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介護系NPOの現状と制度外サービス展開に向けた課題

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介護系NPOの現状と制度外サービス展開に向けた課題
福岡県立大学人間社会学部紀要
2011, Vol. 19, No. 2, 1 −18
介護系NPOの現状と制度外サービス展開に向けた課題
―平成21年 介護系NPO全国実態調査における自由回答結果の整理を中心に―
本郷秀和・荒木剛・松岡佐智・袖井智子
要約 本論文では、筆者等が平成21年度に実施した介護保険事業を実施する特定非営利活動法人
(以下、介護系NPOと称する)に対する全国調査の結果の整理(特に自由回答結果の整理を中心
にする)を通じて、介護系NPOの現状・動向と福祉領域の独自サービス(以下、制度外サービ
スと称する)の展開に向けた課題を探ることを研究目的としている。
結果、介護系NPOの多くは制度外サービスを実施していることが明らかになり、それらが提
供する制度外サービスには、(部分的ではあるが)介護保険制度等の既存の制度に基づくサービ
スのみでは充足できないニーズの補完機能を持つことで、地域のセーフティネットとして役割を
持つことが期待された。しかし一方で、「財政上の課題」と「人材確保」が制度外サービス展開
上の大きな共通的課題として存在し、また、積極的な制度外サービスの展開を図るには、組織理
念を確立し、構成員間で共有する必要性が高いことなども推測された。
キーワード 介護系NPO 制度外サービス 介護保険制度
はじめに(研究背景と目的)
する生活援助は原則禁止である)。したがって、
制度上のサービスが利用者の多様化・高度化す
わが国で介護保険制度が施行されてから11
年目を迎えた。その間、介護サービスは市場化
るニーズに応えることには限界があるといえ
る。
され、利用者自身の選択とサービス利用に伴う
一方、我が国の現在の介護保険事業を実施す
自己負担意識等も定着してきた。しかし、介護
る特定非営利活動法人
(以下、介護系 NPO)の
保険制度に基づく介護サービスの利用には、要
多くは、ミッションに基づいた独自の福祉サー
介護度に応じた介護給付費の上限(支給限度額
ビス(制度外サービス)にも取り組んでおり、
基準)が設定されており、制度によりサービス
既存の制度による各種サービスのみでは充足困
種類・内容、利用要件等も詳細に規定されてい
難なニーズに対応していると思われる。また、
る(例えば、同居家族がいる要介護高齢者に対
こうした介護系 NPO による制度外サービスは、
―1―
福岡県立大学人間社会学部紀要 第19巻 第 2 号
ニーズがあるにも関わらず、各種福祉制度等の
社会福祉法人、医療法人等)から、法人格を持
利用が困難な状況にある利用者を排除しないと
たない任意団体(セルフヘルプグループ、ボラ
いう点で重要な意味を持つものである。加え
ンティア団体等)という多種多様な存在が考
て、それらは営利追求を第一義的な目的とせず
えられる(任意団体は介護保険制度上のサービ
に提供されるものであり、その点で言えば市民
スは提供できない)
。そこで、本論文で意図す
の自由な社会貢献活動を支援するという NPO
る介護系 NPO の捉え方を若干整理しておきた
法本来の成立趣旨を体現しており、今後の活発
い。すなわち本論では、介護系 NPO を① NPO
な展開が期待されるところである。
法に基づく特定非営利活動法人(以下、NPO
そこで本稿では、はじめに我が国の介護系
法人)格を持つこと、②介護保険事業を実施
NPO の現状・動向を把握し、そこから今後さ
していること、という 2 つの要件を満たす組織
らに介護系 NPO が独自の制度外サービスを展
を介護系 NPO として限定的に捉えることにす
開していく上で解決すべき課題について明らか
る。
先の①について、NPO 法では「特定非営利
にしたい。
活動を行う団体に法人格を付与すること等によ
Ⅰ 介護系NPOへの期待
り、ボランティア活動をはじめとする市民が行
う自由な社会貢献活動としての特定非営利活動
1.介護系NPOとは
の健全な発展を促進し、もって公益の増進に
⑴ 介護系NPOとは
寄与することを目的とする 3 。
」と規定されて
はじめに、NPO( Non Profit Organization )
いる。この規定からは、
「市民」
、
「ボランティ
の捉え方について触れておきたい。まず NPO
ア活動をはじめとする自由な社会貢献活動の
に 対 す る 現 代 的 捉 え 方 と し て、 安 立 清 史 は
健全な発展」、
「公益の増進に寄与」が特に重
「 NPO と は Non Profit Organization、 直 訳 す
要なキーワードになると考えられる。つまり、
れば『非営利組織』であるが、より正確には『民
NPO 法は、NPO 法人に対して専門的活動を期
間・非営利・組織』のことである」と述べてい
待するというよりも、市民による様々な社会貢
1
る 。また、吉田忠彦は「非営利組織を非営利
献活動の展開を期待し、支援するための法律で
目的だけでくくると、行政機関、町内会等の地
あるといえる。
縁団体、家族とか親類などの血縁関係、さらに
また、先の②に関しては、現在の介護保険事
はその場限りの殆ど集会のようなものまで含ま
業には NPO 法人以外にも、社会福祉法人、医
れることになる。営利を目的とする組織以外の
療法人、営利企業等が参入しており、利用者の
全ての人の集まりを指すことになるので、非常
獲得を巡り競争が発生している。つまり、市民
に広くなってしまう」と指摘している 2 。以上
の自由な社会貢献活動の展開がミッションであ
のような指摘にみられるように、NPO には幅
る介護 NPO には、介護保険事業の展開とミッ
広く多種多様な組織が含まれることになる。
ションに基づく社会貢献活動のバランスを図り
一方、介護サービスを提供する NPO に着目
ながら、サービスの質の向上や競争に勝ち残れ
しても、法人格を持つ各種団体( NPO 法人、
るようなサービス提供が求められているといえ
―2―
本郷・荒木・松岡・袖井:介護系NPOの現状と制度外サービス展開に向けた課題
る。
として提供することができる。このようなサー
ビスを本論では制度外サービスと称するが、福
⑵ 介護系NPOの活動概要
祉活動を志向する介護系 NPO にとっては、重
介 護 系 NPO の 活 動 分 野 に 関 し て、 こ れ を
要な意味を持つことになるため、次節で具体的
NPO 法上の枠組みで捉えた場合では、特定非
な事例に触れることにしたい。
営利活動の17分野における「保健医療または福
2.介護系NPOの存在意義と期待
祉の増進を図る活動」
(第 1 分野)として実施
していると考えられる。介護系 NPO の介護保
⑴ 介護系NPOの存在意義 ―事例を通じて
険事業は、第 1 分野の中で実施されているが、
考える―
特に福祉活動をミッションとする介護系 NPO
介護系 NPO の存在意義を考える上では、ま
では、介護保険事業以外の方法で福祉の増進を
ずはサービス利用者の視点から考える必要があ
図るための独自活動が求められる。
ろう。現在のところ、介護系 NPO に特化した
介護系 NPO が取り組むことのできる介護保
サービス提供事例はさほど多くはないが 4 、先
険サービスには、職員配置やサービス内容等の
行文献の中に次のような事例があるので紹介
面で詳細な基準が定められているため、基準外
しておきたい 5 。なお、本事例は、ある介護系
のサービスは提供できない。しかし、介護保険
NPO のスタッフにより、事実の一部を修正・
制度や各種の福祉制度(自治体委託事業を含
創作(登場人物も架空)して執筆されたもので
む)では充足できない利用者のニーズに応える
ある。
ためのサービスを介護系 NPO の独自サービス
表1 制度外サービスを実施する介護系NPOの援助事例(イメージ)
事例 No.
事例1
利用者概要
要介護2・認知症
介護保険サービス
制度外サービス
訪問介護、
配食サービス・たすけあい活動(法人事務
通所介護
所での夕方の食事作り)
概要:自宅が山間部にあり、近隣に子ども等が不在で移動手段もない。買物や食事づくり・配膳等も困難
な状態。同法人の介護保険制度上の訪問介護及び通所介護の利用。制度外サービスとしては、時折に法人
事務所でスタッフと夕食を一緒につくり食べる。その他、同法人の配食サービス利用(委託と委託外組み
合わせ)
。(単独世帯・低所得者、※介護保険制度サービスは、支給限度額の上限に近い利用状況)
事例2
要介護1・認知症
たすけあい活動 ( 外出付き添い )
訪問介護、
通所介護
概要:遠方に住む子ども夫婦が本人のもとを訪れた際、認知症の進行を心配して相談。結果、法人内の介
護保険制度上の訪問介護・通所介護の利用につなげる。通院及び週1∼2回程度の趣味の散歩をする際には、
制度外サービスとして外出の付き添いを利用。必要に応じ制度外サービスとして屋内環境整備等も利用。
(在
宅希望の単独世帯)
(出典:本郷秀和「第 6 章 福祉NPOが地域の主体となって取り組む」、妻鹿ふみこ編著「地域福祉の今を学ぶ」ミネル
ヴァ書房、2010年、p.135の表Ⅱ-6-1より)
―3―
福岡県立大学人間社会学部紀要 第19巻 第 2 号
本事例から、介護系 NPO は、介護保険サー
住み、便利さも不便さも、そしてどんな人が住
ビスと制度外サービスの提供によって利用者の
み、何を求めているかを知っている住民自らで
ニーズを充足しようとする姿勢が読み取れる。
あるということだ」6 と述べているが、やはり
また、その内容をみてみると、介護保険制度上
介護系 NPO は市民・住民感覚を備え、地域の
の支給限度額を超えた部分や介護保険制度では
実情(ニーズ、文化、地理的状況等)を踏まえ
提供困難な性質のサービス(例:散歩の付き
つつ、そこに住む人々のニーズを理解し、必要
添いなど)に取り組むことで、制度上のサービ
なサービスを展開していくことが期待されるの
スの不足部分を補っているとも捉えることがで
である。
きる。したがって、筆者も過去に指摘したが、
介護系 NPO における住民参加の具体的なス
介護系 NPO による制度外サービスの提供には、
タイルとしては、理事や会員として参加する形
地域で充足されにくい利用者のニーズ(個別的
態、有償で制度外サービスに従事する形態、ボ
な)に応えようとする部分に大きな存在意義が
ランティア等を通じて参加する形態、などが考
あり、地域のセーフティネットとしての機能を
えられる。いずれにしても、組織のミッション
持つことが期待できる。
に共感する参加者のニーズや状況に応じた活動
調整等が必要になるが、介護系 NPO の意思決
⑵ 介護系NPOに対する主な期待
定が労働者の視点を前面に出しすぎないよう留
① 市民感覚の保持と住民参加への期待
意する必要があろう。
介護系 NPO は、単なる介護保険事業所とし
ての役割を持つのではなく、NPO 法の目的に
② 地域に根差した活動とニーズへの柔軟な
みるように、市民感覚(あるいは住民感覚)を
対応
備えた社会貢献活動の展開が求められる。特に
福 祉 活 動 を 志 向 す る 介 護 系 NPO に つ い て
介護系 NPO の活動を拡大するためには、非専
は、やはり介護保険事業のみを実施するのでは
門職者(地域住民等)の参加をどのように捉
なく、独自の制度外サービスの展開が期待され
えるかが問われることになる。なぜなら、市
る。なぜならば、ⅰ)単なる介護保険事業のみ
民(住民)参加の促進はボランタリーな視点を
を実施すれば、NPO 法人としての存在意義が
持つ介護系 NPO にとって、市民(住民)の自
薄れてしまうこと、ⅱ)営利主義的な発想に転
由な社会貢献活動を支援する機能を促進させる
嫁し、組織存続主義・労働者中心主義に陥る危
と考えられるからである。したがって、介護系
険性があること、ⅲ)NPO 法の目的にみる社
NPO は、専門職者と非専門職者を適材適所に
会貢献性が薄れてしまうこと、などが考えられ
配置することも必要であろう。
るからである。
以上に関して、各種 NPO 法人のホームペー
以上に関して、柏木宏は「 NPO はしばしば、
ジ等をみても、実際に介護系 NPO の多くは、
行政サービスの隙間を埋める存在として位置づ
法人所在地の市町村の範囲内での活動に取り組
けられている。(中略・・)社会的に必要とさ
むことが多いと推測される。また、渋川智明
れているかなりのサービスは(行政により)カ
が「住民のニーズに対応できるのは、そこに
バーされるものの、少数者のニーズや新たな課
―4―
本郷・荒木・松岡・袖井:介護系NPOの現状と制度外サービス展開に向けた課題
題には対応しにくい。また、行政による既存の
在意義も薄れていく。つまり、介護系 NPO は
サービス提供形態に不満を持つ人々には、新た
利用者への直接支援という形を通じて介護・福
な形態を提示することが望まれる。これらを担
祉現場に触れる立場にあるため、利用者のニー
うのが NPO というわけだ。
」 と述べているが、
ズに敏感である必要があり、ニーズに基づく制
介護系 NPO が提供する制度外サービスは、単
度外サービスの提供や地域のニーズを伝えるた
に行政の補完的役割を持つのではなく、各々の
めの取り組みが求められる。
7
介護系 NPO が掲げるミッションを遂行する上
Ⅱ 介護系NPOの現状 ―単純集計結果の部
で、二次的に行政の補完的役割を持つことにな
ると捉えるべきであろう。
分的概観を通じて―
1.平成21年度「介護サービスを実施するNPO
③ 提言者としての介護系NPO
法人全国実態調査」の概要11
介 護 系 NPO は 民 間 非 営 利 組 織 の 1 つ で あ
る。そのため、組織ミッションの遂行に伴い、
⑴ 調査全体の目的
地域のニーズを吸い上げたり、創意工夫を凝ら
本調査の全体的な目的としては、大きく次の
した活動を展開することが期待される。また、
①から⑤があるが、特に本論文では、①の目的
行政とは異なる視点から、柔軟性を持った先駆
を達成するためのアプローチを試みる。また、
的活動が期待できるが、行政の下請け的存在や
①以外の目的の達成に向けては、現在検討中で
サービス提供のパイロットテスト的組織として
あるもの(目的②及び③)と、今後の研究で取
存在するのではない。すなわち、行政と対等な
り組むもの(目的④及び⑤)がある。
立場で交渉し、利用者が必要とするサービスが
①我が国の介護系 NPO 全体の状況と課題を
提供できる地域づくりを促進する役割が期待さ
把握すること(その結果に基づき、今後に介護
れるのである。
系 NPO が共通的に抱えやすい課題の解決方法
NPO が 政 治 的 な 活 動 に 関 わ る 理 由 に つ い
を提案したいと考えている)
。
て、柏木はⅰ)サービス活動の社会的拡大と
②介護系 NPO が提供する福祉領域の制度外
課題への対応、ⅱ)扱う社会的課題ゆえ派生
サービスを開発しやすくなる環境条件・組織条
8
する問題への対応、等を挙げているが 、これ
件を把握すること。
には、介護系 NPO と行政の対等関係が求めら
③制度外サービスを提供する介護系 NPO に
れる。つまり、民間組織の独立性という点で
おいて、今後に社会福祉士が担うべき役割を明
は、介護系 NPO が過度な行政依存体制 を形
らかにすること(常勤の社会福祉士の配置有無
成しないことが必要である。このような問題
を視点として、調査結果を考察していく方法を
に関して、田中弥生によると「最近では行政
考えている)
。
9
④筆者が、平成15−16年度に実施した介護系
からの委託だけを目的に、手続きか簡便だから
と NPO 法人を設立するケースも出現している」
10
NPO 全国実態調査の結果と本調査結果との比
と指摘していることもあるが 、単なる介護保
較検討を通じて介護系 NPO の変化を明らかに
険事業所として存在するだけでは、NPO の存
すること。
―5―
福岡県立大学人間社会学部紀要 第19巻 第 2 号
⑤平成23−24年度にかけて実施予定である
2.調査結果にみる介護系NPOの現状(単純集
国内の各地域(北海道、東北、関東、関西、中
計結果より)
四国、九州沖縄)におけるヒアリング調査実施
⑴ 法人設立年、所在地、総収入の状況と財
に向けた基礎資料を作成すること(組織の実情
政安定意識等
に応じた制度外サービスの開発促進者に求めら
① 法人設立年と存在地域
れる知識・方法・プロセス等をソーシャルワー
調 査 対 象 と な っ た 介 護 系 NPO の 法 人 設 立
を、ⅰ )NPO 法成立から介護保険法実施まで
クの視点から明らかにしたいと考えている)
。
(平成10年∼平成12年 3 月)、ⅱ)介護保険実施
⑵ 調査方法と調査期間
から改正前(平成12年4月∼平成18年3月)
、ⅲ)
本調査の方法は、アンケート票を用いた郵送
改正後(平成18年4月以降)、という枠組みで整
調査(理事長または現場代表者の自計式で依
理した結果、ⅰ)が15.1% (128法人、N=847)、
頼)であり、平成21年 7 月 1 日から 8 月30日に
ⅱ)が68.3%(590法人)、ⅲ)は14.9%(129法人)
かけて実施したものである。
という結果となった。したがって、回答者が属
する介護系 NPO の約85%は介護保険法施行後
⑶ 調査対象数及び回収数(率)
に法人化しており、中でも約70%が平成18年 4
①調査対象数:2874法人 ※ WAMNET「介
月の改正介護保険の施行以前から法人化してい
護事業者情報」から抽出した介護系 NPO の全
ることから、介護保険事業への参入を見越して
数である2975箇所にアンケート票を郵送。結
NPO 法人化している状況がうかがえる。
果、101法人が住所不明で発送元に返却され
また、調査対象者の事業所所在地の状況で
たため、本調査での最終的な調査対象者数は
は、「 関 東 」29.2%(252法 人 ) が 最 も 多 く、
2874( 箇所 ) となった。
次 い で「 中 部 」19.7%(170法 人 )、「 関 西 」
②回収数及び回収率:回収数 / 対象者数:864
17.0%(147法 人 )、「 九 州 」13.1%(113法 人 )
通 /2874、回収率:30.1%
などという傾向を示したが、やはり都市部とそ
の圏域に多い傾向がうかがえる。そのため、人
⑷ その他(倫理面での配慮等)
口が少ない地域には制度外サービスを実施する
本調査を実施するにあたっては、調査票の 1
介護系 NPO の存在数が少なくなることも推測
ページ目に、①調査結果に数的処理を実施し、
され、このような地域における介護系 NPO の
個別の法人が特定できないような形で集計する
設立・発展のための仕掛けも重要になる。
こと、②結果を研究目的以外には使用しないこ
と、の 2 点を明記した。また、本調査の自由回
② 収入状況と安定感
答を除く部分について、本論では調査票で設定
介護系 NPO の法人全体の収入状況について
した調査項目の一部を単純集計で紹介する程度
は、1000万円毎に区切った場合の傾向( N=864、
に留めている(この詳細については、別の論文
無回答30法人を含む)をみてみると、
「1000-1999
で明らかにしたいと考えている。)。
万円」18.5%(160法人)が最も多く、次いで
「8000万円以上」16.3%(141法人)
、
「2000-2999
―6―
本郷・荒木・松岡・袖井:介護系NPOの現状と制度外サービス展開に向けた課題
万円」15.7%(136法人)という結果になった。
N=864)が最も多く、「 6 ∼10名」24.4%(211
また、たとえば4000万単位で総収入をみた場
法人)の順であり、「31名以上」が2.3%という
合 に は、「4000万 円 未 満 」60.2%(521法 人 )、
状況であった。一方、非常勤・パートの職員
「4000-8000万円未満」19.9%(172法人)
、
「8000
数でも、やはり「 5 名以下」33.9%(293法人、
万円以上」16.3%というように、収入規模が比
「 6 ∼10名」21.5%となった半面、
「31
N=864)、
較的小さくなりやすい傾向もうかがえる。
名以上」が13.4%(116法人)存在していた12。
介護保険事業収入は、介護系 NPO の財政基
他方、離職者の状況をみると、
「離職者は少
盤を支える柱になりうるが、その収入を制度外
ない」54.7%(473法人)
、「離職者はいない」
サービスに投資できなければ、制度外サービス
18.2%(157法人)となり、「離職者が多い」で
の展開が困難になることが推察される。そこ
は25.1%(217法人)でおよそ 4 分の 1 を占め
で、制度外サービスの開発意欲に関する質問結
た。これは、介護従事者の人材確保が社会的な
果をみると、地域のニーズに対するサービス開
課題となっていることもあり、介護系 NPO に
発意欲( SA )への考え方として、
「利益の有無
おいても同様な状況があると考えられる。
に関係なく新しいサービスを作り出したい」が
次 に ボ ラ ン テ ィ ア の 状 況 を み る と、 ま ず
59.1%(286法人 ,N=484)存在しており、次い
地域の最低賃金以下の謝礼や実費等を支払
で多い「利益が見込めない場合、新しい事業を
う「有償ボランティア」では、「 5 名以下」が
始めない」19.8%(96法人)と比べると大きな
88.7%(766法 人、N=864) で 最 も 多 く、 活
差がみられていた。
動 者 に 金 銭 を 支 払 わ な い「 無 償 ボ ラ ン テ ィ
ア 」 に つ い て も「 5 名 以 下 」85.3%(737
なお、介護系 NPO が定期に財政支援を受け
ている組織の存在状況は、
「ない」が93.1%(804
法 人、N =864) が 最 も 多 く な っ て い た。
法人、N=864)であったことから、運営手法の
介護系 NPO のボランティア募集活動の状況は、
工夫や自主財源の確立が求められていること
「現在していない」51.5%(445法人、N=864)
が推測された。これに関して、実際に介護系
が 最 も 多 く、「 し て い る 」47.1%(407法 人 )
NPO の69.0%(596法人、N=864)が「財政状
よりも若干多い結果となった。特に、介護系
況が不安定である」と回答しており、活動意欲
NPO の47.1%がボランティアの募集活動をし
は高くても、制度外サービスの展開の基盤とな
ているにも関わらず(つまり、ボランティアの
る資金確保には課題が多いことも推測された。
必要性があるといえる)
、実際にはボランティ
総じて、介護系 NPO は、たとえ利益に結び
アを確保できていない状況にあるといえる。
つかなくても、制度外サービスが展開できる組
以上の点からは、介護系 NPOの職員数(非常
織体制や事業運営の方法を確立することが大き
勤・パート含む)は少なく、小規模型の組織に
な課題になると推測される。
なりやすいことがわかる。 ま た、 市 民 の 自 由
な社会貢献活動の場としての視点から介護系
⑵ 職員数、ボランティア数・募集状況
NPO を捉えると、ボランティアも少ない状況
調 査 対 象 と な っ た 介 護 系 NPO の 正 規 職 員
にあるといえるため、制度外サービスを活発化
数 の 状 況 は、
「 5 名 以 下 」55.1%(476法 人、
させるという意味でも、地域のボランティア希
―7―
福岡県立大学人間社会学部紀要 第19巻 第 2 号
望者に呼びかけ、人材教育・活動支援に取り組
者自立支援法や自治体委託事業等)に基づく事
むことも必要であると考えられる。
業の実施傾向( MA )についてみると、
「実施
していない」30.4%(240法人、N=789)が最
も多いものの、
「身体障害者関連事業」26.6%
⑶ 有資格者の状況と主な担い手層
介護系 NPO に従事する主な有資格者(常勤
(210法人)
、
「移送サービス」25.0%(197法人)、
職員、一部に兼務の可能性あり、MA、N=864)
「知的障害者関連事業」22.1%などという結果
の状況をみると、
「社会福祉士」は29.2%(252
もみられた。
法人)、「介護福祉士」76.4%(660法人)、
「2
級ヘルパー」69.8%(603法人)
、
「介護支援専
⑸ 実施している制度外サービスと対象・種
門員」64.8%(560法)、
「看護師」44.1%(381
類、主な課題
法人)、「理学・作業療法士」41.2%(356法人)
① 介護系NPO全体からみた制度外サービス
などという状況であった。このような結果から
の実施割合
は、介護保険制度に関する介護サービスの担い
調査対象となった介護系 NPO の中で、制度
手(有資格者)が多くを占めている状況がうか
外サービス(福祉領域限定)を提供する割合は
がえるが、介護系 NPO の多くは介護保険事業
72.4%(615法人、N=849)を占めた。つまり、
の実施に必要な専門職の配置により、一定の専
過半数の介護系 NPO が制度外サービスを実施
門性を確保していると推測される。
しているといえるが、逆にいえば27.6%の介護
一方、制度外サービスに関する担い手の状
系 NPO は制度外サービスを実施していないこ
況 で は、「 中 高 年 女 性 」 が63.6%(407法 人、
とになる。このことから、制度外サービスを実
N=593)と過半数を占め、次いで多い「中高年
施しない介護系 NPO では、①介護保険事業か
男性」8.6%(51法人、
「その他」を除く)と比
ら得た収入を福祉領域以外の活動(例えば環境
較して大きな差がみられていた。
保全活動等のミッションに基づく活動)に活用
している場合と、②介護保険事業のみ、または、
⑷ 実施している介護保険事業と公的事業
それに加えて公的事業のみを実施している介護
調査対象となった介護系 NPO が実施してい
系 NPO、という 2 つのパターンをとっている
る介護保険事業の種類( MA )は、
「訪問介護」
ことが推察される。特に②に関しては、NPO
51.1%(438法 人、N=864)、「 居 宅 介 護 支 援 」
法は市民の自由な社会貢献活動を制度的に支援
「通所介護」44.9%(385法人)
45.4%(389法人)、
する目的で創設されているため、単なる介護保
が比較的多くなっていた(その他、2 つの事業
険事業所としての役割のみを果たすようになれ
種別が15%程度あるが、それ以外の事業種別で
ば、その存在意義が不明確になることがやはり
は全て10%以内)
。これに関して、今後の新た
危惧される。
な介護保険事業の実施意欲の状況は、
「現状維
持がよい」58.6%(499法人、N=852)となり、
「増
② 制度外サービスの対象者とサービス種類
やしたい」39.3%(335法人)を大きく上回った。
介護系 NPO における制度外サービスの対象
また、介護保険制度以外の各種制度等(障害
者( MA )は、
「高齢者全般」54.5%(328法人、
―8―
本郷・荒木・松岡・袖井:介護系NPOの現状と制度外サービス展開に向けた課題
NA=602)が最も多く、次いで「困っている者
ビスからの収入が期待できない」68.5%(376
全般」47.0%(283法人)という結果になった。
法人、N=549)が最も多く、次いで「従事者
介護系 NPO は、65歳以上の要支援・要介護高
がいない」34.6%(190法人)、「介護保険事業
齢者に介護保険上のサービスを提供するが、や
や公的サービスからの繰り入れる余裕がない」
はり制度外サービスの提供においても高齢者を
18.4%(56法人)などという回答がみられた。
介護系 NPO が提供するサービス全体の課題
対象者に設定しやすいことがわかる。つまり、
組織ミッションに基づく対象者としても高齢者
については、後述する自由回答の整理部分で詳
を志向しやすいことが考えられるのである。し
しく述べるが、収入上の課題は、制度外サービ
かし、47.0%もの介護系 NPO が「困っている
スの開発に向けた大きな課題であり、ミッショ
者誰でも」と回答していることからは、介護系
ンの遂行と収入確保との狭間に厳しい状況が生
NPO は、広く地域住民を対象としていくこと
じることが推測される。
も考えられる。そのため、幅広い相談に対応で
きるソーシャルワーカー(社会福祉士)の配置
⑹ 福祉相談の対象者と対応職員 等も今後に有用であると推測される。
介護系 NPO の制度外サービスの対象者とし
て、
「困っている者誰でも」が47.0%(283法人)
一方、実施している制度外サービスの種類
( MA )をみると、
「ホームヘルプ」42.6%(257
の割合であったが、介護保険制度を除く福祉関
法人、N=603)が最も多く、次いで「移送サー
連の相談援助の実施状況をみると、福祉に関す
ビス」33.8%(204法人)、
「高齢者の一時預か
る相談(介護保険関連以外)に対応している介
り(デイ)」28.4%(171法人)の順となった(「そ
護系 NPO は85.4%(719法人、N=842)存在し
の他」37.0% を除く)。この結果からは、制度
ていた。この相談援助の対象者( MA )は、制
外サービスは在宅福祉を志向し、介護保険上の
度外サービス対象者と同じような傾向を示し、
「高齢者」67.7%(406法人、N=600)
、「地域住
サービスをサポートしていることが推測でき
る。なお、移送サービスについては、福祉有償
民誰でも」58.7%(352法人)という順になった。
運送事業を NPO 法人等が実施する場合もある
このことから、相談援助と制度外サービスの提
が、無償で提供する場合も考えられる。なお、
供を一体的に実施する必要性が高いと考えられ
移送サービスは、我が国の介護保険サ−ビスで
る。
は、十分には提供されていない状況もみられる
一方、福祉関連の相談対応者では、介護系
が、買い物や通院等に困難を伴う障害者や要介
NPO の76.7%(458法人、N=597)が担当者を
護認定を受けていない高齢者等にとっても重要
固定しており、その対応者が所持する主な資格
なサービスであるといえる。
(業務に必要な主要資格、SA )は「介護支援専
門員」50.7%(306法人、N=604)が最も多く、
③ 制度外サービス提供上の課題
次いで「介護福祉士」44.4% (268法人 )、「 2 級
制度外サービスを実施する介護系 NPO につ
ヘルパー」2.8%(150法人)となった。つまり、
い て、 介 護 系 NPO に お け る 制 度 外 サ ー ビ ス
介護系の資格保持者が相談援助を担っている
提供上に生じる課題( MA )は、
「制度外サー
が、高齢者以外に対する相談能力については課
―9―
福岡県立大学人間社会学部紀要 第19巻 第 2 号
題が残る。
という枠組みを設定した。その理由は、組織規
な お、 こ れ ら の 専 門 職 を 含 め て、98.0%
( N=603)が相談内容に応じて関係機関への紹
介・連絡を実施していたが、これには様々な地
模の違いや制度外サービス実施の有無により、
組織が抱える課題の共通点と相違点を把握した
いと考えたからである。
域の社会資源や関係制度の知識が求められる。
また、組織規模の分類については、法人の総
特に、必要なサービスがその地域に存在しない
収入が3000万円未満を「小規模」
、3000万円以
場合等には、利用者ニーズの背景・理由を包括
上6000万円未満を「中規模」
、6000万円以上を
的に理解・整理したうえで、介護系 NPO 自身
「大規模」と分類している(調査では数量回答
によるサービス開発、提供も大きく期待され
で依頼したものを筆者らがカテゴリー化した)。
る。
なお、全体的に明らかに質問の意図と乖離して
いる回答も多くみられたため、それらは各共同
Ⅲ 自由回答結果にみる介護系NPOの課題
研究者の判断により除外した。
1.自由回答の設定目的、調査項目と視点等
2.組織の運営上の課題
表1-1お よ び 表1-2で 示 し た よ う に、 介 護 系
⑴ 項目の作成目的と質問項目
前章においては、単純集計の結果の一部を概
NPO が抱える組織の運営上の主な課題として
観した。ここでは、更に同調査における自由回
は、「財 政上 の問 題 」
「人 材不 足・確 保」「制
答結果の整理から介護系 NPO の抱える課題を
度上の問題」
「利用者の確保」などがみられ
把握し、今後の制度外サービス展開上の課題を
る。中でも「財政上の問題」は大きく、介護系
考察したい。なお、自由回答での質問項目とし
NPO の約半数が課題としてあげている。これ
ては、①組織の運営上の課題、②サービス提供
は、自主財源の確保が困難なために、介護保険
上の課題、③活動を活発化させる為の課題、④
事業を実施による収入を確保しようとすること
利用者のニーズに応えるサービスが開発できる
が理由として推測される。次いで「利用者の確
ための条件、の 4 点に着目して検討する(④の
保」についても財源に直結する課題であり、や
み箇条書きで 2 つまで回答を得た)。
はり介護系 NPO の財政状況の厳しさがうかが
える。また、「人材不足・確保」の問題につい
⑵ 整理の視点と方法
ては、事業規模や内容に見合ったマンパワーの
自由回答結果の整理は、共同研究者 4 名で分
不足、離職率の高さとそれに対する職員補充が
担して行った。そのプロセスについては、はじ
十分にできず、組織運営に少なからずの支障を
めに記述内容が類似の意味を有するものをまと
与えていることなどが推察される。
め、カテゴリー化し整理した。また、その際、
一方、組織規模と制度外サービス実施の有無
記述内容に 2 つの意味を持つものは、各々のカ
からみた運営上の課題には、大きな差はない
テゴリーに分けて整理している(重複してカウ
も。しかし、小規模で制度外サービスを実施し
ントした)。更に、自由回答の整理の視点とし
ている組織では「スタッフの意識・質向上」、
ては、組織規模及び制度外サービス実施の有無
同じく小規模で制度外サービスを実施しない組
― 10 ―
本郷・荒木・松岡・袖井:介護系NPOの現状と制度外サービス展開に向けた課題
表1-1 組織の運営上の主な課題 N=535
カテゴリー名
回答数(割合)
具体例
249(46.5%)
財政上の問題
人材不足・確保
収入の不安定、資金不足、財政力の強化
人的に余裕がもてない、常勤職の確保、職員の定着を
97(18.1%)
制度上の問題
34(6.4%)
利用者の確保
32(6.0%)
スタッフの意識・質の向上
27(5.0%)
26(4.9%)
15(2.8%)
12(2.2%)
9(1.7%)
8(1.5%)
待遇
後継者育成
職員間の連携
税制上の問題
研修・教育
どうするか
報告書等の業務が煩雑、運営基準が厳しい、介護保険
がいだまだ発展途上にあること、
利用者の安定した確保、利用者の減少、利用者層を広
くする
ニーズに合ったサービスの提供、理念の継承が難しい
職員の処遇改善
後継者の育成
役員と職員の連携、ネットワーク強化
税制上の優遇、税制上の見直し
スキルアップの為の教育、リーダー育成
表1-2 組織規模と制度外サービス実施の有無からみた組織の運営上の主な課題
制度外サービス有(n =175)
制度外サービス無(n=76)
小規模
①財政上の問題 [101]57.7%
①財政上の問題(34)44.7%
(N= 251)
②人材不足・確保 [27]15.4%
②人材不足・確保(12)15.8%
③スタッフの意識・質向上 [10]5.7%
③制度上の問題(8)10.5%
制度外サービス有(n = 115)
中規模
(N =148)
制度外サービス無(n = 33)
①財政上の問題 [46]40.0%
①財政上の問題(18)54.5%
②人材不足・確保 [28]24.3%
②利用者の確保(4)12.1%
③利用者の確保 [ 9]7.8%
③人材不足・確保(3)9.1%
制度外サービス有(n = 101)
大規模
(N =136)
制度外サービス無(n = 35)
①財政上の問題 [38]37.6%
①財政上の問題(12)34.3%
②人材不足・確保 [22]21.8%
②人材不足・確保(5)14.3%
③待遇 [ 7]6.9%
②利用者の確保(5)14.3%
※[ ]内の数字は回答数
織では「制度上の問題」があげられており、大
られているが、その他にも「制度上の問題」な
規模で制度外サービスを実施する組織では「待
どもみられている。特に「人材不足・確保」は、
遇」があがっていることもある。
組織運営上の課題にもあがっていたが、実際の
サービス提供現場においても大きな問題となっ
3.サービス提供上の課題
ていることが推察される。人材不足の解消には
表2-1及び表2-2から、介護系 NPO における
待遇を向上させることが有用だと思われるが、
サービス提供上の主な課題として、
「人材不足・
財源の問題から困難な状況にあると推測され
確保」「スタッフの意識・質向上」などが挙げ
る。また、「スタッフの意識・質向上」につい
― 11 ―
福岡県立大学人間社会学部紀要 第19巻 第 2 号
ては、サービスの質に深く関わる課題であり、
不足・確保」が最も多く、中規模組織では、
「ス
有資格者の確保や職員教育の必要性がうかがえ
タッフの意識・質向上」が共通の課題となって
る。
いる。したがって、小規模組織では人材確保が
一方、サービス提供上の課題を規模及び制度
主要課題であるが、仮に人材確保が解決できた
外サービス実施の有無からみた場合、小規模組
としても、次のステップではサービスの質が課
織では制度外サービスの有無に関わらず「人材
題になると考えられる。
表2-1 サービス提供上の主な課題 N=491
カテゴリー名
回答数(割合)
人材不足・確保
158(32.2%)
スタッフの意識・質向上
150(30.5%)
制度上の問題
50(10.2%)
財政上の問題
問題なし
25(5.1%)
21(4.3%)
17(3.5%)
14(2.9%)
14(2.9%)
14(2.9%)
利用者の確保
5(1.0%)
利用者からの理解
研修・教育
待遇
職員間の連携
具体例
人材不足の慢性化、有資格者が入ってきてくれない、
スタッフの高齢化
介護技術の徹底、従業者の知識不足、スタッフの向上心
限度額が決められている、法令等により活動が制限さ
れる、法律の網が多すぎる
脆弱な財政状態、専門職を雇用する為の財政がない
利用者・利用者家族との信頼関係
研修会の実施・参加
十分な身分・待遇保障、処遇改善
情報の共有、横の連携
利用者を送ってもらえない(介護支援専門員がいない
ため)、利用者が予定通り利用しない
表2-2 組織規模と制度外サービス実施の有無からみたサービス提供上の主な課題
制度外サービス有(n=162)
小規模
(N = 231)
中規模
(N=137)
①人材不足・確保 [20]29.0%
②スタッフの意識・質向上 [36]22.2%
②スタッフの意識・質向上 [19]27.5%
③制度上の問題 [20]12.3%
③制度上の問題 [ 6]8.7%
制度外サービス有(n = 106)
制度外サービス無(n = 31)
①スタッフの意識・質向上 [41]38.7%
①スタッフの意識・質向上 [12]38.7%
②人材不足・確保 [32]30.2%
②人材不足・確保 [ 8]25.8%
③制度上の問題 [13]12.3%
③制度上の問題 [ 4]12.9%
制度外サービス有(n = 92)
大規模
(N=123)
制度外サービス無(n=69)
①人材不足・確保 [58]35.8%
制度外サービス無(n = 31)
①スタッフの意識・質向上 [33]35.9%
①人材不足・確保 [11]35.5%
②人材不足・確保 [29]31.5%
②スタッフの意識・質向上 [9]29.0%
③財政上の問題 [ 7]7.6%
③制度上の問題 [ 4]12.9%
※[ ]内の数字は回答数
― 12 ―
本郷・荒木・松岡・袖井:介護系NPOの現状と制度外サービス展開に向けた課題
4.活動を活発化させるための課題
かる。
表3-1と表3-2より、介護系 NPO の活動を活
このうち「人材不足・確保」
「スタッフの意
発化させるための課題は、
「人材不足・確保」
「ス
識・質向上」については、組織運営やサービス
タッフの意識・質向上」「研修や勉強会の実施・
提供上の課題としても上位にあげられていたこ
参加」
「宣伝・PR の方法」などがあることがわ
とから、介護系 NPO の特に大きな共通的課題
表3-1 活動を活性化させるための主な課題 N=463
カテゴリー名
回答数(割合)
人材不足・確保
84(18.1%)
スタッフの意識・質向上
59(12.7%)
研修や勉強会の実施・参加
32(7.9%)
28(6.0%)
24(5.2%)
24(5.2%)
宣伝・PR 方法
財政の安定・資金の確保
地域との連携
NPO 同志・会員同志のコ
ミュニケーション・連携
23(5.0%)
会員・ボランティア確保
21(4.5%)
17(3.7%)
法人のミッションの明確化
13(2.8%)
行政の理解・協力
具体例
スタッフの増加、若い人材の確保、中心となるスタッ
フが不足、
ヘルパーの質の向上、職員の質の向上、職員の意識改
革、
定期的な勉強会の継続、学習・研修の充実
広報の工夫、地域への宣伝
財源の確保、安定的な資金運営
地域の方々との協働、地域社会の理解と協力
NPO 同志の連携、他の NPO 法人とのネットワークの
形成
行政との協働、行政のバックアップ
ボランティアの確保と組織化、会員の増加
運営・ビジョンの不透明さ、ミッションの持続的更新
と維持
表3-2 組織規模と制度外サービス実施の有無からみた活動を活性化させる為の主な課題
制度外サービス有(n= 149)
小規模
(N=213)
制度外サービス無(n =64)
①人材不足・確保 [31]20.8%
①人材不足・確保 [11]17.2%
②スタッフの意識・質向上 [24]16.1%
②スタッフの意識・質向上 [10]15.6%
③宣伝・PR 方法 [12]8.1%
③ NPO 同志又は会員同志のコミュニケー
ション及び連携 [ 5]7.8%
制度外サービス有(n = 97)
中規模
(N=133)
①人材不足・確保 [ 7]19.4%
②スタッフの意識・質向上 [ 7]7.2%
②研修や勉強会の実施・参加 [ 5]13.9%
③行政の理解・協力 [ 7]7.2%
③スタッフの意識・質向上 [ 4]11.1%
制度外サービス有(n = 88)
大規模
(N=117)
制度外サービス無(n=36)
①人材不足・確保 [18]18.6%
制度外サービス無(n=29)
①研修や勉強会の実施・参加 [15]17.0%
①スタッフの意識・質向上 [ 8]27.6%
②人材不足・確保 [13]14.8%
②人材不足・確保 [ 5]17.2%
③ NPO 同志又は会員同志のコミュニケー
③財政の安定・資金の確保 [ 4]13.8%
ション及び連携 [12]13.6%
※[ ]内の数字は回答数
― 13 ―
福岡県立大学人間社会学部紀要 第19巻 第 2 号
5.利用者のニーズに応えるサービスが開発で
となっていることがわかる。また、
「研修や勉
強会の実施・参加」からは、こうした学習機会
きるための条件
の不足が組織活動のマンネリ化の一因となって
表4-1及び表4-2については、介護系 NPO の
いると推察される。さらに、
「宣伝・PR の方法」
抱える直接的な課題とはいえないが、これらは
からは、組織活動の活性化には、これまで以上
介護系 NPO の制度外サービス開発を活発化さ
に介護系 NPO の存在を地域社会に示していく
せる為にクリアすべき課題として捉えることが
必要性があり、その方法の確立と活性化が重要
できる。
な課題となる。
全体的な回答傾向としては、「経営・財政の
一方、サービス提供上の課題を、規模及び制
安定」「理念の確立」「制度の改善・充実」「人
度外サービス実施の有無からみた場合、中規模
材確保」が多く挙がっている。「経営・財政の
組織までは、
「人材不足・確保」が共通して最
安定」は最も多く、やはり組織運営がしっかり
も多く、
「スタッフの意識・質向上」も上位を
しっていることがサービス開発の大きな前提に
占めた。また、大規模で制度外サービス有では、
なることが推測される。特に「財政問題」や「人
唯一「スタッフの意識・質向上」が上位を占め
材確保」は他の結果でも頻繁に出現しており、
ず、組織の活性化とサービスの質の向上につ
大きな課題であることがわかる。また、着目
いてはあまり意識されていない。しかし、大規
すべき事柄として、「理念の確立」がある。理
模にもかかわらず「人材不足・確保」があがっ
念は各々の介護系 NPO が掲げるミッションと
ていることからは、組織の活性化にはやはりマ
密接に関連しているが、介護系 NPO の役員や
ンパワー拡大の必要性を感じていると考えられ
中心的人物だけではなく、担い手の一人ひとり
る。
が、組織理念を理解しておくことが必要である
表4-1 利用者のニーズに応えるサービスが開発できるための主な条件 N=650
カテゴリー名
回答数(割合)
経営・財政の安定
202(31.1%)
理念の確立
103(15.8%)
制度の改善・充実
84(12.9%)
人材確保
83(12.8%)
地域や利用者の状況把握
73(11.2%)
ネットークの構築
46(7.1%)
専門性の確立
33(5.1%)
教育・研修の実施
14(2.2%)
信頼関係の構築
9(1.4%)
具体例
確かな財政基盤がほしい、経営基盤がしっかり確立し
ていること
理念がゆるがない、理念・目標をしっかりもつこと
介護保険(法的)利用範囲の拡大、国・行政の社会保
障政策の改善
人材が豊富であること、人的資源の確保
地域の状況を把握できる、各々の利用者の状態を把握
する
地域の社会資源のネットワーク化、関係機関とのネッ
トワーク
職員全員の専門性を高める、スタッフの専門知識の向
上
サービス開発に対応できる人材の教育、最前線で働く
介護員の教育
利用者との信頼関係、利用者に対するスタッフの愛情
― 14 ―
本郷・荒木・松岡・袖井:介護系NPOの現状と制度外サービス展開に向けた課題
表4-2 組織規模と制度外サービス実施の有無からみた利用者のニーズに応えるサービスが開発でき
るための条件
制度外サービス有(n=209)
小規模
制度外サービス無(n=94)
①経営・財政の安定 [70](33.5%)
①経営・財政の安定 [23](24.5%)
②理念の確立 [29](13.9%)
②制度の改善・充実 [18](19.1%)
(N= 303) ③人材確保 [28](13.4%)
③人材確保 [14](14.9%)
③理念の確立 [14](14.9%)
制度外サービス有(n = 142)
中規模
(N =186)
制度外サービス無(n = 44)
①経営・財政の安定 [41](28.9%)
①経営・財政の安定 [17](38.6%)
②理念の確立 [29](20.4%)
②人材確保 [ 7](15.9%)
③制度の改善・充実 [18](12.7%)
②理念の確立 [ 7](15.9%)
②制度の改善・充実 [ 7](15.9%)
制度外サービス有(n = 124)
大規模
(N =161)
制度外サービス無(n = 37)
①経営・財政の安定 [39](31.5%)
①経営・財政の安定 [12](32.4%)
②理念の確立 [18](14.5%)
②理念の確立 [ 6](16.2%)
③人材確保 [13](10.5%)
③人材確保 [ 5](13.5%)
※[ ]内の数字は回答数
と考えられる。
サービスの展開に向けた共通的課題である「財
一方、サービス開発の条件を組織規模と制度
外サービス実施の有無からみた場合、小規模
政」と「人材確保」の問題を中心に若干整理し
ておきたい。
で制度外サービスを実施していない組織の約
20%が「制度の改善・充実」を挙げており、他
⑴ 財政を巡る課題
の組織に比べその割合が多くなっている。ま
まず財政をめぐる課題であるが、先に示した
た、大規模組織には他の組織規模にみられた
ように介護系 NPO の多くは介護保険事業を実
「制度の改善・充実」が挙げられていない。
施しつつ、何らかの制度外サービスも同時に提
供していた(約70%)。そして、介護保険事業
収入が介護系 NPO の主な財源となっているこ
Ⅳ まとめと今後の課題
とも明らかになった。しかし、低価なサービ
1.まとめ―制度外サービスの展開に向けた課
ス報酬や利用実績払い、他事業所との競争と
題―
いった介護保険制度上の仕組みにより、介護系
我が国の介護系 NPO は、介護保険制度が施
NPO の財政状況は非常に厳しくなり、このこ
行されてから大きく増加してきた。しかし、そ
とが制度外サービスの展開にも大きな影響を与
の多くは居宅サービスを中心に小規模な活動で
えていると推測される。加えて、制度外サービ
あり、財政上の課題や人材確保、スタッフや
スを実施している介護系 NPO の多くが「制度
サービスの質の向上等の課題を抱えていること
外サービスから得られる収入が期待できない」
が明らかになった。そこで、ここでは制度外
と感じていることからは、制度外サービスの採
― 15 ―
福岡県立大学人間社会学部紀要 第19巻 第 2 号
算性が乏しく、かつ不透明であるために、財政
りにくいといった状況も推察された。この要因
上の課題が大きくなっていることが推測でき
の一つとして、研修や教育といった仕事に対す
る。
る動機を高める機会が少なくマンネリ化を招い
総じて、介護系 NPO が財政的な余裕がない
てしまっていることや、将来的に待遇の向上・
中で、財政状況をさらに悪化させるリスクが高
改善等が期待できないという意識が職員の中に
い制度外サービスを新たに展開することは難し
存在していることが考えられる。
いといえる。加えて、現在実施している制度外
サービスについても、制度内サービス(介護保
⑶ その他の課題
険事業等)からの収入状況によっては、その継
介護系 NPO が積極的に制度外サービスを展
続性が危うくなる可能性も考えられる。しか
開していくためには、職員一人ひとりが NPO
し、介護系 NPO には、社会貢献活動としての
の特性、各組織の理念やミッションに対する理
独自の福祉活動が社会的にも求められている。
解を深め、それを組織全体で共有化していくこ
したがって、例えば社会福祉法人等と比較して
とも課題の 1 つである。つまり、サービス開発
も、遜色ない財政上の制度的支援が必要であろ
の条件の上位に「理念の確立」がみられたよう
う。
に、組織の理念は介護系 NPO にとって活動の
原点であり、活動を続けて行く上での柱となる
⑵ 人材確保を巡る課題
ものである。組織が掲げた理念を各職員に周知
続いて、人材確保をめぐる課題であるが、こ
する為にも、採用時や活動の初期段階だけでな
れには量と質の二つの側面での課題がみられ
く、体系的・継続的な職員教育の体制を整えて
た。まず量的な側面に関しては、離職率の高さ
いく必要がある。
や人員確保が十分にできない状況下での慢性的
多くの介護系 NPO は利益の有無に関係なく
な人材不足がうかがえた。次いで、質的な側
利用者のニーズがあれば新たなサービスを展開
面については、専門的な知識・技術を持った人
するという意欲を持っており、たとえ制度外
材や組織運営を中心的に担っていく若い人材を
サービスが利益に結びつかなくても事業として
確保していく必要性がみられた。こうした人材
成立できる体制整備や方法を確立することも課
に関わる課題からは、制度外サービスに従事す
題の 1 つである。しかし、現実には経済的問題
るマンパワーを十分に確保できないという理由
や人材確保の問題がるため、地域通貨の活用や
で、地域のニーズに柔軟に対応した制度外サー
ボランティア等といった地域そのものを巻き込
ビスを展開できないといった問題が予想され
んだ何らかの工夫が求められる。
る。また、組織運営を中心的に担う人材がいな
以上、介護系 NPO による制度外サービス展
いという点では、地域のニーズを把握した場合
開に向けた課題について述べた。今後さらに介
でも、制度外サービスとして事業化していくこ
護系 NPO の制度外サービスを促進していく為
とが困難な場合も考えられる。さらに、スタッ
には、先に述べた財政や人材を巡る課題解決を
フの意識面での課題もみられたことから、制度
含めて、介護系 NPO を取り巻く現行の制度的
外サービスの展開に向けた動機が組織内で高ま
環境を再検討する必要があると思われる。と同
― 16 ―
本郷・荒木・松岡・袖井:介護系NPOの現状と制度外サービス展開に向けた課題
時に、介護系 NPO 自身も経営の効率化や自主
とが必要である。
財源の確保、サービスの質の向上に向けた自助
努力を十分に行い、NPO 本来のミッションを
⑶ 制度外サービスの開発プロセスと開発し
果たせる自律した組織として成長していくこと
やすい組織・環境要件等の分析
13
が求められるだろう 。
本論文では、アンケート用紙を用いた郵送調
査の結果について、若干の考察を試みた。しか
2.今後の課題
し、制度外サービス提供までのプロセスまでは
本論文では、主に平成21年度の介護系 NPO
明らかにすることができなかった。したがっ
全国実態調査結果の概要(単純集計結果)を
て、できれば本年度中に、実際に制度外サービ
示し介護系 NPO の現状を概観すると共に、自
スを実施している各地域の介護系 NPOを直接
由回答の整理結果を用いて、介護系 NPO によ
訪問し、①制度では充足困難なニーズに気づく
る制度外サービス展開に向けた課題を把握しよ
まで、②ニーズに気づき、サービスを企画する
うとした。しかし、詳細な検討までには及ばな
まで、③企画から制度外サービス実施まで、と
かったため、今後の研究課題として主に次の3
いうように制度外サービスの開発プロセスを区
点を挙げておきたい。
切り、介護系 NPOにおけるサービス開発に必
要な知識・方法、開発しやすい環境条件等を明
⑴ 制度外サービス実施有無、社会福祉士の
らかにしたいと考えている14。
必要性等からみた調査結果の考察
制度外サービスの提供には、地域を基盤とす
るソーシャルワークとそれを担うべき社会福祉
注
1 安立清史、『福祉NPOの社会学』東京大学出版会、
2008年、p.11.
士の役割が大きいと考えている。したがって、
単純集計結果のみではなく、①制度外サービス
『非営利組織論』、有斐閣ア
2 田尾雅夫・吉田忠彦著、
ルマ、2009年、p.2.
実施の有無、②社会福祉士の配置有無という視
点を軸にして、分析する必要がある。また、本
3 特定非営利活動促進法第 2 条(平成20年 5 月、最終
改正)より
論では取り上げなかった調査項目(例えば、社
会福祉援助技術の必要性等)もあり、その分析
4 介護系NPOの活動事例としては、田中尚輝・浅川
澄一・安立清史(著)、
「介護系NPOの最前線 ―全国
を含めて詳細な検討が必要である。
トップ16の実像―」ミネルヴァ書房、2003年や渋川
⑵ 平成15年度実施の「介護系NPO全国実態
智明著、『福祉NPO ―地域を支える市民企業―』岩
波書店、2001年等がある。
調査」との比較検討
本郷らは平成15年度にも介護系 NPO に対す
5 本事例は、本郷秀和「第 6 章 福祉NPOが地域の
る全国実態調査を実施しているが、平成21年度
主体となって取り組む」妻鹿ふみこ編著、
『地域福祉
調査結果と同じ質問を複数設定した。そこで、
の今を学ぶ』ミネルヴァ書房、2010年、p135.に基づ
両調査結果の比較検討を試み、6 年間にわたる
く。
介護系 NPO の変化と課題等を明らかにするこ
6 渋川智明『福祉NPO―地域を支える市民企業―』
― 17 ―
福岡県立大学人間社会学部紀要 第19巻 第 2 号
岩波書店、2001年、p.191.
うな結果から、制度外サービスの開発とソーシャル
7 柏木宏『 NPOと政治 ―アドボカシーと社会変革
ワークの関係性が大きいことが推察される。
の新たな担い手のために―』明石書店、2008年、p56.
[参考文献]
ただしカッコ内は筆者による補足。
8 柏木宏『 NPOと政治 ―アドボカシーと社会変革
・田中弥生、
『 NPOが自立する日』日本評論社、2006年.
の新たな担い手のために―』明石書店、2008年、p.54.
・渋川智明『福祉NPO―地域を支える市民企業―』岩
波書店、2001年.
9 具体的には、市町村事業の委託を介護系NPOの中
・柏木宏『 NPOと政治 ―アドボカシーと社会変革の
心事業にすることなどが挙げられる。
10 田中弥生、『 NPOが自立する日』日本評論社、2006
年、p.73.
新たな担い手のために―』明石書店、2008年.
・田中尚輝・浅川澄一・安立清史(著)、「介護系NPO
11 なお本調査は、①平成21年度福岡県立大学研究奨
の最前線 ―全国トップ16の実像―」ミネルヴァ書
房、2003年.
励交付金、研究課題:
「介護系NPO法人における社会
福祉士の役割」
(個別研究)
、研究代表:本郷秀和(助
・安立清史、
『福祉NPOの社会学』東京大学出版会、
成金額85万円)、②平成21-23年度(予定)、文部科学
省科学研究費補助金【基盤研究C】、研究課題:
「介
2008年.
・田尾雅夫・吉田忠彦著、
『非営利組織論』
、有斐閣アル
護系NPOの可能性とソーシャルワークの役割―ニー
ズに応えるサービス開発手法の提案―」、研究代表:
本郷秀和(直接経費:330万円、平成21年度直接経費
150万円)により実施している。
12 なお、介護系NPOは非常勤・パート職員に対して
は、労働者の希望時間帯で従事してもらう形態を取
りやすく(59.8%、N=517)、法人側から労働時間を
決めること(6.4% )が少なくなっていた。
13 介護系NPOの財政状況に関して、渋川や伊佐も福
祉NPOの財源的自立の必要性を述べている。また、
安立は社会福祉法人等との税制上の不整合や不平等
の問題、税制支援体制の未成熟等の課題を指摘して
いる。
14 なお、本調査では制度外サービスの開発に必要と
思われる方法と知識についても質問を行った(自由
記述として、箇条書きで 2 つまで回答)。その結果、
方法については「ニーズの把握・分析」
(24.5% )
、
「連
携・ネットワーク」
(21.0% )、知識については「関
係制度・サービス」
(23.9% )、「ニーズ把握・分析」
(15.1% )などの回答が比較的多くみられた。このよ
― 18 ―
マ、2009年.
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