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組織目標達成とIT導入の整合性を図るために

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組織目標達成とIT導入の整合性を図るために
Software Reliability
E n h an c e m e n t Ce n t er
Information-technology Promotion Agency, Japan
2016年8月5日(金) IPA/SECセミナー資料
組織目標達成とIT導入の整合性を図るために
~ GQM+Strategies®の活用 ~
松岡 秀樹 (日本オラクル株式会社)
岸田 智子 (株式会社クニエ/ IPA/SEC連携委員)
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目次
1. はじめに:IPA/SECの取り組み
2. GQM+Strategies®の提供する価値と概要
3. GQM+Strategies®の活用例(企業は仮想企業)
4. GQM+Strategies®の演習
5. 最後に
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1
1. IPA/SECの取組み
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2
(1) GQM+Strategies®とは?
 「GQM+Strategies®」は、以下の3項目の関係の整合性を取
ることを実現する手法です。
1. 企業・組織の経営レベルにおける目標
2. 目標を達成するための戦略
3. 実務策定レベルにおける個別戦術(例、IT化)
本手法は、ドイツ フラウンホーファー研究機構のIESE(実験ソフト
ウェアエンジニアリング研究所)にて開発
 情報処理推進機構(IPA/SEC)では、2007年10月から2011年3月に
かけてIESEとの共同で、本手法の有効性を確認するために国内企業
数社で試験導入
 2011年4月よりWGを設定し、教材の作成やセミナー等の普及を推進

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3
(2)IPA/SEC WG活動のねらい
企業・組織の経営企画部門、業務部門
および情報システム部門が、IT化計画の
背景およびその期待される成果について
経営レベルに整合性を持って説明できる
ように支援
経営レベルに対して、IT化計画の明確な
評価尺度を提供
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4
(3) GQM+Strategiesの普及展開活動
 最近の主な活動
研究活動:早稲田大学「ゴール指向経営研究会」(鷲崎先生)
ITコーディネータ協会「ゴール指向IT経営研究会」
資料公開 :IPA/SECのHPに研修資料を公開
http://sec.ipa.go.jp/reports/20130325.html
講演会:IPA/SECセミナー、各ITC(東京コンソーシアム、近畿
会、千葉ネットワーク、武蔵野等)でのセミナー、
SPESワークショップ、島根大学や早稲田大学での講
義等多数
今年2月及び9月にIESE、IPA/SEC、早稲田大学で
の合同セミナーを実施
記事 :ITpro掲載「残念なシステム」のなくし方(2014年5/14~
7/9まで隔週で5回連載)
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5
(3) GQM+Strategiesの普及展開活動
 最近の主な活動
書籍出版:
 「Aligning Organizations Through
Measurement: The GQM+Strategies
Approach」、2014、Springerの邦訳書
を出版
 ドイツIESE研究所ならびに日本国内に
おける豊富な実践適用を経た結果を反
映
 経営者や投資(特にIT投資)を検討する
立場の方から、戦略(特にITシステム)の
企画立案や運用に携わる方まで、幅広
く役立つ内容
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6
2. GQM+Strategies®の提供する価値と概要
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7
(1) GQM+Strategies®開発の背景(1/3)
情報システムの課題を示す声
経営者の声
■本当にITを活用して業務効率化やビジネス
価値創出ができているか不明。
業務部門の声
■情報システムの業務実現への寄与度をどう
やって示せばよいのかわからない。
情報システム
部門の声
■情報システム導入の優先順位が決められず、
業務部門からの要求はどんどん膨れ上がる。
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8
(1) GQM+Strategies®開発の背景(2/3)
問題の背景及び要因
1.経営、事業戦略とIT活用との整合性が取れないまま、
現場の要求の通り、システム要件を決めてしまう。
2.業務部門が、システムを使ってどのような業務を実現
したいのか説明できていない。
3.システム部門が、事業戦略と業務施策とのつながりを
共有できないまま、システムへの要求事項を決めて
しまう。
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9
(1) GQM+Strategies®開発の背景(3/3)
問題解決には何が重要か
 何を変えるために、何(どのようなIT)に、どれだけ投資
するのかという道筋を明らかにし、経営陣、業務部門、
情報システム部門が共有する必要
 そのためには、以下が重要
①事業目標と業務施策(目標達成のための施策)の
整合性を図る
②システム活用することで実現できる業務(何がどう
変わるのか)を明確にする
③システム化の優先順位及びその効果を示す
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10
(2) GQM+Strategies®グリッドとその特徴(1/2)
 GQM+Strategies®グリッドとは、各組織をつなぐ組織目標(ゴール)と戦略を
木構造で表現したもの
 『目標連鎖』の見える化
 この木構造で、組織間の目標・戦略とのつながりを論理的に確認
 最終的には企業/事業の方向性を、事業部門と情報システム部門で共有
全社
目標Status
(状態)
戦略(Strategies)
事業部
目標(Goal)
戦略How
(状態を実現する
ための施策)
事業部
測定指標
(KPI)
目標(Goal)
戦略
(Strategies)
システム化テーマ1
測定指標
(KPI)
戦略
(Strategies)
本部
目標(Goal)
測定指標
(KPI)
整
合
性
が
確
保
さ
れ
て
い
る
か
システム化テーマ2
システム化テーマ3
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測定指標
(KPI)
目標(Goal)
戦略
(Strategies)
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11
(2) GQM+Strategies®グリッドとその特徴(2/2)
<特徴1> 各組織上の目標(Goal)を確認する
全社目標(Goal)と全社戦略、それを支える下位組織の目標、戦略(施策)
とのつながりを組織構成に合わせて可視化し、その整合性を明示する。
これによって企業全体が目標に向かって動く際の齟齬(矛盾)がはっきりする。
<特徴2> 各組織の戦略(施策)の根拠を示す
各組織の戦略を明らかにする際に、その根拠を【事実(Context)】と
【仮定(Assumption)】に分けて整理する。【仮定】が多いときには、まだ根拠
があいまいで不確か(リスクがある)と判断する。
<特徴3>目標達成度を測るための指標を決める
目標(ゴール)が達成できなかったときには、どの戦略(施策)がまずかった
のかを見極める必要がある。そのために目標達成を測る指標を決める。
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(3) IT戦略策定プロセスにおけるGQM+Strategies®の位置付け
ここでは、IT戦略を策定する際に一般的に用いられるプロセスを例にとって、 GQM+Strategies®を、
どのプロセスで活用すれば有効に働くかを示します。
現状(AsIs)の可視化
・技術調査
プ
ロ
セ
ス 経営、業務課題の
抽出
現行システム課題
の抽出
現状調査結果
資料
経営、事業、組織
目標の整合性
可視化
◆資料分析及び現場
インタビューによる
目標、施策の可視
化
測定指標の抽出
GQM+Sグリッドの
策定
システムグランドデザイン
(ToBe)策定
システム化
テーマ設定
今までのタスクで
抽出した情報を基
に、全体構想図を
作成
現場が要望するシ 最下位の組織の施
ステム化テーマ抽
策とシステム化テー
出
マの整合性を取り、
情報システム部門
システム化テーマの
が考えるシステム化
優先順位を決める
テーマ抽出
事業・業務全体
構想図
サプライヤー
調達
商品開発
販売
マーケティング
サービス
顧客
ECサイト
申込書
電話
インターネット
商品企画
凡例:
情報の流れ
物の流れ
お金の流れ
販売計画
販売促進
カタログ
インターネット
新聞・チラシ
雑誌 など
注文
調達計画
在
庫
計
画
発注
生産
物流
納品
在庫管理
出荷
システム企画テーマ
コールセンター
出荷指示
支払
商品案内
約○○件/月
受注処理
顧客管理
売上
•購入履歴
•会話履歴
買掛管理
宅配委託先
受注受付
主
要
ア
ウ
ト
プ
ッ
ト
分析
支払
商品分析
顧客分析
販売管理システム(Web系)
営業支援システム
営業支援
受注、
引当
受注、
引当
顧客
請求
データ
入金予定
データ
請求書作成
EAIで連携
給与システム
人事DB
給与計算
会計システム
入金
データ
×××システム
×××システム
×××システム
2013 ・・・・・
・・・・・
会計、買掛管理
人事システム
E
A
I
で
連
携
人事管理
人事DB
支払
データ
システム化
制約一覧
#
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プロジェクト最終報告書
年度
IT投資テーマ
内容 優先度 費用 期待効果スケジュール
2011 統合顧客
ITガバナンス
XXXX年XX月XX日
次期基幹系システム
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
ソリューションビジネス推進本部
コンサルティング1部
・・・・・
・・・・・
2012 ・・・・・
・・・・・
統合顧客
売上売掛管理
売掛
データ
多くは、BSC(バランス
・スコア・カード)等を
用いて可視化して
いる。
御中
問合せ対応
EAIで連携
IT投資計画書
システム化に向けた
特記事項
制約事項、課題
(特筆すべき要望など)
(申し送り事項)
コールセンター
売上売掛システム
課題・問題・
要望一覧
×××システム
×××システム
顧客管理
システム
規模
(想定)
ロ
ー
ド
マ※
ッ
プ当
策項
定目
後は
に
記
入
納品
口座振替
クレジット
アプリ・データ
全体構想図
受注管理
システム化
目標実施
企画
時期
オーナー
×××システム
アフターケア
代金回収
売掛管理
会計処理
システム化
範囲
最終報告書にまと
める
個人・法人・販売店など
商品案内
配送
会計
システム化の
目的・狙い
IT投資計画書
GQM+S
プロジェクト・アライメント
システム化
テーマ一覧
受注受付
受注管理
○○ロジスティックス
ロードマップ
策定
インフラ全体構
想図
1
システムグランドデザイン
基本方針(ToBe)
ロードマップ
2011年
現状(AsIs)
GAP分析(制約条件・課題)
ToBeの見直し方針
システム
化企画
テーマ
2012年
2013年
2014年
×××テーマ
×××テーマ
2
××サービス開始
ビジネス
××サービス開始
3
4
5
6
データ
アプリ
インフラ
2015年
×××テーマ
統合顧客運用開始
××マスタ整備
××マスタ整備
××システム運用開始
××システム運用開始
統合基盤運用開始
××ネットワーク接続
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13
3. GQM+Strategies®の活用例
(企業は仮想企業)
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(1) GQM+Strategies®策定プロセス
初期化
・コミットメントとリソースの確保
・ GQM+Strategies®適用計画の立案
・人材のトレーニング
パッケージ化と改善
・グリッドの適用と改善
・間違った仮定の是正
・戦略を適応
結果の分析
・データを分析し、戦略を改定
・結果のレビューと伝達
・コスト/メリットの分析
モデルの実行
・戦略の適用
・データの収集と検証
・フィードバックセッションの実施
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特性化(
)
・適用範囲の定義
・責任の定義
・環境/事実の特性化
目標設定
・組織構造を特定(
)
・ギャップ分析の実施
現状の施策、データ等の確認
・目標の優先順位づけ
・グリッド導出(
)プロセスの実施
プロセスの選択
・戦略実施の計画
・データ収集と分析の仕方の整理
・フィードバックの仕組みの定義
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(2) 特性化:事例企業プロファイル:化粧品販売
◆会社名:
AAA株式会社
◆業種・業態:
◆売上/経常:
◆従業員数:
◆連結子会社数:
化粧品・薬用クリームの開発、販売、通信販売
300億/78億
500名
6社
◆所在地:
本社 ・・・ 東京
拠点 ・・・ 大阪オフィス、 千葉配送センター
店舗 ・・・ 国内カウンター100 カウンター
海外カウンター10 カウンター
◆国内:97%
・通信販売:60% (WEB30,DM30)
・卸販売:26%
・対面販売:11%
◆海外:3%
◆現在業界ポジション 中堅で業界での伸び率が高い
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(2) 特性化: 経営計画/経営環境の確認
<経営計画>
【経営目標】
売上高を前年度比12%(36億)伸ばす。経常は売上高比26%をkeep
【経営戦略】
1)商品力強化
圧倒的に他社と差別性(高齢者、若年層)のあるメディカルプロダクトの開発
2)既存顧客の深耕
既存販路の対応力を強化した上で、複数販路の相乗効果によるお客様のご利用頻度向上
3)新規顧客の獲得 (アジア市場、若年層)
<経営環境>
1)国内の化粧品市場は、平成20年から減少傾向にあり、平成22年度は2.1兆弱。
2)一方、アジア市場は急成長。
国内での成長を見込めないメーカー各社は、アジア圏を中心とした海外市場に力を注いでいる。
3)中国の化粧品市場は堅調に成長しつつある。2008年から 15%の成長率で推移
4)男性団塊ジュニアが40代に突入してきたことを背景に白髪や薄毛対策品の需要が拡大した。
5)メディカルコスメ、敏感肌用化粧品に対する需要は前年度比7%で伸びた。
6)企業側からの一方的な情報発信やマスメディア情報に追随する消費行動は薄れ、消費者主導
の消費動向はより鮮明になってきた。
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(2) 特性化: 適用範囲の定義
【適用範囲】
営業部における顧客接点の変革によるトップラインの伸長
【環境】
<適用範囲>
営業部(対面やチャネル販売:通信販売は除く)
<システム化の狙い>
顧客情報管理の強化
<営業部の目標 >
(対面、卸で11億伸ばす)
1)新商品(差別化商品)の販売による売上高 2億
2)既存販売網における前年度売上高比 5%増
3)新規販売網における新規顧客獲得による売上高 3億
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(3) 目標設定 組織構造の特定
<組織レベルの定義>
経営
経営企画
対象範囲
レベル
レベル
営業部
営業G
ロジスティック部
プロモーションG
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通信販売部
卸G
WEB推進部
人事・総務
部
財務部
受発注G
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(3) 目標設定 ギャップ分析(現状の問題確認)
現在、情報システム部門は、以下の業務/システムの問題からCRMを再構築したいと要求されています。
顧客
主
な
支
援
シ
ス
テ
ム
商品調達
CRM
仕入管理
店舗
店舗支援
システム
カード
売上管理
システム
店舗情報
システム
商品DB
クレーム
情報
通販
通販管理
定期契約
システム
WEB
顧客DB
外部取込
売上・出荷
受注DB
売上DB
受注管理
バックヤード
卸・百貨店
倉庫管理
卸管理
全社在庫
システム
顧客DB
会計
財務会計
各伝票発行
システム
<業務の問題>
1)美容部員の対応が悪い。適正利用のためのカウンセリングがあまり有効に受けられない。
2)お客様の購買履歴や嗜好にあわせた適切なレコメンドができていない。
3)商品の組み合わせ利用がよくわからない。
4)商品が多すぎて、どれをどの客に勧めればよいかわからない。
5)お客様が過去に買ったアイテムがわからない。
6)製品情報が仕様や使用方法しかなく、どのような売り方をすればよいかわからない。
7)店舗ではポイントは蓄積できるが、他で利用することができない。
<システムの問題>
1)顧客情報がチャネル別に分散している。
2)クレーム情報が顧客情報に統合されていない。
3)購買履歴データは、購入日、商品、金額等のPOSデータしかない。
4)購買履歴データは、売上集計等には活用しているがマーケティングには活用していない。
5)コールセンターでのクレーム対応記録も残しているが、顧客情報と紐付いていない。
6)商品データベースには、商品コード、商品名、値段、原価、成分等のデータしかなく、どのような肌に良いかと
いうような定性情報がない。
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(3) 目標設定:GQM+Strategies®グリッド導出プロセス
経営環境/事実の特性化、適用範囲とその組織レベルの抽出が終了したら、いよいよ、GQM+Strategies®
グリッド導出のプロセスに入ります。以下に導出のプロセス概要を示します。
目標と戦略
CA: 一般的な事実&仮定の導出
1. 一般的事実の収集
2. 基となる仮定の特定
1.
2.
3.
4.
TG: トップレベル目標の定義
1. 当初の潜在的高レベル目標の
特定*
2. 目標の優先順位をつけ最も重
要なものを選択*
3. 選択された目標を正式化*
S: 戦略の決定
1. 各目標の潜在的戦略をブレー
ンストーミング*
2. 戦略の決定*
測定データ
G: 目標の定義
戦略の示唆を導出*
潜在的目標の特定*
最も有望なゴールを
選択*
選択された目標を正
式化*
M: GQM グラフの定義
1. 選択された各目標の
GQM目標を適切なレベ
ルで定義
2. 目標を評価するため、
GQMグラフを特定
3. 解釈モデル間の関係を
特定
[はい]
戦略の詳細化
(refinement)は
可能?*1)
次のレベル
で目標は定
義されてい
る
[いいえ]
[いいえ]
終了
*1)「戦略の詳細化は可能?(Can strategies be refined?)」とは、さらに階層化していくという意味
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[はい]
終了
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(3) 目標設定: GQM+Strategies® グリッドの整理(トップレベル)
まず最初に、特性化プロセスで得た経営戦略、経営環境、営業戦略等の情報をもとに、トップレベルの
ゴール、戦略をGQM+Strategies® グリッドにしたがって整理してみます。以下に示すように整理すると、
今回の適用範囲である営業部の目標(ゴール)と戦略が見えてきます。
経営戦略
Strategy:S1
Strategy:S2
商品力強化 (圧倒的に
他社と差別性のあるメディ
カルプロダクトの開発)
既存顧客の深耕 (既存
販路の対応力を強化した
上で、複数販路の相乗効
果によるお客様のご利用
頻度向上)
Goal: G3
営業部の
ゴールと
新商品(差別化商品)
戦略
の販売による売上高
2億
Strategy:S15
新規顧客の獲得
(アジア市場、若年層)
測定指標
Goal: G4
測定指標
Goal: G5
測定指標
測定指標
(後述)
既存販売網における
前年度売上高5%増
測定指標
(後述)
新規販売網における
新規顧客獲得による
売上高 3億
測定指標
(後述)
Strategy: S4
Strategy: S15
新商品(アンチエージン
グ)の対面販売による販
売強化
商品の組み合わせ(セッ
ト)販売による顧客への
統合価値の提供
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Strategy: S6
Strategy: S7
Strategy: S8
Strategy: S9
ドラッグストア販路開拓
コンビニ販路開拓
中国での新設カウンタを
設置
年齢別、性別ごとのマー
ケティング強化
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(3) 目標設定: 事実と仮定の整理
事業に関するゴールや戦略(事業施策)は、事業部門にインタビュー等を通して確認していきますが、
その際に重要なことは、必ず、ゴールや戦略を決めた「根拠(事実と仮定を分けて整理する)」を確認
しておくことです。
なぜならば、事業部門自身が、根拠の薄いゴール、戦略を策定している可能性もあるからです。
もし、事業部門が「根拠」を示せない場合には、聞き出したゴール、戦略が正しいかどうかわかりません
ので、システム部門から、そのことを指摘してあげることで、事業戦略の誤りを防ぐこともできます。
目標(ゴール)
既存販売網における前年度売上高5%増
事実/仮定
戦略
商品の組み合わせ(セット)販売による顧客
への統合価値の提供
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【戦略の根拠】
<事実>
・メディカルコスメ、敏感肌用化粧品に対する需要は
前年度比7%で伸びた。
・当社の製品の特徴は、肌トラブルにやさしい化粧品。
・ユーザは化粧品の組合せによるトラブルを気にして
いる。(アンケートによると70%の人が相性を気に
している)
・アンチエージングに関するスキンケア商品市場は前年
度比約4.6%の伸びを示す。
<仮定>
・化粧品の相性によって肌に合わない人も多い。
(アトピーの人など)
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(3) 目標設定: 測定データの定義
目標(ゴール)が決まりましたら、事業部門とともにゴール達成の測定データを定義します。
戦略を実行していったときに、何を持ってゴールを達成できたと判断するのかという定量値は、必ず存在
するはずです。したがって、それを確認して定義します。
以下の例で説明しますと、まず①評価する内容を明らかにして、②次に測定のベースラインを確認します。
③そして測定値を明らかにします。④最後に、何をもって達成と判断するのか、判断基準を決めます。
測定のベースライン
既存販売網における前年度末
売上高は111億
何を評価するか
目標(ゴール)
既存販売網における前年度売上
高5%増
既存販売網における前年
度売上高5%増を評価する
測定値
既存販売網における今年度末
売上高は?
事実/仮定
達成の判定基準
戦略
商品の組み合わせ(セット)販売
による顧客への統合価値の提供
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IF M4.2/ M4.1 >=1.05 THEN
OK ELSE FAILED
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(3) 目標設定: 事業部門へのインタビュー時のワークシート
目標(ゴール)と測定指標は、以下のワークシートを使って定義します。
まず目標(ゴール)を決めるときに、忘れてしまう要素が、期限(いつまでに)、責任範囲、制約、他の目標との
関係です。これが明確になっていないと、システムを開発する際に、スコープや期限が作る側の都合で決まっ
てしまいます。また測定指標を決める際には、測定値を判断するための要素が明確になっていなければなり
ません。②のワークシートでその要素を明確にします。
② 測定指標(KPI又はKGI)の定義シート
① 目標(ゴール)の定義シート
対象(何に対して)
1.活動(どうしたいか)
2.フォーカス(何を)
増加させる
前年度売上高比率
3.対象(改善対象となるもの) 既存販売網
4.定量値(どのぐらい)
5%
5.期間(いつまでに)
今年度末までに
6.責任範囲
営業部長
7.制約(制限)
コストは維持
既存販売網
の売上高
目的
評価
内容(Quality Aspect)
今年度末までに前年度売
上高比を5%増加させる。
既存販売網における今年度末売上高は?
背景(事実と仮定)
事実と仮定を
参照
変動要素(Variation Factors)
特になし
変動要素がベースラインに及ぼす影響
既存販売網における昨年度末売上高=111億
特になし
営業部長
解釈モデルを作るための質問(Quality Focus)
ベースライン(基準)
8.他の目標との関係
責任範囲
特になし
解釈モデル(測定目標)
今年度末売上高/昨年度末売上高>=1.05
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25
4. GQM+Strategies®の演習
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26
(1) GQM+Strategies® グリッドの作成 【例】
最初に「商品の組み合わせ(セット)販売による顧客への統合価値の提供」という戦略に対して、下位組織
の目標(ゴール)を「既存顧客単価前年度比20%増加」を設定しました。
CA2
上位組織:営業部の戦略
・製品情報が仕様や使用方法しか
なく、どのような売り方をすればよい
かわからない。
Strategy: S15
商品の組み合わせ
(セット)販売による顧
客への統合価値の提
供
営業G
・商品が多すぎて、どれをどの客に
勧めればよいかわからない。
Goal: G8
GQM Goal: GQM8
GQM Metric: M8.1
既存顧客単価
前年度比20%増加
既存顧客単価
前年度比20%増加を
評価する
昨年度既存顧客
単価=12000円
GQM Metric: M8.2
CA2
CA3
Strategy: S14
Strategy: S15
商品セットの売り方、
勧め方がわかる
データ整備
年齢層や肌質に合わ
せたスキンケア商品の
セット販売
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今年度顧客単価
は?
GQM Interpretation Model:18
IF M8.2/ M8.1 >=1.2
THEN OK ELSE
FAILED
・商品の組み合わせ利用がよくわか
らない。
CA3
・メディカルコスメ、敏感肌用化粧品
に対する需要は前年度比7%で伸
びた。
・ユーザは化粧品の組合せによるト
ラブルを気にしている。(アンケート
によると70%の人が相性を気にし
ている)
・化粧品の相性によって肌に合わな
い人も多い。
(アトピーの人など)
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27
(1) GQM+Strategies® グリッドの作成 【演習】
次に「商品の組み合わせ(セット)販売による顧客への統合価値の提供」という戦略に対して、下位組織の
目標(ゴール)を「XXXXXXXXXXXXXX」を設定しました。
CA4
上位組織:営業部の戦略
・企業側からの一方的な情報発信
やマスメディア情報に追随する消
費行動は薄れ、消費者主導の消
費動向はより鮮明になってきた。
Strategy: S15
商品の組み合わせ
(セット)販売による顧
客への統合価値の提
供
営業G
Goal: G7
【演習】
既存顧客リピート率
5%増加
・お客様が過去に買ったアイテム
がわからない。
GQM Goal: GQM7
GQM Metric: M7.1
既存顧客リピート率
5%増加を評価する
昨年度既存顧客
リピート率=70%
GQM Metric: M7.2
CA4
CA5
CA6
Strategy: S11
Strategy: S12
Strategy: S13
顧客プロファイリング
の作成
プロファイリングに
合わせた美容相談の
実施
【演習】
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CA5
今年度既存顧客
リピート率?
GQM Interpretation
Model:17
ユーザ会への勧誘
IF M7.2/ M7.1 >=1.05
THEN OK ELSE
FAILED
・お客様の購買履歴や嗜好にあわ
せた適切なレコメンドができていない。
・美容部員の対応が悪い。適正利
用のためのカウンセリングがあま
り有効に受けられない。
・コールセンターでのクレーム対応
記録も残しているが、顧客情報と
紐付いていない。
・顧客情報がチャネル別に分散し
ている。
・他のチャネル・組織での対応状
況が見えない。
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28
5. 最後に
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5. 最後に
情報システムを開発する際に、多くの企業は経営、事業部門の要求に
応じて、中期的なテーマを決め計画を立てています。
しかし、その内容は漠然としたものであり、ほとんどの企業が、齟齬が
無く共有できているとは言えない状況にあります。
本方法論は、まず経営、事業部門の目指している目標、戦略を明確にし、
それを経営、事業部門、情報システム部門で共有します。
その後、目標、戦略を支えるためのシステム化テーマとその優先順位を
決め、システム投資の中期計画を立案していくための有効なツールです。
是非とも、この方法論をご活用いただき、戦略的なIT投資を実現いただく
ように願っております。
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【補足】グリッドの可視化ツール
 新バージョンのグリッド可視化ツールの公開
最新版(V1.5):
 IPA/SECのホームページからダウンロード可能です。
http://www.ipa.go.jp/sec/tools/index.html
 グリッドの作成(ゴール、戦略、
根拠の入力とGQMによる目標・
指標の作成)が可能。
 Excelに入力したデータをツール
に読み込ませるという従来の方
式に加え、ツールにデータを直
接入力できるようになりました。
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【ご参考】事業(組織)目標、戦略とシステム化テーマの整合
 GQM+Strategies®グリッドが組織レベルで定義されたら、システム化テーマと組織戦略との
整合性を確保する必要があります。これをすることで、システム化の必要性を示すことができ、
システム化テーマの評価(組織目標・戦略に貢献するかどうか)とシステム化テーマの優先順位
を明らかにすることができます。
GQM+Strategies®
グリッド
組織目標と戦略
部門
下位組織の
戦略(施策)
システム化テーマ
1
組織戦略
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2
3
組織目標(ゴール)
4
組織戦略
には、特に
貢献しない
システム化テーマ
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【ご参考】GQM+Strategies®プロジェクト・アライメント・マトリックス
シ
ス
テ
ム
化
テ
ー
マ
(
プ
ロ
ジ
ェ
ク
ト
)
 GQM+Strategies®では、事業(組織)目標、戦略とシステム化テーマ(システム化プロジェクト)の
整合をとるために、GQM+Strategies®プロジェクト・アライメント・マトリックスというツールを活用
 横軸にGQM+Strategies®グリッドで可視化した戦略、縦軸にシステム化テーマ(プロジェクト)を
記載し、テーマごとに、戦略に与える価値を定量的に表現
 本マトリックスは、テーマの実行判断や、テーマの優先順位を決めるための意思決定の材料。
これにより「選択と集中」を実現
 ここで使う価値を金額価値で表現できればベスト。難しい場合には、戦略実行への寄与度で表現。
参照戦略IDと価値
プロジェクト
STR1
STR2
STR3
STR4
戦略(施策)
Id
価値・
コスト
100
100
100
50
戦略
関与
価値/コス
ト
PRJ1
20
-
90
70
45
3
10.3
PRJ2
10
-
-
30
5
2
3.5
PRJ3
10
10
-
-
1
1.0
2
2
2
プロジェクト関与
0
A1: この組織戦略は、どのプロジェクトも対応していない
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A4: プロジェクトは、多くの戦
略に対応し、ビジネス価値に
最大の貢献をしている
A3: プロジェクトは、一つ
の戦略にしか対応せず、
わずかな貢献しかしてい
ない
A2: これらの組織戦略は一つ以上のプロジェクトが対応している
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【ご参考】GQM+Strategies®のまとめ
 GQM+Strategies®は、組織の目標・戦略とシステム化の整合性を
図るための超上流方法論
GQM+Strategies®グリッド
 組織の各層にわたる目標連鎖と戦略の見える化
 事実と仮定を峻別することで、目標連鎖と戦略の確実度を上げる。
 目標実現の状況を定量化し、意思決定を支援する仕組みの構築
 無駄のない測定により、達成度合いの把握と意思決定の実現
GQM+Strategies®プロジェクト・アライメント・マトリックス
 戦略とシステム化の関係を明確化し、評価
 真に必要なシステム化の実現、優先順位づけの意思決定支援
これらの分析をサポートする描画分析ツールを整備・提供しています。
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