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低温貯蔵中におけるマアジ肉脂質の変化 - Kyushu University Library

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低温貯蔵中におけるマアジ肉脂質の変化 - Kyushu University Library
九大農学芸誌 (Sci・Bull. Fac. Agr., Kyushu U血iv.)
第27巻 第3・4号 165−173 (1973)
低温貯蔵中におけるマアジ肉脂質の変化
九州大学農学部水産製造学教室
(1973年3月12日受理)
Changes in the Lipids of Jack Mackerel Muscle
during Low Temperature Storage
CHiNG−SH uNG Wu and MAsAMicHi ToyoMizu
Laboratory of Fisheries Technology, Faculty of Agriculture,
Kyushu University, Fukuoka
緒
タラの0℃貯蔵では加水分解の誘導期が認められる
言
が,凍結すると誘導期は認められなくなると述べ,リ
ン脂質の加水分解によるFFAの生成が00Cよりも
冷蔵法および冷凍法は新鮮魚介類の保蔵法として広
一7。Cで大であると指摘している.一方,多野魚につ
く利用されている.しかし,低温貯蔵中に脂質が変化
し,その生産物が魚肉の品質に著しく影響を与えるこ
いては,Bosund and Ganrot(1969)は,ニシンの
とは当然考えられる.例えば,Lovernら(1959),
一15℃冷凍貯蔵中に分解される脂質の70%はリン脂
Bligh and Scott(1966)は,少綿甲であるタラの冷
質で,30%はtriglyceride(TG)であると指摘して
凍貯蔵中に脂質が加水分解して遊離脂肪酸(FFA)を
いる.さらに,高間ら(1967)はホンマグロ理解肉の
生成し,このFFAが蛋白変性に関与すると報告して
一20。C,100日貯蔵ではPCおよびTGはそれぞれ
いる.また,多脂魚においては,脂質変化が酸敗およ
43%,61%が分解されたと述べている.ところが,
び油焼の原因となって魚肉品質悪変の上で重要な役割
魚肉中の脂質は高度不飽和酸を含有しているので,前
を演じていることはよく知られている.したがって,
述のような加水分解のほかに,自動酸化も進行し,貯
魚肉の低温貯蔵中における脂質変化の研究は魚肉の品
蔵中の脂質変化は複雑と考えられる.それゆえ,著者
質保持を検討するために重要である.
らは,魚肉の低温貯蔵中の脂質変化に自動酸化も考え
氷蔵あるいは冷凍貯蔵中における脂質の変化に関し
に入れて,九州近海で周年漁獲されているマアジを用
ては少脂魚であるタラ類について比較的詳しく報告さ
いて,その主要構成脂質であるTG, FFA, PE, PC,
れている.Lovernら(1959)は,タラ肉を氷蔵する
sphillgomyelin(SPM)およびlysolecithin(LPC)
と,5週間でリン脂質の70%が分解され,それ以上の
の低温貯蔵中における挙動と温度との関係について研
分解は進行せず,このリン脂質の分解ではphospha−
究を行なった.
tidylcholine(PC)でもphosphatidylethanol−
実 験 方 法
amine(PE)でも差異がなく,脂質の分解による
FFAの生成の大部分はリン脂質によると述べてい
試料:活魚マアジTrachurus iaponicusを断頭,
る.Dyer and Fraser(1959)も,冷凍タラ肉中の
内臓除去した後,二枚に卸し,片身は直ちに普通肉と
リン脂質の加水分解はリン脂質の60∼80%が分解さ
血合肉とに分け,実験に供し,他方の骨付き身はポリ
れると停止し,この時期に一12℃で15週間,一
エチレン袋に入れ,所定温度で貯蔵した.魚類の全脂
18。Cで30週間で到達すると報告している. Bligh
質含量はもちろん各構成脂質含量も個体によって異な
and Scott(1966)は,タラ肉を一12℃貯蔵した場
るので,個体差を除くため貯蔵前後の脂質分析には,
合でも,分解されるのは主としてPEとPCである
かならず同一魚体の対称部位を用い,分析結果は原則
と述べている.また,Lovern and Olley(1962)は,
として2あるいは3尾の値を平均した.
165
166
呉清熊・豊水正道
量(・m・1・)を求めた・この値の÷にTGの平均分
50g of muscle
homogenized with 250ml of
CHC13’MeOH(2: 1 v/v) and filtered
子量887を乗じてTG量を算出した。
Filtrate Residue
リン脂質の定量はBartlett(1959)の方法によった。
homogenized .with 200ml of
CHCI3−MeOH (2 : 1 v/v) and filtered
TLCで分離したそれぞれのリン脂質をかきとり,硫
Filtrate Residue
酸と過酸化水素で加水分解した後,5%ammo:nium
homogenized with 150ml of
molybdateおよびFiske−SubbaRow試薬を加え,
CHC13−MeOH (2 : 1 v/v) and
filtered
Fi.ltrate Res’idue(discarded)
し,リン量(μ9)を求めた.この値に25.4,27.1,
23.7,および16.9を乗じて,それぞれPE, PC,
Combined filtrate
washed with O.58% NaCl soln. in the
washed wi
垂窒盾垂盾窒狽奄助R
proportion of CHCI3−MeOH−H,O (8: 4: 3)
Lowpr phase Upper”
100℃で発色させてから,820mμの吸光度を測定
垂?≠唐?idiscarded)
de’hydrated with
anhydrous Na2SO4
Extracted lipid
Fig.1. Folch’s Method for lipid extraction
from jack mackerel muscle.
SPMおよびLPC量を算出した.
FFAの定量は脂肪酸を凶漁とし,0.1%sodium
diethyldithiocarbamateで発色させるDuncombe
(1963)の方法によった.本法の測定範囲は0.05∼
0.5μmoleであるから, TLCで分離したFFAでは
測定不能なので,2∼10mgの抽出脂質を試料とし
た.本法では・リン脂質も発色するから,まず脂質を
脂質の抽出法::Folchら(1957)の方法に準じて
10mlのCHC13−MeOH(95:5v/v)に溶かし,活
CHC13−MeOH混液(2:1v/v)を用い, Fig.1のi操
性化した19のシリカゲルでリン脂質を除去した後,
作で脂質の抽出を行なった.また,クnnホルム溶液
脂質の分画および同定法:脂質成分の分離,同定に
定量した.えられた脂肪酸のμmole値にFFAの平
均分子量285を乗じてFFA量を算出した.
これらの値はすべて魚肉100g中のmg量で表わし
は薄層クロマト法(TLC)を用いた.約200 mg/m1
た.cholesterolの定量は行なわなかった.
のクロロホルム溶液とした脂質試料から5∼10μ1(脂
ガスクロマト法による脂肪酸組成の分析法=ガスク
の一定量をとって全脂質含量を求めた.
質量約1∼2mg)を薄層にスポヅトした.非極性脂
ロマト分析の前処理のたあのメチル化法はA.0.C.S.
質の分離には,Wakogel B−Oのα25㎜龍嫌
法(1969)によった.すなわち,TGおよび各リン脂
い,Skipskiら(1965)の方法により一次展開溶媒と
質はけん化後,BF3−MeOHでメチル化し, FFAは
’してisopropyl ether−AcOH(96:4v/v),二次展
直接BF3−MeOH:でメチル化して,ガスクロマト法で
開溶媒としてpetroleum ether−Et20−AcOH(90 ’:
分析した.使用したガスクロマトグラフは島津GC−
10:1v/V)を用いた.極性脂質の分離には, Wakogel
4APF (Hydrogen flame ionization detector),
B−10の0.25mm薄層を用い, Wagnerら(1961)の
columnは10%diethyleng glycol succinate poly−
方法により展開溶媒としてCHCI3−MeOH−H20(65:
ester(60∼80 mesh)2m,分析温度は150。∼200℃
25:4v/v)を用.いた.同定のために,市販TG,
(4℃/min),試料気化室温度は300。C, N2 gasの流
diglyceride (DG), monoglyceride (MG), chole−
速は50m1/min, H2 gasの流速は40 m1/minであ
stero1,および卵黄から分離精製したPC, PEを標品
った.半値一法で各脂肪酸のピーク面積を測定して,
として用いた.また,アミノ基をninhydrin試薬,コ
脂肪酸組成を求めた.えられた値は同一試料で3回行
リンをDragendorff試薬,糖をdiphenylamine試
薬,リンをzinzadze試薬で検出した.また,各脂
同定は,200。C恒温で行ない,:標品Rtの値とHof−
質の定量およびガスクロ分析のためのスポットの検出
stetterら(1965)のequivalent chain lengthと
なつた結果の平均値である.
には,それぞれ2%ヨウ素一EtOH溶液および0.2%
を併用して行なった.
2,,71−dichlorofluorescein−EtOH溶液を用いた.
脂質酸化の測定法:脂質の酸化指標としてC22、6酸
各脂質の定量法:TGの定量はVioque and Ho1−
の減少率を測定した,C22,6酸の減少率は庄野・豊水
man(1962)の方法によった. TLCで分離したTG
をシリカゲルと共にかきとり,アルカリ性hydroxyl−
(1971)が提唱したガスクロマト法で求め,C22:6酸減
弊(%)一(1−1ε;lilllε鷲)×1・・壊おした・
amine試薬を加え, ferric perchlorate試薬で発色
。C22,6,。C16,。:貯蔵前におけるC22、6, C、6、。酸のピ
させた後,530mμの吸光度を測定してエステル基の
ーー
N面積.
167
低温貯蔵中の脂質変化
諭面
N
£積
£︻
ピ
22
働諭
㎞ 騰 田㈱鵬
q脚 酸
の
Solvent
front
結果および考察
.
1.マアジ肉の脂質成分とその含量
TG
NL
FFA
マアジ肉の貯蔵中における脂質変化を調べるのに先
立ち,全脂質含量を異にする7試料のマアジ普通肉中
Cholesterol
し
の各脂質成分を分析した.その結果は,Fig.2に示し
てあるように,非極性脂質としてはTGのほかFFA,
e le
PE
e le
pc
cholesterolが検出されたが, DG, MGは検:出され
e
なかった.極性脂質としてはPE, PCのほかSPM,
3
った.しかし,本実験で用いたTLCではPEと
e e
phosphatidylserineとの分離はかならずしも良好で
なかったので,僅少量含有されているphosphatidyl−
serineはPEとして測定した.
マアジ普通肉中の全脂質含量は,個体差はもちろん
漁獲時;期によっても異なり,Table 1に示されてい
るように2.0%∼13.5%であった.筋肉1009中の
リン脂質含量は0.63∼0.80gで全脂質含量の相違に
よる差異は大でなく,その約87∼89%がPEとPC
であり,しかもPC含量はPEより全試料を通じて
高かった.これに対して,TG含量の差異は大であ
PL
s
Ori gin
Polar lipid (II)
Non−polar lipid (1)
Fig. 2. TLC of non−polar and polar lipid
extracted from jack mackerel muscle.
(1)
Adsorbent: WAKOGEL B一一〇
Developing solvent:
lst step: isopropyl ether−AcOH
(96:4 v/v)
2nd step: PE−Et20−AcOH
(90: 10: 1 v/v)
Indicator: 50% H2SO4
(1正)
間にはほぼ比例関係が認あられた.すなわち,マアジ
Adsorbent: WAKOGEL B−10
肉の全脂質含量の差異は,貯蔵脂質であるTG含量の
Developing solvent:
CHCI,一MeOH−H,O
は反映されなかった.著者ら,Bosund and Ganrot
LPC
し●
り,Fig.3に示すように全脂質含量とTG含量との
差異に基づくもので,組織脂質であるリン脂質含量に
SPM
8・
LPCが検出されたが,糖脂質の存在は認められなか
’(65: 25: 4 v/v)
Indicator: 50% H2SO4
(1969)およびBligh and Scott(1966)がそれぞれ
Table 1. Lipid contents of jack mackerel (mg/100g muscle).
16’0
160
160
970
∩︶0
5﹁Q
9
2224
9
Q9ピQ
∩◎PD
︵δQ!
7﹂Q!
−F◎
1) From Bosund and Ganrot(1969). 2) From Bligh and Scott(1966).
1
410 1
LPC
8
10
0
3
1
11
37
22
1
1ご1
Q
470
530
550
440
460
460
6∩◎!○100Q∩δ 7∠1
170
160
160
SPM
3∩δ6ド07乙2
−∩V
PC
ード○
ordinary
dark
PE
06116
0
0
4
40
37乙 4〆0 67‘
1占5 12
Cod2)
2000
10000
Qり−
ordinary
dark
3920
20400
⊥rQ
噌1
Herringi)
5. 1
24. 0
6170
16800
7乙n◎
−五∴
ordinary
dark
11700
11400
2060
2090
1830
1090
8
2
1
1
1
Carp
7. 4
20. 0
TG 1 FFA
6
り
4
4
0 2r7Q﹂7■
26
33
42
一Q
26
2
2
0
2
ordinary
dark
ドDドD2080
O r d n ar y
●l
Jack
mackerel
3
23322
11
Total lipid
T
(%)
Muscle
呉清熊・豊水正道
168
対:量も脂質含量の高い血合肉において明らかに大であ
15
︵Φ韻。。。コε
った.ところが,普通肉でも血合肉でもTG, PEお
よびPCの減少に対するFFAおけび:LPCの増加
は見合わなかった.7日間貯蔵後の薄層クロマトグラ
。。ミ。︶Φ℃=σ。な葎
0 5
ムには普通肉でも血合肉でもDG, MGのスポットは
全く検出されず,LPCの増加量は普通肉,血合肉を
通じて小であり,PCからLPCでとどまる分解はわ
ずかと結論される.これらを総合して考えると,5。C
における脂質変化には酵素作用による分解のほかに
FFAを生成しない脂質酸化が関与しているものと推
測される.このような酵素作用による加水分解と脂質
酸化に基づく脂質変化が血合肉で普通肉よりもはやく
。
進行することは,血合肉が酵素化学的には肝臓機能を
O 5 IO
代行することおよび脂質酸化を促進するmyoglobin,
15
Total lipid (g/loo g rnusote)
hemoglobin, cyt. cなどを普通肉よりも多量に含有
Fig. 3. The relationship between total
していることから当然の結果であるといえる.しかし
lipid and triglyceride content in jack
mackerel ordinary muscle.
ながら,低温貯蔵中における魚肉の脂質変化を問題に
するに当って,血合肉の含量はマアジ肉では普通肉の
測定したコイ,ニシンおよびタラ普通肉のPE, PC
括翫ることはないので以下の黙ま髄肉だけ
でも前述したマアジ肉と同じ傾向が認められたばかり
を対象として行なった.
でなく,これらの絶対量もマアジ肉での値とほぼ同じ
m:.5。c貯蔵中における脂質変化
であった.これらの点はLovern(1961)の指摘した
全脂質含量のほぼ等しい平均全脂質含量が2.4%で
こととほぼ一致している.しかし,、FFA含量は,そ
ある2試料のマアジ普通肉の5℃,10日間貯蔵中にお
の絶対値は大でなかったが,変動の巾は大であり,全
ける脂質変化の平均値をTable 3に示す.前述のよ
脂質含量との関連が認められなかpた.他方,血合肉
うにTG, PEおよびPCは明らかに減少し, DG,
では全脂質含量が普通肉よりも高く,TG含量も高い
MGの蓄積は認められなかった. TGの含量が最も大
ばかりでなく,PE, PC含章も高く,とくにFFA含
であったから,減少量は最大であり,PC, PEの減少
量が高かった.
量はこれについでいる.魚肉低温貯蔵中のlipaseお
皿.マアジ肉の貯蔵中における普通肉および血合肉
よびphospholipaseの活性は011eyら(1962)に
の脂質変化
よって明らかにされた.Lovernら(1959)は,タラ
全脂質含量を異にする3試料のマアジ肉を5℃,7
では氷蔵中の脂質変化は主にリン脂質の加水分解であ
日間貯蔵後,普通肉と血合肉とに分けて脂質変化を調
り,しかもPEおよびPCの加水分解が同じ速度で
べ,各脂質の残存率の平均値をTable 2に示してあ
あったことを指摘しているが,著者らの結果ではPE
る.TG, PEおよびPCは明らかに減少を示し,
の減少率がやや大であった.’また,TG, PE, PCの
FFAとLPCは増加した.これらの変化割合は,血
減少に対し,FFA, LPCの増加は著しく小さいた
合肉において普通肉よりも大であったので,変化の絶
め,TG, PE, PCの減少には加水分解よりも酸化が
Table 2.
The difference of changes in lipids between ordinary and dark
muscle of jack mackerel during storage at 50C for 7 days.
Dark muscle
Ordinary muscle
Lipid classes
2
3∩︶
89
86
95
162
09ド0939
PE
PC
SPM
LPC
96
160
11ーピリ
一十一 一十
TG
FFA
「ema ミ9「ate i(鎚ヲ職C羅錯i「ema’湯9「ate l(墨罵gC認邑路
83
149
75
83
122
170
一2120
十 76
一 114
一 151
十 23
十∵32
169
低温貯蔵中の脂質変化
大きく関与していたと推測される.このことを明らか
を構成している高度不飽和酸が酸化されてしまったた
にするために,貯蔵前後における各脂質の脂肪酸組成
めに貯蔵後にはTG, PE, PCとして抽出されなかっ
をGLCで測定し, Table 4に示してある. Table 3
たか,あるいはTLCでTG, PE, PCとして分離さ
からえられる貯蔵前後のTG, PE, PCおよびFFA
れなかったことによる減少であり,こ:れと同様なこと
量とTable 4で示した貯蔵前後の脂肪酸組成とから,
がC18、。酸でも指摘される.これらのことから,減少
TG, PE, PCにおけるC16:0, Cls:o, C20:5および
脂質の大部分は加水分解前に酸化されたと結論され
C22,6酸の減少量とFFAにおけるこれら脂肪酸の生
る.また,C22:6酸はTG, PE, PCにおける減少量
成量とを算出してTable 5に示してある. Table 5
の瑞しかFFAとして生成されなかったので,
に示されているように,TG, PE, PCにおけるC16、o
TG, PE, PC分子中での酸化以外に加水分解によっ
酸の減少量43.3mg/100g muscleに対し,:FFAと
て生成されたC22、6酸の大部分が酸化されたことを示
して生成されたC・6・・酸は縄・すなわち4・・9・mg/
している.
100gmuscleにすぎなかった.これはC16:0酸減少
TG, PEおよびPCの加水分解前の酸化,すなわ
の大部分が加水分解によるのではなく,TG, PE, PC
ち,これらを構成している不飽和酸の酸化による
Changes in lipids of jack mackerel ordinary muscle during
Table 3.
1
storage at 5eC for 10 days (lipid content 2.4%).
(mg/100g muscle)
TG
1⊥−←
10
o
o
2
160114
1
c) Fish stored for 10 days.
d) Combined 18:3 and 20: 1.
11
b) Fresh fish.
3 a) The number after the to denotes the position of the ultimate double bond relative
to the terminal methyl group.
10
3
6
r
5
71
8
6
93
11
42
79
31
89
.0
●
● ・0
・.
・
. ・0
●L
t 4
・ 2
3410
●f彫●●●・ .
3
6
1
1
2
37‘
●†u ・ ● . ・ ・
3
5
4
6Q2
r
7
8
6
45
462
50
り67‘
生
αt9生しαa63
LL
2L31208
2 11
1
4し 十乙 昏し
2 α
2
5
r
2
9r9
4
3
r
4 4
7‘
4r
1854
軌0。LLL28。α α
十乙 ▲し ▲し
4
2
r
5 2
r
1r5
1
44
16
0r
Qり86
αα aLL 6aα 3
1
2
2
8
420
40224
・ t ⋮ ● ●
3
4
22: 6
2
22: 5to 3
10
4
71619933
90
213
r2
46
FO
ααL&L−。α軌6ααα
22: 506
・五1 . ・ 。 ● ・
舞1:1
0 6
コ
2 4
コ
萎1:1
0629685
ム1:ld5
36888832
4r
04
35
3004
0
0060110
60
12
026
3 4
2
4
}1:言
37一﹄9923﹂沼﹄溢8コ986潟﹂
1gl?
o
FFA
PC
PE
4
0 17118011211601
2 2 1
IZI8
十31
十 13
TG
ob) 1 ioc)
07一﹄3﹄23。−溢2
lg 1・?
十 15
一 30
一 50
17. 5%
4
0 17217
0
2
11
71
0124
2 2
1
unknown
9
一130
Percentage composition of the fatty acids in lipids of jack
mackerel ordinary muscle before and after storage at 50C.
Table 4.
14: 0
15: O
(%)
Q!1
Decrease rate of C22:6
Decrease rate
(mg/100g muscle)
1460
24
160
460
35
12
FFA
PE
PC
SPM
LPC
Fatty acida)
Amount changed
Content
Lipid classes
170
呉清熊・豊水正道
Table 5. The relationship between the decrease of fatty acid in TG,
PE and PC and the increase iエ1 FFA of jack mLackereI
ordinary muscle during cold storage.
IO days at 50C (mg/100g muscle)
Fatty acid
Increase in
Decrease in
43. 3
18: 0
9. 2
20: 5
22: 6
21. 2
Table 6.
67. 8
The oxidation of lipids in model
system at 30eC for 7 days.
Lipid classes
1
0rOFO
−占 3
TG
Increase in
FFA
42. 1
42. 1
23. 7
17. 6
5L 7
13. 8
140. 3
52. 4
し,TG, PE, PCの減少に対するFFAの生成割合
が5。Cにおけるよりも大であったから,酸化の影響
Decrease rate’ Amount changed
(mg/g lipid)
(%)
FFA
PE
PC
Decrease in
TG, PE, PC
Q!6!○Ω∪
16: 0
4113
FFA
TG, PE, PC
35 days at 一5eC (mg/100g muscle)
は50Cよりも小さいと推測される.このことは5。C
におけるC22:6酸減少率が17.5%であったのに対し
一87
て一一5。Cは13%であったことからも肯定される.
0
Table 7からえられる一5。C,35日間貯蔵前後にお
一 4.0
けるTG, PE, PC,:FFA含量およびTbale 8に示
−10
One g of extracted lipid was added to
してあるこれらの脂肪酸組成から主要構成脂肪酸の減
4g of Celite (No. 535) which was used
少量とFFAにおけるこれら脂肪酸の生成量とを算出
as a support medium.
TG, PE, PCの酸化に対する安定性を検討するため
に,新鮮マアジ肉から調製した脂質1gを,王水で洗
した.Table 5に示してあるように, C、6、。酸のTG
ひ
PE, PCでの減少量はFFAでの生成量と一致:した
カ・・ C・8・・酸は減蝿の略だけしかFFAとして生
恥した4gのCeliteとよく混合し,30℃,7日間貯
成されなかったことから,Cls:o酸の含量が特異的に
蔵して実験に供した.その結果をTable 6に示して
高いPEの酸化による減少が示唆され,このことは前
ある.すなわち,加水分解をともなわない脂質酸化に
述のモデル実験の結果と一致する.また,C22、6酸は
よる減少率はPE, TG, PCの順に高く,自動酸化に
TG・ PE・ PCでの減蝿の約÷がFFAとして生成
対してはPEが最も不安定であった.
された.Lovern and Olley(1962)は,マタラの冷
IV.一5。C貯蔵中における脂質変化
凍貯蔵で,リン脂質の加水分解は一4℃に最大速度
全脂質含量がほぼ等しい平均全脂質含量が3.O%で
があると報告している.一50C貯蔵では,5。Cに比べ
ある2試料のマアジ普通肉の一5。C,35日間貯蔵にお
て,温度低下による酵素作用阻害のほかに,凍結によ
ける脂質変化の平均値をTable 7に示す. TG, PE,
る氷の生成にともなう細胞破壊による酵素作用促進の
PCの減少が明らかに認あられ,これらの減少傾向は
相異なる2つの作用が関与すると考えられるが,これ
5。Cの場合(Table 3)とほぼ同じで,減少量はTG
らよりも温度低下による酸化抑制効果が大きな役割を
・が最大で,次にPC, PEの順であった.これら脂質
果したものと考えられる.また,全脂質含量3.5%で
の半減期を算出するといずれの脂質でも5℃におけ
ある1試料のマアジ普通肉の一一・5。C,35日間貯〕蔵にお
るよりも長く,温度低下の効果が認められた.しか
ける脂質変化を示したTable 9の例では, TGの変
Table 7.
Changes in lipids of jack mackerel ordinary muscle during
storage at 一50C for 35 days (lipid content 3.0%).
Lipid classes
Decrease rate of C22;6
(mg/100g muscle)
Amount changed
(mg/100g muscle)
2090
22
一280
十168
440
65
21
一 40
一 90
十 13
十 23
160
13%
Decrease rate
(%)
13
5
20
2
TG
FFA
PE
pc
SPM
LPC
Content
171
低温貯蔵中の脂質変化
Percentage composition of the fatty.acids in lipids of jack
mackerel.ordinary muscle before and after storage at 一50C.
Table 8.・
TG
Fatty acida)
10. 1
1L 9
0. 9
L8
2. 3
33. 7
︶︶︶
b
Cd
The number after the w denotes the position of the ultimate’doUble bond’r’e’lative
to the terminal methyl group.
Fresh fish.
Fish stored for 35 days.
Combined 18: 3 and 20: 1.
Table 9.
コ 7. O
Ll
● ● ●f駒ψ ● .
3. 8
tr
4
266
12
1
tr
tr
4巳 昏し
tr
0
3r88・Or
40
84
49
731
029
Lα 生2Lし2ααα 3◎80029
2
11二
2
1. 0
1. 2
4L十し
24. 7
2 11
tr
tr
tr
35
o
9
rr9478
27
79
31
r8
47
33
2 24Lα6。aLO。α
2
2
r
1 0
r
2r
37
89
r850
8
r5
ロ ロ ロ コ
ロ コ
22: 5to6
22: 5to3
22: 6
ロ ロ コ コ コ ロ コ サ 舞婁:1
a)
コ
4し 十し
2
4 .115
4
2
萎1:8
2
FFA
35
o
・・
t ●・
t0
●.
・4
tt
●
t・ ●・。。
O
O
5.1
9
0
3 0
1
2
7
422
る1:ll’
397223140
043
78
24
^4
07
劣1:ぎ
35
ααααL2L2.スL軌
α ..40128
3
1 0
3
IZI8
‘ 1⊥1←
lglg
o
2
495240
97
r3
28
r5
48
81
ααα6LLLZO、2.αα
unknown
ー
8
6r
5●3
4
07
62
42
28
0076
・
・
●9
・⋮
,1
・03
3
0
t 71
11
170123
1
1 12
1
14: 0
15: O
PC
PE
35c)
6
5
r
8
45
18
05
8036
6
0
4
04
.0
●t ・●1
●ら7
.●1
・・0
.●1
3
0
75
101
221
1
2 12
1
Ob)
Chang’ ?刀@in lipids of jack mackerel ordinary muscle during
storage at 一50C for 35 days (lipid contept 3.5%).
Lipid classes
Content
2560
21
o
PE
170
400
68
15
PC
SPM
LPC
Decrease rate
(%)
o
n4
δ40
4
(mg/100g musdle)
TG
FFA
Table 10.
AmQunt changed一
(mg/100g muscle)
十’ 77
一 73
.一
P76
0一
十 14
Changes in lipids of jack.mackerel ordinary muscle duripg
storage at .250C for 65 days (lipid content 3. 4%).
Lipid classes
Content
Amount changed
(mg/100g muscle)
2490
27
o
TG
Decrease rate of C22:6
140
460
70
22
十53
−20
.70
−14
十16
(%)
o
■書⊥−
FFA
PE
PC
SPM
LPC
Decrease rate
4ドD
(mg/100g muscle)
i
2%
化は認められなかったが,PEおよびPCの減少は
一25。C,65日間貯蔵中における脂質変化の平均値を
顕著であった.
Table 10に示す. TGの減少は認められず, PE, PC
V・一25。C貯蔵中における脂質変化
平均全脂質含量3.4%の2試料のマアジ普通肉の
の減少にともなってFFAは増加した.すなわち,
一25。Cのような低温貯蔵でもphospholipaseの活性
噛呉清熊・豊水二道
172
が認められたのに対し七,C22、6酸減少率は僅かに2%
リン脂質の87∼89%を占めていた.
で,脂質酸化の影響はほとんど現われず,PE・pcの
2. ぐアジ肉の貯蔵中における脂質変化は,酵素的
減少量にLPCの増加量を考慮に入れると, PE, PC
加水分解と脂質酸化によるものであり,血合肉では普
の金翻とよって生成されたFFAのほぼ全量が蓄積さ
通肉よりもはやく進行した.
れたと結論される.
3.5℃,10日間貯蔵では,加水分解よりも酸化の
高間ら(1967)は一20℃貯蔵のホンマグロで,’
影響が顕著に現われ,トリグリセライド,ケファリン
Bognnd and Ganrot(1969)は一15℃貯蔵のニシ
およびレシチンの減少の大部分は加水分解前酸化に基
ンで,Ackmanら(1969)ほ一30。C貯蔵のcapel伽
づき,加水分解によって生成された高度不飽和脂肪酸
で,リ幽ン脂質の加水分解だけでなくTGの加水分解も
も酸化された.
進行ナるこ、とを指摘している..これらに対して,タラ
4.1−50C,35日間貯蔵では,脂質減少の主な原因
類ではリン脂質の加水分解だけが進行することが知ら
は酵素的加水分解であったが,ダイグリセライド,モ
れ,..論点ら(1970)は,キハダ,メカジキ,タラ,ス
ノグリセライドおよびリゾレシチンはほとんど生成さ
ズギおよびブリを一10。∼一20℃に約.5カ月間貯蔵し
れなかった.また,加水分解によって生成された高度
た結果から,生成されるFFAはいずれの魚種でもリ
不飽和酸の一部は酸化された.
ン脂質の加水分解のみによると主張している.これら
5.一25。C,65日間貯蔵でも, phospholipaseの
の記述から明らかなように,一30℃のような低温貯
活性ド認められ,ケファリンおよびレシチンは減少
蔵でも,魚肉中の「phospholipaseは活性を示すが,
し,「これらの減少にほぼ相当するリゾレシチンの増加‘
lipas『の活憐は魚種によって異なるようである・本
と遊離脂肪酸の生成が認められたが,1ipaseの作用は
実験の結果を総合すると,マアジ普通肉の低温貯蔵中
認められなかった.また酸化の影響はほとんど現われ
の脂質変化に関与する因子は,酵素的加水分解および
なかった.
脂質酸化すなわち加水分解前酸化と加水分解後酸化で
引 用 文 献
あり,これらの関与は貯蔵温度によって同一一ではなか
った.脂質酸化は温度低下によって明らかに抑制さ
れ2.最も酸化されやすい脂質はPEであった・また,
lipase活性はphospholipase活性よりも低く,しか
も貯蔵温度の低下によって抑制されやすかったが,
phospholiPaseは一25。Cでも活性を示した.一5℃
貯蔵では,5?Cの場合よりもTG, PE, PCの加水分
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’of. methyl esters of long−chain fatty acids.
解前の酸化は抑制されるが,生成された:FFAの酸化
In’“OMcial and tentative methods of J.
の進行が認められた.ところが,一25℃,65日間の
Am. Oil Chemists’ Soc.” Third edition
貯蔵では,1ipaseは活性を示さず,酸化も抑制され
た.すなわち貯蔵温度によって脂質変化のパタンが異
なった.
Bartlett, G. R. 1959 Phosphorus assay in column
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マアジ普通肉の低温貯蔵中における脂質の変化を薄
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層クロマト法とガスクロマト法とを併用して調べ,ト
(1) : 13−18
リグリセライドおよびリン脂質の減少ならびに遊離脂
肪酸の増加およびこれら脂質の貯蔵前後における脂肪
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酸組成の差異から低温貯蔵中における脂質変化に関与
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する因子を解明し,さらに貯蔵温度の差異にる脂質変
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化パタン・の相違を明らかにした、
Res, Bd. Canada., 16(1): 43r52
コ.ヤアジ普通肉中のトリグリセライド含量は全脂
Folch, J., M. Lees and G. H. Sloanestanley
1957 A simple method for the isolation and
質含量に比例して増加したが,’.リン脂質含量はほぼ一
purification of total lipides from animal
定で0.63∼0.80%であり.,レシチン.とケファリンが
’tissues. 」. Biol. Chem., 226(1): 497−509
低温貯蔵中の脂質変化
173
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and phospholipase activity in fish skeletal
175−184
DUnnschichtchrornatographie von phospha−
Smmary
The changes in the lipids of jack mackerel, Trachurus J’aponicus, muscle during low
temperature storage were studied by using thin−layer chrom]tography for the separation
and identification of lipids and using gas−liquid chromatography for the analysis of fatty
acid composition of each lipid.
First of all, the relation between total lipid and triglyceride (TG) contents in ordi−
nary muscle of jack mackerel was elucidated. Thus, the total lipid contents varied
from 2.0 % to 13.5 %. This variation was due mainly to the TG contents, while the
phospholipid contents were relatively constant.
The storage at 5eC for 10 days and at 一5℃ for 35 days led to the decreases in TG,
phosphatidylethanolamine (PE) and phosphatidylcholine (PC) and to the smaller increases
’in free fatty acids (FFA). However, no accumulation of diglyceride or monoglyceride was
detected and the small increase of lysolecithin was observed. Comparing the Ci6:0, Cis:o,
C20:s, and C22:6 amounts decreased in TG, PE and PC with these amounts increased in
FFA, it was concluded that during storage at 50C the most of the decreases in TG, PE
and PC were caused by oxidation before their hydrolysis, whereas during storage at−50C
these decreases were due to their hydrolysis and oxidation of PE, and some of free
highly unsaturated fatty acids which were liberated by their hydrolysis were oxidized. ln
model system, PE was more susceptible to oxidation than TG and PC, this indicated
that PE was more unstable during low temperature storage of jack mackerel muscle.
During storage at 一250C for 65 days, neither their appreciable oxidation nor hydrolysis
of TG cccurred, so the increase in FFA corresponded to the decreases in PE and PC
and the small increase in lysolecithin.
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