短期的な放出のハザード、または、例えば事
故のシナリオですとか、確率が低いけれども、影響が大きい事象を見た。
または、作業員、または作業場のハザードを見た。
また長期的なハザード、これは廃棄物が地下水にゆっくりと移動して、そしてコロンビア川に流出するリスク
ですとか、または生態系へのリスクなどを見ていきました。
その結果、やり方としましてはリスクの評価をそれぞれのリスク分類の中でおこなうということで、リスク分類ご
とに比較するのではなくて、それぞれのカテゴリーの中でのリスクの評価をしたということです。
この後幾つかの例を示したいと思います。 このやり方によって、いくつかの原則が出てきました。
原子力安全に関係する高リスクのハザードを低減する、リスク情報を活用した一連の戦略を策定できまし
た。 それから、次に維持費の極めて高コストのレガシー施設を不活性化しました。
三つ目はコロンビア川に近い放射源を除去しました。 環境と河川の安全を脅かしていた地下水を閉じ
込め浄化することにしました。 全体的には、継続的にクリーンアップの規模を小さくしていって、そして、サイ
トの中心部の限定されたエリアに小さくしていくということでした。
戦略の注目的な部分ですけれども、これはサイトの真ん中の部分、エリアへ専用の処分施設を作るという
ことを決めたということでした。 これは、一般市民とのコンセンサスの中で、いろいろなステイクホルダー、利
害関係者と 92 年にコンセンサスを得まして、クリーンアップをするために、やはり専用の廃棄物を保管する
場所が必要だということなりました。
まず修復の作業が始まったのですけれども、やはり恒久的な廃棄物の処分場が必要であるということで、
最初にコロンビア川を汚染しないようにするための保管場所が必要であるということを決めたわけです。 非
常に面積が大きいですので、これは福島では期待できない贅沢なところです。
ハンフォードには広大な面積があり、その真ん中に恒久的な処分施設を作ることができたわけですけれども、
これは、われわれにとっても非常に中心的な、中核的なことであったと言えると思います。
こちらですけれども、これは山名先生が昨日、示されたものと非常に似ているのですけれども、原子力安全
のリスクですね。 これ、94 年、95 年に作ったものですけれども、高リスクの核物質、それからタンクの安全
の問題がありました。水素が発生するとか臨界の問題、または高熱のタンクなどがありました。
また、川に近いところに必要なくなった原子炉もありました。 処理施設がありましたけれども、管理に非常
に金の掛かるものでした。
ということで、簡易の解析をおこないまして、どのような確率とそれから結果があるのかということで、手元の
情報で分析をいたしました。 そして、相対的なハザードがその施設にどれくらいあるのかを計算いたしまし
た。
この 20 年あまりでおこなってきたことは、多くの、ほとんどのリスクは排除することができた、または大幅に低
減することができました。
中間的な貯蔵というものもありますけれども、タンクの安全の問題もなくなりましたし、それから、もともとの
短期的な放出のハザード、これも大幅に低減することができたという結果が出ております。 安全ではない
タンクの問題、これは、それほど多くの時間をかけずに解決できる問題です。
同じようなアプローチを今度は長期的なハザードに対してもとりました。 例えば、土壌とか地下水の汚染、
これは川に流れ込むリスクがあるということだったのですけれども、まずリスクの評価をおこないました。
いろいろなリスク源があるわけですから、リスクのソースを分析しました。 そして、どんなハザードがあるのかと
いうことを見ますと、川沿いのハザードというのは、例えば川に生息している生物への脅威であるということで、
リスク評価ツールを使いまして、そしてリスクベースの保護の基準をまず設定しました。
そして、どのような形で修復するのか、優先順位を付けまして、今後、これからの 15 年の間に主要な川に
影響するような汚染物については、修復することができたということです。
今度は NDF との協業ということなのですけれども、これまでの教訓を反映する、われわれの教訓を反映し
ていただくということ。 また、秩序立ってリスク情報を活用して、そして NDF の戦略的な意思決定をサポー
トしようとしております。 特に、燃料デブリの取り出しについては、現在のリスクは何かをまず理解し、そして、
その燃料デブリの取り出しのオプション、方法のオプションを評価して、そして廃炉の戦略に反映していくとい
うサポートをしたいと思っております。
日本で、私、過去 3 年間、お付き合いをさせていただいて、そして、非常に献身的に作業してらっしゃる皆
さま方には本当に尊敬の念をもっております。 ウエイトマンさんも今おっしゃっておりました。
そして、確信を持って言えることは、福島から始めよう、と言うことだと思っております。
どうもありがとうございました。
小山:
ありがとうございました。非常に包括的なお話で、大変役に立ったかと思います。
それでは、続きまして、二番目のご講演に入りたいと思います。 今度はイギリス原子力廃止措置機関
NDA のアンナ・クラーク博士からお願いいたします。
クラーク博士は NDA で民間原子力レガシー、施設の廃炉と環境回復の戦略的なアプローチの責任者を
されております。 また、セラフィールドのマネジメント体制の変更など、政府の政策、戦略にもご協力され
ておられます。 そこで、本日はリスク情報を活用した廃止措置、およびサイト修復への取り組みと題しまし
て、ご講演いただきます。
クラーク博士、よろしくお願いいたします。
A.クラーク:
おはようございます。
最初に私のほうから、経済産業省、および NDF に対して、このフォーラムで話をさせていただくことに感謝
申し上げたいと思います。 そして、この廃炉国際フォーラムに対して、ぜひ貢献したいと思います。私ども
NDA は NDF と、セラフィールドリミテッドは東京電力と提携をしております。 その連携を通じて、われわれ
の優先順位付け、リスクを意識した優先付けのアプローチを共有してきています。 われわれの意思決定
はリスクを意識して行われていますが、今日は優先付けに焦点を当てたいと思います。
NDA に関して、紹介させていただきます。
さまざまな種類のサイトを私どもは持っておりますが、しかし、昨日ジョン・クラーク氏のほうから概要を申し
上げましたし、今日の午前中にウエイトマン氏のほうから話がありましたのでこの紹介には時間が掛かりませ
ん。 NDA は公的機関であり、省の管轄ではありません。 政府機関であります。
そして、その中で安全な効率のよいクリーンアップをイギリスの原子力レガシーに関しておこなっております。
17 のサイトがあります。このように広く、そして遠いところにも、存在します。
さまざまなレンジの異なる活動があります。 燃料製造、ウラン濃縮プラント、それから研究炉、および北部
にドンレイの高速炉研究センターもあります。 それから、民生用発電炉、廃棄物処理、セラフィールドも
あります。 おのおの、その複雑さというのは、事故からということではなく、むしろいろんな施設を構築し、建
設し、そして廃止措置をせずに、運転してきたということです。
政府機関でございますので、NDA においては、国民の税金を使って、取り組みをしておりますので、その廃
止措置の中で十分な価値を示すということも重要な作業であります。
資金調達の観点からも、やはりプライオリティー、優先順位を付けるということが非常に重要ということになり
ます。 優先順位をつけるということには、2 つの要素があります。 どの施設にわれわれの注目する必要が
あるのかどうか、ということ。 どの施設において脅威になり得るのか、ということを考えることです。 それから、
どういった行動によって、この状況を改善しうるかということです。
どれによって、最も大きな価値、最大な価値をもたらすかということにありまして、したがって、この価値という
のが重要な点でありまして、その結果、私どもは、ステイクホルダーと時間を掛けて、いわゆるバリュー・フレイ
ムワークというものを作っています。 単純にいえば、これはわれわれが価値があると考えているもののリスト
と言うことです。
NDA がこういったリストをそれぞれ作ることができていたというのは一つの事実ですが、実際にそのリストをス
テイクホルダーと共に作り上げる力が最も重要な要素です。 すなわち、政府にとって、規制当局にとって、
地元のステイクホルダーにとって重要なことを算定できたと言うことが重要と言うことです。
先に述べたように人の健康が、大きな主要なファクターです。 人の健康を脅かす施設があれば、その施
設を管理することに優先度が与えられなければなりません。 廃止措置を実行することで発生するリスクを
評価する場合、作業を進める人々の健康へのリスク、作業員へのリスク、公衆へのリスクを見る必要があ
ります。 廃炉によって変化するリスクも注視する必要があります。
この様な観点から見てリスク低減というのは何なのでしょうか。
われわれは、原子力材料、核物質のセキュリティー、それに対する関連記録のセキュリティーのリスクも価
値付けします。 もちろん環境、気中・土壌への放出、排水も価値付けする必要があります。
天然資源の活用に気を配る必要もあります。 また、社会、経済的影響ですが、この廃止措置によって、
やはりコミュニティーの福祉、そしてまた経済、その社会における経済の重要性ということも当然関連してい
ます。
税金を使っているわけですから、やはりコストとして、私どもの費用対効果も当然、見ていかなければなりま
せん。 潜在的な投資効果というのも見ていく必要があります。
そういった中で、廃止措置をしていく中でのさまざまな面を見ていきます。 テクノロジーをテストしたり、また
スキルを養成し、能力を醸成するということも重要です。
非常にシンプルなリストではありますが、これが非常に力がある、パワフルであるというのは、なぜかといいま
すと、やはりステイクホルダーと共にこのリストを作りあげたからです。
そして、その中でいろいろな要因がある中で、このバリュー・フレイムワークとして、やはり人の健康へのリスク
というものが、そして環境へのリスクというものが、最も大きなものであります。
それを表すために、コンセプトとして、健康と安全当局から、リスクの許容性というものを借用しています。
つまり通常の環境では許容できないリスクは受け入れることができないというものです。
NDA の戦略は、危急を要する許容できないリスクについては緊急措置を講じなければならないというもの
になります。
先ほどウエイトマン氏から話がありましたように、妥協は許さない。 そして、そのリスクを現実的に合理的な
場合においては、緊急措置を講じて、なんとしても許容できないリスクの場合には、そのリスクを減らさなけ
ればいけない、低減しなければいけないということです。 優先順位を付ける中で、大きな関連する要因に
大きく影響してくるわけですが、やはりそれのバランスをとるということにおきましては、ベネフィット、それから廃
止措置をすることによって、どういった、障害があるのかということ。
こうしたことが、そういった優先順位の高い項目でない場合は、むしろそれが、正味のリスクレベルが長い目
で見て、上がらないようにするということが重要になります。
人の健康に対するリスクというものが、最も大きな問題だと申し上げましたが、では、どうやって、測定、評
価するのでしょうか。 リスクアセスメントというのは、そのスキルとして、さまざまなそれを支持するガイダンスが
ございます。 多くの異なるアプローチがあります。
しかし、その何といっても中核をなすのがどういったハザードが、危険が起こるかという潜在的可能性です。
原子力施設ではリスクは典型的に材料、廃棄物ということになります。 それが放射性物質なのか、化学
的ハザードなのか、どういった形状のものなのか、固体か液体か、気体か、粉状、粉末状か。
この様なハザードが人と接する恐れをどれだけとじこめることができるのか?
対象となる施設が一握り程度であれば、フルスケールのリスク評価をすることができますが、数百の施設が
それぞれ違い、包含しているものも大きく異なっている場合には、極めて複雑な作業になってしまします。
それに役立てるために私どもは、いわゆる、安全と環境に関する損害指標、SED 指標というものを策定し
ました。 もちろん、これも完ぺきではありません。 これは純粋にサイエンスに基づいてあらゆる方程式が解
けるようなものではなく、各施設に点数付けをして最も重要なものに目を向けさせるためのものです。
何が大切か、なぜかということです、この SED 指標ですが、この点において、NDF と東京電力と一緒に
SED 指標を福島第一に合わせて修正をするという協力をしております。
さらに SED としては、リスクが時間の経過とともに変わるかというのはリスク評価の中でも大切なステップとな
ります。 リスクは場合によっては、放射能が減衰することによって下がることもありますが、逆に上昇するこ
ともあるわけです。
例えば、固体から粉末状に腐食或いは乾燥によって変わります。容器も施設も劣化することがあります。
リスクと時間の関係を理解できれば、実際にアクションが必要になるまでにどれだけの時間があるのかと言う
ことも分かってきます。
現在のリスクレベルよりも、プライオリティーが変わることも考えられます。 また、リスクプロフィールをコミュニケ
ーションツールとして使うこともできます。 リスク特性で、すでにおこなわれた作業がどれだけ影響をあたえる
ことができたか、あるいは、これから先どういった作業をするかということにおきまして、これからの計画をよりよ
く理解でき、そしてまた、どのようなアクションがよりリスク低減につながるのか意思決定ができるようなツール
として使うことも可能です。
すでに話がありましたように、time at risk を短縮するための中間ステート、中間ソリューションを選択する
こともできます。 より大きな価値を提供するかもしれないが、長く時間が掛かってしまうと言うより、早期の
解決を求めると言うこともあり得ます。
マグノックス燃料の剪断くず(swarf)、貯蔵サイロもその例です。
バリュー・フレイムワークに戻りますが、リスクプロフィールは人の健康に対する影響を示しますが、しかしそれ
は無償ではありません。 当然、廃止措置をしていく中で、作業者自身のリスクにもなりますし、環境への
放出も考えられる。 当然、コストもかかります。リスク削減のメリットを得るためには、それらが与える影響
が正当なものである必要があります。
それはメリットとデメリットとの間での綱渡りです。 最適化ということです。
昨日、マグウッド氏がお話されていたように、まさに芸術です。 サイエンスではなくて、ステイクホルダーと、お
互いのものの見方は違っているんだと言うことを理解する対話が如何にメリットあるか分かろうとする芸術で
す。
残念ながら、確かに明確なプライオリティーを特定できたとしても、いろいろな選択肢、最も大きな価値を
提供できる行動、アクションを特定できたとしても、しかし必ずしもそれを実施できるとは限らないわけです。
例えば、実際に資金がないかもしれない。 あるいは、それを達成するための人が雇えないかもしれない。
廃棄物のルートがないかもしれない。
しかし、そういった行動が、緊急である場合、又その行動に対して、より大きく確信を持つ必要がある場合、
代替的な手法を模索するということになりますが、しかしその際にもなぜかということを説明できる必要があ
り、その制約条件が何であるか、なぜ代替的な手法をとらなければいけないか、やり方をしなければいけな
いかということの説明も必要です。
リスクプロフィールを見ていく中で、それによって、われわれの側に時間がある場合において、それをこのような
制約条件ごとに分けて、そういった障害ごとに分けて、考える必要性があります。
時間を掛けて新しい技術を開発するということも考えられます。 また、廃棄物のルートを確保して、ステイ
クホルダーからの信頼を得る。また場合によっては、規制、あるいは政府の方針そのものを変更するというこ
とも考えられます。
最後に、キーメッセージを繰り返したいと思います。最初にリスクのレベルを人の健康に対して、時間の経
過とともに考えることが重要であり、また理解としてどれだけの範囲で行動によってリスクを削減できるかとい
うことが、プライオリティーを付ける上で最も大切な項目です。
しかし、さらに大切なのは、他にいろいろな重要さをもたらす価値があるということです。
リスクの削減だけが廃止措置のドライバーではないということです。 もちろん、NDA におきましても、廃止
措置をおこなうことによって、リスクを低減しているわけですが、低いリスクの施設を管理する負担を軽減し
て、優先度の高い作業に配置転換することもあります。
また、さらに廃止措置をおこなうことによって、土地を開放して、それによって、スペースを生みだし、再利用
できるということもあるわけです。
またさらに、廃止措置を講じることによって、技術をテストし、そしてアプローチをテストすることも可能になっ
てくるわけです。繰り返しになりますが、それはバランスを保つことです。
科学ではなくて、やはり芸術であり、ベネフィットを得るためのステイクホルダーとの対話です。
どうもありがとうございました。
小山:
ありがとうございました、クラーク博士。
大変、ビジュアルに分かりやすいご説明資料でした。 それでは、次の発表に移らせていただきます。
M.トリプレット:
では、次のスピーカーです。
アンドリュー・オレールさんです。 IAEA の方です。
現在は廃棄物および環境安全課の担当でいらっしゃいます。 放射性廃棄物、廃止、除染等々を担当
していらっしゃいます。 IAEA の前はサンディア国立研究所で、原子力エネルギーの仕事を 25 年ほど、務
めていらっしゃいました。 よろしくお願いします。
A.オレール:
マークさん、ありがとうございます。
IAEA を代表いたしまして、こうして皆さんと時間を過ごせることを光栄に思います。 また、このような素晴
らしいパネリストの皆さんとリスク評価について議論できることを光栄に思います。
この IAEA の安全基準の話をしたいと思います。 皆さんがこれまで聞かれた廃炉、廃止措置というのは、
これがすべてベースになっていると思います。 それから、リスク評価、安全評価の話にも触れます。
通常の形で廃止するもの、あるいは、事故によって廃止するものの違いの説明もしたいと思います。
最後に 2 つほど国際プロジェクトの例を紹介したいと思います。 IAEA がスポンサーするものです。
これは福島の廃止措置にも通ずるものとして説明をします。
さて、IAEA はそもそも 1957 年に発足しました。 私が生まれた年でもあるのですけれども、原子力エネル
ギーに対する恐怖とその持つ可能性に対応するためのものです。 そして、IAEA の憲章が 81 カ国の参加
を得て 1957 年に定められまして、執行されているわけです。 60 年ほど前に実現されたわけです。
そして、今日、世界の大部分、168 ヶ国がこれを適用し、そして、IAEA の加盟国となっているわけです。
そして、それぞれの国が義務を加盟国として果たすということです。 世界のコンセンサスとしてです。
この IAEA の憲章によりますと、国際的に認められた安全の基準を策定し、そして一方それを加盟国にお
いて適用していくことを支援することが、権限として与えられています。
さて 200 以上の安全基準が出版されております。 これは国際的なコンセンサスを反映したもの、高い安
全性とは何かを示したもの、人と環境を保護するものです。 これこそが世界の原子力安全体制の基盤と
いえます。
その原子力規制というのは、それぞれの国の責任ではありますけれども、国際基準がやはり共通の基盤に
なっていると思います。 安全に対応する、一貫性を持って安全基準を導入していくということにおいて、そ
して国際協力や公益においても、これが重要になっていきます。
加盟国が、例えば使用済燃料及び放射性廃棄物管理の安全に関する合同条約等の条約や協定の
課す、国際的な義務を果たすというような仕組みもできていきます。
安全基準には三つのレベルがあります;原則、要件、指針です。
ここから少しずつその説明をしていきたいと思います。 それぞれについて廃炉との関連について話をしたいと
思います。
まず、このピラミッドの一番頂上にあるのが、安全原則です。 安全の方針や、基本的な目標、そして 10
の具体的な原則を示しています。この 10 の原則がセットとなって、それすべてを適用できるようにしている
わけです。 ところが実行になりますと、物によっては、状況によって、より重要度が上がったり、下がったりす
るものもあります。 関連する原則をすべて適用するということが、要求されています。
この表紙でも分かるように、この原則のドキュメントは、さまざまな国際的な専門家や、グループ、組織が
集まって取りまとめたものですので、世界のコンセンサスを反映したものであって、高いレベルの安全性に何
が必要なのかということを示すものです。
10 の原則がありますが、その少なくとも 3 つがこのフォーラムの中でも示されています。
原則の 2 番目は、政府の役割、効果的な安全のための規制の枠組みであり、それは独立した規制機関
を確立するということ、それを維持するということが含まれます。
原則の 5 番目は、防護の最適化、その方法を最適化して、最も高い合理的に達成可能な安全性を達
成するということを求めています。
原則の 7 番は今の世代、将来の世代の保護をうたっています。環境も含めて放射線のリスクから、それを
守らなければならないといっています。
その安全原則の下にあるのが、一般的、また個別の安全要件のドキュメントになります。
これは基本目標、原則を展開するもので、具体的な活動や施設に適用できるものです。
ドキュメントは簡潔な書き方をしています。何を、誰が、いつ、ということが書いてあるわけです。
これは要件なので、shall、何々せねばならない、という文書を書いています。 そして、これが各国の規制
枠組みの策定に用いられるような書式、文体になっています。
廃止措置に関する一般的な要件もあります。
GSR Part 6 というのがそのドキュメントになります。 61 の説明文書がこの中に入っています。
GSR Part 6 の要件としては、例えば安全評価を求めている要件などもあります。 後で説明します。
それは、廃炉の前にやって、安全の最適化をしなさいということで要求されています。
それから、政府の責任、規制機関の責任、事業者の責任を明確にすることも要求しています。
それからあとは、廃炉戦略の選定も要求しています。
昨日、レンティッホさんが IAEA の 3 つのミッションに言及されていました。 IAEA による廃炉ロードマップの
レビューにはこの GSR part 6 および基準をそのレビューの根拠として使用しています。
安全要件の下が、安全指針、安全ガイドとよばれるものです。 これらは、提言と指針になります。
どうやれば安全要件、そして国際的な良好事例に沿うことができるのかということを示しています。
これは書き方としては should としたほうがよろしいという書き方をしています。 というのも、要件を満たす
方法は 1 つではないからです。
ひとつ例を申し上げますと、廃棄物のガイド 2.1、これは発電炉、研究炉の廃止措置に関するもの、この
2.1 におきましては、いろいろなオプションが示されておりまして、廃棄物管理、専門知識の存在、一般公
衆に関わる問題なども触れられております。
この WSG2.1 におきまして、この正式な安全評価を廃止措置について実施することというのもうたっていま
す。あとで、これも説明をしたいと思います。
この安全基準というのは、拘束性のあるものですけれども、加えて、さまざまな補足出版物も IAEA から出
ております。 安全報告書シリーズ、原子力エネルギーシリーズ、それから技術報告書シリーズといった、こ
こに示しているものはごく一部なのですけれども、発行しています。
廃炉と環境の修復の両方の側面をカバーするものもあります。 というのは、結局グリーンフィールドの状態
に戻して、そして規制対象から外すということを大きく目指しているからです。 この安全基準もそうですけ
れども、これらの出版物は、世界の国際的なエキスパートが集まって、取りまとめています。 世界の経験
から学んでいるということです。 そして、安全基準、その他の文書はすべて、IAEA のウェブサイトで公開さ
れています。 たいがいは複数の言語で提供されています。
これまでのスライドは、IAEA の役割を、そしてアプローチを示す枠組みを示すものでした。
一般的なもの、個別なもの、という両方あったわけですけれども、この会議は日本の経験、そして世界のこ
の廃炉に関する経験を考えるためのフォーラムなので、まずはこの廃炉の定義がここに出ているわけですけ
れども、とにかくハザードを取り除きながら、人と環境に対する影響を取り除く、そして、規制の対象から施
設を外すということが目的なわけです。 これは、寿命を迎えた通常のサイトにしても、事故で損傷を受け
たサイトについても同じです。
ハザードを取り除き、作業者、環境、一般公衆を守って、サイト規制の管理から外して、より生産性のあ
る使い方に戻すということです。それを安全にやるために、分からなければいけないのは、ハザード分析、そ
れからリスク評価です。 これが、すべてのプロジェクトの基礎だと思います。
廃炉の目標は通常のサイトも、事故後のサイトも一緒だと申しました。 リスク評価のプロセスもだいたい
同じだと思ってください。
目標は一緒。 ハザードを取って、同定して、それを緩和して、リスクを緩和して、作業者、人、それから環
境に対するリスクを取り除くということ。 ではこのふたつの違いは何なのか。
通常のサイトと事故後のサイトの廃止措置において違う点は何かというと、それは不確実性だと思います。
つまり不確実性、不確かさを事故後の施設について、マネジメントしていくというのが難しいのです。
事故炉の場合、通常であれば良く文書化された分かっているシステムから、これらは単に出発点に過ぎず、
他は殆ど分かっていなかったり不確実なシステムに取り組むことになります。
加えて、緊急に対策をとらなければいけないハザードもあるかもしれません。
ということで、不確実性をどう緩和していくのか、3 つあると思います。
まずひとつには、テクノロジーを使って、理解や知識、状況についての把握を増やしていって、未知のものを
既知のものにしていくということ。
例えばミューオントモグラフィーを使って、この溶融した炉心の場所、位置を特定するというもの。
それから、もうひとつは、影響を緩和するために、保守的な判断をするということ。 最悪なケースの状態を
考えるということ、コストや時間の削減にどうすればいいのかというのを考えること。
それから、最終的には、深層防護を適用して、何かあった際にもしっかり防護ができるように対策をとるとい
うことです。
この 3 つのアプローチが日々、福島第一の廃炉においても、とられていると認識をしています。
さて、プロジェクトの中で不確かさを少しでも減らそうとしていくわけですけれども、そうやって状況の理解が
進んでいき、そして廃炉の影響についての緩和をしていきます。
そして、安全評価はさっきも言いましたように IAEA の安全基準によって要求されています。
これは、国際的なベストプラクティスの反映でもあります。 ただ、安全だと一方的に言うわけではなくて、し
っかりとレビューを実施した上で、それを証明しなければいけません。 その安全基準のドキュメントが今ここ
にさまざまあります。
この安全評価の中で、リスク評価もなされます。 このリスク評価はハザードの理解をし、リスクを特定し、リ
ソースの優先順位づけをする。 そして、意思決定の判断材料にする。
特に多面的な複雑な状況においては、有効です。このリスクマネジメントの目的は、機会を最大限に活
用するということ、あと、コスト、安全性、スケジュールについて、最大化をすること。
そして、さらに安全性だけではなくて、もちろんそれが一番重要なのですけれども、どんな機会があるのか、
つまり限られたリソースをどう最大化することができるのかということを理解する上でも、重要なものです。
2つ国際的なプロジェクトの例を申し上げますと、さきほど言いました、IAEA がスポンサーをしているもの、
日本やそれ以外の専門家もサポートしているものですが、これが直接、福島の廃炉に関わってくるもので
す。
ひとつが DRiMa というプロジェクトです。
これは何かというと、この廃炉のリスク管理に関するプロジェクトになります。 DRiMa プロジェクトは 2012
年に始まって、昨年 2015 年に終了しました。
さまざまな知見が得られました。 28 の加盟国から 40 名以上の方が参加しました。
最終報告書は、まだ出ていないのですが、まもなくウェブサイトで公開します。 参加者によりますと、非常
に確立されたリスク管理の手法が、さまざまな原子力以外の業界で使われていますので、それを見た上で
廃炉に使えるということが特定されました。 そして、廃炉にどう適応したらいいのかということも考えました。
そしてまた、戦略的なリスク管理も重要ですし、その想定の管理が重要だと、つまりは不確実性の管理が
重要だということを結論づけました。
その想定がまずいと、あるいは不確実性が高いとプロジェクトの最終的なパフォーマンスに関わってきます。
想定をしっかりと進捗具合と同時に評価をしていかなければいけない。
そして、条件が変わっていったら、それに応じて変化をしていくべきだと思います。
もうひとつ、今、進んでいる国際プロジェクトが DAROD というプロジェクトです。
これは何かというと、事故を経験した原子力施設について廃炉ならびに、除染について見るものです。
昨年の 1 月に発足して、日本を含めて 23 ヶ国が参加をしております。
さまざまな廃炉と最終的な修復、損傷した施設に関するものの、実際的な知見を集めまして、この多様
な視点からそれを抽出した上で、発信するということを目的としております。
ワーキンググループが3つあり、ここのスライドに書いてある通りです。
充分にケーススタディーをして、これを取りまとめていきます。 事故とその影響というのは、それぞれの事例
によって違いますので、マグウッドさんが昨日言っていましたように、この国際的なコミュミティーが福島に与え
られるものも大きければ、福島から得られるものも大きいと思っています。
DAROD のプロジェクトはその一例だと思っています。
最後になりますが、IAEA の安全基準は共通基盤、高い安全性を達成するためのものであって、国際的
なコンセンサスを反映したものであるということ。 そして、安全な廃炉に必要なための要件があって、それは
リスク評価、安全評価である。 それによってハザードを取り除いて、リスクを緩和する。
損傷した施設においては、特にそれが重要であります。 IAEA はいくつものプロジェクトのスポンサーとして、
専門家の国際コミュニティーを支えております。 福島の課題に、それによって対応しているわけです。
そして、また福島第一における経験というのは、国際的な知識というものを活用しながらも、一方では、そ
れの貢献にもなるということであります。
以上です。 ご静聴ありがとうございました。
M.トリプレット:
ありがとうございました。
それでは、次、肥田和毅様にお願いしたいと思います。
NDF の技術グループ審議役を務めていらっしゃいます。 安全リスク評価の活動を NDF で担っていらっし
ゃいます。 30 年にわたる原子力工学の分野での経験を有していらっしゃいます。
肥田さん、お願いいたします。
肥田:
トリプレットさん、ありがとうございます。
皆さん、おはようございます。 NDF の肥田と申します。
今日はこれまで各国、それから各国際機関の専門家のご発表がありまして、そういう専門家の方々の中
でこういう発表をさせていただく機会を与えていただきまして、感謝していると同時に、非常に緊張をしてお
りますので、何か不都合がありましたら、ご容赦いただきたいと思います。
それで、前の 3 件のご発表では、各国のいろいろな事故のあとの経験とか、そういったもののお話しがありま
した。 私ども NDF は一昨年の 8 月にスタートして以来、そういったことをいろいろ勉強しながら、今後どう
していくかというようなところを、検討している部分がまだございます。
そういう点で、私のこれからの発表は経験ということではなくて、今の皆様のご発表のようなところから学んで、
それを今後、福島のリスク低減に対して、どうやって、それを使って、取り組んでいくかといったようなご説明
をさせていただきたいと思っております。
まず、昨日、理事長のほうから戦略プラン等のお話がございましたけれども、福島の廃炉に対して、NDF
の基本的な方針としましては、事故によって発生した放射性物質によるリスクを、継続的かつ速やかに低
減するということを基本方針としております。
私どもが発行しています戦略プランにおきましては、そういう基本方針のもとに中長期的な時間に沿って、
リスクの低減の戦略を設計していく、ということを中心に据えて、検討をおこなっている状況にございます。そ
れで、昨年の 4 月に初めて戦略プラン 2015 年版を発行しましたけれども、その中でリスクの評価というの
を打ち出しております。
簡単にご説明しますと、そこでは代表的なリスク源を抽出しまして、それらに対して昨年度の時点では定
性的なレベルかと思いますが、リスクの評価をしまして、優先順位を決めるということをやってきました。
そのリスクの優先順位を決定する上では大きく 2 つの指標を見ておりまして、ひとつは潜在的影響度という
ことで、基本的には放射能と、それから気体とか液体とか固体とかいった、そういう性状ということを考慮し
て 3 段階の相対的な評価をおこないました。
もう一つの軸としましては、そういった放射性物質を閉じ込めている設備の有効性といいますか、そういった
ことが基本ですけれども、そういったものが機能喪失する起こりやすさということを指標にしまして、それを施
設の状態を用いて、こちらも 3 段階で評価をするというようなことをやっております。
この結果も、先日ご紹介をさせていただいておりますけれども、そういう結果を 2 つの軸を使って整理しまし
て、リスクの大きさということでいいますと、右上が大きくて、左下に向かって小さくなるということで、速やかに
対応すべき、それから周到な準備をして慎重に対応すべきもの、それから長期的に取り組んでいくという、
大きく 3 つに分けております。
こういったことを参考にしていただいて、昨年やはり改訂されました中長期のロードマップにおきましても、スピ
ード重視ということから、こういったリスク低減を重視するというふうに、少し方向転換されたというふうに理解
しております。
今後、どのように NDF として、リスクに取り組んでいくかということで、こちらの絵は極めて一般的なリスクへの
取り組み方のプロセスを示したものでございます。
大きく4つに分かれておりまして、ひとつめはリスクの特定ということで、まずはリスクを見つけて、それを認識
して、理解するということが第一ステップになると思います。
それから、2 段階目としましては、リスクの分析ということで、こちらはリスクの特徴を理解して、リスクレベル、
リスクの大きさですね、それを決めるということが 2 段階目になります。
続いて、3段階目はリスクの評価をするということで、一般的な定義としましては、リスクが受容あるいは許
容できるかどうかを判断するということをいっておりまして、2 段階目で分析をしたリスクのレベルを使って、あ
るリスクの基準と比較して、それが受容できるかどうかというような議論をすることになります。
そういった結果、リスクに対応しなければいけないというふうになりますと、4段階目のリスク対応という段階
に入りまして、ここでは実際にリスクを低減するということを考えていくことになります。大きく低減の仕方とい
うものを考えてみますと、リスク源を除去する、これが一番いい方法ですが、その他に起こりやすさ、発生の
しやすさを低減したり、それから結果を少しでも緩和するようなことを考えると、そういったことを具体的に選
択していくということになろうかと思います。
ちょっと細かくて恐縮ですけれども、少し用語の定義のお話をさせていただこうと思います。
左側の用語の名前と、中央の一般的な定義というのは、ISO で定義されている一般的なもので、右側に
はそれらに基づいて、戦略プランの中で福島第一を対象とした時に、それをどういうふうに考えていくかという
ことを書いております。 細かくひとつひとつはご紹介しませんけれども、右側の戦略プランで、どう考えていく
かというところのご紹介だけしますと、リスクとしましては放射性物質による人と環境への影響ということにな
ります。
ここだけ一般的な定義に少し立ちいらせていただきたいと思うのですが、一般的にはリスクというのは、必ず
しも放射性物質による影響のことだけを言っているわけではなくて、何か目的があって、それに対して、不
確かさが及ぼす影響というふうに捉えています。 先ほどから発表でも不確かさというのが、リスクに極めて
大きな影響を持っているというお話しが出てきているかと思いますけれども、ちょっと極端な言い方をすると、
不確かさがなくて全て分かっていれば、リスクという言い方は、ひょっとしたらしないのかなというふうにも思って
います。 それはかなり理屈の上での話ですけれども、いずれにしても、不確かさというのがリスクを考える上
で一番のベースになっているということは認識しておくべきことだというふうに考えております。
それから、リスク源としては放射性物質、それから事象ということでは、地震ですとか、設備、装置の故障で
すとか、そういうものが発生して、それに伴って、リスク源の、状態が変化したり、閉じ込め機能が変化したり
することで、そういった一連のことを事象として表しております。
結果としましては、それは被ばくという形で、例としては考えております。 起こりやすさとしては、そういう被
ばくが実際に発生するような可能性、それからリスクレベル、大きさとしましては、結果と起こりやすさの積と
いうことで考えますが、こちらも一般的には必ずしも掛け算で定義するばかりではなくて、どちらかを重要視
したり、それら 2 つを常に見ながら考えていくということも、やっていく必要があるというふうに考えています。
それから、リスク基準というのは重大性を評価するというための、ある意味、絶対的な数字なのですけれど
も、ここでは必ずしもそういったことを考えるのが適切かどうかということもありますので、これは少し、次にご説
明をしたいと思っています。
以上、一般的な話を少しご紹介しましたけれども、そういうリスクに対する取り組み方のもとに、私たち
NDF として福島第一のリスク低減に向けて、どうやって今の4つのステップを適用していくかということと、そ
れに伴う課題というようなことを紹介したいと思います。
まず、リスクの特定ということでは、リスク源を特定するということがまず最初ですけれども、昨年は少し限ら
れたリスク源に注目しておりましたけれども、今後はもう少し拡大していく必要があるかなと思っています。
それに伴って、いろいろな種類のリスクが出てきますので、それらの特徴を上手く把握するということが、まず
最初のステップになろうかと思います。 そういうものに対して、どんな事象が想定されるかとか、どんな結果
が想定されるかということを、考えていく必要があるわけですけれども。 この辺りの課題としましては、いろい
ろな不確定さの中で、どこまで詳細に追求できるかということ、必要性と果たしてそれがどこまで達成できる
かということが一番の課題になろうかというふうに思っています。
次のリスクの分析ではリスクの大きさを求めていくわけですけれども、こちらもまたいろいろ不確かさの中で、
その結果と起こりやすさというのを定量的に、できる限り定量的にしていくということが大きな課題になってい
きます。 それから、リスク評価というところでは、もともとはリスクが受容できるかとか、許容可能かといった、
そういう議論が目的ではあるのですが、福島第一の場合に、今、受容できるか許容できるかという議論を
するというのは、必ずしも適切かどうかというのもありますので、最初の例でご紹介しましたように、まずはい
ろいろなリスク源を見て、その優先順位を考えて順番に対応していくということが、最初に必要なことかと思
っています。そういう意味でリスクの基準も絶対値的なものを決めるよりは、いろいろなリスク源の相対的な
比較をして、その影響の程度を考えていくということが必要になろうかと思います。
最後のリスクの対応のところですが、例えば、燃料デブリを取り出す時の実際の取り出しの作業とか、そう
いうことをイメージしていただければよろしいかと思います。 それをやる場合には、いろいろな選択肢を考え
る必要があって、ひとつに最初から決めてしまわないということですけれども、いろいろな視点でものを考える
必要があるということと、もうひとつは対応しない場合の時間変化によって、そのリスクがどうなるかと、先ほど
のクラーク博士のご説明や最初のウエイトマン博士のご説明にもありましたけれども、そういったことを考えて
いく必要があると思います。
それで、いろいろ挙げた選択肢を比較する上では、何らかの指標を設定していかなければいけないわけで
すけれども、その例としましては、戦略プランで挙げています5原則、安全、確実、合理的、迅速、現場
指向といったようなこともありますし、もうひとつは例えばデブリ取り出しの話をしますと、作業している間に設
備の状態が、どんなふうに変化するかとか、その作業によって発生する事象が、どんなものがあるかといった
ことを考慮に入れていく必要があると思います。 そういった指標をそれぞれの選択肢に対して比較をするこ
とで、一番いい手段を選んでいくということになろうかと思います。
流れとしては、そういうことになりますが、こういう4つのステップを進めていく上で、リスクのいろいろな評価を
していくツールというか、手法といいますか、そういうものを今、開発しているところです。
1 から 4 番に向けて前半のリスクの相対的な優先順位を決定するようなところでは、あまり詳細なところに
入るというよりは、いろいろな多様なリスク源を全体に眺められるような包括性といいますか、一般的なもの
が必要になります。それから、このページでご紹介していますように、リスク対応のような、少し作業に入るよ
うなところを考える場合には、もう少し詳細で、かつ定量的な物が必要になろうかと思います。
最後に簡単に、今、それぞれの目的で開発している手法をご紹介します。
ひとつは包括的な方法としまして、イギリスの NDA が開発した SED 指標というものを使おうと考えておりま
して、こちらは簡単に言いますと、2 つの大きな要素で評価をしようとしていまして、ひとつはリスク源の特徴
として放射能ですとか、性状ですとか、そういったリスク源そのものの特徴。もうひとつは安全管理上と書い
ていますが、閉じ込めている設備の特徴、適性ですとか、将来の取り出しに影響するような劣化が起こる
かとか、そういったものを考えているものであります。
NDF としましては、こういったものを 1F 向けに改良しているところですけれども、NDA の支援を受けて、い
ろいろアドバイスを受けながらやっているところになります。 それから、もうひとつの定量的、少し詳細な手
法のほうですが、こちらはご承知の方も多いと思いますけれども、発電炉のリスク評価で、十分いろいろ使
用されてきています確率論的リスク評価 PRA というものに基づいて、開発をしております。
これは、簡単に申し上げますと、例えば地震等の起因事象が発生した後に、いろいろ事象が進展していっ
て、いろいろな対策が成功、失敗したりして、最終的に上手くいけば影響はありませんけれども、それが最
終的に失敗した場合には、その起こりやすさの評価と結果の程度を評価するということで、それがリスクとい
うことになります。
こちらは DOE のトリプレットさんのところと共同でこういう手法に則ったリスクの評価手法というものの開発を
進めているところであります。
最後ですけれども、ここはまとめですけれども、NDF としましては、福島第一のリスク低減の戦略を中長期
にわたって設計していくということで、それに向けてリスクの評価手法を、大きく 2 つ、開発しているところをご
紹介しました。
また、ここには書いてございませんけれども、先ほどオレールさんの IAEA の話の最後に 2 件、DAROD と
DRiMa のお話しがありましたけれども、DAROD につきましても NDF から、毎回、メンバーとして参加して
おりますし、DRiMa につきましても、プロジェクトリスクを管理する手法といたしまして、一度オブザーバーとし
て参加させていただいて、そういったところも習得して、単に放射線のリスクだけではなく、全体の廃炉を進
めていく上で、必要なことをいろいろ学んで、取り入れているところでございます。
最後に基本的に今日はリスク低減戦略ということで、放射線のリスクのお話をさせていただきましたけれども、
クラーク博士の説明にもありましたけれども、そのリスクだけで物を決めてしまうということは、ある意味、危険
な面もあると思いますので、いろいろな要因を考慮に入れて、総合的に考えていくということが、最後には
必ず必要になってくると思っております。
以上で発表、終わらせていただきます。 ご静聴ありがとうございました。
M.トリプレット:
肥田さん、プレゼンテーション、ありがとうございました。
小山:
それでは、ただいま 4 件のご発表、皆さん、非常にタイムキーピングをきちんとしていただいて、ちょうど 20 分
ございます。 で、この 20 分間はせっかくご専門の方、いらっしゃっておりますので、福島第一にリスクの考え
方を取り入れるという時に、この考え方をもう少し議論して考え方を深めていくような、そういうディスカッショ
ンをしたいと思います。 真ん中のテーブルは、このままなのですね、演台は。できれば、ちょっと、お互い見
えるようにしていただきたいのですけれども。
20 分の中で、最初、ひとつか、ふたつのテーマで議論させていただいて、あと残りの時間で会場のほうから、
どれだけちょっと時間あるか分からないですけれど、1 件か 2 件、ご質問いただければなというふうに考えてご
ざいます。
最初に議論するネタでございますが、昨日のセッションなんかで、どうやって信頼を得るコミュニケーションがで
きるかといった話が、ずいぶん議論になったかと思います。
で、私は専門家として、ちょっと聞きながら思いましたのは、本当にいろんなコミュニケーションの仕方をご検
討されて、それで、いい信頼関係ができつつあるということになった時に、さあ、そこで使われるリスクが、これ
が信頼できないものであった時に、またもう、そこ元に戻っちゃうということですね。
われわれはやっぱりリスクの見落としがなく、しかも過小評価でも過大評価でもないようなリスクを見つけて
いくと、それを評価していくということが、われわれの義務であるかなと、専門家としての義務であるかなという
ふうに感じております。
そういう観点で、今日、オレールさんからも少しお話をいただきましたが、福島第一は事故を起こしてござい
ますので、まだまだ、中に、非常に線量が高いので、中に人が入れず、分からないことがたくさんあります。
それから、この後のセッションになりますけれども、これからデブリ取り出しということを進めていくにあたっていて
も、まだ、どういう道具を使うかとか、どういうやり方をするかということを、これから決めていく段階でございま
して、まだ分からないこと、英語で、unknown の部分と、それから今も話ありましたように、不確定、不確
実なところ、uncertain なところが多々あるかと思います。
そういう状況の中で、どうやってリスクを見つけて、正確な正しいものを評価していくかということが、一番のチ
ャレンジでございますので、非常に難しい質問になるのですけれども、今日、ご登壇の皆さまと、それから、
一応、司会者なのですけれども、マークさんのほうに、そのことをちょっとご議論いただいて、少し話を深めた
いかと思います。
それでは、私から質問させていただいた点につきまして、どなたかご意見ある方、いらっしゃいます?
アンナさん、よろしいですか? じゃあ、アンナさん、お願いします。
A.クラーク:
残念ながら、レガシーサイトでの不確実性というものは、また事故を起こした福島第一においては、毎日毎
日、生活していく中で、どうしてもハザードの性質に関しても不確実性がありますし、不確かさがありますし、
そして、どれだけ効果的にソリューションが実施できるかどうかに関しても、不確実な部分があります。
そういった中で、いかに廃止措置がその不確実性に対して、どれだけ感度があるかということも重要な課題
です。 ですから、選択肢としては、そういった感度分析をするということも、ひとつの方法ですが、ある想定
を立て、例えば特性に関して、ハザードの特性に関してとか、あるいは、どういったアプローチをとるかというこ
とで、想定をすると。 したがって、そういったソリューションが成功するために、どれだけ感度があるかというこ
とを求める、分析していくということも、ひとつの方法だと思います。
もちろん、その際の参考、参照としては、そうやって、感度があれば、不確実性に対する感度がより特性化
ができるということにもなります。 ただ、覚えておかないといけない非常に大切なことは、どのような質問に
対して、答えようとしているのかということです。
その特性化をしていく上で、ずっと特性化をどんどんやり続けなければならなくなることもあるからです。
そして、物によっては特性化しにくい、そして、それによって、そういった状況に関しましては、福島第一の状
況においては、そういった状況がありますので、したがって、テクノロジー、あるいは遠隔技術が特にそうです
けれども、遠隔技術が重要な役割を果たすことになるかと思います。 しかし、そういった中で、そういった想
定を使っても特性化できない場合には、やはり現実的に考えてみますと、より保守的に控えめに見積もる
ということも重要だと思います。
小山:
ありがとうございます。不確実性がどのくらいの影響になるかということを評価計算するということですね。
それでは、他にも、例えば、ちょっと司会者ですけれども、実際にハンフォードではさまざまなタンクからリーク
があったりとか、非常に想定されないことがあったかと思うのですけれども、そういった点でご意見いただけま
すでしょうか?
M.トリプレット:
そうですね、例えば燃料デブリ取り出しを考えますと、福島において取り出しを考えますと、そういった状況と
しては、確かに K-Basin の使用済燃料にも共通している項目があると思います。
もちろん不確実性を排除するためにできるだけ特性化をできるだけしましたけれども、しかし実際にこのよう
な活動をスタートしますと、すべての不確実性を排除することは不可能です。 そして、私どもにとって大切
であったのは、もちろん完璧なソリューションではないのですが、おそらく 7 割、8 割くらいのソリューションとして、
それをなんとか進めていくということ。 実施して、やりながら学習して行くことであり、今確実に言えるのは前
もって考慮できないようなサプライズがどうしてもあるということです。
従って、山名先生の話でも5つのクライテリアが廃止措置に関してあるという話がありました。
それ以外の要因も非常に重要なものがあり、柔軟性、それから適応性ということが、非常に重要であると
思います。 そして、不完全な情報から、やはり何といっても進めていくということ。 そして、未知のこと、そし
ていろんなサプライズが起こる、そしてそれに対して、より早く、そういった状況に対応する、適応するというこ
とが、もっとも大切だと思います。
小山:
ありがとうございます。なかなか完璧には難しいですけれども、前に進んでいくということの大事さだったかと思
います。
ちょっと同じ質問になりますが、オレール先生、ご講演でもありましたが、もう少し掘り下げてお話いただけま
すでしょうか?
A.オレール:
そちらのコメントでおっしゃったとおり、このリスク評価の目的、目標の一つは公衆がそれをいかに受け入れて
いるかどうかということであるわけですが、そのアセスメントとしては、やはり正確に、そして信頼性が高いとい
うことも重要です。 さらに、私どもがいたしておりますことは、透明性ということも重要です。
透明性ということは、もちろん非常に正確な、恐らく最も確率が高い状態の評価をしていくわけですけれど
も、その上でさらに透明性をもって、いくつかの保守性を控えめに見積もるということを適用するということが
必要だと思います。 これによって公衆からの信頼を得ることができると思います。
こういった種類の評価というものは常に、いろいろと議論の的になるからです。
従って、事業者もしくはライセンシーの場合には、どうしても正確な、そして、よりよく高解像度の安全性評
価、リスク評価が要求されがちなのですが、リスクを下げるようにしていこうという中で、非常によく定義され
た一連の保守性を適用することが、大きなメリットになると思います。
小山:
今の、3つのご指摘を反映して、福島の第一のリスク評価ということに進められているかと思うのですけれど
も、肥田さん、NDF さんの、先ほど、どういうふうに進められているかということ、ご説明あったのですけれども、
これからの進め方についてご意見いただけますでしょうか?
肥田:
はい、NDF が進めているというよりも、福島第一に対して、不確定性を含んだ上で、どういった対応をして
いるかという私の理解をご説明させていただきますと、特に例えばデブリの取り出しに関して言いますと、や
はり中の状態はまだまだ分かっていないというのが現実ですので、いろいろなことを想定して、少し広めのい
ろいろな準備をしているというのがひとつかなと思っています。
もうひとつは、今、特に注力してやっておりますけれども、先ほどご紹介がありました、例えば、ミューオンで炉
内の状況を推定するとか、あるいはロボットを入れて中を観察するとかですね。
それから、いろいろな計算コード、事故が発生してどうなったかというようなことを、計算機のシミュレーション
で、できるだけ追跡していこうということも注力してやっています。あるいはプラントの状態の事故後の温度
ですとか、圧力ですとか、そういったものをこまめに追跡していって、どういうことが起こったのかとか、いろいろ
なそういうことを調べて、そういったことを総合して、今、どういう状態になっているだろうかという、総合的な
推定というか、そういうことをやっているというのが、もうひとつの大きなチャレンジになろうかと思います。
そういうことが進めば、ある程度、幅広くやっている準備も、もっと絞っていけることにもなると思いますし、総
合的に中を理解していくというのは非常に重要かなというふうに思っております。
もうひとつ、途中で私の発表の時も言わせていただいたのですけれども、リスクのひとつの大元は、不確定
性だということなので、例えば、炉内の状況が分かってきて、不確定性が減るとそれ自体がリスクを小さくす
るといっても、完全になくすることにはいかないと思いますけれども、不確定さが減ることによって、リスク自体
も下がっていくようなことになるのではないかなというような期待といいますか、そういう理解をもってぜひ、中
の調査がうまく進むことを期待していきたいと思っています。
小山:
ありがとうございました。なかなか難しい質問だったのですけれども、皆さま答えていただきまして、われわれ
の検討のひとつ、一歩に、先に進むために、いい条件をいただいたというふうに考えてございます。
それでは、ちょっと時間がなくなってきましたので、ここで、会場からもしあれば、ご質問受けたいかと思います
けれども、いかがでしょうか? 何かご質問がございますでしょうか?
ちょっと今日は、専門的な、ややテクニカルなセッションでしたので、難しいかもしれませんが、いかがでしょう
か? すみません、こちらの方。
質問者:
今回、すごく難しいように私も感じながら、リスクのお話を聞いていたのですけれども、皆さま、原子力を預
かる方々から見たリスクの考え方と、昨日から今日まで続く住民のステイクホルダーのひとつとして、私たち
住民が対話をして意思決定に参加する必要性があると、海外の皆さま、おっしゃってくださっているのです
けれども、それは私たちから見たリスク、例えば、汚染水を浄化して、今後、海に放出するなんてお話があ
った時に、発電所の中のリスクを下げるためには、そういうリスク管理、あると思うのですね。
でも、私たち生活者、漁業関係者の方とか、私、お魚大好きなのですけれども、消費者目線からすると、
放出されることはものすごいリスクともとれると思うのですね。 そういった、お互いの双方向でリスク管理をさ
れている、皆さまも考えていただけているというのが、すみません、質問というよりも、今この午前中のセッショ
ンの捉え方でよろしいのでしょうかという質問でございます。
小山:
ありがとうございます。 基本的に私もそういうことだというふうに考えているのですけれども、実際に今、海外
でそういった住民と対話をしながら、両方の観点でのリスクを進めているということでは、そうですね、どなたか
らいただきましょう。 オレール先生、お願いできますか?
A.オレール:
そうですね、コメント、ご意見を、正しく、私、理解しているとすれば、最初に申し上げたいのは、もちろんそ
ういった懸念を十分に認識しているということを申し上げておきます。
リスク、あるいは原子力施設での、そして原子力外でのリスク、特に福島県においてということでありますが、
私自身、実際に IAEA に参加して以来、両方の見方から、当然、参加しています。
IAEA のこれまでのミッション、そして、また中期、長期的な廃止措置の廃炉のロードマップにおいても、それ
から、定期的に県の方々、そして県の住民の方々、県民の方々とお会いして、特に廃炉、クリーンアップ、
そして再活性化ということにおいて、おっしゃる通り、両方が認める必要があると思います。
そして、それに加えまして、さらに課題としては定量的なリスク評価自身の課題もあるわけですが、公衆がリ
スクをどうとらえるかいうことに配慮してコミュニケーションすることも重要だと思います。 特にそれをコミュニケ
ーション、対話していく上で、もちろん絶対的な定量化したリスク評価の話も重要ですが、それだけではなく
て、それを定性的な面からも、そしてまた感情的な面からの話も、十分に公衆と対話をしていく上で重要
な理解の側面だと思います。
小山:
そうですね、他の先生方、いかがでしょうか? よろしいですか?
今のお話でいかがでしょうか?
質問者:
はい、確認だったわけです。今の質問というのは、住民の方、この地域で暮らす方のそういった、私たちから
すれば、そこで起きていることが、例えばすごく狭い範囲、発電所の中で納まるリスクだというふうに私たちが
感じてしまった時には、もう、それは東京電力の方が頑張ればいい、原子力関係者の方が頑張ればいい、
われわれは参加する必要性がない、なんていう誤った考え方になってしまうと思いまして。
そうではなくて、皆さんが、住民の方の視点からみたリスクもきちんと、そのリスク評価に入れられているという
ことが確認できましたので。
例えば私たち、雇用先としても見ていますので、雇用してもらう場所、そこが安定したお仕事がある、という
ことは皆さんが抱えているリスクは、もしかしたら私たちの人生とか暮らしのリスクも抱えてくださっている、とい
うふうにも私は受け取りましたので、非常に良い確認ができました。
ありがとうございます。
小山:
ありがとうございました。 ちょっともう時間がすみません、なくなってしまいましたので、もう1つ、2 つあるかと
思いますけれども、またプレゼンターに聞いていただける、時間を見つけて聞いていただければと思います。
それでは最後に本セッションをトリプレット博士にラップアップしていただきます。
M.トリプレット:
分かりました。ありがとうございます。
それでは、パネリストの皆さまにお礼を申し上げたいと思います。 素晴らしいアイデア、専門知識を示して
いただき、ありがとうございました。 そして、共同座長の小山先生にもお礼を申し上げます。
リスク評価の手法というのは非常に優先順位付け、廃炉においても役に立つものと思います。
そして、規律あるアプローチをもたらすと思うのです。 比較をして、どんなリスクがあるのかということを理解
するためにもです。
福島第一の状況におきましては、大きな不確かさがあります。 ですから、リスク評価も新しい情報が出て
くる都度、更新していく必要があるのだと思います。
リスク評価は公衆、作業員、環境を守るための規制、クリーンナップの基準を設定する上で重要なツール
であることが多くのサンプルから学ぶことができたと思います。
これでもって本日のセッションを終わりたいと思います。
本日はありがとうございました。
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