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コロンビアとエクアドルの石油・エネルギー産業

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コロンビアとエクアドルの石油・エネルギー産業
JPEC レポート
JJP
PE
EC
C レ
レポ
ポー
ートト
2014 年度
第8回
平成 26 年 7 月 31 日
コロンビアとエクアドルの石油・エネルギー産業
米国 DOE・エネルギー情報局(EIA)のレポ
ートを主なベースとして、南米のコロンビアと
その隣国エクアドルのエネルギー産業について
紹介する。
1. コロンビアとエクアドルの
位置と地勢............................................ 1
2. コロンビアとエクアドルの
一般情報 ................................................ 2
3. コロンビアのエネルギー事情 ........ 3
4. エクアドルのエネルギー事情 ......10
コロンビアとエクアドルの位置と地勢
コロンビアは南米大陸北西部に位置し、5 ヵ
国(エクアドル、ペルー、ブラジル、ベネズエラ、パナマ)と国境を接し、北はカリブ海・
西は太平洋に面している。エクアドルは北にコロンビア・東と南にペルーと国境を接し、
西は太平洋に面している。本土から西に約 1,000km の太平洋上のガラパゴス諸島を領有し
ている。赤道が国土を横切っており、国名のエクアドルはスペイン語で赤道を意味する。
図 1 にコロンビアの、図 2 にエクアドルの概略地図をそれぞれ示す。
1.
図 1 コロンビアの概略地図
図 2 エクアドルの概略地図
1
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2. コロンビアとエクアドルの一般情報
2.1. 両国の主な一般情報
コロンビア、エクアドル両国の主な一般情報を表 1 に、主なエネルギー情報を表 2 にそ
れぞれ示す。
表 1 コロンビアとエクアドルの主な一般情報
コロンビア
エクアドル
コロンビア共和国
エクアドル共和国
1810 年 スペインから独立
共和制
ボゴタ
4,770 万人
(2012 年 世界銀行)
スペイン語
コロンビア ペソ(COP)
3,820 億ドル(2013 年 実績)
1822 年 スペインから独立
共和制
キト
1,540 万人
(2013 年 国家統計調査局)
スペイン語
米ドル(USD)
940 億ドル(2013 年 実績)
正式国名及び
国旗
独立年
政体
首都
人口
公用語
通貨
名目 GDP
表 2 コロンビアとエクアドルの主なエネルギー情報
コロンビア
エクアドル
石油輸出国機構(OPEC)
石油確認埋蔵量
石油の輸出入
原油精製能力
製油所数
ガス輸出国フォーラム
(GECF)
非加盟
24 億バレル
純輸出国
29.1 万 BPD
5
加盟
80 億バレル超
純輸出国
17.6 万 BPD
3
非加盟
非加盟
天然ガス確認埋蔵量
1,600 億 m3 超
天然ガスの輸出入
純輸出国
可採石炭埋蔵量(55 億 5,700 万トン)
は南米最大で、
世界第 5 位の石炭輸出
国となっている。
特記事項
70 億 m3
(但し、推定埋蔵量)
輸出入なし
2.2. コロンビアの主要産業
コロンビアの主要産業は農業(コーヒー、バナナ、さとうきび、じゃがいも、米、熱帯
果実、切り花など)および鉱業(石油、石炭、金、エメラルドなど)である。石炭の埋蔵
量は南米最大、エメラルドの生産量は世界第 1 位である。コーヒーの生産規模は世界第 4
2
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位、カーネーションとバラの切り花の生産規模は世界第 1 位である。
2.3. エクアドルの主要産業
エクアドルの主要産業は鉱業(石油)
、農業(バナナ、カカオ、切り花)
、水産業(エビ)
である。主要輸出品目は原油が約 5 割を占め、残りはバナナ・カカオ・切り花・水産加工
品(主にエビ)などの一次産品が占めている。
3. コロンビアのエネルギー事情
3.1. 各種エネルギー資源に関する概要
2011 年のコロンビアのエネルギー消費内訳は石油が最大で、次いで水力発電・天然ガ
ス・石炭の順となっている。同年に 9,460 万トンの石炭を産出したが、その 94%を輸出し
ている。同国は発電源に専ら水力を使い、石炭をほとんど使用していない。一方、天然ガ
スの消費量は年々増えており、過去 10 年間で 54%超増加した。
近年、一連の規制改正に踏み切ったことにより、石油・天然ガス・石炭の生産量が著し
く増加した。その規制改正が外国人投資家をコロンビアの石油・天然ガス・石炭分野に呼
び込み、生産量の増加に繋がったものである。
石油の上流部門を蘇生させる試みとして、政府はコロンビア国営石油(Ecopetrol)の部
分的な民営化を実施した。だが、およそ 5 年間に亘り比較的安定に操業されてきた後、再
び石油と天然ガスパイプラインに対する反政府ゲリラによる攻撃が増加している。石油生
産を拡大するには新しい油田の発見とインフラの安全性の改善を必要としている。
3.2. 石油
3.2.1. 製油所
2012 年におけるコロンビアの原油精製能力合計は 29.1 万 BPD である。コロンビアの主
な製油所・パイプラインの位置を図 3 に示す。国内に 5 製油所があり、全てをコロンビア
国営石油(Ecopetrol)が所有している。内訳は同国北東部マグダレーナ川沿いの
Barrancabermeja-Santander 製油所(20.5 万 BPD)
、カリブ海に面した Cartagena 製油所(8.0
、および小規模(0.3 万 BPD 以下)な 3 製油所である。
万 BPD)
コロンビアは石油の純輸出国ではあるが、内需が精製能力を上回っているいくつかの石
油製品(特にディーゼル燃料)を輸入せざるをえない。Ecopetrol は Cartagena 製油所の能
力を現状の 2 倍超(16.5 万 BPD)に拡大することを計画しており、2015 年内に完成させる
としている。同時に、Barrancabermeja-Santander 製油所を 30 万 BPD に拡大し、且つより重
質な原油を処理できるようにアップグレードしている。
現在工事中で 2016 年内に完成する
見込みである。
3
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図 3 コロンビアの主な製油所・パイプライン
3.2.2. 石油パイプライン
コロンビアは 6 本の石油パイプラインを保有している。そのうちの 4 本は生産油田とカ
リブ海沿岸の Covenas 石油輸出ターミナルを接続している。それらは Cusaiana/Cupiaqua エ
リアからの全長800km のOcensa パイプライン
(輸送能力65 万BPD、
図3 参照)
、
全長740km
の Cano Limon パイプライン(輸送能力 22 万 BPD)および、より小規模な Alto Magdalena
パイプラインと Colombia Oil パイプラインの 4 本である。5 番目の Llanos Orientales パイプ
ラインは 2009 年後半に開通したもので、Rubiales 油田と Ocensa パイプラインをリンクし
ている。6 番目の TransAndino パイプライン(輸送能力 19 万 BPD)は Putumayo 盆地の Orito
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油田から太平洋沿岸の Tumaco 港へ原油を移送している。
2010 年 11 月、コロンビア国営石油(Ecopetrol)は Oleoducto Bicentenario パイプライン(輸
送能力45 万BPD)
を建設するために国際企業連合とパートナーを組んでいると発表した。
現在、42 億ドルの当該プロジェクトは工事中で、Araguaney から Banadia に至る第 1 フェ
ーズ(輸送能力 11 万 BPD)は 2013 年 10 月に開通した。最終的に、当該パイプラインは
カリブ海沿岸の Covenas 石油輸出ターミナルに繋がることになる。
現在も、石油パイプラインなどのエネルギーインフラは反政府ゲリラの攻撃目標になっ
ている。攻撃件数は 2005 年の 155 件から 2010 年の 31 件へとかなり減ったが、その後 2011
年初頭に 84 件発生してからは継続的に増加している。コロンビアの国防省は 2013 年 1 月
から 9 月の間に 147 件発生したと報告している。この攻撃件数の増加はコロンビア陸軍内
の反政府武装勢力の新しいリーダーの任命と密接にリンクしており、結果としてコロンビ
アの石油生産に計画外の混乱を引き起こしている。
3.2.3. 石油の確認埋蔵量
2014 年 1 月時点のコロンビアの石油確認埋蔵量は 24 億バレルである。石油探査が続き
油田の発見が発表されているが、当局は現在の埋蔵量レベルが今後 7 年間は存続すると見
ている。
3.2.4. 石油関連組織と法人
エネルギー分野担当の政府機関は鉱業エネルギー省で、国が炭化水素資源の全てを所有
している。政府は外国企業により多くの投資機会を与える政策をとってきた。即ち、上流
部門では外国企業が石油ベンチャー事業の権益をコロンビア国営石油(Ecopetrol)と競合
することを許容している。現在、多くの国際石油企業が上流部門に参入しているが、
Ecopetrol がコロンビアの石油の 60%を生産し、同国最大の石油生産企業の地位を維持して
いる。
3.2.5. 石油の生産・消費・輸出
コロンビアの原油生産エリアの多くはアンデス山脈の麓の丘陵地帯と東部のアマゾン
ジャングル地帯である。同時に、中部の Meta Department もまた、重要な原油生産地帯(主
に重質原油)になってきている。当該エリアのリャノス(Llanos)盆地には Rubiales 油田
(コロンビア最大の油田)が位置している。同油田では 1980 年代後半から低レベルの生産
が始まり、近年は新しいパイプラインが敷設されたため生産量が増えている。2012 年は
2008 年(3.7 万 BPD)に比べ大幅に増え 17.7 万 BPD 生産した。
コロンビアの石油生産量は 1999 年から徐々に減衰し、2008 年までは何年間もほとんど
横ばい状態であった。その主な原因は既設油田の産油量の自然減と新しい油田の発見がほ
とんどなかったことである。しかし、規制の枠組みへの一連の変化が国際石油企業による
コロンビアでの投資の増加を招いた結果、コロンビアの石油生産量は急激に伸び、2012 年
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の石油生産実績は 2008 年(60.4 万 BPD)に比べ 61%も増えて 96.9 万 BPD(図 4 参照)と
なった。この増加傾向は当分続くと見られ、EIA は 2013 年には 100 万 BPD を超えると予
想している。また、コロンビアの鉱業エネルギー省は 2020 年末までに 130 万 BPD に達す
るだろうと報告している。
一方、国内石油消費量の 2012 年実績は 28.7 万 BPD で生産量を下回っており、コロンビ
アは石油の純輸出国となっている。2012 年のコロンビア産石油の輸出先はトップが米国、
次いでパナマ・中国・スペインと続く。同年、コロンビアは米国へ原油と石油製品を合わ
せて 43.2 万 BPD 輸出した。
最近、石油輸出を促進するために石油をコロンビアの太平洋岸に移送するパイプライン
建設プロジェクトの融資に中国が関心を示している。2012 年 5 月、中国開発銀行はコロン
ビア原油とベネズエラ原油をコロンビア南部の太平洋岸に移送するためのパイプライン建
設工事(輸送能力 60 万 BPD)に融資する予備協定に署名した。しかし、その後は際立っ
た動きは見られていない。
図 4 コロンビアの石油生産量と消費量(2003~2012 年)
3.3. 天然ガス
3.3.1. 天然ガスの確認埋蔵量
コロンビアの ANH(Agencia Nacional de Hidrocarburos)の発表によれば、2012 年末時点
の天然ガス確認埋蔵量は 1,600 億 m3 超である。現在、天然ガスの多くは Guajira 盆地で生
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産されているが、天然ガス埋蔵量の大半はリャノス(Llanos)盆地に存在している。
3.3.2. 参入している天然ガス企業
現在、シェブロンがコロンビア最大の天然ガス生産者で、1 日当たり 1,700 万 m3 の天然
ガスを生産している。同社はコロンビア国営石油(Ecopetrol)とパートナーを組んで、カ
リブ海の Guajira 海盆に位置する Caribbean Chuchupa ガス田(コロンビア最大の非随伴ガス
田)を操業している。また、その近くの Ballena ガス田と Riohacha ガス田も操業している。
2010 年にコロンビア国営石油
(Ecopetrol)
とTalisman Energy 社がコロンビア中部のLlanos
盆地に位置する同国で最大級の 2 つのガス田(Cupiga ガス田と Cusiana ガス田)を BP か
ら買収した。これらのガス田からのガスの大半は油田に再注入されている。
3.3.3. 天然ガスの生産と消費
石油と同じように天然ガス生産量は過去数年間大幅に伸びている。天然ガス探査と開発
分野への海外からの投資が増大したことが主な要因である。2011 年にコロンビアは乾性天
然ガスを 110 億 m3 生産し、そのうちの 88 億 m3 を国内消費した。乾性天然ガスと随伴ガ
スを合計するとコロンビアの天然ガス生産量は 316 億 m3 となる。そのうちの約 56%は石
油増進回収のため油田に再注入されている。2007 年から天然ガス生産量が国内消費量を超
え、コロンビアは天然ガスの純輸出国を維持している。
2011 年 3 月、政府は天然ガスの国内生産量を増やすための法令を発布した。それにはシ
ェールガスや炭層メタンも含まれている。当該政策は天候に左右される水力発電量の不足
による発電分野からの要請(天然ガス火力発電量を増やしたい)とも結びついている。
図 5 コロンビアの乾性天然ガス生産量と消費量(2003~2012 年)
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3.3.4. 天然ガスの輸出
2007 年以降、天然ガス生産量が消費量を上回り、コロンビアは天然ガスの純輸出国にな
っており、ほとんどがパイプライン経由でベネズエラに輸出されている。
2008 年初頭、コロンビア北東部の Ballena ガス田とベネズエラ西部を結ぶ Trans-Caribbean
ガスパイプランが開通した。ベネズエラへの輸出契約量は 1 日当り 230~420 万 m3 だが、
ベネズエラでの発電用と油田注入用が増えているため、昨今しばしば契約量をオーバーし
ている。2014 年 6 月中に 1 日当り 570 万 m3 に契約更改する予定である。
因みに、
コロンビアにはLNG プラントがなく、
従ってLNG の生産も輸出もしていない。
3.3.5. 炭層メタン
炭層メタン(CBM)とは石炭堆積層に存在するメ
タンリッチな炭化水素ガスである。この非在来型の
天然ガス資源は移送され、頁岩層やその他堆積層か
ら産出されるガス資源と同じように利用される。コ
ロンビアに関心を寄せている米国の石炭会社
Drummond 社は
「コロンビアの炭鉱は最大 622 億 m3
の炭層メタンを埋蔵している」と述べており、炭層
メタンは今後のコロンビアの天然ガス埋蔵量を劇的
に増やす可能性がある。因みに、Drummond 社はコ
ロンビア国営石油(Ecopetrol)と La Loma 炭鉱およ
び El Descanso 炭鉱から炭層メタンを回収する契約
を締結した。
図 6 炭層メタンの採掘概念図
3.4. 石炭
3.4.1. 石炭の埋蔵量
2012 年時点のコロンビアの可採石炭埋蔵量は 55 億 5,700 万トンで南米最大である。
これ
らはカリブ海に突き出たグアヒラ半島とアンデスの山麓に集中している。
3.4.2. 石炭の生産と消費
コロンビア炭の生産と輸出インフラの大部分はカリブ海沿岸に位置している。コロンビ
ア炭は硫黄含有量 1%未満の比較的クリーンな石炭である。
2012 年に 9,810 万トン生産し、
510 万トンを国内消費し残りを輸出した。コロンビアの石炭生産量はここ 10 年間で約 75%
も増加した。
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図 7 コロンビアの石炭生産量と消費量 (2002~2012 年)
3.4.3. 石炭の輸出
2011 年、コロンビアはインドネシア、オーストラリア、ロシア、米国に次いで世界第 5
位の石炭輸出国となった。石油に次いで石炭はコロンビアの輸出収入の第 2 位で、2012 年
実績では総輸出収入の 19%を占めた。
2012 年の石炭の輸出先は主に欧州(68%)と南米諸国(15%)および米国(7%)であっ
た。特に、米国とコロンビアは石炭分野で重要な交易関係にある。2012 年にコロンビア炭
が米国の輸入炭合計の 76%を占めた。
コロンビアは最近、かなりな量の石炭をアジア市場(特に中国)に輸出し始めた。2008
年には 1%しかなかったものが、2012 年には 8%に伸びている。アジアでの高価格とより安
い運賃および米国向けの減少とが相まって、アジア市場への輸出拡大に拍車がかかった。
2012 年 5 月、北京で中国の主席とコロンビアの大統領が会談し、中国によるコロンビアの
石炭分野への投資およびアジアへの輸出を容易にするため太平洋岸までの鉄道建設につい
て話し合った。さらに、パナマ運河の拡張(2015 年までに完成予定)と中国が支援する輸
送インフラプロジェクトの両方がアジア市場へのコロンビア炭の将来の輸出拡大に繋がる
と思われる。
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図 8 コロンビア炭の輸出先 (2012 年)
4. エクアドルのエネルギー事情
4.1. 各種エネルギー資源に関する概要
エクアドルのエネルギーミックスは石油に大きく依存している。2012 年実績では総エネ
ルギー消費量の 76%が石油で、次いで水力(19%)
・天然ガス(4%)
・再生可能エネルギー
(1%)であった。因みに、エクアドルでは石炭の生産も消費も行われていない。
石油分野がエクアドルの輸出収入の約半分・租税収入の約 1/3 を占め、同国の経済に際
立った役割を果たしている。
エクアドルは比較的小規模な石油の生産国かつ輸出国である。
同国は以前、石油輸出国機構(OPEC)に加盟していたが 1992 年末に脱会し、その約 15
年後の 2007 年に再び加盟し現在に至っている。因みに、エクアドルは OPEC 加盟国中で
石油生産量が最も少ない国である。
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図 9 エクアドルの費目別一次エネルギー消費比率(2012 年)
4.2. 石油
4.2.1. 製油所
エクアドルの主な製油所・パイプラインを図 10 に示す。国内に 3 つの製油所があり、原
油精製能力合計は17.6 万BPD である。
内訳は太平洋沿岸のEsmeraldas 製油所
(11.0 万BPD)
と La Libertad 製油所(4.6 万 BPD)および同国北東内陸部の Shushufindi 製油所(2.0 万 BPD)
で、全てをエクアドル国営石油(Petroecuador)の子会社 Petroindustrial 社が操業している。
Esmeraldas 製油所では現在、より重質な Ecuador Oriente 原油が処理できるように高度化工
事が始まっている。
エクアドルとベネズエラはエクアドルのマナビ州の太平洋沿岸に新製油所(30 万 BPD)
を建設する協議を行ってきている。業界筋は最近、中国石油化工集団公司(Sinopec)及び
/または中国石油天然ガス集団公司(CNPC)が当該プロジェクトに部分融資する可能性が
あると伝えている。
11
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図 10 エクアドルの製油所・パイプライン
4.2.2. 石油パイプライン
エクアドルは国内石油パイプラインを 2 系統、国際石油パイプラインを 1 本保有してい
る。
より古い1 番目の国内石油パイプラインはSistema Oleducto Trans-Equatoriano (SOTE) パ
イプラインである。全長は 499km、輸送能力は 40 万 BPD である。SOTE パイプラインは
エクアドル北部内陸の Lago Agrio 油田から太平洋岸の Balao 石油基地に至るもので、1970
年代初頭に敷設された。2 番目の国内石油パイプラインは Oleducto de Crudos Pesados (OCP)
パイプラインである。2003 年 9 月に稼働開始し、全長は 483km、輸送能力は 45 万 BPD で
ある。OCP パイプラインの大部分は SOTE パイプラインのルートと並行に走っている。
12
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OCP パイプラインが稼動したことにより、エクアドルの石油パイプライン能力がほぼ倍増
し、石油増産のきっかけとなった。現在、同国の原油の約 70%が SOTE パイプラインを、
残りは OCP パイプラインを経由して輸送されている。
エクアドルの国際石油パイプラインである輸送能力5 万BPDのTransAndino パイプライ
ンは、エクアドルの複数の油田とコロンビア南部太平洋岸の Tumaco 港を結んでいる。
TransAndino パイプラインは時折、コロンビア国内で反政府組織の攻撃目標になってきた。
治安環境は向上したとはいえ、最近(2012 年 7 月)も攻撃を受け損傷を被っている。
2012 年 8 月、隣国ペルーの国営石油会社とエクアドルの炭化水素庁長官がエクアドル南
東部の鉱区で産出する石油を移送する協定に署名した。同協定により、ペルー北部 Loreto
地域にある Norperuano パイプラインに接続する長さ 100km の枝管が必要となるが、当該
プロジェクトはそれ以来放棄されていると報道されている。
4.2.3. 石油の確認埋蔵量
2013 年 1 月時点のエクアドルの石油確認埋蔵量は前年に比べ 14%増えて 80 億バレルを
超え、ベネズエラとブラジルに次いで南米第 3 位をキープしている。石油の多くは同国東
部のオリエンテ盆地に埋蔵されている。
4.2.4. 参入している石油企業
2012 年、エクアドルの国営石油会社である Petroecuador と Petroamazonas および
Petroecuador と Petroleos de Venezuela の合弁会社である Operaciones Rio Napo がエクアドル
産石油の約 73%を生産した。残りは民間会社の生産分である。海外の大手石油企業ではス
(CNPC)
ペインの Repsol 社、
イタリアの Eni 社、
チリの Enap 社、
中国石油天然ガス集団公司
と中国石油天然ガス有限公司(PetroChina)の企業連合である Andes Petroleu 社が参入して
いる。
4.2.5. 石油の生産と消費
図 11 にエクアドルの石油生産量と消費量の推移を示す。2012 年に原油とコンデンセー
トおよび天然ガス液(NGL)を合わせて 50.5 万 BPD 生産した。前年より僅かに増えては
いるが、2006 年のピーク(53.6 万 BPD)には及んでいない。2007 年以来、エクアドルの
石油生産量は 50 万 BPD 付近で停滞している。一方、2012 年の国内石油消費量は 21.3 万
BPD で生産量を大きく下回り、エクアドルは石油の純輸出国となっている。
13
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図 11 エクアドルの石油生産量と消費量
4.2.6. ヤスニ-ITT イニシアティブの解除
ヤスニ(Yasuni)国立公園(図 10 参照)はエクアドル北部のアマゾン地域のヤスニ生物
圏保護区(Parque Nacional Yasuni)を指す。この一帯には古くから先住民が移住してきてお
り、油田開発が自然の生態系や先住民の暮らしに影響を及ぼしてきた。ユネスコの自然保
護区に指定されたのを機に、ヤスニ国立公園内の生態系の多様性を保護し且つ 2 つの孤立
した先住民の文化の転位を避けるための取り組みとして、政府は油田開発を中止する代わ
りに国際社会から 36 億ドルの森林保全基金を募るヤスニ-ITT イニシアティブ(Yasuni-ITT
Initiative ) を 公 布 し 、 2007 年 か ら 2013 年 夏 ま で の 間 、 ヤ ス ニ 国 立 公 園 内 の
Ishpingo-Tambococha-Tiputini (ITT)油田群(石油推定埋蔵量 9 億 900 万バレル)に位置
する多くの油田からの生産を一時禁止した。
しかし、6 年間(2007 年~2013 年)で集まったのは僅か 1330 万ドルで、2013 年 8 月 15
日にエクアドルのコレア大統領は当該イニシアティブを解除し、石油探査を再開する方針
を表明した。それ以降、ITT 油田群における炭化水素資源の開発が国益であると判断され、
Tambococha 油田と Tiputini 油田が最初に生産を再開する見通しである。因みに、ヤスニ-ITT
イニシアティブがエクアドルの石油生産量が停滞した原因の 1 つであったとも言える。
4.2.7. 石油の輸出入
2012 年、エクアドルは 50.5 万 BPD の原油を生産し、そのうちの約 70%(35.4 万 BPD)
を輸出した。米国向けが最大(17.7 万 BPD)で、他の主な輸出先はチリ・ペルー・日本で
ある。エクアドルと中国は強い相互関係にあるにも拘らず、今のところ中国向けの原油輸
出量はそれほど多くはない。しかし、エクアドルはアジア市場(特に中国)への輸出の多
角化を計画している。
14
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エクアドルは国内の原油精製能力不足から、石油製品の輸入を余儀なくされている。同
国は原油の純輸出国であるにも拘らず、石油製品に限っては純輸入国となっている。重油
などの重質製品を輸出し、ガソリンやディーゼル燃料および LPG などの軽質製品を輸入し
ている。2012 年には重質製品を 2.7 万 BPD 輸出し、軽質製品を 11.0 万 BPD 輸入した。
4.3. 天然ガス
4.3.1. 天然ガスの埋蔵量
2013 年 1 月時点の天然ガスの推定埋蔵量は 70 億 m3 である。
4.3.2. 天然ガスの生産と消費
エクアドルの天然ガス埋蔵量は少なく、且つ天然ガス市場も小さい。2012 年に天然ガス
(大半が油田からの随伴ガス)を 15 億 m3 生産した。そのうちの 10 億 m3 が販売され、
残りはフレア燃焼された。同国唯一の大規模天然ガスプロジェクトであった Guayaquil 湾
内の Amistad ガス田からの産出ガスは全て内陸部の Machala 火力発電所に送られている。
<出典および参考資料>
(1) 米国 DOE・エネルギー情報局(EIA)レポート 、Colombia Country Analysis Brief
http://www.eia.gov/countries/cab.cfm?fips=CO
(2) 米国 DOE・エネルギー情報局(EIA)レポート 、Ecuador Country Analysis Brief
http://www.eia.gov/countries/cab.cfm?fips=EC
(3) Wikipedia 、Colombia
http://en.wikipedia.org/wiki/Colombia
(4) Wikipedia 、Ecuador
http://en.wikipedia.org/wiki/Ecuador
(5) Wikipedia 、Colombia- Ecuador Relations
http://en.wikipedia.org/wiki/Colombia%E2%80%93Ecuador_relations
(6) Wikipedia 、Ocensa Pipeline
http://en.wikipedia.org/wiki/Ocensa_pipeline
(7) Wikipedia 、Coalbed Methane
http://en.wikipedia.org/wiki/Coal_bed_methane
(8) Wikipedia 、GLOBAL NOTE
http://www.globalnote.jp/post-3222.html
(9) Wikipedia 、genuivest.net
http://genuinvest.net/?eid=2023
(10) Wikipedia 、Yasuni National Park
http://en.wikipedia.org/wiki/Yasuni_National_Park
(11) Wikipedia 、Yasuni-ITT Initiative
http://en.wikipedia.org/wiki/Yasun%C3%AD-ITT_Initiative
15
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(12) Wikipedia 、ヤスニ生物圏保護区
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A4%E3%82%B9%E3%83%8B%E7%94%9F%E7%8
9%A9%E5%9C%8F%E4%BF%9D%E8%AD%B7%E5%8C%BA
(13) 外務省ホームページ、各国情勢
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/index.html
以上
本資料は、一般財団法人 石油エネルギー技術センターの情報探査で得られた情報を、整理、分析
したものです。無断転載、複製を禁止します。本資料に関するお問い合わせは[email protected]
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次回の JPEC レポート(2014 年度 第 9 回)は
「規制緩和で復活する中国の石炭液化プロジェクト」
を予定しています。
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