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自己点検・評価報告書

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自己点検・評価報告書
自己点検・評価報告書
−大学基準協会大学評価申請調書−
藤女子大学
目
序
章
本
章
第1章
次
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
理念・目的
1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3
現状の説明
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3
点検・評価
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
9
将来の改善・改革に向けた方策
・・・・・・・・・・・・・・・・・
9
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
11
現状の説明
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
11
点検・評価
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
16
第2章
教育研究組織
将来の改善・改革に向けた方策
・・・・・・・・・・・・・・・
17
・・・・・・・・・・・・・・
18
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
18
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
18
現状の説明
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
18
点検・評価
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
41
第3章
第1節
第1項
教育内容・方法
学士課程の教育内容・方法
文学部
到達目標
将来の改善・改革に向けた方策
・・・・・・・・・・・・・・・
51
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
56
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
56
現状の説明
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
56
点検・評価
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
77
第2項
人間生活学部
到達目標
将来の改善・改革に向けた方策
・・・・・・・・・・・・・・・
83
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
86
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
86
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
86
現状の説明
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
86
点検・評価
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
89
第3項
1)
その他の教育課程
図書館情報学課程
到達目標
将来の改善・改革に向けた方策
・・・・・・・・・・・・・・・
90
2)
日本語教員養成課程
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
91
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
91
現状の説明
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
91
点検・評価
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
92
到達目標
将来の改善・改革に向けた方策
・・・・・・・・・・・・・・・
92
・・・・・・・・・・・・・・・
93
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
93
現状の説明
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
93
点検・評価
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 100
第2節
修士課程の教育内容・方法
到達目標
将来の改善・改革に向けた方策
第4章
第1節
・・・・・・・・・・・・・・・ 104
学生の受け入れ
学部における学生の受け入れ
到達目標
・・・・・・・・・・・・・・ 105
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 105
現状の説明
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 105
点検・評価
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 116
将来の改善・改革に向けた方策
第2節
・・・・・・・・・・・・・・・ 118
大学院人間生活学研究科における学生の受け入れ
到達目標
・・・・・・ 120
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 120
現状の説明
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 120
点検・評価
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 123
将来の改善・改革に向けた方策
第5章
学生生活
到達目標
・・・・・・・・・・・・・・・ 123
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 125
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 125
現状の説明
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 125
点検・評価
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 141
将来の改善・改革に向けた方策
第6章
研究環境
到達目標
・・・・・・・・・・・・・・・ 148
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 151
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 151
現状の説明
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 151
点検・評価
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 154
将来の改善・改革に向けた方策
・・・・・・・・・・・・・・・ 155
第7章
社会貢献
到達目標
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 156
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 156
現状の説明
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 156
点検・評価
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 164
将来の改善・改革に向けた方策
第8章
第1節
・・・・・・・・・・・・・・・ 165
教員組織
学部の教員組織
到達目標
第1項
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 167
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 167
文学部
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
167
現状の説明
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 167
点検・評価
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 171
将来の改善・改革に向けた方策
第2項
人間生活学部
・・・・・・・・・・・・・・・ 174
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
175
現状の説明
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 175
点検・評価
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 179
将来の改善・改革に向けた方策
第2節
大学院人間生活学研究科の教員組織
到達目標
・・・・・・・・・・・・・・・ 181
・・・・・・・・・・・ 182
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 182
現状の説明
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 182
点検・評価
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 184
将来の改善・改革に向けた方策
第9章
事務組織
到達目標
・・・・・・・・・・・・・・・ 185
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 186
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 186
現状の説明
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 186
点検・評価
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 189
将来の改善・改革に向けた方策
第10章
施設・設備
到達目標
・・・・・・・・・・・・・・・ 190
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 191
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 191
現状の説明
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 191
点検・評価
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 197
将来の改善・改革に向けた方策
・・・・・・・・・・・・・・・ 198
第11章
図書・電子媒体等
到達目標
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 200
現状の説明
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 200
点検・評価
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 205
将来の改善・改革に向けた方策
第12章
管理運営
到達目標
・・・・・・・・・・・・・・・ 207
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 209
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 209
現状の説明
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 209
点検・評価
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 216
将来の改善・改革に向けた方策
第13章
財務
到達目標
・・・・・・・・・・・・・・・ 217
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 218
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 218
現状の説明
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 218
点検・評価
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 222
将来の改善・改革に向けた方策
第14章
点検・評価
到達目標
・・・・・・・・・・・・・・・ 223
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 224
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 224
現状の説明
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 224
点検・評価
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 230
将来の改善・改革に向けた方策
第15章
情報公開・説明責任
到達目標
・・・・・・・・・・・・・・・ 231
・・・・・・・・・・・・・・・・ 232
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 232
現状の説明
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 232
点検・評価
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 233
将来の改善・改革に向けた方策
終
・・・・・・・・・・・・・・・・ 200
章
・・・・・・・・・・・・・・・ 234
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 235
序
章
序
章
本書は、2008 年度に実施した本学の自己点検・評価の報告書である。この報告書は 1998 年
度に
『藤女子大学・藤女子短期大学 現状と課題』
として初めて作成したものから数えて第 5 号
にあたる。 2009 年度には、この報告書を基に認証評価機関である財団法人大学基準協会の「大
学評価」を申請し、評価を受けることにしている。
本学は、2003 年度にまとめた自己点検・評価報告書(『藤女子大学 現状と課題』第 3 号)
を基にして、2004 年度に大学基準協会の加盟判定審査申請を行い、また、同協会が認証評価機
関として認証されると「認証評価」の申請も併せて行った。評価の結果は、大学基準に適合し
ていると認定(期間:2005 年 4 月 1 日から 2010 年 3 月 31 日まで)され、2005 年 4 月1日付で
大学基準協会正会員校としての加盟が認められた。それ以来、すでに 5 年が経過したが、この
間においても学内の自己点検・評価委員会を中心に間断なく点検評価活動を進め、
『自己点検・
評価報告書 2004』、『現状と課題』第 4 号、『自己点検・評価報告書 2006』を作成・公表
して、教育研究及び大学運営の改善に努めてきた。
本学では、
大学学則第 2 条及び大学院学則第 3 条において、
教育研究水準の向上を図るため、
教育研究活動の状況について自己点検及び評価を実施し、これを公表することと、自己点検及
び評価の実施体制並びに方法について定めている。本学の自己点検及び評価の実施は、全学に
置かれた「藤女子大学自己点検・評価委員会」が担当する。同委員会は、学長を委員長として、
副学長、学部長、大学院研究科長、教務部長、学生部長、図書館長及び事務局長の 10 名で構成
されている。各学部及び大学院研究科には、それぞれ部局長を委員長とする学部等に自己点検・
評価委員会を置き、全学委員会と連携を保ちながら、当該部局における自己点検及び評価を行
うシステムをとっている。
今回の自己点検・評価報告書についても、全学の自己点検・評価委員会を中心とし、ほとん
ど全ての教職員がこの活動に関わっているといって過言でない。
自己点検及び評価の実施は、「大学評価」を受けるための報告書作成という意味に加え、点
検を通して、全ての教職員が大学組織の一員として本学の長所、短所を認識し、到達目標に向
けて改善を目指すということこそ最も意味があることと考えている。ともすれば所属する部局
の現状対応に終始してしまいがちな日常的業務が、他の部局とどのような関係にあるのかが点
検作業で浮き彫りになるなど、大学全体を捉えることができることの効果は、非常に大きいも
のがある。その意味でも、今後も点検・評価活動をさらに充実させたいと考えている。
本報告書には、本学が取り組んだ自己点検・評価の全容を記述したつもりであり、もちろん
長所だけでなく短所を含む不十分な面も多々記述されている。また、その評価の水準は必ずし
も高いとはいえないかもしれない。本学の到達目標は何か、何をどのような視点で評価してい
くか、そのための指標をどうするか等について学内での議論はまだ不十分であり、改善の方向
性についても具体的な方策が見つかっていないものも多い。しかし、現状における本学の教育
研究の状況を社会に明らかにし、自ら教育研究の質を保証することが、大学に課せられた責務
であり、本学はその全てを学生、保護者を含む多くの関係者に知っていただきたいと考える。
そして、多くの方からの忌憚のないご指摘やご意見をいただければ幸いである。
前述したとおり、多くの教職員が今回の報告書の作成に関わってきた。その労苦を無駄にす
1
ることなく、今後も教職員全てが本学の現状を共有・理解し、持続的な改善・改革を目指す努
力を続けていくつもりである。
2
本
章
第1章 理念・目的
第1章 理念・目的
【現状の説明】
1.理念・目的等
⑴ 大学・学部・大学院研究科等の理念・目的・教育目標とそれに伴う人材養成等の目的の適切性
本学は、北海道地域唯一の四年制女子大学として、次の理念・目的・教育方針を掲げ、人材
育成を行っている。
◇建学の理念
藤学園は、カトリック札幌教区初代教区長ヴェンセスラウス・キノルド司教が、「北海道の
未来は女子教育にある」との確信から母国ドイツに女子教育の真の担い手になる人材の派遣を
要請し、この要望に応えて、殉教者聖ゲオルギオのフランシスコ修道会から 3 人の修道女が来
道したことに由来する。
藤女子大学は、この意思を継ぎ、キリスト教的世界観や人間観を土台として、女性の全人的
高等教育を通して、広く人類社会に対する愛と奉仕に生きる高い知性と豊かな人間性を備えた
女性の育成を使命とする。
◇教育目的
本学は、建学の理念の達成のため、時代の変化を見つめつつ、普遍的な本質を追究するため
に、教職員と学生の人格的触れ合いの中で、以下の目的を達成する。
1.高度な学問研究を通して、自己の本質、自己と環境との関係について認識し、個性を尊重し
つつ、普遍的な真理を求める中で、豊かな教養を身につける。
2.人類の幸福の追求の中で生じる人間関係、地球環境等に関する矛盾を解決するために、寛容
の精神を持って、自由な立場から真実を主体的に追究できる人格の形成に努める。
3.自己と他者の人間性をかけがえのないものと認め、近隣、地域社会、国などの立場を尊重し
つつ、地域社会の諸問題に取り組むと共に、国際意識を育て、世界の平和を願い、人類社会の
一員としての責任を果たす人材を育成する。
◇教育方針
上記の建学の理念・教育目的をより簡潔な表現にして、以下のような教育方針として学生に
周知するようにしている。
カトリックの精神にもとづき、研究と教育を通じて真・善・美を追求すると共に、
さらに次の事柄を主眼として真の人間形成を目指している。
聖なるものに対する畏敬の念
自由にして責任ある人格
愛と寛容の精神
奉仕による社会への貢献
国際理解と平和への貢献
3
第1章 理念・目的
本学は上記の理念等のもとこれまで多くの人材を輩出してきたが、その建学の歴史の中で理
念等を達成するために何度か改革・改組を行ってきており、その沿革を示せば、概ね次のよう
になる。
本学は終戦後まもなく 1947 年に、
戦後の人材不足を補うためにも女子の高等教育が必要であ
るとして、三年制の藤女子専門学校が設立されたことに由来する。同専門学校は 1950 年に藤女
子短期大学に改組された。さらに、北海道内にも女子の四年制大学を希望する声が高まってき
たことを受け、
1961 年に文学部のみの単科大学として英文学科、
国文学科の 2 学科で開学した。
しかし、社会の変化と共に家庭、地域、地球環境のいずれもがさまざまな問題を抱えるように
なり、このような変化に対応できる女性を育成すべく、1992 年には短期大学家政科の一部を改
組して、人間生活学部(人間生活学科、食物栄養学科)を設置した。以後、北海道内の高校に
新たな視点を持つ多数の家庭科教員を送り出し、男女共修必修となった家庭科教育の必要に応
えてきた。また、北海道内初の管理栄養士養成施設として、多くの管理栄養士を病院その他に
送り出し、地域の健康管理に貢献してきた。
2000年には、18歳人口減に伴って志願者が減少しつつあった短期大学を廃止して、四年制大
学を拡充するに至った。国際化が進む状況の中で幅広い教養と関心を持った女性を育てる必要
に応えて、文学部に文化総合学科を開設し、さらに、幼児をめぐる環境の激変に応える能力の
ある幼稚園教諭と保育士の育成という社会的要求に応えて、人間生活学部に保育学科を開設し
た。短期大学は翌年春の卒業生をもって廃止とした。それによって、4年間をかけて教育活動を
充実させ、教育目的をより良く実現することが可能になった。
本学の人格教育に基づく人材養成は社会的に高く評価されており、それはバブル崩壊後の就
職の超氷河期といわれたときにおいても、高い就職率を保ち続けたことにも明らかである。
2002 年度には大学院を設け、人間生活学研究科(人間生活学専攻、食物栄養学専攻)を開設
した。高度の専門的知識や技能を持つ職業人の養成を目指し、社会人を積極的に受け入れた養
成を目指している。なお、2005 年度からは、社会の要請に応えて大学院には男性も受け入れる
ようになった。
2003 年度からは人間生活学部に「福祉研究所」を設け、大学と福祉施設との共同研究なども
行い、
福祉に関する研究や普及活動を通して地域により大きな貢献をしうる体制を整えてきた。
「福祉研究所」は 2006 年に名称を「QOL 研究所」と改め、Quality of Life(生活の質)を追求する
ことを理念として、より広い領域をカバーする研究所として新たな位置づけがなされた。
また、2001 年度に開設した図書館情報学課程は、新しい時代の幅広い要請に応える司書の養
成を行い、北海道各地の各種図書館に人材を送っているが、2007 年度からは司書教諭の資格取
得の道も開いた。2003 年度からは文学部に日本語教員養成課程を設け、国内外において外国人
に日本語を教授する人材の養成を開始した。これは、本学の国際的意識を持った学生の増加と
共に、国際理解や平和のために貢献する人材養成の目的に沿った取り組みである。2006 年度か
ら、海外協定校の一つである台湾の輔仁大学の日本語学科において日本語教育の実習を行うま
でに発展し、学生の意識を高めている。
国際的な意識を育てるために、2002 年度から「国際交流センター」を設けた。世界的な広が
りを持つカトリック大学の一員としての本学の特徴を生かすために、交換協定校の拡大と学生
や教員の交流など、国際性を育てるためのプログラムが実行されてきており、国際交流に関す
る大学全体の意識が変化してきている。海外協定校において日本語を学習している学生のため
4
第1章 理念・目的
の日本語短期講習プログラム、日本語集中コース、協定校への短期研修旅行、協定校からの短
期研修訪問など、着実に国際交流センターの役割が大きくなってきた。
本学は、キリスト教的な人間観を土台とした教育を目指し、「キリスト教学」と「聖書学(概
論)」を必修としている。しかしそれでは十分ではないという反省のもとに、2002 年度から入
学式の際に心の糧となる講演会を企画・実施して、本学理念の学生への浸透に努めている。
また、1998 年度に設置された「キリスト教文化研究所」は、北海道に唯一のこの分野の研究
所として特徴ある研究等を充実し、その研究成果を社会に向けて力強く発信している。毎年開
催される公開講演会や研究会などでもカトリック大学としての使命を果たしている。さらに、
希望する学生にカトリシズムの教えとキリスト教的なさまざまな活動への機会を与えるために、
2004 年度から「カトリックセンター」を設けた。カトリックセンターは、全学的な宗教行事も
担当している。2007 年度からは、学長自ら毎週回昼休みに、短い「祈りの集い」を両キャンパ
スで行っている。参加は自由であり参加者は少数であるが、学生や教職員に本学理念の浸透を
図る機会としている。
◇学部・大学院研究科の理念・目的・教育目標
a.文学部
文学部の教育の目指すものは、本学の理念・目的を次のように具現化することである。
1. 学問、
研究を通して深い知的経験と豊かな創造性を持ち、
生涯を通して知的好奇心に溢れ、
学習意欲のある女性の育成を目指す。
2. 広い視野と知性を持ち、すぐれた判断力や応用力をそなえ、変化する社会に対応し貢献で
きる人材の養成を目指す。
3. 学問と研究を通して人間理解を深めることで、人類共同体の一員として多様な価値観を認
め、国際社会において活躍できる人材を育てる。
この理念を具現化するために、2000 年度から既存の英文学科と国文学科を「英語文化学科」
「日本語・日本文学科」にそれぞれ名称変更を行い、さらに「文化総合学科」を新設し、3 学
科体制とした。2007 年度には、文学部の、また 3 学科それぞれの教育目的を掲げ、学則第 4 条
の 2 の第 1 項に、
「文学部は、広く、深い知識と鋭敏な感性とを自らのものとし、地域社会のみならずより広
範な社会環境において働く女性の育成と教育を目的とする。そのため 3 学科の横断的な履修
が可能なオープン・カリキュラム制度を採用し、学生の自主的な学習を促している。この制
度の十分な活用を通じて、自己管理能力を高め、かつ女性としての主体性を獲得できる教育
環境の構築を目指している。
⑴ 英語文化学科は、第二言語としての英語のより高度の習得を基本としつつ、その言語学
的な理解を深めるとともに、地域言語及び国際言語としての英語が担ってきた文化活動の
諸相について、その広がりと奥行きを学ぶことを目的とし、英語文化についての深い洞察
と国際社会への広い関心を有する女性の養成を目的とする。
⑵ 日本語・日本文学科は、古典から近現代文学、漢文、日本語学を入門から専門性への段
階を組んだカリキュラムに従い、最終的に卒業論文を書くことを課している。そこに至る
までに思考力を高め、柔軟にして鋭いものの見方ができる女性を育成する。その結果自立
5
第1章 理念・目的
した有能な人間として社会に貢献できる人材を送り出すことが目的である。
⑶ 文化総合学科は、国際化と価値の多様化が進む現代社会において、文化・制度・歴史・
思想などの人文・社会科学を専門的に学び、その有機的な関連を理解し、人間と社会を総
合的に把握することを通じて、幅広い視野と柔軟な発想を持ち、国際性と創造性に富んだ
女性の育成を目的とする。」
と定めている。
英語文化学科は、国際言語であり地域言語でもある英語を多面的に学び、これを運用する技
能や構造に関する理解を総合的に習得することを目指している。さらに英語が生み出してきた
文化、歴史、社会などへの関心や知識を広げることによって、さまざまな偏見に対する批判力
と国際社会に対する視野を培い、他文化と自文化の境界を横断する道筋を切り拓くことのでき
る女性の養成を目指している。それによって、他言語との関係において自らの言語文化への認
識を深め、言語文化一般に対する探究心を育み、広く人文社会の領域に対する好奇心を活発に
展開することのできる女性の養成を目指している。
日本語・日本文学科は、過去・現在にわたり、「日本語」を話し、「日本文化」を享受しな
がらそれを再生産する「日本人」であることの意味を、「異文化」理解の重要性と共に自覚的
に問い直し、21 世紀における自己形成をすることに必要な、自己、日本人/日本、人間/世界
といった異なる次元の事象に対する思考力、理解力、判断力、表現力を養成することを目指し
ている。文学部の理念を、日本語、日本文学、さらに日本文化という側面から具現化すること
を目指す。
文化総合学科は、国際化と価値の多様化が進む現代社会において、人間と社会をトータルに
学ぶことを通じて、柔軟な発想と総合性・創造性を持った「ゼネラリスト」の育成を目指して
いる。これは本学の理念である「全人的教育」、ならびに学部の理念である「広い視野と知性
を持ち」、「変化する社会に対応し貢献できる」人材養成を具現化するものである。
文学部としては、3 学科の間の垣根を低くし、各学科が開設する科目を文学部の全ての学生
に開放することによって、また、それぞれの科目の関連を見出そうとする学生の知的な関心を
積極的に支援することによって、学生自身が、その目指すところに従ってマイ・カリキュラム
を編成し、各自の専門領域に軸足を据えながら、自分にとって最も切実なテーマを自由に追究
することができるように配慮している。
b.人間生活学部
人間生活学部の教育の目指すものは、
本学の理念・目的を次のように具現化することである。
1. 生命及び人間の尊厳と個人の多様な生き方を尊重し、生活の様々な領域で人間が直面する
諸問題を教育研究することによって、このような諸問題に対する解決能力を持つ女性を育て
る。
2. 他者と共存しつつ自立した生活を送り、人間と社会及び自然の相互関係に対する洞察に基
づいて、多様化・複雑化していく生活の諸問題に責任を持って対処することができる人間を
育てる。
3. 国家間関係を越えた地球的視野から、多様な文化や社会の共生を志向しつつ、国際化した
生活上の諸問題に実践的に対処することのできる人間を育てる。
6
第1章 理念・目的
2007 年度には、人間生活学部の、また 3 学科それぞれの教育目的を掲げ、学則第 4 条の 2 の
第 2 項に、
「人間生活学部は、生命及び人間の尊厳と個人の多様な生き方を尊重し、他者と共存しつつ
自立した生活を送り、人間と社会及び自然の相互関係に対する洞察に基づいて、多様化・複
雑化してゆく生活の諸課題に責任を持って対処し、国際関係を超えた地球的視野から生活の
諸問題を実践的に対処することのできる女性を育てる。
⑴ 人間生活学科は、人間・生活・環境・福祉という分野における基礎的な知識と実践力を
教授し、人間の生活を生涯にわたって支援する能力を備えた女性の育成を目的とする。そ
れを通して、広く「共生社会」の実現に貢献し、社会の幅広い分野において生活の質の向
上に資することが可能な人材の育成を目指す。
⑵ 食物栄養学科は、食と人体との関連性や食の心理的・社会的側面を教授し、人間の健康
生活を生涯にわたって支援する能力を備えた女性の育成を目的とする。また多様化する食
生活を取り巻く社会状況を踏まえて、食物・栄養に関するより高度な専門知識・行動変容
を促す技能、問題対応力を備え、食を通じて人の健康を保障し、地域・国際社会に貢献で
きる管理栄養士の養成を目指す。
⑶ 保育学科は、人間の本質と社会のあり様を探求し、その諸問題を主体的に追求する豊か
な教養を有する女性の育成を目的とする。また多様化する子どもを取り巻く様々な社会状
況を踏まえて、より高度の専門知識・技術、問題対応力を備え、子どもの人権を尊重し個々
の子どもの発達を保障し、地域社会に貢献できる保育者の養成を目指す。」
と定めている。
人間生活学科は、人間・生活・環境・福祉という分野における多様な教養・知識・技能を統
合して生活に応用すること、現代社会が要請する環境と調和した生き方、広く「共生社会」の
実現に貢献する。この統合の結果である人間への深い理解を基に、家庭科教育や福祉の様々な
領域で活躍するのみならず、社会の幅広い分野においても活躍し、人々の生活の質の向上に役
立つ人材を育成することを使命とする。北海道各地に送り出した家庭科教員の質の向上のため
に、毎年、研修会を行っていることは特筆に値する。近年は、卒業生のみならず、それ以外の
家庭科教員の参加も見られる。
食物栄養学科は、人々の健康の保持・増進、疾病予防、疾病からの回復、さらに疾病を持っ
た人々のケアに食の面から貢献できる人材を養成することを目的としている。したがって、本
学科は管理栄養士養成課程として定められた以上の科目を教育し、社会の各分野で管理栄養士
として活躍する人材を養成することを第一の使命とする。そのために食物と人体のみならず、
人との関わり方や食の心理的・社会的側面についても教育し、管理栄養士として必要な資質の
向上を図り、さらに卒業後の学問の進歩にも対応できる能力を養成する。また、近年の食育教
育の推進に鑑み、栄養教諭の養成も行っている。次世代の健全な育成のために貢献できる人材
を養成したい。
保育学科は、近年の子どもをとりまく家庭及び社会の様々な問題状況を踏まえて、高度な専
門的知識・技術をもって、子どもの人権を尊重し子どもの発達を大切にし、子どもの成長にと
ってふさわしい親子関係や地域社会の形成に貢献できる保育者の養成を目指す。
人間生活学部開設以来、北海道内の高校に新たな視点を持つ多数の家庭科教員を送り出し、
7
第1章 理念・目的
男女共修必修となった家庭科教育の必要に応えてきた。また、北海道内最初の管理栄養士養成
施設として、多くの管理栄養士を病院その他に送り出し、地域の健康管理に貢献してきた。さ
らに障害児保育のできる保育者、保護者の育児支援のできる保育者の養成にも力を入れ、北海
道内で初の四年制大学の保育者養成施設として、その人材養成の結果が公立の幼稚園や保育所
への高い採用率にも表れている。
また人間生活学部は開設以来、地域に貢献することを掲げて、地元の石狩市との連携を深め
るべく努めてきた。人間生活学科では、学生が石狩市の小学生の授業を補助する SAT プログラ
ム、石狩市の地域観光計画「あいロード」に企画・提案、食物栄養学科では、地元の産物を利
用した飲食品開発に協力して地域の食産業の活性化に貢献し、さらに保育学科では、地元の親
子が参加する子育て支援プログラムを行っている。
c.大学院人間生活学研究科
人間生活学研究科の目的は、「キリスト教精神を基盤とし、広い視野に立って精深な学識を
授け、専攻分野における研究能力又は高度の専門性を要する職業等に必要な高度の能力を養う
こと」である。本研究科は、人間生活学部を基礎とした修士課程であり、人間生活学科と食物
栄養学科に対応する「人間生活学専攻」と「食物栄養学専攻」が設けられている。そのため、
本研究科は、本学並びに学部の理念・教育目標をさらに高いレベルにおいて具現化することを
目指し、次のような教育目標を掲げている。
1. 基礎学部である人間生活学部における研究と教育をさらに高度に発展させ、生命と人間に
対する尊厳という価値に導かれた共生社会の理念を実現するために貢献できる人材の育成
を目指す。
2. 複雑化し多様化した現代の生活環境において生じる諸問題を理論的・実践的に研究すると
ともに、そうした諸問題に取り組むことのできる実務家と研究者を養成することを目指す。
こうした目的・教育目標を踏まえ、人間生活学専攻は、人間そのものの生き方・あり方、人
間を取り巻く生活環境、現代的な生活課題である福祉という 3 つの視点から、研究科の理念・
目的を実現する。具体的には、次のような人材の養成を目指している。
1) より高度な学識を備えた家庭科教員
2) 社会福祉の幅広い現場を支えることのできる人材
3) 国際的視野をもって社会で活躍できる人材
食物栄養学専攻は、食品の品質、食品の機能と生体の機能、人間の栄養管理という 3 つの分
野において、研究科の理念・目的を実現する。具体的には、次のような人材の養成を目指して
いる。
1) 行政、学校、病院等において指導的、管理的立場に立つ管理栄養士
2) 食品産業において、消費者の立場で食品の品質や安全性などを判断し解決できる技術
者・研究者
3) 栄養士養成系大学の教育者・研究者、特に実験・実習の指導ができる教員
さらに、2007 年度末に大学設置基準の改正にしたがって、新たに大学院人間生活学研究科・
専攻の教育目的を次のように定め、大学院学則第 7 条の 2 にそれを謳った。
8
第1章 理念・目的
「人間生活学研究科は、生命と人間の尊厳という価値に由来する理念「共生社会」の実現
に貢献できる人材の育成を目指し、複雑化・多様化する現代の生活環境において生じる諸問
題を理論的・実践的に研究するとともに、そうした諸問題に取り組むことができる実務家及
び実践的研究者を養成することを目的とする。
⑴ 人間生活学専攻は、人間の生き方、生活環境、および生活課題としての福祉という 3 分
野を基軸とする研究を行うことを通して、人間生活の多様な側面を深く学修させ、人間生
活に関わる創造的かつ科学的な思考方法を教授し、幅広い視野と多様な価値観に培われた
人間性豊かな人材を養成することを目的とする。
⑵ 食物栄養学専攻は、「食品品質分野」、「生体機能分野」、「栄養管理分野」の各分野
で研究を行うことを通して高度化・多様化する食と健康の諸課題に取り組み、健全で快適
な人間生活の実現を目指して、教育・研究職、病院、施設、行政、食品関連企業などにお
いて、専門的能力を活かして活躍できる人材の養成を目的とする。」
⑵ 大学・学部・大学院研究科等の理念・目的・教育目標等の周知の方法とその有効性
大学の理念・教育目的等は、大学のホームページ、大学案内、学生便覧に明確に表示されて
いる。
一般にも公開されているキノルド資料館には、学園の建学の精神とその歴史が資料とともに
表示されている。学内では、エントランスホールの正面に本学の教育方針を掲示して、本学の
理念・教育目的等の周知を図っている。
2006 年度には、学長が教職員対象に本学及び学園の歴史について講話し、副学長がキリスト
教的人間観について講話を行った。2008 年度には、理事長が新任教職員に学園の歴史とキリス
ト教的人間観を講話し、本学の理念・教育目的・教育目標についての理解を深めてもらう機会
を設けている。
また、学生に対しては、入学式の式辞をはじめ、大学 1 年次必修の「キリスト教学」と「聖
書学(概論)」などの授業を通してもこれを伝えている。「キリスト教学」では、1 年生に本
学の歴史とキリスト教的な人間観を教えて、大学の理念の根本的な部分を周知させている。
女子大学である本学はキリスト教的な雰囲気作りにも力を入れており、学内の各所に聖像や
宗教画などを飾り、また一般の絵画や花、植木鉢などを置くことによって、女性としての情操
の涵養にも努めている。
学部の理念等については、新入生オリエンテーション、在学生ガイダンスにおいて周知を図
っている。
【点検・評価】【将来の改善・改革に向けた方策】
本学は、小人数による人間教育を大切にしながら、女子大学としての特性を生かすことによ
り、女性のリーダーシップを育て、誇りを持って自らの能力を発揮し、よりよき社会の実現に
貢献していくことができる人材の育成に努めている。そして本学の理念・目的を実現していく
ために、常に前向きの姿勢で本学の改革に取り組んでいる。本学は、地方都市の小さな女子大
学であるが、カトリック大学として世界に開いた精神を持つ人材を育てるよう、その使命を果
9
第1章 理念・目的
たす努力を続ける所存である。
文学部にあっては、今後、オープン・カリキュラムの制度をさらに発展させ、学際的な関心
の展開をより積極的に支援する方向に進みたい。また、従来の小人数の演習、卒業論文・研究
の肌理の細かな指導をさらに充実し、国際社会の潮流や地域社会の変動にしなやかに対応でき
るように、弾力性のあるカリキュラム編成に努め、わが国近隣の諸外国語をも含む外国語教育
の充実を図りたい。
人間生活学部及び大学院人間生活学研究科にあっては、各学科・専攻における学問的自立性
の高さゆえに、学部・研究科としての一体性に欠ける嫌いがあった。今後は、それぞれの学科・
専攻の教育目標に沿った人材育成を目指すだけでなく、高度な学問的一体性の獲得のために、
教育・研究面での改善・改革を図っていく。
理念・教育目標等の周知の方法とその有効性ということについては、入学した学生が卒業す
る時にどのように変化しているかということから、ある程度推し量ることができる。その意味
では、本学の学生は卒業時までにかなり人間観に変化が生まれているようである。入学してき
たばかりの 1 年生の多くは、キリスト教についてほとんど知識がないが「キリスト教学」の授
業を通して、キリスト教についてまたはキリスト教的価値観について、かなり理解が深まって
いると思える。単に自己の損得を優先的に考えるより、人の役に立ちたいという考えを持って
卒業する学生が非常に多い。これは、本学の教育理念がある程度達成されていると考えること
ができるのではないだろうか。
理念・目的等については、学生等への周知の前に教職員側の理解が必要であり、専任はもと
より非常勤講師にも委嘱の際には大学・学部の理念・教育目的・教育目標を明記した学生便覧
や出講案内を配布して理解を深めるようにしている。
周知の方法としては、対象者に応じて、大学のホームページ、大学案内、学内掲示、学生便
覧、シラバス、新入生オリエンテーション、在学生ガイダンス等を十分に活用して、周知の徹
底を計るようにしているが、さらに一層努めていきたい。
10
第2章 教育研究組織
第2章 教育研究組織
【現状の説明】
1.教育研究組織
⑴ 当該大学の学部・学科・大学院研究科・研究所などの組織構成と理念・目的等との関連
本学の教育研究組織は、大学基礎データ(表 1)及び下記の表に示すとおり、1961 年に英文
学科、国文学科の 2 学科からなる文学部のみの単科大学として発足したが、1992 年に短期大学
の一部を改組して人間生活学科、食物栄養学科の 2 学科からなる人間生活学部を設置し、さら
に、女性の社会への進出や時代のニーズに応えて 2000 年に文学部に文化総合学科、人間生活学
部に保育学科を新設した。これにより 2001 年には短期大学を廃止した。2002 年度には大学院
人間生活学研究科(人間生活学専攻、食物栄養学専攻)を設置し、大学基礎データ(表 2)の
とおり 2 学部 6 学科、1 研究科 2 専攻の教育研究体制が整った。その中で学長及び理事長(前
学長)が必修科目である「キリスト教学」を担当するなど、建学の理念である「キリスト教的
世界観や人間観を土台として、女性の全人的高等教育」の実践に努め、質の高いリベラルアー
ツを中心とした教養大学として、また大学院にあっては、高度職業人の養成を目指し、それぞ
れがその目的の遂行と人材養成に努めている。
なお、2001 年 4 月に大学に図書館情報学課程を設置し、司書となる資格を又 2007 年度には
司書教諭となる資格を取得できるようにし、2003 年 4 月には文学部に本学の教育目的の一つで
ある国際意識を育て、世界の平和を願い、人類社会の一員として日本語教育を通して活躍でき
る人材の育成のために日本語教員養成課程を設けている。
表 2-1 本学の設置学部・学科・大学院研究科一覧
名
称
設置認可年月日
収容定員
所 在 地
320 名
札幌市北区北 16 条西 2 丁目 1 番 1 号
文学部
英語文化学科
※
日本語・日本文学科
※
文化総合学科
1961年 3月10日
同上
同上
同上
1999年 7月28日
同上
同上
1991年12月20日
320 名
人間生活学部
人間生活学科
食物栄養学科
保育学科
同上
石狩市花川南 4 条 5 丁目 7 番地
同上
同上
1999年 7月28日
同上
同上
2001年12月20日
16 名
大学院 人間生活学研究科
人間生活学専攻
食物栄養学専攻
同上
同上
石狩市花川南 4 条 5 丁目 7 番地
同上
※2000 年度から、文学部の英文学科、国文学科を現在の名称に変更
11
第2章 教育研究組織
付置機関として、
大学にキリスト教文化研究所、
人間生活学部に QOL 研究所を設置している。
本学の 2008 年度現在の教育研究上の組織を図示すると次のようになる。
○藤女子大学組織図
大 学 院
人間生活学研究科
(修士課程)
食物栄養学専攻
文
日本語・日本文学科
人間生活学専攻
英語文化学科
藤女子大学
学
学
部
文化総合学科
部
人間生活学科
人間生活学部
食物栄養学科
保育学科
QOL研究所
キリスト教文化研究所
1) 学部・大学院
本学の専任教員組織は、大学基礎データ(表 19、19-2、19-3)に示すように、教授、准教授、
専任の講師、助手により構成され、専任教員 65 名(特任教員 6 名を含む)、嘱託教員(11 名)
からなる。特任教員と嘱託教員はどちらも任用期限のある専任教員である。特任教員には通常
の専任教員と個人研究費をはじめとして同一の教育研究上の条件が与えられており、研究科委
員会、教授会、学科会議等に出席し、学部運営に参画することになっている。嘱託教員は、個
人研究費の支給がなく、学生の修士論文、卒業論文の指導は職務から外されている。
嘱託教員を除いた専任教員数は、大学全体で 65 名(大学設置基準上必要な教員数:63 名)
であり、主として演習科目など学科の主要科目を担当している他に、本学の建学の理念の中心
となる宗教関係科目の担当者として両学部にそれぞれ 1 名の専任を配置している。また、何ら
かの資格付与の教育課程のため専任の配置が必要な場合には嘱託教員制度の利用も可能で、11
名(文学部 8 名(図書館情報学課程 1 名含む)、人間生活学部 3 名)の嘱託教員が学生の教育
に当たっている。現在大学で改組を検討中で、今後学科の再編やカリキュラムの改編が避けら
れない可能性もあり、転出・退職した教員の後任者を任期付や特任教員ないしは嘱託教員とし
て採用している。他に食物栄養学科に管理栄養士学校指定規則に定める助手 6 名を配置してい
る。
なお、人間生活学研究科の教員 13 名は、人間生活学部との兼担である。
また、教室系事務職員として、文学部の 3 学科に教務助手を各 1 名、人間生活学部の人間生
活学科、保育学科には教務助手を各 2 名の計 7 名を専任として配置し、学内外の実習を含めた
教務関連の補佐を行っている。
教育上の補佐を目的として、本学大学院に在学する優秀な学生に対して、教育的配慮の下に
学部の教育補助業務に従事させ、将来、教員、研究者になるためのトレーニングの場を与える
と同時に学部教育のきめ細かい指導を実現するためにティーチング・アシスタントを置いてお
り、2008 年度は、人間生活学科の 3 名、食物栄養学科の 9 名が授業科目を担当する教員の指示
に従い学部学生等に対する実験、実習及び演習等の教育補助にあたっており、学部教育に良い
効果をもたらしている。
12
第2章 教育研究組織
他に、人間生活学科に主として学科の学習相談に当たる生活・学習支援員を 1 名、保育学科
に実験実習補助員として、「子育て支援(演習)」における担当教員の補助員を 1 名、実習校
との連絡(巡回指導の把握)・教員間の調整等の業務に 1 名を置いている。
外国の提携大学からの留学生に対しては、国際交流センターが対応しているが、留学生のた
めの日本語指導に臨時職員を 1 名センターに配属し、語学面を中心とした支援を行っている。
科学研究費等の外部資金によって、研究支援研究員 1 名を 2005 年 4 月 1 日から 2008 年 3 月
31 日まで採用した。これは、特定のプロジェクト等に従事させるために臨時研究員の身分で置
いたもので、研究活動を発展させることを目的として、高度な研究能力を持つ研究者を充てた
ものである。
a.文学部
文学部では、3 学科間の垣根を低くし、学生が自由選択科目として受講できるオープン・カ
リキュラム制度の実施を目指している。そのために、異なる科目間の関連性を学生が把握でき
るよう努めている。異なる学科所属の複数の教員がチームを作り、同一のテーマのもとで授業
を行う「テーマ研究」を設け、異なる学問分野でなされる研究が類似の問題を共有することを
学生に示すなどがその一例である。現在のところ学科横断型の授業数は各年半コマないし 1 コ
マ程度に限られているが、このような試みの副産物として、教員の研究活動の活性化をあげる
ことができ、教員個人が自分の専門分野から離れた新しい展望を切り開くうえでも効果的であ
る。
教員の研究状況については、その成果の一部が『藤女子大学 紀要』(第Ⅰ部)で公表され
ており、2007 年度には第 45 号が発行された。さらに、日本語・日本文学科では、教員や卒業
生の研究論文やすぐれた卒業論文を年 2 回刊行の『藤女子大学国文学雑誌』に掲載し、2007 年
度で 78 号が発行されている。しかし、研究に積極的でない教員が一部にみられる。より魅力的
で深化した教育活動を行う観点からも更なる研究の活性化を求めたい。
b.人間生活学部
人間生活学部は、学部創立当初の 2 学科に保育学科を加え、幼児から高齢者までの人間生活・
QOL を広く総合的に教育研究するための 3 学科体制が整って 7 年が経過した。その間、2002 年
の大学院開設はティーチング・アシスタント制度導入を可能にした。
この制度もほぼ 5 年を経て
定着し、大学院生が学部の実習、演習、講義等における教員の補佐としてその知識や経験を活
かし、望ましい効果を生み出している。
教員の研究成果を公表する媒体としては『藤女子大学 紀要』(第Ⅱ部)が、年刊として継
続的に発行され、2007 年度で第 45 号を迎えた。この他、人間生活学科独自の研究成果の発表
媒体として『人間生活学研究』が発行され、やはり 2007 年度で 15 号を数えている。また、藤
女子大学家庭科・家政教育研究会でも 2006 年度から機関誌『家庭科・家政教育研究』を発行し
始め、2007 年度には第 2 号を出した。本学部に所属する教員の研究状況は、概して活発と評価
できるが、それぞれの学科に所属する教員の専門領域の違いもあり、学科横断的な共同研究は
まだ少ない。今後とも狭義の研究領域の違いを越えた共同研究を奨励し推進していく必要があ
る。
13
第2章 教育研究組織
c.大学院人間生活学研究科
大学院人間生活学研究科(修士課程)は、人間生活学部を基盤として構成される人間生活学
専攻と食物栄養学専攻の 2 つからなり、2002 年に開設され、今までに 5 回の修了式を経て合計
54 名の修士を世に送り出した。各自が本大学院の理念と目的に沿った教育課程を修了しており、
研究科としてその役割を果たしている。
各学部の専任教員組織は、大学基礎データ(表 19-2)に記載しているが、嘱託教員を含める
と次表のとおりになる。
表 2-2 学部専任教員(嘱託教員を含む)組織
学部
学
科
文学部
英語文化学科
専任
9
教 授
特任
嘱託
准教授
専任
1
日本語・日本文学科
8
1
1
文化総合学科
7
1
3
講 師
専任
嘱託
2
学
部
人間生活
4
3
食物栄養学科
7
2
保育学科
5
1
1
2
図書館情報学課程
総
計
4
2
1
2
2
2
11
2
13
1
1
14
6
6
6
18
12
1
40
計
12
1
日本語教員養成課程
人間生活学科
助 手
1
12
7
5
6
82
2) 研究所
本学に設置している「キリスト教文化研究所」及び人間生活学部に付置する「QOL 研究所」
は、それぞれ大学の存立の目的にかかわる基本となる事項を研究する組織で、学部・大学院等
の教育研究を一層充実させるとともに、その成果を社会へ還元することで、大学の理念・教育
目的の更なる具現化に貢献している。
本学には研究所専属の教員はおらず、所員は研究所の目的・事業・活動等に参加を望む本学
の専任教職員の兼任であり、学部の教育が本務となっている。
表 2-3 大学及び学部の研究所一覧
名
称
設置年月日
所 在 地
(大学付置)キリスト教文化研究所
1998年6月19日
札幌市北区北 16 条西 2 丁目 1 番 1 号
(人間生活学部付置)QOL 研究所
2003年4月 1日
石狩市花川南 4 条 5 丁目 7 番地
a.キリスト教文化研究所
キリスト教文化研究所は、本学の「建学の理念にもとづき、キリスト教の精神並びに文化の
研究を行うことを目的」として、1998 年 6 月 19 日に発足し、2008 年で 10 年間活動してきてい
る。研究所は所長 1 名、所員(2008 年度 9 名)及び客員所員(同 2 名)から構成されており、
所員は本学の専任教職員の兼任である。研究所の運営は、所長及び所員をもって構成される所
14
第2章 教育研究組織
員会において決定される。
研究所の理念、目的遂行のための主要な活動は以下のとおりである。
①キリスト教の精神と文化の研究
②研究成果の発表・刊行
③研究会、講演会、公開講座等の開催
④研究資料の収集、整理
⑤関係する研究所、学会等との協力
⑥その他、研究所の目的を達成するために必要な活動
これらの 2006 年度、2007 年度の具体的な研究活動を表 2-4 に記載する。
キリスト教文化研究所が 2006 年、2007 年に開催した公開講演会、公開講座、クリスマスコ
ンサートについては、「第 7 章 社会貢献」を参照のこと。
表 2-4 キリスト教文化研究所の研究活動
研究例会
2006 年 6 月 30 日
『食べてはいけない』から『取って食べなさい』へ
柊曉生(所長)
2006 年 7 月 21 日
創造論とインテリジェント・デザイン(ID)
小柳義夫(客員所員)
2006 年 12 月 20 日
中世後期の列聖手続き
渡邉浩(所員)
2007 年 2 月 1 日
カントの平和論―続編
枡潟弘市(所員)
2007 年 5 月 19 日
北海道の女子教育の曙とキリスト教
下田尊久(所員)
2007 年 7 月 14 日
メソポタミア文明 5000 年の地における水資源争奪
小林三樹(所員)
2007 年 8 月 11 日
ピューリタン革命と政教分離
岩井淳(静岡大学)
2008 年 2 月 2 日
ガラテヤ 3 章 4 節 b と信徒の危機∼新共同訳批判∼
阿部包(所員)
研究所紀要
第 7 号(2006 年 3 月)
講演、論文(2)、翻訳、書評(1)、130 頁
第 8 号(2007 年 7 月)
講演、論文(3)、翻訳、書評(2)、130 頁
出版物
2008 年 3 月
『平和の思想−キリスト教よりの再考察−』 (リトン)
学術懇話会
第1回
(2006 年 10 月 14 日)
「キリスト教思想家トクヴィル試論≪摂理・自由・デモク
ラシー≫」
第2回
(2008 年 3 月 1 日)
「イミタティオ・クリスティ」から「こんてむつすむん地」ま
で-“De Imitatione Christi”(『キリストに倣いて』)とイエ
ズス会と日本のキリシタン-」
半澤孝麿氏(近代政
治思想史、都立大学
名誉教授)
五野井隆史(聖トマス
大学教授、東大名誉
教授)
日本カトリック大学キリスト教文化研究所連絡協議会参加
第 19 回( 2006 年 6 月) 東京純心女子大学
第 20 回(2007 年 6 月) 藤女子大学において開催
6 月 1 日: 幹事会、全体会議、懇親会
6 月 2 日: ミサ、全体会議、第 20 回記念公開講演会 約 150 名
「人権と人道」 樋口陽一(憲法学者、東京・東北大学名誉教授)
収集資料
2006 年
2007 年
The Greatest Printed English Bibles of History
The Oxford Handbook of Religion and Science
The 1539-1540 Great Bible: The First “Authorized” English Bible.
15
第2章 教育研究組織
b.QOL 研究所
QOL 研究所は人間生活学部に置かれ、2003 年 4 月 1 日に「福祉研究所」という名称で、「福
祉に関する研究、研究助成、指導及び普及事業を行うことを目的」に発足したが、「保健・医
療・福祉」という場合の「福祉」と狭義に受け止められることを避けるために、2006 年に
「well-being に関する研究、研究助成、指導及び普及事業を行うことを目的」とする「QOL 研
究所」に改称した。
本研究所は、所長、研究員及び客員研究員から構成され、所長は人間生活学部長が当たり、
本研究所を代表するとともに、その運営を統括する。研究員は、本研究所の諸事業に参加を望
む本学専任教員が兼任する。客員研究員は、研究所の事業に賛同する学外者で運営委員会で承
認された者となっているが、民間の関係者が加わることで活動の範囲が広がっている。
なお、研究所は、福祉研究所時代より研究所紀要を発行しており、2006 年 1 月の創刊号(『藤
女子大学福祉研究所年報 The Bulletin of Studies for Well-Being』)発刊以来、2008 年 3
月に『藤女子大学 QOL 研究所紀要 The Bulletin of Studies on QOL and Well-Being』の第 3
巻第 1 号を刊行した。QOL 研究所が 2006、2007 年度に開催した公開講演会、公開講座、研修会
については、「第 7 章 社会貢献」を参照のこと。
【点検・評価】
本学の教育研究組織は、キリスト教を基盤に豊かな教養と学問、実践的な知識・能力に情報
技術を持った女性を育成する体制として十分に機能してきたと評価できる。しかし、学部の志
願者は近年減少しつつあり、大学院は定員を満たしていない現状から、さらに魅力ある大学組
織について、将来構想の検討を始めている。
研究所所員は全員、学部の教育が本務で研究所の目的・事業・活動等に関心を持つ専任教職
員の兼任で行っており、研究所としての研究面・社会貢献面等の活動は盛んに行われている。
キリスト教文化研究所は、着実に活動を展開してきた。研究例会は年 4 回を基本とし、その
うち 1、2 回は外部から研究発表者を依頼しているが、所員の研究活動に刺激を与え、研究所の
活性化に貢献していると思われる。また、研究紀要誌は公開講演会の講演、論文、翻訳、書評
等で構成されており、それぞれに充実した内容のもので今後とも質的な維持を持続していくこ
とが肝要である。
2005 年度に日本カトリック大学連盟より学術奨励『研究助成』を受けて行った「平和の思想」
の共同研究(所員 6 名、学外 3 名)の成果は、2007 年度に『平和の思想−キリスト教よりの再
考察−』と題して刊行された。研究所初めての単行本である。今後も何年かの間隔で継続的に
出版できればいいかと考える。
研究をより充実したものにし、学術交流を活発化するため、2006 年より所員と招聘講師の小
人数で学術懇話会を開始した。
日本カトリック大学キリスト教文化研究所連絡協議会とは緊密に協力し、
協議会設立 20 周年
に当たる 2007 年には本学で協議会を開催した。2003 年に協議会の会長に選出された本研究所
所長は 2005 年に再選され、2007 年までの任期の期間、連絡協議会の活性化のために活動した。
収集資料、整理に関しては、2007 年度末に研究所の部屋が移動し、環境が改善されたため、
16
第2章 教育研究組織
課題であった図書の分類、整理を開始した。
QOL 研究所は、研究科、学科の壁を越えた共同研究の推進のために、人間生活学部の専門分
野を横断した研究者の連携により形成される研究グループによる QOL 関連の研究を募集して、
QOL に関する学際的な研究の発展を実現してきた。しかしながら、保育学科からは積極的な参
加が得られていない。
【将来の改善・改革に向けた方策】
文学部は、3 つの学科の垣根を低くし、学部を横断するカリキュラム編成を進めてきたが、
この流れをなお進める必要がある。
人間生活学部は、人間生活・QOL を総合的に教育研究するための 3 学科体制が完成したが、
学科を越えた共同研究が学部長特別予算等を活用しながら積極的に展開されることが求められ
る。また、人間生活学部、学科で志願者が減少しつつあり、すでに全学を上げて、学科、学部
の改革案を立案しているが、大学院については研究科委員会で検討されている。
両学部とも従来の学科中心の人事体制をより柔軟性のある教育研究組織に改善する必要があ
る。これは、学園の大学部門企画運営会議(議長:理事長)で提起されている全学で専門領域
を超えた教員間の連携、学部間の連携を一層密にする問題と関連して検討される。
大学院の担当教員が人間生活学部との兼担で担当授業時間数が多いという問題は、速やかに
解決しなければならない。
大学院の社会人学生のために夜間開講を行うなど工夫しているが、所在地の地理的な条件も
あり、北 16 条キャンパスの利用を含めてさらに検討が必要である。
キリスト教文化研究所の紀要を広く公開するため、
NII(国立情報学研究所)論文情報ナビゲー
タで閲覧可能な論文を当研究所のホームページ上でも見られるよう設定する。日本カトリック
大学キリスト教文化研究所連絡協議会とは密接な協力関係を維持し、研究者間の交流を促進し、
共同研究に取り組みたいと考えている。
QOL 研究所は、研究科、学科の壁を越えた共同研究の推進のために、人間生活学部の専門分
野を横断した研究者の連携により形成される研究グループによる QOL 関連の研究を募集して、
QOL に関する学際的な研究の発展を着実に実現してきたが、今後は、本研究所を学部付置では
なく大学付置機関にしても良い時期になったと考えている。
17
第3章 教育内容・方法(学士課程)文学部
第3章 教育内容・方法
第1節 学士課程の教育内容・方法
第1項 文学部
【到達目標】
1.オープン・カリキュラム制度の主旨をさらに推し進め、学際的なテーマを掲げる学科横断
的なコース・プログラムを複数新設し、卒業研究に繋がる指導体制を整えつつ、学生が各自
の知的関心を開発することのできるリベラルアーツの学府にふさわしい文学部カリキュラ
ムを実現する。
2.1 年次から 4 年次までの履修指導を徹底し、カリキュラム及び各科目の目標を周知させた
上で、授業に対する学生の積極的な参加の姿勢を促進し、学ぶ側、教える側双方にとって達
成感のある教育を行う。
3.教育及び研究における国際的な交流を促進する。
【現状の説明】
第1 教育課程等
1.学部・学科等の教育課程
⑴ 教育目標を実現するための学士課程としての教育課程の体系性(大学設置基準第 19 条第1項)
文学部は、小人数教育を核として、各学科の専門性に基づいた 3 学科体制をとりつつも、学
科間の垣根を低くして、3 学科のカリキュラムを有機的、系統的、総合的に結びつけ、学際的
な多様性を特色とした学部カリキュラムを編成している。具体的には、どの学科の学生も他学
科の専門科目を履修することができ、取得した単位は自由選択単位として卒業要件に含めるこ
とができる。また、3 学科が共同開講する「テーマ研究」によって、学科横断的な関心を積極
的に育成する姿勢を示している。
文学部の教育課程表は「学生便覧」87∼103 頁に示されているとおり、1)宗教科目、外国語
科目、2)学科専門科目、及び 3)資格取得科目の履修区分に分かれている。
1)宗教科目と外国語科目は、建学の精神並びに大学の理念・目的を直接に反映するものであ
る。本学の教育がキリスト教的世界観や人間観を土台としていることから、宗教科目の「キリ
スト教学」「聖書学」を 1 年次に設定し、必修としている。また、学部の特性からして、異文
化及び自文化への関心を喚起し、同時に国際的なコミュニケーション手段を身につけることが
不可欠であることから、外国語の習得を重視し、外国語科目として選択必修 8 単位以上を課し
ている。外国語科目には英語、ドイツ語、フランス語の他に中国語、コリア語の近隣諸国の言
語を配している。特に英語に関しては、「総合英語」「英会話」「英語講読」「上級英語」と細
分化し、学年進行による積み上げ方式とともに教育効果を高めるようにしている。ドイツ語、
フランス語においても、「初級」から「上級」までのクラスを、中国語、コリア語では「初級」
18
第3章 教育内容・方法(学士課程)文学部
と「中級」のクラスを設けることで、段階的な学修を目指している。なお、中国語、コリア語
の人気が高く、年々履修者数が増えている。
2)学科専門科目は、各学科の専門性に応じて、多岐にわたる分野・領域の授業科目が入門か
ら高度なものへと展開するように編成されている。同時に、知的関心の学際的な展開を積極的
に支援するために、他学科の専門科目との関連性を重視し、自分の関心に応じて学科の枠を超
えて総合的に学修することができるように配慮しており、学部全体で高度な教養教育を提供す
ることを目指している。
各学科のカリキュラムには、倫理性、社会性を育てることに関連した科目や、学際的、学科
横断的な科目である「テーマ研究」や、国際性、コミュニケーション能力の向上、情報化時代に
対応する科目などが含まれている。
例えば、文化総合学科が開設する倫理学、哲学、歴史学、社会学、法学、女性学、異文化コ
ミュニケーション等の人間理解の土台となる科目をはじめとして、各学科とも基礎科目を幅広
く開設し、全学科の学生に対して基本的な教養の修得を促している。また、情報化社会に対応
する教育を推進するために「情報処理」等関連科目を文化総合学科に開設し、その運用能力を高
め、活用法についても認識を深めるようにしている。同時に、それぞれの基礎的な科目には、
それに対応する応用的な科目を設定し、知的関心をさらに深めることができるように配慮して
いる。
3)さらに、文学部は各種資格のための課程を設置し、学生の要望に応えている。教職課程で
は各学科の専門性に対応した教科の中学校教諭一種免許状と高等学校教諭一種免許状を、図書
館情報学課程では司書、司書教諭の資格を取得できる。また、2003 年度からは日本語教員養成
課程を開設している。
文学部における各学科のカリキュラムの体系性については次のようになっている。
① 英語文化学科のカリキュラムは、「学科基礎科目」「基礎演習」から「卒業論文」「卒業
課題研究」へと向かう段階的な体系を垂直軸として、「文学系」「英語学系」「コミュニケ
ーション系」「総合研究系」と 4 つの系に分かれる学問領域を水平軸として、これら 2 つの
軸を有機的に組み合わせる構成をとっている。4 年次において、学生は 4 つの系から 1 つを
選択し、「卒業論文」あるいは「卒業課題研究」を履修する。1、2 年次には、学科の特性上、
専門の学修に必要な英語力を養うための学科基礎科目を必修として開設すると同時に、それ
ぞれの系の専門分野に対する知的関心を早くから育てるために、各系の基礎演習科目や講義
科目を選択必修として開設している。学科基礎科目の運営においては、教科書や試験の統一
化を行い、進度や達成目標を明確化している。こうした基礎的、入門的な学修を下地として、
3 年次にはより専門性の高い演習科目やより高度の英語力を修得するための科目(「エッセ
イ・ライティング」など)を開設し、4 年次の「卒業論文」「卒業課題研究」の履修に向か
うプロセスを用意している。4 年次には「卒業研究演習」を開設し、「卒業論文」「卒業課
題研究」を 4 年間の学修の結実とすべく、指導を強化している。
② 日本語・日本文学科の学科専門科目は、過去・現在における日本語、日本文学、さらに日
本文化のありようが、さまざまな角度から、また、基礎から高度な専門研究まで段階的に学
ぶことができるように、時代や領域、授業形式(講義・演習)等の配慮のもとに区分した、
多彩な内容のものになっている。日本語・日本文学科では、歴史・社会・地域といった諸分
野を視野に入れ、古代から現代までを対象に、日本語学、日本文学、漢文学を基幹領域とし、
19
第3章 教育内容・方法(学士課程)文学部
それらに関連する領域を特殊講義等(学科科目「書道」や「テーマ研究」を含む)として構
成している。学科カリキュラムの仕上げとなる「卒業研究」は、基幹領域に関する「卒業研
究ゼミ」を経て結実する。基幹領域には、専門性の深化に応じて、それぞれに、「講義Ⅰ」「講
義Ⅱ」「演習Ⅰ」「演習Ⅱ」の科目が設けられ、学生のテーマや学びの方法に対する関心の深
さや、学修の進展の段階に応じることができるようにしている。これらに「卒業研究ゼミ」
と「卒業研究」を加えた 5 種類の科目が、入門、応用、完成というステップに対応している。
具体的には、「講義Ⅰ」「演習Ⅰ」「演習Ⅱ」「卒業研究ゼミ」「卒業研究」を A 群、「特殊
講義 A」「特殊講義 B∼H」「講義Ⅱ」「日本文学史」「日本思想史」「テーマ研究」「書道」、
他学科開講科目、他学部開講科目( 2004 年度入学生から)を B 群と位置づけ、カリキュラ
ムを構成している。「講義Ⅰ」は各研究領域、ジャンルの入門編にあたり、基礎となる知識
や方法論を学ぶ場となる。「演習Ⅰ」は、具体的な課題に取り組みながら、「講義Ⅰ」で学
んだ基礎を研究に活かす訓練をする場となる。「演習Ⅰ」は入門から応用へ向かう道筋の中
間に位置するものである。B 群のプログラムは学生の中の多様な関心を育み、A 群のプログラ
ムをより豊かにするためのものである。「特殊講義 A」は集中講義であり、「特殊講義 B∼H」
は A 群の講義のテーマをさらに展開した専門性の高い内容の講義であり、「テーマ研究」は
文学部 3 学科の教員によるテーマ設定のもとに行われる講義である。
③ 文化総合学科では、急速に進む国際化と流動化する社会の諸現象の中で、人間と社会の関
係を総合的にとらえ、これを学問として学ぶことを主眼としている。文化総合学科の学科専
門科目は、学科の教育目標に基づき、2 つの領域『日本と世界が交流する文化のフォーラム』
『現代と歴史が結合する知性のフォーラム』に分かれ、2 つの領域はさらにそれぞれ 2 つの
系列に分かれる。すなわち、『日本と世界が交流する文化のフォーラム』は「異文化コミュ
ニケーション」と「社会と制度」の系列に分かれ、『現代と歴史が結合する知性のフォーラ
ム』の領域は「歴史」と「思想と宗教」の系列に分かれ、全体として、以下に示す 4 つの系
列から構成されている。
a.異文化との交流・相互理解のために必要なコミュニケーション能力やグローバルな視点
を培う「異文化コミュニケーション」系列。
b.現代社会の実態とその問題点について理解を深める「社会と制度」系列。
c.歴史に学びつつ時代を見る眼を養う「歴史」系列。
d.古今東西の思想・宗教を学び時代を超える豊かな発想力を培う「思想と宗教」系列。
それぞれの系列には、基礎的科目として、学生の興味関心を導き出すための知識を得る「入
門科目」を配置し、発展的科目として、専門的な知識と考え方を学ぶための「特講」「演習」
を配置している。1 つの系列に閉じこもらず、4 つの系列に分かれる幅広い科目群系列を学ぶ
姿勢を育むために、4 つの系列の「入門科目」から各 4 単位(計 16 単位)以上、これに 4 単
位を加え、計 20 単位以上の履修を義務付けている。1 年次必修の「基礎演習」は学科専任教
員の全員がこれを担当し、各系列の入門的知識を与えるのみならず、4 つの系列を相互に関
連させて学ぶ姿勢を促している。2、3 年次には「特講」「演習」を配置しているが、「特講」
の多くは 2 年間をワンクールとして継続的な学修を可能にしており、また、「演習」は複数
の系列に跨る履修を可能とすることで、学生がより広く深い知識、思考を身につけ、学際的
な視点を開発することができるように配慮している。こうして身につけた幅広い視野と知識
をもとに、全ての学生が「卒業研究(論文)」の作成に取り組むことになるが、4 年次には「卒
20
第3章 教育内容・方法(学士課程)文学部
業研究演習」を配置して、学生各自が論文を作成するにあたり、相互に意見を交換しつつ、
その質を高めていけるように配慮している。
⑵ 教育課程における基礎教育、倫理性を培う教育の位置づけ
基礎教育に関わる科目には、それに対応する応用的な科目が結びつけられており、基礎から
発展へと向かう道筋が整備されている。英語文化学科も日本語・日本文学科も、入門的な科目
を 1、2 年次に配置しているが、それぞれの学科の専門教育に有機的に連結すべく配慮している
とともに、他学科の学生がこれを履修することを可能にすることで、文学部として、より広範
で高度な教養教育を体系的に提供することを目指している。
文学部においては、外国語もまた基礎教育の大きな部分を占め、「英語」をはじめとする 5 つ
の外国語を開設して、3 学科ともに選択必修 8 単位以上を課している。また、今後の社会で重
要度を増す情報学関係科目は「情報処理」として文化総合学科に複数開設され、他学科の学生
も含め、学部全体に受講を促している。
なお、各学科の基礎教育等にあたるものとしては次のようなものがある。
① 英語文化学科の基礎教育科目としては、
「文法・作文」
「The Art of Writing」
「Oral English
I・Ⅱ・Ⅲ」「Reading I・Ⅱ」「Voice & Articulation」「Listening」の学科基礎科目(以
上必修)と「文学基礎演習 A∼E」「英語学基礎演習 A・B」「言語学基礎演習」「コミュニケ
ーション基礎演習」「地域文化基礎演習 A・B」(以上選択必修)、さらに各概論科目がある。
学科基礎科目や演習は、学年進行に伴って開講される専門性の高い科目への導入となる科目
であり、
基本的には専任教員がこれを担当し、
小人数クラスで効果的な教育を目指している。
② 日本語・日本文学科では、入門編にあたるのは「講義 I」(「日本語学講義ⅠA∼C」「日本
文学講義ⅠA∼I」「漢文学講義Ⅰ」)である。ここに設定された科目群は、高校の授業内容
との連動性を配慮しつつ、学生が自らの関心の在りかを見出し、最終的には卒業論文の作成
に結びつくテーマの萌芽を促すためのものであり、それぞれの領域の基本的な知識や方法論
を学ぶことを狙いとしている。「演習Ⅰ」(「日本語学演習ⅠA・B」「日本文学演習ⅠA∼H」
「漢文学演習Ⅰ」)は、「講義Ⅰ」で学んだ基礎的な知識や方法に基づき自らの考えを発表
することで、学生の主体的な研究意識を育む。「演習 I」は、「講義Ⅰ」の応用であるとと
もに、「演習Ⅱ」への入門としての意味をもつ。
③ 文化総合学科では、2 領域 4 系列に渡って学科専任教員全員が担当する「基礎演習」が、
「卒業研究」へと収斂していく道筋において、基礎教育科目として位置づけられている。
本学の建学の精神や倫理性に関連する科目として、文学部では「キリスト教学」「聖書学」
を必修科目として設けている。また、文化総合学科には、「大学の建学の精神」に関連した科
目及び倫理性を培う科目として、「倫理学基礎演習 A・B」「倫理学入門」「倫理学特講」「倫
理学演習」「倫理学卒研演習」「宗教文化論」「聖書学基礎演習 A・B」「キリスト教文化論」
「聖書学入門」「聖書学演習」「聖書学卒研演習」「基礎法学」等が設けられている。その他、
倫理学、哲学、社会学、心理学、女性学、法学、異文化コミュニケーション等、人間理解の基
礎となりうる科目の多くは、文化総合学科に開設されているが、他学科の学生もこれらの科目
を履修して卒業要件に組み入れることが可能であり、学生にはこれらの科目を積極的に受講す
るよう指導している。
21
第3章 教育内容・方法(学士課程)文学部
⑶ 「専攻に係る専門の学芸」を教授するための専門教育的授業科目とその学部・学科等の理
念・目的、学問の体系性並びに学校教育法第 52 条との適合性
文学部は、2000 年度以来、従来の 2 学科の学科名を変更した上で 1 学科を新たに加え、3 学
科の体制をとっている。それぞれの学科は、入門的な科目及び発展的な科目を配置し、専門的
学修の着実な深化を図っており、専門領域の学修の成果を、卒業研究として結実させることを
目標としたカリキュラムを編成している。3 学科とも、4 年次ないし 3、4 年次に卒業研究演習
をおいて、学生が卒業研究を仕上げるためのプロセスを、個別にきめ細かく指導する体制をと
っている。こうした姿勢は、本学、文学部、3 学科の理念や教育目標に沿ったものであり、学
校教育法 52 条にも基本的に適合していると考える。以下、3 学科それぞれについて記す。
英語文化学科では、4 つの系を設け、英語文化を多角的な視野のもとにとらえることができ
るようにしている。学科基礎科目や基礎演習によって培われた知識やスキルを下地として、各
系に 3 年次からの演習を設け、4 年次には卒業研究演習をおいて、専門的な知識や関心をさら
に深めることができる体制をとっている。1、2 年次から、多彩な講義科目を開講し、学生が自
主性をもって、専門領域への関心を育てていくことができるように配慮している。4 年次の「卒
業研究」は、4 年間の学修の結実として意味づけ、十分な指導のもとに履修できるよう努めて
いる。
日本語・日本文学科では、A 群を学科カリキュラムの根幹をなすプログラムと位置づけ、古
代から現代までを対象に、日本語学・日本文学・漢文学に対して、それぞれに「講義Ⅰ」「講義
Ⅱ」「演習Ⅰ」「演習Ⅱ」をおき、専門的学修が段階的に深化するようにしている。これらのう
えに「卒業研究」をおき、これを 4 年間の学修の最終目標として位置づける体制となっている。
文化総合学科では、2 領域 4 系列を設け、1 年次必修の「基礎演習」を履修した後、2・3 年
次では各系列の演習を履修し、最終的には 4 年次の「卒業研究」の履修へと向かう学修ステッ
プを踏まえて、専門カリキュラムを構成している。各系列は、単に教養教育的な学修を目標と
するものではなく、「広く深く」を狙いとして、4 年間の学修の結実である「卒業研究」に取
り組む体制をとっている。
⑷ 一般教養的授業科目の編成における「幅広く深い教養及び総合的な判断力を培い、豊かな
人間性を涵養」するための配慮の適切性
文学部は「一般教養的授業科目」をカテゴリーとして設置していないが、大学必修科目とし
ての「キリスト教学」「聖書学」を設定している他に、それぞれの学科において、学科カリキ
ュラムの柱となる専門科目の履修を支援するための周辺的な科目を配置している。同時に、文
学部の学生は 3 学科に開設される基礎的、教養的な科目を自由に選択履修することができるオ
ープン・カリキュラムの体制を組んでおり、学科必修単位数を押さえ気味にして、自由選択単
位を 64∼84 単位(学科により異なる)確保することで、学生が幅広く教養を深め、その人格形成
の一助とすることができるように、学部としてのカリキュラムを編成している。
英語文化学科では、単なる意思伝達の道具としての英語ではなく、文化共同体を成り立たせ
ている言語としての英語、個人や共同体を根本から支えている言語としての英語に対する関心
を育てることを主旨として、言語文化一般に関する知識を広く学ぶことができるように配慮し
ている。地域文化講義、文学講義、英語学講義、言語学講義といった講義メニューを増やし、
単なる語学的スキルの習得に終わらないように努めている。加えて、文化総合学科の入門的な
講義を中心に、他学科の科目を積極的に履修するよう指導している。
22
第3章 教育内容・方法(学士課程)文学部
日本語・日本文学科は、学生の多様な関心を開発するプログラムとして、他学科の開講科目
を(いわゆる「一般教育科目」とは質を異にするものとして)位置づけている。そのために、
学科学生の自由選択単位を 84 単位以上に設定し、
他学科が専門教育を目的として開講している
科目を、学科の枠を超えて自由に履修することができるように配慮している。文学部のオープ
ン・カリキュラム制度の理念を最も積極的に体現する姿勢を示しているといえる。
文化総合学科は、学科カリキュラムの中心となる 4 系列の専門科目の他に、周辺領域に関わ
る科目群を幅広く設け、専門教育の裾野をなす教養教育的な科目群を配置して、学生がこれら
を自由に選択できるようにしている。さらに、4 系列それぞれに開講される入門的な科目から
各 4 単位(計 16 単位)を選択必修する体制を組んでおり、これに任意の系列からの 4 単位を加
え、計 20 単位の履修を義務付けている。また、自由選択単位を 72 単位以上に設定し、個々の
学生がそれぞれの知的関心の展開の中で幅広く教養を深め、人格を養い、総合的な判断力を培
っていくことができるように、カリキュラムを編成している。
⑸ 外国語科目の編成における学部・学科等の理念・目的の実現への配慮と「国際化等の進展
に適切に対応するため、外国語能力の育成」のための措置の適切性
文学部は、外国語科目として、英語、ドイツ語、フランス語、中国語、コリア語の科目をお
いている。ドイツ語、フランス語は初級・中級・上級を、中国語、コリア語は初級・中級をお
いているが、英語については、「総合英語」「英会話」「英語講読」「上級英語」と細分化し、
個々の学生の学修の幅と進度に対応できるように配慮している。
これらの外国語科目の設置は、
大学・学部理念である異文化理解のためのコミュニケーション手段としての外国語運用能力の
養成を目指すものである。
各学科の外国語の単位数は以下のとおりである。
英語文化学科では、1、2 年次に開講される学科基礎科目において、集中的な英語教育を実施
している。第二外国語については、ドイツ語、フランス語、中国語、コリア語の 4 つの言語か
ら1言語 8 単位以上を選択必修としている。
日本語・日本文学科では英語、ドイツ語、フランス語、中国語、コリア語のうち 1 外国語科
目 8 単位以上、または英語、ドイツ語、フランス語、中国語、コリア語の中から 2 外国語各 4
単位以上選択必修となっている。
文化総合学科では、英語、ドイツ語、フランス語、中国語、コリア語のうち、1 外国語 8 単
位以上を選択必修としている。加えて、3 年次用に「英語特講」「フランス語特講」「ドイツ
語特講」「中国語特講」「コリア語特講」を開講し、更なる言語運用能力の修得の機会を用意
している。さらに、言語運用能力の育成にとって言語文化一般についての関心を育むことが必
須であるとの考えから、「イギリス文化論」「アメリカ文化論」「フランス文化論」「ドイツ
文化論」「中国文化論」「韓国文化論」といった科目を開設し、他学科の学生も含め、多くの
受講者を集めている。
韓国、台湾、アメリカ、オーストラリアの協定校への留学の道があり、留学する学生は増え
てきている。
23
第3章 教育内容・方法(学士課程)文学部
⑹ 教育課程の開設授業科目、卒業所要総単位に占める専門教育的授業科目・一般教養的授業
科目・外国語科目等の量的配分とその適切性、妥当性
文学部における卒業所要単位(124 単位以上)を構成する授業科目は、以下に掲げる表 3-1
のとおり、「宗教科目」、「外国語科目」、「学科専門科目」の 3 つのカテゴリーに分かれる。
「宗教科目」は 3 学科共通で必修 4 単位、「外国語科目」は 3 学科共通で選択必修 8 単位以上
となっているが、「学科専門科目」の単位数は 3 学科それぞれに大きく異なる。学科必修、学
科選択必修、学科選択をあわせた単位数は、英語文化学科では 48 単位以上、日本語・日本文学
科では 28 単位以上、文化総合学科では 40 単位以上である。日本語・日本文学科の単位数が特
に低く抑えられているのは、他学科開設科目の履修を奨励するオープン・カリキュラム制度の
精神を最も明確に具現化するものといえるが、
文学部としても、
履修選択の自由度を高く保ち、
学生の自主性を尊重する姿勢を保持している。その一方で、この自由度を十分に活用できない
学生のための履修モデルの提示や、個別の履修指導を行っている。
⑺ 基礎教育と教養教育の実施・運営のための責任体制の確立とその実践状況
文学部では、「基礎教育」「教養教育」を区分していない。
英語文化学科では、語学的スキルを養成する学科基礎科目の運営に当たって、これに関わる
専任教員が定期的に会合をもち、授業展開上の問題点のチェック、進度の調整、欠席常習者へ
の働きかけ、統一試験の実施などについて、意見交換を行っている。他方、基礎演習やいわゆ
る教養的講義科目については、学科基礎科目と同等の体制を組むにはいたっていないものの、
月例で開かれる学科会議の中で、1、2 年生の出席状況についての情報交換、授業上の問題点に
ついての意見交換などを定期的に行っている。
日本語・日本文学科では、学科カリキュラムの骨子である「講義Ⅰ(日本語学、日本文学、
漢文学)」の運営については、専任教員が責任をもってあたるという方針を貫いている。学科
としては、開講科目総数 14 のうち、10 科目を専任 10 名が担当することを基本原則としている
が、2008 年度については、特殊の事情のため、開講科目総数 13 のうち、9 科目は専任 9 名が担
当、4 科目を 4 名の非常勤講師が担当している。また、「演習Ⅱ」への入門であり「卒業研究」
に向かう道程の起点となる「演習Ⅰ」は、専任教員 10 名全員が担当しており、このことは、基
礎教育科目の責任体制が学科によって的確に担われていることの証明でもある。
文化総合学科では、学科専門のための「基礎科目」にあたる「基礎演習」「入門科目(講義)」
があり、そのうえに演習と講義を開設するカリキュラム編成をとっている。「入門科目」には
人文社会系科目の他に「環境科学」「生命科学」「映像表現論」などの科学・芸術系科目も配置
されており、幅広い教養の獲得に資する役割を果たしている。
⑻ カリキュラム編成における、必修・選択の量的配分の適切性、妥当性
文学部のカリキュラムは、「宗教科目」、「外国語科目」、「各学科専門科目」から編成されて
いる。各学科の履修方法及び卒業の要件は、学則第 18 条から第 20 条に規定されており、卒業
要件を示すと次の表 3-1 のとおりである。
24
第3章 教育内容・方法(学士課程)文学部
表3-1 卒業要件
英語文化学科
授業科目区分
単位区分
必
修
単
宗教科目 外国語科目
英語文化学科
専 門 科 目
4単位
位
日本語・日本文学科 文化総合学科
専 門 科 目 専 門 科 目
20単位
28単位以上
(文学系、総合研究系を専攻す
*8単位以上 る場合これに6単位が加わる。)
選 択 必 修 単 位
選
択
単
(英語学系、コミュニケーション系
を専攻する場合これに4単位が
加わる。)
位
64単位以上
自 由 選 択 単 位
卒業必要単位数合計
124単位以上
*教職に関する科目は、指定された科目のうち8単位まで自由選択単位として算入できる。
*独語、仏語、中国語、コリア語のうち1外国語8単位以上選択必修。
*他学部科目(共通、学科専門)は、12単位まで自由選択単位として算入できる。
*協定校修得科目(本学教育課程表外の科目)は、12単位まで自由選択単位として算入できる。
日本語・日本文学科
授業科目区分
単位区分
宗教科目 外国語科目
日本語・日本文学科
専 門 科 目
英語文化学科
専 門 科 目
文化総合学科
専 門 科 目
6単位
*8単位以上
12単位以上
選 択 必 修 単 位
選
択
単
位
10単位以上
自 由 選 択 単 位
84単位以上
卒業必要単位数合計
124単位以上
*教職に関する科目は、指定された科目のうち8単位まで自由選択単位として算入できる。
*英語、独語、仏語、中国語、コリア語のうち1外国語8単位以上、または英語、独語、仏語、中国語、コリ
ア語の中から2外国語各4単位、合計8単位以上選択必修。
*他学部科目(共通、学科専門)及び協定校修得科目(本学教育課程表外の科目)は、合わせて12単位ま
で自由選択単位として算入できる。
必
修
単
位
4単位
文化総合学科
授業科目区分
単位区分
必
修
単
位
選 択 必 修 単 位
選
択
単
位
宗教科目
外国語科目
4単位
*8単位以上
文化総合学科
専 門 科 目
英語文化学科
専 門 科 目
日本語・日本文学科
専 門 科 目
4単位
36単位以上
72単位以上
自 由 選 択 単 位
卒業必要単位数合計
124単位以上
*教職に関する科目は、指定された科目のうち8単位まで自由選択単位として算入できる。
*英語、独語、仏語、中国語、コリア語のうち 1 外国語 8 単位以上選択必修。
*他学部科目(共通、学科専門)は、12単位まで自由選択単位として算入できる。
*協定校修得科目(本学教育課程表外の科目)は、12 単位まで自由選択単位として算入できる。
大学の建学精神と深く関わる宗教科目として「キリスト教学」(2 単位)、「聖書学」(2 単位)
を文学部の必修科目としている。外国語科目として、日本語・日本文学科と文化総合学科は、
英語、独語、仏語、中国語、コリア語のうち 8 単位以上を選択必修としている。 英語文化学科
は、英語を除く 1 外国語 8 単位を選択必修としている。
英語文化学科では、ドリル的要素を含む基礎教育の部分の学科必修単位数が 20 単位と比較
的多く、学科選択必修を加えると 48 単位となり、自由選択単位は 64 単位以上である。学科の
性格上、語学的スキルを向上させる科目群を基礎科目として必修化しているが、基本的には、
25
第3章 教育内容・方法(学士課程)文学部
学生の知的関心の自主的な展開を尊重するという主旨のもとに、必修の縛りを軽減する方向を
とることが、学科としての基本方針である。一方、4 つの系(文学、英語学、コミュニケーシ
ョン、総合研究)についての関心を等しく育成するために、講義科目など、それぞれの系から
一定の単位数を選択必修する体制をとり、4 年次における系の選択の基礎となる総合的な教養
を身につけさせるための配慮をしている。
日本語・日本文学科では、卒業必要単位総数 124 単位のうち、必修 10 単位(宗教 4 単位、日
本語・日本文学科専門科目 6 単位)、選択必修 20 単位(外国語 8 単位、日本語・日本文学科専
門科目 12 単位)、専門科目の選択単位 10 単位であり、残りの 84 単位が自由選択単位となって
いる。3 学科の中で自由選択単位数が最も多いが、これは、オープン・カリキュラム制度の精
神を活かし、多様な関心を育てるという学科の方針を反映している。
文化総合学科の必修単位は宗教科目 4 単位と「卒業研究」4 単位のみであるが、学科選択必
修単位が 36 単位以上に設定されている。学科選択必修 36 単位のうちの 20 単位の内訳をみる
と、4 系列(異文化コミュニケーション、社会と制度、歴史、思想と宗教)の指定入門科目の
中から各 4 単位(計 16 単位)を選択履修、さらに任意の系列から 4 単位を選択履修すること
を義務付けている。このことによって 4 系列の有機的連関性を学生に理解させると同時に、
「全
人的教育」という本学の教育理念の具現化を目指している。結果として、自由選択単位は 72 単
位以上となっている。
文学部全体としてみれば、卒業必要単位 124 単位以上に対して自由選択単位は、英語文化学
科では 64 単位以上(51.6%)、日本語・日本文化学科では 84 単位以上(67.7%)、文化総合
学科では 72 単位以上(58.1%)であり自由選択単位の比率が高く、学生の履修科目の選択を広
くしている。
2.カリキュラムにおける高・大の接続
⑴ 学生が後期中等教育から高等教育へ円滑に移行するために必要な導入教育の実施状況
英語文化学科では、後期中等教育と大学 3、4 年次の専門教育を橋渡しする導入的なカリキュ
ラムとして、1、2 年次に配置される学科基礎科目及び基礎演習を位置づけている。学科基礎科
目を通して専門教育で要求される英語力の養成を図り、基礎演習を通して 4 つの系の専門分野
についての基本的な知識や教養の習得を可能にしている。
日本語・日本文学科では、基礎的科目である「講義Ⅰ」(A 群に属す、説明済み)が高校卒
業から大学の授業に移っていく際の導入の役割を果たしている。「ゆとり」課程で授業を受け
てきた学生の学力に応じて、きめ細かい対応に努めている。
文化総合学科では、後期中等教育と大学3、4 年次の専門教育を橋渡しするカリキュラムとし
て、1年次の「基礎演習」「入門科目」を位置づけており、大学の高等教育への一層円滑な移行
のために、導入教育の充実を図っている。特に「基礎演習」では小人数でのきめ細かな教育を
実施しており、例えば新入生を対象としてレポートの書き方の指導を行っている。
学部としては、各学科の基礎的科目の一環として、3 学科の全ての新入生を対象に図書館で
の文献検索の仕方を指導していることも、導入教育への取り組みとして特記しておきたい。
26
第3章 教育内容・方法(学士課程)文学部
3.カリキュラムと国家試験
⑴ 国家試験につながりのあるカリキュラムを持つ学部・学科における、カリキュラム編成の適切性
文学部は該当しない。
4.授業形態と単位の関係
⑴ 各授業科目の特徴・内容や履修形態との関係における、その各々の授業科目の単位計算方
法の妥当性
本学の単位の算定基準は、大学設置基準第 21 条に準拠した学則第 17 条により、「講義及び
演習については、15 時間から 30 時間の授業をもって 1 単位」、「実験、実習、実技について
は、30 時間から 45 時間の授業をもって 1 単位」と規定されている。文学部共通の必修及び選
択必修科目である宗教・外国語科目は全て 2 単位に設定され、卒業のための必要単位は 3 学科
とも 124 単位以上として共通している。3 学科の専門科目では 2 単位と 4 単位のものが大多数
を占めるが、英語文化学科の「Voice & Articulation」「Listening」は「実験、実習、実技」
の科目として 1 単位となっており、日本語・日本文学科の「日本語学演習ⅡA・B」「日本文学
演習ⅡA∼H」「漢文学演習Ⅱ」については、3、4 年次における継続履修を可としているため 8
単位の表記となっている。
5.単位互換、単位認定等
⑴ 国内外の大学等での学修の単位認定や入学前の既修得単位認定の適切性(大学設置基準第
28 条第 2 項、第 29 条)
本学では、大学設置基準第 28 条、29 条及び 30 条に準拠した本学学則第 19 条の 2「他の大学
又は短期大学における授業科目の履修等」及び第 19 条の 3「大学以外の教育施設等における学
修」、学則 19 条の 4「入学前の既修得単位等の認定」に基づき、教育上有益と認める場合、本
学以外の教育施設等での学修や入学前の既修得単位を、
合わせて 60 単位を超えない範囲で本学
において修得した単位として認めることを定めている。
本学が単位認定を行う大学以外の教育施設、課程、講習等は以下のとおりである。
① 大学専攻科
② 高等専門学校(大学において大学教育に相当する水準を有すると認めたもの)
③ 専修学校専門課程(修業年限が 2 年以上のもの)(大学において大学教育に相当する水
準を有すると認めたもの)
④ 教育職員免許法に基づく認定講習・公開講座(大学において大学教育に相当する水準を
有すると認めたもの)
⑤ 社会教育主事講習(大学において大学教育に相当する水準を有すると認めたもの)
⑥ 司書・司書補講習
⑦ 司書教諭講習(大学において大学教育に相当する水準を有すると認めたもの)
海外留学協定校に関しては、現在、学則 19 条の 2 に則り、マリアン大学(米)、セント・エ
リザベス大学(米)、エマニュエル大学(米)、ベネディクティン大学(米)、オーストラリ
アカトリック大学(豪)、グリフィス大学(豪)、韓国カトリック大学(韓国)、明知大学(韓
国)、輔仁大学(台湾)にて修得した単位を本学において修得した単位として認定している。
これまで海外協定校で修得した科目は文学部課程表の相当する科目への単位認定を行ってき
たが、2008 年度より文学部課程表にない科目の単位認定のために、新たに協定校修得単位数の
27
第3章 教育内容・方法(学士課程)文学部
枠を学科別に設定した。英語文化学科と文化総合学科は 12 単位まで、日本語・日本文学科は他
学部科目と合わせて 12 単位までを認定する。(「学生便覧」65∼66 頁 別表第 7-1∼7-3 参照)
また、学則 19 条の 3 に則り、海外単位認定指定校の語学センター等(オーストラリアとニュ
ージーランド)での短期語学留学による学修を単位認定している。これまでは短期語学留学の
単位は、英語文化学科では「学科専門科目」の「海外研修英語」、日本語・日本文学科と文化
総合学科では「外国語科目」内の英語科目への認定を行ってきたが、2008 年度より新たに単位
認定のための科目として「外国語科目」に「海外語学研修 A」「海外語学研修 B」「海外語学研
修 C」を新設した。(「学生便覧」88 頁参照)
文学部における 2007 年度の単位認定の状況は大学基礎データ(表 5)のとおりであるが、そ
の内訳は次の表 3-2 のとおりである。
表 3-2 入学前の既修得単位及び海外協定校留学等での学修の単位認定状況
海外協定校
入学前の既修得単位
海外協定校留学の単位
短期語学研修の単位
認定単位数
認定単位数
認定単位数
学
科
認定
認定
認定
者数
専門
科目
専門
以外
平均
者数
専門
科目
専門
以外
平均
者数
専門
科目
専門
以外
平均
英語文化学科
0
0
0
0.0
5
39
58
19.4
6
12
0
2.0
日本語・日本文学科
0
0
0
0.0
0
0
0
0.0
0
0
0
0.0
文化総合学科
0
0
0
0.0
2
16
7
11.5
0
0
0
0.0
計
0
0
0
0.0
7
55
65
17.1
6
12
0
2.0
6.開設授業科目における専・兼比率等
⑴ 全授業科目中、専任教員が担当する授業科目とその割合
2008 年度における文学部授業科目の専・兼比率は、大学基礎データ(表 3)のとおりである。
「宗教科目・外国語科目」の専・兼比率は前期 7.8、後期 8.3 であるが、これを科目区分ごと
に 2005 年度調査と比較すると、
「宗教科目」では、前期は 2005 年度 100.0 から 2008 年度 50.0、
後期は 2005 年度 100.0 から 2008 年度 50.0 と低下している。これは「キリスト教学」をシスタ
ーである理事長(前学長)が兼任担当していることによる。「外国語科目」では、前期は 2005
年度 10.0 から 2008 年度 5.0、
後期は 2005 年度 10.0 から 2008 年度 5.4 とさらに低下している。
「学科専門科目」に関する専・兼比率は、英語文化学科では、前期は 2005 年度 52.8 から 2008
年度 55.5、後期は 2005 年度 54.1 から 2008 年度 55.1 と若干上昇している。日本語・日本文学
科では、
前期は 2005 年度 69.8 から 2008 年度 68.2 、
後期は 2005 年度 71.4 から 2008 年度 69.2
と、ほぼ変わりない。文化総合学科では、前期は 2005 年度 55.4 から 2008 年度 50.6、後期は
2005 年度 56.9 から 2008 年度 50.3 と低下している。
「教職科目」については、前期は 2005 年度 85.7 から 2008 年度 80.0、後期は 2005 年度 76.9
から 2008 年度 80.0 と、ほぼ変わりはない。
⑵ 兼任教員等の教育課程への関与の状況
2008 年度の文学部における兼任教員数は、人間生活学部からの兼担教員 2 名、学外からの兼
任教員 121 名を合わせて、計 123 名である。兼任教員の数は、外国語科目においてとりわけ多
い。英語、ドイツ語、フランス語、中国語、コリア語という外国語のメニューの中で、現在、
28
第3章 教育内容・方法(学士課程)文学部
文学部の専任教員が関与しているのは、英語のみである。学科別にみると、兼任教員の占める
割合が高いのは、文化総合学科と英語文化学科であるが、文化総合学科が開設する専門科目に
ついては、文化総合学科の学生のみならず、他学科の学生の受講率も比較的に高く、学科横断
的な受講、学際的な学修を奨励する文学部の基本姿勢からしても、兼任教員の関与によって科
目メニューの多彩さを維持している。英語文化学科では、兼任教員が担当しているのは、主と
して講義科目と講読科目であるが、特に講義科目では、カリキュラムを構成する上で必要な内
容の講義を担当するに相応しい兼任教員を人選している。
7.社会人学生、外国人留学生等への教育上の配慮
⑴ 社会人学生、外国人留学生、帰国生徒に対する教育課程編成上、教育指導上の配慮
社会人学生の受け入れに関しては、「第 4 章 学生の受入れ」の記述にあるように、英語文
化学科と文化総合学科が社会人入学試験を別途実施し、入試科目数を軽減することにより、入
学の垣根を低くしている。また、社会人学生が他大学・短大に在籍したことがある場合、既修
得単位のうちの一部(60 単位以下)を文学部に開設される科目に読み替えている。
外国人留学生は、2008 年度については、韓国と台湾にある本学協定校から、それぞれ 4 名と
2 名の留学生を受け入れている。留学生は一定の日本語運用能力をすでに備えているが、留学
生が受講する科目の担当者には、レジュメの作成や教材の取り扱いなど、留学生の日本語能力
に合わせた授業展開上の適正な配慮を求めている。
協定校留学から帰国する学生への配慮としては、留学先で修得した単位の一部を本学が開設
する科目に適宜読み替えており、本学が開設していない科目を留学先で修得した場合には、こ
れらを協定校修得単位として認定し、文学部の卒業所要単位に組み入れている。また、海外協
定校、単位認定指定校への短期留学から帰国する学生については、留学先における修得単位の
一部を文学部の外国語科目(英語、ドイツ語、フランス語、中国語、コリア語、海外語学研修
A∼C)に適宜読み替えている。
さらに、年度の後期から次年度の前期にかけて海外協定校へ留学する学生に関しては、履修
中の通年科目の次年度への継続的な履修を可能にしている。また、4 年次の後期に協定校留学
を終えて帰国する学生については、必要に応じ、卒業研究関連科目(通年科目)を後期にまと
めて開講するなどの配慮を行っている。
第2 教育方法等
1.教育効果の測定
⑴ 教育上の効果を測定するための方法の有効性
各教員の授業においては、教育上の効果を測定するための方法として、それぞれの科目の特
性に応じて、課題、小テスト、筆記試験、レポート等を行っている。また、「授業改善のため
のアンケート」を各学期末に実施し、個々の授業内容、授業の進め方、授業の環境、学生自身、
総合的判断についての学生の評価を分析することにより、
教育上の効果を測定している。
なお、
英語文化学科では、学科基礎科目のプログラムの一環として、1、2 年次学生を対象に TOEFL-ITP
を計 3 回実施し、各自の学修の成果を確認させ、全学生の点数データを学科として把握・管理
し、教育上の成果の現状を測定しつつ、より効果的な教育方法について検討するための資料と
している。
29
第3章 教育内容・方法(学士課程)文学部
⑵ 卒業生の進路状況
2005 年度、2006 年度、2007 年度の文学部学生の進路状況を学科別に見ると、それぞれの年
の 5 月 1 日現在で次のとおりである。
表 3-3 就職者内訳(分子は決定者数、分母は希望者総数)
(2005 年度)
内訳
卒業者数
学科
就 職
進 学
その他
教員
公務員
一般企業
計
英語文化学科
87
3/ 3
5/ 5
0/ 1
77/ 77
82/ 83
1
日本語・日本文学科
90
3/ 3
6/ 6
5/ 5
63/ 68
74/ 79
8
文化総合学科
82
3/ 5
0/ 1
6/ 6
59/ 63
65/ 70
7
計
259
9/11
11/12
11/12
199/208
221/232
16
教員
公務員
一般企業
計
(2006 年度)
内訳
卒業者数
学科
就 職
進 学
その他
英語文化学科
83
2/ 3
1/ 4
3/ 5
62/ 65
66/ 73
7
日本語・日本文学科
80
3/ 3
3/ 5
1/ 1
62/ 65
66/ 71
6
文化総合学科
109
3/ 4
0/ 2
2/ 5
88/ 92
90/ 99
6
計
272
8/10
4/11
6/11
212/222
222/243
19
卒業者数
進 学
教員
公務員
一般企業
計
(2007 年度)
内訳
学科
就 職
その他
英語文化学科
80
5/ 5
2/ 2
0/0
67/ 69
69/ 71
4
日本語・日本文学科
94
7/ 8
5/ 7
1/2
67/ 70
73/ 79
7
文化総合学科
91
1/ 2
0/ 1
3/4
74/ 77
77/ 82
7
計
265
13/15
7/10
4/6
208/216
219/232
18
表 3-4 業種別就職状況
(2005 年度)
情報通信
不動産
飲食宿泊
医療
社会福祉
学校教育
その他教育
法務
学術研究
宗教
国家公務
地方公務
12
6 12
8 11
1
1
0
0
8
5
3
0
0
0
11
0
0
日本語・
日本文学科
74 2
4
0
4
2
5 14
7
2
0
1
0
0
11
4
2
0
0
0
11
0
5
文化総合学科 65 2
5
0
1
4
3
8
5
1
2
2
0
3
3
1
0
0
0
10
0
6
13
0
5
18 14 35 23 18
2
4
2
0
22 12
6
0
0
0
32
0
11
医療・ 教育支
福祉業 援業
サービス業
公務
その他
保険
金融
小売
卸売
卸・
金融業
小売業
複合サービス
電気ガス
0
運輸
製造
0
建設
4
分類
就職決定数
英語文化学科 82 0
業種別
学科
計
221
4
9
30
第3章 教育内容・方法(学士課程)文学部
(2006 年度)
情報通信
卸売
小売
不動産
飲食宿泊
医療
社会福祉
学校教育
その他教育
法務
学術研究
宗教
その他
国家公務
地方公務
1
8
11
6
2
2
0
0
1
0
0
0
0
0
8
1
2
66 2
10
0
1
2
1
14
7
4
0
2
3
0
8
1
1
0
0
0
9
0
1
文化総合学科 90 1
10
0
5
5
0
14
9 17
1
3
0
0
0
2
2
0
0
0
19
1
1
29
1
9
17
2
36 27 27
3
7
3
0
9
3
3
0
0
0
36
2
4
不動産
飲食宿泊
医療
社会福祉
学校教育
その他教育
法務
学術研究
宗教
国家公務
地方公務
0
4
1
0
5
2
4
0
2
0
15
0
0
6 10
1
4
1
0
6
5
1
0
0
0
9
0
1
保険
金融
卸・
金融業
小売業
医療・ 教育支
福祉業 援業
複合サービス
電気ガス
10
運輸
製造
3
分類
建設
1
就職決定数
9
業種別
サービス業
公務
学科
英語文化学科 66 1
日本語・
日本文学科
計
222
4
(2007 年度)
電気ガス
情報通信
運輸
卸売
小売
金融
保険
0
8
4
4
7
4
5
73 1
0
2
8
1
3
14
文化総合学科 77 1
3
0
14
2
2
13 10
7
1
2
1
0
3
2
3
0
0
0
10
0
3
6
2
30
7
9
34 20 22
2
10
3
0
14
9
8
0
2
0
34
0
4
サービス業
公務
その他
医療・ 教育支
福祉業 援業
複合サービス
製造
3
建設
英語文化学科 69 1
日本語・
日本文学科
分類
就職決定数
卸・
金融業
小売業
業種別
学科
計
219
3
2.成績評価法
⑴ 厳格な成績評価を行う仕組みと成績評価法、成績評価基準の適切性
授業科目の成績は、学則第 19 条により、試験またはレポートによって評価することが原則と
されている。実際の成績評価に当っては、当該科目のねらいや形態(講義、演習)等に応じ、
試験またはレポートの結果に加え、出席状況、受講態度、小テストなどが考慮される。
成績評価は、優(100∼80 点)、良(79∼70 点)、可(69∼60 点)、不可(59 点以下)とし、
優・良・可を合格としている。病気、公的交通機関の遅延等やむを得ない理由により、試験を受
けることができなかった場合には、追試験を実施している。正規の理由以外についての追試験
は授業担当教員の承諾が得られた場合のみ実施されており、この場合の試験に合格したときの
成績評価は可(60 点)としている。
成績評価は、シラバスに明記した成績評価基準にしたがって行われている。また、全学年で
成績確定前に学生に成績を開示し、学生からの異議申し立てを受け付けている。学生が所定の
用紙により異議・確認事項を申し出た場合、
担当教員は成績記入や評価についての確認を行い、
学生に書面で回答する。本学では、このように成績評価について学生の了解、納得を確保する
ことによって厳正に成績評価・判定が行われるよう努めている(前期は全学年が 9 月、後期は
2007 年度まで 1∼3 年次が 4 月、4 年次が 3 月の卒業判定教授会前に実施、2008 年度後期から
は全学年が 3 月に実施)。
31
第3章 教育内容・方法(学士課程)文学部
⑵ 履修科目登録の上限設定等、単位の実質化を図るための措置とその運用の適切性
履修科目登録の上限設定については、「学生便覧」に「授業科目の履修要項 8 の(2)履修登
録単位数の上限」として明記されている(「学生便覧」111 頁)。2006 年度入学生までは各学
年 54 単位を上限としていたが、2007 年度入学生からは、自学自習の時間も考慮し、余裕を持
って学修に努めることを求めて、上限単位を 48 単位(英語文化学科 1 年次のみ 44 単位)に下
げた。
⑶ 各年次および卒業時の学生の質を検証・確保するための方途の適切性
本学はクラス担任制を採用している。学業不振者、学修意欲のない者、学業を続けるのに問
題を有する者に対しては、クラス担任のみならず、ゼミ担当者や学科必修科目担当者を通じて
個別的に対応し指導している。小規模大学であることのメリットとして学生の状況把握がしや
すく、きめ細かな学生の指導ができている。またシラバス等で明示した評価基準に基づいて適
切な成績評価・卒業判定を行うことにより、学生の卒業時における質の確保を図ってきた。さ
らに本学では、保証人が学生の就学状況、単位修得状況を把握できるように、年度ごとに保証
人宛に学生の成績表を送付している。
こうしたきめ細かい指導を行ってきたにもかかわらず、近年、本学では留年者が増加傾向に
あり、
その改善のために 2007 年度以降入学生からは一定の単位数以上の修得を進級条件とする
「進級制度」を導入した。これにより、従前より早い時期から学業不振者への指導が可能にな
ることが期待できる。すでに 2008 年度から、2 年次の学業不振者に個別指導を行っている。
各学科の進級に必要な単位数は、以下の表に示すとおりである。なお、進級の判定は 2008
年度末から行われる。
表 3-5 進級に必要な単位数(2007 年度入学生から適用)
英語文化学科
日本語・日本文学科
文化総合学科
2 年次終了までに 1 年次に開講
2 年次終了までに 56 単位以上
2 年次終了までに 40 単位以上
されている学科基礎科目(必修) を取得しておかなければならな を取得しておかなければならな
10 単位を含み、30 単位以上を取 い。
い。
得しておかなければならない。
(「学生便覧」114 頁)
3.履修指導
⑴ 学生に対する履修指導の適切性
英語文化学科では、新入生、在学生とも、4 月のオリエンテーション期間の「学科指導」、
「担任指導」において時間をかけた詳しい指導を実施している。さらに、履修届提出終了まで
の授業期間の1週間は、
毎日昼休み時間に、
学科専任教員 2 名から 3 名が履修相談室を開設し、
新入生のみならず全ての学年の学生に対してきめ細かな指導を行っている。その他、クラス担
任や学科教務委員は、学生の履修相談に常時対応している。
日本語文化学科では、在学生は年度初めのガイダンスで履修指導を丁寧に行っている。特に
新入生に対しては、オリエンテーション期間の「学科指導」においてクラス担任、教務部委員
が、学科カリキュラム、履修上の注意などを懇切に行っている。「学科指導」の時間を、新入
生が初めて学科の教員と対面する場として活用するため、全ての学科教員が集まり、どの教員
32
第3章 教育内容・方法(学士課程)文学部
が何を担当しているか等、それぞれの専門分野や自己紹介を行うことが恒例化している。カリ
キュラムについての理解のみならず、カリキュラムを支えている教員の顔や名前を覚えさせる
ことで、それぞれの学科科目への理解をより深めようという配慮である。履修登録や履修計画
については、学科指導の時間外においても、きめ細かな指導を心がけている。
文化総合学科では、学科指導及びオリエンテーション期間中のガイダンスにおいて履修モデ
ルを提示して、新入生や在学年生への履修指導を行っている。特に新入生対象の「学科指導」
においては専任教員が原則全員参加して、それぞれの担当科目の内容や授業の方向性を周知さ
せ、さらに新入生が「4 系列」のゼミを受講している在学生と談話する機会を作ることによっ
て、学生の目線から履修の相談をする場を設けている。また、新入生、在学生を問わず、履修
登録期間中は、昼休みの時間に専任教員が持ち回りで所定の場所に待機してガイダンス、履修
相談を実施している。
⑵ 留年者に対する教育上の措置の適切性
文学部の卒業留年者数は、2005 年度 23 名、2006 年度 32 名、2007 年度 30 名であり、学科別
の内訳は以下のとおりである。
表3-6 卒業留年者数(2005年度∼2007年度)
年度
2005年度
2006年度
学科
英語文化学科
3(1)
3(2)
日本語・日本文学科
10(3)
文化総合学科
10(3)
2007年度
8(2)
18(8)
11(2)
11(6)
11(5)
※( )内は2年以上留年の内数
本学はクラス担任制をとっているので、経済的な理由や心身の健康上の理由、その他の理由
で大学に来なくなった学生には、本人や保護者との連絡などを、教務課の協力を得ながら、必
要な場合には学生課や保健センターと連携をとりながら、担任が行っている。また、学生の履
修上のトラブルについての情報は、月例の学科会議において、教員同士が密に情報を交換して
いる。
英語文化学科の卒業留年者数は比較的に少ないが、卒業論文が未提出あるいは不合格になる
例については、担当の指導教員を通じて、克服すべき点を理解させ、欠けているところを補う
べく、きめ細かな指導を行っている。出席状況が悪く、全体に単位修得がかんばしくない学生
については、演習担当の教員を通じて適宜アドバイスを施している。日本語・日本文学科にお
いては、留年者が年々増える傾向にあることが危惧されるが、留年者が抱える問題はさまざま
であり、
本人や保護者と連絡をとりながら、
学科としてきめ細かに対応するべく心がけている。
文化総合学科では、1 年次から 4 年次まで演習が履修できるカリキュラムになっており、留年
者が履修する 2・3 年次演習や 4 年次の卒研演習の担当教員が、個別に相談にあたっている。出
欠状況の悪い学生については、演習担当の教員やクラス担任、学科主任が本人、場合によって
は保護者とも連絡をとり、相談・指導する体制をとっている。
なお、単位の取得がかんばしくないまま 4 年次に至る学生もおり、著しく整合性を欠いた履
修登録が続くケースがあるので、2007 年度入学生から進級制度を新たに設け、2 年次から 3 年
33
第3章 教育内容・方法(学士課程)文学部
次に上がる際に、3 学科とも独自の進級要件を設定している。
⑶ 科目等履修生、聴講生等に対する教育指導上の配慮の適切性
文学部の科目等履修生の数は、2005 年度では 8 名(通年 7 名、後期 1 名)、2006 年度では 7
名(通年 6 名、後期 1 名)、2007 年度では 5 名(通年 4 名、前期1名)であり、聴講生の数は、
2005 年度は 2 名(通年)、2006 年度は 0 名、2007 年度は 4 名(通年)である。いずれも、当
該科目の担当教員が履修・聴講の希望者と面談して、受講の目的を聴き、科目内容が目的と適
合することを確認した上で、受講に伴って必要となる情報を与え、受講を許可している。
4.教育改善への組織的な取り組み
⑴ 学生の学修の活性化と教員の教育指導方法の改善を促進するための組織的な取り組み(フ
ァカルティ・ディベロップメント(FD))およびその有効性
学生の学修の活性化のための取り組みとして、1)本学全体レベルでの対応、2)文学部独自
での対応、3)各学科レベルでの対応、に分けることができる。
1)本学全体レベルでの学修の活性化としては、以下のものが挙げられる。
① 学生の学修の活性化のために図書館が果たす役割は大きく、本学図書館では、新入生を対
象として毎年度オリエンテーションを実施し、OPAC(オンライン目録)の利用方法など、入
門的なガイダンスを行っている。さらに進んだ利用者教育として、在学生を対象に文献検索
のためのガイダンスを実施しており、現状では文学部の学生の参加は少ないものの、継続し
ていく方針である(「第 11 章 図書・電子媒体等」参照)。
② パソコン設置教室については、新校舎の建設によって、学生の利用機会は大きく改善され
ている。「情報処理」等の授業で使用されている時間帯を除いて、学生が自由に使用するこ
とが可能であり、レポートの作成、プレゼンテーションのための手元資料の作成など、ある
いは必要な情報を収集するために、多くの学生が利用している。
③ 教員の教育指導方法の改善を促進するための組織的な取り組みとしては、別項(「学生に
よる授業評価の活用状況」)にもあるとおり、毎年度前・後期に実施する「授業改善のため
のアンケート」の結果を集計し、学生の自由記述も含め、全ての教員に個別に周知させてい
るとともに、これを受けて各自の授業の改善策についての所見を提出させている。さらに、
英語文化学科と日本語・日本文学科は、学科独自に授業評価アンケートを実施し、これを学
科カリキュラムの運営の改善や教育指導方法の改善のために活用している。
また、毎年度発行している『教員の教育・研究活動』には、「研究活動」「学会等および
社会における主な活動」の他に、「教育活動」の章を設け、「教育内容・方法の工夫」を記
載する欄を設けている。さらに、本年度、FD の義務化を受けて、FD 活動の具体的な立案と実
施に取り組んでいくための FD 委員会を学部に設置して、
関係規程などその整備を進めている
ところである。
2)学生の学修の活性化のために行っている文学部としての組織的な取り組みは、以下のとおり
である。
① 2000 年度からオープン・カリキュラム制度を採用し、3 学科の専門科目の大半を他学科学
生にも開放し、希望する学生については他学科で卒業研究を履修する道も用意している。こ
の制度は、学修の活性化のための取り組みであるばかりでなく、各学科のカリキュラムや開
34
第3章 教育内容・方法(学士課程)文学部
設科目の相互的な連携を教員や学生が強く意識し、学科を超えて広く文学部カリキュラムに
おける科目の位置づけを省みるための契機となっており、各教員の授業改善のための取り組
みとしての意味も併せ持っている。
② 同じく 2000 年度から文学部が開講している「テーマ研究」は、オープン・カリキュラム制
度の精神を体現する科目であり、3 学科の教員が共通のテーマのもとで共同で担当している。
通常 3 名の教員が常時講義に出席し互いの授業を参観することが義務付けられ、講義の前後
には、
講義内容の調整はもとより教育指導の方法についても相互批評する機会を設けている。
「テーマ研究」の運営については、文学部内に「テーマ研究委員会」を設置して、次年度の
テーマの設定や担当教員の調整などに当たっている。
③ 学期初めには、新入生のみならず在学生に対しても、専任教員が直接ガイダンスを行い、
履修登録期間には学科毎に「履修相談室」を設け、学生の学修に便宜を図っている。また、
教員と学生の交流を促すことが学修の活性化につながるとの考えに立ち、オフィスアワーを
制度化し、各教員の研究室前に週単位の時間割を掲示して、学生の相談に応じることができ
る時間帯を明示している。相談の多くは授業に関すること、履修に関すること、卒業研究に
関することである。教員と学生の交流の促進という意味では、本学が採用しているクラス担
任制度も一定の働きをしている。履修上の問題を抱える学生の多くは、クラス担任との面談
を通して、しかるべき解決策や対処法を考えることになる。
④ 現在、文学部では、学際的なテーマに積極的な関心を寄せる学生が増えていく現状を踏ま
え、オープン・カリキュラム制度をさらに発展させるための検討を行うべく、学部内に作業
部会「ワーキング・グループ」を設置した。具体的には、学際的なテーマのもとに学科横断
的なプログラムを複数立ち上げ、学生の卒業研究の指導も含め、3 学科の専任教員が共同で
各プログラムの運営に当たる方向で検討が進んでいる。
3)学修の活性化、教育指導改善のための各学科の取り組みについては、以下のとおりである。
① 英語文化学科では、TOEFL−ITP を 1 年次に 2 回、2 年次に 1 回行い(1 回につき 1000 円の
補助)、全学生に受けさせ、個々の学生に自らの達成度を確認させることによって、学修の
活性化を図るとともに、そのデータを学科が管理し、授業の進め方や力点の置き方など教育
指導方法の改善のために活用している。また、学科基礎科目については、当プログラムを開
設した際、2003、4 年度に授業評価アンケートを独自に実施し、その結果を踏まえて、プロ
グラムそのものの改善や授業展開の改善を積み重ねている。学科基礎科目の運営に当たって
は、定期的に担当者ミーティングを開き、出席不良者のチェック、各クラスの進度の調整や
統一試験の実施や授業の改善に取り組んでいる。
② 日本語・日本文学科では、4 年生を対象として、卒業時に、独自のアンケートを毎年度実
施しており、その結果を、学科カリキュラムの運用の仕方や授業の改善のために活用してい
る。また、学生の学修の活性化のための取り組みとして、優れた卒業研究については、各年
度に発表会を開いて学生に紹介し、特に優れたものについては、学科研究誌(『藤女子大学
国文学雑誌』)に掲載して成果を広く公表して、卒業研究の活性化を図っている。同様の取
り組みとしては、教員の教育・研究に関する短信や学生の優れたレポート等を掲載する学会
報(『藤女子大学日本語・日本文学会会報』)を年 2 回発行していること、専任教員が発表
する公開の研究発表会を年 1 回開催していること、学会誌『藤女子大学国文学雑誌』を年 2
回発行していることが、挙げられる。集中講義で招いた講師による学会主催の公開講演会(年
35
第3章 教育内容・方法(学士課程)文学部
1 回開催)、大学祭における学会主催の公開シンポジウムや講演会(年 1 回開催、学科研究
誌への掲載も含む)なども、勉学・研究の活性化を図る取り組みであると同時に、社会に向
けた広報にも繋がっている。
③ 文化総合学科では、教育改善のための取り組みとして、歴史系列の教員が相互に授業を参
観しあい、各自の授業の改善に役立てている。また、学修の活性化のための取り組みとして、
『卒業論文紀要』を作成し、全員の要旨(2,000 字)を掲載、優秀と評価された各系列 2 名(計
8 名)の学生の卒業論文を全文掲載することで、卒業研究の活性化を図っている。さらに、
学科独自の TOEFL 対策として、留学希望者に対して継続的な指導を組織的に行い、成果を上
げている。大学祭では、学生だけでなく高校生や地域住民を対象としたシンポジウムを開催
し、地域社会に学科の活動を公開することを通じて、高校生や地域のニーズを把握し、それ
を学生の指導に役立てる努力を行っている。新入生ガイダンスの最終日には、「基礎演習」
ごとにブースを設け、在学生も参加し、カリキュラムの説明や 4 年間の履修の仕方と時間割
作成の指導を行っている。
⑵ シラバスの作成と活用状況
学生への履修指導の一環として、「学生便覧」に加えて「履修ガイド」を作成し、全学年の
学生に配布している。「履修ガイド」は学部別に発行されているが、シラバスに加え、「文学
部カリキュラムの特色」「授業科目の履修要項」「履修の手引き」「教育課程表」が記載され
ている(2008 年度版では 5∼56 頁)。「履修の手引き」では、各学科のカリキュラムの概要、
科目の区分と履修上の留意点、系(英語文化学科)や領域・系列(文化総合学科)の紹介、卒
業研究の履修方法について説明した上で、4 年間の履修モデルを掲載し、学生の学修の活性化
の一助としている。
大学 4 年間の履修計画の参考になるよう、以下の構成になっている
・文学部学科課程
文学部のカリキュラムの特色
1)履修の手引き(宗教・外国語科目、学科別専門科目、教職科目)
2)教育課程表
3)シラバス(宗教・外国語科目、学科別専門科目、テーマ研究、教職科目)
・図書館情報学課程
・日本語教員養成課程
「文学部のカリキュラムの特色」では、文学部がオープン・カリキュラム制度を採用してお
り、3 学科とも学科必修単位数が低く設定されていること、どの学科に所属していても、3 学科
のほとんどの科目が履修可能であること、加えて、3 学科教員が共同で開講する「テーマ研究」
が学科・学問横断的研究への導入となること、最終的には所属学科以外の教員の指導を受けて
卒業研究の作成が可能であることなどが紹介されている。
「履修の手引き」では学部で共通に開設されている「宗教・外国語科目」についての説明の
後で、3 学科それぞれの専門分野についての考え方や卒業研究に至るまでの履修方法が履修モ
デルとともに分かりやすく説明されている。「教育課程表」では、全ての開講科目を一覧表に
して、文学部カリキュラムの全体像が明示されている。
「シラバス」は、作成要項を示し記述内容及び記述形式について統一を図っている。授業科
36
第3章 教育内容・方法(学士課程)文学部
目担当者の授業意図・授業概要・授業計画等を履修登録前に学生に提示し、学生が修学計画を
たて、適切な履修登録ができるようにする目的で、「授業のねらい」「授業計画」「成績評価
の方法」「履修に当たっての注意」「教科書・参考書」の各項目が、科目名、科目担当者、単
位数、開講時期といったカリキュラム上の基礎情報に加えて記載され、科目ごとに 1 頁にまと
められている。
「シラバス」は 2005 年度から教員には Web 上での作成を依頼しており、2008 年度では全教
員の 90%強が Web を利用して作成している。また、2004 年度から「シラバス」は Web 上に公開
され、学生は次年度の「シラバス」を 3 月末に閲覧することが可能となった。同じく 2004 年度
からは学生の Web 上での履修登録も始まっている。
また、2007 年度からは本学図書館と連携しながら、「シラバス」に記載された「参考書」を
学生が図書館で利用できるように整備を図っている。
⑶ 学生による授業評価の活用状況
本学における授業改善のための取り組みは、2000 年度に学生による授業評価アンケートを行
うことにより始まった。2000 年度のアンケートは、文学部においては専任教員のみを対象とし、
教員が希望する 1 科目について実施し、結果について自己点検・評価を行った。その後、アン
ケート形式や実施方法などについての見直しを重ねながら、2004 年度には非常勤講師も含めた
全教員を対象とする授業評価が始まった。2006 年度前期には授業評価の活用のあり方について
文学部で議論があり、その議論を踏まえて 2006 年度後期からは、「授業改善のためのアンケー
ト」と名称を改め、授業改善に直に繋がるアンケート形式や実施方法を再検討し、授業評価を
実施した。2006 年度の前期の実施率が低いのは、こうした経緯を反映している。
2007 年度からは、アンケートを授業改善のためにさらに有効なものとするために、科目の授
業形態に合わせて、講義タイプ、演習タイプ、外国語タイプ、卒業研究演習タイプの 4 種類の
アンケートを作成し、それぞれに適応する評価項目を設けている。内容は、学生自身について
の評価、授業の内容・進め方・環境についての評価、総合的評価に分かれる。
「授業改善のためのアンケート」は、専任教員及び非常勤講師が担当する受講者 10 名以上の
全ての科目を対象として実施しているが、アンケートを実施した科目数は、以下の表 3-7 にあ
るとおりである。実施率は、2006 年度後期については専任教員 77.9%(67/86)、非常勤講師
90.9%(130/143)であったが、2007 年度の前期については専任教員 96.9%(31/32)、非常勤講
師 88.5%(23/26)、後期については専任教員 97.8%(179/183)、非常勤講師 94.8%(146/154)
と向上している。通年の実施率は、専任教員 97.7%(210/215)、非常勤講師 93.9%(169/180)、
通年の全体の実施率は 95.9%(379/395)であった。
表 3-7 「授業改善のためのアンケート」を実施した科目数(文学部)
(2006 年度)
区
分
専任教員
非常勤講師
計
実施予定
科目数
実 施
科目数
実施予定
科目数
実 施
科目数
実施予定
科目数
実 施
科目数
実施率
前
期
16
3
23
20
39
23
59.0%
後
期
86
67
143
130
229
197
86.0%
37
第3章 教育内容・方法(学士課程)文学部
(2007 年度)
区
分
専任教員
非常勤講師
計
実施予定
科目数
実 施
科目数
実施予定
科目数
実 施
科目数
実施予定
科目数
実 施
科目数
実施率
前 講義タイプ
期 演習タイプ
20
20
21
18
41
38
92.7%
12
11
5
5
17
16
94.1%
講義タイプ
61
61
81
78
142
139
97.9%
54
54
8
8
62
62
100.0%
45
44
65
60
110
104
94.5%
23
20
-
-
23
20
87.0%
後 演習タイプ
期 外国語タイプ
卒業研究演習タイプ
アンケートの結果は、1)評価対象科目に対する設問ごとの評価平均値、2)総合的に判断し
て満足度が高い群の回答分布、3)総合的に判断して満足度が低い群の回答分布、4)学生自身
についての評価、授業の内容・進め方についての評価の設問群のレーダーチャート、5)評価対
象科目に対する設問別評価構成グラフの 5 つにまとめられ、各教員にフィードバックされた。
各教員は、これらの集計や自由記述の内容を受けて、各自の授業の改善点について考え、アン
ケート結果に対する意見・感想、今後の授業に向けた改善策、アンケートの形式や実施方法に
ついての意見・提案を文書にして提出している。
また、学科による独自の授業評価アンケートの試みもあり、例えば英語文化学科では、学科
基礎科目のプログラムの開設時、2003 年度と 2004 年度に、当プログラムについての授業評価
アンケートを独自に実施し、プログラム運営を改善するための資料として活用した。日本語・
日本文学科では、卒業時の 4 年生を対象に授業評価のアンケートを行い、学科カリキュラムと
その運営を改善するための資料として活用している。
⑷ 卒業生に対し、在学時の教育内容・方法を評価させる仕組みの導入状況
文学部では、2005 年度の卒業生に対して、3 学科とも学科の特性に合わせて独自の設問項目
を設け、主として学部・学科カリキュラムについての評価アンケートを実施した。その結果は
各学科において集計され、カリキュラムや授業展開の改善についての検討の有益な資料となっ
た。また、日本語・日本文学科は、毎年度、継続的に、卒業生に対する評価アンケートを独自
に行っている。2007 年度の卒業生に対しては、大学として満足度調査を行い、集計結果を各学
科に配布し、今後の学部、学科のあり方についての検討材料としている。
5.授業形態と授業方法の関係
⑴ 授業形態と授業方法の適切性、妥当性とその教育指導上の有効性
英語文化学科の学科基礎科目では「読む・聞く・話す・書く」という 4 つの技能の効率的な
養成を目指し、学年を 4 クラスに分けて、小人数教育に取り組んでいる。通常 90 分 1 コマの授
業を 45 分 1 コマに分割して教育効果の向上に努め、教材も試験も学年で統一している。基礎科
目担当教員の打合せを定期的に行って、クラス相互の連携を図り、統一的な授業展開を実現し
ている。また、前後期でクラス担当教員を入れ替えて、より多くのネイティブ教員との交わり
を通して、学生の英語に対する対応力の育成に努めている。
日本語・日本文学科の学科専門科目の授業形態は、講義形式と演習形式とに二別される。講
38
第3章 教育内容・方法(学士課程)文学部
義形式の授業(「講義Ⅱ」「特殊講義」等)では、教員の設定した専門領域のテーマについて、
最新の研究動向や成果を学生に説明し、演習形式の授業(「演習Ⅰ」「演習Ⅱ」「卒業研究ゼ
ミⅠ・Ⅱ」)では、教員または学生自身が設定した課題について、学生が自主的に研究し発表
している。
文化総合学科では、4 つの各系列と多様な科目を相互に関連させ、さらに発展的に学修させ
るために、1 年次必修の「基礎演習」は学科の全教員が担当し、前期と後期では系列や担当者
の異なる基礎演習を履修しなければならないこととしている。また、各系列の「指定入門科目」
から必ず 4 単位ずつ履修することを義務づけている。さらに、2・3 年次の「演習」では専門化、
細分化した学問を総合的にとらえていくために、複数の「演習」を選択・履修できるようなカ
リキュラムを構成している。1年次必修の「基礎演習」、2・3 年次の「演習」そして 4 年次の
「卒研演習」と、1 年次から 4 年次までの一貫した「演習」体制を基軸にして、さまざまな分
野の学問を総合的に修得し、「卒業研究」(卒業論文)へと収斂させていくように、きめ細か
な教育指導体制をとっている。また、文化総合学科が「基礎演習」の授業の一環として行って
いる一泊二日の「宿泊研修」は、人間生活学部の花川キャンパスに隣接する本学園のセミナー
ハウスを活用しているが、これには、教育及び親睦上のオリエンテーションとしての意味ばか
りでなく、セミナーハウス近くのマリア院のお御堂見学等も含めて、入学時点から本学、本学
園の全体像を体感するための機会としての意味もある。
⑵ 多様なメディアを活用した授業の導入状況とその運用の適切性
ビデオや DVD を活用した授業の数、パワーポイントを使用する教員の数は増えてきている。
英語文化学科の学科基礎科目「Listening」の授業は CALL 教室を使用して行われている。3 学
科ともに、教材作りや学生用の手元資料の作成のために、教員がパソコンやその周辺機器を使
うことが通常化している。
⑶ 「遠隔授業」による授業科目を単位認定している大学・学部等における、そうした制度の
運用の適切性
文学部では実施していない。
第3 国内外との教育研究交流
1.国内外との教育研究交流
⑴ 国際化への対応と国際交流の推進に関する基本方針の適切性
本学では、それまでの海外協定校への留学生派遣を中心とした旧留学生委員会の業務を引き
継ぎ、教育、研究両面における国際交流を推進することを目的として、2002 年 4 月 1 日、国際
交流センターを発足させ、文学部校舎内に専用のスペースを構えた。学生に対しては、「国際
語としての英語を含めた語学能力をつける機会を与えること」に加え、「外からの視点で自分
の学問分野や自分自身を見ること」、「外のもの、異なったものに対して自分自身を開いてい
く機会を与えていくこと」が、国際交流センターの重要な業務である。
国際交流センターは、本学専任教員の中から学長が任命するセンター長と専任のセンター職
員により組織されるが、センターの運営に関しては、センター長、各学科から専任教員各 1 名、
教務部及び学生部委員会から委員各 1 名によって構成される運営委員会で審議される。構成員
39
第3章 教育内容・方法(学士課程)文学部
が学内の各学部・セクションから出向していることにより、月例の委員会では様々な立場や視
点から意見が述べられ、活発な議論が行われている。なお、センター職員は、これまでの 1 名
体制から契約職員の 1 名増員により 2 名体制となったが、海外協定校の数の拡大に伴い、学生
の海外派遣・受け入れ業務に加え、留学に対する学生の意識を高めるための啓発活動、留学に
関連して学内の単位認定制度の新設や授業料に関する規程の改訂等、業務が拡大する中で、さ
らに効率的な事務運営が求められている。
文学部は、学生の海外派遣や協定校留学生の受け入れについて、これまで中心的な役割を果
たしてきている。国際化に対応しうる人材の育成のため、文学部の教育体制を補完する組織と
して、国際交流センターが担うべき役割はきわめて大きい。
文学部は、2005 年度には米国協定校 3 校とオーストラリアの協定校1校に計 4 名の学生を派
遣し、2006 年度には米国、オーストラリア、台湾、韓国の協定校に計 4 名の文学部の学生を派
遣した。2007 年度にはベネディクティン大学(米国)が加わって留学協定校の数は計 9 校(4
カ国)に増えたが、計 10 名の文学部学生を派遣している。また、2003 年度から、本学は協定
校からの交換留学生の受け入れを開始したが、文学部は、2006 年度及び 2007 年度に、韓国カ
トリック大学、明知大学、輔仁大学から、毎年 6 名の留学生を受け入れている。
また、本学は、1 年間の協定校留学制度とは別に、オーストラリア、ニュージーランドの単
位認定指定校(7 大学)で開かれる短期研修プログラムに学生を送っているが、特に文学部で
は、学生が本学の夏期・春期休暇を利用して指定校における短期研修プログラムに参加するこ
とを奨励している。単位認定指定校における短期研修で学生が修得した単位の一部が、本学で
開設する外国語科目や「海外研修英語」として審議の上認定されるというシステムが定着し、
2006 年度には夏期休暇時に 6 名、春期休暇時に 8 名だった文学部の参加学生の数は、2007 年度
には夏期休暇時に 6 名、春期休暇時に 19 名に伸びている(文学部計 25 名、人間生活学部計 2
名)。
さらに、本学では、2004 年度から、6、7 月に「藤女子大学日本語集中コース」を開設してい
る。協定校を中心に海外から受講生を受け入れ、2006 年度には、韓国と台湾の協定校から 12
名の学生が受講、2007 年度には 10 名の学生が受講している。受講生は、文学部キャンパスで
開講される日本語授業のほか、日本文化体験プログラムとして茶道、華道、着物の着付けなど
のクラブ活動や、
人間生活学部食物栄養学科の協力による国際交流料理教室等に参加している。
また、集中コースの受講生には、文学部が開講する通常の講義への参加機会を提供したり、文
学部の専任教員が中心となって異文化コミュニケーションや日本語学、古典などの特別授業を
行っている。2007 年度には、集中コースの受講生 1 名につき、日本語教員養成課程を受講中の
文学部の学生を 1 名ずつ割り当て、学習や生活についての相談を受けるチューター制度を試験
的に開始した。このほか日本語教員養成課程を受講している学生は、ボランティアとして集中
コースの日本語授業に参加し、双方の学生にとって有意義な学びの機会としている。
なお、教員の交流については、研究奨励助成による海外研修に 2004 年度 1 名を派遣したほ
か、2007 年には協定校である韓国カトリック大学に交換教員として日本語・日本文学科教員 1
名を派遣している。また 2008 年には同じく協定校の韓国明知大学から研究員として日本語・日
本文学科に教員 1 名を受け入れるなど、着実に国際交流を進めている。
40
第3章 教育内容・方法(学士課程)文学部
【点検・評価】
第1 教育課程等
教育課程の体系性について、学士課程としても、専門教育的授業科目の編成という点におい
ても、大学設置基準第 19 条第 1 項あるいは学校教育法第 52 条に定める要件を満たしている。
建学のもととなっているキリスト教精神のカリキュラムへの直接の反映は、宗教科目を必修
としていることに現れているが、学部全体のカリキュラムは、その多様性と内容から、人間教
育の基本である教養教育として位置づけられることを目指している。こうした意図は、オープ
ン・カリキュラム制度によって他学科科目の履修の可能性を大きく広げていることの中で、あ
るいは「テーマ研究」において学科を横断する授業が展開されていることの中で、達成されて
いる、と評価できる。
一方、文学部教育課程の特色である科目メニューの豊富さや履修上の自由度が高いことから
生ずるデメリットとしては、履修登録上のトラブルやいわゆるマッピングの難しさがある。履
修登録上のトラブルについては、「履修ガイド」の中で各学科が履修モデルを明確に提示する
こと、学期初めに学科主催で行われている履修ガイダンスなどによって、できるかぎり回避す
る体勢を組んでいる。マッピングに困難を覚える学生に対する対応については、現状では、主
としてゼミの担当教員が個別に学生の相談に応じているが、2010 年度の実施を目標に現在検討
を進めている学科横断的なコースが複数新設されることになれば、将来的には大きく改善され
るものと考える。
学科専門科目については、入門から高度なものへと展開するように編成されている。特に、
より専門的な領域を扱う演習科目を小人数で授業を行うことでその成果を上げ、自己の意見、
主張を論理的に展開する力を身につけることを可能としている。
また、文学部では情報化社会に対応する教育を行っているが、単に情報処理のスキルの向上
を目指すのではなく、情報化がもたらすプラス・マイナスを認識し、情報化のプロセスに対し
て主体的に対応しうる能力を身につける教育、広義のメディア・リテラシー教育を目指し、適
正なカリキュラムの構成と運用に努めている。
各学科における点検・評価は、以下のとおりである。
英語文化学科については、1、2 年次に開講する学科基礎科目において、学年を 4 クラス(1
クラス 22 名前後)に分け、全クラスが同一教材を使い、1 コマ 45 分とする同一の時間割で授
業を展開し、統一試験を行っていることは、学科の組織的な取り組みとして評価できる。しか
し、学科に所属するネイティブ・スピーカーの専任教員 1 名と嘱託教員 2 名ではプログラムを
カバーするのに不足であり、非常勤講師の協力を得なければならないが、最低 3 科目を固定さ
れた時間割で教える非常勤講師の確保は容易ではない。科目担当者の配置については、一人が
担当する基礎科目のコマ数を軽減する方向で、早急な見直しが必要である。また、授業の統一
的展開のために細心の授業管理の態勢を構築、維持しなければならず、この課題を克服してき
たことは評価に値するが、そのために費やす労力は過重になりがちである。卒業関連科目につ
いて、現在は、卒業論文(英語)と卒業課題研究の 2 科目を選択必修としているが、全学生が十
分な達成感をもって卒業できるシステムを目指し、学生全員に卒論を書かせることを検討して
いる。ただ、英語による卒論を必修化するためには、1 年次から、アカデミック・パーパスに
41
第3章 教育内容・方法(学士課程)文学部
即した英語教育のプログラムをさらに充実させていく必要がある。加えて、3、4 年次における
専門教育を実質化するためには、1、2 年次の基礎教育の更なる充実は不可欠であり、専門教育
レベルの英文を読みこなすための英語力を早期に養成しなければならない。専任教員が中心と
なって担当する講読科目の更なる充実も必須である。また、系の選択、各種演習の選択は学生
の自由意思に委ねられているため、履修者の数的なバランスが失われる傾向にある。学生の意
思を尊重しつつ、科目間の人数バランスを確保する工夫が必要である。また、講義科目の中に
は全学年に開放されているものが多く、これらを入門的なものと専門的なものに区別し、開講
学年を指定する方向で検討している。
日本語・日本学科については、学科専門科目の基幹領域のうちの「講義Ⅰ」「演習Ⅰ」「演
習Ⅱ」及び「卒業研究ゼミ」「卒業研究」が、学科の教育目標の実現のためのカリキュラムの
柱となっている。日本語・日本文学科の基幹領域科目のうちの「講義Ⅱ」は、より専門性の高
い講義として開設されているが、現在学生の自由で主体的な選択を重視し、全学年に開放する
形態をとっているので、現状においては 1 年次学生の履修も少なくなく、これらの科目の開講
学年を指定する必要性について、検討中である。日本語・日本文学科の学科専門科目の配置は、
学部・学科の理念・目的や学校教育法第 52 条、大学設置基準第 19 条との関連においては、お
おむね妥当といえるが、その運用面においては、小人数での授業を主旨とする演習科目の中に
は、履修生の数が多すぎるクラスもあり、演習科目における小人数教育が、必ずしも徹底して
いるとはいえない現状である。演習科目の小人数制を徹底するためには、履修者が多い場合に
は人数制限をするか、複数のクラスに分割する等の処置が必要であり、この件についても検討
をしている。
文化総合学科については、学生の学修意欲は高く、「人間と社会を総合的な文化の学として
学ぶ」という学科設立の意図は達成されつつあるが、その教育内容や履修指導のあり方につい
て検討、改善を重ねる必要がある。1 年次の「基礎演習」については、学修指導においてそれ
が果たす意味は大きいとの考えに立って、必修科目としてこれを位置づけ、専任教員が同一時
間帯に一斉に開講しており、専門に向かうための基礎的な文献の探し方、レジュメの書き方、
発表の仕方などを学ぶ機会としている。また、1 年次の「基礎演習」は、教員と新入生、新入
生同士のコミュニケーションの場としても機能しており、学生の生活指導においても一定の教
育効果を上げている。
2・3 年次にはほとんどの学生が専任教員の「特講」「演習」の最低1科目を履修し、より専
門的な内容の指導を受けることになっているが、学科教育目標実現のための「卒業研究」に向
かうために、基礎教育レベルの教育から専門的な学問内容にどのようにして移行するかについ
て検討する必要がある。
3 学科の基礎教育に相当する科目は、それぞれの教育目標に対応して設置されている。倫理
性、社会性に関連する科目は、その多くが、人文・社会系の領域を幅広く扱う文化総合学科に
開設されているが、全ての学科の学生が、これらの科目を自由に選択履修できる体制をとって
いる。専任教員は、専門領域のみならず基礎領域に関わる主要な科目をも担当することで、基
礎から専門への導入において重要な役割を果たしている。
なお、本学では、倫理性、社会性を培う教育のために種々の学科科目を開設しているが、単
なる知識の伝達に終わるのではなく、本学教育の重要な部分を構成する各種大学行事やその他
の実践的な活動に反映させている。例えば、建学の精神であるキリスト教の根本に触れる講演
42
第3章 教育内容・方法(学士課程)文学部
を入学式当日に行い、宗務委員会やキリスト教文化研究所主催による行事、講演、ミサやクリ
スマス会などを実施している。さらに、学生の自治組織である学生会の主催による養護老人ホ
ーム「藤の園」への訪問や各種ボランティア活動への参加は、建学の精神の発揚が授業以外の
ところに具体的に表れている点として評価できる。
なお、文学部では基礎科目として外国語科目を選択必修とし、さらに教育の効果を上げるた
めクラスの小人数化を図っている。履修者が集中する科目については、クラス数を増やすなど
の対策を講じてきているが、中国語など小人数とはいえないクラスがあることも事実である。
台湾、韓国の協定校との国際的な交流が進められている中で、中国語、コリア語のクラス編成
については、更なる検討が必要である。
現在、宗教・外国語科目を除き、全ての科目は 3 つの学科の学科専門科目として位置づけら
れている。それぞれの学科の垣根は低く維持されており、他学科に設置された科目を履修する
ことは容易であるものの、一般教養的な科目を一括して学部共通科目として扱うほうが適切だ
とする意見もあり、懸案となっていた。ただ、2010 年度からの実施を予定している新たな文学
部カリキュラムでは、学科横断的な複数のプログラムの設置を検討しており、現在のところ学
部共通科目の新設の企画はない。また、英語文化学科、日本語・日本文学科の開設科目の開講
形態については、開講年次をより明確に限定する方向で見直しを行う。
学科が抱える問題等として、以下のものがある。
1)英語文化学科:学生の中には、英語力の向上について十分な達成感を持てないまま 1、2 年
次の基礎教育を終える者もいる。広く歴史や社会についての知的関心を育成するのがむずかし
いケースも少なくない。指導体制に改善の余地がある。
2)日本語・日本文学科:基礎教育科目のほとんどは、学科専任教員が担当し、専門領域への導
入として、よく機能しているが、「講義Ⅰ」は、3 年次、4 年次学生の履修も少なくなく、「講
義Ⅰ」の履修者数が多い一因となっている。
3)文化総合学科:開講科目の多様性を生かした学際的な教育を実現するため、学科独自の教育
方針を検討する必要がある。
学部の専門性を高めるための教育体系として、2000 年度以来のオープン・カリキュラム制度
や「テーマ研究」の 8 年に及ぶ継続は、文学部の理念、目的に即して、3 つの学科の垣根を越
えて、教員や学生が、学際的な問題意識を共有し、しかるべき文学部としての教育のあり方を
ともに目指す態勢を整えてきたことの、明確な証左となる。
英語文化学科は、卒業関連科目を「卒業論文」と「卒業課題研究」のいずれかの選択必修と
しており、これによって 4 年間の学修の成果を評価する体制をとっている。学科としては「卒
業論文」の履修を奨励しているものの、選択は基本的に学生に委ねられており、「卒業論文」
を選択しない学生が一定数いるため、結果として、「卒業研究演習」が効果的に展開されてい
ない側面があって、現在、「卒業論文(英語)」の必修化に向けて検討を進めている。なお、
2004 年度から、学生が自主的に「卒業論文集」を出すにあたり、英語文化学科として、予算の
確保を含め、これを積極的に支援している。
日本語・日本文学科、文化総合学科においては、「卒業研究(卒業論文)」が必修であり、4
年間の学修成果として個々の学生がこれに取り組んでおり、一定の成果をもたらしている。な
お、日本語・日本文学科では、毎年、卒業研究の発表会を行い、教員・学生間の相互批評を行
うとともに、次年度に卒業研究に取り組む学生に対するガイダンスの機能をもたせている。さ
43
第3章 教育内容・方法(学士課程)文学部
らに、優秀な卒業論文を『国文学雑誌』に掲載している。
文化総合学科は「卒業研究(卒業論文)」を必修としているが、4 年次選択必修の「卒業研
究演習」では、夏休みに「卒研演習」合宿を花川のセミナーハウスで行うなど、演習担当者ご
とに、学生のモチベーションを高める工夫をしている。また「卒研演習」の担当教員は、時間
割以外にも、綿密な個別指導を行うなどして、4 年間の学修の成果である卒業論文の質の向上
を支援している。さらに毎年度『卒業論文・要旨集』を発行し、全員の卒業論文の要旨を掲載、
各ゼミの優秀論文については全文を掲載して、次年度に卒業研究に取り組む学生に研究の指標
として配布している。
一般教養的授業科目については、多くの学生が、オープン・カリキュラム制度を活用して、
各学科に設けられている教養的な科目を自由に履修している。英語文化学科の場合、単なる語
学的スキルの習得を超えて、基本的な教養に対する学生の関心を広く啓発するため、積極的な
指導を行っているが、今後とも、この種の指導体制を強化していく必要がある。また、文学部
としても、このようなカリキュラムの特性をより十分に活かすために、より幅広い履修を促す
ような指導に一層取り組んでいく必要がある。
外国語科目の編成については、外国語科目の担当の多くが非常勤講師であるため、学修の内
容・進度などに深浅・遅速が生じている点に課題を抱える。外国語の授業を組織的に運営して
いくためには、個々の外国語科目の学修内容・進度を担当者間で調整する必要があり、担当者
同士が学修内容・進度について情報を交換し、踏み込んだ調整を行うことができるような組織
の設置が必須である。文学部では、現在、この役割を学部に設置された運営委員会が担ってい
るが、今後、外国語教育の円滑化のための組織の充実を、学部の枠を超えて図っていくべきで
ある。
本学では、アメリカ合衆国やオーストラリアといった英語圏の大学以外に、韓国と台湾の大
学との間で留学協定を締結している。韓国や台湾の大学との交流がより一層活発化している現
在、より多くの留学生を継続的に受け容れ、また派遣していくためには、「中国語」「コリア
語」科目の教育の質の向上のために、クラスの小人数化を進める必要がある。
なお、文化総合学科では、卒業研究の質を高めるために、ゼミの専門教育に合わせた語学教
育の充実が課題となっている。一方、オーストラリア、韓国、台湾の留学協定校に留学生とし
て派遣される文化総合学科の学生も増えてきており、「異文化コミュニケーション」系で開設
している「中国文化論」「韓国文化論」等の成果でもあると思われるが、この種の科目群をな
お一層充実させていくことも必要である。
専門教育・教養教育・外国語教育に関わる科目の量的配分に関しては、2000 年度改組時におい
て一般教養的科目の区分は廃止されたが、それらの科目の多くは文化総合学科の中に発展的に
組み入れられ、学科の専門教育科目との密接な関連において配置されている。文学部では、オ
ープン・カリキュラム制度を活用し、それら入門的な科目の履修を、全ての学科の学生に対し
て奨励しており、実質的には豊かな教養的科目のカリキュラムを実現している。外国語科目に
ついては、学科カリキュラムとは切り離して、独自のプログラムを編成しており、このプログ
ラムの運営のために独立した委員会を学部に設置して、上達段階に対応したきめ細かな授業を
展開している。
文学部の場合、それぞれの学科の専門科目の必修化は抑制されてきており、互いに相通ずる
ところの大きい 3 学科のカリキュラムを、学科の枠を越えて履修するように、学生に指導して
44
第3章 教育内容・方法(学士課程)文学部
きている。結果として、学際的なテーマを志向する学生が増え、学部としても、そうした学生
の知的な動向により柔軟に対応する必要性がある。
基礎教育については、3 学科ともに学科専門のための「基礎科目」があり、そのうえに演習・
講義を開設するカリキュラムを組んでおり、現状では、この編成がかなりの程度有効に機能し
ていると評価することができる。2010 年度を目途に、各学科でカリキュラムの見直しを進めて
おり、上記の編成の妥当性について考慮しながら、更なる充実化に向けて検討中である。
基礎教育における責任体制については、3 学科とも学科専門のための「基礎的科目」を全専
任教員が担当し、「応用的科目」への適正な導入とするべく勤めており、現状ではこの体制が
かなりの程度有効に機能していると評価することができる。2010 年度の実施を目途に、各学科
でのカリキュラムの見直しを進めているが、「基礎的科目」と「応用的科目」の連携について
十分に考慮しながら、更なる充実化に向けて検討中である。
カリキュラム編成における必修・選択の量的配分については、3 学科は、それぞれ独自に、科
目の設定、単位の設定、科目の区分、科目名、必修・選択の区分等を決めているが、その適否、
妥当性については、学部の教務部委員が中心となって各学科のカリキュラムを調整・検討する
場を設け、3 学科間のカリキュラム上の連携を図っている。
それぞれの学科の専門性を具現する学科専門科目の充実を図る一方で、学際的な関心を積極
的に奨励するという主旨から、他学科科目の修得が容易にできる制度を採用している文学部に
おいては、当然、自由選択単位数が多めに設定され、開講学年を指定しない科目数も多い。
また、3 学科はそれぞれの教育目標に基づき独自の授業形態をとっており、例えば英語文化
学科では、英語運用能力の強化のために学科基礎科目のクラスを 2 分割あるいは 4 分割し、さ
らに 1 コマ 90 分を 45 分に分けて、ネイティブ・スピーカーが担当する小人数クラスでの集中
的な授業を展開している。日本語・日本文学科では、演習形式の授業に力点を置き、学生の自
主的な取り組みと論理的な発表力の育成に取り組んでいる。文化総合学科では、全専任教員が
1 年次の演習科目を担当し、教科指導のみならず学生生活や履修方法についてのアドバイスを
個別に行っている。
カリキュラムの高・大連携に関して、高等教育への導入のために採られている方策は、学科
によって異なる。英語文化学科は、英語の語学的スキルの向上と英語文化一般に関する基礎的
な知識の習得、英語レポートの書き方の指導に力を入れている。日本語・日本文学科は、ほぼ
全員の専任教員が担当する講義科目(講義I)を通して、古代から現代に至る日本語学、日本
文学及び漢文学についての入門的な知識やアプローチの習得に取り組んでいる。文化総合学科
は、基礎演習における指導をとりわけ重視しており、各系列への導入のみならず、系列間の関
連性を理解させることに力を入れている。さらに、大学生活全般についての指導も、基礎演習
の中で行われている。それぞれの学科が、学科の特性に合わせた適正な導入教育を展開してい
ると評価できるが、特に英語文化学科では、後期中等教育における語学的スキルのレベルの低
下という現状を踏まえて、
さらに導入教育のカリキュラムを充実させていくことが必要であり、
カリキュラムの見直しを進めている。
授業形態と単位の関係について、単位の計算方法は、全ての授業科目が大学設置基準第 21
条に準拠した学則第 17 条に基づいており、適切であるといえる。
45
第3章 教育内容・方法(学士課程)文学部
単位互換、単位認定等について、2007 年度に文学部で海外協定校留学による単位を認定され
た学生は、英語文化学科で 5 名、文化総合学科で 2 名であり、1 人当たりの平均認定単位数は
英語文化学科では 19.4、文化総合学科では 11.5 である。いずれも認定単位数は多くはないが、
2008 年度より協定校修得単位数枠が設定されたことにより、今後、海外協定校留学制度がより
有効に活用されるものと思われる。
また「海外語学研修」科目の新設は、学生の留学意欲を刺激し、さらには協定校留学希望者
数の増加に結びつくことが期待される。
開設授業科目における専・兼比率等について、「外国語科目」の専・兼比率が著しく低いの
は、文学部に外国語専任教員がいないことと、英語、ドイツ語、フランス語、中国語、コリア
語と数多く外国語科目を開設していることによる。英語以外の科目については全て非常勤講師
に依存している状況である。
また、ごく少数だが、両学部間で専任教員が兼担で教えるという形で、協力体制をとってい
る。2008 年度では文学部 5 名、人間生活学部 2 名の教員が他学部開設科目を担当している。
外国語科目の中で扱われている言語は、英語以外にドイツ語、フランス語、中国語、コリア
語と多岐に渡っており、兼任教員に依存せざるをえない状況にある。また、英語文化学科と文
化総合学科で開講されている専門科目の専・兼比率がそれぞれ低くなっているのは、幅広い教
養の育成を目指しているためである。
社会人学生、外国人留学生等への教育上の配慮について、海外協定校との関係がますます密
接になりつつある中で、文学部が派遣する学生に対する配慮が、年々、一層きめ細やかになっ
ていることは、十分に評価できる。今後は、文学部が受け入れる協定校からの留学生に対して、
より一層の教育指導上の配慮が求められる。
第2 教育方法等
教育効果の測定について、文学部が 2006 年度から実施している「授業改善のためのアンケー
ト」は、開講科目の特性に配慮した適正な質問項目を設け、集計の仕方にも工夫を凝らすこと
で、教育上の効果を測定するためには一定の有効性をもつと評価することができる。また、英
語文化学科の学科基礎科目における TOEFL-ITP の実施とデータの管理も、本プログラムの教育
上の効果を測定し、同時に学生の学修意欲を促進する上で、有効であると評価する。しかしな
がら、教育上の効果を測定するための、文学部全体としての具体的な方策については、未検討
である。
卒業生の進路状況については、北海道の厳しい経済情勢や女子学生の採用に不利な状況が続
く中で、学生は各自の適性・人生観・社会認識をもって職業を選択し、良好な結果を得ている
といえる。
教員・公務員としての就職決定者が就職決定者総数に占める割合は、2005 年度、2006 年度、
2007 年度で、それぞれ 10%、5%、5%であった。
主な業種別就職状況をみると、文学部では卸・小売業、金融業、サービス・その他への就職
が安定して多く、2005 年度、2006 年度では製造、運輸への就職がこれらに次ぐ数であったが、
46
第3章 教育内容・方法(学士課程)文学部
2007 年度では、製造、運輸への就職が急減した代わりに情報通信への就職が急増している。
英語文化学科で運輸への就職が多いことを別にして、学科間には特に目だった違いはない。
成績評価に関して、その基準は、2004 年度から「履修ガイド」(シラバス)に全ての授業科
目について、具体的な数値を挙げて記載することになっている。若干の科目に記載の不備が見
られるものの、こうした成績評価の方法や基準を「シラバス」に明記することを徹底してきた
ことにより、適切な成績評価のあり方が定着してきている。
また、成績確定前の学生への成績開示は、本学では以前から実施しており、厳正な成績評価
及び判定に役立っている。
履修科目登録の上限設定は、学生に無理のない履修計画を促すことを目的として導入された
が、文学部では、3 学科とも自由選択単位数の多いカリキュラム編成をしており、開講学年が
複数にまたがる科目も多いことから、
従来の 54 単位の上限ではその効果があまりなかったとい
える。2007 年度よりさらに上限単位数を下げたことにより、バランスの取れた履修計画を促す
上で、これまでより一層の効果が期待できるものと考えられる。
2007 年度入学生から導入した「進級制度」にもとづき、学業不振者、学修意欲に問題の生じ
ている学生を 2 年次終了時点で一度確認することによって、修得単位数が極端に少ない学生に
ついての指導指針を明確にした。しかしこの制度の実質的な運用は、2008 年度末が最初になる
ので、現時点では評価できない。また最終的には導入学年の卒業年を待ってその効果を検証す
ることになる。
保証人への学生の成績表の送付については本学では早くから実施しており、保証人・大学の
連携による細やかな学生指導に役立っている。また成績通知書を送付する際には、「進級制度」
についての説明文書も添付し、保証人の理解を得られるように努めている。
履修指導について、オープン・カリキュラム制度を採用している文学部では、3 学科とも、
学生に対する履修指導には特段の配慮と工夫を凝らしており、結果として、履修上のトラブル
の件数がきわめて少ないことは、高く評価できる。
留年者については、留年の理由はさまざまであり、一律の対応は不可能である。留年が休学
や退学に繋がる場合も少なくなく、留年者の中には、本人との連絡がとれなくなるケースもあ
る。教務課、クラス担任や演習科目の担当教員が、できる限り密に学生や保証人と連絡をとり、
事態の解決に努めていることは評価できる。留年者への対応、あるいは留年者を出さないこと
への配慮については、学生についての情報交換の場でもある月例の学科会議が一定の役割を果
たしているし、本学が採用しているクラス担任制度の果たす役割も大きい。留年の原因が心身
の不調である場合には、学生相談室や保健センターが適正な支援を行っている。
科目等履修及び聴講の希望者は、教務課にその旨の申し込みを行うが、これを受けて教務課
は受講を希望する科目の担当教員に速やかに連絡をとり、希望者にはじかに科目担当教員と相
談するよう指導している。受講希望者に対する教務的な応接、教務課と科目担当者の間の連絡・
連携、受講希望者と科目担当者の面接など、適切な配慮のもとに行われている。
教育改善への組織的な取り組みについて、オープン・カリキュラム制度の実施は、文学部に
おける学生の学修の活性化のための取り組みとして、また、教員相互の連携を強化し教育指導
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第3章 教育内容・方法(学士課程)文学部
方法の改善に繋がる取り組みとして、
一定の成果をあげていると評価できるが、
問題点として、
次のようなことがあげられる。文学部カリキュラムは、学問領域の幅の広さと学科間の科目履
修に関しての自由度の高さに特徴があるが、学生の中には、自分の学修の道筋を構想すること
ができず、戸惑うケースも少なくない。授業が過密状態になって時間割編成上重なる科目が多
くなり、履修できない科目が出てくることへの不満もある。一方、履修放棄率が高いという問
題も生じており、履修者不足により閉講する科目もある。
クラス担任制度については、学生の学修の活性化のために機能しているケースと、していな
いケースがあるが、担任を含む学科教員の e-mail アドレスを公開することなどによって、学生
と教員の連絡を密にするよう努めている。同時に、月例の学科会議などで、授業担当教員が、
学生の出席状況や履修態度等を担任に連絡するなど、教員同士の連絡を密にするよう努めてい
る。さらに、各学科とも、演習担当の教員が相談などに応じる体制をとっており、学生は、担
任も含め複数の学科教員から、学修や生活全般についての指導を受けている。
教育指導方法の改善については、教員個人が主体的に取り組んでいることは評価できるもの
の、今後、それを共有できる仕組みについて検討する。教員の教育指導方法の改善にあたって
の貴重なデータとなる「授業改善のためのアンケート(学生による授業評価)」は、多様な授
業形態に対応して 4 種の評価アンケートを別途作成し、アンケート評価の実質的な意義を高め
ていることは評価できる。調査の集計・分析結果を踏まえ、各教員が今後の改善策を報告する
という手続きも、授業評価の活用法として有効であると考える。
また、2000 年度から毎年度開講している「テーマ研究」は、3 学科に所属する教員 3 名が共
通のテーマのもとで連続講義を行うが、3 名の教員は常時授業に出席し、互いの授業を参観し
あい、授業の中で必要に応じて意見を交換しあう。授業の前後には、講義内容の十分な打合せ
と相互的な批評を通して、各自の授業改善に取り組むとともに、共同講義の質の更なる向上を
目指している。
文化総合学科では、主に歴史系列において、教員が互いの授業を参観しあい、各自の授業改
善に役立てるとともに、系列としてのカリキュラム運営の質の向上に努めている点も、評価に
値する。
「シラバス作成要項」は教員に充分浸透しており、以前に見られたような科目間の精粗はか
なり改善されているが、「成績評価の方法」の記載については若干の科目に不備が見られる。
「シラバス」が 3 月末に Web 公開されることにより学生は次年度の履修科目の検討が可能にな
り、履修科目の選択の情報源として有効である。また、「シラバス」に記載された参考書を図
書館で学生が利用できる新しいシステムの導入は、今後、学習効果の向上に結びつくことが期
待できる。
2000 年度より実施している「学生による授業評価」は、学生の授業に対する、また自らの学
修姿勢に対する評価の表明であり、各教員が自分の授業を見直すための機会のひとつとなって
いる。本学では「学生による授業評価」を単に実施しただけにとどめず、学生の意見をいかに
受け止めているか、自己の授業の改善点をどう捉えているか、本学の教育改善をいかに構想す
るか、についての意見の提出を求めている。
2007 年度の「授業改善のためのアンケート」では、評価の対象となる科目の開講形態に合わ
せて 4 種類の評価項目リストを作成し、授業改善のための資料としての活用状況をさらに向上
させた。評価アンケートを行う主旨の説明、回答に当たっての心構えなども、同時に周知させ
48
第3章 教育内容・方法(学士課程)文学部
ており、さらには評価の結果を受けて教員が提出する文書の中に、アンケートの形式や評価項
目等についての教員側の意見を記述させていることも、評価アンケートとその活用のあり方を
さらに改良していくための試みとして、有意義である。
こうした分析結果、特に、結果を受けて各教員が書いた改善策を集約、列記した「今後の授
業に向けての改善策等」
を有効活用するために、
その活用方法の検討に 2009 年度には着手する。
日本語・日本文学科が、毎年度、卒業生に対する評価アンケートを独自に実施していること
は評価に値する。そこで 2007 年度には、全学的に卒業生に対して満足度調査を行う必要がある
と考えて、卒業式のあとで担任から本学宛に郵送してもらう方式を採ったが、回収率は 20∼
50%と学科による違いが生じてしまった。しかしこうした調査を続けることは大切と考え、回
収率が低かったことの分析を行い、より効果的な実施の方法について検討を進め、2008 年度に
おいても実施する。
授業形態と授業方法についての検討は、3 学科において、活発に行われている。例えば英語
文化学科においては、
学科基礎科目の授業形態についてあらためて評価アンケートを実施して、
必要な見直しを行う予定であり、あわせて、基礎演習や講読科目の位置づけについて、その開
講の形態や授業の展開の仕方、教材の選択についての見直しの議論が進行中である。
視聴覚教材を使用することの多いのは英語文化学科であるが、3 学科とも授業の基本にはテ
キストを読むという作業があり、マルチメディアの積極的な活用というより、手元資料の配布
等による授業の円滑化のため、という位置づけになってきている。
第3 国内外との教育研究交流
2006、2007 年度において、本学は、国際交流センターを中心として、1)海外協定校の拡大、
2)短期研修プログラムの充実、3)留学前オリエンテーションの充実、4)国際交流促進のため
の関係規程・制度の新設と見直し、5)選考方法、審査基準の明確化、6)留学に対する学生の
意識を高めるための方策、という 6 つのテーマに取り組んできている。
1)本学は 2006 年度にアメリカのベネディクティン大学と交流協定を締結し、本学の海外協定
校は現在 9 校を数える(米国 4 大学、オーストラリア 2 大学、韓国 2 大学、台湾 1 大学)が、
今は英国の大学との協定締結を目指し、交渉を続けている。
2)短期研修プログラムは、この数年のうちに、大変充実したものとなった。これをさらに充実
させていく方向で、国際交流センターが中心となり、活動を展開している。
国際交流センターが人間生活学部と共催して行った米国の留学協定校セント・エリザベス大
学における 10 日間の短期研修プログラムでは、従来の英語研修に留まらず、参加学生の専門に
応じて、病院見学、米国の登録栄養士との懇談、食品工場の見学、児童の食育を目的とした農
場への遠足等が組み入れられている。短期語学留学の単位認定指定校は、現在のところ オー
ストラリア、ニュージーランドに限られているが、今後はその他の国々での短期研修の機会を
開いていきたい。また、2008 年度には、セント・エリザベス大学の学生を本学に迎え、日本文
化体験や教育施設の見学、洞爺湖の観光を行う研修プログラムを実施した。今後は一方向の派
遣だけではなく、相互交流が可能になるよう進めていくことが確認されている。
韓国の協定校である明知大学での短期研修プログラム「韓国語 文化プログラム」や韓国カ
49
第3章 教育内容・方法(学士課程)文学部
トリック大学の語学研修施設での「韓国語 3 週間短期課程」と「文化学習プログラム」等、休
暇期間を利用した韓国語の短期研修が実施されている。本学で第二外国語として韓国語を学ぶ
学生に、本学での授業と連動させる形で研修の参加を勧めることが理想であり、2006 年、 2007
年度は、そのための準備期間として評価される。特に韓国語の集中的な学修を目的とした「韓
国語 3 週間短期課程」については、今後の単位認定化を目指し、検討を進めている。
あわせて、台湾の協定校である輔仁大学との協働により、日本語教員養成課程を受講中の文
学部の学生が、専任教員の指導のもと、輔仁大学の日本語学科での教育実習プログラムを受講
するプロジェクトを開始した。台湾の日本語学習者とともに実習に参加するという、文学部の
学生にとって大変貴重な機会となっている。
3)派遣学生の留学準備を支援するため、国際交流センター主催で体系だった渡航前オリエンテ
ーションを実施することを目指し、内容について検討を開始した。ポイントとして、留学先で
必要となるスタディスキルの獲得、メンタルヘルスの知識、海外での危機管理の意識付けが挙
げられている。
また、派遣先の国の歴史や文化に対して理解を深めるために、派遣が決定した学生には指定
図書の中から数冊を選択の上、指導担当教員にレポートを提出することを義務付ける方針とな
った。留学前のレポート作成は、派遣学生にとって、自国と他国の歴史について深く考える契
機となっている。
4)
本学在学中に複数回の短期研修に参加する学生のため、
従来の認定単位数の上限を拡大して、
海外研修への積極的な参加を促している。本学の教育カリキュラムと海外での研修成果を結び
つけることで、学生の留学意欲を後押しすることを意図しており、結果として、短期研修への
参加者の数は年々大きく増えている。
また、協定校留学の成果に対する本学としての評価を明確にするためにも、従来、海外留学
協定校で修得した単位は、本学の科目に読み替えて認定していたが、この制度に加え、本学の
教育課程にない科目を履修した場合にも、審査の上で「協定校修得科目」として認定すること
を可能とした。結果として、留学先での科目選択の自由度が高まることから、学生は専攻に縛
られず、留学先で幅広い知識を獲得することが可能となった。
協定校留学により 4 年間での卒業が難しい学生に対し、5 年目以降の授業料を減免する制度
を新設するため、検討を開始した。制度が整備されることで、これまで財政的な理由で留学を
躊躇していた卒業学年の学生にも、留学の可能性を提供することができるようになる。
5)学生の派遣・受け入れは、1 年間の協定校留学と短期研修(夏・春の休暇中)に分けられる
が、「海外留学協定校留学生選考方法に関する細則」の設置と「海外留学協定校への留学生お
よび海外短期研修者の選考に関するガイドライン」の作成により、協定校留学志願者の選考方
法の細則を公示し、これまで慣例的に実施されてきた面接方針を「ガイドライン」として示す
ことで、面接審査の基準を明確化した。
6)留学に対する学生の意識を高めるための方策としては、国際交流センターが、留学に関心の
ある学生の相談に常時応じることのできる体制を組み、各種の助言や指導を行い、また冊子や
インターネットによる資料の提供等を行っている。2008 年度には「国際交流パンフレット」を
発行、入学オリエンテーションで新入学生全員に配布した。留学説明会についても、ブリティ
ッシュ・カウンシルや関係する NPO 団体の担当者を招いて随時開催しており、帰国留学生の報
告会も毎年度実施して、留学を志す学生に対する啓発の機会としている。
50
第3章 教育内容・方法(学士課程)文学部
本学の国際交流プログラムに関する広報についても、国際交流センターがこれを担い、「国
際交流 Newsletter」を年 2 回発行し、学外の団体・組織が主催する国際交流関係のイベントな
どにも積極的に関与している。
また、特に英語圏協定校への留学支援のために、国際交流センターが主催して、2003 年度か
ら TOEFL 対策講座を開設、2005 年度からは TOEIC 対策コースを開始した。2007 年度からは、学
外の英語研修センターに委託して TOEFL・TOEIC の専門講師による対策コースを実施し、広く本
学の学生の英語圏協定校への留学意欲の育成に努めている。
【将来の改善・改革に向けた方策】
第1 教育課程等
文学部としては、いわゆる一般教養的な共通科目を置くことは考えておらず、これまでどお
り、各学科の専門科目の中から一般教養的な性格の科目を選定し、自学科の学生に履修を勧め
る。ただ、情報処理関係や運動の実践関係の科目など、学部共通として括るほうが理に適うも
のもあり、検討していく。また、文学部では、3 学科教員が参加して、特にカリキュラム検討
のための作業部会「ワーキング・グループ」が設置されており、ここで学科横断的な複数のコ
ース・プログラムの立案がなされており、2010 年度を目途に実現を目指している。これが実現
すれば、「共通科目」的な性格をもつプログラムが複数できることになるが、このコース・プ
ログラムには運営に関わる教員が常在し、学生がそれぞれのコース・プログラムの中で卒業研
究(卒論)を履修することも可能になる予定である。
入学生に対する基礎教育、導入教育の更なる充実については、各学科とも、その必要性を痛
感し、学科の基礎的、入門的な科目の展開の仕方について見直しを継続しているが、2010 年度
からの各学科の新カリキュラムの実施に際して、一歩踏み込んだ形の改善を考えている。英語
文化学科では、基礎文法の徹底した再教育に基づき、講読科目や基礎演習のカリキュラムを充
実させることによって、「読む力」と「書く力」を伸ばしていくための土台を 1、2 年次で整備
することを考えている。日本語・日本文学科及び文化総合学科では、基礎的な科目を専任教員
が担当する態勢の維持と、入門的な科目と発展的な科目の仕分けをさらに徹底していく。入門
的な講義や基礎演習を中心に、資料の検索、利用の仕方、レポートの書き方など、研究に対す
る基本的な姿勢を身に着けさせ、学ぶことの楽しさを実感させることを重視している。
倫理性の陶冶については、いうまでもなく、あらゆる学問的実践の必要条件として、それぞ
れの授業の現場を通して、今後とも最大限の配慮を心がけていく。
専門教育の体系性を高めるための方策として、文学部の理念、目的を 3 学科が共有し、学科
カリキュラムと教育の実践に活かしていくために、オープン・カリキュラム制度や「テーマ研
究」の更なる活性化を通して、3 学科の教員と学生が学問的関心を分かち合い、思考や判断を
組み上げるプロセスをともにする態勢を練り上げていく。
特に、2010 年度を目途に実現を目指している学科横断的なコース・プログラムは、学際的な
テーマを掲げ、文学部としてのカリキュラムの体系性をさらに明確に示すものとなりうる。
また、英語文化学科が卒業研究(卒論)を必修化することによって、自らの意思と知識と批
51
第3章 教育内容・方法(学士課程)文学部
判力をもって考え、判断し、行動する女性の育成という文学部の教育理念に向けて、3 学科の
足並みはさらに揃っていくものと考える。
一般教養的授業科目の編成については、文学部はいわゆる一般教養的な科目区分を構えては
いないが、オープン・カリキュラム制度が十分に機能している現状を踏まえれば、一般教養的
な科目区分の設置ではなく、オープン・カリキュラム制度をさらに先に進める方向で考えてい
くべきであろう。既存の「テーマ研究」に加えて、学際的なテーマを掲げて、学科を横断する
形で開設するコース・プログラムは、そこで卒業研究を履修することができるというオプショ
ンも含め、2010 年度から実現する運びであり、いまはこのプロジェクトの実現を最優先に考え
ている。
「外国語科目」の編成と運営については、文学部の「ワーキング・グループ」で検討中であ
るが、2010 年度の実施はむずかしく、それ以降に実施すべき課題として捉えている。大筋とし
て、外国語教育全般を司る全学的な組織など、広く検討を進めていくべきであろう。
外国語教育は、国際化の推進と歩みを共にしていることは事実であるが、話す、聞くという
日常的な伝達のレベルとは別に、異文化への知的なアプローチとして、読む、書くというレベ
ルの教育、あるいはそうした教育への導入をも含みこむべきであろう。
専門教育・一般教養・外国語教育の量的配分については、文学部では、2000 年度改組におい
て、学科専門科目の必修を低めに設定する方向で議論を進め、実践に移してきた。今後のカリ
キュラム改革においても、この方向は堅持される。文学部の場合には、それぞれの学科の性格
が相似し、共通の問題意識を提示したり展開したりする余地が大きく、学生には、学科の枠を
超えて、幅広い教養と総合的な判断力を養ってほしいという願いがあるからである。
教養教育については、先に触れたとおり文学部は「共通科目」の区分を設けておらず、「宗
教科目」と「外国語科目」に関しては「宗教・外国語運営委員会」を設置して、実施・運営の
責任を担わせているが、現状に関して改善が必要であることは、改善の方策も併せ、すでに書
いたところである。ただ、「情報処理科目」や「運動の科学」等の扱いに関しては、これらの
科目は、現状では文化総合学科のカリキュラムの中に設置されているものの、学部共通的な科
目として括り出す必要があり、今後、文学部の「ワーキング・グループ」において検討を継続
する。また、2010 年度に新設される学科横断的なコース・プログラムは、基礎教育、教養教育
を旨とするものではないが、学科の枠を越えて位置づけられる点で、その責任体制については
十分に配慮しなければならない。
複数学科の教員による学科横断的な責任体制を検討中であり、
そこには「卒業研究」の指導体制も含まれる。
必修と選択の量的配分に関する議論は、2000 年度改組以来、継続して行っている。2000 年度
改組においては、すでに述べたように、文学部としてのカリキュラムの体系性を強く志向する
中で、各学科の必修の縛りはできるだけ抑制する方向で議論が進んだ。2010 年度の実施を予定
している学科横断的なコース・プログラムは、文学部としてのカリキュラムの体系性をさらに
明確化するものであり、3 学科とも必修の量的配分を大きく増やす可能性は低い。しかしなが
ら、英語文化学科においては、学科の基礎教育的なカリキュラムを充実させる方向で議論が進
められており、必修の配分が若干増える可能性がある。いずれにしても、卒業研究として結実
する学修プロセスにおいて、最低限の必修の縛りをどこにおくかという議論は文学部において
はきわめて重要であり、今後とも継続していくことになる。
カリキュラムにおける高校・大学の接続に関し、
いわゆる導入教育に対する取り組みをどのよ
52
第3章 教育内容・方法(学士課程)文学部
うに構想し実践するかについては、高等学校における教育の実態を把握するだけでなく、入学
者の習熟度を正確に見定める必要があることはいうまでもない。語学教育におけるプレースメ
ント・テストについての議論が始まって久しいが、文学部においては、習熟度もさることなが
ら、学修意欲を積極的に引き出すことを重視する意見も強い。習熟度別教育についても、継続
的に議論されてきてはいるものの、これを積極的に導入する態勢にはなかった。ただ、外国語
科目(特に英語)においては、入学する学生の習熟度に大きな差があることも事実であり、学
生の習熟度にあわせたクラスの編成を考えなければならない時期にきている。また、通常の授
業についていけない学生に対する配慮も十分とはいえず、科目に応じて、補習授業や再履修ク
ラスの設置など、今後、学科や教務部委員会で検討していく。
授業形態と単位の関係について、文学部には幅広い教養を志向する開学以来の伝統があり、
特に文化総合学科と英語文化学科の開講科目数が多く、外国語科目のメニューも豊富であるこ
とから、時間割の編成については相当の困難があることが従来より指摘されてきている。外国
語科目や学科基礎科目を時間割上で固定して開設する等、さまざまな工夫を重ねて、かろうじ
て実質 5 日、Ⅴ講時までの時間割を保持している。今後、学科横断的なコース・プログラムの
導入が実現すると、時間割編成の難度がさらに高くなる恐れがあり、検討が必要である。
本学に開講されていない科目を国内協定校で履修する単位互換制度の導入については、今後
も教務部委員会及び各学科で検討を続ける。
開設授業科目における専・兼比率等に関して、英語文化学科、文化総合学科の専門科目につ
いて専・兼比率が低めであるが、しかしながら、文学部としてのカリキュラムの体系性を重視
する観点に立ち、学科横断的な学修の展開を奨励する文学部の基本方針を実現することが、何
よりも優先されるべきである。またなお、今年度に限り凍結されていた英語文化学科、文化総
合学科の専任人事が、2009 年度にはカリキュラム改革の方向性が確定することによって解除さ
れ、新しいカリキュラムに沿った専任人事が行われていくことで、状況の改善が期待される。
社会人学生、外国人留学生等への教育上の配慮について、英語文化学科及び文化総合学科が
受け入れている社会人学生は、総じて勉学に対する取り組みが真摯であり、他の学生の手本と
なっている面もある。
受け入れ時以外には、
社会人学生に対する特段の配慮は行っていないが、
個別の希望などに対しては柔軟に対応していく。海外協定校からの帰国学生に対する配慮は、
単位の取得の面や卒業が延期になった場合の学費の面など、さらにきめ細かな対応を考えてい
る。徐々に増えつつある外国人留学生に対する支援についても、十分に配慮する。
第2 教育方法等
教育方法に関連した教育効果の測定については、「授業改善のためのアンケート」の項目設
定や実施方法等については、定期的に見直しを進めていく。アンケートを踏まえて個々の教員
が行っている教育改善の試みが、実際にどれほどの効果をもたらしているかを測定するための
より有効な方策を、今後とも検討していく。
成績評価法に関して、文学部では演習科目のみならず、講義科目でも小人数授業が多く、絶
対評価が有効に活用されているといえるが、同一科目で複数教員がクラス別に担当する授業で
は、学生に不公平感を与えないよう、公正な成績評価に向けて、統一したガイドライン(相対
評価)の導入などについて今後教務部委員会及び関係学科・部署で検討を行う。
53
第3章 教育内容・方法(学士課程)文学部
2007 年度より上限単位をさらに低く設定したことの効果は、来年度以降、測定していくこと
になるが、特に低年次の学生の単位の実質化については、各学科が毎年 4 月に行っている履修
相談の中で、さらに指導を強めていく。
2007 年度入学生から導入した「進級制度」にもとづき、学業不振者、学修意欲に問題の生じ
ている学生を 2 年次終了時点で一度確認することによって、修得単位数が極端に少ない学生に
ついての指導指針を明確にした。
しかしこの制度の実質的な運用は 2008 年度末が最初になるの
で現時点では評価できない。また最終的には導入学年の卒業年を待ってその効果を検証するこ
とになる。
履修指導については、現在、2010 年度の実施に向けて、オープン・カリキュラム制度をさら
に発展させる方向で、文学部としてのカリキュラムのあり方を改善するための検討が行われて
おり、履修の選択肢がさらに広がることが予想される中、学生に対する履修指導もより一層充
実させていく必要がある。
オープン・カリキュラム制度を採用している文学部では、留年者に対する教育上の措置につ
いての今後の課題として、3 学科相互の連携、及び 3 学科と教務課、学生課、保健センターの
間の連携をより緊密にしていくことが挙げられる。
また、学生側の単位計算のミスや必修単位の取りこぼし等、事前の指導によって防ぐことが
できたかもしれないケースもあり、毎年度春の履修相談時には、4 年次学生に対する履修指導
をさらに強化していく。
教育改善への組織的な取り組みについて、学際的なテーマを志向する多くの学生の多様な関
心に応じて、複数の学科横断的な履修経路をわかりやすく明示し、それぞれの学際的なプログ
ラムを 3 学科の教員が共同で運営し、学生に対する教育指導の体制を組織的に改善、強化して
いくことは、どの学科の学生の学修の活性化に対しても有効であり、2010 年度の実現に向けて、
各学科カリキュラムの見直しとあわせ、現在、文学部で検討している。こうした試みは、単に
学生の学修の活性化をもたらすのみならず、教員の文学部カリキュラムに対する責任を明確化
し、授業展開における教員相互の連携を促進することによって、教育指導の改善にも繋がる取
り組みである。
以上の計画を含め、教育指導方法の改善のための文学部としての組織的な取り組みについて
は、今後とも強化していく。
文学部のカリキュラムはオープン・カリキュラム制度をその特色としており、学生の選択の
自由度が高いため、「シラバス」を含む「履修ガイド」の果たす役割は極めて大きいといえる。
そのため、さらに学生に役立つ情報を盛り込み、内容の充実を図る方向で、教務部委員会で今
後検討を行う予定である。具体的には例えば、「シラバス」内に「授業のねらい」や「授業計
画」欄に加えて「授業内容紹介」欄や、各教員のオフィスアワーの記載欄を設けることなどが
考えられる。
また、各教員に対しては、「成績評価の方法」をはじめとする「シラバス」の各項目につい
て、「シラバス作成要項」に則した記載を徹底するように一層働き掛けていく。
大学として 2007 年度から始めた卒業生対象の満足度調査については、
より効果的な実施の方
法について検討を進めていく。また、文学部としても、2010 年度の新カリキュラムの実施を契
機に、学部カリキュラム全体に対する満足度調査を、卒業生を対象に行うことを検討する。
教育改善への組織的な取り組みに関連して、文学部が 2000 年度来、毎年度開講している「テ
54
第3章 教育内容・方法(学士課程)文学部
ーマ研究」は、文学部が組織的に取り組む FD 活動の一環として位置づけられる。授業は 3 人の
教員によって分担されるが、3 人の教員とも常時出席し、必要に応じて授業担当者と意見交換
を行う。授業終了後は、相互に批評し合う機会を設け、今後の授業展開に活かしていく。こう
いう授業形態は、「テーマ研究」科目に限らず、今後、幅広く適用を検討していく。
文学部に関しては、新棟、新々棟の建設によって、多様なメディアを活用した授業の展開の
ための環境は整ったといえる。現在、各種授業の展開のために最も適したソフトの導入等、実
際の教育内容に即した活用環境の整備を、段階的に行っている。そのためには、現場教員の声
を迅速に取り入れ、それを反映する態勢を組まなければならない。
第3 国内外との教育研究交流
国内外との教育研究交流に関連して、昨今、若者の内向き志向や海外への留学希望者数の減
少が話題となっているが、大学時代の留学経験は、学生の視野を広げ、その後の人生の選択肢
を広げる契機となる。国際社会に対する関心を育み、日本人としての文化意識を問い直す機会
を得ることは、学生にとって貴重な体験となりうる。そういう観点に立って、今後とも、国際
交流プログラムを推進していく。
将来の改善に向けて、下記の項目を重点課題としている。
一般的な英語研修の枠に留まらず、学生の興味・関心の多様化に対応したプログラムを提供
していくためには、現在の国際交流センターの体制では限界がある。このため、学外の組織(留
学斡旋会社や NPO 法人)との協力により、様々な留学のプランについて検討していきたい。一
方、本学と協定校の教育・研究資源を生かし、セント・エリザベス大学との交流に見られるよ
うな、独自のプログラムの開発を進めることに力を注ぐ。
同時に従来の国際交流ホームページのリニューアルを行い、より読みやすく、必要な情報が
得られるページ作りを目指し、プログラム内容について学生に広く周知する。
効率的な運営を目指しつつ、学生のニーズに応えることを目標とする。
2007 年度より検討を開始した授業料の減免規定の整備や、留学・研修による単位認定の可能
性を広げるなどの検討を継続する。
海外協定校開拓や新規の海外研修プログラムの開発、留学する学生の増加に伴い、危機管理
の体制見直しと新たなマニュアル作りが急務である。これは、海外での事故や事件発生による
緊急時の学内対応(組織の危機管理)を想定したマニュアルと、留学を予定する学生向けに現
地の生活(個人の危機管理)や学習を指導するマニュアルに分けられる。
危機管理会社や、異文化間コミュニケーション・カウンセリング等を専門とする教員の助言
を得つつ、早急に対応する。
2007 年度に国際交流センターが移転となり、同じく海外との接点を持つ日本語教員養成課程
教員研究室と同じフロアを共有することになった。学生の交流談話室や蔵書書架、広い資料閲
覧コーナーが確保できたため、より有効なスペースの活用方法を考えている。
55
第3章 教育内容・方法(学士課程)人間生活学部
第2項 人間生活学部
【到達目標】
1.学生の多様化に対応するために基礎教育の充実を図る。
2.人間生活及びその質的向上への支援という基本を踏まえつつ、各学科固有の教育目的に一
層適したカリキュラムの改革を進める。
3.導入教育の充実を図るためリメディアル教育を導入する。
4.入学年次から 4 年次までの履修指導を的確に行う。
5.学生の国際交流の機会を確保する。
【現状の説明】
第1 教育課程等
1.学部・学科等の教育課程
⑴ 教育目標を実現するための学士課程としての教育課程の体系性(大学設置基準第 19 条第1項)
人間生活学部の教育課程表は「学生便覧」153∼186 頁に示されているとおり、3 学科共通の
共通科目と外国語科目、そして各学科専門科目の 3 区分から構成されている。卒業に必要な単
位数は各学科とも 126 単位以上と共通しているが、必修単位の設定は学科によって異なってい
る。これは専門性の違いに由来する。
1)共通科目には、学部として、あるいは 3 学科が共通して必要と見なす基礎科目を含む。共通
科目のうち、人間生活学部が必修とするのは、以下に示す 6 科目である。まず「キリスト教学」
と「聖書学概論」は、「キリスト教的世界観や人間観を土台」とし、「高い知性と豊かな人間
性を備えた女性を育成する」という本学の理念に沿ったものである。次に「人間学概論」は、
「生命及び人間の尊厳と個人の多様な生き方を尊重し、生活の様々な領域で人間が直面する諸
問題を研究する」という学部理念の基礎としての性格を備えている。さらに、「情報処理」は
今日の情報社会に適切に対応するために必要な科目、「運動の実践」はデスクワークを主とす
る現代社会生活に必要とされる運動習慣の形成に対応した科目である。
2)外国語科目として開設されているのは、英語では「総合英語」「実用英語」「英語講読」「総
合英語演習」「コミュニケーション英語」、英語以外では「ドイツ語」「フランス語」「コリ
ア語」等である。2008 年度からはさらに「海外語学研修」を開設した。特徴的なのは、食物栄
養学科で必修としている「総合英語」である。これは、従来から、食物栄養学科が在学中の卒
業研究・演習、あるいは卒業後の学術情報の収集、栄養教育における英語能力や国際化への適
応力の必要性を強く認識しているためであり、
食物栄養学科の学生のために開設されている
「総
合英語」は、こうした視点を重視した内容となっている。
3)人間生活学部の 3 学科の専門科目の概要は次のとおりである。
① 人間生活学科では、専門科目が人間生活の多様な側面を学ぶために開設されているという
基本点は従来から変わらないが、専門科目にかかる教育課程表は、2005・2006年度入学生に
適用されるものから2007・2008年度学生に適用されるものへと科目区分が再編成された。前
56
第3章 教育内容・方法(学士課程)人間生活学部
者の科目区分は「人間の発達」「人間と社会」「人間と環境」「人間と文化」「総合」の5
領域であったが、後者のそれは「クオリティ・オブ・ライフ」「生活と環境」「生活と福祉」
「総合」の4領域となっている。これは、クオリティ・オブ・ライフ(「生活の質」)という
学科の全体的な特徴といずれも生活を基盤とする環境と福祉という二つの領域名を表示する
ことによって、何を学ぶかをより明確化しようとしたものである。学生は、このように区分
された科目群の中から、自らの学修目的に応じた科目を選択履修する。「クオリティ・オブ・
ライフ」は人間への理解を深め、その生活の質を探求するための基礎的教養を培うものであ
る。「生活と環境」には家庭科教員免許状取得に必要な科目が多く含まれ、「生活と福祉」
には社会福祉士国家試験受験資格の取得に必要な科目が多く含まれるという違いはあるが、
いずれも生活教養的な視点を十分考慮した内容としている。
教育課程表の最後に位置づけられる「総合」は、学生がこれらの科目を横断的に選択履修
して得られた知見を自ら関連づけ、人間生活についての総合的な理解を深めるための領域で
あり、従来どおりの「卒業研究演習Ⅰ・Ⅱ」「卒業研究」のほか、複数の教員が共同で担当
する「テーマ研究A・B・C」等の科目等が置かれている。
② 食物栄養学科では、本学科の教育課程は管理栄養士の養成を目的としているが、そればか
りでなく、より高い資質を有する管理栄養士を養成することをねらいとして編成されている。
したがって、本学科は、栄養士法(管理栄養士学校指定規則別表第 1)によって教育内容を
含む合計 82 単位以上と定められている管理栄養士養成施設の授業科目と単位数の基準をは
るかに超えた 100 単位の必修科目の他に 40 単位の選択科目を開設している。2009 年度から
は、より幅広い社会的ニーズに応え学生の選択肢を増やすために、フードスペシャリスト資
格の認定機関となると共に、必修科目を 90 単位に減らし、選択科目を 58 単位とした。
これら開設科目は、管理栄養士養成の基盤となる「専門基礎分野」と高度で専門的な知識
や技術を修得するための「専門分野」に大別される。
前者に属する科目は、「社会・環境と健康」「人体の構造と機能及び疾病の成り立ち」「食
べ物と健康」という 3 つの領域に区分され、後者に属する科目は、「基礎栄養学」「応用栄
養学」「栄養教育論」「臨床栄養学」「公衆栄養学」「給食経営管理論」「総合演習」「臨
地実習」という 9 つの領域に区分されている。また、「その他」の区分には、これら専門科
目の理解に必要な基礎学力を身に付けてもらうために本学科が独自に開設している「はじめ
ての化学」「栄養統計学」「栄養士のための化学」「科学英語」、さらに 4 年次開設科目と
して「卒業演習」(必修)と「卒業研究」(選択)がある。
また、2005 年度からは栄養教諭一種免許状を取得できる教職課程が開設され、それに伴っ
て学科専門科目として新たに「学校栄養教育 I」と「学校栄養教育Ⅱ」が設けられた。この
教職課程の一期生となる 2007 年度卒業生では 24 名が履修し、このうち 7 名が栄養教諭とし
て活躍している。現在 4 年生;23 名、3 年生;39 名、2 年生;57 名、1 年生;55 名が栄養教
諭を目指し履修している。
③ 保育学科では、高度な専門的知識・技術を持った保育者養成を目的として体系的に学科教
育課程が編成されている。学科教育課程を編成する学科専門科目は、次の 6 つに区分されて
いる。すなわち、「保育の理論」「児童の理解」「保育内容」「保育の基礎技能」「実習」
「専門研究法」である。それぞれの区分に、より基礎的なものから高度に専門的なものまで
学科の目的に沿って開設されている。卒業に必要な単位数は、他学科同様 126 単位以上であ
57
第3章 教育内容・方法(学士課程)人間生活学部
るが、具体的には、共通科目の中から必修 10 単位、選択必修 8 単位の計 18 単位、外国語科
目の中から選択必修 6 単位以上、学科専門科目の中から必修 26 単位以上、選択必修(幼稚園
教諭免許指定科目から)30 単位以上、計 56 単位以上、その他選択 46 単位以上、合計 126 単
位以上となっている。この教育課程では、保育士資格、幼稚園教諭一種免許及び特別支援学
校教諭一種免許の 3 つの資格を同時に取得することができる。「幼稚園教諭一種免許状」及
び「特別支援学校教諭一種免許状」に関しては、教育職員免許法に定める授与の基礎資格及
び修得単位数に準じた授業科目が開設され、また、保育士資格に関しては、児童福祉法施行
規則に準じた科目が開設されている。
⑵ 教育課程における基礎教育、倫理性を培う教育の位置づけ
教育課程における基礎教育及び倫理性を培う授業科目として、人間生活学部は本学の教育理
念に直結する「キリスト教学」と「聖書学概論」、人間とその生活全般に対する深い理解と広
範な知識の基礎付けとも言うべき「人間学概論」、さらに、情報社会に対応する基礎力を培う
「情報処理」や国際化に対応する能力を培う外国語科目を開設しており、いずれも 3 学科共通
の必修・選択必修科目とされている。この他、共通科目には基礎教育に必要な人文科学、社会
科学、自然科学系の種々の科目が開設されており、学生はこれらの中から各自の学修目的に応
じて選択履修する。
共通科目、外国語科目以外で基礎教育、倫理性を培う教育に関連する内容を以下に記す。
① 人間生活学科では、従来から、学科専門科目全体が生活教養的・倫理的な性格を有してき
た。それは、従来の個別学問領域で得られた知見を人間生活という大きな枠組みの中で捉え
直す教育を目指すという学科の基本的な意図によるものである。そうした学科専門科目の中
でも基礎教育的な要素が強い科目は、原則として1、2年次に開設している。特に、「人間生
活学入門」及び「QOL入門」では、複数の学科専任教員がオムニバス形式で授業を担当し、
人間生活を総合的に捉えるための導入教育が行われている。
さらに、2007 年度入学生から 1 年次に「人間生活学研究法」、2 年次に「人間生活学研究
演習」を配置し、生活の諸事象の質的・量的分析や、アセスメント、プレゼンテーションに
関する能力の涵養を図っている。
またとりわけ倫理性の陶冶に関わる科目としては、「生命倫理」「死生論」などを選択科
目として開設している。
② 食物栄養学科では、食物と人体のみならず、食の心理的・社会的側面についても教育して
いる。特に、食と人間や社会との関係を対象とする「食と安全論」「臨床栄養学」「公衆栄
養学」、「食料流通経済論」「フードコーディネート論」(新設科目)等の科目は、管理栄
養士としての教養と倫理観を育むものと位置づけている。また、高校時代の選択科目の相違
によって生じる基礎学力の不足を補うために、1 年次に「はじめての化学」や「栄養士のた
めの化学」が設けられている。さらに、高校で化学を履修して来なかった学生に対しては、
高大連携の一つとして高校の「化学Ⅰ」をリメディアル教育として導入予定であり、2007 年
度から試験的に開始した。
③ 保育学科では、共通科目のうち他の 2 学科と同じ必修・選択必修科目の他に、さらに 8 単
位の共通科目が選択必修科目とされている。また、学科の教育目標に掲げられた「豊かな教
養を有する人間」及び「個々の子どもの発達を保障する保育者」の育成に役立つ基礎教育と
58
第3章 教育内容・方法(学士課程)人間生活学部
倫理性を培う人間教育が、具体的な開設科目に反映されている。2000 年度以降本学科の特色
となっている「障害児保育」が開設され、2006 年度以降は学科専門科目として「キリスト教
保育」が、また、保育者養成に必要な偏見を持たないようにするための「異文化理解教育」
が、それぞれ開設されている。さらに 2008 年度の「総合演習」においては、人権や国際理解
等の内容を展開している。
⑶ 「専攻に係る専門の学芸」を教授するための専門教育的授業科目とその学部・学科等の理
念・目的、学問の体系性並びに学校教育法第 52 条との適合性
人間生活学部は専門性の異なる 3 学科で構成されているので、開設される専門的授業科目も
学科毎にそれぞれの資格取得、教員免許状取得とおおむね連動したものとなっている。3 学科
で取得可能な主な資格は、いずれも人間に対する専門的なサービスに関わるものである。その
ため、これら学科専門科目は総じて人間への理解に関わる科目を中心に構成されている。これ
は、学部の理念・目的を実現するためである。すなわち、「生命及び人間の尊厳と個人の多様
な生き方」を尊重し、「他者と共存しつつ自立した生活」を営み、「多様な文化や社会の共生
を志向」する生活態度を身に付けるとともに、「諸問題に対する解決能力」を育み、「生活の
諸問題に責任をもって」かつまた「実践的に対処」しうる人間を育てようとするのである。
これら 3 学科の専門科目は、一方では「広く知識を授けると共に、深く専門の学芸を教授研
究し、知的、道徳的及び応用的能力」を展開させるに相応しい体系性を備えており、他方では、
それぞれの学科の理念のみならず学部理念とも緊密に関連しつつ、広く人間に対する専門的サ
ービスに関する資格及び免許状取得に繋がるという共通性によって、人間生活学という学問の
体系性に沿うものとなっている。
また、共通科目と学科専門科目との連動に基づいて学科専門科目相互の学年配当を調整する
ことによって、人間や生活に関する基礎的理解の上に専門的知識・技能を構築し、その能力の
応用的展開を可能にしている。
また、2001 年 4 月開設以来 8 年、図書館情報学課程は各専門分野における情報技術や広くコ
ミュニケーションに関する一層の学修機会を提供してきたが、人間生活学部学生の間にも一定
の定着を見た。
① 人間生活学科は、人間生活に関わる多様な教養・知識・技能を統合して生活に応用するこ
とを目指しており、これを具現するために「クオリティ・オブ・ライフ」「生活と環境」「生
活と福祉」の 3 領域の専門科目を配置している。特に「クオリティ・オブ・ライフ」の領域
の科目は主に 1∼2 年次に開講され、生活・環境・福祉の専門性の基礎となる人間の理解や生
活の質についての基礎的学習を行う。そして「生活と環境」「生活と福祉」において専門的
学習に取り組み、4 年次の「テーマ研究 A・B・C」や「卒業研究演習Ⅰ・Ⅱ」において応用と
集成統合へ展開する。
② 食物栄養学科では、人間生活(ヒューマン・ライフ)の視点から、人と人との関わりの中
でとらえた「食と栄養」の教育・研究を目指し、豊かな人間性、創造性を養うと共に、科学
に基づいた広い知識と健全な批判力を磨くことを目的としている。そのために、基本的には
栄養士法に基づいているが、食物と人体に関する科学の根拠(「人体の構造と機能及び疾病
の成り立ち」「食べ物と健康」「基礎栄養学」「応用栄養学」)と食べる人の心理(「栄養
教育論」)、社会を取り巻く環境(「社会環境と健康」「公衆栄養学」)をバランス良く学
59
第3章 教育内容・方法(学士課程)人間生活学部
ぶことができるような全人教育を行いながら、管理栄養士として必要な技術、技能(「臨床
栄養学」「給食経営管理論」)を習得できるようになっている。これにより、自分たちの住
んでいる地域社会の中で人間栄養学をとらえ、自らが果たさなければならない役割と、自分
の個性に応じて社会の進路を知ることができ、
国家社会の形成者としての資質が高められる。
③ 保育学科では、学校教育法第 52 条にいう知的、道徳的な能力を伸ばす教育内容が、具体的
実践において深く学園の理念を学ぶ機会を提供している。また、広く一般的な共通科目を基
盤としながら、学年に必要な専門科目を開講している。学科専門科目では、演習・実習・専
門研究法を課すことによって、専門的能力を育成する構成となっている。
小人数指導体制による 3 年次「保育学研究演習」、4 年次「卒業研究」は、4 年制課程に相
応しく専門性を充実させた内容となっている。
⑷ 一般教養的授業科目の編成における「幅広く深い教養及び総合的な判断力を培い、豊かな
人間性を涵養」するための配慮の適切性
人間生活学部における授業科目編成の 3 区分、すなわち、共通科目、外国語科目、学科専門
科目のうち、一般教養的授業科目に相当するのは基本的に共通科目である。共通科目の必修単
位は、3 学科とも 10 単位である。そのうち 6 単位は、「キリスト教学」「聖書学概論」「人間
学概論」であり、これらはいずれも西欧文化に関する一定の理解なしには成り立ちえない「幅
広く深い教養及び総合的な判断力を培い、豊かな人間性を涵養」することに資する科目でもあ
る。これと関連する科目として、選択科目ではあるが、「哲学」「倫理学」「文学」「芸術」
等が開設されている。また、「国際理解教育」「異文化間コミュニケーション」等は、学部理
念である「多様な文化や社会の共生を志向」する上で重要な科目として位置づけられている。
なお、他学科専門科目や他学部学科専門科目、協定校修得科目が、さらに、2008 年度からは
他大学等で修得した単位が選択単位として算入できるようになっている。(「札幌圏大学・短
期大学間単位互換制度(通称:Green Campus)」)
⑸ 外国語科目の編成における学部・学科等の理念・目的の実現への配慮と「国際化等の進展
に適切に対応するため、外国語能力の育成」のための措置の適切性
従来どおり、3 学科とも、外国語科目の必修あるいは選択必修科目は 6 単位以上となってい
る。英語科目は、育成しようとする能力の違いに従って、「総合英語」「実用英語」「英語講
読」「コミュニケーション英語」等から構成されている。食物栄養学科では、このうち特に「総
合英語」2 単位を必修としているが、食物栄養学科学生対象のこの科目においては、専門分野
で活用可能な英語の基礎力を固めるために、使用する教材を食物栄養に関連する分野から選ん
で、食物栄養分野の文献を読むための総合的な英語力の向上を図っている。
英語以外の外国語科目としては、ヨーロッパ系ではドイツ語とフランス語、アジア系では中
国語とコリア語を開設している。
なお、保育学科では、外国語科目 6 単位以上のうち、幼稚園教諭免許状取得のために、2 単
位は「コミュニケーション英語」「ドイツ語演習」「フランス語演習」「中国語演習」の 4 科
目から選択することになっている。
⑹ 教育課程の開設授業科目、卒業所要総単位に占める専門教育的授業科目・一般教養的授業
科目・外国語科目等の量的配分とその適切性、妥当性
人間生活学部における卒業必要単位数(126 単位以上)を構成する授業科目は、一般教養的
60
第3章 教育内容・方法(学士課程)人間生活学部
授業科目に相当する共通科目、外国語科目、専門教育的授業科目に相当する学科専門科目から
なっている。学科専門科目の必修単位数は学科によって異なっているが、それはそれぞれの学
科の特性を反映したものである。すなわち、現在、人間生活学科における学科専門科目の必修
単位数は 24 単位、食物栄養学科のそれは 100 単位、保育学科のそれは 26 単位である。保育学
科ではこの他幼稚園教諭免許指定科目から選択必修科目 30 単位が課されている。
保育学科を除
き、学科専門科目の必修単位は人間生活学科が 16 単位(2006 年度入学生)からの改訂、食物
栄養学科が 97 単位(2005 年度入学生)、98 単位(2006・2007 年度入学生)からの改訂である。
一方、共通科目の必修単位数は 3 学科共通して 10 単位であるが、保育学科では他の 2 学科と異
なって必修科目以外の共通科目から 8 単位以上を選択必修科目としている。ただし、保育学科
の 2004・2005 年度入学生については 12 単位以上であった。外国語科目の必修ないし選択必修
科目は 6 単位で 3 学科共通している。
⑺ 基礎教育と教養教育の実施・運営のための責任体制の確立とその実践状況
人間生活学部における基礎教育と教養教育の実施・運営は、従来から、人間生活学部カリキ
ュラム委員会が共通科目・外国語科目を通じて行っている。当該委員会の構成員は、学部長、3
学科主任、各学科の教務部委員会委員各 1 名である。また、各学科においても、それぞれの学
科専門教育の一貫としてではあるが、一部、基礎科目あるいは教養科目を実施・運営している。
⑻ カリキュラム編成における、必修・選択の量的配分の適切性、妥当性
人間生活学部のカリキュラムの編成は、従来から「共通科目」、「外国語科目」、各学科の
「学科専門科目」からなっている。各学科の科目履修方法及び卒業要件は、学則第 18 条から第
20 条に規定されており、2008 年度入学生に適用される卒業要件を示すと、次のとおりである。
表 3-8 卒業要件
人間生活学科
授業科目区分
単位区分
必
修
単
位
共通科目
外国語科目
10単位
6単位以上
72単位以上
126単位以上
選 択 必 修 単 位
選
択
単
位
人間生活学科
専 門 科 目
24単位
14単位以上
卒業必要単位数合計
*他学科専門科目は、8単位まで選択単位として算入できる。
*教職に関する科目は、指定された科目のうち8単位まで選択単位として算入できる。
*他学部学科専門科目及び協定校修得科目(本学教育課程表外の科目)は、合わせて 8 単位まで選択単位として算
入できる。
*他大学等で修得した単位は、8 単位まで選択単位として算入できる。
食物栄養学科
授業科目区分
単位区分
必
修
単
位
共通科目
外国語科目
10単位
2単位
4単位以上
10単位以上
126単位以上
選 択 必 修 単 位
選
択
単
位
食物栄養学科
専 門 科 目
100単位
卒業必要単位数合計
*他学科専門科目、他学部学科専門科目、教職に関する科目(指定科目)及び協定校修得科目(本学教育課程
表外の科目)は、合わせて 8 単位まで選択単位として算入できる。
61
第3章 教育内容・方法(学士課程)人間生活学部
保育学科
授業科目区分
単位区分
必
修
単
位
選 択 必 修 単 位
選
択
単
共通科目
外国語科目
10単位
8単位以上
6単位以上
保 育 学 科
専 門 科 目
26単位
幼免指定科目から
30単位以上
46単位以上
位
卒業必要単位数合計
126単位以上
*他学科専門科目、他学部学科専門科目、協定校修得科目(本学教育課程表外の科目)及び他大学等で修得した
科目は、合わせて 8 単位まで選択単位として算入できる。
「共通科目」のうち人間生活学部で必修としているのは、次に示す合計 10 単位である。すな
わち、本学の建学の精神と深い部分で繋がる「キリスト教学」(2 単位)、「聖書学概論」(2 単
位)の他に、「人間学概論」(2 単位)、「情報処理」(2 単位)、「運動の実践」(2 単位)である。
「外国語科目」では、人間生活学科と保育学科が、英語、ドイツ語、フランス語、中国語、コ
リア語から 6 単位以上を選択必修としており、食物栄養学科は、「総合英語」(2 単位)を必修、
その他 4 単位以上を選択必修としている。
人間生活学科では、他学科に比べて選択単位数が多いが、学生にその学修目的に応じて履修
科目の自由な選択を促すためであり、これは、幅広い教養を基礎として、人間・生活・環境・
福祉という広い領域にわたる知識・技能を統合して日常生活に応用し、環境と調和した生き方
と共生社会の実現に貢献することができる女性を育てるという学科の教育目標に由来する。
食物栄養学科では、管理栄養士養成に必要な指定科目を履修することを原則としてきたこと
から、従来必修科目単位数が 100 単位と多かった。しかし、2009 年度以降は栄養士養成に必要
な科目を基本として必修科目単位数を 90 単位に減らし、
管理栄養士養成に必要な 6 科目を選択
科目に変更した。また、指定科目の形態は講義、演習、実験、学内実習及び学外実習に分類さ
れるが、実験・実習が多い(学外実習 3 科目を含めて 16 科目 29 単位)ことが特色である。
保育学科では、学科専門科目として必修科目 26 単位、選択科目 177 単位、合計 203 単位が開
設されている。幼稚園教諭一種免許状、保育士資格の取得について言えば、前者に係る必修が
32 単位、後者に係る必修が 59 単位である。このうち、2 つの免許・資格をあわせて取得するの
に必要な科目数から重複科目分を除くと、必修単位の合計は 81 単位である。その他、文部科学
省・厚生労働省が示す選択必修科目がある。
2.カリキュラムにおける高・大の接続
⑴ 学生が後期中等教育から高等教育へ円滑に移行するために必要な導入教育の実施状況
共通科目の「情報処理」の実施に当たっては、高校における授業内容の変化を踏まえた内容
で実施されるよう人間生活学部カリキュラム委員会で配慮している。
人間生活学科では、家庭科教員免許や社会福祉士国家試験受験などの資格取得を目指して入
学する学生や、人間生活に関わる幅広い教養の学習を目的に入学する学生もいる反面、目的意
識の希薄な学生も入学してくる。したがって、大学の専門教育を理解する学力のレディネスの
問題というよりも、この学科で何を学ぶか、学ぶべきか、学べるかについての再確認が重要に
なる。このため、「人間生活学入門」「QOL 入門」などが、導入教育だけでなく学科における
学習への目的意識を喚起する役割を持っている。
62
第3章 教育内容・方法(学士課程)人間生活学部
食物栄養学科では、「栄養士のための化学」に続いて「はじめての化学」を開設し、化学に
関する導入教育を実施し現在に至っている。また、2009 年度からのリメディアル教育導入を現
在検討しており、2008 年度には、高校で化学を履修して来なかった学生や、履修したものの入
試科目としては選択しなかった学生に対し、試験的に「化学Ⅰ」の集中講義を行った。
保育学科では、2008 年度より 2 年次開講の「総合演習」において、現代生活の背後にある社
会・経済環境を多角的に捉えることによって、広い視野を持って学ぶことの大切さや問題解決
へのアプローチの仕方等を学修している。
3.カリキュラムと国家試験
⑴ 国家試験につながりのあるカリキュラムを持つ学部・学科における、カリキュラム編成の適切性
人間生活学科では社会福祉士国家試験受験資格が取得可能なカリキュラムを配置している。
このカリキュラムは、選択履修の位置づけで、2000年度入学生から適用されたものであるが、
当初から学科定員80名のうち30∼40名が取得し卒業している。このカリキュラムの配置は、基
本的には、学科が建学の理念である「人間性の尊重」や「愛と奉仕」につながる福祉教育を教
育目的の柱のひとつにしてきたことに由来し、その延長線上でとられた措置である。社会福祉
の専門職養成は副次的であり、むしろ社会福祉士国家試験受験資格が取得可能なカリキュラム
の配置によって福祉教育そのものを充実させることを主眼としている。
とはいえ、社会福祉士国家試験受験資格を取得した学生の約8割は4年次の卒業間際に実施さ
れる国家試験を受験し、合格率は10%前後で推移している。全国の合格率平均27∼28%に比べ
て低率であることは否めないが、国家試験合格を確固たる目標に据えている学生の割合は少な
く、実際に福祉・医療分野に就職する学生の割合は学生定員の10%前後である。
食物栄養学科では厚生労働省の管理栄養士養成施設の認定を受けており、1991年度入学生か
ら管理栄養士国家試験受験資格が取得可能なカリキュラムを配置している。現状では、全員が
管理栄養士国家試験受験資格を取得して卒業するカリキュラムとなっている。しかし、卒業後
の進路志望の変化などに対応すべく、2009年度入学生からは管理栄養士国家試験受験資格を取
得せずに栄養士として卒業可能なカリキュラムに変更した。食物栄養学科では1995年から卒業
生を輩出し、管理栄養士国家試験の受験合格率はその年の学生のレベルや気質に左右されつつ
も、概ね70∼90%の間で推移している。
4.授業形態と単位の関係
⑴ 各授業科目の特徴・内容や履修形態との関係における、その各々の授業科目の単位計算方
法の妥当性
本学の単位の算定基準は、大学設置基準第 21 条に準拠した学則第 17 条により、「講義及び
演習については、15 時間から 30 時間の授業をもって 1 単位」、「実験、実習、実技については、
30 時間から 45 時間の授業をもって 1 単位」と規定されている。
履修方法及び卒業の要件は、学則第 18 条から第 20 条に規定されている。卒業のために必要
な単位数は人間生活学部では 3 学科とも 126 単位以上で共通しているものの、履修方法は学科
によって異なる。また、人間生活学部の卒業研究についてはその詳細を「卒業研究規程」に定
め、人間生活学科は 4 単位、食物栄養学科は 6 単位、保育学科は 2 単位となっている。
人間生活学部 3 学科は、各種教員免許状、社会福祉士国家試験受験資格、管理栄養士国家試
63
第3章 教育内容・方法(学士課程)人間生活学部
験受験資格、保育士資格等が取得可能なカリキュラムを編成している。これら各種免許・資格
に関わる科目は文部科学省、厚生労働省が求める指定科目であり、授業形態、講義回数、講義
規模等が定められている。
5.単位互換、単位認定等
⑴ 国内外の大学等での学修の単位認定や入学前の既修得単位認定の適切性(大学設置基準第
28 条第2項、第 29 条)
本学では、大学設置基準第 28 条、29 条及び 30 条に準拠した本学学則第 19 条の 2「他の大学
又は短期大学における授業科目の履修等」及び第 19 条の 3「大学以外の教育施設等における学
修」、学則 19 条の 4「入学前の既修得単位等の認定」に基づき、教育上有益と認める場合、本
学以外の教育施設等での学修や入学前の既修得単位を、
合わせて 60 単位を超えない範囲で本学
において修得した単位として認めることを定めている。
本学が単位認定を行う大学以外の教育施設、課程、講習等は以下のとおりである。
① 大学専攻科
② 高等専門学校(大学において大学教育に相当する水準を有すると認めたもの)
③ 専修学校専門課程(修業年限が 2 年以上のもの)(大学において大学教育に相当する水
準を有すると認めたもの)
④ 教育職員免許法に基づく認定講習・公開講座(大学において大学教育に相当する水準を
有すると認めたもの)
⑤ 社会教育主事講習(大学において大学教育に相当する水準を有すると認めたもの)
⑥ 司書・司書補講習
⑦ 司書教諭講習(大学において大学教育に相当する水準を有すると認めたもの)
人間生活学部では、2007 年度に「札幌圏大学・短期大学間単位互換制度」
(通称:Green Campus)
への参加について検討し、2008 年度から人間生活学科と保育学科で導入を始めた。これは札幌
圏にある 8 大学・4 短期大学が互いに提供する単位互換科目を履修し、それを所属大学の単位
として認定する制度である。この制度は、各大学(学部・学科)における特色ある科目が単位
互換科目として提供され、学生が自分の専攻を深める、あるいは自分の大学にない分野の科目
を学ぶことができるなど、履修機会の拡大を目的としたものである。授業料は無料(ただし、
実験・実習・演習費については徴収する場合がある)で、1 年間に履修できる単位数は 10 単位
以内である。修得単位は卒業要件(選択単位)として算入することができ、履修できるのは 2
年次以上の学生である。(「学生便覧」197 頁参照)
海外留学協定校に関しては、現在、学則 19 条の 2 に則り、マリアン大学(米)、セント・エ
リザベス大学(米)、エマニュエル大学(米)、ベネディクティン大学(米)、オーストラリ
アカトリック大学(豪)、グリフィス大学(豪)、韓国カトリック大学(韓国)、明知大学(韓
国)、輔仁大学(台湾)にて修得した単位を本学において修得した単位として認定している。
また、学則 19 条の 3 に則り、海外単位認定指定校の語学センター等(オーストラリアとニュ
ージーランド)での短期語学留学による学修を単位認定している。これまでは短期語学留学の
単位は、「外国語科目」内の英語科目への認定を行ってきたが、2008 年度より新たに単位認定
のための科目として「外国語科目」に「海外語学研修 A」、
「海外語学研修 B」を開設した。
(「学
生便覧」156 頁参照)
64
第3章 教育内容・方法(学士課程)人間生活学部
人間生活学部では 2008 年度より協定校修得科目(本学課程表外の科目)について、学科別に
次のように枠を設定している。(「学生便覧」66∼67 頁 別表第 8-1∼第 8-3 参照)
人間生活学科:他学部学科専門科目及び協定校修得科目(本学教育課程表外の科目)は、合
わせて 8 単位まで選択単位として算入できる。また、他大学等で修得した単
位は、8 単位まで選択単位として算入できる。
食物栄養学科:他学科専門科目、他学部学科専門科目、教職に関する科目(指定科目)及び
協定校修得科目(本学教育課程表外の科目)は、合わせて 8 単位まで選択単
位として算入できる。
保 育 学 科:他学科専門科目、他学部学科専門科目、協定校修得科目(本学教育課程表外
の科目)及び他大学で修得した科目は、合わせて 8 単位まで選択単位として
算入できる。
人間生活学部における 2007 年度の単位認定状況は、大学基礎データ(表 5)に示すが、その
内訳は次の表 3-9 のとおりである。
表 3-9 入学前の既修得単位及び海外協定校留学等での学修の単位認定状況
海外協定校
入学前の既修得単位
海外協定校留学の単位
短期語学研修の単位
認定単位数
認定単位数
認定単位数
学
科
認定
認定
認定
者数
専門
科目
専門
以外
平均
者数
専門
科目
専門
以外
平均
0.0
1
0
8
8.0
0
0
0
0.0
26
15.0
0
0
0
0.0
0
0
0
0.0
0
0
0.0
0
0
0
0.0
0
0
0
0.0
4
26
15.0
1
0
8
8.0
0
0
0
0.0
者数
専門
科目
専門
以外
人間生活学科
0
0
0
食物栄養学科
2
4
保 育 学 科
0
計
2
平均
6.開設授業科目における専・兼比率等
⑴ 全授業科目中、専任教員が担当する授業科目とその割合
2008 年度における人間生活学部授業科目の専・兼比率は、大学基礎データ(表 3)のとおり
である。「共通科目・外国語科目」の専・兼比率は前期 22.9、後期 23.4 だが、これを科目区
分ごとに 2005 年度調査と比較すると、「共通科目」では、前期は 2005 年度 44.7 から 2008 年
度 43.3、後期は 2005 年度 53.8 から 2008 年度 50.0 とほぼ変化はない。「外国語科目」につい
ては、前期は 2005 年度 11.4 から 2008 年度 7.5 へ、後期は 2005 年度 11.4 から 2008 年度 7.5
と専任教員が担当する授業科目数の平均値が低下した。
「学科専門科目」に関する専・兼比率は、人間生活学科では前期は 2005 年度 62.4 から 2008
年度 63.8 とほぼ同じ比率であるが、
後期は 2005 年度 74.2 から 2008 年度 68.5%へと低下した。
食物栄養学科では、前期は 2005 年度 78.6 から 2008 年度 64.8%、後期は 2005 年度 77.2 から
2008 年度 68.1%へと低下した。保育学科では、前期は 2005 年度 65.6 から 2008 年度 60.7、後
期は 2005 年度 71.1 から 2008 年度 58.5%へと低下した。
「教職科目」については、前期は 2005 年 87.5 から 2008 年 79.4、後期は 2005 年度 88.9 か
ら 2008 年度 84.7 である。
65
第3章 教育内容・方法(学士課程)人間生活学部
⑵ 兼任教員等の教育課程への関与の状況
2008 年度の人間生活学部における兼任教員数は、大学基礎データ(表 19-2)にあるとおり、
141 名である。また、専・兼比率はやはり同データ(表 3)にあるとおり、「共通科目・外国語
科目」前期 22.9%/後期 23.4%、「人間生活学科専門科目」前期 63.8%/後期 68.5%、「食物
栄養学科専門科目」前期 64.8%/後期 68.1%、「保育学科専門科目」前期 60.7%/後期 58.5%
である。兼任比率は、共通科目及び外国語科目で高い。また、学科専門科目で兼任教員が多い
のは、人間生活学科では、「クオリティ・オブ・ライフ」と「生活と福祉」の区分、食物栄養学
科では、「公衆栄養学」「臨地実習」「その他」の区分、保育学科では、「保育の理論」「児
童の理解」「保育の基礎技能」の区分である。
7.社会人学生、外国人留学生等への教育上の配慮
⑴ 社会人学生、外国人留学生、帰国生徒に対する教育課程編成上、教育指導上の配慮
本学には、入試制度として社会人入試及び外国人留学生入試が設けられているが、人間生活
学部では、2004 年度∼2008 年度入試で後者を利用して受験した者はいなかった。
社会人入試制度を利用して受験した者に関する情報は、大学基礎データ(表 13)に記載され
ているとおりである。ちなみに、2004 年度∼2008 年度の人間生活学部のそれを表にすると次の
表 3-10 のとおりである。
表 3-10 社会人入試制度による志願者・合格者・入学者
学科名
人間生活学科
食物栄養学科
保 育 学 科
2004 年度 2005 年度 2006 年度 2007 年度 2008 年度
志願者
0
0
1
1
0
合格者
0
0
1
1
0
入学者
0
0
1
1
0
志願者
3
1
5
3
5
合格者
3
1
1
2
3
入学者
2
1
1
2
3
志願者
0
0
0
0
0
合格者
0
0
0
0
0
入学者
0
0
0
0
0
2
1
2
3
3
入学者合計
人間生活学科では、社会人学生について特段の教育課程編成は行っていないが、学外実習の
実施に際しては当該学生の生活(家庭)事情に配慮した実習施設配置を行っている。
食物栄養学科では、他学科に比べ比較的多くの社会人学生を受け入れているが、これは管理
栄養士の役割の重要性が近年一般社会で認識されてきたためと考えられる。管理栄養士養成課
程としての教育課程編成のため、社会人学生を特に区別はしていない。しかし、1年生のクラ
ス担任が個別に当該学生の入学までの経緯に配慮し、大学、短大出身者には単位認定のアドバ
イスを行ったり、選択基礎科目の履修を促したりしている。また、学外実習の配置では、人間
生活学科と同様に生活(家庭)事情に配慮している。
保育学科には、これまで、社会人学生制度利用した入学生は見られない。
66
第3章 教育内容・方法(学士課程)人間生活学部
第2 教育方法等
1.教育効果の測定
⑴ 教育上の効果を測定するための方法の有効性
人間生活学部で教育上の効果を測定するために用いられている方法は、課題、リアクション
ペーパー、小テスト、試験、レポート等であるが、これらはいずれも教員個人のレベルにとど
まるものである。また、従来の「学生による授業評価」は、教務部委員会で質問項目を含めて
精査・検討を経て作成された原案を基に改訂され、2006 年度後期以降、名称も「授業改善に関
するアンケート」と改められて、各学期末に実施されている。当該アンケートは、授業単位で
受講学生自身、授業の内容・進め方・環境、そして総合的判断に関する項目について学生の意
見を求めるものであり、その結果の分析は各授業の教育上の効果を測定する上である程度役立
っている。しかし、教育上の効果を測定するための本学独自の方法については、各教員の工夫
と努力の中で模索されているのが現状である。
家庭科教員採用試験の結果や社会福祉士国家試験の合格者数と合格率(人間生活学科)、管
理栄養士国家試験の合格者数と合格率
(食物栄養学科)
なども学科としては参考にしているが、
教員採用試験は、その時々の教員の欠員情況など外的要因に左右されるものであり、あくまで
も補助的な資料に過ぎない。
⑵ 卒業生の進路状況
2005 年度∼2007 年度の人間生活学部学生の進路状況を学科別に見ると、それぞれの年の 5
月 1 日現在で次の表 3−11 のとおりである。しかし、食物栄養学科については、5 月 1 日が管
理栄養士国家試験の合格者発表前であり、就職活動を合格後に開始する学生や国家試験結果発
表後に採用する職場が少なくないことから、この時点で就職未定者が多いのはやむを得ない。
人間生活学科では、卒業予定者で進学(大学院・専門学校等)するのは約 5%であり、約 10%
は就職を希望しないか就職活動に消極的である。そして就職希望者の約 70%は一般企業へ就職
し、約 10%が福祉・医療職へ、約 10%は教育職(教員または時間講師等)に就き、就職が難し
いのは約 5∼10%である。
食物栄養学科では、過去 10 年間の就職状況を見てみると、栄養士、管理栄養士として勤務す
る病院(31.8%)、公務員(14.9%)、給食委託会社(9.8%)、教育(6.5%)、社会福祉関
係(6.5%)、を合わせると 69.5%となり、就職した約 7 割の学生が栄養士、管理栄養士とし
て就職していることが分かる。また、製造業も 14.8%あり、企業で自らの食品に関連する専門
を生かした食品開発や食品検査の業務にたずさわっている。また、大半は本学の大学院ではあ
るが、一部は他大学の大学院に進学する学生がおり、全体の約 5%であった。
保育学科では、年度によって若干変動はあるが、保育関係が約 80∼85%、一般職や進学など
が約 15∼20%となっている。なお、「就職者内訳」表では、私立保育園は一般企業の区分に入
るため、直接数値としては表れない。また、「業種別就職状況」表でも、福祉施設とともに社
会福祉欄に区分されている。私立幼稚園は教員欄に区分され、公立の場合は、幼稚園も保育園
も「公務」に区分されている。
67
第3章 教育内容・方法(学士課程)人間生活学部
表 3-11 就職者内訳(分子は決定者数、分母は希望者総数)
(2005 年度)
内訳
卒業者数
学科
就 職
進 学
教員
その他
公務員
一般企業
計
人間生活学科
89
2/ 2
7/ 7
1/ 1
66/ 73
74/ 81
6
食物栄養学科
84
4/ 4
0/ 0
6/ 8
52/ 71
58/ 79
1
保 育 学 科
90
1/ 1
34/35
4/ 4
47/ 47
85/ 86
3
計
263
7/ 7
41/42
11/13
165/191
217/246
10
卒業者数
進 学
(2006 年度)
内訳
学科
就 職
教員
公務員
その他
一般企業
計
人間生活学科
83
3/ 4
3/ 3
2/ 3
62/ 67
67/ 73
6
食物栄養学科
85
6/ 6
0/ 0
8/14
52/ 60
60/ 74
5
保 育 学 科
81
0/ 0
32/33
8/ 8
36/ 37
76/ 78
3
249
9/10
35/36
18/25
150/164
203/225
14
卒業者数
進 学
一般企業
計
計
(2007 年度)
内訳
学科
就 職
教員
公務員
その他
人間生活学科
80
3/3
7/ 7
1/ 1
57/ 59
65/ 67
10
食物栄養学科
84
4/4
5/ 6
6/10
54/ 63
65/ 79
1
保 育 学 科
89
1/1
35/35
13/13
38/ 38
86/ 86
2
計
253
8/8
47/48
20/24
149/160
216/232
13
表 3-12 業種別就職状況
(2005 年度)
建設
製造
電気ガス
情報通信
運輸
卸売
小売
金融
保険
不動産
飲食宿泊
医療
社会福祉
学校教育
その他教育
法務
学術研究
宗教
国家公務
地方公務
人間生活学科
74
4
8
0
3
1
6
9
8
2
0
0
6
6
7
2
0
0
0
0
11
0
1
食物栄養学科
58
0
8
0
0
0
3
1
1
0
0
0
12
6
3
0
0
0
1
0
17
0
6
保 育 学 科
85
1
0
0
0
2
0
1
2
1
0
0
0 35 34
1
0
0
0
1
3
0
4
計
217
5
16
0
3
3
9
11 11
3
0
0
18 47 44
3
0
0
1
1
31
0
11
サービス業
公務
その他
分類
医療・ 教育支
福祉業 援業
複合サービス
就職決定数
卸・
金融業
小売業
業種別
学科
68
第3章 教育内容・方法(学士課程)人間生活学部
(2006 年度)
建設
製造
電気ガス
情報通信
運輸
卸売
小売
金融
保険
不動産
飲食宿泊
医療
社会福祉
学校教育
その他教育
法務
学術研究
宗教
その他
国家公務
地方公務
人間生活学科
67
1
7
0
0
6
3
6
8
7
2
1
5
3
6
0
2
0
0
0
8
0
2
食物栄養学科
60
0
6
0
0
0
2
4
0
0
0
3
19
2
1
0
0
0
0
0
15
1
7
保 育 学 科
76
0
1
0
0
1
0
2
1
1
0
0
0
26 34
1
0
0
0
0
2
0
7
計
203
1
14
0
0
7
5
12
9
8
2
4
24 31 41
1
2
0
0
0
25
1
16
分類
医療・ 教育支
福祉業 援業
複合サービス
就職決定数
卸・
金融業
小売業
業種別
サービス業
公務
学科
(2007 年度)
電気ガス
情報通信
運輸
金融
保険
不動産
飲食宿泊
医療
社会福祉
学校教育
その他教育
法務
学術研究
宗教
その他
国家公務
地方公務
1
2
0
2
2
0
13
9
2
0
1
3
5
9
2
6
0
0
0
7
0
1
食物栄養学科
65
0
8
0
2
0
3
3
2
1
0
3
13 10
6
0
0
0
1
0
7
0
6
保 育 学 科
86
0
0
0
3
0
1
5
0
1
0
3
0
24 35
0
0
0
0
0
1
0
13
計
216
1
10
0
7
2
4
21 11
4
0
7
16 39 50
2
6
0
1
0
15
0
20
医療・ 教育支
福祉業 援業
複合サービス
製造
65
小売
建設
人間生活学科
分類
卸売
就職決定数
卸・
金融業
小売業
業種別
サービス業
公務
学科
2.成績評価法
⑴ 厳格な成績評価を行う仕組みと成績評価法、成績評価基準の適切性
授業科目の成績は、学則第 19 条により、試験またはレポートによって評価することが原則と
されている。実際の成績評価に当っては、当該科目のねらいや形態(講義、演習、実験)等に
応じ、試験またはレポートの結果に加え、出席状況、受講態度、小テストなどが考慮される。
人間生活学部に多く開講されている実験・実習科目の場合は多くはレポートによる評価が中心
となっており、学外実習科目については実習先の第三者による評価及び実習日誌、レポートに
よって評価している。
成績評価は、優(100∼80 点)、良(79∼70 点)、可(69∼60 点)、不可(59 点以下)とし、
優・良・可を合格としている。病気、公的交通機関の遅延等やむを得ない理由により、試験を受
けることができなかった場合には、追試験を実施している。正規の理由以外についての追試験
は授業担当教員の承諾が得られた場合のみ実施されており、この場合の試験に合格したときの
成績評価は可(60 点)としている。
厳格な成績評価については、人間生活学部は試行中である。まず、管理栄養士養成課程であ
る食物栄養学科において、管理栄養士国家試験にかかわる科目(学外実習を除く)について、
単位認定の最低基準を国家試験合格ラインに設定した。具体的には、国家試験合格ラインが 100
点満点に換算して 60 点であるので、管理栄養士関連科目については、授業内容を国家試験基準
で 100 点のレベルに設定し、試験内容も 60 点で成績評価が可となるように、設定した。可以上
の評価は、実際の得点によって自動的に定まることになる。他学科では、このような試みをま
69
第3章 教育内容・方法(学士課程)人間生活学部
だ導入していないが、食物栄養学科の成果を見て、その試みをそれぞれの学科の成績評価に生
かすべく準備をしているところである。人間生活学科では、そのために、授業科目のグレード
を見直す作業に入っている。
また、全学年で成績確定前に学生に成績を開示し、学生からの異議申し立てを受け付けてい
る。学生が所定の用紙により異議・確認事項を申し出た場合、担当教員は成績記入や評価につ
いての確認を行い、学生に書面で回答する。本学では、このように成績評価について学生の了
解、納得を確保することによって厳正に成績評価・判定が行われるよう努めている(前期は全
学年が 9 月、後期は 2007 年度まで 1∼3 年次が 4 月、4 年次が 3 月の卒業判定教授会前に実施、
2008 年度後期からは全学年が 3 月に実施)。
⑵ 履修科目登録の上限設定等、単位の実質化を図るための措置とその運用の適切性
履修登録単位数の上限については、「学生便覧」に「授業科目の履修要項の 9 の(2)履修登録
単位数の上限」として明記(「学生便覧」198 頁)されている。2006 年度入学生までは各学年
54 単位を上限としていたが、2007 年度入学生からは、自学自習の時間も考慮し余裕を持って学
修に努めることを求めて上限単位を 49 単位に下げた。
⑶ 各年次および卒業時の学生の質を検証・確保するための方途の適切性
本学はクラス担任制を採用している。学業不振者、学修意欲のない者、学業を続けるのに問
題を有する者に対しては、クラス担任のみならず、ゼミ担当者あるいは学外実習担当者を通じ
て個別的に対応し指導している。小規模大学であることのメリットとして学生の状況把握がし
やすく、きめ細かな学生の指導ができている。またシラバス等で明示した評価基準に基づいて
適切な成績評価・卒業判定をおこなうことにより、学生の卒業時における質の確保を図ってき
た。さらに本学では、保証人が学生の就学状況、単位修得状況を把握できるように、年度ごと
に保証人宛に学生の成績表を送付している。
こうしたきめ細かい指導を行ってきたにもかかわらず、近年、本学では留年者が増加傾向に
あり、
その改善のために 2007 年度以降入学生からは一定の単位数以上の修得を進級条件とする
「進級制度」を導入した。これにより、従前より早い時期から学業不振者への指導が可能にな
ることが期待できる。
各学科の進級に必要な単位数は、以下の表に示すとおりである。なお、進級の判定は 2008
年度末から行われる。
表 3-13 進級に必要な単位数(2007 年度入学生から適用)
人間生活学科
食物栄養学科
保育学科
2 年次終了までに 50 単位以上
2 年次終了までに 50 単位以上を
2 年次終了までに 49 単位以上
を取得しておかなければならな 取得しておかなければならない。 を取得しておかなければならな
い。
3 年次終了までに 90 単位以上を い。
取得しておかなければならない。
(「学生便覧」200 頁)
3.履修指導
⑴ 学生に対する履修指導の適切性
人間生活学部では、
入学式の翌日から3日間にわたって新入生のためのオリエンテーションが、
70
第3章 教育内容・方法(学士課程)人間生活学部
また入学式の翌々日には在学生のためのガイダンスがそれぞれ実施されている。
新入生に対する履修指導は、全体オリエンテーション(学生部ガイダンス、教務係等)と学
部単位・学科単位のオリエンテーションに区分され、それらを通して履修方法、免許・資格の
取得、履修登録方法、履修単位の上限、進級の条件などについて、系統立ててガイダンスして
いる。また、履修方法や履修科目登録方法の詳細等、より具体的な事柄については、各学科と
も学科指導、担任指導の時間を設け、「学生便覧」や「履修ガイド−履修の手引き・シラバス
−」と時間割を参照しながら、学生一人ひとりがその学修目的に沿って自分の時間割を作るこ
とができるように、きめ細かい指導をしている。担任指導の時間には、担任以外の学科教員も
協力して、聞き漏らしや理解しにくい点について個別に相談できるよう配慮している。特に、
人間生活学部では各学科とも、免許や資格取得のための科目履修が複雑なので、必要な補足説
明を加えながら、
個別質問の時間も十分用意して、
科目履修に関する理解の徹底に努めている。
先の「履修ガイド」の「履修の手引き」の部分には、それぞれの学科に係る免許・資格取得の
ための履修モデルを掲載すると同時に、オリエンテーション期間中にも別途資料を配付して説
明する機会を設けている。
また、履修科目登録は現在WEBを用いる方法がとられているので、このための説明も行われて
いる。なお、履修科目登録期間は、授業開始後1週間に設定されている。
その他の学科別取り組みとして、人間生活学科では新入生に対して2007年度から「生活学習
支援員」(長期休みを除き毎週1日、学科のあるフロアに設置した「学習支援室」で相談待機)
を配置し、保育学科では、習熟度別のクラス編成を行う音楽科目、履修の際に抽選がある子育
て支援関連科目、選択制となっている特別支援学校教諭一種免許状に関連する科目の履修につ
いての説明(1コマ)を実施している。
在学生については、各学科ともそれぞれクラス担任による履修ガイダンスを行っており、当
該学年に開講される科目の受講に当たっての注意点、各種実習、履修単位の上限、進級条件、
演習や卒業研究演習等について留意事項の確認・周知を図っている。特に単位未修得の科目が
ある学生に対しては、当該科目を何年次に再履修するのが望ましいか等、個別指導を行ってい
る。また、4 年生に対しては、免許・資格取得等に必要な単位数や卒業要件の充足等について
確認をしている。
⑵ 留年者に対する教育上の措置の適切性
人間生活学部の卒業留年者数は、2005年度5名、2006年度6名、2007年度4名であり、前回(『現
状と課題』第4号の数値(2002年度3名、2003年度1名、2004年度5名)と比べると若干上昇した
が、それでも他大学と比べれば少ない。留年者に対しては、各学科のクラス担任及びゼミ担当
教員、さらに教務係員がそれぞれ協力して対応・指導している。
表3-14 卒業留年者数(2005年度∼2007年度)
年度
2005年度
2006年度
学科
人間生活学科
4(1)
3
食物栄養学科
1
保 育 学 科
0
2(1)
2007年度
2
1(1)
1
1
※( )内は2年以上留年の内数
71
第3章 教育内容・方法(学士課程)人間生活学部
通常の4年間では卒業できない留年は、怠学のほか、留学、健康や経済的事情による休学など
さまざまな理由によって生じるため、それぞれの事情に応じた個別的な対応が求められる。
人間生活学科においては、まれに単位の履修がはかどらないままに4年次に至り、極端な場合
は1年次開設科目と4年次開設科目を履修して、整合性を欠いた履修登録内容の留年が続くケー
スが生じることもあった。そういった場合には事情に合わせた履修指導や、留年者が後年度入
学生との交流が得られるように特にクラス担任を介した指導が行われてきた。
食物栄養学科では、学外実習や学内の実験・実習との関係で、これに関連する科目の履修状況
を適切に把握していなければならない事情があることから、これまで留年者は比較的少ないと
いえるが、授業を担当する教員が各学年のクラス担任と連携を取り、学生の授業出席状況や授
業の習熟度などを把握しながら、学科会議などで情報を共有するなどの措置をとっている。
保育学科でも、留年者は少ないが、学業途上で保育者として不安や疑問をいだいた学生や留
年する学生がいる場合には、クラス担任やゼミ担当教員(総合演習、保育学研究演習、卒業研
究担当者)が個別に指導を行っている。
このような対応をとってはいるものの、学力の獲得状況とは別に自動的に進級してしまうと
いう 2006 年度までの本学の制度では、
基礎学力がつかないままで 4 年生へ進級してしまうとい
った弊害もあった。こうしたことを防ぐ目的で、2007 年度入学生から 2 年生から 3 年生への進
級するために必要な取得単位を新たに進級要件として設け、早いうちから留年させないですむ
ように支援することとした。
⑶ 科目等履修生、聴講生等に対する教育指導上の配慮の適切性
各学科とも科目等履修生、聴講生の数は各年度とも比較的少ない。いずれも、希望科目の担
当教員等が個別に履修・聴講の目的を聴取し、科目との適合性や履修に付帯する情報提供を行
うことでミスマッチを防いでいる。また、実習科目や演習科目の受講を希望する場合は、当該
科目担当教員が受け入れ先施設の対応をも勘案しつつ、履修・聴講希望者の意志に沿えるよう
最大限の努力を払っている。
4.教育改善への組織的な取り組み
⑴ 学生の学修の活性化と教員の教育指導方法の改善を促進するための組織的な取り組み(フ
ァカルティ・ディベロップメント(FD))およびその有効性
本学では、学生に対して「学生便覧」と並んで「履修ガイド」の作成・配布を行っている。
そのうち、
「履修ガイド」は学部ごとに分冊で発行されており、人間生活学部用の 2008 年版「履
修ガイド」の 5∼66 頁には、「人間生活学部履修ガイド」「授業科目の履修要項」「履修の手
引き」「教育課程表」が収載されている。特に「履修の手引き」には学科毎に免許・資格取得
の別に合わせた履修モデルが掲載され、また、「教育課程表」には教員免許や資格取得の際の
必修・選択の別を記載した欄や、その他の注意事項を記載した備考欄が設けられ、学生の学修
に便宜を図っている。
高等教育には教員と学生との全人格的な交流が不可欠であるが、そのためのきっかけを提供
すべくオフィスアワーを制度化している。学生の相談に積極的に応えるため、各教員が学生の
訪問を受け入れる時間帯を当該教員の研究室ドア付近に掲示して明示しており、学生も、授業
時にできなかった質問やその他の相談をするために研究室を訪問し、積極的にこれを活用して
72
第3章 教育内容・方法(学士課程)人間生活学部
いる。
さらに、図書館の充実とパソコン設置教室等の授業使用時間外に開放していることを挙げる
ことができる。図書館は、北 16 条の本館と花川館に分かれているが、人間生活学部の学生も本
館の蔵書を翌日には手にすることができるシステムが運用されている。図書館は各種相互利用
サービスや蔵書検索等、教員の教育研究のみならず学生の学修の活性化には最も強力な装置で
ある。幸い、学生の利用は活発である。なお、図書館には、各教員の過去 5 年間の著書や論文
抜き刷りを展示するコーナーが設置され、学生にも研究者としての教員の姿が分かるように配
慮している。パソコン設置教室等については、「情報処理」等の授業で使用中の時間帯を除い
て、広く学生に開放しその自由な使用に供している。学生は、学期末のレポート作成時のみな
らず、通常の授業に関連して幅広い情報収集が必要な時にも、大いに利用している。
また、大学院生をティーチング・アシスタント(TA)として採用し、学部の授業科目を対象
に教員の教育活動の補佐をする制度が、2002 年度から人間生活学部で始められ、7 年経過した
現在、学修の活性化に一定の効果をもたらしている。当該の授業を受ける学生から見れば、講
義や実習・演習等の場でより一層きめ細かな支援を受けられるだけでなく、教員自身が授業の
より本質的な部分に集中する余裕が生まれることにもなり、相乗効果を生んでいる。
教員を目指す学生や教育に関心を持っている学生にとっては、人間生活学部が石狩市(教育
委員会)との間で提携して実施している SAT(スクール・アシスタント・ティーチャー)が、
学修の活性化に役立っている。これは、小学校・中学校のクラスで、主として算数や数学の授
業における指導補助として、担任教諭の補佐をする学校支援ボランティアである。石狩市は、
2002 年に人間生活学部の協力のもとモデル校で試験的に SAT を導入し、翌 2003 年から正式に
導入した。正式導入以降、石狩市における SAT を中心的に担って来たのは、人間生活学部と北
海道教育大学札幌校の学生である。参加学生は、従来人間生活学科が殆どであったが、最近、
他学科学生の希望も徐々に現れ始めた。
次に、教員の教育指導方法の改善を促進するための組織的な取り組みであるが、毎年 3 月に
発行している『教員の教育・研究活動』において、各教員は「研究活動」、「学会等および社
会における主な活動」の他に、「教育活動」を報告することになっており、その中に「教育内
容・方法の工夫」に関する記述欄がある。現在のところ、この欄の記述については、残念なが
ら教員間で多寡が見られので、2008 年度からはさらに厳格に記述するよう要請した。
本年度、いわゆる FD の義務化を受けて、FD 活動の具体的な立案と実施に取り組んでいくた
めの FD 委員会を学部に設置して、関係規程などその整備を進めているところである。これまで
も FD に関する教員の参加を促す取り組みは継続的に行われている。具体的には、特別な取り組
みを行う学科に対して、参加費を配分するなど、FD に関連する各種研究会への参加を奨励して
おり、その情報については教授会で紹介したりメールを通じて学部教員へ周知している。「履
修指導」のところで触れた人間生活学科の生活学習支援員制度は、この予算措置に基づくもの
である。2007 年度から導入された生活学習支援員は、履修指導、学生生活支援だけでなく、学
習支援にもあたっている。総相談件数は、2007 年度で 100 件を超え、学生は十分にこの仕組み
を活用している。その中に、授業に対するクレーム相談も含まれている。クレームの内容は、
相談者が特定されない形で学科主任に伝えられ、学科主任が当該の授業担当者に対して、授業
改善を依頼することになっている。2007 年度では、3 件ほどのクレームを処理した。
また、食物栄養学科では、管理栄養士国家試験の科目別平均点を参考にして、得点の低い科
73
第3章 教育内容・方法(学士課程)人間生活学部
目の授業担当者が授業改善を行う仕組みを導入している。
⑵ シラバスの作成と活用状況
学生への履修指導の一環として「履修ガイド」を作成し、新年度に全学生に配布している。
大学 4 年間の履修計画の参考になるよう、以下の構成になっている。
・人間生活学部学科課程
履修の手引き(学科別)
シラバス(共通科目、外国語科目、学科専門科目、教職科目)
・ 図書館情報学課程
「履修の手引き」では、3 学科それぞれのカリキュラムの基本的内容を説明し、履修モデル
を明示しながら履修方法を詳細に説明している。教育課程表によって学生は4年間に履修可能
な科目を一覧できるようになっており、また各科目のシラバスが記載されている頁数を明示し
ている。
「シラバス」は、作成要項を示し記述内容及び記述形式について統一を図っている。授業科
目担当者の授業意図・授業概要・授業計画等を履修登録前に学生に提示し、学生が修学計画を
たて、適切な履修登録ができるようにする目的で、「授業のねらい」「授業計画」「成績評価
の方法」「履修に当たっての注意」「教科書・参考書」の各項目が、科目名、科目担当者、単
位数、開講時期といったカリキュラム上の基礎情報に加えて記載され、科目ごとに1頁にまと
められている。
「シラバス」は 2005 年度から教員には Web 上での作成を依頼しており、2008 年度では全教
員の 9 割強が Web を利用して作成している。2004 年度から「シラバス」は Web 上に公開され、
学生は次年度の「シラバス」を 3 月末に閲覧することが可能となった。同じく 2004 年度からは
学生の Web 上での履修登録も始まっている。
また、2007 年度からは本学図書館と連携しながら、「シラバス」に記載された「参考書」を
学生が図書館で利用できるように整備を図っている。
⑶ 学生による授業評価の活用状況
文学部の記述にもあるとおり、本学における授業評価のための取り組みは、授業評価アンケ
ートを 2000 年度に行ったことに始まる。その際、文学部同様専任教員のみを対象とし、それぞ
れの教員が希望する 1 科目のみについて実施し、その結果について自己点検・評価を行った。
その後、アンケート形式や実施方法などに関する数次の見直しを経て、2004 年度には非常勤講
師を含む全教員を対象として「学生による授業評価」が正式に導入された。さらに、これまで
の経験と反省を活かして 2006 年度後期から「授業改善のためのアンケート」と名称変更して、
今日まで継続的に実施されている。アンケートを実施した科目数は以下の表 3-15 のとおり、
2006 年度までは、基本的に講義科目が実施対象であったものが、2007 年度からは演習科目も実
施対象科目に加わり、タイプ別に実施することになった。なお、外国語科目は通年科目である
ため、現在のところ後期実施対象科目になっている。
「授業改善のためのアンケート」の分析結果は、冊子の形で公表され、各教員にフィードバ
ックされており、その内容は、共通科目、各学科専門科目、教職課程・資格課程のそれぞれに
関する分析結果、アンケートを受けての教員の意見・感想等(アンケートに対する全般的な意
74
第3章 教育内容・方法(学士課程)人間生活学部
見・感想、今後の授業に向けての改善策等、「授業改善のためのアンケート」についての意見・
提案)となっている。分析結果の部分には、全体的な分析の他に、いずれも設問毎の数値や平
均値、設問毎のレーダーチャート、設問別評価構成グラフが収載されている。
各教員は、それぞれ自分が担当した科目毎の評価数値等を学部・学科の平均値等と比較する
ことを通じて、自分の授業を受講学生がどう受け止めているか、またどのような姿勢で受講し
ているか等について、ある程度客観的な傾向を知ることができる。
さらに、このアンケート結果を受けて、各教員には、アンケートの結果に関する所見及び授
業改善のための方策、また、アンケートの形式・実施方法等に関する意見の提出が義務づけら
れている。
表 3-15「授業改善のためのアンケート」を実施した科目数(人間生活学部)
(2006 年度)
区
分
専任教員
非常勤講師
計
実施予定
科目数
実 施
科目数
実施予定
科目数
実 施
科目数
実施予定
科目数
実 施
科目数
実施率
前
期
114
113
57
56
171
169
98.8%
後
期
107
99
103
99
210
198
94.3%
(2007 年度)
区
分
専任教員
非常勤講師
計
実施予定
科目数
実 施
科目数
実施予定
科目数
実 施
科目数
実施予定
科目数
実 施
科目数
実施率
前 講義タイプ
期 演習タイプ
93
91
40
38
133
129
97.0%
24
22
12
12
36
34
94.4%
講義タイプ
後
期 演習タイプ
外国語タイプ
88
87
30
28
118
115
97.5%
15
15
39
39
54
54
100.0%
4
4
22
22
26
26
100.0%
⑷ 卒業生に対し、在学時の教育内容・方法を評価させる仕組みの導入状況
卒業生に対して、在学時の教育内容・方法等を評価させる仕組みは、全学的には 2007 年度卒
業生に初めて導入された。その際採られた方法は、卒業式当日の式典終了後に各学科の控室で
卒業証書・各種免許状等を卒業生一人ひとりに手渡す際に、種々の資料とともに配布し協力を
呼びかけるもので、後日卒業生各自が本学宛に郵送する方式を採った。そのため、残念ながら
最終的な回収率は 20∼50%にとどまった。食物栄養学科は 50%程度であったが、人間生活学科
と保育学科は 20∼30%に過ぎなかった。ただし、保育学科は従来から学科として継続してきた
同じ主旨のアンケートと重複したことも一因と考えられる。
5.授業形態と授業方法の関係
⑴ 授業形態と授業方法の適切性、妥当性とその教育指導上の有効性
人間生活学部における授業形態は、「講義」、「演習」、「実習」、「実験」、「実技」に
大別される。「演習」、「実習」、「実験」の場合は、授業科目名にそれが明記される。「実
習」は学内で行われるものと学外の各種施設(社会福祉関係機関・施設、中学校、高等学校、
75
第3章 教育内容・方法(学士課程)人間生活学部
保健所・保健センター等、小学校・給食センター等、幼稚園、保育所、福祉施設、特別支援学
校等)で行われるものとがある。「実技」に相当するのは、「運動の実践」である。この他、
卒業研究作成に向けた指導のための「卒業研究」がある。
なお、学科専門科目のかなりのものは、各学科における各種免許・資格取得に係る法的指定
に基づいてそれぞれの授業形態が決められている。授業方法については、それぞれの授業科目
の担当教員が、担当授業科目の形態に相応しい方法を用いている。「講義」においても、パワ
ーポイント等の利用、リアクションペーパーの活用、双方向授業の導入、小テストの実施等、
授業方法の工夫がなされている。
なお、毎年実施されている「授業改善のためのアンケート」の質問項目の区分「授業の内容」
と「授業の進め方」では、学生側から見た一定の判断・評価を知ることができるようになって
いる。
⑵ 多様なメディアを活用した授業の導入状況とその運用の適切性
ヴィジュアルな媒体、すなわち、VTR や DVD、あるいは OHP や実物投影機、さらにノートブッ
クパソコンを接続して行われるパワーポイントを使った授業等は、講義や演習等の授業形態の
別を問わず増加し続けている。そのための教室等の環境はほぼ整った。
⑶ 「遠隔授業」による授業科目を単位認定している大学・学部等における、そうした制度の
運用の適切性
現在、人間生活学部ではこの制度を導入していないが、今後の導入について検討する。
第3 国内外との教育研究交流
1.国内外との教育研究交流
⑴ 国際化への対応と国際交流の推進に関する基本方針の適切性
人間生活学部における国際化・国際交流の基本方針は、文学部におけるのと同じく、建学の
理念であるキリスト教精神を基盤とし、女子教育を使命とする立場から、カトリックの国際的
なネットワークの一環として、国境を越えた教育研究交流を進めることである。国際化・国際
交流に関わる実務は、文学部と同じく、国際交流センターが担当している。
国際交流センターは、海外協定校への留学生派遣を中心とした旧留学生委員会の業務を引き
継ぎ、2002 年 4 月 1 日に発足した。センターの基本業務は、学生に対しては、「国際語として
の英語を含めた語学能力をつける機会を与えること」に加え、「外からの視点で自分の学問分
野や自分自身を見ること」、「外のもの、異なったものに対して自分自身を開いていく機会を
与えていくこと」である。教員に対しては、研究交流協定校を拡充し、在外研究の機会を確保
することである。センターでは、それらに加えて、留学に関連して学内の単位認定制度や授業
料規定の新設・改訂も、関連部局と連携しながら行っている。この点で、大学の教育カリキュ
ラムを補完する組織としても機能している。
センター(及び前身の留学生委員会)の活動を通して、現在では、留学提携先は、アメリカ、
韓国、台湾、オーストラリアの大学に拡大した。人間生活学部ととりわけ深い関係にあるのは、
アメリカのセント・エリザベス大学である。セント・エリザベス大学には、2006 年度より人間
生活学部と国際交流センター共催で、「短期研修プログラム」として学生を派遣している。2008
76
第3章 教育内容・方法(学士課程)人間生活学部
年度にはセント・エリザベス大学側からも学生、教員を本学に迎え、短期の文化研修や交流会、
講演会を実施している。
【点検・評価】
第1 教育課程等
学部・学科の教育課程の体系性については、学士課程としても、専門教育的授業科目の編成と
いう点でも、大学設置基準 19 条第1項あるいは学校教育法第 52 条が定める要件を満たしてい
る。また、社会福祉士、栄養士、管理栄養士、保育士の養成施設に関わる厚生労働省関連法規
等との関係でも、適法である。
倫理性を養う教育について特筆すべきなのは、まず「キリスト教学」である。この科目は、
2003 年度からシスターである学長自らが授業を担当し、学長が交代した 2007 年度以降も司祭
職にある現学長自らが同様に、建学の精神に基づく授業を行い、学生の倫理性の育成に努めて
いる。学長自らが担当することそれ自体が、ミッションスクールとしての本学の姿勢を具体的
に示すことになっている点で、高く評価されてよい。また保育学科が開設する「キリスト教保
育」は、幼児教育に関わるキリスト教の長い歴史を踏まえつつ、教育者となるべき学生の倫理
性を専門のレベルで陶冶しようとする点で、
保育学科の志の高さを現わしているといってよい。
課題が残されているのは、基礎教育である。それに関して、導入教育、外国語教育、一般教
養的科目(共通科目)と分けて述べる。
導入教育は、学生の多様化に対応するためにきわめて重要であるが、人間生活学部において
は、各学科の専門科目の中で導入教育的な要素を盛りこんでいるだけであり、共通科目の水準
では何もなされていない。この点は、早急な改善を要する。
これと関連するのが外国語である。人間生活学部の理念・目的である「多様な文化や社会の
共生を志向」すること、また、学生派遣に関する協定を締結している本学の協定校のある国、
すなわち米国、オーストラリア、韓国、台湾において使用されている言語に配慮することを基
本として、外国語科目を開設しており、現実的な国際交流に対応可能な外国語教育を実施して
いる。しかし、外国語科目については、1 クラス 40 人を目途にしており、事前に行う履修希望
科目調査の結果、選択希望者が多い場合には、調整により希望した科目を履修できないことが
ある。「国際化等の進展に適切に対応するための外国語能力の育成」のためにも、できるだけ
希望が叶うような体制を構築していきたい。
特に、英語は、国際化への対応やコミュニケーション能力の向上にとって決定的に重要であ
り、すでに数年前からに英語必修化に向けて準備をしてきたが、本学部所属の専任教員が急遽
退職したという事情などから実現できていない。これを解決するため、できるだけ早急に英語
を担当する専任教員を補充し、改善を図りたい。
一般教養的科目については、長い歴史を背負い、広い世界を背景にしている現代のわれわれ
が自覚的に生活する上で必要な「幅広く深い教養及び総合的な判断力を培い、豊かな人間性を
涵養」する科目からなっている。特に現状の説明で述べた必修科目群は、現代のわれわれが置
かれた状況を踏まえて、キリスト教に根ざした西欧の価値観を理解するだけでなく、膨張し続
ける情報社会に対処する能力を陶冶すること、また、生活習慣の変化によって脆弱になりがち
77
第3章 教育内容・方法(学士課程)人間生活学部
な身体を健全に保つことを目指すものであり、教養・判断力・人間性を根底から支える意義を
有するものと評価することができる。ただし、専門科目との連携が不十分な科目もみられるた
め、人間生活学部でいう共通科目の個々の科目について、学部カリキュラムとの関わりで、内
容を精査する必要がある。とりわけ保育学科では、一般教養的科目の履修を促すという方針を
立てているにもかかわらず、専門科目と共通科目の連携が不十分である点は、改善を要する。
基礎教育と教養教育に関する責任部署は人間生活学部カリキュラム委員会であり、同委員会
は、情報教育の改善には成功したものの、英語教育、導入教育、共通科目の見直し等について
は、検討は加えたものの、成案を見るに至っていない。人事凍結等の条件はあるが、できる範
囲で具体的な取り組みを行う必要がある。
カリキュラム編成における必修・選択の量的配分は、3 学科の特性によって大きく異なる。
人間生活学科では、他学科専門科目 8 単位まで、教職で指定された科目 8 単位まで、他学部学
科専門科目及び協定校修得科目の計 8 単位まで、他大学等で修得した単位は 8 単位まで、それ
ぞれ選択単位に算入できるようになっており、
選択科目を通じた多様な学習を可能にしている。
食物栄養学科では、従来、管理栄養士養成課程としての法的制約(専門基礎分野・専門分野
の講義又は演習 60 単位、実験又は実習 22 単位、合計 82 単位取得が義務付けられている)によ
って、卒業必要単位数に占める必修単位の割合が 79.4%と多くなっていた。しかし、2009 年度
以降はそれを 71.4% に低減することで、学科専門科目の必修単位数を縮小し、学生の幅広い
進路に対応できるようにした。
保育学科では、免許・資格取得が絡むため、2 つの免許・資格を取得する場合には、学科専
門科目のうち 81 単位が必修となる。必修及び選択必修単位数は、共通科目及び外国語のそれら
を含めると 105 単位となり、卒業に必要な単位数の 80%強を占めることになる。とはいえ、広
い視野と真の教養を身につけた人材養成を目指して、専門領域以外の科目を広く学修するよう
学生指導を心がけているという点で、3 学科は共通している。
カリキュラムにおける高・大の接続に関して、「情報処理」や「はじめての化学」等、一部
の科目については必要な導入教育が実施されるに至った。また、リメディアル教育に対する意
識も高まってきており、すでに具体的準備を進めている学科もあり、今後各学科をはじめカリ
キュラム委員会と各学科とが連携した包括的かつ積極的な取り組みが求められる。人間生活学
科の初年時教育・導入教育として開講している「人間生活学入門」と「QOL 入門」は、複数の
学科専任教員がオムニバス形式で授業を担当している。但し、必修科目として大教室で実施し
ているため学生の学習状況把握や個別的指導が行き届きにくい傾向にある。食物栄養学科に関
しては、栄養学の基礎となる化学に関連した教育を早期から導入していたが、必ずしも十分な
効果があがっていたとはいえない面もあった。2008 年度には、高校で化学を履修して来なかっ
た学生や履修したものの入試科目として選択しなかった学生に対して、試験的に「化学Ⅰ」の
集中講義を行った。この後学生にアンケートをとっているので、その結果を分析し、一層の充
実を図る計画である。保育学科に関しては、現代社会をグローバルに理解することは、子ども・
家庭問題の本質を理解する眼を涵養し広い視野を持つ質の高い保育者養成という学科の教育目
標にかなった実践であると評価できるが、教育効果を高めるための方策は今後の課題である。
高大接続に関わる導入教育に関しては、2008 年度から、FD の一環として関連学会に教員を派
遣して情報収集にあたっており、その成果を担当部署であるカリキュラム委員会での議論に生
78
第3章 教育内容・方法(学士課程)人間生活学部
かす予定である。
カリキュラムと国家試験に関して、人間生活学科のカリキュラム構成の主旨は、「人間・生
活・環境・福祉という分野における基礎的な知識と実践力を教授する」ことにある。短絡的に
社会福祉士国家試験の合格率向上を図るカリキュラム編成を進めることよりも、福祉教育の充
実という本来的な観点に立ってカリキュラムを検討することが課題である。
食物栄養学科では、
管理栄養士国家試験受験資格の取得に対応するカリキュラムを編成しており、国家試験で要求
される 9 つの分野「社会環境と健康」「人体の構造と機能及び疾病の成り立ち」「食べ物と健
康」「基礎栄養学」「応用栄養学」「栄養教育論」「臨床栄養学」「公衆栄養学」「給食経営
管理論」に区分している。それぞれに、適切で必要かつ十分なカリキュラムを配置していると
評価できる。
授業形態と単位の関係について、単位計算の方法は、開設されている授業科目が全て大学設
置基準第 21 条に準拠した学則第 17 条に基づいており、妥当である。また、社会福祉士養成、
栄養士・管理栄養士養成、保育士養成に関しても、単位計算の方法は関連諸法に照らして適法
である。
単位互換、単位認定に関して、2007 年度に人間生活学部において、本学以外の教育施設での
既修得単位を認定した学生がいるのは食物栄養学科の学生 2 名であり、その平均単位認定数は
15.0 である。入学前の修得単位の認定は、所属学科が以前に在籍した学科と異なる場合には専
門科目の内容、講義形態、単位数等を考慮して、学生に不利にならないように実施している。
また海外協定校留学制度及び短期語学研修制度を利用した学生の単位認定については、協定校
修得科目枠の設定と「海外語学研修」科目の新設により学生の留学意欲を刺激し、今後は協定
校留学希望者数の増加に結びつくことが期待される。「札幌圏大学・短期大学間単位互換制度」
は導入されたばかりであり、今後、学生の利用状況を見据えつつ、数年後に検証する必要があ
る。
開設授業科目における専・兼比率等に関して、
「外国語科目」の専・兼比率が著しく低いのは、
人間生活学部に外国語専任教員がいないことと、英語以外にもドイツ語、フランス語、中国語、
コリア語と数多く外国語科目を開設していることによる。これらの科目はほとんどが非常勤講
師に依存している状況である。
保育学科の「学科専門科目」については、厚生労働省養成施設指導要領にもとづき、教育効
果を上げることを目的に演習科目で50人を超える場合は2クラス編成で授業を実施することに
なった。このため、非常勤講師への依頼が増加し、専・兼比率が低下した。さらに、免許・資
格を 3 つ取得できる科目編成にしていることも、兼任教員の増加の要因となっている。また、
ごく少数ではあるが両学部間で専任教員が兼担で教えるという方式で、
協力体制をとっている。
2008 年度では文学部 5 名、人間生活学部 2 名の教員が他学部開設科目を担当している。
兼任教員の教育課程への関与については、人間生活学部の専任教員数及び各教員の担当授業
時間数あるいは各学科における実習施設訪問等の業務量を考慮すれば、妥当である。保育学科
については、現在、設置基準上必要とされる教員数は満たしているが、実習施設訪問等に関し
79
第3章 教育内容・方法(学士課程)人間生活学部
ては厳しい状況にある。また、各学科とも、各種免許状(中学校教諭一種家庭、高等学校教諭
一種家庭・福祉、栄養教諭一種、幼稚園教諭一種、特別支援学校教諭一種)・各種資格(社会
福祉士国家試験受験、管理栄養士国家試験受験、保育士)等の取得に関連する種々の学外実習
に教員が関与しなければならない時間は、今後一層増加することが予測される。授業時間に反
映されないという意味で不可視な、こうした業務を正当に評価できる枠組みを、FD や教員の教
育研究環境の改善を進める中で、作り上げる必要がある。
第2 教育方法等
教育効果の測定に関連した「授業改善のためのアンケート」は、各授業に関して教育上の効
果を測定する上で一定の有効性を持つと考えられ、2008 年度には、専任教員も非常勤教員にも
ほぼ全ての開設科目について実施したことは評価できる。
また、
国家資格の合格者と合格率も、
本学の結果の年次推移と他大学等のそれとを比較することによって、教育上の効果を測定する
補助的指標の一つとして用いることはできる。食物栄養学科において、管理栄養士国家試験に
関わる科目について分析し、授業改善に活用している点は、評価できる。
教育効果の測定について、問題が大きいのは、卒業生の進路状況を教育効果との関わりで評
価する尺度が十分に練り上げられていないことである。
確かに、現状の説明で述べたように、また学生生活に関する章で再説するように、人間生活
学部の学生の就職決定率は高い。学科別に見れば、人間生活学科の就職率は好調に推移してい
る。昨今、教員や福祉・医療職の募集数自体が経年的に低減傾向にある中では、これらの分野
への就職は堅調を維持している。家庭科教員に関しては、公立学校の採用枠が厳しい中で善戦
しているとはいえる。食物栄養学科でも、就職希望者のほとんどが栄養関連の職種に就職して
いる。保育学科も同様に保育関連職種に就職している。特に道内の公立保育所の採用者の 60%
以上が保育学科の学生であり、各自治体の保育を担う人材を育成している点は、地域に根付く
大学として、高く評価することができる。
しかし、特に人間生活学科において、入学当初は教員や福祉・医療職を目指していた学生が
求人数の低調から進路を変更しているのも確かである。その場合、高度な生活デザイン能力を
生活支援に生かすという人間生活学科の教育目標を体現した人材として、一般企業に就職して
いるのかどうかという点については、人間生活学科にはそれを判断する十分な材料はない。
人間生活学部における履修指導は、とりわけ新入生に対しては、小人数教育のメリットを入
学当初から具体的に示す場としても、高く評価できる。
新入学生にとっては初めて経験する必修・選択必修・選択制や、共通科目・外国語・専門科
目といった枠組みについて、学生の立場に立った丁寧な説明や指導、資料作成配付などを行っ
ている。この責任者はクラス担任であるが、各学科とも担任以外の教員も学生個人の相談に応
じることで、学生と教員との親密さを確保し、学生の学習意欲の向上させる場としても、履修
指導は機能している。特に、人間生活学科における 1 年生に対する「生活学習支援員」の配置
は、履修登録や、受講上の悩み、レポートの書き方、学習方法など、直接的に教員に尋ねにく
い事柄を気軽に相談できることから、一定の成果を挙げている。クラス担任が 1 年次の科目を
担当していない場合には、特に重要な役割を果たしている。保育学科では、時間割の作成など
80
第3章 教育内容・方法(学士課程)人間生活学部
履修に関する概要は担任が、具体的な登録の手続き等は教務課が説明するというように、学生
が理解すべき内容毎に担当者を分けるよう配慮している。また、履修科目を説明する際は、あ
らかじめ必修科目が印刷された時間割表を配布している。この資料は、履修科目を自分で決定
することに不慣れな新入生にとって、大きな援けとなっている。
履修指導において個人面談を重視するという方針が、在学年、留年者、科目等履修生・聴講
生に対しても貫かれている点は、高く評価できる。留年した学生に対しては、該当する学年の
クラス担任が履修指導を引き継ぐとともに、ゼミ担当者等との連絡を密にして、履修状況の確
認や留年に至った原因の改善状況等について、留年生の個人情報に配慮しつつ連絡しあい、学
修の継続を支える体制をとっている。科目等履修・聴講を希望する学生に対しても、場合によ
っては、事前に科目担当者が希望者と面談する体制をとっている。
人間生活学部の教員の在勤時間は長く、オフィスアワー以外の時間でも学生の研究室訪問を
拒否しないよう、意思の統一がはかられている。FD においてもっとも効果を上げているのは、
小人数教育の特性を生かしたこの個別面談である。履修指導の段階から始まる教員と学生との
緊密な関係を基盤として、授業内容や授業展開に関する悩みや相談に迅速に対応することによ
って、学期中に授業改善を行う可能性が確保されている。また、相談内容が他教科の教員に関
わるものである場合には、相談学生の個人名は出さずに、当該の教員に対して相談内容を伝え
ることも行われている。この点は、大規模大学では不可能な小規模校の長所として誇ることが
できる。
人間生活学部における学修活性化は、教員と学生とのこうした関係性を根底に据えて構築さ
れている点は、きわめて高く評価できるが、いくつかの問題がないわけではない。
「履修ガイド」については、学生の多様化が今後とも進行することが予測される現状では、
より学生の立場に立った内容の吟味、記述スタイルの工夫等、継続的な改善が必要であろう。
たとえば科目間の関連をマッピングによって示すなどの工夫である。
図書館について言えば、現在、人間生活学部が設置されている花川校舎には独立した棟とし
ての図書館はない。校舎の一部の 2、3 階に図書館機能を持たせているのが現状である。蔵書数
の増大とともに、収蔵スペースの問題が生じるのもそれほど先の将来ではない。早めの対策が
必要である。
パソコン設置教室等については、情報社会の進展という環境を考慮すると、さらに充実を図
る必要が生じることが予測される。
また、学生の学修の活性化を側面から補強するのが、校舎内における「ゆとり空間」の確保
と考えられる。この点については、過去 7∼8 年以降に新設された小学校の優れた環境が大いに
参考になる。さらに「現状の説明」では敢えて触れなかったが、学生相談室やハラスメント相
談窓口の存在と活動も、学生の学修の活性化を直接促進しているようには見えないが、実は広
く確保されており学修環境の整備に貢献している。
『教員の教育・研究活動』の「教育内容・方法の工夫」欄については、他の教員の教育上の
工夫を学ぶことができる点で、FD の重要な一部であるが、実施しているにも拘らず記述してい
ない教員もいないわけではない。毎年公開される記録として着実に残すことで、教員にとって
も具体的な改善に繋げることが容易になるので、記述についての一層の奨励を心がける必要が
ある。
81
第3章 教育内容・方法(学士課程)人間生活学部
現在も、各教員は自分の担当する授業を他の教員に非公開としているわけではないが、2008
年度後期には、具体的な FD の一環として教員同士による研究領域、科目領域の違いを越えた授
業参観を開始すること、また所属教員による意見交換の場を各学科が設けることを学部として
勧奨している。
学生による授業評価、すなわち、「授業改善のためのアンケート」は、漸く定着した。授業
は、具体的な形態の如何を問わず、基本的に双方向的性格を強く持っている。各教員にフィー
ドバックされている分析結果の冊子は、授業の双方向性を実現する上でも、十分役立つ媒体で
ある。こうした分析結果、特に、結果を受けて各教員が書いた改善策を集約し列記した「今後
の授業に向けての改善策等」を有効活用するための方法の検討に 2009 年度には着手する。ただ
し、授業改善アンケートは、学期末に行われるため、アンケートに回答した学生に授業改善の
成果が還元されないというきわめて大きな限界がある。アンケートが長期的な授業改善に資す
ることはたしかではあるが、アンケートだけでなく、その場の学生に対応したリアルタイムの
授業改善を組織的におこなえる仕組みについて考える必要がある。
教育改善に関して、人間生活学部でもっとも遅れているのが、卒業生による評価である。こ
れは、教育効果と進路との関係を評価する尺度に関する弱点とも連動している。卒業生による
アンケートが大学全体で初めて導入されたこと自体は評価できる。しかし、回収率の低かった
ことについて分析し、改善を図った上で 2008 年度においても実施する。
今後は、他大学等で行っている同趣旨のアンケートについて調査したり、従来から同主旨の
アンケートを実施してきた学科との間で協議・検討の場を早急に設け、必要な調整を経てアン
ケート内容・実施方法等の改善を進める必要がある。その上で、在学年次、例えば 4 年次のゼ
ミ等を通じて事前に主旨を周知する機会を設けるなどして、回収率を上げると同時に、当該ア
ンケートを継続的に実施することである。また、アンケートに応えた卒業生の建設的な声を教
育内容・方法の改善に反映させるシステムを大学として構築する必要がある。
授業形態と授業方法に関して、学生の多様化という趨勢に対応して、また、実学中心という
人間生活学部の特徴をより強く打ち出すためにも、従来よりも体験的要素を重視した授業方法
の開発も必要になってくる。各種免許・資格取得による法的制約には縛られない授業科目につ
いては、授業形態や授業方法をより柔軟に考えた方が教育指導上、より効果的な場合もあり得
る。学生の学修の活性化のためにも、教員に対して、従来の授業形態・授業方法の枠を越えた
試みを奨励する必要がある。
そのためにもメディアの活用は重要であり、多様なメディアを活用した授業を行う環境は整
ってきた。しかし、問題は整備に時間がかかったために、機器の一部が古くなりつつあること
であり、メディアを活用する教員の能力が十分に開発されていないことである。後者に関して
は、
FD の一環として、
2009 年度に、
学科レベルで研修の機会を設けるべく検討を開始している。
なお遠隔授業については、実習等による欠席を補うためにも、また、他学部科目や他大学の
科目を履修する上でも、あるいは、高大連携授業を行う上でも有益であることについては、一
部の教員の間では合意がある。いずれにしろ、人間生活学部の立地条件から、将来的には「遠
隔授業」による授業科目の単位認定について、各学科・学部・教務係・情報メディアセンター、
施設担当者等が連携しつつ、その実現可能性や有効性等の検討を始める必要がある。
82
第3章 教育内容・方法(学士課程)人間生活学部
第3 国内外との教育研究交流
この点について、人間生活学部は低調である。研究交流でいえば、他の箇所でも指摘されて
いるように、教員一人あたりの授業時間数が長く、かつ代替教員を見いだしにくいということ
が、その最大の要因である。学生の海外留学に関していえば、低調さの要因の第一が、語学の
壁である。たとえば、文学部英語文化学科の学生に伍して留学生選抜試験に合格するだけの語
学力は、残念ながら人間生活学部の学生には不足しているといえる。セント・エリザベス大学
との相互交流は、それを打開する一つの方法ではあるが、留学機会を本格的に保証する上で必
要なのは、英語必修化への取り組みである。もうひとつの要因は、学外実習が多いために、休
業中であっても、留学することが難しいという事情である。この点については、解決はきわめ
て困難である。
【将来の改善・改革に向けた方策】
点検評価で述べたように、基礎教育(ここでは初年次教育、導入教育)については、学科レ
ベルでの取り組みはあるものの、学部としての取り組みはない。学科の基礎教育については、
現行の学科カリキュラム見直しの一環として、2010 年度カリキュラムで 2 学科(人間生活学科・
保育学科)において初年次教育科目を導入することになった。学部としては、その成果を踏ま
えて、初年次教育・導入教育を共通科目の枠組みで導入したいと考えている。そのために学部・
学科で検討が進んでいるのは、学生生活、文章表現、数理的判断、プレゼンテーション、対人
関係などに関する能力向上に向けた見直しである。
リメディアル教育に関しては、その必要性がもっとも高いのは食物栄養学科である。一般入
試の段階では、実質的な 4 科目入試(入試科目「理数」において、数学、生物、化学から 2 科
目以上選択)を課して、数学や理科の能力を問うているが、とりわけ化学において、学生間の
学力の差が大きい。現状でもいくつかの科目でリメディアル教育を行っているほか、高大連携
の一環として、2007 年度に姉妹校の高校教員に理科の補習授業を試行として実施してもらった。
しかし、夏期休業中のこの授業に主に参加したのは、熱心な、従って補習の必要のない学生で
あり、この試行は必ずしも狙いどおりにはいかなかった面もある。そこで、2008 年度には、1
年前期の成績が一定レベルに達していない者に、夏期休業中の補習を義務づけることのできる
仕組み作りに着手した。
各学科固有の教育目的とカリキュラムとの関わりに関しては、人間生活学科において、一部
の学生に教育目標が浸透していないという大きな欠陥がある。点検・評価で述べたように、学
科の教育目標を出口との関わりで明確に提示できるよう、2010 年度の実施を目指して、分野制
の導入、科目編成の見直しを行う。その際の基本的なコンセプトは、①生活科学の学習を通し
て生活デザイン能力を高め、②社会福祉学の学習を通して、生活デザイン能力を対人支援に活
用する技法を学び、③地域に関する学習を通して、対人支援を地域の生活支援へと展開する力
を身につける、というものである。一言で言えば、家庭や施設と結びつけられることの多い生
活科学や社会福祉学の知見を、より広い社会というフィールドで生かせる人材の育成を目指す
方向に、学科を再編成するということである。これと関連して、生活科学や社会福祉学と関連
83
第3章 教育内容・方法(学士課程)人間生活学部
の深い特別支援教育についても、現在は保育学科で開設されている課程が人間生活学科生にも
履修できるようにする。
食物栄養学科については、栄養士の資格を得て卒業できるように科目編成を見直す。そのた
めに、2009 年度以降は、管理栄養士国家試験に関わる科目の一部を必修から選択に移行する。
また、フードスペシャリストの資格取得を可能にし、学生の進路に幅を持たせることも検討し
ている。
保育学科では、従来の専門教育の長所をより伸ばすために、小人数体制の一層の充実(保育
演習科目の 2 分割化を推進)を目指す。さらに、保育者としての応用的能力を培う科目として、
「教職実践演習」の 2010 年度開設をやはり目指している。
人間生活学部における履修指導は、小人数教育の実践の場として高く評価できることは、す
でに述べたが、その長所をより伸ばすために、人間生活学科で先駆的に導入した生活学習支援
員の活用を人間生活学部全体への拡大することを目指す。2007 年度には、学科主任・学部長レ
ベルで検討を開始したが、相応しい人材を確保できる目途がたたないために検討を中断してい
る。人間生活学科で成功した要因は、①生活学習支援員が人間生活学科の卒業生であり学科の
内容を熟知していること、②現職の高校教員(時間講師)であり高校生の現状を把握している
こと、③本人のキャラクターである。こうした要件を全て備えた人材を見いだすことは他学科
では困難であるが、要因をより詳細に分析することによって、生活学習支援員の活用を全学部
的に実現することを検討する。
学生の国際交流の活性化に関していえば、点検評価で述べた英語力の問題については、さし
あたり、国際交流センターが留学希望者向けに開設している語学コースの履修を積極的に薦め
ることで、対応する。実習等が留学の機会を奪いがちであるという問題は解決困難なので、短
期間でも可能な様々なプログラムの開発を、国際交流センターと協力しておこなう。そのため
に、海外研修の成果を単位化する多様な仕組みを、研修プログラムの多様性に連動させて開発
することも検討する。同様に、国際交流センターにとどまらず、学外の組織(留学斡旋会社や
NPO 法人)との連携も視野に入れる。国際交流を活発化するその他の要因として重要なのは、
金銭負担と危機管理である。国際交流センターでは、授業料の減免規定の整備や、留学・研修
による単位認定の可能性を広げるなどの検討を 2007 年度から開始しているが、
人間生活学部も
それを積極的に支援する必要がある。
海外協定校開拓や新規の海外研修プログラムの開発、留学する学生の増加に伴い、危機管理
の体制の見直しと新たなマニュアル作りが急務である。これは、海外での事故や事件発生によ
る緊急時の学内対応(組織の危機管理)を想定したマニュアルと、留学を予定する学生向けに
現地の生活(個人の危機管理)や学習を指導するマニュアルに分けられる。国際交流センター
では、危機管理会社や、異文化間コミュニケーション・カウンセリング等を専門とする教員の
助言を得て、マニュアル作りの準備を進めているが、人間生活学部もこうした業務に経験のあ
る教員を中心に、こうした準備作業に関わっていきたいと考える。
以上に挙げた改善策を実行するための基礎的な条件となるのが、第 1 に教員の連携強化であ
り、第 2 に教員の業務量の見直しである。
第 1 の点についていえば、人間生活学部は専門性の異なる 3 学科によって構成されているた
め、同じもしくは近い専門分野の研究者集団が 3 つに分かれているのが現状である。人間生活
学部で教育・研究を担う研究者が人間生活学という広い領域に自らの狭義の研究分野をしっか
84
第3章 教育内容・方法(学士課程)人間生活学部
りと位置づけることが、学部の理念・目的に掲げられた特性を備えた人間をそれぞれの学科で
育てる上で重要になるだろう。そのための共同研究等が一層活発に実施されることが期待され
る。QOL 研究所を、その場として活用する。
第 2 の教員の業務量の見直しについては、大学基準協会加盟判定の際に、「専任教員一人あ
たりの担当授業時間を 7.5 コマ(週時数 15 時間)以下とすることを検討する」との本学の目標
に対して、「早急に実現するよう期待する」との助言を受けた。しかし、現在においても、こ
の目標は達成されていない。大学基礎データ(表 20)にあるように、特任教員を除くと、人間
生活学科と食物栄養学科で大学院の科目を兼担するほとんどの教員の授業時間数は、7.5 コマ
を越えている。さらに、実習担当の教員については、授業時間の他に実習先訪問や実習先での
学生指導といった業務が加わる。こうした問題の改善策については、「第 8 章 教員組織」で
明らかにする。
教育効果の測定への取り組みは、人間生活学部では確かに遅れているといえる。専門性が多
岐にわたるため、統一的な効果の測定尺度を用いることは、現状ではきわめて困難だからであ
る。ただ、成績評価に関しては、同一科目で複数教員がクラス別に担当する授業では、統一し
たガイドラインを導入するといった方策について、今後教務部委員会及び関係学科・部署等で
検討を行う必要があり、まず人間生活学部から始めたい。卒業生の活用については、点検評価
で示したように、有効な方法の検討を続ける。
学修の活性化について中期的に達成可能なのは、
パソコン教室の機種更新とそれに合わせた、
関連機器及びソフトの更新である。情報メディアセンターとシステム管理室において、実現に
向けてすでに検討に入っている。
FD に関しては、マルチメディア活用のための教員研修を行う他に、私立大学情報教育協会の
大会等、FD 関連学協会への教員の派遣を積極的に進めることで、先進的な事例に直接触れるこ
とのできる機会を増やす。また、ケータイを用いた授業評価など同時性の高い授業改善手法の
開発も進める。さきに述べた生活学習支援員の全学部的拡充もこれに関わる。
外国語教育に関しては、人間生活学部では、現在、英語教育の専任教員が補充されていない。
そのため、英語必修化、さらにはその準備段階で予定していた習熟度別クラス分け、そのため
のプレースメント・テスト等が実現に至っていないので、2009 年度にも専任教員の補充を予定
している。専任教員をできるだけ早く補充する。また、外国語科目群を活かすために、国際的
視野を培う共通科目や、国際化を念頭においた学科専門科目の新たな開設を検討する。学科専
門科目見直しの対象となるのは、専門性からいって人間生活学科であるが、学科の 2010 年度改
訂カリキュラム案はすでに提出された。
85
第3章 教育内容・方法(その他の教育課程)
第3項 その他の教育課程
1) 図書館情報学課程
【到達目標】
図書館情報学課程は 2001 年 4 月に両学部 6 学科の全学生を対象に開設された。司書講習、司
書教諭講習省令科目の規定に基づく相当科目を開講し、技術革新のめざましい情報社会に適応
した内容を盛り込んだ新しい図書館情報学教育を目指している。設置趣意書では①生涯学習社
会に向けた社会人教育、②情報サービス・情報教育、③伝統的な学部教育との連携を 3 つの目
標として掲げている。これを実現するため
1.「伝統的な図書館業務にとらわれない情報や図書館の活用能力の教育」
2.「図書館職員に限らず企業の情報スペシャリストとしての人材養成」
3.「大学内の教育研究の活性化に役立つ実学教育」
をカリキュラムの柱とする教育を行う。
【現状の説明】
開講科目は省令科目相当科目として位置づけられている。しかしその内容は図書館に限定せ
ず発展し続ける情報社会にあって我々が持つべき情報リテラシーを学ぶことを重視している。
必修科目は、全て土曜日に限定して開講され、7∼8 科目を集中実施している。また省令科目に
ある 1 単位科目は全て 2 単位科目として拡充し、半期1単位の演習科目は通年 2 単位の科目と
して授業を行っている。開講以来科目の構成に変更はない。科目内容は毎年シラバス作成時に
年度重点項目を作成するなど担当者間ですりあわせを行っている。選択科目群は、学部学科の
専門科目による読み替えを行い、学部教育の専門性を基礎とすることを重視しており、同時に
学生の科目履修の負担を軽減化している。
表 3-16 読み替え科目群の追加開講一覧
省令科目群
開講年度
資料特論
2007 年度
子ども文化論
絵本論
児童文学
生活の探求 A,B,C(追加)
2008 年度
コミュニケーション論
情報機器論
情報処理演習Ⅰ&Ⅱ(廃止)
人間生活学研究演習(追加)
省令科目に基づく必修科目群は全て土曜日に開講しており、専任教員(文学部英語文化学科
の兼担教員 1 名と課程の嘱託教員1名)2 名及び非常勤講師 1 名の体制で教育を行っている。
専任教員に専門分野における実践的指導の先駆者として活動してきた経験豊富な人材を得てい
る点も特色である。
複数科目(図書及び図書館史、情報サービス演習など)において、レジュメにパワーポイン
86
第3章 教育内容・方法(その他の教育課程)
ト資料を用い、印刷配布と同時にハイパーリンクによるインターネットを活用した講義資料と
して活用している。また、これらのレジュメは学内ネットワークにある学生用共有フォルダに
公開し自習教材としている。また他の複数の科目(図書館・情報学概論、情報資料論Ⅰ、利用
者サービス論)では冊子体の講義資料を自家製本し授業初日に配布し授業全体の内容を明示し
ている。
本課程の特徴であるグループ研究、実習等体験、点字講習、課外プロジェクトは現在も継続
して実施している。グループ研究の成果は 2007 年度に 3 学年合同授業を実施し、各学年で選抜
されたグループによる発表を行った。
さらに教育と図書館の現場との連携を深めるため図書館界で行われる研究会や研修会などの
プログラムの情報提供を受け、受講生に参加を奨励している。
表 3-17 学外の研究会、研修会の参加
2004 年度 図書館問題研究会全国大会シンポジウム
2006 年度
2007 年度
児童奉仕図書館塾
「読み聞かせのための発声訓練」
専門図書館北海道地区協議会 見学会
図書館と NII(国立情報学研究所)の集い
<Library Forum 2007>(於北海道大学)
学生ボランティアとして受付・案内業務
を行い分科会に参加
本学を会場にして開催
受講生として参加
専門図書館の研究グループが調査の一環
として参加
図書館関係就職希望者 4 名が参加
公共図書館の司書養成に限定せず学生たちの視野を幅広い情報分野に広げる試みとして、開
設以来、情報に携わる専門家や学園同窓生、課程修了生を特別講師として招いている。図書館
界のみならず他分野で活躍する専門家を授業に招き、講演と交流を行っている。2006 年度以降
も 4 名の特別講師による授業を実施した。(表 3-18 参照)
表 3-18 特別講師及び内容一覧(2006 年度以降の新規分のみ)
実施年度
2006 年度
2006 年度
講師名
安藤千鶴子
(短大同窓生)
牛丸由恵
2007 年度
高山正也
所属等
元 HBC アナウンサー
朝日カルチャー講師
札幌アメリカンセンタ
ーレファレンス担当官
国立公文書館(理事)
2007 年度
落合早苗
hon.jp 代表取締役
講義での講演タイトル・内容
「声による情報発信」
読み方、話し方の訓練
「アメリカンセンターにおける図書館
情報サービス」と情報資料の特徴
「情報文化基盤としての図書館:MLA 連
携に向けて」
「ケータイ読書 最前線」
学生による授業評価については、大学が実施する調査だけではなく、課程修了時には 3 年間
の授業評価を「課程で学んだこと」及び「課程の内容及び授業方法について」などとしてレポ
ートを提出させている。受講生の大半がグループによる共同研究を評価しており、この方式を
取り入れた科目を増やしている。
履修生の選考方法は、1 年次に受講を希望する学生にあらかじめ授業内容や進め方などを紹
介する説明会を実施し、受講願いを提出させる。受講申込後、運営委員会の学科委員及び課程
教員が面談による意思確認を行っている。
年度別の履修者は過去 4 年の平均でおよそ 70 名とな
っている。
87
第3章 教育内容・方法(その他の教育課程)
科目等履修生は、2006 年度に規程の整備などを行い 2007 年度から受入れを開始した。2007
年度は 2 名、2008 年度は 5 月現在で 3 名となっている。
2005 年度から 2008 年度の図書館情報学課程の受講生の受講登録及び履修の状況は、次の表
のとおりである。
表 3-19 課程受講生の受講登録数及び履修状況
受講年度
2005 年度登録者
総数
63
2007 年度修了者
学部別(修了者/登録者)
2006 年度登録者
2007 年度末履修者
学部別(履修者/登録者)
2007 年度登録者
2007 年度末履修者
学部別(履修者/登録者)
司書
51
78
71
67(2)
65(2)
67(3)
英文
日文
文総
人生
食栄
保育
4
27
23
6
2
1
3
22
18
6
2
0
43/54
7
6
15
33
31
7
7
27
26
科目等
8/9
21
20
12
10
57/62
1
1
4
3
14/17
24
24
5
4
57/58
1
1
1
1
6/7
5
23
53
25
6
0
4
6
2
7
2008 年度
司書教諭
(2008 年 5 月現在)
1
11
2
2
2
4
3
3
0
2
0
9
0
総数内( )は科目等履修生の内訳
課程の必修科目が土曜日のみ開講されていることから受講生はクラブ活動における大会参加、
就職活動などで制約が大きいが、両学部 6 学科の学生がともに学ぶメリットは大きいと考えて
いる。受講学生の多くは、当初持っていた「本が好き」「本に囲まれて仕事をしたい」という
受講動機だけでは 3 年間学び通すことは難しいと理解する。また受講開始時に描いていた「本
を借りるところ」「本を貸してくれる人」という図書館や司書のイメージも大きく変わる。同
時に、学部・学科の専門領域で学んでいることを活かす場を広げる機会ともなっており、卒業
後の進路選択に役立てている。実際の進路は、図書館関係やその他情報関連機関のみならず、
一般企業、教員ほか教育機関、大学院進学者など多岐にわたっている。僅かではあるが図書館
職員の需要が伸びているが最終的に図書館職員を希望する者は少なく受講生の 1 割程度である。
その要因として雇用形態の多様化と経験者優先の求人情報が挙げられる。とりわけ正規雇用の
可能性が究めて低く期限付きの契約職員や派遣、臨時職員が大半なため卒業後の進路としての
困難性がある。
それでも 5∼10 名が各種図書館に毎年採用されており、
就職先での評価も高い。
また将来図書館に進むことを視野に入れた他職種就職者もおり、すでに卒後 3 年を経た転職に
よる図書館就職者も複数いる。2008 年 5 月現在で正規雇用は 3 名、5 年以上の継続契約が可能
な就業者は 6 名となっている。今後の課題として就職活動を十分に行える教育体制や就職後の
継続的リカレント、図書館関係求人情報の積極的な提供体制の整備などが望まれる。
88
第3章 教育内容・方法(その他の教育課程)
表 3-20 年度別卒業時の館種別の進路状況
大 学
専門学校
館種
図書館
図書館
修了年度
2003 年度
8
1
(課程 1 期生)
2004 年度
3
(課程 2 期生)
2005 年度
4
(課程 3 期生)
2006 年度
1
(課程 4 期生)
2007 年度
(課程 5 期生)
表 3-21 課程修了の図書館職員数
館種
大学
専門学校
学 校
図書館
公 共
図書館
公民館
図書館系
合計
3
1
1
14
2
1
4
3
9
7
1
6
学校
公共
就職者延べ数
16
1
5
18
現 職 者 数
8
1
3
11
9
6
(2008 年 5 月現在)
図書館系
公民館
合計
2
42
2
23
生涯学習社会における社会人教育を目指し、授業以外のプログラムとして、図書館情報学課
程運営委員会の企画による大学公開講座を 2006 年度から実施している。
さらに担当教員も公共
図書館の運営協議会委員や大学図書館の業務研究会講師など図書館現場とのパイプ役として貢
献している。
また、課程修了生が中心となり研究会を発足させ、事例研究や公開講座に参加するほか、講
演者や特別講師との懇談交流などを通して広く図書館界について学んでいる。
(参考 URL 「情
報行動・知識管理研究会」http://www.fujijoshi.ac.jp/dept/lis/toppage.htm)
表 3-22 大学公開講座の企画一覧
2006 年度
土曜講座 2006 『高齢化・情報化・活性化 −北海道の明るい未来を展望する−』
2007 年度
土曜講座 2007 『超・図書館革命 −21 世紀の図書館とパラダイムシフト−』
【点検・評価】
科目内容については概ね目標に沿った展開を実現できているが、学生の授業評価においてそ
の科目の目標が見えにくいなどの指摘があるものもあり、シラバス作成段階での科目内容や教
員間の連携だけではなく授業の進行中の連携などをさらに強化する必要がある。インターネッ
トやマルチメディアを活用した授業とグループワークは学習効果をあげているが集団に埋没す
る学生が出ないように個々の学生の習熟度を確認するためのチェック機能の強化が必要と思わ
れる。実習等体験学習は、図書館などにおける司書実務の理解をいっそう深めるとともに実習
先機関に本課程学生をアピールする機会にもなっている。
各界の第一線で活躍する先達による話題提供は、非常に良い刺激となっており今後も継続し
て実施したい。情報電子化及び情報世界の広がりを念頭においた教育は図書館だけでなく情報
関連分野への関心を高めたが、前提として持つべき図書館本来の機能についての基本的知識が
89
第3章 教育内容・方法(その他の教育課程)
やや薄れており、根拠規定となる社会教育法や図書館法、学校教育法などの理念を正しく伝え
るための工夫がさらに必要であると思われる。
履修登録前の小論文作成と面談による意思確認はモチベーションの高い学生の確保に繋がっ
ているが、土曜日に限定された科目開講により履修学生の就職活動や課外活動に影響を与えて
いる点については今後も課題となると思われる。また司書教諭科目の開講により、教員の担当
科目数や学生数が増え、学生の履修指導や就職指導などの面での困難さが課題であり、授業及
び実習等体験などに対する課程教務事務の一層の支援などが必要となっている。
【将来の改善・改革に向けた方策】
2006 年度から先の「総括と提言 2006」に基づき、科目内容の見直しのための検討を開始し
ている。特に本学におけるセメスター制導入にも連動する通年科目の見直しは早急に進める。
また主題知識や館種による図書館の使命の違いについて理解を深めるため、「図書館・情報学
概論」「利用者サービス論」「情報サービス演習」などの通年科目の細分化の際に科目内容な
どを検討中である。(2006 年度課程運営委員会からの継続課題)さらに、2005 年 7 月に制定
された「文字・活字文化振興法」や 2008 年の「国民読書年」決議を考慮に入れたカリキュラ
ム内容や公開講座の開催など地域への情報発信を積極的に進める。
情報リテラシー教育については本課程として学部教育と連動したカリキュラムの提案も行
っているが今後もこのような具体的な提案を行っていく。さらに先般国会において図書館法が
改正施行され 2010 年までに文科省による科目内容の変更が示されることになっており 2010 年
までにその対応も必要となる。
図書館業務の実習等体験学習を通して、教育研究の現場と図書館実務の現場が互いに刺激し
あえるよう一層の連携を模索する。具体的には実習体験を教育の場で共有するため授業の中で
体験報告を行わせ、その違いや共通点をもとに図書館現場に改善提案ができるような授業内容
とする。
課程の教育内容や成果をアピールするためホームページを効果的に活用する双方向の機能
として受講生も参加する情報発信の役割を強化する。また図書館や情報関連分野で活躍する同
窓生等にリカレント教育の機会を提供するため、ワークショップ等のプログラムを継続的に企
画し、その広報も課程や同窓会のホームページや会報を積極的に活用して行う。
90
第3章 教育内容・方法(その他の教育課程)
2) 日本語教員養成課程
【到達目標】
1. 日本語教育の新指針に対応するカリキュラムの改正を行う。
2. 改定後の新カリキュラムについても、本課程の教育に適切であるか点検・評価を行い、問
題点があれば改善する。
【現状の説明】
2003 年 4 月、日本語を母語としない学習者に日本語を教える人材を育成する目的で、本学文
学部に「日本語教員養成課程」を設置した。本課程履修生は文学部各学科で開設されている日
本語や日本社会に関する科目、また言語と社会に関する科目を選択必修科目として履修するこ
とによって、日本語を教えることに必要な言語及び文化に関する知識を修得するとともに、本
課程開講科目である日本語教育や日本語教授法に関する科目を履修し、日本語教員として日本
語を教えられる知識・能力を身につけることができる。
本課程履修生は 2 年間(1 年目:第1段階、2 年目:第 2 段階)で 34 単位以上の単位を取得
し、学士の学位授与の認定要件を充たすと同時に修了証書が与えられる。毎年、50 名程度が新
たに本課程に登録をするので、第 2 段階の学生を含めると約 100 名の学生が本課程で学習して
いる。2005 年 3 月初めて本課程修了者が生まれ、まだわずかであるが本課程を修了した後、日
本語教員になる修了生も出てきている。
2006 年度から始まった台湾輔仁大学日本語学科における 7 日間の日本語教育実習に参加する
ことによって、学生は海外の教育機関で行われている日本語教育を実際に目にし、そこで実習
生として日本語を教えることによって、日本語教育の現状と歴史的位置を理解し、日本語教育
に関する知識・能力を高め、日本語教育の経験を積むことの必要性を痛感し、さらに、日本語
教師という職の面白さを実感するようである。この日本語教育実習は 2008 年度から「日本語教
授法 IV」として単位化され、今後更なる充実が期待される。
また、2004 年度から国際交流センター主催で行っている「日本語集中コース」において、本
課程の学生が授業見学、また、チューターとしてコース受講生の日本語学習の手助けをしてき
たが、ここ数年本課程の「日本語集中コース」への関わり方も制度化され、授業見学・チュー
ター活動も「日本語教授法 I」の授業外の課題として位置づけられ、本課程の教育の一環とな
ってきている。
さらに、本課程の嘱託教員がメイリングリストを使って、日本語教育関係の学会・ワークシ
ョップ情報、または、日本語教員職や関係機関の情報を課程履修生に伝えており、課程履修生
が学会・ワークショップに参加したりしており、また、まだわずかであるが海外の日本語教育
機関で職を得る修了生も出てきている。
91
第3章 教育内容・方法(その他の教育課程)
【点検・評価】
2003 年設置された課程としては、課程カリキュラム運営も安定しており、また、新たな教育
活動の導入とこれらの活動の制度化といった課程教育の充実も図られており、評価に値すると
思われる。上記で述べたように、特に海外日本語教育実習の実施と「日本語集中コース」への
制度的な関わりが、日本語教師という職や日本語教育に関する現実感を学生に与えている。
本課程の運営は文学部各学科1名の専任教員、教務委員の教員 1 名からなる「日本語教員養
成課程運営委員会」が携わっているが、実務面は本課程の専任として配置されている1名の嘱
託の教員が担っている。この嘱託教員は海外教育実習の準備・引率・指導、「日本語集中コー
ス」開催時の授業外の指導などのほか、運営面においても日本語教員としての専門的立場から
問題点の指摘や新たな提案など課程カリキュラム運営の安定に大きく関わっている。今後、本
学の国際交流の進展に伴い、ますます本課程の活動も多様化・活発化することが予想されるの
で、教員配置のあり方など、本課程に関する体制整備についての検討が必要と考える。
【将来の改善・改革に向けた方策】
2000 年に文化庁から出された日本語教育の新指針に対応する新カリキュラムにするために、
本年度、本課程のカリキュラムを改定し、2009 年度より実施する。この改正においては、課程
の科目領域の変更と変更された科目領域に入る科目を選定し、各科目領域に入る科目数、科目
内容の適切性を確認し、必要な科目を新設した。この作業の中で、「言語と心理」の科目領域
に入る科目が十分ないという問題がわかり、「第二言語修得概論」を新設することとなった。
2009 年度は新カリキュラムの運営に問題点がないか、課程科目と学科必修科目が同じ時間帯に
開講されるといった課程科目の履修に問題がないかなど、注意深く見守っていくことにしてい
る。
さらに、2008 年度から海外協定校である台湾輔仁大学日本語学科における 7 日間の日本語教
育実習を本課程の教育の一環とみなし、
「日本語教授法Ⅳ」として単位化されることとなった。
この「日本語教授法Ⅳ」の履修登録説明などを慎重に行ってきたが、3 月に行われる実習、ま
た、その後の成績提出・発表などに問題がないかを確認するとともに、今後この科目が安定し
て開講でき、また、この実習が本課程の履修生にとって価値のあるものであり続けるように必
要な調整、変更を行っていくことにしている。
また、将来的には、アジア以外の地域、特に本学の海外協定校がある英語圏において日本語
教育実習ができれば、課程履修生に新たな経験の機会を与えられると考えられる。また、課程
修了生を出してからまだ数年の本課程であるが、今後実際に日本語教員になる修了生も増えて
いくと思われ、そのような修了生から課程履修中の学生が影響を受けたり、学んだりできるよ
うな機会−講演会やワークショップ−を実施していきたいと考えている。
92
第3章 教育内容・方法(修士課程)
第2節 修士課程の教育内容・方法
【到達目標】
1.現在立案中の学部改革に調和した大学院教育課程を策定する。
2.FD を学部の関係組織とも協力して、より具体化して推進する。
3.国内外の研究交流を推進する。
4.学位授与基準や研究指導体制は明文化されている。
【現状の説明】
第1 教育課程等
1.大学院研究科の教育課程
⑴ 大学院研究科の教育課程と各大学院研究科の理念・目的並びに学校教育法第 65 条、大学院
設置基準第3条第1項、同第4条第1項との関連
人間生活学研究科の教育課程は、「大学院学生便覧」(23∼24 頁)に示されているとおりで
ある。研究科を修了するには、2 年以上在学し、所定の授業科目について 30 単位以上を修得し、
かつ、
必要な研究指導を受けた上で、
修士論文の審査及び最終試験に合格しなければならない。
人間生活学専攻は、生活の主体としての人間、及び人間生活に関わる経済、法律、教育、社
会保障などの社会的なシステム、人間が生活の場所としてきた自然環境及びそこにおける衣食
住生活環境を広く研究対象として、より高度な科学的思考方法を教授することを通して、学際
的な視野をもち多様な価値観に培われた人間性豊かな人材の養成を目的とする。以上を基礎と
して、社会福祉の幅広い現場をより高度な知識を持って支えることのできる人材、及びより高
度な知識・技能を身につけた家庭科教員の養成を目的とする。そうした人間生活の多様な側面
を深く学修するための授業科目が、「人間生活分野」「生活環境分野」「生活福祉分野」の 3
つに区分されて置かれている。学生は修士論文の指導教員を決定し、その指導教員が担当する
「特講」(2 又は 4 単位)、「演習」(4 単位)、「特別研究」(6 単位)を系統的に履修し、他の各分野
からも 1 科目以上を必ず履修しなければならない。
さらに2006年度からは所属する専攻の枠を超えて8単位を超えない範囲で他の専攻の科目を
履修し、これを修了要件単位のうちに含めることができるようにした。2008 年度には、食物栄
養学専攻の学生が人間生活学専攻の「生活福祉分野」の科目を履修している。
食物栄養学専攻では、行政、学校、病院等における指導的立場にたつ管理栄養士の養成、食
品関連産業や研究所における研究者、技術者の養成、及び栄養系大学の教育者、研究者の養成
を目ざして、授業科目は、「食品品質分野」「生体機能分野」「栄養管理分野」の 3 分野から
構成されている。学生は、修士論文審査の主査となる指導教員を決定し、その指導教員が担当
する「特論」(2 単位)、「演習」(4 単位)、「食物栄養学研究法」(4 単位)、「特別研究」(6 単位)に加
え、他の各分野から 1 科目以上を必ず履修しなければならない。さらに「食物栄養学総合講義」
がオムニバス方式で開講されており、これを必修としている。
分野別に見ると次のようになる。「食品品質分野」では、安全で良質な食品と付加価値の
93
第3章 教育内容・方法(修士課程)
高い食品の供給を確立するため、食品の分析と品質評価について、主に食品微生物による発酵
産物や農産物中の化学成分を対象として、食品の品質及び機能評価を研究することを目的とし
て、「食品品質学特論Ⅰ」「食品品質学特論Ⅱ」「食品品質学演習Ⅰ」「食品品質学演習Ⅱ」が
置かれている。「生体機能分野」では、食事による健康増進と疾病予防を図るため、食品成分
の栄養・生理機能及び生体の代謝調節機構を教育・研究することを目的として、「生体機能学特
論Ⅰ」「生体機能学特論Ⅱ」「生体機能学特論Ⅲ」「食品調理機能学特論」と「食品機能学演
習」「生体機能学演習」が置かれている。「栄養管理分野」では、現代の食生活の問題点、原
因、対処法を追究する。特に食物や栄養に起因する疾患、終末期患者の食事ケアのあり方、ス
ポーツ栄養等を教育・研究することを目的として、「公衆栄養学特論」「栄養管理学特論Ⅰ」
「栄養管理学特論Ⅱ」と「公衆栄養学演習」「栄養管理学演習」が置かれている。
⑵ 「広い視野に立って清深な学識を授け、専攻分野における研究能力又は高度の専門性を要
する職業等に必要な高度の能力を養う」という修士課程の目的への適合性
人間生活学専攻では、本学を卒業し本修士課程に進んだ学生に関しては、卒業論文の作成を
もとに自己の研究の視点が明確化していることを前提に、より専門的な知識を学際的に深めて
いくカリキュラム構成になっている。社会人入学生は、社会経験を通して問題意識をより具体
的にしかも明確にもっており、その探究心をもとに新たな専門的知識や広い思考方法を伝授す
ることによって研究能力を高めるように指導している。
過去 3 年間は、他大学の卒業生が本専攻に入学するケースはなかったが、2008 年度に行われ
た入学試験では 2 名の社会人入学が予定されている。学部において家庭科教員免許状をすでに
取得している学生は、全員が専修免許状の取得を希望している。
学部からの入学生と社会人入学生の間に、
問題意識の広さや知識に量的に若干の格差がある。
これに対しては小人数教育であることを生かして演習等においても互いの知識や情報のやり取
りを積極的に誘導し、切磋琢磨しながら能力の向上を目指している。
食物栄養学専攻では、大学院開設の際には、LC-MS やクリーンベンチを設置するとともに、
毎年、私学研究助成に申請し、高速液体クロマトグラフィー、原子吸光光度計、超遠心分離機
などの機器類を揃え、高度の研究能力と技術能力を持った学生を養成している。また、共同研
究、委託研究などを通じて、大型凍結乾燥機、リアルタイム遺伝子解析装置、動物の自発運動
測定装置なども導入している。そのため、大学院生の中には、その実験研究の能力を生かした
分野に就職している者もいる。
また、
食物栄養学専攻では 2005 年度から栄養教諭専修免許状取得のための教職課程を設置し
た。この教職課程を修得するためには、前もって基礎資格としての栄養教諭一種免許状と管理
栄養士免許を取得している必要があるが、
すでに 2005 年度入学生のうちの 1 名がこの基礎資格
を持って入学し、修了後、北海道で初めて栄養教諭専修免許状を取得した。
本学の修士課程修了者については、本学や他大学の助手や教員として、あるいは企業や研究
所でも活躍しており、高度の専門的知識と技術は社会に還元されているものと考えられる。さ
らに、他大学院の博士課程に進学する者が増えており、この教育課程が高度な能力を養うため
の役割を果たしていると考える。
94
第3章 教育内容・方法(修士課程)
⑶ 「専攻分野について、研究者として自立して研究活動を行い、又はその他の高度に専門的な業
務に従事するに必要な高度の研究能力及びその基礎となる豊かな学識を養う」という博士課程の
目的への適合性
本学大学院は修士課程のみからなっており、博士課程の設置は未だ考慮していない。
⑷ 学部に基礎を置く大学院研究科における教育内容と、当該学部の学士課程における教育内
容との関係
人間生活学研究科の基礎となる人間生活学部は、1992 年に藤女子短期大学の家政科を改組転
換して設けられて以来、着実にその教育・研究の成果を積み上げてきた。人間生活学研究科は、
これを基盤として、ますます多様化・複雑化する社会の要請に応えることのできる人材の育成
を基本的な役割としている。
人間生活学専攻では、学部におけるカリキュラムをさらに専門分化して「人間生活分野」
「生
活環境分野」「生活福祉分野」としている。このうち 1 分野を自らの専門分野に設定するが、
他の各分野からも 1 科目の履修が義務付けられており、当該学科における人間生活を総合的に
学ぶという視点をさらに発展させた教育内容にしている。
食物栄養学専攻は、食物栄養学科の教育内容を高度化し、深化したカリキュラムとなってい
る。具体的には、「食品品質分野」は、食物栄養学科の食品化学、食品加工学、食品衛生学、
食と安全論、微生物学、生化学等の専門科目を基礎にしたものである。「生体機能分野」は、
栄養学、食品機能論、食品化学、生化学等の専門科目と特に関連が強い。「栄養管理分野」は、
臨床栄養学、公衆栄養学、公衆衛生学、応用栄養学、解剖生理学、運動生理学、栄養教育論等
の専門科目を踏まえている。また、食物栄養学科では、栄養教諭一種免許状が取得可能であり、
本専攻では、これと管理栄養士免許を基礎資格として栄養教諭専修免許状を取得することが可
能となっている。
2.授業形態と単位の関係
⑴ 各授業科目の特徴・内容や履修形態との関係における、その各々の授業科目の単位計算方
法の妥当性
上記の「教育課程と研究科の目的等との関連」の項目で述べたように、設立当初は学位論文
作成のための「特別研究」を 10 単位としてきたことについて、2004 年に大学基準協会から「そ
の内容に鑑みて適切かどうか判断する必要がある」との助言を受け、研究科委員会で十分検討
した結果、2006 年度からは 6 単位に変更した。人間生活学専攻では 4 単位分をこれまでの開設
科目の中から新たに選択、履修することとし、食物栄養学専攻では、必修科目「食物栄養学研
究法」4 単位を新設し、2 年間にわたり指導教員の下で履修することとした。
なお、各々の授業科目の単位計算方法は、大学院設置基準の定めにより行っている。
3.単位互換、単位認定等
⑴ 国内外の大学院等での学修の単位認定や入学前の既修得単位認定の適切性(大学院設置基
準第 15 条)
大学院学則第 17 条で認定基準を定めており、それに基づき食物栄養学専攻において、2005
年入学者の一例がある。すなわち、入学する前に科目等履修生として本大学院で修得した 2 単
位を入学後認定した。
95
第3章 教育内容・方法(修士課程)
4.社会人学生、外国人留学生等への教育上の配慮
⑴ 社会人、外国人留学生に対する教育課程編成、教育研究指導への配慮
現段階では外国人留学生の入学希望はなく、そのための準備は考えていないが、国際交流を
重視する立場から、必要が生じた場合には個別に対応したい。
社会人の受け入れについては、
両専攻とも
「大学院設置基準第 14 条に定める教育方法の特例」
(いわゆる 14 条特例)を適用し、社会人の都合に配慮して夜間(Ⅵ講時)や土曜日に授業時間
を設定しており、現在は円滑に運営されている。
人間生活学専攻では、社会人入学生については、2005 年度に 1 人、2008 年度に 1 人の入学が
あった。2005 年度入学生については「14 条特例」を適用し、社会人の都合に配慮した授業時間
を設定し指導が行われた。2008 年度入学の社会人については、就労をやめて進学したため、社
会人学生としての特別な教育上の配慮は必要ない状況である。
食物栄養学専攻では、社会人入学生については、2005 年度には 5 名、 2006 年度には 3 名、
2007 年度には、2 名、2008 年度には、3 名入学している。中には、前の職場を退職し大学院に
入学してくる者もいるが、ほとんどの社会人入学生は、職業を持ちながら、大学院生活を送っ
ているため、2005 年度から、講義は、Ⅵ講時(18 時 15 分から開始)にするように配慮してい
る。講義科目の選択には、入学式ガイダンスの後、指導教員と個別にきめ細かい指導を行って
いる。また、修士論文の指導は、インターネットを活用したり、週末または 18 時以後に行った
り、さらに休暇のとりやすい時期を事前に相談し、集中的に研究指導ができるような配慮も行
っている。
第2 教育方法等
1.教育効果の測定
⑴ 教育・研究指導上の効果を測定するための方法の適切性
大学院の授業では、筆記試験はあまり行っておらず、多くの場合、教育効果は日常の講義、
演習、研究指導におけるレポート、研究報告、論文等を素材とした質疑応答で測定され、それ
らの教育の効果が総合されて修士論文として集大成されて、再度判定されている。特別研究に
関連した教育効果は指導教員自身によって判断される部分が大きいが、他の教員によっても、
合同ゼミ、修士論文の中間発表会、さらにその最終審査において、それまでの教育・指導の効
果が判定される。また、学会その他において研究報告をすることにより社会的な評価を受ける
こともある。これらの測定システムを総合してみると、充分に客観的で適切な判断がなされて
いると考えられる。
⑵ 修士課程修了者(修業年限満期退学者を含む)の進路状況
2007 年度における人間生活学専攻修了者の進路は、専門学校教員としてのスキルアップ、家
庭科教員としての現職、及び中学校家庭科教員としての臨時採用が各 1 人であった。
食物栄養学専攻では、2004 年度から 2008 年度の修士課程修了者約 30 名のうち、大学病院、
民間企業及び研究所に就職しているもの 7 名、本大学または他大学の助手、助教として勤務し
ているもの 5 名である。社会人入学した 14 名は、課程修了後、本務先の病院及び大学助手に戻
り、勤務を続けている。また、さらに国立大学の博士課程へ進学したものが 3 名いる。
社会人入学の学生は、修士課程修了後、元の職場に復帰しているが、現役学生の場合は、結
96
第3章 教育内容・方法(修士課程)
果としてほぼ希望の分野に就職が決定しているものの、就職内定時期も遅く、就職先の確保に
は、学生、指導教員ともに頭を悩ませている。
⑶ 大学教員、研究機関の研究員などへの就職状況と高度専門職への就職状況
人間生活学専攻では、該当事項はない。
食物栄養学専攻では、修士課程修了後、本学の助手だけではなく、他大学、短期大学の助手
あるいは助教としても採用されており、評価も高い。また、現役学生のうち、特に実験系の学
生で、民間企業の研究員として就職しているものが増えている。専門的な研究をさらに深めた
いとの希望から、国立大学の博士課程に進学する者もいる。
2.成績評価法
⑴ 学生の資質向上の状況を検証する成績評価法の適切性
講義も演習も小人数で行うため、学生からの質問も出やすく、また教員からも学生に質問を
出しやすく、学生の理解力を確認しながら授業を進められ、その方向やレベルを修正すること
ができる。また文献紹介や研究報告において、質疑や討論を繰り返すことにより、学生の基礎
学力、読解力、情報収集力、展開力等が明瞭に現れて、その進歩の程度が検証できる。またそ
れらが最終的に集大成されて修士論文に凝縮され、多くの教員により評価される。このように
学生の資質向上の状況は適切に評価されている。
3.研究指導等
⑴ 教育課程の展開並びに学位論文の作成等を通じた教育・研究指導の適切性
人間生活学研究科では、入試の際に調査書・研究計画書の提出が求められており、指導を希
望する教員に前もって指導を受けている学生も多く、研究の方向性がかなり絞られた状態で入
学してくる場合がほとんどである。履修登録に際しては、専攻毎にガイダンスを行い、学生に
研究内容に見合ったものを登録するように指導している。
修士論文作成の標準的なスケジュールは「大学院学生便覧」(31∼32 頁)に示してあるが、
その概要は次のとおりである。学生は、入学後に研究分野を確認し、修士論文の指導教員を正
式に決定する。その後、学生は、指導教員とともに修士論文作成に向けた指導計画をたて、遅
くとも 1 年次の 10 月末までに論文テーマを確定する。2 年次の 5 月連休明けには、両専攻が合
同で修士論文作成中間報告会を公開で実施し、大学院担当教員をはじめとした本学教員等から
広く指導や助言を受ける。その上で、前期授業終了日までに論文題目を提出する。11 月の研究
科委員会で、それぞれの修士論文に主査(指導教員)1 名、副査 2 名以上からなる審査委員会
が組織される。なお、副査には、人間生活学の多様性を考慮し、専攻分野の異なる教員 1 名を
含むこととし、また、修士論文題目によっては、審査委員会の承認を得て本研究科の教員以外
の者を副査とすることができる。修士論文と論文要旨の提出は、修了年度の 2 月 9 日を期限と
し、2 月末に開催される公開発表会と最終試験の後、審査委員会での審査により、その判定が
行われる。判定結果は審査委員会主査から研究科委員会に報告され、修了判定が行われる。
⑵ 学生に対する履修指導の適切性
履修指導については入学願書の提出時のみならず、入学後に指導教員からも個別に実施して
97
第3章 教育内容・方法(修士課程)
おり、特に問題となるようなことは起こっていない。社会人学生の受講を容易にするために、
受講を希望する学生の都合に合わせて時間割を調整することも行っている。
人間生活学専攻では、新年度にオリエンテーション日程を設け、全講義・演習担当専任教員
の出席のもとに学生に対する履修指導のガイダンスを実施している。講義及び内容についての
紹介も同時に実施している。
食物栄養学専攻では、入学後全体のガイダンスに続いて、指導教員が個別に履修科目の選択
方法について指導する。例年、社会人学生の勤務時間に配慮して、講義科目は Ⅵ講時(18 時
15 分から 19 時 45 分)に行い、現役学生も同じ時間に受講している。特別研究、食物栄養学研
究法や演習の時間割は、指導教員とよく相談して決定している。
⑶ 指導教員による個別的な研究指導の充実度
食物栄養学専攻においては研究テーマが教員毎にほぼ決まっており、学生はそれを知った上
で所属希望分野と教員を選択しているので、問題は生じていない。しかし他大学出身の入学生
が本大学院教員の研究分野に関する理解が不足していた場合もあったので、2008 年度に本学ホ
ームページや学生募集要項で、それを良く理解してから出願するようにという注意書きを加え
た。
人間生活学専攻においてもほぼ同様である。それぞれ情報等の検索から始め、研究テーマを
絞っていくが、2 年次の初めに開催している公開の中間報告会では、途中経過について説明し、
違った立場での意見が多くの教員から出され、最終的な修士論文作成に生かされている。した
がって、これまでのところではほぼ充実した指導がなされてきたものと考える。
⑷ 複数指導制を採っている場合における、教育研究指導責任の明確化
「特別研究」について、大学院生は所属する分野の指導教員の指導を受けているが、複数の
分野にまたがる研究テーマの場合には、所属する分野とは異なる分野の副指導教員の助言や指
導も受けながら研究を遂行している。また、関連分野を専門に研究している教員が他大学にい
る場合、その教員に修士論文の副査を依頼することがある。
⑸ 研究分野や指導教員にかかる学生からの変更希望への対処方策
人間生活学専攻では、2007 年度に 1 名が研究分野の変更とそれに伴う指導教員の変更を行っ
た。その際には学生からの変更希望に対し、新指導教員の了解がスムーズに得られている。
食物栄養学専攻では、これまで、大学院入学後、学生から他分野への変更を願い出たことは
ない。なお、卒業研究での内容とは異なる分野を希望し、研究指導を受けた学生はいるが、そ
の場合も、その後問題なく大学院を修了している。
4.教育・研究指導の改善への組織的な取り組み
⑴ 教員の教育・研究指導方法の改善を促進するための組織的な取り組み(ファカルティ・ディベロ
ップメント(FD))およびその有効性
研究内容の関連性の強い担当教員が必要に応じて合同ゼミを行うなど、教員間で授業を開示
し合うことにより、教育・研究指導方法の自主的な改善に努めている。また、修士論文の中間
報告会や公開発表会には全ての担当教員が参加し、それぞれの教育・研究指導方法を自己点検
98
第3章 教育内容・方法(修士課程)
する機会としている。
教員の教育・研究指導方法の改善を促進するための組織的な取り組みを行うため、2007 年度
にファカルティ・ディベロップメント委員会を設置した。各専攻から 3 名で、計 6 名の教員で組
織する。過去 1 年間に各地で開催された研修会、セミナー等に教員と事務職員を派遣し、そこ
で得た情報を、冊子や CD として、全教員に配布し、FD に関する意識を高める活動をしている。
⑵ シラバスの作成と活用状況
シラバス(講義内容)は、「大学院学生便覧」(39∼88 頁)に示されている。
人間生活学研究科の設立間もない頃は、授業の多くがごく少数の学生に対して行われている
ことから、
学生の学修ニーズに応じて授業の詳細が変更されることもあるため、
シラバスには、
授業のねらいや授業計画、成績評価の方法など授業概要のみが簡潔に示されていた。しかし、
年を重ねるごとに授業内容も確立されたため、また大学院設置基準に新設された条項にも従っ
て、シラバスはより具体的で分かりやすい表現をするように改善されつつある。
⑶ 学生による授業評価の活用状況
人間生活学研究科においては学生数が少ないため、評価した学生が特定されやすいので、学
部のような形式での「学生による授業評価」は実施できない。しかし、2008 年度には、個々の
授業ではなく、受講した授業全体に対する評価を自由に記述してもらい、そこからキーワード
を抽出するとともに、キーワード間の関係と強度を分析する形での調査を試行的に実施した。
まだ分析には至っていないが、人間生活学研究科に適合した授業改善資料となることが期待さ
れる。また、この調査は、大学院在籍者・卒業生に対する学生生活満足度調査の一環として行
われた。
⑷ 修了生に対し、在学時の教育内容・方法を評価させる仕組みの導入状況
前述のように、学生数が少ないために、授業科目ごとの評価は困難である。そこで、⑶で述
べた学生生活満足度調査を活用する形で、修了生にも、教育内容・方法に対する評価を受ける
ことにした。試行的なものではあるが、効果があがることを期待したい。
第3 国内外との教育研究交流
1.国内外との教育研究交流
⑴ 国際化への対応と国際交流の推進に関する基本方針の適切性
今までは、国際学会や調査のため、教員個人が外国に行く例はあったが、大学として大学院
レベルでの国際交流の推進の方針を検討していない。今後研究と教育の両面について国際交流
を推進する方策を検討したい。
⑵ 国際レベルでの教育研究交流を緊密化させるための措置の適切性
昨年度台湾で開催されたアジア栄養会議では、両専攻の教員が、英語でポスター発表し、参
加した外国の研究者と交流を深めた。また、2008 年度に横浜で行われたアジア栄養会議では、
教員、院生が発表した。
99
第3章 教育内容・方法(修士課程)
⑶ 国内外の大学院との組織的な教育研究交流の状況
食物栄養学専攻では、2001 年から 2 年間、「科学技術総合研究委託費 先導的研究の推進研
究」と 2003 年からの 5 年間「生物系産業創出のための異分野融合研究支援事業」に参画、帯広
畜産大学、農業研究センターなどと組織的研究を実施した。また、2008 年 8 月には、同専攻教
員 2 名が、北海道大学遺伝子病制御研究所との連携で、「食育と免疫の親子体験学習」を実施
し、教育交流を深めた。その他にも、他大学大学院教員との共同研究を行っており、国内外の
学会や学術雑誌に発表している。
第4 学位授与・課程修了の認定
1.学位授与
⑴ 修士学位の各々の学位の授与状況と学位の授与方針・基準の適切性
2008 年 3 月に、それまで明文化していなかった修士論文評価基準 6 項目を明文化し、2008
年度の「大学院学生便覧」(31 頁)から掲載して周知を図った。この基準は、他の多くの大学
のものとも共通するものであり、修士課程に適したものと考えられる。
⑵ 学位審査の透明性・客観性を高める措置の導入状況とその適切性
論文審査委員会は主査の他に副査 2 名以上で、副査には専攻分野以外のもの 1 名を含み、必
要に応じて、他大学の教員にも委託できるようにしているので、審査基準の適切性と客観性は
よく保たれていると考える。また、中間報告会や公開発表会など、指導教員以外の複数の教員
によって修士論文の内容が指導・検討される機会が設けられている。場合によっては書き直し
を指導することなども行われており、最終的に提出される修士論文は、一定の水準が確保でき
ている。なお、審査に合格した修士論文は、図書館に保存し、閲覧に供されている。
⑶ 修士論文に代替できる課題研究に対する学位認定の水準の適切性
人間生活学研究科の教育・研究分野では、この項に該当する研究は実施されなかったし、今
後も実施の可能性は低いと思われる。
⑷ 留学生に学位を授与するにあたり、日本語指導等講じられている配慮・措置の適切性
未だ留学生が入学したことはないが、今後入学した場合には適切な配慮と措置を行いたい。
2.課程修了の認定
⑴ 標準修業年限未満で修了することを認めている大学院における、そうした措置の適切性、妥当性
現在までにこの措置に該当したものはいないが、
今後該当者が現れた場合には慎重に考慮し、
適切で妥当な措置を行いたい。
【点検・評価】
第1 教育課程等
人間生活学研究科の教育課程は、その基礎となる人間生活学部(人間生活学科・食物栄養学
100
第3章 教育内容・方法(修士課程)
科)における教育・研究の専門性をさらに深める科目を履修させており、人間生活学研究科の
理念・目的、
学校教育法第 65 条や大学院設置基準第 3 条第 1 項に沿うものであると評価できる。
人間生活学専攻では、学生のほとんどが人間生活学科の卒業生であり、本研究科において特
定の分野を深く学習するとともに諸分野への関心も高く、各分野の科目に対しても積極的に学
修する意欲が高い。
両専攻とも、修士論文の指導教員が担当する「特講(特論)」「演習」「特別研究」を系統
的に履修するようにカリキュラムが組まれている。また、人間生活にかかる研究対象の多様性
を考慮し、幅広い視野にたち、総合的に物事を判断できる深い学識を涵養するため、学生が所
属している分野の必修科目以外の他分野や他専攻の授業科目も履修するように配慮している点
は評価できる。また、同様の理由から、食物栄養学専攻においては、大学院担当教員全員によ
るオムニバス方式の授業が開講されていることは、学生が一つの専門性に偏ることなく、幅広
い専門分野にふれる機会を考慮している面で評価できる。
なお、学位論文作成のための「特別研究」が 2005 年度までは 10 単位であったが、大学基準
協会の助言を受けて検討した結果、2006 年度からは 6 単位とした。その差 4 単位分を人間生活
学専攻では、それまでの開設科目の中から新たに選択、履修することとし、食物栄養学専攻で
は、必修科目「食物栄養学研究法」4 単位を新設し、2 年間にわたり指導教員の下で履修するこ
ととした。
この教育課程は「広い視野に立って清深な学識を授け、専攻分野における研究能力又は高度
の専門性を要する職業等に必要な高度の能力を養う」という修士課程の目的と次の点でよく適
合している。この修士課程が職業を持っている人のために門戸を開いている点や、人間生活学
専攻にあっては、家庭科専修免許状を、食物栄養学専攻にあっては、栄養教諭専修免許状を取
得できるための教職課程を置き、専修免許状を取得した学生が出ていることは上記の目的に適
合する。食物栄養学専攻では、微生物実験、機器分析、動物実験技術など特殊技術を持った学
生が、企業、研究所で採用されているので、今後も共同研究、委託研究や企業訪問等の機会に、
学生の持つ専門的能力を説明して、就職先確保に努力しなければならない。一方、最近の大学
の助手、助教の公募では、管理栄養士資格を持ち、大学院修士課程修了見込み以上の条件がつ
けられている場合が多くなっていることから、今後この方面での就職が期待される。教員はあ
らゆる広報の機会を利用して、修士課程修了生の社会的な役割の一層の認知を図り、活躍の場
を開拓することが大切と考える。
人間生活学研究科における教育内容は、その基礎としている人間生活学部の教育内容をより
深化し発展させ、高度にしたものであり、両者の教育内容とその関係は適切であると評価でき
る。しかし、人間生活学部は 3 学科(人間生活学科、食物栄養学科、保育学科)からなるが、
人間生活学研究科は 2 専攻(人間生活学専攻、食物栄養学専攻)のみからなり、保育学科につ
ながる専攻がない。学部と大学院の一貫性を確立し、教育・研究のレベルを向上させるために
も保育学科につながる教育課程の設置を検討する必要がある。
人間生活学専攻における教育内容は、基礎となる学科の専任教員のほとんどが本専攻の授業
を担当するようになり、両者の教育内容の関連性が強くなったと評価できる。しかし 1992 年の
学部開設当時に比較すると、その後の学部カリキュラムがかなり変更されている点もあり、社
会人入学生にとっては、当該学部の学士課程で学んだカリキュラムとの隔たりが若干生じてい
る。しかし社会人入学生の場合、自己の問題意識や研究課題がより明確であるので、それに沿
101
第3章 教育内容・方法(修士課程)
って学部における教育内容に関する新たな知見を含めて授業展開している面もある。
食物栄養学専攻では、教育内容の基礎としている当該学科の教育内容をより専門性を深めた
ものであり、両者の教育内容とその関係は適切であると評価できる。しかし、現状においては、
基礎となる当該学科の専任教員全員が本研究科の授業を担当しているわけでない。本専攻と当
該学科の関係をより緊密で適切なものにしていくためには、
カリキュラムの関連性だけでなく、
授業担当教員の継続性や指導体制についても考慮する必要がある。
職業を持っている社会人のために夜間の授業や土曜日の授業で対応しているが、大学院担当
の教員は、昼間に学部の講義も担当しており、教員の負担が極めて大きくなる。できるだけ負
担を軽減できるように授業時間の設定を工夫しているが、非常勤講師の配置が容易でない現状
では、内部での工夫に頼らざるをえない。
人間生活学専攻では、現職の家庭科教員及び福祉施設等勤務者も入学してくる可能性がある
ので、今後も教育上の配慮が滞りなくできるような検討が必要である。
食物栄養学専攻では、毎年、一定数の社会人入学生を受け入れている点と、広報活動が十分
とは言えない中で、本専攻が社会的に認知されてきていることは評価できる。さらに、レベル
の高い社会人大学院生の養成に努力したい。そうした中にあって、社会人学生は 3 分野の中で
も現在の職業(病院や保健所等の栄養士職)に関連が深い栄養管理分野での特別研究に志望が
集中するので、この分野の教員はかなり多忙となっているという問題がある。
第2 教育方法等
教育効果については複数の教員による数種の測定システムを取り入れて、充分に客観的で適
切な判断がなされていると考えられる。
修士課程修了者の進路状況について、人間生活学専攻では、修士課程の修了に見合った進路
状況を確保することには直接結びついているケースは少ないが、北海道内の高等学校家庭科教
員のおよそ 3 分の1を占める 100 名あまりの学部卒業生が教職についており、今後は彼女たち
のリカレント教育として積極的に対応していくことを考えている。
食物栄養学専攻では、大学院生の大部分が、修了前に就職が決まっているのは評価ができる
が、内定時期が遅く、分野も限られているので、就職担当(学生係)は、学部学生の就職だけ
ではなく、大学院生の就職先確保のための方策を教員と協力して考えなければならない。大学
院担当教員は民間企業や研究所などとの共同研究を通して、学生の就職先確保に努力する必要
がある。また、国立大学の博士課程に進学した大学院生を、課程修了後も、その専門性を生か
せる進路に進めるように、可能な手助けを与え続けたい。
食物栄養学専攻では、大学教員、民間企業の研究員や博士課程への進学者が増えているのは
評価できるが、さらに管理栄養士の資格を生かした就職先の確保を検討しなければならない。
管理栄養士養成課程の大学では、管理栄養士資格と博士の学位を持った教員の募集が多くなっ
ており、今後、レベルの高い大学院生の養成が、ますます必要になってくる。また、民間企業
や研究所などの就職先を増やすためには、大学院担当教員自身が、研究会や共同研究を通して
積極的に交流を深めるなどして就職先の拡大に努めるとともに、企業が求める専門的能力を持
った学生の養成に努めなければならない。
成績評価法については、講義、演習、文献紹介、研究報告において、そして最後に修士論文
102
第3章 教育内容・方法(修士課程)
の評価において、多くの教員が関わり、総合すれば学生の資質向上の状況は適切に評価されて
いるものと考える。
教育・研究指導の適切性については、2002 年度大学院設置以降 5 回の修士論文指導を行って
きたが、概ね順調に指導されてきたと考えている。健康上または経済的理由から途中退学した
者もあったが、指導上の問題はなかったものと考える。現段階では順調に経過しているといえ
るが、学生からの要望などを検討して、今後とも適切な対応をしていきたい。
2008 年度からは、修士論文審査委員会の立ち上げを従来の慣行としていた「卒業年の 2 月」
よりも早めて、
前年の 11 月とすることとした。
これは論文審査の客観性と公平性を増すために、
副査の関与する機会を多くすることを目的とするものである。特に他大学の教員に副査を依頼
する場合に、
手続きやスケジュール調整に時間がかかるので、
このような変更が必須であった。
人間生活学専攻では、教育課程を担当する教員の専門分野が、自然・人文・社会科学と広範
囲にわたっており、自分が指導を担当する学生以外に対しては教育・研究の指導上適切な助言
が比較的表面的になりやすい点がある。この点について、今後検討を要する。
食物栄養学専攻では、修士論文の作成にあたっては、主査となる教員が研究指導を行うこと
になっているが、研究テーマによっては、副指導教員が研究の指導補助を行うことがあり、修
士論文の副査となっている。その場合には、主指導教員と副指導教員との綿密な打合せが必要
である。
学生に対する履修指導については、入学式後のガイダンスで、大学院担当教員は、全員出席
し、綿密な履修指導を行っており、特に、職業を持つ大学院生の講義時間の調整にも配慮して
いることは評価できる。今後、さらに、きめ細かな履修指導を心がけていく必要がある。食物
栄養学専攻では、社会人入学の大学院生を研究指導する時間の調整に、指導教員は苦労してい
る点があるが、インターネットなどの利用によって、きめ細かい指導を行っている。
指導教員による個別的な研究指導の充実度に関して、人間生活学専攻においては、これまで
は入学生が少なく、教員による個別的な研究指導の充実度について相互評価する対象はなかっ
た。今後は、指導教員による研究指導のしかたについて、一定の共通する事項に関しては、そ
の評価を行う方法について検討を考えたい。
食物栄養学専攻では、研究を直接指導している教員のほとんどは、かなりの時間を大学院生
の研究指導にあてている。教員が講義、卒論指導や公務(会議、委員会)以外の時間は、大学
院生の研究計画や研究結果についての論議などに費やしている点は評価できるが、一方では教
員自身の研究能力向上のために、今後、国内外研修制度の積極的活用による教員自身の研究時
間の確保や、
研修会、
学会などに参加する機会を多くするような方策を考えなければならない。
複数指導制については、人間生活学専攻においても特別研究を担当しない教員の専門領域に
関する修士論文の場合もありうるので、今後必要な場合にはその導入を検討する。
また、学生からの研究分野や指導教員の変更希望に際しては、専攻科会議においてより透明
性のある適切な対処方法を考えるシステムについて検討していく。
教育・研究指導方法の改善を促進するための取り組みは、今までは担当教員の自主的な活動
にまかされていた。本研究科での組織的取り組み(FD)を始めてからまだ1年ではあるが、研
修会やセミナーで得た情報を全教員で共有して意識改革に努めている。今後はさらに具体的な
103
第3章 教育内容・方法(修士課程)
改善のための取り組みの実施を検討する必要がある。
学生による授業評価については、どの科目についても受講する学生数が少ないので、授業に
点数をつけて、その統計処理によって有意な評価をすることはできないが、授業改善のための
参考資料を得ることは可能と思われる。そのための具体策を検討する必要がある。
第3 国内外との教育研究交流
教育研究交流については、食物栄養学専攻で、個々の教員レベルとはいえ他大学の大学院担
当教員や研究センターなどと共同で教育研究の交流を進めている点は高く評価できる。今後、
さらに国内外の大学院との組織的な教育研究の交流を進めていくことを期待している。そのた
めには、個々の大学院教員の努力にのみ頼るのではなく、大学としての基本方針を立て、組織
的に推進することを検討する必要がある。
【将来の改善・改革に向けた方策】
本学では、2010 年度を目途として学部改革が検討されているので、基礎学部のそれに対応す
る形で人間生活学研究科の教育課程等の改革についても検討する予定である。
人間生活学専攻では、2010 年度から基礎となる人間生活学科のカリキュラム改正が予定され
ており、それと本専攻のカリキュラムをどのように関連付けるか、今後の検討が必要である。
また、同専攻では、学部 4 年次から大学院設置科目を科目等履修することを可能にしており、
この制度を利用して、成績優秀者を中心に学部と大学院との連携教育も考えている。
食物栄養学専攻においては、近く定年を迎える教員が多いこと、開設以来社会人入学者の占
める割合が大きくなっていることなどにより、カリキュラム等の改革を検討しなければならな
い。
なお、現在、人間生活学研究科は人間生活学専攻と食物栄養学専攻の 2 専攻のみで構成され
るが、
本研究科の基礎学部である人間生活学部の保育学科では 2010 年度実施予定の学科改革案
を立案中であり、その中で同学科につながる分野の大学院の設置を検討している。
社会人学生への教育上の配慮については、【点検・評価】の部で述べたように、大学院教員
は学部教育を兼担している上に、社会人学生への特別な配慮が必要であり、その社会人の研究
指導が特定の分野の教員に集中するなど、様々なレベルでの負担のアンバランスが顕著となっ
ている。それに対する改善策の一として、教員採用時にこのアンバランスをなくすことに重点
を置いて任用することを考慮する必要がある。
教育・研究指導改善への組織的な取り組みとしては、大学院ファカルティ・ディベロップメン
ト委員会を 2007 年に立ち上げて、教員自身の意識改革を目標として活動してきたが、今後は学
部とも協力・連携しつつ、さらに具体的な取り組みを始める。
その一つとして、学生による授業評価については、いままでは学生数が少ないので評価した
個人が特定されやすいという理由で実施してこなかったが、今年度末には、個人が特定されず
に教育改善に有効な資料を得るための調査項目や方法を考案して、学生に対するアンケート調
査を実施することになっている。
104
第4章 学生の受入れ(学部)
第4章 学生の受け入れ
第1節 学部における学生の受け入れ
【到達目標】
1.本学の理念・目的と各学部・学科の目的に対して理解、または関心を持つ学生を受け入れ
るために広報の充実を図る。
2.本学の理念・目的と各学部・学科の目的に対して理解、または関心を持つ学生を受け入れ
るために多様な入学者選抜方法を設ける。
3.入学者選抜方法とその結果は、公正で説明責任を果たせるものとする。
4.各種の入学者選抜方法については、その適切性を検証し改善に努める。
5.適正な学生収容定員の維持と退学者の状況の把握に努め、その対応策を図る。
【現状の説明】
1.学生募集方法、入学者選抜方法
⑴ 大学・学部等の学生募集の方法、入学者選抜方法、殊に複数の入学者選抜方法を採用して
いる場合には、その各々の選抜方法の位置づけ等の適切性
1) 学生募集方法
本学における学生の募集は、入試委員会と入試課とが協議し、教授会等の承認を得て次のよ
うな方法で行っている。
①募集要項と大学案内等パンフレットの作成
本学の教育活動の概要を高校生にわかりやすく説明するため、『大学案内』『藤女子大学 文
学部』『藤女子大学 人間生活学部』といったパンフレットを発行してきた。
従来の『大学案内』は、毎年度初めに発刊され、大学の基本姿勢に触れながら、本学の歴史・
沿革、各学部の特色や施設・設備、各学科の教育目標とカリキュラム体系や「学科と資格」、
「大学院」、「学生生活」、「留学&国際交流」、「就職」及び前年度の「入試結果」と「出
身高校別合格者一覧」を簡潔にまとめて掲載し、全体として本学の建学の精神と教育の理念・
目的が自然な形で理解されるように構成し、『藤女子大学 文学部』と『藤女子大学 人間生活
学部』では、ゼミの紹介、教員の授業内容、学生や社会で活躍している卒業生の声を掲載し、
学部・学科の教育活動をより具体的に説明していた。
しかし、3 冊では重複箇所もあり、本学の姿を体系的により明確に把握し、より良く理解し
てもらう便を考え 2009 年度は全てを 1 冊にまとめた形で作成している。
募集要項は、正確を期すと同時に受験生の趨勢を考えて各学科の変更点などを入試委員会で
整理・検討し、教授会及び評議会で最終的に決定している。
また、春に「夏のオープンキャンパス」「秋のミニオープンキャンパス」「文学部授業ライ
ブ」「大学祭同時開催個別相談会」「日本語・日本文学科授業ライブ(通年)」など受験生を対
105
第4章 学生の受入れ(学部)
象とする年間行事の日程を記載したチラシを作成し高校等へ郵送して校内での掲示をお願いし
ている。
②進学オリエンテーション(進学相談会)
入試課職員が中心となり本学の教職員と道内各地の会場で春と秋に催される進学説明・相談
会において、本学の特色を高校生と高校教員に説明している。過去 4 年間で本学が対応した会
場数と高校生数は次表 4-1 のとおり。
表 4-1 進学オリエンテーションの会場数と高校生数
年 度
2004
時 期
会
場
春
2005
秋
春
2006
秋
春
2007
秋
春
合計
秋
数
22
26
27
26
27
18
31
18
195
高 校 生 数
316
377
417
325
312
236
380
262
2,625
各年高校生数
693
742
548
642
2,625
③オープンキャンパス、入試相談会
毎年 3 月と 7 月に高校生にキャンパスを開放し、学長の挨拶、学部・学科の紹介に加えて、
ミニ模擬講義を各学科で行い、授業を体験してもらっている。体験授業のほか在学生の案内に
よるキャンパス・ツアーや教員・在学生との交流でいろいろな質問を受ける時間を作り、本学で
の学修や生活に対するイメージをもって入学してくることを意図した企画も取り入れている。
また、同時に保護者向けに就職・奨学金・初めての 1 人暮らしなどについて個別の相談にも応じ
ている。
最近の傾向として、高校生が進路選択行動をするのが早期化し、どんな大学があるかを調べ
始めた時期が 1 年生から始まり 2 年生の 9 月までには 40%を越える状況(リクルート進学セン
サス 2007[高校生の進路選択に関する調査]より)を反映してか、本学でも毎年 1・2 年生の参加
者が増え、2007 年度 7 月の参加者は 22%を占めている。
人間生活学部では、資格取得を目的とする学科が多く、学部・学科をよりよく理解してもらう
と同時に受験生には適性を考えた進路決定をしてもらうために2006年度から9月にもオープン
キャンパスを開催し、年 3 回実施している。
2004 年以降の参加者は次表 4-2 のとおり。
表 4-2 オープンキャンパス参加の高校生数
2004年 2004年 2005年 2005年 2006年 2006年 2006年 2007年 2007年 2007年 2008年
3月
7月
9月
3月
7月
3月
7月
3月
7月
9月
3月
200
510
116
626
116
530
232
144
629
159
210
710
742
878
932
210
④授業ライブ
文学部では、高校生に 9 月末から 2 週間にわたって通常の授業を全て公開する授業ライブを
行っている。そのために公開授業科目名、教室、公開日・講時、テーマ・内容を大学ホームペ
ージに掲載して案内し、高校生に普段のままの授業を大学生とともに受けているという体験を
106
第4章 学生の受入れ(学部)
してもらうために、好きな授業に出席してもらっている。参加者は 2004 年度 55 名、2005 年度
29 名、2006 年度 31 名、2007 年度 43 名と平日であるため参加者の数がやや少ないものの、遠
く道内各地からの熱心な参加者もおり、大学の雰囲気を肌で感じてもらえる貴重な機会となっ
ている。
⑤キャンパス・ツアー(大学祭企画)
本学両キャンパスの大学祭において、学生がキャンパスを案内するツアーを行い、高校生に
大学の施設・設備や授業で使用する教科書等などを紹介している。これに参加した高校生の数
は、北 16 条キャンパスは 2004 年度 40 名、2005 年度 70 名、花川キャンパスは 2004 年度 30 名、
2005 年度は 60 名、2007 年度は両キャンパス合計 36 名であった。なお、この催しは 2006 年度
までは「藤満喫の旅」などという名称でキャンパス・ツアーを学生会執行部等が主催していた
が、2007 年度以降は大学祭同時開催個別相談会という名称で模擬店のひとつとして、教室に相
談ブース設置と在学生の案内によるキャンパス・ツアーを実施した。
⑥出張講義
高校生に大学の授業を体験させて進路指導の一環としたいという高校からの依頼に応えるも
のであり、2004 年度には 10 校、2005 年度には 7 校、2006 年度 8 校、2007 年度 23 校へ出向き
出張模擬授業を行った。2007 年度から高校数が増えた一因は、高校から要望があればそれに応
えるというのではなく、大学が科目名・担当者名・講義内容を載せたリーフレット「出張講義」
を作成し、各高校へ送付するとともに大学ホームページに掲載し、積極的な対応を行ったこと
によると思われる。
⑦高校訪問
主として入試課職員が高校を直接訪問し、本学の教育活動や就職実績などを説明している。
2004 年度には 167 校、2005 年度 150 校、2006 年度 156 校、2007 年度は 162 校を訪問した。
⑧ホームページの活用
本学のホームページに入試関係情報を掲載している。主として受験生向けの情報として、過
去の入学試験の結果、入学試験日程、募集人員、授業料その他の納付金やオープンキャンパス
等各種の案内・情報及び資料請求フォーム等を紹介している。
2) 入学者選抜方法
学部・学科の志願者・合格者・入学者数については、大学基礎データ(表 13)のとおりであ
る。全ての選抜方法において心がけていることは、受験生が基礎的な学力と同時に入学後の専
門教科を学ぶに相応しい能力・適性を持っているかどうかを判断できる選抜に努めることであ
る。
一般入試では、公正で透明性のある選抜方法を堅持し、最低点の公表や受験生の要望によっ
てはその得点の公開などアカウンタビリティを持った態度で信頼される入試への努力を継続し
ている。入試問題は、学長召集による「出題責任者打ち合わせ会」で、①出題は高等学校学習
指導要領の範囲を超えないこと、②ミスのない問題作成と扱いには慎重であること、③受験生
107
第4章 学生の受入れ(学部)
の平均点が 6 割程度になるように、
また 2009 年度から利用する大学入学センター試験とは異な
った論理的思考力と言語的表現力を求める問題作成を心がけることを申し合わせている。
選抜方法の種類としては、一般入試、特別推薦入試(姉妹校推薦)、公募推薦入試、社会人
入学試験、大学入試センター利用入学試験があり、学科ごとに明確な方針をもって行われてい
る。合否判定は、いずれも各学科で候補者を決定し、教授会の厳正な審議を経て決定し、学長
に報告される。
入学者選抜方法は、各学科の意向・提案が入試委員会で検討され、承認を得た後、教授会・
評議会に諮られた上で決定することとなっている。本学の選抜試験には以下のものがある。
①一般入学試験
一般入試の A 日程は毎年文学部は 2 月 13 日、人間生活学部は 2 月 12 日と固定した日程で行
われ、試験科目は、文学部では学部の教育内容を考慮し、全学科とも国語と外国語(英語)を
必修で、倫理、政治経済、日本史 B、世界史 B の 4 科目から 1 科目を選択としている。配点は
各科目 100 点であるが、英語文化学科では外国語の筆記試験の得点を 2 倍にし、さらにリスニ
ングテストの得点(20 点)を加えている。また、日本語・日本文学科では国語の得点を 2 倍に
して配点し学科に適性のある学生を確保している。
人間生活学部の試験科目は、必修である総合問題と外国語(英語)に加えて、学科の専門性
に応じて指定される選択科目が 1 科目課せられている。総合問題は、国語全般の内容を主とし
つつも、各学科での学修や人間生活の営みと結びつく諸問題に関する知識や考えを問う出題が
なされている。選択科目については、その場で選択することができる。人間生活学科と保育学
科では、倫理、政治経済、日本史 B、世界史 B、地理 B (2008 年度から出題)、生物IB、数学
I・A から 1 科目を選択するが、人間生活学科では、2008 年度から選択科目の中に「家庭」を
新たに加えた。食物栄養学科では、数学Ⅰ・A、 生物ⅠB、化学ⅠB の問題をそれぞれ 3 題ずつ
出題し、計 9 題から 5 題を選択する。これは、食物栄養学科の受験生に対して、学科での学修
に必要な基礎的な科目である、数学Ⅰ・A、 生物ⅠB、化学ⅠB のうち、少なくとも 2 つの領域
の基礎学力を備えていることを要求しているのは学科の特徴を反映したものである。
B 日程は日本語・日本文学科のみが、国公立大学の合格者が決定した後の 3 月中旬に行って
いる。学科の教育内容に直接的に関わる国語の学力が特に優れた人材を受け入れるために、試
験科目を国語 1 科目のみとしている。
一般入試での募集定員は各学科とも定員の 5 割を目処にしている。
②特別推薦入学試験
この入試は、本学の経営母体である藤学園に属する 3 つの藤女子高校(札幌、旭川、北見)
の学生を対象とするもので、キリスト教を基盤とする教育を(中・)高・大と連続した形で与
え、大学の創始者であるキノルド司教の「北海道の未来は女子教育にある」という考えを生か
す形で実施されてきた。各学科が指定する 3 年間の成績評価基準を満たし、高校長から推薦さ
れた者に、英語文化学科、文化総合学科では筆記試験と面接、日本語・日本文学科では事前の
課題作文に対しての口頭試問と面接によって行われる。人間生活学部では 3 学科ともに基礎学
力試験と面接が課せられている。
108
第4章 学生の受入れ(学部)
③公募推薦入学試験
この制度ができた当初は、高校を指定した指定校推薦試験を行っていたが、広く開放する現
在の形になった。学科での専門的な学修に対する意欲・適性や潜在的な能力を持った入学者を
確保することを意図し、特別推薦入学試験と同日に実施されている。
推薦の形態は、英語文化学科と文化総合学科が学校長推薦、日本語・日本文学科が自己推薦、
人間生活学科が自己推薦、食物栄養学科と保育学科が学校長推薦で、推薦基準や選抜方法は、
それぞれの学科が求める学生の違いに対応して、学科ごとに異なっているが、各学科が指定す
る 3 年間の評定平均値などの条件を満たしている者で、調査書等(高等学校長の推薦書)の提
出を求め、筆記試験と面接を行っている。なお、不合格者には不合格となった理由も記載した
通知を発送している。なお、人間生活学科は過年度の卒業生にも受験資格を与えている。
②と③の推薦試験で、学科の定員の 5 割を超えないように配慮している。
④社会人入学試験
生涯学習の一環として、また、教育の機会均等の尊重と入学後に一般の学生に与える教育効
果が大きい点を重視する観点から、文学部では英語文化学科と文化総合学科において、人間生
活学部では全 3 学科において実施されている。出願資格は、大学入学資格を得て 5 年以上経過
している者に認められている。選抜方法は、英語文化学科では書類審査・面接・英語基礎学力
試験、文化総合学科、人間生活学科、食物栄養学科では書類審査・面接・小論文、保育学科で
は面接・小論文によって選抜される。
⑤ 海外帰国学生入学試験
日本国籍を有する者で、海外に在留し、正規の教育制度に基づく教育を受けて帰国する者(海
外帰国子女)のための特別入学試験であり、特に英語の力を重視する英語文化学科で A 日程と
同日に実施される。受験生には、英語(リスニングを含む)、小論文(日本語)、面接が課さ
れる。2009 年度から従来の海外帰国子女特別入学試験の「両親などの家族とともに海外に在留
し、」という条件を受験生一人での海外在留も可能なように修正を加え、試験名も変更した。
⑥大学入試センター利用入学試験
2009 年度の入学者選抜から、幅広い層の学生を開拓するため、大学入試センター試験を全
学科で利用することになった。
一般入試の問題の難易や問題量等の適切性については、出題責任者が毎年各科目の全受験者
と合格者の平均点を試験問題作成者の会議に提出し、受験生の質的な変化や傾向等を検討した
上で、問題の作成に取り組んでいる。推薦入試の問題は、各学科会議で主任を責任者にして作
成し、実施している。
全ての試験の入学者選抜の合否判定は、学科会議で原案を作成し、教授会で審議・決定され
ている。
3) 各々の選抜方法の位置づけ等の適切性
一般入学試験(A 日程・B 日程)の問題は、本学教員が長年の経験に基づいて作成にあたって
いるので問題の難易についても熟知しており、また、2009 年度から利用する大学入試センター
109
第4章 学生の受入れ(学部)
試験とは異なった大学生に相応しい論理的思考力と言語による表現力を求める筆記試験であり、
その効果は大きく適切である。
特別推薦入学試験は、藤学園が設置する 3 つの高校の校長による推薦を受けた受験生に筆記
試験を含む面接を行っている。キリスト教的世界観や人間観を土台とした本学の理念に基づく
教育をさらに発展させ、愛と平和を尊ぶ心と人のために尽くす奉仕の精神を育て、高度な知性
と豊かな人間性を兼ね備えた女性を育成するという目的の遂行にとって重要な位置を占める選
抜方法である。
公募推薦入学試験は、一般入試では見逃しがちな学科の専門的な学修に対する意欲・適性や
潜在的な能力を持った入学者を見出すことができるという点で一般入試を補完する役割を持っ
ている。
社会人入学試験は、科目等履修生・聴講生制度と同じく広い意味での社会貢献であるが、学
生と年齢的にも社会的にも違いのある社会人が学内での学習・研究面で学生に与える教育効果
には大きいものがある。
海外帰国学生入学試験についても、帰国子女等の大学への受け入れに対する社会的な要請の
ほか、一般学生が異文化を経験した学生との交流により人間的成長が期待でき、大きな教育効
果が見込める。
2009 年度から導入される大学入試センター試験は従来とは異なった層の学生を開拓するこ
とが期待される。
このようにそれぞれ別個の選抜方法が総合的に見ると一つにまとまって、関心を持った幅広
い学生の選抜に関して適切に補完作用を果たしている。
2.入学者受け入れ方針等
⑴ 入学者受け入れ方針と大学・学部等の理念・目的・教育目標との関係
a.文学部
文学部では、学科の専門性に基づきつつも、学科間の垣根を低くして、それぞれの学科カリ
キュラムを有機的・系統的・総合的に結びつける教育の実現を図っている。そのため、3 学科
共通の入学者受け入れ方針として、歴史と社会に対する関心を重視し、人文系の学問領域に積
極的な関心を持ち、自主的に学んでいく姿勢を有する学生の確保を目指している。
b.人間生活学部
人間生活学部は、その理念・目的として、生命及び人間の尊厳と個人の多様な生き方を尊重
し、他者と共存しつつ共生社会を実現すべく、生活上の諸問題を解決する実践的な能力を備え
た女性を育成することを謳っている。この理念に相応しい学生を確保するために、特別推薦入
試や公募推薦入試、社会人入試においては、面接が重視され、それぞれの受験生がその学修目
的や意欲において学部やそれぞれの学科の理念・目的にどの程度合致しているかが、その際の
確認事項の一つとなっている。
⑵ 入学者受け入れ方針と入学者選抜方法、カリキュラムとの関係
a.文学部
一般入試の A 日程においては、3 学科とも国語、外国語(英語)、地歴・公民(1 科目選択)
110
第4章 学生の受入れ(学部)
の 3 科目入試を実施している。その上で、各学科は、それぞれの専門性にふさわしい学生を確
保するために、入試選抜方法に独自の意向を反映させている。たとえば、A 日程において、英
語文化学科は外国語の得点を 2 倍にし、さらにリスニングテスト(20 点)を課している。日本
語・日本文学科は国語の得点を 2 倍にして加重配点し、入学者を選抜している。また、特別・
公募推薦入試や社会人入試など多様な入学者選抜方法をとることによって、それぞれの学科の
教育目標を達成しうる多様な技能や資質をもつ学生の確保に努めている。たとえば、日本語・
日本文学科の推薦入試では、自己推薦入試制度を導入し、論文と面接を通して、論理的思考に
秀でた学生の確保を目指している。
なお、各学科の特別・公募推薦入試による募集定員は学科定員の 50%以下におさえ、一般入
試の受験生への門戸が狭くならないよう配慮している。
b.人間生活学部
人間生活学部は、人間生活という共通の基盤があるとはいえ、3 学科の専門性は相互に異な
り、しかもその異なった専門性の一つの具体化ともいうべき専門的資格の取得に対応したカリ
キュラムを編成している。人間生活学科では、人間生活に関わる広汎な教養・知識・技能を身
につける上で必要な基礎的能力や資質をもつ学生を受け入れるために、一般入試(A 日程入試)
における選択科目を 8 科目としている(2008 年度に、従来の 6 科目に地理 B と家庭を加えた)。
また、公募推薦入試において提出を求めている自己推薦書の目的の一つは、受験生の学修目的
がどの程度明確化しているかを確認することである。食物栄養学科では、高い資質をもつ管理
栄養士の養成を行うという中心的目的から、入学後の学修に必要な理数科目を重視し、それを
一般入試の選択科目や公募推薦入試の選択的推薦基準の一つに反映させている。また、応募推
薦入試で求めている評定平均値の平均点 4.0 以上というもう一つの選択的推薦基準は、地方の
優秀な学生を優れた管理栄養士として養成し、出身地周辺の土地で活躍してもらうことを目指
した措置である。保育学科では、一般入試等を通して、北海道初の保育系四年制大学の学生と
して相応しい学力を備えた学生の確保に努めている。
3.入学者選抜の仕組み
⑴ 入学者選抜試験実施体制の適切性
入学者選抜試験の実施に当たっては、本学学長の指名する副学長を統括責任者として、入試
委員会(各学科正副委員 2 名×6 学科)及び入試課を中心に、本学で実施する全ての入学者選
抜試験を教職員一体で行う全学行事として取り組んでいる。年度当初より、入学者選抜試験実
施のための万全な体制の構築をし、それぞれの入試に応じた体制で臨んでいる。特に、本学の
最も基本的な入学者選抜試験である一般入学試験(A 日程)の実施に関しては、全教職員を集
めての監督者説明会の開催、入試実施前日及び当日の関係者以外の会場立入禁止処置などをは
じめ、採点・判定・合格発表に至る全ての過程を入試委員会の強力な統率のもと一貫した体制
で取り組んでおり、2007 年 4 月から入試課職員を 4 名に増員した。また 2008 年度の入学者選
抜試験より、試験時間内の途中退出を禁止し、さらに人間生活学部の一般入学試験(A 日程)
については、
受験生の交通の便などの利便性を考慮して会場を変更して文学部と共に北 16 条キ
ャンパスにおいて実施している。
111
第4章 学生の受入れ(学部)
⑵ 入学者選抜基準の透明性
本学の入学者選抜基準は、入学試験要項に選考方法として示してあり、一般入学試験(A 日
程・B 日程)に関しては「学力試験および調査書」を選抜基準の資料とし、また推薦入学試験
(特別推薦・公募推薦)、社会人入学試験や海外帰国学生入学試験に関しては、学科ごとにそ
れぞれ基準を定めている(特別推薦入学試験以外の、入学試験の選考方法については本学のホ
ームページにおいても公開している)。いずれの入学試験の場合も、選抜基準となる資料に基
づいて各学科が合格候補者の原案を作成し、教授会で審議・判定し、学長に報告した後、合格
者が決定される。
⑶ 入学者選抜とその結果の公正性・妥当性を確保するシステムの導入状況
最も基本的な入学試験である一般入学試験(A 日程・B 日程)については、希望する受験者に
成績を開示している。また本学のホームページには過去数年度の、大学案内のパンフレットに
は前年度一般入学試験の合格最高点と最低点を公表している。
4.入学者選抜方法の検証
⑴ 各年の入試問題を検証する仕組みの導入状況
一般入学試験問題の難易度や個々の問題の適正差などの検証は、基本的には、各科目の問題
作成グループが、それぞれの責任において行っているが、毎年 5 月ないし 6 月に開催される一
般入学試験出題責任者会議において、前年度の各科目の受験者及び合格者の最高点・最低点・
平均点が報告され、各科目で数値目標(全受験者の平均点は 60%を上回り、合格者の平均点は
65%を目処とすること)を踏まえた問題作成が行われるよう強く要請される。
一般入学試験以外の入学試験に関しては、各学科が主体となり責任を持って問題を作成してお
り、各年度の入試問題の検証も当該学科が行っている。
⑵ 入学者選抜方法の適切性について、学外関係者などから意見聴取を行う仕組みの導入状況
入学者選抜方法の適切性について、学外関係者などから意見聴取を行う仕組みについては、
本学では、現在まで導入していないが、それに変わるものとして、入学者選抜方法の適切性に
ついて、姉妹校三校の進路指導部教員・卒業学年担任者を含む関係者と本学各学科の入試部委
員との集まりを毎年 3 月に行い、入試問題を含めた本学の入学試験について意見等を聞く機会
を設け、改善を図っている。
5.科目等履修生・聴講生等
⑴ 科目等履修生、聴講生等の受け入れ方針・要件の適切性と明確性
科目等履修生、聴講生等については、学則第 59 条から第 60 条に定められており、両学部と
も、履修あるいは聴講を希望する者がある場合には、当該科目に関して他の受講生の履修に支
障がない限り、科目担当教員の許可あるいは学科会議を経た上で教授会においてその資格、希
望理由等を審査し、相応しいと判断された場合に許可される。
受け入れの要件としては、科目等履修生の場合は「学則第 25 条に定める資格を有する者」ま
たは「教育職員免許法第 5 条第1項に定める基礎資格を有する者」を対象とし、聴講生の場合
は「学則第 25 条に定める資格を有する者」を対象としている。受講科目は「科目等履修生受け
112
第4章 学生の受入れ(学部)
入れ科目一覧表」または「聴講生受け入れ科目一覧表」で指定された科目のうち、いずれも当
該年度 16 単位までを認めている。以上の受け入れ要件は、選考料、受講料、その他の事項とと
もに「藤女子大学科目等履修生要項」と「藤女子大学聴講生要項」に明記されている。
過去 3 年間の学部ごとの受け入れ状況は以下の表のとおりである。なお、科目等履修生のう
ち、文学部の人数には図書館情報学課程科目履修生も含まれる。
表 4-3 科目等履修生受入状況
年度
2005 年度
2006 年度
2007 年度
部
8
7
5
人間生活学部
4
4
4
計
12
11
9
年度
2005 年度
2006 年度
2007 年度
部
2
0
4
人間生活学部
1
0
1
計
3
0
5
学部
文
学
表 4-4 聴講生受入状況
学部
文
学
6.定員管理
⑴ 学生収容定員と在籍学生数、(編)入学定員と(編)入学者数の比率の適切性
a.文学部
本学の学生収容定員、在籍学生数、定員超過率等は、大学基礎データ(表 14)にあるとおり
で、文学部の学生収容定員は各学科 320 名(1 学年あたり 80 名)で、学部全体で 960 名である。
2008 年度の在籍学生数は 1,158 名で、文学部全体の定員超過率は 1.21 倍(英語文化学科 1.19
倍、日本語・日本文学科 1.23 倍、文化総合学科 1.19 倍)であり、2007 年度では 1.21 倍、2006
年度では 1.22 倍、2005 年度では 1.21 倍となっている。
入学者数については大学基礎データ(表 13)のとおり、2008 年度は 240 名の定員に対して
275 名の入学者で、
入学者数比率は 1.15 倍であった。
2007 年度では 1.15 倍、
2006 年度では 1.16
倍、2005 年度では 1.24 倍、2004 年度入試では 1.18 倍で、5 年間の平均入学者数比率は 1.18
となっている。
b.人間生活学部
人間生活学部の学生収容定員は、文学部と同じく各学科 320 名、学部全体で 960 名である。
2008 年度の人間生活学部の在籍学生数は 1,020 名で、学部全体の定員超過率は 1.06 倍(人間
生活学科 0.98 倍、食物栄養学科 1.10 倍、保育学科 1.11 倍)であり、2007 年度では 1.08 倍、
2006 年度では 1.08 倍、2005 年度では 1.10 倍となっている。
入学者数については大学基礎データ(表 13)のとおり、2008 年度は 240 名の定員に対して
240 名の入学者で、
入学者数比率は 1.00 倍であった。
2007 年度では 1.11 倍、
2006 年度では 1.04
倍、2005 年度では 1.12 倍、2004 年度では 1.08 倍で、5 年間の平均入学者数比率は 1.07 とな
っている。
113
第4章 学生の受入れ(学部)
⑵ 著しい欠員ないし定員超過が恒常的に生じている学部における対応策とその有効性
次に記載のとおり、両学部とも定員管理は適正に行われている。
a.文学部
3 学科の過去 5 年の入学定員に対する入学者数の比率は上記に記したように 1.18 である。毎
年 1.1 台で推移していたが、2005 年度は最も高く 1.24 であった。入学辞退者や中途退学者を
想定して歩留まりが定員の 1.1 になるように合格者を発表しているが、18 歳人口の減少という
大きな流れの中で歩留まりの推測が難しい中で無難に対応しているといえる。
b.人間生活学部
本学部の過去 5 年の入学定員に対する入学者数の比率は上記に記したように 1.07 である。5
年間の中で最も高いのは 1.12、最も低くて 1.00 で推移している。食物栄養学科、保育学科は
それぞれ管理栄養士養成課程、保育士養成課程等を持ち定員を大きく超えてはいけないと言う
厚生労働省からの制約があり多くの合格者を出せない一方、定員を割ることは避けなければな
らず難しい立場にあるが、文学部と同じく定員の 1.1 になるように合格者を発表している仕組
みが機能しているといえる。
7.編入学者、退学者
⑴ 退学者の状況と退学理由の把握状況
本学における学部・学科の退学者数は、大学基礎データ(表 17)のとおりであり、学部別の
退学状況とその理由は、次のとおりである。
a.文学部
文学部における退学者数は、2005 年度が 9 名、2006 年度が 18 名、2007 年度が 18 名となっ
ている。文学部の退学状況と学生から提出された退学理由の表をみると、一身上の都合が平均
して多いが、2006 年度では他大学への入学・編入学と進路変更の数が多く、2007 年度では学費
未納による除籍の数が増えている。以下に関連する表を示す。
表 4-5 文学部の退学状況とその理由
年度・
学年
2005 年度
1
理 由
2
3
2006 年度
4
1
2
3
2007 年度
4
1
2
3
合計
4
病 気 療 養
家庭の事情
婚 姻 の 為
進 路 変 更
就
1
2
1
他大学入学
編
2
1
2
1
2
2
4
2
3
1
7
2
4
職
入
1
5
学
在学年限超過
海 外 留 学
一身上の都合
そ
の
除
2
2
1
3
4
1
4
1
8
他
籍
計
合
1
計
0
3
9
4
18
114
2
3
18
1
1
2
4
0
0
0
9
0
2
5
0
0
19
1
9
45
第4章 学生の受入れ(学部)
b.人間生活学部
人間生活学部における退学者数は、2005 年度 7 名、2006 年度 13 名、2007 年度 10 名となっ
ている。人間生活学部の退学状況と退学理由も、一身上の都合がやはり最も多く、進路変更、
他大学への入学・編入学と続く、このうち、一身上の都合には、北海道経済の冷え込みという
より大きな枠組みの中で生じる倒産や失業による家庭の経済的事情も含まれる。また、僅かで
はあるがやはり学費未納による除籍もある。以下に関連する表を示す。
表 4-6 人間生活学部の退学状況とその理由
年度・
学年
2005 年度
1
理 由
2
3
2006 年度
4
1
2
3
2007 年度
4
1
2
3
合計
4
病 気 療 養
1
家庭の事情
婚 姻 の 為
進 路 変 更
就
2
1
1
1
1
職
1
他大学入学
編
1
入
1
2
1
学
在学年限超過
海 外 留 学
一身上の都合
そ
の
1
2
1
1
1
2
4
他
除
籍
2
計
合
1
計
2
7
1
1
2
1
2
1
1
4
2
1
3
1
3
2
3
2
13
10
0
1
0
7
0
5
0
0
0
12
1
4
30
⑵ 編入学生および転科・転部学生の状況
本学では、学則第 27 条により、他の大学に 2 年以上在学した者または短期大学を卒業した者
に対して、本学の 3 年次への編入学を認めている。定員枠は設けておらず、受け入れ学科学年
の在籍者数を考慮しながら、当該学科が行う試験・小論文・面接等による選考の上教授会の議
を経て、若干名を受け入れている。
転科・転部については、学則第 29 条の 2 により、修得単位数が 30 単位以上の希望学生に対
して、編入学生と同じく受け入れ学科学年の在籍者数を考慮しながら、当該学科が行う書類審
査・試験・小論文・面接等による選考の上教授会の議を経て、受け入れている。
過去 3 年間の編入学生及び転科・転部学生の受け入れ状況は次の表のとおりである。
表 4-7 編入学生数(カッコ内は出願者数)
学部・学科
文 学 部
人間生活学部
年度
英語文化学科
日本語・日本文学科
文化総合学科
計
人間生活学科
食物栄養学科
保育学科
計
2005 年度
2006 年度
2007 年度
1 ( 8)
1 ( 1)
0 ( 4)
2 (13)
2 ( 2)
2 ( 7)
0 ( 2)
4 (11)
0 (1)
0 (1)
2 (2)
2 (4)
0
1 (6)
1 (2)
2 (8)
1 (5)
0 (1)
1 (1)
2 (7)
0
1 (4)
3 (3)
4 (7)
115
第4章 学生の受入れ(学部)
表 4-8 転科・転部生数(カッコ内は出願者数)
学部・学科
文 学 部
人間生活学部
年度
英語文化学科
日本語・日本文学科
文化総合学科
人間生活学科
食物栄養学科
保育学科
2005 年度 ※
2006 年度
1 (2)
0
0
0
0
0
2007 年度
0 (1)
1 (2)
1 (1)
0
1 (1)
0
0
0
0
0
0
0
※2005 年度は合格後辞退
【点検・評価】
入試の業務の全てにおいて、ミスのないように慎重な作業と点検に努めることを最も肝要な
こととして関係者全員に徹底させるように努めており、これまでは大きなミスはない。
本学の学生募集の方法は、教職員や学生の協力を得た多様なものとなっており、大学基礎デ
ータ(表 14)のとおり人間生活学科を除いて学生定員も充足していることから、ほぼ適切であ
ると評価することができる。しかし、人間生活学部については全体的に受験生減少の傾向が見
られる。これは同学部の条件とアクセスの問題もあるが、より魅力的な学部・学科を目指した
改革を実行することにより、それを解消しようとするもので、現在改革案等を検討中である。
また、今後は入試広報だけでなく大学広報としてもより新しく充実した活動を継続して行う予
定である。
学生募集に関する全ての催しに対して教職員の理解・協力が増し、質的にも量的にも着実に
改善されてきている。出張講義に関しても、入試委員会と入試課を中心に企画しているが、年々
教員の理解・協力が得られ一層充実してきた。
学生募集の最良の方策は、本学の教育理念の下で教育を受けた在学生・卒業生が社会から評
価される存在として受け入れられてきた伝統を再認識し、高校生のキャリア・モデルとなるこ
とで本学の教育力を訴えることが一番である。その点で、受験生にとって身近な存在である在
学生にオープンキャンパス時の案内、学部・学科紹介や大学祭における学生企画のキャンパス・
ツアーは好評を博しており、今後も継続していきたい。
また、オープンキャンパスに参加した学生が一般入試、公募推薦入試を受験する率は比較的
高く、2007 年度 7 月の高校 3 年の参加者 493 名の 62.2%が出願している。
推薦試験では、筆記試験の他に面接も行い、当該学科の学生として相応しい学修意欲、能力、
目的等を把握するよう努め、適切な選考を行うように配慮し、一般入試では、受験者の希望が
あれば本人に成績を開示し、公正さ・公平さを追求している。
多様な入学者選抜という観点から、2007 年 9 月の評議会で、従来とは異なった幅広い層の学
生を開拓するために 2009 年度の入学者選抜から大学入試センター試験を全学科で利用するこ
とが決定され、この選抜によって入学してくる学生の資質にも注目している。
18 歳人口の減少傾向が続く中で、学部及び各学科に相応しい資質と基礎力を備えた学生を確
保し、本学が北海道全域に対して堅持してきた高等教育機関としての責任を果たすために、一
般入試にあっては、各学科の特徴に沿った選択科目を加えた 3 科目入試を一貫して実施してき
たが、人間生活学部では必修科目に国語に相当する総合問題を出題している。小学校における
116
第4章 学生の受入れ(学部)
ゆとり教育の導入期や高等学校のカリキュラム変更等の影響で生じた所謂学生の多様化に対す
る方策として、従来から受験生の学力等に配慮した入試問題作成に努めてきたが、この努力は
今後も継続されるべきである。
特別・公募ともに所謂推薦入試に関しては、それぞれの学科において、当該学科の学生とし
て相応しい学修意欲、能力、目的等を面接で把握するよう努めているが、センター入試制度を
導入することになり、受験生各々の学科への適性を確認するのは困難なことから、学部全体及
び各学科の教育理念・教育目標を高校生に知らせるべく、一層の明確で有効な情報発信に努め
る必要がある。
入学者受け入れについては、いずれの学科においても、入学後のそれぞれの学科の学修に必
要な学力を確認することを目的としている。一例を挙げれば、保育学科でも入学時点での保育
の知識・技能を入学生に対しては求めていない。したがって、各学科とも、カリキュラムは基
礎的な知識から高度な専門的知識・技能に至るまで体系的に編成されているが、受験生に対し
て各学部・各学科が求めるものをより良く理解してもらうためにアドミッション・ポリシーの
制定を各学科に求めている。
入学者選抜で本学は、2009 年度入学試験より大学入試センター試験利用入学試験を新たに導
入することになっている。本学の入学者選抜試験実施体制はさらに複雑になるとともに一層責
任が重くなる。かかる状況において、入学者選抜試験を厳正に実施していく上で、2009 年度か
ら入試委員長を入試部長に格上げし、
入学者選抜試験実施体制の強化・充実を図ることとした。
入学者選抜試験の実施体制に関しては、本学で最も大きな入学試験である一般入学試験(A
日程)の実施後あまり時を置かずに「反省会」としての入試委員会会議を開き点検し、翌年度
に反省点が生かせるように次年度への引き継ぎも確実に実施している。例えば、2007 年 4 月か
らの入試課職員の増員はまさに実施体制の強化に直結するものであるし、2008 年度の入学者選
抜試験より実施の受験者の試験時間内の途中退出の禁止は、試験終了近くに発覚した場合の出
題ミスに対応するものであり、人間生活学部の一般入学試験(A 日程)の、北 16 条キャンパス
への会場変更は、雪害による悪影響を避けるための変更で実施体制が一層整備された。
入学者選抜基準は、入学試験要項や本学のホームページで示している選考方法として、それ
に基づいて着実に選考されているという点において、透明性は確保されているということがで
きる。
一般入学試験(A 日程・B 日程)における、希望する受験者に対しての成績開示については、
全受験生の、2006 年度は 77%、2007 年度は 86%、2008 年度は 87%と、かなり高い数値となっ
ており、入学者選抜とその結果の公正性・妥当性を確保するシステムとして機能していると言
うことができる。
入学者選抜方法について 2006 年度入学試験より、一般入学試験(A 日程)の出題担当者は合
格者の平均点について数値目標(全受験者の平均点は 60%を上回り、合格者の平均点は 65%を
目処とすること)を設定し、実際の結果との照合に基づいて難易度を調整しながら問題作成に
当たるという検証システムを導入した。このことによって、科目間の難易度のばらつきは解消
されつつある。
科目等履修生、聴講生の受け入れについては、その方針・要件ともに明確であり、制度が適
切に運用されていると考えられる。
定員管理は、単年度をみると、学科によって入学者の比率が高すぎる年度もあるが、それは、
117
第4章 学生の受入れ(学部)
さまざまなデータを踏まえて慎重に歩留まりを予測しているにもかかわらず、結果として予測
を大きく上回る入学者数となってしまったケースである。追加合格の制度を取り入れて 1 次合
格者数を押さえ気味にする等、必要な対応策も採っており、基本的には適切に運営されている
と考える。
退学者の状況は、
「日本私立学校振興・共済事業団私学経営相談センター」が、実施した 2005
年度「学校法人基礎調査」によると、大学院大学などを除く、ほぼ全ての私立大 550 校の中退
者は 55,497 人で在籍した学生約 193 万人の 2.9%にあたるという。本学の 2005 年度について
は、2,220 人の在籍で中途退学者は 16 人、退学者率は 0.7%、2006 年度はやや高くて 1.4%、
2007 年度は 1.2%であった。一般に女子の退学率は男子より低いという事情もあるが、本学の
状況は、学生が定着していることを示していると考える。
退学理由の主なものは、「一身上の都合」が多いが、「経済的困窮」という理由を調査項目
にあげていないので、最近顕著な北海道経済の不況による保護者の失業などで家計負担に対応
できなくなっての経済的理由による退学が「進路変更」の項目に入っているケースが多いこと
から、今後は調査項目の見直しを考えたい。
編入学生及び転科・転部学生の受け入れについては、その制度が適切に運用されていると考
えられる。なお、編入学生及び転科・転部学生の受け入れ人数が少ないのは、いずれも当該学
科学年の在籍者数に配慮し、
希望学生の意欲や学力を十分考慮しつつ選考しているためである。
【将来の改善・改革に向けた方策】
選抜方法も入試センター試験の利用により選抜方法も一段と多岐にわたり、他の試験同様に
導入後の評価は欠かせない。そのためにも入学試験と入学後の成績の相関を調べることは、学
科の性格によっては必ずしも容易ではないが、今後の大学の水準を一層高めるためにも組織だ
った調査を行うシステムを検討する。
広報のひとつとしてのオープンキャンパスには、最近、1、2 年生の参加も目立つために、1、
2 年生を対象とした従来とは異なった特色を持つオープンキャンパスを検討している。
学部及び各学科の教育理念・教育目標はすでに学則に掲げ、ホームページに搭載したり、入
学案内に記載されているが、学部・各学科の求める学生像をアドミッション・ポリシーとして
まとめる作業を急ぐ段階にあり、一層の情報発信に努めている。
本学の入学者選抜基準の透明性をさらに高めるためには、選考方法のより具体的な内容の公
表が必要であり、それにはまず公表可能な内容についての検討と、一般入学試験(A 日程・B
日程)の受験者に限定している成績開示について、他の入学試験にも広げるかどうかを入試委
員会で検討を始める。
入試問題の検証の一つは、一般入学試験(A 日程・B 日程)の問題に設定された数値目標をク
リアーすることであるが、なかなか困難なこともあり、受験者の学力を絶えず的確に予測しな
がら、問題作成に当たる必要がある。
入学者選抜方法の適切性について、学外関係者などから意見聴取を行う仕組みについては、
本学では、現在まで導入されていないばかりでなく、全く何の検討もしていないので、まず導
入の是非に関しての検討から始めたい。
118
第4章 学生の受入れ(学部)
中途退学者率は低いものの、学年別で見ると文学部では 1、2 年生がやや高い。アドミッショ
ン・ポリシーの作成を含めて受験生に対する広報をより充実させ、学修目的が明確な学生の確
保と入学後の満足できる学修環境を整えることに一層努める必要がある。導入教育の充実も含
めたカリキュラムを検討中であり、また、大学の授業を公開している「授業ライブ」をより有
効に展開できるように入試委員会に再検討を依頼している。
119
第4章 学生の受入れ(大学院)
第2節 大学院人間生活学研究科における学生の受け入れ
【到達目標】
1.入学者を増やし、入学定員に近い学生数を確保する。
【現状の説明】
1.学生募集方法、入学者選抜方法
⑴ 大学院研究科の学生募集の方法、入学者選抜方法の適切性
人間生活学研究科の教育課程や入学試験情報等を本学ホームページに掲載しているほか、毎
年 7 月にはポスター、パンフレットを作成し、北海道及び東北の家政系など関係する分野への
大学に郵送や、直接出向いて、本学広報の一環として学生を募集している。また学部のオープ
ンキャンパスにあわせて大学院の紹介と案内を年 3 回、さらに大学院独自で在学生向け説明会
を年 2 回ほど実施している。学生の定員は、両専攻とも 16 名(各学年 8 名)で、合計 32 名で
ある。入学試験は 9 月下旬に第1期入試を行い、3 月初旬に第 2 期入試を行っている。
入学者選抜の方法として、一般入学試験と社会人入学試験の 2 種類がある。
一般入学試験の試験科目は次のとおりである。
表 4-9 大学院一般入学試験科目
試験科目
外国語
専攻
専 門 科 目
面 接
人間生活学専攻
英 語
人間生活学・生活環境学・生活福祉学から出願時に
1 科目選択
面接試問
食物栄養学専攻
英 語
食品化学・食品微生物学・生化学・栄養学・臨床栄
養学・公衆衛生学から出願時に 2 科目選択
面接試問
社会人入学試験は、本研究科が専門的知識を持った実務家、研究者を養成することを目的と
していることから、2006 年度以降の募集については、次の出願資格のいずれかを満たす社会人
を対象に実施している。すなわち、
・大学卒業後 3 年を経過した者
・外国において学校教育における 16 年の課程を修了してから 3 年以上経過した者
・社会人入学試験あるいはそれに準ずる制度によって大学を卒業した者、及び本大学院入学
年の 3 月に卒業見込の者
・その他本学大学院において個別に入学資格審査により、大学を卒業した者と同等以上の学
力があると認めた者で、25 歳に達した者及び本大学院入学年の 3 月までに 25 歳に達する
者
とし、4 年生大学を卒業していない社会人にも就学の機会を拡大している。
また、社会人入学試験の試験科目は、次のとおりである。
120
第4章 学生の受入れ(大学院)
表 4-10 大学院社会人入学試験科目
試験科目
論 文
専 門 科 目
専攻
人間生活学・生活環境学・生活福祉学から出願時に
人間生活学専攻
小論文
1 科目選択
食物栄養学専攻
小論文
食品化学・食品微生物学・生化学・栄養学・臨床栄
養学・公衆衛生学から出願時に 2 科目選択
面 接
面接試問
面接試問
入学者の選考は試験結果と面接の結果を総合し、各専攻内で判定の後、研究科委員会で審議
し、学長に報告した後、承認される。なお、本研究科の志願者・合格者・入学者数は大学基礎
データ(表 18-3)にあるが、社会人入試の内訳は、次の表のとおりである。
表 4-11 社会人の志願者数と入学者数
年度
2006 年度
2007 年度
2008 年度
志願者
1
0
1
入学者
1
0
1
志願者
5
2
4
入学者
3
2
3
志願者
6
2
5
入学者
4
2
4
専攻
人間生活学専攻
食物栄養学専攻
合
計
2.学内推薦制度
⑴ 成績優秀者等に対する学内推薦制度を採用している大学院研究科における、そうした措置
の適切性
本研究科では学内推薦制度は採用していない。
3.門戸開放
⑴ 他大学・大学院の学生に対する「門戸開放」の状況
人間生活学研究科の過去 5 年間(2004 年度∼2008 年度)の総入学者 46 名中で藤学園(大学
及び短期大学)以外の大学等の出身者は 12 名で 26%を占め、そのうちの多くは、社会人入試
による入学者である。またその中でも社会人入試の出願資格の第 4 項、すなわち個別の入学資
格審査により資格を認められて受験し、入学した者も多く、これらの制度により「門戸開放」
がよく達成されていることを示している。他大学から及び社会人の受け入れに関する広報は、
ポスター、パンフレット、大学院説明会、オープンキャンパス及び研究交流を通じて、積極的
に行っている。
4.社会人の受け入れ
⑴ 大学院研究科における社会人学生の受け入れ状況
過去 5 年間で社会人入学生は、
両専攻合わせて 18 名あり、
入学生総数 46 名の 39%を占める。
また本学は女子大学ではあるが、大学院は男子にも門戸を開いた結果、2005 年度と 2008 年度
に 1 名ずつ計 2 名の社会人男子学生が入学した。
121
第4章 学生の受入れ(大学院)
このように社会人学生が増えた理由は上記の出願資格を広げたことと、職業を続けながら勉
学できる仕組みが定着し、認知されたことによるものと思われる。社会人の受け入れに関する
情報は当大学からの広報の他にも、食物栄養学専攻については他大学の同じ分野の教員や地域
の栄養士間の情報連絡でも行われており、その効果も大きいものがある。
5.科目等履修生、研究生等
⑴ 大学院研究科における科目等履修生、研究生、聴講生等の受け入れ方針・要件の適切性と
明確性
科目等履修生、特別研究生、聴講生等の受け入れについては、大学院学則第 35 条から第 37
条に明示されており、適切に運用されている。
人間生活学専攻では、2004 年度修了生の 2 名が特別研究生となった例があり、2007 年度修了
生の 1 名が現在特別研究生として修士課程修了後も研究を継続しており、修士課程での研究成
果を学会発表しさらに研究を進めている。
食物栄養学専攻でも、2008 年度修了生の 1 名が特別研究生として修士課程終了後も研究を続
けている。また、2003 年度学部卒業生の 1 名が 2004 年度科目等履修生として履修した大学院
科目を 2005 年大学院入学後、既修得単位として認定している。
修士課程終了後も、特別研究生として研究を継続できる環境にあることは学生にとって有効
であり、大学院入学後既修得単位の認定制度についても、時間に余裕のない社会人学生などに
大学院に進学しやすい環境を作っているという意味でも評価できる。
6.外国人留学生の受け入れ
⑴ 大学院研究科における外国人留学生の受け入れ状況
未だ外国人留学生の入学希望者は出ていない。
⑵ 留学生の本国地での大学教育、大学院教育の内容・質の認定の上に立った、大学院におけ
る学生受け入れ・単位認定の適切性
入学希望者が出たときに考慮する。
7.定員管理
⑴ 大学院研究科における収容定員に対する在籍学生数の比率および学生確保のための措置の
適切性
人間生活学専攻の定員数は大学基礎データ(表 18)にあるとおり、1 学年 8 名、修士課程 16
名の収容定員に対して、在籍学生数は、2008 年 5 月現在、修士 1 年生が 3 名、2 年生が 2 名の
計 5 名で、収容定員に対する在籍学生数比率は 0.31 と低い。
2008 年度は入学試験時には 6 名が受験し合格したものの、その後 2 名が教員採用試験に合格
し、教職につくことになり入学を辞退した。その後 1 名が就職のため辞退し、結果として 1 年
生 3 名が入学した。2 年生のうち 1 名は留学中、1 名が在籍している。
人間生活学専攻では、2006 年度以降からほとんどの学部(人間生活学科)教員が大学院担当
となり、学部教育から大学院教育への一貫性が確保され、学部学生に対して大学院進学を促す
機会も増加した。
食物栄養学専攻の定員も、1 学年 8 名、収容定員 16 名であるが、現在の在籍数は、修士 1 年
122
第4章 学生の受入れ(大学院)
生は 6 名、2 年生が 7 名の計 13 名で、収容定員に対する在籍学生数比率は 0.81 となっている。
2007 年度入学生は 8 名であったが、経済的な理由から1名が途中で退学し、就職した。2008
年度入学試験には、8 名合格したが、2 名が就職や教員の転出を理由に入学を辞退した。
⑵ 著しい欠員ないし定員超過が恒常的に生じている大学院研究科における対応策とその有効性
人間生活学専攻では、過去 5 年間の入学生の総数が 11 名で、入学定員に対する割合は 0.28
となり、学生定員の充足率が低い状況が続いている。
これに対する対応策としては、
学部からの進学者を促すために年 2 回の説明会を実施したり、
ポスターやホームページ等により学内外に向けて恒常的な広報を行っている。
食物栄養学専攻では、現在、ほぼ定員近い在籍数を確保しており、著しい欠員は生じていな
いが、学科 4 年生からの進学者が少ない傾向が続いている。
【点検・評価】
研究科の学生募集にあたっては、人間生活学専攻では大学院開設当初から現職教員に「大学
院設置基準第 14 条に定める教育方法の特例」(いわゆる 14 条特例)を適用し、就学の機会を
提供してきた。それと同時に両専攻ともに就学できる人材の範囲を拡大するべく検討してきた
結果、他の職業を持つ社会人にも「14 条特例」を適用し、弾力的に授業時間を設定できるよう
にした。また入学試験の出願資格として大学卒業を必須とせず、個別の入学資格審査によるこ
とを可能とした。その結果 2005 年度からは他大学などを卒業して、社会人として就業したまま
大学院に入ってくる社会人が増えており、大学院修士課程としての選抜方法は適切といえる。
食物栄養学専攻では、他大学への広報などを積極的に行っており、他大学からも多くの学生
を受け入れている点は評価できる。大学院全体について、担当教員の研究業績や修士論文テー
マの紹介を入れるなどによりホームページを充実し、本州まで広報活動を広めるなど、応募者
増加の方策を検討する必要がある。
食物栄養学専攻では、毎年数人の社会人が入学しており、日ごろの広報活動や教員の研究活
動が認知されていると考えられ、高く評価できる。しかし、大学院担当教員は学部と兼担して
おり講義コマ数も多いが、さらに社会人学生は栄養管理分野の研究に志望が集中するので、特
にその分野の教員は多忙をきわめており、
早急な対策が必要である。
学部教員の採用において、
この問題の対策となることを任用の条件とすることが必要である。
【将来の改善・改革に向けた方策】
収容定員の充足率が低いことに対して、以下のような種々の対応策を検討している。
2006 年度から 6 月と 10 月に大学院入試説明会を学内で開催しており、参加学生は年々増加
を見ている。しかし北海道経済の冷え込む中、教育費負担が重圧となっており学部卒業生の大
学院進学は今後数年は顕著な増加が期待できないと予測する。これに対して、人間生活学専攻
では、特に学部卒業生で現職家庭科教員である者のリカレント教育の場としての広報に力を入
123
第4章 学生の受入れ(大学院)
れている。専門領域に関する新しい知見の獲得という大学院の意義と、その際に「14 条特例」
を利用可能であることなど、具体的な内容をより詳細に伝達できる機会をつくっていくように
考えている。
食物栄養学専攻では、収容定員に近い学生数を確保しているといえるが、さらに学内外から
の応募者を増やす効果的な広報活動を考える。
人間生活学専攻における学生定員の低い充足率への対応策の一つとして、前述のように学部
教育から大学院教育への指導の一貫性が、
学部学生への進学を促す際には有効であると考える。
各教員が卒業研究や講義内容の工夫によって、学部学生の大学院進学への関心度を高める必要
がある。しかしそのためにも学費負担への支援体制をより強化していく必要がある。また教育
内容の充実が入学定員の確保にもつながる。
学内外の卒業生・社会人への対応としては、教員の研究活動や社会活動をもっと広報するこ
とも考えられる。あるいは大学院主催の講演会やシンポジウムによる広報も積極的に行うよう
検討する。
また人間生活学部では、学部学生に対しては、4 年次に大学院の講義科目を一定の範囲で履修
可能にしているが、今後はこの制度の有効活用にむけても広報していきたい。
なお、両専攻とも、人間生活学部以外の学部や他大学の卒業生も入学するようになっている
ことから、オープンキャンパスやホームページなどを活用して、より広い分野を対象として当
大学院の教育・研究内容の紹介を行う。
124
第5章 学生生活
第5章 学生生活
【到達目標】
1.本学独自の奨学金制度の充実を図り、公的奨学金で対応しきれない奨学金希望者への支援
を強化する。
2.全ての学生の学生生活が心身とも健康で充実したしたものとなるよう、その支援体制を強
化する。
3.学生部委員会と事務局の協力による全学的視野に立った指導・支援体制のもと、学生会活
動の自立的かつ健全な運営に向けての支援を進める。
4.学生のキャリア意識の成長を促進する支援体制の整備を図る。
5.教職員及び学生に対するハラスメントガイドラインの周知とハラスメント全般の防止策の
徹底を図る。
【現状の説明】
本学の建学の理念及び教育目的を達するためには、正課における教学を充実させることは勿
論であるが、それのみならず、課外における活動を通じての人格形成、人間関係の構築といっ
た経験もまた極めて重要である。また、日々の学習活動を支える条件として、健康上、経済上
の障害や就職活動における不安を可能な限り取り除き、勉学に専心できる環境を作るための生
活支援も重要である。
本学では、このような観点から、学生生活に関する問題を取り扱う専門的な組織として、学
生生活全般を支援する学生課(花川校舎では学生係)・学生部委員会、身体・精神の両面にわ
たる健康を支援する保健センター・学生相談室・学生相談員、学生のキャリア形成に関わる諸
活動と就職活動を支援する就職課(学生係就職担当)・就職委員会、学生生活上における人権
侵害の防止と対応に携わるハラスメント人権委員会・ハラスメント相談窓口等の諸部門を設置
し、各学部・学科等と協力しながら学生生活の支援に努めている。
1.学生への経済的支援
⑴ 奨学金その他学生への経済的支援を図るための措置の有効性、適切性
本学では、学生の修学や生活を経済的に援助するため、次の表 5-1 のとおり大学独自の奨学
金を設けている。
125
第5章 学生生活
表 5-1 本学独自の奨学金一覧
奨学金名
募集人数
クサベラ奨学金 若干名
学費貸与奨学 若干名
金
出 願 資 格
支給/貸与金額
支給/貸与期間
学業・人物共に優秀かつ健康であ 授業料の全額または一部を免除 前期・後期のいず
れかとし、二期を
ってクサベラ奨学金規程第3条の
限度とする
(1)∼(5)の一つに該当し、学納金の
納付が困難であると認められる者
学習態度が良好と認められ、学費 学費の全額または一部を貸与
貸与奨学金規程第3条の(1)∼(5)
の一つに該当し、学費の納付が困
難であると認められる者
年度毎の1年間
ただし、毎年出願
申請することを妨
げない
キノルド司教記 学生部委員会 学業・人物ともに優秀、かつ健康 大学院生 月額44,000円貸与 採用時∼最短修
であって、学資の支弁が困難と認 学部自宅生 月額27,000円貸与 業年限の終期
を経て決定
念奨学金
(採用人数大 められる者(委託学生、科目等履修 学部自宅外生
月額32,000円貸与
学院生1名、学 生等は除く)
部生15名)
藤の実奨学金
(同窓会)
外国人留学生
学費減免奨学
金
藤の実会総会
で決定
(採用人数大
学院生1名、学
部生5名)
若干名
人物・学業共に優れ、かつ経済的 月額 10,000円給付
理由により修学が困難と認められ
る者(委託学生、科目等履修生は
除く)
採用になった年の
6月∼翌年の3月
までの10ヶ月 ※
入学後の学習態度、生活態度が 学費の全額または一部を免除
良好な外国人留学生で、学費の
支弁が困難と認められる者
特に規定なし
※2008 年度からは、採用になった年の 4 月∼翌年の 3 月までの 12 ヶ月
本学独自の奨学金については、それぞれ規程により、表に示した出願資格等が定められてい
る。さらに日本学生支援機構奨学金をも含めて、選考内規や施行細則等によって採用条件その
他の細目が厳正に定められており、学生部委員会による協議、調整のもとで運用されている。
なお、2007 年度における奨学金支給の実績については、大学基礎データ(表 44)に記載のと
おりである。
⑵ 各種奨学金へのアクセスを容易にするような学生への情報提供の状況とその適切性
奨学金制度全般については、毎年度の新入生ガイダンスにおいて概要を周知するとともに、
毎年 4 月に在学生も対象とする学内募集説明会を開いて詳細を説明している。また、「キノル
ド司教記念奨学金」(以下、「キノルド奨学金」という)をはじめとする本学独自の奨学金制
度については、大学ホームページや「学生便覧」にも、その概要を掲載し周知を図っている。
さらに、「クサベラ奨学金」と「学費貸与奨学金」については、各学科のクラス担任等から学
生の個別的な状況に応じて指導が行われている。
2.学生の研究活動への支援
⑴ 学生に対し、各種論文集およびその他の公的刊行物への執筆を促すための方途の適切性
a.文学部
文学部各学科においては、それぞれ卒業論文集または学術雑誌を刊行しており、学生に対し
てそれらの出版物への寄稿を促進する配慮をしている。各学科による具体的な方策の内容は以
下のとおりである。
英語文化学科では、卒業論文集を毎年作成している。英語文化学科の卒業論文は英語での執
126
第5章 学生生活
筆が条件であり、条件が厳しいことや学生のニーズが多様化していることもあって必修とはし
ていないが、意欲的な学生には広く執筆を呼びかけている。
日本語・日本文学科では、学科に所属する教職員及び学生・卒業生による学会「藤女子大学
日本語・日本文学会」を組織し、機関誌『藤女子大学国文学雑誌』及び会報をそれぞれ年 2 回
発行している。『藤女子大学国文学雑誌』には、卒業論文のうちの優れたものについて、教員
の指導のもと雑誌論文の形態に整理した上で掲載し、会報には教員から推薦された学生による
優秀な授業レポートも掲載している。
文化総合学科では、
卒業論文要旨集を毎年作成している。
全学生の卒業論文の要旨を掲載し、
さらにそれぞれのゼミから優秀な論文各 1 篇を選んで全文を掲載している。卒論は必修であり
全ての学生が執筆するが、優秀論文を掲載することにより全体のレベルアップが図れている。
b.人間生活学部
人間生活学部では、基本的に各学科における卒業研究において学生に対する支援がなされて
いる。
人間生活学科では、毎年卒業研究要旨集を発行し、卒業生全員の卒業研究(論文)の要旨を
掲載している。人間生活学科においても卒業研究は必修であるが、3 年次で「卒業研究演習Ⅰ」
を履修するために各担当教員のゼミに配属になる学生や、4 年次に「卒業研究演習Ⅱ」や「卒業研
究」を履修する学生にとって、
この卒業研究要旨集は自らの研究への望ましい刺激となっている。
なお、食物栄養学科、保育学科の「卒業研究」は選択科目となっている。食物栄養学科では、
早い段階から学生は実験に取り組む中で、実験やそのデータ分析・考察等に基づく研究活動へ
の支援を受けている。保育学科では、2001 年度から毎年卒業研究要旨集を発行し、「卒業研究」
を四年制大学の教育特色の一つとしてきた。
2006 年度以降に履修した学生は 9 割に達しており、
充実した指導時間を確保するため 2008 年度入学生から「卒業研究演習」を開設した。
また、人間生活学科と食物栄養学科は直接関係する大学院の専攻が身近にあり、日常的に大
学院生と接触して指導教員に支えられた彼らの研究生活を知る機会に恵まれているので、将来
の研究への刺激となっている。
c.大学院人間生活学研究科
大学院人間生活学研究科の各専攻では、以下のような発表媒体の整備及び指導の体制がとら
れている。
人間生活学専攻では、人間生活学科紀要である『人間生活研究』、学部横断的な研究会の機
関誌『家庭科・家政教育研究』、学部 QOL 研究所の紀要『藤女子大学 QOL 研究所紀要』などへ
大学院生も投稿可能な研究発表媒体が設けられており、年間を通じて数回の発表機会が用意さ
れている。現状では、学外の公的刊行物への執筆を促すための特別な方途はとっておらず、学
生の自主的な姿勢に任せている。
食物栄養学専攻では、大学院生の研究はそれぞれの分野の指導教員の指導のもとで行ってい
るため、学術雑誌への投稿や研修会(学会)での研究発表は、共著で行うことが多い。大学院
修了後に、修士論文の一部を学術雑誌や本学紀要に投稿する場合でも、インターネットなどを
活用し指導を行っている。修士課程在学中に、なるべくその分野の学会や国際学会に発表でき
るように指導を行っている。
127
第5章 学生生活
3.生活相談等
⑴ 学生の心身の健康保持・増進および安全・衛生への配慮の適切性
1) 保健センター
近年では、大学における学修の基礎を支える日常生活そのものに問題を抱える学生が増加し
てきている。本学では、こうした問題を解決するため、学生の身体的及び精神的な健康保全を
総合的に担当する組織として保健センターを設置している。
保健センターには、2008 年度現在、所長(併任)の他に専任職員 2 名が配置され、学生の心
身の健康面の支援を行っている。また 2007 年度までは、食生活支援を充実させる目的から管理
栄養士も 1 名配置され、肥満の学生に対する個別的な栄養指導などを行っていた。
学生に対する保健管理の年間計画としては、まず毎年 4 月に本学保健センターと外部医療機
関の医師による学生の内科検診及びその他の検診・チェック等を含む健康診断を実施している。
学生の受診率は 2005 年度が 98%、2006 年度が 98%、2007 年度が 99%と極めて高い。
また、本学の学生には、札幌市圏内からの自宅通学者以外に、広く道内・外の出身者も多く
不慣れな土地で生活する学生への組織的な支援が欠かせないことから、保健センターが中心と
なり、食物栄養学科の管理栄養士、学生部委員の教員や学生課(係)の事務職員等と連携しな
がら、親元を離れて自炊生活を始めた新入生や本学への留学生などを対象に、自炊入門の料理
教室を年に数回開催している。この教室は、自炊のノウ・ハウを教えるばかりではなく、新入
生同士の交友関係の構築と教員との交流の機会を提供することも目的のひとつとしている。
さらに、新入生を対象に骨密度計測を実施し、各個人に自身の骨密度を数値として把握させ
ることにより、生活習慣を見直させる機会としている。その上で低骨密度の学生を対象に、骨
粗鬆症の予防を意図した料理教室を開催している。
保健センターが扱う重要な業務の中に感染症対策がある。2007 年には東京都内の大学生の間
で麻疹の集団発生が起こり、一部の大学では休講や学校閉鎖という措置をとるところもあった
ようである。北海道内では、1 大学において 30 名弱の学生が発病したようであるが、他の大学
では散発例は見られ、本学でも 2∼3 名の発生例が見られただけであった。しかし、当時、本学
においても麻疹が集団発生した場合を想定し、緊急で適切な対応を取るために、学内には学長
を本部長として副学長、学部長、研究科長、部長職、事務局長、総務課長、保健センター職員
をメンバーとする緊急対策本部を立ち上げ、適切な対応をするための体制を整えた。結果とし
ては、集団発生は起こらず緊急対策は取らずに済んだ。しかしこうしたことは今後も起こりう
ることであり、本学として平常時から緊急事態に対応できる仕組みを備えるべきと考えた。さ
らに学校伝染病が発生したときの教務に関する対応が定まっていなかったため、今後の患者発
生を想定して、患者発生を知った大学として学生に与えるべき指示と、出欠の扱いなどに関し
て教職員が一致してとるべき措置を保健センターと教務部が協議し、ならびに教授会の承認を
得て整備することができた。この措置により、学生は出欠の心配をすることなく療養できるよ
うに便宜を図った。
この感染症発生を契機として浮かんできたもう一つの難問は、学外実習に出て行く学生が実
習の過程で感染症に罹らないために、また学生が対象施設内でウイルスを広めないためにも、
麻疹ウイルスをはじめとするいくつかのウイルスに対する抗体検査を行い、もし抗体価が低い
場合にはワクチンを接種してくるようにと、施設の側から求められたことであった。こうした
措置に必要な医療費が医療機関によって高く設定されるところもあったので、保健センター職
128
第5章 学生生活
員が医療機関と直接折衝して、比較的安価な条件で抗体検査やワクチン接種を受けることがで
きるように図ったのは評価できる。
2) 各種相談窓口
本学では、精神的な悩みを抱える学生が増加している状況に鑑み、学生の生活・心理相談に
対応する窓口として学生相談室を設け、保健センターと連携しながら学生のケアに当たる体制
をとっている。特に 16 条校舎では 2003 年度から保健センター横に相談室を移転し、両者の連
携をさらに強化した。2008 年度現在、学生相談室には、インテーカー2 名とカウンセラー(臨
床心理士)4 名を含む担当者が配置されて学生への対応を行っている。学生相談室の活動内容
の詳細については後述する。
また、学生相談員として、各学科から 1 名ずつの教員が任命され、学生からの学修上の悩み
や進路に関する相談などに対応するという制度を設けている。
さらに、ハラスメント相談窓口を設け、各校舎の教職員の中からそれぞれ 4 名が窓口相談員
に任命され、各種のハラスメントに関する相談を受け付けている。本学におけるハラスメント
防止活動の詳細については後述する。
3) 交通安全の啓発活動
近年、通学途中等において本学学生が被害者となる自転車での交通事故が多発している現状
を踏まえ、2007 年度以降の新入生オリエンテーションにおいて、札幌北警察署の協力を得て自
転車に関する交通安全講演会を実施している。
また、本学においては、自動車通学は全面的に禁止されていたが、2006 年度に学生部委員会
が中心となって「自動車通学許可基準」を制定し、2007 年度から花川キャンパスの学生に限り、
当該基準に定める一定の条件に従って自動車通学を許可することとした。2008 年度からは、当
該基準の本格的運用に伴い、札幌北警察署の協力を得て「自動車安全運転講習会」を開催し、
許可者・許可申請予定者を対象に、受講を義務付けることとした。
4) 校舎の保安面に関する配慮
北 16 条校舎において不審者の侵入が報告されたことを踏まえ、2006 年度より、サークル活
動等での他大学学生の来校時間を制限し、さらに学外者の入構の際には入構証を交付して携帯
を要請することにより、不審者の侵入を防止する対策を取った。また、2007 年度 9 月以降は、
北 16 条新校舎の完成を機に、校舎の出入り口を新校舎玄関に一本化し、窓口受付から全ての入
構者が確認できる体制とした。
また、北 16 条新校舎においては、窓からの転落事故等の防止のため、窓が全開しないように
ストッパーが付いたサッシを導入して、安全を期している。
⑵ ハラスメント防止のための措置の適切性
個人の尊厳を基本におく日本国憲法、教育基本法の精神をふまえ、本学ではハラスメント人
権委員会を設けて、全ての学生、教職員が対等な個人として尊重され、セクシャル・ハラスメ
ントをはじめとした人権侵害と差別の無い、公正で安全な環境での学習・研究、就労を保障す
る体制の構築を目指している。
129
第5章 学生生活
ハラスメント防止のための措置として、本学では以下の対策を講じている。
1) 規程・ガイドライン等の整備
規程等の作成は、2002 年 4 月 1 日に「藤女子大学セクシャル・ハラスメント・ガイドライン」、
「藤女子大学セクシャル・ハラスメント人権委員会規程」、「藤女子大学セクシャル・ハラス
メント人権侵害調査委員会規程」が施行されたことにより始まった。その後、セクシャル・ハ
ラスメント及びアカデミック・ハラスメントをまとめ、ハラスメント全般の防止のために 2005
年 4 月 1 日には上記規程を改定し、「藤女子大学ハラスメントガイドライン」、「藤女子大学
ハラスメント人権委員会規程」、「藤女子大学ハラスメント人権侵害調査委員会規程」を制定
した。
また、ハラスメントについての理解と啓発のために、毎年度当初に「藤女子大学ハラスメン
トガイドライン」をリーフレットにして全学生に配布した上で内容の説明をし、非常勤講師を
含む全教職員にも配布するとともに、2008 年度からハラスメント等の相談を受けるハラスメン
ト相談窓口相談員の氏名・所属、
教員研究室・事務室等及び電話番号を印刷したカードを作成し、
配布した。なお、「ハラスメントガイドライン」は本学ホームページ上に公開し、また、「学
生便覧」にも収録している。
2) 講演会・研修会の開催
ハラスメント防止に有効な対策は、第一に教職員・学生への教育にある。2005 年にハラスメ
ントに関係する部署を組織し、他大学、企業など外部での講演会・研修会の資料を参考にした勉
強会を中心としたハラスメント相談窓口会議が開催されてきた。これらの会議には、外部相談
員の出席を求め、アドバイスをもらいながら相談員の研修を行うこともある。しかし、後述す
るように 2007 年度は全学的な講演会等の場を持つことができず、
相談窓口相談員の研修にとど
まっていた。2008 年度はハラスメント研修の一環として両キャンパスで講演会を行った。
学生への対応としては、毎年入学時のオリエンテーションの中で、学内・外で起こりうるハラ
スメントについて学生部委員から説明をし、ハラスメントなどの人権侵害を受けた学生は安心
して被害をハラスメント相談窓口に訴えることができ、個人の秘密は厳守されていること、直
接・間接被害を受けた学生に限らず、
その学生から相談を受けた人もハラスメント相談窓口を利
用できることを説明している。
3) ハラスメント関係の書籍の充実
図書館にハラスメント関係の書籍を充実してほしいという声に応えて、提示のあった書籍を
購入するなど、ハラスメントへの理解とハラスメントは人権侵害の大きな問題であることの啓
発に努めている。
⑶ 生活相談担当部署の活動の有効性
心の問題を抱える学生が増加して来ているが、本学においては、学生相談室・保健センター・
学生相談員、または相談を受けた個々の教員がこうした学生からの相談に対応しており、状況
に応じて、
これらの学生支援組織間で連携をとりながら学生のさまざまな問題に対応している。
また、保健センターの専任職員と学生相談室のインテーカー・カウンセラーの間では定期的な
ミーティングを持ち、情報交換と連携に努めている。それぞれの部署の活動内容について以下
130
第5章 学生生活
に述べる。
1) 保健センター
学生による保健センターの利用状況としては、総利用者延数が 2005 年度では北 16 条校舎
1135 名、花川校舎 948 名、2006 年度では北 16 条校舎 1009 名、花川校舎 1129 名、2007 年度で
は北 16 条校舎 766 名、花川校舎 887 名である。
このうち、精神的な問題を訴えた例、相談での利用の例のみを取り上げると、2005 年度では
北 16 条校舎 540 名、花川校舎 282 名、2006 年度では北 16 条校舎 300 名、花川校舎 521 名、2007
年度では北 16 条校舎 234 名、花川校舎 301 名となっている。このように、治療以外の相談での
利用が 3 割∼半数と非常に多くなっており、ここでの相談から学生相談室や各学科、各クラス
担任等への連絡につながるケースも多い。心理相談については、学生相談室のみならず学外の
医師を紹介する場合などもある。
2) 学生相談室
学生相談室の年間の利用人数は、大学基礎データ(表 45)にあるとおり、毎年増加の傾向に
ある。また、事前の受付による来談も可能となり、利便性も向上している。保健センターと併
せて相談室を利用する学生や、保健センターから紹介されて来室する学生も多いため、保健セ
ンターと連携を密にとっている。相談内容・学生の状態に応じて、カウンセラー・保健センタ
ー・学科教員が協力して対応するケースもある。問題を抱える学生の情報などに関しては、保
健センターを経由することになっており、保健センターが主たる担当となって各部署への連絡
がとられている。
⑷ 生活相談、進路相談を行う専門のカウンセラーやアドバイザーなどの配置状況
1) 学生相談室
学生相談室には、インテーカー2 名とカウンセラー4 名を含む担当者が配置されている。各キ
ャンパスにおける活動時間と担当者の配置状況については大学基礎データ(表 45)のとおりで
あり、主な業務内容は、カウンセリングの予約、来談学生のカウンセリングまでの対応及び相
談室だよりの作成などである。
2) 進路相談窓口
学生からの進路相談のうち、企業への就職に関するものは、従来、主として就職課(学生係)
職員が応じており、また進路一般についての悩みや大学院進学等の相談については各学科の学
生相談員などが当たってきたが、近年、学生の就職活動に関する不安などからメンタル的な部
分を含めての相談が多くなり、そこに時間と労力を取られるがために本来の就職相談に対する
対応が十分に行いにくくなっている。かかる現状に鑑み、進路相談に関する専門のアドバイザ
ーとして、2008 年度から外部のキャリアアドバイザーに依頼して学生のケアを試験的に実施す
ることとした(年 16 回)。
⑸ 不登校の学生への対応状況
現状では、学生の出席管理については、両学部とも各教員が把握しているのみである。また、
不登校の学生に対する対応については、基本的には各学科に任されている。両学部各学科によ
131
第5章 学生生活
る対応の状況は以下のとおりである。
a.文学部
英語文化学科では、
学科会議で出席・欠席状況について各授業担当の教員から報告がなされ、
それに応じてクラス担任が欠席の多い学生に連絡を取り状況を調べている。日本語・日本文学
科では、演習科目の担当専任教員が状況に応じて学科会議に報告し、協議の上で学科として対
応するか、もしくは教員が個別に対応をとっている。文化総合学科では、1 年から 4 年まで履
修できる演習科目を整えてきめ細かい対応を可能にしており、1 年次では、前後期で異なる専
任教員の基礎演習の履修を必修とし、欠席がちの学生の中で入学当初にありがちな新しい環境
になじむのが不得意な学生に対して、直接面談することで早期の対応を採っている。2 年次以
降は、専任教員の演習の出欠状況から学科会議などで情報の交換・確認をし、演習担当の教員、
あるいはクラス担任によって、本人、場合によっては両親とも連絡を取り、相談・指導する体
制を採っている。
b.人間生活学部
人間生活学科では、1、2 年生に関しては、必修科目の担当者が、出席状況に問題のある学生
に関して学科会議で報告し、対策を講じている。3、4 年生については、卒業研究演習担当教員
を中心に、学会会議に報告の上対策を講じている。保育学科では、各教員が、欠席が続き気に
なる学生について学科会議やメールなどにより報告し、学科教員が共通把握するように努めて
おり、欠席が続く学生に関しては、クラス担任、ゼミ担当者などが連絡をとり状況を把握して
いる。状況によっては、保護者と連絡をとり面談も実施している。また 1 年生を数グループに
分け、担任を持っていない教員がその担当になり、不適応者などを早期に発見する試みも実施
している。
⑹ 学生生活に関する満足度アンケートの実施と活用の状況
本学において、全学生を対象にした学生生活に関するアンケートとしては、2001 年度に「21
世紀アンケート」と題して学生部が実施した例があるが、これは、本学における改組転換及び
食堂の業者委託開始と 21 世紀の幕開けという一つの区切りを機にした企画で、
自由記述を中心
に要望・意見を募ったものであり、学生生活に関する満足度を測るものとは必ずしも言えず、
また継続的に実施する性格のものでもなかった。また、卒業生を対象とする満足度アンケート
については、これまで、一部の学科で独自に質問項目を設定し実施してきたが、これらはおお
むね当該学科のカリキュラムや指導体制についての満足度を問うものであり、学生生活全般に
ついて問うものではなかった。
以上のような状況を受けて、2007 年度、全学の卒業生を対象に学生生活全般について満足度
を問うアンケートを初めて実施した。冷静に学生生活を振り返ってもらうため、卒業式の際に
用紙を配布し、少し間をおいて後日郵送してもらうという方式を取ったが、回答率は総じて高
くなく、各学科により 20∼50%と違いも大きかったが、回答から読み取れる評価自体は非常に
高く、本学が全般的に学生の要求に応えられているとの感触は得られた。しかしもっと多くの
学生の意見を聞くために、2008 年度においても卒業生に対するアンケートを実施し、学生生活
の充実に向けて活用する。
132
第5章 学生生活
4.就職指導
⑴ 学生の進路選択に関わる指導の適切性
1) 就職課(学生係)における進路指導の状況
学生の進路に関する相談や指導は、主として就職課(学生係就職担当)において対応してい
る。文学部に 3 名、人間生活学部に 2 名の就職指導担当者を置いている。専門職養成課程の色
彩の濃い人間生活学部では、人間生活学科における福祉職志望者、食物栄養学科における栄養
職(栄養教諭を含む)志望者、保育学科における保育士・幼稚園教諭志望者に対しては、学科
スタッフと学生係就職担当とが連携をとりながら、相談や指導にあたっている。学生の進路や
就職に対する意識の変化、企業側の採用時期の早期化に対応して、2 年次前期より就職指導を
開始している。就職支援は、資格支援講座、2 年生対象の職業観育成ガイダンス、3 年生対象の
就職ガイダンス・講座 、インターンシップ、3・4 年生対象の窓口就職相談・指導とインターネ
ットを利用した求人情報の提供、さらに企業開拓・企業訪問、事務処理関係などに大別される。
以下それぞれについて説明を加える。
①就職ガイダンス
これについては後述する。
②インターンシップ
インターンシップは、2004 年度から学生に紹介を開始した。その意図は、第 1 に職業適性を
見定めることを通して学生の職業観の確立を促すこと、第 2 に、就職先とのミスマッチによる
早期退職を減らすことである。これと関連して、2006 年度からは早期退職者の実態を把握すべ
く、企業に対する聞き取り調査も行っている。本学では、授業に支障を来たさない長期休暇中
に実施されるプログラムを紹介している。担当職員が可能な限り受け入れ先を訪問し、事前挨
拶と研修内容把握に努めている。最近は学生が直接インターンシップを申し込むケースが増え
ている。そうした学生に対しては、事故等に備えた保険準備の必要性を説明するとともに、事
前指導への参加をガイダンスで呼びかけている。事前指導としては、2005 年度から社会人とし
てのマナー講座、先輩による報告会を行っている。2006 年度からは、指導内容の充実を図り、
守秘義務を一層徹底させるためのケーススタディを含む教材、参加目的を明確化し、業界・企
業研究のためのワークシートを作成して参加者に取り組ませている。また、受入先とのトラブ
ル回避のため、個人情報保護や大学・受入先双方の指導義務等を盛り込んだ「覚書」、学生の
守秘義務等の「誓約書」書式を作成し、これら文書の取り交わしを受入先企業等に働きかけて
いる。大学が紹介しているインターンシップへの参加状況は以下の表のとおりである。
表 5-2 インターンシップへの参加状況
インターンシップの形態
個別企業等の研修 ・ 調査研究型研修
1 日企業見学会
(人)
年度別参加者数(延べ人数)
2005 年度
2006 年度
2007 年度
33
42
37
データなし
5
17
③資格支援講座
これについては後述する。
133
第5章 学生生活
④窓口就職相談・指導
本学では、
小規模校ならではの特性を生かした窓口就職相談・指導をもっとも重視しており、
常駐する 5 名の職員が相談・指導にあたっている。2007 年度に新たに導入した就職支援システ
ムにより、学生の進路希望や相談対応記録等の情報を一元管理し、両キャンパスの就職担当職
員全員で共有することが可能となり、これまで以上に学生側の希望や利便性に配慮した対応が
実現している。面談の際は、相談に来た学生の状況に応じた対応を心懸けている。低学年の学
生に対しては、卒業後の進路が自ら描けるよう、就職担当者も共に考え、歩む姿勢が伝わる面
談を心懸けている。就職活動期の学生には、本人の希望や特性を把握した指導・相談を行うと
ともに、学生の個人情報に配慮しつつ状況に応じて学生相談室や保健センターとも連携して、
心のケアにも十分配慮している。
⑤インターネットを利用した求人情報の提供
就職活動における学生の利便性を高めるため、2007 年度から、学外からもアクセス可能な就
職支援サイトを立ち上げた。このサイトは、求人情報のほか、就職関連行事、資格取得支援に
関する情報など、本学が発信する就職関連情報のポータルサイトである。3 年生からアクセス
可能としている。管理栄養士国家試験の時期にも影響されて食物栄養学科の学生の就職活動が
卒業後にずれこむ場合があること、早期退職者が毎年発生することに対応して、卒業生も 5 年
間はアクセスできる体制をとっている。
⑥企業開拓・企業訪問
企業開拓・企業訪問は、就職課作成の企業向け大学案内と求人票を 2 月上旬に約 2000 件発送
することから始まる。 本学では例年約 50%∼60%の学生が札幌市出身者であり、約 90%前後
の学生が道内での就職を希望していることや、インターンシップ受け入れ企業との打合せなど
で、3∼5 月を中心に常に札幌市近郊約 100 社以上の企業訪問を就職課(学生係)職員が行う。
最近では首都圏での景気回復や、本社で地方採用を統括していることを踏まえ、東京等の本社
にも企業訪問を実施し、状況や実績についての説明を行っている。さらに、首都圏企業にも学
内企業説明会への参加を依頼し、採用試験関係だけでなく不安を抱く学生のために首都圏にお
ける生活に関して、学生との質疑応答に答えてもらっている。
また、2006∼2007 年度の就職委員会では、就職課(学生係)と教員との連携を強化するため
に、企業の人事担当者が来訪された場合、時間の空いている就職委員の教員も立ち会うことが
決定されている。
表 5-3 2007 年度の求人票発送件数
求人票発送先(求人種類)
発送時期
件 数
一般企業等(全学科対象の求人)
2月
2,000
病院・福祉施設等(栄養士・福祉職の求人)
6月
373
10 月
528
幼稚園・保育園・児童施設等(幼稚園教諭・保育士・栄養士の求人)
134
第5章 学生生活
表 5-4 2007 年度の企業訪問件数
担 当 者
道内
道外
合 計
文学部就職担当者
99
12
111
人間生活学部就職担当者
10
10
20
⑦事務処理
事務処理としては求人票の受付から処理全般、本学の求人票発送作業、種々の企業宛て文書
作成、来校企業の応接、学校推薦求人処理(主に花川キャンパス)、就職ガイダンス・講座な
どの企画、資料作りと実践、各種統計処理、学生連絡、各種掲示物作成、掲示等多岐にわたっ
ている。学生の就職は大学の社会的評価に直結するものであり、就職課(学生係)職員の問題
発見・解決能力、処理能力等の資質を向上させるため、本学としても努力しているところであ
る。職員の各種研修会への参加状況は以下の表のとおりである。
表 5-5 就職関係研修会等への職員参加状況
(※−は主催なし)
年度別参加者数
研 修 等 名 称
2005 年度 2006 年度 2007 年度
文部科学省主催 全国就職指導ガイダンス(年 2 回)
全国私立大学就職指導研究会主催
企業と大学との就職セミナー/就職フォーラム
1
1
2
2
2
2
日本私立大学協会主催 就職部課長相当者研修会
0
2
0
1
2
2
3
2
2
1
1
-
0
1
2
札幌市主催 コールセンターセミナー
1
2
0
北海道経営者協会主催 インターンシップ成果報告会
1
2
2
1
0
0
-
-
4
-
-
5
1
2
1
1
1
2
13
18
24
日本私立大学協会北海道支部 就職指導研究協議会主催
就職指導研究協議会(就職担当課長職対象)
日本私立大学協会北海道支部 就職指導研究協議会主催
就職指導実務担当者研修会
独立行政法人日本学生支援機構主催
北海道地区就職指導担当職員研修会
北海道労働局・北海道主催 就職指導支援セミナー
私大職員研修センター主催 相談担当者のためのカ
ウンセリングマインドによる学生指導のあり方
㈱インテリジェンス主催 I‐Career Seminar 1
㈱インテリジェンス主催 I‐Career Seminar 2
㈱ディスコ主催 就職指導・キャリア支援担当者セミナー
㈱日本経済新聞社主催 日経 人と採用フォーラム
㈱毎日コミュニケーションズ主催 毎日採用セミナー
合 計 (延べ人数)
2) 各学科における進路指導の状況
上述のとおり、本学において学生の進路に関する指導は原則として就職課(学生係)におい
て対応しているが、大学院への進学を希望する場合や、学科等の性格により特定の職種への就
職が集中する場合などにおいては、各学科、専攻等において独自の対応をとる場合がある。以
下に各学科、専攻における取り組みについて述べる。
135
第5章 学生生活
a.文学部
英語文化学科では、就職に関して教員が個人レベルでアドバイスをすることもあるが、ほと
んどは就職課の対応に任せている。また、大学院・海外留学などの進学に関しては、必要に応
じて各教員が個別指導をしている。
日本語・日本文学科では、学科の就職委員が就職委員会での議題、討論の内容を学科会議に
報告し、学生の就職相談(就職課窓口)の機会の平等化、情報の共有につとめている。また、
クラス担任、ゼミの指導教員、学生相談員も就職に関する学生の相談にのっている。
進学希望者に関しては、ゼミの指導教員、また教員同士が相互に連携し、道内・外の大学院
の実態を把握し、学生の能力、資質、経済状態により適した大学院に進学できるよう助言、指
導してきている。
文化総合学科では、4 年次の卒研演習を通じて状況により対応を行っている。
b.人間生活学部
人間生活学科では、全般的にゼミの担当教員が希望する学生に対して、進学と就職に関する
個別相談に応じている。教職志望者に対しては、教職課程を担当する教員のほか、教科に関す
る科目を担当する学科の専任教員が、無償で教員採用試験対策を行っている。採用試験に合格
しなかった学生に対しては、教員の臨時採用情報を収集し、就職を斡旋している。その結果は、
学生係就職担当に報告される。福祉職志望者に対しては、福祉系科目を担当する専任教員が、
無償で社会福祉士国家試験対策を行っている。また、福祉系では、教員に対して、直接に求人
情報が寄せられることがあり、その場合には、当該教員が、相手側の要望に応じて、就職希望
の学生を紹介している。
食物栄養学科では、就職委員が学生係就職担当と連携して求人情報を学生に連絡している。
それぞれの学生の就職相談には、就職担当及びクラス担任、就職委員、ゼミ担当教員がそれぞ
れの役割に応じて対応している。特に、栄養教諭としての就職には教職担当教員が勉強会を行
うなどの対応を行っている。
また、
管理栄養士として病院などへ就職を希望している学生には、
各病院・施設の情報を卒業生などから収集し、個別に対応を行っている。企業などへの就職希
望者は、3 年生の春休みから活動するため、最初は就職担当が対応しているが、 個別の推薦状
などについてはゼミ担当教員が記載することになっている。本大学の大学院及び他大学院への
進学希望については、主にゼミ担当教員が対応している。
保育学科では、基本的に学生係就職担当、クラス担任、学外実習に関する連絡調整を担当す
る教務助手で緊密に連携をとり、学生の志望を受け止め、OG との面談を含む各種情報提供をき
め細かく行っている。特に 3 年次以降の就職担当による定期的なガイダンスに加え、保育関連
就職に関しては学生の必要に応じて、実績のある上記の教務助手との複数回にわたる個別相談
の機会が保障され、また担任のほかゼミ担当教員を含む他の教員への相談も気軽に行うことが
できる状況にある。また、学科内に就職委員会(3、4 次年担任と実習支援担当の教務助手、主
任)をおき、学内推薦等必要に応じた業務を行っている。
c.大学院人間生活学研究科
人間生活学専攻では、修了学生の進路としては、大学院博士課程への進学、家庭科・家政学
担当の専門学校・高等学校教員としての現場での継続勤務、及び教員採用試験受験を経て家庭
136
第5章 学生生活
科教員としての就職が現状である。学生の進路選択に関わる面では、日常的な学生との接触の
中で学生の意向や適性などを把握してアドバイスしている。
食物栄養学専攻では、社会人入学の大学院生も多く、その場合は職場から進学の許可を得て
仕事を続けながら大学院の研究をしているので、特に就職の指導はしておらず、修了後は同じ
職場にもどっている。現役の大学院生の場合は、研究分野によって就職希望先が異なっている
ため、各分野の指導教員の指導に任せている。また、大学院生は、インターネットからの求人
情報をもとに就職試験を受けている。ただし、遺伝子操作、特殊分析技術や動物実験などを行
っている研究所や企業は、その分野の指導教員からの紹介などによって就職試験を受ける場合
もある。さらにそれらの企業との共同研究を通じて、指導教員からその企業に求人を依頼し、
受験する機会を得て内定している例もある。
大学院生個人が求人先を探し、就職試験を受ける際にも、指導教員の推薦書を必要とする場
合があるので、その作成と、面接時における研究概要の説明についての質疑応答の指導も行っ
ている。また他大学からの助手あるいは助教の募集に対する応募の際には、指導教員の推薦書
の作成と面談等の指導も行っている。
本学修士課程を修了後、北大などの国立大学大学院博士課程に進学する大学院生もいるが、
その際、進学先の指導教員とも連絡を取りながら、前もって訪問させた上で、受験させている。
⑵ 就職担当部署の活動の有効性
「学生便覧」に 4 年間の就職支援スケジュールを掲載し、当該学年における支援の概要や目
的が一覧できるようにしている。それを踏まえて、学年別の目的に対応した窓口相談・指導を
入学当初から行う他に、1 年生には、進路を意識できるような資格支援講座の受講を呼びかけ
ている。2 年生には、職業意識の育成に向けて資格支援講座の他に各種の説明会や外部講師な
どによる講演会への参加を呼びかけている。3 年生に対しては、年間約 30 回の就職支援行事
を中心に、選択肢を明確にさせる方向で指導を行っている。インターンシップにしても興味本
位で漠然と参加するのではなく、
職業の実態を知ることで、
職業観に関わるギャップを克服し、
より具体的な就職準備を行うなどの明確な課題意識をもって参加することを学生に求めている。
4 年生には個別応対をして具体的な就職相談・斡旋を行っている。情報が氾濫する中で、それ
に振り回され混乱する学生もいるため、メンタル的な部分を含めての学生支援を行っている。
卒業後の無業者は全体の約 4∼5%である点を見ても、就職課(学生係)は有効に機能している
といえる。
⑶ 学生への就職ガイダンスの実施状況とその適切性
2 年生に対しては、卒業後の進路に関する意識の覚醒を目指して、6 月から学部ごとに職業観
の育成に関わるガイダンスを行っている。
3 年生に対しては、
4 月から職業観の育成だけでなく、
就職活動そのものに関わるガイダンスを段階的に行っている。ガイダンスでは、働くことの意
味、就職活動の進め方、業界研究、筆記試験対策、面接試験対策、メイク講座、内定学生との
懇談会、OG 懇談会など様々な就職サポートを段階的に実施しており、適切に行われているとい
える。ただ、人間生活学部では専門職希望の学生が多く、一般企業と活動時期が異なるため、
学科単位の説明会を実施している。また、就職ガイダンスを補完するものとして、就職試験対
策講座(秋期、春期)や公務員試験対策講座を開設している。
137
第5章 学生生活
5.課外活動
⑴ 学生の課外活動に対して大学として組織的に行っている指導、支援の有効性
1) 学生活動
①学生会執行部
学生の自治組織である学生会の運営は、執行部が中核となって活動内容を計画立案し、代議
委員会、クラブ代表者会議などの委員会で審議決定する形により進められている。執行部は、
予算立案(徴収した学生会費の学生会諸機関への分配)、学生生活に関わる学生からの要望の
取りまとめ・対応(大学との折衝など)、執行部主催行事の企画・実施などの活動を行う。執
行部主催の行事には、入学式後に行われる新入生歓迎行事(クラブや学生会活動の紹介・新入
生勧誘など)などがある。
北 16 条と花川の両キャンパスにはそれぞれ執行部室があり、活動の拠点となっている。大学
としては、学生部委員会と学生課(係)が窓口となって助言指導を行い、円滑に運営されるよ
う支援している。
②クラブ連合
クラブ連合に所属するクラブ・同好会の数は、2008 年度現在、文化系 26 団体、体育系 12 団
体、同好会 10 団体の合計 48 団体であり、別に 3 団体が休部中である。2008 年度のクラブ部員
数は 786 名で、在籍学生数 2178 名(2008 年 5 月現在)との比で見るとクラブ加入率は 36%で
ある。クラブ・同好会への加入率は、2000 年度が 41%、2001 年度が 31%、2002 年度が 27%と
減少傾向にあったが、それ以後は、2003 年度が 28%、2004 年度が 29%、2005 年度が 36%、2006
年度が 34%、2007 年度が 37%となっており、最近は 40%弱で推移している。
また、本学の北 16 条キャンパスは北海道大学に近接していることから、北海道大学のクラ
ブ・サークルで活動している学生も多く、クラブ単位で他大学と協調して活動している団体も
ある。さらに、競技舞踏部や英語ミュージカル部、YOSAKOI ソーランチームなど、他大学生と
合同による活動が設立の前提となっているクラブもある。
③大学祭実行委員会
本学における大学祭は、北 16 条キャンパスでは「藤陽祭」、花川キャンパスでは「藤花祭」
の名称により、日時を違えて開催されている。こうした開催形態にあわせて、大学祭実行委員
会もキャンパスごとに置かれている。大学祭実行委員会は、学生会会則に「大学祭に関する最
高の執行機関」と位置づけられており、効率的かつ積極的に大学祭を運営している。
両実行委員会とも、イベントの規模拡大などに伴って業務が繁多となり、開催期間には人手
不足になっている。開催期間は両委員会間で人員を出し合って協力し、また他大学の大学祭実
行委員会の協力、特に力仕事などの面で人的協力を得て開催しているのが現状である。
両大学祭の具体的内容としては、大学祭実行委員会による企画イベントと、クラブ・学科・
ゼミ・有志等の参加団体による展示・模擬店・講演会・シンポジウム等の企画がある。
④学生の課外活動に対する経済的支援
学生の課外活動に要する経費としては、学生会が会員から徴収する一人あたり年 1000 円の
学生会費による収入が基本であり、
在学生約 2000 人分を合計した約 200 万円が年間の予算の基
138
第5章 学生生活
礎額となる。これに加えて、大学からは、学生の課外活動を支援するために、2008 年度にはク
ラブ援助金 270 万円及び大学祭関連援助金 345 万円(大学祭実行委員会援助金 280 万円、藤花
祭舞台音響関係援助金 40 万円、展示援助金 25 万円)を予算化し支出している。また、クラブ
活動での大会への出場等に対しては、学生部運営費から旅費の一部についても補助を行ってい
る。さらに 2002 年度からは、顕著な活動が認められるクラブを表彰する「学生部長賞」を設け
て、クラブ活動の活性化を図っている。その上で 2008 年度からは、入場料を取って公演活動を
行っている一部のクラブに対して、入試課・学生部から入試広報への協力を呼びかけ、オープ
ンキャンパスで来学した高校生等をクラブの公演に招待する企画を開始した。これは招待券を
利用して入場した人数に応じて、その分の入場料に相当する金額を各クラブに協力費として支
給するものである。
この他に、2007 年度より、学生部委員会において、「ボランティア援助活動」として、20
万円の予算を設けて学生が主体となって行うボランティア活動の企画を全学から公募し、その
実施にかかる経費の一部(または全部)を援助する活動を実施している。2007 年度、2008 年度
において各 1 グループの応募があり、学生部委員会による選考を経て採択されている。
施設面では、全ての公認クラブに対して部室が提供されているほか、執行部室、大学祭実行
委員会室、クラブミーティングルームなどが用意されている。
2) 学生生活支援
①新入生オリエンテーションと在学生ガイダンス
新入生向けのオリエンテーションは、入学式の翌日から 3 日間の日程で行われ、在学生への
ガイダンスもこの期間に並行して行われている。新入生向けには、学部・学科を始め、教務課
(係)・学生課(係)・保健センターによって学生生活全般にわたる指導が行われ、また、北
海道警察の協力を得て、学生が巻き込まれる可能性のある犯罪についての講演、自転車通学に
伴う危険性についての講演なども組み入れられている。最近は大学生を対象にした、宗教的・
経済的な様々な勧誘に対しても十分注意するように呼びかけている。
さらに、学科によってはこの時期に宿泊研修を行って、学科活動の詳細な説明と新入生同士
の交流促進の場を提供している。
②クラス担任制
本学では学科(定員 80 名)を単位としてクラスを編成し、専任教員がクラス担任として配属
されている。クラス担任の職務としては、新入生オリエンテーションや在学生ガイダンスでの
学生指導のほか、編入・進学の相談、休学・退学の相談、就職時の相談、その他学生生活全般
の相談等、学生生活と学生活動への援助・指導を主たるものとしている。ただ、クラス担任は
一学科の一学年の学生全員を預かっており、また学生全員がクラス担任と密に接触するわけで
はないため、クラス担任としては、担当学生全員の把握が完全にできないという問題に直面せ
ざるを得ないのが実状である。そうした中でも事故などの連絡は常に報告されるようになって
おり、重要な情報については把握できている。
③ハラスメント人権委員会・ハラスメント相談窓口
本学には、各種のハラスメントを防止し、あるいは万一発生した場合に対応するため、ハラ
139
第5章 学生生活
スメント人権委員会が置かれている。同委員会の活動の詳細等については、「3.生活相談等」
⑵で述べたとおりである。
④食堂・購買
本学では、学生の福利厚生の充実を図るため、両キャンパスそれぞれに民間業者への委託運
営による食堂及び購買を設置している。食堂は 10 時∼15 時に営業し、日替定食のほか麺類や
ご飯類などを提供している。購買は 9 時∼16 時 30 分に営業し、書籍、文房具、生活雑貨及び
パン・おにぎり等を販売している。委託業者の選定や、営業品目、販売価格の検討と業者への
交渉など、食堂及び購買の運営に関する事項の検討は、「食堂・購買運営委員会規程」に基づ
き、両キャンパスからの教職員 6 名によって組織される食堂・購買運営委員会が行っている。
委員会は、学生、教職員の意見を踏まえて委託業者に営業努力を求めてきているが、近年の
食堂・購買利用者数の伸びを見る限りでは、利用に関する学生の要望についてはある程度応え
られつつあるものと考えられる。ただし、本学側の希望が全て実現されているわけではなく、
たとえば、北 16 条キャンパスでは、土曜日には幾つかの授業が行われているため食堂営業の希
望があるが、採算面から実現されるには至っていない。
また、この委員会には、委員長(学生部長)の判断により学生の代表者を加えることができ
ることになっており、学生会執行部が独自に学生にアンケートを実施して学生の声を取りまと
める試みなどもなされている。
⑤アルバイト
本学では、学費、生活費及び様々な活動費を得るためのアルバイトが、社会経験や有意義な
学生生活の実現に結びつくとの観点から、企業等よりアルバイトの求人依頼があった場合、専
用の掲示板に求人票を掲示し、広く学生に情報を提供している。また、家庭教師については、
地域の家庭から寄せられた求人情報をファイルして学生課(係)に用意し、希望者が参照でき
るようにしている。なお、こうしたアルバイト情報の提供にあたっては、学生課(係)で内容
を検討し、車運転等危険を伴う仕事、風俗営業等の接客、外交販売、勉学の支障となる時間帯
の勤務など、
学業に支障をきたす、
または学生にふさわしくない内容の求人については排除し、
学生にとって安全かつ有益と判断されるアルバイト情報のみを提示するように努めている。
しかし、多くの学生は、大学が掲示する求人以外のアルバイトを行っており、様々なトラブ
ルが発生する可能性は否定できない。特に、本学は女子大学であることから、アルバイト先で
のセクシャル・ハラスメントの問題などが懸念されるが、こうした問題が生じた場合でも大学
として対応できる体制は準備されている。
⑵ 資格取得を目的とする課外授業の開設状況とその有効性
学生の資格取得のための支援講座に関しては、「4.就職指導」⑶において述べた就職試験
対策講座(秋期・春期)、公務員試験対策講座の他に、日商簿記検定、初級システムアドミニ
ストレーター、ホームヘルパー、ファイナンシャルプランナー、小児救急法など学科の専門性
にも添った対策講座を用意している。講座は低学年から受講可能としている。学生の参加状況
は以下の表のとおりである。
140
第5章 学生生活
表 5-6 課外授業受講状況
支援資格
学 部
文
簿記 3 級
2
9
部
6
0
計
6
部
0
人間生活学部
20
計
20
学
学
部
7
人間生活学部
2
計
9
文
小児救急法
学
人間生活学部
文
ファイナンシャルプランナー3 級
7
計
文
ホームヘルパー2 級
受講者数
部
人間生活学部
文
初級システムアドミニストレーター
学
部
0
人間生活学部
学
6
計
6
なお、2008 年度からは、就職委員会と国際交流センター運営委員会の連携により、キャリ
ア支援の一環としての英語資格試験対策講座などについても検討が始められており、今後の進
展が望まれる。
⑶ 学生代表と定期的に意見交換を行うシステムの確立状況
学生代表と定期的に意見交換を行う特別なシステムは設けていないが、学生会執行部・クラ
ブ連合における全体会議の開催や予算案作成作業等の際には、学生部・学生課(係)から教職
員がオブザーバーまたはアドバイザーとして現場に加わり、適宜助言を行って適正な運営がな
されるように配慮している。また、大学祭実行委員会との間でも、学生部・学生課(係)は大
学祭の企画段階から数回にわたり打合せの会合を持ち、意見交換や助言の機会とするなど日頃
より緊密に意見交換や助言の機会を設けているため、特別なシステムを制定する必要性は現在
のところ感じられない。
【点検・評価】
1.学生への経済的支援
本学の奨学金制度については、奨学金に関する規程が整備された結果、より迅速に奨学金を
交付することが可能となり、経済的事由によって修学困難な学生の不安を取り除く役割を果た
しているといえる。また学生部委員会による運用も適正になされている。
しかし、近年のわが国、とりわけ北海道における厳しい経済情勢を考えると、奨学金を必要
とする学生はさらに増加する可能性が考えられる。2007 年度において、何らかの形で奨学金を
受けている学生の数は 655 名(うち院生 7 名)であるが、この数字は、2005 年度 575 名、2006
年度 623 名と増加の傾向にある。
このうち、日本学生支援機構(2003 年度以前は日本育英会)の奨学金を受給している学生数
141
第5章 学生生活
は、2005 年が 506 名、2006 年が 557 名、2007 年が 586 名と増加しているが、本学独自の奨学
金である「キノルド奨学金」の受給者は、それぞれ 52 名、50 名、53 名と、近年はほぼ横這いの
状態である。これは、短期大学の廃止と大学改組に伴う貸与年数の長期化による返還開始時期
のずれ込みが要因となって、新規採用人数を 15 名から増やさないという方針を取った状況が、
その後も、本学の財政状況等の問題を考慮して継続されていることによる。現状では、奨学金
希望者のうち、資格充足者についてはほぼこの採用枠で対応ができている状況にあるが、今後
さらに希望者が増加することも考えられるので、この「キノルド奨学金」新規採用人数枠の見
直しをも含めた、本学独自の奨学金制度の拡充が必要になってくる。
しかし一方、たとえば、「キノルド奨学金」の貸与額は 2006 年度は合計約 1,748 万円、2007
年度は 1,851 万円であるのに対して、卒業生からの返還額は 2006 年度は合計約 1,088 万円、
2007 年度は 1,272 万円にとどまり、奨学金運用資金の総体としては 2006 年度は約 660 万円、
2007 年度は 579 万円の支出超過となっている。こうした支出超過の傾向は過年度から継続する
ものであり、この状態がさらに続けば、近い将来には基金の取り崩しも検討しなくてはならな
い状況にある。奨学金制度の拡充を論ずる以前に、まずこの点について何らかの対策が必要で
あろう。
また、本学独自の奨学金の概要については、大学案内や学生便覧・大学ホームページ等に記
載されているだけでなく、毎年度初めに新入生や在学生を対象とした学内募集説明会が開催さ
れており、全ての学生への周知が図られていると評価できる。
2.学生の研究活動への支援
学生に対し論文集等への執筆を促進する方途の適切性という問題に関して、卒業研究を原則
として必修としている文学部においては、卒業研究が本学における学習研究活動の集大成とし
ての意味を持つため、その質を高く保持することは極めて重要であり、その意味で各学科が卒
業研究の発表媒体を用意している点は評価できる。人間生活学部で卒業研究を必修としている
人間生活学科においても、卒業研究要旨集を発行している点は同様に評価できる。ただし、日
本語・日本文学科以外の学科には学術誌としての機関誌がなく(人間生活学科は学科独自の紀
要『人間生活学研究』を発行しているが、学生には論文の投稿を認めていない)、研究に対す
る意識の高い学生により高い目標を持たせる配慮という点では欠ける点がある。
大学院人間生活学研究科においては、人間生活学専攻では多彩な研究発表媒体が整備されて
いる点は十分評価できるが、執筆促進への配慮という点では検討段階にとどまっており、今後
の充実が望まれるし、食物栄養学専攻では、2 年間で実験あるいは調査研究の結果を修士論文
にまとめるため、学会などでの口頭発表(国際学会を含む)はあるものの学術雑誌への投稿ま
では至っていない。大学院修了後、職についてから、あるいは他大学の博士課程進学し在学中
に、学術論文に発表する場合が多い。しかし、その数、まだ多くなく、指導教員は論文投稿を
促すよう指導する必要がある。
3.生活相談等
学生の心身の健康保持・増進への配慮については、本学では保健センターが中心となって組
織的に行う体制を敷いており、学生相談室の体制も整備が進んでいることから、この点は適切
であると評価できる。
142
第5章 学生生活
また、安全・衛生への配慮については、保健センターの他に、安全を期する分野の別に応じ
て、学生部委員会や事務局等が協力して推進する体制がとられている。
本学におけるハラスメント等の問題への対応としては、以下のような体制がとられている。
すなわち、ハラスメントをはじめとする重大な人権問題が発生した場合には、外部相談員を含
むハラスメント相談窓口が相談に当たり、窓口相談員が必要と判断した場合にはハラスメント
人権委員会に調査を勧告し、ハラスメント人権委員会が調査を決定した場合には、学長は調査
委員を任命して、ハラスメント人権侵害調査委員会が発足して、調査を行う。人権調査委員会
が提出した調査報告書に基づいて、人権委員会は学長に報告と処分の勧告を行い、学長は加害
者の処分、調査結果・処分の公表を行う。
上記のような対応の体制において、調査、処置等に当たっては、被害者とされた者と加害者
とされた者双方の人権に配慮して、適正な手続きが保障されている。
ハラスメント全般の防止のための規程は整理されているといえる。ハラスメント相談窓口は
代表・副代表を決めて積極的に活動し、外部の研究会・研修等への相談員の出張旅費などを含め
た予算を計上し、相談員の質向上を目指した研修も行っている。
ハラスメント人権委員会の任務の一つに、ハラスメントなどの人権侵害の防止に対する理解
を深めるための機会や情報の提供があるが、
講演会の開催という点では 2007 年度は残念ながら
十分な活動ができなかったが、2008 年度にはそれぞれのキャンパスごとに行い、教職員はどち
らかに出席できるようにした。
また、ハラスメント相談窓口相談員の案内カードを作成し学生に配布したが、カードにどの
ような場合にどのように相談したらよいかなど、対策等の記述を盛り込んだものに改善する必
要がある。
生活相談担当部署の活動の有効性という点では、生活相談を担当する組織そのものの整備は
進んできているといえる。個々の組織の活動についても、それぞれの機能に応じた相談の体制
としては整いつつあると評価できる。
ただし、相談担当組織相互の役割分担については規程の整備も含め未整理の部分が多く、ま
た、学生相談員の担当教員に対する業務内容の説明会や相談のスキルアップのための研修会、
情報交換のためのミーティング等の開催も充分とは言いがたい。心身の問題から問題行動に走
る学生が出ることも懸念される状況があることから、これらの組織の運営体制をさらに整備・
充実した上で、
組織間での情報共有や危機管理、
事故即応の体制を構築することが求められる。
以下に各相談担当組織における具体的な問題点について述べる。
1) 保健センター
保健センターにおける精神的問題を訴えての利用者数が減少しつつあることは、学生相談室
の利用者数が増加していることと表裏一体の現象であると考えられる。両部署の役割分担が学
生に認知されてきていることの他に、学生相談室の体制を充実させてきたことの効果が現れて
きたものと考える。
前述のとおり、保健センターでの相談が学生相談室や各学科、各クラス担任等への連絡につ
ながるケースが多く、また逆に、学生相談室で得られた問題を抱える学生の情報に関しても、
保健センターを経由して、保健センターが主たる担当となって各部署への連絡がとられている
状況にある。このように、現状では保健センターが各部門間での情報共有の媒介役的立場を担
っているが、深刻な問題を抱える学生についての情報は、全ていずれかの部署において一括し
143
第5章 学生生活
て把握されている必要がある。現状のとおり保健センターが中心的役割を担うのが自然なよう
ではあるが、今後「こころ」の健康問題は、ますます複雑になることが予想でき、しかもその
件数はますます増えていくことを考えると保健センターが今の体制では対応しきれないことに
もなりかねない。やはり十分な学内的検討を踏まえた上で、何らかのルールのもとに情報が管
理され、問題を解決できる体制を築いていくことが望ましい。
2) 学生相談室
以前は学生が自分の通う学部でカウンセリングを受けるのが常であったが、最近では、自宅
住所が近い、友人と顔を合わせたくないなどの理由から、他校舎での相談を予約する学生も出
てきており、この点は 2 つのキャンパスに分かれていることが利点として作用しているといえ
る。
一方で、相談担当者の間では次のような問題点を指摘する声も上がっている。
・相談室の構造上の問題
現在の相談室は学生が同室しづらい構造であるため、学生が受付来談している際に他の
学生が利用しようとする場合や予約をしに来た場合の対応が難しい。
・常勤カウンセラーの配置
学科教員が抱える学生について連携をとって対応する際などに、教員に対するスーパー
バイザーとして学内事情を把握している常勤のカウンセラーが配置されている状況が望
まれる。
・開室時間延長の必要性
来談者数の増加に伴い、開室時間も延長して来ているが、潜在的に利用を必要としてい
るより多くの学生が相談室を利用できるようにするためには、授業終了後まで開室時間を
延ばす、カウンセリング曜日を増やす等の対応が必要になる。
・教員との連携上の問題点
カウンセラーにより学科教員と連携をとる必要があると見なされるケースであっても、
各教員によって学生の状況に対する考え方や対応にばらつきがあるなど、難しい面がある。
また、授業や出席に関係する相談においても、学生本人から教員には秘密にして欲しいと
いう要望があればその要望を優先しなくてはならない場合がある。
生活相談、進路相談を行う専門のカウンセラーやアドバイザーなどの配置は、徐々にではあ
るが整備されつつある。
たとえば学生相談室におけるインテーカー2 名とカウンセラー4 名とい
う配置状況は、本学と同程度の規模の大学における一般的水準と比較して見る限りでは決して
低くはないといえる。ただし、各部門においてさまざまな問題が指摘されていることもまた事
実であり、こうした点に関しては常に向上を図っていく必要がある。
また、人間生活学部では既存の組織では対処できない学生が増加し、保健センターや食物栄
養学科の一部助手のところに業務外の相談に訪れるケースが増えている。そのため人間生活学
科では、2007 年度より独自に生活学習支援員を導入し、年間のべ 100 件以上の相談業務をこな
した。今後、他の学科でもこうした取り組みが必要になる可能性がある。
学生相談室については、常勤カウンセラーの配置や開室時間の延長についての要望が現場か
ら上がっており、何らかの検討が必要である。
144
第5章 学生生活
また、学生相談室からは、休学・転科・転学・仮面浪人等の進路変更に関する相談や大学院
進学に関する相談などについて、学生たちがどこに相談すべきか悩んでいる状況もあるとの指
摘がなされている。大学や家族には秘密にして、自分でなんとか解決の糸口をみつけたいとい
う学生もいるようである。こうした悩みを掬い上げる仕組みづくりの検討も必要である。
進路相談の窓口に関して言えば、
就職課において 2008 年度から外部のキャリアアドバイザー
による学生のケアを実施しているが、あくまでも試験的な実施であり、当該年度の成果を踏ま
えた上で、今後の更なる検討が必要である。
不登校の学生への対応状況という点に関しては、本学においても学生が不登校の状況に陥り、
学修が継続できなくなるケースは増えつつある。人間生活学部では、気になる学生について教
員が相互に連絡を取り合いサポートしていく体制ができており、欠席が続いた原因の把握や対
処が迅速に行われている。一方、文学部においては、卒業判定で不合格となる学生の中には、
不登校が原因で修得単位が不足となっている例も含まれている。現状では、不登校の学生のケ
ア、不登校の学生からの休学・退学・転科などの進路相談の受付については各学科に任されて
いるが、このような学生が増加している状況を考えれば、大学もしくは学部として何らかの統
一的な対応を検討することが必要な段階に来ていると考える。
また、学生相談室からは、不登校ではないが休みがちな学生が、たまたま相談室に来室する
ようになることにより、相談室が学内における「居場所」のひとつとなり、そのお陰で少しず
つ登校できるようになったというケースも報告されている。
そうした効果を生む要因としては、
空き時間を過す場ができれば、それが休憩を取りながら授業に出ることにつながり、さらにカ
ウンセラーと話して落ち着くことで精神的な安定が得られるという好循環の要素があると考え
られる。
学生相談室がこうした学生の受け皿の機能を果たすためには、欠席が多い学生が登校した機
会を捉えて確実に相談室に引き付けられるような体制、すなわち開室時間の延長や配置カウン
セラーの増員などの対応が必要となる。
学生生活に関する満足度アンケートについては、2007 年度に卒業生向けにアンケートを実施
したが、その回答からは、学生生活への高い満足度が読み取れた。しかし、アンケートの回答
率が全体で 3 割程度に止まることを考えれば、意識の高い層のみが回答を返した結果であると
見ることもできるため、全体的な評価としてはいささか割り引いて受け取る必要があろう。今
後は、回答率を高め、より信頼性の高いデータが採取できるよう実施の方式を見直していくと
ともに、蓄積されたデータを自己点検・評価に活用するための具体的な方途をも検討していか
なくてはならない。
4.就職指導
「娘を入学させたい大学ランク道内ナンバー2」という高いブランドイメージ、有為な人材を
北海道内外に輩出してきたという実績に支えられて、本学学生の就職状況はよい。共学校の女
子大学生と比べても、本学学生の就職率は高い。以下の表 5-7(2007 年度卒業生就職実績)に
あるように、業種別に見れば、文学部は卸・ 小売業、金融機関、航空運輸関係、人間生活学部
は専門職養成課程を有するという特性を反映して、教育・教育支援業と医療・福祉業にほぼ半
数の卒業生を送り出している。
145
第5章 学生生活
表 5-7 2007 年度卒業生就職実績
人間生活学部
1.4% 10.5% 20.1%
1.8%
3.2%
4.6%
0.9% 11.6%
3.2% 25.5% 24.1% 10.2%
9.3%
0.5%
3.2%
6.9%
︵
複数︶
その他業種
部
公務
学
複合サービス業
サービス・
文
教育支援業
教育・
4.6%
学 部
医療・
福祉業
飲食・
宿泊業
3.2% 19.6% 19.2%
卸・
小売業
金融業
運輸業
2.7% 13.7%
情報通信業
分類
製造業
業種別
小規模校のメリットを生かした学生個人とのパースン・ツー・パースン的な斡旋・指導が、
これまでの実績・評価と繋がっていると考えられる。これまでは社会的に高い評価を得て、就
職していった学生の満足度も高いものがあったと自負できる。2007 年度では、全国的には景気
の緩やかな回復や、団塊世代の大量退職といった事情が働いて、新卒者の就職状況は改善して
いるとはいえ、道内の就職状況、とりわけ女子の就職状況は厳しい。その中で 2006 年 3 月(2005
年度)卒業生の就職決定率は 91.6%(うち一般企業への就職率 91.2%)、2007 年 3 月(2006
年度)卒業生は 90.8%(同 93.8%)、2008 年 3 月(2007 年度)卒業生は 93.8%(同 94.9%)
とほぼ全国平均並みの就職決定率を維持しており、就業機会の少ない北海道の大学としては健
闘しているといえる。
問題は、①将来の進路があいまいなまま漠然と就職活動を行う学生がなお存在すること、②
就職活動に伴う心のケアの必要性が年々高まり、就職課(学生係)の対応が難しくなっている
こと、③就職決定率は高いものの、その中には、臨時採用や派遣などの非正規雇用の形態での
就職も含まれていることである。
単なる就職率だけでなく、
就職先の質の向上を目指すことも、
重要な課題である。
就職担当部署の活動をより効果的なものにするためには、就職支援用のコンピュータの更新、
就職担当職員の繁忙期への業務支援、花川キャンパスの就職相談室の整備などいくつかの問題
点を解決していく必要がある。
学生への就職ガイダンスについては、本学では、いくつかのガイダンス(外部講師によるも
の)に関して試行的に満足度調査を行っており、90%以上の学生からおおむね満足したとの結
果を得ている。問題は、とりわけ人間生活学部において、実習との関係から日程調整が難しく、
欠席者が多いことである。
また、かつては、就職関連行事の開催数が北 16 条キャンパスに片寄っていたという問題があ
ったが、2007 年度からは、花川キャンパスから北 16 条キャンパスへ学生を送るバスを運行し、
問題の解決を図った。
5.課外活動
本学が行っている学生の課外活動に対する指導、支援についてみると、近年の学生は学生会
の活動に積極的には関わらない傾向があり、2001 年度には「学生会会則」を改定して学生総会
でなく執行部中心の運営に変えた。しかし、積極的に執行部活動に加わる学生は多くなく、小
人数の委員で運営しているのが現状である。さらに本学はキャンパスが 2 つに分かれているた
め、学生会執行部やクラブ活動の運営上でどうしても困難な面がある。特にクラブへの予算分
146
第5章 学生生活
配に関しては調整が難しく、予算運用を担当する執行部には過大な負担がかかる。このため、
執行部は常に「なり手不足」の状態にあったが、2007 年度にはついに全学学生会を統括する執
行部が組織できない状況に陥った。その対策としては、学生部の助言のもと学生会会則を弾力
的に運用し、両キャンパスにそれぞれ執行部を置き、クラブ連合も分割して運営することとし
たが、やはり両キャンパス間でのクラブ予算分配の上でトラブルが発生した。こうしたトラブ
ルを防ぐため、2008 年度においては、学生会内部での自主的な取り組みにより、クラブ間での
明確な予算策定上のルールや相互チェック体制の構築がなされており、学生課(係)及び学生
部委員会はこうした動きに対して随時、助言・指導を行っている。
キャンパス分割以前のままの文言を多く残す学生会会則に厳密に則った学生会運営は極めて
困難になっており、学生会の現状に合わせた会則の改正も視野に入れなければならない状況で
ある。しかし、例えば会則を改正しようとすれば、現実的にはほぼ不可能な全学生の 3 分の 2
の出席を条件とする学生総会を開催しなくてはならないなど、言わば会則に縛られて身動きが
取れない状態にある。
また、クラブ等での活動は、課外における活動を通じての人格形成、人間関係の構築といっ
た経験のための貴重な機会であり、多くの学生の参加が望まれるが、現状では、前述のように
4 割弱の学生の加入にとどまる。しかし、2002 年度までの減少傾向には歯止めがかかり、2000
年度の水準程度まで持ち直しているとも言え、その点では「学生部長賞」を設けるなどのクラ
ブ活動振興策の成果がある程度出ているといえる。
大学祭の内容は、実行委員会によるイベント企画、クラブ・サークル、有志による模擬店・
作品展示などの企画が中心である。本学では教職員の参加が比較的に多く、学生に協力する形
で発表、講演、シンポジウムなどが企画開催されている。さらに、フリーマーケット、トーク
ショーなど地域住民の参加が多数得られている企画もあり、「地域に開かれた大学」を実現す
る有効な場ともなっている。実際に入場者には、子供連れ、年配の方々も多く、地域の人々の
来場が目立つのも特徴である。
大学祭は、本来、学生会が執行する行事であり、大学はその場を提供するだけという立場を
原則とする。しかし、近年は「地域に開かれた大学」を実現する有効な場としての位置づけが
なされつつあり、学科・ゼミ等を中心とした学習研究成果の公表や社会への問題提起などの催
しも見られるようになってきている。さらに 2007 年度からは、大学祭開催にあわせて大学とし
ての進学相談会を開催するようになり、大学が大学祭に積極的に参加する、あるいは大学祭を
有効活用するという傾向がより顕著になっている。
一方で、従来から大学祭実行委員会が運営資金の一部として調達してきた企業からの広告収
入は、昨今の経済状況による各企業の業績悪化に伴う緊縮化の影響を受けて、2005 年度は藤陽
祭 383,000 円・藤花祭 611,400 円、2006 年度は藤陽祭 367,000 円・藤花祭 536,895 円、2007
年度は藤陽祭 269,000 円・藤花祭 209,000 円と年々減少しつつあるのが実態である。
新入生オリエンテーションや在学生ガイダンスは、本学の特色である学生に対するきめ細か
な生活支援指導の一環としての役割を果たしているといえる。
新入生向けの北海道警察による防犯(暴力から身を守る)・交通安全(自転車通学上の注意)
等の講演は有益で、学生の評価も高い。学生の生命に関わる極めて切実なことでもあるので、
継続して実施していきたい。
主に新入生を対象に「自炊入門」として実施している料理教室は、参加したほとんどの学生
147
第5章 学生生活
がアンケートで「友だちができた」と答えており、これからも友だちづくりの場として継続的
に提供していきたい。ただし、学生相談室を訪れるような学生は、こうした催しになかなか参
加しようとしないことも事実であり、こうした学生をも引き付けられるような別の企画も検討
する必要がある。
【将来の改善・改革に向けた方策】
本学の奨学金制度における問題点として、奨学金運営の財政的基盤の問題がある。「キノル
ド奨学金」については、これまでも継続的に卒業生や教職員に寄付を募るなど基金の増額に努
めてきたが、より効果的で抜本的な対策が必要と考えられる。昨今の経済状況から見て、基金
の運用益を基にした奨学金運営は不可能な状況であることから、今後とも大学予算からの資金
補充等の措置を継続する。
現状では、
学生の研究内容に関する学科間、
ゼミ間での相互批評の機会は設けられておらず、
学生が投稿可能な学術誌についても日本語・日本文学科のみが設けているにとどまる。今後は
学生の研究活動の活性化のため、学部全体による相互批評の取り組みや学外へ向けての発信媒
体の設置などについて、FD の一環として位置づけることも検討していく必要がある。
学生相談関係では、学生の心身の健康保持・増進及び安全・衛生への配慮については、今後
とも、さらに学生の日常生活の質が高められるように努め、それを通じて学生の心身の健康の
より一層の充実を図っていく必要がある。特に感染症対策を含め各種災害から学生を守るため
にも、平常時から危機管理体制を確立しておくことは必要である。
ハラスメント防止のための対策としては、ハラスメント相談窓口や一般の教職員の声を尊重
し、2009 年度から実施できるように次の改善を行う予定で準備を進めている。
① 今年度からハラスメント相談窓口相談員の氏名・所属等を印刷したカードを作成したが、
来
年度はこのカード及び大学ホームページに、ハラスメントについての説明と、万一ハラスメ
ントを受けた場合の対策等の記述を加えて改善する。
② 本学ではハラスメントに関わる事件が極めて少ないが、いつも快適な環境で女性教育を行
えるように教職員のハラスメントに対する啓発の講演会・研修会は重要である。今後も講演
会・研修会には、教職員の積極的な出席を求める。
③ ハラスメント人権委員会は部長職 6 名と教職員から学長の指名による 2 名からなっている
が、
部長職が全員男性である場合もあり学長指名の 2 名は女性の教員をあてている。
しかし、
現状では男性の比率が高いので女性委員を多くする方向へ規程の改定を考えている。
生活相談担当部署の活動の有効性の問題に関しては、相談担当組織相互の役割分担について
未整理の部分が多いため、まずは各組織に対して実態に即した規程を整備し、その上でそれに
準拠した運営体制を整えていく。
また、学生相談員の担当教員に対する業務内容の説明会や相談のスキルアップのための研修
会、情報交換のためのミーティング等も定期的に開催することを検討したい。
生活相談、進路相談を行う専門のカウンセラーやアドバイザーなどの配置という点に関して
は、学生相談室における常勤カウンセラーの配置や開室時間の延長の要望がある。常勤カウン
セラーの配置は困難であるにしても、カウンセリング機能を持つ仕組みを全学的に整備するよ
148
第5章 学生生活
う検討する。
不登校の学生への対応としては、早期発見・早期対応が重要であり、各学生の就学状況がク
ラス担任に集約される仕組みを整える必要がある。100 名近い学生を抱える担任ではきめ細か
い対応がとりにくいなどの問題はあるが、各種の学生相談窓口やゼミ担当教員との協力関係を
さらに強化するなど、保護者対応も含めたきめ細かな支援を行う方策を検討する。
学生の就職指導・進路指導に関しては、将来の進路があいまいなまま漠然と就職活動を行う
学生がなお存在するという問題を解決する一助として、2008 年度からガイドブックを 3 年生全
員に配布し、ガイドブックに沿って就職課職員による説明会を行うこととした。今後は、本学
学生特有の課題などもガイドブックに盛り込みつつ、教員も積極的に関わる形で、より質の高
い就職支援体制を整えたい。これは、就職課(学生係)と教員の連携強化の改善策ともなる。
同じ問題に関して、2008 年度からは社会人としてのマナー指導や国際交流センター運営委員
会との連携による英語能力の活用等に関わる講座やワークショップ開催などによるキャリア支
援(対象は低学年の学生を含む)ができるよう、その環境を整備した。
就職活動に伴う心のケアの問題に対応するために、2008 年度には外部のキャリアアドバイザ
ーによるケアを行うための年 16 回分の予算をつけた。
就職課(学生係)と教員との連携強化のポイントは、本格的には、他大学ですでに実践され
ているように、職業意識の形成や進路選択といった事柄自体を、カリキュラムの中に組み込む
ことであろう。2008 年度は、就職委員会の活動を通して、本学でのその可能性を検討している。
就職先の質の向上については、企業開拓が不可欠である。就職活動の早期化、就職関連行事
の増加によって業務量は増大しており、その結果として、企業開拓に精力を注ぐことが疎かに
されるきらいがある。
企業開拓に関しては、本学職員が実際に相手先企業を訪問しなければならず、アウトソーシ
ングは不可能な業務であることから増員を含めた対応を検討する。
就職担当部署の活動上の問題として、就職支援に関する学生の利便性を高めるために、就職
支援用のコンピュータの更新は不可欠である。また、花川キャンパスに関しては、就職相談室
の整備とあわせて、現行の花川事務室、就職相談室、保健センター、会議室、印刷室等のレイ
アウトを根本的に見直し、事務全体の効率を維持しつつ、学生の就職活動をより高度に支援で
きる事務配置を考えねばならない。
学生への就職ガイダンスの実施に関して、人間生活学部における欠席者対策としては、現在
は窓口の個別相談で対応しているが、それだけではカバーしきれない部分がどうしても残る。
実習日程の決定が実習先の都合もあって遅れるため、前年度のうちに各学科と就職担当との間
で日程を調整することも不可能である。そこで、例えば、春の在学年ガイダンスの時期に就職
指導週間を設定するとか、長期休暇が始まる週か終わる週に就職指導週間を設定するなどの対
策を検討する。
学生の課外活動に関しては、学生会運営に困難をもたらしている諸問題を根本的に解消する
ために、何らかの方法で学生の総意を問う道を考えながら、あくまでも学生会が主体的に変革
を進めていく姿勢で、今後とも学生部・学生課(係)が学生会執行部及びクラブ連合に対して
緊密に話し合いの機会を設け、適切な助言をしていく。
大学祭が学生主体の行事であるという点は当然尊重しなくてはならないが、大学にとっても、
本学のありのままの姿を地域の人々、あるいは進学希望者に示し、理解を深めてもらう良い機
149
第5章 学生生活
会である。幸いにも大学祭実行委員会と本学学生部の関係は、これまでも良好に保たれている
ので、今後は学生の理解を得ながら、大学祭を学習研究成果の公表の場、メッセージ発信の場
として大学と学生が協力して主催することも考えなければならない。また、大学祭実行委員会
が自力で用意できる収入が減少しつつある現状を考えると、今後、大学祭の活気を維持してい
く、あるいはさらに活発化していくためには、大学としてもこれまで以上の資金的な援助を行
う必要がある。
学生が充実した学生生活を円滑に開始できるようにするため、大学生活全般を紹介し、指導・
助言する新入生オリエンテーションは重要である。新しい環境に順応できず不安を抱いている
新入生を対象にした様々な企画(学科合宿、新入生料理教室等)を積極的に継続実施していく
必要がある。また、学生の履修、編入学や進学、就職に関する相談のために、学生相談室、学
生課・就職課(学生係)と並んでゼミ担当教員、クラス担任等、教員による個別指導が依然と
して重要であり、学生生活全般にわたって指導、助言するためには、学生と教職員の接触を密
にしていかなくてはならない。今後、横の連携を含めた支援体制づくりを検討していく予定で
ある。
快適な大学生活を送るための条件として食堂・購買の充実は重要である。学生会執行部との
話し合いや学生へのアンケート調査を実施することなどによって学生のニーズを把握し、引き
続き食堂・購買運営委員会が窓口となり委託業者に対して改善を求めていく。
資格取得を目的とする課外授業については、今後とも、引き続き就職委員会等において学生
のニーズに応じたコンテンツの見直し及び開発に努めていく。
150
第6章 研究環境
第6章 研究環境
【到達目標】
1.研究活動の成果に関して不断の自己点検・評価を行うとともに、教員の研究活動を一層活
発化すること
2.競争的研究資金の獲得を奨励することにより研究の活性化を図ること
3.教員、特に大学院担当教員の研究のための環境を整備すること
【現状の説明】
1.研究活動
⑴ 論文等研究成果の発表状況
本学で教員の教育研究活動の報告を行ったのは、1998 年度の『藤女子大学 藤女子短期大学
現状と課題』が最初であり、次いで 2000 年度に『藤女子大学 現状と課題』第 2 号、さらに
2002 年度から毎年『藤女子大学 教員の教育・研究活動』を作成し、2003 年度からは学内外に
公表している。その結果、研究活動の活発な教員と不活発な教員との間の格差が著しいことが
わかってきた。また、過去数年の推移を見ると、研究活動が不活発な教員にも、その教育活動
には変化が見られ、教育内容・方法に工夫が凝らされるようになってきていることも事実であ
る。教育に重きをおく本学として、教育活動の活性化は望ましいことであるが、よりよい教育
活動の原点としての研究活動も決して疎かにしてはならないのは当然である。
⑵ 国内外の学会での活動状況
本学教員の所属学会数は 2007 年度のべ数で、文学部 139 学会、人間生活学部 238 学会となっ
ており 1 人あたりの平均所属数は文学部 3.7 及び人間生活学部 5.2 である。このうち理事・評
議員等の役員となっている教員は、文学部 12 名、人間生活学部 17 名である。学会等での口頭
発表等については、報告書『教員の教育・研究活動』に個別の詳細を掲載しているが、このうち
学内助成制度の適用を受けて海外での口頭発表が、文学部・人間生活学部それぞれ 1 件含まれ
ている。
⑶ 研究助成を得て行われる研究プログラムの展開状況
政府関連法人等から研究助成を受けて展開している研究のうち他大学等と共同で展開してい
る研究として、独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構から「高度リン酸化澱粉及び
アントシアニン色素を含有する馬鈴薯を用いた機能性食品の開発」という試験研究を受託して
いる。
これは本学及び帯広畜産大学等 6 機関による共同コンソーシアムとして受託したもので、
本学では高度リン酸化澱粉の健康機能性の解明に関する研究を分担しており、2003 年度より
4000 万円ほどの助成を受けて食物栄養学科で研究プログラムを展開している。
151
第6章 研究環境
2.教育研究組織単位間の研究上の連携
⑴ 附置研究所を設置している場合、当該研究所と大学・大学院との関係
a.キリスト教文化研究所
キリスト教文化研究所は、「建学の理念にもとづき、キリスト教の精神並びに文化の研究を
行うことを目的」として、1998 年 6 月に設置された。同研究所は、大学全体の組織として、文
学部、人間生活学部双方の教員等が関わって活動している。所長 1 名の他に文学部から 5 名、
人間生活学部から 4 名の所員のほか学外の客員所員 2 名で構成されており、研究例会は適宜、
北 16 条キャンパス(文学部)、花川キャンパス(人間生活学部)において行っている。公開講座
及び公開講演会は現在までのところ、北 16 条キャンパスの講堂、教室を使用し、教職員、在学
生、卒業生、市民を対象として開催している。
b.QOL 研究所
QOL 研究所は、「福祉に関する研究、研究助成、指導及び普及事業を行うことを目的」とし
て、2003 年 4 月、人間生活学部に設置された。それゆえに本研究所の人間生活学研究科との関
係は、本研究所と人間生活学部との関係に準じている。所長は、人間生活学部長であり、本研
究所を代表するとともに、その運営を統括する。研究員は、本研究所の諸事業に参加を望む人
間生活学部の専任教員が兼任している。
2006 年には先の「福祉研究所」の名称を、より広い領域をカバーする研究所として「QOL 研
究所」と名称変更するとともに、『藤女子大学 QOL 研究所紀要』を発行し、研究成果の報告に
努めている。
本研究所を初めて設置する際に、全学的機関として位置づけるのに時間的制約や種々の難し
い要因もあり、まずは人間生活学部に設置することとした。しかし、すでに 5 年を経過し種々
の要因も整理されたこともあり、できるだけ早いうちに全学的な機関として位置づけたいと考
えている。
3.経常的な研究条件の整備
⑴ 個人研究費、研究旅費の額の適切性
本学では、講師以上の専任教員に対する恒常的な研究費として、個人研究費(2008 年度の年
額 43 万円)を設けている。これは、教員の自主的計画による研究を進めるためのものであり、
その使途は、概ね、①図書、②備品、③消耗品・消耗備品・消耗図書、④研究旅費、⑤その他
と定められている。3 分の 2 までを研究旅費として利用することができる規定になっており、
年度末に残額が生じた場合には、次年度との合計額が年額の 2 倍を超えない範囲で次年度の個
人研究費に加算される。また、教員の「個人・共同研究」「海外学会発表」及び「学術研究の
成果のための出版」を助成する研究奨励助成制度が設けられ、教員の研究の奨励と研究条件の
整備に努めている。この他、教員個人を対象としたものではないが、学科等に対して図書費や
学科研究費等にかかる予算を配分している。
大学院の担当教員に対しては、大学院の授業担当に基づく個人研究費の増額等は行われてい
ないが、専攻に対しては、一定の教育・研究費が予算配分されている。その使途については、
人間生活学専攻では文献・資料収集のための図書費が中心であり、食物栄養学専攻では研究材
料等の購入のための実験費が多い。
152
第6章 研究環境
⑵ 教員個室等の教員研究室の整備状況
本学の専任教員全員(嘱託教員を含む)に、個室の教員研究室と所定の施設・設備が用意さ
れており、個室の平均面積は、文学部 23.7 ㎡、人間生活学部 20.8 ㎡である。
⑶ 教員の研究時間を確保させる方途の適切性
本学の専任教員は、卒業研究指導の他に 5 コマの授業担当を標準としており、授業が開設さ
れる月曜日から土曜日までの 6 日間のうち 1 日を研修日に設定することが認められている。他
大学等で非常勤講師として出講する場合には、教員の研究時間を確保させるために週に 3 コマ
を限度とするように指示している。
⑷ 研究活動に必要な研修機会確保のための方策の適切性
教員の学外研修については「藤女子大学国内研修・海外研修派遣規程」が定められており、
在職年数 7 年以上を条件として希望者を募り、毎年各学部 1 名を原則として派遣することとし
ている。またこれとは別に文部科学省の海外派遣補助制度を利用した研修制度があり、補助条
件に適合することを条件に毎年 2 名を限度として派遣することとしている。
この他就業規則上の研究休職制度があり、休職期間が 6 ヶ月以内は 100%、6 ヶ月を超えて 1
年までは 60%の給与を受けて研究に専念できることとしている。
これらの研修制度は勤務年数等一定の条件のもとに研修機会を得る権限を付与するというこ
とからは、教員個々の研究深耕のためのサバティカルリーブを意図したものではあるが、本学
の組織規模等の事情もあって年間の対象人数を制限していることなど課題も多いといえる。ま
た学部学科の教育課程や人的事情などで長期間の研修に出ていけるほどの時間的余裕がないと
いうことも課題といえる。特に、人間生活学部教員は専門的科目であるために代わりとなる非
常勤講師を見つけることが難しいことがある。また大学院担当教員は、大学院教育の他に学部
教育を担当しているため、研修に出るための時間確保がかなり困難な状況にある。
⑸ 共同研究費の制度化の状況とその運用の適切性
教員相互の共同研究に対する助成制度として「藤女子大学研究奨励助成に関する規程」が整
備されている。これは本学の専任教員が同一の研究課題について共同で行う研究について助成
する制度で、共同研究者は特任・嘱託教員を含んだ全教員を対象としている。本制度は競争的
な研究環境の創出のねらいもあり、採択に当たっては科学研究費に申請した課題を優先するこ
ととしており、研究期間は原則単年度として助成額の上限は 100 万円である。
直近 5 年間の採択件数は 3 件 182 万円となっており、いずれも人間生活学部の共同研究であ
る。
4.競争的な研究環境創出のための措置
⑴ 科学研究費補助金および研究助成財団などへの研究助成金の申請とその採択の状況
科学研究費補助金の申請状況については、大学基礎データ(表 33)のとおり申請数・採択数
ともに低い水準にある。2008 年度についても 7 件申請、うち採択 3 件となっている。申請件数
の増加を図るために科学研究費補助金申請のステップとなる学内助成制度を定めるなどしてお
り、なお一層の推進策を検討する必要がある。
153
第6章 研究環境
その他の研究助成金について助成総額は大学基礎データ(表 34)のとおりであり、企業等か
らの研究助成が 2 件、政府関連法人及び企業からの受託研究が 9 件となっている。いずれも人
間生活学部での受託であり、食物栄養学科における食品分析及び生化学分野に対する助成が大
半である。
5.研究上の成果の公表、発信・受信等
⑴ 研究論文・研究成果の公表を支援する措置の適切性
研究論文・成果の公表・発信に際して予算措置しているものは、2007 年度で第 45 号となる
『藤女子大学 紀要』(第Ⅰ・Ⅱ部)の他、藤女子大学日本語・日本文学会(旧国語国文学会)
発刊の『国文学雑誌』(第 78 号)や人間生活学部の『人間生活学研究』(第 15 号)、家庭科・
家政教育研究会の『家庭科・家政教育研究』(第 2 号)、またキリスト教文化研究所の『紀要』
(第 8 号)、QOL 研究所の『QOL 研究所紀要』(第 3 巻第 1 号)などであり、これらの発刊物は、
広く関係機関等に配布している。この他各学科では学生の研究成果を公表するため卒業論文集
等を取りまとめて発行の支援をしている。
個人の研究成果公表については、
論文等の出版に際して 50 万円を上限として助成する奨励制
度がある。
6.倫理面からの研究条件の整備
⑴ 研究倫理を支えるためのシステムの整備状況とその適切性
人間生活学部では、厚生労働省告示「臨床研究に関する倫理指針」などの主旨に沿った「人
間生活学部研究倫理委員会規程」で審査が必要な項目、審査の基準等を定め、また、「動物の
愛護及び管理に関する法律」などの主旨に沿った「人間生活学部における動物実験に関する指
針」を定め、運用しており、研究倫理を支えるためのシステムは整備されている。
⑵ 研究倫理に係る学内審議機関の開設・運営状況の適切性
人間生活学部では、上述の「人間生活学部研究倫理委員会規程」を定めた他に、2005 年 7 月
に、科学的にはもとより動物福祉の観点から適切な動物実験を実施することを目的とする「動
物実験に関する指針」を定め、かつそれに基づく「人間生活学部動物実験委員会規程」を定め
て、それぞれ実験の安全や研究倫理の観点からの動物実験計画書の審査、判定を行っている。
【点検・評価】
研究活動については、教員間に著しい格差が見られることから、すでに個人研究費支給額の
一律的な増額を停止し、研究活動の一層の活性化に向けて、個別の研究計画に対する研究奨励
助成を行っている。これには、一般研究助成(個人研究助成及び共同研究助成)、海外学会発
表、出版助成がある。2005 年度は 5 名の申請があり、共同研究助成、海外学会発表、出版助成
にそれぞれ 1 件が採択された。
科学研究費補助金の申請についても、
大学として奨励した結果、
申請数は増加傾向にあるが、残念ながら採択数はそれほど増えていない。
研究成果については、教員の専門分野を考慮しつつ、これらの研究成果を公正・適切に評価
154
第6章 研究環境
する基準と方法を明示する必要があった。そのため 2003 年度から、本学専任教員の過去 5 年
間の教育研究活動を報告書にまとめて学内外に公表し、社会に対する大学の説明責任を果たし
てきた。2007 年度からはさらに教員の教育・研究業績の評価を行う必要性について、大学自己
点検・評価委員会で検討してきた。その第 1 段階として各教員から提出を求める教育・研究報
告の様式を改善し、将来の業績評価を行う際に活用できるように整備した。文学部と人間生活
学部では教育、研究内容が大きく異なっているので、両学部に共通する客観的な評価基準の作
成は慎重に行う必要があり、
引き続き大学自己点検・評価委員会で検討しているところである。
研究環境に関しては、研究費等、個人研究室、研修機会等についておおむね適切に機能して
いるとはいえる。また大学として研修制度を設けている点は評価できる。本学のような小規模
大学においては、毎年何名もの教員が研修のために本学を離れることは難しいが、各学部 1 名
程度であれば可能である。既存の制度をよく利用して研修機会を作り、充実した研究を行い、
その結果教育活動のより一層の活性化が実現することを期待する。
しかし、教員の研究時間の確保という点については、人間生活学部教員、とりわけ大学院担
当教員にとって問題があるのも事実である。第一に、教科内容の特殊性から、簡単に非常勤教
員に替わってもらうことができない分野の教員について、担当コマ数が多くなっている。第二
に、実習系科目の担当教員については、学生の実習を充実させるために実習科目を文部科学省
が規定している時間数よりも多く設定しているために、
担当コマ数が多くなっている。
その上、
学外実習指導や実習施設との調整を含めた職務などの増加により、時間を要することが避けら
れないことも、研究時間の確保を難しくしている。第三に大学院担当教員については、学部教
育に加えて大学院教育を担当し、大学院では夜間の授業を行うなど負担が特に大きくなってい
る。さらにこの数年のうちに複数の教員について人事異動があり、科目の専門性もあって補充
人事が遅れたこともコマ数が増加した大きな要因である。加えて 2007 年 4 月から、大学改革を
実現するために改革の方向性にかなった人事を行うべく、新しい人事補充を凍結したために、
残りの教員が一時的に担当することとなり、担当コマ数が増える結果となったということであ
る。
こうした大学院担当教員を含めた教育負担量の多い教員について研究時間確保の問題は、カ
リキュラムの見直しを含め、検討を重ねているところである。
【将来の改善・改革に向けた方策】
これまで点検・評価してきたように、教員の研究時間の確保という点において人間生活学部
教員、とりわけ大学院担当教員は教育負担が多いことから研究に集中しにくいという問題があ
り、学内における研究環境について教員間におけるバランスを欠くものとなっている。この問
題の抜本的な解決には限界があるが、当面人間生活学部においては早急に必要な補充人事を行
う一方で、非常勤講師の活用による研究環境の改善を図っていきたい。またこの問題は、カリ
キュラムのあり方とも連動するので、中期的な展望を持ち、先に述べた理事会サイドと大学の
教学サイド双方が協力して検討している大学改革の結果により、その方向性を示したいと考え
ている。
155
第7章 社会貢献
第7章 社会貢献
【到達目標】
本学の教育目的で明示する「地域社会の諸問題に取り組む」とともに、その教育研究上の成
果を社会に還元するために、以下の目標を掲げている。
1.社会との文化交流の一環として、本学の教育システムによる講演会・公開講座等の開催に
より、市民への学習機会を積極的に提供する。
2.本学の教育研究上の成果を市民へ還元するとともに、地方自治体などの政策形成へ積極的
に貢献する。
3.ボランティア等の活動により地域社会への貢献に努める。
4.本学の施設を市民に開放し、社会との文化交流を図る。
【現状の説明】
1.社会への貢献
⑴ 社会との文化交流等を目的とした教育システムの充実度
1) 大学の教育活動との関連で
a.SAT プログラム
本学の社会との連携・交流の活動の一つに、石狩市と藤女子大学の間で締結された SAT(ス
クール・アシスタント・ティーチャー)プログラムがある。2002 年に人間生活学科を中心とし
て学部教授会の承認を得て、石狩市教育委員会と連携しつつ石狩市内の小学校 2 校をモデル
校として試験的に実施した。参加学生は 10 名であった。このプログラムは翌 2003 年から制
度が正式にスタートしたが、それ以来、事務関係は花川キャンパスの事務組織が対応してい
る。このプログラムは、学生が講義の空き時間帯に小・中学校に出向き、担任及び教科担任の
授業を補佐し、それぞれの生徒の学習を支援するものであるが、教室等において生徒と交流を
図りながら、学生が実地に学習をする機会が創出される効果は大きい。開始以来、対象科目は
主として算数・数学である。
試験導入の際のアンケート調査の結果を見ても、小学生は SAT 実施クラス全員が「算数が以
前よりも好きになった、分かるようになった」と答え、参加学生全員も次年度も参加機会があ
れば参加したいと回答した。石狩市は、市町村合併によって南北に長い市域を抱えており、SAT
参加学生の支援を希望する小・中学校は増え続けているのが現状である。しかし、大学から遠
距離にある学校は残念ながら SAT 支援は行えない状況にある。
これに付随して、
人間生活学科では 3 名の教員が主に関わるティーム・ティーチング(TT)で、
「生涯学習論」(2 単位)をカリキュラムに新設したことがある。そのときには、小学校 10 校・
中学校 1 校が対象であった。参加学生は 2003 年度 44 名、2004 年 35 名であった。中学校では
主に帰国子女の教育を中心に行った。その後、教員の異動・カリキュラム改革などで 2007 年か
ら科目は廃止されたことも影響して参加学生は減少しているが、学生のボランティア活動の一
156
第7章 社会貢献
環としてリピーターのように 4 年連続して参加する学生もいる。また、SAT 経験学生の中から、
この数年は現役で家庭科教員として採用される者が複数名出るなど、具体的な効果が現れてい
る。
b.「お手てつないで」
子育てをしている親と子どもたちを支援する「どんぐり広場」を毎週土曜日に行い実績をあ
げていたが、2000 年に開設された人間生活学部保育学科でもこれを受け継ぎ、保育学科全学年
を対象とする「子育て支援」Ⅰ及びⅡの講義・演習科目として、毎週土曜日Ⅱ講時(10 時 40
分∼12 時 10 分)に「お手てつないで」を子育て中の親子(父母とその子)を対象として実施
している。2007 年度には年間 356 組の家族の参加があり、平均 17 家族の親子が参加する演習
では、学生による手遊びや親子で楽しめる遊びを行ったり、専門家による講演や、育児に関す
る相談等に応えたり、親同士の情報交換の場にもなっている。
2) 地域連携に関して
a.石狩市との地域連携の取り組み
① 2007 年 3 月に石狩市経済部商工労働観光課から、地域観光開発のための情報発信拠点とし
てミニ FM ラジオ局を開局することになったので、
それに伴い地元にある大学の学生としての
参加を依頼された。これを受けて人間生活学科 3、4 年生を中心におよそ 30 名前後の学生た
ちが空き時間を利用して、ボランティアとして活動に参加し、協力している。この活動は今
後も学生達に受け継がれていく予定である。
② 2007 年 5 月には、同じく商工労働観光課から“あいロードプロジェクト”への協力依頼が
あった。こちらも人間生活学科の 3、4 年生が中心となり、市内の観光資源を視察し、今後の
資源開発に提言を行っている。市内の厚田公園展望台にある“恋人の聖地”活性化プロジェ
クトでは、石狩市が実施するイベントの企画や当日の進行を補佐したほか、同市浜益区にお
ける新モニュメントの建設計画では、モニュメントのデザインを提案し、地域の青年部との
意見交換を交えつつ除幕式の段取りを決め司会を務めるなど、地域の活性化に向けての石狩
市との協同作業に積極的に携わってきた。
2008 年 7 月現在、石狩市内の菓子店 3 店舗との共同で浜益区に建設された新モニュメント
にちなんだスイーツ開発にあたっており、これは学生がアイデアを提供しつつ試作をくり返
し、すでに 4 種類の菓子が販売されるに至っている。
こうした石狩市との地域連携に関わる諸々の活動は、学生たちにとっては実地に地域生活
への理解を深めることができると共に、また地域に少なからず貢献しているという自負心を
高めるものとして有意義である。
b.企業とのコラボレーション
①カナストーリー
地元企業「日本地麦酒工房」が、2005 年 11 月に石狩市を通じワイン研究に携わる本学教
授に新しい発泡酒の開発を提案した。2006 年 3 月にこの企業と本学が共同開発に関する調印
式を行い、学生に開発への参加を呼びかけた。これに応じた食物栄養学科の 4 年生約 30 名が
157
第7章 社会貢献
このプロジェクトに参加し、味、ラベル、ネーミングなどの決定で大きな役割を果たした。
発泡酒のピンク色は、石狩産のシソの果汁で着色し、キリストが結婚式で行ったカナの奇跡
にちなみ「カナストーリー」として 2006 年 12 月に発売され、現在は道内各地の飲食店や酒
販店で販売されている。なお、2008 年 2 月に高島屋新宿店で催された小学館主催「大学は美
味しい!!フェア」に全国 24 大学のひとつとして本学も参加した。
②石狩バーガー
石狩市は、2005 年 10 月に厚田村、浜益村と合併して現在の石狩市となったが、以来特に
観光の振興に力を注いでいる。2007 年 8 月には石狩産の食材を使った新商品開発の依頼が本
学食物栄養学科にあり、本学教授の指導のもとに同学科の学生が石狩バーガーFC、地元飲食
店、石狩市と試作・協議を重ねた。その結果、石狩産の小麦粉・厚田産高級ブランド豚肉、
浜益産タコ、北海道産野菜と食材の全てにおいて石狩産・北海道産にこだわった製品を提案
し、2007 年 12 月 8 日から石狩市内の飲食店や食堂、レストランなどで市内限定販売されて
いる。
この取り組みは北海道が「生産者」と「消費者」が緊密な連携をとりながら、地域にある
資源や人材をできるだけ地域で消費・活用することにより、域内循環を高め、地域の産業・
雇用興しにつなげていこうという「産消協働」の道民運動の実践行動の一つに石狩市は取り
上げている。
これらのプロジェクトは、雑誌はもとより、テレビでは北海道が発する広報番組や他の TV
各局に取り上げられた。これらに学生が参加した意義は、単なる地域住民との交流や個々の
商品に対する支援・アイデアの提供にとどまらず、実際に販売される製品の安全性や品質な
どに対する意識が一層強化されたという点で極めて大きいものがあると考えられる。
c.団体とのコラボレーション
石狩青年会議所が、2008 年 6 月に先のカナストーリー開発に関わった人間生活学部食物栄
養学科所属の教授に、お茶漬け開発プロジェクトへの協力依頼を申し入れた。青年会議所と
本学との正式調印が同年 7 月 11 日に行われ、「いしかり OMOIYARI 茶漬け」開発プロジェク
トが開始された。今回もゼミ生が開発に熱心に取り組み、レシピ原案の作成から十数回の試
食会とその度のレシピの改良、学内関係者をも交えた最終試食会等を経て、9 月 19 日には石
狩商工会議所でプレス発表がなされた。この模様は、新聞、TV 等で報じられ、翌 20∼21 日
には、いしかりサケ祭会場で、一般市民にお披露目された。味噌味のサケと地場産タコや野
菜をふんだんに使った出し汁のお茶漬けは、今後、地元石狩の飲食店でも統一レシピとして
提供される予定である。
d.学生のボランティア活動
2008 年現在、ボランティアのクラブとして認可されているのは 3 つほどであるが、クラブ
ではなくグループとして活動しているものが多い。年 2 回発行の学内広報誌の「広報 藤」
は、ボランティア活動を積極的に取り上げて紹介しているが、2007 年 2 月発行のものでは、
病児保育に関心のあるサークルが、
ペープサートやハンドベルなどを通して病院の小児病棟、
幼稚園、保育園、児童館で活動し、子供・保護者・医師・看護師・学生が楽しみや喜びを共
158
第7章 社会貢献
有し、共感できる場を作りながら、病院からの依頼を受けての活動や、札幌市の子育てサロ
ンへの参加を通じて親子との関わりを学んでいる様子を掲載し、その活動を奨励している。
また、2006 年 1 月号では、青年海外協力隊の一員でニジェールへ栄養士として 2 年間派遣さ
れた卒業生を紹介し、「地域社会の諸問題に取り組むと共に、国際意識を育て、世界の平和
を願い、人類社会の一員としての責任を果たす人材を育成する」という本学の教育目的にか
なった実践例を掲載した。
2007 年度から、学生部が中心となって「ボランティア奨励活動」を推し進め、知的障がい
者通所施設で利用者の食への関心を喚起することを目的に食育活動を実施した食物栄養学科
と保育学科の学生による「ミッフィーエプロンの会」の活動を採択し、表彰した。
3) その他
① 大学図書館の市民への開放は、1992 年に開館した本学の花川館が、2001 年に大学図書館と
公共図書館の相互利用として当時道内初の協定を石狩市民図書館と結び、図書館を開放して
いる。本館と花川館の学外者のこの 2 年間の利用状況は次の表のとおりである。
表 7-1 学外者の図書館利用状況
年 度
2006 年度
2007 年度
利用者数
冊数
利用者数
冊数
一般市民
96 名
336 冊
151 名
362 冊
他大学学生・研究者
92 名
764 冊
135 名
651 冊
なお、一般市民には1度に本館・花川館各 10 冊まで 2 週間の貸出しを行っている。
② 大学の授業を社会人へ開放しているものとしては、社会人入学試験制度があり社会人を正
規の学生として受け入れている。2005 年度 2 名、2006 年度 2 名、2007 年度 4 名、2008 年度
5 名が学部に、また、大学院へは 2005 年度 6 名、2006 年度 4 名、2007 年度 2 名、2008 年度
4 名が入学した。他に科目等履修生制度、聴講生制度を設け社会人の生涯学習の場を提供し
ている。
③ JICA 地域別研修「仏語圏アフリカ乾燥地域村落飲料水管理」コースの研修プログラム
本学はこのプログラムで 2007 年 11 月 5 日から 12 月 21 日までの 47 日間を研修受託期間
として 8 カ国 10 名の研修生を受け入れ、
本学教員がコーディネーターとして参加し運営に協
力し、講師としても支援した。本学で行われた成果報告、アクションプラン発表会では学生
も出席し傍聴したが、茶道部、華道部との交流等もあり非常に意義のある企画であった。
このプログラムは 3 年間継続するもので、2008 年度はアフリカ 6 カ国の 13 名(内女性 4
名)が参加し、10 月 27 日から 12 月 19 日までの日程で JICA と藤女子大学の共同により実施
された。
⑵ 公開講座の開設状況とこれへの市民の参加状況
本学では、公開講座を所掌する委員会の設置を以前文学部で検討した際に、すでに札幌市内
159
第7章 社会貢献
で各種の公開講座ないしはそれに類するものが数多く開催されている現状や学内で開催を義務
的にすることに関して教員の過重負担を危惧する声も聞かれたため、無理のない形で公開講座
の開催は可能な部署に任されてきた。その後、開催する公開講座の数も増えてきたために、2006
年度から実施予定の計画を担当副学長(現在は企画・広報担当課長)に提出し、日時の重複の調
整をし、必要な場合には謝礼、広報ポスターの作成・配布等に伴う支出や人的応援を大学が行っ
ているが、今後は文化行事企画運営委員会が担当することとなった。
文学部では、英語文化学科と日本語・日本文学科が、集中講義のために招聘した講師による
特別講演会を公開している。文学部の大学祭(藤陽祭)では、文化総合学科の専任教員による
公開講演会が毎年開かれ(2006 年度を除く)「日本語・日本文学会」では、教員や学生による
シンポジウム、学生の研究発表などを公開している。
人間生活学部は 2002 年に石狩市に設置された時から学部の特色として地域との共生に目を
向け、石狩市と連携しての公開講座を本学独自の公開講座の他に開催している。2006、2007
年度には石狩市教育委員会と共催で、石狩市内の小学校・中学校教員を対象とした「サマーセ
ミナー」も開催した。
表 7-2 全学で開催された公開講座・講演会(2004 年度∼2007 年度)
年度
2004 年度
(79 名)
2005 年度
2007 年度
(130 名)
5 (501 名)
3 (389 名)
10(2,216 名)
12(2,320 名)
公開講座
2
講演会
4 (1,690 名)
8 (2,100 名)
シンポジウム・研修会
2
2
(90 名)
3
2006 年度
(120 名)
7 (200 名)
5 (210 名)
○2006 年度開催行事
表 7-3 2006 年度アドベントセミナー<クリスマスを迎えるにあたって> (全 3 回)
演
題
イエスの誕生
イエスの十字架と復活
イエスのメッセージ「愛」
講 師
フローレス ヘネロソ (本学学
長)
同 上
同 上
期 日
12 月 2 日(土)
12 月 9 日(土)
12 月 16 日(土)
表 7-4 人間生活学部公開講座
演
題
多様化する子育て支援の実情と課題
遺伝子組み換え食品とその安全性
講 師
柳原真知子 大西由香里
須永 進(本学教授)
金子友紀、村山香
期 日
10 月 8 日(日)
2007 年 1 月 31 日(水)
表 7-5 土曜講座 2006 (全 4 回)
∼図書館情報学課程が、急速に進展する高齢化・情報電子化・格差拡大の社会・団塊世代の大量退
職の 2007 年問題などに対する理解を新たにし、私たちの置かれている状況を見直し、地域社会の持
続する変革に私たち自身が参画する方法を考えるためのきっかけを提供した公開講座∼
講 師
期 日
演
題
団塊世代と地域社会
関沢英彦(博報堂生活総合研 11 月 4 日(土)
究所・エクゼクティブ・フェロ
ー:東京経済大学教授)
病気に対応する高齢者の知恵
後藤昌彦 (本学教授)
11 月 11 日(土)
160
第7章 社会貢献
技能の伝承と人材育成
渡邊恭久(スキルアップセンタ 12 月 2 日(土)
ー空知・会長)
団塊世代が図書館を変える
松下鈞 (本学教授)
12 月 16 日(土)
表 7-6 2006 年度キリスト教文化研究所公開講座 (全 4 回)
演
講 師
題
期 日
アッシジのフランシスコの平和の祈り
木村晶子(本学准教授)
5 月 20 日(土)
アッシジのフランシスコの精神
木村晶子
5 月 27 日(土)
聖人崇敬とその歴史
渡邉浩(本学准教授)
6 月 10 日(土)
教皇と列聖(聖人認定)
渡邉浩
6 月 17 日(土)
表 7-7 2006 年度講演会一覧
演
講 師
題
新入生歓迎講演会
みんなちがって みんないい 『21 世紀
のまなざし 金子みすゞ』
文学部講演会
旧統治領における残留日本語について
Contextualism: cognitive or objective?
期 日
矢崎節夫(金子みすゞ記念館
館長)
4 月 4 日(火)
真田信治(大阪大学大学院教
授)
Marina Sbisa (University of
Trieste)
9 月 8 日(金)
9 月 16 日(土)
人間生活学部講演会
※対人関係構築術
藤井義博(本学教授)
8 月 2 日(水)
※行動科学を用いた食育
東川剋美(本学教授)
8 月 2 日(水)
中村秀一(厚生労働省社会・
援護局長)
10 月 1日(日)
藤女子大学QOL研究所講演会
こう変る、介護保険−介護保険制度改革
を担当して―
キリスト教文化研究所講演会
かくれキリシタンの祈り
皆川達夫(立教大学名誉教
授)
キリスト教文化研究所 06 X'mas concert
大野敦子(オルガニスト)
教会音楽の伝統と今
田野城寿男(サキソフォニスト)
オルガンとサックスの融合
7 月 9 日(日)
11 月 17 日(金)
<ジェンダー>をめぐる連続公開講演会
フェミニズムと植民地主義∼
岡真理(京都大学助教授)
12 月 2 日(土)
ハーレム、ブルカ、女子割礼
生活習慣病における性差
天野恵子(千葉県衛生研究所 12 月 9 日(土)
長)
上表の※は、石狩市教育委員会と共催で、石狩市内の小学校・中学校教員が対象の「サマーセミナー」として開催
表 7-8 2006 年度 QOL(旧福祉)研究所共催のもの
演
講 師
題
臨床パストラルケア研修センター北海道ブロックとの共催講演会
愛・・・命(いのち)の輝き
野村祐之(青山学院大・非常
勤講師)
期 日
6 月 3 日(土)
臨床パストラルケア研修センター北海道ブロックとの共催研修会
スピリチュアル札幌1日研修会
中島保壽(臨床パストラルケア 6 月 24(土)∼25 日(日)
教育研修センター講師)
スピリチュアル札幌1日研修会
W.キッペス(臨床パストラルケ 10 月 28(土)∼29 日(日)
ア教育研修センター所長)
161
第7章 社会貢献
自閉症援助技術研究会との共催公開講座
発達障がいを持つ方たちの支援ネットワ 田中康雄(北海道大学大学院 6 月 16 日(金)
ークについて∼医療的な視点も含めて
教授)
自閉症児者へのコミュニケーション支援 諏訪利明(海老名市立わかば 8 月 16 日(水)
∼バリアフリーを考える
園園長)
こんなことも?これまた急に止まれない
ニキ・リンコー(翻訳家)
12 月 2 日(土)
発達障がいを持つ方たちの支援ネットワ 田中康雄(北海道大学大学院 2007 年 2 月 23 日(金)
ークについて∼さまざまな状況を視点に入れて 教授)
○2007 年度開催行事
表 7-9 2007 年度アドベントセミナー<クリスマスを迎えるにあたって> (全 2 回)
演
題
宗教」の意味及び目的をめぐって
キリスト教におけるクリスマスの意味
講 師
フローレス ヘネロソ(本学学
長)
同 上
期 日
12 月 8 日(土)
12 月 15 日(土)
表 7-10 土曜講座 2007 (全 4 回)
∼「『超・図書館革命』−21 世紀の図書館とパラダイムシフト−」シリーズで図書館情報学課程が、
前年に続き企画した公開講座∼
講 師
期 日
演
題
超・目録革命…図書館目録は不要になる? 高野明彦 (国立情報学研究
9 月 29 日(土)
所教授)
超・目録革命…Google ブック検索の衝撃
村上憲郎 (Google 日本・代表 10 月 27 日( (土)
取締役)
超・学術情報革命…学術コミュニケーション 加徳健三 (北海道大学附属 11 月 24 日( (土)
が変わる?
図書館・情報サービス課長)
超・図書館目録利用術…利用者が変わる? 下田尊久 (本学准教授)
12 月 8 日 (土)
表 7-11 2007 年度キリスト教文化研究所公開講座 (全 4 回)
講 師
演
題
あなたの欲することをひとに行いなさい 桝潟 弘市(本学教授)
−その1
あなたの欲することをひとに行いなさい 桝潟 弘市
−その2
期 日
5 月 19 日(土)
5 月 26 日(土)
ヴィトゲンシュタインと宗教−その1
杉内 峰彦(本学准教授)
6 月 16 日(土)
ヴィトゲンシュタインと宗教−その2
杉内 峰彦
6 月 23 日(土)
高木慶子(元英知大学教授)
4 月 3 日(火)
表 7-12 2007 年度講演会一覧
新入生歓迎講演会
女性としての誇りと生き方
藤女子大学 QOL 研究所公開講演会
生命といのちを支える
『危機』から『生きる』
柏木哲夫(金城学院大学学長) 7 月 6 日(金)
E.シュハート(ハノーヴァ大学 10 月 27 日(土)
教授)
講演会「アフリカの水・女性・子ども」(日本ユニセフ協会北海道支部共催)
途上国の水と貧困を巡る諸問題と国際協 庵原宏義(元エチオピア大
7 月 16 日(月)
力
使)
モーリタニアにおける水の諸問題
Mohamed Mahmoud ould Jaafa
(駐日モーリタニア大使)
162
第7章 社会貢献
文学部講演会
いま外国文学をなぜ、どのように学ぶの
か−文学を学ぶ意義と方法−アメリカ文
学を例に考える
溌剌と、そして悲しく−『非常時』を生きた
女性作家たち
上西哲雄(東京工業大学教
授)
9 月 12 日(水)
池田浩士(京都精華大学教
授)
9 月 13 日(水)
絵巻物に見る日本の中世文化
早島有毅(本学教授)
人間生活学部講演会
※世界に開かれた心
箱山富美子(本学教授)
10 月 21 日(土)
8 月 9 日(木)
キリスト教文化研究所講演会
Mulier fortis 細川ガラシアの戯曲
カリツキ・新山富美子(ザルツブ 9 月 25 日(月)
ルグ大学音楽史研究室研究員)
キリスト教文化研究所 07 X'mas concert
教会音楽の伝統と今―パートⅡ
大野 敦子 (オルガニスト)
12 月 8 日(土)
田野城寿男(サキソフォニスト)
<ジェンダー>をめぐる連続公開講演会と映画会
竹村和子(お茶の水女子大大 2008 年 1 月 23 日(水)
映画とジェンダー/セクシュアリティ
学院教授)
−クィアに観る
<ジェンダー> 長編ドキュメンタリー映画
10 月 20 日(土)、21 日(日)
ひめゆり
上表の※は、石狩市教育委員会と共催で、石狩市内の小学校・中学校教員が対象の「サマーセミナー」として開催
表 7-13 2007 年度 QOL 研究所共催のもの
臨床パストラルケア研修センター北海道ブロックとの共催研修会
W.キッペス(臨床パストラルケ
スピリチュアル札幌1日研修会
ア教育研修センター所長)
W.キッペス(臨床パストラルケ
スピリチュアル札幌1日研修会
ア教育研修センター所長)
4 月 21(土)∼22 日(日)
6 月 23(土)∼24 日(日)
自閉症援助技術研究会との共催公開講座
公開シンポジウム「父親の役割を考える」 北海道高機能広汎性発達障 8 月 25 日(土)
害児親の会代表、他2名
加藤潔(札幌市自閉症・発達 10 月 24 日(水)
ノースカロライナ視察研修報告
障がい支援センター相談課
長)
発達障がいがある方たちへの支援事情
田中康雄(北海道大学大学院 2008 年 2 月 22 日(金)
教授)
⑶ 教育研究の成果の社会への還元状況
市民への還元としては、地方自治体・行政機関からの依頼による各種委員への就任や講師と
して社会の要請に応えている。詳しくは、⑷「国や地方自治体等の政策形成への寄与の状況」
で言及する。
保育学科においては、前述のとおり「子育て支援」のプログラムを毎週土曜日に授業で展開
しているが、学生は子育て支援の基本的な知識や技術を体得するのに加えて、子どもだけでは
なく親とのふれあいを通して実践的な生きた知識と方法を体得しているが、2007 年度に参加し
た家族数は 356 組、参加者(親子)数は述べ 895 名に達している。
また、食物栄養学科教員は、7 年以上に亘ってコンサドーレ U-15 チームを対象に実態調査に
基づいた科学的な栄養支援を実施してきている。ここで支援しているチームは中学生を対象と
するサッカーチームで、50 名を越えるメンバーからなっており、北海道においてはいつも全国
163
第7章 社会貢献
大会に出場しているトップクラスの実力を持っている。それだけに年間を通して練習量や試合
数が多く、食事・栄養管理は非常に重要といえる。
そこでチームの指導者と父母たちと協議し、理解を得て、個人別に食事・栄養摂取状況に関
する食事調査と身体活動調査を同時に実施し、その結果を比較して身体活動量に見合った分だ
け食事から栄養が摂れているかの栄養評価を行った上で、その食事・栄養摂取状況に関する情
報を個人別に返却し、各家庭で食事改善に活用してもらうものである。
こうした科学的根拠に基づいたきめ細かな栄養支援を継続的に行う活動は他の大学ではほと
んどなく、今後とも栄養支援を続ける予定である。
⑷ 国や地方自治体等の政策形成への寄与の状況
地方自治体・行政機関からの依頼による各種委員への就任や講師としては、2006 年度は 23
名の教員が 43 の委員会等の委員として、
職員は 2 名が 3 つの委員会の委員として貢献した。
2007
年度は、24 名の教員が 55 の委員会委員として、2 名の職員が 2 つの委員会の委員になった。委
員会の種類は北海道公安委員会から石狩市総合計画策定審議会委員、札幌市環境活動推進会議
委員など福祉・教育・保育・食育・産業界等の広い分野で各種審議会委員・運営委員、研修会
講師などとしてその経験・学識を買われ活躍している。
⑸ 大学の施設・設備の社会への開放や社会との共同利用の状況とその有効性
校地・校舎等の学外開放については、「藤学園講堂運営規程」、「藤女子大学校舎等使用規
程」によって、要請ある団体等の利用に供している。利用者は主に教職員・卒業生など大学・
学園関係者が関与する団体等のほか、カトリック関係の学校・機関、公共団体、NPO 法人、企
業などで、本学が適当と認めた先としている。
北 16 条キャンパスの講堂は収容人数 2,000 人規模の施設であり、
札幌市北区の成人式や講演
会など比較的大規模な利用が多く、また同キャンパスの第 2 期新館の 7 階大教室も 300 人ほど
の収容力があるため学会等の講演・シンポジウム等に利用されている。
花川キャンパスは校地が広くテニスコートなど屋外施設の利用が多く、また同地にあるセミ
ナーハウスは他大学や高校・幼稚園などの宿泊研修をはじめ福祉関係団体等の研修などに広く
利用されている。
施設・設備の利用に際して本学関係者と関与する団体・機関については原則無料とし、その
他の団体等については暖房料等の実費程度の料金を徴している。
このような施設開放のほか大学図書館についても学外者に開放しており、詳細は本章表 7-1
及び「第 11 章 図書・電子媒体等」に記載している。
【点検・評価】
学生のボランティア活動は、学生が地域社会と接触し、その結果が社会的に評価されるとい
う点で参加者は良い刺激を受け、座学では得られない教育的成果を得ている。しかし、活動の
継続性などに限界がある。その1例は、環境問題に関心のある「ひまわり」は少数の学生で始
まり、地球環境問題についての勉強会などの活動が認められてクラブとして認可され、他大学
164
第7章 社会貢献
との交流、ごみ減量化の取り組み、大学祭で来場者に協力を求めて生ごみは堆肥に、その他は
徹底した分別を行い、その活動を発表し、市内の子供たちの環境会議の指導もするようになっ
た。そして一連の活動が認められて石狩市から「地域イベントごみ減量大賞」を受賞するなど
立派な実践を果たしてきたが、現在はクラブとして存在していない。本学ではボランティア活
動はボランティアの意味のとおりに学生が必要を感じて自発的に取り組む学生主導のものであ
ると考え、新たに生まれるものも、消えるものも自然の成り行きのままにするという姿勢をと
っている。
入学式の終了後、入学式行事の第 2 部として本学の理念・目的・教育目標を理解してもらう
一助として学生と保護者を対象に行う新入生歓迎の講演会をはじめ、キリスト教文化研究所及
び QOL 研究所主催による公開講座や講演会、
クリスマスを迎える時期のアドベントセミナーは、
キリスト教に基盤を置く本学にふさわしい企画として定着している点は評価できる。
また、新たに図書館情報学課程が特色のあるテーマで公開講座を継続して開催しており、企画
的にも明確な趣旨のもと 2008 年度も「文字・活字文化と図書館」のテーマで 4 人の講師による
公開講座が行われ公開講座全体に一層の幅が出てきたといえる。
学部主体の<ジェンダー>をめぐる公開講演会や集中講義の講師による公開の講演会は、社会
に大学の普段の実態を知ってもらうためにも有効であり、多彩な変化に富んだ講演会が企画さ
れるようになった。いろいろな部署が主催者となり、特色のあるテーマで質的に高く、リピー
ターも多いことはこれらの催し物が効果的に開催されている証しと思われ、今後ともこの方針
で進めていく考えである。
文化行事による市民への還元に関して、札幌、旭川、北見の姉妹高校に本学教員の教育研究
活動をまとめた報告書『藤女子大学 教員の教育・研究活動』を送り、それぞれの地で計画する
講演会などに協力する体制が用意でき、2006、2007 年度に旭川に講師を派遣することができた。
保育学科の「子育て支援」のプログラムに多くの登録者がある事実は、子育て中の親とその
子どもたちが家庭以外の場でのコミュニケーションと情報を求めている表れであり、現代日本
の少子化の流れの中で子育てを支援する意味でも、また、大学と地域を結び付ける点でも大き
な貢献を果たしている。
地方自治体等の政策形成については、人間生活学部の特性上、生活をはじめ環境(自然環境、
都市計画等)、福祉、食品、バイオ、子ども等、多様な分野の研究者を抱えており、地元石狩
市をはじめ、札幌市、北海道、遠くは稚内市(クサンル川)にまで及ぶ多くの地方自治体等の
政策形成に寄与していることは十分評価されてよい。関わった人数及び件数を示すと、2006 年
度報告では 13 名 19 件、2007 年度報告では 12 名 21 件であった。大学としては、この方面での
教員の寄与をさらに推進するためにも、教育研究環境の改善に努めなければならない。
【将来の改善・改革に向けた方策】
各種の公開講座・講演会が開催されているが、学生の出席が思わしくない。幅広い見識を持
った女性を育成する本学の方針からも貴重な機会を失している。大学全体内のポスター掲示の
他に一層活発な広報を担当部署で検討している。
地方自治体等の政策形成については、大学として、教員の学務に支障のない範囲で協力する
165
第7章 社会貢献
ことは大学の持つ社会的責務の一つと考えており、できるだけ便宜を図るように今後とも努め
たい。
166
第8章 教員組織(文学部)
第8章 教員組織
第1節 学部の教員組織
【到達目標】
1.教員の採用、任免、昇格に対する基準・手続きが明確に規定され運用されること。
2.専任教員の教育研究活動、学内運営参画状況、社会貢献など総合的に評価することによっ
て、教員組織の活性化を図る。
3.各学科、教育課程の運営が円滑に行われるような教員編成について継続的に検討する。
4.女子大学としての本学の教育上の必要に鑑み、専任教員における女性教員比率を高める。
第1項 文学部
【現状の説明】
1.教員組織
⑴ 学部・学科等の理念・目的並びに教育課程の種類・性格、学生数との関係における当該学
部の教員組織の適切性
文学部の専任教員は、学部の学生定員が合計 960 名(各学科 320 名)であるのに対して、大
学基礎データ(表 19-2)に示すように、教授 24 名、准教授 5 名、講師 1 名の合計 30 名である。
この数は、大学設置基準上必要な教員数を上回るものであるが、本学の特色である小人数教育
を核とし、きめ細かな対応で学生に十分な学修の機会を提供するため、専任教員に加えて嘱託
教員 8 名を配置している。さらに、学部がカバーしている学問領域の広さを考慮し、専任教員、
特任教員及び嘱託教員が担当できない科目については、人間生活学部からの兼担教員 2 名と学
外からの兼任教員 121 名を非常勤講師として委嘱している。
各学科の教員組織の現状は次のとおりである。
英語文化学科においては、専任教員 10 名と嘱託教員 2 名が配置されている。文学系、英語
学系、コミュニケーション系、総合系の各系間においてバランスが取れていない面もあるが、
教員相互で他の系についても補完し合っている。日本語・日本文学科においては、専任教員 10
名、嘱託教員 1 名が、古代から現代までの時代的領域と日本語学・日本文学・漢文学等の専門
分野の違いを考慮しつつ配置されている。文化総合学科では、4 系列に及ぶ広範な授業科目を
カバーするために専任教員 10 名と嘱託教員 3 名が配置されているが、
この学科の専門科目には
学部共通科目的な性格を持つ科目も多く含まれており、教員の担当領域は多岐に亘っている。3
つの学科に加えて、日本語教員養成課程には 1 名の嘱託教員がおり、図書館情報学課程にも 1
名の嘱託教員をおいている。
文学部の在籍学生数は、大学基礎データ(表 14)に示すとおり、3 学科合計 1,158 名であり、
専任教員 1 人当たりの在籍学生数は 38.6 名となっている。なお、嘱託教員を含めた常勤の教員
1 人当たりの在籍学生数は 30.5 名である。
167
第8章 教員組織(文学部)
⑵ 大学設置基準第 12 条との関係における専任教員の位置づけの適切性
文学部専任教員 30 名は、専ら本学の教育研究及び管理運営に従事しており、大学設置基準第
12 条に定める専任教員としての位置づけは適切である。なお、勤務時間外に限り、本学以外の
大学やカルチャーセンター等における非常勤講師の応嘱を週 3 コマ以内の条件付きで認めてい
るが、その教員の数は 11 名である。学科の内訳は、英語文化学科 4 名、日本語・日本文学科 5
名、文化総合学科 2 名であり、応嘱している科目数は、11 名につき 27 科目である。
⑶ 主要な授業科目への専任教員の配置状況
2008 年度の文学部専任教員の担当授業科目は、大学基礎データ(表 20)のとおりである。
文学部では、本学の理念・目的を直接に反映する宗教科目(必修)である「キリスト教学」
と「聖書学」を、本学園理事長(本学前学長)と本学部の専任教員が担当している。また、各
学科の必修科目をはじめとした主要な授業科目については、専任教員が担当することを原則と
している。
英語文化学科においては、学科基礎科目に区分される「文法・作文」「The Art of Writing」
「Oral English I・Ⅱ・Ⅲ」「Reading I・Ⅱ」「Voice & Articulation」「Listening」や基
礎演習科目である「文学基礎演習 A∼E」「英語学基礎演習 A・B」「言語学基礎演習」「コミュ
ニケーション基礎演習」「地域文化基礎演習 A・B」の約 77%を専任教員が担当している。3、4
年次に開設されている演習科目の専任担当率は約 71%であり、卒業関連科目の「卒業研究演習」
「卒業論文」「卒業課題研究」は 100%である。
日本語・日本文学科においては、それぞれの時代的領域や専門分野にかかる「講義Ⅰ」「講
義Ⅱ」「演習Ⅰ」「演習Ⅱ」「卒業研究ゼミ」「卒業研究」の 5 種類の科目が、本学科の理念・
目的の実現のために設けられた主要な授業科目と位置づけられる。これらの科目を担当する専
任教員の担当率は、それぞれ 77%、71%、100%、100%、100%、100%である。
文化総合学科においては、「異文化コミュニケーション」「社会と制度」「歴史」「思想と
宗教」の 4 つの系列を網羅する「基礎演習」の科目(1 年次開設)と「演習」の科目(2、3 年
次開設)の全てを専任教員が担当している。また、「卒業研究演習」の科目と「卒業研究」に
ついては、専任教員全員が分担して指導にあたっている。
⑷ 教員組織の年齢構成の適切性
大学教育においては、学生と教員の間の人間的な交流はもとより、世代の違いも含めて多様
化する社会観、価値観に即して、その全域を網羅しなければならない。本学は、建学の理念の
達成のため、キリスト教的世界観や人間観を土台とした教育を提供し、教員と学生の人格的触
れ合いの中で、学生の豊かな人格を形成していくことを目指しているとともに、社会を構成す
る世代の多様性に対しても的確に応ずることのできる素地を育むことを目指している。したが
って、各年齢層の教員を適切に配置することは、本学・学部・学科の理念・目的・教育目標を
具現化するための重要な要件のひとつである。なお、本学の教員の定年は、1999 年 3 月 31 日
に在籍していた教員については 70 歳、1999 年 4 月 1 日以降に採用された教員については 65 歳
となっている。
本学の専任教員の年齢構成は、大学基礎データ(表 21)のとおりである。文学部の専任教員
30 名の年齢構成は、40 歳以下が 6.7%、41∼50 歳が 36.7%、51∼60 歳が 30.0%、61 歳以上が
168
第8章 教員組織(文学部)
26.7%である。
英語文化学科では、10 名の専任教員のうち、40 代が 1 名、50 代が 4 名、60 代が 5 名である。
日本語・日本文学科 10 名の専任教員のうち、30 代が 1 名、40 代が 6 名、50 代が 3 名である。
40 代教員がもっとも多いが、公募の際には年齢構成にも配慮しており、極端な偏りはないとい
える。文化総合学科の専任教員 10 名のうち、40 代が 4 名、50 代が 2 名、60 代が 4 名である。
2005 年点検・評価において、文学部では一般教員を公募するに当たって 40 歳以下を目安に
人選をするべきととあるが、
その線に沿って計画的に年齢構成の均質化を図っているといえる。
⑸ 教育課程編成の目的を具体的に実現するための教員間における連絡調整の状況とその妥当性
3 学科とも、少なくとも月に 1 回の学科会議を開き、学科の科目運営の現状について情報や
意見を交換し、必要な対策を立て、カリキュラム運営の円滑化と適正化に努めている。同時に、
今後の検討課題を洗い出し、学科カリキュラムの改善に役立てている。
英語文化学科では、学科基礎科目の運営については、Director を1名、Coordinator を 2 名
(1 年次科目担当と 2 年次科目担当)配置している。1、2 年次ともそれぞれ 4 名の科目担当教
員が定期的に会合を開いて、授業展開上の様々な問題点を解決し、またテキスト選択など指導
方法の検討も行われている。
日本語・日本文学科では、年 1 回の「日本語・日本文学会」での教員の研究発表、年 2 回の
学会会報の刊行、卒論発表会、シラバスなどを通じて、直接、間接に学科の科目運営の現状の
把握、他の教員の研究や指導を見る場があり、それが最終的にはカリキュラムの運営と編成に
役立っている。
文化総合学科では、歴史系列において専任教員が互いの授業を参観することで、教員間の連
携や授業の改善に努めている。また、卒業論文の仮題目・本題目の提出時には、月例の学科会
議とは別に、全担当者が検討会を開き、題目の適切性についての検討や担当する学生数の調整
などを行っている。
⑹ 教員組織における女性教員の占める割合
本学全体での女性教員は、次表(表 8-1)のとおり、教授 10 名、准教授 5 名、講師 7 名の合計
22 名で、全体に占める比率は 33.8%であり、嘱託教員 11 名中 6 名の女性教員を加えると、全
体の女性教員の割合は 36.8%、助手を含めた女性の比率は 41.5%となる。
文学部については、専任教員 30 名のうち女性教員は 4 名であり、嘱託教員を含めても総数
38 名のうち女性教員は 8 名となっている。文学部の学科等別女性教員数は、英語文化学科には
専任教員 1 名、日本語・日本文学科には専任教員 2 名、嘱託教員 1 名、文化総合学科には専任
教員 1 名、嘱託教員 2 名、日本語教員養成課程には嘱託教員 1 名となっている。
169
第8章 教員組織(文学部)
表 8-1 年齢構成別の専任教員(嘱託教員を含む)数と女性教員数の比較(全学)
年 齢
66∼70
教 授
准教授
嘱託教員
教 授
講 師
1
講 師
7
助 手
計
8
61∼65
11 (4)
1
56∼60
13 (3)
2 (1)
15 ( 4)
51∼55
6 (1)
2 (2)
8 ( 3)
46∼50
4 (1)
2
41∼45
5 (1)
2 (1)
2 (2)
3 (1)
2 (2)
2 (1)
31∼35
1 (1)
1 (1)
2 (2)
4 ( 4)
26∼30
2 (2)
1 (1)
4 (4)
7 ( 7)
6 (6)
82 (34)
36∼40
計
46 (10)
12 (5)
5 (3)
17 ( 7)
1
7 ( 1)
9 ( 4)
7 (7)
11 (6)
7 ( 4)
※( )内は女性の教
2.教育研究支援職員
⑴ 実験・実習を伴う教育、外国語教育、情報処理関連教育等を実施するための人的補助体制
の整備状況と人員配置の適切性
文学部においては、各学科に各1名の教務助手を置いているが、学科及び学科カリキュラムの
運営に関わる補助的職務を担っており、実験・実習、外国語教育、情報処理関連の教育の補助
には直接に携わっていない。
⑵ 教員と教育研究支援職員との間の連携・協力関係の適切性
文学部 3 学科には、それぞれ 1 名の教務助手が配置されている。演習用レジュメの作成、履
修上の相談など、学科運営における重要なスタッフとして、教員と学生との間で密な連絡に携
わっている。
3.教員の募集・任免・昇格に対する基準・手続
⑴ 教員の募集・任免・昇格に関する基準・手続の内容とその運用の適切性
本学の専任教員の任用は、
「藤女子大学教員人事規程」に則って行われ、専任教員の採用は、
次のような手続きで進められる。まず、専任教員を採用しようとする学科または担当部署は、
学長、副学長、当該学部の学部長及び学科主任をもって構成される「定数委員会」に諮り、出
席者の 4 分の 3 以上の賛成を得たのちに、学部ごとに構成等が定められる「選考委員会」を設
ける。
文学部では、学科が人事を発議する場合、当該学科の全ての専任教員(嘱託教員は除く)に
加え、他の 2 学科の専任教員各 2 名で構成されている。「選考委員会」は、適任者の選考を行
い、それを当該学部の教授をもって構成される「人事委員会」に提案する。「人事委員会」で
は、
提案された適任者について資格審査が行われ、
出席者の 4 分の 3 以上の賛成が得られると、
その採用人事が当該学部の教授会の協議に付される。教授会では、適任者採用の可否が投票に
よって決定されるが、可決には出席者の 3 分の 2 以上の賛成が必要である。
専任教員の昇任は、当該学科の学科主任の発議により、当該学科所属の当該者の上位職者を
170
第8章 教員組織(文学部)
もって構成される「昇任審査委員会」において審査される。「昇任審査委員会」は、構成員の
4 分の 3 以上の賛成が得られた場合、当該者の昇任を当該学部の教授をもって構成される「人
事委員会」に提案する。「人事委員会」では、昇任の適否の判定が行われ、出席者の 4 分の 3
以上の賛成が得られると、その昇任人事が当該学部の教授会の協議に付される。当該者の昇任
には、最終的に教授会出席者の 3 分の 2 以上の賛成が必要である。
なお、専任教員の採用・昇任人事の透明性と公正性を確保するため、「教員人事規程」に基
づいて「文学部教員選考基準内規」(2003 年 10 月文学部教授会承認)が定められ、選考に際
しての評価基準等が明示されている。
⑵ 任期制等を含む、教員の適切な流動化を促進させるための措置の導入状況
現在、本学は、他の国立大学等が採用しているような流動化促進のための任期制は導入して
いない。ただ、この数年両学部とも教育課程を含む改革案の策定に取り組んでおり、それとの
関連で任期付教員の採用が若干名実施された経緯がある。
4.教育研究活動の評価
⑴ 教員の教育研究活動についての評価方法とその有効性
本学における教員の教育研究活動については毎年教員から自己申告による報告書の提出を求
め、『教員の教育・研究活動』としてホームページ上で公表してきた他に、製本して外部にも
公表してきた。しかし、それを評価する仕組みは、全学的には導入されていない。
⑵ 教員選考基準における教育研究能力・実績への配慮の適切性
文学部では、教員の選考は、2003 年に制定した「文学部教員選考基準内規」に基づいて行われ
ている。この内規は、学則に謳う本学の「カトリック精神に基づき、教育基本法と学校教育法
の定めるところに従い、高等学校教育の基礎の上に、広く知識を授けるとともに、深く専門の
学芸を研究教授し、高い徳性と知性とを具備する指導的女性を育成する」目的のために相応し
い「研究上の能力及び業績」並びに「教育上の能力及び業績」を持った人物の選考を重視して
行われている。主に、「研究上の能力及び業績」と「教育上の能力及び業績」の両面から、適
任者を選考している。
【点検・評価】
1.教員組織
文学部の教員組織は、学部・学科等の理念・目的並びに教育課程や学生数との関係において
はおおむね適切と評価することができる。2000 年度改組において、英語文化学科では、従来の
英米文学、英語学の分野に加え、コミュニケーション系及び地域研究を柱とした総合研究系を
設け、他の系の専任教員や嘱託教員、非常勤講師の協力によって対応している。同様、2000 年
度に開設された文化総合学科においても、人文社会の領域を幅広くカバーするために多様な専
門分野の専任教員を配置し、
系列によって、
卒論指導を含めた個別的な教育指導を行っている。
文学部の教員配置については、英語文化学科では 4 つの系(文学、英語学、コミュニケーシ
171
第8章 教員組織(文学部)
ョン、総合研究)の間にみられる教員バランスを是正することが課題となる。日本語・日本文
学科では古代から現代までの時代的網羅を維持すること、文化総合学科では広範な 4 系列を専
任教員によってカバーすることが、課題として挙げられる。今後とも、主要な授業科目につい
ては専任教員が担当できるよう、計画的に専任教員を任用していくことが必要である。また、
学修の活性化のための学部・学科カリキュラムの見直しや運営上の工夫についても、各学科に
おいて、あるいは学科を横断する形で、継続的に検討していく。
教員の年齢構成については、本学の理念・目的を踏まえた優れた教育実践のための本質的な
要件ではないが、教員と学生の人格的触れ合いという面においては、専任教員が特定の年齢層
に集中するよりも、幅広い年齢層に均等に配置されている方が、より効果的であろう。また、
学科としての教育・指導の継続性や発展性を確保する上でも、教員の年齢構成を考慮した採用
人事を行っていくことが望ましく、その点で一般的に教員の公募に当っては、文学部では 40
歳以下を目安として教員の人選を行い、計画的に年齢構成の均等化に努める必要がある。
教育課程編成の目的を具体的に実現するために 3 学科とも、主として学科会議において教員
間の連絡調整を密に行っているほか、学科が運営する各種プログラムの担当者の間の連絡調整
も活発に行われている。学科を跨ぐ形の教員間の連絡調整については、文学部所属の教務部委
員を中心として、遺漏なくおこなうように努めている。今後の課題としては、学科横断的な学
修を志向する学生が増えてきており、こうした学生の動向に個別に対応できる文学部全体とし
ての連絡調整の機能を充実させる必要がある。
専任教員の中で女性教員の占める割合について、文学部においては 2 割にも満たず、きわめ
て低いといわざるをえない。学生の生活指導や相談の態勢を組むに当たり、あるいはハラスメ
ント問題等に対応する態勢を組むに当たっても、
女性教員の数が恒常的に不足していることは、
不備を生じさせる要因となっている。今後、教員の新規採用の際に応募者の業績等がほぼ対等
である場合には、積極的に女性を採用するように努めるなど専任教員の中で女性教員の占める
割合を高めていく必要がある。
2.教育研究支援職員
文学部では、
教育研究支援職員である教務助手と教員との間の連携は適切に維持されており、
両者は緊密に協力しながら、学科の教育活動や学生指導を円滑に実施している。しかし、各教
育課程の内容や運営のあり方がさらに複雑化していく傾向にあり、これに応じて教務助手が担
当する業務も増大することが予想される。こうした事態に対応するために、教務助手の位置づ
け、業務内容の整理・明確化を進めていく必要がある。
また、文学部では外国語教育の充実に向けて検討を進めているが、外国語カリキュラムの運
営については専門の委員会を設置して、委員会がこれに当っている。さらに情報処理関連教育
についても、これを特化するカリキュラムの構成にはなっていないため、見直しを進めている
ところである。そうした中で、今後の人的補助体制の整備についても、必要に応じて検討する
ことになる。
3.教員の募集・任免・昇格に対する基準・手続
文学部の専任教員の採用・昇任人事は、「教員人事規程」に則り、公正かつ適正に運用され
ており、また、選考・審査に際しての細目が「文学部教員選考基準内規」で明示され、これに
172
第8章 教員組織(文学部)
沿って運用されていると評価できる。
文学部では、専任教員の採用人事の際、「選考委員会」の構成員として発議する学科以外の
2 学科の専任教員各 2 名が加わっているが、このことは人事の透明性、公正性を確保するため
に有効であるのみならず、選考の段階から学部全体として責任をもって人事に関わる体制を作
り上げているという意味で、評価できる。今後、3 学科によって構成される文学部カリキュラ
ムとしての体系性を検証・確保していく中で、どの学科が発議する人事も、文学部カリキュラ
ムの中で適正に位置づけられていかなければならない。
専任教員の採用・昇任人事に関する基準・手続きの内容とその運用については、現時点で大
きな変更の必要はないと考えるが、専任教員の採用・昇任人事は大学教育の質を決定づける重
要な事柄であり、今後とも透明性・公平性を第一義として、その内容・運用について考えてい
きたい。
4.教育研究活動の評価
教育研究活動についてはこれまで教員の自主性を重んじてきたものの、『教員の教育・研究
活動』の発行を重ねるうち、過去数年にわたって研究成果を公表していない教員の存在もおの
ずと明らかになった。2007 年度の大学自己点検・評価委員会では、教員の教育研究業績の評価
の必要性について協議し、その実施に関する検討を行った。評価項目としては「教育活動」「研
究活動」「社会貢献」「学内運営に参加の程度」を設けて、それぞれに関して点数化を図り、客
観的な評価を下すことについて意見交換を行った。また各項目において評価の高い教員と低い
教員の間に、何らかの差を設けることの必要性についても検討した。しかし、先行事例等を参
照してはみたが、専門性の異なる教員の教育研究活動について、同一の基準によってこれを数
値化するための適切な方法を、現段階では確立できていない。
客観性はさておき、少なくとも公開性が担保される評価としては、研究活動に関しては、専
門領域ごとのピアレビューがあり、教育活動に関しては、科目ごとに要件を設定し、その充足
度を見るといった科目別評価がある。ただ、研究評価と教育評価のバランスをどうとるのかと
いう点については議論の余地があり、また近年特に重視されてきている学務や社会貢献にどれ
ほどのウェイトをおいて評価するのかという点も、議論のあるところである。こうした課題に
ついての意識を広く教員間に喚起しながら、大学自己点検・評価委員会を中心として、検討を
継続していく。
大学自己点検・評価委員会は、教育研究の活性化に対する大学としての基本方針を踏まえ、
さらに将来の業績評価にも活用できるようにとの考えに立って、2008 年度の『教員の教育・研
究活動』の記述に際しては各自が十分な課題意識をもって臨むようにという要請を、全教員に
対して行った。さらに、研究に関する項目には、「研究目的」、「進捗状況」の項目を新たに設
ける等の改善を行った。
教員選考の際の教育研究活動の評価については、
「教員人事規程」の「第5章 教員選考基準」
の中で、教授の資格、准教授の資格、講師の資格、助手の資格がそれぞれ定められている。主
な資格条件としては、研究上の業績、教育歴、特殊な専攻分野に関する優れた知識等を挙げて
いる。文学部は、「研究上の能力及び業績」として、公刊された著書、学術論文及び報告書の
件数や、研究が継続的に行われているか、成果が活発に発表されているか、全国レベル・国際レ
ベルの学会誌・学術誌に発表された論文があるか否かを重視しており、これに加えて、採用応募
173
第8章 教員組織(文学部)
者には各自の教育実践における成果を自己申告する「教育上の実績及び教育実践の自己点検・
評価ならびに職務上の実績」の提出を求めている。また、「文学部教員選考基準内規」の趣旨
に沿って、
社会で活躍する学識経験者等に教育の機会を設けることも選考の視野に入れており、
現段階での取り扱いについては、特に問題はないと考える。
【将来の改善・改革に向けた方策】
文学部では、卒業研究はもとより演習科目などにおいて、時間割の外で行う個別的な教育指
導の必要性が高まっていく中で、総じて、専任教員の負担は増大する傾向にある。専任教員の
大幅な増員がむずかしい状況においては、2010 年度の開設を予定している学科横断的なコー
ス・プログラム等を通して、
学生の多様化する知的関心に柔軟に対応できる教員配置を工夫する
とともに、学際的な分野に対する各教員の対応能力をさらに向上させていく。
本学部の専任教員は、大学設置基準第 12 条を遵守しているが、他大学や他の教育機関への出
講とは別に、本学の学部を跨いで授業を担当するケースが増える傾向にあるため、これらの場
合の人事を扱うためのルール作りなどについて検討する必要がある。
専任教員の大幅な増員が難しい状況においては、カリキュラムにおけるそれぞれの授業科目
の位置づけを明確にした上で、専任教員の適切な配置を考えていく必要がある。例えば 2010
年度の実施に向けて検討中の文学部カリキュラム案では、学科横断的なコース・プログラムが
複数導入されることになるが、それらのプログラムを構成する科目の大半は、すでに学科カリ
キュラムに位置づけられている。その意味でいえば、個々の授業科目の位置づけは、学科カリ
キュラムの中でのみ決定されるわけではなく、広く文学部カリキュラムにおける位置づけをも
考慮しなければならない。このように主要科目の位置づけを明確にした上で、最適の教員配置
を考えていく。
教員配置を考える際に年齢構成の問題は副次的ではあるが、全人格的な育成という教育目的
のためには教員の年齢構成は均等化されるべきであり、今後の採用人事においてもしかるべき
配慮を行っていく。
教員間の連絡調整については、文学部が採用するオープン・カリキュラム制度の意図を反映
して、学科横断的な学修を志向する学生が増えている中、こうした状況の変化に適確に対応し
つつ教員間の連絡調整を図っていくために、2008 年度、文学部内に作業部会「ワーキング・グ
ループ」を立ち上げ、活動を継続している。そうした議論の結果として 2010 年度からの実施を
予定している学科横断的なコース・プログラムの維持運営においては、教員間の連絡調整のた
めの更なる方策を検討する必要がある。
教員の募集・任免・昇格に関わる人事は、大学教育の組織的な活性化のための最も重要なフ
ァクターであり、教員選考基準の適切性についてはこれを議論しうる環境を整えつつ、大学教
育をめぐる情勢の変化を敏感に認識し、迅速に対応していくことが極めて重要である。したが
って、人事の基準・手続については、その適性について、あるいはその改正について、継続的
に議論したいと考えている。
教員の教育研究活動に対する評価方法については、【点検・評価】に述べたことを踏まえつ
つ、大学自己点検・評価委員会を中心として、全学的なレベルで検討していく。
174
第8章 教員組織(人間生活学部)
第2項 人間生活学部
【現状の説明】
1.教員組織
⑴ 学部・学科等の理念・目的並びに教育課程の種類・性格、学生数との関係における当該学
部の教員組織の適切性
人間生活学部の専任教員は、学部の学生収容定員が 960 名(各学科 320 名)であるのに対し
て、大学基礎データ(表 19-2)に示すとおり、教授 22 名、准教授 7 名、講師 6 名の合計 35 名
である。これは、大学設置基準上必要な教員数を上回る数であるが、教授 22 名のうち 6 名が特
任教員である。これら合計 35 名の教員が担当できない科目については、文学部からの兼坦教員
5 名と学外からの兼任教員 141 名を非常勤講師として委嘱している。
各学科の教員組織の現状は次のとおりである。
人間生活学科においては、専任教員 13 名、嘱託教員 1 名が配置されているが、主として共通
科目等を担当する教員 1 名及び教職科目担当教員 1 名が含まれる。したがって、主として 12
名の教員が「クオリティ・オブ・ライフ」「生活と環境」「生活と福祉」「総合」に区分され
た学科専門科目を担当していることになる。食物栄養学科においては、専任教員 12 名が配置さ
れている。そのうち 1 名は、本学理念にある国際化に関わる科目を担当している。したがって、
11 名の専任教員が、管理栄養士養成課程に必要な主要な授業科目を担当している。保育学科に
おいては、専任教員 10 名、嘱託教員 2 名が配置され、保育士、幼稚園教諭、特別支援学校教諭
の資格・免許取得に必要な主要な授業科目を担当している。
人間生活学部の在籍学生数は、大学基礎データ(表 14)に示すとおり、3 学科合計 1,020 名
であり、専任教員 1 人当たりの在籍学生数は 29.1 名、嘱託教員を含めた常勤の教員 1 人当たり
の在籍学生数は 26.8 名となり、いずれも前回報告(『藤女子大学 現状と課題』第 4 号)より
若干増加している。
⑵ 大学設置基準第 12 条との関係における専任教員の位置づけの適切性
人間生活学部の専任教員は、全員が、大学設置基準第 12 条を遵守している。本学以外で研究
教育に従事する場合には、その時間数に制限が課されており、かつ、書面にて学長の承認を得
ることとなっている。現在まで、それに反した事例は報告されていない。
⑶ 主要な授業科目への専任教員の配置状況
2008 年度の人間生活学部専任教員の担当授業科目は、
大学基礎データ(表 20)のとおりである。
人間生活学部では、共通科目のうち大学・学部の理念を直接反映する必修科目「キリスト教
学」「聖書学概論」「人間学概論」は、専任教員が担当している。このうち「キリスト教学」
は司祭である学長自ら担当する科目である。
各学科の専門科目についてその専任教員の配置状況を記すと次のとおりである。
人間生活学科の専任教員担当率を科目区分別に見ると、
「クオリティ・オブ・ライフ」が 52.4%
(21 科目中 11 科目)、「生活と環境」76.7%(30 科目中 23 科目)、「生活と福祉」53.3%(30
科目中 16 科目)、「総合」83.3%(6 科目中 5 科目)である。「クオリティ・オブ・ライフ」と
175
第8章 教員組織(人間生活学部)
「生活と福祉」の科目区分で専任教員担当率が比較的低いのは、前者については特に心理系や
生命倫理系の科目を兼任教員が担当しているため、
後者については児童福祉系、
障害者福祉系、
医療福祉系の科目を兼任教員が担当していたり、「社会福祉援助技術演習Ⅰ・Ⅱ」や「社会福祉
援助技術現場実習指導Ⅰ・Ⅱ」
を専任教員と兼任教員が分担して担当していたりするためである。
食物栄養学科の学科専門科目に占める専任教員担当率は、64%である。そのうち、管理栄養
士養成課程の基幹科目区分である「食べ物と健康」「基礎栄養学」「応用栄養学」「栄養教育
論」「臨床栄養学」「公衆栄養学」に占める専任教員担当率は、75.7%と比較的高い。また、
いずれも選択科目であるが、4 年間の学修を総括する「管理栄養士演習」「卒業演習」「卒業
研究」は、専任教員全員が分担して担当している。
保育学科の学科専門科目に占める専任教員担当率は、55.6%と比較的低いが、これは一方で
は、特に「保育の基礎技能」の諸科目の全てを兼任教員が担当するか、もしくは分担担当して
いること、他方では、「児童の理解」における専任教員担当率が 50%を割っていることが大き
く影響している。ただし、学科カリキュラムの根幹とも言うべき「保育内容」と「実習」につ
いて言えば、その専任教員担当率はそれぞれ 77.4%、66.7%となっている。
⑷ 教員組織の年齢構成の適切性
本学の専任教員の年齢構成は、大学基礎データ(表 21)のとおりであり、人間生活学部の専
任教員 35 名の年齢構成は、40 歳以下が 17.1%(6 名)、41∼50 歳が 11.4%(4 名)、51∼60
歳が 40.0%(14 名)、61 歳以上が 31.4%(11 名)である。
⑸ 教育課程編成の目的を具体的に実現するための教員間における連絡調整の状況とその妥当性
人間生活学部における一般教養的授業科目及び外国語科目については、
学部長、
各学科主任、
各学科教務部委員で構成される学部カリキュラム委員会において必要な連絡調整を行うととも
に、兼任教員との間では、各年度初めに教育理念・目的等を含めた種々の説明及び連絡調整の
ための会議を実施している。また、この他連絡調整の必要が生じた際には、カリキュラム委員
会及び教務係が連絡調整に当たっている。
各学科の専門科目に係る教育課程編成の目的を実現するための教員間の連絡調整については、
各学科所属教員が各学科会議及び学科会議終了後に別途時間を設けて行う場合、また、これと
は別に、各学科専門科目に適用されている科目区分ごとに又は関連科目区分合同で担当する教
員が連絡調整のための会議を開催している。一例を挙げると、人間生活学科では、「クオリテ
ィ・オブ・ライフ」「生活と環境」「生活と福祉」、さらに、単独科目でも複数教員が担当す
る種々の科目の場合がこれに該当する。
⑹ 教員組織における女性教員の占める割合
本学全体での女性教員は、文学部の項で示した表 8-1 のとおり、教授 10 名、准教授 5 名、
講師 7 名の合計 22 名で、全体に占める比率は 33.8%であり、嘱託教員 11 名中 6 名の女性教員
を加えると、全体の女性教員の割合は 36.8%、助手を含めた女性の比率は 41.5%となる。
人間生活学部全体では、専任教員 35 名のうち女性教員は 18 名で、女性教員比率は 51.4%、
嘱託教員を含めた総数 38 名のうち女性教員は 20 名であり、女性教員比率は 52.6%である。人
間生活学科では、専任教員 13 名のうち女性教員は 5 名、嘱託教員(1 名)は女性である。食物
176
第8章 教員組織(人間生活学部)
栄養学科では、専任教員 12 名のうち女性教員は 6 名である。保育学科では、専任教員 10 名の
うち、女性教員は 7 名、嘱託教員(2 名)のうち 1 名が女性である。
2.教育研究支援職員
⑴ 実験・実習を伴う教育、外国語教育、情報処理関連教育等を実施するための人的補助体制
の整備状況と人員配置の適切性
人間生活学部においては、大学基礎データ(表 19-2)にあるとおり、食物栄養学科に助手 6
名、人間生活学科及び保育学科に教務助手各 2 名が配置されている。また、人間生活学科及び
食物栄養学科の学外実習において、学外実習施設の職員を非常勤講師として活用する形で人的
補助体制を整備してきた。この他、人間生活学科及び食物栄養学科では、実験系の授業を中心
に大学院生によるティーチング・アシスタント制度を活用している。さらに、食物栄養学科の
「給食管理実習」においては、非常勤の教育支援職員を委嘱し、担当教員が当該職員と連携・
協力しながら授業を実施してきた。
⑵ 教員と教育研究支援職員との間の連携・協力関係の適切性
⑴に記したとおり、人間生活学部では食物栄養学科に助手 6 名、人間生活学科及び保育学科
に教務助手各 2 名が配置されている。助手、教務助手は、それぞれ所属する学科の特に専門科
目担当教員と密接に連携しつつ、教員の授業実践の充実・向上に貢献している。
⑶ ティーチング・アシスタント(TA)の制度化の状況とその活用の適切性
ティーチング・アシスタント制度は人間生活学研究科の開設年度から設けられている。この
制度によって、
実際に 2008 年度の学部授業において担当教員の教育を補佐している大学院生は、
人間生活学専攻 3 名、食物栄養学専攻 9 名合わせて 12 名である。ティーチング・アシスタント
として採用された大学院生にとっては、
授業における指導の実際を学ぶ良い機会となり、
他方、
当該授業を受ける学生にとっては、通常の担当教員のみの指導に加えてよりきめ細かな指導や
助言等を受けることができる良い機会となっている。
3.教員の募集・任免・昇格に対する基準・手続
⑴ 教員の募集・任免・昇格に関する基準・手続の内容とその運用の適切性
本学の専任教員の任用は、「藤女子大学教員人事規程」に則って行われている。この人事規
程には、専任教員採用人事、専任教員昇任人事、非常勤講師委嘱人事、教員選考基準が定めら
れている。なお、教員の募集は公募によって行われている。
先の「教員人事規程」の他、本学には「藤女子大学特任教員に関する規程」、「藤女子大学
嘱託教員に関する規程」等が、また人間生活学部に関連するものとしては、「人間生活学部教
員選考委員会規程」の他、「人間生活学部教員人事運用内規」及び「食物栄養学科助手の任用
に関する内規」が定められている。
以下に、人間生活学部における専任教員の採用の手続きについて説明する。専任教員の採用
が必要になった学科または担当部署−例えば、人間生活学部の共通科目・外国語科目に係る専
任教員の採用については学部カリキュラム委員会−が、学部長を通じて定数委員会−構成員は
学長、副学長、当該学部の学部長及び学科主任−に「教員採用申請書」を提出し、申請が出席
177
第8章 教員組織(人間生活学部)
者の 4 分の 3 以上の賛成を得て承認された場合、学部の「選考委員会」が設置される。「選考
委員会」は、公募の条件、範囲等について審議し、その結果を「公募申請書」により学部長に
報告し、公募の手続きに入る。「選考委員会」は、応募締切日までに必要書類を提出した応募
者の中から、上記「教員人事規程」の「第 5 章 教員選考基準」に基づいて、その研究業績、教
育上の経歴等に関する厳正かつ公正な審議を経て採用に当たっての適任者を選考するが、現状
では次のような手続きを踏む場合が人間生活学部では一般的である。提出書類に基づいて採用
候補者若干名を選考し、その候補者若干名について模擬授業及び面接を実施し、その結果に基
づいて適任者 1 名を選考する。
こうして「選考委員会」が適任者を選考したときは、「選考結果報告書」により、「人事委
員会」に報告・提案する。「人事委員会」では、当該適任者について資格審査を行い、出席者の
4 分の 3 以上の賛成が得られると、その教員採用人事が教授会の協議に付される。教授会では、
当該適任者採用の可否について投票によって決定されるが、その可決には教授会出席者の 3 分
の 2 以上の賛成を必要とする。
専任教員の昇任は、当該教員が所属する学科の学科主任の発議により、当該学科所属の当該
教員の上位職者をもって構成される「昇任審査委員会」において審査される。「昇任審査委員
会」は、構成員の 4 分の 3 以上の賛成が得られた場合、当該教員の昇任を学部の教授をもって
構成される「人事委員会」に報告・提案する。人事委員会では、昇任の適否について判定が行
われ、出席者の 4 分の 3 以上の賛成が得られると、当該教員の昇任人事が教授会の協議に付さ
れる。当該教員の昇任には、教授会出席者の 3 分の 2 以上の賛成が必要とされる。
「教員人事規程」に基づいて定められている「人間生活学部教員人事運用内規」は、選考に
当たっての評価基準等を明記し、専任教員の採用・昇任人事の透明性及び公正性を確保する役
割を果たしている。
⑵ 任期制等を含む、教員の適切な流動化を促進させるための措置の導入状況
現在、本学の専任教員に関しては、国立大学等が採用しているような流動化促進のための任
期制は導入していない。ただ、この数年両学部とも教育課程を含む改革案の策定に取り組んで
おり、それとの関連で任期付教員の採用が若干名実施された経緯がある。
なお、食物栄養学科の助手に関しては、2003 年度より任期制を採用しており、現在まで円滑
に施行されている。
4.教育研究活動の評価
⑴ 教員の教育研究活動についての評価方法とその有効性
人間生活学部における教員の教育研究活動については、大学全体として、毎年教員から自己
申告による報告書の提出を求めている。それは製本されて公表されているだけでなく、ホーム
ページ上にも公開されている。しかし、それを評価する仕組みは全学的には、導入されていな
い。その原因は、研究活動、教育活動に関する教員間の活動量の差が甚だしく、適切な評価尺
度を設定することが現段階では不可能だからである。この点については、『教員の教育・研究
活動』の、とりわけ研究活動の項を参照のこと。
ただし、人間生活学部においては、厳格な昇任審査において、研究活動と教育活動に関する
基準を別個に定め、それぞれの基準を満たすことを昇任の条件としている。このことが、中長
178
第8章 教員組織(人間生活学部)
期的なスパンでの教育研究活動評価として、機能している。
⑵ 教員選考基準における教育研究能力・実績への配慮の適切性
本学では、「藤女子大学規程集」に「藤女子大学教員人事規程」が定められており、その「第
5 章 教員選考基準」に教授の資格、准教授の資格、講師の資格、助手の資格がそれぞれ定め
られている。条件の概略を示せば、研究上の業績、教育歴、特殊な専攻分野に関する優れた知
識等を上げていることである。
また、人間生活学部については、
「人間生活学部教員人事運用内規」が別に定められており、
教授、准教授、講師、助手のそれぞれについて、「1.基礎資格」「2.経歴評価基準」が詳細に
掲げられている。⑴で述べたように、研究業績あるいは教育業績のどちらか一方で判断するの
ではなくて、教育業績と研究業績を等価に判断する選考基準を採用している。
これまで専任教員採用人事に当たっては、上に示した「教員選考基準」の資格及び人間生活
学部に係る「教員人事運用内規」の基礎資格、経歴評価基準を満たしているか否かに関する厳正
な評価に基づいて、「選考委員会」において適任者の選考を実施してきた。
【点検・評価】
1.教員組織
人間生活学部の教員組織は、学部・学科等の理念・目的並びに教育課程や学生数との関係に
おいては、設置基準を満たしており、適切である。ただし、大学基準協会加盟判定時の「研究
環境」の関連で、授業担当コマ数の多い教員に対しての改善が助言されており、これについて
は 7.5 コマ(週時数 15 時間)を上限とするよう検討することとしていたが、その後教員の異動
が生じ、補充人事も科目の専門性などにより遅れるなど改善に至っていない。引き続き改善策
を検討していく。
大学基礎データ(表 22)に明らかなとおり、人間生活学部に所属する専任教員の担当授業時
間数の平均は、教授 12.9 時間、准教授 13.5 時間、講師 12.9 時間となっており、責任授業時間
数(10.0 授業時間)と比べて、それぞれ 1.29 倍、1.35 倍、1.29 倍である。因みに、授業外の
各種実習指導・訪問指導に日常的に関わっている福祉系専任教員 3 名の担当授業時間数の平均
は、17.4 時間である。
さらに人間生活学部については、従来から、各種免許・資格取得に係る学外実習担当教員の
授業時間外について大きな負担となっていることが指摘されてきた。実学を重視する人間生活
学部の性格からして、実習系の科目は増えることはあっても減ることはない。したがって、早
急に人間生活学部に設置されている内部委員会において現状を分析し、この問題を解決するた
めの検討を行う必要がある。
そういった中でも、人間生活学部の主要な授業科目への専任教員の配置状況は、いずれの学
科を見ても前回報告(『藤女子大学 現状と課題』第 4 号)よりその数値が低下している。こ
れを説明する一つの要因は、各学科とも、授業外の各種実習指導・訪問指導に係る負担を、兼
任教員の配置によって軽減しようとする措置を講じたことによる。専任教員の増員が簡単には
実現されにくい状況では、これは次善措置として正当であると評価できる。
179
第8章 教員組織(人間生活学部)
教員組織の年齢構成については、51 歳以上の年齢層が目立って多く、一見すると不適切に見
える。しかし、教員の増員が容易ではない状態で多様な科目を1教員が担当するという現状で
は、多能的な、したがって教育経験の長い教員を採用する必要がある。その結果として、教員
の年齢が高くなるのは当然の結果であると評価せざるをえない。
なお、前回報告(『藤女子大学 現状と課題』第 4 号)にも記したが、教員の公募に当たっ
て、50 歳以下を目安として選考を行うことを通して、年齢構成の均等化を計画的に実現するこ
とが必要である。
人間生活学部において教員の半数を女性が占めるという現状は、人間生活学部が人間の生活
を基本的な枠組みとしていること、また、人間生活学科以外の 2 学科も食物栄養と保育という
専門分野であることを背景としているからである。これまでは、女子大学家政系教員は、いわ
ゆる女性職として扱われることが多かった。女性職であるから男性職である他学部教員より格
下に見られるとか、家政系教員の中で職位別女性分布を見ると上位者に女性が少なく、下位者
に女性が多いといった事情が見られた。しかし、人間生活学部の場合には、こうした差別的な
事情は一切ない。女子大学であるという点と生活に根ざした領域の教育・研究の場であるとい
う点、さらに男女共同参画社会の実現という点から、この望ましい割合はきわめて高く評価で
きる。
2.教育研究支援職員
人間生活学部では、人間生活学科及び食物栄養学科の学外実習における非常勤講師の活用、
実験系を中心とするティーチング・アシスタントの活用等、十分とは言えないが、人的補助体
制が比較的整備されてきた。人間生活学部において、現在配置されている教育研究支援職員と
専門科目担当教員との連携・協力関係はよく機能していると評価できる。しかし、人間生活学
部のカリキュラムの特徴、すなわち、資格取得に直結する各種学外実習を含め、多くの実験・
実習を擁する実情から判断して、教育研究支援職員のあり方について見直しが必要である。具
体的には現状の正確な把握と評価及びそれに基づく増強策の検討がなされなければならない。
3.教員の募集・任免・昇格に対する基準・手続
専任教員の採用・昇任人事は、「教員人事規程」に則り、適正かつ公正に運用されている。
また、実際の運用が、「人間生活学部教員人事運用内規」に明示された選考・審査の細目にし
たがって適切になされていることも評価される。
4.教育研究活動の評価
従来、教育研究活動は教員の自主性を重んじて行われてきた。その結果については『教員の
教育・研究活動 2008』に明らかである。人間生活学部所属教員については、概ね良好な経過
をたどっていると評価される。しかし、組織的な評価の必要性が認識されつつあり、2007 年度
大学自己点検・評価委員会において検討を行ってきた。「教育活動」、「研究活動」、「社会貢献」、
「学内運営参加の程度」などの項目に関して点数化を図り、客観的に評価するなど、意見交換を
行ってきた。また上記項目を尺度として見た教員の活動を正当に評価する必要性などについて
も検討してきた。
しかし、専門性の異なる教員の教育研究活動を同一基準によって数値化する適切な方法を見
出すことは極めて困難である。望ましい評価は、文学部同様、研究活動に関しては専門領域ご
180
第8章 教員組織(人間生活学部)
とのピアレビュー、教育活動に関しては、科目別評価であろう。しかし、両者の比重をどう設
定するか等、やはり問題が残る。しかも、学務分掌に割かれる時間の増加はもとより、人間生
活学部特有の各種実習に付随して生じる学外労働や社会貢献などをどう評価するかという問題
も解決しなければならない。
人間生活学部においては、【現状の説明】で述べたように、厳格な採用基準と昇任基準が、
中長期的に見れば、教育研究評価となってはいる。しかし、学部の上に設置された大学院人間
生活学研究科における教員資格審査におけるほどの数値的厳格さは欠いている。
こうした問題を多く抱えているとはいえ、教員の教育研究活動を活発にしていくことは大学
の基本である。そこで、2008 年度からは、将来の業績評価にも活用できるようにと考え、また
教員への意識改革を働きかける意味から、『教員の教育・研究活動』には責任もって記述する
ように大学自己点検・評価委員会から指示した。
また報告様式の中で研究に関する項目には、
「研
究目的」、「進捗状況」の項目を新たに加えるなどの改善を行った。
なお、大学評価における教員の教育研究評価は、教員に対する個人評価ではなくて、教員の
所属機関に対する組織評価である。教員の教育研究活動が不活発であるとすれば、問題となる
のは教員の資質ではなくて、募集から採用に至る教員選考手続きの妥当性であり、採用後に用
意される教育研究環境の妥当性であり、昇任手続きの妥当性である。
人間生活学部においては、教員選考手続き、承認手続きに問題はない。したがって、問題が
あるとすれば、その組織的原因は、人間生活学部が用意する教育研究環境ということになる。
幸にして、人間生活学部の教員は、献身的な教育活動に精励しつつ、とりわけ研究活動につい
ては、平均して毎年 1 報以上の研究報告を行っている。この点は高く評価されてよいが、それ
だけの研究能力をよりいっそう開花させ、それを教育に生かしていくためには、研究時間を確
保できる工夫も検討する必要がある。
教員選考基準における教育研究能力・実績については、別途項目を設け、研究業績と同等の
ウェイトを置いている点は、高く評価できる。これからも、この基準は堅持する。
【将来の改善・改革に向けた方策】
専任教員の授業時間数については、
専任教員の純増によって解決することは困難ではあるが、
専任教員の負担を減らすための様々な措置をとることについてさらに具体的に検討する。【点
検評価】で述べたように、兼任教員比率を上げることがその一つである。その場合、カリキュ
ラム上の科目の位置づけを明確にし、科目の要件を精査して、最適任者を選抜できるシステム
を作る必要がある。これは、教育研究評価における科目評価に流用できるものでもあり、第 3
章で述べた 2010 年度カリキュラムの実施に合わせたこのシステムの導入可能性を検討する。
また、最適任者を選抜するためには、年齢構成の問題は副次的ならざるを得ないことも起こ
りうる。
非常勤講師の採用については現在の年齢制限の撤廃も含めて検討したいと考えている。
研究支援職員についても、
教員の負担軽減との関係で増員に向けた工夫を凝らす必要がある。
教員の教育研究活動に対する評価法については、点検評価で述べた諸点を手がかりに、人間
生活学部のレベルではなく、全学的なレベルでこれからも検討を続ける。具体的な期限を切る
ことは現状ではできないが、部分的にではあれ、評価につながる改善を重ねる。先に述べた科
目要件の精査は、その一つである。
181
第8章 教員組織(大学院)
第2節 大学院人間生活学研究科の教員組織
【到達目標】
1.学部教員人事と連携した教員人事を行う。
2.研究支援体制の整備を図る。
【現状の説明】
1.教員組織
⑴ 大学院研究科の理念・目的並びに教育課程の種類、性格、学生数、法令上の基準との関係
における当該大学院研究科の教員組織の適切性、妥当性
人間生活学研究科は、人間生活学部を基礎としていることから、学部所属の専任教員の兼担
によってその教育・研究が担当されている。こうした担当教員は、本研究科の学生定員が合計
32 名であるのに対して、大学基礎データ(表 19-3)に示すように、教授 13 名、准教授 3 名、
講師 3 名の合計 19 名である。その内訳は、人間生活学専攻が、教授 7 名、准教授 3 名、講師 2
名であり、食物栄養学専攻が教授 6 名、講師 1 名である。また、多様な側面をもつ人間生活を
教育・研究の対象としていることを考慮し、学外からの兼任教員 4 名を非常勤講師として委嘱
している。
人間生活学専攻では、2006 年度から、大学院担当正規専任教員が 3 名増加した。これにより、
学部教育から大学院教育への一貫性を形成し、大学院生が希望する多様な研究テーマにも対応
できる体制を作りつつある。
人間生活学専攻の教員組織は、専攻の理念・目標ならびに教育課程の種類、性格、法令上の基
準との関係において、概ね適切である。しかし、2008 年度で 1 人、2009 年度で 2 人の特任教員
が定年退職の時期を迎えるため、今後の教員組織について、学部教員人事ともあわせて早急に
検討しなければならない。
食物栄養学専攻では、2006 年度と 2007 年度に専任教員計 2 人が新たに大学院担当となった
が、2006 年度に特任教員 1 人が定年退職し、2007 年度に専任教員 1 人が退職したため、2008
年度現在、専任教員 6 人と特任教員 1 人が担当している。
食物栄養学専攻では、社会人に門戸を広くしたことなどにより、特別研究の対象の 3 分野の
うちの「栄養管理分野」に常に過半数の学生が集中するので、その分野の 2 名の教員は学生の
研究指導に多くの時間を注いでいる。
⑵ 大学院研究科における組織的な教育を実施するための、教員の適切な役割分担および連携
体制確保の状況
人間生活学専攻では、教員 2 人による講義を実験的に行っている。この成果をもとに、複数
教員による授業(T.T.)について今後も検討していく。
食物栄養学専攻では、ほぼ全教員が参加するオムニバス講義「食物栄養学総合講義」を通年
で実施し、また研究分野の近い複数の教員のゼミを合同で行うことなどにより常に教育・研究
の視野を広げ、客観性を保つ連携体制を維持している。
182
第8章 教員組織(大学院)
修士論文作成については、
指導教員の他に必要に応じて副指導教員を置く制度をとっている。
また副査を依頼する予定の他大学の教員との共同研究を行いながら、学会発表やインターネッ
トなどを活用し、指導教員と一緒に研究結果についてアドバイスを受けている場合もある。フ
ィールドを使った調査研究では、他の機関(スポーツ関連団体、病院、施設など)の指導者と
の連携が重要であり、日程などを調整しつつ実施している。
2.教育研究支援職員
⑴ 大学院研究科における研究支援職員の充実度
人間生活学専攻では、研究支援職員は不在である。
食物栄養学専攻でも、専任の研究支援職員がいる訳ではないが、食物栄養学科所属の助手(全
部で 6 名)が、大学院生の特別研究の支援的役割を果たすことがある。しかし実際には、助手
は学科の学生の実習と実験で手いっぱいで、大学院の教育・研究を支援する余裕はほとんどな
い。一つのケースでは、大学院担当教員が「生物系産業創出のための異分野融合研究支援事業」
の分担課題の研究をする上で、2003 年からの 5 年間非常勤研究員(博士研究員)を 1 名採用し、
研究支援に協力してもらったこともある。
⑵ 大学院研究科における教員と研究支援職員との間の連携・協力関係の適切性
人間生活学専攻では、該当しない。
食物栄養学専攻では、2003 年からの 5 年間「生物系産業創出のための異分野融合研究支援事
業」の分担課題について研究をするため、非常勤研究員(博士研究員)を採用したが、分担責
任者の教員とは連日ミーティングを重ね、研究支援においてよく連携してきた。 しかし、それ
は一部の教員に限られた例である。
⑶ 大学院研究科におけるティーチング・アシスタント(TA)、リサーチ・アシスタント(RA)
の制度化の状況とその活用の適切性
大学基礎データ(表 19-2)にあるとおり、人間生活学専攻では、2008 年度は 1 年生 3 人が
TA を担当している。
活用の適切性については、学部卒業後入学した学生がこの制度のもとに採用されていること
もあり、将来の指導者としての訓練機会にもなっている。学部学生にとってもアシスタントか
らのきめ細かなアドバイス・指導は、有効である。
食物栄養学専攻では、2008 年度は 1 年生 4 人、2 年生 5 人が TA を担当している。大学院生が
TA を希望する際には、科目の授業時間と本人の研究時間を考慮の上申請しているので、適切に
運用されているといえる。
3.教員の募集・任免・昇格に関する基準・手続
⑴ 大学院担当の専任教員の募集・任免・昇格に関する基準・手続の内容とその運用の適切性
2005 年に新たに「藤女子大学大学院担当教員資格審査委員会規程」及びこれに関連する細則
を整備するとともに、「藤女子大学大学院担当教員の採用・昇任に係わる業績審査基準」を制
定し、以後これに基づいて教員の審査と採用を行っている。
教員採用に当たっては全国公募をしており、さらに基準に則った選考と厳重な面接を行って
183
第8章 教員組織(大学院)
採用をしており、公正性、透明性は十分に確保できているものと考えている。
⑵ 任期制等を含む、大学院研究科の教員の適切な流動化を促進させるための措置の導入状況
現在、本学では流動化促進のための任期制は採用していないが、現在は全学部、全学科で大
幅なカリキュラム等の改革を目指して立案中なので、教員の採用に当たっては、当面任期付と
することとなった。
従って大学院担当になる教員も新規に採用された人の場合そのようになる。
4.教育研究活動の評価
⑴ 大学院研究科における教員の教育活動および研究活動の評価の実施状況とその有効性
大学院では、学部で行っている学生による授業評価(2006 年度後期から、「授業改善のため
のアンケート」と改称した)に相当する調査は行っていない。しかし、2007 年度の修了式当日
に、学部卒業生用に作った「大学生活満足度調査」用紙を試験的に大学院修了生に協力を依頼
して配布し、記入してもらった。その結果から、記入する学生が特定されないように配慮して、
質問項目等を改善することにより、教育方法の改善に活用できる資料を得ることは可能と思わ
れたので、実施に向けて検討したい。
大学院独自の教育研究活動の評価は行っていないが、大学院教員は学部教員の兼担なので、
教育研究活動の実績については、本学で毎年発行している『教員の教育・研究活動』に含まれ
ている。2008 年度には、担当科目を学部、大学院別に記入するなど様式の改善が図られている
ので、担当科目数の多さも明らかになる予定である。さらに検討し、改良を続けたい。
大学院教育の柱となっている修士論文は、作成した学生の業績であると同時に指導教員及び
副指導教員の教育研究活動を評価する上で重要な業績でもある。修士論文は他専攻の教員、学
生も参加する公開の場での発表による審査を経て作成され、本学図書館に保存し、公開される
ので、必然的に客観性のある評価を受けているといえる。
⑵ 大学院研究科の教員の研究活動の活性度合いを評価する方法の確立状況
教員の研究活動の活性度の評価については、今後研究科委員会において具体的評価法を検討
することになっている。
5.大学院と他の教育研究組織・機関等との関係
⑴ 学内外の大学院と学部、研究所等の教育研究組織間の人的交流の状況とその適切性
本学は、韓国カトリック大学との間に教員交換協定を締結している。大学院担当教員も、こ
の研究・教育交流に参加する資格を有しているが、今のところその利用者はいない。
【点検・評価】
研究支援職員は、他大学などとの研究プロジェクトの予算以外で採用されたことはなく、大
学院担当教員が維持管理にも従事しているので、その教員にかかる負担は大きい。特に、私学
設備助成金で購入した LC-MS など精密機器類の分析指導や保守管理において、一定の専門的技
術・知識を持った研究支援職員が必要である。
184
第8章 教員組織(大学院)
両専攻とも現在の教員の年齢構成にも偏りがみられるので、教員の任用にあたって、これら
の問題を段階的に改善する計画を立てなければならない。
他大学・研究所や他機関との共同研究を積極的に行い、大学院生に、本学以外の研究や教育
方法に触れる機会を増やすことが望ましいと考えている。
食物栄養学専攻では、TA に採用された学生は、指導教員の講義だけではなく他の教員の講
義・実験や演習などで教授方法や技術指導を学ぶ機会を設けている点は評価できる。
【将来の改善・改革に向けた方策】
教員組織の適切性については、特に食物栄養学専攻で教員数が少ないうえに、学生の 1 分野
への集中などにより、負担の特に重い教員が生じている。現在行っている学部、学科の改革案
の立案において、それにつながる大学院のカリキュラムや教員組織の改革がこれらの問題を解
決するものとなるようにしなければならないと考え、
基礎となる学部・学科の改革を検討してい
るところである。
大学院の教育・研究の質を高く維持するためには有能な研究支援職員が必要なので、その実
現のための具体案を検討したい。
修士論文が教員の活動の評価の資料として分かりやすい形でまとめられていないので、今後
は各教員が指導した修士論文の数と表題を評価の対象として分かりやすい形で記録し公表する
方向で、研究科委員会で検討したい。
185
第9章 事務組織
第9章 事務組織
【到達目標】
大学の事務組織の役割については、従前の教育研究を後方からサポートするというような補
完的な役割から脱却して、大学の目的を達成するためより主体的に機能する組織となる必要が
ある。
そのため職員自らの資質を高めることで企画立案能力を養い、その集合としての組織力を高
めることで、教育学事及び管理運営において一層重要な存在となることが目標である。
【現状の説明】
1.事務組織の構成
⑴ 事務組織の構成と人員配置
本学の事務組織は、法人業務系として大学全体を担当する総務課等の本部部局と、大学業務
系として教務課等のように学事等を担当する部局とに大別されるが、大学業務系についてはさ
らに人間生活学部と大学院人間生活学研究科を担当する花川事務室に分かれて学部事務等を担
当している。
この他教学組織である国際交流等のセンター組織に職員を配置しており、また各学科に学科
事務を担当する教務助手を置いている。
職員の配置数は、法人業務系に 18 名、大学業務系に 60 名の合計 78 名となっており、うち専
任職員は 49 名と 62%を占めている。専任に準じた職制として契約職員を 7 名置き、また定年
後の再雇用である嘱託職員を 1 名配し、他の 18 名は通年雇用の臨時職員である。
各課・室には課長もしくは室長の管理職を置くことを原則とし、これらを事務局長が統括す
る組織としている。
2.事務組織と教学組織との関係
⑴ 事務組織と教学組織との間の連携協力関係の確立状況
⑵ 大学運営における、事務組織と教学組識との有機的一体性を確保させる方途の適切性
本学の教学組織は、評議会のもとに各学部教授会、大学院研究科委員会を置き、また教務・
入試・学生指導など機能・業務ごとに学部等を横断した各種委員会等を設置している。
事務組織とこれらの委員会等の教学組織とは、各々の機能・職掌に呼応した形で連携をとっ
ている。つまり教務部委員会と教務課、入試委員会と入試課あるいは情報メディアセンターと
システム管理室などのように、大学業務系の多くは名称に代表される委員会機能に沿った課・
室制を敷いている。
教務部・学生部及び図書館には教員の部長あるいは館長職を置き、また国際交流、情報メデ
ィア、保健の各センターには同じくセンター長を置くことで、教学組織と対応する事務組織と
の意思疎通の強化と業務執行の一体化を図っている。
186
第9章 事務組織
一方事務組織としては事務局長が評議会及び部長会議等の構成員となっており、また事務局
各課・室は課長会等を通じて相互に連携し、学事業務に対しては大学全体として教学・事務組
織の協働がなされるような体制を整えている。
事務局各課の構成と教学委員会との関係は、次の表のとおりである。
○事務局各課の構成と教学委員会との関係
大学事務局 (局長 1)
総務課 (課長 1 職員 4)
企画・広報担当課長
会計課 (補佐 1 職員 4)
施設課 (課長 1 職員 2)
教務課 (課長 1 職員 5)
教務部長
教務部委員会
入試課 (補佐 1 職員 3)
入試委員会
学生課 (補佐 1 職員 1)
学生部長
学生部委員会
就職課 (補佐 1 職員 2)
就職委員会
図書課 (課長 1 職員 9)
図書館長
図書館委員会
花川事務室 (事務長 1)
総務係
(職員 3)
教務係
(職員 3)
学生・就職係(職員 3)
情報サービス係(職員 3)
システム管理室
(職員 2)
国際交流センター (職員 2)
情報メディアセンター長
運営委員会
国際交流センター長
運営委員会
カトリックセンター (職員 1)
保健センター
(職員 2)
セミナーハウス
(職員 2)
保健センター長
※注: 「補佐」は課長補佐
職員には契約職員・嘱託職員・臨時職員(通年雇用者)を含む
187
第9章 事務組織
3.事務組織の役割
⑴ 教学に関わる企画・立案・補佐機能を担う事務組織体制の適切性
⑵ 学内の意思決定・伝達システムの中での事務組織の役割とその活動の適切性
⑶ 国際交流等の専門業務への事務組織の関与の状況
⑷ 大学運営を経営面から支えうるような事務機能の確立状況
事務組織がもつ教学に関わる企画・立案・補佐機能について、たとえばカリキュラム等の教
育課程に関わる事項については、事務局教務課が教務部委員会及び各課程委員会等に参加する
ことで、直接・間接に種々の企画等を立案・サポートする体制としている。他についても、教
学組織に呼応する課・室がその委員会等の意思決定に際して、陪席者としてではあるが必ず参
加することで実質的な関与を担えるよう整備している。
学内の意思決定を総合的に調整する組織として学長を議長とした部長会議があり、構成員は
副学長、学部長、研究科長、教務部長、学生部長、図書館長に事務局長である。各委員会等で
企画・立案された事案については、この部長会議で協議調整された後、評議会で議決される。
また学長自らの裁定事案についても、部長会議を経て、学部教授会・研究科委員会及び事務
局に示達される。事務組織としては、このような意思決定等について事務局長が直接関与する
体制となっていること、また評議会等運営を総務課の職掌とすることなどにより、実際的な伝
達機能を整備している。
専門業務への事務組織の関与としては、情報メディアセンターに対応する組織としてシステ
ム管理室をおき、情報処理・ネットワークに関しての専門的なスキルを持つ職員を配して、企
画立案また実際的な業務執行にあたっている。
また国際交流センターには事務組織上の課・室としてはいないが、コミュニケーション能力
をはじめとした国際交流業務に習熟した職員を置いて、学生の留学指導をはじめとして協定校
からの受入学生の指導、
また短期の留学プログラムの実質的な企画運営業務等にあたっている。
大学運営についての全般に関しては、事務組織として企画・立案する職制として企画広報担
当課長を置き、機動性をもたせた職掌とすることで幅広くかつ柔軟な発想でサポートできるよ
うにしている。
また経営指標となる財務数値などは会計課が中心となって分析・報告しており、また財政予
算の策定及び実績との検証などの計数的な経営補佐機能のほか、教職員の総合的な人事政策や
制度設計等の経営課題についても参画できる体制としている。
4.大学院の事務組織
⑴ 大学院の充実と将来発展に関わる事務局としての企画・立案機能の適切性
大学院に対応する専門の事務組織は現在のところなく、人間生活学部に対応する花川事務室
が学部事務と兼務する体制としている。これは大学院研究科の学生数など規模的なことにもよ
るが、教員・教学組織としてもほとんどが大学と兼務する体制となっていることから、現状の
形が機能的と考える。
ただ兼務といっても学部に対して二次的な対応とすることではなく、当然のことながら大学
院固有の学事・事案については固有の体制として、また学部と連携すべきことには連携した事
務対応がとれるよう配慮している。
188
第9章 事務組織
5.スタッフ・ディベロップメント(SD)
⑴ 事務職員の研修機会の確保の状況とその有効性
⑵ 事務組織の専門性の向上と業務の効率化を図るための方途の適切性
事務職員の研修については事務組織が小規模であることなどから、初任時の研修を除いて学
外研修を積極的に利用している。初任時の研修は、学園建学のミッションについて理事長・学
長による半日程度の研修会を新任教員と合同で実施している。
学外研修は、日本私立大学協会北海道支部で毎年実施している階層別の職員研修会を利用し
て、職員の経験に応じた研修機会を確保している。この研修会は、初任者・中堅実務者・中堅
指導者・課長職相当者の 4 つの階層別にそれぞれ 2 日間実施されており、事務局長が研修委員
としてこの企画運営に関与していることもあって、積極的に利用している。
このほか私大協会本部が実施する職掌別の研修会やカトリック大学連盟・図書館協議会など
の私学団体等の研修会・セミナーに、それぞれの職員の階層や職掌にあわせて相当数を毎年派
遣している。
このような研修機会の確保については、一定期間のローテーションで全職員が参加できるよ
う計画的に派遣者を選定することで、研修成果が全てに行き渡るよう努めている。
さらに研修会等に参加した職員は必ず研修報告書を作成し、研修資料などとともに学内のグ
ループウェアに公開・閲覧することで、
個々人の研修成果を全職員で共有できるようしている。
また職員の専門性を高めるために、国立情報学研究所や国立大学等で実施される大学図書館
職員長期研修や、国際教育交流協議会など留学・国際交流に関わる専門機関で実施される研究
協議会などの長期かつ専門的な講習等へも適任者を派遣することで、組織としての専門性が高
まるよう努めているほか、自発的な自己研鑽に対しても個別に必要な費用を支弁することとし
ており、大学行政管理学会など個人資格での研修等についても支援している。
このような職員個々の資質向上を目指した研修機会の確保と併せて、IT 技術などのより専門
的な分野については業務の一部に上手くアウトソースを組入れることで、業務効率の向上をは
かるとともに職員のスキルアップがなされるよう取り組んでいる。
6.事務組織と学校法人理事会との関係
⑴ 事務組織と学校法人理事会との関係の適切性
本学では理事会の業務を担当する部署として法人事務局があり、専任職員 3 名が配されてお
り、予算決算等の計数集計など事務的な業務について理事会と各学校部門との中継的な役割を
担っている。
理事会の統制機能は、学長をはじめ副学長 2 名も常勤理事であり大学事務組織に直接及んで
おり、理事会の意思決定及び伝達等に関しては大学事務組織に迅速かつ適切になされている。
【点検・評価】
本学の事務組織は管理運営を職掌とする総務・会計・施設の各課と、教学関係事務を職掌と
する教務・学生・就職・図書・入試の各課及び専門性の高い国際交流・システム管理・保健の
各センター等で構成されており、教学組織との連携とあわせて事業運営上の支障はない。
189
第9章 事務組織
ただ小規模な大学でかつ 2 キャンパスに分かれているため一人部署など小人数で編成される
課・係も多く、人的効率が上がりづらい面がある。また適正な人事ローテーションによる職員
の職能向上や業務検証が取りづらいことも否めない。
このような組織規模・効率性などの課題はあるが、各々の所管を超えて各課等が日常的に随
時連携協力することで、特に学生サポート業務などに支障がでないよう努めている。このため
両キャンパスともに教学関係の部署を一箇所に集約しており、学生の動線上からも連携した対
応が図れるようしている。
教学組織との関係についても、教務・学生指導など分野に呼応する事務組織となっており、
相互の意思疎通も含めて適切に運営されている。
ただ事務組織を集約・再編しようとするときなど、教学組織との関係が硬直的にならないよ
う一体化した検討が必要と考えられる。
専門業務に対する事務組織の関与についても、国際交流などで事務が主導的な役割を果たし
ていることも多いが、反面職員個人の資質に頼った属人的な面もあり、組織としての機能を高
める必要もある。これは大学運営を経営面で支える体制についても同様の面があり、総じて組
織としての事務機能の向上が一番の課題と考える。併せて職員個々の資質向上がその基盤とな
ることは自明であり、実質的な SD をさらに一層推進する必要がある。
【将来の改善・改革に向けた方策】
職員の資質向上のために様々な研修機会を確保しているが、それが有効に機能するためにも
個々のモチベーションを高めることが重要である。企業など一般的には人事施策や待遇面での
賞罰的な方策が多いと考えられるが、本学の小規模な組織ではそれがかえってマイナスに働く
ことが多いと考えられる。
組織としての融和を保ちながら、研鑽意欲を高める具体的な方途を検討したい。同時に人事
ローテーションをできる限り活性化して、職員個々の職能を拡大し、また適性に応じた能力開
発がなされるよう努める。
組織力を高めるために、特に学生を直接サポートする部門の連携を強化することが必要であ
り、教務・学生・就職の各課がより緊密に学生を支援できるよう、課の再編を含めて実効ある
方策を検討していく。
190
第10章 施設・設備
第10章 施設・設備
【到達目標】
1.大学の教育目的、各学部の教育目的を達成するために必要とされる施設・設備が適切に整
備され、保全されていること。
2.QOL を追求する本学として、バリアフリーのやさしさのある施設を心がけ、安全で安心で
きる学習環境を確保すること。
3. 教育用コンピュータ、教育用機器等の整備がされていること。
4.学生のための生活の場としての整備を含む施設・整備の充実を図る。
【現状の説明】
1.施設・設備等の整備
⑴ 大学・学部、大学院研究科の教育研究目的を実現するための施設・設備等諸条件の整備状
況の適切性
⑵ 教育の用に供する情報処理機器などの配備状況
本学は開設の地である札幌市北区にある北 16 条キャンパスと、
隣接した石狩市花川にある花
川キャンパスの二つの校地・校舎を有している。北 16 条キャンパスは文学部、花川キャンパス
は人間生活学部及び大学院人間生活学研究科が主に使用しているが、
両地は自動車で 20 分程度
の比較的近距離であり、設置認可上は同一団地としている。両キャンパスの合計校地面積は
168,572.3 ㎡であり、
大学設置基準から求められる必要面積 19,200.0 ㎡を大きく上回っている。
校舎面積については北 16 条校舎が 21,926.4 ㎡、花川校舎が 15,607.9 ㎡であり、それぞれ文
学部の必要面積 5,486.8 ㎡及び人間生活学部の必要面積 7,735.6 ㎡を大きく上回った校舎とな
っており、またこれらの他に両キャンパスには体育館、北 16 条キャンパスに講堂、花川キャン
パスにはセミナーハウス等の施設がある。(大学基礎データ(表 36))
本学校舎は 1953 年北 16 条キャンパスに当時の藤女子短期大学校舎として建設された建物を
はじめとして、1966 年には現在の大学本館、1967 年に体育館、1968 年には図書館・講堂棟が
竣工した。花川校舎は 1992 年の人間生活学部開設に併せて竣工し、その後 2000 年に保育学科
増設と同時に新棟カリタス館が完工し、現在の姿となっている。一方、北 16 条キャンパスは文
化総合学科増設 1 年後の 2001 年に第 1 期新館を建築し、2007 年には老朽化した校舎の一部を
解体して、新たに 25 の講義・演習室等を備えた第 2 期新館が竣工した。これにより事務室を集
約し、学生サービスの向上と業務の効率化が図られた。(大学基礎データ(表 36-2))
両校舎は専用回線で結ばれている。研究室や事務室、講義室等は学内 LAN に接続しており、
学生は受講登録や就職情報システムへの接続等に学内端末を利用しており、教職員は学内グル
ープウェアにより情報の共有がなされている。またデータ格納用のファイルサーバーを設置す
ることで、個人情報等学事データの漏洩を防止している。
191
第10章 施設・設備
a.北 16 条校舎
北 16 条校舎には 48 の講義室、演習室の他、CALL 教室やコンピュータ室、書道教室や音楽室
等の特別教室(講義室兼用)、またパソコン 30 台を備えた学生自習室など、教育目的に適応し
た施設が整備されている。また講義室の過半にモニター・ビデオ・DVD などの AV 機器を備えて
いる他、中講義室以上にはプロジェクター、スクリーン、資料提示装置、OHP などを装備して
おり、各室に情報コンセントを備えてインターネットにも対応できるようにしている。
学生の教育用コンピュータとしては、上記の CALL 教室・コンピュータ室などに 134 台のパソ
コンを設備して語学・情報処理などの講義に供しているほか、学生自習室を兼ねた第 1 期新館
2 階のヘレナホールなどには、無線 LAN に対応した設備もある。また図書館本館にはインター
ネット検索機能も兼ねた OPAC 用のパソコン 16 台や、マイクロリーダー等の視聴覚機器を設備
している。
b.花川校舎
花川校舎は講義室、演習室は 26 室だが、学部の性格上実験実習室を多く設備しており、食品・
理化学系の実験実習室やピアノレッスン室など 58 室の特別教室を持ち、
各室にはそれぞれの教
育目的に沿った実験器具、機械類を設備している。個別の実験実習室の機能においても、食品
に関する高度な衛生管理手法である HACCP(ハサップ)に対応した実習室や、クロマトグラフ
ィーや原子吸光光度計などの精密・分析機器などを備えた実験室など高機能に整備されている。
また防音機能を備えた個人用ピアノ練習室(22 室)やピアノレッスン室(8 室)の、音楽表現・
造形などの実技・技能を高める実習室も相応した教具とともに設備している。
学生の教育用コンピュータとしては講義・自習を兼ねた 2 室に 122 台のインターネット接続
パソコンを設備しており、また保育学科が主として使用している自習室にも同様のパソコン 12
台を設備している。また図書館の花川館には、本館と同じく、インターネット検索機能も兼ね
た OPAC 用のパソコン 12 台を設備している。
c.大学院人間生活学研究科
人間生活学研究科に帰属する実験実習室は 5 室あり、それぞれに生活環境・福祉に係る器具・
機械類やバイオ関係分析機器などを設備している。また院生 1 人 1 台のパソコンを設備した院
生用研究室も整備しており、個別の研究指導等に高い効果をあげている。
なお、実験・実習室の設置と設備の更新状況等については、以下のとおりである。
○人間生活学科
2004、2005 年度にかけて学科専門科目に関わる施設・設備等として購入した小型遠心分離機
(一式)と分光光度計のうち、特に後者は食環境実験及び衣環境実験で共用しており、授業内
容をより充実させることを可能にした。衣環境論及び被服構成の学生実習用として卓上織り機
(一式)を購入した。また社会福祉援助技術演習及び介護概論の授業用として、2004 年度まで
の介護用ベッド(1 台)と車椅子(2 台)に追加して、車椅子(2 台)を購入し、学生の疑似体
験用設備の増加をみた。また、2005 年度には介護用ベッド(1 台)と車椅子(2 台)の寄贈を
受けるなど、福祉関連設備・備品の充実が進んだ。この他 2006 年度には、パソコンを利用した
講義や演習において、
教員及び学生が用いるプレゼンテーション用設備・備品の整備に着手し、
192
第10章 施設・設備
移動用スクリーン(3 台)・液晶プロジェクター(3 台)・ノートパソコン(2 台)を配置した。
○食物栄養学科
2002 年の栄養士法の一部改正に伴って、
2003 年度末に既存の実習室や講義室を大幅に改修し
て給食経営管理実習室、臨床栄養実習室、及び栄養教育実習室を設置し、必要な施設や設備を
配置した。
専門基礎科目で用いる理化学機器については、学部創設期(1992 年)以前に設置した遠心分
離機、分光光度計、原子吸光光度計を、近年の高度化した分析解析技術の進歩にあわせて順次
更新している。2004 年度には、食品や醗酵液中の生理活性物質の同定を行う目的で、新たに分
光色差計や生物・化学発光測定装置、及びダイオードアレイ検出器を備えた高速液体クロマト
グラフィー(島津、prominence)を導入した。2005 年度には大学院の研究設備として、卓上超
遠心分離機(ベックマン、Optima)を設置した。2006 年度には、食品中の微量分析実験の高度
化に対応し、微量金属の検出を目的に原子吸光光度計(日立、Z-2000)を更新し、2007 年度に
は酵素の精製・構造解析に対応したフラクションコレクターと高感度フォトダイオードアレイ
検出装置を持つ高速液体クロマトグラフィー(日立、LaChrom Elite)を導入した。これらの機
器の導入により食物や生物試料の分析や分離精製に利用できる手法が格段に増し、研究対象と
する分野が拡大した。
○保育学科
音楽表現室には、従来からグランドピアノ(2 台)、電子ピアノ(1 台)、エレクトーン(1
台)、オーディオ機器一式が設置されているが、2007 年度に電子ピアノが追加設置された。こ
のほか、アップライトピアノの設置台数はピアノレッスン室(8 室)に 15 台、ピアノ個人練習
室(22 室)に 22 台、音楽関係教員研究室(2 室)に 2 台、合計 39 台である。
○大学院人間生活学研究科
2005 年度には新たな研究設備として、卓上超遠心分離機(ベックマン、Optima)を設置した。
大学院設立時に購入設置された LC/MS 装置は多くの食物栄養学研究に利用されているが、これ
をさらに効率よく利用するために 2006 年度にオートサンプラーを接続して、
多試料の自動分析
を可能にした。同年には分子生物学研究用にエレクトロポレーション遺伝子導入装置も設置し
た。
設立当初には実験設備の導入が遅れていた人間生活学専攻でも 2006 年度には高速液体クロ
マトグラフィー(日立 2130)を、また 2008 年度には分光光度計(日立 U2910)を設置し、生活
環境学研究の基本的な分析手段として利用されている。
これらの大学院の設備と上記の人間生活学科及び食物栄養学科の機器を両学科と共同利用す
ることにより、教育、研究上の需要を順次満たす方向に進んでいる。
2.キャンパス・アメニティ等
⑴ キャンパス・アメニティの形成・支援のための体制の確立状況
a.北 16 条キャンパス
北 16 条キャンパスは、地下鉄駅から徒歩で 3 分ほどの非常に通学に便利な位置にあるが、狭
隘で、隣接した周辺に土地を求めることは大変困難な状態である。しかし、都会の喧騒から逃
193
第10章 施設・設備
れ、落ち着いた雰囲気の環境で勉学できる機会を与えるために、植樹、樹木や芝生の手入れ、
宗教的雰囲気形成のためのキリスト像の設置など、
生活環境の改善には常に心がけてきた。
2007
年の第 2 期新館完成に伴い、大学正門から玄関までの通路と中庭を一新し、外部通路は滑りに
くいコルゲートブロックを引き込み、学園敷地内の安全確保のため仲通りの車の通り抜けがで
きないようにして安全性を高めた。さらに、通路の一部にロードヒーティングを施し、狭いな
がらも階段のないバリアフリーで緑が美しく映えるキャンパスに変わった。
校舎内には、玄関ホールに床暖房を設置し、床はすべりづらい石を張り、講義室は冷暖房完
備とし、教育環境の充実が図られた。また、新館と 5 階建ての本館との連絡通路を全階に設置
し、利便性と共に災害時の避難経路確保が図られた。
敷地や校舎内は、行き届いた清掃が行われ、暖房・照明など設備の修繕・改善には速やかに
対応している。また、宗教的な絵画や彫像等が各所に置かれ、落ち着きのある、心の和む雰囲
気を醸成に努めている。
校舎内の食堂及び購買は外部業者に委託しているが、その委託運営に伴う福利、厚生施設と
しての運営上の充実を図るために食堂・購買運営委員会を置き、学生部長を委員長として営業
品目、販売価格等について検討し、業者への交渉を行う他に、これに関連した施設の環境整備
に当たっている。
b.花川キャンパス
花川キャンパスは広く、セミナーハウスに通じる遊歩道など自然に親しむことができる優れ
た環境を持つ。校舎は、新設時よりバリアフリー対応であり、さらに 2005 年度には正面玄関を
ハンディキャップ者対応のための自動ドアに改めた。
学内は清潔であり、ステンドグラスや宗教的な絵画・彫像等が各所に置かれ、落ち着きのあ
る、心の和む雰囲気を学生に与えているのは、文学部校舎と同様である。
校舎内の食堂及び購買は文学部と同様に食堂・購買運営委員会が担当している。
⑵ 「学生のための生活の場」の整備状況
a.北 16 条キャンパス
北 16 条キャンパスには、学生食堂としてクサヴェラホール(1 階)と学生自習室を兼ねたヘ
レナホール(2 階)、自習スペース兼食堂スペース(1 階)があり、合計で 429 席が用意されて
いる。ヘレナホールの一角に購買がある。2007 年の校舎新築後は、空きスペース 2 室を学生談
話室として学生の自習や飲食の場にしている。
学生自習室は、
コンピュータ室を充てているが、
他に自由な用途で使用できる教室が各学科 1 室ずつあり、3 学科とも学生自習室兼用となって
いる。
b.花川キャンパス
花川キャンパスには、学生食堂とそれに隣接した自習コーナー(合計 372 席)、自習室、購
買がある。これらの施設は 1 階の学生食堂に隣接している。
また、花川キャンパス内にあるセミナーハウスは、「学校法人藤学園の経営する大学・中高
等学校・幼稚園の学生・生徒相互または、学生・生徒と教職員間の交流を図り、規律ある生活
のもとに教養を高め、心身ともに健全な人間形成に資すること」を目的として、1984 年に設置
194
第10章 施設・設備
された宿泊研修施設である。この 3 階建て延床面積約 1,740 ㎡の施設の管理運営責任者は藤女
子大学の学長とし、実務に関する責任者としてセミナーハウス館長が当っている。
セミナーハウスは、大学の花川キャンパス内に位置するため、本学学生のクラス・クラブ関
係の利用者が多い。
最も利用された時期には延べ200を越える団体の11,000 名余の利用があり、
その半数が宿泊を伴う研修などで活用した。現在は原則として学内関係者に限るようにし、ま
た、食事は利用者が各自で用意するかあるいは学生食堂の業者に委託する方式に変更されてい
るが、
学科による新入生のオリエンテーション、
クラブの合宿練習などに広く利用されている。
⑶ 大学周辺の「環境」への配慮の状況
a.北 16 条キャンパス
北 16 条キャンパスでは省エネ型照明器具・人感センサー・タイマー運転・節水型器具等で地
球温暖化防止のためのさまざまな工夫を施している。
北 16 条キャンパスの文学部校舎が市街地にあるため、駐車が近隣の迷惑にならないように、
大学の周辺に駐車場を 2 箇所確保するとともに、学生には車での通学をしないように指導して
きたので、周辺住民との間で駐車に関する問題は生じていない。
b.花川キャンパス
花川キャンパスでは、広いキャンパス内に植樹をするなど緑を育て守っており、周辺の地域
住民から暖かく迎えられている。
本学においては、自動車通学は全面的に禁止されていたが、2007 年度から「自動車通学許可
基準」を制定し、花川キャンパスの学生に限って、当該基準に定める一定の条件に従って自動
車通学を許可することとなった。そのため駐車場の中に学生用のスペースを設け、駐車が近隣
の迷惑にならないように配慮している。
学生の意識も高く、ゴミの分別・減量など環境にやさしい取り組みを続けている。
3.利用上の配慮
⑴ 施設・設備面における障がい者への配慮の状況
⑵ キャンパス間の移動を円滑にするための交通動線・交通手段の整備状況
⑶ 各施設の利用時間に対する配慮の状況
施設設備におけるバリアフリー対応については、両校舎ともに玄関等の出入り口周りの段差
解消など建築上の基本的な要件は充たしている。
a.北 16 条キャンパス
北 16 条校舎は最も古い棟である本館については、2002 年以降文部科学省施設設備整備費補
助制度を利用しながら 3 箇所のトイレをバリアフリー対応に改修したほか、エレベーター2 機
についてもバリアフリーに対応するよう入れ替えた。また、2003 年建築の第 1 期新館及び 2007
年建築の第 2 期新館はともに全館バリアフリー対応となっており、バリアフリー対応トイレは
各階に 1 箇所以上設置しているほか、講義室で入り口もバリアフリー対応の引き戸を設置、ま
た車椅子専用の講義机を各室に設置している。
駐車場についても、学生玄関入り口脇に特別にハンディキャップ用スペースを設けており、
玄関ドアもタッチ式自動ドアを採用し開閉速度等にも配慮している。
195
第10章 施設・設備
b.花川キャンパス
花川校舎は 1992 年の建築時の基準でバリアフリーを取り入れた施設となっているが、
玄関ド
アを自動ドアに変更するなど都度必要な改修を実施している。
その他のバリアフリー施設については、スロープ、階段の手すり、段差の凸凹テープ、車椅
子用トイレ、車椅子用エレベーター、床の点字ブロック、エレベーターには点字付の操作部と
音声案内機能、障害者駐車場を完備している。
設備面では、カラー拡大読書器を教務課と図書館に備えている他に、教室には車椅子用机を
用意している。なお、視力障がいのある学生には、オリエンテーションや試験日程のほか授業
関係でも必要な配布プリントは拡大版を準備して渡したり、掲示板の利用についても見やすい
箇所を作り掲示するように配慮するとともに、教室内では専用の机を固定した位置において便
宜を図っている。
キャンパス間の移動に関しては、両校舎の間は距離にして約 9kmほどであり、公共交通機
関としては北 16 条キャンパスが札幌市営地下鉄南北線北 18 条駅から徒歩 3 分と至便な地にあ
り、花川校舎までは地下鉄同線で 3 駅の麻生駅を経由しバスで 20 分程度である。学生のカリキ
ュラムについては一部の課程科目を除いて基本的に各キャンパスを横断するものはなく、クラ
ブ活動についても多くが各キャンパスごとに活動している。そのため大学として両キャンパス
を結ぶ交通手段を特段用意してはいないが、セミナーハウスでのクラブ合宿など必要に応じて
大学保有のマイクロバスを運行している。また両キャンパスの図書館の貸し出し図書や事務的
書類等の相互搬入のため、1 日 1 往復のメールカーを運行している。
花川校舎のバス便については運行するバス会社と協議し、特に通学者の多い時間帯などの増
便や校地内玄関前までの乗り入れを図るなどの配慮をしている。
両校舎の利用時間は原則午前 8 時から午後 8 時までであるが、学生のクラブ活動や発表会、
また学会や研究集会などに際しては、日祭日を含めて柔軟に対応することとしている。またセ
ミナーハウスについては宿泊可能な施設であり、利用状況にあわせた時間帯を開放している。
4.組織・管理体制
⑴ 施設・設備等を維持・管理するための責任体制の確立状況
⑵ 施設・設備の衛生・安全の確保を図るためのシステムの整備状況
校舎や付属する設備等の維持管理については事務局施設課が職掌している。一級建築士及び
電気・ボイラー管理などの有資格者がそれぞれの施設設備に関する総合的な維持管理計画を策
定し、必要に応じて専門業者等への委託を含めて、保守点検等を実施している。
また学内の LAN 回線などネットワークに関する維持管理については、システム管理室と協同
して実施するなど、他課と連携した点検整備等も横断的に受け持つこととしている。
消防や電気設備などの法定点検や暖房設備・給排水設備などの定期点検のほか、北 16 条・花
川両キャンパスの各施設については、
施設課職員が日常的に目視等による点検を実施しており、
異常があるときは事務局長を経て学長に報告し、即時に対応できるよう体制を整えている。ま
た、大規模な補修等の必要があるときは、建築構造や設備耐用等を勘案しながら年次計画を策
定して実施することとしている。
施設設備の衛生・安全の確保の体制については「防災管理規程」及び「安全衛生管理規程」
196
第10章 施設・設備
によって定められており、施設課が行う直接的管理業務を含めて全学的な体制を整備し、予防・
啓発に努めている。
教育研究用の設備機器については、講義室等の設置機器は教務課・係、研究室・事務室等の
設置機器は総務課・係などが管理するほか、実習・実験用機器などは所属学科が直接管理する
こととしている。特に、人間生活学部及び大学院人間生活学研究科の精密機器類については、
機器メーカーの直接保守等により機能劣化を防止している。また動物実験など衛生・倫理面に
配慮するよう「人間生活学部における動物実験に関する指針」等を定めているほか、医療用廃
棄物の処分についても特定の専門業者と契約し過誤無きよう整備している。
【点検・評価】
北 16 条キャンパスは敷地が狭いという物理的な制約を受けるが、
全般的に施設課が良く対応
している。個別の問題については、学生部や施設課が学生課、保健センター、その他教職員の
個人的な要望を受け止め、その実現に努めており、実際上の支障は現在までのところ生じてい
ない。
個別のキャンパスにおいて、たとえば北 16 条キャンパスにおける校舎新築の際には、「北
16 条校舎利用に関する協議会」を拡大した形で開催し、キャンパス・アメニティ形成を視野に
入れた協議を重ねて新築計画を練り上げていった経緯もある。大学全体にわたるキャンパス・
アメニティ形成、支援という総合的な立場の検討機関は特に設置していないが、施設課が積極
的に活動し機能しており、関連部署と適宜相談の上、利用者の便宜を最優先に進めていること
から、その設置の必要性はあまり感じられない。
「学生のための生活の場」
の整備状況は、
16 条校舎の食堂の収容数 429 名は、
在籍学生数
(2008
年度 1,158 名)に比べ不足している。校舎の新築に伴い、2007 年度後期から教務課・講師控室
移転後の空きスペースを学生談話室として自習兼飲食用スペースに転用したが、
約 72 席の増加
に止まったため、根本的解決には至っていない。
一方、花川校舎の食堂の収容数は、隣接する自習コーナーを合わせて 372 席で、やはり在籍
学生数(2008 年度学部生 1,020 名、大学院生 18 名)を大きく下回っている。特に必修科目が
多く時間割に余裕のない人間生活学部においては、
昼食時間に学生が殺到することとなるため、
混雑を極めた状態となっている。
本学は全学学生数約 2,000 人の大学でありながら北 16 条と花川の 2 つのキャンパスに分かれ
ているため、学生のための施設も規模が小さく不都合な面がある。学生食堂はその一つといえ
る。食堂・購買委員会では学生等の意見を踏まえて委託業者に営業努力を求めているが、スペ
ースの問題などから全てが実現されている訳ではない。
セミナーハウスについては、管理経費の問題から利用者に対する食事の提供の方式などの変
更により、利便性が低下したが、学生たち利用者の創意工夫で、心身ともに健全な人間形成の
場として有効に活用されている。
「近隣、地域社会、国などの対場を尊重しつつ、地域社会の諸問題に取り組む」ことを教育
目的の一つとする本学としては、周辺の環境を守り、地域社会と共生するための十分な配慮を
欠かさない方針で歩んできた。一例を挙げると、「環境」配慮として、大学の建物からの落雪
197
第10章 施設・設備
防止、外壁の剥落を防ぐための検査等を欠かさず、また、敷地の清掃など周辺の「環境」を守
るように十分配慮している点は評価できるものと考えられる。
本学の校舎施設については、北 16 条キャンパスに一部建築後 40 年を越える建物が現存して
いるが、大概の施設は平成に年号があらたまって以降に建築されたものである。校舎面積等も
大学設置基準を大きく上回っており、講義室・演習室・実験実習室など教育目的上必要とされ
る規模については整備されている。
ただ北 16 条校舎と花川校舎とでは建築年が違うこともあり、
特に講義室等の AV 設備等に差異が生じている。また学部の性格上もあって、花川校舎には実験
実習施設・設備を充実させた反面、講義・演習室はあまり余裕がない状況にある。
北 16 条校舎については、2001 年以降 2 棟の建築により講義・演習室については付帯する設
備もあわせて充実してきているが、研究室及び図書館については古い建物にあって、面積や防
音性など課題も多い。
情報処理機器等の配備については、両校舎ともに学内 LAN の敷設や各室の情報コンセントの
設備状況などのインフラに関しては、基幹となるネットワーク関連のサーバー機器を含めて充
分な体制となっている。学生の利用端末についても前述の教育用のほか、就職情報システムへ
の接続用に両校舎の就職情報室に 20 台ほどを設備しており、
全学でネットワークに接続してい
るパソコンは IP アドレス上 613 台となっている。
ただ教育用システムは、CALL システムを含め両校舎ともに導入後 6 年以上が経過しており、
世代交代の早い情報処理機器であることから、早期の更新が必要と考えられる。
キャンパス・アメニティについては、両校舎で校地面積やロケーションの違いもあり同じ環
境づくりが難しい面もあるが、快適で安全な教育空間のためにできることを段階的に整備して
きている。特にバリアフリー対応などハンディキャップをもつ人たちへの配慮については優先
的に進めてきており、車椅子対応の設備や、寒冷地特有の凍結転倒防止のためのロードヒーテ
ィングの設置など、安全面に配慮した施設整備に努めている。
施設設備の維持管理体制については、実務的な業務について施設課に傾斜しすぎているとこ
ろもあると思われるが、防災や安全衛生面での学内体制については基本的な整備はなされてい
る。ただ学生に対する啓発活動や、教職員を含めた全学的な有事訓練などは種々の制約から難
しいこともあり、今後の課題と考える。
本学の教育研究目的を達成するための基本的な施設設備については新古の別はあるものの充
分に整備しているが、図書館のように蔵書数の増加など設備の充実に伴って施設が狭隘化する
部局や、情報機器など陳腐化の早い設備の更新時期等の対応が目先の課題と考える。
【将来の改善・改革に向けた方策】
研究設備は充実しつつあるが、高分解能の高速液体クロマトグラフィーや LC-MS 等の複雑な
機器を常に良好な状況に維持することは、現状のように少数の教員と経験の浅い学生のみで行
うことが困難になりつつある。したがって、かなりの知識と技術を持って機器の維持管理と使
用の指導をする体制の構築を検討する必要がある。
「学生のための生活の場」として、学生が落ち着けて、なおかつ図書館のように静粛を求め
られずに気軽に休める場所、空き時間や休講等の場合にもある程度の時間を過ごせる場所を用
198
第10章 施設・設備
意できるよう、学生の満足度を調べるために行っているアンケートの施設・設備についての声
などを参考にしながら検討を続けていく必要がある。また、学生食堂のメニューの充実、購買
の規模拡大についても、実態調査の実施などを含めて継続して検討していく必要がある。
施設については、北 16 条校舎の図書館を含む本館部分が建築後 40 年を越えた建物であり改
築について検討する必要がある。2005 年に大規模な暖房設備の改修を実施したが、建物の構造
上から本館校舎の暖房効率は新館 2 棟に比して非効率である。新エネルギー法の施行もあり、
学園として総合的な省エネルギー対策を検討する必要がある。
花川校舎については、図書館や事務室、また就職指導など学生をサポートするスペースなど
が不足してきている。これは開設以来積み上げられてきた蔵書数や学籍書類、また学生サポー
トの内容等などが増加したことによるものである。
図書館花川館に関しては、北 16 条の図書館本館の改築等とあわせて、現状の開架閲覧のシス
テムを基本としながらも資料的で保存性の高い書籍を別庫に移すなど、本館とより一体化した
図書館づくりが必要であろう。また、花川キャンパス事務室等については、校舎の使用状況を
再検討しながら目的変更による室構成の見直しが必要と思われる。
設備面では、教育用の情報処理機器の更新をここ 1、2 年のうちに実施する必要があり、現在
情報メディアセンターを中心に次期システムを検討中である。現状のシステムは両キャンパス
で導入の時期やシステム構成等も異なっているが、学部固有の教育目的を勘案しながらも、基
本的な部分を共有することでコストダウンをはかり、また導入世代を同じくすることで将来の
バージョンアップ等に対応しやすいシステムを検討したい。
施設・設備の整備には多額な投資が必要なことも多く、補助制度の活用など財政的な裏づけ
を含めて中期的な年次計画をもって進めて行きたい。また省エネルギーに関することや、防災
等に対する啓発的な活動についても、実効性のあるプランを早期に策定し反復することによっ
て成果を挙げるよう努めたい。
199
第11章 図書・電子媒体等
第11章 図書・電子媒体等
【到達目標】
本館は文学部の学習図書館及び研究図書館としての機能を整備するとともに、本学の総合図
書館、保存図書館としての機能を整備する。
花川館は、人間生活学部の学習図書館及び研究図書館としての機能を整備する。
1.図書館サービの充実
・十分な開館時間と開館日を維持する。
・図書館と教育プログラムとの連携を図る。特に教員指定図書制度の整備・活用。
・利用者の情報活用能力を育てるため、体系的な情報リテラシー教育支援の充実。
2.電子図書館機能の充実
・より使いやすい図書館システムを構築する。
・電子ジャーナル及び電子的データベースの整備。
・機関リポジトリとして、本学の研究成果物の自前でのデータベース化を目指す。
【現状の説明】
1.図書、図書館の整備
⑴ 図書、学術雑誌、視聴覚資料、その他教育研究上必要な資料の体系的整備とその量的整備
の適切性
1) 資料収集の方針と体制
大学図書館として、本学の教育・研究内容を十分に支援できる資料収集を行うことを基本方
針としている。そのため、本館では文学・人文科学系の資料を中心に、花川館では社会科学・
自然科学系の資料を中心に収集している。資料の選定にあたっては、図書館長から委嘱を受け
た選書委員を中心として、館員全員が選書分野を分担し、主に学生用の学習基本図書の収集に
努めている。
また、教育・研究に関する専門書等については、各学科から選任された図書館委員を中心に
資料選定される。さらに、主に学生のリクエストによる購入希望図書制度がある。希望図書は
厳選して収集しているが、2003 年度をピークに近年購入希望冊数に減少の傾向がみられる。単
なる読書離れの現われか、それとも必要とする資料の整備が進行していることによるものか、
今後、直接利用者のニーズを反映できる選書の一方法として検討を要する。
2) 蔵書構成
本学図書館による図書、雑誌、視聴覚資料等の蔵書構成は、次の表のとおりである。
200
第11章 図書・電子媒体等
①図書
表 11-1 蔵書構成
2008 年 5 月現在
本 館
分 類
花川館
和 書 洋 書
(冊)
(冊)
合 計
(冊)
%
和 書 洋 書 合 計
(冊)
(冊)
(冊)
分 類
%
総
記
18,146
4,287
22,433
9.3
総
記
2,231
85
2,316
2.7
哲
学
18,628
6,354
24,982
10.4
哲
学
6,268
564
6,832
8.1
歴
史
22,210
2,100
24,310
10.0
歴
史
2,715
206
2,921
3.4
社会科学 24,693
2,172
26,865
11.1
社会科学 27,740
1,023
28,763
34.0
1,397
16,538
19.5
自然科学
4,983
154
5,137
2.1
自然科学 15,141
工
学
1,726
0
1,726
0.7
工
学
10,750
312
11,062
13.1
産
業
599
30
629
0.3
産
業
2,507
114
2,621
3.1
芸
術
12,654
1,485
14,139
5.9
芸
術
4,459
184
4,643
5.5
語
学
11,905
4,196
16,101
6.7
語
学
4,331
116
4,447
5.2
文
学
81,328
23,530 104,858
43.5
文
学
4,493
67
4,560
5.4
合
計 196,872
44,308 241,180
100.0
合
計
80,635
4,068
84,703
100.0
表 11-2 過去 3 年間の資料費
2005 年度
※過去 3 年間の図書受入状況は大学基礎データ
(単位:千円)
2006 年度 2007 年度
本 館
37,200
37,657
38,983
花川館
18,758
18,953
19,124
合
55,958
56,610
58,107
計
(表 41)参照
②雑誌
2008 年 5 月現在
表 11-3 過去 3 年間の雑誌受入状況
表 11-4 雑誌所蔵タイトル数
(単位:種)
2005年度 2006年度 2007年度
和
洋
(単位:種)
計
本 館
1,658
2,007
1,349
本 館
3,046
309
3,355
花川館
875
1,205
603
花川館
958
115
1,073
合 計
2,533
3,212
1,952
合 計
4,004
424
4,428
③視聴覚資料媒体別所蔵数
表 11-5
2008 年 5 月現在
(単位:タイトル)
マイクロフィルム オーディオカセット ビデオテープ CD,LD,DVD
CD-ROM
計
本 館
14
292
303
862
67
1,538
花川館
0
33
440
829
49
1,351
合 計
14
325
743
1,691
116
2,889
201
第11章 図書・電子媒体等
④電子媒体資料
表 11-6
電子ジャーナル
メディカルオンライン 626 誌、 InfoTrac Custom 250 誌
電子データベース
日経テレコン 21、JDreamⅡ、PsycINFO、GiNii(学術コンテンツポータル)、
NDL-OPAC
CD-ROM/DVD-ROM 新編国歌大観、国華、英語論説資料、国文学研究資料館 DB 古典コレクション等
⑵ 図書館の規模、開館時間、閲覧室の座席数、情報検索設備や視聴覚機器の配備等、利用環
境の整備状況とその適切性
現図書館本館は 1967 年に建設され、40 年余りが経過している。2001 年に旧食堂跡 334.58
㎡を地下書庫として整備し、約 14 万冊収容の電動集密書架を設置、学内に分散していた資料を
一箇所にまとめて集中化することができた。これにより資料が利用しやすくなると同時に、閲
覧室の書架も整理され、居住性が向上した。しかし狭隘化は着実に進行した。このため、2006
年度当面の対策として地下旧厨房部分 126.04 ㎡に書架を設置し、
約 2 万冊の収蔵スペースを整
備した。このスペースには利用頻度の低下した重複図書、除籍予定資料を配架するとともに、
花川館の保存スペースとしても活用している。しかし根本的解決には程遠く、現在狭隘化率は
95%に達し対策に苦慮している。
花川館は、1992 年人間生活学部の開設とともに設置された。書庫を持たない全開架方式であ
るため、増加する資料の配架に苦心している。2000 年に約 220 ㎡の閲覧スペースの増床があっ
たが、根本的な解決にはなっていない。また、2006 年度書架を増設し約 4 千冊のスペースを生
み出したが、短期的対応でしかなく、飽和状態にある。
両館共に資料の収容能力の限界に近く、早急に対策を講じなければならない。
表 11-7 図書館の面積
(単位:㎡)
本 館
花川館
閲 覧
948
974
視聴覚
91
※注1
事 務
363
47
書 庫
844
その他
160
46
注1)視聴覚スペースは閲覧に含まれる。
総面積
2,406
1,067
注2)全開架のため書庫は設けていない。
※注2
本学図書館の閲覧座席数は、大学基礎データ(表 43)にあるとおり、本館が 278 席で学生収
容定員の 29.0%、花川館は 206 席で同じく 20.8%であり、目安とされる学生収容定員の 10%
を大きく上回っている。
情報検索設備については、利用者用端末が本館 16 台(内ネット接続 9 台)、花川館 12 台(内
ネット接続 8 台)が設置されている。現状ではほぼ充足していると考えられる。
視聴覚機器については、以下の表 11-8 のとおりである。学習・研究に必要な CD や DVD 資料
の他に、映画の DVD 等の人気が高い。AV ブースは本館 10 台、花川館 5 台が設置され、稼働率
は高い。
202
第11章 図書・電子媒体等
表 11-8 視聴覚機器
(単位:台)
機器・備品 マイクロリーダー テープレコーダー
VTレコーダー
LDプレーヤー
CDプレーヤー
DVDプレーヤー
本 館
2
2
4
2
2
8
花川館
0
1
2
2
1
5
開館時間、開館日数及び貸出冊数は大学基礎データ(表 42)のとおりである。
なお、利用上の整備等の状況は、次のとおりである。
①顧客満足度調査(図書館利用者アンケート)の実施
2007 年 7 月に実施した。報告書を 2008 年 1 月図書館ホームページ上に掲載し広くその内容
を公開している。ちなみに前回は 1983 年 12 月に実施されている。
回収率は学生が 84%と非常に高く、教員が 47%、職員が 75%であった。学生から得られた
図書館に対する全体的な満足度については、
「満足」が 69%、
「どちらともいえない」が 26%、
「不満足」は 3%であった。今後、ここで示された利用者の声を参考に中期 5 ケ年計画を策定
し、これに基づき計画的に整備を進めることとしている。
②図書館広報について
館報「図書館だより」を 1975 年に創刊、現在、年 2 回の発行で第 75 号まで発行している。
また、創刊号から電子化して図書館ホームページ上で公開している。しかし、2007 年の図書館
利用者アンケート調査では、知らない・読んだことがない学生が 74%をしめている。
図書館ホームページは図書館内にサーバーを置き、図書館広報と各種検索ツールを備えた情
報ポータルの機能充実を図ってきた。ホームページの作成・更新などの管理は、図書館職員が
行っているためタイムリーな情報提供が可能である。
③資料展示について
所蔵図書からテーマを決め、特別展示として図書館内で行っている。2007 年度は本館が 9 企
画、292 点展示。花川館が 6 企画、170 点を展示した。内容は、大学が企画する公開講演会と連
携したものや、夏季集中講義関連図書及び年度内に学生希望図書で購入した図書の展示、主題
別展示等多彩な企画で図書館利用者の読書意欲を高めている。
④利用者教育について
新入生オリエンテーションは利用者教育の導入レベルと位置づけ、毎年度入学時に実施して
いる。図書館内の説明、OPAC の利用説明を中心に、学生として必要な基本的事項を説明してい
る。教員の協力もあり、2007 年度の参加率は本館で 98%、花川館で 97%である。
情報検索ガイダンスについては、利用者教育の中級レベルと位置づけ実施しており、2007 年
度は、34 回実施し、394 名が参加している。
⑤地域貢献について
2007 年度の学外利用者は 286 人で、前年度の 188 人より 100 人あまり増加している。この内
一般利用者は 151 人でこちらも前年度の 96 人より増加している。
203
第11章 図書・電子媒体等
また、公共図書館との連携協力として、2000 年 6 月に石狩市民図書館が開館した際に協定を
結び、以来、資料の貸借や直接利用など、同館との相互利用を行っている。
2008 年度花川中学からの申し入れにより、
「職業体験学習」として生徒 3 名を受入れた。2005
年度からは司書課程に学ぶ学生の「図書館実習」も実施している。
⑥図書館組織について
1961 年藤女子大学図書館が設置され、図書館委員会が発足し、図書館運営の中心組織として
重要事項について審議している。現在の委員会構成は、図書館長及び各学科 1 名の委員計 7 名
である。大学の果たすべき役割が多様化する中、図書館委員会の責任も増大している。現在は、
休業期を除くほぼ毎月委員会を開催し、予算・決算等の定型的協議事項の他、毎年度初めに 1
年間の活動目標を定め、年度末に達成度を点検している。
図書館の事務組織については、同年 4 名でスタートした。2003 年度大学の組織改編にともな
い、図書館事務組織は、事務局図書課及び花川事務室情報サービス係として組織変更された。
これは大学事務組織が一体として教育研究を支援していくための整備であった。労務管理上 2
部署となっているが、
業務的には統一された図書館情報システムにより一体で運営されている。
現在の職員数は、専任職員 12 名、契約職員 1 名、非常勤職員 4 名で運営されている。
業務としては製本業務及び図書館情報システムの保守を外部委託しているのみで、ほぼ全業
務を自前で運営している。但し、時間外開館については従来の職員による時差出勤による運営
体制に無理があり、日常業務に支障を生じたことがあったため、2005 年度から本学学生アルバ
イトによる運営体制に変更した。
職員の研修については、主に国立情報学研究所の実務研修に担当者を派遣し最新の知見を得
るとともに、実務的な講習を受講している。他に、文部科学省、文化庁主催の研修や本学が加
盟する図書系の協議会等が企画する研究会等にも適宜参加している。
2.情報インフラ
⑴ 学術情報の処理・提供システムの整備状況、国内外の他大学との協力の状況
本学は、1994 年 4 月、図書館情報システム(富士通 ILIS/X/WR)を導入し、図書館業務を順
次機械化した。その後 2004 年 9 月、システム更新し、順調に稼動している。導入と同時に、国
立情報学研究所(NII)の NACSIS-CAT にデータ登録を行い、これを利用した NACSIS-ILL にも積
極的に参加し相互協力の一翼を担っている。
所蔵目録については遡及してデータベース化が終了しており、蔵書全てが OPAC(オンライン
目録)により検索が可能である。
システム改善については、月 1 回図書館職員とメーカーSE からなるシステムワーキンググル
ープにより、新規業務に対応するためのシステム改善等について協議を行い逐次整備を進めて
いる。
新規事業として、Web 上でのサービス拡大として、2006 年度から OPAC 画面上で貸出予約を、
2007 年度からは同じく ILL(相互利用)申込を実施している。
国内外の他大学との協力状況としては、私立大学図書館協会、北海道地区大学図書館協議会
等に加盟し、2005 年度には、北海道地区図書館職員研究集会の当番館をつとめている。
北海道地区私立大学図書館協議会では研修担当幹事館として、職員研修会の開催や相互協力
204
第11章 図書・電子媒体等
等に積極的に協力している。
北海道地区大学図書館相互利用サービスにも 2003 年の創設時から
加盟し、大学間の相互利用環境を整えている。
また、2008 年度には、私立大学図書館協会の国際図書館協力基金を活用し、本学との協定校
の一つである「韓国カトリック大学」に対して、本学では重複図書等となった 438 冊を寄贈し
資料の有効活用を図っている。
以下は、他機関への複写依頼とキャンパス間の相互利用の統計資料であるが、今後とも、図
書館間の資料借用やコピーの取寄せが必要であろう。なお、図書目録データの整備が進捗した
こと、Web 上で予約ができること等から本館・花川館間の相互利用が年間 4,000 冊前後で推移
し、資料の有効利用を進めるとともに、重複購入を抑える効果が著しい。
表 11-9 ILL 利用状況(文献複写)
表 11-10 本館・花川館間取寄せ
(単位:件)
2005 年度 2006 年度 2007 年度
(単位:冊)
2005 年度 2006 年度 2007 年度
本 館
234
702
456
本 館
2,450
2,684
2,733
花川館
572
466
505
花川館
1,456
1,323
823
合 計
806
1,168
961
合 計
3,906
4,007
3,556
⑵ 学術資料の記録・保管のための配慮の適切性
大学内で生産される研究成果物として、研究紀要類があるが、2006 年度から国立情報学研究
所が支援する「研究紀要公開支援事業」により、『藤女子大学 紀要』(第Ⅰ部・Ⅱ部)は 38
号(2000 年発行)以降、『人間生活学研究』は 13 号(2007 年発行)以降、『キリスト教文化
研究所紀要』は創刊号(2000 年発行)から電子化し、2007 年度時点で計 161 論文が CiNii(NII
論文情報ナビゲータ)上で全文を閲覧できる。
【点検・評価】
本学における高等教育と学術研究活動を支えるために必要な資料の整備については、一貫し
て進められ、系統的な蔵書構築が継続されていると考えている。
年間受入数についても、2007 年度において図書は、8,260 冊、雑誌は 1,952 誌と、それぞれ
文部科学省が実施する大学図書館実態調査の私大 C クラス平均の 7,460 冊、1,265 誌を上まわ
っている。
本館では、2000 年度に開設された文化総合学科に関連する社会科学系の新刊資料整備のため、
2006 年度、2007 年度 2 年間にわたり、法律関係図書及び異文化関係資料の整備を行い、この分
野の資料整備が進んだ。花川館においては、主に食物栄養関係や医学・生化学関係等日進月歩
の分野が多く、改訂・新版と内容の更新が毎年実施される資料が多数あり、十分に対応できて
いない情況である。
2002 年大学院が開設されてからは、より高度な内容の資料が要求され、電子ジャーナルや電
子的データベースの導入に対する要求が高まっている。2006 年度から和雑誌の電子ジャーナル
群である「メディカルオンライン」(626 誌収録)、また 2007 年度からは外国雑誌の電子ジャ
205
第11章 図書・電子媒体等
ーナル群である「InfoTrac Custom」(250 誌収録)を導入し利用に供している。利用状況を見る
とどちらも人間生活学部各学科の利用が主になっている。今後も人間生活学部においては電子
的資料を主に整備することで本館と花川館の蔵書数における格差の是正に努めたいと考えてい
る。
さらに、教育プログラムとの連携を念頭に、シラバス掲載図書の整備を行い、2007 年度は掲
載図書の内 84%の図書を整備した。これは図書館に備えるべき図書のうち入手可能な図書とし
ては 100%に近い整備状況である。
これらに加え、2005 年度から蔵書点検を定期化し、5 ケ年計画で全ての蔵書の点検を実施す
ることとしている。こうした事業により図書資産の適正な管理を行うと共に、適切な除籍を実
施していくこととしている。
次に、施設・設備の整備状況であるが、本館については築 40 年を経過し建物の劣化も進行し
ている。多様な利用者の要求にも対応が難しい状況である。什器類も経年劣化が進んできてい
る。また、書架の狭隘化は、単に図書館職員の負担になるばかりでなく、利用者にとっても別
置図書が増加するなど不便をかけることとなる。花川館のスペースは本館に比較して狭小であ
り、試験期には混雑する。また収蔵スペースも狭隘化が進み、増加する資料の収納に厳しい対
応を繰り返す日常である。
開館時間については、2007 年度実施した図書館利用者アンケートの結果、「現状で満足して
いる」が約 70%となっている。しかし更なる延長を希望する学生も 25%いる。希望内容を見る
と 1 時間程度の再延長や講義前の開館を希望する学生が多い。また、大学院生の利用にはニー
ズにあった適切な対応が必要である。2005 年度から試行した本学学生アルバイトによる時間外
開館業務は安定して運営されている。但し、サービス内容が限定されているため、できるだけ
職員が対応する通常時間帯のサービスを求める声が一部にあることも事実である。今後、サー
ビス内容を精査しマニュアルの整備等さらに検討を重ね、顧客満足度を向上させる方法を考え
ていきたい。
情報検索設備については、
今後、
利用者教育の効果が現れだすと不足することも考えられる。
利用実態を検証しながら適切な整備を進める必要がある。また、視聴覚資料の視聴環境は良い
とはいえず、快適な環境で楽しむことができるよう改善することが必要と考えられる。
開館日については、私大平均の 264 日を 10 日あまり、貸出冊数については、私大平均 20,305
冊を大きく上まわっている。毎年発行される週刊朝日編の「大学ランキング」によると、本学
は学生人当たりの平均貸出冊数が多く、常にベスト 5 に位置している。2009 年度版総合評価で
も上位(640 大学中 29 位)に位置している。考えられる理由として、選書の適切性や利用者に
資料が届くまでの処理が速いなどが考えられる。また、2004 年度から、利用上の配慮として貸
出冊数の上限を大幅に引き上げ、学生は各館 30 冊で合計 60 冊まで、大学院生は各館 50 冊で合
計 100 冊までとしたことも理由の一端と考えられる。貸出冊数は微減がつづいていたが、学生
においては 2007 年度やや持ち直しの兆しが見える。
その要因は教員指定図書の利用が活発な学
科が数字を押し上げている。やはり、講義といかに連携できるかが今後のポイントになると思
われる。
ホームページを活用した広報は重要である。リニューアルを計画しているが、技術的問題も
あり、ページデザインの更新や最新の Web 技術の導入など難しい状況にある。
資料展示については、館内での展示に止まっていることから、図書館外で実施するなど更な
206
第11章 図書・電子媒体等
る工夫が必要と考えている。
利用者教育について、本館・花川館の参加人数の差は、本館が個人参加であるのに対して、
花川館はゼミ単位の参加であることが大きい。図書館を有効に利用することが学習効果につな
がることから、より多くの学生が参加するよう、教員の協力を得て今後とも働きかけを強めて
いきたい。
図書館の地域貢献については、十分に対応しているとは考えていない。今後とも開放のため
大学全体のセキュリティー対策などを検討し、利用環境を整備しながら貢献度を高めていきた
い。
図書館委員会はほぼ定期的に開催され、年間目標を定め年度末に点検するなど、その活動は
概ね適切といえる。しかし、厳しい現状を的確に把握し、図書館を真に教育と情報の基盤とし
て変革していくためには更なる取り組みが求められていると考えている。
図書館職員については先のアンケート調査によれば、対応全般について学生の意見を求め、
71%が「満足」と回答している。しかし、専門的な分野の評価では満足度が 57%と低下してお
り、専門知識のスキルを上げる必要がある。専任職員の平均年齢は 42 歳、今後の運営の中心と
なるべき年代にブランクが見られる。また、業務経験にも偏りが見られる。研修については、
図書館職員としての専門性を高め利用者の要望に適切に対応するためにも重要である。適切な
研修機会を増やすと共に、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)に意識的、系統的に取り組み、
知識や経験の継承を進める必要がある。
現在使用している図書館情報システム(iLiswave)は、月1回開催されるシステムワーキン
ググループで新規業務に対応するよう、順次改善を進めることで使い勝手を向上させている。
しかし、システムの改善には経費を伴う場合もあり、工夫が必要となる。
所蔵データは全て電子化されているが、NII の目録の基準に準拠していないため、相互利用
に活用する NACSIS-CAT(国立情報学研究所)への未登録データの整備を継続している。今後約
4 万冊の点検・整備が必要である。また、雑誌については製本単位のデータに未入力の部分が
あり、計画的に整備する必要がある。
新規に整備された Web 上でのサービスについては、今後一層利用されるよう、学生、教職員
にこれらのシステムについて十分に周知し活用を図る必要がある。
また、本館・花川館資料のキャンパス間搬送システムについて、よりきめ細かく対応できる
よう検討が必要である。
研究成果の電子化により、本学での研究活動が広く発信され有効に活用される環境が整った
ことは評価できる。また、紀要委員会の努力で「紀要投稿規程」に電子化して公開することが
明記され、今後発行される紀要類の著作権問題は解決された。今後新刊分については継続して
電子化申請する予定である。しかし 2000 年発行以前の研究紀要等については、著作権の許諾請
求が困難なことから、全号についての電子化は行われていない。
【将来の改善・改革に向けた方策】
本館・花川館ともに、今後とも改善・改革を進めていくために、これまで以上に教員と図書
館が協力して講義関連資料の適切な整備を行う必要がある。その方法としては、引続きシラバ
207
第11章 図書・電子媒体等
ス掲載図書の整備、次に、講義時に学生に配付される講義関連図書リストを図書館へ提出して
もらい必要な図書を整備する。
また、所蔵資料を有効活用するための工夫が必要である。例えば、電子シラバスと図書館 OPAC
とのリンク付け、教員指定図書制度の適切な運用、資料のテーマ別展示で利用を促す等の取り
組みを強めていく。
購入希望図書については、先の利用者アンケート調査によれば、この制度を利用したことの
ある学生が全体の 10%であり、制度を知らない学生が約 20%いることから、掲示、広報誌の活
用等で制度の周知を進める。なお、当館で未整備な分野の資料については、当面の間大学図書
館間の相互協力により、利用者へ迅速に提供することとし、こうした相互利用システムについ
ても館内にポスターを掲示するとともに、年度初めの新入生オリエンテーションやガイダンス
等において積極的に広報する。
さらに、本館及び花川館ともに大学図書館としての役割を果たすためには、快適な学習・教
育・研究環境を整備するため、新図書館の建設が待たれる。現状では、拡張の余地は少なく難
しい問題ではあるが、大学全体の懸案事項として検討する必要がある。
一方、2006 年度から電子ジャーナル・データベースの整備を進めているが、こうした電子媒
体資料の利用は自然系の学部である人間生活学部が主である。結果としてスペースをとらない
媒体での学術情報の提供を図ることで教育・研究に支障がないよう、今後とも支援体制を強化
したいと考えている。
また、開館時間の延長については、大学院学生の要望にも答えられるよう、図書館委員会と
して、1)現在の学生アルバイトによる体制で延長を図る。2)外部業者委託による延長を図る。
3)機器を整備し無人開館による延長を図る等の対応策をもとに、2008 年度策定の図書館中期 5
ケ年計画期間中に抜本的な見直しを行い具体化したいと考えている。
次に、利用者サービス全般について、一層充実を図る必要がある。特に利用者教育は、図書
館を有効に活用するための必須事項であることから、先進的大学が実施しているように、初年
次教育の一環として位置づけ、必修にしたいものと考えている。さらに、所蔵資料の活用方法
として資料展示を教員と協働して実施し、授業をより具体的に支援することで、読書運動の一
環として位置づけ、成果向上に結びつけたい。
地域貢献については、大学の使命として拡充を図る必要がある。図書館を全面的にオープン
にするための前提として、女子大学であることや、同じキャンパスに中高校があることから、
大学全体のセキュリティー対策と歩調を併せながら、さらに進めていきたいと考えている。
また、図書館におけるサービスの品質を高めるためのポイントは職員の能力にかかっている。
OJT も含めて計画的な人材育成のためのプログラムを作成し、図書館職員としての専門知識を
高めると共に、大学に対して今社会がなにを求めているのか的確に把握できる体制が必要であ
る。
この他、新しい利用者の要求に応えるため、2012 年度までには現在の図書館情報システムの
更新の検討や電子化の対象になっていない学内出版物についても、
固有の問題を解決しながら、
今後電子化の協議を進める必要がある。
最後に、大学独自の研究成果データベース群である「機関リポジトリ」について、全学をあ
げてその必要性の確認や具体的な進め方等の検討が急がれる。
208
第12章 管理運営
第12章 管理運営
【到達目標】
1.本学の定める規程に則り学内各組織が円滑に管理運営されていること
2.教授会、研究科委員会の権限と役割、その活動が明確に設定されていること
3.学長・学部長・各部長が規程に則り選出され、その任務が明確に位置づけられていること
4.教育課程・教員人事及びその他大学運営に関する重要事項の審議等について、大学教授会
及び各種委員会がその機能を発揮するために、その運営が円滑に行われる方策がとられてい
ること
5.大学院の管理運営について効率的で円滑な運営が行われるように、基礎となる人間生活学
部との密接な連携・協力が行われること
6.学園の運営方針、教学に関する重要な事項等に関して、理事会と大学の協力連携関係が維
持され、役割分担がなされること
【現状の説明】
1.教授会、研究科委員会
⑴ 学部教授会の役割とその活動の適切性
学部教授会は、
「藤女子大学学則」第 55 条に基づき設置され、それぞれ「文学部教授会規程」、
「人間生活学部教授会規程」に従い当該学部の教育目標と学部・学科の目的を達成するために
以下の教育及び研究に関する事項について適切な権限が付与されており、これらの事項につい
ては教授会の議を経なければ決定することができないとされている。
・学則及び学部の規程に関する事項
・学部の教育課程に関する事項
・学科の増設廃合に関する事項
・学生の入学、退学、休学、留学及び卒業に関する事項
・学生の試験及び入学試験に関する事項
・学生の指導方針と懲戒に関する事項
・委託学生、科目等履修生、聴講生、特別聴講学生、交換留学生及び外国人留学生の取り扱
いに関する事項
・専任教員の任免と資格に関する事項
両教授会とも学部長、教授、准教授及び専任の講師をもって構成され、学部長が招集し、そ
の議長となり、毎月 1 回は定期的に開催され、他に必要がある時には臨時教授会が開かれる。
教授会構成員 5 名以上の要求がある場合は、学部長は速やかに教授会を招集しなければならな
いことになっているが、これまでこれを適用しての教授会の開催はまだない。教授会の出席定
数は、休職者及び長期公務出張者を除く教授会構成員の 3 分の 2 以上とし、議事は出席者の過
半数をもって議決され、可否同数の場合は議長の決するところによる。
209
第12章 管理運営
教授会の審議事項のうち、重要案件については、全学組織である各種委員会が前もって各学
科に情報を流し、その意向等を踏まえた上で教授会に提案している。また、学部長と学科主任
の連絡会議も随時行われていることから、これまでの運営は比較的スムーズに行われており、
大きな問題は生じていない。
各学部教授会は、学部固有の問題について審議決定し、全学に関わる事項については、学部
教授会で審議後、評議会で最終的に審議決定しており、今のところ支障なく進められている。
⑵ 学部教授会と学部長との間の連携協力関係および機能分担の適切性
a.文学部
学部長と学部教授会の連携を円滑化するため、ほぼ月例で開催される教授会の前の週に、学
部長が 3 学科の主任を招集して学部長・主任連絡会議を開き、教授会(及び人事委員会)の議
題や学部長報告の内容について、あらかじめ問題点を整理して、各学科会議の意向などを確認
しあい、必要な検討を加える機会を設けている。
b.人間生活学部
文学部同様、通常は学部教授会約 1 週間前を目処として毎月定期的に、学部長、各学科主任
を構成員として主任連絡会議を開催し、教授会(及び人事委員会)の議題や学部長報告の内容
について、あらかじめ問題点を整理して、各学科会議の意向などを確認しあい、必要な検討を
加える機会を設けている。
なお、両学部長とも評議会、部長会議、大学自己点検・評価委員会などの主要な会議のメン
バーを兼ねており、大学の基本方針を教授会メンバーに伝える役割も担っているが、これも適
切に行われている。
⑶ 学部教授会と評議会、大学協議会などの全学的審議機関との間の連携および役割分担の適切性
本学では評議会が全学審議機関として、また、教学上の最高議決機関として機能している。
学部教授会は学部に固有の事案については審議、決定できるが、評議会の項で詳述するとお
り、学部、学科その他の重要な施設の設置・廃止に関する事項、学生の定員に関する事項、入
学試験に関する事項等全学に関係する問題については、各学部教授会で審議し、評議会で最終
的に審議し決定している。2 つの教授会の決定が異なる時には、評議会で審議することになる
が、各教授会に再度検討を求めることもあり、慎重かつ民主的に議事を進め教員の共通理解を
得るように極力努めている。
なお、本学には大学協議会のような組織はない。
⑷ 大学院研究科委員会等の役割とその活動の適切性
人間生活学研究科は、大学院学則第 12 条に基づいて、教学上の管理運営組織である研究科委
員会を設けている。研究科委員会は、研究科長及び研究科の授業を担当する専任の教員をもっ
て構成され、教員の人事に関する事項や学位の授与に関する事項など、「人間生活学研究科委
員会規程」に定められた事項を審議する。構成員の 3 分の 2 以上の出席をもって定足数とし、
各専攻会議による検討・審議を経て提起された案件が、出席者の過半数をもって議決される。
210
第12章 管理運営
ただし、学位授与の議決は、出席者の 3 分の 2 以上の賛成が必要である。研究科委員会は、原
則として毎月 1 回の定例で開催される。
2002 年度に発足以来、
特に大きな問題が生じておらず、
適切に運営されているといえる。
その他の大学院独自の常設委員会には入試委員会とファカルティ・ディベロプメント(FD)
委員会がある。入試委員会委員は基礎となる各学科の入試委員 1 名を兼任しており、全学の入
試委員会及び入試課と協調して、大学院の入試に取り組んでいる。大学院 FD 委員会は 2007 年
に発足して 1 年になるが、今後は研究科に新たに設置する自己点検・評価委員会とも連携協力
しながら、FD 活動の拡大を図っていく予定である。
⑸ 大学院研究科委員会等と学部教授会との間の相互関係の適切性
大学院人間生活学研究科は人間生活学部を基礎としてその上に設置されている。従って研究
科の教員を兼担する学部の教員の採用に当たっては、学部教授会における審査と共に研究科委
員会における審査がそれぞれ独立して実施されている。大学院では、前もって大学院の研究指
導を行う教授によって構成する大学院担当教員資格審査委員会で審査し、資格ありと判定した
後に、さらに研究科委員会で審査される。
大学院人間生活学研究科は人間生活学部を基礎としてその上に設置されているという認識の
下に、学部教授会は研究科委員会と連携しながら人事に関する手続きを進めており、両者の相
互関係は適切である。
2.学長、学部長、研究科長の権限と選任手続
⑴ 学長、学部長、研究科長の選任手続の適切性、妥当性
学長の選任は、「藤女子大学学長の選考及び任命に関する規程」(2004 年 4 月 1 日施行)に
基づき行われている。この規程は、1990 年施行の「学長及び副学長の任命及び任期に関する規
程」及び 1992 年施行の「学長選考に関する内規」を一本化して整理し、併せて従来 1 期 6 年で
制限がなかった学長の任期を、1 期 4 年で再任はできるが再任された場合の任期は 2 年で 2 期
を限度とし、合計 8 年以上引き続き在任することができないように改正したものである。
学長候補者については、カトリック教徒であること、大学における教育・研究の経験がある
こと、心身共に健康であること、すぐれた人格を有すること、建学の理念を理解しそれを発展
させることができることという条件が定められている。選考は、理事により互選された 6 名の
理事による学長候補者選考委員会が、学内外から上記の条件を備えた学長候補者を選考する。
選考委員会は、候補者について学部長の意見を徴し、その意見を踏まえた上で、学長候補者を
理事会に推薦する。理事会は、選考委員会の推薦を受け、出席理事の 3 分の 2 以上の賛成によ
り学長を決定する手続きを踏み、理事長が学長を任命している。
学部長候補者の選任は、各学部とも教授会がそれぞれに定める「学部長選考規程」に基づい
て行われている。学部長候補者は、学部の専任教授の中から、学部の教授、准教授及び専任の
講師の選挙により選考され、
単記無記名投票で過半数の得票を得たものが学部長候補者となる。
過半数の得票者がなかった場合には、得票上位の者 2 名について、単記無記名投票を行い、得
票上位の者を学部長候補者とする。教授会はこうした選考過程に基づき、学部長候補者を決定
し、学長に推薦する。学長は、これを受けて学部長を任命している。
研究科長の選任は、「人間生活学研究科長選考規程」に基づいて行われている。研究科長候
211
第12章 管理運営
補者は、研究科委員会の構成員である専任教授の中から研究科の教授、准教授及び専任の講師
の単記無記名投票の選挙により選考され、過半数の得票を得たものが研究科長候補者となる。
過半数の得票者がなかった場合には、得票上位の者 2 名について、単記無記名投票を行い、得
票上位の者を研究科長候補者とする。研究科委員会はこうした選考過程に基づき、研究科長候
補者を決定し、学長に推薦する。学長は、これを受けて研究科長を任命している。
⑵ 学長権限の内容とその行使の適切性
本学では学則第 47 条で学長を置くことを定められており、学長の権限については、学校法人
藤学園の「学長職務規程」により定まっている。学長は、理事長の命を受けて大学の管理に当
たり、掌理する所管事務は教育課程の編成、教育組織及び教員組織の整備、学生の入学、卒業、
休学、復学、退学、再入学、編入学、留学及び除籍に関する決定など教学関係全般が学長の決
裁事項として権限に属している。また、教職員給与の決定、学納金の納入、奨学金の支給や学
納金の免除など財務関係については、理事長の権限に属するが、常時理事長に代わって学長が
意思決定する専決事項とされている。
学内では最高審議機関である評議会や部長会議を招集し、
その議長となり、全学的な問題を掌握する立場で建学の理念を実現・維持すべくその権限を適
切に行使している。
また、学長は「学校法人藤学園寄付行為」第 6 条第 1 号により学内理事として、学園及び学
園が設置する学校の管理・運営に関する基本方針やその他の重要な事項について責任を持って
いる。
このように学長は所属職員をまとめ、大学の経営を統括するという立場と学園の運営・経営
者の重要な一員として責任ある立場にいる。
⑶ 学部長や研究科長の権限の内容とその行使の適切性
学部長は、学部教授会を招集し、その議長となるが、学部の代表者として学部の運営と学務
の管理を掌る。学務には、学部の規程に関する事項、学部の教育課程に関する事項、学生の身
分異動、学生の指導方針と懲戒に関する事項、専任教員の任免と資格に関する事項等が含まれ
る。
また、従来、学部長の権限を行使するに際して予算面での権限を持っていなかったが、2006
年度予算作成から、当該学部の学科予算のヒアリングのメンバーとして加わることとなった。
さらに、学部長特別予算が 2006 年から 100 万円設けられ、学部長が学部の教育・研究に有益で
あると考える事業・催し物の企画書を提出し、学長の承認を得て執行することができるように
なり、学部長の裁量が増している。
学部長は、部長会議、評議会、自己点検・評価委員会、大学部門企画運営会議、ハラスメン
ト人権委員会、部長主任会議他多くの職務上の委員を、学部自己点検・評価委員会では委員長
を務め、また上述のように学科予算のヒアリングへも出席するようになっている。
研究科長は、人間生活学研究科委員会を招集し、その議長となり、大学院研究科を代表し、
教学上の管理運営に関する事項を処理する。学務としては、教員の人事、学位の授与、学位論
文の審査、院生の身分異動、教育課程等を管理する。研究科長は、部長会議、評議会、自己点
検・評価委員会、大学部門企画運営会議、ハラスメント人権委員会、研究科専攻主任打合せの
他研究科独自の会議の多くに職務上の委員を務めている。
212
第12章 管理運営
研究科長にも 2006 年度からは 40 万円が計上されており、FD の実施等に関して研究科長の裁
量にて使用できるようになった。これを利用し、FD に関連する事業に予算執行を行っている。
⑷ 学長補佐体制の構成と活動の適切性
学長を補佐する制度として、学則第47条で職階上の副学長が置かれている。副学長は「副学
長の任命及び任期に関する内規」により、学長の推薦に基づいて理事長が任命する。副学長は
学長を補佐し、その職務は、教育研究、入学試験、学生生活、ハラスメント、大学広報、国際
交流その他を総括する。2006年から副学長は2名となり、分担して学長の補佐を適切に行ってい
る。
なお、副学長の任期は 2 年とし、再任は妨げないが、学長退任の時には、任期満了前であっ
ても退任することとなっている。
事務局長は、学長に代わり専決または代決事項の一部について代決することができ、大学に
かかわる事務決裁者である。事務局長は、学長補佐体制の一員として、毎週、学長、副学長(2
名)との打合せ会に参加し、情報交換と諸問題に対する見解を共有することで、円滑な大学運
営に努めている。
組織上の補佐体制としては、規程に基づく「部長会議」が置かれ大学運営の業務に関し協議
するとともに、業務の報告、連絡、調整を行っている。部長会議は学長、副学長、学部長、研
究科長、教務部長、学生部長、図書館長及び事務局長から構成され、原則として毎月 1 回学長
がこれを招集し、その議長となっている。なお、入試体制の強化・充実を図るため、2009 年度
からは入試委員長を入試部長に格上げし、部長会議構成員に加えることとなった。
また、今後、さらに学長を中心として様々な大学改革を推進する上で、学長を支援する体制
の充実が求められるが、大学の運営にかかわる重要な事項について調査審議するために、2007
年4月に設置された理事長を議長とする大学部門企画運営会議もその一つである。
3.意思決定
⑴ 大学の意思決定プロセスの確立状況とその運用の適切性
本学における意思決定のための最高審議機関は評議会であり、意思決定権者は学長である。
意思決定に至る手続きは、基本的に学則、諸規程の定めに従い、審議機関の議を経て実施して
いる。その運用においてもその過程において合意形成を重視するという本学のスタンスからみ
て適切に行われているといえる。
具体的には、本学では、評議会での議題提案前のプロセスとして①各学科選出委員で構成さ
れる関係委員会で案件を検討する、②委員会は学科の意向を聞き提案をまとめる、 ③委員長
(部長等)から部長会議の中で教授会へ提案される案件の説明、紹介を行う、 ④部長会議は
大学全体の立場から考えた調整を行い、時には委員会に再検討を求めることもあるが、多くは
部長会議を経て教授会・研究科委員会の議案として審議するよう要請する、 ⑤教授会の審議
終了後、評議会の議題として提案される、という手法をとっている。
4.評議会、大学協議会などの全学的審議機関
⑴ 評議会、大学協議会などの全学的審議機関の権限の内容とその行使の適切性
評議会は、全学的最高の議決機関として「評議会規程」に基づき、本学の将来計画に関する
213
第12章 管理運営
事項や学則その他重要な規則の制定及び改廃に関する事項、入学試験、自己点検・評価に関す
る事項など全学的事項を審議する。教学に関する学部固有の事項は当該教授会によって審議さ
れることが原則であるが、両学部にまたがる全学的な事項については評議会によって審議決定
される。
評議会の組織は、学長、副学長、学部長、図書館長、教務部長、学生部長、学科主任、各学
部教授会から推薦された各 3 名の教授及び事務局長であり、2004 年 4 月から、研究科長と専攻
主任がこれに加わった。任期は 2 年であり、再任を妨げないとされている。
評議会の招集は、議長である学長が行い、毎年定期的に開催日を年度当初に 7、8 回設定して
いるが、必要に応じて臨時の評議会も開催している。構成員 7 名以上からの要請があった場合
には、学長はすみやかに評議会を招集しなければならない。
なお、1992年に花川キャンパスに人間生活学部が設置されて2学部となった当初は、両学部の
教授会構成員の全てをメンバーとする合同教授会が全学の審議機関であったが、会議の効率化
と、構成員が会議の開かれるキャンパスへの移動の時間的な無駄を解消するために、合同教授
会を廃止し、2002年に評議会が設けられたという経緯がある。
5.教学組織と学校法人理事会との関係
⑴ 教学組織と学校法人理事会との間の連携協力関係および機能分担、権限委譲の適切性
学校法人藤学園は、教育基本法及び学校教育法に従い、カトリックの精神に基づく教育を行
う目的で、「学校法人藤学園寄附行為」及び「理事会業務委任規則」に従い、本学、高等学校
(3 校)、中学校(1 校)、幼稚園(7 園)を設置・運営し、その日常的な管理運営は、それぞ
れの自主性・自律性に委ねている。理事会の承認が必要な事項は、大学の管理・運営に関する
基本方針、学長・副学長・事務局長の任免、教員の採用、予算・決算に関する事項、学則及び
教授会規則の制定及び変更に関する事項等となっている。
大学関係では、理事長の命を受けて学長が大学の管理にあたっているが、学長の決裁・専決・
代決事項は理事会制定の「学長職務規程」に明記されている。財務関係のうち予算内の執行に
ついては常時理事長に代わって学長が意思決定し、教学関係は全面的に学長の権限に属する。
また、学部の教育課程や学生生活に関する事項は、教授会の議を経なければならないなど、実
際には各種規程に基づき、教授会や評議会等の教学組織を中心とした管理運営が行われている
といえる。
理事会には大学から学長と 2 名の副学長が理事として出席して情報を誤りなく伝え、意思の
疎通が十分に図られており、理事会との連携協力関係には特に問題はない。
また、2008 年 5 月には理事会の諮問機関として、学校法人藤学園高大連携協議会が設置され
た。本協議会の目的は学校法人藤学園に設置する中等教育及び高等教育部門の連携にかわる重
要な事項を協議することにある。組織としては法人からは理事長、法人事務局長、高等学校か
らは中・高等学校校長、教頭、大学からは学長、副学長、学部長、事務局長が参加し、少子化
時代における中・高等学校、大学をめぐる状況に関する現状認識に関する意見交換を行い、よ
り密接な連携を図ることが確認され、その一例として、2008 年の夏休み期間を利用して札幌の
藤女子高等学校から高校生が大学に来て大学教員の指導の下で化学実験を行う一方、本学の入
学試験の際に化学を受験科目として選択せず、化学関連の教科を不得意としている大学生に、
高校教諭が集中講義を行うといった事業を高大連携協定により実施し、理事会のみならず学園
214
第12章 管理運営
全体での交流も活発になっている。
6.管理運営への学外有識者の関与
⑴ 管理運営に対する学外有識者の関与の状況とその有効性
学外有識者が直接管理運営に関与するという形態にはなっていないが、毎年定期的に開催さ
れる学校法人藤学園評議会や理事会に学校経営に経験豊富な学外有識者が加わっており、適切
な情報やアドバイスが提供されている。
7.法令遵守等
⑴ 関連法令等および学内規定の遵守
本学は、教育基本法の第1条に謳う国民を育成する社会的責任を自覚し、学生及び教職員の心
身の安全を守り、教育の目的を果たすためにも関連法令等及び学内の規程の遵守は必須事項と
考えており、自己点検・評価等の実施や大学設置基準の一部改正に伴う教育研究上の目的の明
確化に応えての学部・学科の目的を学則に謳うなど速やかに対応している。また、重要な法令の
改正や科研費公募Q&A集、科研費ハンドブックなども大学ホームページで教職員が確認でき
るようにしている。
建築物の衛生管理については、
「特定建築物」の維持管理に求められている空気環境の測定、
空調の管理、飲料水の管理、雑用水の管理、排水の管理、大掃除、ネズミ等の防除など定めら
れた条件で測定等の実施を行い、札幌市保健所並びに道立江別保健所に報告をしている。その
他、消防施設、電気・エレベーター設備など建築関係の検査も規程に則り実施し、報告してい
る。昨年完成した 2 期工事の校舎建築でも、札幌市の規制である①緑の保全と創出に関する条
例、②都市景観条例、③福祉の街づくり条例等を遵守し、身障者対応の HCWC(ハンディキャッ
プトイレ7)、オストメイト対応トイレ、床の点字ブロック、エレベーター操作部の点字等な
ど細心の留意を払っている。
学内の規程を教職員に周知することが重要であり、学生には守るべき学業・生活の両面にわ
たる規程を「学生便覧」に収録し、オリエンテーションの場等で関係者やクラス担任から説明
をし、協力を求めている。教職員には、大学ホームページの学内向け情報の一つに大学の「規
程集」を掲載している。
他に、「防災管理規程」、「安全衛生管理規程」、「人間生活学部毒物及び劇物管理要項」、
「人間生活学部における動物実験に関する指針」、「人間生活学部動物実験委員会規程」など
が制定され、遵守されている。
⑵ 個人情報の保護や不正行為の防止等に関する取り組みや制度、審査体制の整備状況
個人情報については、本学が保有する個人情報の取り扱いに関する基本事項を定め、もって
個人情報の収集、管理及び利用に関する本学の責務を明らかにするとともに、学生には自己に
関する個人情報の開示並びに訂正、削除等の請求権を保障することにより、個人情報の適切な
保護に資することを目的として「学生個人情報保護規程」を作成し、教職員に十分に周知させ
るとともに学生にも説明をしている。
最近他大学の研究活動において、論文等の捏造といった問題が表面化しており、研究者の倫
理が問われるようになってきている。こうしたことを未然に防止するために、何らかの取り組
215
第12章 管理運営
みを行わなければならないと考え、現在教授会にいくつかのモデルを提示し、本学の実情に合
う様式の検討を依頼しており、早急に取り扱いに関する規程あるいは研究倫理綱領のようなも
のを設定したいと考えている。
科学研究費補助金など競争的資金の運営・管理にかかわる学内の責任体系については「藤女
子大学科学研究費補助金取扱要領」(2005 年 9 月制定)を大学ホームページの学内向け情報と
して「規程集」に掲載し、「藤女子大学科学研究費補助金執行マニュアル」もホームページに
アップしているが、研究者及び事務職員の職務権限の明確化、行動規範、不正使用にかかわる
調査その他を網羅する科学研究費補助金に関する規程等の研究活動に係る不正行為に関する規
程も喫緊の課題として現在検討中である。
【点検・評価】
学部長と学部教授会との連携協力関係については、両学部とも教授会前に学部長・学科主任
連絡会議が開催され、学部長から各学科への情報の伝達、また各学科からの情報が学部長に伝
達されており、これが教授会での審議を円滑化させている。教授会へ議題が提案されるまでに
通常、各種委員会は学科の考えを求めるため、学科会議で検討され、教授会で調整し決定する
経過は、民主的に慎重に合意形成を得る意味で重要であり、教授会で無駄な時間をかけなくて
すむ長所がある筈であるが、必ずしもその趣旨が生かされておらず、決定までに時間がかかる
ことがあり、問題である。議題の精選と迅速な決定が求められることもあり、教授会自体の時
間短縮も考えられて良い。
学長が理事会により任命される流れは、事前に学部長の意見が求められており、適切である
といえる。理事会主導で選任される学長に対して、学部長・研究科長は教授会・研究科委員会
でそれぞれ選任される現行のシステムは、大学の管理運営に教学側の意向を反映する上で妥当
である。
学長権限の行使については、各組織で検討・審議した結果を踏まえて、大学としての最終意
思決定として行われている。これは一方では学長権限の基に学内での民主的な意思決定が尊重
されるという長所を持つが、他方では、学長権限の所在を曖昧にし、新たな課題など既存の意
思決定ルートにはなじまない案件等について学長がイニシアチブを発揮するべき際には、大学
内部のコンセンサスの形成を遅らせるという欠点を持つ。そのため学長のリーダーシップが損
なわれるという危険性も無いとはいえない。これらのリスクを解消するために各組織の権限と
学長権限との関係について、規程を含めて見直しを行う必要がある。
なお、学部長、研究科長については、予算関係で学科の提出案にヒアリングの席で学部長、
研究科長として総合的な立場から意見を述べたり、学部長の企画を実行するために学長へ計画
書を提出し、承認を得て執行することで学部長の権限が明確になった面は評価できるので継続
していく。
こういった中で学部長、研究科長は、大学の管理運営組織のメンバーとしての一面を持ちな
がら、学部、研究科の運営や委員会の委員長職をかねており、学部長の負担が過重となってい
ることは否めない。この点については現行の規程の見直しを含めて、学部教授会において向こ
う 2 年間で改善を図る予定である。
216
第12章 管理運営
意思決定のプロセスには、構成員の意向を的確に反映できること、トップの意思を反映でき
ること、決定事項の実施には関係部署との調整・連携ができること等が求められるが、本学が
行っている意思決定に至るプロセスは、基本として合意形成を重視しつつ着実な大学改革を進
めようとするスタンスをとる本学にとって、その要件を満たしているといえる。しかし、一方
では意思決定に至る効率面、特に新たな課題に対する迅速な問題解決において問題がないわけ
ではない。今後は大学自己点検・評価委員会が点検機能を強化する形で、早めに問題点を予見
し、意思決定にかかわる課題に対応したい。こうした対応ができるためにも、各組織の構成員
間の情報の共有をより密にし、意思決定にかかわる透明性と公開性をより高めていきたい。ま
た大学の管理運営にはこれを統括する学校法人の意向もあり、
これとの連携協力が必要である。
そういった意味からも 2007 年に設置した藤学園
「大学部門企画運営会議」の機能は重要であり、
大学としてもこの組織を活用した効率的かつ迅速な意思決定を行っていく必要がある。
評議会の決定が一方の教授会の決定とは異なることもあるが、学部選出の評議員は教授会と
評議会の役割・機能を十分に理解し、各自の見識に基づいて大学の運営に参画していることか
ら、しこりを残すこともない。評議会の決定は、学部長、学科主任、学部から推薦された委員、
事務局長など代表者を通して全教職員へ連絡されることになっているが、情報を共有するため
に学内ニュースを発行して周知する計画である。
制定された法令及び規程は学内で厳守されているが、公的研究費(競争的研究資金)の管理
監査体制に関する規程と論文の捏造等の研究活動に係る不正行為に関する規程は早急に整備す
る。
【将来の改善・改革に向けた方策】
本学は北海道における女子の高等教育のリーダーとして、長い歴史を持ちつつ多くの指導的
な役割を果たしている女性を育成してきた。そのための管理運営を行うための規程や制度は整
っているといえる。また本学の運営に関して、理事会等からの過剰な干渉などはなく、大学の
自主性を重んじてこられたし、大学としての意思決定に当たってもかなり民主的に決定しなが
ら経過してきた。本学に対する地域社会における評価も比較的良く、かなり安定した状態で管
理運営が行われてきたといえる。
しかし最近のように大学の教育の質が問われ、大学の役割が多様化していく中で、早急に対
応しなければならない新たな課題も多くなってくることが予想されることから、各組織の構成
員間の情報の共有を一層密にし、意思決定にかかわる透明性と公開性を高め、信頼関係に基づ
く意思決定に努めていくことが大切である。
今後においても、教職員は本学の社会における役割と責務を理解し、全体で協力し合いなが
ら、円滑な管理運営に努めていきたい。また、状況によっては 2007 年に理事会の諮問機関とし
て設置された藤学園「大学部門企画運営会議」と連携を図りながら、適切かつ迅速な意思決定を
行っていきたいと考えている。
217
第13章 財務
第13章 財務
【到達目標】
本学が目指す教育研究の充実と発展、そしてその永続性を担保するためには安定した財務基
盤の確立が必須である。そのため最大の収入源泉である学生生徒等納付金の安定的確保と、バ
ランスの取れた支出構成の維持により均衡した財政状況の構築が最大の目標である。そのため
外部資金等収入源泉の多様化や、継続的な支出の抑制など併行して取り組む課題は多いが、現
状の本学の収支構成から学納金をはじめとした帰属収入の水準維持を基底として、着実に諸施
策を積み上げていくことが必要である。
数値目標としては、帰属収入に対する消費支出の割合を 90%以内に抑えることにより、中期
的にバランスシートの改善、殊に減価償却や退職給与に引き当てる金融資産を必要額の 50%以
上に積み上げることを目指す。
【現状の説明】
1.中・長期的な財務計画
⑴ 中・長期的な財務計画の策定およびその内容
本学の財政は、1992 年に既存の文学部キャンパスとは別に、新しいキャンパスをもとめて人
間生活学部を開設し 2 学部体制となったこと、2000 年には短期大学を全て募集停止として大学
を 2 学部 6 学科としたこと、
そして 2002 年に大学院人間生活学研究科を設置したことが大きな
節目となって、現在の財務状況を形成している。このような大学改革に際しては当然のことな
がら、計画時点から完成時までの財政計画をもとに設置経費等が積算され、経過年度ごとに検
証を繰り返してきている。
2004 年度以降は大学改革も一段落した中で、既存の老朽化した校舎の整備を計画すべく 5 年
間の財政予測を策定し、2005 年度から 2007 年度にかけて文学部キャンパスの暖房設備の全面
改修、及び既存校舎を一部解体し、6700 平米の建築面積を擁する新館を建築整備してきた。
2007 年度には新たな大学改革を企画すべく理事会のもとに「大学部門企画運営会議」が設置
され、各学部教授会とともに検討を重ねてきている。改革の具体案は現在、各学部のもとに置
かれた小委員会を中心に策定過程にあるが、このことと併行した形で新たな大学の中期財政計
画及び学園としての中期経営計画を取りまとめることとしている。
2.教育研究と財政
⑴ 教育研究目的・目標を具体的に実現する上で必要な財政基盤(もしくは配分予算)の確立状況
本学は学園開設の地である札幌市北区に 1961 年文学部 2 学科をもって開学し、1950 年開学
の藤女子短期大学とともに同地にあったが、1992 年に短期大学の一部を改組し人間生活学部を
新設した際、設置基準上の要請もあって隣接の石狩市に新たに花川キャンパスを開設した。以
来北 16 条、花川という 2 キャンパスの体制となり、現在では両学部に各々1100 名ほどの学生
218
第13章 財務
が在籍している。
本学の学生数規模から、この 2 つのキャンパス体制は単に施設設備面だけではなく、人的効
率等からみても重複投資となっているものも多く、財政構造上特に人件費・教育研究経費等の
配分に大きく影響している。
校地校舎等の施設維持に要する光熱水費等の固定費については、大学設置基準上の必要面積
の 3 倍ほどの校舎面積により相当額が二重負担となっており、また学生数からみた設備や人員
配置についても同様である。
さらに近年の急速な IT 化による情報関連設備の充実やそれに伴う投資サイクルの短期化な
ど、教育研究の向上にむけた資金要請は絶え間がない。
そうした中で現在の 2 学部 6 学科の学年進行が完了した 2003 年度以降、
最大の収入源泉であ
る学生生徒等納付金については、ほぼ安定した推移となっている。また受託研究などの外部資
金についても一定の成果をあげており、寄付金・補助金等を含めた大学全体の帰属収入は 2003
年度以降 25 億円台でおおよそ安定している。
教育研究に係る財政配分として最大の人件費については 2003 年度以降ほぼ横ばいで推移し
ている。これは学生の教育効果の向上を目標としながらも、教職員の総数を抑制し、また任用
形態を多様化するなどしてきた成果といえる。
教育研究経費については配分額を維持しながら、経済的・効率的な執行により実質的な効果
が挙がるよう、事務改善に取り組んでいる。
施設設備の整備については中期的な財政予測のもとに年次計画を策定して、段階的に整備す
ることを基本としている。2005 年度から 2007 年度にかけての文学部校舎の改修・新館建設に
際しては、総工費の 7 割強である 13 億円を自己調達で賄った。また大型の機械設備や施設のバ
リアフリー改修工事などについては、文部科学省施設設備費補助金等の補助制度を積極的に活
用して、自己負担を減じている。
年間収支からみた本学の財政は、帰属収入に占める消費支出割合が 90%前後で推移している
現状から、ほぼ安定したものといえる。教育研究の充実を担保する財政支出については適正な
収支予測のもとに、総額については予算でコントロールしながら、個別の執行管理で経済性・
効率性を求めることとしている。
3.外部資金等
⑴ 文部科学省科学研究費、外部資金(寄附金、受託研究費、共同研究費など)、資産運用益
等の受け入れ状況
科学研究費については、2004 年度に制定した「研究奨励助成に関する規程」によって申請に
インセンティブを付与し、
活性化をはかっている。
これにより申請件数はある程度増加したが、
採択件数については 2006 年度 2 件、2007 年度 1 件、2008 年度 3 件といまだ低い水準にあるの
が現状である。ただ科学研究費が分担支給される研究分担者としての採択数が 2007 年度 1 件、
2008 年度 6 件と若干ではあるが増加してきており、
総じて申請教員数については漸増している。
受託研究については 2007 年度 9 法人 11 件が契約実行されている。企業からの受託が大半で
あるが、2007 年度は新たに JICA の海外研修員受入れ事業も受託し、提携先が広がってきてい
る。
また資金の受入にまではいたっていないものの、学生をも含めた地元企業との商品開発を共
219
第13章 財務
同で実施し商品化された事業もある。
寄付金については、学内奨学金である「キノルド司教奨学金」のための募集を継続的に行っ
ているほか、同窓会から毎年一定額を受け入れている。2007 年度は大口の寄附が複数あったこ
とで例年を大きく上回ったが、安定した財源とするための課題は多い。
資金運用については、元本リスクを最大に排除した上で期間リスクにも配慮し、短期資金に
ついては譲渡性預金や ABS を組み込んだ金銭信託など、
銀行を中心とした運用を主としている。
長期資金についてはクレジットリスクを過大に取らないよう信用格付け・銘柄に配慮した上で、
5 年までの事業債を中心に運用している。仕組み債等のデリバティブ商品については表面利回
りに捕らわれず、期間や為替リスクが内在されているものでは運用していない。
2007 年度の保有有価証券利回りは年 1.1%ほどである。
4.予算編成と執行
⑴ 予算編成の適切性と執行ルールの明確性
⑵ 予算執行に伴う効果を分析・検証する仕組みの導入状況
本学の予算編成のプロセスは、学長より各予算配分部門に対し年度の予算方針が示され、そ
れに従って事業細目を記した予算明細書が各予算配分部門から提出され、学長・副学長・事務
局長によるヒアリングを経て大学予算を積算し、予算計算書類をもって理事会で承認を受ける
こととなっている。
予算部門は学科・専攻・委員会・センター・事務局各課及び大学共通管理部門の 35 部門から
構成されており、各々学科主任・専攻主任・センター長・委員長・課長・室長など部門責任者
が予算責任者となっている。
予算の執行については、各予算部門の責任者のもとに執行管理されるとともに、事務局会計
課によって予算費目・残高等を確認後、事務局長の執行承認を受けることとしている。また予
算内支出であっても一定以上の調達額となるものや契約を伴うものなどについては、個別に稟
議をもって学長・理事長の決裁を受け、執行することとしている。
予算総額のコントロールについては前年度枠をベースとしたシーリングを設定しており、原
則ゼロベースとすることで総額抑制を続けてきている。ただ、新たな事業計画や大型の設備更
新等については、目論見書等により詳細を検討した上で、シーリングとは別枠で対応するなど
して教育研究の向上に配慮している。
予算執行に伴う効果を分析・検証する仕組みについて、システム化された体制とはなってい
ないが、各予算部門の執行状況を確認し、必要に応じて個別に成果報告を求めるなどして、漫
然とした執行体制にならないよう点検している。
5.財務監査
⑴ 監事監査、会計監査、内部監査機能の確立と連携
本学では、私立学校法で定められている監事による監査及び私立学校振興助成法に基づいた
監査法人による会計監査を行っている。
大学部門に対する監事監査は、学長・副学長・事務局長等に対する管理運営上のヒアリング
調査と、併せて監査法人と連携した経理監査が行われている。また理事の執行状況や学園運営
や財産の状況等に関する監査については、理事会・評議委員会への出席や個別聴取等によって
220
第13章 財務
なされている。
監査法人の監査は、年 3 回の実地監査により会計帳簿や証憑類、計算書類、現預金有価証券
等残高及び会計業務の執行状況等について実施されている。
学校法人としての内部監査のための独立組織はなく、監査法人の監査と併せた形で法人事務
局が各学校の計算書類等を検証することとしている。
6.私立大学財政の財務比率
⑴ 消費収支計算書関係比率および貸借対照表関係比率における、各項目毎の比率の適切性
財務関係比率からみた本学の財政状況について、私立大学の平均値(平成 19 年度版今日の私
学財政)と対照しながら検証する。
人件費率・人件費依存率ともに、全国の系統別あるいは規模別の平均値を上回っている。2008
年 5 月現在の教員 1 人あたりの学生数は 29 人であり、同様に職員 1 人あたりは 36 人である。
これは小人数教育をひとつの目標としていることから大学設置基準に求められる教員数以上の
教員を配していること、また図書館司書や日本語教員養成などの資格に関連する課程からの要
請によって、専任教員数が比較的多いことに一因がある。加えて前述のとおり学部ごとの 2 キ
ャンパス体制のため、特に職員配置において非効率な一面があることも影響している。
教育研究経費比率も全国平均より数ポイント低い状況にあるが、ここ数年は若干ながら増加
傾向にある。この比率は高ければ良いということではなく、教育研究の充実向上のために必要
とされる額を適正に配分し、効率的に執行することが重要であり、そのために必要な予算につ
いては配分されている。
管理経費比率については平均値を 3%前後下回っている。総務・財務など大学の管理運営に
係る部門の経費を抑制して、教育研究に優先して配分している結果でもあるが、反面入試広報
活動の推進には財政的に応じ切れていない面もあると思われる。
借入金等利息比率は平均値より若干高い 0.5%となっているが、これは私学振興・共済事業
団からの施設費借入金(平成 3 年実行分)の金利が年 5.5%と高いことにも起因しており、利
子助成を考慮した実質の比率は 0.3%となっている。
帰属収支差額比率は 10.2%とほぼ平均値であり、直近 5 年間の平均値は 12%となっている。
このことは消費支出の構成比には若干のばらつきはあるものの、収支構造上は均衡した状況で
あるといえる。
収入関係の比率については、学生生徒等納付金比率が平均値より 2%ほど高く、寄付金・補
助金比率についてはほぼ平均値となっている。学納金が最大の収入源泉でもあり、それがまた
学納金に依存する収入構造となっている。手数料や事業収入など他の収入、特に検定料が漸減
してきている状況で、本学にとっての大きな課題といえる。
基本金組入率については、2006 年度、2007 年度に文学部の新館校舎建設という大きな事業が
あったため平均値を大きく上回っているが、減価償却比率がほぼ平均値であることからも伺え
るように、特殊要因を除けば他の大学と大きな差はない。
貸借対照表関係比率については学園全体の比率となる。
学校法人藤学園は大学の他、札幌に中高一貫の中学・高等学校が 1 校、北見・旭川に高等学
校 2 校、北海道・青森・埼玉に幼稚園 7 園を擁し、前身である札幌藤高等女学校の創設以来 83
年をかぞえ、現在の総資産規模は 212 億円であり、このうち大学部門の占める割合はほぼ 50%
221
第13章 財務
である。
2000 年以降、各学校で開設以来の校舎の老朽化対応のため新増築が相次ぎ、大学校舎 3 棟、
中学高等学校校舎 2 棟のほか幼稚園・寄宿舎などが建築され、その大半を自己資金でまかなっ
た。
そのため資産関係比率では、新しい償却資産が多いため減価償却比率が低く、固定資産構成
比率が平均値より高い割合となり、その分流動資産構成比率が低い。また消費収支差額構成比
率についても 2000 年度にマイナスとなって以降、
校舎改築等の施設整備のサイクルが年間収支
での改善サイクルを上回って推移しており、2007 年度は大学の第 2 期新館建築によりマイナス
8.8%と創立以来の支出超過となっている。
負債関連の比率は、全国の医科歯科系を除いた大学の平均値とほぼ同じ水準であり、流動比
率や前受金保有率についても同様である。
退職給与引当預金率等の引当資産については、施設整備のための自己調達により取崩しが続
いてきたため低い水準となっている。
【点検・評価】
本学の年間収支については、現在までのところほぼ安定した状況にあるといえよう。大型の
施設整備等の特殊事情がない年度の消費収支は、減価償却額に見合う程度の収入超過となって
おり、特定資産へも相当額が積み上げられてきた。
1992 年の新学部開設による大学の 2 学部体制、
2000 年の短期大学廃止による 2 学部 6 学科体
制への改組、2002 年の大学院設置と改革を進めてきたが、設置経費を含めた施設設備等の整備
の大半をフローベースから得た自己資金でまかなってきたことは評価できる。一方でストック
ベースでは、累積消費収支の支出超過が総資産の 8.8%となっていることからも明らかなよう
に、引当資産等の金融資産が引当額から大きく不足している現状にある。
収入の大半を占める学納金については、大学全体として入学定員を上回った入学者を確保し
ほぼ安定した状況ではあるが、昨年度 1 学科が入学定員割れとなったことや、最近の退学者の
増加傾向など懸念されることも多い。また原油高騰を機とした世界的なインフレが進む中で、
北海道特有の事象として暖房費の激増など維持経費の面からも、大学を取り巻く環境は非常に
厳しいといえる。
外部資金については、科学研究費補助金の申請件数が教員数の 10%以下と依然低い水準にあ
り、更なる活性化の具体策を検討する必要がある。特に間接経費が拡充されたこともあり、個々
の教員の研究成果に加えて、大学運営における重要な資金源泉としての位置づけからも、採択
件数のいっそうの増加を図るように努める必要がある。
受託研究等は本学の学部構成上から一部特定の学科に偏在しているが、食品分析等の分野で
毎年ほぼ安定した実績を挙げている。
寄付金の募集は卒業生等へ大学広報誌等を通じた募集が主であり、大口の寄付金を除くと低
い水準にあり、新たな募金活動を早急に検討する必要がある。
資金運用については徒に目先の利回りに捕らわれず安定した運用を目指しているが、校舎建
築等によって運用原資が減少したため、2008 年度のリターン金額は減少する見込みである。
222
第13章 財務
予算編成は、本学の組織規模からみて概ね妥当な方法と思われる。事務局関係予算について
は漫然とならぬようゼロベースでの予算額の積算を原則としており、清掃・警備等の委託業務
や重油など大量に消費するものについては、毎年競争見積もりによる選定を繰り返すなどして
絶えずコスト削減を意識した予算編成に努めている。
財務監査については、大学また学園として独立した監査部門を組織していないが、監事監査
及び会計士監査については適切に行われている。
財務比率は、全体としてみると私立大学の平均値を若干下回る数値が多いが、個別の事情を
斟酌すると大きな不安はないといえる。
ただ累積消費収支超過額については 2008 年度をピーク
として中長期的な目標を定めて削減に努める必要がある。
【将来の改善・改革に向けた方策】
本学の教育研究の永続性を財政面で担保するためには、安定した年間収支と将来投資に対す
る適正な配分によって、確固としたバランスシートを構築することが必要である。
収入においては繰り返しになるが最大の基盤である学納金の安定確保が肝要となる。そのた
め、現在魅力ある大学を目指して大学改革を検討中であり、学納金の安定確保はその成果から
もたらされるものである。この収入基盤のもとに、過度に学納金に依存することのないよう、
収入源泉の多様化を図るべきであり、特に科学研究費補助金等の競争的資金の獲得が教育研究
との相乗的視点からも実効ある方途と考える。
支出面では、人件費を含めて総額抑制を基本とした予算施策の継続が必要である。一方、前
述の大学改革に伴って予想される教員数の増加や、世界的な資源高による経常的経費の高騰な
ど直面する課題も多い。教職員の任用形態の更なる多様化や、カリキュラム精査等による非常
勤教員人件費の削減、また環境保全の面からも光熱水費等の抑制、無駄の排除など、大小施策
の積み重ねを着実に進めなければならない。
そのため、人件費や施設設備の整備費をはじめとした支出計画について単年度ではなく数年
程度の中期ゾーンで構築することが必要である。現状の説明で記した大学改革と併せた中期経
営計画で全体を俯瞰しながら、個別の支出抑制に取り組みたい。
223
第14章 点検・評価
第14章 点検・評価
【到達目標】
1.自己点検・評価を行う組織と制度が整備され、十分に機能していること
2.大学自己点検・評価委員会により検討した結果が、大学運営や将来改革の資料として利用
され、実際に改革に取り組んでいること
3.不断の自己点検・評価の結果が広く外部にも公表されていること
【現状の説明】
1.自己点検・評価
⑴ 自己点検・評価を恒常的に行うためのシステムの内容とその活動上の有効性
本学は、大学学則第2条並びに大学院学則第3条に基づき、「藤女子大学自己点検・評価委員
会規程」を定めている他に、文学部及び人間生活学部はそれぞれに「学部自己点検・評価委員
会規程」を設け、全学と学部それぞれに委員会を置き、それらが連携しながら教育研究の向上
と教育目的を達成するために、教育研究活動の点検・評価を行ってきた。具体的には、2004年
に大学基準協会による加盟判定審査(大学評価)を受けたあとも点検・評価を全学的に継続し
て行っており、『藤女子大学 自己点検・評価報告書 2004』、『藤女子大学 現状と課題』
第4号、『藤女子大学 自己点検・評価報告書 2006』を作成し、公表してきた。今回(2008
年度)の自己点検・評価は、2006年度から2008年度の点検・評価を中心として報告書にまとめた
上で、大学評価審査の基礎資料となるものである。
また、本学の自己点検・評価委員会の職務範囲は、自己点検・評価報告書の作成にとどまら
ず、教員の教育研究活動の改善など全般にわたって関わっている。これは、本学のような小さ
い規模の大学では、点検・評価を厳しく行いつつ、改善・改革へと繋げ、「点検・評価」と「改
革・改善」を同時に循環させて、大きな効果を得ることが適していると考えるからである。そ
の一例として、教育の充実に向けての学生による「授業改善のためのアンケート」については、
本学では2000年度から実施しているが、これまでは必ずしも全学的に円滑な実施が行われてき
たわけではなかった。そこで大学自己点検・評価委員会が調整しながら、改善を加え、2005年4
月に大学基準協会から大学基準に適合しているという認定を受けた際には、長所としての特記
すべき事項で、「『学生による授業評価』を実施し、その集計・分析結果を踏まえて、各教員が
学長に今後の改善策を報告するシステムは、教育方法の改善に有効であると評価できる。」と
認められた。その後も自己点検・評価委員会主導により良いシステムに改善を図り「学生によ
る授業評価」という名称を「授業改善のためのアンケート」に改称し、さらに、2007年度には
全ての授業形態に対応するために4種類のアンケートを作成し、専任教員、非常勤講師のほぼ全
員の参加を得て、全学的に実施するに至っている。報告書についても、これまでは学部、学科
別に集計しまとめてきたが、2007年度からは全教科について科目ごとに掲載することにした。
さらに2008年度からは大学設置基準の中で教育改善のための組織的な取り組み(FD )の実施
224
第14章 点検・評価
が義務化されたのに伴い、その対応にあたっても大学自己点検・評価委員会は主導的立場で検
討にあたってきた。具体的には、FDの実施主体である各学部が効果的な実施を図るため、学部
自己点検・評価委員会との間で2度にわたる拡大検討会を開催するなど学部との意見交換をきめ
細かく行い、FDの浸透を図ってきた。その結果、学部にFDの具体的な立案と実施に取り組むFD
委員会を、またこれを契機に大学院にも自己点検・評価委員会を設置することとなった。
なお、大学自己点検・評価委員会の下部機関として、委員会業務を補佐する流れの中で、取
りまとめの機関として自己点検・評価企画調整室を設けている。
⑵ 自己点検・評価の結果を基礎に、将来の充実に向けた改善・改革を行うための制度システ
ムの内容とその活動上の有効性
自己点検・評価において最も重要なことは、その結果を将来の改善・改革につなぐことにあ
り、改善のない点検・評価は大きな意味を持たない。このことに関する本学の姿勢を示すもの
としては「藤女子大学自己点検・評価委員会規程」の第2条で「本学の建学の理念及び社会的使
命を達成するために、不断に教育研究活動等の点検及び評価を行い、その水準の維持と向上を
図ることを目的とする」と定め、委員会の任務(第5条)の一つとして、「改善策の決定とその
実施状況に関する点検・評価」としていることからも明らかである。
将来の改善・改革に関するものの中で、主として学部に関する事項は、学部自己点検・評価
委員会を中心に検討を行い、学部教授会もそれに関与する。大学全体に関わる改善事項に関し
ては、大学自己点検・評価委員会が検討・調整し、常設の関係委員会へ改善するに当たっての
具体案の作成を求めている。
2.自己点検・評価に対する学外者による検証
⑴ 自己点検・評価結果の客観性・妥当性を確保するための措置の適切性
現在は、第三者を含む審査委員会のような機関は学内に設置していない。本学では毎年、何
らかの形で「自己点検・評価報告書」を作成し、その時々に作成した報告書は他大学など各機
関に送付して批判を仰いできた。そして、本学が行ってきた自己点検・評価の結果が客観性と
妥当性を確保しているかどうかの検証も兼ねて 2004 年度に大学基準協会加盟判定審査及び認
証評価を受けた。同協会から大学基準に適合しているという評価を受けたが、これが本学にと
って初めての外部評価となる。点検・評価は多くの作業と時間を要し、本学のような小規模大
学では上述のような委員会の設置は困難であり、大学基準協会による評価は、学外者による検
証とすることで問題はないと考えている。
3.大学に対する社会的評価等
⑴ 大学・学部・大学院研究科の社会的評価の活用状況
本学は、自己点検・評価を含む大学概要等についてホームページに掲載する程度で積極的に
社会的評価を求めては来なかったが、藤学園大学部門企画運営会議においては、進学指導して
いる外部の教育関係者から本学の社会一般における評価を聴取し、その評価を現在検討中の大
学改革の参考として活用している。
これとは別に読売ウイークリー(2007.
6.3)の記事によると、
「親 1 万人にきいた:東大より入れたい大学」の中で、本学は「親が入学させたい大学」のうち、
女子に関しては北海道内では北海道大学に続き 2 位ではあるが、私立大学ではトップに位置し
225
第14章 点検・評価
ていることが報じられており、女子教育のリーダーとしての役割は大きいものと考えている。
こうした本学の社会的評価は、2009 年 JS 企画高校生アンケート(イメージ調査 結果報告)
にも見て取ることができる。これは北海道内の男女高校生約 500 名を対象とした調査である。
調査項目は「知名度」、「教育内容」、「資格・就職・学費」、「施設・キャンパス・歴史」、「校風・
雰囲気」などからなっているが、これによると今なお、私立大学の中では大半の項目について上
位にランクされていることが分かった。
上述のような評価を受けているということは、それだけ学生や社会に対して本学の果たすべ
き責任が重大であるということでもある。本学においては教授会等を通じて、教職員へ伝えら
れ、意識の高揚等とともに広報活動に活用している。
⑵ 自大学の特色や「活力」検証状況
本学の特色に関連して、教育・研究、施設・設備、福利厚生関連、アカデミック・ハラスメ
ントの有無など、学生への各種サービスの充実を図るために「新入生の満足度調査」、「卒業
生への満足度調査」を実施し、大学改善・改革に向けてその活用を図っている。また在学生に
は「授業改善のためのアンケート」の中で教育環境に関する項目を盛り込んである他に、自由
記述欄の中に「施設設備に関して大学に望むこと」という欄を設けており、在学生の満足度を
汲み取ろうとしている。
また、自己点検・評価を通じて「大学基礎データ」が蓄積されてきており、数値的な活性度
も見えてくるようになってきた。これらの各種データは、大学自己点検・評価委員会の基に集
約されるので、大学の検証に活用できるものと考える。
4.大学に対する指摘事項および勧告などに対する対応
⑴ 文部科学省からの指摘事項および大学基準協会からの勧告などに対する対応
2004年度の大学基準協会加盟判定審査の際に大学基準協会から受けた勧告は、財務に関する
「改正前の私立学校法第37条においては理事の業務執行の状況についても監査が求められてい
たが、2003(平成15)年度までの監事の監査報告書にはこの点についての記述がない年度のも
のがあった。改正後の私立学校法では報告書の提出が義務付けられることから、今後同法の趣
旨にそって改善されたい。」という一箇所であった。この件については直ちに改善し、以降監
査報告書は遺漏のないものを作成している。
⑵ 大学基準協会からの助言に対する対応
1
教育内容・方法
○大学・学部等の教育研究の内容・方法と条件整備について
1) 一年間で履修登録できる上限単位数が 54 単位と多いので、より学修の実質化を図れるよう
配慮が望まれる。
上記について、助言により全学的に検討し、2007年度入学生から各学部・学科ともに登録
履修単位の上限単位数を54単位から文学部48単位、人間生活学部49単位に引き下げている。
この規定により、学生に対し履修科目の慎重な選択登録を促し、4年間にわたってバランスよ
い履修計画を行い、履修した科目に対して余裕を持って勉学に臨むことが期待される。詳細
226
第14章 点検・評価
は「第3章 教育内容・方法(学士課程) 第2 教育方法等 2.成績評価法 ⑵履修科目登録の
上限設定等、単位の実質化を図るための措置とその運用の適切性」欄に記載している。
2) シラバスの内容に関しては、多くの授業で成績の評価基準が示されていないなど、教員間
に精粗があるので、改善が望まれる。
上記について、当時のシラバスは確かに記述が不十分であったので、指摘を受けたことを
契機として、直ちに以下のような改善に取り組んだ。シラバス原稿作成時に教務部長名で作
成要領を提示し記述内容及び記述形式の統一を図っており、成績評価の方法についても例示
した上で「いかなる評価要素を、どのような割合によって成績評価をするのか」を明示する
よう求めており、現状ではほぼ精粗ないよう改善されている。
3) 貴大学の理念・目的に照らして、貴大学からの学生・教員の留学・在外研究、また、海外から
の学生・教員の受入れの体制をさらに整備し、促進することが望まれる。
上記について、当時 6 校であった海外留学協定校は現在では 9 校となった。「国際交流セン
ター」の機能・業務を拡充していく中で更なる整備・促進に取り組んでおり、学生の派遣・
受入れについては、「第 3 章 第 3 国内外との教育研究交流」に詳細を記載している。
教員の交流については、2004 年度に学内の海外研修派遣規程による海外研修に 1 名を派遣
したほか、2004 年に「交換教員に関する規程」を新たに制定し、2007 年には韓国の留学協定
校に交換教員として 1 名を派遣している。また、2008 年には研究員として同様の韓国協定校
から 1 名を受け入れるなど、着実に国際交流を進めている。
○大学院研究科の教育・研究指導の内容・方法と条件整備
1) 学位論文の作成のための「特別研究」によって与えられる10単位がその内容に鑑みて適切か
どうか判断する必要がある。
上記について、研究科委員会において検討した結果、6単位に変更した。減らした4単位に
ついて、人間生活学専攻においては開講している科目から選択履修することとし、食物栄養
学専攻においては「食物栄養学研究法」を新設し、「特別研究」の指導を受ける教員のもと
で2年間、履修することとした。
2) 人間生活学専攻の教育・研究環境は、食物栄養学専攻に比べると、改善の余地がある。教
育課程の充実と研究資料等の整備が望まれる。
上記について、本学研究科が審査を受けた当時は人間生活学専攻において予期せぬ教員の
異動が生じてしまい、教授が4名で発足せざるを得ない状況にあった。人間生活学専攻にお
いては、その後必要な人事補充をするとともに、研究科として大学院担当教員の資格基準を
設け、実績が備わってきた教員を審査し、合格した者について大学院を担当させるなどして、
教員組織の充実を図った。これとともに教育課程の充実を図った。
227
第14章 点検・評価
また機器設備等についても、食物栄養学専攻に関しては十分整っているものと考えるが、
人間生活学専攻では大学院開設当初は必要な機器設備なども十分ではなく、基礎的な文献デ
ータベースも整備されていない状況であった。しかし、その後は計画的に整備に取り組み、
現在では、機器設備並びに図書等に関しても徐々にではあるが整備してきている。また、両
専攻で学科も含めて共同利用を図ることにより、研究環境はかなり良くなってきている。
大学院の機器の整備状況は、「第10章 施設設備 1.施設・設備等の整備」に記載している。
3) 学位論文と最終試験の合否判定基準を明文化することが望まれる。
上記について、学位論文の内容は人間生活学専攻と食物栄養学専攻では大きく異なるため
に、統一した合否判定の基準が作りにくい事情があった。その中にあっても学位審査は透明
性、公平性及び客観性をもたせるべく努めてきたが、研究科において調査・検討してきた結
果、2008 年 3 月に修士論文評価基準 6 項目を明文化した。この基準は 2008 年度の「大学院
学生便覧」(31 頁)に掲載し、周知を図っている。
2
学生生活
1) 昨今の就職状況に鑑みるとその必要性が増しているキャリアアップ支援をより積極的に行う必
要があろう。
上記については、昨今の学生の就職に対する意識の変化、企業等の採用時期の早期化に対
応するため、北 16 条キャンパスの就職課は 3 学科に各担当者を置く 3 名体制とし、花川事務
室では学生係就職担当 2 名に加えて、資格に関わる就職先(教員、福祉職、栄養士・管理栄
養士)に関しては人間生活学部 3 学科の教員との連携を強化する方策をとった。こうした連
携は有効に機能している。また、2 年生から就職指導を開始するように変更し、学生便覧に
は 4 年間の就職支援スケジュールを掲載して、1 年生にも進路を意識できるような資格支援
講座の受講を呼びかけている。
具体的な学生へのキャリアアップ面でのサポートについては、教職員が参加する就職関係
研修会の種類と派遣数を増やしスキルアップに努めるとともに、就職担当職員による個別指
導に加えて、課外課程として資格取得支援や公務員対策などの講座を一層充実して開設し、
また、TOEIC、TOEFLなどの外国語検定やMOUSE、OFFICEなどのパソコン検定の対策講座を開設
しているほか、キャリアアドバイザー等による講演会や個別相談会などを実施している。
3
研究環境
1) 授業担当コマ数が多い教員がいるので、改善する必要がある。今後7.5コマを上限とすること
を検討するということであるが、早急に実現するよう努力が望まれる。
上記については、当時授業担当コマ数が、最大の場合、教授が9コマ、助教授7コマ、講師
8.3コマとなっていたことについて指摘されたものである。2004年度においては一部改善され
たが、特に人間生活学部の教員の多くが大学院との兼担であること、また学部の教育課程上、
小人数での指導が必要な実験・実習の科目が多いことなどから、7.5コマを上限とすることに
228
第14章 点検・評価
ついては実現するに至っていない。
教員の研究時間を確保する観点からも、カリキュラム改革を検討することとあわせて、引
き続き改善策を検討していく。
4
教員組織
1) 51歳から60歳の専任教員比率が文学部、人間生活学部ともに多くなっている。全体として若
手の専任教員の構成比率が低いのでバランスを保つよう改善の努力が望まれる。
上記については、2003年度以降の退職者の退職時年齢は、60歳以上が53%、50歳代が11%、
40歳及び30歳代がそれぞれ18%という比率であるが、新規採用者の採用時年齢は、60歳以上
が12%(特任教員)、50歳代が23%、40歳代が23%、30歳代が30%、20歳代が12%と若手教
員の採用に配慮しているが、教員全体としては在職者の加齢進行に伴い50歳代以上が増加し、
40歳未満層の比率が減少している。
今後の採用についても学科ごとの職位のバランスをみながら、専任教員の年齢構成に配慮
した任用に努める。
2) 大学院研究科人間生活学専攻の教員組織の充実が望まれる。
上記については、前述の「教育課程の充実と研究資料等の整備」の項でも説明したとおり、
人間生活学専攻の教員組織の充実に向けて、大学院担当を前提とした教員の採用と教育研究
実績を積んだ教員の資格審査を行ってきたことにより、教員組織の充実は図られたものと考
えている。
5
施設・設備
1) 北16条キャンパスでは、旧校舎の一層のバリアフリー化が望まれる。
上記については、2007年度初めに竣工した北16条校舎第2期新館は全館バリアフリー対応で
あり、この建築工事に伴って旧校舎部分との接続廊下及び各所の段差をスロープ化するなど
して解消し、北16条校舎全体の動線についてバリアフリー対応とした。また、旧校舎のトイ
レなどに非対応部分も残っているが、第2期新館部分に相当数増設したため北16条校舎につい
て施設面では実質的にほぼバリアフリー対応となっている。
6
図書・電子媒体等
1) 図書館本館(文学部)と花川館(人間生活学部・同研究科)では蔵書冊数、所蔵雑誌タイト
ル数等に格差がある。人間生活学部・同研究科の歴史が文学部のそれに比して短いことを考慮
しても、両学部の図書館の格差は大きいように思われるので、改善が望まれる。
上記については、両館は地理的に離れてはいることによる制約はあるが、図書館の機能と
しては各々独立したものではなく、それぞれの学部の特性に配慮しつつ、大学図書館として
一体のシステム・機能を持つよう運営している。2006年度からはWeb上からの貸し出し予約を
229
第14章 点検・評価
可能としたことから、毎日の相互搬送によって貸し出し図書についてはほぼ一元的な利用者
サービスが実現できている。
また、花川館は学部の性格上から自然科学系の更新頻度の高い図書・雑誌類の要求が強い
こともあり、電子ジャーナルや電子データベースを積極的に導入することで、両館の蔵書数
格差の是正を進めている。
7
財務
1) 寄附行為に私立学校法第37条で規定されている監事の職務についての記載がないので、改
善が望まれる。
上記については、本節冒頭に記載のとおり改善済み。
2) 2003(平成 15)年度は改組転換の完成年度であり、決算において人件費比率・人件費依
存率・消費支出比率が大幅に改善されたが、まだ、文系学部とその他の学部を設置する私立
大学の平均と比較しても高いので、改善に向けた努力が望まれる。
上記については、「第13章 財務」に記載のとおり。
8
情報公開・説明責任
1) 広報誌を通じて資金収支計算書および消費収支計算書の公開が教職員・学生・父母等に対し
てなされているが、貸借対照表を含めた財務三表すべてをホームページ等を利用して広く公開
することが望まれる。
上記については、「第15章 情報公開・説明責任」に記載のとおり。
【点検・評価】
このように大学の機能を自己点検・評価するための全学的な体制は作られたと考えるが、こ
れを実のあるものとするには何よりも教員の積極的な参加が必要であり、大学点検・評価委員
会が中心となって調整をしていきたいと考えている。
この「大学自己点検・評価委員会」を組織した当時から、委員会が点検・評価項目を決め、
そのメンバーが資料を作成し、それを同一の委員会で最終的に点検・評価することに問題があ
るのでは、という声があることは事実である。しかし、本学のような小さい規模の大学では、
点検・評価を厳しく行いつつ、改善・改革へと繋げ、「点検・評価」と「改善・改革」を同時
に循環させて、大きな効果を得ることが適していると考える。
点検・評価を継続的に有効に機能させるためには、大学自己点検・評価委員会と学部等の自
己点検・評価委員会の連携を一層密にする必要がある。また、全教職員が点検・評価を十分に
理解し、将来にわたる本学の改善策・改革案を前向きに受け止めて実施することが本学の更な
る発展に繋がるという共通の基盤に立つために、教職員に進行形の情報を流す仕組みを考えな
230
第14章 点検・評価
ければならない。
2007年度初めて「卒業生の満足度調査」を行った。卒業生であれば正直な評価をしてくれる
ものと期待したのであるが、残念ながら回答率が20∼50%と学科による違いが大きかった。卒
業式の際に手渡し、後日郵送をしてもらうという方式を取ったが、2008年度はもう少し改善し
たいと考えている。返却されたものについてはおおむね満足度は高かったが、これは意識の高
い者の意見ということでもあるので、再度実施し改善に向けて取り組む予定である。
さらに新入学生にもアンケートを行い、本学における改善点を汲みあげて、今後の改善・改
革に活用したいと考えている。なお、これまでのところについては、全体として良い評価を得
ている。
【将来の改革・改善に向けた方策】
これまで述べてきたように、基本的には本学の運営に関する自己点検・評価の取り組みの多
くは大学自己点検・評価委員会を中心として行ってきた。学長がこの委員会の委員長となって
いるのもそうした機能を持っているからであり、実際のところ、この委員会の発議により、大
学運営に関する改善方策が採られ、全体としては円滑に推移してきた。こうした大学内での取
り組みに加え、2007年の4月には学校法人藤学園の理事会の基に藤学園「大学部門企画運営会議」
が設置された。この会議は理事長を議長とし、学長、副学長、研究科長、文学部長、人間生活
学部長、事務局長をメンバーとし、「藤女子大学の運営に係わる重要な事項について調査審議
するため設置する」となっている。さらにこの会議において審議することとしては、①大学の
将来構想に関する事項、②入学志願者対策に関する事項、③その他、大学運営に関する重要事
項としている。
この会議は、少子化社会の中で大学としてのアイデンティティを維持・発展させ、また、最
近の学生の学力の低下に対処するためにも、大学内部だけで改革を発議するには限界があろう
との判断から、もっと経営的な立場からの改革が真剣に検討されるべきとの観点から設置され
たものである。これまで30回以上に亘る検討がなされた他に、全学教職員参加の下に意見交換
を4回行ってきた。
このような経過の中で、文学部には学部カリキュラムの見直しを含めた改革を検討する作業
部会「ワーキング・グループ」が作られ、教授会を含めた活発な検討が行われている。また人
間生活学部においても「人間生活学部構想委員会」が作られ、積極的な検討が行われ、現在も
改革に向けた検討が継続中である。2008年度中に全学的に改革計画が策定され、できるところ
から実施する予定である。
このように現在本学では、現実を直視し、学内での努力を行いつつも、理事会等との連携を
とりながら、改革に積極的に取り組んでいるところであり、これについては今後も継続して行
っていくことにしている。
そのためにも全学の教職員は大学が置かれている社会や周囲の状況を正しく認識して、誠実
に自己点検・評価を行いながら、本学に入学してくる学生や社会の信頼を得るために本学の情
報を進んで開示していくとともに、教育研究活動の改善・改革を通して大学としての社会的責
任を果たす努力を続けていく。
231
第15章 情報公開・説明責任
第15章 情報公開・説明責任
【到達目標】
大学の教育研究の現状を的確に点検評価し、また定められた基準により作成された財務関係
書類をもって財政等管理運営の状況を適切に公表・公開することは、大学の公共性・公益性を
もってすれば当然になされるべきことである。
本学は学生や父母など関係するステークホルダーのみにとどまらず、広く地域・社会に自ら
の現状を積極的に発信することで、高い信頼と評価を得ることを目標とする。
【現状の説明】
1.財政公開
⑴ 財政公開の状況とその内容・方法の適切性
本学の財政状況の公開は 1994 年度決算分を大学の広報誌である「広報 藤」に掲載したこと
に始まり、その後予算額を追加しまた決算概要を取りまとめて掲載してきた。2005 年度からは
より詳細な情報を公開すべく、本学ホームページ上に財務情報のページを設けて資金収支計算
書・消費収支計算書・貸借対照表の三表を大学部門及び学園全体を併記の上で円単位まで公開
した。また三表の決算概要について大学部門を中心にして掲載したほか、財産目録総括表及び
監査報告書も公開してきた。
2006 年度には私立学校法の改正により作成することとなった事業報告書の大学部分を抜粋
したものを掲載し、
翌 2007 年度にはその学園全文を掲載し決算額の経年比較表や収支構成図な
どより一層詳細に財政状況を公開している。
2.情報公開請求への対応
⑴ 情報公開請求への対応状況とその適切性
本学の財政状況は前述のとおりホームページ上で詳細に公開しているほか、学生及び父母、
卒業生や関係する学校などに配布している広報誌においても公開しているが、私立学校法第 47
条に定められる「財産目録等の備付け及び閲覧」に関しても学園として「財務情報等公開に関
する指針」を定め、適切に対応している。
閲覧関係書類は法人事務局に備え付けのうえ公示しており、必要に応じて各学校でも請求の
受付を行い、また閲覧に供している。閲覧関係書類としては、前述の資金収支計算書など決算
関係書類三表と財産目録、事業報告書及び監査報告書となっている。
また、学生個人情報保護規程、ハラスメントガイドライン、公的研究費の管理・監査体制な
ど大学の公共性から公表が求められる学内規程等についても、ホームページやパンフレット等
によって学内外に広く周知されるよう努めている。
入学試験の成績については、出願時の要請により合否判定後に個別に開示している。
さらに学園としても、近年の地球環境保全の高まりを受け「藤学園環境宣言」を取りまとめ
232
第15章 情報公開・説明責任
て、美しくよき地球環境を人類共通の遺産として持続的に守り続けるための様々な取組を自ら
の使命として宣言している。
このように財政状況以外の情報公開についても、各ステークホルダーに対して自らの情報開
示を進め、理解を得ることを当然の責務と考える姿勢で対応している。
3.点検・評価結果の発信
⑴ 自己点検・評価結果の学内外への発信状況とその適切性
⑵ 外部評価結果の学内外への発信状況とその適切性
本学の自己点検・評価については、第 1 号である『藤女子大学・藤女子短期大学 現状と課
題』を取りまとめて以降、冊子として刊行して全教職員はもとより文部科学省、大学基準協会
等の教育関係機関や北海道内の国公私立大学、カトリック大学連盟加盟校、配布依頼を受けた
国公立大学及び私立大学や機関、同窓会本部及び系列の 3 女子高校へ送付している。
『現状と課題』編集のために『現状と課題』と隔年ごとに作成している『自己点検・評価報
告書』(大学基礎データ調書を含む)については、『教員の教育・研究活動』とともに本学の
教職員へ配布し、大学のホームページを活用し、社会へ公開している。
また、学生の協力を得て実施した『学生による授業改善アンケート』、『図書館利用者アン
ケート調査報告書』などの刊行物とともに、教員の著作、論文などを学生に向けて図書館に特
別コーナーを設けて展示している。
外部評価については「2005 年 4 月 1 日付で正会員として加盟・登録を承認する」という評価
結果と大学認証評価機関としての同協会からの「大学基準に適合していると認定」された評価
結果、総評及び大学に対する提言の長所として特記すべき事項・助言・勧告の全てをそのまま
『藤女子大学 現状と課題』第 3 号に「大学基準協会加盟判定審査調書」という副題を付けて
掲載し、関係諸機関に送付するとともに、ホームページに掲載した。
また、大学基準協会の認定マークをホームページや大学案内、入試要項及び大学広報紙の「広
報 藤」に掲載し、認証評価機関の認証校であることを広く公表している。
【点検・評価】
財政公開については、学校法人会計基準に基づいて作成され公認会計士の適正な監査を受け
た計算書類を法人全体及び大学部門について公開しており、また財産目録や監査報告書のほか
事業報告書でより詳細な財務情報及び事業内容を公表している。情報公開請求についても学内
指針を定め同様に適切に行われていると考える。
点検評価結果の発信については、報告書のボリュームも大きいことなどから冊子として学生
等全てに配布することは難しいが、
図書館での展示やホームページ上で公開していることから、
適切に行われていると考える。
233
第15章 情報公開・説明責任
【将来の改善・改革に向けた方策】
情報公開・説明責任を果たすために必要な情報の公開の方策としては、現状の冊子として刊
行することとホームページ上の公開を併行して進めていくこととしたい。その上で、大学の教
育研究内容や財政の状況がより透明性をもって的確に発信できるよう、更なる内容の充実に努
める。
また自己点検・評価の結果を学内外に公表してきたが、その反響は必ずしも多くはないこと
から、大学の改善を積極的に図る意味でも反響を待つだけではなく、意見や感想を求めるシス
テムを考える必要がある。
234
終
章
終
章
以上が藤女子大学における自己点検・評価の結果である。前述のとおり、本学ではこの報告
書によって大学基準協会の「大学評価」を受けることとしていることから、点検・評価の大項
目やその到達目標、現状説明、点検・評価、改善方策などは、大学基準協会の示す主要な点検・
評価項目に沿って記述をしている。
最後に大学としての総合的な自己点検・評価の要約と、それを踏まえて全体的な目標達成状
況、取り組むべき課題、大学の将来像について補足しておきたい。
【自己点検・評価の要約】
1.大学、大学院の理念・目的・教育目標
本学では、「キリスト教的世界観や人間観を土台として、女性の全人的高等教育を通して、
広く人類社会に対する愛と奉仕の精神に生きる高い知性と豊かな人間性を備えた女性の育成を
使命とする」との建学の理念を掲げ、この理念に沿って、大学、各学部・学科及び研究科・専
攻毎にその目的や教育目標を学則で定めており、教職員と学生の人格的触れ合いを大事にしな
がら人材育成に努めているところである。
この建学の理念は、本学の歴史の中で脈々と受け継がれており、それが校風として札幌市を
はじめとする地域社会において認知されており、その中で育った卒業生に対する評価は高く、
また、それが本学学生の就職決定率の高さにつながっている
この教育理念、目的、教育目標については、大学のホームページ、大学案内、学生便覧、シ
ラバス等に掲載しており、学生への周知は新入生オリエンテーション、在学生ガイダンス等を
通じて行われている。
2.教育研究組織
本学では前述の理念・目的を達成するため、文学部に 3 学科、人間生活学部に 3 学科を、大
学院人間生活学研究科には 2 専攻を置き、
この 2 学部 1 研究科を教育研究組織の核としている。
この組織に加え、本学の教育研究をさらに充実・発展させるためにキリスト教文化研究所、QOL
研究所を、学生への多様な学習機会を提供し、資格取得にも繋げるために図書館情報学課程、
日本語教員養成課程を設置しており、その他にも教育研究支援のためのセンター等をバランス
よく配置している。この教育研究組織はキリスト教を基盤に豊かな教養、実践的な知識等を持
った女性を育成する体制として十分に機能してきたと評価できる。
しかし、最近の大学を取り巻く環境の急激な変化に対応して、より柔軟性があり、魅力的な
教育研究組織の構築を視野に入れた改革も必要と考えており、その検討も始まっている。
3.学士課程、修士課程の教育内容・方法
本学おける教育は、基本的に小人数によって行われ教育効果を高めようとするものであり、
カリキュラムも大学の理念に沿って学科毎に体系的に編成され、女子学生だけが集う環境だか
235
らこそ培われる自立心のある女性の育成が行われている。
1) 教育課程
教育課程は教育目標に沿って概ね体系的に編成されており、授業形態、単位の計算・認定
も大学設置基準に準拠して取り扱っている。また、学科の壁を低くするオープン・カリキュ
ラムの導入など常に改善への努力が行われており、学生の質的変化に対応したリメディアル
教育など高大接続についても新しい取り組みが始まっている。
2) 教育方法
教育方法については、進級制度や履修科目の上限設定などを新たに導入し、シラバスや授
業改善アンケートの充実についても毎年の積み重ねによって定着しつつあり、改善が図られ
てきている。しかし、FD については、相互授業参観や各種研究会情報の収集など学科等レベ
ルにおける取り組みが始まったばかりであり、大学あるいは学部としての組織的で本格的な
取り組みは、関係委員会で検討を行っている段階である。授業改善アンケートについても、
結果を受けて教員から出された授業改善や意見をさらに有効に活用する方法を追求したい。
3) 国内外との教育研究交流
国際理解と平和への貢献という本学の理念・目的から、国際交流センターを設置し、本学
の教育・研究両面における国際交流の推進を図っているが、充分とは言い難い。今後さらに
海外協定校を増やし、留学生の派遣・受入れや研究者の交流の拡大を図っていきたい。
4) 学位授与・課程修了の認定(修士課程)
修士論文評価基準を「大学院学生便覧」に掲載し、学生に周知している。学位審査に当た
っても副査の 1 名は専攻分野以外の教員をあて、中間報告会、公開発表会により指導教員以
外の多くの教員が指導・検討される機会が設けられるなど透明性・客観的を高めた取り扱い
を行っている。
4.学生の受け入れ
本学の入学者選抜については、学生の入学後の学科での学修に必要な学力を備えているかど
うかの確認を主な目的として、公正を保ちながら多様な方法で実施しており、今年度から新た
に入試センター利用入試を全学科で導入した。入試の多様化は、学力の差異が生ずるという問
題もあるが、一方では多様な能力を持った学生が混在することが教育・研究のダイナミックな
発展に繋がることも期待でき、社会からの要請に応えることにもなり、適切なものと考えてい
る。
定員管理については、18 歳人口の急激な減少により、本学も若干その影響を受けているもの
の、全体で入学者比率は過去 5 年平均 112.2%、在学者比率では、2008 年度で 113.4%と適切
に行われている。大学院については、一時的な内部での混乱もあり定員確保ができていなかっ
たが、教員組織と教育課程を充実することにより、評価は高まってきており、他大学卒業生や
男子の社会人など入学生の裾野は広がってきている。また、社会人学生にはいわゆる「14 条特
例」を適用するなどして、その確保に努力しているところである。
また、本学の中途退学者は、全国から見て少ないものの少しずつ増加する傾向にあるところ
236
から、きめ細かな指導とともに、大学選びにミスマッチがないようアドミッション・ポリシー
の明文化が必要となっている。
5.学生生活
充実した学生生活を送るために奨学金制度、学生の研究成果の発表促進のための制度、学生
が心身共に健康で安全に勉学できる環境整備、ハラスメント防止策、学生のキャリア形成及び
就職支援、生活相談を含む学生相談、課外活動の活性化支援など学生生活に関する支援策につ
いては、制度やその体制については整備されている。しかし、学生からの多様な相談が増加し
ている現状に照らし、カウンセラー体制の充実や相談担当組織相互の役割分担の整理と連携強
化などの課題がある。
6.研究環境
研究費については一律支給の個人研究費の他に、個別の研究計画に対する研究奨励助成の制
度を設けており、個人研究室についても専任教員全員(嘱託教員を含む)に個室と所定の施設・
設備が用意されている。また、教員の学外研修は「国内研修・海外研修派遣規程」として制度
的に整備されているなど研究活動の活性化に向けての環境は整っているといえる。
教員の研究成果についても『教員の教育・研究活動』としてまとめられ、学内外に公表して
おり、論文等の出版に際しても助成する奨励制度がある。
課題としては、一部の特定教員、特に大学院担当教員に授業時間数の多い教員がおり、負担
の平準化を図る配慮が必要なことである。この問題は、現在、理事長を議長とする大学部門企
画運営会議の主導で検討しているカリキュラムの見直しを含む大学改革の中で解決を図ろうと
しているところである。また、本学は教育に重きを置いている大学であるが、研究活動はより
よい教育活動の原点としてとらえており、競争的研究資金の獲得促進などにより研究環境を創
出することも課題の一つである。
7.社会貢献
学生のボランティアによる活動を含め、本学と地域社会との連携や交流事業は数多く行われ
ており、地方自治体等の政策形成にも、環境、福祉、食品、バイオ、子ども等多様な分野を持
つ人間生活学部を中心に多くの教員が参画している。公開講座等も全学、学部、研究所などに
より数多く開催され、図書館等を市民へ開放することも行われている。
8.教員組織
本学の専任教員数は、文学部 30 名、人間生活学部 35 名の計 65 名(2008 年 5 月 1 日現在)
であり、大学設置基準上の必要専任教員数を上回っており、教員1人当りの在籍学生数も文学
部 38.6 人、人間生活学部 29.1 人と適切である。この他、嘱託教員として文学部に 8 名、人間
生活学部に 3 名が配置され、実験・実習や教育研究支援要員として文学部に教務助手 3 名、人
間生活学部に助手 6 名と教務助手 4 名が配置され、教育研究活動及びその補助業務に従事して
いる。
教員の構成については、年齢で 50 歳台が 35%と若干多くなっているが、大きくバランスを
欠くようなことはない。なお、文学部の女性専任教員は 4 名(嘱託教員を含めると 8 名)と少
237
ないので、今後、女性教員の占める割合を高めていきたい。
教員の任免、昇格については、学部毎に定めた基準と手続きに基づき、適切に行われている
と考えているが、今後の検討課題としては、教員の採用形態の多様化と教育研究活動の評価の
問題がある。採用形態の多様化については、社会や学生のニーズにあわせて、教学を充実させ
る人事計画を柔軟に展開するために検討が必要であると考えている。また教育研究活動の評価
については、教員の教育研究活動、学内運営参画状況、社会貢献などの活動に対するインセン
ティブを与えることにより一層の活性化を図る必要があるものと考えている。
9.事務組織
本学の事務組織は、法人組織及び教学組織との連携をとりながら、大学の管理運営、教育研
究上の支援についての業務を適切に行っている。今後とも、組織としての事務機能の向上と学
外研修を中心として実質的な SD の展開などにより職員の資質向上を図っていきたい。
10.施設・設備
本学の校地面積、北 16 条キャンパス、花川キャンパスいずれの校舎面積も大学設置基準を大
幅に上回っている。老朽化が進んでいた北 16 条キャンパスは、一部に建築後 40 年を越える建
物もあるものの、ほとんどの建物は築 10 年以内と整備されており、対策はかなり進んでいる。
バリアフリー対応も優先的に取り組んできており、情報処理機器、その他必要な教育用設備に
ついても整備されている。衛生・安全の確保についても、学内規程の制定、関係規則の遵守な
ど全学的な体制を整備している。
今後の課題は、
北16 条キャンパスにある築40 年を越えた図書館本館等の老朽化建物の改築、
狭隘化が進んでいる花川キャンパス事務室や学生食堂の整備、施設設備の省エネ対策、情報処
理システムの更新などがあるが、施設・設備の整備には多額な投資が必要なことから、財政的
な裏付けを含めて中期的な年次計画によって進めていくことになる。
11.図書・電子媒体等
本学図書館においては、系統的な蔵書構築が継続して行われており、図書の貸出冊数につい
ても、学生1人当たりでは常に「大学ランキング」のベスト5に入るなど有効に利活用がなさ
れている。2006 年度からは電子ジャーナル・データベースの整備を進めてきており、また、国
立情報学研究所をはじめ、国内外の他大学との相互利用、Web 上でのサービス拡大などの環境
を整えており、電子図書館機能の充実も図られている。
本学図書館は、本館、花川館とも閲覧座席数では学生定員比で 20%を越えており、必ずしも
低くはないが、図書館に求められる新規ニーズへの対応、保存施設の狭隘化への対応、築 40
年を越えた図書館本館が老朽化していることへの対応が今後の課題となっている。
12.管理運営
本学の管理運営は、法令や学内規程等に基づいて行われてきており、これまで理事会と教授
会が対立するという事態はなく、意思決定においても民主的手続きを尊重しながら行ってきた
という伝統があり、それなりに評価できる。
しかし、意思決定に至る効率面、特に新たな課題に対する迅速な問題解決の面において、こ
238
れまでの手法は問題がないわけではない。少子化による受験生世代の減少、規制緩和の進展等
大学を取り巻く環境は急激に変化している。大学は生き残り競争と称される淘汰の時代に突入
しているし、学生の質的変化も著しく、従来の教学方法の改善も必要である。こうした状況を
正しく認識して改革を重ねて現状にふさわしい教育サービスを提供できない大学は埋没してし
まう可能性が高いといわれている。本学について、これまでは一定程度社会的に良い評価を受
けてきた。しかしこれからは本学といえどもその例外ではありえない。今回の審査を受けるこ
とを契機として、今後は、大学(学長)と各組織等(学部長等)の権限や役割分担・機能分担
の関係について精査し、理事会サイドとも連携・協力し、各組織の構成員が情報の共有をしな
がら迅速で透明性のある意思決定方策を検討していくことにしている。
13.財務
本学の年間収支についてはこれまでほぼ安定した状況にある。しかし、収入の大半は学納金
に依存していることから、少子化の中にあって過度に学納金に依存することのないよう科学研
究費補助金等の競争的資金獲得に今まで以上に努力する必要がある。
また、建学の理念を追求し、社会的評価を高め、受験生を集めるためには教学の充実を図る
必要があるが、その経費は増大する傾向にある。支出面では人件費を含めての総額抑制を基本
としながらも、大学改革に合わせた中期経営計画の策定し、全体を俯瞰しながら個別の支出抑
制に取り組んでいく。
14.点検・評価
本学の自己点検・評価の実施については、その実施組織を含めて学則で規定されており、全
学の「大学自己点検・評価委員会」と各部局に置かれた学部等の自己点検・評価委員会が連携
をとり、点検・評価を行うシステムをとっている。自己点検・評価の一環として、卒業生を含
む学生の「満足度調査」も行っているが、今後ともこれらの意見等も参考としながら、PDCA サ
イクルによる継続的な点検・評価を行っていきたい。
また、自己点検・評価の結果で明らかになった問題点は、大学改革として取り上げて、教職
員や理事会との連携を図りながら改善していく。
15.情報公開・説明責任
自己点検・評価や認証評価結果は、
冊子として学内及び高等教育機関等に配付してきており、
ホームページでも公開している。財務情報についても、財務三表を大学広報やホームページに
よって広く一般に公開しており、情報公開・説明責任は適切に行われている。また、一般入試
においては、合格最高点・最低点を公表し、希望者には成績開示を行っているなど、情報公開
請求にも積極的に対応している。
しかし、公開した情報に対する反響は多くないという現状から、単に反響を待つのではなく
大学から積極的に意見や感想を求めるシステムの構築が今後の課題である。
239
【目標達成状況】
本学のこれまで行ってきた点検・評価結果を鑑みて、現状としては理念や目的の方向性から
大きく外れるものはなかったと思っている。
しかし、各論においては改善に向けた検討が遅いと言わざるを得ない。これは本学の意思決
定のガバナンスに問題がある。
本学の意思決定のガバナンスは法的には理事会や学長にあるが、
歴史的経緯から実質的には教授会が意思決定に大きな影響力をもっており、迅速な意思決定が
難しい体制になっていることが上げられる。これは、教育は学科レベルあるいは個々の教員の
活動に任されているところが多く、大学全体として、あるいは学部全体として改善に向けて迅
速に対応しようとする組織的な教育活動の展開という視点が弱かったことに起因している。
教育機関である大学にあっては、その教育目標に到達したらそれで終了するというものでは
なく、より高次なものへと間断なく改革して高められていくべきものでなければならない。特
に、少子化による受験生世代の減少、学生の質的変化、規制緩和の進展等大学を取り巻く環境
が急激に変化している中での大学運営は、学部等の意向を調整しながらも学長の強いリーダー
シップと責任のもとに迅速な意思決定により行っていく必要があり、こうした環境変化に対応
して変わらなければ、現状にふさわしい教育サービスを提供することができず、埋没してしま
う恐れがある。
今回の自己点検・評価を通じて、改めて全教職員が理念・目的及び大学が置かれている状況
を正しく認識し、大学の発展・目標達成のため改革に取り組む必要があるものと考える。
【取り組むべき課題】
報告書の各章において示した「到達目標」、「現状の説明」、「点検・評価」、「将来の改
革・改善に向けた方策」は、必ずしも十分なものとはいえないが将来を見据えて、各部署での
現状認識と改善の意思を示している。今回の点検・評価の過程で明らかになった最も大きな問
題点は、各学部・研究科・各部などは、教学や担当業務に責任感を持って取り組んではいるが、
これらが大学全体としての将来像や方法性として明確な形で語られることが少なかったことで
ある。もちろん本学がこれからどのように改革すべきかについては学内にも多様な意見がある
し、現状認識についても必ずしも全員が一致しているわけではない。
しかし、大学を取り巻く状況の急激な変化に対応した意思決定の迅速化、質的に変わりつつ
ある学生への効果的な教育の提供や教育方法の改善、受験生の減少や教学の充実に伴う経費増
大への対応など取り組むべき課題は少なくないことから当面は次の事項について取り組んでい
きたい。
1.責任あるガバナンスの確立
2.財政基盤の強化
3.教学の充実
240
【大学の将来像】
本学が目指すべき大学の将来像については、建学の理念、目的を具現化しようとする点にお
いては、理事会を含め全学の意思は一致しているところであるが、その具体的施策あるいはそ
の実施方法などに関しては、なお模索している部分があるというのが現状である。本学の建学
の理念やその歴史、現行の教育研究組織の専攻分野やその規模などからその自ずから取るべき
将来像は限られ、中教審答申「我が国の高等教育の将来像」で示した大学の機能分類の中の「総
合的教養教育」、「幅広い職業人養成(大学院は「高度専門職業人養成」)」、「地域の生涯
学習機会の拠点」、「社会貢献機能」を中心とした大学づくりを目指してさらに取り組みを強
めて行きたい。
241
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