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水戸市庁舎整備基本計画【表紙~第2章】(PDF形式:3,244KB)

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水戸市庁舎整備基本計画【表紙~第2章】(PDF形式:3,244KB)
水戸市庁舎整備基本計画
平成 25 年 11月
水 戸 市
.
はじめに
本市におきましては,東日本大震災により,市役所本庁舎をは
じめ,消防本部庁舎及び水道部庁舎が大きな被害を受け,市役所
機能は,本庁舎周辺の臨時庁舎や三の丸臨時庁舎等に分散してい
る状況です。震災からの本格的な復興と,より一層の市民サービ
スの向上を図るためには,災害時の安全性を確保し,防災機能を
充実させるとともに,これまで課題であった狭あい化の解消やユ
ニバーサルデザインの導入等により,安全で市民の皆様が利用し
やすい庁舎を一日も早く整備する必要があります。
そのため,新庁舎の機能や規模,敷地の利用計画,構造・工法等の基本的な考え方につ
いて,技術的な視点を取り入れながら「水戸市庁舎整備基本計画」の策定に取り組んでき
たところであります。
計画の策定に当たりましては,「未来の水戸をつくる市民1万人アンケート」の結果を
踏まえるとともに,本庁舎等の整備に係る市民検討委員会からいただいた御意見や意見公
募手続により,市民の皆様のニーズの把握に努めてまいりました。
また,議会におきましても,東日本大震災に伴う市役所本庁舎等の整備に関する調査特
別委員会が設置され,様々な角度から御審議をいただき,本計画を取りまとめることがで
きたところであります。
計画の策定に御尽力いただきました皆様に,心から感謝いたしますとともに,皆様の御
期待に応えるためにも,さらなるスピード感をもって,整備事業を推進し,東日本大震災
からの復興のシンボルとなり,市民の皆様から末永く愛される新庁舎の完成を目指してま
いりますので,引き続き御理解と御協力をお願い申し上げます。
平成 25 年 11 月
水戸市長
高橋
靖
—目
次—
第1章 新庁舎整備に至った経過
1
東日本大震災による被災・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
2
臨時庁舎体制の構築・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
3
本庁舎等の課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
4
検討の経過及び整備方針・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
5
水戸市第6次総合計画における新庁舎整備事業の位置付け・・・・・・7
第2章
新庁舎整備の基本的な考え方
1
新庁舎整備の基本理念・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
2
目指すべき新庁舎像及び基本方針・・・・・・・・・・・・・・・・・11
3
新庁舎に備える具体的機能・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
第3章
新庁舎整備に係る条件整理
1
計画条件の整理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・43
2
敷地の条件整理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45
第4章
新庁舎の施設規模及び空間構成
1
施設規模の積算・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・55
2
空間構成の考え方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・58
第5章
駐車場及び駐輪場の必要台数
1
駐車場の必要台数の検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・63
2
駐輪場の必要台数の検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・66
第6章
1
第7章
敷地の利用計画
配置計画・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・71
事業計画に関する検討
1
事業手法等の検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・79
2
構造・工法の検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・91
3
概算事業費の算出及び財源・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・95
4
整備スケジュールの検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 100
5
周辺道路等アクセス性の確保・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 101
第 1 章
新庁舎整備に至った経過
.
第1章 新庁舎整備に至った経過
1
東日本大震災による被災
市役所本庁舎,消防本部庁舎及び水道部庁舎(以下「本庁舎等」という。)は,昭和 46 年から 47
年の間に完成し,新耐震基準1施行以前に建てられた庁舎です。
耐震性の不足や狭あい化,設備機器類の老朽化が進み,防災拠点として不安があり,市民サービス
の低下や執務環境の悪化を招いていました。このため,平成 20 年度から,本庁舎等の整備資金の確
保を目的に,庁舎等整備基金を設置し,対応策を検討してきたところです。
このような中,東日本大震災により,市役所本庁舎は甚大な被害2を受け,使用停止となりました。
また,消防本部庁舎及び水道部庁舎は,建物が傾くなど損傷が大きく,すでに解体しています。
市役所本庁舎(使用停止中)
【被災した本庁舎等の概要】
区
分
市役所本庁舎
消防本部庁舎3
水道部庁舎
所 在 地
中央1丁目4番1号
緑町2丁目1番2号
中央1丁目5番 36 号
竣 工 年
昭和 47 年
昭和 46 年
昭和 47 年
鉄筋コンクリート造
鉄筋コンクリート造
地上3階(望楼付属)
地上4階
12,345.56 ㎡
1,428.32 ㎡
1,953.75 ㎡
使用停止
解体済(平成 23 年度)
解体済(平成 24 年度)
鉄筋コンクリート造一部鉄
構
造
骨鉄筋コンクリート造
地下1階,地上6階
階
数
(一部7階)
延床面積
現
1
2
3
状
新耐震基準:建築物の耐震性の基準は建築基準法で定められており,新耐震基準とは,昭和 56 年の同法の改正による
基準である。住宅やビルは,震度5強程度の揺れでほとんど損傷が出ないこと,震度6強~7の揺れで建物が倒壊・
崩壊に至らないこと,この2つの耐震性が確保できる構造とすることが必要とされている。
市役所本庁舎の被害の状況(損傷度調査及び耐震診断の結果):市役所本庁舎は,壁や柱に亀裂が生じるなどの被害を
受け,震災後の損傷度調査で,基礎の不同沈下等はなく「地盤の影響はなし」との判定となったが,建物は,国の
建物被害区分判定要領に基づき「半壊」とされた。また,耐震診断の結果は,強い地震で「倒壊し,又は崩壊する
危険性が高い」との評価となっている。
消防本部庁舎は,北消防署との合築であり,延床面積は北消防署分の面積を含む。
-1-
第1章 新庁舎整備に至った経過
2
臨時庁舎体制の構築
震災直後,十数か所に分散していた臨時庁舎は,本庁舎前臨時庁舎等と三の丸臨時庁舎のおおむね
二極の体制とすることができましたが,現在でも市民からわかりにくいとの声があるなど,不便な状
況が続いています。
(1)主な臨時庁舎体制(平成 25 年 10 月現在)
ア
本庁舎前臨時庁舎等 水戸市中央1丁目 他
臨時庁舎名
配置部署等
産業経済部(農政課・農業環境整備課),建設部(建設計画課・
本庁舎前臨時庁舎
道路管理課・道路建設課・生活道路整備課・河川都市排水課・
建築課),下水道部(下水道管理課)
本庁舎前議会臨時庁舎
議場,委員会室等議会機能,議会事務局
市長室,副市長室,市長公室(秘書課・政策企画課・地域振興
市民会館臨時庁舎4
課・みとの魅力発信課),総務部(工事検査課),財務部(財政
課・契約課),市民環境部(環境課・衛生管理課),会計課,農
業委員会事務局
総務部(総務法制課・行政改革課・人事課・管財課),市民環境
市民会館東側臨時庁舎
部(市民生活課・地域安全課・ごみ対策課),都市計画部(都市
計画課・建築指導課・公園緑地課・市街地整備課・住宅課)
イ
三の丸臨時庁舎 水戸市三の丸1丁目
臨時庁舎名
配置部署
財務部税務事務所(市民税課・資産税課・収税課),保健福祉部
三の丸臨時庁舎
(福祉総務課・生活福祉課・障害福祉課・高齢福祉課・子ども
課・国保年金課・介護保険課),産業経済部(商工課・観光課),
市民環境部(市民課),教育委員会(幼児教育課)
ウ
総合教育研究所 水戸市笠原町
配置部署:教育委員会(教育企画課・学校教育課・学校施設課・生涯学習課・文化課・スポーツ課)
エ
消防本部臨時庁舎 水戸市城南2丁目 民間ビル
配置部署:消防本部(消防総務課・火災予防課・消防救助課・救急課)
オ
水道部臨時庁舎 水戸市中央2丁目 民間ビル
配置部署:水道部(水道総務課・経理課・料金課・水道整備課・給水課)
4
市民会館臨時庁舎:市民会館臨時庁舎は,市民会館の耐震性の問題から平成 25 年 12 月末に閉鎖し,配置部署について
は,市民会館東側臨時庁舎を含め,再編を行い,平成 26 年1月から水道部庁舎跡地(中央1丁目)に開設する臨
時庁舎及び民間ビル(城南2丁目)へ移転する予定となっている。
-2-
第1章 新庁舎整備に至った経過
【主な臨時庁舎の位置】
イ 三の丸臨時庁舎
水戸駅
千波湖
エ 消防本部臨時庁舎
ア 本庁舎前臨時庁舎等
オ 水道部臨時庁舎
ウ 総合教育研究所
県庁舎
【主な臨時庁舎の写真】
本庁舎前臨時庁舎
本庁舎前議会臨時庁舎
市民会館東側臨時庁舎
三の丸臨時庁舎
-3-
第1章 新庁舎整備に至った経過
3
本庁舎等の課題
本庁舎等においては,次のような様々な課題があり,市民サービスの低下を招いていました。新庁
舎整備に当たっては,これらの課題を解決することが求められています。
本 庁 舎 等 の 課 題
(1) 耐震性の不足等防災拠点機能への不安
(2) 狭あい化による利便性及び事務効率の低下
(3) 老朽化に伴う設備等の機能低下
(4) ユニバーサルデザイン5への対応不足
(5) 環境に配慮した取組の不足
(1)耐震性の不足等防災拠点機能への不安
本庁舎等は,耐震性が不足していたことから,東日本大震災により,大きな被害を受けました。
このため,庁舎内で業務を継続することができず,災害対策本部は,市役所本庁舎と隣接する市民
会館へ設置するとともに,臨時庁舎体制の構築を余儀なくされました。
また,震災により,電気,通信,水道などのライフライン6が停止した状況においては,情報の収
集及び市民への周知など災害対策本部の運営等に大きな影響がありました。
(2)狭あい化による利便性及び事務効率の低下
社会経済環境の変化による行政需要の拡大等に伴い,本庁舎
等は狭あい化が進み,窓口や待合スペースなどが不足していた
ため,来庁者の利便性が低下していました。
また,狭あい化の対策のため,事務室の一部については,分
庁舎等への移転7や会議室を転用し,確保しており,分散化に伴
う市民の利便性や事務効率の低下等を招いていました。
さらに,情報発信や市民協働のためのスペースなどが十分で
狭い窓口,待合スペース,通路
なく,市民と行政との協働都市を目指す本市において,その理
念を実践できる庁舎となっていませんでした。
5
6
ユニバーサルデザイン:年齢や性別,国籍,障害の有無等に関わらず,誰もが快適に利用しやすいよう,まち,もの,
環境等を整備するという考え方
ライフライン:私たちが日常生活を営むうえで重要な電気,水道,ガスなどの供給施設や電話等の通信設備
7
分庁舎等へ事務室を移転した部署の例
分庁舎等の名称
移転部署
市民会館分室(中央 1 丁目)
工事検査課,契約課,農業委員会事務局
常澄庁舎(大串町)
選挙管理委員会事務局,監査委員事務局
内原庁舎(内原町)
下水道整備課
-4-
第1章 新庁舎整備に至った経過
(3)老朽化に伴う設備等の機能低下
本庁舎等は,竣工後約 40 年が経過し,建物が全体的に老朽化していました。空調,給排水,電
気設備等は耐用年数が過ぎ,修繕工事等が増加しているとともに,機能低下が著しくなっていまし
た。
また,ネットワークや端末機器の床上配線など,情報化社会に対応した庁舎環境となっていませ
んでした。
(4)ユニバーサルデザインへの対応不足
市役所や図書館をはじめとする公共施設は,高齢者,障害者,子ども連れのかたなど様々な市民
が訪れることから,誰もが,安心して快適に利用できるようにする必要があります。
本庁舎等は,狭あい化や構造上の問題から,このようなユニバーサルデザインへの対応が十分で
はありませんでした。
歩行に障害があるかたにとって
使いづらい開き戸のトイレ
手すりが片側のみの階段
(5)環境に配慮した取組の不足
地球温暖化が大きな問題になる中,本市は,「水戸市地球温暖化対策実行計画」を策定し,地域
の一事業者として,率先して温室効果ガスの排出抑制等に取り組むこととしています。
本庁舎等においては,これまでも節電等の取組を進めてきましたが,建物や設備自体が老朽化し
ていたため,環境に配慮した取組が十分ではありませんでした。
-5-
第1章 新庁舎整備に至った経過
4
検討の経過及び整備方針
本市においては,震災後,臨時庁舎体制を構築するとともに,不便な状況の早期解消に向け,庁舎
整備の方策について,立地場所や財源,ライフサイクルコスト8,安全性など幅広い観点から検討を行
ってきました。
市議会においても,本庁舎等の整備方針及び進捗状況等を調査,検討するため,平成 24 年6月に
「東日本大震災に伴う市役所本庁舎等の整備に関する調査特別委員会」9が設置され,積極的な審議が
行われてきました。
これらの結果,次のとおり本庁舎等は,現在地に建替えることと決定しました。
(1)決定した整備方針
ア
本庁舎等は,現在地(水戸市中央1丁目)へ建替えを行う。
イ
高い耐震性はもとより,十分な防災設備,自立性を備えたライフラインの構築など,防災拠点
として構造的・技術的にも最大限の安全性を確保する。
ウ
災害発生時の迅速な初期活動や応急対策の実現のため,本庁舎と消防本部庁舎及び水道部庁舎
の一体化を図るとともに,防災センターを設置する。
エ
誰もが快適に利用しやすい庁舎環境を目指す。
(2)方針決定に至った理由
ア
現在地は,水戸駅に近く,公共交通網とともに道路網が充実しており,アクセス性に優れてい
ること。また,すでに市役所を核とした都市機能が集積し,コンパクトなまちづくりを実践でき
ること。
イ
国の行政庁舎の再建に係る財政措置により,財源が確保でき,用地の取得費用も生じないため,
市の財政負担,市民の負担軽減につながること。
ウ
改修に比べ,庁舎の耐用年数や整備費用の点で,中長期的なライフサイクルコストの抑制が可
能になること。
エ
地質調査の結果及び専門家の意見から,現在地の地盤は,ビルなどの建築物を支える十分な剛
性と強度があるとともに,液状化の可能性が低いことなどから,十分に安全であることが確認で
きたこと。
8
9
ライフサイクルコスト:建物を建築する際の費用は,企画・設計費や建設費などの建設コスト(イニシャルコスト)だ
けでなく,修繕費,保全費,運用費などの維持・管理コスト(ランニングコスト)及び解体・廃棄処分コストまで
の建物の生涯に必要な総費用の観点から考察を行うことが必要とされており,この総費用をライフサイクルコスト
という。
詳細な検討経過については,資料編1を参照
-6-
第1章 新庁舎整備に至った経過
5
水戸市第6次総合計画における新庁舎整備事業の位置付け
4(1)の整備方針を踏まえ,本市では,現在,策定を進めている新たな水戸のまちづくりのビジ
ョンとなる水戸市第6次総合計画「素案」に,新庁舎整備について,次のように位置付け,整備を進
めることとしています。
(1)市役所新庁舎の整備
現在地への建替え(消防本部庁舎,水道部庁舎との一体化及び防災センター機能の導入)
(2)総合防災拠点(本庁舎防災センター機能)の整備
各種防災機能を備え,防災教育を推進する総合防災拠点(本庁舎防災センター機能)の整備
-7-
第 2 章
新庁舎整備の基本的な考え方
.
第2章 新庁舎整備の基本的な考え方
1
新庁舎整備の基本理念
前述した本庁舎等の課題やこれまでにいただいた市民の意見10を踏まえるとともに,新庁舎の整備
方針や第6次総合計画への新庁舎整備事業の位置付けに基づき,新庁舎整備の基本理念を次のとおり
定めます。
また,基本理念のもと,5つの目指すべき新庁舎像を掲げ,整備を推進します。
~新庁舎整備の基本理念~
安全で市民が快適に利用できる庁舎を目指して
【目指すべき新庁舎像】
(1) 総合防災拠点として安全性が高い庁舎
(2) 全ての人にやさしい庁舎
(3) 質の高い市民サービスを実現できる庁舎
質の高い市民サービスを実現できる庁舎
(4) 市民に開かれた親しみやすい庁舎
(5) 環境にやさしい
環境にやさしい庁舎
やさしい庁舎
10
市民の意見:
・未来の水戸をつくる市民1万人アンケート(平成 23 年 12 月)…笑顔にあふれ安心して暮らせる未来の水戸のま
ちづくりに向けて,市民の皆様の生活環境や市政に対する評価・意見等を把握し,新たな総合計画に反映さ
せるため実施。市役所本庁舎等については,改修又は建替えに当たっての優先事項を伺った。
(資料編2参照)
・本庁舎等の整備に係る市民検討委員会(平成 24 年5月~11 月)…庁舎の安全性や防災機能の強化,窓口等の利
便性の向上,バリアフリー化の推進など,市民が安心・安全に暮らせるまちづくりを進めるために求められ
る庁舎のあり方や機能について,庁舎を利用する市民の視点や各界各層からの視点から広く意見をいただい
た。(資料編3参照)
-9-
第2章 新庁舎整備の基本的な考え方
(1)総合防災拠点として安全性が高い庁舎
新庁舎は,耐震性はもとより,十分な防災設備,自立性を備えたライフラインの構築など,構造
的・技術的にも最大限の安全性を確保するとともに,本庁舎と消防本部庁舎及び水道部庁舎の一体
化を図り,防災センターを設置し,総合防災拠点として安全性が高い庁舎を目指します。
(2)全ての人にやさしい庁舎
新庁舎は,年齢や性別,国籍,障害の有無等に関らず,誰もが安心して,快適に利用できるユニ
バーサルデザインの考え方を導入し,全ての人にやさしい庁舎を目指します。
(3)質の高い市民サービスを実現できる庁舎
新庁舎は,来庁者にとって利便性の高い構成や配置とするとともに,業務の集約化や効率的な事
務執行を推進し,ハード・ソフト両面から,質の高い市民サービスを実現できる庁舎を目指します。
(4)市民に開かれた親しみやすい庁舎
新庁舎は,市民が気軽に様々な情報に接するとともに,市民と行政との協働の推進に向け,活発
に交流が行える場とし,市民に開かれた親しみやすい庁舎を目指します。
(5)環境にやさしい庁舎
新庁舎は,自然エネルギーの積極的な活用等により,省資源・省エネルギー化を図るとともに,
緑化の推進や周辺環境と調和したデザインに配慮し,市民や事業者にとって地球温暖化対策や都市
景観のモデル施設となる,環境にやさしい庁舎を目指します。
-10-
第2章 新庁舎整備の基本的な考え方
2
目指すべき新庁舎像及び基本方針
目指すべき新庁舎像を実現するために,次の基本方針及び具体的機能を設定します。
基本理念
目指すべき新庁舎像
(1)総合防災拠点として安全
性が高い庁舎
(2)全ての人にやさしい庁舎
基本方針
防災対策の拠点となる防災センター
具体的機能
防災機能
機能の導入及びライフラインの自立化
安全で市民が快適に利用できる庁舎を目指して
ユニバーサルデザインの実現
ユニバーサルデザイン
窓口・市民サービスのさらなる向上
窓口・市民サービス機能
事務効率及びセキュリティの向上
執務・セキュリティ機能
市民に開かれた議会の推進
議会機能
(3)質の高い市民サービスを
実現できる庁舎
(4)市民に開かれた親しみや
すい庁舎
市民と行政との協働の推進,効果的
市民協働・情報発信機能
な情報の発信
地球環境への配慮
環境との共生
周辺環境との調和
庁舎の景観・緑化
(5)環境にやさしい庁舎
-11-
第2章 新庁舎整備の基本的な考え方
3
新庁舎に備える具体的機能
(1)防災機能
東日本大震災において,本庁舎は防災拠点としての機能を果たすことができず,ライフラインに
関しても,非常用電源等のバックアップシステムを設置していないなど,防災面や安全面において
大きな課題が残ることとなりました。
震災後に実施した未来の水戸をつくる市民1万人アンケートにおいても,庁舎整備の優先事項と
して最も多かったものは,安全性を求める声でした。
そのため,防災機能について,基本方針「防災対策の拠点となる防災センター機能の導入及びラ
イフラインの自立化」に基づき整備します。
ア
災害に強い庁舎
新庁舎は,来庁者の安全確保だけでなく,災害発生直後から災害対策活動の拠点として,ま
た,行政機能を維持する市民サービスの拠点として,大規模な地震や風水害等の災害時でも,
庁舎としての機能・役割が継続できる建物構造とします。
①
地震対策
新庁舎は,耐震安全性能を国土交通省基準11の最高レベルとするとともに,免震構造など
の採用を検討することにより,大規模な地震の発生時でも構造体や設備機器の損傷を低減さ
せ,執務室内の什器等の転倒リスクも軽減します。
また,建物周辺における外構の沈下対策など,設備配管の耐震性を高めるとともに,災害
時の応急復旧活動等への迅速な着手や,庁舎機能の維持・継続を可能なものとします。
②
風水害対策
台風等による暴風に対する安全性を確保するため,風圧力や風方向振動,風直交方向振動
等に対して,構造耐力上安全なものとします。
また,整備地は洪水浸水想定区域内に位置しており,洪水時には最大約 0.5mの浸水が想
定されています。このため,建物出入口等を浸水レベルより高い位置に設定するなどの十分
な浸水対策を行います。また,防災関係諸室や電気室・機械室など庁舎としての機能を維持
するうえで不可欠な諸室・設備については,浸水の影響を受けない階層に設置します。
11
国土交通省基準:国土交通省が定める「官庁施設の総合耐震・対津波計画基準」
-12-
※詳細は 91 ページに記載
第2章 新庁舎整備の基本的な考え方
③
火災対策
消防車等の緊急車両が庁舎のあらゆる方角からアクセスできるレイアウトや,多方向から
の消火・救急・救助活動に配慮した庁舎配置について検討します。また,庁舎内の防火区画
を細分化し,延焼防止に配慮するとともに,多様な避難経路の確保を検討するなど,火災に
対しても安全な建物とします。
④
その他災害対策
原子力災害の対策の必要性が生じた場合や,ヘリコプターを活用した災害対策に対応でき
る施設や設備について検討します。
イ
防災センター機能の導入
防災センター機能については,以前から,都市防災の充実を図る観点から,そのあり方につ
いて検討してきましたが,東日本大震災によって,危機管理体制の要となる防災拠点施設の必
要性,重要性が再認識されました。そのため,新庁舎においては,災害時における正確で迅速
な災害情報の収集及び周知,迅速な初期活動や応急対策はもとより,平常時における市民への
防災教育,啓発等を図るため,次のとおり防災センター機能の導入を図ります。
・ 両室とも,災害時に即座に災害対策本部体制に移行可能なデスクレイア
ウトを維持するとともに,視聴覚映像設備等の必要な機器類を整備しま
災害対策本部
会議室
及び
災害対策本部
事務局室
す。
・ 「事務局室」は,職員の動線,情報の伝達等に配慮した十分なスペース
を確保します。
・ 「事務局室」は,関係機関(自衛隊等)の活動にも利用できるよう,部
屋の一部を仕切れるようにするなど,スペースの区割りに配慮します。
・ 防災主管課の執務室と近接した配置とし,迅速な初動体制を確立します。
・ 平常時は,設備や機能に支障のない範囲で,庁議やその他の会議等にも
活用します。
・ 災害対策本部会議室と近接した会議室を記者会見室として活用し,迅速
記者会見室
かつ正確な災害情報の周知を行います。
・ 十分な電源設備,通信回線等を設置し,報道機関の迅速な記事配信に配
慮します。
-13-
第2章 新庁舎整備の基本的な考え方
・
MCA無線機12や衛星携帯電話等の情報通信設備,県防災情報ネットワ
ークシステム,全国瞬時警報システム(J-ALERT)等を配置し,防
通信室
備蓄倉庫
災情報の伝達及び災害情報の集約を図ります。
・
十分な電源設備,通信回線等を設置します。
・
防災主管課の執務室と隣接した配置とします。
・ 資機材や食糧(災害対応職員分含む)の備蓄を行うスペースについては,
搬入・搬出を効果的に行えるよう,庁舎敷地内への設置を含め検討します。
・ 大規模災害に対応するため,職員(関係機関を含む)が仮眠や宿泊する
仮眠室
スペースとして,職員休憩室の活用を検討します。
・ シャワー室を設置し,長時間の災害対応に従事する職員の衛生状態に配
慮します。
啓発スペース
その他
・ 防災教育や啓発を目的とした啓発スペースを設置し,市民の防災意識の
高揚を図ります。
・ エントランスロビーは,災害対応や市民への情報発信等を行える多目的
スペースの整備を検討します。
災害対策本部会議室の例(岡崎市)
12
MCA無線機:全国8か所の(財)移動無線センターが提供する 800MHz 帯デジタル無線を活用した無線通信システム。
震災後,市内の全指定避難所等に配備した。
-14-
第2章 新庁舎整備の基本的な考え方
なお,防災センター機能における各諸室等の想定面積は,次のとおりとします。
災害対策本部会議室(会議室との併用を想定)
約
200 ㎡
災害対策本部事務局室(会議室との併用を想定)
約
400 ㎡
記者会見室(会議室との併用を想定)
約
170 ㎡
通信室
約
130 ㎡
備蓄倉庫
約
300 ㎡
仮眠室(シャワー室含む)
約
120 ㎡
啓発スペース
約
80 ㎡
約
1,400 ㎡
合
ウ
計
ライフラインの自立化
東日本大震災では,ライフラインが寸断され,復旧するまでの間,災害対応や市民生活に関
わりの深い業務の運営に支障をきたしました。そのため,新庁舎の整備においては,一定期間
ライフラインが寸断された場合でも,災害対策活動や通常業務を継続できる自立性を備えたラ
イフラインの構築に向け,次のとおりバックアップ機能の導入を図ります。
・ 災害時の停電に備え,災害対策や業務の継続に必要な電力を賄うことがで
きる自家発電設備を設置し,3日13程度の発電が可能な燃料を備蓄するもの
とします。
・
電
力
電源車による給電を可能にする接続装置を設置します。
・ 非常用補助電源としても活用できる太陽光発電装置及び蓄電池を導入しま
す。
・ 電力の多回線引き込みを検討し,災害時に不通となるリスクを最小限に抑
えます。
・
13
周辺の電線の地中化について,関係機関と協議します。
「官庁施設の総合耐震計画基準及び同解説」(建設大臣官庁営繕部監修。以下同じ。)より抜粋
大地震動後に施設の継続的な活動が可能となるものとする。連続運転可能時間は,大地震動後に商用電源の復旧に
要する時間とし,その想定が困難な場合は1週間程度とする。また,燃料備蓄量は,商用電源の復旧に要する時間又
は燃料の補給に要する時間のうち,短い方とする。ただし,その想定が困難な場合は,72 時間程度とする。
-15-
第2章 新庁舎整備の基本的な考え方
・
水
災害時の水道寸断に備え,必要水量を4日14程度確保できる各種対策(耐
震性貯水槽の設置,飲料水の備蓄,井戸の設置,雨水貯留槽の設置等)を行
います。
・
トイレ(雑排水)
通
信
災害時の公共下水道寸断に備え,必要排水量を7日15程度維持できる汚水
貯留槽を設置します。
・
仮設トイレの設置に備えた敷地空間を確保します。
・
通信回線の混雑や途絶に備え,引込みの2重化・2ルート化を図ります。
・ 高速,多回線が確保できる光ファイバー回線と,電源が断絶しても活用で
きるメタル回線の多重化を図ります。
・
燃
料
周辺の通信線の地中化について,関係機関と協議します。
・ 災害時の停電に備え,自家発電機用燃料(3日 13 程度)を備蓄するととも
に,災害対策や業務の継続に必要な燃料の補給体制を整備します。
・ 防災上重要な機器や基幹業務システム等の保護のため,無停電電源装置(U
その他
PS)の設置や外部バックアップ機能の構築等を検討します。
・ 雨水貯留槽は,雨水の有効活用のほか,集中豪雨時における周辺地区への
流出防止の観点から,必要な機能を検討します。
14
「官庁施設の総合耐震計画基準及び同解説」より抜粋
日数は地域の交通情報や水供給事情等により決まるものであるが,補給確保等の想定が困難な場合は都市規模によ
る値とする。大地震動後,外部からの給水が得られるまでの日数(都市人口2百万人以下)=4日
15
「官庁施設の総合耐震計画基準及び同解説」より抜粋
放流又は汚水等の搬出が可能となるまでの日数は,地域の事情により決まるものであるが,排水経路確保などの想
定が困難な場合は,7日とする。
-16-
第2章 新庁舎整備の基本的な考え方
(2)ユニバーサルデザイン
新庁舎の整備に当たっては,年齢や性別,障害の有無や国籍に関わらず,安全で快適に利用でき
る「全ての人にやさしい庁舎」を実現するため,基本方針「ユニバーサルデザインの実現」に基づ
き整備します。
ア
移動空間
○ 課題
本庁舎には,次のような課題がありました。
・
身障者等用駐車場から,玄関までのアクセスがよくなかった。
・
廊下幅が狭く,車いすの通行に支障があった。
・
エレベーター内で車いすが回転できる十分なスペースがなかった。
・
階段の手すりは,片側のみに設置されていた。
○ 整備方針
新庁舎においては,これらの課題を踏まえ,次のとおり整備します。
<誰もが安全で快適に移動できる設備>
・ 玄関付近に身障者等用駐車場を設置し,玄関へのアプローチについては,スムーズな動
線を確保するとともに,屋根を設置します。
・
通路や廊下等は,車いす利用者等がすれ違うことができる十分な幅を確保します。
・
通路や廊下等は,車いす利用者等の負担が少ない床材を使用します。
・ エレベーターは,車いす利用者,担架及びストレッチャー等に対応したものとし,点字
表示や音声案内などの設備を設置します。
・
階段は緩やかな勾配とし,両側に2段手すりを設置します。
・
主な動線には点字ブロックや触知サイン等を設置するとともに,車いす利用者の通行
に支障がないよう配慮します。
2段手すり
蹴上げを低く、
踏み面を広くする
一般的な階段
勾配の緩い階段
緩やかな勾配の階段のイメージ
-17-
第2章 新庁舎整備の基本的な考え方
イ
利用空間
○ 課題
本庁舎には,次のような課題がありました。
・ 待合スペースが十分でなかったため,特に車いすやベビーカーの利用者が手続きを待つス
ペースが限定されていた。
○
・
窓口のカウンターや書類の記載台が車いす利用者に配慮されていなかった。
・
トイレが狭く,車いす対応になっていなかった。
・
授乳やおむつ交換のためのスペースがなかった。
整備方針
新庁舎においては,これらの課題を踏まえ,次のとおり整備します。
<誰もが利用しやすいフロア>
・ 待合スペースは,十分な広さを確保し,車いすやベビーカーの利用者にも配慮したス
ペースを設置します。
・ 窓口カウンターは,車いす利用者に配慮した高さとして,ひざがカウンターの下に入
るような十分な奥行きのものを設置します。
・
書類の記載台は,車いす利用者に対応したものも設置します。
・
筆談ボードを設置するなど,聴覚障害者とのコミュニケーション支援に配慮します。
・ 音声誘導装置の設置や案内人を配置するなど,視覚障害者の案内,コミュニケーショ
ン支援に配慮します。
・ 重要な情報については,必要な外国語を併記するとともに,わかりやすい案内用図記
号であるピクトグラムを用いた表示を行います。
<誰もが安心して使えるトイレ>
・
各フロアに多機能トイレ16を設置します。
・
多機能トイレの設備は,各フロアの利用者ニーズに応じたものとします。
・
トイレ内で異常があった場合に外部に知らせることができる装置を設置します。
<子ども連れのかたにやさしい設備>
16
・
子ども連れの来庁者が多いフロアに,授乳室やキッズスペースを設置します。
・
キッズスペースは,事故防止に配慮した配置とします。
多機能トイレ:車いす利用者が利用できる広さや手すりなどに加えて,おむつ替えシート,ベビーチェアなどを備え
て,車いす利用者だけでなく,高齢者,障害者,子ども連れのかたなど多様な人が利用可能としたトイレのこと。
-18-
第2章 新庁舎整備の基本的な考え方
キッズスペース(甲府市)
ピクトグラムのサイン(甲府市)
なお,新庁舎におけるユニバーサルデザインの導入に当たっては,前述の整備を進めるほか,知
的障害,発達障害,精神障害のあるかたにも配慮するとともに,バリアフリー法17の認定を視野に
入れながら整備を進めていきます。
17
バリアフリー法:
「高齢者,障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」の通称。高齢者,障害者(身体障害者・
知的障害者・精神障害者・発達障害者を含む,全ての障害者),妊婦,けが人などの,移動や施設利用の利便性や
安全性の向上を促進するために,公共交通機関,建築物,公共施設のバリアフリー化を推進することを目的とし
ている。
-19-
第2章 新庁舎整備の基本的な考え方
(3)窓口・市民サービス機能
窓口業務については,より良い市民サービスを目指し,これまでも,フロアマネージャーの
配置や組織の見直し等を行ってきたほか,新たに今年から一部の窓口において,開設時間の延
長を実施するなど,市民の利便性の向上に取り組んできたところです。
新庁舎の整備に当たっては,「質の高い市民サービスを実現できる庁舎」を実現するため,窓口
機能をはじめ,案内機能,相談機能,食堂・売店や指定金融機関等の市民サービス機能について,
基本方針「窓口・市民サービスのさらなる向上」に基づき整備します。
ア
窓口機能等
① 窓口機能
○ 課題
本庁舎には,次のような課題がありました。
・
窓口の場所がわかりにくいという来庁者の声があった。
・
来庁者のプライバシーが確保しにくい環境だった。
・
カウンターで来庁者を立たせた状態で対応していた。
・
手続きのために窓口を何か所も回らなければならなかった。
・
待合スペースが不足していた。
○
整備方針
新庁舎においては,これらの課題を踏まえ,次のとおり整備します。
<わかりやすい窓口>
・
来庁者の多い窓口は,低層階に集約して配置します。
・
関連する手続きが多い窓口は,隣接又は近接した配置とし,できる限り来庁者の
動線の短縮を図ります。
・
窓口機能を集約する低層階フロアの連続性を確保するため,エスカレーターの設
置を検討します。
<待たせない窓口>
・ 関連する手続きの集約を図り,効率的な事務を可能にする窓口の配置を行います。
・
繁忙期には,臨時窓口を設置し,混雑の緩和を図ります。
<気持ちのよい窓口>
・
カウンターは,十分な広さを確保したローカウンターの設置を基本とし,落ち着
いて手続きができる環境を整備します。ただし,業務によっては,ハイカウンター
を用いるなど窓口の特性に配慮します。
-20-
第2章 新庁舎整備の基本的な考え方
・
カウンターには,隣席との仕切りやブースを設置し,来庁者のプライバシーを確
保します。
・
十分な待合スペースを確保します。
・
窓口の受付・処理状況を表示することにより,待ち状況をわかりやすくします。
プライバシーに配慮したカウンター(つくば市)
○
手続きの待ち状況がわかる表示(甲府市)
今後の検討事項
全国では,来庁者に複数の窓口を歩かせない,同じ内容を書かせないという理念のもと,
1か所で複数の手続きができる総合窓口を取り入れる自治体が増えています。
本市においても,「行財政改革プラン 2013」の中で,市民がなるべく少ない窓口で手続き
を終わらせることができる総合窓口の開設に向けた検討を行うこととしています。
また,平成 25 年5月には国民共通番号制度,いわゆるマイナンバー制度の関連法案が成
立し,本制度により,本人確認の短縮等による申請手続きの簡略化が可能となり,総合窓口
や各種証明書の自動交付機を導入しやすい環境になる可能性があることから,本市において
も,税をはじめ,医療や介護等,福祉部門の業務において活用することが想定されます。
現段階においては,制度について不確定な部分が多いため,国の動向を見据えながら,市
民サービスの向上に資する対策を図る必要があります。
このため,新庁舎においては,総合窓口の導入を前提とした整備を推進します。
-21-
第2章 新庁舎整備の基本的な考え方
② 案内機能
○ 課題
本庁舎には,次のような課題がありました。
・
庁内の案内板や表示の文字が小さく,わかりにくいという来庁者の声があった。
・
表示内容やデザインが統一されていなかった。
・ 一部を除いて,フロアに案内係がいなかったので,手続きがわかりにくいという来庁者
の声があった。
○
整備方針
新庁舎においては,これらの課題を踏まえ,次のとおり整備します。
<総合案内機能の充実>
・
総合案内は,来庁者の動線を考慮し,わかりやすい場所に設置します。
・
人的な対面サービスを充実させ,きめの細かい迅速な案内を行います。
<わかりやすいサインの導入>
・
案内板等のサインは,表示方法や文字の大きさ,設置場所等について,誰もが見や
すいものに統一します。
・
サインを部門別に色分けにするなど,視認性の高い案内表示を行います。
・
来庁者が多い窓口のサインは,課の名称だけでなく,業務内容や目的別の表示を行
います。
・
サインは,窓口の来庁者用椅子の背面など,目の届きやすい場所への表示について
も検討します。
・
サインは,庁内組織の機構改革や配置の変更にも対応可能なものとします。
わかりやすいサイン(立川市)
充実した総合案内(甲府市)
【参考】業務内容や目的別のサイン表記について
旧本庁舎のサインは,部署名や行政用語による表記が主となっていましたが,新庁舎で
は,来庁者の目的に沿った表記を導入することで,目的の窓口をわかりやすくします。
旧本庁舎の表記
介護保険課
新庁舎での目的別表記(例)
・介護保険の認定申請に関すること
・介護保険料に関すること
-22-
第2章 新庁舎整備の基本的な考え方
③
相談機能
本庁舎には,相談室が不足していたため,来庁者のプライバシー確保の視点から大きな課題
となっていました。新庁舎においては,来庁者が安心して相談できる環境を創出するため,次
のとおり整備します。
<目的別に集約配置>
・ 市民の様々な相談に対応する一般相談室を広聴担当部署に隣接して配置し,各種団体が
主催する法律相談等の事業にも活用を図ります。
・ 納税や福祉,子育てなどの専門相談室を担当課と同一フロアに集約して配置し,相談者
の利便性の向上に努めます。
<相談者のプライバシーの配慮>
・ 相談室は,待合スペースなど来庁者が多い場所を避けて配置し,落ち着いて相談できる
環境に配慮します。
・
相談室への動線にも配慮します。
・
相談室の使用状況を外部からもわかるように表示します。
-23-
第2章 新庁舎整備の基本的な考え方
イ
市民サービス機能
○
課題
本庁舎では,食堂・売店や指定金融機関等の市民サービス機能について,次のような課題が
ありました。
・ 食堂と売店が地下に設置されていたため,来庁者から場所がわかりにくいという声があっ
た。
・
売店の品揃えが十分でなかった。
・
来庁者が庁舎内でインターネットに接続できる環境が整っていなかった。
○ 整備方針
新庁舎においては,これらの課題を踏まえ,次のとおり整備します。
<来庁者のニーズが高い機能の導入>
・
指定金融機関やATM,食堂及び売店は,引き続き,新庁舎内に設置します。
・
その他の機能の導入については,庁舎周辺の同種施設の立地や事業性を考慮しながら,
検討を進めます。
<来庁者の利便性向上に資する導入機能の拡充>
・ 食堂は,来庁者や職員が利用しやすいよう,十分な広さを確保し,明るく快適な空間と
します。また,地場農産物を取り入れたメニューを採用することや公募による事業者の選
定等による効率的な運営,障害者雇用等を検討します。
・ 売店は,来庁者や職員が利用しやすいよう低層階に設置します。また,品揃えの充実を
図り,水戸の特産品,水戸ホーリーホックのホームゲームのチケットなどの地域振興につ
ながる商品や切手・印紙等を販売します。あわせて,業務時間外の営業や,公募による事
業者の選定等による効率的な運営,障害者雇用等を検討します。
・
公衆無線LANなどインターネットの接続環境を整備します。
-24-
第2章 新庁舎整備の基本的な考え方
(4)執務・セキュリティ機能
新庁舎においては,事務室等について十分な面積を確保し,本来本庁舎にあるべき部署を配置す
るとともに,職員が効率的に事務を行うことができる環境を整備することで,市民にとって,より
良いサービスの提供を実現できる庁舎を目指します。
また,本庁舎は,公共空間として,広く開放するとともに,来庁者や職員の安全性の確保及び個
人情報等の各種重要情報を適切に管理する必要があります。
そのため,執務機能及びセキュリティ機能について,基本方針「事務効率及びセキュリティの向
上」に基づき整備します。
ア 執務機能
① 事務室
○ 課題
本庁舎には,次のような課題がありました。
・ 庁舎全体にわたって狭あいであったため,
(ア) 本来本庁舎に配置すべき部署を分庁舎等へ配置していた。
(イ) 組織改編や職員数の見直し時の対応に苦慮していた。
(ウ) 事務の関連性が強い部署を離れて配置せざるをえなかった。
・ 構造上,庁舎全体に吹き抜けを採用していたため,
(ア) 他の課への移動が不便だった。
(イ) 庁舎内の温度管理が難しかった。
・ 事務室配置の変更やOA機器等の交換等に迅速に対応できなかった。
・ 個人情報を扱う部署において,閉庁時におけるセキュリティ対応が十分でなかった。
・ 内部の打合せや関係機関等との打合せを行うスペースが不足していた。
-25-
第2章 新庁舎整備の基本的な考え方
○
整備方針
新庁舎においては,これらの課題を踏まえ,次のとおり整備します。
・ 職員(嘱託員及び臨時職員等を含む。)一人当たりの面積は,総務省基準18の 4.5 ㎡
を目安とします。(※旧本庁舎は,約 2.6 ㎡)
・ 階の中央を通路とし,両側に事務室等を配置するなど,市民の利便性の向上を図る
とともに,職員の効率的な事務を可能にする構造を検討します。
・
事務室は,原則としてオープンフロア19とし,組織改編や職員の異動にも柔軟に対
応できるようにします。
・
机やキャビネットを統一するユニバーサルフロア20を導入し,機能的なオフィスレ
イアウトを実現します。
・
事務室はOAフロア21とし,事務室配置の変更やOA機器の交換等に柔軟に対応で
きるようにします。
・ 同じ部に所属する課は,原則として,同一フロアに配置するとともに,事務の関連
性が強い部署は,可能な限り近接して配置します。
・ 各フロアに,小会議室,書庫,倉庫,男女更衣室等を設置し,効率的な利用に配慮
した配置とします。
・
各フロアにおいては,事務室エリアと共用エリアのゾーニング22を図り,施錠を可
能にするなど,セキュリティに配慮します。
・
事務室内及び事務室に近接した場所に打合せスペースを設置します。
・
室内温度の維持管理に効率的な構造とし,快適な室温を実現します。
・
自然採光やLED照明等により,効率的に,庁舎内の明るさを確保します。
OAフロアのイメージ
オープンフロア(つくば市)
18
総務省基準:総務省地方債同意等基準運用要綱等
19
オープンフロア:間仕切り壁等を設けないオープンな形態で構成されるフロア
20
ユニバーサルフロア:あらかじめ同じサイズ(幅,奥行き)の机,キャビネットで統一して均一に配置するレイアウ
トプラン
OAフロア:配線を床上に露出させることなく,床下一面に配線用の空間があるフロア構造。フリーアクセスフロア
ともいう。
ゾーニング:類似した性格の空間(部屋や区画)をまとめて計画していく行為。ゾーンをつくること。
21
22
-26-
第2章 新庁舎整備の基本的な考え方
以上の内容を踏まえた執務空間(フロア)の構成イメージは,次のとおりです。
【執務空間の構成イメージ】
≪パターン1≫センター通路方式
執 務 ス ペ ー ス
更衣室
(男女)
A
課
給湯室
B
課
トイレ
小会議室1
トイレ
オープンフロア
階 段
E V
小会議室2
小会議室1
D
課
C
課
階 段
E V
通 路 ・ 待 合 ス ペ ー ス
第1線 カ ウ ン タ ー エ リ ア
打合せスペース
第2線 書 棚 ・ コ ピ ー 機
書庫
書庫
第3線 執 務 エ リ ア
倉庫
倉庫
打合せスペース
セキュリティライン
≪パターン2≫片側事務室方式
トイレ
階 段
E V
倉庫
書庫
小会議室1
小会議室1
通 路 ・ 待 合 ス ペ ー ス
打合せ
スペース
小会議室2
トイレ
階 段
E V
第1線 カ ウ ン タ ー エ リ ア
更衣室
(男女)
第2線 執 務 エ リ ア
給湯室
第3線 書 棚 ・ コ ピ ー 機
打合せスペース
セキュリティライン
-27-
第2章 新庁舎整備の基本的な考え方
②
会議室
○
課題
本庁舎には,次のような課題がありました。
会議室は3部屋(政策会議室及び小会議室2部屋)しかなく,不足していたことから,
・
議会の委員会室や隣接する市民会館を活用していた。
・ 災害時における迅速な初期活動や応急対策を行うための防災対策の拠点として,防災セ
ンター機能の導入が求められている。防災センター機能は,災害対策本部や事務局室など,
十分な部屋が必要とされる。
・ 市民と行政との協働事業に関する会議等のための会議室がなかった。
○
整備方針
新庁舎においては,これらの課題を踏まえ,次のとおり整備します。
・ 会議室は,部課長会議や市県民税の申告,職員の研修等,多くの人数が集まること
が想定される会議等が重複しても対応可能な室数を設置します。
・ 大会議室や中会議室等は1フロアに集中配置することとし,災害時に災害対策本部
等の防災センター機能が,機能的に活動できるように配慮したレイアウトとします。
中会議室(100 ㎡程度)は,遮音性に配慮した可動式の壁等によって,他の中会議
・
室と合わせて広く利用できる構造とします。
・ 市民協働会議室を設置し,市民と行政との協働事業のための会議や,審議会等附属
機関の会議等に利用します。
・
最も利用の多い小会議室(10~20 人程度)は,各フロアに設置します。
上記の内容を踏まえ,新庁舎における会議室の室数及び整備面積の目安について,次のと
おりとします。
【新庁舎における会議室の室数及び整備面積の目安】
種
類
主 な 用 途
室数
面積
政策会議室(200 ㎡)
庁議,政策会議室 ※災害対策本部室としての利用を想定する。
1室
200 ㎡
大会議室
部課長会議,研修,申告受付会場
1室
280 ㎡
中会議室1(170 ㎡)
記者会見,諸会議
1室
170 ㎡
中会議室2(100 ㎡)
入札,研修等
4室
400 ㎡
市民協働会議室(100 ㎡) 市民と行政との協働事業に関する会議,附属機関の会議等
1室
100 ㎡
小会議室1( 60 ㎡)
諸会議
14 室
840 ㎡
小会議室2( 30 ㎡)
諸会議
7室
210 ㎡
29 室
2,200 ㎡
(280 ㎡)
※災害対策本部事務局室等としての利用を想定する。
合
計
-28-
第2章 新庁舎整備の基本的な考え方
③ 書庫及び倉庫
○
課題
本庁舎には,次のような課題がありました。
・ 本庁舎の事務室等の面積は,総務省基準による望ましい面積の約 55.6%しかなかったた
め,書庫及び倉庫も十分ではなく,文書の保管については分庁舎の活用や民間業者への委
託等による対策を講じていた。
○
整備方針
新庁舎における書庫及び倉庫の整備に当たっては,文書管理・保存のあり方について,電
子的な文書管理を推進し,効率的な文書管理,ペーパーレス化を図ることにより,紙ベース
での保管,保存文書量の低減を目指し,限りある庁舎スペースを有効に活用するという考え
方のもと,次のとおり整備します。
・ 総務法制課への引継ぎ文書を保管する書庫は,650 ㎡程度を目安に設置します。
(旧
本庁舎の地下書庫面積は 157.68 ㎡)
各フロアに小規模な書庫及び倉庫を設置します。
・
上記の内容を踏まえ,新庁舎における書庫及び倉庫の室数及び整備面積の目安について,
次のとおりとします。
【新庁舎における書庫及び倉庫の室数及び整備面積の目安】
種
類
面 積
書庫(大)
650 ㎡
書庫(小)
50 ㎡
倉庫
50 ㎡
備
考
総務法制課への引継ぎ文書保管
各フロアに配置
合
計
-29-
箇所数
合計面積
1箇所
650 ㎡
21 箇所
1,050 ㎡
14 箇所
700 ㎡
36 箇所
2,400 ㎡
第2章 新庁舎整備の基本的な考え方
④ 多目的スペース,作業室等の諸室
○
課題
本庁舎には,次のような課題がありました。
・ 低層階において,期日前投票所等の期間が限られる業務や情報発信のためのスペースが
不足していた。
・ 共用印刷機や丁合機等の専用の部屋がなく,作業時の音が遮断されていなかった。
・ サーバーの一部は各課の事務室で管理しており,セキュリティ上の課題が生じていた。
○
整備方針
新庁舎においては,これらの課題を踏まえ,次のとおり整備します。
・ 低層階に多目的スペースを設置し,期間が限られる業務のほか,水戸の魅力に関す
る情報や行政情報の周知等のために利用します。
・ 遮音性に配慮した印刷室,作業室を設け,共用印刷機,丁合機,シュレッダー等を
設置します。
・ セキュリティや空調等に配慮したサーバー室を設け,各課で管理しているサーバー
についても集中管理とします。
多目的スペース(立川市)
-30-
第2章 新庁舎整備の基本的な考え方
⑤ 休憩室,更衣室等
○
課題
本庁舎には,次のような課題がありました。
・ 更衣室は,限られた階にのみ設置されていた。
・ 大雨の災害対策等,屋外作業を行う職員のための専用の更衣室やシャワー室,雨具の乾
燥室がないため,職員の健康管理や庁舎の衛生面に課題が生じるとともに,庁舎内が汚れ
やすい状況だった。また,ヘルメット,長靴などの保管場所が不足していた。
・ 職員の健康管理のための,産業医,健康管理保健師が職員との面接・相談を行う健康相
談室は常設でなく,相談日を決め,会議室を利用していた。
○
整備方針
新庁舎においては,これらの課題や内部調査の結果を踏まえ,次のとおり整備します。
・
更衣室を男女別に各階に設置します。
・ 屋外作業を行う職員のために,更衣室,ヘルメット・長靴置場,シャワー室,雨具
乾燥室等を職員通用口付近に設置します。
・ 職員健康相談室を設置し,健康管理保健師が常駐するとともに,産業医等が面接を
行う部屋とします。
-31-
第2章 新庁舎整備の基本的な考え方
イ
セキュリティ機能
○ 課題
本庁舎には,次のような課題がありました。
・ 閉庁時の庁舎内のセキュリティ体制及び情報管理体制が不十分だった。
・ 不審者情報等を一元的に管理できるシステムになっていなかった。
○ 整備方針
新庁舎においては,これらの課題を踏まえ,次のとおり整備します。
<庁舎内のゾーニングに応じたセキュリティ対策の実施>
・ 窓口スペース,執務スペースなどは,利用時間がそれぞれに異なることから,庁舎内
用途や利用時間に応じ,ゾーニングを行います。
・ 庁舎内におけるゾーニングを明確にすることで,来庁者に開放するスペースを確保す
る一方,個人情報を保護し,夜間や休日等におけるセキュリティの確保を図ります。
・ 夜間や休日に利用できる窓口とその他のスペースは,シャッター等により区画します。
・ 機密性が求められるエリアについては,セキュリティカード等による入出管理システ
ムの導入を検討します。
・
業務用エレベーターの設置等,庁舎内の来庁者動線と業務動線の区分を検討します。
<防犯機能の強化>
・ 来庁者や職員の安全を確保するため,不審者情報等を一元的に管理できるシステムの
導入を検討します。
・ 相談室,授乳室などの個室やトイレ等において,異常を外部に知らせるシステムの導
入を検討します。
・
業務時間外の警備体制を強化するため,防犯カメラ等を設置します。
-32-
第2章 新庁舎整備の基本的な考え方
【セキュリティ対策のためのゾーニングイメージ】
共用・協働ゾーン
執務ゾーン
機密ゾーン
来庁されたかたが主
原則として職員や関係
限定された職員や関係
に利用するゾーン
者が入出可能なゾーン
者だけが入出可能なゾ
ーン
(窓口スペース,多目
(執務スペース,作業
的スペースなど)
室など)
(サーバー室,金庫室
など)
閉庁時はシャッター等
による区画
セキュリティカード等
による入出管理
それぞれのゾーンに応じたセキュリティ対策の実施
-33-
第2章 新庁舎整備の基本的な考え方
(5)議会機能
地方分権の進展により,地方自治体の自主・自立が求められる中で,二元代表制の一翼を担って
いる議会が,議決機関として独立性のある機能をより発揮できる環境づくりが必要です。
また,議会に対する市民の理解と信頼を深め,公正で開かれた市政の発展に寄与するため,これ
まで積極的に取り組んできた議会活動の情報発信等をさらに推進することが重要です。
そのため,議会機能について,基本方針「市民に開かれた議会の推進」に基づき整備します。
○
整備方針
<議会フロアの配置及び諸室>
・
議会関係施設は,県都の議会として,威風堂々,伝統を重んじながらも,改革に取り
組む地方議会活動の象徴たり得る施設であって,議員の条例定数の増減,傍聴席の増設
要請,議事運営方式の改革等,将来的な変動要因にも柔軟に対応可能となるよう,長期
的な視点に立って,十分な面積を確保し,必要な諸室・諸機能を整備します。
・
議会機能は,議会と執行機関が一体的な行政機能を発揮できるよう,執行機関と同じ
建物内に配置します。議場に必要な大空間を確保するとともに,議会機能の独立性を保
つため,最上階の同一フロアに配置します。
・
老若男女,障害等の如何にかかわらず利用することができる施設として,ユニバーサ
ルデザインの考え方に基づき整備します。
・
議場及び委員会室等は,市民に開かれた議会フロアとして,誰もが気軽に来庁できる
よう動線に配慮した配置とするとともに,傍聴席を現在のおおむね2倍以上とします。
また,円滑な議会運営に資するため,最新の情報通信環境を整備します。
<議会運営に必要な諸室の面積>
・
議会運営に必要な諸室(議場,全員協議会室,委員会室,正副議長室,議長応接室,
議員応接室,議員控室及び議会図書室(議会事務局,倉庫,トイレ等は,含まず。))と
して,1,700 ㎡~1,800 ㎡程度を想定し,通路約 400 ㎡とあわせ 2,100 ㎡~2,200 ㎡程度
の面積を確保します。
-34-
第2章 新庁舎整備の基本的な考え方
(6)市民協働・情報発信機能
新庁舎は,地域コミュニティやNPO等の様々な市民活動団体と市が協働した活動を行う拠点で
もあることから,市民活動団体の活動を促進するため,情報の共有化を進めながら,団体間のネッ
トワークの構築,さらには,協働に対する市民意識の醸成に資する環境整備を行い,市政へのさら
なる参画機会を提供することで,協働事業の推進を図る必要があります。
また,新庁舎は,多くの市民が来庁することが見込まれるため,行政情報をわかりやすく的確に
提供し,さらには,本市の魅力についても効果的に発信できる環境の整備が求められています。
そのため,市民協働機能及び情報発信機能について,基本方針「市民と行政との協働の推進,効
果的な情報の発信」に基づき整備します。
ア
市民協働機能
○ 課題
本庁舎には,次のような課題がありました。
・
市民協働の情報提供スペースが不足していた。
・
NPO等の市民活動団体との意見交換等を行えるスペースが不足していた。
○ 整備方針
新庁舎においては,これらの課題を踏まえ,次のとおり整備します。
<情報の共有及び市民意識の醸成を図るスペース>
・ NPO等の市民活動団体の紹介や協働事業に係る各種展示等を行うスペースを,待合
スペース付近など市民が多く集まる低層階に設置します。
<市民と行政との協働を推進する会議室>
・
市民協働会議室を設置し,協働事業の打合せ等のために利用します。
・ 市民協働会議室については,庁舎内の空間を利用するものとし,業務時間外において
も,利用が可能となるように庁内のレイアウトや動線,さらにはセキュリティ対策につ
いて配慮します。
-35-
第2章 新庁舎整備の基本的な考え方
イ
情報発信機能
○ 課題
本庁舎には,次のような課題がありました。
・
情報を提供するスペースが不足していた。
・ 各課が行政情報を管理しているため,来庁者にとって必要な情報がどこに行けば得られる
のか,わかりにくかった。
○ 整備方針
新庁舎においては,これらの課題を踏まえ,次のとおり整備します。
<効果的な情報発信ができるスペース>
・ 情報発信に活用できるスペースを待合スペース付近など,市民が多く集まる低層階に
設置します。
・ 観光や歴史,水戸ホーリーホックに関する情報発信など,水戸の魅力発信のために活
用します。
・ チラシやパンフレット等の集約を図るとともに,情報を映像等で表示するなど効果的
な情報発信の方法を検討します。
・
公衆無線LANなどインターネットの接続環境を整備します。
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第2章 新庁舎整備の基本的な考え方
(7)環境との共生
新庁舎は,延床面積が3万㎡を超える大規模な施設であり,エネルギーの消費量が大きくなるこ
とが想定されます。そこで,省資源・省エネルギー化を進めるとともに,再生可能エネルギーにつ
いても積極的な活用を推進し,市民や事業者にとって,地球温暖化対策等のモデルとなる施設を目
指します。また,施設の長寿命化に配慮するとともに,環境を意識した建材を使用するなど,LC
CO223削減の視点からも取り組む必要があります。
そのため,環境との共生について,基本方針「地球環境への配慮」に基づき整備します。
○
課題
本庁舎には,次のような課題がありました。
・
冷暖房の効果がフロアによって異なっていたため,庁舎全体でのエネルギー効率が悪かっ
た。
・
採光が十分でなかったため,庁舎内が暗く,照明によるエネルギー消費量が大きかった。
・ 省エネルギー設備や自然エネルギーの活用が図られていないため,エネルギー消費量が大き
かった。
○
整備方針
新庁舎においては,これらの課題を踏まえ,次のとおり整備します。
<自然エネルギーの有効活用>
・
太陽光発電設備を設置し,温室効果ガスの削減を図ります。太陽光発電設備は,建物の
規模,形状,向きなどとともに,コストと発電能力,本市の気象条件を勘案し,最適な設
置規模を検討します。
また,敷地内の屋外照明についても,太陽電池を利用したものを設置します。
・
自然換気や自然採光を積極的に取り入れます。
・
雨水貯留槽を設け,トイレの洗浄や,植栽への散水等に活用することを検討します。
・
地下水の涵養やヒートアイランド現象の抑制に効果がある透水性舗装について,駐車場
かん
や歩道等への導入を検討します。
<省エネルギー化の推進>
23
・
省エネタイプのライトや,人感センサーによる調光システムを取り入れます。
・
エネルギー使用量の可視化を行い,適切なエネルギーマネジメントを行います。
LCCO2:建物の建設から運用・解体廃棄に至るまでのライフサイクルを通じて発生する二酸化炭素の排出量
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第2章 新庁舎整備の基本的な考え方
<エネルギー損失の低減・建物への負荷低減>
・
エネルギー損失の少ない断熱効果等に優れる外装材,断熱材,高性能ガラス等を導入し
ます。
ひさし
・ 建物の熱負荷を低減させるために,屋上や壁面等への緑化を検討するとともに, 庇 やル
ーバー24などによる日射遮蔽,建物形状に配慮します。
<建物の長寿命化>
・
耐久性の高い構造体を採用します。
・
将来の様々な要因による変化にも対応できるよう,内部の設備・内装部分を柔軟に変更
することが可能なスケルトン・インフィル25の導入について検討します。
<エコマテリアル26・木材の利用>
・
内装等に使用する材料について,エコマテリアルの使用を検討します。
・
「水戸市公共建築物における木材の利用に関する方針」に基づき,低層階における待合
スペースや通路など,内装等に使用する材料や備品等への木材の利用を検討します。
<環境評価の高い庁舎>
・
新庁舎は,様々な環境負荷低減の手法を取り入れることにより,「環境配慮型官庁施設
(グリーン庁舎)27」計画指針(国土交通省官房官庁営繕部 平成 17 年3月策定)を踏まえ
た庁舎とします。
・
24
25
26
27
28
建築環境総合性能評価システム(CASBEE28)の評価におけるSランクを目指します。
ルーバー:羽板と呼ばれる細長い板を,枠組みに隙間をあけて平行に組んだもの。羽板の取付角度によって,光等を
遮断・透過することができる。
スケルトン・インフィル:骨組み・構造体(スケルトン)と内部の設備・内装部分(インフィル)の分離性・構造的
な独立性を高める建築手法
エコマテリアル:Environmental Conscious Materials(環境を意識した材料)から生まれた造語。優れた特性・機能
を持ちながら,より少ない環境負荷で製造,使用,リサイクルまたは廃棄でき,しかも人にやさしい材料(又は
材料技術)
環境配慮型官庁施設(グリーン庁舎)
:
「環境基本法」の基本理念に則り,建物の計画から建設,運用,廃棄に至るまで
の,ライフサイクルを通した環境負荷の低減に配慮し,建築分野における環境保全対策の模範となる官庁施設
CASBEE(Comprehensive Assessment System for Built Environment Efficiency):省エネや環境負荷の少ない
資機材の使用といった環境配慮はもとより,室内の快適性や景観への配慮なども含めた建築物の品質を総合的に
評価するシステム。評価方法は,表に示すQ(建築物の環境品質・性能)及びLR(建築物の環境負荷低減性)
の各評価項目の得点をもとに,下記の式によりBEE(建築物の環境性能効率)を算出することにより,
「Sラン
ク(素晴らしい)」から「Aランク(大変よい)」,「B+ランク(良い)」,「B-ランク(やや劣る)」,「Cランク
(劣る)」までの5段階で評価される。
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第2章 新庁舎整備の基本的な考え方
【グリーン庁舎のイメージ】
(国土交通省ホームページのイメージ図であり,新庁舎のデザインを具体化したものではありません。)
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第2章 新庁舎整備の基本的な考え方
(8)庁舎の景観・緑化
新庁舎は,水戸駅から視認できる距離にあり,市の代表的な建物になることが考えられることか
ら,整備に当たっては,
「水戸市都市景観条例」に基づき,優れた都市景観づくりの役割を果たす
とともに,周辺環境と調和した庁舎デザインとする必要があります。
そのため,庁舎の景観・緑化について,基本方針「周辺環境との調和」に基づき整備します。
○ 整備方針
<機能的で親しみやすいデザイン>
・ 庁舎としてふさわしいシンプルで機能的なデザインにします。また,周辺に圧迫感を与
えないなど,外観デザイン等に配慮します。
<市民の憩いの場>
・
敷地内への植栽等により,市民が安らげる空間とします。
<緑化の推進>
・
公共施設の先導的な役割を果たすため,積極的に緑化の推進を行います。
・
屋上緑化や壁面緑化を導入する場合は,生育環境やメンテナンス性に配慮します。
【新しい庁舎の事例】
町田市庁舎
甲府市庁舎
つくば市庁舎
立川市庁舎
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