...

「エコプロダクツ国際展」の概要 - Asian Productivity Organization

by user

on
Category: Documents
19

views

Report

Comments

Transcript

「エコプロダクツ国際展」の概要 - Asian Productivity Organization
総説
「エコプロダクツ国際展」の概要
宮川世津子
国際機関 APO(アジア生産性機構)工業企画官
アジア太平洋地域の社会経済発展に寄与するため生産性向上に関する諸活動を行っ
ている国際機関アジア生産性機構(APO:Asian Productivity Organization)は,
加盟国であるマレーシア・タイ・シンガポールで,2004 年以降エコプロダクツ国際展
を開催してきた。本年ベトナムで実施した第 4 回展(
「Eco ― products International
Fair 2008」)は約 10 万人の来場者の関心を集めるなど,その規模を拡大させている。
現在,APO では来年 3 月のフィリピンでの開催を目指して準備を進めている。
本稿では,エコプロダクツ国際展の実施背景
はじめに
についての説明と第 4 回エコプロダクツ国際展
第 4 回エコプロダクツ国際展は,APO,ベ
トナム科学技術省標準品質総局(STAMEQ),
ベトナム生産性本部(VPC)及びベトナム自
然保護協会(VACNE)との共催で開催された。
同国際展示会は,毎年来場者数・展示面積とも
の実施報告を通じて,その成果そして今後の展
開について紹介する。
1
エコプロダクツ国際展の実施の背景
1.1
APO と環境事業
に増加してきたが,第 4 回エコプロダクツ国際
APO は 1961 年に初めて日本に事務局を置く
展でも来場者数は 9 万 8,000 人を超え,展示会
国際機関として設立された。設立当初より,加
面積も 10,000 平方メートルとなるなど,過去
盟国の中小企業における公害対策や労働安全衛
最大の実施規模となった(図 1,表 1)
。
2004 年にスタートしたエコプロダクツ国際
展は,国際機関と開催国政府及び産業界が協力
して,アジア太平洋地域におけるエコプロダク
けいもう
ツの啓蒙を目指すユニークな国際環境展示会で
ある。また,同国際展の実施において,日本企
業群が産業界の中で主導的役割を果たしてきた
ことも特筆すべき本展示会の性格である。この
展示会が,APO 加盟各国を開催地としてリレ
ー形式で移動しながらも,継続的にその実施規
模の拡大を可能にした背景としては,アジア太
平洋地域における著しい環境意識の向上がある
と考えることができよう。
50(836)
図 1 第 4 回エコプロダクツ国際展会場(ナショナ
ルコンベンションセンター)
環境管理 Vol. 44, No. 9(2008)
表1
エコプロダクツ国際展 実施概要比較
第1回
第2回
第3回
第4回
開催年
2004 年
2005 年
2006 年
2008 年
開催地
マレーシア
タイ
シンガポール
ベトナム
会場面積
3,600 平方メートル
5,000 平方メートル
7,300 平方メートル
10,000 平方メートル
来場者
会期日数
11,493 名
3 日間
25,476 名
4 日間
34,516 名
3 日間
98,469 名
4 日間
主催者
国際機関 APO(アジア 国際機関 APO(アジア
生産性機構)
生産性機構)
国際機関 APO(アジア 国際機関 APO(アジア
生産性機構)
生産性機構)
マレーシア製造魚連合 タイ工業連盟(FTI)
会(FMM)
シンガポール廃棄物管理 ベトナム自然保護協会
リサイクル協(WMRAS) (VACNE)
マレーシア生産性本部 タイ生産性本部(FTPI) シンガポール生産性本 ベトナム科学技術省標準品
(NPC)
部(SPRING)
質総局(STAMEQ)/ベト
ナム生産性本部(VPC)
テーマ
Living in harmony with the New environmental chalenvironment:Towards lenges for the global comsustainable production & munity
consumption
A better environment For sustainable development and better life
for all
環境と調和した暮らし― 地球社会のための新た
持続可能な生産と消費 な環境への挑戦
に向けて
すべての人により良い 持続可能な発展とより
良い生活のために
環境を
開催期間
9 月 2 日∼ 4 日(3 日間)
10 月 6 日∼ 9 日
(4 日間)
10 月 31 日∼ 11 月 2 日
(3 日間)
3 月 1 日∼ 4 日
(4 日間)
展示小間数
135
219
236
226
出展者数
76
59
107
91
日系出展者数
37
22
34
28
生問題に関して特別の関心を払い,環境関連事
の中核事業の一つとなっている。
従来の末端汚染防止策はコストがかかる場合
業を複数手がけてきた。
1992 年のリオ地球サミットを受け,翌年
が多く,「環境」イコール「ビジネスに直結し
APO は「生産性と環境」に関する基本調査を
ない余計な費用」というイメージが多くの
実施し,その調査結果をもとに,生産性向上と
APO 加盟国,特に中小企業に定着していた。
環境保全を同時に追求する緑の生産性(GP:
しかし GP 事業は,ビジネスプロセスの初めか
Green Productivity)の概念を構築,日本国政
ら環境配慮を取り込むことにより,無駄に使わ
府外務省から「APO 環境対策特別基金」の支
れていた資源・エネルギー費用の削減をはか
援を受け,1994 年から既存の生産性向上事業
り,同時に生産性の向上を実現し,企業や地域
に環境保全の要素を統合させる,当時としては
社会の競争力を強化するものであることから,
革新的な GP 事業に着手した。
加盟国の産業界にも徐々にその価値が認知され
き ぐ
GP 事業実施当初,その概念自体は加盟各国
た。地球温暖化による気候変動への様々な危惧
に比較的容易に受け入れられたが,その実効
が声高に叫ばれている昨今,環境先進技術を有
性・実用性を問う声もあった。そこで APO で
する企業のトップの多くが「環境保全と利益の
は,実証事業等を通じてその有効性の理解促進
向上は両立する」と語り,図らずも GP 事業の
に努め,着手から 10 年以上経過した今では,
有効性を裏付け,時代が同事業に追いついてき
多くの加盟国で GP 関連事業が実施され,APO
た感がある。
環境管理 Vol. 44, No. 9(2008)
(837)51
表2
緑の生産性諮問委員会(2008 年 6 月現在/就任順)
会 長 野間口有 氏(三菱電機株式会社 取締役会長)
副会長 山本良一 氏(東京大学 生産技術研究所 教授)
副会長 関澤秀哲 氏(新日本製鐵株式会社 代表取締役副社長)
副会長 北山禎介 氏(株式会社 三井住友銀行 取締役会長)
顧 問 森下洋一 氏(松下電器産業株式会社 相談役)
顧 問 依田正稔 氏(元 株式会社荏原製作所 代表取締役社長)
顧 問 庄山悦彦 氏(株式会社 日立製作所 取締役会長)
顧 問 寺島一嘉 氏(元 株式会社荏原製作所 代表取締役副社長)
1.2
緑の生産性諮問委員会の設立
幸運にも,初代 GP 諮問委員会会長の森下洋一
2003 年,APO は,GP 関連事業のより高い
氏(当時・松下電器産業会長)が日本マレーシ
波及効果を図るためには,世界最高水準の環境
ア経済協議会(JAMECA)会長を務めており,
技術を持つ日本企業の積極的な協力を得る必要
またマレーシア生産性本部
があるとの認識を持ち,東京大学の山本良一教
ーシア代表理事のアズマン・ハシム氏がマレー
授の助言を受けながら,同年 8 月に緑の生産性
シア日本経済協議会(JAMECA の現地側カウ
諮問委員会(GP 諮問委員会,現会長:野間口
ンターパート)の会長であったことで,いくつ
有三菱電機会長)を設立した(表 2)
。
もの困難を乗り越えることができた。
*1
会長で APO マレ
GP 諮問委員会は,「アジアにおけるサプラ
また,GP 諮問委員会内に「エコプロダクツ
イチェーンのグリーン化」が長期的生産性向上
国際展準備委員会」を設け,依田正稔氏(当
と環境保全の両立に最も必要な課題の一つであ
時・荏原製作所社長及び GP 諮問委員会副会
ると判断し,具体的な事業としては「エコプロ
長)が同準備委員会委員長として,GP 諮問委
ダクツ国際展」及び「エコプロダクツのデータ
員会参画企業をはじめとする日系環境先進企業
ベース構築支援」を取り上げることを提案した。
への出展勧誘の陣頭指揮を執った。さらに›産
APO 事務局はこの GP 諮問委員会の結論を踏
業環境管理協会,日本経済新聞社の関係者から
まえ,エコプロダクツ国際展の開催を APO 加
の技術的な助言や,現地主催者となったマレー
盟 20 か国・地域の最高意思決定機関である理
シア製造業連合会
事会に提案し,同理事会の承認を得て,2004
ァ・マンスール氏の指導力が開催の一助となっ
年にマレーシアにて第 1 回エコプロダクツ国際
た。
展を開催した。
*2
会長(当時)ムスタフ
そして最終的に,日本・マレーシアを中心と
2 第 1 ∼ 3 回エコプロダクツ国際展の
概要
2.1 第 1 回エコプロダクツ国際展(於:クア
ラルンプール)
する 6 か国から 72 企業・団体の出展者を得て,
初めてのエコプロダクツ国際展は無事執り行う
ことができた。来場者は,3 日間の会期で約 1
万 2,000 人となった。
当初は現地関係者も,耳慣れない「エコプロ
第 1 回エコプロダクツ国際展は,2004 年 9
ダクツ」という言葉に戸惑いを隠せなかったが,
月マレーシア・クアラルンプールにおいて,東
南アジアで初の環境配慮型製品とサービスの国
際展示会として開催された。
当時,多くの APO 加盟国にとって「エコプ
ロダクツ」というコンセプトは目新しく,また
APO 自身も初めて「国際展示会」という形式
の事業を主催することとなったため,実施に際
しては想定以上に難しい局面があった。しかし
52(838)
─
*1 APO 加盟国 20 か国・地域には,生産性運動の推進組
織として政府の指定する各国生産性本部が設置されてい
る。これまでのエコプロダクツ国際展には,主催国の当該
生産性本部が APO とともに主催者として積極的にその実
施にかかわっている。
*2 マレーシア製造業連合会は,APO,マレーシア生産性
本部と一緒に主催者として初回エコプロダクツ国際展の実
現に大きな主導力を発揮した。
環境管理 Vol. 44, No. 9(2008)
マレーシアで燃料電池車が初公開されるなど,
政府・産業界そして一般消費者から大きな関心
2.3 第 3 回エコプロダクツ国際展(於:シン
ガポール)
を集めることに成功した。また,この展示会を
シンガポールは,アジアでは香港と並ぶ展示
機に「エコプロダクツ」のマレー語訳である
会ビジネスが発達しているお国柄もあり,現地
「produk mesra alam」が現地の国立言語文学
関係者の企画力と周到な準備で規模及び内容構
研究機関に認知されることとなった。
成も過去 2 回と比べより充実したものとなっ
2.2 第 2 回エコプロダクツ国際展(於:バン
た。展示会テーマとして,「A better environ-
コク)
ment for all ―すべての人により良い環境」を
第 1 回エコプロダクツ国際展を企画した当
掲げ,未来の「エコシティ」像を表現するテー
初,継続開催は視野に入っていなかったが,初
マ展示エリアを会場の中心部分に設けた。エコ
回開催についての全容が固まった最終準備局面
シティの製作には,現地コミュニティから様々
から同展示会会期中にかけて,出展者及び関係
な年齢層のボランティアが参加した。このよう
各方面より第 2 回展の開催の検討を求める声
な参加型プログラムは,これまでのエコプロダ
や,次回開催時期・開催国に関する問い合わせ
クツ国際展にはない新たな取り組みだった。
を多数受け取った。それらの要請を受け,第 2
また,当時の GP 諮問委員会会長・庄山悦彦
回エコプロダクツ国際展が翌 2005 年 10 月にタ
氏(日立製作所取締役会長)の協力により,シ
イ・バンコクで実施される運びとなった。
ンガポールから名誉国民賞(The Honorary
第 2 回展は APO・タイ生産性本部・タイ工
Citizen Award)*3 を授与された日立製作所相
業連盟が主催者となり,「New environmental
談役・金井務氏が併催国際会議において特別講
challenges for the global community ―地球社
演を行い,大きな反響を得たことは特筆すべき
会のための新たな環境への挑戦」という展示会
ことである。
テーマが掲げられた。開催国のタイは初回のマ
この第 3 回エコプロダクツ国際展を機に,同
レーシアに比べてより多くの日系企業がビジネ
国際展のプロモーションと認知度向上を目的と
スを展開しており,比較的容易に出展者を確保
し,APO では共通ロゴを作成した(図 2)。ロ
することができた。タイ工業連盟会長(当時)
ゴを作成する際は,デザインや色などが各国文
であったプラパッド・パティボラクン氏は日本
化・宗教・慣習と相反しないか加盟国の担当者
産業界とも大変深い親交を持ち,エコプロダク
に確認を行い,アジア各国で受け入れられるよ
ツという新しいコンセプトの普及に格闘してい
う細心の注意を払った。
たタイ工業連盟の関係者を強い指導力をもって
シンガポールでのエコプロダクツ国際展は当
取りまとめ,積極的な広報戦略を展開した。結
初,国内市場規模を考えると出展者の誘致が難
果として,展示会面積は初回の約 1.4 倍の
しいのではとの声も聞かれたが,最終的には国
5,000 平方メートル,来場者も 2 万 5,000 人を
際通商のハブ都市国家としての立地と国際展示
超える展示会へと成長を遂げることができた。
第 2 回エコプロダクツ国際展の実施を決めた
段階で,APO では次回以降のエコプロダクツ
国際展の定期的な実施を事業計画に組み込み,
開催国の選定や現地主催者との調整を極力事前
に行うよう準備を進めた。その成果により,タ
イで開催した第 2 回エコプロダクツ国際展には
次回展の実施を強く希望していたシンガポール
から関係者が訪れ,開催状況を見学し,現地主
催者であるタイ工業連盟の関係者から積極的に
実施関連情報収集を行った。
図 2 第 3 回エコプロダクツ国際展よ
り用いられているロゴ
─
*3 The Honorary Citizen Award(名誉国民賞)は,シン
ガポールにて多大なる功績のあった外国人を対象とした最
高位の勲章。2003 年に設立され,2006 年までに金井氏を
含め 7 名授与。金井氏はアジアからの初めての受賞者。
環境管理 Vol. 44, No. 9(2008)
(839)53
会運営能力も幸いし,日本から 34 社・団体の
してきた経緯があり,天然資源環境省の傘下で
出展を得て,全体の出展者数も 14 か国から
環境保護にその活動の重きをおいた VACNE
107 社・団体と,出展者数もその国籍数も過去
が,主催団体として最適かという検討が APO
最多となった。
と現地関係者間でなされた。その結果,エコプ
3 第 4 回エコプロダクツ国際展
(於:ハノイ)
3.1
主催国の選定
ロダクツ国際展の実施に携わる主催国の国家シ
ステムがこれまでとかなり異なる状況を踏ま
え,産業界との連携については,現地生産性本
部である VPC が主導的な役割を果たし,
本年の第 4 回エコプロダクツ国際展を実施す
VACNE は天然資源環境省をはじめとする政府
るにあたり,APO では 2006 年より開催候補地
機関との調整役というこれまでとは変則的な役
そして開催時期についての調整を行った。過去
割分担を現地主催者間で行う結果となった。
3 回のエコプロダクツ国際展は,その開催時期
また,「For sustainable development and
が年の後半に組み込まれていたが,APO 内の
better life ―持続可能な発展とより良い生活の
年間スケジュールに大幅な変更が見込まれてい
ために」という展示会テーマが現地側より提案
たこともあり,2007 年後半という従前の実施
された際,エコプロダクツ国際展準備委員会に
時期から,2008 年前半の実施へと移行した。
おいて,果たして「sustainable development」
この変更により,一部の関係者から指摘を受
というキーワードを来場者に理解してもらうこ
けていた「東京のエコプロダクツ展と準備が重
とが可能か,一般消費者を対象とする同展示会
なり大変である」「東京のエコプロダクツ展の
のテーマとしては難解すぎないかといったコメ
前に最新の環境関連製品を出展するのは難し
ントが出された。
い」といった懸案点が解消される形となった。
これに対し現地主催者側は,「sustainable
主催国ベトナムの選定に際しては,過去 3 回
development」は「ドイモイ *4」(ベトナム語
同様,環境市場の有無とその有望性,政府レベ
で刷新を意味する)に匹敵するほど重要なキー
ルでの協力体制の有無,安定かつ好調な社会経
ワードであり,ベトナム政府の全面的支援を取
済状況,実施後の国家レベルでのエコプロダク
り付けるために是非このテーマをもって実施し
ツ普及に向けた取り組み可能性の有無といった
たいとの強い意向があり,最終的に関係者の理
点を念頭に,GP 諮問委員会委員及び関係者か
解を得た。
らの意見・意向の聞き取りを行った。アジア太
3.3
開催会場・出展者・来場者確保
平洋経済協力(APEC)が同国で開催された直
開催会場の選定については,ハノイにある既
後ということもあり,基本的にベトナム開催に
存の展示会場は老朽化しており,同国際展のイ
ついては好意的な反応が大半を占める一方で,
メージと合致する適当な展示会場がなかった。
現地インフラや環境市場の整備状況の未成熟さ
そこで現地政府と交渉の末,2006 年の APEC
を危惧する声もあった。最終的には現地政府が
首脳会議のために建築され,政府の迎賓館的要
同展示会主催について強い熱意を示したことも
素も持つナショナル・コンベンションセンター
あり,GP 諮問委員会の合意も得てベトナムで
の使用許可を得ることができた。同センターは
の開催に踏み切った。
展示会を主目的として作られた構造物ではな
3.2
主催者と展示会テーマ
初の社会主義国における開催となった第 4 回
エコプロダクツ国際展では,ベトナム側より現
地主催団体として,VPC/STAMEQ と
VACNE が推挙された。従前のエコプロダクツ
国際展では,主催国の現地生産性本部及び現地
産業界関連団体の 2 者が現地主催者となり実施
54(840)
─
*4 ドイモイ(ベトナム語:
)「刷新」の意で,
1986 年のベトナム共産党・第 6 回大会で提起されたスロー
ガン。主に経済(価格の自由化,国際分業型産業構造,生
産性の向上),社会思想面で新方向への転換を目指すもの
である。このスローガンのもと,ベトナムでは,市場メカ
ニズムや対外開放政策が導入され,経済面で大きな成果を
あげた。
環境管理 Vol. 44, No. 9(2008)
図3
図 4 野間口有 GP 諮問委員会会長(三菱電機㈱取
締役会長)
開会式
く,同国際展には全 4 階からなる同センターの
能な消費に関する国際会議」を実施した。GP
各階ホワイエ部分を展示スペースとして使用す
諮問委員会会長・野間口有氏(三菱電機㈱取締
ることとなった。当然のことながら,同センタ
役会長・図 4)は基調講演で「技術と行動で目
ーでの大規模な国際展示会は過去に実施例がな
指す持続可能社会」をテーマに産業人としての
く,展示物の搬入出,展示物の設営,警備体制
持続可能社会の実現への強い思いを語った。そ
等すべての面においてのマニュアル作り等ほぼ
のほか,経済産業省・産業技術環境局審議官
(地球環境問題担当)伊藤元氏が「エコイノベ
ゼロからの準備が始まった。
またベトナムは過去 3 回の開催地と比べて,
ーションの推進を目指す日本の経済産業政策」
圧倒的に国際展実施・運営の知見が限られてお
について,また GP 諮問委員会副会長・山本良
り,出展者誘致に向けたプロモーション,出展
一教授(東京大学生産技術研究所教授)が「低
者に対しての技術的・ロジスティック的対応,
炭素社会創出のためのエコイノベーション」を
来場者動員やその他の準備において,日本側運
テーマに講演を行った。なお同国際会議では,
営事務局から多岐にわたる指導・支援を手配す
日本からの有識者だけでなく,マレーシア・タ
る必要性があることが判明した。幸いにも現地
イ・シンガポールといったこれまでのエコプロ
スタッフは,出展者誘致や来場者確保にかかわ
ダクツ国際展開催国の関係者が登壇し,各国で
る広報をはじめとする様々な準備プロセスの重
開催された同国際展の効果と,その後のエコプ
要性・必要性の理解力に富んでおり,全力で準
ロダクツにかかわる継続的な普及努力等につい
備に取り組んだ。
て報告した。
その結果,来場者は前述のとおり過去最多,
さらに国際グリーン購入ネットワークや,ハ
出展者も 91 社とシンガポールの 107 社には及
ノイ建築大学と㈱地球の芽,その他現地関係団
ばないまでも,過去 4 回においては 2 番目に多
体が,環境とエコプロダクツを切り口に各種の
い記録となった。
国際ワークショップやフォーラム等を併催し,
3.4
現地ベトナムでは過去に実施例をみない,ハイ
開会式と併催国際会議
国際展初日には,ナショナル・コンベンショ
ンセンター 1 階エントランスホール・特別ステ
ージにて開会式が開かれ(図 3),ベトナム国
会副議長
*5
グェン・ドク・キエム氏が開会挨
拶を行った。
併催行事として,APO と現地主催者で「エ
コプロダクツの普及による競争力強化と持続可
レベルで多角的・国際的な展示会となった。
3.5
日系企業・団体の出展動向
過去 4 回のエコプロダクツ国際展は,日本企
─
*5 ベトナム国会副議長は同国政府の序列では 4 番目。開
催前日まで主賓としてグェン・ダン・ズン首相の来場の調
整が試みられたが,緊急の国内地方公務が入り同首相の来
場の実現は叶わなかった。
環境管理 Vol. 44, No. 9(2008)
(841)55
図 5 右からアロヨ大統領,北山禎介エコプロダクツ国際展準備委
員会委員長,竹中繁雄 APO 事務総長
業の積極的な出展・参加が,その実現を可能に
出展を通じて,市場の変化,競合他社の動
してきたともいえる。
向の把握,ひいては環境面から事業競争力
出展者数が 107 社・団体と最多となったシン
を向上させるという関心・発想が生まれ
ガポールでの第 3 回展開催時の日系出展者数は
た。さらには,これが現地市場にフィット
34 社・団体で全体の 32%であるが,展示面積
するマーケティング企画に繋がった。
つな
では,全体の出展小間数が 236 小間
*6
であっ
3) 現地拠点がない国では,エコプロダクツ
たのに対し,日系出展者の出展面積は 113 小間
国際展が会社・製品のプレゼンスを示す貴
で全体の 48%となった(過去 4 回の展示小間
重な場となり,商談のためのショールーム
数は表 1 のとおり)
。
的使い方もできた。
また本年の第 4 回展では,出展者総数は前回
のシンガポールに次ぐ 9 か国からの 91 社・団
体となり,うち日系出展者数は 28 社・団体と
全体の 31%であった。日系出展者数の割合は第
3 回展に比べ少なくなったが,展示面積は全
4 今後の展開―第 5 回エコプロダクツ
国際展と今後の展望
4.1 第 5 回エコプロダクツ国際展(於:マニ
ラ)
226 小間に対し日系出展者が 150 小間で 66%
現在 APO では,一つの節目となる第 5 回目
と,全体の半分以上を占める結果となっている。
のエコプロダクツ国際展の準備に入っている。
これまで日系出展者から受け取った出展効果
本年 6 月 10 日にはフィリピンの首都マニラに
についてのコメントをいくつか紹介したい。
おいて,エコプロダクツ国際展準備委員会委員
1) 国際機関が主催している展示会であるた
長・北山禎介氏(GP 諮問委員会副会長・㈱三
め,現地政府機関・団体そして環境
井住友銀行取締役会長)と APO 事務総長竹中
関連企業とネットワークの構築が容易にで
繁雄も出席し公式記者発表を行った。
き,各国での環境意識の度合い・具体的な
ニーズなど情報収集に役立った。
その際,アロヨ大統領,エドゥアルド・エミ
ルタ官房長官,ピーター・ファビラ貿易産業長
2) アジア各国の現地法人の環境意識は必ず
官ら現地政府首脳らと会談を行い(図 5)
,第 5
しも高くないが,エコプロダクツ国際展の
回エコプロダクツ国際展の実施概要を説明,政
府としての全面協力の約束を取り付けた。すで
─
*6 1 小間は展示会で出展面積を示す単位として使用され
る。エコプロダクツ国際展の場合 1 小間は 9 平方メートル。
56(842)
に展示会場も SMX コンベンションセンターに
定め,会期も 2009 年 3 月 19 日(木)から 22
環境管理 Vol. 44, No. 9(2008)
日(日)までの 4 日間と決定し,現地主催者と
発信をする総合環境情報発信プラットホームと
のなるフィリピン生産性本部そして,フィリピ
して,アジアのみならず世界から評価される国
ン産業界環境支援組織と詳細の調整に着手して
際環境展示会を目指すことが重要課題である。
いる。現地運営体制も整いつつあり,アドバイ
エコプロダクツ国際展を積み重ねることで,
ザリー・コミッティ議長役をアメリタ・M・ラ
アジア各国政府の環境に対する具体的なアクシ
モス元大統領夫人が快諾し,エグゼクティブ・
ョンの後押しを行い,各国産業界の環境配慮型
コミッティ議長にはファビラ貿易産業長官の就
ビジネスに対する意識の向上,グリーンコンシ
任が予定されている。
ューマーの育成を図ることが,環境先進国日本
4.2 今後の展望:アジア最大の国際環境展示
に事務局を置く国際機関として同国際展を主催
会として目指すもの
する本意と考えている。
環境先進国日本の産業界と国際機関 APO の
2007 年 9 月に,エコプロダクツ国際展にと
連携を中核とし,アジア各国をリレーしながら
ってエポックメーキングともいえる出来事があ
も規模を拡大・成長してきたエコプロダクツ国
った。第 2 回エコプロダクツ国際展の主催者で
際展であるが,今後の展望としては,来場者
あったタイ工業連盟(FTI)が,連盟設立 40 周
よ
*7
数・出展面積数のみにその成果を依らない展示
年を記念して実施した「タイ工業連盟フェア 」
会として,機能・内容の充実を図る必要がある
において,1,000 平方メートルもの展示面積を
と考えている。
エコプロダクツの展示エリアに割り当てたので
今後も日本・主催国の 2 か国に偏らず,世界
ある。これは同連盟自身のイニシアティブで実
各国からの多様な参加・出展を募る展示会とす
施されたもので,エコプロダクツの啓蒙が現地
るため,積極的な開催告知,より魅力的な内容
タイ語によるパネルで展示され,その他多様な
企画が欠かせない。展示会の構成も,シンプル
消費者及び産業界の環境配慮を促すプログラム
な展示エリアと併催国際会議という組み合わせ
が展開されていた。より多くの国々でこのよう
とど
に留まらず,出展者の目的別ビジネスマッチメ
な波及効果が現れ,アジア太平洋地域における
ーキングプログラムの拡充や,一般消費者等に
持続社会の構築の一助となるよう,さらに参加
対するより解りやすい環境教育プログラムの実
意義あるエコプロダクツ国際展の実現を目指
施,政府や政策立案者を対象とした環境プレゼ
し,主催事務局として努力を重ねていく所存で
ンテーションプログラム,さらには各国の環境
ある。
キーパーソンが集まり世界に向けて提言・情報
─
*7 タイ工業連盟フェアは 2007 年 9 月 19 日から 23 日の 5
日間,タイ・バンコク近郊のインパクトエキシビションセ
ンターで開催された。同エキシビションセンターは,2005
年に第 2 回エコプロダクツ国際展が実施された会場でもあ
る。
環境管理 Vol. 44, No. 9(2008)
(843)57
Fly UP