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第5回会議録(PDF形式 461キロバイト)

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第5回会議録(PDF形式 461キロバイト)
第5回旭川市生活困窮者自立促進支援モデル事業検討会議議事録
(子どもの健全育成ワーキンググループ第1回)
○日時
平成25年7月12日(金曜日)15:00~17:00
○会場
旭川市神楽公民館
研修室
1 開会
(事務局)
・ 構成員外のプレゼンターの紹介
・ 事務局より今後のワーキンググループの工程説明
2
プレゼンテーション「子育てに問題を抱えるケースと生活困窮について」
(コーディネーター)
・ 事務局から説明がありましたが,相談支援グループはもう事例検討まで終わりまして,就
労支援の方は,プレゼンテーションが終わって,来週は事例検討に入る。皆様方子育て支
援が3つのグループ最後ということになっています。
・ 具体的な支援のあり方,関係機関のネットワークで,お母さんと子ども,世代間連鎖も含
めて,充分に連携・ネットワークを組めないかということです。今回,土池様と阿保様に
お願いして来ていただきまして,子育てについての現状,お母さんの就労の現状について,
どう考えるべきなのか,参加をいただきました。
・ 4人の方々に20分ずつお話を聞かせていただいて,残りの30分で,今日の話を聞いて
自分の専門的な立場からどのようなアプローチが出来るか,ということについて発言して
いただきたいと思っています。わずか2時間しかありませんが,実りある時間にしたいと
思っていますで,ご協力をお願いいたします。
(プレゼンター:子育て相談課)
・ よろしくお願いします。本日はこのような機会をありがとうございました。母子保健でも,
保護課とワーキンググループを立ち上げて,情報交換など出来ることがないかと考えてい
るところに,このお話があったので,非常にありがたいと思っています。
・ 早速,母子保健係の仕事の概要を,ご説明します。母子保健係には,現在私を含めて13
名おります。1名は作業療法士,残りはすべて保健師です。地区分担制ということで,市
内を4地区に分けまして,概ね1地区を2~3人で持っています。
・ 事業の対象は,母子保健法と児童福祉法では18歳までということになっていますが,学
校に上がりますと,教育委員会での範疇が大きくなりまして,概ね6歳,就学前までのお
子さんの支援が中心となっています。
・ まず大きな事業として,妊婦から6歳までの健診があります。健診については,4か月・
1歳6か月・3歳,ということになります。6歳の健診は教育委員会で実施しています。
もうひとつ,健康相談があります。妊産婦の相談,子育て健康相談があります。それ以外
には家庭訪問。妊婦の訪問と,産後の赤ちゃん訪問として,4か月までのお子さんがいる
家庭を全て訪問することを実施しています。健診,相談,家庭訪問の3つがあります。
・ まず,妊娠したら妊娠の届出,これは第2庁舎と各支所でやっています。第2庁舎で7割
くらい,支所で3割出ます。妊娠届出数の推移を見ますと,概ね2,500~2,700
件と,ほぼ横ばいで推移しています。出生数は若干落ちていまして,1,500件前後で
す。10年前は,3,000件前後でしたので,やはり尐子化が進んでいるなと思います。
-1-
・ 私どもが妊娠届を受理した際,支所には保健師が常駐していませんので実施していません
が,妊婦さんの窓口相談をやっています。主に,ハイリスク妊婦ですとか,相談希望者の
妊婦さんに対応しています。
・ ハイリスク妊婦としては,持病など医学的なリスクをお持ちの方,社会的リスク(若年・
シングル・望まない妊娠),それから特定妊婦。以前虐待をしていた親だとか,出産後に
お子さんの危険な状態が予想できる妊婦さんは特定妊婦ということで,対応しています。
・ 社会的リスク,若年,シングル,望まない妊娠をされる妊婦さんは,年間250人ぐらい
いらっしゃいます。妊娠届を提出される方の1割ぐらいです。こういう方には,窓口で相
談をしています。本人から希望が無くても,私達の方でハイリスクの要因を挙げて,面談
している状況です。
・ 問題がある方については,電話や訪問で,妊婦さんのうちから家庭訪問をしていますが,
子どもを生んでいない妊婦さんは,あまり生活が変わらないですので,ニーズが尐ない,
訪問がしづらい,受け入れが悪いということがあります。委託先の医療機関で,健診を受
ける時に連携を取りながら支援していく,医療機関で何か問題があった時に連絡をいただ
く形で対応しています。
・ 出産をした後には「赤ちゃん訪問事業」を実施します。この時点で99.8%把握してい
ます。本人と会えない場合もあるのですが,生存確認や状況確認,そういうこともしてい
ます。さらに,4か月健診でその後のフォローをしていく,ということで,4か月までに
全てのご家庭をフォローするということを実施しています。4か月健診で未受診だった場
合には受診訪問をしていまして,全員をここでは把握するよう努めています。
・ 妊娠届の状況ですが,旭川市の場合,最も多い届け出の年齢は30~35歳。やはり高齢
化が進んでいる。かつては20代,25~29歳が多かったです。今は30~35歳,次
に多いのが25~29歳,3番目に多いのが35~39歳となっています。もっとも良い
適齢期というよりは,尐し高い年齢で産んでいる方,年齢的なハイリスクを持っている方
がいらっしゃる。
・ 10代の妊婦,10代の妊娠は多くありませんが,若干微増傾向にあります。最近多いの
が,中学を卒業して高校に行っていない方,通信制高校や定時制高校に行っている方の妊
娠。今年度も,16歳と18歳のカップル,16歳と32歳のカップル,16歳同士,と
いう方がいらっしゃいました。
・ 親御さんは「同居していたけど気づかなかった」「気づいた時にはもう8か月だった」と
いうことで,堕胎できない状況で生まなくちゃならない,ということになりました。そう
いうリスクを抱えた方も多いのかなと思います。
・ 最近,母子健康手帳の届け出用紙を変えました。従来はもう尐しシンプルだったのですが,
健康保険の種別を記載するようにしました。法律的に届け出の義務にはなっていないので
すが,生活保護受給者には支援として助産施設等もあるので,ちゃんと申し出るよう伝え
るようにしています。
・ 後ろの方にはアンケートが付けてあります。「子どもについて,妊娠中からどのような不
安がありますか」など。一番下のところに,「現在の経済状況は安定していますか」とい
う質問があるのですが,結構「不安です」と付けてくる方がいます。今年度からこの様式
になり,統計が取れると思うのですが,やはり非常に多いです。
・ シングルも多いですので,やはり問題になってくるのは,今シングルで仕事をしているが,
辞める。その後困りますが,でも「生みたい」。彼は反対しています,抵抗はしません,
じゃあどうしましょう。聞いていく中で,必要な方には,中絶の話もしなくてはならない。
-2-
例えば若年で,親もまだ知らないですとか。そういう方に母子手帳を渡す時には,「一度
親に話してちゃんとしましょうね」とか,市の児童家庭相談室にも連絡をしながら,18
歳未満の方は未成年で,保護者の義務もありますので,そういう方への支援を,一緒にし
ていきます。
・ 先だってその2人が逃避行してしまいました。家を出て,2人で所持金2万円くらいを持
って,どうも札幌に行ったらしいのです。どうしても生みたいと。親は「2人で頑張るな
らいいよ」と言ったのですが,結局は生活も変わらず,自立しない。親は,「子どもを産
んで自立させよう」と,自分たちでは手がつけられないが,子どもを生んで育てることで
自覚していくのではないかっていうことで,出産を認めたようなのですが,まったく生活
態度が変わらない。
・ 結局,一度認めたのだけれども,こんなことではだめでしょうと,こんなことでは出産を
認めませんよ,堕ろしなさいと言ったところ,2人で札幌に行って,補導されて,ご両親
の元に連れて帰ってきて。2人で話をして,ご両家もお呼びして話をしていく中で,今回
は中絶するということで,費用の問題も話し合って,市の児童家庭相談室で調整してくれ
た,というケースもありました。そういうことが多くなってきているのかな,という感じ
です。2人は「生活保護を受けようと思っていた」というようなことを言っていました。
・ 問題として,親に障害がある方が結構多いかと思います。そういう方に対して,やはり関
わりが非常に難しい。シングルのお母さんと子ども1人で,お母さんが能力的なことがあ
って,家でごみの分別もできない,掃除・洗濯の習慣もない。非常にお金がない中で,私
達の方に「こういうお子さんがいますよ」って連絡を受けて,家庭訪問した時には,非常
にひどい状況。ストーブも時々しか焚けないとか,そういう状況でした。
・ 民生委員の方も,時々見に行ってくださっていた。ある日きっかけで生活保護に繋がった
のですが,その時に初めて病院にかかって,知的障害がわかり,療育手帳を取得しました。
ただ,なかなか本人の受け入れが悪く,知的障害があるために生活習慣の習得も出来なけ
れば,子育てもそういう感じですので,子どもに能力はあるのだけれども,基本的生活習
慣が身につかない。確か,おむつをしたまま小学校に上がりました。
・ 検査をすると知的に問題はないのですが,生活の経験不足もあって特別支援学級の方に通
学したのですが,あまりにも生活臭が強くて,学校の教室にも入れられない,周りの人達
も気分が悪くなってしまうということで行けなくなった。その後,色々とアプローチをし
てもお母さん達の受け入れが悪くて,ヘルパーを使うことも出来なかったのですが,きっ
かけがありまして,子どもが児童相談所に一時引き取られて,ちゃんとお風呂にも入れる
生活になり,今は学校にも尐しずつ行けるようになっている,というケースがありました。
・ 知的障害のお母さんの母子家庭で,赤ちゃん訪問の際に支援開始となったのですが,支離
滅裂で一貫性が無い。お母さんが体調を崩すと,お子さんは食べ物も食べられない。生活
費もすぐに使ってしまうという方でした。病院変えまして,そこで初めてお母さんのIQ
が,小学生並みだとわかりました。IQがそれだけ低いシングルのお母さんが,自立して
生活するのはどうなのだろう,という検討をしたようなのですが,ヘルパーが入りまして,
お家を掃除したり,見守り支援をしたりして,それから病院の薬が合ったのか,尐しずつ
安定してきまして,今は何とか保育園にも通えるようになって,緊急の連絡をもらわない
ようになってきたケースでした。
・ 最近多いのが,シングルで生んで,すぐ生活保護を受けたい。そんな希望をする方が多い
です。非常に敷居が低い。気軽で抵抗感が全くなくて,私達もどうなのだろうと思うので
すが,「子ども生むとお金がもらえる」と,友達伝いに聞いている。で,「私シングルで
-3-
す」。出産して,子どもも育てるのは,お金もかかるし大変だっていう,経済的なリスク
を伴う,という感覚自体がない方が多くて,「私が保護受けちゃだめなのですか」って逆
ギレしたりするのです。
・ そういったケースがすごく多くなっている。私達も,生活保護は一時的なものだよ,妊娠
出産は病気ではない,一時的なものですと。生活保護は困っている人を助ける制度で,そ
の後の自立は速やかにしなければならない。通常仕事をしている人も8週間ですし,育児
休暇も1年ぐらいが多いってことを考えると,私達もそういう噂は違うのだよ,ってこと
を伝えなくてはならないなと感じます。
(コーディネーター)
・ ありがとうございました。質問等あるかと思いますが,残りの時間まとめたいと思います。
(プレゼンター:旭川児童相談所)
・ 児童相談所,母子保健,ケースワーカーというのは密接なつながりがあると思います。お
母さんが知的に低いと,生活経験の浅さ,薄さ,それから生活習慣の身に付かなさ,それ
がひょっとしたら虐待にあたるかもしれないということで,虐待通告が来る場合がある。
・ 中卒後で妊娠して,「お母さんから堕ろすように言われた」と堕ろすと,虐待ということ
になって,「虐待児」と統計上出てくるのです。第8次まで「虐待児報告」が出されてい
るのですが,実は0歳児死亡というのが,ものすごく多いのです。その中には,十代の望
まない妊娠も含まれます。毎年なので「なんでこんなに0歳児死亡が多いのだろう」と思
っていましたが,研修先で知りました。
・ これから虐待についてお話しさせていただきます。虐待と一口に言っても,色々切り口が
あります。今回「貧困」というテーマを与えられましたので,「貧困と児童虐待」という
ことでお話をさせていただきたいと思います。私も貧困という定義がよくわかりませんで
した。今回こういう機会をいただいて,私も勉強させていただいて,だいぶ貧困というこ
とがわかってきました。
・ 貧困には2種類あるようです。絶対的貧困と相対的貧困と。絶対的貧困というのが,生命
を維持するに足る,必要最低限な物衣食住が無い状態。必要最低限のものも無くて,急を
要しているような状況,それが絶対的貧困です。
・ 相対的貧困,これは裕福な国もあれば,貧しい国もあるので違うのですが,各国の平均的
な所得水準の半分に満たない状態を,相対的貧困というそうです。平均的な賃金の半分以
下,所得分布の中央値を「貧困線」というのだそうですが,それに満たない状態を,相対
的貧困というそうです。
・ 相対的貧困率とは,社会で「当たり前」と思われていることをするのが困難な生活水準の
ことを指します。日本で言ったらどれくらいの世帯が該当するのか,社会の標準的な所得
の半分以下の世帯ということになりますので,1人世帯では年間の手取りが125万円く
らい。2人世帯では,176万円くらいと言われています。
・ 相対的貧困率が,実は他の国と比べてみても日本は相当悪い。これだけ物があふれていて,
色々な物があって,なのにかなり悪いということで,びっくりしたのですが,先進35か
国中,悪い方から9番目に劣悪です。2009年の厚生労働省の発表では,子どもの貧困
率は15.7%ということで,約6人に1人の子どもが貧困世帯ということです。OEC
D諸国平均を超えています。
・ それから,母子世帯の貧困率は57%ということで,OECD諸国の平均の30%を大き
く超えていますし,加盟国中最悪と言うことです。実は,日本は一見豊かそうに見えるけ
れど,相当なレベルの貧困なのだということが,統計数値からもわかるところです。
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・ 国民一人当たりのGDPが高い先進20か国では,日本より貧しい国は,実はアメリカ,
スペイン,イタリアの3カ国しかない。上から数えて4番目ということで,相当貧困が進
んでいると。高福祉の北欧諸国に比べると,日本の子どもの貧困率は約3倍ということに
なります。なぜ貧困層が拡大したのかというと,失業率が上昇している。2012年には
4.3%,2009年9月には5.5%になってしまっていると,リストラされて就職で
きない人達が大勢いると。それから,非正規雇用の職員。非正規雇用だと福利厚生などを
受けられない。一応就職はしているのだけれども非正規雇用という人が,80年代前半に
は14%しかいなかったが,2000年代前半になると半分近くまでいっている。
・ 子ども虐待の視点で捉えるとどうなっているか。社会保障審議会児童部会報告では,20
04年1月から2008年3月までの全国の子どもの死亡事例77例のうち,生活保護世
帯は8例,非課税世帯が31例,合わせて39世帯で,半数を超えていると。
・ 別の報告では,2005年の東京都福祉保険局,2006年の兵庫県子ども家庭センター
の報告では,虐待事例の3~4割が経済的困難を抱えているとしています。
・ 虐待につながると思われる家庭・家族の状況ですが,出典が2009年全国児童相談所長
会の取り組み状況調査です。複数回答ですが,一番てっぺんに経済的な困難33.6%,
これが虐待につながると。約3分の1が,「経済的な困難が虐待につながる」と。
・ 出典は2005年の東京都福祉保険局の「児童虐待の実態」というデータですが,どうい
う家庭で虐待が行われているかということです。「ひとり親家庭」,母子世帯・父子世帯
というのが多いのですが,「あわせて見られる他の状況」上位3つというのを見ていただ
きたい。「孤立」にしても,「夫婦間不和」にしても,「育児疲れ」にしても,必ず「経
済的困難」が入ってきている。すべての虐待家庭の中に,「経済的困窮」というものが入
ってきているというのが,伺い知れると思います。
・ 虐待相談の家族分析ということで,子どもの貧困白書に載っている数字です。母子家庭,
それから生活保護受給世帯。母子家庭の方も虐待しているのですが,それから生活保護受
給世帯の方,保護者が精神疾患を有する精神的に不安定な家庭の方ということです。母子
保健の分野,生活保護の分野,児童相談所が密接に関わっているというのが,この資料か
らも伺い知れると思います。
・ 子育てにおける孤立と年収ということで,じゃあ保護者の年収,それから,それに見合っ
てどういう状況にあるか,という北大の研究ですが,年収の尐ない世帯が色々な問題を抱
えている,というのが伺い知れる資料です。年収が多ければ多いほど,そんなに悩まなく
ても,お金を使えば色々な社会資源が利用できる,年収が尐なければ,例えば母子家庭の
お母さんだと,お母さんが頻繁に働きに行かなければならないし,収入が尐ない。なので,
社会資源も使えないということで,相談相手もいない,リスクがどんどん高くなってくる。
こういったことが,この統計から伺い知れると思います。
・ 被虐待児の母親の学歴です。3県の児童相談所が保護した子どもの母親の学歴について調
査した資料です。中卒で学歴の低い方,先ほど中卒で妊娠しているケースの話がありまし
たが,中学校卒業が51%。逆に学歴が高くなっていくと被虐待児が尐なくなっていく,
そういうデータです。
・ ひとり親が働いている場合の,子どもの虐待発生過程のモデルケースです。ひとり親家庭
で親族の援助が不十分な場合,一生懸命働かなくてはならない。夜間の仕事に就いたり,
それだけでは不十分で日中も働いたりする。それでも足りなくて,ダブルワーク,トリプ
ルワークという状況もあります。働かなければ生きていけない。経済的困窮,不利な就労
条件,夜間就労,仕事のかけもち,非正規雇用ということで,どんどん稼がなければ生き
-5-
ていけない。
・ その結果どうなっていくかというと,子どもと向き合う時間が圧倒的に尐なくなっていき
ますから,養育環境が悪化する。養育環境が悪化していくということは,子どもは親から
生活スキルをもらうことが出来ない,そのうち勝手に動き回る,言うことを聞かせようと
思ったら,言うことを聞かなくなってしまう。そして子どもの問題行動が発生,例えば嘘
をついたり,いたずらをしたり,お金を盗んだり,万引きしたり,子どもが非行に走って
しまう。そうなってくると,親が子どもを叱りつける,子どものも問題行動がどんどん悪
化してくる,この悪循環が発生して,虐待の発生につながってしまうということが言える
と思います。
・ 「児童虐待要保護事例の検証に関する専門委員会の報告」というものがあって,第1次か
ら第8次まで発表されています。生活困窮世帯の中で起きたものをいくつか拾い上げまし
た。生活困窮はあくまで一つの要因であって,それ以外の複数の要因が絡んでいるという
ことを理解して,ご覧いただきたいと思います。
・ 1つ目は埼玉県朝霞市で起こった事例なのですが,生活保護の母子世帯で,妊娠5か月の
母親が,交際相手と共に5歳の長男を虐待死させた事例です。父親から母親へのDVもあ
りましたし,母親も情緒的に不安定だと,母親と母親の交際相手からのこの子に対する身
体的な虐待もありましたし,色々な複合的な要因も絡んでいました。
・ 次は苫小牧市の2007年の事件。これは大変悲惨な事件で,本当にこれは人間のやるこ
とじゃないとしか言いようがないのですが,生活保護を受けていたのですが,交際相手が
いることがわかって,それまで受けていた児童扶養手当を切られてしまった。母親と子ど
もとその交際相手と過ごしているうちに,交際相手から子どもへの虐待もあったのでしょ
うが,結局お母さんは交際相手に夢中になってしまったのです,子ども達を「死んでも構
わない」と,家に放置をしていた。家に残された子ども達はそれでも1ヶ月くらい,上の
子はなんとか生き延びたのです,生米とか食べて。下の子どもは亡くなってしまったので
すが,口には虫の死骸とかがいっぱい詰まっていたそうです。すごく悲惨な事件でした。
・ 3番目大津市の事例,これも生活保護世帯なのですが,母子世帯の母親がチャットに夢中
で,1歳7か月の子どもが肺炎なのに放置し,死亡させた事例です。
・ 4番目は福岡市の事例で,これはすごく複雑な家庭です。2世代以上にわたる母子同居世
帯で,生活保護世帯なのですが,ジェノグラムがぐちゃぐちゃになって整理しきれないよ
うな複雑な家庭です。おばあちゃんもお母さんも10代で出産していて,お母さんには自
殺未遂歴や離婚歴がある,そういう世帯です。貧困ももちろんあるのですが,他のリスク
要因も高かったということです。
・ 虐待の重大なリスク要因としての経済的ストレスと貧困ということです。先ほどお話しし
たように,「お金がない」ということは常にストレスが高い。日常生活において,絶えず
金銭的な心配をしなければならない,そういうことで不安やイライラ感を抱えやすくなる。
まして,こんな暑い時期になると虐待通報はすごく多い。ただでさえお金がなくてイライ
ラしているのに,暑くてますますイライラしてくる。
・ 収入を得るためには,先ほどお話ししたようにダブルワーク,トリプルワークで仕事をす
る。それでも収入が足りないので,さらに別の仕事をする。そんなことを繰り返している
うちに,子どもと向き合う時間が全然ない。お母さんは日中家で寝ているし,子どもは放
置されてネグレクトになり,最終的には虐待,そういうことになってしまいます。
・ 子どもの虐待と貧困問題の強い関係ということなのですが,親の心身の問題,それから子
どもの障害,経済的困窮,親族及び社会的つながりの断絶等,リスク要因が多いほど虐待
-6-
の程度が重くなる。
・ 先ほどもお話ししましたが,ひとり親家庭,母子世帯の割合が高い。生活困窮が段階的に
子どもの問題行動を発生させ,どんどん悪循環に陥り,最終的には虐待を誘発させる場合
がある。虐待の悪循環と呼べる現象も多いということです。
・ じゃあ,どのような施策が必要かと言うことなのですが,これはなかなか一言では言えな
いのですが,経済的施策としては,相対的貧困率の解消(社会的格差の解消)がぜひとも
必要なのではないか。要は「お金がない」ってことは大変なことなのですね。子どもと向
き合う時間がない,何かあっても子どもから離れることが出来ない,例えば親に何かあっ
て入院したとしても,お金があればその間どこかに預けることも出来る。そういう時に施
策が必要となる。
・ 次に,人的施策。養育援助や家事援助等の充実,例えば子育てで何か問題が起きた時に,
丁寧に対応してくれる,相談にのってくれるような資源。それから各ソーシャルワーカー
の充実,児童福祉司や家庭相談員,社会福祉主事や学校ソーシャルワーカーさん,医療ソ
ーシャルワーカーさん,そういうケアできる人達の資源が充実していけばいいのかな,と
思います。
・ 最後に結びとしまして,児童憲章を載せてあります。私の好きな言葉なので読み上げます。
児童は,人として尊ばれる。児童は,社会の一員として重んぜられる。児童は,良い環境
の中で育てられる。すべての児童は,心身ともに健やかにうまれ,育てられ,その生活を
保証される。すべての児童は,家庭で,正しい愛情と知識と技術をもって育てられ,家庭
に恵まれない児童には,これにかわる環境が与えられる。結びの言葉とします。
(コーディネーター)
どうもありがとうございました。非常にたくさんの内容でお話いただきました。質疑応答
は,後でまとめて行います。
つづきまして,教育委員会スクールソーシャルワーカーから「学校・家庭で問題を抱える
子どもと生活困窮」ということで,お話いただきます。
(プレゼンター:学務課スクールソーシャルワーカー)
スクールソーシャルワーカーとして仕事をしていますが,まだ新米です。その前に精神科
の病院に長くいましたので,そちらの色が強く出ているな,と自分で感じていますので,
そのへんを承知の上で,お聞きいただければと思います。
病院でもそうでしたし,今の仕事でもそうなのですが,貧困家庭との関わりが非常に多い
です。ソーシャルワーカーとして関わる仕事の一番大きな問題は,「生活の維持」だと思
っています。貧困家庭と関わることが非常に多いな,という印象があります。
どの家庭においても,子どもというものは受け身なのです。貧困についても,一義的な当
事者は子どもではあり得ない。親であり,おじいちゃんおばあちゃんであり,そういう方
たちが「貧困」という生活状況にあり,そこに子どもがいる。先ほどもありましたが,順
繰りに巡っていくのかな,という気がします。その中で,子どもさんがどういう生活をし
ているのか,と考えますと,色々な形で表現されている。「問題行動」という形で出てく
ることが多いのかな,と思います。
1年尐々の間,スクールソーシャルワーカーとして関わった家庭が,45件くらいありま
す。その中に,非常に精神疾患が多い。統合失調症の方が多いです。アスペルガー症候群,
パーソナリティー障害,いわゆる人格障害です。不安神経症,うつ病,薬物依存,あまり
聞き覚えがないかもしれませんが,ミュンヒハウゼン症候群。「ほら吹き男爵」と言われ
ます。子どもあるいは自分が見ている人に毒を注入して,病気を治さないようにして,「そ
-7-
れを看護している私はすごいでしょう」と自己評価する。そういう方もいました。
また,社会生活を送っていますので,厳密に言えば障害もないし,病者でもないのですが,
病的とは言えないまでも,非常に不安耐性が低くて,他者への依存が強い方が多い。誰か
に頼っていれば安定している。
そういう方が,色々な状況の中で,離婚されている方がかなり見られる。離婚原因には色
々あるのでしょうけれども,「性格の不一致」と言えばそこまでですが,ひょっとしたら
依存できなくなって,お母さんが離れたのかもしれない。あるいは,依存されることで,
ご主人が非常に疲れて,離れたのかもしれない。
そういう方で,依存対象がないために,非常に不安定になる。子どもに対する関わり方が
非常にアンバランスになる。中には放置したり,逆に子どもに依存したりしていく。です
から,子どもの方が強くなってしまうのですね。中には,「そんなお母さんを置いては学
校には行けない」と思うお子さんもいる。
DVやハラスメントを繰り返す親もいます。私が直接関わるDVはあまりありません。悠
長に私のところに来るより,児童相談所等で対応されていると思います。ハラスメントが
非常に多いです。
一番多いのが,モラルハラスメント。子どもの人格を全く認めない。「おまえなんか死ん
じまえ」「どっか行っちまえ」みたいな,人格を根こそぎ奪い取ってしまうようなことを,
平気で言ってしまう。
あるいは,怒る基準・ほめる基準が非常にバラバラで,その場限りの自分の気分で言う。
外で元気に遊んできて,泥だらけになって帰ってきた。ある時は「元気で遊んできたわね」
とほめられる。次の日同じことをしたら「こんなに服を汚して」と怒られる。子どもは非
常に不安になってきて,なかなかきちんと生活できなくなってくる。そのきっかけを親が
作っているのですが,親はそういうことを自分がしている,ということに全く気づいてい
ないケースが,かなりあります。
先ほども出ていましたが,結婚・離婚・再婚・再々婚,未婚の母いわゆるシングルマザー
など,実父母・養父母・実子・連れ子がいて,ジェノグラムが本当に作りにくい。線がこ
んがらがってしまう状況の中で,「この家庭をどう整理していくか」という時に,非常に
混乱します。キーパーソンが見つからないのです。
気になるのが,支援に来てくれる人あるいは助けてくれる機関が,非常に尐ないという印
象を受けます。もっと使えるところがあるのに。そういう機関にあちこち転々と相談した
後,私のところに来るのですが,その間に,もう尐し「こういうところを紹介してくれれ
ば」という部分がある。
家族自体に,地域とのつながりを持たない雰囲気がある。拒否的である。色々な波風が立
つものですから「変な一家である」「困った家族」ということで,周りの家庭も尐し引い
ている中で生活しているので,きちんとしたSOSを家族が発信できていない。かろうじ
て発信したSOSを,受け止めるところがなかなか見つからない。
そんな部分で困っている家庭が,なぜスクールソーシャルワーカーのところに来るのだろ
うと言うと,子どもが問題行動を起こして,私のところに来るのです。不登校であるとか,
家庭内暴力であるとか。じゃあ,家庭の中はどうなっているのだろう,と家庭訪問したり,
親御さんや先生から情報をいただいたりして感じるのは,精神疾患や障害特性に左右され
る行動・意思決定がされており,一貫性がない。あるいは歪んだまま受け止められている,
そういう感じがあります。
例えば,両親が揃っている世帯で,両親のけんかが絶えない。子どもの前で大げんかして,
-8-
茶碗が飛び交うという状況がある。あるいは全く意思の疎通がない。お父さんは「右行け」,
お母さんは「左行け」。その中で,子どもは立ち止まってしまう。周りから見ていても,
「うわっ」と思うような夫婦関係である。
ひとり親の場合,だいたいは母親である場合が多い。その家庭で,お母さんが精神疾患を
持っていたり,非常に脆弱な自我の方であったりすると,一方的な関わり,放任,その場
しのぎの対応が目に付く状況があります。
それと,お金の使い方が荒い。生活保護費をもらっても,一週間でなくなる。「何に使っ
ているの」と聞くと,買う物の優先順位が違う。こだわりがある。特に精神疾患を持って
いる方は,物に非常にこだわることが多くて,「どこそこの牛しか食べない」「どこそこ
のブランドのものしか着ない」といったこだわりがある。例えば差し入れしても,食べな
い。「うちは牛しか食べませんから」「この服しか着ませんから」ということがある。
「こだわりの一品」に非常にお金をかけてしまって,あとは無い無いでの生活。お金のあ
る時は,子どもたちもハンバーグステーキを食べられるのですが,なくなると,ご飯にお
茶かけて,みたいな生活になる。あるいは,「給食があるからいいでしょう」と,食べず
に学校へ行くことになる。
そういう使い方をしているものですから,必要な支出が確保できなくなる。光熱水費がそ
うです。「電気止めますよ」みたいな紙が入ったりする。あるいは,学校に払わなければ
ならない給食費も,クレーマーとして払わないのではなくて,払うべきお金が底を尽いて
いるという状況がある。それが,他の子どもたちからの攻撃の材料となっていくことがあ
ります。
家は大体ごみ屋敷です。整理整頓に,基本的に頓着がない。当然だと思います。生きてい
くうえでの優先順位は,整理整頓はあまり高くない。食べることの方が優先です。もう一
つ,整理整頓しなくても,親本人は困っていない。だからなおざりになってしまう。
その中で,子どもにとっては非常に大きな問題になっている。学校にフケぼうぼうの髪の
毛で行く。近寄るとなんとなく臭う。お金がない,勉強ができない以上に,攻撃や拒否の
対象となります。学校に行けなくなってしまうのです。
学校でも,先生がシャンプーを持ってきて頭洗ってくれたり,インターネットカフェにシ
ャワー室がありますので連れて行ってシャワーさせたり,色々工夫している。一時しのぎ
では何とかなるのですが,基本的な生活が保てないと,他の子どもたちから迫害をされる
状況になる。家の中にごみばっかりで,勉強の場所も確保できませんから,学業もどんど
ん遅れていく。もう一つ,結構動物を飼っている家が多い。子どもに「飼って」「犬が欲
しい」なんて犬を飼う。うんちの垂れ流しです。ごみ屋敷に拍車をかけるわけです。
そういうお母さんと話をしていると,「今一番楽な方法」,子どもが暴れない,子どもの
言うことを聞いていれば落ち着く。子どもの言いなりになっていて,家庭の中でルールが
まったくないわけです。一緒に寝泊まりしているが,「家族」としてまとめられない。そ
んな家庭が見られます。
その中で,スクールソーシャルワーカーとしてどういう関わり方をしていくのか。貧困も
一つの問題ですが,我々が考えなければならないのは,「子どもがどうやって笑顔で学校
に行くのか」ということがメインになります。
一つは,家庭の中の交通整理が必要だと思います。非常に一方通行であったりして,一つ
の家庭としてグループダイナミックス(集団内の作用・動態)が見られない。子どもは子
どもで,3人いるなら3人が,それぞれバラバラで生活している。怒られる時だけまとま
って,子ども部屋に閉じこもる,みたいな部分だけが共有されている部分があり,再構築
-9-
していく必要がある。
ただこの時,子どもよりも親へのアプローチが多いです。親を変えていく。親の関わりを
変えてもらうことが多いと思います。保護者が安定すると,自動的に子どもも安定してく
る。そういう実績ができると,「ちょっとSSWの言うことを聞いてみようか」という気
持ちになってくれる。そういう風に,親にアプローチしていくことが重要です。
関係者のネットワークも必要だと思います。非常に関わりが尐ない,と感じています。学
校を含めて,どう作っていくか。家庭以外では,やはり学校が一番子どもと向き合ってい
く場面が多いわけですので,そこを中心に,社会資源の活用ができればいいな,というこ
とで,あっちへ声かけたりこっちへ覗きに行ったりしています。
それから,親の子離れ,自立していかなければならない。共依存みたいな関係がある家庭
では,難しい。親の子離れと子の親離れは同時進行していくのだろうと。子の親離れは放
っておいてもある程度できていくのですが,親の子離れは支えないとできないという印象
があります。そこを尐し支援できれば,と思っています。
支援の事例ですが,私にとって非常にイレギュラーなところからの支援要請でした。社会
福祉協議会の母子家庭就業支援の部門から,支援要請がありました。お母さんに対して支
援しているが,就労が上手くいかない。その中で子どもが不登校になり,それが自立支援
の妨げになっているような印象があるので,子どもをサポートして欲しい,と。
そういう関わり方があるのかな,と思いながら関わったのですが,結論から言うと,お母
さんにどうも発達障害がある,と。通常の就労支援では,続かないわけです。お母さんは
一生懸命やるのですが,ダメ出しをされてくびになる。
お母さん自身も,なんとなく薄々と,自分の傾向に気がついている。子どもの不登校につ
いてお母さんと話したのですが,どうも印象が引っかかる。話し方,衣装や雰囲気に,何
か違和感がある。お母さんの方に聞き取りをシフトして聞いていくと,色々なことが出て
きました。
お母さん自身,医学マンガを読んでアスペルガーを知って「これは私そのものだ」という
ことで,やはり自分はそうじゃないかと。専門書も読んでみた。小さい時から違和感を持
っていたのは,何かあるのではないかと。そういう心配があるのだったら,受診したら,
と。受診の協力をしてもらい。その動向を見ながら,子どもさんの問題に関わっていこう,
と。
実は,この母子家庭の就労支援センターとは,月1回の関係者の定例実務者会議というも
のがありまして,その中で顔を合わせていました。たぶんそれで,私に振ってくれたのだ
と思います。これも,一つのネットワークのおかげだったのかな,と思います。
(コーディネーター)
どうもありがとうございました。次は,旭川公共職業安定所さん,よろしくお願いします。
(プレゼンター:旭川公共職業安定所)
・ ハローワーク旭川のマザーズコーナーを担当しています。よろしくお願いします。本日は,
マザーズコーナーについてのご紹介と,母子家庭のお母様が就労される際に抱える問題に
ついて,お話しさせていただきたいと思います。
・ まず,マザーズコーナーは,仕事と子育てを両立したいと就職を希望されている方々への
支援コーナーとなっています。私のほか,2名の子育てナビゲーターの3名体制で支援し
ています。
・ 登録者は,概ね小学校3年生以下のお子様をお持ちの方で,仕事と子育ての両立を考えて
いる方です。キッズコーナーやDVDがあり,お子様連れでも気軽にお越しいただけるよ
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うになっていますので,ご利用いただける方がいましたらご紹介をお願いします。
・ コーナーでは,「マザーズコーナー求人情報」を毎日発行しています。前日受理したハロ
ーワークの求人の中から,子育てしながら両立しやすいお休み,就労時間の仕事を抜粋し
たものです。お一人お一人の環境や状況に応じて,きめ細かくご相談等させていただき,
お仕事の条件に合致した求人情報の提供・相談・紹介のほか,家庭と仕事の両立に必要な
保育に係る情報,ご家庭のご相談等も聞きながら進めています。
・ 利用者は母子家庭のお母様だけでなく,これから離婚を予定されており,お仕事を希望さ
れている方,生活保護を受給されている方など様々でして,抱えている問題もお一人お一
人全然違っています。マザーズコーナーでは,自分のスキルや経験,「やりたい仕事」や
「できる仕事」に加えて,お子様の状態,旦那様との関係,周りとの協力体制等を確認し
ながら,就職につなげていく支援をしています。
・ 母子家庭のお母様等の取扱状況についてご説明します。ハローワークに登録している母子
家庭のお母様の年間件数は,大体1200名程度です。年度によりばらつきがありますが,
極端な増減はありません。母子家庭のお母様のうち,パート就労を希望される方が全体の
35%程度で,6割以上がフルタイムを希望しています。(非母子家庭も含む)マザーズ
コーナー全体では,逆にパート希望が全体の6割程度,フルタイム希望は3割程度が現状
です。やはり,母子家庭のお母様は生活を維持するために,より安定した就職を望まれて
いる現状があります。就職の結果も,母子家庭のお母様の6割以上が,フルタイムで就職
しています。
・ それでは,母子家庭のお母様が就労する時に直面する具体的な問題点についてお話します。
母子家庭のお母様に「就労する際の基本の条件」というものを書いて出していただきます
が,皆さんそれぞれ様々なのですが,多く見られる条件は,勤務時間が8時半から17時
半まで,休日は土日祝日,賃金が15万円程度を希望される方が多いです。勤務時間は,
保育園・幼稚園・留守家庭児童会の預かり可能な時間内での就労を希望されます。休日も,
保育園や学校がお休みの日を希望されます。賃金面では,母子家庭のお母様は一家の大黒
柱ですので,ある程度の収入が必要ということもあり,総支給で最低でも13万円から1
5万円程度は必要です,という話になります。こういった条件を踏まえていくと,「やは
り事務職しかないですよね」ということで,事務職を希望される方が非常に多くなります。
・ 求人と求職のバランスを見ますと,事務的職業の求人数304人に対して,求職者数が1
330人と,事務職を希望されている方が大変多くなっています。求人倍率0.23倍と,
非常に低い数字となっています。事務の内訳を見ますと倍率がさらに違っていまして,中
でも会計・経理事務員は専門的知識がある場合ですので,求人倍率0.59倍と高い数字
になるのですが,それに比べて一般事務は0.18倍と,非常に厳しい状況となります。
子育て中のお母様で,事務職を希望される方は大変多いのですが,求職するに当たっては,
専門・経験・知識・パソコンスキル・資格,そういうものがなければ,なかなか就職に結
びつくのが難しい現状があります。
・ 母子家庭のお母様が就労される際の,勤務時間や残業等の問題についてお話します。お子
様の保育園等の預かり可能な時間を考えますと,終わり時間が遅い仕事や時間外がある仕
事に就くことが大変難しい,という現状があります。仕事の終わりが18時までの場合で
も,お迎えにかかる時間を考えると間に合いませんので,応募ができない。必然的に17
時半までしか仕事できないです,という方も尐なくありません。終了時間17時半までの
お仕事は,ほとんどありません。官庁の臨時職員くらいしかありません。事業所側として
も,お子様がいると残業するのが難しいとか,病気や行事で休みがちになってしまうので,
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採用に躊躇してしまう企業が多いです。勤務場所についても,会社が始まる時間と終わる
時間。保育園が始まる時間と終わる時間,送迎にかかる時間。これを全部考えて,「じゃ
あ働ける範囲はどこでしょう」とお話しながら進めるのですが,その範囲は非常に狭くな
ってしまい,応募可能な求人の数が減尐してしまう状況にあります。
・ このように,母子家庭のお母様が就労する際には,厳しい現状がいくつもあります。ただ,
お子様のことを考えるので,他の方より「譲れない条件」も多くなってしまいます。「寂
しい思いをさせるので休日は譲れない」「習い事を続けさせたいので土日勤務は難しい」
「送迎時間までに帰らなければならない」等と言う方がたくさんいらっしゃいまして,な
かなか応募に至らない,というケースも多々あります。
・ 事例をご紹介します。一つ目の事例は,母子家庭のお母様。介護福祉士の経験をお持ちで
す。小学校2年生のお子様で,留守家庭児童会に入っています。兄弟はなく一人っ子です。
市内に無職のお母様がいましたが,距離が遠いため,頼りにすることが難しい状況でした。
・ 福祉系の仕事は,現在求人倍率が1位2位を争うほど高くなっており,ホームヘルパー・
ケアワーカーは求人倍率1.52倍と,事務職に比べると大変高い数字となっています。
ただ,福祉系の仕事は夜勤があったり,土日祝日勤務があったり,というのがほとんどで,
母子家庭のお母様が希望する条件の求人はなかなかないのが現状です。この方も,該当す
るのは1件のみ,という状況でした。その求人は18時までのお仕事で,通勤時間が30
分程度かかる場所でして,留守家庭児童会のお迎えに間に合わない,ということで,これ
も応募することはできませんでした。また,この方のお住まいの地区は児童が多い地区で
して,来年は小学校3年生になると,留守家庭児童会に入れないかもしれない,という話
があり,来年はどうしようかと悩まれていました。
・ 相談を繰り返し,何を優先するか,条件を優先するか,仕事の内容を優先するか,という
話を進めていったうえで,福祉系というつながりで,自宅近くの保育補助の求人を提供し
ました。仕事終わりの時間が18時まででしたが,シフトによっては早く帰れる日もあり
ますし,日曜祝日もお休みという仕事でした。ただ,臨時職員ですので,来年の更新につ
いては不安定でしたが,やむを得ないということで,現在も就職されています。留守家庭
児童会は18時までですが,自宅近くの求人だったので,尐しずつお子様に留守番を練習
してもらう,ということで,就労されています。
・ 二つ目の事例は,これから離婚に向けて夫と話し合いをします,という方でして,お子様
に障害がある方でした。寄宿制の養護学校に入っています,来春卒業の予定で,卒業した
ら家に戻ってきます,ということでした。市内にご両親が住んでいますが,実家まで40
分程度かかり,なかなか行き来が難しい状況です,と仰っていました。「離婚に向けて,
親権を取りたい」ということで,安定した就職を希望して来所されたのですが,問題点と
しては,障害があるお子様が,夏休みと冬休みの間は養護学校から帰ってくるので,フル
タイムの勤務は難しい,という状況でした。来春にはお子様が家に戻るので,それも含め
て,相談させていただきました。
・ 相談を進める中で,就労の開始時期をいつからにしましょうか,というお話を進めました。
まず夏休みは,今のお仕事(パート)を続けていただいて,お子様にはデイサービスを利
用してもらうと。夏休み終わった頃から,フルタイムの仕事に就ける,という準備を進め
ていくことになりました。夏休みが終わって,冬休みまでの間に,ご実家の近くに転居し
て,親御さんの協力を得て,体制を整えていきましょう,ということで,お仕事は「ご実
家の近くで9月から就労可能」という条件で,探していきました。結局この方は,ご自宅
近くのフルタイムのお仕事をご紹介して,本人の状況を,本人了承の上で会社にお話しし
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て,9月からのお仕事の内定をもらっています。ただ,この方は正看護師の免許をお持ち
の方でした。これが事務職ご希望となると,こういった条件はまったく不可能,となるか
と思います。
・ 最後の事例についてお話します。小学校4年生のお子様がいる母子家庭のお母様でしたが,
周りに協力してくれる親類の方は誰もいません,ということでした。お子様が多動傾向に
あり,小学校4年生ですが,一人でお留守番ができません,と。専門機関への相談等はし
ていないです,という方でした。仕事の希望条件は,勤務時間が9時から14時まで。土
日祝日お休み。お子様の夏休み冬休みについては,お休みがもらえる会社を希望します,
ということです。マイカー通勤はできないので,徒歩か自転車で通えるところ,という条
件でした。最初は「どんなに遠い求人でも,徒歩か自転車で通います」と言って,紹介し
てください,と仰っていたのですが,冬場の通勤を考えると現実的ではないですよね,と
いうお話をして,紹介はしませんでした。1件だけ事業所に状況を説明しましたら,夏休
み冬休みの長期休みについては,お休みを取っても構いませんよ,と言ってくれる会社が
あったのですが,毎週土曜日のお休みは他の方もいらっしゃるので難しいです,と言われ
ました。ご本人に,土曜日だけ他の機関を利用してお子様を預かってもらって,お仕事に
就いてはどうですか,とお話したのですが,ご本人が「それは無理です」ということで,
結局,ご紹介できるところはなかったです。
・ ご本人自体も,もしかしたら障害の傾向があるのかな,ということもあり,ハローワーク
の障害専門の担当者と相談して,そちらに相談をさせてもらうようにしました。子どもの
発達に関する相談の機関をご紹介して,そこで子どもの問題をご相談してください,とい
うことでお話をしています。子どもの状況が落ち着いたら,またお仕事のことを検討して
いきましょう,ということで,ストップしている状況です。
・ 以上,事例をお話しましたが,様々なケースがありまして,就職の支障となっている問題
も,人それぞれというか,複雑に絡み合っている状況になっています。時には,厳しい現
状をご本人に理解していただいて,もう一度考え直してもらったり,優先順位をつけても
らったり,希望の条件を尐しずつ減らしてもらったりと,お話しているのですが,なかな
か難しい,という現状となっています。
・ 失業は,応募機会が尐なくなると必然的に長期化しますので,長期化すると,どんどんブ
ランクとなって,会社に雇い入れてもらえない可能性が高くなってしまいます。ですので,
なるべく尐しでも早くお仕事に就くように,お話しして,支援しています。
・ お子様に我慢してもらいながらフルタイムでお仕事する方もいれば,どうしても問題解決
ができずに,やむなくパートでダブルワーク・トリプルワークを希望する方もたくさんい
らっしゃいます。フルタイムの仕事が決まって「就職決まって良かったね」と言っていた
ら,数か月後には「お子様が寂しくて精神状態不安定になっておかしくなってしまった」
「罪悪感でつらくなってしまった」と言って,また転職を希望して来所される方もいらっ
しゃいます。
・ ひとり親世帯の方は,ただでさえ,仕事と家事,育児を両立するのは大変なのに,責任も
重くなっていますし,抱える問題も様々です。これからも,一つ一つの問題を検討しなが
ら,他の機関の皆様にご協力をお願いしながら,ひとりでも多く早期就職を支援していき
たいと思っていますので,何かありましたら,よろしくお願いします。
・ 今日から,母子家庭のお母様を対象としたパソコンと事務の基礎的な職業訓練の募集が始
まっています。こういうものを利用して就職に結びつくような方がいましたら,ハローワ
ークにご相談いただくよう,お願いします。
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3 意見交換
(コーディネーター)
・ 今お話にありました「ビジネスマナー科」では,パソコン操作を学ぶということですが,
こういった資格のヒット率といいますか,持っている人と持っていない人とでは,開きが
あるのですか。
(プレゼンター:旭川公共職業安定所)
・ ちょっとした臨時職員に応募するにも,パソコンのワード・エクセルができないと,ちょ
っと難しいという状況があります。事務職以外でも,介護でも何でもパソコンが使えるこ
とが,かなり重要になっています。「パソコンがまったく使えません」となると,もうほ
とんど難しい。
(コーディネーター)
・ 経費の中に教材費8000円とありますが,これを出せない人も多いと思いますが,補助
などは。
(プレゼンター:旭川公共職業安定所)
・ 教材費8000円は,自己負担となっています。職業訓練を受ける方で条件を満たせば,
生活支援を受けることが可能ですが,教材費についてのハローワークの支援はありません。
(コーディネーター)
・ プレゼンテーションでは,生まれてすぐの子どもの母子保健係,虐待と貧困について旭川
児童相談所から,特に支援を必要とする学校に行っている子どもたちについてスクールソ
ーシャルワーカーからお話をしていただきました。
・ 入学前の小さい子どもは,SSWの支援対象とはならないのですよね。
(プレゼンター:学務課スクールソーシャルワーカー)
・ ただ,保育園に通っている子どもの保護者から,「通園しぶりがあって」という相談が入
ります。基本的にはいじめ・不登校の方に相談が入ります。
(コーディネーター)
・ 子どもの年齢は関係なしである,と。大きい人も来るのですか。18歳以上とか。
(プレゼンター:学務課スクールソーシャルワーカー)
・ 高校生もいますし,この間は他のスタッフが大学生の相談も受けていました。ただ,原則
的には,相談室は小学校と中学校です。
(コーディネーター)
・ 教育委員会からの依頼があって,というわけではないのですね。先ほどは社会福祉協議会
からの相談を受けていましたが。SSWは一般的には教育委員会が一番のおおもとで,連
携しながら,というイメージがあったのですが。
(プレゼンター:学務課スクールソーシャルワーカー)
・ 基本的にはその通りです。枠組みとしては,原則,小学校・中学校。ただ,来た相談を「違
うから」と言っても。他に適当な相談機関があればそこに振りますけれども,逆に「ちょ
っと頼む」とこちらに振られてしまうこともありますので,臨機応変に協力しながらやっ
ています。
・ 学校の先生,保護者,教育委員会が大半です。例外的に,今回のケース(社会福祉協議会
から相談)ですとか,訪問看護センターから依頼があって「お母さんが病気で支援してい
るが,子どもが学校に行っていない」みたいな話ですとか。
(コーディネーター)
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・ 4名の方のお話をお伺いしましたが,発表いただいていない方もいらっしゃいますので,
自分の仕事にも若干ふれながら,何か一言ずつ意見いただけないかと思っています。
・ テーマは「子どもの健全育成」の中で,特に支援体制で,こういう形だともっときちんと
対応できるとか,連携できるシステムを具体的につくったらいいのではないかとか。専門
の方々ですので,支援体制のあり方の「穴」みたいなもの,ここにもっと強力な介入をす
ることで防げる場面とか,積極的な意見をいただきたいと思います。
(構成員)
・ 今年から,旭川市の「子どもの健全育成支援事業」という生活保護受給世帯の子どもの学
習支援に関わっています。
・ お話を聞いていて,初めて聞くことばかりでした。ハローワークでお母さんのお仕事を探
していく中で,仕事探しに限界があるのかと感じました。お母さん個人の努力だけではな
く,仕事の形が変わっていく,社会の方から形を変わっていく仕組みがなければ,なかな
か解決できないのかな,と思いました。就労支援のお話になってしまいますが。
(コーディネーター)
・ 生活保護というターゲットが決まっていて,そこの子どもへの学習支援を行っていると。
今,国が施策的に一生懸命やろうとしている分野ですが。
(構成員)
・ 貧困の連鎖防止ということで,やらせていただいています。
(構成員)
・ 「上川中部子ども緊急さぽねっと」と言いまして,緊急時の病児預かりをやっています。
就職の面談中に「お子さんが具合悪くなったらどうするのですか」なんていう質問がある
と思いますが,「緊急さぽねっとに登録しています,何かあればスタッフに見てもらえま
す,支援してもらえます」と言ってもらって,就職につながりました,ということは確か
にあります。
・ ただ,あくまでも緊急時のものです。社会福祉協議会のファミリーサポートは元気なお子
さんも使えますので,使い分けをしなければならないと思います。さぽねっとはあくまで
も緊急時,「保育園で熱が出た」とか「学校で具合悪くなったので迎えに行って欲しい,
その後支援して欲しい」とかに,登録制でやっています。安心してお仕事していただける,
と思います。
・ 600名ほどが登録している中,2割くらいはひとり親の登録です。ひとり親には旭川市
の助成があり,利用時間の2割だけの負担でいいものですから。8割は市が負担しますの
で,利用者が多く,年間7~8割はひとり親,母子家庭の利用が多いです。登録していた
だいて,就労につながるといいのかな,と思います。
・ 今年に入って,20歳そこそこのお母様が,婚姻関係のない形で出産をして母子家庭にな
ったが,4か月健診から1歳半健診までの間の育児不安が,上手くサポートされていなか
った。不安があったが,教科書が本と雑誌だった,と涙していた。そこが上手くサポート
してあげれば,若いお母さんたちにも良いのでは。サポートを受けながら,こちらに登録
していただいて,パートでもいいので働ければいいのかな,と。
(コーディネーター)
・ 働いていない方も支援の対象になるのですか。
(構成員)
・ 以前は,厚生労働省から「働くお母さんの支援」ということでの事業でした。それが,厚
生労働省の補助がなくなりまして。私どもに実績がありましたので,平成21年度からは
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旭川市の委託を受けています。その年に,旭川市が「子育てをしているお母さん方すべて
に支援をしようじゃないか」と実施の規定が変わりました。それ以降は子育てをしている
方,女性だけでなく父子家庭のお父さんも,支援の対象となっています。
(コーディネーター)
・ 600名が登録されていると。登録する時にはお金がかかりますか。
(構成員)
・ 正確には570名程度。登録にお金は必要ありません。ただ,「入会申込書」を書いてい
ただく。命をお預かりするので,お子さんの事前打ち合わせをするために書いていただい
ています。予防接種であるとか,病気をしたとか,何か注意するべきことがないかとか。
・ 障害がある子どもも受け入れているのですが,お母さんに「障害を記入したくない」とい
う気持ちがあるのか,お母さんからすると障害に慣れていて気づかないのか。とまどうこ
ともあるのでしょうが,正しく書いていただきたい,と思います。
(構成員)
・ 今,私ども子育て支援部子育て相談課で行っています「子ども緊急さぽねっと事業」のお
話がありました。子育て支援部には3つの課,子育て支援課,子ども育成課,子育て相談
課という課があります。
・ 支援という部分では,児童手当,児童扶養手当といった給付事業,相談事業,先ほどもお
話が出ていました留守家庭児童会,保育所といった関係も担当しています。生活が苦しい
方には,利用料の減免制度を持っていまして,特に生活保護受給者の方々には,最も配慮
させていただいています。
・ 私どもの業務すべてが「生活困窮者のため」という制度とはなっていない部分はあります
が,今後,制度等が変わっていく中で,一番影響を受けやすいのが子育て世帯,特にひと
り親家庭に関わる施策だと思います。
・ 事務局からの情報提供があった学習支援であるとか,そもそものところから,どのように
貧困の連鎖を断ち切るのか,ということ。私どもでは,子育て支援の拠点と言いますか,
地域でどのように子育てに関わっていくのがいいのか,今までの枠組み,児童館や児童セ
ンター等がありますが,そういうものの役割をもう一度ブラッシュアップする,考えてい
かなければならないな,という時点になっています。
(構成員外出席者)
・ ケースワーカーです。皆さんのプレゼンテーションを聞いて,ケースワーカーの仕事とつ
なげて考えると,まず「本当に難しい話だな」という印象を受けました。なぜかと言うと,
「なるべく就労するように支援する」という一面がありながら,「就労のために子どもの
面倒を見る時間がなくて虐待が起きてしまう」という反対の話が出てしまった。ケースワ
ーカーとして家庭訪問して向き合う中で,どういう話をしていけばいいのか。非常に難し
いことだと。
・ 子どもの健全育成支援事業,今年は中学生を対象に事業を進めているのですが,その中で,
子どもが親以外からの道徳的な干渉と言いますか,そういう場を広げていければいいのか
な,と思いました。
・ 私の地区では100世帯くらいありまして,その中で母子家庭が10世帯あります。その
母子家庭の中で,お仕事されている方が3世帯。この3世帯に子どもがいるのですが,4
人お子さんがいるとか,子ども1人の方が尐ないです。仕事されている方は,お子さんが
中学生以上。それ以下のお子さんを持つ方は,仕事ができていない。
・ 「就職してください」という話をこちらからするのですが,子どもが学校に行ってから帰
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ってくるまでに帰って来られる時間帯,大体午前9時から午後5時までの仕事ですとか,
土日祝日は子どもと一緒に過ごすために休みたい,という希望を話す方が多いです。
(構成員)
・ 元々教員でしたので,「学校としてどうすればいいのか」という視点で考えていたのです
が,結局何もできないというのが正直なところか,という思いがあります。現在特別支援
教育を担当していまして,特別支援学級が長かったものですから,障害がある子,支援が
必要な子に直接関わってきました。
・ 学校の教員は,全てではないですが,なかなか保護者に対して,家庭に対して入りづらい
というか,入って行かない,というか。学校は学校,保護者は保護者として,できるとこ
ろをお互い役割分担して,という考え方が,まだある。
・ 中学校の場合は,小学校の引き継ぎがあって情報があるのですが,やはり小学校,「接続」
の部分ですね。先ほど母子保健係の方のプレゼンで言うと,妊娠から生まれて3歳までは
健診があったりします。保育園・幼稚園行くくらいのところから,市教委が担当している
6歳児の就学時健診まで,健診がない。
・ 就学時健診で,異様に二次検査に回る子が出てくる。去年で言うと,400人近くが二次
検査に回っている状態。全員が全員該当するわけではないですが。今,市内で特別支援学
級・適応指導教室に在籍する子どもが1,300人いる。26,000人の子どもがいる
中で。
・ 相談数も増えていることを考えると,上手く接続ができていないところがあったりするの
かな,と。生活困窮は,特別支援教育が持っている課題とほとんど一緒なのだな,と。接
続するためには何が必要なのかと考えると,やはり情報共有だったりする。
・ 個人情報の壁がものすごく高くて,例えば学校から連絡しても,「ちょっと教えられませ
ん」なんてことを言われて,連携を取れないことがある。「支えていく」というところで,
個人情報をどうやって考えていくかということも,大きな入り口になるのではないか。
・ 学校もようやく「保護者支援」という視点を持たなければいけない,ということがわかり
つつあります。プレゼンにあったように,親御さんが突然電話をしてきて,クレームも大
変多い。
・ 難しい親御さん,精神疾患を抱えている親御さんへの対応が,現場としては非常に難しい。
こちらにはそういう視点がないので,普通の親御さんだと思って接しているが,その根底
にはひょっとしたら生活困窮があって,そういう状態になっているのかもしれない。でも,
僕らはわからない。生活保護を受けている方も,途中で受ける方もいらっしゃるので,そ
うなると全くわからない。
・ 色々なところと連携をしつつも,「どちらがアクションを起こすのか」という部分。学校
がアクションを起こしていいのか,相手側がアクションを起こすのか,わからないままに
らみ合いが続くこともあり,支援が遅れるということもある。今後,生活困窮者を支える
という点では大事な部分かと思います。
(コーディネーター)
・ 相談支援ワーキンググループでは,困難を抱えている家庭と支援する専門機関で,具体的
なことを話し合える組織体といますか,専門機関の集まり,まだ名前もないのですが,事
例じゃなく実名で,「緊急性があるので支援の手を延べたいのですが,どなたかいい案・
手づるをお持ちの方いらっしゃいませんか」と話し合う場を作った方がいいのではないか,
という話に進んでいます。
・ 子どもの支援のグループでも同じようなことが,もっと切実な,命に関わるようなことを
- 17 -
検討する機関が必要なのではないか,旭川市が中心となって。「難しい問題だ」で終わっ
てしまうのではなくて,もう一歩進めた連絡会議のような形を作った方がいいのではない
か,という意見があると思いますが。
(構成員)
・ 要対協,「要保護児童対策協議会」というものがあります。その中では,虐待を含めて,
生活環境が劣悪である。今すぐ命に関わる緊急度が高いケースもあれば,長期的な生活の
中で悪くなっていくだろうというケースもあります。かなりひどい状況で,このままだと
ネグレクトになるだろう,現実ネグレクトだけれども,まだ保護までには至っていない,
というケースについては,検討する機関があります。そことどういう違いがあるか,とい
うところになってくると思います。
(コーディネーター)
・ 仕事。就労という問題が,たぶん我々の大きな問題になってくる。就労したいけど8時間
以上勤務はできない,その間子どもは一体どこで面倒を見てくれるのだろう,という話に
なると,要対協の対象から外れてくると思います。
(構成員)
・ 役割分担をして,その会議はどういったケースを対象とするのか,明確にする必要がある。
(コーディネーター)
・ もし必要だとすると,支援の「谷間」になっている部分がなんなのか,ということを検討
したいと思います。幅が広いですよね。それこそ生まれてすぐから,20歳過ぎの母子家
庭の母まで行かなければならない。幅が広いのですが,谷間として残っている部分は何か。
お気づきの方はいらっしゃいますか。就労はあまり関係ない機関もあるかもしれませんが。
(構成員)
・ 就労も全部,つながってはいるのです。どちらの方向に持っていけばいいのか,と思って
います。ケースワーカーが悩んでいたように,一方では「就労してください」と自立支援
をすると,就労の方にお母さんが一生懸命になって,子どもと向き合う時間がなくなって
しまって,虐待につながってしまう,というのももっともなことですし。どういう風に考
えていけばいいのか。
(コーディネーター)
・ すごく難しいところですね。
(構成員)
・ 情報共有と個人情報の壁,という問題も出てくると思います。要対協では守秘義務が必ず
守られることになっています。罰則規定もあり,それに違反すると法律で罰せられると。
就労も含めた会議の中で,どこまで壁を乗り越えて話ができるのか,ということ。
(コーディネーター)
・ 個人情報の保護,という問題も出てくると思います。
(事務局)
・ 恐らく支援を受けるとなると,最初に同意書を取ると思います。「関係機関で個人情報を
共有します」ということに同意して,ご本人が希望された時に支援を受ける,という形に
なりますので,個人情報共有が前提で,ということになるのかと。
(構成員)
・ ご本人というのは,支援される方の同意,ということですか。
(事務局)
・ そうです。
- 18 -
(コーディネーター)
・ 集まると言っても,いつも全員ではなく,場面によって集まる方々は変わってくるという
気がします。そういう場が必要かどうか,という問題も必要ですが。
・ 今話した中で,不足している情報があれば。既にある協議会であるとか。
(構成員)
・ 支援を知りたい。問題点は色々出てくると思いますが,それに対して支援をどう結びつけ
ていくか。
(コーディネーター)
・ 次回はモデル事例を持ってきて,それについて,あるべき社会資源の姿,もしくは開発し
なければならない社会資源の姿を洗い出していこう,と考えています。実際的な事例がな
いと,具体的に話が進んでいかない気がします。
・ プレゼンテーションで話があった,把握している赤ちゃんの98.8%の残りの,0.2
%は行方不明ですか。
(プレゼンター:子育て相談課)
・ 赤ちゃん訪問で把握するのが98.8%で,4か月健診までに,その2%を何らかの形で
把握する,ということです。家庭訪問という事業の中での把握が,98.8%です。
(コーディネーター)
・ 旭川市で子どもを産んだお母さん,生まれた子どもについては,全数を把握している,と
いうことですね。
(プレゼンター:子育て相談課)
・ そうです,把握する,ということです。
・ 去年1件,把握できない家庭がありました。妊娠届,出生届が出ているのに,赤ちゃん訪
問の連絡ハガキが届かない,医療機関からも何の連絡もない。民生児童委員さんが絵本を
プレゼントする事業をやっていまして,届けに家に行くと,雪山が積もっていて,どうも
人が住んでいないようだ,と。
・ 私たちも把握しに行きましたら,家に雪が積もっていて全然ダメであると。家庭児童相談
室に相談しまして,相談室が児童手当の受給について調べましたら,受給歴がないと。い
よいよ所在不明だったのです。たまたま転出届が出まして,札幌のお母さんのところにい
た,ということがわかりました。そういう風に,所在がわからなければ,なるべく早期に
把握しようと。
・ 確か,教育委員会でも同じような事例が結構あります。逆に,転入してきているけれども,
住所地が旭川にない。でも通園させたい,通学させたい,とか。今,DVや色々なことで,
住所を移していない親が結構います。行方不明になっているというか。そういう方たちの
把握が難しい。
・ 結局,サービス。現在のサービスでは,どうも補えないものたくさんがある。特に,乳幼
児期については,保育園なり幼稚園なりという預かりがある。健診に来た時に,年上の兄
弟がある親が「小学校に上がった時点で,働いてなければどこにも預けられないし,出か
けるにしても預けるところがない」と。現時点では,確かにそういうサービスがない
・ 働いている親ですら,預かってくれるところがなかなかない。お母さんが夜の仕事に出て,
上の子が下の子を見る,お母さんはいない,ということになる。「夜間の保育を教えて欲
しい」という問い合わせもある。結局,民間の24時間やっている保育園等をご紹介する
だけ。費用面や運営面であるとか,「これくらいお金がかかるけど,こういうところがあ
るよ」といった具体的な提示ができない。実際に調べるのは,自分でやってね,という状
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況もある。サービスがどこまでの情報を提供できるのか。
・ 現実,お母さんたちが就職活動で大変な思いをしていることがよくわかったので,そうい
うサービスと,どういう風にリンクさせていくのか,そういうことを考える必要があると
思います。
(コーディネーター)
・ 時間を過ぎていました。
(プレゼンター:旭川公共職業安定所)
・ 私たちも,「保育園の時間が間に合わない」なんて言うときには,民間の保育所をご案内
はするのですが,「詳しくは直接お電話してください」という状況です。ちょっと難しい
かな,という方には聞くこともありますが。
(コーディネーター)
・ 非常にまとまりがないまま時間が過ぎたのですが,一番緊急性があるのは子ども養育の問
題,虐待の問題。それには,地域の協議会があるということです。
・ 特に,母子のお母さんの就労とからめた部分。お母さんが就労することによって,子ども
が精神的に不安定になるかもしれない。そのための預かりとして,病児であればさぽねっ
とがありますが。
・ お母さんの就労と子どもの健全育成を一緒に,セットとして考えなければならない。子ど
もだけじゃなくて,お母さんを精神的に安定させて,ある程度見通しがつく仕事を見つけ
てもらう,ということ。
・ 不登校の問題や色々な問題も関わってきますが,そのためのシステムを,もう尐し大きな
考えで見ていかなければならないと思います。
・ 次回は,そういう問題を含んだ事例を用いながら,専門職の我々が,どのような体制を作
って支援できるのか,考えていきたいと思います。
4
事務連絡
(事務局)
・ 次回は7月26日になります。モデルケースを用いた事例研究を行いまして,関係機関の
連携,切れ目のない支援体系を考えていただきたいと思います。事前にモデルケースの資
料をお送りしますので,ご一読いただきたいと思います。
・ 本日はこれで終了となります。長時間にわたってありがとうございました。
5 閉会
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