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パワーユーザがもたらす日本企業の再興の鍵 - Nomura Research

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パワーユーザがもたらす日本企業の再興の鍵 - Nomura Research
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3
コンサルタントが語る
コンサルタントが語る
ワークでつながっている中国やインドの
第四フェーズへの移行が
勝ち組み企業入りの条件
パワーユーザがもたらす日本企業の再興の鍵
企業に切り出し、評価を自国もしくは欧
州の開発センターで行い開発スピード
―グローバル競争下における日本発の新たなる試み―
アップを図っている。)
ネット普及を背景に、従来のヘビーユーザは、パワーユーザとして独自コミュニティを形
第四フェーズ、すなわち「将来の課題をチ
●図面と現物の両方を見比べながら、図
成しつつある。迅速な情報交換と蓄積、積極的な発信によって、分野によっては市場を牽
ームワークプレイで解決する」開発体制の実
面で量産品質、量産コストを評価するコ
引しうる能力を獲得している。企業の製品開発、マーケティングにおいて、彼らを味方につ
現には、開発キーマンを商品企画・技術企
ンカレントエンジニアリング力を強化する
け、活動をリアルタイムで把握し、誤った思いこみ等に対しては、修正、教導していく取り組
画に投入することが必要である。一方、第三
(デジタル開発環境を整備しても、ITベ
みが必要となっている。
フェーズの開発プロセスのまま、第四フェーズ
ンダーはこの手の運用ノウハウを持ち合
の事業規模に達している企業の場合、開発
わせていない場合が多い。)
択や価値観の形成に強い影響力を及ぼすに
孤立したマニア、
ヘビーユーザ。
コミュニティを形成した
パワーユーザへ
キーマンは商品開発に追われ続け、前工程
至っている。
PCやソフト・アミューズメントなどの特定の
に参加することが大変難しい状態に陥って
よくベストプラクティスに学ぶことで改革が
いることが多い。開発キーマンは、本年度の
成功するのではないかと期待する企業があ
売上目標達成のため商品開発のドタバタ解
るが、仕組みや組織体制といった表面的な
消に走るのと同時に第四フェーズ移行への
ベストプラクティスをいくら真似ても問題を解
近年、
インターネットの普及を背景に、Web
けられる。
準備活動ができるのだろうか。このジレンマ
決することは出来ない。ベストプラクティスを
サイトや掲示板等を介したユーザコミュニティ
本稿では、
ネットを介したパワーユーザの
を解決するため、先進企業では、
あの手この
動かす運用ノウハウ、ベストプラクティスが動
の形成が多くの市場分野で進んでおり、ユー
実態と市場に与える影響、企業が取り組む
手の改革運用ノウハウを身につけている。
く企業風土の2点を学び、
自社の良さを残し
ザの持つ情報が、急激に増加かつ高度化し
べきリスク管理と共存共栄の取り組みにつ
ている。従来、孤立しがちで、市場における
いて提示する。
つつ、欠点を修正することが大変重要なポイ
●他社の開発キーマンを巻き込み、
自社の
ントとなる。
開発キーマンを開発前工程に移行させ
る(将来的に自社が勝ち残るために必
要なコア技術の見極めをしっかり行う必
市場分野においては、市場における新たな
製品開発の方向性を先取りする事例も見う
情
報
・
通
信
コ
ン
サ
ル
テ
桑ィ
津ン
グ
浩二
太部
郎長
「点」の存在であったマニア、ヘビーユーザ
上
席
コ
ン
サ
ル
タ
ン
ト
が、
自身のコミュニティを形成し、市場におけ
る強い影響力を持った存在として、パワーユ
パワーユーザの存在感
ーザへと進化している例が見られる。
彼らは、一般ユーザに比較して、
自身のこ
図表1は、特定分野におけるパワーユーザ
だわりに裏打ちされた多くの購買・消費を行
が顧客全体に占める比率と、平均的な顧客
ン以外でもできる仕事を切り分ける
うだけでなく、
ネットを介した迅速かつ高度な
に対する購買額の比率を示したものである。
(開発者が、設計と作図、評価を一人で
情報収集、
自身の興味を有する分野におけ
分野により、パワーユーザの特性、定義は
行っている場合、
ルール明確化やマニュ
る各種評価、
コミュニティ内の製品、企業、技
異なるものの、購買額で平均的な顧客の4か
アル整備により設計と作図、評価を別々
術に関する「世論形成」を活発化させている。
ら11倍に達している。分野の網羅性に難は
のスタッフで対応できるようにする。作業
突出した一部のパワーユーザは、情報発
あるものの、パワーユーザの全体比率を、3∼
の切り分けを行っている米系自動車メー
信を通じてカリスマ、エバンジェリストとして、
5%相当、購買額比率を4から6倍程度と見な
カでは、
日中、
自国で設計し、作図をネット
商 品・サービスに対 する一 般 ユーザの選
すと、
目安しては市場の17%に相当する。
要がある。)
●開発キーマンしかできない仕事とキーマ
10 コンサルタントが語る-2
当レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。
Copyright(C) 2005 Nomura Research Institute,Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
コンサルタントが語る-3 11
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コンサルタントが語る
への影響力が増大しており、市場における彼
PC自作家は、最新の部品を購入して、一
交換が加速する。携帯電話端末の事例では、
らの存在感は、人数比以上に大きい。
般製品をしのぐ自分自身のマシンを組立てる
新製品発表から、製品への一定の評価確定
一方、
その過程で、評価の定まっていない新
まで3日間で2000人程度のパワーユーザの関
パワーユーザの事例 PC市場
しい機能、部品に対して、
自作活動を経て獲
与が確認されている。
パワーユーザが市場に大きな影響を与え
得された知見、
ニーズを明らかにし(例、高速
次いで、Webサイト、掲示板を通じた情報
るだけでなく、市場の方向性、企業の製品開
PC=騒音PC、
ゆえに水冷で静音化)、
コミュ
の蓄積、発信が進み、一部のパワーユーザか
発等に大きく貢献しうる事例として、パソコン
ニティ内で継続的な評価を行っており、その
ら、
カリスマ、エバンジェリストともいうべきオピ
市場を見てみよう。
蓄積が市場のトレンドを先取りしてきた。現在
ニオンリーダが発生する。オピニオンリーダを
日本のパソコン産業は、CPU、OSのグロー
では、彼らの活動、影響力に対して、台湾、米
中心に、更なる情報交換、購買・消費が進展
バルデファクト争奪、
ダイレクトモデル等のビジ
国等の大手ベンダーからの注目も集まっており、
していく。
ネットとの親和性が高く、情報発信等の比
ネスモデル競争で後手に回り、80年代の後半
秋葉原での情報は、即日、全世界に向けて翻
率が高いアミューズメントソフト、
コンテンツ等
には、20%近くあった世界市場シェアを10%
訳、伝達される仕組みが出来上がっている。
の分野に限定すると、パワーユーザ、ヘビー
近くにまで低下させている。
ユーザは全体市場の約11%相当を占めてい
一方、
日本市場においては、TV録画や水
ると推定される。
冷等の機能差別化に向けた製品開発が活
1:4、1:11の法則
対購
平買
均額
ユ比
ー
ザ
(図表1)
(倍)
12
10
8
6
4
11 缶コーヒー
10
栄養ドリンク
購買量比
対平均ユーザ
図表1 1:4、
DVD、1:11の法則
8 清涼飲料
8
ブランドバッグ
7.2
7
7
PC 6.8
カップ麺
自動車
女性下着
5.2
4.7 カメラ
CD
2
0
0%
2%
4%
6%
8%
パワー
ユーザ
比率
10%
パワーユーザの成立と、
その特徴
発であり、世界市場においてもPC市場のトレ
ンドセッターとして再び注目を集めつつある。
分野により、強い市場への影響力を発揮
それらの機能の多くは、秋葉原等において、
するまでに至ったパワーユーザであるが、従
パワーユーザ(いわゆるPC自作家 )からの
前から、特定の分野に強いこだわりをもった
支持、評価をうけたものが、2から3年の時間
ヘビーユーザ、
マニアは存在していたことも事
数の上では、全体市場に占める重みは限
差をおいて、一般製品の形で上市されてきた
実である。現代のパワーユーザが、以前のヘ
定的であるものの、近年、
ネットを介した市場
ものでもある。
ビーユーザ、マニアと大きく異なる点は、
ネット
パワーユーザの持つ市場への
影響力
パワーユーザとインターネット普及以前のマニアとの相違
インターネット普及前
インターネット導入後
◆特定分野に強いコダワリ、思い
入れを持ち、強い没入状態を作
っているヘビーユーザは過去か
ら存在。
◆パワーユーザ間でのコミュニ
ティが形成。
◆パワーユーザ間での情報交換
速度が加速。
◆素人専門家、マニアは存在する
◆Webサイト、掲示板を通じた情
が、
「同好の士の集まり」。
報発信量が急増し、一部でカリ
あく
までニッチ。
市場全体への
図表3 パワーユーザとインターネット普及以
スマが出現。
影響は限定的。
前のマニアとの相違
◆購買、情報消費が加速。
◆世代、国境を越えた拡大、再生
産のメカニズムがない。
携帯電話端末におけるパワーユーザ間情報交換
を介したコミュニティを形成していることで、従
PC製品開発と秋葉原
(図表2)
2002
テレパソコン
大手メーカ製品PC
2002
小型を追求し
液晶一体型へ
2003/05
水冷PC
■ほぼ1日で評価の大枠が定まる。
前の分散、孤立していたマニアに比較して、
強い情報収集・交換インフラと情報発信力を
ザ間情報交換
+
図表2 PC製品開発と秋葉原
1999
テレビチューナ
(録画)
1999∼2000
キューブ型ベアボーン
(小型筐体)
2001/春
水冷(静音)
(出所)画像は各メーカーWebサイト
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■3日目までには、パワーユーザ間でのコン
センサスがWebサイト上で、テンプレとし
て固まる。
1日
300人が評価
獲得したことがあげられる。
Webサイト
テンプレ作成
Webサイト
テンプレ完成
+2日
続されることで、
コミュニティが形成され、情報
自作PC
(図表4)
「いけてるかどうか?」は、
ここで定まる。
発売
図表4
携帯電話端末におけるパワーユー
開始
まず、
ネットを介して、パワーユーザ間が接
ショップブランドPC
(図表3)
総計1,500∼2,000人
の交換、
コンセンサス形成など基礎情報の底
雑誌等の記事への
評価掲載は+14∼30日
上げがなされている。
ネットを介することで、情報交換等にともな
上記の流れを、
パワーユーザの視点から眺め
う地域差、時間等の負担が小さくなり、情報
ると、
コンサルタントが語る-3 13
3
コンサルタントが語る
●ある瞬間に、強い興味を持ち、止まらなくな
顧客であり、マーケティング等での活用意義
協働アプローチ(代行・活用)
のコミュニティからの尊敬、信頼を獲得して
る。いわゆる「はまる」
は大きい。一方、
ネットを介したコミュニティには、
第 一のアプローチを一 歩 推し進めると、
いくことがあげられる。
●次いで、消費行動を繰り返すうちに、愛着・
大きなリスクの側面も伴う。これらをいかに活
パワーユーザのコミュニティを自社の代理と
協働アプローチに比較して、企業内に、パ
こだわりが増し、消費行動が加速する。
用するかは、今後の経営課題の一つとなる。
して活用するアプローチとなる。例えばPCソ
ワーユーザに対して影響を与えうる人材を
フトウェアでは次のような事例を見ることがで
擁する必要がある点で、実施のための障壁
きる。
は高くなる。
●顧客、特に初心者を対象としたヘルプデス
事例:DVDレコーダ
クサービスの一環で、
ヘビーユーザが事業
●電機メーカT社のK参事は、DVDレコーダ
者の代わりに支援サービスを提供する。ボ
のパワーユーザコミュニティから「録画神」
ランティアサービスの一環でもあり、通常の
の呼び名を奉られている。自身もAVコンテ
有償保守メニューとは別扱いとなる。事業
ンツのパワーユーザであるK参事は、パワ
者は、ヘルプデスク機能を代行するヘビー
ーユーザならではの視点からくるコンテンツ
ユーザに対して商品購入等に活用可能な
ハンドリングのニーズを、他社にない機能で
ポイントを付与する形で報いている。
実現し、製品の差別化、高い満足度、指名
問合せの多くが必ずしも自社ソフト製品そ
買い比率が高いといった実績をあげてい
のものではなく、PC関連の一般的なトラブ
る。自社製品の解説本を出版し、同コミュ
ル等も多いこと、顧客応対コストの負担が
ニティからの絶大な支持 、敬意を受けて
協働アプローチ(取り込み)
大きいことなどを背景としており、パワーユ
いる。
第一のアプローチは、パワーユーザのコミュ
ーザに対して、
「認められたい」
「評価され
ニティを自社の重点顧客として組織化し、製
たい」という欲求を満足させつつ、
コスト低
品開発フィードバックの獲得、
ファン層としての
減の効果も期待できる一挙両得に特徴が
優遇を進めることであり、
この手法はインター
ある。
●自分なりのこだわりが生まれ、
それらを外部
に向かって発信、主張したいという欲求が
強まり、一部で発信が本格化する。
企業の経営戦略、マーケティング戦略に
おけるアプローチ
(図表6)
サプライヤ側の影響力
という流れになる。
パワーユーザの形成プロセス
(図表5)
理想像の周りをぐるぐる
回りながら徐々にスピード
をあげる
ある瞬間に
捉えられる
あるジャンルに強い
興味を持ち、止めら
れなくなる。
いわゆる「はまる」。
消費行動を繰り返
すうちに、愛着がど
んどん増し、消費ス
ピードが上がる。
∼∼
教導
∼∼
∼∼
∼∼
∼∼
∼∼ ∼
∼∼
∼マーケティ
∼∼
図表6 企業の経営戦略、
ング戦
∼∼
∼∼
∼∼
∼∼
略におけるアプローチ協 働
溝
(代行・活用)
協働
(組織化)
パワーユーザとの結びつき
図表5 パワーユーザの形成プロセス
目指す理想像
中心に近い星ほど
早く回る
そのうちエネルギーを
発散し始める
自分なりのこだわりを持ち
始め、
それを追及し、外に向
かって主張を始める。
ネット普及以前から行われてきた伝統的な手
法といえる。
教導アプローチ
協働アプローチが、パワーユーザを事業者
企業の経営戦略、
マーケティング戦略上への示唆
事例:ノートPC
側に取り込んでいくことを狙いとしていること
●約500名の重点顧客をクラブとして組織化
に対して、パワーユーザを、
より望ましい方向
している。そして、
意見交換会、
内覧会など、
へ企業側から積極的に教え導いていくアプ
コミュニティを形成し、一般顧客をはるかに
マーケティング担当者が前面に出ることで、
ローチが教導となる。具体的には、企業が自
しのぐ情報交換・消費を行っているパワーユ
製品への評価、
ニーズ、先進利用事例等
社内にパワーユーザにとってのカリスマ、エ
ーザは、企業にとって、市場のアンテナ、重要
を継続的に収集している。
バンジェリストを擁することで、パワーユーザ
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